【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるシートトリミング装置は、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)成形後の樹脂成形シートを、ベースに保持されたトムソン刃を用いてカットしシート成形品と繋ぎ枠部とに切り分けるシートトリミング装置において、
前記トムソン刃は、
その刃先が、シート成形品を囲う一続きの円形又は矩形に形成されてベースに保持され、前記刃先のうち少なくとも2箇所に、切り残し部を形成するための凹部が設けられて、
前記凹部の前記刃先は、向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状よりなり、該頂部は、前記シート成形品側に凸、又は前記繋ぎ枠部側に凸に形成されること、
を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の態様により、トムソン刃は向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状に形成された凹部を備えて、樹脂成形シートの切り残し部を形成する。このため、樹脂成形シートに形成された切り残し部は、シート成形品側又は繋ぎ枠部の何れか一方が細くなった形状となる。これは、トムソン刃の刃先形状が凹部において向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状とされているため、凹部の刃先形状は頂部に向かうほど細くなる形状となっているためである。
【0013】
したがって、刃先に形成される凹部の頂部が形成される方向に切り残し部が細くなるため、この切り残し部が細くなった所で切れ易くなり、次工程でノックアウトした際に、狙った位置での切断が実現できる。つまり、トムソン刃の刃先形状をシート成形品側に凸となるように凹部を設けるか、繋ぎ枠部側に凸となるように凹部を設けるか選択することで、切り残し部がシート成形品側か繋ぎ枠部側の何れかで切れるように制御が可能となる。このため、例えばシート成形品側で切り残し部が切れるように制御すれば、シート成形品には凸部が形成されることがない。この結果、例えばエンドユーザーがシート成形品の縁に触れても痛みを感じる様なことはなくなる。
【0014】
(2)(1)に記載の熱成形機において、
前記凹部は、前記頂部で前記刃先が途切れて離間しているものを含むこと、
が好ましい。
【0015】
上記(2)に記載の態様により、(1)に記載のシートトリミング装置と同様の効果が得られる。頂部において2つの円弧が交わる点が形成されず、離間されている場合においても、2つの円弧が徐々に近接するように刃先が形成されていれば、(1)に記載したような切り残し部の一方側を細く形成する効果が得られる。このため、シート成形品側に切り残し部をつけるか繋ぎ枠部側に切り残し部をつけるかの制御が可能となる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載のシートトリミング装置において、
前記トムソン刃に形成される前記凹部が、工具を用いて形成される打痕であること、
が好ましい。
【0017】
上記(3)の態様により、(2)に記載のシートトリミング装置のトムソン刃の加工を工具によって行うため、容易に凹部の形成が可能となる。例えば、平タガネの様な先端の尖った工具を用いて、凸部を形成する場所を打ち打痕を形成する。この時、工具をトムソン刃に当てる方向を変更することで、シート成形品側に切り残し部をつけるか繋ぎ枠部側に切り残し部をつけるかの制御が可能となる。容易な方法で切り残し部を形成できるため、作業効率が良く好ましい。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のシートトリミング装置において、
前記凹部は、前記樹脂成形シートのシート成形品側に向けて凸になるように形成され、前記刃先の前記ベースからの高さが他の部分よりも前記頂部の方が低く形成されていること、
が好ましい。
【0019】
上記(4)の態様により、樹脂成形シートのシート成形品側に向けて凸になるようにトムソン刃に凹部が形成され、その頂部がベース側に低くなることで、繋ぎ枠部側に切り残し部をつけるように制御することが可能である。こうすることで、シート成形品に凹みが形成される結果となる。シート成形品に僅かな凹みが形成され、向かい合う2つ円弧がトムソン刃に形成されていることで、その凹みには角部が形成されず、エンドユーザーが指で触っても引っかかるようなことはなく安全性に優れたシート成形品の提供に資する。
【0020】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様によるシートトリミング方法は、以下のような特徴を有する。
【0021】
(5)成形後の樹脂成形シートをベースに保持されたトムソン刃を用いてカットし、シート成形品と繋ぎ枠部とに切り分けるシートトリミング方法において、
前記トムソン刃は、
その刃先が、シート成形品を囲うように環状に形成されてベース板に保持され、前記刃先のうち少なくとも2箇所に、切り残し部を形成するための凹部が設けられて、
前記凹部の前記刃先は、向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状よりなり、該頂部は、前記シート成形品側に凸、又は前記繋ぎ枠部側に凸に形成されており、
成形後の前記樹脂成形シートに対して前記トムソン刃を前進させることで、前記樹脂成形シートを切断すると共に前記繋ぎ枠部との接続部である前記切り残し部を形成すること、
を特徴とする。
【0022】
(6)(1)に記載の熱成形機において、
前記凹部は、前記頂部で前記刃先が途切れて離間しているものを含むこと、
が好ましい。
【0023】
上記(5)又は(6)の態様により、(1)に記載の発明と同様の効果が得られるシートトリミング方法を提供できる。即ち、トムソン刃の刃先形状をシート成形品側に凸となるように凹部を設けるか、繋ぎ枠部側に凸となるように凹部を設けるか選択することが可能なシートトリミング方法の提供を行うことができることで、例えばシート成形品側で切り残し部が切れるように制御すれば、シート成形品には凸部が形成されることがない。この結果、例えばエンドユーザーがシート成形品の縁に触れても痛みを感じる様なことはなくなる。
【0024】
(7)(5)又は(6)に記載のシートトリミング方法において、
前記凹部は、前記樹脂成形シートのシート成形品側に向けて凸になるように形成され、前記刃先の前記ベースからの高さが他の部分よりも前記頂部の方が低く形成されていること、
が好ましい。
【0025】
上記(7)の態様により、(4)に記載の発明と同様の効果が得られるシートトリミング方法を提供できる。即ち、シート成形品側に僅かな凹みが形成され、向かい合う2つ円弧がトムソン刃に形成されていることで、その凹みには角部が形成されず、エンドユーザーが指で触っても引っかかるようなことはなく安全性に優れたシート成形品の提供が可能なシートトリミング方法を提供できる。
【0026】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様によるシート成形品は、以下のような特徴を有する。
【0027】
(8)(7)のシートトリミング方法を用いて製造したシート成形品において、
前記トムソン刃で切り離された外縁部と、該外縁部と接続して立設して形成される側部を有し、
前記外縁部の外周の一部に、複数の切り欠き部が形成され、
該切り欠き部は、前記凹部の形状が転写されて形成されていること、
を特徴とする。
【0028】
上記(8)の態様により、シート成形品の外苑部の外周に、切り残し部に起因する凸部ができないため、例えば、エンドユーザーが縁に触れても痛みを感じる様なことはないシート成形品の提供が可能となる。