特許第6986811号(P6986811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986811
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】直流電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-537365(P2020-537365)
(86)(22)【出願日】2019年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2019008735
(87)【国際公開番号】WO2020035969
(87)【国際公開日】20200220
【審査請求日】2020年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2018-152697(P2018-152697)
(32)【優先日】2018年8月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-211287(P2018-211287)
(32)【優先日】2018年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392029742
【氏名又は名称】田中 正一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−119171(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/092774(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/053027(WO,A1)
【文献】 特開2012−070514(JP,A)
【文献】 特開2014−072955(JP,A)
【文献】 特開2015−047012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電荷デバイス及び第2電荷デバイスを接続する双方向DCDCコンバータを制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記第1電荷デバイスから前記第2電荷デバイスへ送電する昇圧モード、及び、前記第2電荷デバイスから前記第1電荷デバイスへ送電する降圧モードとをもつ直流電源において、
前記双方向DCDCコンバータは、前記第1電荷デバイスとしての2つのバッテリを直列接続するための直列トランジスタと、前記2つのバッテリを並列接続するための2つの並列トランジスタと、磁気エネルギーを蓄積するためのリアクトルと、前記2つのバッテリを前記第2電荷デバイスに接続する出力トランジスタと、前記リアクトルを放電するための放電ダイオードとを有し、
前記リアクトルは、前記2つの並列トランジスタの一方と前記直列トランジスタとの間に配置され、
前記放電ダイオードは、前記リアクトルと前記直列トランジスタとを接続する接続点に接続されていることを特徴とする直流電源。
【請求項2】
前記第2電荷デバイスは、前記DCDCコンバータの出力電圧を平滑する平滑キャパシタからなる請求項1記載の直流電源。
【請求項3】
前記コントローラは、前記2つのバッテリを並列接続する並列モードと、前記2つのバッテリを直列接続する直列モードと、前記2つのバッテリの合計電圧よりも高い電圧を出力する昇圧モードと、前記並列モード及び前記直列モードの中間電圧を出力する過渡モードと、前記2つのバッテリを直列に充電する降圧モードとをもつ請求項1記載の直流電源。
【請求項4】
前記コントローラは、前記2つのバッテリの一方が不良である時、前記不良のバッテリに接続される前記並列トランジスタ及び前記直列トランジスタのオン動作を禁止する請求項3記載の直流電源。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は双方向DCDCコンバータをもつ直流電源に関し、特に車両用バッテリを含む直流電源に関する。
【背景技術】
【0002】
EVは、高温環境において冷たい空気流によりバッテリを冷却し、低温環境において暖かい空気流によりバッテリを温めるバッテリ温度管理システムをもつ。このバッテリ温度管理システムは、バッテリの電気エネルギー及びEVの内部スペースを消費する。このため、EVバッテリの効率的な使用が要求されている。
【0003】
双方向DCDCコンバータをもつ車両用直流電源が公知である。2つのバッテリの直列接続及び並列接続を切り替えるスイッチドバッテリ装置も公知である。並列接続された2つのバッテリは、直列接続された2つのバッテリと比べて、1/4の等価抵抗値をもつ。その結果、並列接続は、直列接続の半分のバッテリ損失をもつことができる。しかし、スイッチドバッテリ装置は、DCリンク電圧が接続切替により急変するという問題をもつ。
【0004】
特許文献1は図1に示されるリアクトル付きスイッチドバッテリ装置を提案する。直列トランジスタ3はバッテリ1及び2を直列接続する。並列トランジスタ4及び5はバッテリ1及び2を並列接続する。リアクトル7は接続切替によるDCリンク電圧の急変を抑制する。しかし、図1に示されるスイッチドバッテリ装置は、リアクトル7が常に電力損失を発生するという問題をもつ。
【0005】
特許文献2は図2に示されるもう一つのリアクトル付きスイッチドバッテリ装置を提案する。直列トランジスタ3はバッテリ1及び2を直列接続する。並列トランジスタ4及び5はバッテリ1及び2を並列接続する。リアクトル7Aはバッテリ1と直列接続される。リアクトル7Bはバッテリ2と直列接続される。バッテリ1及び2の電圧は、出力トランジスタ6を通じて出力される。
【0006】
図2に示されるリアクトル付きスイッチドバッテリ装置はDCリンク電圧の昇圧動作を実行することができる。その結果、ステータコイルの巻数の増加が可能となる。さらに、インバータ電流及びその抵抗損失を低減することができる。言い換えれば、リアクトル7A及び7Bは、円滑な接続切り替えとDCリンク電圧の昇圧との両方を実現する。しかし、図2に示されるリアクトル付きスイッチドバッテリ装置は、リアクトル7A及び7Bが常に電力損失を発生するという問題をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4353222
【特許文献2】特許5492040
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、バッテリエネルギーを効率的に使用可能な直流電源を提供することである。
【0009】
本発明の1つの様相において、リアクトル付きスイッチドバッテリ装置からなる直流電源は、双方向DCDCコンバータをもつ。この双方向DCDCコンバータは、2つのバッテリを直列接続する直列トランジスタと、2つのバッテリを並列接続する2つの並列トランジスタと、2つのバッテリと直列に接続されるリアクトルと、2つのバッテリ及びリアクトルの電圧の和を出力する出力トランジスタとをもつ。リアクトルは、2つの並列トランジスタの一方と直列トランジスタとの間に配置される。さらに、リアクトルと直列トランジスタとの接続点は、リアクトル放電用のダイオードを通じて2つの並列トランジスタの一方に接続される。
【0010】
これにより、2つのバッテリが並列に接続される並列モードにおいて、バッテリは、リアクトルを経由せずに放電及び充電を実行することができる。直列トランジスタがオフされる時、リアクトルに蓄積された磁気エネルギーを低減するための消磁電流はダイオードを通じて流れる。
【0011】
1つの態様によれば、コントローラは、2つのバッテリを並列接続する並列モードと、2つのバッテリを直列接続する直列モードと、2つのバッテリの合計電圧よりも高い電圧を出力する昇圧モードと、並列モード及び前記直列モードの中間電圧を出力する過渡モードと、2つのバッテリを直列に充電する降圧モードとをもつ。これにより、並列モードにおける電源効率を改善することができ、さらに、モード変更を円滑に実行することができる。
【0012】
もう1つの態様によれば、コントローラは、不良のバッテリに接続される並列トランジスタ及び直列トランジスタのオンを禁止する。これにより、正常なバッテリの放電を継続することができるので、電源の信頼性が改善される。
【0013】
もう1つの態様及び本発明のもう1つの様相によれば、コントローラは、バッテリ温度が低い時、昇圧モード及び降圧モードを交互に実行する。これにより、バッテリを効率よく加熱することができる。その結果、バッテリの内部抵抗が低減され、直流電源の効率が改善される。結局、本発明の直流電源は、電気自動車用バッテリに特に好適である。
【0014】
もう1つの態様によれば、昇圧モード及び降圧モードの交互の実施は、主バッテリと平滑キャパシタとにより実行される。もう1つの好適態様において、昇圧モード及び降圧モードの交互の実施は、主バッテリと補機バッテリとにより実行される。これにより、製造コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は従来の昇圧バッテリ装置の一例を示す配線図である。
図2図2は従来の昇圧バッテリ装置の他例を示す配線図である。
図3図3は本発明の直流電源の実施例を示す配線図である。
図4図4はモータ速度と最大電流とDCリンク電圧との関係例を示す図である。
図5図5は昇圧モードの蓄積モードを示す模式配線図である。
図6図6は昇圧モードの出力モードを示す模式配線図である。
図7図7は過渡モードの蓄積モードを示す模式配線図である。
図8図8は過渡モードの消磁モードを示す模式配線図である。
図9図9は降圧モードの蓄積モードを示す模式配線図である。
図10図10は降圧モードのフリーホィーリングモードを示す模式配線図である。
図11図11はモータモードにおける制御例を示すフローチャートである。
図12図12は1つの変形態様を示す模式配線図である。
図13図13はバッテリ内部加熱動作を説明するための模式配線図である。
図14図14はバッテリ内部加熱動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の直流電源に関する好適な実施例が図3を参照して説明される。電気自動車のトラクションモータを駆動するためのインバータ(図示せず)にDCリンク電圧Vdcを印加するこの直流電源は、バッテリ1、バッテリ2、及び接続切替回路10からなる。バッテリ1及び2の定格電圧は等しい。バッテリ1及び2はそれぞれ、キャパシタを採用することができる。
【0017】
本質的に双方向DCDCコンバータである接続切替回路10は、直列トランジスタ3、並列トランジスタ4及び5、出力トランジスタ6、リアクトル7、及びダイオード8からなる。トランジスタ3-6はそれぞれ、逆並列ダイオードをもつIGBTからなる。この直流電源は、DCリンク電圧Vdcを正電源線11及び負電源線12に印加する。
【0018】
正電源線11は、出力トランジスタ6、バッテリ2、リアクトル7、直列トランジスタ3、及びバッテリ1を通じて負電源線12に接続されている。バッテリ2の負極とリアクトル7との接続点は、並列トランジスタ4を通じて負電源線12に接続されている。出力トランジスタ6とバッテリ2の正極との接続点は並列トランジスタ5を通じてバッテリ1の正極に接続されている。リアクトル7と直列トランジスタ3との接続点はダイオード8のカソード電極に接続されている。ダイオード8のアノード電極は負電源線12に接続されている。
【0019】
接続切替回路10を制御するコントローラ100は、図略のインバータへ電源電流を供給するためのモータモードと、バッテリ1及び2を充電する回生モードとをもつ。モータモードは、並列モード、直列モード、昇圧モード、及び過渡モードをもつ。
【0020】
図4は、最大電源電流Imaxとモータ速度VmとDCリンク電圧Vdcとの間の関係例を示す。モータ速度Vmが速度値V1に達し、かつ、最大電源電流Imaxが第1の所定値を超えたら、並列モード20から直列モード30への切り替えが実行される。モータ速度Vmが速度値V2に達し、かつ、最大電源電流Imaxが第2の所定値を超えたら、直列モード30から昇圧モード40への変更が実行される。過渡モード50は、並列モード20及び直列モード30の切替のための切り替え期間に実行される。第1、第2所定値はそれぞれヒステリシス特性をもつ。
【0021】
並列モード20において、直列トランジスタ3はオフされる。バッテリ1及び2の間の電圧差が所定値より高い時、バッテリ1及び2のうちの高い方が並列トランジスタの逆並列ダイオードを通じて電源電流を供給する。これにより、バッテリ1及び2の間の電圧差は低減される。バッテリ1及び2の電圧がほぼ等しい時、バッテリ1は並列トランジスタ5を通じて電源電流の半分を供給し、バッテリ2は並列トランジスタ4を通じて電源電流の他の半分を供給する。並列モード20によるバッテリ1及び2の放電は、バッテリ1及び2の劣化状態が異なる時に好都合である。低劣化バッテリは、高劣化バッテリをバイパスして放電することができる。
【0022】
直列モード30において、並列トランジスタ4及び5はオフされ、直列トランジスタ3はオンされる。これにより、DCリンク電圧Vdcはバッテリ1及び22の電圧和となる。
【0023】
昇圧モード40において、直列トランジスタ3はオンされ、並列トランジスタ4及び5はPWM制御される。好適には、並列トランジスタ4及び5は同時にオンされ、同時にオフされる。この昇圧モードは、交互に実行される蓄積モード及び出力モードからなる。
【0024】
蓄積モードが図5を参照して説明される。出力トランジスタ6はオフされ、並列トランジスタ4及び5はオンされる。バッテリ1、直列トランジスタ3、リアクトル7、及び並列トランジスタ4を通じて流れる循環電流I1が増加し、リアクトル7は磁気エネルギーを蓄積する。同様に、バッテリ2、並列トランジスタ5、直列トランジスタ3、及びリアクトル7を通じて流れる循環電流I2が増加し、リアクトル7は磁気エネルギーを蓄積する。バッテリ1及び2の間の電圧差が所定値より高い時、バッテリ1及び2のうちの高い方に接続される並列トランジスタだけがオンされる。これにより、バッテリ1及び2の電圧差が低減される。
【0025】
出力モードが図6を参照して説明される。並列トランジスタ4及び5はオフされる。循環電流I1及びI2の和にほぼ等しい電源電流Iが出力トランジスタ6を通じてインバータに供給される。DCリンク電圧Vdcは、バッテリ1、リアクトル7、バッテリ2の電圧和となる。DCリンク電圧Vdcは、並列トランジスタ4及び5のデユーティ比を調整することにより調整される。結局、接続切替回路10は昇圧チョッパ式のDCDCコンバータとして動作する。
【0026】
過渡モード50が図7及び図8を参照して説明される。並列トランジスタ4及び5はオフされ、直列トランジスタ3はPWM制御される。図7は直列トランジスタ3がオンされる蓄積期間を示す。DCリンク電圧Vdcはバッテリ1、リアクトル7、及びバッテリ2の電圧和となる。リアクトル7は、電源電流Iの増加を抑制するために逆起電力を発生する。このため、DCリンク電圧Vdcは、バッテリ1及び2の電圧和より低くなる。
【0027】
図8は直列トランジスタ3がオフされる消磁期間を示す。リアクトル7は、ダイオード8、リアクトル7、バッテリ2、及び出力トランジスタ6を通じて電源電流Iを流す。リアクトル7は、電源電流Iの減少を抑制するために、バッテリ2と同方向の電圧を発生する。このため、DCリンク電圧Vdcは、バッテリ2の電圧よりも高くなる。
【0028】
並列モードから直列モードへの変更が指示される過渡モードにおいて、直列トランジスタ3のオンデユーティ比は0から1に徐々に変更される。これにより、DCリンク電圧Vdcは150Vから300Vへ徐々に変更される。直列モードから並列モードへの変更が指示される過渡モードにおいて、直列トランジスタ3のオンデユーティ比は1から0に徐々に変更される。これにより、DCリンク電圧Vdcは300Vから150Vへ徐々に変更される。好適には、この過渡モードは、数秒未満である。
【0029】
回生モードは、並列モード20、直列モード30、過渡モード50、及び降圧モード60をもつ。回生モードの並列モード20及び直列モード30はモータモードのそれらと本質的に同じである。ただし、回生モードの並列モードが開始される時、バッテリ1及び2の電圧差が検出される。この電圧差が所定値を超える時、より低電圧のバッテリに接続される並列トランジスタだけがオンされる。この電圧差が所定値未満である時、並列トランジスタ4及び5の両方がオンされる。回生モードの過渡モード50も、モータモードの過渡モードと本質的に同じである。けれども、直列トランジスタ3がオフされる消磁期間において、リアクトル7は、トランジスタ3-5の各逆並列ダイオードを通じてバッテリ1及び2を並列に充電する。並列モード20によるバッテリ1及び2の充電は、バッテリ1及び2の劣化状態が異なる時に好都合である。低劣化バッテリは、高劣化バッテリをバイパスして充電されることができる。さらに、降圧モードによる充電は、バッテリ1及び2の劣化状態が異なる時に好都合である。低劣化バッテリを流れるフリーホィーリング電流は、高劣化バッテリを流れるフリーホィーリング電流により高くなる。
【0030】
図9及び図10に示される降圧モード60において、直列トランジスタ3はオンされ、並列トランジスタ4及び5はオフされ、出力トランジスタ6はPWM制御される。直列トランジスタ3の逆並列ダイオードがオンされるため、直列トランジスタ3のオンは省略されることができる。
【0031】
図9は出力トランジスタ6がオンされる蓄積期間を示す。DCリンク電圧Vdcが、バッテリ2、リアクトル7、及びバッテリ1に印加される。バッテリ1及び2が回生電流Irにより直列に充電され、リアクトル7は磁気エネルギーを蓄積する。DCリンク電圧Vdcとバッテリ1及び2の電圧和との差はリアクトル7により吸収される。
【0032】
図10は出力トランジスタ6がオフされるフリーホィーリング期間を示す。リアクトル7はフリーホィーリング電流(I1+I2)を循環させる。リアクトル7、直列トランジスタ3、バッテリ1、及び並列トランジスタ4を通じて流れるフリーホィーリング電流I1はバッテリ1を充電する。リアクトル7、直列トランジスタ3、並列トランジスタ5、及びバッテリ2を通じて流れるフリーホィーリング電流I2は、バッテリ2を充電する。フリーホィーリング電流I1及びI2は、並列トランジスタ4及び5の逆並列ダイオードを通じて流れる。しかし、並列トランジスタ4及び5をオンすることも可能である。結局、接続切替回路10は双方向DCDCコンバータの降圧チョッパ動作を実行する。
【0033】
さらに、接続切替回路10は、バッテリ1及び2の故障対策を実行する。接続切替回路10は、バッテリ1及び2の一方が不良であり、他方が正常である時、不良なバッテリを切り離す。バッテリ1が不良である時、トランジスタ3及び5がオフされ、トランジスタ4がオンされる。同様に、バッテリ2が不良である時、トランジスタ3及び4がオフされ、トランジスタ5がオンされる。結局、接続切替回路10は、正常なバッテリを並列モードにより運転する。これにより、たとえ2つのバッテリ1及び2の一方が故障しても、トラクションモータの駆動を実現することができる。
【0034】
コントローラ100はさらに、バッテリ加熱モードをもつ。一般に、このバッテリ加熱モードは、バッテリ1及び2の温度が所定値未満の場合に実行される。この加熱モードにおいて、昇圧モードと降圧モードが交互に実行される。DCリンク電圧Vdcが第1の所定値に達した時、昇圧モードは終了し、降圧モードが開始される。DCリンク電圧Vdcが第2の所定値に達した時、降圧モードは終了し、昇圧モードが開始される。第1の所定値は、第2の所定値より高い。第1の所定値及び第2の所定値は運転環境に応じて変更されることが好適である。
【0035】
図5及び図6に示される昇圧モードによれば、バッテリ1及び2は放電電流Idを放電する。図9及び図10に示される降圧モードによれば、バッテリ1及び2は充電電流Icにより充電される。結局、バッテリ1及び2はインバータ電流(Id-Ic)を図略のインバータに供給する。これにより、このインバータが要求するインバータ電流(Id-Ic)よりも高い充電電流Ic及び放電電流Idがバッテリ1及び2を通じて流れる。その結果、バッテリ1及び2は充電電流Ic及び放電電流Idにより急速に加熱される。バッテリ1及び2の温度が所定値に達したらこの加熱モードは終了される。
【0036】
図11は、モータモードにおけるコントローラ100の制御動作を示すフローチャートである。まず、直列モードSから並列モードPへの切り替え又は並列モードPから直列モードSへの切り替えのどちらかが指令されたか否かが判定される(S100)。モード切替が指令された時、直列トランジスタ3のPWM制御が実行される(S102)。これにより、DCリンク電圧Vdcは徐々に変更される。
【0037】
次に、バッテリ1及び2の加熱が指令されたか否かが判定される(S104)。加熱が指令された時、昇圧モード及び降圧モードを交互に実施する加熱モードHが実行される。(S106)。これにより、バッテリ1及び2が速やかに加熱される。昇圧モード及び降圧モードは、DCリンク電圧Vdcが所定範囲内に維持される条件で実行されることが好適である。
【0038】
次に、昇圧モードBが指令されたか否かが判定される(S108)。昇圧モードBが指令された時、並列トランジスタ4及び5がPWM制御され、昇圧モードBが実行される(S110)。次に、バッテリ故障が発生したか否かが判定される(S112)。バッテリ故障が発生した時、既述された故障対策が実行される(S114)。
【0039】
リアクトル付きの昇圧バッテリ装置からなるこの実施例の直流電源の利点が説明される。この実施例の直流電源は、図1及び図2に示される従来の直流電源と同様に、直流モードに加えて並列モードをもつ。この並列モードは、バッテリ1及び2の電力損失を低減する。さらに、この実施例の直流電源は、図2に示される従来の直流電源と同様に昇圧モードをもつ。このため、ステータコイルの巻数増加が可能となり、インバータの電力損失を低減することができる。
【0040】
さらに、この実施例の直流電源は、リアクトル7の電力損失が並列モードにおいてゼロとなるという優れた利点をもつ。低速高トルク領域において、並列モードは大電流をインバータに供給する。並列モードは、電気自動車やハイブリッド車の走行時間の大部分を占める。したがって、この実施例の直流電源は、改善された効率をもち、リアクトル7の冷却機構も簡単となる。さらに、この実施例によれば、バッテリ故障に関する信頼性が改善される。
【0041】
さらに、この実施例の直流電源は、低温時に昇圧モード及び降圧モードを交互に実行する加熱モードをもつ。これにより、冷たいバッテリ1及び2を速やかに加熱することができる。バッテリの内部抵抗値は低温下において高い。したがって、バッテリ損失はバッテリ温度が低い時に増加する。この実施例によれば、バッテリ1及び2を外部の電気ヒーターにより加熱する必要が無い。
【0042】
この実施例の直流電源は、トランジスタ3-6を必要とする。しかし、トランジスタ3-5は出力トランジスタ6と比べて相対的に低電圧タイプを採用する事ができる。このため、トランジスタ3-5は低いオン抵抗をもつことができる。これは、トランジスタ3-5の電力損失及び製造コストを低減できることを意味する。ダイオード8は非常に短い過渡期間においてのみ使用されるため、小型のダイオードを採用することができる。
【0043】
図12は、図3に示される直流電源の1つの変形態様を示す。図12は、図3と比べて異なる位置にリアクトル7及びダイオード8をもつ。リアクトル7は、直列トランジスタ3とバッテリ1の正極とを接続する。ダイオード8は、リアクトル7と直列トランジスタ3との接続点をバッテリ2の正極に接続する。図12に示される直流電源は、図4に示される直流電源と本質的に同じ動作をもつ。
【0044】
もう1つの実施形態が図13及び図14を参照して説明される。厳冬季に屋外駐車されたEVのバッテリは極低温となり、バッテリ損失が増加される。インバータの平滑キャパシタと主バッテリとの間で充電及び放電を繰り返す既述のバッテリ加熱方式は、小容量の平滑キャパシタ故にバッテリ1及び2を十分に保温できない可能性をもつ。この問題は、EVの主バッテリと補機バッテリとの間の交互充放電により解決される。補機バッテリを使用するこのバッテリ加熱方式は、従来のEVバッテリシステムにおいても採用されることができる。
【0045】
図13において、定格電圧12Vをもつ補機バッテリ500は、絶縁型双方向DCDCコンバータ400を通じてバッテリ1及び2と接続されている。コンバータ400は、バッテリ1及び2と補機バッテリ500との間で直流電力を授受する。もう1つの双方向DCDCコンバータである接続切替回路10は、バッテリ1及び2と平滑キャパシタ200とを接続している。この平滑キャパシタ200は図略の3相インバータの一対の直流入力端に接続されている。接続切替回路10は、バッテリ1及び2と平滑キャパシタ200との間で直流電力を授受する。
【0046】
図14は、図13に示されるバッテリ加熱システムを制御するバッテリ加熱ルーチンを示すフローチャートである。まず、平滑キャパシタ200の使用によるバッテリ加熱が要求されたか否かが判定され(S200)、Yesであれば、トランジスタ3-5がオンされる蓄積モード(S202)とトランジスタ4-5がオフされる昇圧モード(S204)が順次実行される。これにより、平滑キャパシタ200が充電される。次に、トランジスタ6がオンされる蓄積モード(S206)と、トランジスタ6がオフされるフリーホィーリングモード(S208)が順次実行される。これにより、バッテリ1及び2が加熱される。
【0047】
次に、補機バッテリ500の使用によるバッテリ加熱が要求されたか否かが判定され(S210)、Yesであれば、補機バッテリ500を充電する充電動作(S212)と、補機バッテリを放電する放電動作(S214)とが順次実行される。これにより、バッテリ1及び2が加熱される。さらに、補機バッテリ500が加熱される。次に、バッテリ1及び2の温度Tbが所定しきい値Tthより高いか否かが判定され、Yesであればルーチンが終了され、Noであればこのルーチンが再び実行される。
【0048】
既述されたバッテリ加熱モードは冬季の早朝に実行されることが好適である。コントローラは、学習した過去の運転開始時刻から計算れた予想運転開始時刻の30分前に開始される。これにより、無駄な電力消費を減らすことができる。
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図14