(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチングパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0025】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0026】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0027】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0028】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置の構成例について説明する。
【0030】
[回路図の構成例]
図1(A)は、表示装置が有する画素の回路図である。
【0031】
画素PIXは、トランジスタM1と、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子C1と、発光素子ELと、を有する。画素PIXは、走査線GL、信号線SL、電流供給線ANODE、配線V0、共通配線CATHODEに接続される。画素PIXは、カラー表示を行う画素が有する副画素に相当する。なおトランジスタM1乃至M3は、nチャネル型のトランジスタとして説明するが、pチャネル型であってもよい。
【0032】
走査線GLは走査信号を画素に供給する配線である。走査信号は、供給されるトランジスタの導通状態を制御する信号である。信号線SLは画像データに応じた信号を画素に供給する配線である。電流供給線ANODEおよび共通配線CATHODEは発光素子ELに電流を流すための配線である。配線V0は、定電圧が与えられる配線である。
【0033】
トランジスタM1と、トランジスタM2とは、半導体層の上下にゲート電極が設けられる構造である。半導体層の下側にある金属材料で構成されるゲート電極を第1のゲート電極(ボトムゲート電極ともいう)という。半導体層の上側にある金属酸化物材料で構成されるゲート電極を第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)という。トランジスタM1およびM2に適用可能なトランジスタの構成例については、後述する。なお
図1(A)ではトランジスタM3についても、トランジスタM1、M2と同じ構造のトランジスタであるとして説明するが、これに限らない。なお金属酸化物材料は、金属元素と、酸素と、を有する材料である。
【0034】
トランジスタM1の第1のゲート電極は、走査線GLに接続される。トランジスタM1の第2のゲート電極は、配線V0に接続される。トランジスタM1のソースまたはドレインの一方は、信号線SLに接続される。トランジスタM1のソースまたはドレインの他方は、トランジスタM3の第1のゲートおよび第2のゲート電極、ならびに容量素子C1の一方の電極に接続される。
【0035】
トランジスタM2の第1のゲート電極は、走査線GLに接続される。トランジスタM2の第2のゲート電極は、配線V0に接続される。トランジスタM2のソースまたはドレインの一方は、配線V0に接続される。トランジスタM2のソースまたはドレインの他方は、トランジスタM3のソースまたはドレインの一方、容量素子C1の他方の電極、および発光素子ELの一方の電極に接続される。
【0036】
トランジスタM3の第1のゲート電極は、トランジスタM1のソースまたはドレインの他方、トランジスタM3の第2のゲート電極、および容量素子C1の一方の電極に接続される。トランジスタM3のソースまたはドレインの一方は、トランジスタM2のソースまたはドレインの他方、容量素子C1の他方の電極、および発光素子ELの一方の電極に接続される。トランジスタM3のソースまたはドレインの他方は、電流供給線ANODEに接続される。
【0037】
容量素子C1の一方の電極は、トランジスタM1のソースまたはドレインの他方、トランジスタM3の第1のゲート電極、およびトランジスタM3の第2のゲート電極に接続される。容量素子C1の他方の電極は、トランジスタM2のソースまたはドレインの他方、トランジスタM3のソースまたはドレインの一方、および発光素子ELの一方の電極に接続される。
【0038】
発光素子ELの一方の電極は、トランジスタM2のソースまたはドレインの他方、トランジスタM3のソースまたはドレインの一方、および容量素子C1の他方の電極に接続される。発光素子ELの他方の電極は、共通配線CATHODEに接続される。
【0039】
トランジスタM1の第1のゲート電極と、トランジスタM2の第1のゲート電極とが接続される走査線GLは、半導体層の下側にある金属材料で形成される。走査線GLは、トランジスタM1の第1のゲート電極およびトランジスタM2の第1のゲート電極と、開口部を介することなく接続される。トランジスタM1の第2のゲート電極と、トランジスタM2の第2のゲート電極とが接続される配線V0は、トランジスタM1およびM2の上層にある導電層を構成する金属材料で形成される。配線V0は、トランジスタM1の第2のゲート電極およびトランジスタM2の第2のゲート電極と、開口部を介して接続される。
【0040】
次いで
図1(B)には、
図1(A)の回路の簡単な動作を説明するための、タイミングチャートを示す。
図1(B)では、n行目の走査線GL(n)における一走査選択期間(P
SCAN)を図示しており、P
SCANにおいて配線V0の電圧、および信号線SLの画像信号、の様子を図示している。
【0041】
図1(B)に示すように、P
SCANにおいて信号線SLの画像信号は(n−1)行目の信号DATA(n−1)から(n)行目の信号DATA(n)に切り替わる。この間、配線V0の電圧は、定電圧V
0とする。
【0042】
上記構成では、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成とする。当該構成によって、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量が第1のゲート電極との間に形成されるだけとすることができる。配線V0は定電圧が与えられるため、配線V0とトランジスタM1およびM2との間のゲート容量は問題とならない。したがって上記構成は、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量を小さくできる。また配線V0に与える定電圧V
0を制御することで、トランジスタM1およびM2の閾値電圧を調整できるといった効果もある。
【0043】
また上記構成では、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と同層に金属材料で構成される走査線GLを配置する構成とすることができる。そのため、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成する構成を採用しても、走査線GLの抵抗が高くなってしまうといった問題を回避できる。また走査線GLの抵抗を下げるために、余分に金属材料による配線を設ける分の製造コストを低減することができる。
【0044】
また上記構成では、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成できる。そのため、加熱により酸素を放出するゲート電極を第2のゲート電極に採用し、トランジスタの信頼性を高めることができる。加えて、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成のため、画素領域のように狭い領域で互いのゲート電極を接続しない構成を採用できるため、高精細な表示装置を実現することができる。
【0045】
[トランジスタの構成例]
ここでトランジスタM1、M2に適用可能なトランジスタの構成例について、
図2(A)乃至(C)を用いて説明する。
【0046】
図2(A)(B)(C)に、トランジスタを有する半導体装置の一例を示す。なお
図2(A)乃至(C)に示すトランジスタは、半導体層の上下にゲート電極が設けられる構造である。
【0047】
図2(A)は、トランジスタ100の上面図であり、
図2(B)は
図2(A)の一点鎖線X1−X2間の断面図であり、
図2(C)は
図2(A)の一点鎖線Y1−Y2間の断面図である。なお、
図2(A)では、明瞭化のため、絶縁層110などの構成要素を省略して図示している。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても
図2(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。また、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長(L)方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅(W)方向と呼称する場合がある。
【0048】
図2(A)乃至(C)に示すトランジスタ100は、基板102上に形成された導電層106と、導電層106上の絶縁層104と、絶縁層104上の酸化物半導体層108と、酸化物半導体層108上の絶縁層110と、絶縁層110上の酸化物半導体層112と、絶縁層104、酸化物半導体層108、及び酸化物半導体層112上の絶縁層116と、を有する。また、酸化物半導体層108は、絶縁層110と接するチャネル領域108iと、絶縁層116と接するソース領域108sと、絶縁層116と接するドレイン領域108dと、を有する。
【0049】
また、トランジスタ100は、絶縁層116に設けられた開口部141aを介して、ソース領域108sに電気的に接続される導電層120aと、絶縁層116に設けられた開口部141bを介して、ドレイン領域108dに電気的に接続される導電層120bと、を有していてもよい。
【0050】
なお、導電層106は、第1のゲート電極としての機能を有し、金属材料で構成される。酸化物半導体層112は、第2のゲート電極としての機能を有し、金属酸化物材料で構成される。また、絶縁層104は、第1のゲート絶縁層としての機能を有し、絶縁層110は、第2のゲート絶縁層としての機能を有する。
【0051】
また、絶縁層116は、窒素または水素のいずれか一方または双方を有する。絶縁層116が窒素または水素のいずれか一方または双方を有する構成とすることで、酸化物半導体層108、及び酸化物半導体層112に窒素または水素のいずれか一方または双方を供給することができる。
【0052】
絶縁層116としては、例えば、窒化物絶縁層が挙げられる。該窒化物絶縁層としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等を用いて形成することができる。絶縁層116に含まれる水素濃度は、1×10
22atoms/cm
3以上であると好ましい。
【0053】
また、酸化物半導体層112は、絶縁層110に酸素を供給する機能を有する。酸化物半導体層112が、絶縁層110に酸素を供給する機能を有することで、絶縁層110中に過剰酸素を含ませることが可能となる。絶縁層110が過剰酸素領域を有することで、酸化物半導体層108、より具体的にはチャネル領域108i中に当該過剰酸素を供給することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0054】
絶縁層110としては、酸化物絶縁層または窒化物絶縁層を単層または積層して形成することができる。絶縁層110として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。
【0055】
酸化物半導体層108の上方に形成される絶縁層110に過剰酸素を有する構成とすることで、チャネル領域108iにのみ選択的に過剰酸素を供給させることが可能となる。あるいは、チャネル領域108i、ソース領域108s、及びドレイン領域108dに過剰酸素を供給させたのち、ソース領域108s、及びドレイン領域108dのキャリア密度を選択的に高めればよい。
【0056】
なお絶縁層110の膜厚は、絶縁層104の膜厚より小さい構成とすることが好適である。上述したように第2のゲート電極として機能する酸化物半導体層112は、配線V0より定電圧となる。絶縁層110の膜厚が小さいことで、第2のゲート電極、第2のゲート絶縁層および酸化物半導体層108でトランジスタ100に容量の大きい寄生容量を設けることができる。そのため、静電気放電等によるトランジスタの絶縁破壊を抑制することができる。
【0057】
酸化物半導体層112は、絶縁層110に酸素を供給したのち、絶縁層116から窒素または水素のいずれか一方または双方が供給されることで、キャリア密度が高くなる。別言すると、酸化物半導体層112は、酸化物導電体(OC:Oxide Conductor)としての機能も有する。したがって、酸化物半導体層112は、酸化物半導体層108よりもキャリア密度が高くなる。
【0058】
酸化物半導体層108が有するソース領域108s、及びドレイン領域108d、並びに酸化物半導体層112は、それぞれ、酸素欠損を形成する元素を有していてもよい。上記酸素欠損を形成する元素としては、代表的には水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、希ガス元素等が挙げられる。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。
【0059】
不純物元素が酸化物半導体層に添加されると、酸化物半導体層中の金属元素と酸素の結合が切断され、酸素欠損が形成される。または、不純物元素が酸化物半導体層に添加されると、酸化物半導体層中の金属元素と結合していた酸素が不純物元素と結合し、金属元素から酸素が脱離され、酸素欠損が形成される。これらの結果、酸化物半導体層においてキャリア密度が増加し、導電性が高くなる。
【0060】
トランジスタ100において、絶縁層110の側端部と、酸化物半導体層112の側端部とが、揃う領域を有すると好ましい。別言すると、トランジスタ100において、絶縁層110の上端部と、酸化物半導体層112の下端部が概略揃う構成である。例えば、酸化物半導体層112をマスクとして絶縁層110を加工することで、上記構造とすることができる。
【0061】
酸化物半導体層108及び酸化物半導体層112は、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、またはSn)等の金属酸化物で形成される。また、酸化物半導体層108及び酸化物半導体層112として、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物を用いてもよい。とくに、酸化物半導体層108と、酸化物半導体層112とは、同じ構成元素からなる金属酸化物で形成されると、製造コストを低減できるため好ましい。
【0062】
酸化物半導体層108、及び酸化物半導体層112がIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:7等が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体層108、及び酸化物半導体層112の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%程度変動することがある。例えば、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1を用いる場合、成膜される酸化物半導体層の原子数比は、In:Ga:Zn=4:2:3近傍となる場合がある。
【0063】
チャネル領域108iとして、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体層を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。あるいは、真性、または実質的に真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、当該酸化物半導体層にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやすい。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体層は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体層は、オフ電流が著しく小さい特性を得ることができる。従って、当該酸化物半導体層にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。
【0064】
一方で、ソース領域108s、ドレイン領域108d、及び酸化物半導体層112は、絶縁層116と接する。ソース領域108s、ドレイン領域108d、及び酸化物半導体層112が絶縁層116と接することで、絶縁層116からソース領域108s、ドレイン領域108d、及び酸化物半導体層112に水素及び窒素のいずれか一方または双方が添加されるため、キャリア密度が高くなる。
【0065】
酸化物半導体層のキャリア密度について、以下に説明を行う。
【0066】
酸化物半導体層のキャリア密度に影響を与える因子としては、酸化物半導体層中の酸素欠損(Vo)、または酸化物半導体層中の不純物などが挙げられる。
【0067】
酸化物半導体層中の酸素欠損が多くなると、該酸素欠損に水素が結合(この状態をVoHともいう)した際に、欠陥準位密度が高くなる。または、酸化物半導体層中の不純物が多くなると、該不純物に起因し欠陥準位密度が高くなる。したがって、酸化物半導体層中の欠陥準位密度を制御することで、酸化物半導体層のキャリア密度を制御することができる。
【0068】
ここで、酸化物半導体層をチャネル領域に用いるトランジスタを考える。
【0069】
トランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトの抑制、またはトランジスタのオフ電流の低減を目的とする場合においては、酸化物半導体層のキャリア密度を低くする方が好ましい。酸化物半導体層のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体層中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。高純度真性の酸化物半導体層のキャリア密度としては、8×10
15cm
−3未満、好ましくは1×10
11cm
−3未満、さらに好ましくは1×10
10cm
−3未満であり、1×10
−9cm
−3以上とすればよい。
【0070】
一方で、トランジスタのオン電流の向上、またはトランジスタの電界効果移動度の向上を目的とする場合においては、酸化物半導体層のキャリア密度を高くする方が好ましい。酸化物半導体層のキャリア密度を高くする場合においては、酸化物半導体層の不純物濃度をわずかに高める、または酸化物半導体層の欠陥準位密度をわずかに高めればよい。あるいは、酸化物半導体層のバンドギャップをより小さくするとよい。例えば、トランジスタのId−Vg特性のオン/オフ比が取れる範囲において、不純物濃度がわずかに高い、または欠陥準位密度がわずかに高い酸化物半導体層は、実質的に真性とみなせる。また、電子親和力が大きく、それにともなってバンドギャップが小さくなり、その結果、熱励起された電子(キャリア)の密度が増加した酸化物半導体層は、実質的に真性とみなせる。なお、より電子親和力が大きな酸化物半導体層を用いた場合には、トランジスタのしきい値電圧がより低くなる。
【0071】
上述のキャリア密度が高められた酸化物半導体層は、わずかにn型化している。したがって、キャリア密度が高められた酸化物半導体層を、「Slightly−n」と呼称してもよい。
【0072】
実質的に真性の酸化物半導体層のキャリア密度は、1×10
5cm
−3以上1×10
18cm
−3未満が好ましく、1×10
7cm
−3以上1×10
17cm
−3以下がより好ましく、1×10
9cm
−3以上5×10
16cm
−3以下がさらに好ましく、1×10
10cm
−3以上1×10
16cm
−3以下がさらに好ましく、1×10
11cm
−3以上1×10
15cm
−3以下がさらに好ましい。
【0073】
また、上述の実質的に真性の酸化物半導体層を用いることで、トランジスタの信頼性が向上する場合がある。ここで、
図23を用いて、酸化物半導体層をチャネル領域に用いるトランジスタの信頼性が向上する理由について説明する。
図23は、酸化物半導体層をチャネル領域に用いるトランジスタにおけるエネルギーバンドを説明する図である。
【0074】
図23において、GEはゲート電極を、GIはゲート絶縁膜を、OSは酸化物半導体層を、SDはソース電極またはドレイン電極を、それぞれ表す。すなわち、
図23は、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、酸化物半導体層と、酸化物半導体層に接するソース電極またはドレイン電極のエネルギーバンドの一例である。
【0075】
また、
図23において、ゲート絶縁膜としては、酸化シリコン膜を用い、酸化物半導体層にIn−Ga−Zn酸化物を用いる構成である。また、酸化シリコン膜中に形成されうる欠陥の遷移レベル(εf)はゲート絶縁膜の伝導帯下端から約3.1eV離れた位置に形成されるものとし、ゲート電圧(Vg)が30Vの場合の酸化物半導体層と酸化シリコン膜との界面における酸化シリコン膜のフェルミ準位(Ef)はゲート絶縁膜の伝導帯下端から約3.6eV離れた位置に形成されるものとする。なお、酸化シリコン膜のフェルミ準位は、ゲート電圧に依存し変動する。例えば、ゲート電圧を大きくすることで、酸化物半導体層と、酸化シリコン膜との界面における酸化シリコン膜のフェルミ準位(Ef)は低くなる。また、
図23中の白丸は電子(キャリア)を表し、
図23中のXは酸化シリコン膜中の欠陥準位を表す。
【0076】
図23に示すように、ゲート電圧が印加された状態で、例えばキャリアが熱励起されると、欠陥準位(図中X)にキャリアがトラップされ、プラス(“+”)からニュートラル(“0”)に欠陥準位の荷電状態が変化する。すなわち、酸化シリコン膜のフェルミ準位(Ef)に上述の熱励起のエネルギーを足した値が欠陥の遷移レベル(εf)よりも高くなる場合、酸化シリコン膜中の欠陥準位の荷電状態は正の状態から中性となり、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向に変動することになる。
【0077】
また、電子親和力が異なる酸化物半導体層を用いると、ゲート絶縁膜と酸化物半導体層との界面のフェルミ準位が形成される深さが異なることがある。電子親和力の大きな酸化物半導体層を用いると、ゲート絶縁膜と酸化物半導体層との界面近傍において、ゲート絶縁膜の伝導帯下端が相対的に高くなる。この場合、ゲート絶縁膜中に形成されうる欠陥準位(
図23中X)も相対的に高くなるため、ゲート絶縁膜のフェルミ準位と酸化物半導体層のフェルミ準位とのエネルギー差が大きくなる。該エネルギー差が大きくなることにより、ゲート絶縁膜中にトラップされる電荷が少なくなる、例えば、上述の酸化シリコン膜中に形成されうる欠陥準位の荷電状態の変化が少なくなり、ゲートバイアス熱(Gate Bias Temperature:GBTともいう)ストレスにおける、トランジスタのしきい値電圧の変動を小さくできる。
【0078】
以上が、酸化物半導体層のキャリア密度についての説明である。
【0079】
また、
図2(C)に示すように、酸化物半導体層108iは、第1のゲート電極として機能する導電層106と、第2のゲート電極として機能する酸化物半導体層112のそれぞれと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電層または酸化物半導体層に挟まれている。
【0080】
このような構成を有することで、トランジスタ100に含まれる酸化物半導体層108を、第1のゲート電極として機能する導電層106の走査信号による電界、及び第2のゲート電極として機能する酸化物半導体層112の定電圧による電界、によって電気的に取り囲むことができる。
【0081】
トランジスタ100は、
図1(A)で説明したように、第1のゲート電極からトランジスタ100の導通状態を制御する走査信号を与え、および第2のゲート電極から定電圧を与える構成である。そのため、配線V0は定電圧が与えられるため、配線V0とトランジスタM1およびM2との間のゲート容量は問題とならず、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量を小さくできる。
【0082】
またトランジスタ100は、第1のゲート電極と同層に設けられる走査線によって、導通状態を制御する構成とする。第1のゲート電極は金属材料である。金属材料は、第2のゲート電極である酸化物半導体層112等の金属酸化物材料に比べて抵抗値が小さい。そのため導電層106と同じ材料で形成される走査線の抵抗を小さくすることができる。
【0083】
またトランジスタ100は、酸化物層のように加熱により酸素を放出するゲート電極として、第2のゲート電極として機能する酸化物半導体層112を有する。そのため、トランジスタ100は高い信頼性を有するトランジスタとすることができる。また、上述したように第1のゲート電極である導電層106および同層にある走査線は抵抗を小さくすることができ、第2のゲート電極の抵抗が大きくなってしまうといった欠点を補うことができる。また、第2のゲート電極である酸化物半導体層の抵抗を下げるために、酸化物半導体層と金属配線を積層して抵抗を下げる構成に比べて、工程が削減できるため、製造コストを低減できる。
【0084】
またトランジスタ100は、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続するための開口部がない。したがって、画素領域のように狭い領域で開口部を配置する構成を回避することができる。そのため、高精細な表示装置に好適である。
【0085】
[上面図の構成例]
次いで
図3では、発光素子等の構成を除く、
図1(A)の回路構成に適用可能な上面図の一例を示す。また
図4は、
図3の上面図における上下関係にある導電層および半導体層等を層毎に分け、開口部を介して接続される様子を図示したものである。また
図5(A)は、
図3の点線P1−P2間の断面図であり、
図5(B)は、
図3の点線Q1−Q2間の断面図である。また
図6(A)、(B)は、発光素子等の構成を含む、
図3の上面図を並べて示した上面図である。
【0086】
図3の上面図では、走査線GLと、信号線SLと、配線V0と、電流供給線ANODEと、トランジスタM1と、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子C1と、を図示している。導電層および酸化物半導体層の層構造において、絶縁層等については図示を省略している。
【0087】
図3における各配線等を構成する導電層および酸化物半導体層の層構造は、
図4および
図5より理解される。基板SUB上に、第1のゲート電極として機能する導電層151および導電層152が設けられている。次いで、第1のゲート絶縁層として機能する絶縁層153を介して酸化物半導体層161、酸化物半導体層162および酸化物半導体層163が設けられている。次いで、第2のゲート絶縁層として機能する絶縁層164を介して、第2のゲート電極として機能する酸化物半導体層171、酸化物半導体層172および酸化物半導体層173が設けられている。次いで、酸化物半導体層161、酸化物半導体層162および酸化物半導体層163、並びに酸化物半導体層171、酸化物半導体層172および酸化物半導体層173中のキャリア密度を選択的に高めて導電性を高める絶縁層174を介して、トランジスタのソース電極、ドレイン電極、あるいは各種配線として機能する導電層181、導電層182、導電層183、導電層184、および導電層185が設けられている。次いで、層間絶縁層として機能する絶縁層186および絶縁層187を介して、導電層191および導電層192が設けられている。導電層191および導電層192上には、層間絶縁層として機能する絶縁層193が設けられている。また絶縁層186、絶縁層187および絶縁層193には導電層183に達する開口部190が設けられている。この開口部190は、その後画素電極を形成し、その上に設けられる発光素子と接続するための開口部である。
【0088】
また
図3および
図4中、正方形にバツ印を付した構成は絶縁層に形成した開口部を表している。開口部によって、
図4の矢印で表すように各層の導電層および酸化物半導体層が接続される。また
図4には、走査線GLとなる導電層151、信号線SLとなる導電層191、配線V0となる導電層181、電流供給線ANODEとなる導電層192を図示している。
【0089】
図3、
図4および
図5の図からわかるように、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成としている。当該構成によって、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタM1およびM2との間のゲート容量が第1のゲート電極との間に形成されるだけとすることができる。したがって上記構成は、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量を小さくできる。
【0090】
また
図3、
図4および
図5の図からわかるように、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と同層に金属材料で構成される走査線GLを配置する構成とすることができる。そのため、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成する構成を採用しても、走査線GLの抵抗が高くなってしまうといった問題を回避できる。また走査線GLの抵抗を下げるために、余分に金属材料による配線を設ける分の製造コストを低減することができる。
【0091】
また
図3、
図4および
図5の図からわかるように、容量素子C1を形成する2つの電極を導電層152と、酸化物半導体層163とで構成することができる。2つの電極間にある絶縁層153を薄くすることで容量の大きい容量素子とすることができる。
【0092】
また
図6(A)では、
図3乃至
図5で説明した画素を、3色(例えば赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の副画素として2×3の画素として図示した上面図である。
図6(A)において、m行、(m+1行)の2行、n列、(n+1)列、(n+2)列の3列に配置された副画素(R1、R2、G1、G2、B1、B2)を図示している。また
図6(A)では、
図3乃至
図5で説明した開口部190の他、発光素子ELを構成する発光層198、および隔壁層199を図示している。また
図6(A)では、m行目の走査線GL_mと、(m+1)行目の走査線GL_m+1と、n列目の信号線SL_nと、(n+1)列目の信号線SL_n+1と、(n+2)列目の信号線SL_n+2と、配線V0と、電流供給線ANODEと、を図示している。
【0093】
また
図6(B)では、
図6(A)で示した上面図を模式的に表した図である。
図6(B)において、領域22は発光層198および隔壁層199等が設けられる領域であり、領域24はトランジスタM1乃至M3等を含む回路が設けられる領域である。
図6(A)でも図示するように開口部190は領域24の中央付近に配置される。領域24を領域22に重ねずにずらして配置することで、開口部190は領域22の端部に配置することができる。当該構成とすることで、発光する領域を開口部190の位置によることなく配置することができる。
【0094】
[変形例]
本発明の一態様について適用できる回路構成は、
図1(A)のトランジスタM1乃至M3を有する画素構成に限らない。例えば、
図7(A)に示すように2つ以下のトランジスタを有する画素構成についても適用可能である。
【0095】
図7(A)に示す画素構成は、トランジスタM4と、トランジスタM5と、容量素子C2と、発光素子ELと、を有する。つまり
図1(A)におけるトランジスタM2を省略した回路構成に相当する。
【0096】
図7(A)に示す構成においても、トランジスタM4において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成とする。当該構成によって、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量が第1のゲート電極との間に形成されるだけとすることができる。配線V0は定電圧が与えられるため、配線V0とトランジスタM4との間のゲート容量は問題とならない。したがって上記構成は、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量を小さくできる。また配線V0に与える定電圧を制御することで、トランジスタM4の閾値電圧を調整できるといった効果もある。
【0097】
また上記構成では、トランジスタM4において、第1のゲート電極と同層に金属材料で構成される走査線GLを配置する構成とすることができる。そのため、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成する構成を採用しても、走査線GLの抵抗が高くなってしまうといった問題を回避できる。また走査線GLの抵抗を下げるために、余分に金属材料による配線を設ける分の製造コストを低減することができる。
【0098】
また上記構成では、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成できる。そのため、加熱により酸素を放出するゲート電極を第2のゲート電極に採用し、トランジスタの信頼性を高めることができる。加えて、トランジスタM4において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成のため、画素領域のように狭い領域で互いのゲート電極を接続しない構成を採用できるため、高精細な表示装置を実現することができる。
【0099】
本発明の一態様について適用できる回路構成は、
図1(A)、
図7(A)の画素構成に限らない。例えば、
図7(B)に示すように3つ以上のトランジスタを有する画素構成についても適用可能である。
【0100】
図7(B)に示す画素構成は、トランジスタM6と、トランジスタM7と、トランジスタM8と、トランジスタM9と、トランジスタM10と、トランジスタM11と、容量素子C3と、容量素子C4と、容量素子C5と、発光素子ELと、を有する。また当該画素構成は、信号線SL、電流供給線ANODE、配線V0、共通配線CATHODEの他、走査線GL1乃至GL4、配線V1、V2によって動作する。配線V1、V2は定電圧が与えられる配線である。
【0101】
図7(B)に示す構成においても、トランジスタM6乃至M10において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成とする。当該構成によって、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GL1乃至GL4とトランジスタとの間のゲート容量が第1のゲート電極との間に形成されるだけとすることができる。配線V0は定電圧が与えられるため、配線V0とトランジスタM6乃至M10との間のゲート容量は問題とならない。したがって上記構成は、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GL1乃至GL4とトランジスタとの間のゲート容量を小さくできる。また配線V0に与える定電圧を制御することで、トランジスタM6乃至M10の閾値電圧を調整できるといった効果もある。
【0102】
また上記構成では、トランジスタM6乃至M10において、第1のゲート電極と同層に金属材料で構成される走査線GL1乃至GL4を配置する構成とすることができる。そのため、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成する構成を採用しても、走査線GL1乃至GL4の抵抗が高くなってしまうといった問題を回避できる。また走査線GL1乃至GL4の抵抗を下げるために、余分に金属材料による配線を設ける分の製造コストを低減することができる。
【0103】
また上記構成では、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成できる。そのため、加熱により酸素を放出するゲート電極を第2のゲート電極に採用し、トランジスタの信頼性を高めることができる。加えて、トランジスタM6乃至M10において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成のため、画素領域のように狭い領域で互いのゲート電極を接続しない構成を採用できるため、高精細な表示装置を実現することができる。
【0104】
また
図1(A)において、トランジスタM3は、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続する構成について示したが、本発明の一態様はこの構成に限らない。例えば、
図8(A)に示すようにトランジスタM3の第2のゲート電極は、配線V0に接続される構成としてもよい。
【0105】
あるいは、例えば、
図8(B)に示すようにトランジスタM3の第1のゲート電極は、省略する構成としてもよい。あるいは、例えば、
図8(C)に示すようにトランジスタM3の第1のゲート電極は、トランジスタM3のソースまたはドレインの一方に接続される構成としてもよい。
【0106】
図8(A)乃至(C)に示す構成においても、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成とする。当該構成によって、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量が第1のゲート電極との間に形成されるだけとすることができる。配線V0は定電圧が与えられるため、配線V0とトランジスタM1およびM2との間のゲート容量は問題とならない。したがって上記構成は、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量を小さくできる。また配線V0に与える定電圧を制御することで、トランジスタM1およびM2の閾値電圧を調整できるといった効果もある。
【0107】
また上記構成では、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と同層に金属材料で構成される走査線GLを配置する構成とすることができる。そのため、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成する構成を採用しても、走査線GLの抵抗が高くなってしまうといった問題を回避できる。また走査線GLの抵抗を下げるために、余分に金属材料による配線を設ける分の製造コストを低減することができる。
【0108】
また上記構成では、第1のゲート電極を金属材料で構成される導電層で形成し、第2のゲート電極を、酸化物半導体のような金属酸化物材料で構成される導電層で形成できる。そのため、加熱により酸素を放出するゲート電極を第2のゲート電極に採用し、トランジスタの信頼性を高めることができる。加えて、トランジスタM1およびM2において、第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成のため、画素領域のように狭い領域で互いのゲート電極を接続しない構成を採用できるため、高精細な表示装置を実現することができる。
【0109】
また
図1(A)において、トランジスタM1およびトランジスタM2における第2のゲート電極の双方が、配線V0に接続される構成を示したが、本発明の一態様はこの構成に限らない。例えば、
図24(A)に示すように、トランジスタM1の第2のゲート電極が配線V0に接続され、トランジスタM2の第2のゲート電極は走査線GLに接続される構成としてもよい。当該構成により、トランジスタM2の電流供給能力を高めることができる。
【0110】
あるいは、例えば、
図24(B)に示すように、トランジスタM2の第2のゲート電極が配線V0に接続され、トランジスタM1の第2のゲート電極は走査線GLに接続される構成としてもよい。当該構成により、トランジスタM1の電流供給能力を高めることができる。
【0111】
また
図1(A)において、走査線GLは、複数の走査線GL1、GL2としてもよい。例えば、
図25(A)に示すように、トランジスタM1の第1のゲート電極が走査線GL1に接続され、トランジスタM2の第1のゲート電極は走査線GL2に接続される構成としてもよい。
【0112】
また
図1(A)において、配線V0は、複数の配線V0_1、V0_2としてもよい。例えば、
図25(B)に示すように、トランジスタM1の第2のゲート電極が配線V0_1に接続され、トランジスタM2の第2のゲート電極は配線V0_1に接続される構成としてもよい。
【0113】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0114】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置の断面構成例について説明する。
【0115】
〔表示装置の構成例〕
図9に、以下で説明する表示装置10の上面概略図を示す。表示装置10は、画素部11、走査線駆動回路12、信号線駆動回路13、端子部15、複数の配線16a、及び複数の配線16b等を有する。
【0116】
〔断面構成例1〕
図10は、表示装置10の断面概略図である。
図10は、例えば
図9中の切断線A1−A2に沿った断面に相当する。
【0117】
表示装置10は、第1の基板201と、第2の基板202とが接着層220によって貼り合わされた構成を有する。
【0118】
第1の基板201上には、端子部15、配線16b、信号線駆動回路13を構成するトランジスタ255、画素部11を構成するトランジスタ251、トランジスタ252、容量素子253、発光素子254等が設けられている。また第1の基板201上には、絶縁層211、絶縁層212、絶縁層213、絶縁層214、スペーサ215等が設けられている。
【0119】
第2の基板202の第1の基板201側には、絶縁層221、遮光層231、着色層232、構造物230a、構造物230b等が設けられている。
【0120】
絶縁層213上に、発光素子254が設けられている。発光素子254は、第1の電極として機能する画素電極225、EL層222、第2の電極223を有する。また画素電極225とEL層222との間には、光学調整層224が設けられている。絶縁層214は、画素電極225及び光学調整層224の端部を覆って設けられている。
【0121】
トランジスタ251は、上記実施の形態1の
図1(A)で説明したトランジスタM1またはM2として機能するトランジスタである。トランジスタ252は、上記実施の形態1の
図1(A)で説明したトランジスタM3として機能するトランジスタである。
【0122】
トランジスタ251、252、255には、第1のゲート電極として機能する導電層275、および第2のゲート電極として機能する導電層272が設けられている。すなわち、チャネルが形成される半導体を2つのゲート電極で挟持した構成である。導電層275は上記実施の形態1の
図2で説明した第1のゲート電極として機能する導電層106に対応する。導電層272は上記実施の形態1の
図2で説明した第2のゲート電極として機能する酸化物半導体層112に対応する。
【0123】
導電層275は、酸素を放出することで半導体層271の酸素欠損を修復できる電極とすることにより、トランジスタの電気特性を安定化させることが可能となる。
【0124】
またトランジスタ252のように発光素子に接続されるトランジスタでは、2つのゲート電極を電気的に接続するなどして、これらに同じ信号を与える構成とすることが好ましい。このようなトランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。その結果、高速動作が可能な回路を作製することができる。
【0125】
図10では、導電層274の一部と、絶縁層217の一部と、導電層273の一部とにより構成されるが、容量素子253は、導電層275の一部と、絶縁層211の一部と、半導体層271の一部により構成されるものでもよい。
【0126】
図10では、発光素子254がトップエミッション構造の発光素子である例を示している。発光素子254からの発光は、第2の基板202側に射出される。このような構成とすることで、発光素子254の下側(第1の基板201側)にトランジスタ、容量素子、回路、配線等を配置することができるため、画素部11の開口率を高めることができる。
【0127】
第2の基板202の第1の基板201側の面には、発光素子254と重なる着色層232が設けられている。また、着色層232が設けられていない部分には、遮光層231が設けられていてもよい。遮光層231は、
図10に示すように、信号線駆動回路13と重なる位置に設けられていてもよい。また着色層232及び遮光層231を覆って、透光性のオーバーコート層が設けられていてもよい。
【0128】
また、第2の基板202の第1の基板201側には、接着層220よりも内側の領域に構造物230aが設けられ、接着層220よりも外側の領域に構造物230bが設けられている。構造物230a及び構造物230bは、第2の基板202の端部において絶縁層221や第2の基板202にクラックが生じたときに、これが進行することを抑制する機能を有する。
図10では、構造物230a及び構造物230bとして、遮光層231と同一の膜からなる層と、着色層232と同一の膜からなる層の積層構造とした場合の例を示している。このように2層以上の積層構造とすることで、よりクラックの進行を抑制する効果を高めることができる。なお、ここでは接着層220を挟んで両側に構造物230a及び構造物230bを配置する構成を示したが、いずれか一方であってもよい。またクラックが生じる恐れがない場合(例えば第2の基板202等の剛性が高い場合)には、構造物230a及び構造物230bを設けない構成としてもよい。
【0129】
スペーサ215は、絶縁層214上に設けられている。スペーサ215は、第1の基板201と第2の基板202の距離が必要以上に縮まらないように制御する、ギャップスペーサとしての機能を有する。また、スペーサ215は、その側面の一部と、被形成面との角度が、好ましくは45度以上、120度以下、より好ましくは60度以上100度以下、さらに好ましくは75度以上90度以下である部分を有することが好ましい。こうすることで、スペーサ215の側面においてEL層222の厚さが薄い領域が形成されやすくなる。そのため、隣接する発光素子間において、EL層222を介して電流が流れることで発光してしまう現象を抑制することができる。特に、画素部11が高精細である場合には、隣接する発光素子間の距離が小さくなるため、このような形状のスペーサ215を発光素子間に設けることは有効である。さらに、EL層222が導電性の高い材料を含む層を有する場合などには、特に有効である。
【0130】
また、スペーサ215は、EL層222や第2の電極223等を形成する際に遮蔽マスクを用いる場合、当該遮蔽マスクにより被形成面に傷がつかないようにする機能を有していてもよい。
【0131】
スペーサ215は、走査線と交差する配線と重ねて設けられていることが好ましい。
【0132】
図10では、カラーフィルタ方式を用いた表示装置10の例を示している。例えば着色層232として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のうちいずれかが適用された3色の副画素により、1つの色を表現する構成としてもよい。また、これに加えて白色(W)や黄色(Y)の副画素を適用すると、色再現性が向上し、また消費電力を低減できるため好ましい。
【0133】
発光素子254において、着色層232と光学調整層224によるマイクロキャビティ構造の組み合わせにより、表示装置10からは色純度の高い光を取り出すことができる。光学調整層224の厚さは、各副画素の色に応じて異なる厚さとすればよい。また副画素によっては、光学調整層を有さない構成としてもよい。
【0134】
また、発光素子254が備えるEL層222として、白色を発光するEL層を適用することが好ましい。このような発光素子254を適用することで、各副画素にEL層222を塗り分ける必要がないため、コストの削減、歩留りの向上を図れるほか、画素部11の高精細化が容易となる。また各副画素に厚さの違う光学調整層を設けることにより、各々の副画素に対して、EL層222を塗り分ける構成としてもよく、その場合には光学調整層または着色層のいずれか一方、または両方を設けない構成としてもよい。またこのとき、各副画素においてEL層222の少なくとも発光層のみを塗り分けて形成し、他の層は塗り分けずに形成してもよい。
【0135】
図10では、端子部15に電気的に接続するFPC242が設けられている例を示している。したがって、
図10に示す表示装置10は、表示モジュールと呼ぶこともできる。また、FPC等が設けられていない状態の表示装置を、表示パネルと呼ぶこともできる。
【0136】
端子部15は、接続層243を介してFPC242と電気的に接続している。
【0137】
図10では、端子部15は、配線16bと、画素電極225と同一の導電膜からなる導電層の積層構造を有する構成を示している。このように、端子部15を複数の導電層を積層した構成とすることで、電気抵抗を低減するだけでなく、機械的強度を高めることができるため好ましい。
【0138】
絶縁層211及び絶縁層221は、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁層211及び絶縁層221はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで、第1の基板201や第2の基板202として透湿性を有する材料を用いたとしても、発光素子254等やトランジスタ等に対して外部から不純物が侵入することを効果的に抑制することが可能となり、信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0139】
図10では、第1の基板201と第2の基板202の間に空間250を有する中空封止構造を有する場合を示している。例えば、空間250は窒素や希ガスなどの不活性な気体で充填されていてもよい。また、空間250は液晶材料や、オイルなどの流動性の材料が充填されていてもよい。または、空間250は減圧されていてもよい。なお、封止方法はこれに限られず、樹脂などで充填された固体封止であってもよい。
【0140】
〔断面構成例2〕
図11では、画素部11および信号線駆動回路13を折り曲げて使用する場合に適した表示装置の構成例を示す。
【0141】
図11に示す表示装置10は、第1の基板201と第2の基板202が封止材260によって貼り合わされた固体封止構造を有する場合の例を示している。
【0142】
また第1の基板201上に接着層261と、接着層261上に絶縁層216を有し、絶縁層216上にトランジスタや発光素子などが設けられている。絶縁層216は絶縁層221と同様に、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることができる。
【0143】
また、第2の基板202と絶縁層221との間に、接着層262を有する。
【0144】
また、
図11に示すように、絶縁層213は画素部11及び信号線駆動回路13よりも第1の基板201の外周側において、開口部が設けられている。例えば絶縁層213として樹脂材料を用いた場合には、画素部11及び信号線駆動回路13等を囲う開口部を設けることが好ましい。このような構成とすることで、絶縁層213の外部と接する側面近傍と、画素部11及び信号線駆動回路13等と重なる部分とが連続しないため、外部から絶縁層213を介して水、水素などの不純物が拡散することを抑制できる。
【0145】
図11に示すように固体封止構造とすることで、第1の基板201と第2の基板202の距離を均一に保つことが容易となる。したがって、第1の基板201及び第2の基板202として、可撓性を有する基板を好適に用いることができる。したがって、画素部11、走査線駆動回路12、及び信号線駆動回路13の一部、または全部を折り曲げて使用することができる。例えば表示装置10を曲面に貼り付ける、または表示装置10の画素部を折り畳むなどすることで、様々な形態の電子機器を実現することができる。
【0146】
[変形例]
以下では、タッチセンサを有するタッチパネルの例について説明する。
【0147】
図12には、
図10で例示した構成にオンセル型のタッチセンサを適用したタッチパネルの例を示している。
【0148】
第2の基板202の外側の面上に、導電層291、導電層292が設けられ、これらを覆って絶縁層294が設けられている。また絶縁層294上に導電層293が設けられている。導電層293は、絶縁層294に設けられた開口を介して導電層291を挟んで設けられる2つの導電層292と電気的に接続している。また絶縁層294と基板296とが接着層295によって貼り合わされている。
【0149】
導電層291と導電層292の間に形成される容量は、被検知体が近づくことにより変化する。これにより、被検知体が接近、または接触することを検出することができる。複数の導電層291と複数の導電層292を格子状に配置することで、位置情報を取得することができる。
【0150】
また第2の基板202の外周に近い領域に、端子部299が設けられている。端子部299は、接続層298を介してFPC297と電気的に接続されている。
【0151】
ここで、基板296は、指またはスタイラスなどの検知体が直接触れる基板としても用いることができる。その場合、基板296上に保護層(セラミックコート等)を設けることが好ましい。保護層は、例えば酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの無機絶縁材料を用いることができる。また、基板296に強化ガラスを用いてもよい。強化ガラスは、イオン交換法や風冷強化法等により物理的、または化学的な処理が施され、その表面に圧縮応力を加えたものを用いることができる。タッチセンサを強化ガラスの一面に設け、その反対側の面を例えば電子機器の最表面に設けてタッチ面として用いることにより、機器全体の厚さを低減することができる。
【0152】
タッチセンサとしては、例えば静電容量方式のタッチセンサを適用できる。静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。また投影型静電容量方式としては、自己容量方式、相互容量方式等がある。相互容量方式を用いると、同時多点検出が可能となるため好ましい。以下では、投影型静電容量方式のタッチセンサを適用する場合について説明する。
【0153】
なおこれに限られず、指やスタイラスなどの被検知体の接近、または接触を検知することのできる様々なセンサを適用することもできる。
【0154】
ここでは、第2の基板202の外側の面にタッチセンサを構成する配線等が形成された、いわゆるオンセル型のタッチパネルの構成を示したが、これに限られない。例えば、外付け型(アウトセル型)のタッチパネル、インセル型のタッチパネルの構成を適用としてもよい。オンセル型またはインセル型のタッチパネルの構成を用いることで、表示パネルにタッチパネルの機能を付加しても、その厚さを低減することができる。
【0155】
以上が断面構成例についての説明である。
【0156】
[各構成要素について]
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。
【0157】
〔基板〕
表示装置が有する基板には、平坦面を有する材料を用いることができる。発光素子からの光を取り出す側の基板には、該光を透過する材料を用いる。例えば、ガラス、石英、セラミック、サファイヤ、有機樹脂などの材料を用いることができる。
【0158】
厚さの薄い基板を用いることで、表示装置の軽量化、薄型化を図ることができる。さらに、可撓性を有する程度の厚さの基板を用いることで、可撓性を有する表示装置を実現できる。
【0159】
ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス等を用いることができる。
【0160】
可撓性及び可視光に対する透過性を有する材料としては、例えば、可撓性を有する程度の厚さのガラスや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂等が挙げられる。特に、熱膨張係数の低い材料を用いることが好ましく、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、PET等を好適に用いることができる。また、ガラス繊維に有機樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜて熱膨張係数を下げた基板を使用することもできる。このような材料を用いた基板は、重量が軽いため、該基板を用いた表示装置も軽量にすることができる。
【0161】
また、発光を取り出さない側の基板は、透光性を有していなくてもよいため、上記に挙げた基板の他に、金属基板等を用いることもできる。金属基板は熱伝導性が高く、封止基板全体に熱を容易に伝導できるため、表示装置の局所的な温度上昇を抑制することができ、好ましい。
【0162】
金属基板を構成する材料としては、特に限定はないが、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属、もしくはアルミニウム合金またはステンレス等の合金などを好適に用いることができる。
【0163】
また、金属基板の表面を酸化する、又は表面に絶縁膜を形成するなどにより、絶縁処理が施された基板を用いてもよい。例えば、スピンコート法やディップ法などの塗布法、電着法、蒸着法、又はスパッタリング法などを用いて絶縁膜を形成してもよいし、酸素雰囲気で放置する又は加熱するほか、陽極酸化法などによって、基板の表面に酸化膜を形成してもよい。
【0164】
可撓性を有する基板に、表示装置の表面を傷などから保護するハードコート層(例えば、窒化シリコン層など)や、押圧を分散可能な材質の層(例えば、アラミド樹脂層など)等が積層されていてもよい。また、水分等による発光素子の寿命の低下等を抑制するために、可撓性を有する基板に透水性の低い絶縁膜が積層されていてもよい。例えば、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の無機絶縁材料を用いることができる。
【0165】
基板は、複数の層を積層して用いることもできる。特に、ガラス層を有する構成とすると、水や酸素に対するバリア性を向上させ、信頼性の高い表示装置とすることができる。例えば、発光素子に近い側からガラス層、接着層、及び有機樹脂層を積層した基板を用いることができる。このような有機樹脂層を設けることにより、ガラス層の割れやクラックを抑制し、機械的強度を向上させることができる。このようなガラス材料と有機樹脂の複合材料を基板に適用することにより、極めて信頼性が高いフレキシブルな表示装置とすることができる。
【0166】
〔トランジスタ〕
表示装置が有するトランジスタは、フロントゲート電極として機能する導電層と、バックゲート電極として機能する導電層と、半導体層と、ソース電極として機能する導電層と、ドレイン電極として機能する導電層と、ゲート絶縁層として機能する絶縁層と、を有する。
【0167】
つまり本発明の一態様の表示装置が有するトランジスタは、チャネルの上下にゲート電極が設けられる構造である。
【0168】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0169】
また、トランジスタに用いる半導体材料としては、例えば、酸化物半導体を半導体層に用いることができる。特にシリコンよりもバンドギャップの大きな酸化物半導体を適用することが好ましい。シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい半導体材料を用いると、トランジスタのオフ状態における電流を低減できるため好ましい。
【0170】
例えば、上記酸化物半導体として、少なくともインジウム(In)もしくは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。より好ましくは、In−M−Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む。
【0171】
特に、半導体層として、複数の結晶部を有し、当該結晶部はc軸が半導体層の被形成面、または半導体層の上面に対し概略垂直に配向し、且つ隣接する結晶部間には粒界が観察されない酸化物半導体層を用いることが好ましい。
【0172】
このような酸化物半導体は、結晶粒界を有さないために表示パネルを湾曲させたときの応力によって酸化物半導体層にクラックが生じてしまうことが抑制される。したがって、可撓性を有し、湾曲させて用いる表示装置などに、このような酸化物半導体を好適に用いることができる。
【0173】
また半導体層としてこのような結晶性を有する酸化物半導体を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0174】
また、シリコンよりもバンドギャップの大きな酸化物半導体を用いたトランジスタは、その低いオフ電流により、トランジスタと直列に接続された容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。その結果、極めて消費電力の低減された表示装置を実現できる。
【0175】
〔導電層〕
トランジスタのゲート、ソースおよびドレインのほか、表示装置を構成する各種配線および電極などの導電層に用いることのできる材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金などが挙げられる。またこれらの材料を含む膜を単層で、または積層構造として用いることができる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛等の酸化物を用いてもよい。また、マンガンを含む銅を用いると、エッチングによる形状の制御性が高まるため好ましい。
【0176】
また、表示装置を構成する各種配線および電極などの導電層に用いることのできる透光性を有する材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物またはグラフェンを用いることができる。または、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、またはチタンなどの金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いることができる。または、該金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)などを用いてもよい。なお、金属材料、合金材料(またはそれらの窒化物)を用いる場合には、透光性を有する程度に薄くすればよい。また、上記材料の積層膜を導電層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とインジウムスズ酸化物の積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。
【0177】
〔絶縁層〕
各絶縁層、オーバーコート、スペーサ等に用いることのできる絶縁材料としては、例えば、アクリル、エポキシなどの樹脂、シリコーン樹脂等のシロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることもできる。
【0178】
また発光素子は、一対の透水性の低い絶縁膜の間に設けられていることが好ましい。これにより、発光素子に水等の不純物が侵入することを抑制でき、装置の信頼性の低下を抑制できる。
【0179】
透水性の低い絶縁膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の窒素と珪素を含む膜や、窒化アルミニウム膜等の窒素とアルミニウムを含む膜等が挙げられる。また、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等を用いてもよい。
【0180】
例えば、透水性の低い絶縁膜の水蒸気透過量は、1×10
−5[g/(m
2・day)]以下、好ましくは1×10
−6[g/(m
2・day)]以下、より好ましくは1×10
−7[g/(m
2・day)]以下、さらに好ましくは1×10
−8[g/(m
2・day)]以下とする。
【0181】
〔接着層、封止材〕
接着層や封止材としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0182】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が機能素子に侵入することを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
【0183】
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、発光素子からの光取り出し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジルコニウム等を用いることができる。
【0184】
〔発光素子〕
発光素子としては、自発光が可能な素子を用いることができ、電流又は電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでいる。例えば、発光ダイオード(LED)、有機EL素子、無機EL素子等を用いることができる。
【0185】
発光素子は、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型のいずれであってもよい。光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
【0186】
EL層は少なくとも発光層を有する。EL層は、発光層以外の層として、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、又はバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)等を含む層をさらに有していてもよい。
【0187】
EL層には低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。EL層を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0188】
陰極と陽極の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、EL層に陽極側から正孔が注入され、陰極側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する。
【0189】
発光素子として、白色発光の発光素子を適用する場合には、EL層に2種類以上の発光物質を含む構成とすることが好ましい。例えば2以上の発光物質の各々の発光が補色の関係となるように、発光物質を選択することにより白色発光を得ることができる。例えば、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、O(橙)等の発光を示す発光物質、またはR、G、Bのうち2以上の色のスペクトル成分を含む発光を示す発光物質のうち、2以上を含むことが好ましい。また、発光素子からの発光のスペクトルが、可視光領域の波長(例えば350nm乃至750nm)の範囲内に2以上のピークを有する発光素子を適用することが好ましい。また、黄色の波長領域にピークを有する材料の発光スペクトルは、緑色及び赤色の波長領域にもスペクトル成分を有する材料であることが好ましい。
【0190】
EL層は、一の色を発光する発光材料を含む発光層と、他の色を発光する発光材料を含む発光層とが積層された構成とすることが好ましい。例えば、EL層における複数の発光層は、互いに接して積層されていてもよいし、いずれの発光材料も含まない領域を介して積層されていてもよい。例えば、蛍光発光層と燐光発光層との間に、当該蛍光発光層または燐光発光層と同一の材料(例えばホスト材料、アシスト材料)を含み、且ついずれの発光材料も含まない領域を設ける構成としてもよい。これにより、発光素子の作製が容易になり、また、駆動電圧が低減される。
【0191】
また、発光素子は、EL層を1つ有するシングル素子であってもよいし、複数のEL層が電荷発生層を介して積層されたタンデム素子であってもよい。
【0192】
可視光を透過する導電膜は、例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などを用いることができる。また、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、もしくはチタン等の金属材料、これら金属材料を含む合金、又はこれら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等も、透光性を有する程度に薄く形成することで用いることができる。また、上記材料の積層膜を導電層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とITOの積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。また、グラフェン等を用いてもよい。
【0193】
可視光を反射する導電膜は、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、もしくはパラジウム等の金属材料、又はこれら金属材料を含む合金を用いることができる。また、上記金属材料や合金に、ランタン、ネオジム、又はゲルマニウム等が添加されていてもよい。また、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金等のアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や、銀と銅の合金、銀とパラジウムと銅の合金、銀とマグネシウムの合金等の銀を含む合金を用いることができる。銀と銅を含む合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜又は金属酸化物膜を積層することで、アルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。また、上記可視光を透過する導電膜と金属材料からなる膜とを積層してもよい。例えば、銀とITOの積層膜、銀とマグネシウムの合金とITOの積層膜などを用いることができる。
【0194】
導電層は、それぞれ、蒸着法やスパッタリング法を用いて形成すればよい。そのほか、インクジェット法などの吐出法、スクリーン印刷法などの印刷法、又はメッキ法を用いて形成することができる。
【0195】
なお、上述した、発光層、ならびに正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、及び電子注入性の高い物質、バイポーラ性の物質等を含む層は、それぞれ量子ドットなどの無機化合物や、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を有していてもよい。例えば、量子ドットを発光層に用いることで、発光材料として機能させることもできる。
【0196】
なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム、セレン、亜鉛、硫黄、リン、インジウム、テルル、鉛、ガリウム、ヒ素、アルミニウム等の元素を含む量子ドット材料を用いてもよい。
【0197】
〔着色層〕
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。
【0198】
〔遮光層〕
遮光層に用いることのできる材料としては、カーボンブラック、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。また、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0199】
〔接続層〕
FPCやICと端子とを接続する接続層には、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0200】
以上が各構成要素についての説明である。
【0201】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0202】
(実施の形態3)
本実施の形態では、可撓性を有する基板を用いた表示装置の作製方法の例について説明する。
【0203】
ここでは、発光素子、回路、配線、電極、及び絶縁層、並びに着色層や遮光層などの光学部材等が含まれる層をまとめて素子層と呼ぶこととする。例えば、素子層は発光素子を含み、発光素子の他に発光素子と電気的に接続する配線、画素や回路に用いるトランジスタなどの素子を備えていてもよい。
【0204】
またここでは、発光素子が完成した(作製工程が終了した)段階において、素子層を支持し、可撓性を有する部材のことを、基板と呼ぶこととする。例えば、基板には、厚さが10nm以上300μm以下の、極めて薄いフィルム等も含まれる。
【0205】
可撓性を有し、絶縁表面を備える基板上に素子層を形成する方法としては、代表的には以下に挙げる2つの方法がある。一つは、可撓性を有する基板上に直接、素子層を形成する方法である。もう一つは、可撓性を有する基板とは異なる支持基板上に素子層を形成した後、素子層と支持基材を剥離し、素子層を基板に転置する方法である。なお、ここでは詳細に説明しないが、上記2つの方法に加え、可撓性を有さない基板上に素子層を形成し、当該基板を研磨等により薄くすることで可撓性を持たせる方法もある。
【0206】
基板を構成する材料が、素子層の形成工程にかかる熱に対して耐熱性を有する場合には、基板上に直接、素子層を形成すると、工程が簡略化されるため好ましい。このとき、基板を支持基材に固定した状態で素子層を形成すると、装置内、及び装置間における搬送が容易になるため好ましい。
【0207】
また、素子層を支持基材上に形成した後に、基板に転置する方法を用いる場合、まず支持基材上に剥離層と絶縁層を積層し、当該絶縁層上に素子層を形成する。続いて、支持基材と素子層の間で剥離し、素子層を基板に転置する。このとき、支持基材と剥離層の界面、剥離層と絶縁層の界面、または剥離層中で剥離が生じるような材料を選択すればよい。この方法では、支持基材や剥離層に耐熱性の高い材料を用いることで、素子層を形成する際にかかる温度の上限を高めることができ、より信頼性の高い素子を有する素子層を形成できるため、好ましい。
【0208】
例えば剥離層として、タングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用いる。また剥離層上の絶縁層として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを複数積層した層を用いることが好ましい。なお、本明細書中において、酸化窒化物は、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化物は、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。
【0209】
素子層と支持基材とを剥離する方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエッチングすること、または剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられる。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張の違いを利用し、加熱または冷却することにより剥離を行ってもよい。
【0210】
剥離を開始する際、最初に剥離の起点を形成し、当該起点から剥離を進行させることが好ましい。剥離の起点は、レーザ光等により絶縁層や剥離層の一部を局所的に加熱すること、鋭利な部材により物理的に絶縁層や剥離層の一部を切断または貫通すること等により形成することができる。
【0211】
また、支持基材と絶縁層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。
【0212】
例えば、支持基材としてガラスを用い、絶縁層としてポリイミドなどの有機樹脂を用いることで、ガラスと有機樹脂の界面で剥離することができる。また残ったポリイミドなどの有機樹脂を基板として用いることもできる。
【0213】
または、支持基材と有機樹脂からなる絶縁層の間に発熱層を設け、当該発熱層を加熱することにより、当該発熱層と絶縁層の界面で剥離を行ってもよい。発熱層としては、電流を流すことにより発熱する材料、光を吸収することにより発熱する材料、磁場を印加することにより発熱する材料など、様々な材料を用いることができる。例えば発熱層としては、半導体、金属、絶縁体から選択して用いることができる。
【0214】
以下では、より具体的な作製方法の一例について説明する。以下で説明する作製方法では、被剥離層として形成する層を変更することで、本発明の一態様の可撓性を有する入出力装置も作製することができる。
【0215】
まず、作製基板301上に島状の剥離層303を形成し、剥離層303上に被剥離層305を形成する(
図13(A))。またこれとは別に、作製基板321上に島状の剥離層323を形成し、剥離層323上に被剥離層325を形成する(
図13(B))。
【0216】
ここでは、島状の剥離層を形成する例を示したがこれに限られない。この工程では、作製基板から被剥離層を剥離する際に、作製基板と剥離層の界面、剥離層と被剥離層の界面、又は剥離層中で剥離が生じるような材料を選択する。本実施の形態では、被剥離層と剥離層の界面で剥離が生じる場合を例示するが、剥離層や被剥離層に用いる材料の組み合わせによってはこれに限られない。なお、被剥離層が積層構造である場合、剥離層と接する層を特に第1の層と記す。
【0217】
例えば、剥離層がタングステン膜と酸化タングステン膜との積層構造である場合、タングステン膜と酸化タングステン膜との界面(又は界面近傍)で剥離が生じることで、被剥離層側に剥離層の一部(ここでは酸化タングステン膜)が残ってもよい。また被剥離層側に残った剥離層は、その後除去してもよい。
【0218】
作製基板には、少なくとも作製工程中の処理温度に耐えうる耐熱性を有する基板を用いる。作製基板としては、例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、半導体基板、セラミック基板、金属基板、樹脂基板、プラスチック基板などを用いることができる。
【0219】
作製基板にガラス基板を用いる場合、作製基板と剥離層との間に、下地膜として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁膜を形成すると、ガラス基板からの汚染を防止でき、好ましい。
【0220】
剥離層は、タングステン、モリブデン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、シリコンから選択された元素、該元素を含む合金材料、又は該元素を含む化合物材料等を用いて形成できる。シリコンを含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれでもよい。また、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、In−Ga−Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。剥離層に、タングステン、チタン、モリブデンなどの高融点金属材料を用いると、被剥離層の形成工程の自由度が高まるため好ましい。
【0221】
剥離層は、例えばスパッタリング法、プラズマCVD法、塗布法(スピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法等を含む)、印刷法等により形成できる。剥離層の厚さは例えば10nm以上200nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下とする。
【0222】
剥離層が単層構造の場合、タングステン層、モリブデン層、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成することが好ましい。また、タングステンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む層、モリブデンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む層、又はタングステンとモリブデンの混合物の酸化物もしくは酸化窒化物を含む層を形成してもよい。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。
【0223】
また、剥離層として、タングステンを含む層とタングステンの酸化物を含む層の積層構造を形成する場合、タングステンを含む層を形成し、その上層に酸化物で形成される絶縁膜を形成することで、タングステン層と絶縁膜との界面に、タングステンの酸化物を含む層が形成されることを活用してもよい。また、タングステンを含む層の表面を、熱酸化処理、酸素プラズマ処理、亜酸化窒素(N
2O)プラズマ処理、オゾン水等の酸化力の強い溶液での処理等を行ってタングステンの酸化物を含む層を形成してもよい。またプラズマ処理や加熱処理は、酸素、窒素、亜酸化窒素単独、あるいは該ガスとその他のガスとの混合気体雰囲気下で行ってもよい。上記プラズマ処理や加熱処理により、剥離層の表面状態を変えることにより、剥離層と後に形成される絶縁膜との密着性を制御することが可能である。
【0224】
なお、作製基板と被剥離層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。例えば、作製基板としてガラスを用い、ガラスに接してポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル等の有機樹脂を形成する。次に、レーザ照射や加熱処理を行うことで、作製基板と有機樹脂の密着性を向上させる。そして、有機樹脂上に絶縁膜やトランジスタ等を形成する。その後、先のレーザ照射よりも高いエネルギー密度でレーザ照射を行う、又は、先の加熱処理よりも高い温度で加熱処理を行うことで、作製基板と有機樹脂の界面で剥離することができる。また、剥離の際には、作製基板と有機樹脂の界面に液体を浸透させて分離してもよい。
【0225】
当該方法では、耐熱性の低い有機樹脂上に絶縁膜やトランジスタ等を形成するため、作製工程で基板に高温をかけることができない。ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタは、高温の作製工程が必須でないため、有機樹脂上に好適に形成することができる。
【0226】
なお、該有機樹脂を、装置を構成する基板として用いてもよいし、該有機樹脂を除去し、被剥離層の露出した面に接着剤を用いて別の基板を貼り合わせてもよい。また該有機樹脂に、さらに接着剤を用いて別の基板(支持フィルム)を貼り合せてもよい。
【0227】
または、作製基板と有機樹脂の間に金属層を設け、該金属層に電流を流すことで該金属層を加熱し、金属層と有機樹脂の界面で剥離を行ってもよい。
【0228】
剥離層に接して形成する絶縁層(第1の層)は、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜等を用いて、単層又は多層で形成することが好ましい。なお、これに限られず、剥離層に用いる材料に応じて最適な材料を選択することができる。
【0229】
該絶縁層は、スパッタリング法、プラズマCVD法、塗布法、印刷法等を用いて形成することが可能であり、例えば、プラズマCVD法によって成膜温度を250℃以上400℃以下として形成することで、緻密で非常に防湿性の高い膜とすることができる。なお、絶縁層の厚さは10nm以上3000nm以下、さらには200nm以上1500nm以下が好ましい。
【0230】
次に、作製基板301と作製基板321とを、それぞれの被剥離層が形成された面が対向するように、接着層307を用いて貼り合わせ、接着層307を硬化させる(
図13(C))。
【0231】
なお、作製基板301と作製基板321の貼り合わせは減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0232】
なお、
図13(C)では、剥離層303と剥離層323の大きさが異なる場合を示したが、
図13(D)に示すように、同じ大きさの剥離層を用いてもよい。
【0233】
接着層307は剥離層303、被剥離層305、被剥離層325、及び剥離層323と重なるように配置する。そして、接着層307の端部は、剥離層303又は剥離層323の少なくとも一方(先に剥離したい方)の端部よりも内側に位置することが好ましい。これにより、作製基板301と作製基板321が強く密着することを抑制でき、後の剥離工程の歩留まりが低下することを抑制できる。
【0234】
接着層307には、例えば、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型の接着剤等を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC樹脂、PVB樹脂、EVA樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。接着剤としては、所望の領域にのみ配置できる程度に流動性の低い材料を用いることが好ましい。例えば、接着シート、粘着シート、シート状もしくはフィルム状の接着剤を用いてもよい。例えば、OCA(optical clear adhesive)フィルムを好適に用いることができる。
【0235】
接着剤は、貼り合わせ前から粘着性を有していてもよく、貼り合わせ後に加熱や光照射によって粘着性を発現してもよい。
【0236】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、大気中の水分の侵入による機能素子の劣化を抑制でき、装置の信頼性が向上するため好ましい。
【0237】
次に、レーザ光の照射により、剥離の起点を形成する(
図14(A)(B))。
【0238】
作製基板301及び作製基板321はどちらから剥離してもよい。剥離層の大きさが異なる場合、大きい剥離層を形成した基板から剥離してもよいし、小さい剥離層を形成した基板から剥離してもよい。一方の基板上にのみ半導体素子、発光素子等の素子を作製した場合、素子を形成した側の基板から剥離してもよいし、他方の基板から剥離してもよい。ここでは、作製基板301を先に剥離する例を示す。
【0239】
レーザ光は、硬化状態の接着層307と、被剥離層305と、剥離層303とが重なる領域に対して照射する(
図14(A)の矢印P1参照)。
【0240】
第1の層の一部を除去することで、剥離の起点を形成できる(
図14(B)の点線で囲った領域参照)。このとき、第1の層だけでなく、被剥離層305の他の層や、剥離層303、接着層307の一部を除去してもよい。
【0241】
レーザ光は、剥離したい剥離層が設けられた基板側から照射することが好ましい。剥離層303と剥離層323が重なる領域にレーザ光の照射をする場合は、被剥離層305及び被剥離層325のうち被剥離層305のみにクラックを入れることで、選択的に作製基板301及び剥離層303を剥離することができる(
図14(B)の点線で囲った領域参照。ここでは被剥離層305を構成する各層の一部を除去する例を示す。
【0242】
そして、形成した剥離の起点から、被剥離層305と作製基板301とを分離する(
図14(C)(D))。これにより、被剥離層305を作製基板301から作製基板321に転置することができる。
【0243】
例えば、剥離の起点から、物理的な力(人間の手や治具で引き剥がす処理や、ローラーを回転させながら分離する処理等)によって被剥離層305と作製基板301とを分離すればよい。
【0244】
また、剥離層303と被剥離層305との界面に水などの液体を浸透させて作製基板301と被剥離層305とを分離してもよい。毛細管現象により液体が剥離層303と被剥離層305の間にしみこむことで、容易に分離することができる。また、剥離時に生じる静電気が、被剥離層305に含まれる機能素子に悪影響を及ぼすこと(半導体素子が静電気により破壊されるなど)を抑制できる。
【0245】
次に、露出した被剥離層305と基板331とを、接着層333を用いて貼り合わせ、接着層333を硬化させる(
図15(A))。
【0246】
なお、被剥離層305と基板331の貼り合わせは減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0247】
次に、レーザ光の照射により、剥離の起点を形成する(
図15(B)(C))。
【0248】
レーザ光は、硬化状態の接着層333と、被剥離層325と、剥離層323とが重なる領域に対して照射する(
図15(B)の矢印P2参照)。第1の層の一部を除去することで、剥離の起点を形成できる(
図15(C)の点線で囲った領域参照。ここでは被剥離層325を構成する各層の一部を除去する例を示す。)。このとき、第1の層だけでなく、被剥離層325の他の層や、剥離層323、接着層333の一部を除去してもよい。
【0249】
レーザ光は、剥離層323が設けられた作製基板321側から照射することが好ましい。
【0250】
そして、形成した剥離の起点から、被剥離層325と作製基板321とを分離する(
図15(D))。これにより、被剥離層305及び被剥離層325を基板331に転置することができる。
【0251】
その後、被剥離層325にさらに基板を貼り付けることもできる。
【0252】
露出した被剥離層325と基板341とを、接着層343によって貼り合せ、接着層343を硬化させる(
図16(A))。ここでは、基板341にあらかじめ開口が設けられている例を示している。
【0253】
以上により、一対の可撓性の基板の間に、被剥離層を挟持することができる。
【0254】
その後、
図16(B)に示すように、基板331、基板341等の不要な端部を切断して除去してもよい。このとき、被剥離層305及び被剥離層325の端部の一部を同時に切断してもよい。
【0255】
以上の方法により、可撓性を有するデバイスを作製することができる。被剥離層に、上記実施の形態で例示した構成を用いることで、可撓性を有する表示装置を作製することができる。
【0256】
以上に示した本発明の一態様の表示装置の作製方法では、それぞれ剥離層及び被剥離層が設けられた一対の作製基板を貼り合わせた後、レーザ光の照射により剥離の起点を形成し、それぞれの剥離層と被剥離層とを剥離しやすい状態にしてから、剥離を行う。これにより、剥離工程の歩留まりを向上させることができる。
【0257】
また、それぞれ被剥離層が形成された一対の作製基板をあらかじめ貼り合わせた後に、剥離をし、作製したい装置を構成する基板を被剥離層に貼り合わせることができる。したがって、被剥離層どうしの貼り合わせの際に、可撓性が低い作製基板どうしを貼り合わせることができ、可撓性基板どうしを貼り合わせた際よりも貼り合わせの位置合わせ精度を向上させることができる。
【0258】
なお、
図17(A)に示すように、被剥離層305の剥離される領域351の端部は、剥離層303の端部よりも内側に位置することが好ましい。これにより、剥離工程の歩留まりを高くすることができる。また、領域351が複数ある場合、
図17(B)に示すように、領域351ごとに剥離層303を設けてもよいし、
図17(C)に示すように、1つの剥離層303上に複数の領域351を設けてもよい。
【0259】
以上が、可撓性を有する表示装置の作製方法についての説明である。
【0260】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0261】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置を適用可能な電子機器の例について説明する。
【0262】
本発明の一態様の表示装置を用いて、電子機器や照明装置を作製できる。本発明の一態様の表示装置を用いて、表示品位の高い電子機器や照明装置を作製できる。本発明の一態様の表示装置を用いて、視野角特性が良好な電子機器や照明装置を作製できる。本発明の一態様の表示装置を用いて、消費電力が低減された電子機器や照明装置を作製できる。また、本発明の一態様の表示装置を用いて、信頼性の高い電子機器や照明装置を作製できる。
【0263】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0264】
本発明の一態様の電子機器または照明装置は、家屋もしくはビルの内壁もしくは外壁、または、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことができる。
【0265】
本発明の一態様の電子機器は、二次電池を有していてもよく、非接触電力伝送を用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
【0266】
二次電池としては、例えば、ゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池(リチウムイオンポリマー電池)等のリチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などが挙げられる。
【0267】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0268】
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0269】
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0270】
さらに、複数の表示部を有する電子機器においては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字情報を表示する機能、または複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な画像を表示する機能等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器においては、静止画または動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部または電子機器に内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能等を有することができる。なお、本発明の一態様の電子機器が有する機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0271】
図18(A)乃至(E)に、湾曲した表示部7000を有する電子機器の一例を示す。表示部7000はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。なお、表示部7000は可撓性を有していてもよい。
【0272】
表示部7000は、本発明の一態様の表示装置等を用いて作製される。本発明の一態様により、消費電力が低減され、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高い電子機器を提供できる。
【0273】
図18(A)、(B)に携帯電話機の一例を示す。
図18(A)に示す携帯電話機7100及び
図18(B)に示す携帯電話機7110は、それぞれ、筐体7101、表示部7000、操作ボタン7103、外部接続ポート7104、スピーカ7105、マイク7106等を有する。
図18(B)に示す携帯電話機7110は、さらに、カメラ7107を有する。
【0274】
各携帯電話機は、表示部7000にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部7000に触れることで行うことができる。
【0275】
また、操作ボタン7103の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部7000に表示される画像の種類を切り替えることができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
【0276】
また、携帯電話機内部に、ジャイロセンサまたは加速度センサ等の検出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦か横か)を判断して、表示部7000の画面表示の向きを自動的に切り替えるようにすることができる。また、画面表示の向きの切り替えは、表示部7000を触れること、操作ボタン7103の操作、またはマイク7106を用いた音声入力等により行うこともできる。
【0277】
図18(C)、(D)に携帯情報端末の一例を示す。
図18(C)に示す携帯情報端末7200及び
図18(D)に示す携帯情報端末7210は、それぞれ、筐体7201及び表示部7000を有する。さらに、操作ボタン、外部接続ポート、スピーカ、マイク、アンテナ、カメラ、またはバッテリ等を有していてもよい。表示部7000にはタッチセンサを備える。携帯情報端末の操作は、指やスタイラスなどで表示部7000に触れることで行うことができる。
【0278】
本実施の形態で例示する携帯情報端末は、例えば、電話機、手帳または情報閲覧装置等から選ばれた一つまたは複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとしてそれぞれ用いることができる。本実施の形態で例示する携帯情報端末は、例えば、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0279】
携帯情報端末7200及び携帯情報端末7210は、文字及び画像情報等をその複数の面に表示することができる。例えば、
図18(C)、(D)に示すように、3つの操作ボタン7202を一の面に表示し、矩形で示す情報7203を他の面に表示することができる。
図18(C)では、携帯情報端末の上側に情報が表示される例を示し、
図18(D)では、携帯情報端末の横側に情報が表示される例を示す。また、携帯情報端末の3面以上に情報を表示してもよい。
【0280】
なお、情報の例としては、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の通知、電子メールや電話などの着信を知らせる表示、電子メールなどの題名もしくは送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報が表示されている位置に、情報の代わりに、操作ボタン、アイコンなどを表示してもよい。
【0281】
例えば、携帯情報端末7200の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末7200を収納した状態で、その表示(ここでは情報7203)を確認することができる。
【0282】
具体的には、着信した電話の発信者の電話番号または氏名等を、携帯情報端末7200の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末7200をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0283】
図18(E)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7300は、筐体7301に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7303により筐体7301を支持した構成を示している。
【0284】
図18(E)に示すテレビジョン装置7300の操作は、筐体7301が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7311により行うことができる。または、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることで操作してもよい。リモコン操作機7311は、当該リモコン操作機7311から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7311が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0285】
なお、テレビジョン装置7300は、受信機及びモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0286】
図18(F)に、湾曲した発光部を有する照明装置の一例を示す。
【0287】
図18(F)に示す照明装置が有する発光部は、本発明の一態様の表示装置等を用いて作製される。本発明の一態様により、消費電力が低減され、湾曲した発光部を備え、且つ信頼性の高い照明装置を提供できる。
【0288】
図18(F)に示す照明装置7400の備える発光部7411は、凸状に湾曲した2つの発光部が対称的に配置された構成となっている。したがって照明装置7400を中心に全方位を照らすことができる。
【0289】
また、照明装置7400が備える発光部7411は可撓性を有していてもよい。発光部7411を可塑性の部材または可動なフレームなどの部材で固定し、用途に合わせて発光部7411の発光面を自在に湾曲可能な構成としてもよい。
【0290】
照明装置7400は、操作スイッチ7403を備える台部7401と、台部7401に支持される発光部7411を有する。
【0291】
なおここでは、台部によって発光部が支持された照明装置について例示したが、発光部を備える筐体を天井に固定する、または天井からつり下げるように用いることもできる。発光面を湾曲させて用いることができるため、発光面を凹状に湾曲させて特定の領域を明るく照らす、または発光面を凸状に湾曲させて部屋全体を明るく照らすこともできる。
【0292】
図19(A)乃至(I)に、可撓性を有し、曲げることのできる表示部7001を有する携帯情報端末の一例を示す。
【0293】
表示部7001は、本発明の一態様の表示装置等を用いて作製される。例えば、曲率半径0.01mm以上150mm以下で曲げることができる表示装置等を適用できる。また、表示部7001はタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7001に触れることで携帯情報端末を操作することができる。本発明の一態様により、可撓性を有する表示部を備え、且つ信頼性の高い電子機器を提供できる。
【0294】
図19(A)、(B)は、携帯情報端末の一例を示す斜視図である。携帯情報端末7500は、筐体7501、表示部7001、引き出し部材7502、操作ボタン7503等を有する。
【0295】
携帯情報端末7500は、筐体7501内にロール状に巻かれた可撓性を有する表示部7001を有する。引き出し部材7502を用いて表示部7001を引き出すことができる。
【0296】
また、携帯情報端末7500は内蔵された制御部によって映像信号を受信可能で、受信した映像を表示部7001に表示することができる。また、携帯情報端末7500にはバッテリが内蔵されている。また、筐体7501にコネクターを接続する端子部を備え、映像信号及び電力を有線により外部から直接供給する構成としてもよい。
【0297】
また、操作ボタン7503によって、電源のON、OFF動作や表示する映像の切り替え等を行うことができる。なお、
図19(A)、(B)では、携帯情報端末7500の側面に操作ボタン7503を配置する例を示すが、これに限られず、携帯情報端末7500の表示面と同じ面(おもて面)や、裏面に配置してもよい。
【0298】
図19(B)には、表示部7001を引き出した状態の携帯情報端末7500を示す。この状態で表示部7001に映像を表示することができる。また、表示部7001の一部がロール状に巻かれた
図19(A)の状態と表示部7001を引き出した
図19(B)の状態とで、携帯情報端末7500が異なる表示を行う構成としてもよい。例えば、
図19(A)の状態のときに、表示部7001のロール状に巻かれた部分を非表示とすることで、携帯情報端末7500の消費電力を下げることができる。
【0299】
なお、表示部7001を引き出した際に表示部7001の表示面が平面状となるように固定するため、表示部7001の側部に補強のためのフレームを設けていてもよい。
【0300】
なお、この構成以外に、筐体にスピーカを設け、映像信号と共に受信した音声信号によって音声を出力する構成としてもよい。
【0301】
図19(C)乃至(E)に、折りたたみ可能な携帯情報端末の一例を示す。
図19(C)では、展開した状態、
図19(D)では、展開した状態または折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態、
図19(E)では、折りたたんだ状態の携帯情報端末7600を示す。携帯情報端末7600は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により一覧性に優れる。
【0302】
表示部7001はヒンジ7602によって連結された3つの筐体7601に支持されている。ヒンジ7602を介して2つの筐体7601間を屈曲させることにより、携帯情報端末7600を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。
【0303】
図19(F)、(G)に、折りたたみ可能な携帯情報端末の一例を示す。
図19(F)では、表示部7001が内側になるように折りたたんだ状態、
図19(G)では、表示部7001が外側になるように折りたたんだ状態の携帯情報端末7650を示す。携帯情報端末7650は表示部7001及び非表示部7651を有する。携帯情報端末7650を使用しない際に、表示部7001が内側になるように折りたたむことで、表示部7001の汚れ及び傷つきを抑制できる。
【0304】
図19(H)に、可撓性を有する携帯情報端末の一例を示す。携帯情報端末7700は、筐体7701及び表示部7001を有する。さらに、入力部であるボタン7703a、7703b、音声出力部であるスピーカ7704a、7704b、外部接続ポート7705、マイク7706等を有していてもよい。また、携帯情報端末7700は、可撓性を有するバッテリ7709を搭載することができる。バッテリ7709は例えば表示部7001と重ねて配置してもよい。
【0305】
筐体7701、表示部7001、及びバッテリ7709は可撓性を有する。そのため、携帯情報端末7700を所望の形状に湾曲させること、及び携帯情報端末7700に捻りを加えることが容易である。例えば、携帯情報端末7700は、表示部7001が内側または外側になるように折り曲げて使用することができる。または、携帯情報端末7700をロール状に巻いた状態で使用することもできる。このように筐体7701及び表示部7001を自由に変形することが可能であるため、携帯情報端末7700は、落下した場合、または意図しない外力が加わった場合であっても、破損しにくいという利点がある。
【0306】
また、携帯情報端末7700は軽量であるため、筐体7701の上部をクリップ等で把持してぶら下げて使用する、または、筐体7701を磁石等で壁面に固定して使用するなど、様々な状況において利便性良く使用することができる。
【0307】
図19(I)に腕時計型の携帯情報端末の一例を示す。携帯情報端末7800は、バンド7801、表示部7001、入出力端子7802、操作ボタン7803等を有する。バンド7801は、筐体としての機能を有する。また、携帯情報端末7800は、可撓性を有するバッテリ7805を搭載することができる。バッテリ7805は例えば表示部7001またはバンド7801等と重ねて配置してもよい。
【0308】
バンド7801、表示部7001、及びバッテリ7805は可撓性を有する。そのため、携帯情報端末7800を所望の形状に湾曲させることが容易である。
【0309】
操作ボタン7803は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7800に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7803の機能を自由に設定することもできる。
【0310】
また、表示部7001に表示されたアイコン7804に指等で触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0311】
また、携帯情報端末7800は、通信規格に準拠した近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0312】
また、携帯情報端末7800は入出力端子7802を有していてもよい。入出力端子7802を有する場合、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7802を介して充電を行うこともできる。なお、本実施の形態で例示する携帯情報端末の充電動作は、入出力端子を介さずに非接触電力伝送により行ってもよい。
【0313】
図20(A)に自動車7900の外観を示す。
図20(B)に自動車7900の運転席を示す。自動車7900は、車体7901、車輪7902、フロントガラス7903、ライト7904、フォグランプ7905等を有する。
【0314】
本発明の一態様の表示装置は、自動車7900の表示部などに用いることができる。例えば、
図20(B)に示す表示部7910乃至表示部7917に本発明の一態様の表示装置を設けることができる。
【0315】
表示部7910と表示部7911は、自動車のフロントガラスに設けられている。本発明の一態様では、表示装置が有する電極を、透光性を有する導電性材料で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示装置であれば、自動車7900の運転時にも視界の妨げになることがない。よって、本発明の一態様の表示装置を自動車7900のフロントガラスに設置することができる。なお、表示装置に、トランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ、または酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いるとよい。
【0316】
表示部7912はピラー部分に設けられている。表示部7913はダッシュボード部分に設けられている。例えば、車体に設けられた撮像部からの映像を表示部7912に映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。同様に、表示部7913では、ダッシュボードで遮られた視界を補完することができ、表示部7914では、ドアで遮られた視界を補完することができる。すなわち、自動車の外側に設けられた撮像部からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0317】
また、表示部7917は、ハンドルに設けられている。表示部7915、表示部7916、または表示部7917はナビゲーション情報、スピードメーター、タコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。また、表示部に表示される表示項目及びレイアウトなどは、使用者の好みに合わせて適宜変更することができる。なお、上記情報は、表示部7910乃至表示部7914にも表示することができる。
【0318】
なお、表示部7910乃至表示部7917は照明装置として用いることも可能である。
【0319】
本発明の一態様の表示装置が適用される表示部は平面であってもよい。この場合、本発明の一態様の表示装置は、曲面及び可撓性を有さない構成であってもよい。
【0320】
図20(C)、(D)に、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)の一例を示す。デジタルサイネージは、筐体8000、表示部8001、及びスピーカ8003等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0321】
図20(D)は円柱状の柱に取り付けられたデジタルサイネージである。
【0322】
表示部8001が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部8001が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0323】
表示部8001にタッチパネルを適用することで、表示部8001に画像または動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0324】
図20(E)に示す携帯型ゲーム機は、筐体8101、筐体8102、表示部8103、表示部8104、マイクロフォン8105、スピーカ8106、操作キー8107、スタイラス8108等を有する。
【0325】
図20(E)に示す携帯型ゲーム機は、2つの表示部(表示部8103と表示部8104)を有する。なお、本発明の一態様の電子機器が有する表示部の数は、2つに限定されず1つであっても3つ以上であってもよい。電子機器が複数の表示部を有する場合、少なくとも1つの表示部が本発明の一態様の表示装置を有していればよい。
【0326】
図20(F)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体8111、表示部8112、キーボード8113、ポインティングデバイス8114等を有する。
【0327】
表示部8112に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0328】
図21(A)に、ファインダー8500を取り付けた状態の、カメラ8400の外観を示す。
【0329】
カメラ8400は、筐体8401、表示部8402、操作ボタン8403、シャッターボタン8404等を有する。またカメラ8400には、着脱可能なレンズ8406が取り付けられている。
【0330】
ここではカメラ8400として、レンズ8406を筐体8401から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ8406と筐体が一体となっていてもよい。
【0331】
カメラ8400は、シャッターボタン8404を押すことにより、撮像することができる。また、表示部8402はタッチパネルとしての機能を有し、表示部8402をタッチすることにより撮像することも可能である。
【0332】
カメラ8400の筐体8401は、電極を有するマウントを有し、ファインダー8500のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0333】
ファインダー8500は、筐体8501、表示部8502、ボタン8503等を有する。
【0334】
筐体8501は、カメラ8400のマウントと係合するマウントを有しており、ファインダー8500をカメラ8400に取り付けることができる。また当該マウントには電極を有し、当該電極を介してカメラ8400から受信した映像等を表示部8502に表示させることができる。
【0335】
ボタン8503は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン8503により、表示部8502の表示のオン・オフを切り替えることができる。
【0336】
カメラ8400の表示部8402、及びファインダー8500の表示部8502に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0337】
なお、
図21(A)では、カメラ8400とファインダー8500とを別の電子機器とし、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ8400の筐体8401に、本発明の一態様の表示装置を備えるファインダーが内蔵されていてもよい。
【0338】
図21(B)には、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示している。
【0339】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体8203、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バッテリ8206が内蔵されている。
【0340】
ケーブル8205は、バッテリ8206から本体8203に電力を供給する。本体8203は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部8204に表示させることができる。また、本体8203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動きを捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を入力部として用いることができる。
【0341】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい。本体8203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、使用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知することにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部8201には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使用者の生体情報を表示部8204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭部の動きなどを検出し、表示部8204に表示する映像をその動きに合わせて変化させてもよい。
【0342】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0343】
図21(C)、(D)には、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示している。
【0344】
ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301、2つの表示部8302、操作ボタン8303、及びバンド状の固定具8304を有する。
【0345】
ヘッドマウントディスプレイ8300は、上記ヘッドマウントディスプレイ8200が有する機能に加え、2つの表示部を備える。
【0346】
2つの表示部8302を有することで、使用者は片方の目につき1つの表示部を見ることができる。これにより、視差を用いた3次元表示等を行う際であっても、高い解像度の映像を表示することができる。また、表示部8302は使用者の目を概略中心とした円弧状に湾曲している。これにより、使用者の目から表示部の表示面までの距離が一定となるため、使用者はより自然な映像を見ることができる。また、表示部からの光の輝度や色度が見る角度によって変化してしまうような場合であっても、表示部の表示面の法線方向に使用者の目が位置するため、実質的にその影響を無視することができるため、より現実感のある映像を表示することができる。
【0347】
操作ボタン8303は、電源ボタンなどの機能を有する。また操作ボタン8303の他にボタンを有していてもよい。
【0348】
また、
図21(E)に示すように、表示部8302と使用者の目の位置との間に、レンズ8305を有していてもよい。レンズ8305により、使用者は表示部8302を拡大してみることができるため、より臨場感が高まる。このとき、
図21(E)に示すように、視度調節のためにレンズの位置を変化させるダイヤル8306を有していてもよい。
【0349】
表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の一態様の表示装置は、極めて精細度が高いため、
図21(E)のようにレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より現実感の高い映像を表示することができる。
【0350】
図22(A)乃至(C)には、1枚の表示部8302を有する場合の例を示している。このような構成とすることで、部品点数を削減することができる。
【0351】
表示部8302は、左右2つの領域にそれぞれ右目用の画像と、左目用の画像の2つの画像を並べて表示することができる。これにより、両眼視差を用いた立体映像を表示することができる。
【0352】
また、表示部8302の全域に亘って、両方の目で視認可能な一つの画像を表示してもよい。これにより、視野の両端に亘ってパノラマ映像を表示することが可能となるため、現実感が高まる。
【0353】
また
図22(C)に示すように、レンズ8305設けてもよい。表示部8302には、2つの画像を並べて表示させてもよいし、表示部8302に一つの画像を表示させ、レンズ8305を介して両目で同じ画像を見ることのできる構成としてもよい。
【0354】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例】
【0355】
本発明の一態様の表示装置について、各配線の充放電に要する時間等について計算を行った。
図26(A)は、計算に用いた表示装置のブロック図である。
図26(B)は、作製した上面図に対応する画素の回路図である。
【0356】
図26(A)に示す表示装置のブロック図は、65inchの7680×4320×RGBW(赤緑青白)のストライプ配置の副画素で構成される画素を有する、所謂8Kパネルを表している。両辺に配置される走査線駆動回路(Gate Driver)は、ゲートオンアレイ(GOA)であり、双方の走査線駆動回路から画素(PIX)に走査信号を出力する構成とした。信号線駆動回路(Source Driver)は、外付け(External)とした。
【0357】
図26(B)は、
図26(A)に図示する画素(PIX)の回路図である。
図26(B)に図示する回路図は、
図7(A)で説明した回路図において、容量素子C2の配置を変更した構成に相当する。
【0358】
図26(B)に示す構成は、
図7(A)と同様に、トランジスタM4において第1のゲート電極と第2のゲート電極とを接続しない構成とする。当該構成によって、互いのゲート電極を接続する場合に比べて、走査線GLとトランジスタとの間のゲート容量が第1のゲート電極との間に形成されるだけとすることができる。
【0359】
図27は、
図26(B)に対応する画素(PIX)の上面図である。
図27に示す画素は、RGBWの4つの副画素を図示している。なお回路図と対応する構成には、同じ符号を付している。
図26(A)、(B)、
図27に示す各構成を用いて、走査線および信号線といった各配線の充放電に要する時間を見積もった。充放電に要する時間を見積もるための各種計算は、SILVACO社のソフトウェア「SmartSpice」を用いて行った。なお画素サイズは、188μm×188μm、トランジスタM4のチャネル長L/チャネル幅(W)を4μm/4μm、トランジスタM5のL/Wを6μm/6μmとした。
【0360】
計算結果を表1に示す。なお表1において、「Gate fall time」は走査線の信号の立ち下げるまでの時間、「Source line charge time(>95%)」は信号線を95%充電するのに要する時間、「Total」は先の2つの時間の合計、「One horizontal period」は一水平走査期間、を表している。
【0361】
【表1】
【0362】
表1に図示するように走査線および信号線における充放電時間は、一水平走査期間に収まった。そのため、本発明の一態様を適用した表示装置は、走査線に接続されるトランジスタのゲート容量が低減されるため、8Kパネルに好適であることがわかった。