【実施例】
【0056】
本発明に係るヒト用の口臭予防剤若しくは口腔用抗菌剤についての実施態様について、具体的な製造例並びに効果試験等の実施例を挙げながら説明する。
【0057】
[製造例]本発明に係るヒト用の口臭予防剤及び口腔用抗菌剤の製造(典型例)
先ず、本発明に係るヒト用の口臭予防剤及び口腔用抗菌剤を表1に示す配合で製造した。なお、表1中における「配合割合」については重量%とする。
【0058】
【表1】
【0059】
先ず、卵黄油に、ビタミンE及びビタミンCを加え攪拌溶解する(以下、「A液」とする。)。次に、精製水にグリチルリチン酸ジカリウム、ハッカ油、チョウジ(丁子)油を加えて加温して攪拌する(以下、「B液」とする。)。次に、マスティック樹脂、マスティック精油及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを混合攪拌する(以下、「C液」とする。)。次に、ゲル化炭化水素を80℃以上に加温し、先述のA液、B液及びC液を加えて混合攪拌する(以下、「D液」とする。)。次にD液に高級アルコール及びキサンタンガムを加えることにより、本発明に係るヒト用の口臭予防剤及び口腔用抗菌剤と成る。
【0060】
ちなみに、表1に記載した成分の混合の順番、攪拌温度や回数などは適宜変更可能である。また、配合割合については、上記実施形態や特許請求の範囲に記載の範囲を順守すれば適宜変更可能である。また、ヒト用の口臭予防剤及び口腔用抗菌剤については、同一のものとしてもかまわないし、成分の配合を適宜変更してもかまわない。
【0061】
[実施例1]本発明に係るヒト用の口臭予防剤の有効成分の効果試験
次に、本発明に係るヒト用の口臭予防剤の有効成分である、マスティック及び/又は卵黄油について、効果試験、即ち試料(ヒト用の口臭予防剤)を口腔内に塗布後の揮発性有機硫黄化合物(VSC)濃度を測定した。
【0062】
本実施例1においては、基剤(ゲル化炭化水素)のみを比較対象の「プラセボ」とした。また、本実施例1において、マスティックに関しては、マスティック樹脂及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを混合したものを「マスティック樹脂液」とし、そのマスティック樹脂液と、ゲル化炭化水素とを混合してゲル化したものを「マスティックゲル」とした。例えば、「マスティック(〇%)ゲル」(〇は数字)といった場合、「〇%のマスティック樹脂液を含むゲル」という意味である。
【0063】
また、本実施例1において、卵黄油ゲルに関しては、卵黄油と、ゲル化炭化水素とを混合してゲル化したものを卵黄油ゲルとした。例えば、「卵黄油(△%)ゲル」(△は数字)といった場合、「△%の卵黄油を含むゲル」という意味である。
【0064】
また、本実施例1において、マスティックゲルと卵黄油ゲルとの混合ゲルに関しては「マスティック(〇%)+卵黄油(△%)ゲル」(〇、△は数字)という記載があるが、どちらも同一の意味であり、即ち「〇%のマスティック樹脂液を含むゲル」と「△%の卵黄油を含むゲル」との混合液(混合ゲル)という意味である。
【0065】
なお、プラセボ並びにマスティックゲル、卵黄油ゲル及びマスティック+卵黄油ゲルといった試料ゲルについての調製(製造)方法については、略均一に混合されればよいので、攪拌回数や攪拌温度などは任意である。
【0066】
また、後述の1−1乃至1−8において、検体は、男性6人(30歳代1人、40歳代2人、50歳代3人)並びに女性6人(20歳代1人、30歳代3人、50歳代2人)に統一して各試験を行った。
【0067】
(1−1)プラセボ(比較対象)を使用した場合及びマスティック(3%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
先ず、プラセボ(ゲル化炭化水素)について、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、プラセボを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、プラセボを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0068】
同様に、マスティック(3%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、マスティックゲル(3%樹脂液)を歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、マスティック(3%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0069】
プラセボを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表2(主に左側参照)並びに
図1(A)及び(B)に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
年齢に関係なく主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれるが、プラセボの場合、塗布前(表2並びに
図1(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、各検体全てで略横ばいか微増といった結果になった。
【0072】
次にマスティック(3%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、上記表2(主に右側参照)並びに
図2(A)及び(B)に示す。
【0073】
マスティック(3%)ゲルを使用した場合においては、プラセボ同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表2並びに
図2(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、どの検体も塗布後1日目から3日目までで変化が右肩下がり、即ちVSC濃度の抑制効果が顕著に出たという結果になった。そして各検体とも3日目から5日目でほぼ横ばいとなった。
【0074】
これらのことから、少なくともマスティック(樹脂液)を用いた場合、抗菌効果はもとより、口臭抑制効果をもたらすことが示唆される結果となった。
【0075】
(1−2)マスティック(5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
次に、マスティック(5%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、マスティック(5%)ゲルを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、マスティック(5%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0076】
マスティック(5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表3並びに
図3(A)及び(B)に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
マスティック(5%)ゲルを使用した場合においては、プラセボやマスティックゲル(3%樹脂液)の時同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表3並びに
図3(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、どの検体も塗布後1日目から3日目までで変化が右肩下がり、即ちVSC濃度の抑制効果が顕著に出たという結果になった。そして各検体とも3日目から5日目でほぼ横ばいとなった。
【0079】
そしてまた、VSC濃度の高い男性2人について、マスティック(3%)ゲルを使用した場合と、マスティック(5%)ゲルを使用した場合とを比べた場合、マスティック(5%)ゲルを使用した場合の方が、更に200ppbほどVSC濃度を抑制することが分かった。
【0080】
これらのことから、少なくともマスティック(樹脂液)の濃度を高くした場合、抗菌効果はもとより、更なる口臭抑制効果をもたらすことが示唆される結果となった。
【0081】
(1−3)卵黄油(1%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
次に、卵黄油(1%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、卵黄油(1%)ゲルを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、卵黄油(1%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0082】
卵黄油(1%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表4並びに
図4(A)及び(B)に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
卵黄油(1%)ゲルを使用した場合においては、プラセボやマスティックゲルの時同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表4並びに
図4(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、どの検体も塗布後1日目までで変化が出て、VSC濃度の高い人に男性(
図4(A)参照)及び女性(
図4(B)参照)ともに抑制効果が表れたが、VSC濃度の低い人には男性(
図4(A)参照)及び女性(
図4(B)参照)ともに逆にVSC濃度が若干高くなるという結果となった。しかしながら各検体とも2日目から5日目でほぼ横ばいとなった。
【0085】
これらのことから、少なくとも卵黄油を用いた場合、マスティックを使用した場合と比べると、抗菌効果や口臭抑制効果は大分弱いが、口臭抑制効果を示唆する結果となった。
【0086】
(1−4)卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
次に、卵黄油(1.5%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、卵黄油(1.5%)ゲルを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、卵黄油(1.5%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0087】
卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表5並びに
図5(A)及び(B)に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合においては、プラセボやマスティックゲル、卵黄油(1%)ゲルの時同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表5並びに
図5(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、どの検体も塗布後2日目まで変化が出て、どの検体も抑制効果が表れるという結果となった。しかしながら各検体とも3日目から5日目でほぼ横ばいとなった。
【0090】
そしてまた、VSC濃度の高い男性2人について、卵黄油(1%)ゲルを使用した場合と、卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合とを比べた場合、卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合の方が、更に100ppbほどVSC濃度を抑制することが分かった。
【0091】
これらのことから、少なくとも卵黄油ゲルの濃度を高くした場合、抗菌効果はもとより、更なる口臭抑制効果をもたらすことが示唆される結果となった。しかしながらマスティックゲルを使用する場合に比べると、これらの効果は大分弱い。
【0092】
(1−5)マスティック(3%)+卵黄油(1%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
次に、マスティック(3%)+卵黄油(1%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、マスティック(3%)+卵黄油(1%)ゲルを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、マスティック(3%)+卵黄油(1%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0093】
マスティック(3%)+卵黄油(1%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表6並びに
図6(A)及び(B)に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
マスティック(3%)+卵黄油(1%)ゲルを使用した場合においては、プラセボやマスティックゲル、卵黄油ゲルの時同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表6並びに
図6(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、どの検体も塗布後5日目まで、緩やか若しくは急激な右肩下がりの変化が出た。そして、初期値及び塗布後5日目それぞれのVSC濃度を対比した場合、男女ともにVSC濃度の一番高い人で約半分の濃度に抑制することが分かった。
【0096】
これらのことから、少なくともマスティック+卵黄油を用いた場合、マスティック又は卵黄油のいずれか単独で使用した場合と比べると、更なる抗菌効果や口臭抑制効果を示すだけでなく、日を経ても抗菌効果や口臭抑制効果が持続することが示唆される結果となった。
【0097】
(1−6)マスティック(5%)+卵黄油(1%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
次に、マスティック(5%)+卵黄油(1%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、マスティック(5%)+卵黄油(1%)ゲルを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、マスティック(5%)+卵黄油(1%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0098】
マスティック(5%)+卵黄油(1%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表7並びに
図7(A)及び(B)に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
マスティック(5%)+卵黄油(1%)ゲルを使用した場合においては、プラセボやマスティックゲル、卵黄油ゲルの時同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表7並びに
図7(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、上記(1−
5)同様にどの検体も塗布後5日目まで、緩やか若しくは急激な右肩下がりの変化が出た。そして、初期値及び塗布後5日目それぞれのVSC濃度を対比した場合、最大でVSC濃度が約1/3の濃度に抑制されることが分かった。
【0101】
これらのことから、マスティック+卵黄油において、少なくともマスティックの濃度を高くした場合、マスティックの濃度が低い時同様にマスティック又は卵黄油のいずれか単独で使用した場合と比べると、更なる抗菌効果や口臭抑制効果を示すだけでなく、日を経ても抗菌効果や口臭抑制効果が持続することが示唆される結果となった。更に、マスティックの濃度を高くした場合、VSC濃度の更なる抑制が可能であるということが分かった。
【0102】
(1−7)マスティック(3%)+卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
次に、マスティック(3%)+卵黄油(1.5%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、マスティック(3%)+卵黄油(1.5%)ゲルを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、マスティック(3%)+卵黄油(1.5%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0103】
マスティック(3%)+卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表8並びに
図8(A)及び(B)に示す。
【0104】
【表8】
【0105】
マスティック(3%)+卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合においては、プラセボやマスティックゲル、卵黄油ゲルの時同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表8並びに
図8(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、どの検体も塗布後5日目まで、緩やか若しくは急激な右肩下がりの変化が出た。そして、初期値及び塗布後5日目それぞれのVSC濃度を対比した場合、男女ともにVSC濃度の一番高い人で約4割の濃度に抑制することが分かった。
【0106】
これらのことから、少なくともマスティック+卵黄油を用いた場合、マスティック又は卵黄油のいずれか単独で使用した場合と比べると、更なる抗菌効果や口臭抑制効果を示すだけでなく、日を経ても抗菌効果や口臭抑制効果が持続することが示唆される結果となった。そして卵黄油の濃度を高くした場合、マスティックの濃度を高くした時よりも弱いが、VSC濃度の更なる抑制が可能であるということが分かった。
【0107】
(1−8)マスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の推移
次に、マスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲルについて、先述した検体(男性6人及び女性6人)に対し、VSC濃度を測定した。試験方法としては、各検体において、5日間で1日当たり1回、マスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲルを歯茎及び歯周ポケットに塗布し、塗布1時間後のVSC濃度(ppb)を測定した。ちなみに、各検体において、マスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲルを塗布前にもVSC濃度(ppb)を測定した。なお、VSC濃度の測定については、各検体に対して、口臭測定器ブレストロンII(株式会社ヨシダ製)により行った。
【0108】
マスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合におけるVSC濃度の結果の推移を、下記表9並びに
図9(A)及び(B)に示す。
【0109】
【表9】
【0110】
マスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲルを使用した場合においては、プラセボやマスティックゲル、卵黄油ゲルの時同様に主に歯周病菌等の個数により、各検体でVSC濃度(ppb)の大小が分かれる。しかしながら、塗布前(表9並びに
図9(A)及び(B)における「初期値」に相当)のVSC濃度と、塗布後のVSC濃度とを比較すると、どの検体も塗布後5日目まで、緩やか若しくは急激な右肩下がりの変化が出た。そして、初期値及び塗布後5日目それぞれのVSC濃度を対比した場合、最大でVSC濃度が約3割の濃度に抑制されることが分かった。
【0111】
これらのことから、少なくともマスティック+卵黄油を用いた場合、マスティック又は卵黄油のいずれか単独で使用した場合と比べると、更なる抗菌効果や口臭抑制効果を示すだけでなく、日を経ても抗菌効果や口臭抑制効果が持続することが示唆される結果となった。そして卵黄油の濃度を高くした場合、マスティックの濃度を高くした時よりも弱いが、VSC濃度の更なる抑制が可能であるということが分かった。
【0112】
(1−9)まとめ
上記(1−1)乃至(1−8)の内容をまとめると、マスティック(樹脂液)又は卵黄油のいずれか単独で用いるよりも、マスティック(樹脂液)+卵黄油の混合物とした方が、抗菌効果や口臭抑制効果が更に高まることが分かった。
【0113】
[実施例2]本発明に係るヒト用の口腔用抗菌剤の抗菌試験
実施例2として、本発明に係るヒト用の口腔用抗菌剤の抗菌試験を行った。当該抗菌試験の対象となる口腔内細菌については、日和見感染を起こす肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びカンジダ菌の計4種を用いた。また、本実施例2において、ヒト用の口腔用抗菌剤は、上記実施例1の(1−8)で用いたマスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲルを試料として使用した。
【0114】
(2−1)口内細菌液の調製
本実施例2で用いる肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びカンジダ菌の菌液(以下、総称して「口内細菌液」とする。)を調製した。
【0115】
先ず、本実施例2では、肺炎桿菌としてクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae) NBRC 13277、緑膿菌としてシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa) NBRC 13275、黄色ブドウ球菌としてスタフィロコッカス・アウレウス サブスピーシス アウレウス(Staphylococcus aureus subsp. aureus) NBRC 12732、及びカンジダ菌としてカンジダ・アルビカンス(Candida albicans) NBRC 1594を用いた。
【0116】
次に、上記肺炎桿菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌については、共通して、普通寒天培地(栄研化学株式会社製)を培地とし、35℃±1℃、及び18〜24時間の条件で前培養し、それぞれの菌数が10
7〜10
8個/mLとなるように生理食塩水を用いて使用する各菌に係る口内細菌液とした。
【0117】
カンジダ菌については、Difco社製のポテトデキストロース寒天培地を培地として用いて、25℃±1℃、及び2日間の条件で前培養し、それぞれの菌数が10
7〜10
8個/mLとなるように生理食塩水を用いて使用するカンジダ菌に係る口内細菌液とした。
【0118】
(2−2)試験液の調製
マスティック(5%)+卵黄油(1.5%)ゲル(これについては、実施例1の時に調
製したものを使用)9mLに対し、上記(2−1)で調製した各口内細菌液を1mLずつ混合させた(以下、「試験液」とする。)。
【0119】
なお、試験液に対する対照としては、各菌に係る口内細菌液を生理食塩水で10倍に希釈したものを使用した。
【0120】
(2−3)生菌数の測定
各菌に係る試験液を生理食塩水で10倍に希釈して、それぞれの試験液を室温で2時間、6時間、24時間保存し、その時の生菌数を測定した。肺炎桿菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に係る各保存時間の試験液については、標準寒天培地(栄研化学株式会社製)を培地として、混釈平板培養法にて35℃±1℃及び2日間の条件で培養した後に生菌数を測定した。一方、カンジダ菌に係る各保存時間の試験液については、ポテトデキストロース寒天培地(栄研化学株式会社製)を培地として、混釈平板培養法にて25℃±1℃及び2日間の条件で培養した後に生菌数を測定した。
【0121】
肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びカンジダ菌の生菌数の測定結果を次の表10に示す。
【0122】
【表10】
【0123】
上記の結果から、肺炎桿菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に関しては、24時間後にほぼ測定限界、即ち生菌をほぼ検出しないという結果に至った。一方、カンジダ菌に関しては、他の3種の菌に比べると、生菌の減少数に大分差はあるが、対照と比べると、時間が経つにつれて、生菌は減少傾向にあった。
【0124】
以上のことより、マスティック樹脂及び卵黄油を有効成分とする本発明に係るヒト用の口腔用抗菌剤については、日和見感染を起こす主な菌である、肺炎桿菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に関しては顕著な抗菌効果が見られた。カンジダ菌に関しては、他の3種の菌に比べると、抗菌効果は薄いものの、抗菌を示唆する結果となった。
【0125】
以上述べた実施例はあくまで一例であり、実施形態に記載された範囲内で種々の検討が可能であることは言うまでもない。