特許第6986771号(P6986771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6986771-スパーブイ用係留装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986771
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】スパーブイ用係留装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 22/04 20060101AFI20211213BHJP
   B63B 22/18 20060101ALI20211213BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20211213BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20211213BHJP
   F16C 17/26 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B63B22/04 Z
   B63B22/18
   F16C17/02 Z
   F16C17/04 Z
   F16C17/26
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-57382(P2020-57382)
(22)【出願日】2020年3月27日
(65)【公開番号】特開2021-154890(P2021-154890A)
(43)【公開日】2021年10月7日
【審査請求日】2020年3月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社ゼニライトブイは、2019年4月13日、山形県酒田市宮之浦袖岡地内において、一般財団法人日本気象協会に、本願発明を用いた洋上風況観測システムを納品した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000132688
【氏名又は名称】株式会社ゼニライトブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正洋
(72)【発明者】
【氏名】天木 清司
(72)【発明者】
【氏名】麻生 裕司
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04813815(US,A)
【文献】 特開2005−186752(JP,A)
【文献】 特開2017−035998(JP,A)
【文献】 大西健二 他,洋上風況観測システムBuoyLidarの開発,日本風力エネルギー学会誌,Vol.43, N0.2,日本,日本風力エネルギー学会,2019年,第202頁左欄第1行〜第205頁右欄第9行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 22/04
B63B 22/18
F16C 17/02
F16C 17/04
F16C 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標柱体の下端及び沈錘の上端にそれぞれ固定する一対の継手部材と、前記継手部材を回動自在に軸着する軸部材と、両継手部材間に介在するとともに軸部材を回動自在に軸受するコマ部材と、を備えてなり、
前記継手部材は、前記標柱体の下端及び前記沈錘の上端に対してそれぞれを固定する基板部と、前記基板部から立設された支持部と、前記支持部の先端付近に開孔して形成された軸着部と、前記軸着部に前記軸部材を挿入した状態において前記軸着部を閉塞する蓋部と、を有し、
前記蓋部は、前記軸着部の端部側に対向する面において前記軸部材の端部に対して間隙を形成する凹部を有することを特徴とするスパーブイ用係留装置。
【請求項2】
蓋部は、支持部に固定した軸着部を閉塞した状態のままで軸部材の状態を目視で点検するための開閉自在の窓部を有することを特徴とする請求項1記載のスパーブイ用係留装置。
【請求項3】
軸部材の周囲にベアリングを介挿することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載のスパーブイ用係留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航路標識や観測装置等を水域に設置するためのスパーブイ用係留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパーブイは、風や波浪の強い水域に設置され、設置箇所から離出せずに正確な位置表示をさせるため沈錘に対して直結する係留装置が使用されている。このスパーブイの係留装置は、標柱体の下端及び沈錘の上部に対して一対の継手部材が固定され、両継手部材の軸部を連結することで自在に揺動するユニバーサルジョイント型のものが採用されている(例えば特許文献1−4参照)。
【0003】
このユニバーサルジョイント型の係留装置は、風や波浪等による標柱体の揺動等によって係留装置内に泥砂が侵入しやすいため、とりわけ、摺動する軸部材の周囲の隙間に潤滑剤等を充填する必要があった(例えば特許文献2−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−102795号公報
【特許文献2】実開昭55−111893号公報
【特許文献3】実開昭62−129388号公報
【特許文献4】実開昭58−112697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このユニバーサルジョイント型の係留装置は、軸部の両端にナットやピン等の固定部材で固定するように軸着しているため、長期間の使用において、風や波浪によって標柱体の揺動に追従して回動する際に他方の継手部材に対して生じる摩擦によって徐々に軸部材が劣化しやすくなるとともに、固定のためのナットの緩みやピンの破損により係留装置が破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、係留装置の軸部の周囲への泥砂の侵入を防止するとともに、スパーブイの揺動による係留装置内の軸部に掛かる負荷をより一層低減することで、耐久性を向上させたスパーブイ用係留装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明のスパーブイ用係留装置は、標柱体の下端及び沈錘の上端にそれぞれ固定する一対の継手部材と、前記継手部材を回動自在に軸着する軸部材と、両継手部材間に介在するとともに軸部材を回動自在に軸受するコマ部材と、を備えてなり、
前記継手部材は、前記標柱体の下端及び前記沈錘の上端に対してそれぞれを固定する基板部と、前記基板部から立設された支持部と、前記支持部の先端付近に開孔して形成された軸着部と、前記軸着部に前記軸部材を挿入した状態において前記軸着部を閉塞する蓋部と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、上述した構成に加え、蓋部は、軸着部の端部側に対向する面において軸部材の端部に対して間隙を形成する凹部を有することが好ましい。
【0009】
また、上述した構成に加え、蓋部は、支持部に固定した軸着部を閉塞した状態のままで軸部材の状態を目視で点検するための窓部を有することが好ましい。
【0010】
また、上述した構成に加え、軸部材の周囲にベアリングを介挿することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1―記載の発明によれば、係留装置の軸部の周囲への泥砂の侵入を防止するとともに、継手部材の揺動に対して強制的に追従しない軸部材によってスパーブイの揺動による係留装置内の軸部材に掛かる負荷をより一層低減して耐久性を向上させたスパーブイ用係留装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のスパーブイ用係留装置の一例を示す正面図である。
図2図1の蓋部周辺の構造(点線部)を示す拡大縦断面図である。
図3図2の軸部材の端部周辺(点線部)の構造を示す部分拡大断面図である。
図4図1の係留装置を用いたスパーブイの係留状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るスパーブイ用係留装置の一例について図1−4に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態のスパーブイは、図4に示すように、鋼管を主体として構成された略円柱状の標柱体2から形成されている。沈錘3は、コンクリートや鋼鉄を主体とする素材から製造された立方形状のブロック体を主要部として構成するものであり、ブロック体の上面から上方向に突出してスパーブイ用係留装置1に固定するための柱状の固定部3aを有するものである。
【0014】
スパーブイ用係留装置1は、標柱体2の下端及び沈錘3の上端にそれぞれを固定する一対の継手部材10、10と、継手部材10、10を回動自在に軸着する軸部材20、20と、両継手部材10、10間に介在するとともに軸部材20、20を回動自在に軸受して連結するコマ部材30と、を有するものである。
【0015】
継手部材10、10は、標柱体2の下端及び沈錘3の固定部3aの上端に対してそれぞれを固定する平板状の基板部11と、基板部11から立設された支持部12、12と、支持部12、12の先端付近に開孔して形成された軸着部13と、軸部材20を軸着部13に挿入した状態において軸着部13の両端を閉塞する蓋部14と、を有するものである。
【0016】
支持部12、12は、基板部11の表面から略垂直方向に一対で立設されるとともに、基板部11から軸着部13のまでの中間の高さから基板部11に対して平行に一対の支持部12、12間に延設された補強部15と、継手部材10、10の溶融等を防ぐために蓋部14及び支持部12の側面に貼着された防食板16と、を有するものである。
【0017】
蓋部14は、略円形状に形成され、その周縁近傍に沿って等間隔に形成された複数の貫通孔14c、14cを有し、貫通孔14c、14cを介して固定ボルト17等を挿入し、支持部12、12の軸着部13の周囲を閉塞するように固定されるものである。また、この蓋部14は、図2、3に示すように、軸着部13の端部21側に対向する面において軸部材20の端部21に対して微小な間隙Sを形成するように適切な深さの凹部14aを有するものである。この間隙Sは、軸部材20の端部21と蓋部14の凹部14a(後述するベアリング40を介挿する場合にはベアリング40)との間に設けることで、軸部材20の端部21に対して蓋部14を接することなく閉塞することが可能であり、例えば、軸部材20の長手方向の長さである軸長を約630mm程度とする場合、軸長に対して少なくとも約300分の1である約2mm程度の幅とすることが好適である。
【0018】
また、この蓋部14は、支持部12、12に固定した軸着部13を閉塞した状態のまま内部の軸部材20の状態を目視等で点検するために、軸部材20と軸着部13との接触面近傍に位置する蓋部14の表面に開閉自在の窓部14bを有するものである。
【0019】
コマ部材30は、継手部材10、10の支持部12、12間に配設される略直方体形状のブロック体であり、2つの軸部材20、20の軸方向を直角に交差するように軸受するための2つの貫通孔31、31を有するものである。すなわち、このコマ部材30によって継手部材10、10の向きが直角に交差するように連結して、標柱体2の前後左右方向への揺動する自由度を備えることが可能である。
【0020】
軸部材20は、ニッケルクロム鋼等の金属材を主体として端部にナット等の固定するためのネジ山のない略円柱形状に形成されたものであり、軸部材20の端面が、支持部12、12の軸着部13間に挿入した状態において、支持部12、12の外側面とおおよそ同一平面上に位置する程度の長さのものである。
【0021】
また、軸部材20の周囲に適切なベアリング40を介挿することで、軸部材20の周囲に掛かる摩擦抵抗をより一層減少ことができるとともに、泥砂の侵入を防ぐことが可能である。より具体的には、軸部材20の周囲である軸部材20と軸着部13との間、及び、軸部材20とコマ部材30の貫通孔31、31との間には円筒形ベアリング41を介挿するとともに、軸部材20の端部21と蓋部14の凹部14aとの間、及び、支持部11、11とコマ部材30の重なる間にスラストベアリング42と、を介挿することが好適である。
【0022】
したがって、上述したスパーブイ用係留装置1は、軸部材20を軸着部13に挿入した状態において軸着部13を閉塞する蓋部14によって、泥砂等が軸部材20の周囲及び軸着部20への侵入を防止することが可能である。
【0023】
また、このスパーブイ用係留装置1は、軸部材20が継手部材10、10に対して固定されていないため、標柱体2の揺動に伴って継手部材10、10の回動に対して、軸部材20が強制的に追従して回動することがなくなり、他方の継手部材10の軸着部13、及び、コマ部材30の貫通孔31との摩擦抵抗が減少し、その結果、軸部材20の劣化を抑制することで耐久性を高めることが可能である。
【0024】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、継手部材10の基板部11において標柱体2の長手方向である中心軸周り(いわゆるヨー方向)の回転の自由度を付加するために、標柱体2の下端及び沈錘3の固定部3aに固定する基板部11において回転機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 スパーブイ用係留装置、2 標柱体、3 沈錘 3a 固定部、
10 継手部材、11 基板部、12 支持部、13 軸着部、14 蓋部、14a 凹部、14b 窓部、14c 貫通孔、15 補強部、16 防食板、17 固定ボルト、
20 軸部材、21 端部、
30 コマ部材、31 貫通孔、
40 ベアリング 41 円筒形ベアリング、42 スラストベアリング、
S 隙間。
図1
図2
図3
図4