特許第6986776号(P6986776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986776
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】難浄化液処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20211213BHJP
   C02F 11/15 20190101ALI20211213BHJP
【FI】
   C02F1/461 101C
   C02F11/15ZAB
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-170264(P2020-170264)
(22)【出願日】2020年10月8日
(62)【分割の表示】特願2017-171761(P2017-171761)の分割
【原出願日】2017年9月7日
(65)【公開番号】特開2021-638(P2021-638A)
(43)【公開日】2021年1月7日
【審査請求日】2020年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】506310050
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】内海 洋
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−082678(JP,A)
【文献】 特開昭51−072970(JP,A)
【文献】 特開2013−204904(JP,A)
【文献】 特開2007−000827(JP,A)
【文献】 特開昭54−007755(JP,A)
【文献】 特開2008−207062(JP,A)
【文献】 特開平07−051677(JP,A)
【文献】 特開平08−192141(JP,A)
【文献】 実開平06−052998(JP,U)
【文献】 特開昭52−035766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46− 1/48
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難浄化液を処理するための装置であって、
前記難浄化液を流すための流路と、
流路中に設けられ、前記難浄化液の流れる方向に配設された少なくとも一対の電極と、
前記電極に電力を供給する電源とを備え、
前記電極は、前記難浄化液の流れに対して凹凸形状を有するように構成され、前記少なくとも一対の電極の間を、前記難浄化液が蛇行して流れるように構成され、
前記電極の陽極はアルミニウム、陰極は鉄で構成され、
前記電極のうちの陽極から発生する酸素を補足する補足手段をさらに備え、
前記酸素を前記難浄化液の曝気処理に使用することを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項2】
難浄化液を処理するための装置であって、
前記難浄化液を流すための流路と、
流路中に設けられ、前記難浄化液の流れる方向に配設された少なくとも一対の電極と、
前記電極に電力を供給する電源とを備え、
前記電極は、網状に構成されており、
前記電極の陽極はアルミニウム、陰極は鉄で構成され、
前記電極のうちの陽極から発生する酸素を補足する補足手段をさらに備え、
前記酸素を前記難浄化液の曝気処理に使用することを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項3】
難浄化液を処理するための装置であって、
前記難浄化液を流すための流路と、
流路中に設けられ、前記難浄化液の流れる方向に配設された少なくとも一対の電極と、
前記電極に電力を供給する電源とを備え、
前記電極は、前記難浄化液の流れに対して凹凸形状を有するように構成され、前記少なくとも一対の電極の間を、前記難浄化液が蛇行して流れるように構成され、
前記電極の陽極はマグネシウムで構成され、
前記電極のうちの陽極から発生する酸素を補足する補足手段をさらに備え、
前記酸素を前記難浄化液の曝気処理に使用することを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項4】
難浄化液を処理するための装置であって、
前記難浄化液を流すための流路と、
流路中に設けられ、前記難浄化液の流れる方向に配設された少なくとも一対の電極と、
前記電極に電力を供給する電源とを備え、
前記電極は、網状に構成されており、
前記電極の陽極はマグネシウムで構成され、
前記電極のうちの陽極から発生する酸素を補足する補足手段をさらに備え、
前記酸素を前記難浄化液の曝気処理に使用することを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの難浄化液処理装置において、
前記電極の下流に、前記電極にて電気分解して残った固体をすくい上げる掬上手段を設け、
前記掬上手段は、液体を透過し固体を補足する材料によって構成されており、少なくとも一部が流路中に浸漬されていることを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの難浄化液処理装置において、
前記電極は、正電極と負電極を複数交互に配置したものであることを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの難浄化液処理装置において、
前記流路の底は、下流に向かって下がっていることを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの難浄化液処理装置において、
前記電極を通過させる前に、難浄化液に電解質が添加されていることを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの難浄化液処理装置において、
前記電極のうちの陰極から発生する水素を捕捉する捕捉手段をさらに備えることを特徴とする難浄化液処理装置
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの難浄化液処理装置において、
前記難浄化液は、BODまたはCODが1000mg/lを超えるものであることを特徴とする難浄化液処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかの難浄化液処理装置において、
前記難浄化液は、バイオガスプラントの消化液、スラリーストアの糞尿、搾乳施設の排水、人工ミルク工場の排水、水産加工場の排水のいずれかであることを特徴とする難浄化液処理装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイオプラントなどの消化液を浄化する難浄化液処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、牛の糞尿や生ゴミなどの有機性廃棄物などを使ったバイオガス発電プラントが注目されている。有機性廃棄物を発酵槽に入れ、メタン発酵をさせて、メタンと二酸化炭素を含むバイオガスを生成し、ガスエンジン発電機の燃料を得るものである。
【0003】
バイオガスを発生させた後の残渣を消化液といい、窒素、リン、カリウムを含んでいるため、肥料として利用することが可能である。肥料として使用されない消化液は、河川などへの放水を行う必要がある。この際、消化液中のSS(浮遊物質:Suspended Solids)、燐、窒素、アンモニアなどにより、河川・湖沼の富栄養化や土壌・地下水汚染がもたらされてしまうことになる。そこで、消化液を処理して、SSや燐を分離し、窒素、アンモニアを分解処理する装置が提案されている。
【0004】
特許文献1には、電気分解層にて消化液を電気分解し、固体と液体を分離するとともに、窒素、燐などを除去するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−154762
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係るシステムでは、消化液を電気分解する時間を長くして除去能力を高くするためには、電極を大きくする必要があり、システムの大型化を招くという問題があった。このような問題は、消化液だけでなく、微生物による浄化が困難なBODまたはCODの高い(たとえば、1000以上)難浄化液についてもいえることである。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決して、装置の大型化を防止しつつ、処理能力の高い難浄化液浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の独立して適用可能ないくつかの特徴を以下に列挙する。
【0009】
(1)この発明に係る難浄化液処理装置は、難浄化液を処理するための装置であって、前記難浄化液を流すための流路と、流路中に設けられ、前記難浄化液の流れる方向に配設された少なくとも一対の電極と、前記電極に電力を供給する電源とを備え、前記電極は、前記難浄化液の流れに対して凹凸形状を有するように構成され、前記少なくとも一対の電極の間を、前記消化液が蛇行して流れるように構成されている。
【0010】
したがって、装置を大型化せずに、電気分解の性能を向上させることができる。
【0011】
(2)この発明に係る難浄化液処理装置は、難浄化液を処理するための装置であって、前記難浄化液を流すための流路と、流路中に設けられ、前記難浄化液の流れる方向に配設された少なくとも一対の電極と、前記電極に電力を供給する電源とを備え、前記電極は、網状に構成されている。
【0012】
したがって、装置を大型化せずに、電気分解の性能を向上させることができる。
【0013】
(3)この発明に係る難浄化液処理装置は、電極が、正電極と負電極を複数交互に配置したものであることを特徴としている。
【0014】
したがって、各電極の両面側を電気分解のための流路として利用することができ、装置を大型化せずに、電気分解の性能を向上させることができる。
【0015】
(4)この発明に係る難浄化液処理装置は、電極の下流に、前記電極にて電気分解して残った固体をすくい上げる掬上手段を設けたことを特徴としている。
【0016】
したがって、分離した固体を除去することができる。
【0017】
(5)この発明に係る難浄化液処理装置は、流路の底が、下流に向かって下がっていることを特徴としている。
【0018】
したがって、難浄化液が下流に向かって自然に流すことができる。
【0019】
(6)この発明に係る難浄化液処理装置は、電極のうちの陽極はマグネシウムで構成されていることを特徴としている。
【0020】
したがって、効率よくSSを分解することができる。
【0021】
(7)この発明に係る難浄化液処理装置は、電極を通過させる前に、難浄化液に電解質が添加されていることを特徴としている。
【0022】
したがって、電気分解の性能を向上させることができる。
【0023】
(8)この発明に係る難浄化液処理装置は、電極のうちの陰極から発生する水素を捕捉する捕捉手段をさらに備えることを特徴としている。
【0024】
したがって、電気分解によって生じた水素を集めて利用することができる。
【0025】
(9)この発明に係る難浄化液処理装置は、電極のうちの陽極から発生する酸素を捕捉する捕捉手段をさらに備えることを特徴としている。
【0026】
したがって、電気分解によって生じた酸素を集めて利用することができる。
【0027】
(10)この発明に係る難浄化液処理装置は、酸素を前記難浄化液の曝気処理に使用することを特徴としている。
【0028】
したがって、電気分解によって生じた酸素を曝気に利用することができる。
【0029】
(11)この発明に係る難浄化液処理装置は、記難浄化液が、BODまたはCODが1000を超えるものであることを特徴としている。
【0030】
したがって、BODまたはCODが1000を超えて、微生物などによる浄化が困難なものを処理することができる。
【0031】
(12)この発明に係る難浄化液処理装置は、難浄化液が、バイオガスプラントの消化液、スラリーストアの糞尿、搾乳施設の排水のいずれかであることを特徴としている。
【0032】
したがって、微生物などによる浄化が困難なバイオガスプラントの消化液、スラリーストアの糞尿、搾乳施設の排水を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明の一実施形態による消化液浄化システムの構成である。
図2図2Aは電解槽4の平面図であり、図2Bは電解槽4の横断面図である。
図3図3A図3B図3Cは、陽電極6a、陰電極6bの平面図である。
図4図4は、陽電極6aと陰電極6bの材質の組合せを変えた場合の、SS除去率の変化を示す実験結果である。
図5図5は、コンベア8の構成を示すための側断面図である。
図6図6は、コンベア8の平面図である。
図7図7は、濾過槽10の構成を示す図である。
図8図8A図8Bは、他の実施形態による電極の構成を示す図である。
図9図9は、他の実施形態による網目構造の電極(陽電極6a、陰電極6b)を示す図である。
図10図10は、電解時に発生する酸素と水素を回収するための構造を示す横断面図である。
図11図11は、電解時に発生する酸素と水素を回収するための構造を示す縦断面図である。
図12図12は、他の掬上手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1.基本的構成と動作
図1に、この発明の一実施形態による消化液浄化システムの全体構成を示す。バイオ発電プラントなどの消化液が、流量調整槽2に導入される。流量調整槽2には、この消化液とともに、電解質(たとえば塩化マグネシウム)が導入される。この実施形態では、0.5重量%の濃度となるように電解質を加えるようにしている。
【0035】
流量調整槽2は、受け入れる消化液の量に変化があっても、消化液処理装置である電解槽4に流出させる流量を一定に保つためのものである。電解槽4に導かれた消化液は、電極6の間をとおって電気分解され、SSが除去されて固液分離がなされる。同時に、燐が分離され、窒素、アンモニアが分解される。
【0036】
浮遊している固体(SS)は、コンベア8によって掬い上げられて、廃棄槽14に導かれる。SSの除去された消化液は、曝気槽12において酸素に晒され浄化される。浄化された消化液は、濾過槽10を経て排水として河川などに流される。
【0037】
図2に、電解槽4の詳細を示す。図2Aが平面図、図2Bが側断面図である。筐体42は、ステンレス製である。図2Aにあるように、筐体42の幅は、上流部(この実施形態では、3m〜5m程度)から下流部に向かって狭くなっている(この実施形態では、1m程度)。
【0038】
図2Bに示すように、筐体42の内部には、上流から下流に向かって傾斜したステンレス製の底板44、46が設けられている。この実施形態では、底板44の傾斜角度を45度程度とし、底板46の傾斜角度を3〜5%としている。
【0039】
底板46の上には、陽電極6aと陰電極6bが複数交互に設けられ、複数の流路が形成されている。陽電極6aと陰電極6bとの間には、直流電圧(この実施形態では30V)が印加される。これにより、陽電極6aと陰電極6bによって形成された流路を流れる消化液が電気分解される。
【0040】
なお、この実施形態では、陽電極6aにアルミ材を使用し、陰電極6bに鉄を使用した。陰電極6bに、アルミ材、銅を使用してもよい。図4に、いくつかの材料を陽電極6a、陰電極6bに用いた場合の、SSの除去率を実験したデータを示す。
【0041】
実験は、10倍に希釈したバイオプラント消火液(500ml)に電解質として塩化ナトリウムや塩化マグネシウムを所定重量%(たとえば0.1重量%〜20重量%)添加し、陽極の電極棒をアルミニウム、マグネシウムのいずれかとし、陰極の電極棒をマグネシウム、鉄、アルミニウム、銅のいずれかとした。直流電圧を10分または20分間印加し、SSの除去率、CODの除去率を確認した。
【0042】
電解質が含有されることが排水として問題にならない限りにおいて、電解質の含有量が大きいほど電気分解に要する電力が少なくて済むというメリットがある。なお、塩化マグネシウムは排水に含有されていても問題が少ないので、好ましい電解質である。
【0043】
図4から明らかなように、マグネシウムを陽極とした場合や、アルミ−鉄、アルミ−アルミ、アルミ−銅の組合せの場合に、SSの除去率が高かった。陰極としては、陽極と同じものあるいは陽極よりイオン化傾向が小さいものであれば、どのような材質を用いてもよい。
【0044】
したがって、上記のいずれかの組合せにて電極材料を決定することが好ましい。なお、上記実験では消化液を50倍に希釈しているが、実施形態のシステムでは、消化液を希釈せず処理するようにしている。
【0045】
なお、陽極にマグネシウムを用いた場合、下記の反応によって、Mg(OH)2が排出されることになる。
【0046】
Mg+2H2O → Mg(OH)2+H2
一方、陽極にアルミニウムを用いた場合、下記の反応によって、2Al(OH)3が排出される。
【0047】
2Al+6H2O→2Al(OH)3+3H2
Mg(OH)2は動植物に無害であるが、2Al(OH)3は有害であるので、排水の前にこれを取り除く必要がある。陽極と陰極を入れ替えて電位を与えて電気分解することにより、2Al(OH)3を電極に捕捉し、排水から取り除くことができる。
【0048】
図2に戻って、陽電極6aと陰電極6bによって形成された流路を消化液が流れると、消化液が電気分解されることになる。この電気分解によって、SSが除去され、燐が分離され、窒素、アンモニアが分解される。消化液が陽電極6aと陰電極6bの間の流路に存在している時間が長くなると、電気分解の程度も大きくなる。
【0049】
この実施形態では、消化液が陽電極6aと陰電極6bに触れる時間が長くなるように、図2Aに示すように、陽電極6aと陰電極6bを凹凸状に形成している。その一部分詳細を図3Cに示す。陽電極6aは、直線辺を折り曲げたジグザグ形状に構成されている。隣接する陰電極6bも、同様に、直線辺を折り曲げたジグザグ形状に構成されている。したがって、消化液は、陽電極6aと陰電極6bの間を蛇行しながら流れていくことになる。
【0050】
なお、消化液を希釈しない(あるいは希釈度合いが小さい)場合には、希釈度合いが高い(消火液が薄い)場合に比べて、同じ長さの電極を用いた場合のSS等の除去程度が小さくなる。このため、消化液を希釈しない場合(あるいは希釈度合いが小さい)には、電極を長くするか、あるいは電気分解後の消化液を戻して電気分解処理を繰り返す必要がある。電極を長くすると装置が大型化するという問題があり、電気分解処理を繰り返すと処理時間が長くなるという問題がある。
【0051】
一方で、消化液の希釈度を高くすると、電気分解によるSS等の除去程度は高くなる。したがって、電極を長くする必要はなく、装置を小型化することができる。ただし、消化液の希釈度が高いため、処理しなければならない希釈消化液の量が増加することになり、処理時間を要するということになる。
【0052】
したがって、装置の小型化と処理時間の短縮化に応じて、適切な消化液の希釈度合いを選択することが好ましい。概ね、3〜5倍に希釈することが好ましいと思われる。場合によっては、希釈せずに処理したり、5倍以上(たとえば10倍)に希釈するようにしてもよい。
【0053】
図3Cでは、1つの陽電極6a、1つの陰電極6bのみを示しているが、図2Aに示すように、複数の陽電極6a、陰電極6bを交互に配置している。これにより、各電極の両側に電解を行うための流路を形成して、複数の流路を設けることができ、電極配置の平面的面積に対して効率よく電解を行うことができる。
【0054】
なお、図3Cに示すように、隣接する電極の凹凸の位置を対応するように配置することで(電極配設方向に垂直な方向に水平移動させて凹凸の形状が重なるようにすることで)、隣接する電極の電極配設方向に垂直な方向の距離Dが一定の流路を形成している。ジグザグ形状であるので、電極間の垂直距離Eも一定となり、電解液の流れがスムースである。なお、電極間の距離は一定(並行)であることが好ましいが、一定でなくとも実用可能である。たとえば、上流から下流にかけて徐々に電極間の幅が狭くなるような構造であってもよい。
【0055】
図2に戻って、電気分解された消化液は、電解槽4の下流に設けられたコンベア8に導かれる。電気分解によって消化液中の大部分のSSは除去されるが、残ったSSは消化液の表面に浮遊することになる。コンベア8は、この浮遊しているSSを掬い上げるものである。
【0056】
図5図6に、コンベア8付近の詳細を示す。図5が側断面図、図6が平面図である。図5に示すように、コンベア8は、回転軸84、86の間に布製のベルト82を巻回させて構成されている。図6に示すように、ベルト82の幅は、電解槽4の筐体42の幅とほぼ等しく形成されている。回転軸84は、シール材(図示せず)によって筐体内の消化液が漏れ出さないようにして、筐体42に設けられた軸受(図示せず)により、回転可能に支持されている。回転軸84は、筐体42の外に設けられたモータ(図示せず)によって回転される。
【0057】
回転軸86は、筐体42に設けられた軸受(図示せず)によって回転可能に軸支されている。回転軸84と回転軸86の間には、ベルト82が巻回されているので、回転軸84の回転により、上側のベルト82は、矢印Aの方向に移動することになる。
【0058】
図5に示すように、ベルト82の上流側は消化液5に沈められている。したがって、流れ込んできたSSは、ベルト82によって掬い上げられる。そして、矢印Aの方向に移送され、コンベア8の先端部(回転軸86側)にて落下し、SS回収通路6に導かれる。SS回収通路9は、紙面奥側に下がるよう傾斜している。図6に示すように、SS回収通路9に落ちたSSは、SS回収通路9を矢印B方向に移動して、廃棄槽14に導かれる。したがって、廃棄層14には、SSが蓄積されることになる。
【0059】
なお、ベルト82の材質は布としている。これにより、液体である消化液を透過させて、固体であるSS7を掬い上げることを可能にしている。なお、布以外であっても、液体を透過し、固体を捕捉するような材料(網、すのこ、多孔質部材など)を用いることができる。
【0060】
図1に戻って、コンベア8によってSS7の除去された消化液5は、曝気槽12に送られる。曝気槽12では、消化液5の下部からブロア(図示せず)にて酸素を送り込んで消化液5に酸素を供給し、消化液5を浄化する。浄化された消化液5は、濾過槽10に送られる。
【0061】
図7に、濾過槽10の構成を示す。最下部には曝気のための曝気ユニット92が設けられている。この曝気ユニット92に対してブロア(図示せず)から酸素が供給され、曝気が行われる。曝気ユニット92の上には、液中膜ユニット90が設けられている。
【0062】
導入パイプ98によって濾過槽10に導入された消化液5は、濾過槽10内に蓄積される。吸引パイプ96によって液中膜ユニット90の中から吸引が行われる。これにより、吸引パイプ96から、液中膜ユニット90によって濾過された消化液5が吸引される。濾過液は、河川などに放流される。
【0063】
濾過槽10としては、MBR用浸漬膜ユニット(たとえば阿波製紙(株)製)や平膜、逆浸透膜などを用いることができる。
【0064】
2.その他の実施形態
(1)上記実施形態では、図3に示すように、各電極を凹凸形状とし、電極配設方向(上流から下流方向)に垂直な方向に移動させると、各電極の凹凸が重なるような位置に各電極を配置している。凹凸形状であればどのようなものでもよいが、たとえば、図3A図3B図3Cに示すような形状(波形形状など)とすることができる。
【0065】
図3Cに示すようにジグザグ形状とした場合には、このような配置で電極間の垂直距離Eが一定となる。ただし、図3B図3Cのように電極に尖った部分があると、電解が集中し電気分解が均等に行われなくなる可能性がある。そこで、3Aのような形状とすることが好ましい。
【0066】
なお、図3A図3Bの場合には、電極間の垂直距離Eが一定にならず、消化液の流れがスムースでなくなる可能性がある。
【0067】
そこで、図3Aの構造に代えて、図8Aに示すように、円弧部分について、同心円状にすることで電極間の垂直距離Eを一定に(あるいはあまり大きく変化させないように)することができる。ただしこの場合、図8Aに示すように、陰電極6bを二重構造とする必要がある。なお、陽電極6aを二重構造としてもよい。
【0068】
また、図3Bの構造に代えて、図8Bに示すように、凹凸の大きさを変えることにより、電極間の垂直距離Eを一定に(あるいはあまり大きく変化させないように)することができる。この場合も、陽電極6a、陰電極6bのいずれかを二重構造にすればよい。
【0069】
(2)上記実施形態では、電解を行いやすくするために消化液に塩化ナトリウム水を加えている。しかし、塩化ナトリウム水を加えずに電解を行うようにしてもよい。
【0070】
(3)上記実施形態では、電極を凹凸構造としている。しかし、図9に示すように網目構造(あるいは穴あきの板構造)としてもよい。網目を細かくすることにより、実質的な電極表面積を増やして、電解能力を上げることができる。陽電極6a、陰電極6bの双方を網目構造としてもよいし、いずれか一方のみを網目構造とし、他方を板状としてもよい。
【0071】
また、平面的な網目構造としてもよいが、図3図8に示すような凹凸形状としてもよい。
【0072】
(4)電解層6による電解時には、陽電極6aから酸素、陰電極6bから水素が発生する。そこで、図10に示すように、各電極の上にフード52、56を設けて、酸素、水素を収集するようにしてもよい。フード52の側断面図は図11に示すとおりである。フード56も同様の構成である。
【0073】
フード52によって収集された酸素は、収集管54に集められて移送される。同様に、フード56によって収集された水素は、収集管58に集められて移送される。
【0074】
このようにして得られた水素は、たとえば、水素ガスエンジンを駆動させて発電するために用いることができる。得られた電気は、電解槽6の電力として用いることができる。また、水素エンジンの燃料としても使用することができる。得られた酸素は、曝気槽12にて使用する酸素とすることができる。
【0075】
なお、上記では酸素と水素の双方を回収しているが、いずれか一方のみを回収するようにしてもよい。
【0076】
(5)上記実施形態では、掬上手段としてコンベア8を用いるようにしている。しかし、図12に示すような構成としてもよい。長方形の枠17が設けられ、その枠17内に布19(網などでもよい)が張られている。長方形の枠17の四隅には、油圧シリンダ(図示せず)によって上下動する支持棒15が、ユニバーサルジョイントを介して接続されている。したがって、枠17は、油圧シリンダを制御することで上下動させることができる(矢印E、F)。
【0077】
所定時間ごとに、枠17は、矢印Eの方向に移動され、破線で示すような位置まで上がる。この際、布19によってSS7を掬い上げることができる。また、4つの油圧シリンダの上下動を制御し、布19に傾斜を付けて、傾斜した方向に掬い上げたSS7を移動させることができる。
【0078】
(6)上記実施形態では、電気分解した消化液を曝気槽12、濾過槽10を通して排水するようにしている。しかし、浄化が不十分である場合、曝気槽12の後の消化液や濾過槽10の後の消化液を、電解槽4や流量調整槽2の前に戻して、再度電気分解を行うようにしてもよい。
【0079】
(7)上記実施形態では、バイオガスプラントの消化液を難浄化液として処理対象としている。しかし、微生物などによる浄化の困難な液全般(たとえば、生物学的酸素要求量(BOD)または化学的酸素要求量(COD)が1000を超えるような液(特に10000を超える液))について処理対象とすることができる。具体的には、スラリーストアの糞尿、パーラーなどの搾乳施設の排水、人工ミルク工場の排水、水産加工場の排水なども処理対象とすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12