特許第6986798号(P6986798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6986798シートトリミング装置、シートトリミング方法、及びシート成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6986798
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】シートトリミング装置、シートトリミング方法、及びシート成形品
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/40 20060101AFI20211213BHJP
   B26F 1/44 20060101ALI20211213BHJP
   B29C 51/26 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B26F1/40 B
   B26F1/44 B
   B29C51/26
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-99838(P2021-99838)
(22)【出願日】2021年6月16日
【審査請求日】2021年7月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 紳悟
(72)【発明者】
【氏名】横井 広良
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−020325(JP,A)
【文献】 特開2008−044650(JP,A)
【文献】 特開2012−224065(JP,A)
【文献】 特開2001−088208(JP,A)
【文献】 特開2018−187810(JP,A)
【文献】 特開2018−187811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/40 − 1/44
B26D 7/18
B29C 51/26
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形後の樹脂成形シートを、ベースに保持されたトムソン刃を用いてカットしシート成形品と繋ぎ枠部とに切り分けるシートトリミング装置において、
前記トムソン刃は、
その刃先が、シート成形品を囲うように環状に形成されてベース板に保持され、前記刃先のうち少なくとも2箇所に、切り残し部を形成するための凹部が設けられて、
前記凹部の前記刃先は、向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状よりなり、該頂部は、前記シート成形品側に凸、又は前記繋ぎ枠部側に凸に形成され
前記トムソン刃に形成される前記凹部が、工具を用いて形成される打痕であり、
前記凹部は、前記樹脂成形シートのシート成形品側に向けて凸になるように形成され、前記刃先の前記ベースからの高さが他の部分よりも前記頂部の方が低く形成されていることで、
前記シート成形品に僅かな凹みが形成され、該凹みに角部が形成されず、エンドユーザーが指で触れても引っかかることがないこと、
を特徴とするシートトリミング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートトリミング装置において、
前記凹部は、前記頂部で前記刃先が途切れて離間しているものを含むこと、
を特徴とするシートトリミング装置。
【請求項3】
成形後の樹脂成形シートをベースに保持されたトムソン刃を用いてカットし、シート成形品と繋ぎ枠部とに切り分けるシートトリミング方法において、
前記トムソン刃は、
その刃先が、成形品を囲うように環状に形成されてベース板に保持され、前記刃先のうち少なくとも2箇所に、切り残し部を形成するための凹部が工具を用いて打痕として形成され
前記凹部の前記刃先は、向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状よりなり、該頂部は、前記成形品側に凸、又は前記繋ぎ枠部側に凸に形成されており、
成形後の前記樹脂成形シートに対して前記トムソン刃を前進させることで、前記樹脂成形シートを切断すると共に前記繋ぎ枠部との接続部である前記切り残し部を形成し、
前記凹部は、前記樹脂成形シートの成形品側に向けて凸になるように形成され、前記刃先の前記ベースからの高さが他の部分よりも前記頂部の方が低く形成されることで、
前記シート成形品に僅かな凹みが形成され、該凹みに角部が形成されず、エンドユーザーが指で触れても引っかかることがないこと、
を特徴とするシートトリミング方法。
【請求項4】
請求項に記載のシートトリミング方法において、
前記凹部は、前記頂部で前記刃先が途切れて離間しているものを含むこと、
を特徴とするシートトリミング方法。
【請求項5】
請求項のシートトリミング方法を用いて製造したシート成形品において、
前記トムソン刃で切り離された外縁部と、該外縁部と接続して立設して形成される側部を有し、
前記外縁部の外周の一部に、複数の切り欠き部が形成され、
該切り欠き部は、前記凹部の形状が転写されて形成されていること、
を特徴とするシート成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機で整形した樹脂成形シートをトリミングする技術に関して、詳しくはトムソン刃を用いたトリミングにあたって切り残し部分をコントロールする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シート成形品は、例えば、食材の包装容器や食品トレーとして広く使用される。このようなシート成形品は、熱成形機とシートトリミング装置を用いて製造され、熱成形機を用いて樹脂成形シートの成形し、トリミングをする場合にはトムソン刃を使って打ち抜く方法が知られている。
【0003】
シートトリミング装置は、整形された樹脂成形シートをトリミングするにあたって、トムソン刃を用いてシート成形品の周囲を切断し、シート成形品と繋ぎ枠部とが切り残し部によって繋がった状態とし、その後の打ち抜き工程でシート成形品だけを切り離す。この時、繋ぎ枠部は長尺のシート状のままになっているため、スクラップ回収部で巻き取られて回収される。この時、切り落とし部分の付け方が問題となる。
【0004】
特許文献1には、真空成型方法及び装置に関する技術が開示されている。特許文献1に記載の真空成形装置は、加熱工程と真空成形工程とトリミング工程とノックアウト工程を備えており、加熱工程で加熱されたシートを真空成形工程で成形し、トリミング工程でトムソン刃を使ってカットし、ノックアウト工程でシート成形品が取り出される。このうちトリミング工程では、個々のシート成形品の輪郭形状に対応する環状に形成されたトムソン刃が基板に固着されたものを打ち抜きカッターとして使用している。この打ち抜きカッターを用いることで、シートは一部切り残した状態でシート成形品を切断するものである。
【0005】
特許文献2には、打ち抜き部、プラスチックシート成形装置に関する技術が開示されている。真空成形若しくは圧空整形された熱可塑性プラスチックシートの切断刃であるトムソン刃と、トムソン刃を受けるカウンタープレートを備えた打ち抜き部であって、カウンタープレートに所定の溝を設けることで、プラスチックシートを一部切り残した状態で打ち抜くことができる打ち抜き部を有したプラスチックシート成形装置によって、シート成形品と繋ぎ枠部(特許文献2ではスケルトンと称している)を繋ぐ切り残し部の形状を、高品質化、最小化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−88208号公報
【特許文献2】特開2006−240053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、切り残し部についての制御が難しい点が課題となる。切り残し部は、シート成形品と繋ぎ枠部とを接続する部位で、その後の工程にて切り離されることになる。ただし、従来はノックアウト工程によって切り残し部において引き千切ることでシート成形品と繋ぎ枠部とを分離するような加工を行う為、切り残し部がシート成形品側に付いていくのか繋ぎ枠部側に付いていくのかを制御することができないという課題があった。
【0008】
シート成形品側に切り残し部がついてくる場合には、切り残し部が突起となってシート成形品に残る。そうすると、シート成形品にフィルムをかける場合にはフィルムを破損したり、エンドユーザーがシート成形品の端面を触った時に、突起となった切り残し部に触れて痛みを感じたりといったことが考えられる。したがって、切り残し部が繋ぎ枠部側に付いていくようなトリミング方法が求められていた。
【0009】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、樹脂成形シートを成形してトリミングするにあたって、切り残し部の位置制御を簡易に行うことが可能なシートトリミング装置、シートトリミング方法、及びシート成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるシートトリミング装置は、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)成形後の樹脂成形シートを、ベースに保持されたトムソン刃を用いてカットしシート成形品と繋ぎ枠部とに切り分けるシートトリミング装置において、
前記トムソン刃は、
その刃先が、シート成形品を囲う一続きの円形又は矩形に形成されてベースに保持され、前記刃先のうち少なくとも2箇所に、切り残し部を形成するための凹部が設けられて、
前記凹部の前記刃先は、向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状よりなり、該頂部は、前記シート成形品側に凸、又は前記繋ぎ枠部側に凸に形成されること、
を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の態様により、トムソン刃は向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状に形成された凹部を備えて、樹脂成形シートの切り残し部を形成する。このため、樹脂成形シートに形成された切り残し部は、シート成形品側又は繋ぎ枠部の何れか一方が細くなった形状となる。これは、トムソン刃の刃先形状が凹部において向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状とされているため、凹部の刃先形状は頂部に向かうほど細くなる形状となっているためである。
【0013】
したがって、刃先に形成される凹部の頂部が形成される方向に切り残し部が細くなるため、この切り残し部が細くなった所で切れ易くなり、次工程でノックアウトした際に、狙った位置での切断が実現できる。つまり、トムソン刃の刃先形状をシート成形品側に凸となるように凹部を設けるか、繋ぎ枠部側に凸となるように凹部を設けるか選択することで、切り残し部がシート成形品側か繋ぎ枠部側の何れかで切れるように制御が可能となる。このため、例えばシート成形品側で切り残し部が切れるように制御すれば、シート成形品には凸部が形成されることがない。この結果、例えばエンドユーザーがシート成形品の縁に触れても痛みを感じる様なことはなくなる。
【0014】
(2)(1)に記載の熱成形機において、
前記凹部は、前記頂部で前記刃先が途切れて離間しているものを含むこと、
が好ましい。
【0015】
上記(2)に記載の態様により、(1)に記載のシートトリミング装置と同様の効果が得られる。頂部において2つの円弧が交わる点が形成されず、離間されている場合においても、2つの円弧が徐々に近接するように刃先が形成されていれば、(1)に記載したような切り残し部の一方側を細く形成する効果が得られる。このため、シート成形品側に切り残し部をつけるか繋ぎ枠部側に切り残し部をつけるかの制御が可能となる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載のシートトリミング装置において、
前記トムソン刃に形成される前記凹部が、工具を用いて形成される打痕であること、
が好ましい。
【0017】
上記(3)の態様により、(2)に記載のシートトリミング装置のトムソン刃の加工を工具によって行うため、容易に凹部の形成が可能となる。例えば、平タガネの様な先端の尖った工具を用いて、凸部を形成する場所を打ち打痕を形成する。この時、工具をトムソン刃に当てる方向を変更することで、シート成形品側に切り残し部をつけるか繋ぎ枠部側に切り残し部をつけるかの制御が可能となる。容易な方法で切り残し部を形成できるため、作業効率が良く好ましい。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のシートトリミング装置において、
前記凹部は、前記樹脂成形シートのシート成形品側に向けて凸になるように形成され、前記刃先の前記ベースからの高さが他の部分よりも前記頂部の方が低く形成されていること、
が好ましい。
【0019】
上記(4)の態様により、樹脂成形シートのシート成形品側に向けて凸になるようにトムソン刃に凹部が形成され、その頂部がベース側に低くなることで、繋ぎ枠部側に切り残し部をつけるように制御することが可能である。こうすることで、シート成形品に凹みが形成される結果となる。シート成形品に僅かな凹みが形成され、向かい合う2つ円弧がトムソン刃に形成されていることで、その凹みには角部が形成されず、エンドユーザーが指で触っても引っかかるようなことはなく安全性に優れたシート成形品の提供に資する。
【0020】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様によるシートトリミング方法は、以下のような特徴を有する。
【0021】
(5)成形後の樹脂成形シートをベースに保持されたトムソン刃を用いてカットし、シート成形品と繋ぎ枠部とに切り分けるシートトリミング方法において、
前記トムソン刃は、
その刃先が、シート成形品を囲うように環状に形成されてベース板に保持され、前記刃先のうち少なくとも2箇所に、切り残し部を形成するための凹部が設けられて、
前記凹部の前記刃先は、向かい合う2つの円弧が組み合わされて頂部を有した形状よりなり、該頂部は、前記シート成形品側に凸、又は前記繋ぎ枠部側に凸に形成されており、
成形後の前記樹脂成形シートに対して前記トムソン刃を前進させることで、前記樹脂成形シートを切断すると共に前記繋ぎ枠部との接続部である前記切り残し部を形成すること、
を特徴とする。
【0022】
(6)(1)に記載の熱成形機において、
前記凹部は、前記頂部で前記刃先が途切れて離間しているものを含むこと、
が好ましい。
【0023】
上記(5)又は(6)の態様により、(1)に記載の発明と同様の効果が得られるシートトリミング方法を提供できる。即ち、トムソン刃の刃先形状をシート成形品側に凸となるように凹部を設けるか、繋ぎ枠部側に凸となるように凹部を設けるか選択することが可能なシートトリミング方法の提供を行うことができることで、例えばシート成形品側で切り残し部が切れるように制御すれば、シート成形品には凸部が形成されることがない。この結果、例えばエンドユーザーがシート成形品の縁に触れても痛みを感じる様なことはなくなる。
【0024】
(7)(5)又は(6)に記載のシートトリミング方法において、
前記凹部は、前記樹脂成形シートのシート成形品側に向けて凸になるように形成され、前記刃先の前記ベースからの高さが他の部分よりも前記頂部の方が低く形成されていること、
が好ましい。
【0025】
上記(7)の態様により、(4)に記載の発明と同様の効果が得られるシートトリミング方法を提供できる。即ち、シート成形品側に僅かな凹みが形成され、向かい合う2つ円弧がトムソン刃に形成されていることで、その凹みには角部が形成されず、エンドユーザーが指で触っても引っかかるようなことはなく安全性に優れたシート成形品の提供が可能なシートトリミング方法を提供できる。
【0026】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様によるシート成形品は、以下のような特徴を有する。
【0027】
(8)(7)のシートトリミング方法を用いて製造したシート成形品において、
前記トムソン刃で切り離された外縁部と、該外縁部と接続して立設して形成される側部を有し、
前記外縁部の外周の一部に、複数の切り欠き部が形成され、
該切り欠き部は、前記凹部の形状が転写されて形成されていること、
を特徴とする。
【0028】
上記(8)の態様により、シート成形品の外苑部の外周に、切り残し部に起因する凸部ができないため、例えば、エンドユーザーが縁に触れても痛みを感じる様なことはないシート成形品の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態の、シートトリミング装置の全体に関する側面図である。
図2】本実施形態の、シートトリミング装置の送出ラインより下側部分を示す平面図である。
図3】本実施形態の、切断刃の平面図である。
図4】本実施形態の、切断刃に打痕部が形成された様子を示す斜視図である。
図5】(a)本実施形態の、切断は打痕部を形成する様子を斜視図である。(b)本実施形態の、シートトリミング装置で加工されたシート成形品を示す平面図である。(c)本実施形態の、シート成形品の短辺部分の拡大図である。
図6】本実施形態の、半成形品に対し非切断部位を残して成形品要部の周囲部を部分的に切断した様子を示す模式図である。
図7】本実施形態の、成形品要部の拡大図である。
図8】本実施形態の、非切断部位の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、本発明に係るシートトリミング装置100が用いられる熱成形工程の概略について説明をする。シート成形品の製造にあたっては、長尺状の樹脂成形シートを用いて、加熱成形工程にて加熱成形して半成形品を得る。次に、トリミング工程において半成形品をトリミングしてシート成形品を得る。本発明に係るシートトリミング装置100は、トリミング工程にて用いられる装置である。
【0031】
加熱成形工程では、シート捲回ロールより断続的に供給される長尺状の樹脂成形シートに対し加熱を行い、金型によりシート面内の一部を成形した状態の半成形品を断続的に製造する。その次工程であるトリミング工程では、シート加熱成形装置から送出される半成形品に対し、シートトリミング装置によって成形品要部の周囲にある不要部のトリミングを行う。そして、製品払い出し工程にて成形品要部を取り出してシート成形品(製品)を得る。
【0032】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。まず、上述のような流れで成形されるシート成形品90の形状に関する概要について説明する。図5は、シートトリミング装置100で加工された成形品を示す側面図である。図5(a)は、シートトリミング装置100で加工されたシート成形品90を示す側面図である。図5(b)は、シートトリミング装置100で加工されたシート成形品90を示す平面図である。図5(c)は、シート成形品90の短辺側外周縁部90csの拡大図である。シート成形品90は、食品向け容器等に用いられるシート成形品である。
【0033】
形状の一例としては、図5に示すような略長方形状の底部90aを緩やかに外側に開くように立設する側部90bで囲み、その側部90b上部には外周縁90cが略四角枠状に形成されている。このシート成形品90の外周縁90cの短辺側外周縁部90csには、4箇所の小さな切り欠き部90dを含んでいる。
【0034】
そして、図5(c)に示すように、切り欠き部90dは2つの円弧がシート成形品90の内側に向けて頂点を結ぶ外周縁90cの縁から凸になるように切り欠かれて形成されており、0.1〜0.2mm程度の深さとしている。この切り欠き部90dはシート成形品90の使用上、特に支障とならない大きさである。なお、必要に応じてこの深さを変更することを妨げない。
【0035】
次に、半成形シート92について簡単に説明する。図6に、シートトリミング装置100のトリム部104で、半成形シート92に対し切り残し部に相当する非切断部位95を残して成形品要部93の周囲の後述する一次切断部位94を切断した様子を示す。半成形シート92は、長尺状のシート91に対して加熱成形がなされ、シート91面内の一部が成形された成形品要部93を複数含む状態のもの指す。したがって、前工程からトリミング工程に渡されシートトリミング装置100に供給される状態のシートは、半成形シート92ということになる。
【0036】
そして、半成形シート92はトリミング工程にて一次切断部位94で切断されることで、複数並べられた成形品要部93と、その周囲に配置される繋ぎ枠部96とが非切断部位95によって繋がった状態とされる。繋ぎ枠部96は梯子状となっており、製品となるシート成形品90を非切断部位95によって保持しており、製品払い出し工程にてシート成形品90が繋ぎ枠部96から切り離された後に巻き取られる。
【0037】
次に、このシートトリミング装置100の概要について説明する。図1は、本実施形態のシートトリミング装置100の全体に関する側面図である。図2は、シートトリミング装置100の送出ラインFLより下側部分を示す平面図である。なお、図1において、図面左右方向左側を、半成形シート92を送出させる送出方向HZ上流側とし、右側を送出方向HZ下流側とする。また、図面上下方向を上下方向VTとする。また、図1の紙面と垂直な方向を幅方向WDとして各方向を定義する。図2以降の各図面に関してもこの定義に準じて説明する。
【0038】
シートトリミング装置100は、図示しないシート加熱成形装置の後工程に設置され、制御部102と、トリム部104と、成形品払出し部105と、成形品搬出部106と、スクラップ回収部107と、搬送部110等よりなる。
【0039】
搬送部110には、送出する半成形シート92を送出ラインFL上に位置決めするガイド部材116を有し、前工程より搬入された半成形シート92を、トリム部104を経て、搬出側にある成形品払出し部105に向けた送出方向HZに送出する機能を有する。そして成形品要部93と切り離された長尺状の繋ぎ枠部96を、スクラップ回収部107まで送出する。繋ぎ枠部96は、スクラップ回収部107にて巻き取られて回収される。
【0040】
制御部102には、記憶部が備えられて、各種サーボモータの動作制御に必要なパラメータ設定値の保存や、各種ユニットの動作・停止に関する設定値や動作制御を行うのに必要なプログラムが記憶されている。そして、制御部102は、トリム部104、成形品払出し部105、スクラップ回収部107、及び搬送部110等の各種動作制御、及びヒータ115の温度制御、及び種々の電気制御を行う。また、制御部102は、サーボモータ(エンコーダ内蔵)の駆動制御に必要なコントローラとサーボドライバを有している。
【0041】
トリム部104には、切断刃122が設けられた上側テーブル121と、下側テーブル123よりなる1次トリムユニット120が供えられている。切断刃122は、略矩形状に変形されてベース板121aに保持されており、ベース板121aが上側テーブル121に固定される。上側テーブル121と下側テーブル123は送出ラインFLを挟んで対向するように配置されている。
【0042】
上側テーブル121と下側テーブル123は、1つのサーボモータの回転に基づきカムとリンクを用いたクランク機構を介して、回転運動を直線運動に変換することにより同期した周期的動作で互いに近接または離間する。上側テーブル121と下側テーブル123が最も近接した状態で、切断刃122の先端は、半成形シート92に押し込まれて一次切断部位94を切断する。詳細については後述する。
【0043】
成形品払出し部105には、昇降ユニット130が設けられ、昇降ユニット130によって成形品要部93を繋ぎ枠部96より切り離し、シート成形品90を成形品搬出部106に送る。
【0044】
図3に、切断刃122の平面図を示す。図4に、切断刃122に打痕部122aが形成された様子を斜視図に示す。切断刃122にはトムソン刃が用いられており、その刃先が突出するようにベース板121aに保持される。図6に示すように半成形シート92をトリム部104にてカットして成形品要部93と繋ぎ枠部96が非切断部位95で繋がった状態にカットする機能を備えている。非切断部位95の形成には、切断刃122の短辺側にそれぞれ2箇所設けられた打痕部122aが寄与している。
【0045】
打痕部122aは、図示しない先端が扁平に尖った形状の工具を用いて形成している。切断刃122は、ベース板121a面に対して直角となるように起立して固定されている。この切断刃122に工具を用いて変形させる。このとき切断刃122の刃先は工具によって変形されてベース板121a側に押し込まれ、図4に示すように他の部分よりも高さhだけ低くなるような形状に変形する。つまり、打痕部122aにおける刃先の高さは、他の部分の刃先高さに比べて、ベース板121a側に近づく方向に低くなっている。
【0046】
そうすると、切断刃122は打痕部122において刃先高さが低くなると共に、切断刃122が塑性変形されて打痕部122aが形成されるために、切断刃122の刃先形状は、打痕部122aの頂部122bより円弧を描いて短辺側の直線部へと接続される。つまり、2つの円弧部122cが向かい合うように形成されることになる。そして、2つの円弧部122cの延長線上に頂部122bが形成される。
【0047】
なお、切断刃122に用いられている材質にもよるが、多くの場合、切断刃122が打痕部122aの部分で千切れてしまう。その場合には、円弧部122cは頂部122bで交点を結ばない形状となるが、打痕部122aの機能には影響がなく、繋がっている場合と同様に非切断部位95の形成を行うことができる。
【0048】
そして、前述した様に成形品払出し部105にて昇降ユニット130を用いて成形品要部93を押すことで、繋ぎ枠部96より成形品要部93が切り離されたシート成形品90を、成形品搬出部106へと移載する。この際に、昇降ユニット130には図示しない吸着部が備えられていて、成形品要部93の底部90aの裏側より吸着して固定し、成形品要部93を下方に移動させる際に、非切断部位95で切り離されてシート成形品90となり、シート成形品90は製品搬送部106に備えるベルトコンベアの上にまで移動させる。そして、繋ぎ枠部96はスクラップ回収部107にて回収される。
【0049】
本実施形態のシートトリミング装置100は、上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0050】
まず、シート91を成形してトリミングするにあたって、非切断部位95の位置制御を簡易に行うことができる。これは、成形後の樹脂成形シートである半成形シート92を、切断刃122を用いてカットするシートトリミング装置100において、切断刃122の一部に、切り残し部に相当する非切断部位95を形成する打痕部122aが設けられ、打痕部122aは、向かい合う2つの円弧部122cが組み合わされた頂部122bを有し、頂部122bで切断刃12の刃先高さが低くなっていること、を特徴とするからである。
【0051】
図7に、半成形シート92における成形品要部93の拡大図を示す。図7図6のB部の拡大図である。図8に、非切断部位95の拡大図を示す。なお、図7及び図8の非切断部位95は、説明のために大きく示している。このような切断刃122を用いることで、トリム部104にて図6に示すような半成形シート92に図7に示すような一次切断部位94が形成される。図7では網掛けして示している一次切断部位94は、切断刃122が半成形シート92に対して当たる部分であり、切断刃122によって切断される。
【0052】
切断刃122に形成された頂部122bは、図4に示すように直線部分の切断刃122に比べて刃先高さが高さh分だけ低くなっている。したがって、切断刃122は送出ラインFL上に送られてきた半成形シート92に挿入された段階で、打痕部122aの部分において切断することができず図7及び図8に示される様な非切断部位95が形成される。そして、切断刃122を図3に示すような形状に、つまり内側に凸になるように、成形品要部93側に凸になるように、打痕部122aを形成しているために、シート成形品90側で非切断部位95は切り離される。
【0053】
より具体的に言うと、図8には非切断部位95の先端側に、切取線96を示している。実際には存在しない線ではあるが、この切取線96部分が非切断部位95のうち最も狭い箇所となる。このため、この部分が一番弱い部分となり、切取線96付近で切断されることになる。そして、シート成形品90の外周縁90cの短辺側外周縁部90csに切り欠き部90dが形成される。これは打痕部122aが凸になる方向に形成される性格がある為、例えば打痕部122aを成形品要部93より遠くなる方向に形成すれば、繋ぎ枠部96側に凹部が形成されシート成形品90側には切り欠き部90dに相当する場所に凸部が形成されることになる。
【0054】
したがって、切断刃122に打痕部122aを形成することで、非切断部位95における切取線96の位置をコントロールできる。よって、シート成形品90側に切り残し部をつけるか繋ぎ枠部96に切り残し部(非切断部位95にあたる)をつけるかの制御が可能となる。
【0055】
そして、切断刃122に打痕部122aを形成するにあたって、打痕部122aには円弧部122cを含んで形成されるため、図5(c)に示す通り、切り欠き部90dには角張った鋭利な部分が形成されず、なめらかな凹部となる。このため、シート成形品90に対してラッピングを行った場合には破れの原因になることがなく、エンドユーザーが直接手で触った際にも引っかかるようなことがなく、安全性に優れたシート成形品90の提供が可能となる。
【0056】
また、切断刃122に打痕部122aを形成することは、工具を用いて容易に行うことができるため、作業効率が良く好ましい。なお、切断刃122に形成された打痕部122aは、前述した様にその頂部122cにおいて塑性変形しきれずに破断する場合でも、頂部122aが繋がっている場合と同様の効果が得られる。
【0057】
以上、本発明に係るシートトリミング装置100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば本実施形態では、シート成形品90の外周縁90cの短辺側外周縁部90csに切り欠き部90dが形成される事例を示したが、短辺側外周縁部90csに凸部が形成されるように切断刃122の打痕部122aを形成することを妨げない。この場合、シート成形品90に切り欠き部90dが形成されないことで、製品強度の低下を防止することが可能である。樹脂の素材によっては短辺側外周縁部90csに凸部が形成された方が有効であると考えられる。
【0058】
また、シート成形品90の外周縁90cに切り欠き部90dを設ける場合でも、その数を必要に応じて増減することを妨げない。また、シート成形品90の形状を図5に例示しているが、バスタブ形状ではなく、ハット状であったり、外周縁90cがもう少し複雑な外周形状をしていたり、シート成形品90の概形を変更することを妨げない。
【0059】
また、シートトリミング装置100に供給される樹脂成形シートは、連続したものではなく所定の長さに加工された板状のものを用いることを妨げない。即ち連続成形ではなく、バッチ処理機の下工程に本実施形態に示したシートトリミング装置100を用いても良く。その場合は、成形品払い出し部105や、成形品搬出部106、スクラップ回収部107等を備えない構成となる場合もある。また、説明の都合で成形品払出し部105は昇降ユニット130を用いて機械的に打ち抜く方法を示したが、連続成形にて成形された半成形シート92を用いる場合であっても、成形品払出し部105を設けずに人手でシート成形品90を切り離すことを妨げない。このように、シートトリミング装置100の構成などを本発明の趣旨に反しない範囲で変更することを妨げない。
【0060】
また、打痕部122aは手作業で打痕部122aを形成する工具の他にも、先端が扁平に尖った治具を備えたシリンダーを用いて切断刃122を押圧することで、切断刃122に打痕部122aに相当する凹部を形成することを妨げない。
【符号の説明】
【0061】
90 シート成形品
92 半成形シート
100 シートトリミング装置
104 トリム部
122 切断刃
122a 打痕部
122b 頂部
122c 円弧部
【要約】
【課題】樹脂成形シートを成形してトリミングするにあたって、切り残し部の位置制御を簡易に行うことが可能なシートトリミング装置の提供。
【解決手段】成形後の樹脂成形シートである半成形シート92を、切断刃122を用いてカットするシートトリミング装置100において、切断刃122の一部に、切り残し部に相当する非切断部位95を形成する打痕部122aが設けられ、打痕部122aは、向かい合う2つの円弧部122cが組み合わされた頂部122bを有し、頂部122bで切断刃12の刃先高さが低くなっている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8