(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986846
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】冷却システム及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
F24F 1/42 20110101AFI20211213BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20211213BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20211213BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20211213BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20211213BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20211213BHJP
C02F 1/72 20060101ALI20211213BHJP
C02F 1/78 20060101ALI20211213BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20211213BHJP
C02F 9/02 20060101ALI20211213BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20211213BHJP
C02F 9/12 20060101ALI20211213BHJP
F28G 9/00 20060101ALI20211213BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20211213BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
F24F1/42
B01D61/12
C02F1/44 A
C02F1/50 510C
C02F1/50 510D
C02F1/50 520B
C02F1/50 531Q
C02F1/50 531R
C02F1/50 531E
C02F1/50 531F
C02F1/50 540A
C02F1/50 540B
C02F1/50 550C
C02F1/50 560B
C02F1/50 560C
C02F1/50 560E
C02F1/28 D
C02F1/32
C02F1/72 Z
C02F1/78
B01D61/04
C02F1/50 560Z
C02F9/02
C02F9/04
C02F9/12
F28G9/00 Z
F25B39/04 N
F25B1/00 381G
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-37263(P2017-37263)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-141610(P2018-141610A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年12月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峰彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀一
(72)【発明者】
【氏名】辻 聰
【審査官】
石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−018771(JP,A)
【文献】
特開2016−056959(JP,A)
【文献】
特開2007−205677(JP,A)
【文献】
特開2005−052793(JP,A)
【文献】
特開2015−218931(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0331703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/42
B01D 61/12
C02F 1/44
C02F 1/50
C02F 1/28
C02F 1/32
C02F 1/72
C02F 1/78
B01D 61/04
C02F 9/02
C02F 9/04
C02F 9/12
F28G 9/00
F25B 39/04
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式凝縮器の吸込空気を液体の蒸発潜熱で冷却する冷却システムであって、
前記吸込空気に対して吸い込み方向の上流側から液体を微粒化して噴霧するノズルと、
前記ノズルから噴霧する前記液体を、前記吸込空気を冷却する冷却用液体と前記冷却用液体の噴霧流路に存在する装置を洗浄する洗浄用液体のうちいずれか一方に切り替える切り替え装置と、を備え、
前記ノズルは、前記冷却用液体および前記洗浄用液体のうち、前記切り替え装置により切り替えられて供給された液体を微粒化して、前記空冷式凝縮器の前記吸込空気の吸い込み方向の上流側から噴霧し、
前記冷却用液体は、上水、井水、および工業用水のうち少なくともいずれか一つであり、
前記洗浄用液体は、純水又は前記冷却用液体よりも不純物の濃度が薄い水を含む、
冷却システム。
【請求項2】
空冷式凝縮器の吸込空気を液体の蒸発潜熱で冷却する冷却システムであって、
前記吸込空気に対して液体を噴霧するノズルと、
前記ノズルから噴霧する前記液体を、前記吸込空気を冷却する冷却用液体と前記冷却用液体の噴霧流路に存在する装置を洗浄する洗浄用液体のうちいずれか一方に切り替える切り替え装置と、を備え、
前記冷却用液体は、上水、井水、および工業用水のうち少なくともいずれか一つであり、
前記洗浄用液体は、前記冷却用液体よりも不純物の濃度が薄い水であり、
前記切り替え装置は、前記空冷式凝縮器に付着した前記冷却用液体に含まれる不純物の析出が生じる時間に比して短い時間間隔で、前記液体を前記冷却用液体から前記洗浄用液体に切り替える、
冷却システム。
【請求項3】
前記洗浄用液体は、前記上水、井水、工業用水よりも不純物の濃度が薄い水、又は前記不純物を除去することのできる洗浄剤である、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記切り替え装置は、前記冷却用液体の不純物濃度、前記凝縮器周囲の気温、湿度又は風速のうち少なくともいずれか一つに基づいて前記ノズルから噴霧する液体を切り替える、
請求項2又は3に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記冷却システムは、逆浸透膜を有する逆浸透膜装置を備え、前記冷却用液体を前記逆浸透膜装置へ送り前記逆浸透膜を透過させることによって前記冷却用液体に含まれる不純物を除去し前記洗浄用液体を生成する、
請求項3又は4に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記冷却システムは、前記逆浸透膜装置へ送る前記冷却用液体を30度から40度までの温度範囲へ加熱させる加熱手段を備える、
請求項5に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記加熱手段は、太陽熱又は前記冷却システムを運転する際に発生する熱のうち少なくともいずれか一つを利用した手段である、
請求項6に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記冷却システムは、前記冷却用液体に他のシステムの冷却塔のブロー水を用いる、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記冷却システムは、活性炭処理装置、UV処理装置、オゾン処理装置、過酸化水素を添加する装置、又は銅イオンあるいは銀イオンを含む薬剤を添加する装置のうち少なくともいずれか一つの装置を備え、前記装置を用いて前記冷却用液体に含まれる不純物を除去する、
請求項6から8のうちいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項10】
空冷式凝縮器の吸込空気を液体の蒸発潜熱で冷却する冷却方法であって、
前記吸込空気に対して吸い込み方向の上流側から液体を微粒化して噴霧する噴霧工程と、
噴霧する前記液体を、前記吸込空気を冷却する冷却用液体と前記冷却用液体の噴霧流路に存在する装置を洗浄する洗浄用液体のうちいずれか一方に切り替える切り替え工程と、を含み、
前記噴霧工程においては、前記冷却用液体および前記洗浄用液体のうち、前記切り替え工程において切り替えられた液体が微粒化されて、前記空冷式凝縮器の前記吸込空気の吸い込み方向の上流側から噴霧され、
前記冷却用液体は、上水、井水、および工業用水のうち少なくともいずれか一つであり、
前記洗浄用液体は、純水又は前記冷却用液体よりも不純物の濃度が薄い水を含む、
冷却方法。
【請求項11】
空冷式凝縮器の吸込空気を液体の蒸発潜熱で冷却する冷却方法であって、
前記吸込空気に対して液体を噴霧する噴霧工程と、
噴霧する前記液体を、前記吸込空気を冷却する冷却用液体と前記冷却用液体の噴霧流路に存在する装置を洗浄する洗浄用液体のうちいずれか一方に切り替える切り替え工程と、を含み、
前記冷却用液体は、上水、井水、および工業用水のうち少なくともいずれか一つであり、
前記洗浄用液体は、前記冷却用液体よりも不純物の濃度が薄い水であり、
前記切り替え工程においては、前記空冷式凝縮器に付着した前記冷却用液体に含まれる不純物の析出が生じる時間に比して短い時間間隔で、前記液体が前記冷却用液体から前記洗浄用液体に切り替えられる、
冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システム及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空冷チラーや空冷パッケージエアコン等のシステムは冷媒の凝縮温度が低下するほど冷房運転時の運転効率が向上するため、凝縮器への散水や凝縮器が吸い込む吸込空気へミスト状の水の噴霧を行うことにより凝縮器の放熱効果を向上させることが行われている。散水や噴霧に用いられる水は上水、井水、工業用水等である。一方で、特許文献1、2では、散水や噴霧に用いられる水全てを一旦逆浸透膜へ透過させることによって水中に含まれるカルシウム、シリカ等の不純物を除去する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−243144号公報
【特許文献2】特開2016−56959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凝縮器への散水や噴霧に用いられる水にカルシウム、シリカ等の不純物が多く含まれる場合、凝縮器やその周辺、噴霧流が滞留する場所(凝縮器フィンの押さえ板表面、室外機内部の配管や電装機器の表面、冷媒管ダクト表面など)や噴霧流路途中にある架台などの障害物にそれらの不純物が析出して付着し、凝縮器の放熱性能の低下や装置の外観の変色という問題を招く。
【0005】
そこで、散水や噴霧に用いられる水全てを一旦逆浸透膜に透過させ、水中に含まれる不純物のうちシリカ等のスケール成分を除去した水を噴霧するという冷却システムが存在する。この冷却システムの場合、上述のような不純物付着問題は起こらない。しかしながら、逆浸透膜装置が大掛かりになり、装置費用の増大を招く。加えて逆浸透膜装置の運転費用も要する。つまり、不純物付着防止による放熱性能向上という効果は見込めるものの、費用対効果は高まらない。
【0006】
そこで本願は不純物付着の防止による空冷式凝縮器の放熱性能の向上を実現させつつも設備費用を抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、空冷式凝縮器の吸込空気に対して不純物を除去していない液体のみ、あるいは不純物を除去した液体のみを単に噴霧するのではなく、不純物を除去していない液体と、洗浄用液体とを切り替えて噴霧することとした。
【0008】
詳細には、本発明は、空冷式凝縮器の吸込空気を液体の蒸発潜熱で冷却する冷却システムであって、吸込空気に対して液体を噴霧するノズルと、ノズルから噴霧する液体を、吸込空気を冷却する冷却用液体と冷却用液体の噴霧流路に存在する装置を洗浄する洗浄用液体のうちいずかれ一方に切り替える切り替え装置と、を備える。
【0009】
ただし、ここでいう洗浄用液体とは、冷却用液体中に含まれる不純物の析出を遅らせる効果、又は不純物を除去する効果を有する液体である。析出を遅らせる効果は、装置に付いた冷却用液体を希釈することで、除去する効果は不純物を溶解させることである。
【0010】
このような冷却システムであれば、まず液体の噴霧によって凝縮器の放熱性能を向上させることができる。さらに、凝縮器やその周辺、噴霧流が滞留する場所や噴霧流路途中にある架台などの障害物に不純物を除去していない冷却用液体が付いた際には、噴霧する液体を冷却用液体から洗浄用液体に切り替えて洗浄すれば上記場所へ不純物が析出して付着することを防止することができ、凝縮器の放熱性能の低下や装置の外観の変色を防止することができる。
【0011】
またノズルは、噴霧する液体を微粒化するタイプであることが望ましい。微粒化することにより、ノズルから凝縮器へ到達するまでに液滴に含まれる水分は蒸発するため液滴に含まれる不純物が粉となって気流に乗って飛散し、凝縮器やその周辺への不純物の付着を抑制する効果がある。
【0012】
また、本発明にかかる冷却システムに用いる冷却用液体は、上水、井水、工業用水のうち少なくともいずれか一つでもよく(以下、冷却用水という)、洗浄用液体は、上水、井水、工業用水よりも不純物の濃度が薄い水(以下、洗浄用水という)、又は不純物を溶解することのできる洗浄剤であってもよい。このような構成により、安価で大量に入手できる液体を用いて冷却システムを運転することができ、運転費用を抑制することができる。
【0013】
また、本発明にかかる冷却システムに備わる切り替え装置は、冷却用水の不純物濃度、凝縮器周囲の気温、湿度又は風速のうち少なくともいずれか一つに基づいてノズルから噴霧する液体を切り替えてもよい。このような切り替え装置によって冷却用水、洗浄用水あるいは洗浄剤の噴霧量を不純物の析出のし易さに応じて調節することができ、洗浄用液体の使用量の無駄を削減することができる。
【0014】
また、本発明にかかる冷却システムは、逆浸透膜を有する逆浸透膜装置を備え、冷却用水を逆浸透膜装置へ送り逆浸透膜を透過させることによって冷却用水に含まれるスケール成分を除去し洗浄用水を生成してもよい。このような構成であれば、冷却用水を凝縮器への噴霧に加えて洗浄用水を生成するために利用することができる。よって、例えば、冷却用水と洗浄用水の水源を共通にすることができる。
【0015】
また、本発明にかかる冷却システムは、逆浸透膜装置へ送る冷却用水を30度から40度までの温度範囲へ加熱させる加熱手段を備えてもよい。逆浸透膜は高圧をかけた水を、スケール成分を濃縮した水と清浄な透過水とに分離する機能を有するが、その透過の際、水温が高いほど水の粘度が低下し、逆浸透膜への単位操作圧に対する透過水量の増量が可能となるため、逆浸透膜ポンプ動力の削減や逆浸透膜装置の小型化が図れ、装置のメンテナンス頻度を長くし、冷却システムにかかる費用を抑制することができる。一方で、逆浸透膜や汎用タンクに使用される材料(ポリプロピレン)の耐熱温度に制約があることから、透過前の水は30度から40度までの温度範囲へ加熱することが望ましい。
【0016】
また、本発明にかかる冷却システムに用いる加熱手段は、太陽熱又は冷却システムを運転する際に発生する熱のうち少なくともいずれか一つを利用した手段であってもよい。このような加熱手段によって、冷却システムの省エネルギー化を実現することができる。
【0017】
また、本発明にかかる冷却システムは、冷却用水に他のシステムの冷却塔のブロー水を用いてもよい。他のシステムの冷却塔のブロー水を冷却用水に利用すれば、夏季などの時期にはブロー水の水温自体が高いため新たに加熱する必要はなく、逆浸透膜透過に要するエネルギーが少なく済み、逆浸透膜ポンプ動力の削減や逆浸透膜装置の小型化が図れ、装置のメンテナンス頻度を長くし、冷却システムにかかる費用を抑制することができる。冷却塔の水にスケール分散剤、防食剤、スライム防止剤の混合薬品を添加している場合は逆
浸透膜におけるスライム発生の抑制にも役立つ。
【0018】
ところで、冷却用水中に多くの有機物が含まれている場合、冷却用水を30度から40度まで加熱すると、この水温範囲は藻類、カビ類、細菌類などの増殖至適温度と重なるため、それらがバクテリアスライムとなり逆浸透膜を透過する際に逆浸透膜閉塞を誘発する虞がある。そこで、本発明にかかる冷却システムは、活性炭処理装置、UV処理装置、オゾン処理装置、過酸化水素を添加する装置、又は銅イオンあるいは銀イオンを含む薬剤を添加する装置のうち少なくともいずれか一つの装置を備え、これらの装置を用いて冷却用水に含まれる不純物を除去してもよい。冷却システムが上記のような装置を備えていれば、逆浸透膜中のバクテリアスライムや藻類等の発生を抑制し、逆浸透膜閉塞による逆浸透膜透過水量の低下を防止することができる。
【0019】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。すなわち、本発明は、例えば、空冷式凝縮器の吸込空気を液体の蒸発潜熱で冷却する冷却方法であって、吸込空気に対して液体を噴霧する噴霧工程と、噴霧する液体を、吸込空気を冷却する冷却用液体と冷却用液体の噴霧流路に存在する装置を洗浄する洗浄用液体のうちいずかれ一方に切り替える切り替え工程と、を備える、冷却方法であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
上記冷却システム及び冷却方法は、不純物付着の防止による空冷式凝縮器の放熱性能の向上を実現させつつも設備費用を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にかかる冷却システムの構成図である。
【
図3】
図3は、冷却時と洗浄時の冷却システムの状態を示した図である。(a)は冷却時、(b)は洗浄時である。
【
図4】
図4は、冷却用水を加熱する手段として、凝縮器の排気熱を利用する冷却システムの部分拡大図である。
【
図5】
図5は、冷却用水を加熱する手段として、太陽熱集熱器を利用する冷却システムの部分拡大図である。
【
図6】
図6は、冷却用水を加熱する手段として、空冷パッケージエアコンの高圧液との熱交換を利用する冷却システムの構成図である。
【
図7】
図7は、冷却用水を加熱する手段として、空冷パッケージエアコンの高圧液との間接熱交換を利用する冷却システムの構成図である。
【
図8】
図8は、冷却用水を加熱する手段として、噴霧ポンプのジャケット排熱との熱交換を利用する冷却システムの構成図である。
【
図9】
図9は、冷却用水を加熱する手段として、噴霧ポンプのジャケット排熱との間接熱交換を利用する冷却システムの構成図である。
【
図10】
図10は、冷却用水に他のシステムの冷却塔のブロー水を使用する冷却システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0023】
<システム構成>
図1は、本発明の実施形態にかかる冷却システムの構成図である。
図1に示す冷却システム100はチラー、設備用パッケージエアコン、店舗オフィス用パッケージエアコン、ルームエアコンなどが有する空冷式凝縮器の放熱性能向上のためにその凝縮器の吸込空気
を液体の蒸発潜熱で冷却する冷却システムである。ここでは吸込空気を冷却する冷却用液体の一例として上水、井水、工業用水等の冷却用水(以降、水道水という)を用いる。
図1に示すように、冷却システム100は上述のチラー等の空冷式凝縮器1の吸込空気へミスト状の水を噴霧するノズル2、ノズル2へ水を送る噴霧ポンプ3、水道水中に含まれる不純物を除去して洗浄用水(本願でいう「洗浄用液体」の一例である)を生成する洗浄用水生成装置4、洗浄用水生成装置4へ水道水を送る第一ポンプ5、生成された洗浄用水を貯えられる洗浄用水水槽6を備える。また、冷却システム100は、水道水供給源から第一ポンプ5へ至る配管と、水道水供給源から噴霧ポンプ3へ至る配管と、第一ポンプ5から洗浄用水生成装置4へ至る配管と、洗浄用水生成装置4から洗浄用水水槽6へ至る配管と、洗浄用水水槽6から噴霧ポンプ3へ至る配管と、水道水供給源から噴霧ポンプ3への水道水の供給水量を調節するための第一バルブ7と、洗浄用水水槽6から噴霧ポンプ3への洗浄用水の供給水量を調節するための第二バルブ8とを有する。ノズル2から噴霧する水を水道水と洗浄用水のうちいずれか一方に切り替える際には、第一バルブ7及び第二バルブ8が開閉される。
【0024】
なお、ノズル2は、噴霧する水を微粒化して噴霧する。また、噴霧ポンプ3を4〜6MPaの高圧が得られるプランジャーポンプ、水道水が通る配管を4〜6MPaに耐えられる管種とすることで圧縮空気を使わない1流体ノズルをノズル2に用いることができる。
【0025】
図2は洗浄用水生成装置4の構成図である。洗浄用水生成装置4は、活性炭10と活性炭10を支持する支持砂利11とを有し水道水中に含まれる残留塩素や全有機炭素を除去する活性炭濾過機9、活性炭濾過機9により濾過後、水道水中に含まれるスケール成分を除去する逆浸透膜装置12、逆浸透膜を保護する保安用プレフィルタ13を備える。また、洗浄用水生成装置4は活性炭濾過機9からプレフィルタ13へ至る配管と、プレフィルタ13から逆浸透膜装置12へ至る配管とを有する。また逆浸透膜装置12は水道水を透過させる際に発生する逆浸透膜濃縮水を系外へ排出する配管と、逆浸透膜濃縮水を再び逆浸透膜装置へ循環させる配管とを有する。逆浸透膜は例えば日東電工社製のESPA2‐4040等である。また、逆浸透膜の代わりにUF(限外ろ過)膜を用いてもよい。この構成により水道水を用いて洗浄用水を生成することができ、また逆浸透膜濃縮水を再利用することにより洗浄用水を生成するための水道水量を削減することができる。
【0026】
図3は、水道水の噴霧時と洗浄用水の噴霧時の冷却システム100の状態を示した図である。(a)は前者の状態、(b)は後者の状態である。(a)に示すように前者の場合は第一バルブ7を開け、第二バルブ8を閉めることによって水道水のみが噴霧ポンプ3へ送られる。一方、(b)に示すように後者の場合は第二バルブ8を開け、第一バルブ7を閉めることによって洗浄用水のみが噴霧ポンプ3へ送られる。第一バルブ7及び第二バルブ8は手動操作でも自動操作でもよい。自動操作の場合、バルブの開閉はタイマーによって実行されてもよいし、冷却システム100内に不純物の析出し易さを推定する計測装置を設けて、その推定結果に応じて実行されてもよい。
【0027】
次に、洗浄時の冷却システムの運転(以下、リンス運転という)について説明する。洗浄用水は水道水から不純物を取り除いた水であるため比較的高価なことが多く、そのために費用対効果の面から洗浄用水の噴霧量を抑えつつ所定の目的を達成するようにリンス運転を行うことが望まれる。それを実現するためには、噴霧水の水膜中に不純物が析出する寸前あるいは析出した場合においても洗浄用水を用いて不純物を付着表面から滴下させることのできる程度の間にリンス運転を開始し、水膜が洗浄用水によって十分に希釈された後に速やかにリンス運転を終了することが望ましい。これを満たすリンス運転間隔とリンス継続時間について次に算出する。
【0028】
まずリンス運転間隔については、水膜中の不純物が析出するまでの時間を、水道水の不
純物濃度と外気温湿度条件及び風速から算出する。ここでは不純物成分が炭酸カルシウム主体である場合について説明する。外気条件を温度25度、湿度60%、風速2m/sと仮定し、噴霧流が滞留する場所や噴霧流路途中にある架台などの障害物表面に形成されている水膜の蒸発速度E[mm/day]をZaykovの式により算出すると(1)式の通りとなる。
E=(0.15+0.108v)・(e0−e1)
=(0.15+0.108×2)・(31.7−19.0)
=4.6[mm/day]・・・(1)
ただし、vは風速[m/s]、e0は水膜近傍の水蒸気圧[hPa]、e1は気中の水蒸気圧[hPa]である。蒸発に伴い、蒸発する水分と結合していた炭酸カルシウムは蒸発せずに水膜中に留まると考えられるが、その水膜中に留まる炭酸カルシウムの増加速度は(2)式のように算出される。ただし、ノズルから噴霧される上水の硬度を60mg/Lとし、前記上水は水膜に到達する際に2倍に濃縮されているもの(硬度120mg/L)と仮定する。
(4.6/1000/24)[m/h]×(120×1000)[mg/m
3]
=23.2[mg/(m
2・h)]・・・(2)
一方で、炭酸カルシウムの水への溶解度は、水温25度において820mg/L(化学便覧基礎編II 改訂3版)であるから、水膜の厚みが0.1mmの場合、水膜から炭酸カル
シウムが析出するまでの時間は(3)式の通り算出される。ただし、水膜中に溶解している炭酸カルシウムの初期値は、リンス運転によって0mg/m
3になっているものと仮定する。
(820−0)×0.1[mg/m
2]/23.2[mg/m
2・h]
=3.5[h]・・・(3)
すなわち、3.5時間おきにリンスすれば炭酸カルシウムの析出を防止できる。安全率を例えば1.1倍とすれば実際のリンス間隔は約3時間と試算される。このように、水道水の不純物濃度と外気温湿度条件及び風速からリンス運転間隔を算出して水道水と洗浄用水とを切り替えることができる。
【0029】
また、外気条件が東京における夏季TAC2.5,14:00の条件で、最も気温が高い(温度33.4度、湿度57.3%、風速2m/sと仮定)場合、同様に(1)式、(2)式、(3)式を用いて炭酸カルシウムが析出するまでの時間を算出すると2.0時間となる。そして安全率を例えば1.1倍とすれば実際のリンス間隔は約1.8時間と試算される。このように不純物の析出のし易さに応じてリンス運転間隔を精密に調整してもよい。
【0030】
リンス継続時間は水膜を洗浄用水に置き換えるために要する時間である。水膜表面に到達する噴霧水量はノズルの噴霧量・噴霧角・ノズルからの距離・水膜へ到達する間の蒸発量に依存するが、これを3L/m
2hと仮定すると、水膜の厚みが0.1mmの場合、リンス継続時間は(4)式のように算出される。
(0.1/1000)[m]/(3/1000)[m
3/m
2h]
=0.033[h]
=2[min]・・・(4)
すなわちリンスを2分間継続すれば水膜が洗浄用水に置き換わる試算となる。安全率を例えば2倍とすれば、実際のリンス継続時間は4分と試算される。上記試算のようにリンス継続時間を調整してもよい。
【0031】
洗浄用水生成装置4ならびにその水槽6の容量は、噴霧水量と最短のリンス運転間隔(上記の試算より概ね1時間以上)から決定する。また噴霧を外気温湿度条件や冷却対象機器の運転状態に応じて発停する場合は、その発停間隔を最小リンス運転間隔より長くし、噴霧停止前に必ずリンス運転を一定時間行い、水膜中に水道水が残らないようにする。
【0032】
なお、本試算は一例であって、実際の運転状況に応じて最適なリンス運転間隔とリンス継続時間は変化する。
【0033】
上述のような冷却システム100は凝縮器の吸込空気を冷却しつつ、比較的高価な洗浄用水の使用を最少量にとどめて水道水が付いた装置を洗浄するため、凝縮器の放熱性能の向上を実現させつつも不純物付着の防止に必要な費用を抑制することができる。
【0034】
<変形例>
リンス運転による高価な洗浄用水量の削減のほかに、逆浸透膜を透過する水道水を透過前に加熱することによって粘度を低下させ、逆浸透膜への単位操作圧に対する透過水量を増量させることによって、費用対効果を高めることもできる。逆浸透膜と透過水量との関係は数1の(5)式、数2の(6)式の通りである。
【数1】
【数2】
ここで、tは水温[度]、TCFは25度(標準温度)における逆浸透膜の透過水量を1とした係数、Q
aは試験温度における透過水量 [m
3/d]、Q
0は標準温度における透
過水量[m
3/d]であり、数1の(5)式はHydranautics社資料、数2の(6)式はJIS K 3805:0990 逆浸透エレメント及びモジュールの性能試験方法より引用した。数1の(5)式、数2の(6)式より、ある温度における透過水量が算出される。例えば、水道水(26度:東京都水道局 平成26年年度の水道水の水温(都庁付近))を逆浸透膜の運転上限温度(例えば40度)まで昇温させると、透過水量が約1.5倍に増量される試算となるため、逆浸透膜ポンプ動力を減らして逆浸透膜装置を小型化できる。これによって、装置のメンテナンス頻度が長くなり、冷却システムにかかる費用を抑制することができる。また、不純物成分がシリカ(SiO
2)主体の場合、洗浄用水温度が高いほど溶解度が向上しリンス効果が高まる。よって本実施形態にかかる冷却システム100は逆浸透膜を透過させる水道水を30度から40度まで加熱する加熱手段を備えてもよい。
【0035】
また、水道水中に多くの有機物が含まれている場合、これを30度から40度まで加熱すると、この水温範囲は藻類、カビ類、細菌類などの増殖至適温度と重なるため、それらがバクテリアスライムとなり逆浸透膜を透過する際に逆浸透膜閉塞を誘発する虞がある。このような場合、水道水を加熱せずに逆浸透膜を透過させ、生成された洗浄用水を加熱してもよい。
【0036】
図4は上述の加熱手段として水道水を凝縮器1の排気熱を利用する冷却システムの部分拡大図である。この変形例は、水道水が通過し、凝縮器1の排気熱によって加熱される被加熱配管14を備える。被加熱配管14は加熱されるため、断熱しないことが望ましい。このような加熱手段によって、冷却システムの省エネルギー化を実現することができ、費用対効果を高めることができる。
【0037】
また、水道水を加熱する手段として太陽熱を利用してもよく、
図5にその変形例の部分
拡大図を示す。この変形例は、太陽熱集熱器15、第一水槽16、第一水槽16から太陽熱集熱器15へ水道水を送る第二ポンプ17を備える。また、第一水槽16から第二ポンプ17へ至る配管、第二ポンプ17から太陽熱集熱器15へ至る配管を有する。また、太陽熱集熱器15から第一水槽16へ水道水が循環する循環配管を有してもよい。このような加熱手段によって、冷却システムの省エネルギー化を実現することができ、費用対効果を高めることができる。
【0038】
また、水道水を加熱する手段として、空冷パッケージエアコンの高圧液との熱交換を利用してもよく、
図6にその構成図を示す。この変形例は、第一ポンプ5からサブクールユニット18内にある冷媒/水熱交換器19へ至る冷却水還管、冷媒/水熱交換器19から洗浄用水生成装置4へ至る冷却水往管を有する。
【0039】
また、
図7に示すように、第二水槽27、第二水槽27から冷媒/水熱交換器19へ水道水を送る第三ポンプ28を備え、空冷パッケージエアコンの高圧液と間接熱交換してもよい。これらのような空冷パッケージエアコンの高圧液との熱交換を利用する加熱手段によって、冷却システムの省エネルギー化を実現することができ、費用対効果を高めることができる。
【0040】
また、水道水を加熱する手段として、噴霧ポンプのジャケット排熱を利用してもよく、
図8にその構成図を示す。この変形例は、ジャケット付き噴霧ポンプ29、前記ポンプのジャケット30、ジャケット30へ第二水槽27から水道水を送る第四ポンプ31を備える。
【0041】
また、
図9のように第二水槽27とジャケット30とを水道水が循環する循環配管を備えてもよい。これらのような噴霧ポンプのジャケット排熱を利用する加熱手段によって、冷却システムの省エネルギー化を実現することができ、費用対効果を高めることができる。
【0042】
また、冷却用水に水道水ではなく他のシステムの冷却塔32のブロー水を用いてもよく、
図10にその構成図を示す。他のシステムの冷却塔のブロー水を冷却用水に用いることによって、夏季などの凝縮器を冷却する必要性が増す季節においてはブロー水の水温自体が高いため、逆浸透膜を透過させる前に加熱しなくとも透過に要するエネルギーが少なく済む。冷却塔の水にスケール分散剤、防食剤、スライム防止剤の混合薬品を添加している場合は逆浸透膜におけるスライム発生の抑制にも役立つ。
【0043】
また、
図4から
図10に示される冷却システムは、活性炭処理装置、UV処理装置、オゾン処理装置、過酸化水素を添加する装置、又は銅イオンあるいは銀イオンを含む薬剤を添加する装置のうち少なくともいずれか一つの装置を備えていてもよい。加熱した水道水を洗浄用水生成装置4へ送る過程において、水道水を上記のような装置に通すことによって逆浸透膜中のスライムあるいはかつ藻類の発生を抑制することができ、装置のメンテナンス頻度を長くし、冷却システムにかかる費用を抑制することができる。
【0044】
また、冷却システム100及び
図4から
図10に示される冷却システムに用いられる洗浄用水は水道水を逆浸透膜へ透過させることによって生成されていたが、洗浄用水のかわりに例えばナルコ社製のPermaClean33やアムテック社製のサンフリーUK/MJ等のスケール洗浄剤を用いてもよい。これらを用いることにより、水道水から洗浄用水を生成する装置を削減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・空冷式凝縮器;2・・ノズル;3・・噴霧ポンプ;4・・洗浄用水生成装置;5・
・第一ポンプ;6・・洗浄用水水槽;7・・第一バルブ;8・・第二バルブ;9・・活性炭濾過機;10・・活性炭;11・・支持砂利;12・・逆浸透膜装置;13・・プレフィルタ;14・・被加熱配管;15・・太陽熱集熱器;16・・第一水槽;17・・第二ポンプ;18・・サブクールユニット;19・・冷媒/水熱交換器;20・・室内機;21・・蒸発器;22・・膨張バルブ;23・・室外機;24・・圧縮機;25・・アキュムレータ;26・・受液器;27・・第二水槽;28・・第三ポンプ;29・・ジャケット付き噴霧ポンプ;30・・ジャケット;31・・第四ポンプ;32・・他のシステムの冷却塔;100・・冷却システム