(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。なお、図を構成する同じ要素のハッチングを異なる図面間で適宜省略または変更する場合もある。
【0027】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものとする。
【0028】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0029】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に接続されていない場合であり、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
【0030】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【0031】
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅または電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。なお、XとYとが機能的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとYとが電気的に接続されている場合とを含むものとする。
【0032】
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とが、本明細書等に開示されているものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同様な内容が、本明細書等に開示されているものとする。
【0033】
なお、例えば、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1を介して(又は介さず)、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2を介して(又は介さず)、Yと電気的に接続されている場合や、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1の一部と直接的に接続され、Z1の別の一部がXと直接的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2の一部と直接的に接続され、Z2の別の一部がYと直接的に接続されている場合では、以下のように表現することが出来る。
【0034】
例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に接続されている。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている」と表現することができる。または、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。
【0035】
または、別の表現方法として、例えば、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の接続経路を介して、Xと電気的に接続され、上記第1の接続経路は、第2の接続経路を有しておらず、上記第2の接続経路は、トランジスタを介した、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とトランジスタのドレイン(又は第2の端子など)との間の経路であり、上記第1の接続経路は、Z1を介した経路であり、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路を介して、Yと電気的に接続され、上記第3の接続経路は、上記第2の接続経路を有しておらず、上記第3の接続経路は、Z2を介した経路である。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の接続経路によって、Z1を介して、Xと電気的に接続され、上記第1の接続経路は、第2の接続経路を有しておらず、上記第2の接続経路は、トランジスタを介した接続経路を有し、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路によって、Z2を介して、Yと電気的に接続され、上記第3の接続経路は、上記第2の接続経路を有していない。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の電気的パスによって、Z1を介して、Xと電気的に接続され、上記第1の電気的パスは、第2の電気的パスを有しておらず、上記第2の電気的パスは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)からトランジスタのドレイン(又は第2の端子など)への電気的パスであり、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の電気的パスによって、Z2を介して、Yと電気的に接続され、上記第3の電気的パスは、第4の電気的パスを有しておらず、上記第4の電気的パスは、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)からトランジスタのソース(又は第1の端子など)への電気的パスである。」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続経路について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。
【0036】
なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X、Y、Z1、Z2は、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0037】
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0038】
<図面を説明する記載に関する付記>
本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0039】
また、「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上又は直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0040】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0041】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
【0042】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、説明の便宜上任意の大きさに示したものである。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は明確性を期すために模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0043】
また、図面において、上面図(平面図、レイアウト図ともいう)や斜視図などにおいて、図面の明確性を期すために、一部の構成要素の記載を省略している場合がある。
【0044】
また、「同一」とは、同一の面積を有してよいし、同一の形状を有してもよい。また、製造工程の関係上、完全に同一の形状とならないことも想定されるので、略同一であっても同一であると言い換えることができる。
【0045】
<言い換え可能な記載に関する付記>
本明細書等において、トランジスタの接続関係を説明する際、ソースとドレインとの一方を、「ソース又はドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)と表記し、ソースとドレインとの他方を「ソース又はドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)と表記している。これは、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造又は動作条件等によって変わるためである。なおトランジスタのソースとドレインの呼称については、ソース(ドレイン)端子や、ソース(ドレイン)電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0046】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0047】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域又はドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域又はソース電極)の間にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すことができるものである。
【0048】
ここで、ソースとドレインとは、トランジスタの構造又は動作条件等によって変わるため、いずれがソース又はドレインであるかを限定することが困難である。そこで、ソースとして機能する部分、及びドレインとして機能する部分を、ソース又はドレインと呼ばず、ソースとドレインとの一方を第1電極と表記し、ソースとドレインとの他方を第2電極と表記する場合がある。
【0049】
なお本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0050】
また、本明細書等では、表示パネルの基板に、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)もしくはTCP(Tape Carrier Package)などが取り付けられたもの、または基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されものを、表示装置と呼ぶ場合がある。
【0051】
また、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0052】
<語句の定義に関する付記>
以下では、本明細書等における語句の定義について説明する。
【0053】
<接続について>
本明細書において、AとBとが接続されている、とは、AとBとが直接接続されているものの他、電気的に接続されているものを含むものとする。ここで、AとBとが電気的に接続されているとは、AとBとの間で、何らかの電気的作用を有する対象物が存在するとき、AとBとの電気信号の授受を可能とするものをいう。
【0054】
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)、および/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことが出来る。
【0055】
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
【0056】
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)、および/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることが出来る。
【0057】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置と、その製造方法について図面を用いて説明する。
【0058】
<トランジスタ10の構造>
図1(A)、
図1(B)、
図1(C)は、本発明の一態様のトランジスタ10の上面図および断面図である。
図1(A)は上面図であり、
図1(B)は
図1(A)に示す一点鎖線A1−A2間、
図1(C)は
図1(A)に示すA3−A4間の断面図である。なお、
図1(A)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示している。また、一点鎖線A1−A2方向をチャネル長方向、一点鎖線A3−A4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0059】
トランジスタ10は、基板100と、絶縁層110と、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123と、低抵抗領域125と、低抵抗領域127と、ゲート絶縁層150と、ゲート電極層160と、側壁絶縁層176と、絶縁層180と、導電層190と、導電層195と、を有する。
【0060】
絶縁層110は、基板100上に設けられる。
【0061】
酸化物絶縁層121は、絶縁層110上に設けられる。
【0062】
酸化物半導体層122は、酸化物絶縁層121上に設けられる。
【0063】
酸化物絶縁層123は、絶縁層110、および酸化物半導体層122上に設けられる。また、酸化物絶縁層123は、酸化物半導体層122の側面と接する領域を有してもよい。これにより、酸化物半導体層122の側端部を保護することができ、トランジスタの電気特性を安定化させることができる。
【0064】
酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、低抵抗領域125、低抵抗領域127を有する。低抵抗領域125は、水素、窒素、フッ素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ボロン、リンのいずれか一以上を有する。また、低抵抗領域127は、低抵抗領域125に示す材料の他、チタン、モリブデン、タングステン、クロム、バナジウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウムのいずれか一以上を有する。低抵抗領域125、低抵抗領域127は、ソース、またはドレインとしての機能を有する。
【0065】
また、低抵抗領域127において、上記に示した材料と酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123は、合金を形成する場合もある。合金を形成することで、抵抗を下げることができる。
【0066】
酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123における低抵抗領域125、および低抵抗領域127は、酸化物導電層ということができる。
【0067】
なお、低抵抗領域125、または低抵抗領域127のいずれか一方は有しない構造としてもよい。
【0068】
酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123において、ゲート電極層160に重なるチャネル領域を第1領域、側壁絶縁層176に重なる領域を第2領域、ゲート電極層160、側壁絶縁層176が重ならない領域を第3領域とする。この場合、低抵抗領域125は、第2領域、第3領域に設けることができる。低抵抗領域127は、第3領域に設けることができる。なお、低抵抗領域125が第1領域に広がる場合もあるし、低抵抗領域127が第2領域に広がる場合もある。当該第2領域は、当該第3領域と比較した場合、LDD(Lightly Doped Drain)領域ということができる。また、低抵抗領域125、および低抵抗領域127は、酸化物絶縁層121に亘る場合もある。
【0069】
また、上記において、第2領域は、第1領域に比して抵抗の低い領域を有し、第3領域は、第2領域に比して抵抗の低い領域を有するということができる。抵抗は、抵抗値測定(例えばシート抵抗)や、不純物濃度により表現することができる。
【0070】
また、第3の領域において、上述した元素の濃度が1×10
18atoms/cm
3以上、1×10
22atoms/cm
3以下である領域を有する。
【0071】
ゲート絶縁層150は、酸化物絶縁層123上に設けられる。
【0072】
ゲート電極層160は、ゲート絶縁層150上に設けられる。なお、ゲート電極層160と、ゲート絶縁層150と、酸化物絶縁層123と、酸化物半導体層122は、重畳して設けられる。
【0073】
側壁絶縁層176は、酸化物絶縁層123上に設けられ、ゲート絶縁層150、ゲート電極層160の側面と接する領域を有する。
【0074】
絶縁層180は、酸化物絶縁層123上に設けられる。
【0075】
導電層190は、低抵抗領域125、または低抵抗領域127上に設けられる。導電層190と、低抵抗領域125または、低抵抗領域127は、電気的に接続する領域を有する。
【0076】
導電層195は、導電層190上に設けられる。
【0077】
上記構造とすることで、ゲート―ソース間、またはゲートドレイン間の寄生容量を小さくすることができる。その結果、トランジスタ10の遮断周波数特性が向上するなど、トランジスタの高速動作が可能となる。
【0078】
また、トランジスタ10は、セルフアラインでゲート、ソース、ドレインを形成することができるため、位置合わせ精度が緩和され、微細なトランジスタを容易に作製することが可能となる。
【0079】
また、トランジスタ10は、
図1(C)A3−A4断面図に示すように、チャネル幅方向において、ゲート電極層160はゲート絶縁層150を介して、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123の側面と対向する領域を有する。即ち、ゲート電極層160に電圧が印加されると、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123は、チャネル幅方向においてゲート電極層160の電界で囲まれる。ゲート電極層160の電界で半導体が囲まれるトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。また、S−channel構造において、酸化物半導体層122の下面は、ゲート電極層160の下面よりも高い位置に設けられる。
【0080】
ここで、酸化物絶縁層121と、酸化物半導体層122と、酸化物絶縁層123を合わせて酸化物とした場合、トランジスタ10において、オン状態では酸化物半導体層122の全体(バルク)にチャネルが形成されるため、オン電流が増大する。一方、オフ状態の場合、酸化物半導体層122に形成されるチャネル領域の全領域を空乏化するため、オフ電流をさらに小さくすることができる。
【0081】
<酸化物絶縁層について>
なお、酸化物絶縁層(例えば酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123)とは、基本的に絶縁性を有し、ゲート電界又はドレイン電界が強くなった場合に半導体との界面近傍において電流が流れることのできる層をいう。
【0082】
<チャネル長について>
なお、トランジスタにおけるチャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0083】
<チャネル幅について>
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0084】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0085】
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0086】
<SCWについて>
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが重なる領域における見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、値を決定することができる。
【0087】
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
【0088】
<微細化における特性向上>
半導体装置を高集積化するにはトランジスタの微細化が必須である。一方、トランジスタの微細化によりトランジスタの電気特性が悪化することが知られており、チャネル幅が縮小するとオン電流が低下する。
【0089】
例えば、
図1に示す本発明の一態様のトランジスタでは、前述したように、チャネルが形成される酸化物半導体層122を覆うように酸化物絶縁層123が形成されており、チャネル形成領域とゲート絶縁層が接しない構成となっている。そのため、チャネル形成領域とゲート絶縁層との界面で生じるキャリアの散乱を抑えることができ、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。
【0090】
また、本発明の一態様のトランジスタでは、チャネルとなる酸化物半導体層122のチャネル幅方向を電気的に取り囲むようにゲート電極層160が形成されているため、酸化物半導体層122に対しては垂直方向からのゲート電界に加えて、側面方向からのゲート電界が印加される。さらに、酸化物半導体層122の下面は、ゲート電極層160の下面よりも高い位置しており、酸化物半導体層122の下面にもゲート電界が印加される。すなわち、酸化物半導体層122の全体にゲート電界が印加されることとなり、電流は酸化物半導体層122全体に流れるようになるため、さらにオン電流を高められる。
【0091】
また、本発明の一態様のトランジスタは、酸化物絶縁層123を酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122上に形成することで界面準位を形成しにくくする効果や、酸化物半導体層122を中間に位置する層とすることで上下からの不純物混入の影響を排除できる効果などを併せて有する。そのため、上述したトランジスタのオン電流の向上に加えて、しきい値電圧の安定化や、S値(サブスレッショルド値)を小さくすることができる。したがって、Icut(ゲート電圧VGが0V時の電流)を下げることができ、消費電力を低減させることができる。また、トランジスタのしきい値電圧が安定化することから、半導体装置の長期信頼性を向上させることができる。
【0092】
また、本発明の一態様のトランジスタは、チャネルとなる酸化物半導体層122のチャネル幅方向を電気的に取り囲むようにゲート電極層160が形成されているため、酸化物半導体層122に対しては垂直方向からのゲート電界に加えて、側面方向からのゲート電界が印加される。すなわち、酸化物半導体層122の全体にゲート電界が印加されることとなり、ドレイン電界の影響を抑えることができ、ショートチャネル効果を大幅に抑制することができる。したがって、微細化した場合においても、良好な特性を得ることができる。
【0093】
また、本発明の一態様のトランジスタは、チャネルとなる酸化物半導体層122にワイドバンドギャップの材料を有することにより、ソースードレイン耐圧特性が高く、また様々な温度環境において安定した電気特性を有することができる。
【0094】
なお、本実施の形態において、チャネルなどにおいて、酸化物半導体層などを用いた場合の例を示したが、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。例えば、チャネルやその近傍、ソース領域、ドレイン領域などを、場合によっては、または、状況に応じて、シリコン(歪シリコン含む)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウムガリウムヒ素、インジウムリン、窒化ガリウム、有機半導体、などを有する材料で形成してもよい。
【0095】
<トランジスタの各構成>
以下に本実施の形態のトランジスタの各構成について示す。
【0096】
《基板100》
基板100には、例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンからなる単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムからなる化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを用いてもよい。基板100は、単なる支持材料に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。この場合、トランジスタのゲート、ソース、ドレインのいずれか一以上は、上記の他のデバイスと電気的に接続されていてもよい。
【0097】
また、基板100として、可撓性基板を用いてもよい。なお、可撓性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可撓性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可撓性基板である基板100に転置する方法もある。その場合には、非可撓性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。なお、基板100として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。また、基板100が伸縮性を有してもよい。また、基板100は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板100の厚さは、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下とする。基板100を薄くすると、半導体装置を軽量化することができる。また、基板100を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板100上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
【0098】
可撓性基板である基板100としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。可撓性基板である基板100は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可撓性基板である基板100としては、例えば、線膨張率が1×10
−3/K以下、5×10
−5/K以下、または1×10
−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板である基板100として好適である。
【0099】
《絶縁層110》
絶縁層110は、シリコン(Si)、窒素(N)、酸素(O)、フッ素(F)、水素(H)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)およびタンタル(Ta)を一種以上含む絶縁膜を用いることができる。
【0100】
絶縁層110は、基板100からの不純物の拡散を防止する役割を有するほか、酸化物半導体層122に酸素を供給する役割を担うことができる。したがって、絶縁層110は酸素を含む絶縁膜であることが好ましく、化学量論組成よりも多い酸素を含む絶縁膜であることがより好ましい。例えば、TDS法にて、酸素原子に換算しての酸素放出量が1.0×10
19atoms/cm
3以上である膜とする。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。また、上述のように基板100が他のデバイスが形成された基板である場合、絶縁層110は、層間絶縁膜としての機能も有する。その場合は、表面が平坦になるようにCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等で平坦化処理を行うことが好ましい。
【0101】
また、絶縁層110において、フッ素を有することにより、当該絶縁層中からガス化したフッ素が酸化物半導体層122の酸素欠損を安定化させることができる。
【0102】
《酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123》
酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123は、In若しくはZnを含む酸化物半導体膜であり、代表的には、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−Mg酸化物、Zn−Mg酸化物、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Sn、Zr、La、Ce、Mg、Hf、またはNd)がある。
【0103】
酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123として用いることのできる酸化物は、少なくともインジウム(In)もしくは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。また、該酸化物を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に、スタビライザーを含むことが好ましい。
【0104】
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザーとしては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等がある。
【0105】
酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123中のインジウムやガリウムなどの含有量は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)や、X線電子分光法(XPS)、ICP質量分析(ICP−MS)で比較できる。
【0106】
酸化物半導体層122は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上であるため、トランジスタ10のオフ電流を低減することができる。
【0107】
酸化物半導体層122の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0108】
なお、酸化物半導体層122の厚さは、酸化物絶縁層121と比較して、薄く形成してもよいし、同じとしてもよいし、厚く形成してもよい。たとえば、酸化物半導体層122を厚くした場合、トランジスタのオン電流を高めることができる。また、酸化物絶縁層121は、酸化物半導体層122の界面準位の生成を抑制する効果が失われない程度の厚さであればよい。例えば、酸化物半導体層122の厚さは、酸化物絶縁層121の厚さに対して、1倍よりも大きく、または2倍以上、または4倍以上、または6倍以上とすることができる。また、トランジスタのオン電流を高める必要のない場合には、酸化物絶縁層121の厚さを酸化物半導体層122の厚さ以上としてもよい。
【0109】
酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123、それぞれの組成が異なる場合、界面は、走査型透過電子顕微鏡STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)を用いて観察することができる場合がある。
【0110】
また、酸化物半導体層122は、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123よりもInの含有量を多くするとよい。酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率を多くすることにより、より多くのs軌道が重なるため、InがMよりも多い組成となる酸化物はInがMと同等または少ない組成となる酸化物と比較して移動度が高くなる。そのため、酸化物半導体層122にInの含有量が多い酸化物を用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。
【0111】
また、酸化物半導体層122がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Sn、Zr、La、Ce、Mg、Hf、またはNd)の場合、例えば酸化物半導体層122をスパッタリング法により成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x2:y2:z2とすると、x2/(x2+y2+z2)は、1/3以上とすることが好ましい。また、x2/y2は、1/3以上10以下、さらには1以上6以下であって、z2/y2は、1/3以上10以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。これにより、酸化物半導体層122としてCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜が形成されやすくなる。当該ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、1:1:1.2、2:1:1.5、2:1:2.3、2:1:3、3:1:2、4:2:3、4:2:4.1、5:1:7等がある。
【0112】
酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123として、スタビライザーとしての機能を有するAl、Ti、Ga、Y、Sn、Zr、La、Ce、Mg、Hf、またはNdを、Inより高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある。(1)酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123のエネルギーギャップを大きくする。(2)酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123の電子親和力を小さくする。(3)外部からの不純物を遮蔽する。(4)酸化物半導体層122と比較して、絶縁性が高くなる。(5)Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、Hf、またはNdは、酸素との結合力が強い金属元素であるため、Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、Hf、またはNdをInより高い原子数比で有することで、酸素欠損が生じにくくなる。
【0113】
酸化物半導体層122と比較して酸素欠損の生じにくい酸化物膜を酸化物半導体層122の上下に接して設けることで、酸化物半導体層122における酸素欠損を低減することができる。また、酸化物半導体層122は、酸化物半導体層122を構成する金属元素の一以上を有する酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123と接するため、酸化物絶縁層121と酸化物半導体層122との界面、酸化物半導体層122と酸化物絶縁層123との界面における界面準位密度が極めて低い。そのため、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123、ゲート絶縁層150、絶縁層110、または絶縁層180に酸素を添加した後、加熱処理を行うことで該酸素が酸化物絶縁層121および酸化物絶縁層123を経由して酸化物半導体層122へ酸素が移動するが、このときに界面準位において酸素が捕獲されにくく、効率よく酸化物絶縁層121または酸化物絶縁層123に含まれる酸素を酸化物半導体層122へ移動させることが可能である。この結果、酸化物半導体層122に含まれる酸素欠損を低減することが可能である。また、酸化物絶縁層121または酸化物絶縁層123にも酸素が添加されるため、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123の酸素欠損を低減することが可能である。即ち、少なくとも酸化物半導体層122の局在準位密度を低減することができる。
【0114】
また、酸化物半導体層122が、構成元素の異なる絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜を含むゲート絶縁層)と接する場合、界面準位が形成され、該界面準位はチャネルを形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしながら、酸化物半導体層122を構成する金属元素を一種以上含む酸化物絶縁層121および酸化物絶縁層123が酸化物半導体層122と接するため、酸化物絶縁層121と酸化物半導体層122の界面、および酸化物絶縁層123と酸化物半導体層122の界面に界面準位を形成しにくくなる。
【0115】
本実施の形態においては、酸化物半導体層122の酸素欠損量、さらには酸化物半導体層122に接する酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123の酸素欠損量を低減することが可能であり、酸化物半導体層122の局在準位密度を低減することができる。この結果、本実施の形態に示すトランジスタ10は、しきい値電圧の変動が少なく、信頼性が高い特性を有することができる。また、本実施の形態に示すトランジスタ10は優れた電気特性を有する。
【0116】
また、ゲート絶縁層150と酸化物半導体層122が接して、その界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。しかしながら、酸化物半導体層122を構成する金属元素を一種以上含む酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123が酸化物半導体層122に接して設けられるため、酸化物半導体層122と酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123との界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
【0117】
酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123は、代表的には、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−Mg酸化物、Ga−Zn酸化物、Zn−Mg酸化物、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Sn、Zr、La、Ce、Mg、Hf、またはNd)であり、且つ酸化物半導体層122よりも伝導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123の伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体層122の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.2eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。即ち、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123の電子親和力と、酸化物半導体層122との電子親和力との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.2eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギー準位との差を示す。
【0118】
また、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Sn、Zr、La、Ce、Mg、Hf、またはNd)の場合、酸化物半導体層122と比較して、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123に含まれるM(Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、Hf、またはNd)の原子数比が高く、前述のMで表した元素はインジウムよりも酸素と強く結合するため、酸素欠損が酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123に生じることを抑制する機能を有する。即ち、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123は酸化物半導体層122よりも酸素欠損が生じにくい酸化物半導体膜である。
【0119】
また、酸化物絶縁層121がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Sn、Zr、La、Ce、Mg、Hf、またはNd)の場合、酸化物絶縁層121をスパッタリング法により成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1<z1/y1であって、z1/y1は、0.1以上6以下、さらには0.2以上3以下であることが好ましい。
【0120】
また、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123は、酸化物半導体層122と比較して絶縁性が高いため、ゲート絶縁層と同様の機能を有することができる。
【0121】
また、酸化物絶縁層123は、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ガリウム(GaOx)、酸化ハフニウム(HfOx)、酸化シリコン(SiOx)、酸化ゲルマニウム(GeOx)、または酸化ジルコニア(ZrOx)に置き換えることもできるし、酸化物絶縁層123上に当該金属酸化物を有することもできる。
【0122】
また、酸化物絶縁層123は、酸化物半導体層122の界面準位の生成を抑制する効果が失われない程度の厚さであればよい。例えば、酸化物絶縁層121と同等またはそれ以下の厚さとすればよい。酸化物絶縁層123が厚いと、ゲート電極層160による電界が酸化物半導体層122に届きにくくなる恐れがあるため、酸化物絶縁層123は薄く形成することが好ましい。例えば、酸化物絶縁層123は酸化物半導体層122の厚さよりも薄くすればよい。なお、これに限られず、酸化物絶縁層123の厚さはゲート絶縁層150の耐圧を考慮して、トランジスタを駆動させる電圧に応じて適宜設定すればよい。
【0123】
例えば、酸化物絶縁層123の厚さは、1nm以上20nm以下、または3nm以上10nm以下とすることが好ましい。
【0124】
また、酸化物絶縁層123がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Sn、Zr、La、Ce、Mg、Hf、またはNd)の場合、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123をスパッタリング法により成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x3:y3:z3とすると、x3/y3<x2/y2であって、z3/y3は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z3/y3を1以上6以下とすることで、酸化物絶縁層123としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。当該ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:3:8、1:4:4、1:4:5、1:4:6、1:4:7、1:4:8、1:5:5、1:5:6、1:5:7、1:5:8、1:6:8、1:6:4、1:9:6等がある。なお、原子数比はこれらに限られず、必要とする半導体特性に応じて適切な原子数比のものを用いればよい。
【0125】
また、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123の原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含むことがある。
【0126】
例えば、酸化物半導体層122となる酸化物半導体膜を成膜する場合、成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1を用いて成膜すると、酸化物半導体膜の金属元素の原子数比はIn:Ga:Zn=1:1:0.6程度となり、亜鉛の原子数比が同一あるいは低下する場合がある。したがって、原子数比を記載した場合には、該原子数比の近傍を包含する。
【0127】
<水素濃度について>
酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が含まれている酸化物半導体層を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
【0128】
このため、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面において、酸素欠損と共に、水素ができる限り低減されていることが好ましい。例えば、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面において二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度は、1×10
16atoms/cm
3以上2×10
20atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上5×10
19atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上1×10
19atoms/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上5×10
18atoms/cm
3以下とすることが望ましい。この結果、トランジスタ10は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有することができる。
【0129】
<炭素、シリコン濃度について>
また、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123において酸素欠損が増加し、n型領域が形成されてしまうことがある。このため、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面におけるシリコン、および炭素濃度は、低減することが望ましい。例えば、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面においてSIMSにより得られるシリコンや炭素の濃度は、1×10
16atoms/cm
3以上1×10
19atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上5×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上2×10
18atoms/cm
3以下とすることが望ましい。この結果、トランジスタ10は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性を有することができる。
【0130】
<アルカリ金属およびアルカリ土類金属の濃度について>
また、アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面におけるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。たとえば、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面において、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
16atoms/cm
3以下とすることが望ましい。これにより、トランジスタ10は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性を有することができる。
【0131】
<窒素濃度について>
また、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型領域が形成されてしまうことがある。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体層を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123およびそれぞれの界面において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびそれぞれの界面においてSIMSにより得られる窒素濃度は、1×10
15atoms/cm
3以上5×10
19atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上5×10
17atoms/cm
3以下にすることが好ましい。これにより、トランジスタ10は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性を有することができる。
【0132】
ただし、酸化物半導体層122中に余剰の亜鉛を有する場合には、この限りではない。余剰の亜鉛は、酸化物半導体層122中に酸素欠損を形成する恐れがある。そのため、余剰亜鉛を有する場合には、酸化物半導体層122中に0.001乃至3atomic%の窒素を有することにより、余剰亜鉛に起因した酸素欠損を不活化することができる場合がある。したがって、当該窒素によりトランジスタの特性バラつきが解消され、信頼性を向上させることができる。
【0133】
<キャリア密度について>
酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123の不純物を低減することで、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123のキャリア密度を低減することができる。このため、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、キャリア密度が1×10
15/cm
3以下、好ましくは1×10
13/cm
3以下、さらに好ましくは8×10
11/cm
3未満、より好ましくは1×10
11/cm
3未満、最も好ましくは1×10
10/cm
3未満であり、1×10
−9/cm
3以上とする。
【0134】
上述より、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性、または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である当該酸化物は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、当該酸化物にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性になりやすい。また、高純度真性または実質的に高純度真性である当該酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である当該酸化物は、オフ電流が著しく小さく、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10
−13A以下という特性を得ることができる。従って、当該酸化物にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなることができる。
【0135】
また、上述のように高純度化された酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタのオフ電流は極めて小さい。例えば、ソースとドレインとの間の電圧を0.1V、5V、または、10V程度とした場合に、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流を数yA/μm乃至数zA/μmにまで低減することが可能となる。
【0136】
また、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC−OS、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0137】
また、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば微結晶構造でもよい。微結晶構造の酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば、1nm以上10nm未満のサイズの微結晶を膜中に含むことがある。または、微結晶構造の酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば、非晶質相に1nm以上10nm未満の結晶部を有する混相構造である。
【0138】
酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0139】
また、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123が、CAAC−OS、微結晶構造、および非晶質構造の二以上の構造の領域を有する混合膜であってもよい。混合膜として、例えば、非晶質構造の領域と、微結晶構造の領域と、CAAC−OSの領域と、を有する単層構造がある。または、混合膜として、例えば、非晶質構造の領域と、微結晶構造の領域と、CAAC−OSの領域と、の積層構造がある。
【0140】
なお、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123は、例えば、単結晶構造を有してもよい。
【0141】
また、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123は、それぞれ絶縁層110、ゲート絶縁層150の構成元素が酸化物半導体層122へ混入して、不純物による準位が形成されることを抑制するためのバリア膜としても機能する。
【0142】
例えば、絶縁層110、またはゲート絶縁層150として、シリコンを含む絶縁膜を用いる場合、ゲート絶縁層150中のシリコン、または絶縁層110と、ゲート絶縁層150中に混入されうる炭素が、酸化物絶縁層121または酸化物絶縁層123の中へ界面から数nm程度まで混入することがある。シリコン、炭素等の不純物が酸化物半導体層122中に入ると不純物準位を形成し、不純物準位がドナーとなり電子を生成することでn型化することがある。
【0143】
しかしながら、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123の膜厚が、数nmよりも厚ければ、混入したシリコン、炭素等の不純物が酸化物半導体層122にまで到達しないため、不純物準位の影響は低減される。
【0144】
よって、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123を設けることにより、トランジスタの電気特性(しきい値電圧など)のばらつきを低減することができる。
【0145】
したがって、酸化物を酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123の積層構造とすることで、酸化物半導体層122にチャネルを形成することができ、高い電界効果移動度および安定した電気特性を有したトランジスタを形成することができる。
【0146】
なお、酸化物は酸化物絶縁層を含めて必ずしも3層にする必要はなく、単層、2層、4層、さらには5層以上の構成としてもよい。単層とする場合、本実施の形態に示す、酸化物半導体層122に相当する層を用いればよい。
【0147】
<バンド図>
ここで、
図2(A)、
図2(B)を用いて本発明の一態様のトランジスタのバンド図について説明する。
図2(B)に示すバンド図は、理解を容易にするため絶縁層110、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123、およびゲート絶縁層150について、伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)および価電子帯上端のエネルギー準位(Ev)を示している。
【0148】
図2(B)に示すように、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123において、伝導帯下端のエネルギー準位が連続的に変化する。これは、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123を構成する元素が共通することにより、酸素が相互に拡散しやすい点からも理解される。したがって、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123は組成が異なる膜の積層体ではあるが、物性的に連続であるということもできる。
【0149】
主成分を共通として積層された酸化物半導体膜は、各層を単に積層するのではなく連続接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギー準位が各層の間で連続的に変化するU字型の井戸(U Shape Well)構造)が形成されるように作製する。すなわち、各層の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が存在しないように積層構造を形成する。仮に、積層された多層膜の層間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまう。
【0150】
なお、酸化物絶縁層121と、酸化物絶縁層123のEcは、同様である場合について示したが、それぞれが異なっていてもよい。
【0151】
図2(B)より、酸化物半導体層122がウェル(井戸)となり、トランジスタ10において、チャネルが酸化物半導体層122に形成されることがわかる。なお、酸化物半導体層122を底として伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化するU字型の井戸構造のチャネルを埋め込みチャネルということもできる。
【0152】
なお、酸化物絶縁層121および酸化物絶縁層123と、酸化シリコン膜などの絶縁膜との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得る。酸化物絶縁層121および酸化物絶縁層123があることにより、酸化物半導体層122と当該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、酸化物絶縁層121、または酸化物絶縁層123のEcと、酸化物半導体層122のEcとのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体層122の電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。マイナスの電荷となる電子がトラップ準位に捕獲されることで、絶縁膜界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。さらに、トランジスタの長期保存試験において、トラップが固定化されず、電気特性の変動を起こす懸念がある。
【0153】
したがって、トランジスタのしきい値電圧の変動を低減するには、酸化物絶縁層121、および酸化物絶縁層123のEcと、酸化物半導体層122との間にエネルギー差を設けることが必要となる。それぞれの当該エネルギー差は、0.1eV以上が好ましく、0.2eV以上がより好ましい。
【0154】
なお、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123には、結晶部が含まれることが好ましい。特にc軸に配向した結晶を用いることでトランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
【0155】
また、
図2(B)に示すようなバンド図において、酸化物絶縁層123を設けず、酸化物半導体層122とゲート絶縁層150の間にIn−Ga酸化物(たとえば、原子数比がIn:Ga=7:93のIn−Ga酸化物)を設けてもよいし、あるいは酸化ガリウムなどを設けてもよい。また、酸化物絶縁層123が有した状態で酸化物絶縁層123とゲート絶縁層150の間にIn−Ga酸化物を設けてもよいし、あるいは酸化ガリウムなどを設けてもよい。
【0156】
酸化物半導体層122は、酸化物絶縁層121、および酸化物絶縁層123よりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、酸化物半導体層122として、酸化物絶縁層121および酸化物絶縁層123よりも電子親和力が0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.2eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いることができる。
【0157】
本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体層122を構成する金属元素を一種以上含んでいる、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123を有しているため、酸化物絶縁層121と酸化物半導体層122との界面、および酸化物絶縁層123と酸化物半導体層122との界面に界面準位を形成しにくくなる。よって、酸化物絶縁層121、酸化物絶縁層123を設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきや変動を低減することができる。
【0158】
《ゲート絶縁層150》
ゲート絶縁層150には、酸素(O)、窒素(N)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)などを有することができる。例えば、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化マグネシウム(MgOx)、酸化シリコン(SiOx)、酸化窒化シリコン(SiOxNy)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)、窒化シリコン(SiNx)、酸化ガリウム(GaOx)、酸化ゲルマニウム(GeOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ランタン(LaOx)、酸化ネオジム(NdOx)、酸化ハフニウム(HfOx)および酸化タンタル(TaOx)を一種以上有することができる。また、ゲート絶縁層150は上記材料の積層であってもよい。なお、ゲート絶縁層150に、ランタン(La)、窒素、ジルコニウム(Zr)などを、不純物として含んでいてもよい。
【0159】
ゲート絶縁層150は、酸素を多く有することが望ましい。ゲート絶縁層150に含まれた酸素は、熱処理を行うことにより、酸化物絶縁層123を介して、酸化物半導体層122に到達する。これにより、酸化物半導体層122中に存在する酸素欠損(Vo)を低減させることができる。
【0160】
また、ゲート絶縁層150の積層構造の一例について説明する。ゲート絶縁層150は、例えば、酸素、窒素、シリコン、ハフニウムなどを有する。具体的には、酸化ハフニウム、および酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含むと好ましい。
【0161】
酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、ゲート絶縁層150の膜厚を大きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。即ち、オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
【0162】
ところで、結晶構造を有する酸化ハフニウムの被形成面は、欠陥に起因した界面準位を有する場合がある。該界面準位はトラップセンターとして機能する場合がある。そのため、酸化ハフニウムがトランジスタのチャネル領域に近接して配置されるとき、該界面準位によってトランジスタの電気特性が劣化する場合がある。そこで、該界面準位の影響を低減するために、トランジスタのチャネル領域と酸化ハフニウムとの間に、別の膜を配置することによって互いに離間させることが好ましい場合がある。この膜は、緩衝機能を有する。緩衝機能を有する膜は、ゲート絶縁層150に含まれる膜であってもよいし、酸化物半導体膜に含まれる膜であってもよい。即ち、緩衝機能を有する膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化物半導体などを用いることができる。なお、緩衝機能を有する膜には、たとえば、チャネル領域となる半導体よりもエネルギーギャップの大きい半導体または絶縁体を用いる。または、緩衝機能を有する膜には、たとえば、チャネル領域となる半導体よりも電子親和力の小さい半導体または絶縁体を用いる。または、緩衝機能を有する膜には、たとえば、チャネル領域となる半導体よりもイオン化エネルギーの大きい半導体または絶縁体を用いる。
【0163】
一方、上述した結晶構造を有する酸化ハフニウムの被形成面における界面準位(トラップセンター)に電荷をトラップさせることで、トランジスタのしきい値電圧を制御できる場合がある。該電荷を安定して存在させるためには、たとえば、チャネル領域と酸化ハフニウムとの間に、酸化ハフニウムよりもエネルギーギャップの大きい絶縁体を配置すればよい。または、酸化ハフニウムよりも電子親和力の小さい半導体または絶縁体を配置すればよい。または、緩衝機能を有する膜には、酸化ハフニウムよりもイオン化エネルギーの大きい半導体または絶縁体を配置すればよい。このような絶縁体を用いることで、界面準位にトラップされた電荷の放出が起こりにくくなり、長期間に渡って電荷を保持することができる。
【0164】
そのような絶縁体として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコンが挙げられる。ゲート絶縁層150内の界面準位に電荷を捕獲させるためには、酸化物半導体層122からゲート電極層160に向かって電子を移動させればよい。具体的な例としては、高い温度(例えば、125℃以上450℃以下、代表的には150℃以上300℃以下)の下で、ゲート電極層160の電位をソース電極やドレイン電極の電位より高い状態にて1秒以上、代表的には1分以上維持すればよい。
【0165】
このようにゲート絶縁層150などの界面準位に所望の量の電子を捕獲させたトランジスタは、しきい値電圧がプラス側にシフトする。ゲート電極層160の電圧や、電圧を印加する時間を調整することによって、電子を捕獲させる量(しきい値電圧の変動量)を制御することができる。なお、電荷を捕獲させることができれば、ゲート絶縁層150内でなくても構わない。同様の構造を有する積層膜を、他の絶縁層に用いても構わない。
【0166】
《ゲート電極層160》
ゲート電極層160には、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、タンタル(Ta)タングステン(W)、またはシリコン(Si)などの材料を有することができる。また、ゲート電極層160は、積層とすることができる。積層とする場合、例えば上記材料の窒化物など、窒素を含んだ材料と組み合わせて用いてもよい。
【0167】
《側壁絶縁層176》
側壁絶縁層176は、ゲート絶縁層150と同様の材料を有することができる。
【0168】
《絶縁層180》
絶縁層180は、ゲート絶縁層150と同様の材料を有することができる。
【0169】
また、絶縁層180は積層であってもよい。絶縁層180は、化学量論組成よりも多くの酸素を有することが好ましい。絶縁層180から放出される酸素はゲート絶縁層150を経由して酸化物半導体層122のチャネル形成領域に拡散させることができることから、チャネル形成領域に形成された酸素欠損に酸素を補填することができる。したがって、安定したトランジスタの電気特性を得ることができる。
【0170】
《導電層190》
導電層190には、ゲート電極層160と同様の材料を用いることができる。
【0171】
《導電層195》
導電層195には、ゲート電極層160と同様の材料を用いることができる。
【0172】
<トランジスタの作製方法>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について
図5乃至
図15を用いて説明する。なお、上記トランジスタの構成において説明した部分と重複する部分については、省略する。また、
図5乃至
図15に示すA1−A2方向は
図1(A)、
図1(B)に示すチャネル長方向と呼称する場合がある。また、
図5乃至
図15示すA3−A4方向は、
図1(A)および
図1(C)に示すチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0173】
本実施の形態において、トランジスタを構成する各層(絶縁層、酸化物半導体層、導電層等)は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulse Laser Deposion)法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマCVD法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、有機金属化学気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法や原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法を使ってもよい。また、スパッタリング法では、ロングスロー方式とコリメート方式を組み合わせて用いることで、埋め込み性を向上させることができる。
【0174】
<熱CVD法>
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
【0175】
また、熱CVD法では、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行ってもよい。
【0176】
また、MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した金属膜、半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、In−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、およびジメチル亜鉛を用いることができる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CH
3)
3である。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH
3)
3である。また、ジメチル亜鉛の化学式は、Zn(CH
3)
2である。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C
2H
5)
3)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C
2H
5)
2)を用いることもできる。
【0177】
<ALD法>
従来のCVD法を利用した成膜装置は、成膜の際、反応のための原料ガス(プリカーサ)の1種または複数種がチャンバーに同時に供給される。ALD法を利用した成膜装置は、反応のためのプリカーサが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行う。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以上のプリカーサを順番にチャンバーに供給し、複数種のプリカーサが混ざらないように第1のプリカーサの後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2のプリカーサを導入する。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1のプリカーサを排出した後、第2のプリカーサを導入することができる。
【0178】
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)、
図3(D)にALD法の成膜過程を示す。第1のプリカーサ601が基板の表面に吸着して(
図3(A)参照)、第1の単一層が成膜される(
図3(B)参照)。この際、プリカーサ中に含有する金属原子等が基板表面に存在する水酸基と結合することができる。金属原子にはメチル基やエチル基などのアルキル基が結合していてもよい。第1のプリカーサ601を排気した後に導入される第2のプリカーサ602と反応して(
図3(C)参照)、第2の単一層が第1の単一層上に積層されて薄膜が形成される(
図3(D)参照)。例えば、第2のプリカーサとして酸化剤が含まれていた場合には第1のプリカーサ中に存在する金属原子または金属原子と結合したアルキル基と、酸化剤との間で化学反応がおこり、酸化膜を形成することができる。
【0179】
ALD法は表面化学反応に基づいた成膜方法であり、プリカーサが被成膜表面に吸着し、自己停止機構が作用することで、一層形成される。例えば、トリメチルアルミニウムのようなプリカーサと当該被成膜表面に存在する水酸基(OH基)が反応する。この時、熱による表面反応のみが起こるため、プリカーサが当該被成膜表面と接触し、熱エネルギーを介して当該被成膜表面にプリカーサ中の金属原子等が吸着することができる。また、プリカーサは、高い蒸気圧を有し、成膜前の段階では熱的安定であり自己分解しない、基板へ化学吸着が速いなどの特徴を有する。また、プリカーサはガスとして導入されるため、交互に導入されるプリカーサが十分に拡散する時間を有することができれば、高アスペクト比の凹凸を有する領域であっても、被覆性よく成膜することができる。
【0180】
また、ALD法においては、ガス導入順序を制御しつつ、所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能である。また、排気能力を高めることで成膜速度を高めることができ、膜中の不純物濃度をさらに低減することができる。
【0181】
また、ALD法には、熱を用いたALD法(熱ALD法)、プラズマを用いたALD法(プラズマALD法)がある。熱ALD法では、熱エネルギーを用いてプリカーサの反応を行うものであり、プラズマALD法はプリカーサの反応をラジカルの状態で行うものである。
【0182】
ALD法を用いて成膜することで、極めて薄い膜が精度よく成膜できる。また、ALD法を用いて成膜することで、凹凸を有する面に対しても表面被覆率を高めることができる。
【0183】
<プラズマALD>
また、プラズマALD法により成膜することで、熱を用いたALD法(熱ALD法)に比べてさらに低温での成膜が可能となる。プラズマALD法は、例えば、100℃以下でも成膜速度を低下させずに成膜することができる。また、プラズマALD法では、N
2をプラズマによりラジカル化することができるため、酸化物のみならず窒化物を成膜することができる。
【0184】
また、プラズマALD法では、酸化剤の酸化力を高めることができる。これによりALDで膜形成を行う場合に、膜中に残留するプリカーサ、あるいはプリカーサから脱離した有機成分を低減することができ、また膜中の炭素、塩素、水素などを低減することができ、不純物濃度の低い膜を有することができる。
【0185】
また、プラズマALDを行う場合には、ラジカル種を発生させる際、ICP(Inductively Coupled Plasma)などのように基板から離れた状態でプラズマを発生させることもでき、基板あるいは保護膜が形成される膜に対するプラズマダメージを抑えることができる。
【0186】
上記より、プラズマALD法を用いることで、他の成膜方法に比べて、プロセス温度が下げることができ、かつ表面被覆率を高めることができ、当該膜を成膜することができる。これにより、外部からの水、水素の侵入を抑えることができる。したがって、トランジスタ特性の信頼性を向上させることができる。
【0187】
<ALD装置に関する説明>
図4(A)にALD法を利用する成膜装置の一例を示す。ALD法を利用する成膜装置は、成膜室(チャンバー1701)と、原料供給部1711a、原料供給部1711bと、流量制御器である高速バルブ1712a、高速バルブ1712bと、原料導入口1713a、原料導入口1713bと、原料排出口1714と、排気装置1715を有する。チャンバー1701内に設置される原料導入口1713a、原料導入口1713bは供給管やバルブを介して原料供給部1711a、原料供給部1711bとそれぞれ接続されており、原料排出口1714は、排出管やバルブや圧力調整器を介して排気装置1715と接続されている。
【0188】
チャンバー内部にはヒータを備えた基板ホルダ1716があり、その基板ホルダ上に被成膜させる基板1700を配置する。
【0189】
原料供給部1711a、原料供給部1711bでは、気化器や加熱手段などによって固体の原料や液体の原料からプリカーサを形成する。或いは、原料供給部1711a、原料供給部1711bは、気体のプリカーサを供給する構成としてもよい。
【0190】
また、原料供給部1711a、原料供給部1711bを2つ設けている例を示しているが特に限定されず、3つ以上設けてもよい。また、高速バルブ1712a、高速バルブ1712bは時間で精密に制御することができ、プリカーサと不活性ガスのいずれか一方を供給する構成となっている。高速バルブ1712a、高速バルブ1712bはプリカーサの流量制御器であり、且つ、不活性ガスの流量制御器とも言える。
【0191】
図4(A)に示す成膜装置では、基板1700を基板ホルダ1716上に搬入し、チャンバー1701を密閉状態とした後、基板ホルダ1716のヒータ加熱により基板1700を所望の温度(例えば、100℃以上または150℃以上)とし、プリカーサの供給と、排気装置1715による排気と、不活性ガスの供給と、排気装置1715による排気とを繰りかえすことで薄膜を基板表面に形成する。
【0192】
図4(A)に示す成膜装置では、原料供給部1711a、原料供給部1711bに用意する原料(揮発性有機金属化合物など)を適宜選択することにより、ハフニウム、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム等から選択された一種以上の元素を含む酸化物(複合酸化物も含む)を含んで構成される絶縁層を成膜することができる。具体的には、酸化ハフニウムを含んで構成される絶縁層、酸化アルミニウムを含んで構成される絶縁層、ハフニウムシリケートを含んで構成される絶縁層、又はアルミニウムシリケートを含んで構成される絶縁層を成膜することができる。また、原料供給部1711a、原料供給部1711bに用意する原料(揮発性有機金属化合物など)を適宜選択することにより、タングステン層、チタン層などの金属層や、窒化チタン層などの窒化物層などの薄膜を成膜することもできる。
【0193】
例えば、ALD法を利用する成膜装置により酸化ハフニウム層を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させたプリカーサと、酸化剤としてオゾン(O
3)の2種類のガスを用いる。この場合、原料供給部1711aから供給する第1のプリカーサがTDMAHであり、原料供給部1711bから供給する第2のプリカーサがオゾンとなる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CH
3)
2]
4である。また、他の材料としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。なお、窒素は電荷捕獲準位を消失させる機能を有する。したがって、プリカーサが窒素を含むことで、電荷捕獲準位密度の低い酸化ハフニウムを成膜することができる。
【0194】
例えば、ALD法を利用する成膜装置により酸化アルミニウム層を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(TMAなど)を気化させたプリカーサと、酸化剤としてH
2Oの2種類のガスを用いる。この場合、原料供給部1711aから供給する第1のプリカーサがTMAであり、原料供給部1711bから供給する第2のプリカーサがH
2Oとなる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH
3)
3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
【0195】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O
2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
【0196】
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF
6ガスとB
2H
6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF
6ガスとH
2ガスを順次繰り返し導入してタングステン膜を形成する。なお、B
2H
6ガスに代えてSiH
4ガスを用いてもよい。
【0197】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、In(CH
3)
3ガスとO
3ガスを順次繰り返し導入してIn−O層を形成し、その後、Ga(CH
3)
3ガスとO
3ガスを順次繰り返し導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH
3)
2ガスとO
3ガスを順次繰り返し導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn−Ga−O層やIn−Zn−O層、Ga−Zn−O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O
3ガスに変えてAr等の不活性ガスで純水をバブリングして得られたH
2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO
3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH
3)
3ガスに代えて、In(C
2H
5)
3ガスを用いても良い。また、Ga(CH
3)
3ガスにかえて、Ga(C
2H
5)
3ガスを用いても良い。また、Zn(CH
3)
2ガスにかえて、Zn(C
2H
5)
2ガスを用いても良い。
【0198】
《マルチチャンバー製造装置》
また、
図4(A)に示す成膜装置を少なくとも一つ有するマルチチャンバーの製造装置の一例を
図4(B)に示す。
【0199】
図4(B)に示す製造装置は、積層膜を大気に触れることなく連続成膜することができ、不純物の混入防止やスループット向上を図っている。
【0200】
図4(B)に示す製造装置は、ロード室1702、搬送室1720、前処理室1703、成膜室であるチャンバー1701、アンロード室1706を少なくとも有する。なお、製造装置のチャンバー(ロード室、処理室、搬送室、成膜室、アンロード室などを含む)は、水分の付着などを防ぐため、露点が管理された不活性ガス(窒素ガス等)を充填させておくことが好ましく、望ましくは減圧を維持させる。
【0201】
また、チャンバー1704、チャンバー1705は、チャンバー1701と同じALD法を利用する成膜装置としてもよいし、プラズマCVD法を利用する成膜装置としてもよいし、スパッタリング法を利用する成膜装置としてもよいし、MOCVD法を利用する成膜装置としてもよい。
【0202】
例えば、チャンバー1704としてプラズマCVD法を利用する成膜装置とし、チャンバー1705としてMOCVD法を利用する成膜装置とし、積層膜を成膜する一例を以下に示す。
【0203】
図4(B)では搬送室1720の上面図が六角形の例を示しているが、積層膜の層数に応じて、それ以上の多角形としてより多くのチャンバーと連結させた製造装置としてもよい。また、
図4(B)では基板の上面形状を矩形で示しているが、特に限定されない。また、
図4(B)では枚葉式の例を示したが、複数枚の基板に対して一度に成膜するバッチ式の成膜装置としてもよい。
【0204】
<絶縁層110の形成>
まず、基板100上に絶縁層110を成膜する。絶縁層110は、プラズマCVD法、熱CVD法(MOCVD法、ALD法)、またはスパッタリング法等により、形成することが好ましい。
【0205】
なお、絶縁層110を形成する上で、水素を含まない、あるいは水素の含有量が1%以下の材料を用いることで、酸化物半導体中の酸素欠損の発生を抑制することができ、トランジスタの動作を安定させることができる。
【0206】
例えば、絶縁層110としてプラズマCVD法により厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜を用いることができる。
【0207】
次に、第1の加熱処理を行って、絶縁層110に含まれる水、水素等を脱離させてもよい。この結果、絶縁層110に含まれる水、水素等の濃度を低減することが可能であり、加熱処理によって、後に形成される第1の酸化物絶縁膜への水、水素等の拡散量を低減することができる。
【0208】
<第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜の形成>
続いて、絶縁層110上に、酸化物絶縁層121となる第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体層122となる酸化物半導体膜を成膜する。第1の酸化物絶縁膜、および酸化物半導体膜は、スパッタリング法、MOCVD法、PLD法などにより形成することができ、スパッタリング法を用いて形成することがより好ましい。スパッタリング法としては、RFスパッタリング法、DCスパッタリング法、ACスパッタリング法等を用いることができる。また、スパッタリング法において、対向ターゲット方式(対向電極方式、気相スパッタリング方式、VDSP(Vapor Depotion Sputtering)方式ともいう)により作成することにより、成膜時のプラズマダメージを低減することができる。
【0209】
例えば、酸化物半導体膜をスパッタリング法により形成する場合、スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体層122にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべく、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空化(5×10
−7Pa乃至1×10
−4Pa程度まで)できること、かつ、成膜される基板を100℃以上、好ましくは400℃以上に加熱できることが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に炭素成分や水分等を含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。また、ターボ分子ポンプとクライオポンプを組み合わせた排気系を用いてもよい。
【0210】
また、高純度真性の酸化物半導体層を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみならずスパッタリングガスの高純度化することも望ましい。スパッタリングガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0211】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガスおよび酸素の混合ガスを適宜用いることができる。
【0212】
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を20℃以上750℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下、さらに好ましくは200℃以上420℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、CAAC−OS膜を形成することができる。
【0213】
第1の酸化物絶縁膜には、酸化物半導体膜よりも電子親和力が小さくなるような材料を選択することが望ましい。
【0214】
また、第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜において、例えばスパッタリング法により成膜する場合、マルチチャンバー方式のスパッタ装置を用いることで、第1の酸化物絶縁膜と酸化物半導体膜は大気に露出することなく連続成膜することができる。その場合、第1の酸化物絶縁膜と酸化物半導体膜の界面には余計な不純物などが入り込むことを抑えることができ、界面準位密度を低減することができる。この結果として、トランジスタの電気特性、とりわけ信頼性試験において電気特性を安定化させることができる。
【0215】
また、絶縁層110中にダメージがあった場合に、酸化物絶縁層121があることにより主要な電導パスとなる酸化物半導体層122をダメージ部から遠ざけることができ、結果としてトランジスタの電気特性、とりわけ信頼性試験において電気特性を安定化させることができる。
【0216】
例えば、第1の酸化物絶縁膜として、スパッタリング法により、ターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:3:4(原子数比)を用いて厚さ20nm成膜した酸化物絶縁膜を用いることができる。また、酸化物半導体膜としてスパッタリング法により、ターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)を用いて厚さ15nm成膜した酸化物半導体膜を用いることができる。
【0217】
なお、第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜成膜後に第2の加熱処理を行うことにより、第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜の酸素欠損量を低減することができる。
【0218】
第2の加熱処理の温度は、250℃以上基板歪み点未満、好ましくは300℃以上650℃以下、更に好ましくは350℃以上550℃以下とすることが好ましい。
【0219】
また、第2の加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素を含む不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気または乾燥空気(露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下、好ましくは−120℃以下である空気)雰囲気で加熱してもよい。または減圧状態で行えばよい。なお、上記乾燥空気の他、不活性ガスおよび酸素に水素、水などが含まれないことが好ましく、代表的には露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下であることが好ましい。処理時間は3分から24時間とすることが好ましい。
【0220】
なお、加熱処理において、電気炉の代わりに、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、不活性ガスが用いられる。
【0221】
なお、第2の加熱処理は、後述する酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122を形成するエッチングの後に行ってもよい。
【0222】
例えば、窒素雰囲気下において、450℃で1時間の加熱処理を行った後、酸素雰囲気下において、450℃で1時間の加熱処理を行うことができる。
【0223】
以上の工程により、第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜の酸素欠損の低減、また水素、水などの不純物を低減することができる。また、局在準位密度が低減された第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜を形成することができる。
【0224】
なお、酸素を材料とした高密度のプラズマ照射により、加熱処理と同様の効果を得ることができる。照射時間は1分以上3時間以下、好ましくは3分以上2時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下とする。
【0225】
<第1の導電膜の形成>
次に、酸化物半導体膜上にハードマスクとして用いる第1の導電膜を形成する。第1の導電膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法(有機金属化学気相成長(MOCVD)法、メタル化学気相堆積法、原子層成膜(ALD)法あるいはプラズマ化学気相成長(PECVD)法を含む。)、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法等を用いて形成することができる。
【0226】
第1の導電膜の材料は、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ストロンチウム(Sr)などの低抵抗材料からなる単体、もしくは合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。
【0227】
例えば、厚さ20乃至100nmのタングステン膜をスパッタリング法により第1の導電膜として形成することができる。
【0228】
本実施の形態では、ハードマスクとして第1の導電膜を形成しているが、これに限定されず、絶縁膜を形成してもよい。
【0229】
<酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122の形成>
次に、第1の導電膜上にリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成する。レジストマスクを形成する際に、当該レジストマスクを用いて、第1の導電膜を選択的にエッチングし、ハードマスクを形成する。続いて、当該ハードマスク上のレジストを除去後、酸化物半導体膜、第1の酸化物絶縁膜をそれぞれ選択的にエッチングし、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層121を島状に形成する(
図5参照)。なお、エッチング方法としては、ドライエッチング法を用いることができる。
【0230】
例えば、エッチングガスとして、メタンガス、アルゴンガスを用い、レジストマスクおよびハードマスクを用いて第1の酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜を選択的にエッチングすることにより、酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122を形成することができる。酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122の形成後、第1の導電膜は除去する。
【0231】
なお、第1の当該導電膜をハードマスクとして用いて酸化物半導体膜をエッチングすることで、レジストマスクと比べてエッチングした後の酸化物半導体層のエッジラフネスを低減することができる。
【0232】
<酸化物絶縁層123の形成>
次に、酸化物半導体層122、絶縁層110上に酸化物絶縁層123を成膜する(
図6参照)。酸化物絶縁層123は、酸化物半導体膜、第1の酸化物絶縁膜と同様の方法で成膜することができ、酸化物絶縁層123は、酸化物半導体膜よりも電子親和力が小さくなるように材料を選択することができる。なお、酸化物絶縁層123は、レジストマスクや、ゲート電極層160をマスクとして用いて加工してもよい。
【0233】
例えば、酸化物絶縁層123として、スパッタリング法により、In:Ga:Zn=1:3:2(原子数比)のターゲットを用いて厚さ5nm成膜した酸化物半導体膜を用いることができる。
【0234】
<絶縁膜150aの形成>
次に、酸化物絶縁層123、上にゲート絶縁層150となる絶縁膜150aを形成する。絶縁膜150aには、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどを用いることができる。なお、絶縁膜150aは、上記材料の積層であってもよい。絶縁膜150aは、スパッタリング法、CVD法(プラズマCVD法、MOCVD法、ALD法など)、MBE法、などを用いて形成することができる。また、絶縁膜150aは、絶縁層110と同様の方法を適宜用いて形成することができる。
【0235】
例えば、絶縁膜150aとしてプラズマCVD法により酸化窒化シリコンを10nm形成することができる。
【0236】
<導電膜160aの形成>
次に、絶縁膜150a上にゲート電極層160となる導電膜160aを成膜する。(
図7参照)。導電膜160aとしては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、またはこれらを主成分とする合金材料を用いることができる。導電膜160aは、スパッタリング法やCVD法(プラズマCVD法、MOCVD法、ALD法など)、MBE法、蒸着法、めっき法などにより形成することができる。また、導電膜160aとしては、窒素を含んだ導電膜を用いてもよく、上記導電膜と窒素を含んだ導電膜の積層を用いてもよい。
【0237】
例えば、導電膜160aとして、窒化チタンをALD法により厚さ10nm形成し、タングステンをメタルCVD法により厚さ150nm形成した積層構造を用いることができる。
【0238】
<ゲート電極層160、ゲート絶縁層150の形成>
次に、導電膜160a上にリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて、導電膜160aを選択的にエッチングし、ゲート電極層160を形成する。続いて、ゲート電極層160上のレジストを除去後、ゲート電極層160をマスクとして用いて、絶縁膜150aを選択的にエッチングし、ゲート絶縁層150を形成する(
図8参照)。
【0239】
なお、ゲート電極層160、ゲート絶縁層150の形成方法は、上記方法に限定されない。例えば、溝部を設けた後、絶縁膜、導電膜を埋め込むことで形成してもよい。
【0240】
<低抵抗領域125の形成>
次に、ゲート電極層160をマスクとして、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123の第2領域、および第3領域に対してイオン167の添加処理を行う(
図9参照)。添加する材料は、水素(H)、フッ素(F)、ホウ素(B)、リン(P)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)などを用いることができる。添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ浸漬イオン注入法、高密度プラズマ処理法等がある。なお、微細化においては、イオン注入法を用いることで、所定のイオン以外の不純物の添加を抑えることができるので、好ましい。また、イオンドーピング法、プラズマ浸漬イオン注入法は、大面積を処理する場合に優れている。
【0241】
イオン167の添加処理において、イオンの加速電圧は、イオン種と注入深さに応じて調整することが望ましい。例えば、1kV以上100kV以下、3kV以上60kV以下とすることができる。また、イオンのドーズ量は1×10
12ions/cm
2以上1×10
17ions/cm
2以下、好ましくは1×10
13ions/cm
2以上5×10
16ions/cm
2以下とすることが望ましい。
【0242】
当該イオン添加処理により、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123に酸素欠損が形成され、第2領域、第3領域に低抵抗領域125が形成される(
図10参照)。なお、第2領域においては、低抵抗領域125が全面に形成されてもよいし、一部でもよい。なお、酸化物絶縁層123には必ずしも低抵抗領域125が形成されなくてもよい。
【0243】
また、イオン添加処理後に第3の加熱処理を行うことにより、イオン添加処理時に生じた膜の損傷を修復することができる。また、当該加熱処理により、イオン添加された材料を酸化物絶縁層121まで拡散させることができる。
【0244】
<側壁絶縁層176の形成>
続いて、ゲート電極層160上に、側壁絶縁層176となる第1の絶縁膜を形成する。当該第1の絶縁膜に対して、ドライエッチング法によりエッチング処理を行うことにより、ゲート電極層160、ゲート絶縁層150の側面と接する領域を有する側壁絶縁層176を形成する(
図11参照)。
【0245】
<低抵抗領域127の形成>
次に、導電膜168を成膜する(
図12参照)。導電膜168としては、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などの金属材料の他、それらの窒化膜を用いることができる。
【0246】
導電膜168を成膜後、第4の加熱処理を行うことが望ましい。当該加熱処理を行うことで、当該金属原子を酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123に拡散させることでき、低抵抗領域127を形成することができる(
図13参照)。また、低抵抗領域127を形成することで、酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123表面の抵抗(例えばシート抵抗)を下げることができる。
【0247】
また、低抵抗領域127において、当該金属原子と酸化物半導体層122、および酸化物絶縁層123が、合金を形成する場合がある。
【0248】
低抵抗領域127形成後は、導電膜168を除去する。除去方法は、ウェットエッチング法でもよいし、ドライエッチング法でもよい。例えば、アンモニア水と過酸化水素水の混合液により導電膜168を除去することができる。
【0249】
なお、上記方法に限定されず、低抵抗領域127を形成してもよい。例えば、イオン169を添加することで低抵抗領域127を形成することができる(
図14参照)。イオン169としては、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などを用いることが望ましい。
【0250】
また、イオン添加処理後に第4の加熱処理を行うことにより、イオン添加処理時に生じた膜の損傷を修復することができる。また、当該加熱処理により、イオン添加された材料を酸化物絶縁層121まで拡散させることができる。
【0251】
以上により、第2の領域、および第3の領域の抵抗を下げることができ、ソース領域およびドレイン領域を形成することができる。なお、第2領域は、第3領域に比べると、イオン添加した元素や、合金が少ないため、実質的にLDD領域とすることができる。
【0252】
次に、絶縁層180となる第3の絶縁膜を形成する。第3の絶縁膜の形成方法は、絶縁層110と同様とすることができる。第3の絶縁膜を成膜した後、平坦化処理を行うことにより、絶縁層180を形成する。
【0253】
次に、第3の絶縁膜に開口部を設けるためにドライエッチング法によりエッチングを行う。
【0254】
次に、開口部に導電層190となる第2の導電膜を形成した後、平坦化処理を行い、導電層190を形成する。
【0255】
次に、導電層190上に導電層195となる第3の導電膜を形成する。第3の導電膜に対してフォトリソグラフィ法、ナノインプリンティング法などを用いることにより、導電層195を形成する(
図15参照)。
【0256】
上記作製方法を用いることにより、トランジスタ10を形成することができる。上記作製方法を用いることで、チャネル長が100nm以下、30nm以下、さらには20nm以下のきわめて微細なトランジスタを作製することができる。
【0257】
<トランジスタ10の変形例1:トランジスタ11>
図1に示すトランジスタ10と形状の異なるトランジスタ11について、
図16を用いて説明する。
【0258】
図16(A)、
図16(B)、
図16(C)は、トランジスタ11の上面図および断面図である。
図16(A)はトランジスタ11の上面図であり、
図16(B)は、
図16(A)の一点鎖線B1−B2間、
図16(C)は、B3−B4間の断面図である。
【0259】
トランジスタ11は、酸化物絶縁層123がゲート電極層160、ゲート絶縁層150と重畳する部分にのみ設けられている点が、トランジスタ10と異なる。
【0260】
トランジスタ11の構造を有することで、低抵抗領域125、低抵抗領域127の抵抗をより下げることができる。これにより、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0261】
<トランジスタ10の変形例2:トランジスタ12>
図1に示すトランジスタ10と形状の異なるトランジスタ12について、
図17を用いて説明する。
【0262】
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)は、トランジスタ12の上面図および断面図である。
図17(A)はトランジスタ11の上面図であり、
図17(B)は、
図17(A)の一点鎖線C1−C2間、
図17(C)は、C3−C4間の断面図である。
【0263】
トランジスタ12は、導電層165を有している点で、トランジスタ10と異なる。
【0264】
《導電層165》
導電層165には、ゲート電極層160と同様の材料を用いることができる。導電層165は、単層でもよいし、積層でもよい。
【0265】
導電層165は、ゲート電極層160と同様の機能を有することができる。導電層165は、ゲート電極層160と同電位を印加する構成としてもよいし、異なる電位を印加できる構成としてもよい。
【0266】
また、導電層165を設けたトランジスタ12においては、絶縁層110はゲート絶縁層150と同様の構造、および機能を有することができる。
【0267】
トランジスタ12の構造を有することで、トランジスタの電気特性(例えば、しきい値電圧)を制御することができる。
【0268】
<トランジスタ10の変形例3:トランジスタ13>
図1に示すトランジスタ10と形状の異なるトランジスタ13について、
図18を用いて説明する。
【0269】
図18(A)、
図18(B)、
図18(C)は、トランジスタ13の上面図および断面図である。
図18(A)はトランジスタ13の上面図であり、
図18(B)は、
図18(A)の一点鎖線D1−D2間、
図18(C)は、D3−D4間の断面図である。
【0270】
トランジスタ13は、絶縁層170、絶縁層172を有している点が、トランジスタ10と異なる。
【0271】
《絶縁層170》
絶縁層170には、酸素(O)、窒素(N)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)などを有することができる。酸化アルミニウム(AlOx)、酸化マグネシウム(MgOx)、酸化シリコン(SiOx)、酸化窒化シリコン(SiOxNy)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)、窒化シリコン(SiNx)、酸化ガリウム(GaOx)、酸化ゲルマニウム(GeOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ランタン(LaOx)、酸化ネオジム(NdOx)、酸化ハフニウム(HfOx)および酸化タンタル(TaOx)を一種以上有することができる。
【0272】
絶縁層170には、酸化アルミニウム(AlOx)膜を含むことが好ましい。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、および酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果を有することができる。したがって、酸化アルミニウム膜は、トランジスタの作製工程中および作製後において、トランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123への混入防止、主成分材料である酸素の酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123からの放出防止、絶縁層110からの酸素の不必要な放出防止の効果を有する保護膜として用いることに適している。
【0273】
また、絶縁層170は、酸素供給能力を有する膜とすることが好ましい。絶縁層170を成膜時に、他の酸化物層との界面に混合層を形成し、かつ混合層または他の酸化物層に酸素が補填され、その後の加熱処理によって、酸素が酸化物半導体層中に拡散し、酸化物半導体層中の酸素欠損に対して、酸素を補填することができ、トランジスタ特性(例えば、しきい値電圧、信頼性など)を向上させることができる。
【0274】
また、絶縁層170は、単層でもよいし、積層でもよい。また、絶縁層170の上側、あるいは、下側に他の絶縁層を有してもよい。例えば、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。絶縁層170は、化学量論組成よりも多くの酸素を有することが好ましい。絶縁層170から放出される酸素はゲート絶縁層150、あるいは絶縁層110を経由して酸化物半導体層122のチャネル形成領域に拡散させることができることから、チャネル形成領域に形成された酸素欠損に酸素を補填することができる。したがって、安定したトランジスタの電気特性を得ることができる。
【0275】
《絶縁層172》
絶縁層172には、酸素(O)、窒素(N)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)などを有することができる。例えば、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化マグネシウム(MgOx)、酸化シリコン(SiOx)、酸化窒化シリコン(SiOxNy)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)、窒化シリコン(SiNx)、酸化ガリウム(GaOx)、酸化ゲルマニウム(GeOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ランタン(LaOx)、酸化ネオジム(NdOx)、酸化ハフニウム(HfOx)および酸化タンタル(TaOx)を一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、絶縁層172は上記材料の積層であってもよい。
【0276】
絶縁層172には、酸化アルミニウム膜を含むことが好ましい。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、および酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果を有することができる。したがって、酸化アルミニウム膜は、トランジスタの作製工程中および作製後において、トランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123への混入防止、主成分材料である酸素の酸化物絶縁層121、酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123からの放出防止、絶縁層110からの酸素の不必要な放出防止の効果を有する保護膜として用いることに適している。
【0277】
また、絶縁層172は、保護膜としての機能を有することができる。絶縁層172を設けることで、ゲート絶縁層150に対して、プラズマダメージから保護することができる。このことは、チャネル近傍に電子トラップが設けられることを抑えることができる。
【0278】
<トランジスタ13の作製方法>
トランジスタ13の作製方法の一部を、
図19を用いて説明する。なお、トランジスタ10の作製方法と同様の部分については、当該説明を援用する。
【0279】
<絶縁層172の形成>
酸化物絶縁層123、側壁絶縁層176、ゲート電極層160上に絶縁層172を成膜する。絶縁層172は、有機金属化学気相成長(MOCVD)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法で成膜したものを用いることが好ましい。これにより、ゲート絶縁層150の損傷を抑えることができ、またゲート電極層の酸化を抑えることができる。
【0280】
また、絶縁層172の厚さは、1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上10nm以下である。
【0281】
また、絶縁層172を成膜後に酸化物半導体層122、酸化物絶縁層123に対してイオン添加処理を行ってもよい。これにより、低抵抗領域125、低抵抗領域127を形成しつつ、イオン添加処理時の酸化物半導体層122の損傷を低減することができる。
【0282】
また、絶縁層172は成膜後にリソグラフィ法、ナノインプリンティング法、ドライエッチング法などを用いて加工して設けてもよいし、成膜するのみとしてもよい。
【0283】
<絶縁層170の形成>
次に、絶縁層172上に、絶縁層170形成する。絶縁層170は単層としてもよいし、積層としてもよい。絶縁層170は、絶縁層110と同様の材料、方法などを用いて形成することができる。
【0284】
また、絶縁層170は、スパッタリング法により形成した酸化アルミニウム膜とすることが好ましい。スパッタリング法で酸化アルミニウム膜を成膜する際に、成膜時に使用するガスとして、酸素ガスを有することが望ましい。また、酸素ガスは1体積%以上100体積%以下、好ましくは4体積%以上100体積%以下、さらに好ましくは10体積%以上100体積%以下有することが望ましい。酸素を1体積%以上とすることで、当該絶縁層中、あるいは接する絶縁層に対して余剰酸素を供給することができる。また、当該層に接した層に対して酸素を添加することができる。
【0285】
例えば、絶縁層170として、酸化アルミニウムをターゲットに用いて、スパッタリング時に用いるガスとして、酸素ガスを50体積%含有させて成膜を行い、厚さは20nm乃至40nmとすることができる。
【0286】
次に、加熱処理を行うことが好ましい。当該加熱処理は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上500℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とすることができる。当該加熱処理により、絶縁層(例えば絶縁層110)に添加された酸素173が拡散し、酸化物半導体層122まで移動し、酸化物半導体層122中に存在する酸素欠損に対して酸素を補填することができる(
図19参照)。
【0287】
例えば、酸素雰囲気下で、400℃1時間の加熱処理を行うことができる。
【0288】
なお、当該加熱処理は、その他の工程においても、随時行ってもよい。加熱処理を行うことで、膜中に存在する欠陥を修復することができ、また界面準位密度を低減することができる。
【0289】
<酸素の添加>
なお、酸素を添加する処理は、絶縁層170を介した処理に限らず行ってもよい。酸素を添加する処理は、絶縁層110に行ってもよいし、第1の酸化物絶縁膜、酸化物絶縁層123に対して行ってもよい、その他の絶縁層に行ってもよい。添加する酸素として、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等のいずれか一以上を用いる。また、酸素を添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ浸漬イオン注入法等がある。
【0290】
なお、酸素を添加する方法としてイオン注入法を用いる場合、酸素原子イオンを用いてもよいし、酸素分子イオンを用いてもよい。酸素分子イオンを用いると、添加される膜へのダメージを低減することが可能である。酸素分子イオンは、当該酸素が添加される膜表面で分離し、酸素原子イオンとなって添加される。酸素分子から酸素原子に分離するためにエネルギーが使用されるため、酸素分子イオンを当該酸素が添加される膜に添加した場合における酸素原子イオンあたりのエネルギーは、酸素原子イオンを当該酸素が添加される膜に添加した場合と比較して低い。このため、当該酸素が添加される膜ダメージを低減できる。
【0291】
また、酸素分子イオンを用いることで、当該酸素が添加される膜に注入される酸素原子イオンそれぞれのエネルギーが低減するため、酸素原子イオンが注入される位置が浅い。このため、のちの加熱処理において、酸素原子が移動しやすくなり、酸化物半導体膜に、より多くの酸素を供給することができる。
【0292】
また、酸素分子イオンを注入する場合は、酸素原子イオンを注入する場合と比較して、酸素原子イオンあたりのエネルギーが低い。このため、酸素分子イオンを用いて注入することで、加速電圧を高めることが可能であり、スループットを高めることが可能である。また、酸素分子イオンを用いて注入することで、酸素原子イオンを用いた場合と比較して、ドーズ量を半分にすることが可能である。この結果、スループットを高めることができる。
【0293】
当該酸素が添加される膜に酸素を添加する場合、当該酸素が添加される膜に酸素原子イオンの濃度プロファイルのピークが位置するような条件を用いて、当該酸素が添加される膜に酸素を添加することが好ましい。この結果、酸素原子イオンを注入する場合に比べて、注入時の加速電圧を下げることができ、当該酸素が添加される膜のダメージを低減することが可能である。即ち、当該酸素が添加される膜の欠陥量を低減することができ、トランジスタの電気特性の変動を抑制することが可能である。さらには、絶縁層110および酸化物絶縁層121界面における酸素原子の添加量が、1×10
21atoms/cm
3未満、または1×10
20atoms/cm
3未満、または1×10
19atoms/cm
3未満となるように、当該酸素が添加される膜に酸素を添加することで、絶縁層110に添加される酸素の量を低減できる。この結果、当該酸素が添加される膜へのダメージを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
【0294】
また、酸素を有する雰囲気で発生させたプラズマに当該酸素が添加される膜を曝すプラズマ処理(プラズマ浸漬イオン注入法)により、当該酸素が添加される膜に酸素を添加してもよい。酸素を有する雰囲気としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等の酸化性気体を有する雰囲気がある。なお、基板100側にバイアスを印加した状態で発生したプラズマに当該酸素が添加される膜を曝すことで、当該酸素が添加される膜への酸素添加量を増加させることが可能であり好ましい。このようなプラズマ処理を行う装置の例として、アッシング装置などがある。
【0295】
例えば、加速電圧を60kVとし、ドーズ量が2×10
16/cm
2の酸素分子イオンをイオン注入法により絶縁層110に添加することができる。
【0296】
上記工程は、トランジスタ10、その他のトランジスタにも適用することができる。
【0297】
以上により、酸化物半導体膜の局在準位密度が低減され、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。また、経時変化やストレス試験による電気特性の変動の少ない、信頼性の高いトランジスタを作製することができる。
【0298】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0299】
(実施の形態2)
<酸化物半導体の構造>
以下では、酸化物半導体の構造について説明する。
【0300】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(c−axis−aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0301】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体およびnc−OSなどがある。
【0302】
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配置が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さない、などといわれている。
【0303】
即ち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a−like OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造である。不安定であるという点では、a−like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体に近い。
【0304】
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
【0305】
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一種である。
【0306】
CAAC−OSをX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析した場合について説明する。例えば、空間群R−3mに分類されるInGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、
図20(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSでは、結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)、または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。なお、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、空間群Fd−3mに分類される結晶構造に起因する。そのため、CAAC−OSは、該ピークを示さないことが好ましい。
【0307】
一方、CAAC−OSに対し、被形成面に平行な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(110)面に帰属される。そして、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、
図20(B)に示すように明瞭なピークは現れない。一方、単結晶InGaZnO
4に対し、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、
図20(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
【0308】
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OSに対し、CAAC−OSの被形成面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、
図20(D)に示すような回折パターン(制限視野電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO
4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを
図20(E)に示す。
図20(E)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、プローブ径が300nmの電子線を用いた電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、
図20(E)における第1リングは、InGaZnO
4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、
図20(E)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
【0309】
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像であってもペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない場合がある。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0310】
図21(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって観察することができる。
【0311】
図21(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるペレットを確認することができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。ペレットは、CAAC−OSの被形成面または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
【0312】
また、
図21(B)および
図21(C)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。
図21(D)および
図21(E)は、それぞれ
図21(B)および
図21(C)を画像処理した像である。以下では、画像処理の方法について説明する。まず、
図21(B)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取得したFFT像において原点を基準に、2.8nm
−1から5.0nm
−1の間の範囲を残すマスク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理することで画像処理した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFTフィルタリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格子配列を示している。
【0313】
図21(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が、一つのペレットである。そして、破線で示した箇所がペレットとペレットとの連結部である。破線は、六角形状であるため、ペレットが六角形状であることがわかる。なお、ペレットの形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が多い。
【0314】
図21(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間を点線で示している。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線近傍の格子点を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形が形成できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制していることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において原子配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0315】
以上に示すように、CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のペレット(ナノ結晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。よって、CAAC−OSを、CAA crystal(c−axis−aligned a−b−plane−anchored crystal)を有する酸化物半導体と称することもできる。
【0316】
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0317】
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
【0318】
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。例えば、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
【0319】
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。具体的には、8×10
11/cm
3未満、好ましくは1×10
11/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
10/cm
3未満であり、1×10
−9/cm
3以上のキャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0320】
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
【0321】
nc−OSをXRDによって解析した場合について説明する。例えば、nc−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、配向性を示すピークが現れない。即ち、nc−OSの結晶は配向性を有さない。
【0322】
また、例えば、InGaZnO
4の結晶を有するnc−OSを薄片化し、厚さが34nmの領域に対し、被形成面に平行にプローブ径が50nmの電子線を入射させると、
図22(A)に示すようなリング状の回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)が観測される。また、同じ試料にプローブ径が1nmの電子線を入射させたときの回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)を
図22(B)に示す。
図22(B)より、リング状の領域内に複数のスポットが観測される。したがって、nc−OSは、プローブ径が50nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認されないが、プローブ径が1nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認される。
【0323】
また、厚さが10nm未満の領域に対し、プローブ径が1nmの電子線を入射させると、
図22(C)に示すように、スポットが略正六角状に配置された電子回折パターンが観測される場合がある。したがって、厚さが10nm未満の範囲において、nc−OSが秩序性の高い領域、即ち結晶を有することがわかる。なお、結晶が様々な方向を向いているため、規則的な電子回折パターンが観測されない領域もある。
【0324】
図22(D)に、被形成面と略平行な方向から観察したnc−OSの断面のCs補正高分解能TEM像を示す。nc−OSは、高分解能TEM像において、補助線で示す箇所などのように結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下の大きさであり、特に1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体(microcrystalline oxide semiconductor)と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
【0325】
このように、nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0326】
なお、ペレット(ナノ結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0327】
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0328】
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
【0329】
図23に、a−like OSの高分解能断面TEM像を示す。ここで、
図23(A)は電子照射開始時におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。
図23(B)は4.3×10
8e
−/nm
2の電子(e
−)照射後におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。
図23(A)および
図23(B)より、a−like OSは電子照射開始時から、縦方向に延伸する縞状の明領域が観察されることがわかる。また、明領域は、電子照射後に形状が変化することがわかる。なお、明領域は、鬆または低密度領域と推測される。
【0330】
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OSおよびnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
【0331】
試料として、a−like OS、nc−OSおよびCAAC−OSを準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
【0332】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有する。
【0333】
なお、InGaZnO
4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、以下では、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO
4の結晶部と見なした。なお、格子縞は、InGaZnO
4の結晶のa−b面に対応する。
【0334】
図24は、各試料の結晶部(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例である。なお、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。
図24より、a−like OSは、TEM像の取得などに係る電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。
図24より、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、電子(e
−)の累積照射量が4.2×10
8e
−/nm
2においては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
8e
−/nm
2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。
図24より、電子の累積照射量によらず、nc−OSおよびCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.3nm程度および1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射およびTEMの観察は、日立透過電子顕微鏡H−9000NARを用いた。電子線照射条件は、加速電圧を300kV、電流密度を6.7×10
5e
−/(nm
2・s)、照射領域の直径を230nmとした。
【0335】
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られない。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
【0336】
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満である。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満である。単結晶の密度の78%未満である酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0337】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO
4の密度は6.357g/cm
3である。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm
3以上5.9g/cm
3未満である。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm
3以上6.3g/cm
3未満である。
【0338】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
【0339】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0340】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様のトランジスタを利用した回路の一例について図面を参照して説明する。
【0341】
<断面構造>
図25(A)に本発明の一態様の半導体装置の断面図を示す。
図25(A)において、X1−X2方向はチャネル長方向、Y1−Y2方向はチャネル幅方向を示す。
図25(A)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ2200を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ2100を有している。
図25(A)では、第2の半導体材料を用いたトランジスタ2100として、先の実施の形態で例示したトランジスタを適用した例を示している。なお、一点鎖線より左側がトランジスタのチャネル長方向の断面、右側がチャネル幅方向の断面である。
【0342】
第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが好ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコン(歪シリコン含む)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、有機半導体など)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料として単結晶シリコンなどを用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、先の実施の形態で例示したトランジスタを適用することで、S値(サブスレッショルド値)を小さくすることができ、微細なトランジスタとすることが可能である。また、スイッチ速度が速いため高速動作が可能であり、オフ電流が低いためリーク電流が小さい。
【0343】
トランジスタ2200は、nチャネル型のトランジスタまたはpチャネル型のトランジスタのいずれであってもよく、回路によって適切なトランジスタを用いればよい。また、酸化物半導体を用いた本発明の一態様のトランジスタを用いるほかは、用いる材料や構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0344】
図25(A)に示す構成では、トランジスタ2200の上部に、絶縁体2201、絶縁体2207を介してトランジスタ2100が設けられている。また、トランジスタ2200とトランジスタ2100の間には、複数の配線2202が設けられている。また、各種絶縁体に埋め込まれた複数のプラグ2203により、上層と下層にそれぞれ設けられた配線や電極が電気的に接続されている。また、トランジスタ2100を覆う絶縁体2204と、絶縁体2204上に配線2205と、が設けられている。
【0345】
このように、2種類のトランジスタを積層することにより、回路の占有面積が低減され、より高密度に複数の回路を配置することができる。
【0346】
ここで、下層に設けられるトランジスタ2200にシリコン系半導体材料を用いた場合、トランジスタ2200の半導体膜の近傍に設けられる絶縁体中の水素はシリコンのダングリングボンドを終端し、トランジスタ2200の信頼性を向上させる効果がある。一方、上層に設けられるトランジスタ2100に酸化物半導体を用いた場合、トランジスタ2100の半導体膜の近傍に設けられる絶縁体中の水素は、酸化物半導体中にキャリアを生成する要因の一つとなるため、トランジスタ2100の信頼性を低下させる要因となる場合がある。したがって、シリコン系半導体材料を用いたトランジスタ2200の上層に酸化物半導体を用いたトランジスタ2100を積層して設ける場合、これらの間に水素の拡散を防止する機能を有する絶縁体2207を設けることは特に効果的である。絶縁体2207により、下層に水素を閉じ込めることでトランジスタ2200の信頼性が向上することに加え、下層から上層に水素が拡散することが抑制されることでトランジスタ2100の信頼性も同時に向上させることができる。
【0347】
絶縁体2207としては、例えば酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
【0348】
また、酸化物半導体膜を含んで構成されるトランジスタ2100を覆うように、トランジスタ2100上に水素の拡散を防止する機能を有するブロック膜を形成することが好ましい。当該ブロック膜としては、絶縁体2207と同様の材料を用いることができ、特に酸化アルミニウムを適用することが好ましい。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物および酸素の双方に対して膜を透過させない遮断(ブロッキング)効果が高い。したがって、トランジスタ2100を覆う当該ブロック膜として酸化アルミニウム膜を用いることで、トランジスタ2100に含まれる酸化物半導体膜からの酸素の脱離を防止するとともに、酸化物半導体膜への水および水素の混入を防止することができる。なお、当該ブロック膜は、絶縁体2204を積層にすることで用いてもよいし、絶縁体2204の下側に設けてもよい。
【0349】
なお、トランジスタ2200は、プレーナ型のトランジスタだけでなく、様々なタイプのトランジスタとすることができる。例えば、FIN(フィン)型、TRI−GATE(トライゲート)型などのトランジスタなどとすることができる。その場合の断面図の例を、
図25(D)に示す。
図25(D)において、X1−X2方向はチャネル長方向、Y1−Y2方向はチャネル幅方向を示す。半導体基板2211の上に、絶縁体2212が設けられている。半導体基板2211は、先端の細い凸部(フィンともいう)を有する。なお、凸部の上には、絶縁体が設けられていてもよい。なお、凸部は、先端が細くなくてもよく、例えば、略直方体の凸部であってもよいし、先端が太い凸部であってもよい。半導体基板2211の凸部の上には、ゲート絶縁体2214が設けられ、その上には、ゲート電極2213が設けられている。半導体基板2211には、ソース領域およびドレイン領域2215が形成されている。なお、ここでは、半導体基板2211が、凸部を有する例を示したが、本発明の一態様に係る半導体装置は、これに限定されない。例えば、SOI基板を加工して、凸部を有する半導体領域を形成しても構わない。
【0350】
<回路構成例>
上記構成において、トランジスタ2100やトランジスタ2200の電極を適宜接続することにより、様々な回路を構成することができる。以下では、本発明の一態様の半導体装置を用いることにより実現できる回路構成の例を説明する。
【0351】
<CMOSインバータ回路>
図25(B)に示す回路図は、pチャネル型のトランジスタ2200とnチャネル型のトランジスタ2100を直列に接続し、且つそれぞれのゲートを接続した、いわゆるCMOSインバータの構成を示している。
【0352】
<CMOSアナログスイッチ>
また、
図25(C)に示す回路図は、トランジスタ2100とトランジスタ2200のそれぞれのソースとドレインを接続した構成を示している。このような構成とすることで、いわゆるCMOSアナログスイッチとして機能させることができる。
【0353】
<記憶装置の例>
本発明の一態様であるトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)の一例を
図26に示す。
【0354】
図26(A)に示す半導体装置は、第1の半導体材料を用いたトランジスタ3200と第2の半導体材料を用いたトランジスタ3300、および容量素子3400を有している。なお、トランジスタ3300としては、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることができる。
【0355】
図26(B)に
図26(A)に示す半導体装置の断面図を示す。
図26(B)において、X1−X2方向はチャネル長方向、Y1−Y2方向はチャネル幅方向を示す。当該断面図の半導体装置では、トランジスタ3300にバックゲートを設けた構成を示しているが、バックゲートを設けない構成であってもよい。
【0356】
トランジスタ3300は、酸化物半導体を有する半導体にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ3300は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0357】
図26(A)において、第1の配線3001はトランジスタ3200のソース電極と電気的に接続され、第2の配線3002はトランジスタ3200のドレイン電極と電気的に接続されている。また、第3の配線3003はトランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の一方と電気的に接続され、第4の配線3004はトランジスタ3300のゲート電極と電気的に接続されている。そして、トランジスタ3200のゲート電極は、トランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方、および容量素子3400の第1の端子と電気的に接続され、第5の配線3005は容量素子3400の第2の端子と電気的に接続されている。
【0358】
図26(A)に示す半導体装置では、トランジスタ3200のゲート電極の電位が保持可能という特徴を活かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0359】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300がオン状態となる電位にして、トランジスタ3300をオン状態とする。これにより、第3の配線3003の電位が、トランジスタ3200のゲート電極、および容量素子3400に与えられる。すなわち、トランジスタ3200のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300がオフ状態となる電位にして、トランジスタ3300をオフ状態とすることにより、トランジスタ3200のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0360】
トランジスタ3300のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ3200のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0361】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線3001に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線3005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ3200のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線3002は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ3200をnチャネル型とすると、トランジスタ3200のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値V
th_Hは、トランジスタ3200のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値V
th_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ3200を「オン状態」とするために必要な第5の配線3005の電位をいうものとする。したがって、第5の配線3005の電位をV
th_HとV
th_Lの間の電位V
0とすることにより、トランジスタ3200のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ3200は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ3200は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線3002の電位を判別することで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0362】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。例えば情報を読み出さないメモリセルにおいては、ゲート電極に与えられる電位にかかわらずトランジスタ3200が「オフ状態」となるような電位、つまり、V
th_Hより小さい電位を第5の配線3005に与えることで所望のメモリセルの情報のみを読み出せる構成とすればよい。または、情報を読み出さないメモリセルにおいては、ゲート電極に与えられている電位にかかわらずトランジスタ3200が「オン状態」となるような電位、つまり、V
th_Lより大きい電位を第5の配線3005に与えることで所望のメモリセルの情報のみを読み出せる構成とすればよい。
【0363】
図26(C)に示す半導体装置は、トランジスタ3200を設けていない点で
図26(A)と相違している。この場合も上記と同様の動作により情報の書き込みおよび保持動作が可能である。
【0364】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ3300がオン状態となると、浮遊状態である第3の配線3003と容量素子3400とが導通し、第3の配線3003と容量素子3400の間で電荷が再分配される。その結果、第3の配線3003の電位が変化する。第3の配線3003の電位の変化量は、容量素子3400の第1の端子の電位(あるいは容量素子3400に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0365】
例えば、容量素子3400の第1の端子の電位をV、容量素子3400の容量をC、第3の配線3003が有する容量成分をCB、電荷が再分配される前の第3の配線3003の電位をVB0とすると、電荷が再分配された後の第3の配線3003の電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。したがって、メモリセルの状態として、容量素子3400の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0366】
そして、第3の配線3003の電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0367】
この場合、メモリセルを駆動させるための駆動回路に上記第1の半導体材料が適用されたトランジスタを用い、トランジスタ3300として第2の半導体材料が適用されたトランジスタを駆動回路上に積層して設ける構成とすればよい。
【0368】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0369】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0370】
本実施の形態に示す半導体装置を用いることで、低消費電力であり、また高容量(例えば1テラビット以上)の記憶装置を作製することができる。
【0371】
なお、本明細書等においては、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなくても、当業者であれば、発明の一態様を構成することは可能な場合がある。つまり、接続先を特定しなくても、発明の一態様が明確であると言える。そして、接続先が特定された内容が、本明細書等に記載されている場合、接続先を特定しない発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先として複数のケースが考えられる場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。したがって、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の一態様を構成することが可能な場合がある。
【0372】
なお、本明細書等においては、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。または、ある回路について、少なくとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つまり、機能を特定すれば、発明の一態様が明確であると言える。そして、機能が特定された発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。したがって、ある回路について、機能を特定しなくても、接続先を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。または、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。
【0373】
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、その一部分を取り出して、発明の一態様を構成することは可能である。したがって、ある部分を述べる図または文章が記載されている場合、その一部分の図または文章を取り出した内容も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能であるものとする。そのため、例えば、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、配線、受動素子(容量素子、抵抗素子など)、導電層、絶縁層、半導体、有機材料、無機材料、部品、装置、動作方法、製造方法などが単数または複数記載された図面または文章において、その一部分を取り出して、発明の一態様を構成することが可能であるものとする。例えば、N個(Nは整数)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を有して構成される回路図から、M個(Mは整数で、M<N)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を抜き出して、発明の一態様を構成することは可能である。別の例としては、N個(Nは整数)の層を有して構成される断面図から、M個(Mは整数で、M<N)の層を抜き出して、発明の一態様を構成することは可能である。さらに別の例としては、N個(Nは整数)の要素を有して構成されるフローチャートから、M個(Mは整数で、M<N)の要素を抜き出して、発明の一態様を構成することは可能である。
【0374】
<撮像装置>
以下では、本発明の一態様に係る撮像装置について説明する。
【0375】
図27(A)は、本発明の一態様に係る撮像装置200の例を示す平面図である。撮像装置200は、画素部210と、画素部210を駆動するための周辺回路260と、周辺回路270、周辺回路280と、周辺回路290と、を有する。画素部210は、p行q列(pおよびqは2以上の整数)のマトリクス状に配置された複数の画素211を有する。周辺回路260、周辺回路270、周辺回路280および周辺回路290は、それぞれ複数の画素211に接続し、複数の画素211を駆動するための信号を供給する機能を有する。なお、本明細書等において、周辺回路260、周辺回路270、周辺回路280および周辺回路290などの全てを指して「周辺回路」または「駆動回路」と呼ぶ場合がある。例えば、周辺回路260は周辺回路の一部といえる。
【0376】
また、周辺回路は、少なくとも、論理回路、スイッチ、バッファ、増幅回路、または変換回路の1つを有する。また、周辺回路は、画素部210を形成する基板上に形成してもよい。また、周辺回路の一部または全部にICチップ等の半導体装置を用いてもよい。なお、周辺回路は、周辺回路260、周辺回路270、周辺回路280および周辺回路290のいずれか一以上を省略してもよい。
【0377】
また、
図27(B)に示すように、撮像装置200が有する画素部210において、画素211を傾けて配置してもよい。画素211を傾けて配置することにより、行方向および列方向の画素間隔(ピッチ)を短くすることができる。これにより、撮像装置200における撮像の品質をより高めることができる。
【0378】
<画素の構成例1>
撮像装置200が有する1つの画素211を複数の副画素212で構成し、それぞれの副画素212に特定の波長帯域の光を透過するフィルタ(カラーフィルタ)を組み合わせることで、カラー画像表示を実現するための情報を取得することができる。
【0379】
図28(A)は、カラー画像を取得するための画素211の一例を示す平面図である。
図28(A)に示す画素211は、赤(R)の波長帯域の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212(以下、「副画素212R」ともいう)、緑(G)の波長帯域の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212(以下、「副画素212G」ともいう)および青(B)の波長帯域の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212(以下、「副画素212B」ともいう)を有する。副画素212は、フォトセンサとして機能させることができる。
【0380】
副画素212(副画素212R、副画素212G、および副画素212B)は、配線231、配線247、配線248、配線249、配線250と電気的に接続される。また、副画素212R、副画素212G、および副画素212Bは、それぞれが独立した配線253に接続している。また、本明細書等において、例えばn行目(nは1以上p以下の整数)の画素211に接続された配線248および配線249を、それぞれ配線248[n]および配線249[n]と記載する。また、例えばm列目(mは1以上q以下の整数)の画素211に接続された配線253を、配線253[m]と記載する。なお、
図28(A)において、m列目の画素211が有する副画素212Rに接続する配線253を配線253[m]R、副画素212Gに接続する配線253を配線253[m]G、および副画素212Bに接続する配線253を配線253[m]Bと記載している。副画素212は、上記配線を介して周辺回路と電気的に接続される。
【0381】
また、撮像装置200は、隣接する画素211の、同じ波長帯域の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212同士がスイッチを介して電気的に接続する構成を有する。
図28(B)に、n行m列に配置された画素211が有する副画素212と、該画素211に隣接するn+1行m列に配置された画素211が有する副画素212の接続例を示す。
図28(B)において、n行m列に配置された副画素212Rと、n+1行m列に配置された副画素212Rがスイッチ201を介して接続されている。また、n行m列に配置された副画素212Gと、n+1行m列に配置された副画素212Gがスイッチ202を介して接続されている。また、n行m列に配置された副画素212Bと、n+1行m列に配置された副画素212Bがスイッチ203を介して接続されている。
【0382】
なお、副画素212に用いるカラーフィルタは、赤(R)、緑(G)、青(B)に限定されず、それぞれシアン(C)、黄(Y)およびマゼンダ(M)の光を透過するカラーフィルタを用いてもよい。1つの画素211に3種類の異なる波長帯域の光を検出する副画素212を設けることで、フルカラー画像を取得することができる。
【0383】
または、それぞれ赤(R)、緑(G)および青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212に加えて、黄(Y)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212を有する画素211を用いてもよい。または、それぞれシアン(C)、黄(Y)およびマゼンダ(M)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212に加えて、青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212を有する画素211を用いてもよい。1つの画素211に4種類の異なる波長帯域の光を検出する副画素212を設けることで、取得した画像の色の再現性をさらに高めることができる。
【0384】
また、例えば、
図28(A)において、赤の波長帯域の光を検出する副画素212、緑の波長帯域の光を検出する副画素212、および青の波長帯域の光を検出する副画素212の画素数比(または受光面積比)は、1:1:1でなくても構わない。例えば、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:2:1とするBayer配列としてもよい。または、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:6:1としてもよい。
【0385】
なお、画素211に設ける副画素212は1つでもよいが、2つ以上が好ましい。例えば、同じ波長帯域の光を検出する副画素212を2つ以上設けることで、冗長性を高め、撮像装置200の信頼性を高めることができる。
【0386】
また、可視光を吸収または反射して、赤外光を透過するIR(IR:Infrared)フィルタを用いることで、赤外光を検出する撮像装置200を実現することができる。
【0387】
また、ND(ND:Neutral Density)フィルタ(減光フィルタ)を用いることで、光電変換素子(受光素子)に大光量光が入射した時に生じる出力飽和することを防ぐことができる。減光量の異なるNDフィルタを組み合わせて用いることで、撮像装置のダイナミックレンジを大きくすることができる。
【0388】
また、前述したフィルタ以外に、画素211にレンズを設けてもよい。ここで、
図29の断面図を用いて、画素211、フィルタ254、レンズ255の配置例を説明する。レンズ255を設けることで、光電変換素子が入射光を効率よく受光することができる。具体的には、
図29(A)に示すように、画素211に形成したレンズ255、フィルタ254(フィルタ254R、フィルタ254Gおよびフィルタ254B)、および画素回路230等を通して光256を光電変換素子220に入射させる構造とすることができる。
【0389】
ただし、一点鎖線で囲んだ領域に示すように、矢印で示す光256の一部が配線257の一部によって遮光されてしまうことがある。したがって、
図29(B)に示すように光電変換素子220側にレンズ255およびフィルタ254を配置して、光電変換素子220が光256を効率良く受光させる構造が好ましい。光電変換素子220側から光256を光電変換素子220に入射させることで、検出感度の高い撮像装置200を提供することができる。
【0390】
図29に示す光電変換素子220として、pn型接合またはpin型の接合が形成された光電変換素子を用いてもよい。
【0391】
また、光電変換素子220を、放射線を吸収して電荷を発生させる機能を有する物質を用いて形成してもよい。放射線を吸収して電荷を発生させる機能を有する物質としては、セレン、ヨウ化鉛、ヨウ化水銀、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウム、カドミウム亜鉛合金等がある。
【0392】
例えば、光電変換素子220にセレンを用いると、可視光や、紫外光、赤外光に加えて、X線や、ガンマ線といった幅広い波長帯域にわたって光吸収係数を有する光電変換素子220を実現できる。
【0393】
ここで、撮像装置200が有する1つの画素211は、
図28に示す副画素212に加えて、第1のフィルタを有する副画素212を有してもよい。
【0394】
<画素の構成例2>
以下では、シリコンを用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたトランジスタと、を用いて画素を構成する一例について説明する。
【0395】
図30(A)、
図30(B)は、撮像装置を構成する素子の断面図である。
図30(A)において、X1−X2方向はチャネル長方向、Y1−Y2方向はチャネル幅方向を示す。
図30(B)において、X1−X2方向はチャネル長方向、Y1−Y2方向はチャネル幅方向を示す。
【0396】
図30(A)に示す撮像装置は、シリコン基板300に設けられたシリコンを用いたトランジスタ351、トランジスタ351上に積層して配置された酸化物半導体を用いたトランジスタ353、およびシリコン基板300に設けられた、アノード361と、カソード362を有するフォトダイオード360を含む。各トランジスタおよびフォトダイオード360は、種々のプラグ370および配線371、配線372、配線373と電気的な接続を有する。また、フォトダイオード360のアノード361は、低抵抗領域363を介してプラグ370と電気的に接続を有する。
【0397】
また撮像装置は、シリコン基板300に設けられたトランジスタ351およびフォトダイオード360を有する層310と、層310と接して設けられ、配線371を有する層320と、層320と接して設けられ、トランジスタ353、絶縁層380を有する層330と、層330と接して設けられ、配線372および配線373を有する層340を備えている。
【0398】
なお、
図30(A)の断面図の一例では、シリコン基板300において、トランジスタ351が形成された面とは逆側の面にフォトダイオード360の受光面を有する構成とする。該構成とすることで、各種トランジスタや配線などの影響を受けずに光路を確保することができる。そのため、高開口率の画素を形成することができる。なお、フォトダイオード360の受光面をトランジスタ351が形成された面と同じとすることもできる。
【0399】
なお、酸化物半導体を用いたトランジスタのみを用いて画素を構成する場合には、層310を、酸化物半導体を用いたトランジスタを有する層とすればよい。または層310を省略し、酸化物半導体を用いたトランジスタのみで画素を構成してもよい。
【0400】
また、
図30(A)の断面図において、層310に設けるフォトダイオード360と、層330に設けるトランジスタとを重なるように形成することができる。そうすると、画素の集積度を高めることができる。すなわち、撮像装置の解像度を高めることができる。
【0401】
また、
図30(B)は、撮像装置は層340側にフォトダイオード365をトランジスタの上に配置した構造とすることができる。
図30(B)において、例えば層310には、シリコンを用いたトランジスタ351を有し、層320には配線371を有し、層330には酸化物半導体を用いたトランジスタ353、絶縁層380を有し、層340にはフォトダイオード365有しており、配線373と、プラグ370を介した配線374と電気的に接続している。
【0402】
図30(B)に示す素子構成とすることで、開口率を向上させることができる。
【0403】
また、フォトダイオード365には、非晶質シリコン膜や微結晶シリコン膜などを用いたpin型ダイオード素子などを用いてもよい。フォトダイオード365は、n型の半導体368、i型の半導体367、およびp型の半導体366が順に積層された構成を有している。i型の半導体367には非晶質シリコンを用いることが好ましい。また、p型の半導体366およびn型の半導体368には、それぞれの導電型を付与するドーパントを含む非晶質シリコンまたは微結晶シリコンなどを用いることができる。非晶質シリコンを光電変換層とするフォトダイオード365は可視光の波長領域における感度が高く、微弱な可視光を検知しやすい。
【0404】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0405】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した酸化物半導体層を有したトランジスタ(OSトランジスタ)を適用可能な回路構成の一例について、
図31乃至34を用いて説明する。
【0406】
図31(A)には、メモリ、FPGA、CPUなどに適用することができるインバータの回路図を示す。インバータ2800は、入力端子INに与える信号の論理を反転した信号を出力端子OUTに出力する。インバータ2800は、複数のOSトランジスタを有する。信号S
BGは、OSトランジスタの電気特性を切り替えることができる信号である。
【0407】
図31(B)は、インバータ2800の一例となる回路図である。インバータ2800は、OSトランジスタ2810、およびOSトランジスタ2820を有する。インバータ2800は、nチャネル型で作製することができ、所謂単極性の回路構成とすることができる。単極性の回路構成でインバータを作製できるため、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)でインバータ(CMOSインバータ)を作製する場合と比較して、低コストで作製することが可能である。
【0408】
なおOSトランジスタを有するインバータ2800は、Siトランジスタで構成されるCMOS上に配置することもできる。インバータ2800は、CMOSの回路構成に重ねて配置できるため、インバータ2800を追加する分の回路面積の増加を抑えることができる。
【0409】
OSトランジスタ2810、OSトランジスタ2820は、フロントゲートとして機能する第1ゲートと、バックゲートとして機能する第2ゲートと、ソースまたはドレインの一方として機能する第1端子、ソースまたはドレインの他方として機能する第2端子を有する。
【0410】
OSトランジスタ2810の第1ゲートは、第2端子に接続される。OSトランジスタ2810の第2ゲートは、信号S
BGを伝える配線に接続される。OSトランジスタ2810の第1端子は、電圧VDDを与える配線に接続される。OSトランジスタ2810の第2端子は、出力端子OUTに接続される。
【0411】
OSトランジスタ2820の第1ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジスタ2820の第2ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジスタ2820の第1端子は、出力端子OUTに接続される。OSトランジスタ2820の第2端子は、電圧VSSを与える配線に接続される。
【0412】
図31(C)は、インバータ2800の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図31(C)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの信号波形、信号S
BGの信号波形、およびOSトランジスタ2810の閾値電圧の変化について示している。
【0413】
信号S
BGはOSトランジスタ2810の第2ゲートに与えることで、OSトランジスタ2810の閾値電圧を制御することができる。
【0414】
信号S
BGは、閾値電圧をマイナスシフトさせるための電圧V
BG_A、閾値電圧をプラスシフトさせるための電圧V
BG_Bを有する。第2ゲートに電圧V
BG_Aを与えることで、OSトランジスタ2810は閾値電圧V
TH_Aにマイナスシフトさせることができる。また、第2ゲートに電圧V
BG_Bを与えることで、OSトランジスタ2810は閾値電圧V
TH_Bにプラスシフトさせることができる。
【0415】
前述の説明を可視化するために、
図32(A)には、トランジスタの電気特性の一つである、Vg−Idカーブのグラフを示す。
【0416】
上述したOSトランジスタ2810の電気特性は、第2ゲートの電圧を電圧V
BG_Aのように大きくすることで、
図32(A)中の破線2840で表される曲線にシフトさせることができる。また、上述したOSトランジスタ2810の電気特性は、第2ゲートの電圧を電圧V
BG_Bのように小さくすることで、
図32(A)中の実線2841で表される曲線にシフトさせることができる。
図32(A)に示すように、OSトランジスタ2810は、信号S
BGを電圧V
BG_Aあるいは電圧V
BG_Bというように切り替えることで、閾値電圧をプラスシフトあるいはマイナスシフトさせることができる。
【0417】
閾値電圧を閾値電圧V
TH_Bにプラスシフトさせることで、OSトランジスタ2810は電流が流れにくい状態とすることができる。
図32(B)には、この状態を可視化して示す。
図32(B)に図示するように、OSトランジスタ2810に流れる電流I
Bを極めて小さくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号がハイレベルでOSトランジスタ2820はオン状態(ON)のとき、出力端子OUTの電圧の下降を急峻に行うことができる。
【0418】
図32(B)に図示したように、OSトランジスタ2810に流れる電流が流れにくい状態とすることができるため、
図31(C)に示すタイミングチャートにおける出力端子の信号波形2831を急峻な変化にすることができる。電圧VDDを与える配線と、電圧VSSを与える配線との間に流れる貫通電流を少なくすることができるため、低消費電力での動作を行うことができる。
【0419】
また、閾値電圧を閾値電圧V
TH_Aにマイナスシフトさせることで、OSトランジスタ2810は電流が流れやすい状態とすることができる。
図32(C)には、この状態を可視化して示す。
図32(C)に図示するように、このとき流れる電流I
Aを少なくとも電流I
Bよりも大きくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号がローレベルでOSトランジスタ2820はオフ状態(OFF)のとき、出力端子OUTの電圧の上昇を急峻に行うことができる。
【0420】
図32(C)に図示したように、OSトランジスタ2810に流れる電流が流れやすい状態とすることができるため、
図31(C)に示すタイミングチャートにおける出力端子の信号波形2832を急峻な変化にすることができる。
【0421】
なお、信号S
BGによるOSトランジスタ2810の閾値電圧の制御は、OSトランジスタ2820の状態が切り替わる以前、すなわち時刻T1やT2よりも前に行うことが好ましい。例えば、
図31(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がハイレベルに切り替わる時刻T1よりも前に、閾値電圧V
TH_Aから閾値電圧V
TH_BにOSトランジスタ2810の閾値電圧を切り替えることが好ましい。また、
図31(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がローレベルに切り替わる時刻T2よりも前に、閾値電圧V
TH_Bから閾値電圧V
TH_AにOSトランジスタ2810の閾値電圧を切り替えることが好ましい。
【0422】
なお、
図31(C)のタイミングチャートでは、入力端子INに与える信号に応じて信号S
BGを切り替える構成を示したが、別の構成としてもよい。例えば、閾値電圧を制御するための電圧は、フローティング状態としたOSトランジスタ2810の第2ゲートに保持させる構成としてもよい。当該構成を実現可能な回路構成の一例について、
図33(A)に示す。
【0423】
図33(A)では、
図31(B)で示した回路構成に加えて、OSトランジスタ2850を有する。OSトランジスタ2850の第1端子は、OSトランジスタ2810の第2ゲートに接続される。またOSトランジスタ2850の第2端子は、電圧V
BG_B(あるいは電圧V
BG_A)を与える配線に接続される。OSトランジスタ2850の第1ゲートは、信号S
Fを与える配線に接続される。OSトランジスタ2850の第2ゲートは、電圧V
BG_B(あるいは電圧V
BG_A)を与える配線に接続される。
【0424】
図33(A)の動作について、
図33(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
【0425】
OSトランジスタ2810の閾値電圧を制御するための電圧は、入力端子INに与える信号がハイレベルに切り替わる時刻T3よりも前に、OSトランジスタ2810の第2ゲートに与える構成とする。信号S
FをハイレベルとしてOSトランジスタ2850をオン状態とし、ノードN
BGに閾値電圧を制御するための電圧V
BG_Bを与える。
【0426】
ノードN
BGが電圧V
BG_Bとなった後は、OSトランジスタ2850をオフ状態とする。OSトランジスタ2850は、オフ電流が極めて小さいため、オフ状態にし続けることで、一旦ノードN
BGに保持させた電圧V
BG_Bを保持することができる。そのため、OSトランジスタ2850の第2ゲートに電圧V
BG_Bを与える動作の回数が減るため、電圧V
BG_Bの書き換えに要する分の消費電力を小さくすることができる。
【0427】
なお、
図31(B)および
図33(A)の回路構成では、OSトランジスタ2810の第2ゲートに与える電圧を外部からの制御によって与える構成について示したが、別の構成としてもよい。たとえば閾値電圧を制御するための電圧を、入力端子INに与える信号を基に生成し、OSトランジスタ2810の第2ゲートに与える構成としてもよい。当該構成を実現可能な回路構成の一例について、
図34(A)に示す。
【0428】
図34(A)では、
図31(B)で示した回路構成において、入力端子INとOSトランジスタ2810の第2ゲートとの間にCMOSインバータ2860を有する。CMOSインバータ2860の入力端子は、入力端子INに接続される。CMOSインバータ2860の出力端子は、OSトランジスタ2810の第2ゲートに接続される。
【0429】
図34(A)の動作について、
図34(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
図34(B)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの信号波形、CMOSインバータ2860の出力波形IN_B、およびOSトランジスタ2810の閾値電圧の変化について示している。
【0430】
入力端子INに与える信号の論理を反転した信号である出力波形IN_Bは、OSトランジスタ2810の閾値電圧を制御する信号とすることができる。したがって、
図32(A)乃至(C)で説明したように、OSトランジスタ2810の閾値電圧を制御できる。例えば、
図34(B)における時刻T4となるとき、入力端子INに与える信号がハイレベルでOSトランジスタ2820はオン状態となる。このとき、出力波形IN_Bはローレベルとなる。そのため、OSトランジスタ2810は電流が流れにくい状態とすることができ、出力端子OUTの電圧の下降を急峻に行うことができる。
【0431】
また、
図34(B)における時刻T5となるとき、入力端子INに与える信号がローレベルでOSトランジスタ2820はオフ状態となる。このとき、出力波形IN_Bはハイレベルとなる。そのため、OSトランジスタ2810は電流が流れやすい状態とすることができ、出力端子OUTの電圧の上昇を急峻に行うことができる。
【0432】
以上説明したように本実施の形態の構成では、OSトランジスタを有するインバータにおける、バックゲートの電圧を入力端子INに与える信号の論理にしたがって切り替える。当該構成とすることで、OSトランジスタの閾値電圧を制御することができる。OSトランジスタの閾値電圧の制御を入力端子INに与える信号に併せて制御することで、出力端子OUTの電圧の変化を急峻にすることができる。また、電源電圧を与える配線間の貫通電流を小さくすることができる。そのため、低消費電力化を図ることができる。
【0433】
(実施の形態5)
<RFタグ>
本実施の形態では、先の実施の形態で説明したトランジスタ、または記憶装置を含むRFタグについて、
図35を用いて説明する。
【0434】
本実施の形態におけるRFタグは、内部に記憶回路を有し、記憶回路に必要な情報を記憶し、非接触手段、例えば無線通信を用いて外部と情報の授受を行うものである。このような特徴から、RFタグは、物品などの個体情報を読み取ることにより物品の識別を行う個体認証システムなどに用いることが可能である。なお、これらの用途に用いるためには極めて高い信頼性が要求される。
【0435】
RFタグの構成について
図35を用いて説明する。
図35は、RFタグの構成例を示すブロック図である。
【0436】
図35に示すようにRFタグ800は、通信器801(質問器、リーダ/ライタなどともいう)に接続されたアンテナ802から送信される無線信号803を受信するアンテナ804を有する。またRFタグ800は、整流回路805、定電圧回路806、復調回路807、変調回路808、論理回路809、記憶回路810、ROM811を有している。なお、復調回路807に含まれる整流作用を示すトランジスタに逆方向電流を十分に抑制することが可能な材料、例えば、酸化物半導体、が用いられた構成としてもよい。これにより、逆方向電流に起因する整流作用の低下を抑制し、復調回路の出力が飽和することを防止できる。つまり、復調回路の入力に対する復調回路の出力を線形に近づけることができる。なお、データの伝送形式は、一対のコイルを対向配置して相互誘導によって交信を行う電磁結合方式、誘導電磁界によって交信する電磁誘導方式、電波を利用して交信する電波方式の3つに大別される。本実施の形態に示すRFタグ800は、そのいずれの方式に用いることも可能である。
【0437】
次に各回路の構成について説明する。アンテナ804は、通信器801に接続されたアンテナ802との間で無線信号803の送受信を行うためのものである。また、整流回路805は、アンテナ804で無線信号を受信することにより生成される入力交流信号を整流、例えば、半波2倍圧整流し、後段に設けられた容量素子により、整流された信号を平滑化することで入力電位を生成するための回路である。なお、整流回路805の入力側または出力側には、リミッタ回路を設けてもよい。リミッタ回路とは、入力交流信号の振幅が大きく、内部生成電圧が大きい場合に、ある電力以上の電力を後段の回路に入力しないように制御するための回路である。
【0438】
定電圧回路806は、入力電位から安定した電源電圧を生成し、各回路に供給するための回路である。なお、定電圧回路806は、内部にリセット信号生成回路を有していてもよい。リセット信号生成回路は、安定した電源電圧の立ち上がりを利用して、論理回路809のリセット信号を生成するための回路である。
【0439】
復調回路807は、入力交流信号を包絡線検出することにより復調し、復調信号を生成するための回路である。また、変調回路808は、アンテナ804より出力するデータに応じて変調を行うための回路である。
【0440】
論理回路809は復調信号を解析し、処理を行うための回路である。記憶回路810は、入力された情報を保持する回路であり、ロウデコーダ、カラムデコーダ、記憶領域などを有する。また、ROM811は、固有番号(ID)などを格納し、処理に応じて出力を行うための回路である。
【0441】
なお、上述の各回路は、必要に応じて、適宜、取捨することができる。
【0442】
ここで、先の実施の形態で説明した半導体装置を、記憶回路810に用いることができる。本発明の一態様の記憶回路は、電源が遮断された状態であっても情報を保持できるため、RFタグに好適に用いることができる。さらに本発明の一態様の記憶回路は、データの書き込みに必要な電力(電圧)が従来の不揮発性メモリに比べて著しく小さいため、データの読み出し時と書込み時の最大通信距離の差を生じさせないことも可能である。さらに、データの書き込み時に電力が不足し、誤動作または誤書込みが生じることを抑制することができる。
【0443】
また、本発明の一態様の記憶回路は、不揮発性のメモリとして用いることが可能であるため、ROM811に適用することもできる。その場合には、生産者がROM811にデータを書き込むためのコマンドを別途用意し、ユーザが自由に書き換えできないようにしておくことが好ましい。生産者が出荷前に固有番号を書込んだのちに製品を出荷することで、作製したRFタグすべてについて固有番号を付与するのではなく、出荷する良品にのみ固有番号を割り当てることが可能となり、出荷後の製品の固有番号が不連続になることがなく出荷後の製品に対応した顧客管理が容易となる。
【0444】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0445】
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した記憶装置を含むCPUについて説明する。
【0446】
図36は、先の実施の形態で説明したトランジスタを少なくとも一部に用いたCPUの一例の構成を示すブロック図である。
【0447】
<CPUの回路図>
図36に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithmetic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。書き換え可能なROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、
図36に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例えば、
図36に示すCPUまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み、それぞれのコアが並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演算回路やデータバスで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすることができる。
【0448】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0449】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行う。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行う。
【0450】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号を元に、内部クロック信号を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号を上記各種回路に供給する。
【0451】
図36に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジスタ1196のメモリセルとして、先の実施の形態に示したトランジスタを用いることができる。
【0452】
図36に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
【0453】
<記録回路>
図37は、レジスタ1196として用いることのできる記憶素子の回路図の一例である。記憶素子1200は、電源遮断で記憶データが揮発する回路1201と、電源遮断で記憶データが揮発しない回路1202と、スイッチ1203と、スイッチ1204と、論理素子1206と、容量素子1207と、選択機能を有する回路1220と、を有する。回路1202は、容量素子1208と、トランジスタ1209と、トランジスタ1210と、を有する。なお、記憶素子1200は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタなどのその他の素子をさらに有していても良い。
【0454】
ここで、回路1202には、先の実施の形態で説明した記憶装置を用いることができる。記憶素子1200への電源電圧の供給が停止した際、回路1202のトランジスタ1209のゲートには接地電位(0V)、またはトランジスタ1209がオフする電位が入力され続ける構成とする。例えば、トランジスタ1209の第1ゲートが抵抗等の負荷を介して接地される構成とする。
【0455】
スイッチ1203は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ1213を用いて構成され、スイッチ1204は、一導電型とは逆の導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタ1214を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ1203の第1の端子はトランジスタ1213のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1203の第2の端子はトランジスタ1213のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1203はトランジスタ1213のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1213のオン状態またはオフ状態)が選択される。スイッチ1204の第1の端子はトランジスタ1214のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1204の第2の端子はトランジスタ1214のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1204はトランジスタ1214のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1214のオン状態またはオフ状態)が選択される。
【0456】
トランジスタ1209のソースとドレインの一方は、容量素子1208の一対の電極のうちの一方、およびトランジスタ1210のゲートと電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM2とする。トランジスタ1210のソースとドレインの一方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッチ1203の第1の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)はスイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ1204の第2の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの他方)は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)と、スイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの一方)と、論理素子1206の入力端子と、容量素子1207の一対の電極のうちの一方と、は電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM1とする。容量素子1207の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子1207の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。容量素子1208の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子1208の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。
【0457】
なお、容量素子1207および容量素子1208は、トランジスタや配線の寄生容量等を積極的に利用することによって省略することも可能である。
【0458】
トランジスタ1209の第1ゲート(第1のゲート電極)には、制御信号WEが入力される。スイッチ1203およびスイッチ1204は、制御信号WEとは異なる制御信号RDによって第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間は非導通状態となる。
【0459】
なお、
図37におけるトランジスタ1209では第2ゲート(第2のゲート電極:バックゲート)を有する構成を図示している。第1ゲートには制御信号WEを入力し、第2ゲートには制御信号WE2を入力することができる。制御信号WE2は、一定の電位の信号とすればよい。当該一定の電位には、例えば、接地電位GNDやトランジスタ1209のソース電位よりも小さい電位などが選ばれる。このとき、制御信号WE2は、トランジスタ1209のしきい値電圧を制御するための電位信号であり、ゲート電圧VGが0V時の電流をより低減することができる。また、制御信号WE2は、制御信号WEと同じ電位信号であってもよい。なお、トランジスタ1209としては、第2ゲートを有さないトランジスタを用いることもできる。
【0460】
トランジスタ1209のソースとドレインの他方には、回路1201に保持されたデータに対応する信号が入力される。
図37では、回路1201から出力された信号が、トランジスタ1209のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子1206によってその論理値が反転された反転信号となり、回路1220を介して回路1201に入力される。
【0461】
なお、
図37では、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子1206および回路1220を介して回路1201に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を反転させられることなく、回路1201に入力されてもよい。例えば、回路1201内に、入力端子から入力された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場合に、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
【0462】
また、
図37において、記憶素子1200に用いられるトランジスタのうち、トランジスタ1209以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素子1200に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体で形成されるトランジスタとすることもできる。または、記憶素子1200は、トランジスタ1209以外にも、チャネルが酸化物半導体で形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残りのトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることもできる。
【0463】
図37における回路1201には、例えばフリップフロップ回路を用いることができる。また、論理素子1206としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いることができる。
【0464】
本発明の一態様における半導体装置では、記憶素子1200に電源電圧が供給されない間は、回路1201に記憶されていたデータを、回路1202に設けられた容量素子1208によって保持することができる。
【0465】
また、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタはオフ電流が極めて小さい。例えば、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そのため、当該トランジスタをトランジスタ1209として用いることによって、記憶素子1200に電源電圧が供給されない間も容量素子1208に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶素子1200は電源電圧の供給が停止した間も記憶内容(データ)を保持することが可能である。
【0466】
また、スイッチ1203およびスイッチ1204を設けることによって、プリチャージ動作を行うことを特徴とする記憶素子であるため、電源電圧供給再開後に、回路1201が元のデータを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0467】
また、回路1202において、容量素子1208によって保持された信号はトランジスタ1210のゲートに入力される。そのため、記憶素子1200への電源電圧の供給が再開された後、容量素子1208によって保持された信号に応じてトランジスタ1210の状態(オン状態、またはオフ状態)が決まり、回路1202から読み出すことができる。それ故、容量素子1208に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能である。
【0468】
このような記憶素子1200を、プロセッサが有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、プロセッサ全体、もしくはプロセッサを構成する一つ、または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる。
【0469】
本実施の形態では、記憶素子1200をCPUに用いる例として説明したが、記憶素子1200は、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、PLD(Programmable Logic Device)等のLSI、RF(Radio Frequency)タグにも応用可能である。
【0470】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0471】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様のトランジスタを利用した表示装置の構成例について説明する。
【0472】
<表示装置回路構成例>
図38(A)は、本発明の一態様の表示装置の上面図であり、
図38(B)は、本発明の一態様の表示装置の画素に液晶素子を適用する場合に用いることができる画素回路を説明するための回路図である。また、
図38(C)は、本発明の一態様の表示装置の画素に有機EL素子を適用する場合に用いることができる画素回路を説明するための回路図である。
【0473】
画素部に配置するトランジスタは、先の実施の形態に従って形成することができる。また、当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャネル型トランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に上記実施の形態に示すトランジスタを用いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0474】
アクティブマトリクス型表示装置の上面図の一例を
図38(A)に示す。表示装置の基板700上には、画素部701、第1の走査線駆動回路702、第2の走査線駆動回路703、信号線駆動回路704を有する。画素部701には、複数の信号線が信号線駆動回路704から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路702、および第2の走査線駆動回路703から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装置の基板700はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている。
【0475】
図38(A)では、第1の走査線駆動回路702、第2の走査線駆動回路703、信号線駆動回路704は、画素部701と同じ基板700上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板700の外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増える。同じ基板700上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、または歩留まりの向上を図ることができる。なお、第1の走査線駆動回路702、第2の走査線駆動回路703、信号線駆動回路704のいずれかが基板700上に実装された構成や基板700の外部に設けられた構成としてもよい。
【0476】
<液晶表示装置>
また、画素の回路構成の一例を
図38(B)に示す。ここでは、一例としてVA型液晶表示装置の画素に適用することができる画素回路を示す。
【0477】
この画素回路は、一つの画素に複数の画素電極層を有する構成に適用できる。それぞれの画素電極層は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆動できるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画素電極層に印加する信号を、独立して制御できる。
【0478】
トランジスタ716の走査線712と、トランジスタ717の走査線713には、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、信号線714は、トランジスタ716とトランジスタ717で共通に用いられている。トランジスタ716とトランジスタ717は先の実施の形態で説明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
【0479】
また、トランジスタ716には、第1の画素電極層が電気的に接続され、トランジスタ717には、第2の画素電極層が電気的に接続される。第1の画素電極層と第2の画素電極層とは、それぞれ分離されている。なお、第1の画素電極層及び第2の画素電極層の形状としては、特に限定は無い。例えば、第1の画素電極層は、V字状とすればよい。
【0480】
トランジスタ716のゲート電極は走査線712と接続され、トランジスタ717のゲート電極は走査線713と接続されている。走査線712と走査線713に異なるゲート信号を与えてトランジスタ716とトランジスタ717の動作タイミングを異ならせ、液晶の配向を制御できる。
【0481】
また、容量配線710と、誘電体として機能するゲート絶縁層と、第1の画素電極層または第2の画素電極層と電気的に接続する容量電極とで保持容量を形成してもよい。
【0482】
マルチドメイン設計では、一画素に第1の液晶素子718と第2の液晶素子719を備える。第1の液晶素子718は第1の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成され、第2の液晶素子719は第2の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成される。
【0483】
なお、
図38(B)に示す画素回路は、これに限定されない。例えば、
図38(B)に示す画素回路に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、または論理回路などを追加してもよい。
【0484】
図39(A)、および
図39(B)は、液晶表示装置の上面図および断面図の一例である。なお、
図39(A)では表示装置20、表示領域21、周辺回路22、およびFPC(フレキシブルプリント基板)42を有する代表的な構成を図示している。
図39で示す表示装置は反射型液晶素子を用いている。
【0485】
図39(B)に
図39(A)の破線A−A’間、B−B’間、C−C’間、およびD−D’間の断面図を示す。A−A’間は周辺回路部を示し、B−B’間は表示領域を示し、C−C’間およびD−D’間はFPCとの接続部を示す。
【0486】
液晶素子を用いた表示装置20は、トランジスタ50およびトランジスタ52(実施の形態1で示したトランジスタ10)の他、導電層165、導電層197、絶縁層420、液晶層490、液晶素子80、容量素子60、容量素子62、絶縁層430、スペーサ440、着色層460、接着層470、導電層480、遮光層418、基板400、接着層473、接着層474、接着層475、接着層476、偏光板103、偏光板403、保護基板105、保護基板402、異方性導電層510を有する。
【0487】
<有機EL表示装置>
画素の回路構成の他の一例を
図38(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示装置の画素構造を示す。
【0488】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極の一方から電子が、他方から正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、電子および正孔が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0489】
図38(C)は、適用可能な画素回路の一例を示す図である。ここではnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。また、当該画素回路は、デジタル時間階調駆動を適用することができる。
【0490】
適用可能な画素回路の構成およびデジタル時間階調駆動を適用した場合の画素の動作について説明する。
【0491】
画素720は、スイッチング用トランジスタ721、駆動用トランジスタ722、発光素子724および容量素子723を有している。スイッチング用トランジスタ721は、ゲート電極層が走査線726に接続され、第1電極(ソース電極層およびドレイン電極層の一方)が信号線725に接続され、第2電極(ソース電極層およびドレイン電極層の他方)が駆動用トランジスタ722のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ722は、ゲート電極層が容量素子723を介して電源線727に接続され、第1電極が電源線727に接続され、第2電極が発光素子724の第1電極(画素電極)に接続されている。発光素子724の第2電極は共通電極728に相当する。共通電極728は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0492】
スイッチング用トランジスタ721および駆動用トランジスタ722には先の実施の形態で説明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL表示装置を提供することができる。
【0493】
発光素子724の第2電極(共通電極728)の電位は低電源電位に設定する。なお、低電源電位とは、電源線727に供給される高電源電位より低い電位であり、例えばGND、0Vなどを低電源電位として設定することができる。発光素子724の順方向のしきい値電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光素子724に印加することにより、発光素子724に電流を流して発光させる。なお、発光素子724の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。
【0494】
なお、容量素子723は駆動用トランジスタ722のゲート容量を代用することにより省略できる。
【0495】
次に、駆動用トランジスタ722に入力する信号について説明する。電圧入力電圧駆動方式の場合、駆動用トランジスタ722が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるようなビデオ信号を、駆動用トランジスタ722に入力する。なお、駆動用トランジスタ722を線形領域で動作させるために、電源線727の電圧よりも高い電圧を駆動用トランジスタ722のゲート電極層にかける。また、信号線725には、電源線電圧に駆動用トランジスタ722のしきい値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。
【0496】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ722のゲート電極層に発光素子724の順方向電圧に駆動用トランジスタ722のしきい値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。なお、駆動用トランジスタ722が飽和領域で動作するようにビデオ信号を入力し、発光素子724に電流を流す。また、駆動用トランジスタ722を飽和領域で動作させるために、電源線727の電位を、駆動用トランジスタ722のゲート電位より高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子724にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0497】
なお、画素回路の構成は、
図38(C)に示す画素構成に限定されない。例えば、
図38(C)に示す画素回路にスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタまたは論理回路などを追加してもよい。
【0498】
図38で例示した回路に上記実施の形態で例示したトランジスタを適用する場合、低電位側にソース電極(第1の電極)、高電位側にドレイン電極(第2の電極)がそれぞれ電気的に接続される構成とする。さらに、制御回路等により第1のゲート電極の電位を制御し、第2のゲート電極には図示しない配線によりソース電極に与える電位よりも低い電位を印加するなど、上記で例示した電位を入力可能な構成とすればよい。
【0499】
図40(A)、および
図40(B)は発光素子を用いた表示装置の上面図および断面図の一例である。なお、
図40(A)では表示装置24、表示領域21、周辺回路22、およびFPC(フレキシブルプリント基板)42を有する代表的な構成を図示している。
【0500】
図40(B)に
図40(A)の破線A−A’間、B−B’間、C−C’間の断面図を示す。A−A’間は周辺回路部を示し、B−B’間は表示領域を示し、C−C’間はFPCとの接続部を示す。
【0501】
発光素子を用いた表示装置24は、トランジスタ50およびトランジスタ52(実施の形態1で示したトランジスタ10)の他、絶縁層420、導電層197、導電層410、光学調整層530、EL層450、導電層415、発光素子70、容量素子60、容量素子62、絶縁層430、スペーサ440、着色層460、接着層470、隔壁445、遮光層418、基板400、異方性導電層510を有する。
【0502】
本明細書等において、例えば、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光素子、および発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、または様々な素子を有することができる。表示素子、表示装置、発光素子または発光装置は、例えば、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物および無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、量子ドット、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェロメトリック・モジュレーション)素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表示素子などの少なくとも一つを有している。これらの他にも、電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していても良い。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)またはSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インクまたは電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。
【0503】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0504】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用した表示モジュールについて、
図41を用いて説明を行う。
【0505】
<表示モジュール>
図41に示す表示モジュール6000は、上部カバー6001と下部カバー6002との間に、FPC6003に接続されたタッチパネル6004、FPC6005に接続された表示パネル6006、バックライトユニット6007、フレーム6009、プリント基板6010、バッテリー6011を有する。なお、バックライトユニット6007、バッテリー6011、タッチパネル6004などは、設けられない場合もある。
【0506】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル6006であったり、プリント基板に実装された集積回路に用いることができる。
【0507】
上部カバー6001および下部カバー6002は、タッチパネル6004および表示パネル6006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0508】
タッチパネル6004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル6006に重畳して用いることができる。また、表示パネル6006の対向基板(封止基板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。または、表示パネル6006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネル機能を付加することも可能である。または、表示パネル6006の各画素内にタッチセンサ用電極を設け、静電容量方式のタッチパネル機能を付加することも可能である。
【0509】
バックライトユニット6007は、光源6008を有する。光源6008をバックライトユニット6007の端部に設け、光拡散板を用いる構成としてもよい。
【0510】
フレーム6009は、表示パネル6006の保護機能の他、プリント基板6010から発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム6009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0511】
プリント基板6010は、電源回路、ビデオ信号およびクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリー6011であってもよい。なお、商用電源を用いる場合には、バッテリー6011を省略することができる。
【0512】
また、表示モジュール6000には、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
【0513】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0514】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置の使用例について説明する。
【0515】
<リードフレーム型のインターポーザを用いたパッケージ>
図42(A)に、リードフレーム型のインターポーザを用いたパッケージの断面構造を表す斜視図を示す。
図42(A)に示すパッケージは、本発明の一態様に係る半導体装置に相当するチップ1751が、ワイヤボンディング法により、インターポーザ1750上の端子1752と接続されている。端子1752は、インターポーザ1750のチップ1751がマウントされている面上に配置されている。そしてチップ1751はモールド樹脂1753によって封止されていてもよいが、各端子1752の一部が露出した状態で封止されるようにする。
【0516】
パッケージが回路基板に実装されている電子機器(携帯電話)のモジュールの構成を、
図42(B)に示す。
図42(B)に示す携帯電話のモジュールは、プリント配線基板1801に、パッケージ1802と、バッテリー1804とが実装されている。また、表示素子が設けられたパネル1800に、プリント配線基板1801がFPC1803によって実装されている。
【0517】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0518】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器及び照明装置について、図面を用いて説明する。
【0519】
<電子機器>
本発明の一態様の半導体装置を用いて、電子機器や照明装置を作製できる。また、本発明の一態様の半導体装置を用いて、信頼性の高い電子機器や照明装置を作製できる。また本発明の一態様の半導体装置を用いて、タッチセンサの検出感度が向上した電子機器や照明装置を作製できる。
【0520】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0521】
また、本発明の一態様の電子機器又は照明装置は可撓性を有する場合、家屋やビルの内壁もしくは外壁、又は、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0522】
また、本発明の一態様の電子機器は、二次電池を有していてもよく、非接触電力伝送を用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
【0523】
二次電池としては、例えば、ゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池(リチウムイオンポリマー電池)等のリチウムイオン二次電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などが挙げられる。
【0524】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器が二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0525】
図43(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体7101、筐体7102、表示部7103、表示部7104、マイク7105、スピーカー7106、操作キー7107、スタイラス7108等を有する。本発明の一態様に係る半導体装置は、筐体7101に内蔵されている集積回路、CPUなどに用いることができる。CPUにはノーマリオフ型のCPUを用いることで、低消費電力化することができ、従来よりも長い時間ゲームを楽しむことができる。表示部7103または表示部7104に本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、ユーザーの使用感に優れ、品質の低下が起こりにくい携帯型ゲーム機を提供することができる。なお、
図43(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部7103と表示部7104とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
【0526】
図43(B)は、スマートウオッチであり、筐体7302、表示部7304、操作ボタン7311、7312、接続端子7313、バンド7321、留め金7322、等を有する。本発明の一態様に係る半導体装置は筐体7302に内蔵されているメモリ、CPUなどに用いることができる。なお、
図43(B)に用いるディスプレイには反射型の液晶パネル、CPUにはノーマリオフ型のCPUを用いることで、低消費電力化することができて、日常における充電回数を減らすことができる。
【0527】
図43(C)は、携帯情報端末であり、筐体7501に組み込まれた表示部7502の他、操作ボタン7503、外部接続ポート7504、スピーカー7505、マイク7506、表示部7502などを備えている。本発明の一態様に係る半導体装置は、筐体7501に内蔵されているモバイル用メモリ、CPUなどに用いることができる。なお、ノーマリオフ型のCPUを用いることで、充電回数を減らすことができる。また、表示部7502は、非常に高精細とすることができるため、中小型でありながらフルハイビジョン、4k、または8kなど、様々な表示を行うことができ、非常に鮮明な画像を得ることができる。
【0528】
図43(D)はビデオカメラであり、第1筐体7701、第2筐体7702、表示部7703、操作キー7704、レンズ7705、接続部7706等を有する。操作キー7704およびレンズ7705は第1筐体7701に設けられており、表示部7703は第2筐体7702に設けられている。そして、第1筐体7701と第2筐体7702とは、接続部7706により接続されており、第1筐体7701と第2筐体7702の間の角度は、接続部7706により変更が可能である。表示部7703における映像を、接続部7706における第1筐体7701と第2筐体7702との間の角度に従って切り替える構成としても良い。レンズ7705の焦点となる位置には本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。本発明の一態様に係る半導体装置は、第1筐体7701に内蔵されている集積回路、CPUなどに用いることができる。
【0529】
図43(E)は、デジタルサイネージであり、電柱7901に設置された表示部7902を備えている。本発明の一態様に係る半導体装置は、表示部7902の表示パネルおよび内蔵されている制御回路に用いることができる。
【0530】
図44(A)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体8121、表示部8122、キーボード8123、ポインティングデバイス8124等を有する。本発明の一態様に係る半導体装置は、筐体8121内に内蔵されているCPUや、メモリに適用することができる。なお、表示部8122は、非常に高精細とすることができるため、中小型でありながら8kの表示を行うことができ、非常に鮮明な画像を得ることができる。
【0531】
図44(B)に自動車9700の外観を示す。
図44(C)に自動車9700の運転席を示す。自動車9700は、車体9701、車輪9702、ダッシュボード9703、ライト9704等を有する。本発明の一態様の半導体装置は、自動車9700の表示部、および制御用の集積回路に用いることができる。例えば、
図44(C)に示す表示部9710乃至表示部9715に本発明の一態様の半導体装置を設けることができる。
【0532】
表示部9710と表示部9711は、自動車のフロントガラスに設けられた表示装置、または入出力装置である。本発明の一態様の表示装置、または入出力装置は、表示装置、または入出力装置が有する電極を、透光性を有する導電性材料で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置、または入出力装置とすることができる。シースルー状態の表示装置、または入出力装置であれば、自動車9700の運転時にも視界の妨げになることがない。よって、本発明の一態様の表示装置、または入出力装置を自動車9700のフロントガラスに設置することができる。なお、表示装置、または入出力装置に、表示装置、または入出力装置を駆動するためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料を用いた有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いるとよい。
【0533】
表示部9712はピラー部分に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9712に映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。表示部9713はダッシュボード部分に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9713に映し出すことによって、ダッシュボードで遮られた視界を補完することができる。すなわち、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0534】
また、
図44(D)は、運転席と助手席にベンチシートを採用した自動車の室内を示している。表示部9721は、ドア部に設けられた表示装置、または入出力装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9721に映し出すことによって、ドアで遮られた視界を補完することができる。また、表示部9722は、ハンドルに設けられた表示装置である。表示部9723は、ベンチシートの座面の中央部に設けられた表示装置である。なお、表示装置を座面や背もたれ部分などに設置して、当該表示装置を、当該表示装置の発熱を熱源としたシートヒーターとして利用することもできる。
【0535】
表示部9714、表示部9715、または表示部9722はナビゲーション情報、スピードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。また、表示部に表示される表示項目やレイアウトなどは、使用者の好みに合わせて適宜変更することができる。なお、上記情報は、表示部9710乃至表示部9713、表示部9721、表示部9723にも表示することができる。また、表示部9710乃至表示部9715、表示部9721乃至表示部9723は照明装置として用いることも可能である。また、表示部9710乃至表示部9715、表示部9721乃至表示部9723は加熱装置として用いることも可能である。
【0536】
また、
図45(A)に、カメラ8000の外観を示す。カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッターボタン8004、結合部8005等を有する。またカメラ8000には、レンズ8006を取り付けることができる。
【0537】
結合部8005は、電極を有し、後述するファインダー8100のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0538】
ここではカメラ8000として、レンズ8006を筐体8001から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ8006と筐体8001が一体となっていてもよい。
【0539】
シャッターボタン8004を押すことにより、撮像することができる。また、表示部8002はタッチパネルとしての機能を有し、表示部8002をタッチすることにより撮像することも可能である。
【0540】
表示部8002に、本発明の一態様の表示装置、または入出力装置を適用することができる。
【0541】
図45(B)には、カメラ8000にファインダー8100を取り付けた場合の例を示している。
【0542】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する。
【0543】
筐体8101には、カメラ8000の結合部8005と係合する結合部を有しており、ファインダー8100をカメラ8000に取り付けることができる。また当該結合部には電極を有し、当該電極を介してカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示させることができる。
【0544】
ボタン8103は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン8103により、表示部8102の表示のオン・オフを切り替えることができる。
【0545】
筐体8101の中にある、集積回路、イメージセンサに本発明の一態様の半導体装置を適用することができる。
【0546】
なお、
図45(A)(B)では、カメラ8000とファインダー8100とを別の電子機器とし、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ8000の筐体8001に、本発明の一態様の表示装置、または入出力装置を備えるファインダーが内蔵されていてもよい。
【0547】
また、
図45(C)には、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示している。
【0548】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体8203、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バッテリー8206が内蔵されている。
【0549】
ケーブル8205は、バッテリー8206から本体8203に電力を供給する。本体8203は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部8204に表示させることができる。また、本体8203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動きを捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を入力手段として用いることができる。
【0550】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい。本体8203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、使用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知することにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部8201には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使用者の生体情報を表示部8204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭部の動きなどを検出し、表示部8204に表示する映像をその動きに合わせて変化させてもよい。
【0551】
本体8203の内部の集積回路に、本発明の一態様の半導体装置を適用することができる。
【0552】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0553】
(実施の形態11)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置を用いたRFタグの使用例について
図46を用いながら説明する。
【0554】
<RFタグの使用例>
RFタグの用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、
図46(A)参照)、乗り物類(自転車等、
図46(B)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、
図46(C)参照)、記録媒体(DVDやビデオテープ等、
図46(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、薬品や薬剤を含む医療品、または電子機器(液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、または携帯電話)等の物品、若しくは各物品に取り付ける荷札(
図46(E)、
図46(F)参照)等に設けて使用することができる。
【0555】
本発明の一態様に係るRFタグ4000は、表面に貼る、または埋め込むことにより、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込み、有機樹脂からなるパッケージであれば当該有機樹脂の内部に埋め込み、各物品に固定される。本発明の一態様に係るRFタグ4000は、小型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデザイン性を損なうことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証書類等に本発明の一態様に係るRFタグ4000を設けることにより、認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。また、乗り物類であっても、本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、盗難などに対するセキュリティ性を高めることができる。
【0556】
以上のように、本発明の一態様に係わる半導体装置を用いたRFタグを、本実施の形態に挙げた各用途に用いることにより、情報の書込みや読み出しを含む動作電力を低減できるため、最大通信距離を長くとることが可能となる。また、電力が遮断された状態であっても情報を極めて長い期間保持可能であるため、書き込みや読み出しの頻度が低い用途にも好適に用いることができる。
【0557】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。