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前記燃料電池は、前記分離部の前記流入部へアノードオフガスを送出する第1燃料電池と、前記流入部から送出された再生燃料ガスが前記燃料ガスとして燃料極へ供給される第2燃料電池と、を含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、アノードオフガスから二酸化炭素を効率よく分離することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る燃料電池システムは、燃料極へ供給される燃料ガスと空気極へ供給される酸素を含むガスにより発電し、前記燃料極からアノードオフガスが排出される燃料電池と、前記アノードオフガスが流入される流入部と、前記アノードオフガス中の二酸化炭素を透過させて分離する分離膜により前記流入部と区画された透過部と、を有する分離部と、スイープガスとして前記透過部へ水蒸気を供給する水蒸気供給部と、を備えている。
【0006】
請求項1に係る燃料電池システムは、分離部を有している。分離部は、アノードオフガスから二酸化炭素及を分離する分離膜を備え、分離膜によって流入部と透過部に区画されている。スイープガスとしての水蒸気は透過部へ流入される。これにより、スイープガスの供給がない場合と比較して、透過部における二酸化炭素の分圧は低減される。したがって、分離膜の透過側への二酸化炭素の透過を向上させることができ、分離膜を用いて効率的にアノードオフガスから二酸化炭素を分離することができる。また、水蒸気をスイープガスとして用いることにより、透過部から送出された透過ガスから、凝縮等により水蒸気を容易に分離して、高い濃度の二酸化炭素を回収することができる。
【0007】
一方、二酸化炭素が分離されたアノードオフガスは、流入部から送出される。再生燃料ガスは、例えば、燃料電池の発電に再度用いることができる。
請求項2記載の発明に係る燃料電池システムは、燃料極へ供給される燃料ガスと空気極へ供給される酸素を含むガスにより発電し、前記燃料極からアノードオフガスが排出される燃料電池と、前記アノードオフガスが流入される流入部と、前記アノードオフガス中の二酸化炭素を透過させて分離する分離膜により前記流入部と区画された透過部と、を有する分離部と、スイープガスとして前記透過部へ水蒸気を供給する水蒸気供給部と、前記透過部から排出されたガスから水蒸気を凝縮させて分離する水蒸気分離部と、前記水蒸気分離部で分離された水を前記水蒸気供給部へ戻す水循環流路と、を備えている。
【0008】
請求項3記載の発明に係る燃料電池システムは、原料ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器を備え、前記水蒸気供給部は、前記改質器へ水蒸気を供給する。
【0009】
請求項3に係る燃料電池システムでは、改質器及び透過部の双方への水蒸気供給を水蒸気供給部が兼ねる。したがって、燃料電池システムを簡略化することができる。
【0010】
請求項1記載の発明に係る燃料電池システムは、前記透過部から排出されたガスに含まれた水蒸気または該水蒸気の凝縮水を前記水蒸気供給部へ戻す水循環流路を備えた、ことを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る燃料電池システムでは、透過部から排出されたガスに含まれた水蒸気または該水蒸気の凝縮水が、水循環流路により水蒸気供給部へ戻される。したがって、燃料電池システム内で必要な水を循環させることができる。
【0012】
請求項1記載の発明に係る燃料電池システムは、前記前記透過部から排出されたガスから水蒸気を分離する水蒸気分離部を備えている。
【0013】
請求項1に係る燃料電池システムでは、水蒸気分離部で水蒸気を除去して、高濃度の二酸化炭素含有ガスを得ることができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係る燃料電池システムは、記水蒸気分離部は、透過部から排出された透過ガスと前記空気極へ供給される空気との間で熱交換を行う熱交換器を含んで構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る燃料電池システムでは、透過部から排出された透過ガスと空気極へ供給される酸素を含むガスとの間で熱交換を行うことにより、透過部から排出されたガスに含まれる水蒸気を凝縮して二酸化炭素を含む透過ガスから分離することができる。また、空気極へ供給される空気を加熱することができ、有効に熱を利用することができる。
【0016】
請求項5記載の発明に係る燃料電池システムは、前記水蒸気分離部は、透過部から排出された透過ガスと前記水蒸気分離部で凝縮により分離された水との間で熱交換を行う熱交換器を含んで構成されている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明に係る燃料電池システムでは、透過部から排出された透過ガスと水蒸気分離部で凝縮により分離された水との間で熱交換を行うことにより、透過部から排出されたガスに含まれる水蒸気を凝縮して二酸化炭素を含む透過ガスから分離することができる。
【0018】
請求項6記載の発明に係る燃料電池システムは、前記水蒸気分離部は、透過部から排出された透過ガスと前記燃料電池システム内へ供給される液相の水との間で熱交換を行う熱交換器を含んで構成されている、ことを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明に係る燃料電池システムでは、透過部から排出された透過ガスと燃料電池システム内へ供給される液相の水との間で熱交換を行うことにより、透過部から排出されたガスに含まれる水蒸気を凝縮して二酸化炭素を含む透過ガスから分離することができる。
【0020】
請求項7記載の発明に係る燃料電池システムは、前記分離部の上流に前記流入部へ送出する前記アノードオフガスを昇圧する昇圧装置を備えている。
【0021】
請求項7に係る燃料電池システムでは、昇圧装置により流入部の二酸化炭素分圧が高くなるので、二酸化炭素の分離膜透過を促進することができる。
【0022】
請求項8記載の発明に係る燃料電池システムは、前記分離膜は、水蒸気存在下で二酸化炭素の透過が向上される材料で形成されている。
【0023】
請求項8に係る燃料電池システムでは、透過部へ水蒸気をスイープガスとして供給している。したがって、分離膜を水蒸気存在下で用いることができ、水蒸気存在下で二酸化炭素の透過が向上される材料で形成された分離膜を有効に利用することができる。
【0024】
請求項9記載の発明に係る燃料電池システムは、前記燃料電池は、前記分離部の前記流入部へアノードオフガスを送出する第1燃料電池と、前記流入部から送出された再生燃料ガスが前記燃料ガスとして燃料極へ供給される第2燃料電池と、を含む。
【0025】
請求項9に係る燃料電池システムによれば、第1燃料電池から排出されたアノードオフが、二酸化炭素を分離された再生燃料ガスとして第2燃料電池での発電に使用される。したがって、燃料電池システムでの発電効率を向上させることができる。
【0026】
請求項10記載の発明に係る燃料電池システムは、前記流入部から送出された再生燃料ガスを前記燃料ガスとして燃料極へ供給する燃料循環配管を備えている。
【0027】
請求項10に係る燃料電池システムによれば、循環配管により、二酸化炭素を分離された再生燃料ガスが燃料極へ再び供給されて発電に供される。したがって、燃料電池システムでの発電効率を向上させることができる。
【0028】
なお、二酸化炭素分離方法は、燃料電池の燃料極から排出されたアノードオフガスから、分離膜を透過させて二酸化炭素を分離させる際に、スイープガスとして前記分離膜の透過側へ水蒸気を供給するものである。
【0029】
この二酸化炭素分離方法によれば、スイープガスの供給がない場合と比較して、分離膜の透過側における二酸化炭素の分圧は低減される。したがって、分離膜の透過側への二酸化炭素の透過を向上させることができ、分離膜を用いて効率的にアノードオフガスから二酸化炭素を分離することができる。また、水蒸気をスイープガスとして用いることにより、透過側から送出された透過ガスから、凝縮等により水蒸気を容易に分離して、高い濃度の二酸化炭素を回収することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る燃料電池システム、二酸化炭素分離方法によれば、アノードオフガスから二酸化炭素を効率よく分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム10Aが示されている。燃料電池システム10Aは、主要な構成として、気化器12、改質器14、第1燃料電池スタック16、第2燃料電池スタック18、分離部20、第1熱交換器30、第2熱交換器32、燃焼器40、及びタンク42を備えている。
【0034】
改質器14には、原料ガス管P1の一端が接続されており、原料ガス管P1の他端は図示しないガス源に接続されている。ガス源からは、ブロアB1によりメタンが改質器14へ送出される。なお、本実施形態では、原料ガスとしてメタンを用いるが、改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。
【0035】
気化器12には、水供給管P2が接続されており、ポンプPO1により、水(液相)が送り込まれる。気化器12では、水が気化される。気化には、後述する燃焼器40の熱が用いられる。気化器12からは、水蒸気が送出され、水蒸気を送出する水蒸気管P3は、原料ガス管P1と合流されている。
【0036】
メタン及び水蒸気は原料ガス管P1で合流され、改質器14へ供給される。改質器14は、燃焼器40、第1燃料電池スタック16、及び第2燃料電池スタック18と隣接されており、これらとの間で熱交換を行うことで加熱される。
【0037】
改質器14では、メタンを改質し、水素を含む600℃程度の温度の燃料ガスG1を生成する。改質器14は、第1燃料電池スタック16のアノード(燃料極)16Aと接続されている。改質器14で生成された燃料ガスG1は、燃料ガス管P4を介して第1燃料電池スタック16のアノード16Aに供給される。
【0038】
第1燃料電池スタック16は固体酸化物形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セルを有している。第1燃料電池スタック16は本発明における燃料電池(第1燃料電池)の一例であり、本実施形態では、作動温度が650℃程度とされている。個々の燃料電池セルは、電解質層16Cと、当該電解質層16Cの表裏面にそれぞれ積層されたアノード16A、及びカソード(空気極)16Bと、を有している。
【0039】
なお、第2燃料電池スタック18についての基本構成は、第1燃料電池スタック16と同様であり、アノード16Aに対応するアノード18A、カソード16Bに対応するカソード18B、及び電解質層16Cに対応する電解質層18Cを有している。
【0040】
第1燃料電池スタック16のカソード16Bには、酸化ガス管P5から酸化ガスG5(空気)が供給される。酸化ガス管P5へは、ブロアB2により空気が導入されている。酸化ガス管P5には、第2熱交換器32が設けられており、空気が後述する透過ガスG7との熱交換により加熱され、カソード16Bへ供給される。
【0041】
カソード16Bでは、下記(1)式に示すように、酸化ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンは電解質層を通って第1燃料電池スタック16のアノード16Aに到達する。
【0042】
(空気極反応)
1/2O
2+2e
− →O
2− …(1)
【0043】
また、カソード16Bには、カソード16Bから排出されるカソードオフガスG2を第2燃料電池スタック18のカソード18Bへ案内するカソードオフガス管P6が接続されている。
【0044】
一方、第1燃料電池スタック16のアノード16Aでは、下記(2)式及び(3)式に示すように、電解質層を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と電子が生成される。アノード16Aで生成された電子がアノード16Aから外部回路を通ってカソード16Bに移動することで、各燃料電池セルにおいて発電される。また、各燃料電池セルは、発電時に発熱する。
【0045】
(燃料極反応)
H
2 +O
2− →H
2O+2e
− …(2)
CO+O
2− →CO
2+2e
− …(3)
【0046】
第1燃料電池スタック16のアノード16Aにはアノードオフガス管P7の一端が接続されており、アノードオフガス管P7には、アノード16AからアノードオフガスG3が排出される。アノードオフガスG3には、未反応の水素、未反応の一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気等が含まれている。
【0047】
なお、本発明の燃料電池としては、固体酸化物形の燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に限られるものではなく、アノードオフガスに二酸化炭素及が含まれる他の燃料電池、例えば溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)、高分子電解質形燃料電池(PEFC)であってもよい。
【0048】
アノードオフガス管P7の他端は、後述する第1熱交換器30、ブロアB3を経て分離部20の流入部24と接続されている。昇圧装置としてのブロアB3は、第1熱交換器30の下流側に設けられ、アノードオフガス管P7を流れるアノードオフガスG3をブロアB3の下流側で昇圧する。分離部20は、アノードオフガスG3から二酸化炭素を後述する分離膜28で分離するものである。分離部20は、流入部24及び透過部26を有している。流入部24と透過部26は、分離膜28で区画されている。流入部24がアノードオフガスG3の非透過側となり、透過部26が透過側となる。
【0049】
ここで、分離膜28について説明する。本実施形態では、分離膜28は二酸化炭素を透過する機能を有するものを用いる。二酸化炭素を透過する機能を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜などが挙げられる。また、分離膜は、ガスの相対湿度が高いときに二酸化炭素透過性が向上する分離膜であることが好ましく、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0050】
有機高分子膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリピロール、ポリフェニレンオキシド、ポリアニリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、等の各種有機材料が挙げられる。また、有機高分子膜は、1種の有機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の有機材料から構成される膜であってもよい。
【0051】
また分離膜としては、より好ましくは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体、ポリエチレングリコールなどの吸水性を有する有機高分子と、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示す二酸化炭素キャリアとを含む有機高分子膜であってもよい。
【0052】
二酸化炭素キャリアとしては、無機材料及び有機材料が用いられ、例えば、無機材料としては、アルカリ金属塩(好ましくはアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩)、アンモニア、アンモニウム塩などが挙げられ、有機材料としては、例えば、アミン、アミン塩、ポリアミン、アミノ酸などが挙げられる。なお、二酸化炭素キャリアは、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜等に含まれていてもよい。
【0053】
分離膜の厚さは、特に限定されないが、機械的強度の観点からは、通常、10μm〜3000μmの範囲が好ましく、より好ましくは10μm〜500μmの範囲であり、さらに好ましくは15μm〜150μmの範囲である。
【0054】
なお、分離膜は、多孔質性の支持体に支持されていてもよい。支持体の材質としては、紙、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。なお、支持体を設けた場合、二酸化炭素分離膜の厚さは、二酸化炭素透過性を好適に確保する点から、100nm〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは100nm〜50μmの範囲である。
【0055】
また、分離膜として、例えば、特許第5329207号に記載の高分子膜、特許第4965928号に記載のCO
2促進輸送膜、特許第5743639号に記載の分離膜、特許第5738704号に記載の透過膜などを用いてもよい。
【0056】
アノードオフガスG3は、アノードオフガス管P7を経て分離部20の流入部24へ供給される。アノードオフガスG3に含まれる二酸化炭素は、分離膜28を透過して透過部26へ移動する。二酸化炭素の濃度が低減されて流入部24側に残ったアノードオフガスG3は、再生燃料ガスG4となって、流入部24から送出される。再生燃料ガス管P9は、第2燃料電池スタック18のアノード18Aと接続されており、再生燃料ガスG4は、再生燃料ガス管P9を経て、第2燃料電池スタック18のアノード18Aに供給される。
【0057】
アノードオフガス管P7を流れるアノードオフガスG3と再生燃料ガス管P9を流れる再生燃料ガスG4とは、第1熱交換器30で熱交換が行われる。第1熱交換器30では、アノードオフガスG3が冷却され、再生燃料ガスG4が加熱される。
【0058】
分離部20の透過部26には、スイープ用気化器44に一端が接続されたスイープ水供給管P14の他端が接続されている。スイープ用気化器44は、後述するタンク42と接続されており、ポンプPO2によりタンク42からスイープ用気化器44へ水が送出される。スイープ用気化器44では、送られた水(液相)が気化され、水蒸気がスイープ水供給管P14を介してスイープガスとして透過部26へ供給される。透過部26へ供給される水蒸気は、略100%の水蒸気であることが好ましい。
【0059】
分離部20の透過部26では、水蒸気がスイープガスとして透過部26へ流入し、透過部26における二酸化炭素の分圧が低下する。したがって、流入部24から分離膜28を透過して二酸化炭素が透過部26へ移動し易くなる。また、分離膜28の透過側へ水蒸気を供給しているので、分離膜28として、水蒸気存在下で二酸化炭素の透過が向上される材料を用いることで、流入部24側から透過部26側への二酸化炭素の透過をより向上させることができる。
【0060】
二酸化炭素、水蒸気、及び、その他分離膜28を透過したアノードオフガスG3中の気体は、透過ガスとして透過部26から送出される。送出された透過ガスG7は、透過ガス管P16により、第2熱交換器32を経てタンク42へ送出される。
【0061】
タンク42には、凝縮により液化した水、及び、水が除去された透過ガスG7が貯留されている。タンク42には、二酸化炭素を回収する回収管P18、及び、水をスイープ用気化器44へ供給する水循環管P19が接続されている。水循環管P19には、ポンプPO2が設けられ、他端はスイープ用気化器44に接続されている。回収管P18は、不図示の回収タンクに接続されていてもよいし、別のシステムへ供給するための配管に接続されていてもよい。
【0062】
第2熱交換器32では、透過ガスG7と空気とで熱交換が行われ、空気は加熱され、透過ガスG7は冷却される。冷却された透過ガスG7中の水蒸気は凝縮し、タンク42へ流入して貯留される。水蒸気が分離され、二酸化炭素濃度が高くなった透過ガスG7は、回収管P18から排出され回収される。
【0063】
第2燃料電池スタック18のアノード18A及びカソード18Bでは、第1燃料電池スタック16と同様の反応により発電が行われる。アノード18A及びカソード18Bから排出された使用済のガスは、配管P11、カソードオフ燃焼導入管P12により燃焼器40へ送出され、燃焼器40で焼却に供される。本実施形態の燃料電池システム10Aは、第1燃料電池スタック16で使用された燃料であるアノードオフガスG3が再生されて、燃料ガスとして第2燃料電池スタック18で再利用される多段式の燃料電池システムとなっている。
【0064】
燃焼器40からは、燃焼排ガスG6が送出される。燃焼排ガスG6は、燃焼排ガス管P10内を流通し、気化器12を経て排出される。
【0065】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Aの動作について説明する。
【0066】
燃料電池システム10Aにおいては、ガス源からの燃料であるメタン及びタンク42からの水が、気化器12へ供給される。気化器12では、供給されたメタン及び水が混合されると共に、燃焼排ガス管P10を流通する燃焼排ガスG6から熱を得て加熱され、水が気化され水蒸気となる。
【0067】
メタン及び水蒸気は、気化器12から配管P1を介して改質器14へ送出される。改質器14では、改質反応により、水素を含む600℃程度の燃料ガスG1が生成される。燃料ガスG1は、燃料ガス管P4を介して第1燃料電池スタック16のアノード16Aに供給される。
【0068】
第1燃料電池スタック16のカソード16Bには、空気Aが酸化ガス管P5を経て供給される。これにより、第1燃料電池スタック16では、前述の反応により発電が行われる。上記反応により第1燃料電池スタック16は発熱し、650℃程度の温度で発電が行われる。この発電に伴い燃料電池スタック16のアノード16Aからは、アノードオフガスG3が排出される。また、カソード16Bからは、カソードオフガスG2が排出され、カソードオフガスG2は、カソードオフガス管P6を通って第2燃料電池スタック18のカソード18Bへ供給される。
【0069】
アノード16Aから排出されたアノードオフガスG3は、アノードオフガス管P7に導かれ、第1熱交換器30を経て、分離部20の流入部24へ流入される。第1熱交換器30では、アノードオフガスG3の温度は、約650℃からある程度温度が低下する。アノードオフガスG3中の二酸化炭素は、分離膜28を透過して透過部26側へ移動することにより分離される。流入部24からは再生燃料ガスG4が送出され、第1熱交換器30を経て、600℃程度に昇温され、再生燃料ガス管P9により第2燃料電池スタック18のアノード18Aへ供給される。
【0070】
第2燃料電池スタック18では、前述の反応により発電が行われる。上記反応により第2燃料電池スタック18は発熱し、650℃程度の温度で発電が行われる。アノード18A、カソード18Bでの使用済ガスは、配管P11、P12により各々燃焼器40へ送出され、燃焼器40で焼却に供される。燃焼器40からの燃焼排ガスG6は、気化器12を経て排出される。
【0071】
一方、スイープ用気化器44からは、分離部20の透過部26へスイープ水供給管P14を経て水蒸気がスイープガスとして送出される。これにより、透過部26の二酸化炭素濃度が低下する。したがって、流入部24へ流入したアノードオフガスG3中の二酸化炭素の分離膜28の透過が向上する。
【0072】
透過部26へ流入したスイープガスとしての水蒸気は、分離膜28を透過して流入した二酸化炭素等の気体と共に、透過部26から送出される。送出された透過ガスG7は、第2熱交換器32で、酸化ガス管P5を通過する空気との間での熱交換により冷却される。これにより、透過ガスG7中の水蒸気が凝縮されて、透過ガスG7から分離される。透過ガスG7及び凝縮された水は、タンク42へ送出される。透過ガスG7中の二酸化炭素は、タンク42から回収管P18へ送出され、回収される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム10Aは、分離膜28の透過側(透過部26)へスイープガスとして水蒸気が供給されるので、スイープガスの供給がない場合と比較して、透過部26における二酸化炭素及の分圧は低減される。これにより、流入部24へ流入したアノードオフガスG3に含まれる二酸化炭素を、より多く分離膜28を透過させて分離することができる。
【0074】
また、透過部26から、排出された透過ガスG7中の水蒸気を凝縮により容易に分離して、二酸化炭素濃度の高い透過ガスG7を回収することができる。
【0075】
また、流入部24から排出された再生燃料ガスG4は、二酸化炭素が低減されているので、第2燃料電池スタック18で効率よく発電を行うことができ、燃料電池システム10Aの性能を向上させることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、アノードオフガス管P7にブロアB3を設けて流入部24へ流入するアノードオフガスG3の圧力を高くしたが、ブロアB3は、必ずしも必要ではない。ブロアB3で流入部24へ流入するアノードオフガスG3における二酸化炭素の分圧を高くすることにより、二酸化炭素の分離膜28透過を、より向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態では、第2熱交換器32で透過ガスG7を冷却することにより、透過ガスG7に含まれる水蒸気を凝縮させたが、他の方法により透過ガスG7に含まれる水蒸気を分離してもよい。例えば、
図2に示されるように、透過ガス管P16を流通する透過ガスG7と水循環管P19を流通する水(液相)とを第2熱交換器32Aで熱交換により冷却してもよい。また、
図3に示されるように、透過ガス管P16を流通する透過ガスG7と気化器12に水を供給する水供給管P2を流通する水(液相)とを第2熱交換器32Bでの熱交換により冷却してもよい。
【0078】
また、本実施形態では、タンク42に貯留された凝縮水を水循環管P19によりスイープ用気化器44へ供給しているが、水循環管P19は、必ずしも必要ではなく、他の水源からスイープ用気化器44へ水を供給してもよい。水循環管P19を備えることより、燃料電池システム10A内で必要な水を循環させることができる。
【0079】
なお、本実施形態の水循環管P19は、
図4に示すように分岐して、一方を水供給管P2と連結させてもよい。これにより、気化器12へ水を供給するポンプPO1を、ポンプPO3が兼ねることができ、ポンプPO1が不要となる。
【0080】
[第2実施形態]
次に、本実施形態の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0081】
図5に示されるように、本実施形態の燃料電池システム10Bは、気化器12がスイープ用気化器44を兼ねている。水蒸気管P3は、原料ガス管P1と合流されるP3−1と、透過部26へ供給されるスイープ水供給管P14−2に分岐されている。タンク42には、水供給管P2の一端が接続されており、貯留された凝縮水はポンプPO1により、気化器12へ供給される。
【0082】
気化器12からは、水蒸気が送出され、分岐されて配管P3−1を経た水蒸気の一方は、原料ガス管P1と合流され改質器14へ供給される。分岐されてスイープ水供給管P14−2を経た水蒸気の他方は、透過部26へスイープガスとして供給される。
【0083】
本実施形態の燃料電池システム10Bによれば、改質器14及び透過部26の双方への水蒸気供給を気化器12が兼ねる。したがって、燃料電池システム10Bを簡略化することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、タンク42に貯留された凝縮水を気化器12へ供給したが、必ずしもタンク42内の水を使用する必要はなく、他の水源からの水を気化器12へ供給してもよい。
【0085】
また、本実施形態では、第2熱交換器32で透過ガスG7を冷却することにより、透過ガスG7に含まれる水蒸気を凝縮させたが、他の方法により透過ガスG7に含まれる水蒸気を分離してもよい。例えば、
図6に示されるように、透過ガス管P16を流通する透過ガスG7と水供給管P2を流通する水(液相)とを第2熱交換器32Cでの熱交換により冷却してもよい。
【0086】
また、燃料電池システム10Bにおいても、ブロアB3は必須の構成ではない。
【0087】
燃料電池システム10Bは、その他の第1実施形態と同様の効果を奏することもできる。
【0088】
〔第3実施形態〕
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1、2実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0089】
図7には、本発明の第3実施形態に係る燃料電池システム10Cが示されている。燃料電池システム10Cは、第1実施形態で説明した燃料電池システム10Aと比較して、第2燃料電池スタック18を有していない点が異なっている。
【0090】
分離部20に接続された再生燃料ガス管P9は、第1熱交換器30の上流側に設けられた分岐部D1で分岐されている。分岐された一方の循環ガス管P9−1は、第1熱交換器30を経て配管P1へ接続されている。分岐された他方の再生燃料ガス管P9−2は、燃焼器40へ接続されている。分岐部D1では、循環ガス管P9−1と再生燃料ガス管P9−2へ再生燃料ガスG4が分流されている。
【0091】
循環ガス管P9−1を経て改質器14へ導入された再生燃料ガスG4は、メタン、及び気化器12から供給された水蒸気と混合され、改質器14へ供給される。再生燃料ガス管P9−2を経て燃焼器40へ導入された再生燃料ガスG4は、燃焼器40で燃焼される。なお、カソード16Bから排出されたカソードオフガスG2は、カソードオフガス管P6を介して燃焼器40へ導入される。
【0092】
本実施形態の燃料電池システム10Cは、第1燃料電池スタック16で使用済みの燃料であるアノードオフガスG3が再生されて、再度、第1燃料電池スタック16で再利用される循環式の燃料電池システムとなっている。本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0093】
なお、本実施形態においても、水循環管P19を分岐して、一方を水供給管P2と連結させてもよい。
【0094】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1−3実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0095】
図8には、本発明の第4実施形態に係る燃料電池システム10Dが示されている。燃料電池システム10Dは、第3実施形態で説明した燃料電池システム10Cと比較して、第2実施形態と同様に、気化器12がスイープ用気化器44を兼ねている。水蒸気管P3は、原料ガス管P1と合流されるP3−1と、透過部26へ供給されるスイープ水供給管P14−2に分岐されている。タンク42には、水供給管P2の一端が接続されており、貯留された凝縮水はポンプPO1により、気化器12へ供給される。
【0096】
気化器12からは、水蒸気が送出され、分岐されて配管P3−1を経た水蒸気の一方は、原料ガス管P1と合流され改質器14へ供給される。分岐されてスイープ水供給管P14−2を経た水蒸気の他方は、透過部26へスイープガスとして供給される。
【0097】
本実施形態の燃料電池システム10Dによれば、改質器14及び透過部26の双方への水蒸気供給を気化器12が兼ねる。したがって、燃料電池システム10Dを簡略化することができる。
【0098】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第1−4実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0099】
図9には、本発明の第5実施形態に係る燃料電池システム10Eが示されている。燃料電池システム10Eは、第3実施形態で説明した燃料電池システム10Cと比較して、循環ガス管P9−1、及び第1熱交換器30を有していない点が異なっている。
分離部20に一端が接続された再生燃料ガス管P9は、燃焼器40に他端が接続されている。アノードオフガスG3と再生燃料ガスG4との間での熱交換は行われず、再生燃料ガスG4は、すべて燃焼器40へ供給され、燃焼に供される。
本実施形態の燃料電池システム10Eにおいても、流入部24へ流入したアノードオフガスG3に含まれる二酸化炭素について、より多く分離膜28を透過させて分離することができる。また、透過部26から、排出された透過ガスG7中の水蒸気を凝縮により分離して、二酸化炭素濃度の高い透過ガスG7を回収することができる。
【0100】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態について説明する。なお、第1−5実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0101】
図10には、本発明の第6実施形態に係る燃料電池システム10Fが示されている。燃料電池システム10Fは、第5実施形態で説明した燃料電池システム10Eと比較して、第2、4実施形態と同様に、気化器12がスイープ用気化器44を兼ねている。水蒸気管P3は、原料ガス管P1と合流されるP3−1と、透過部26へ供給されるスイープ水供給管P14−2に分岐されている。タンク42には、水供給管P2の一端が接続されており、貯留された凝縮水はポンプPO1により、気化器12へ供給される。
【0102】
気化器12からは、水蒸気が送出され、分岐されて配管P3−1を経た水蒸気の一方は、原料ガス管P1と合流され改質器14へ供給される。分岐されてスイープ水供給管P14−2を経た水蒸気の他方は、透過部26へスイープガスとして供給される。
【0103】
本実施形態の燃料電池システム10Eによれば、改質器14及び透過部26の双方への水蒸気供給を気化器12が兼ねる。したがって、燃料電池システム10Eを簡略化することができる。
【0104】
さらに、本発明は、前述の第1〜4実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で、当業者によって、前述の各実施形態を組み合わせて実施される。また、本発明において、例えば、熱交換器の設置位置、組み合わせなどはこれらの実施形態に限定されない。また、ガス、水などの各種流体の加熱及び冷却には熱交換器以外の手段を用いてもよい。