(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に延在する複数の走査線と、前記第1の方向に交差する第2の方向に延在する複数の映像信号線を有し、前記映像信号線と前記走査線とで囲まれた領域に画素が形成された液晶表示装置であって、
前記画素は薄膜トランジスタ、前記薄膜トランジスタを覆う平坦化膜、前記平坦化膜の上に形成された第1の電極、絶縁膜を介して前記第1の電極の上に形成された第2の電極、前記平坦化膜に形成された前記第1の電極と前記薄膜トランジスタを接続するためのコンタクトホールを有し、
前記第2の電極は複数の画素について共通に形成され、かつ、隣接する2本の前記映像信号線間にスリットを有し、
前記スリットは、前記第2の方向に配列する複数の前記画素に対して連続して形成され、
前記スリットの前記コンタクトホール付近における前記第1の方向の幅は、前記映像信号線と平行に延在する部分における前記スリットの前記第1の方向の幅よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
前記スリットは、前記第2の方向と第1の角度をなす方向に延在し、前記走査線と交差した後、前記第2の方向と第2の角度をなす方向に延在することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一画素に必要な保持容量は薄膜トランジスタのリーク特性で決まるので、1000ppiの画素であっても現状の500ppiと同様の保持容量が必要になる。保持容量確保のために、本発明の一例は次のような構成としている。低温ポリシリコンをチャネル部に有する、現在最も一般的な薄膜トランジスタを使用するために、電極を3層積層構造にする。
【0014】
即ち、IPSの1種である、従来のFFS(Fringe Field Swiching)構造においてコモン若しくはソース電極のうち薄膜トランジスタに近接する方をベタ平面状、他方を櫛歯状もしくはスリット状にしてその重畳部を保持容量としているが、本発明の一例では、薄膜トランジスタ側にベタ平面状電極を追加して3層積層構造とし、ベタ平面状電極同志の重畳部を新たに保持容量としている。
【0015】
また、応答特性を向上するには低粘度のポジ液晶が好適だが、ポジ液晶では画素の両端にドメインが発生する。ドメインは液晶配向の回転方向が正常配向部と逆になっており、個々のドメインは正常配向部により隔てられているが、ドメインと正常配向部の境界は極めて不安定である。例えば画素両端のドメインが融合すれば境界が消失して安定化するが、高精細画素では正常配向部の幅が狭いので、画素両端のドメインが融合しやすくなりドメインが不安定化する。その抑制のため画素電極に蟹足構造を導入すると、電界印加に伴う液晶の回転角が小さくなるので透過率が低下する。高精細画素において蟹足構造を導入すると画素全体に占める面積比が大きいので、透過率の低下も大きい。
【0016】
本発明では、以下の実施例に述べるように、ドメインが発生しにくい画素構成とすることによって、超高精細の画面においても、必要な透過率を確保できるようにしている。また、ドメインが発生しにくい構成とすることによって、液晶材料の選択範囲が広がり、高速応答に対応できる液晶材料を使用することが出来る。
【0017】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の液晶表示装置の外観と構成を
図1に示す。
図1Aに示した様に主に第一の基板SU1と第二の基板SU2が液晶層LC(
図3A参照)を挟持して成り、第二の基板SU2側にバックライトBLを有する。
図1Bは第二の基板SU2の液晶層LCに近接する面であり、中央の表示部DPの周辺には周辺回路PCと接続部CNがあり、駆動用回路は接続部CNを介して接続される。バックライトBLは導光板と光源から構成され、光源LSは青色発光ダイオード上に蛍光体を積層したもので、導光板の側面に配置されていて白色光を発する。
【0019】
本発明の液晶表示装置を構成する画素の平面図を
図2A及び
図2Bに示す。
図2Aは画素6つとその周辺を含み、第二の基板SU2上の映像信号線SL、走査線GL、第二の電極E2(
図2B参照)、ポリシリコン層PS、台座層BS、コンタクトホールCHの平面分布を示す。映像信号線SLと走査線GLの交差部にポリシリコン層PSを有し、ポリシリコン層PSは台座層BSを介してコンタクトホールCHにおいて第二の電極E2に接続されている。尚、コンタクトホールCHは第二の平坦化膜OC2、第四の絶縁膜IL4、第一の電極E1の孔から構成されるが、
図2Aでは第二の平坦化膜OC2の孔で示している。
【0020】
図2Aにおいて、図中、第1方向X及び第2方向Yは互いに交差する方向であり、走査線GLは第1方向Xに沿って延伸している。映像信号線SLは、第2方向Yに延伸し、第2方向Yに対して、第1角度θと第1角度θと、第2方向Yに対して線対称な第2角度−θで屈曲している。
【0021】
図2Bは第二の基板SU2上の映像信号線SL、走査線GL、台座層BS、コンタクトホールCH、第二の電極E2、第三の電極E3の平面分布を示す。第一の電極E1は概略ベタ平面状で、規則的に形成された孔を有し、孔はコンタクトホールCHを内側に含む様に形成されていて、第一の電極E1はコンタクトホールCH内には分布しない。第二の電極E2は映像信号線SLと走査線GLで形成される格子内に分布するが、映像信号線SLと走査線GLの片方若しくは両方と重畳する場合もあり、コンタクトホールCH内にも分布する。第三の電極E3も概略ベタ平面状であるが、
図2B中に破線で示した様に映像信号線SLに概略平行なスリット構造を有し、スリット構造の内部にコンタクトホールCHが位置する。
【0022】
なお、第三の電極E3はスリット構造により第1方向Xに分断されているが、図示しない配線によりスリット構造を挟む2つの第三の電極E3は接続され、共通な電位(共通電圧)が供給されている。
【0023】
図2A中に記載した断面AA’、断面BB’における断面図をそれぞれ
図3A、
図3Bに示す。
図3Aは画素中央における断面であり、
図3Bはアクティブ素子を含む断面である。第一の基板SU1は厚さ0.2mmのホウケイサンガラス製であり、第一の基板SU1上には液晶層LCに近接する側より第一の配向膜AL1、第一の平坦化膜OC1、カラーフィルタCF、ブラックマトリクスBMが形成されている。
【0024】
第二の基板SU2も第一の基板SU1と同じく厚さ0.2mmのホウケイサンガラス製であり、第二の基板SU2上には液晶層LCに近接する側より第二の配向膜AL2、第三の電極E3、第五の絶縁膜IL5、第二の電極E2、第四の絶縁膜IL4、第一の電極E1、第二の平坦化膜OC2、台座層BS、映像信号線SL、第三の絶縁膜IL3、第二の絶縁膜IL2、走査線GL、第一の絶縁膜IL1、ポリシリコン層PS、第二のアンダーコート膜UC2、第一のアンダーコート膜UC1、遮光層LSを有する。
【0025】
第一の配向膜AL1は光配向性のポリイミド膜であり、第一の平坦化膜OC1は非感光性の透明有機膜から成り、ブラックマトリクスBMは黒色顔料を含むネガ型フォトレジストから成る。カラーフィルタCFは周期的に繰り返し配列された赤色カラーフィルタRC、緑色カラーフィルタGC、青色カラーフィルタBCからなる。赤色カラーフィルタRC、緑色カラーフィルタGC、青色カラーフィルタBCはいずれもストライプ状の平面形状で、それぞれ赤色、緑色、青色の顔料を含むネガ型レジストから形成される。尚第一の基板上のカラーフィルタCFとブラックマトリクスBMの積層順はこれに限らず、例えばブラックマトリクスBMをカラーフィルタCFよりも液晶層LC側に積層すると、視角混色を低減する効果が得られる。
【0026】
第二の配向膜AL2は第一の配向膜AL1と同じく光配向性のポリイミド膜であり、第一の電極E1と第二の電極E2と第三の電極E3はいずれも透明酸化物導電膜、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜である。第二の電極E2は画像信号に対応した電位を印加されており、第一の電極E1と第三の電極E3は共通電位を印加されていて、第一の電極E1と第二の電極E2の重畳部、および第二の電極E2と第三の電極E3の重畳部は保持容量として機能する。
【0027】
第四の絶縁膜IL4と第五の絶縁膜IL5は低温成膜された窒化珪素膜であり、第一の電極E1、第二の電極E2に挟まれて保持容量を形成する。第二の平坦化層OC2はポジ型有機透明レジストであり、台座層BSと映像信号線SLは同層で、例えば、チタン、アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)、チタンの3層積層膜である。第三の絶縁膜IL3は窒化珪素膜で、第二の絶縁膜IL2と第一の絶縁膜は酸化珪素膜である。走査線GLと遮光層LSは例えばモリブデンタングステン合金膜で、ポリシリコン層PSはアモルファスシリコン膜をレーザーアニール法で多結晶化した膜であり、第一のアンダーコート膜UC1と第二のアンダーコート膜UC2はそれぞれ窒化珪素膜、酸化珪素膜である。
【0028】
図2A乃至3Bには図示していないものの、映像信号線SLと走査線GLの交差部の一部にポストスペーサを有しており、液晶層LCを保持しなおかつその層厚を表示面内で均一化する。ポストスペーサは第一の基板SU1上、若しくは第二の基板SU2上に形成された、例えば円柱状の有機膜である。あるいはまた第一の基板SU1上と第二の基板SU2上の両方にあっても良く、この場合その平面形状を棒状として互いに交差するように配置すれば、押し圧力印加時の擦過部がポストスペーサの頂部に限定されてコントラスト比の低下が生じにくくなる。
【0029】
液晶層LCは配向方向の誘電率がその垂直方向よりも大きい正の誘電率異方性を有し、高抵抗で尚且つ室温を含む広い温度範囲でネマチック相を示す。液晶層LCの電圧無印加時における配向状態はホモジニアス配向であり、
図2A中にその電圧無印加時の配向状態を円筒状の液晶分子LCM1及びLCM2を用いて模式的に示してある。
【0030】
第一の電極E1と第二の電極E2に電位差を付与すると、第一の電極E1近傍の液晶層LC中にフリンジ電界EFが形成される。このように本実施例の液晶表示装置はFFS(Fringe Field Switching)方式であり、
図3A中に破線で示したように液晶層LCにはその層方向に平行な成分を含むフリンジ電界EFが印加される。この時液晶層LCの配向状態は
図2A中のLCM1およびLCM2に矢印で示したように配向方向の方位が層内で回転するように変化する。
【0031】
この他にも液晶層LCは配向方向の誘電率がその垂直方向よりも小さい負の誘電率異方性としても良く、その際には電圧無印加時の配向状態を
図2A中に記載した方向から90度回転した方向にする。正の誘電率異方性の液晶層LCは低粘度で応答特性に優れ、負の誘電率異方性の液晶層LCは電圧印加時の配向がより均一で高透過率という特長を有する。
【0032】
第一の基板SU1の上側と第二の基板SU2の下側には第一の偏光板PL1と第二の偏光板PL2がそれぞれ配置され、第一の偏光板PL1と第二の偏光板PL2の吸収軸は液晶パネルの法線方向から観察して直交するように設定されていて、尚且つ第二の偏光板PL2の吸収軸は液晶層LCの配向方向に平行である。以上のような第一の偏光板PL1と第二の偏光板PL2と液晶層LCの軸配置により、ノーマリーブラック型の電圧−輝度特性が得られる。即ち電圧無印加時に暗表示となり、電圧印加と共に透過率が増大して明表示となる。
【0033】
FFS方式では電圧印加時に液晶層LCが層内で回転するように配向変化するが、この時視角方向にて色相が黄色みを帯びる方位と青みを帯びる方位が90度周期の方位角で生じる。これを解消するため、
図2A及び
図2Bに示したように一画素を概略平行四辺形として、隣接する画素間でその傾きが互いに逆になるように配置する。液晶層LCの回転方向が逆になった画素を近接して繰り返し配置して、尚且つ個々の画素が十分に微小であれば視角方向の色相が平均化されて観察される。黄色みと青みが平均化されて無彩色になって観察されるので、着色が解消する。
【0034】
FFS方式液晶表示装置では液晶層LCに最も近接する電極に櫛歯状もしくはスリット状の平面形状を付与する。本実施例では第三の電極E3がこれに該当し、第三の電極E3はコモン電位のためスリット構造を有するが、液晶表示装置が高精細化すると電極の加工精度の制約により画素内に単一のスリット状構造しか配置できなくなる。
【0035】
台座層BSを映像信号線SLと同層にして形成すれば製造工程を簡略化できるが、液晶表示装置を高精細化した際には台座層BSに近接する2つの映像信号線SLとの距離を同一にして、2つの映像信号線SLのいずれとも短絡しないようにする。その結果台座層BSは画素の中央部に配置することになり、台座層BSと電極を接続するコンタクトホールCHもまた画素の中央から大きくずらすことはできない。
【0036】
液晶層LCを駆動するフリンジ電界はスリット境界に発生するが、これが画素境界に偏って配置されると隣接する画素上の液晶層LCにも配向変化が及ぶ。この場合、純色表示時に色純度が低下するなどの不都合が生じるので好ましくない。そのため高精細画素では少なくともブラックマトリクスBMに被覆されていない部分において、一本のスリットを画素中央に配置しなければならない。
【0037】
本実施例の第三の電極E3のスリット構造はコンタクトホールの後に形成することになるが、具体的には第五の絶縁膜IL5上にITOを成膜した後にフォトレジストを塗布する。高精細画素ではコンタクトホールの孔径も制約され、少なくとも画素幅の半分以下にしなければならない。尚且つ映像信号線SLと第一の電極E1を平面図上で重畳しないように配置するような余裕はないので、映像信号線SLと第一の電極E1の間の寄生容量を低減するため第二の平坦化膜OC2の膜厚も厚くしなければならない。その結果コンタクトホールCHは狭くて深い孔になり、孔の断面は逆台形で、本実施例においては頂部孔径が4μm、底部孔径が3μm、深さが3μmになる。以下、単にコンタクトホールCHの径という場合は、コンタクトホールCHの深さの1/2の位置におけるコンタクトホールの径を言う。
【0038】
この上にフォトレジストを塗布するとその流動性によりコンタクトホールCH内に流れ込み、コンタクトホール内で膜厚が局所的に厚くなる。正常な膜厚の部分をマスクに近い寸法でパターンニングする露光現像条件ではコンタクトホール内にレジストが残り、コンタクトホール内のレジストを除去するような露光現像条件では正常膜厚部は大幅なオーバーエッチングになる。そのため、スリット境界がコンタクトホール内を通らないようにしなければならず、具体的にはコンタクトホールCHをスリットの内側に配置するか、あるいはまたスリットの外側に配置しなければならない。本実施例はこのうちコンタクトホールCHをスリットの内側に配置した例である。
【0039】
共通電位にある電極の抵抗を低減するためメタル配線を配置する場合があり、この時メタル配線は平面図上において概略映像信号線SLに重畳するように配置される。本実施例のようにコンタクトホールCHをスリットの内側に配置すれば、メタル配線を第三の電極E3に積層して配置することが可能になる。
【0040】
誘電率異方性が正の液晶材料は電界印加時に分子軸が電界方向に沿うように配向変化するが、前述のようにFFS方式で生じる液晶層LCの配向変化は層内での回転である。
【0041】
回転方向が時計回りCWになるか反時計回りACWになるかは電界方向EFと初期配向方向ADの関係で決定され、より少ない回転角度で電界方向に平行になる方に定まる。
図4A及び
図4Bではいずれにおいても反時計回りACWの方が回転角が小さいので、液晶層LCは反時計回りに回転する。なお、
図4A及び
図4BのE3は第3電極E3のスリットを表している。
【0042】
図4Aに示した様に時計回りCWと反時計回りACWの回転角の違いを大きくするほど一方の配向変化が安定化して、後述するドメインが発生しにくくなるが、この時回転角が小さくなり透過率が低下する。スリット方向と初期配向方向ADのなす角を配向角とすると、一般的には透過率を優先して
図4Bに示した様に配向角を10度前後の角度にしている。この時時計回りCWと反時計回りACWの回転角の違いが小さくなるので、後述するドメインが発生しやすくなる。
【0043】
もし仮にスリット構造を各画素内に収まるサイズとして各画素の内部にスリット端部を配置した場合、スリット端部では
図5に示した様に電界方向EFの方位が180度回転して分布している。
図5中のA点とその向かい側のE点はスリット部にあり、この二点を結ぶスリット端部にある点上の電界方向EFを追えば、A点からE点に行くまでにその方位は180度回転する。そのため、スリット部に対して逆回転の方が液晶層LCの回転角が小さくなる部分がスリット端部の一部に必ず生じる。
図5にはスリット端部上のB点、C点、D点を例に、スリット端部上における電界方向を示してある。
【0044】
図5のスリット部A、Eでは反時計回りACWの方が回転角が小さいが、画素端部のBでは時計回りCWの方が回転角が小さくなっている。回転方向が逆の部分はドメインと呼ばれ、ドメインと正常部の境界では時計回りと反時計回りの回転が拮抗して液晶層LCが動けなくなる。FFS方式はノーマリーブラック型の電圧−輝度特性であることから、境界は暗線になる。電界方向EFと初期配向方向ADの関係で決まるドメイン境界を、
図5中に太線で示している。
【0045】
境界部は電界方向に対して垂直に近い配向方向であるため電気エネルギーが高く、尚且つその近傍で液晶配向が時計回りから反時計回りに急激に変化するため配向エネルギーも高い。このようにドメインと正常部の境界は極めて不安定で、外部からの応力や液晶層LCの熱揺らぎでその位置が容易に変化し、
図5に示した電界方向EFと初期配向方向ADの関係で決まる分布よりも拡大する場合がある。
【0046】
ドメインはスリット構造の両端に発生するが、例えば2つのドメインが融合すると境界が消失して液晶層LCは安定化する。特に高精細画素では画素が小さく両端のドメイン間の距離も小さいので2つのドメインが見かけ上引き合うような動きを示し、ドメインはより不安定になる。画素毎にドメインの位置が異なると画素毎に透過率が異なりムラになって見えるので好ましくない。更にドメインの分布が時間と共に変動すると、ムラが動いて見える。
【0047】
ドメインをスリット端部から動かないようにするには、例えばスリット端部でスリットを屈曲させて、逆回転に必要な回転角を大きくすれば良い。しかしこの時
図4Aに示した様に液晶層LCの回転角が減少するので、屈曲部の透過率は低下する。ドメイン安定化に必要な屈曲部のサイズは画素サイズに依らず一定なので、高精細画素ほど透過率の低下が大きい。
【0048】
また、屈曲部はITOを加工する際のエッチングがオーバーになるかアンダーになるかで形状が変化しやすく、例えばアンダーになれば屈曲部は十分な長さにならないので、その分の尤度も考慮に入れてスリット屈曲部を大きめに形成しなければならず、このことも透過率低下の要因となっている。そこで
図2Bに示した様に画素間でスリット構造を繋げれば、スリット屈曲部をより画素端部にシフトできる。
【0049】
この場合、第3の電極E3のスリットと第二の電極E2の境界が交差する付近にドメインが発生するが、ドメインの発生位置は画素境界であり、なおかつ画素境界から動きにくい。また、スリット構造を繋げたことによりエッチングのオーバー、アンダーによるスリット構造の形状変化も生じなくなる。これにより、ドメイン安定化と高透過率を両立することができる。
【0050】
本実施例では電極を第一の電極E1、第二の電極E2、第三の電極E3の三層で形成して、第一の電極E1と第二の電極E2の重畳部、および第二の電極E2と第三の電極E3の重畳部を保持容量としたことにより画素面積が小さいにもかかわらず十分な保持容量を形成でき、これによりフリッカによるちらつきのない表示を得ることができる。
【0051】
この時液晶層LCに近接する第三の電極E3を共通電位とすることで、第三の電極E3に
図2Bに破線で示したような画素間で連続したスリット構造を付与することができる。
図2Bに破線で示した第三の電極E3のスリット構造はスリット構造中にコンタクトホールCHを含み、スリット構造は画素中央に位置してなおかつ画素間で連結していて、画素間ではスリット構造の傾き角を画素中央よりも増大させており、これまで述べたような高精細画素の課題を解決するものである。このようなスリット構造とコンタクトホールCHの配置により、コンタクトホールCHと干渉することなくスリット構造を安定して形成し、ドメインを安定化してムラの発生を防ぎ、なおかつ高透過率が得られる。
【実施例2】
【0052】
本実施例では実施例1に比較してスリットの内側に配置したコンタクトホールCHをスリットの外側に配置した。本実施例の液晶表示装置を構成する画素の平面図を
図6A及び
図6Bに示す。
図6Aと
図6Bは同じものであるが、
図6Aでは半導体層PSが記載され、
図6Bでは第1電極E1の境界(ホール)と第2電極E2が記載されている。
【0053】
コンタクトホールCHは映像信号線SL間のほぼ中央に配置しなければならないので、コンタクトホールCHを迂回するように第三の電極E3のスリット構造の平面分布を変更した。更には、コンタクトホールCHを迂回する部分でのスリット構造の傾き方向が画素中央部と同じになるようにしており、これにより迂回部におけるドメインの発生を防いだ。
【0054】
コンタクトホールCH周辺における第二の平坦化膜OC2の膜面高さ分布は、カラーフィルタCFの断面形状や第二の平坦化膜OC2の成膜時の流動性、焼成時におけるミドルベークの実施の有無等によって決まる。そのため第二の平坦化膜OC2の膜面高さ分布がコンタクトホールCHを中心になだらかに変化し、尚且つその膜面高さ分布が画素毎に異なる場合がある。
【0055】
コンタクトホールCHが第三の電極E3のスリット構造の内側に位置するように第三の電極E3を加工する場合、スリット構造はコンタクトホールCHの近傍に分布するため、これを加工するレジスト膜厚もまた画素毎に異なることになる。これにより、コンタクトホールCHの周囲におけるスリット構造の加工寸法が画素毎にばらつく場合があった。
【0056】
本実施例では第三の電極E3のスリット構造を
図6A及び
図6Bに示したようなコンタクトホールCHを迂回するような平面分布にしたことにより、スリット構造をコンタクトホールCHから遠ざけることができる。そのためコンタクトホールCH周辺における第二の平坦化膜OC2の膜面高さ分布に画素毎のばらつきがある場合にもレジスト膜厚のばらつきは少なくなり、第三の電極E3のスリット構造をより均一に形成することができる。
【実施例3】
【0057】
実施例3では、実施例1の液晶表示装置に対し、第一の基板SU1上にあったカラーフィルタCFを、第二の基板SU2上に形成した。
図7は第二の基板SU2上の映像信号線SL、走査線GL、台座層BS、赤色カラーフィルタRC、緑色カラーフィルタGC、青色カラーフィルタBC、コンタクトホールCH、第三の電極E3の平面分布である。
【0058】
赤色カラーフィルタRC、緑色カラーフィルタGC、青色カラーフィルタBCは
図7中に破線で記載されており、映像信号線SLと走査線GLのなす格子中に周期的に繰り返し配列されている。また、
図7中に記載した断面AA’、断面BB’における断面図をそれぞれ
図8A、
図8Bに示す。
図8Aは画素中央における断面であり、
図8Bはアクティブ素子を含む断面である。
【0059】
第一の基板SU1上には液晶層LCに近接する側より第一の配向膜AL1、第一の平坦化膜OC1、ブラックマトリクスBMが形成されている。第二の基板SU2は
図3Bと
図8Bを比較して明らかなように、第二の平坦化膜OC2と第三の絶縁膜IL3の間にカラーフィルタCFを追加した構成である。
【0060】
尚、本実施例の液晶表示装置の第二の基板SU2上の映像信号線SL、走査線GL、第二の電極E2、ポリシリコン層PS、台座層BS、コンタクトホールCHの平面分布は
図2Aと同様になる。また、第二の基板SU2上の映像信号線SL、走査線GL、台座層BS、コンタクトホールCH、第二の電極E2、第三の電極E3の平面分布は
図2Bと同様になる。
【0061】
このように本実施例の液晶表示装置はカラーフィルタCFがアクティブ素子と同一の基板上にあるCOA(Color Filter on Array)方式であり、COA方式には視角混色を低減する効果がある。ここで視角混色とは純色表示したFFS方式液晶表示装置に特有な現象で、観察方位をカラーフィルタCFの繰り返し配列方向に平行にして、法線を含む範囲で極角を変えて観察した際に、その片側で色度が大きく変化して見える現象である。液晶表示装置において画素とカラーフィルタは一対一に対応するように配置されているが、視角混色は互いに対応しない画素とカラーフィルタを光が通過することによって生じる。
【0062】
このような光路は画素サイズに依らず画素端部で発生しているが、精細度の低い画素では互いに対応する画素とカラーフィルタを通過する光の割合が圧倒的に多いため顕在化しなかった。高精細画素では互いに対応しない画素とカラーフィルタを通過する光の割合が増大するので視角混色が顕在化するが、これは高精細画素の画素幅が小さいことにより、カラーフィルタCFと画素のずれ幅やカラーフィルタCFと画素間の間隔が画素幅に対して無視できないためである。
【0063】
カラーフィルタCFをアレイ基板上に形成することによりカラーフィルタCFと画素のずれ量を低減し、なおかつカラーフィルタCFと画素間の間隔も低減できるので、COA方式には視角混色低減の効果がある。また、第一の基板SU1と第二の基板SU2の厚さを低減すると、製造工程で加わる応力により第一の基板SU1と第二の基板SU2間に位置ずれが生じる場合があるが、COA方式ではこの様な場合にも視角混色が生じにくくなる。視角混色が生じなければ、鮮やかな純色表示が斜め方向でも得られる。
【実施例4】
【0064】
実施例4では、実施例1の液晶表示装置に対し、コンタクトホールCHの位置を2つの映像信号線SL間の中央から僅かにずらした。本実施例ではコンタクトホールCHが概略平行四辺形をした画素の低辺近傍にあるので、コンタクトホールCHを平行四辺形の傾き方向に対して逆方向にずらした。これとは逆にコンタクトホールCHが画素の頂辺近傍にある場合には、コンタクトホールCHを平行四辺形の傾き方向と同じ方向にずらせば良いが、即ちこれは後述する
図9A、
図9Bを逆さまにして見た場合に相当する。
【0065】
本実施例の液晶表示装置の平面図を
図9A、
図9Bに示す。
図9A、
図9Bは実施例1の
図2A、
図2Bに対応しており、第二の基板SU2上の映像信号線SL、走査線GL、台座層BS、コンタクトホールCH、第二の電極E2、第三の電極E3の平面分布を示す。
図9A及び
図9B中に破線で示した様に、第三の電極E3のスリット構造の幅は画素中央部においてより狭く、コンタクトホールCHを含む部分ではより広い。
【0066】
画素中央部では、一画素内の液晶層LCを配向変化させて尚且つ隣接画素の液晶層LCに配向変化を伝播させないようにスリット構造の幅を決定しているのに対し、コンタクトホールCHを含む部分ではコンタクトホール径よりも広くなるようにしているためである。
図2Bにおいても両者の間を連続的に繋げているが、コンタクトホールCHよりも上方においてスリット構造の片側が垂直方向を向いており、この部分においてスリット構造の幅が増大している。
【0067】
スリット構造の境界部ではフリンジ電界が発生して液晶層LCを配向変化させるが、スリット構造の幅が広いとスリット構造の境界部が隣接画素との境界に近くなり、配向変化が隣接画素に伝播する場合がある。コンタクトホールCH上は第一の基板上に積層したブラックマトリクスBMで遮蔽するので、この部分でスリット構造の幅が広くなっても純色の色純度低下は生じない。しかし、コンタクトホールCHから離れた部分でストライプ構造の幅が最適値よりも広ければ、配向変化が隣接画素に伝播して純色表示時に色純度低下することもあり、これを防ぐには液晶層厚を低減するなどの必要があった。
【0068】
本実施例ではコンタクトホールCHの位置を中央から1μmずらした。レイアウト上余裕があれば、1μm以上ずらせても良い。
図9A、
図9Bにおいて画素は概略平行四辺形であり、コンタクトホールCHは画素下側に位置する。上段の画素は右側に傾いており、下段の画素は左側に傾いているが、上段の画素ではコンタクトホールCHを中央から左側に1μmずらし、下段の画素では中央から右側に1μmずらした。台座層BSとコンタクトホールCHの接続部分の面積は十分あるため、この場合においても台座層BSと第二の電極E2間の導通は確保される。
【0069】
図9A、
図9Bと
図2A、
図2Bを比較して明らかなように、本実施例ではコンタクトホールCH上方のスリット構造の垂直な部分は短くなり、ストライプ構造の幅が最適値よりも広い部分が縮小した。これにより液晶層LCに用いる液晶材料の複屈折値の許容幅が増え、例えばより低粘度の液晶材料を適用して応答特性を向上することができる。つまり、本発明の構成によればドメインが発生しにくいので、材料の選択範囲が増し、結果的に低粘度の液晶材料を使用することが出来る。
【実施例5】
【0070】
本実施例では、実施例2の液晶表示装置に対し、コンタクトホールCHの位置を2つの映像信号線SL間の中央から僅かにずらした。本実施例ではコンタクトホールCHが概略平行四辺形をした画素の低辺近傍にあるので、コンタクトホールCHを平行四辺形の傾き方向と同じ方向にずらした。これとは逆にコンタクトホールCHが平行四辺形の画素の頂辺近傍にある場合には、コンタクトホールCHを平行四辺形の傾き方向と逆の方向にずらせば良いが、即ちこれは後述する
図10A、
図10Bを逆さまにして見た場合に相当する。
【0071】
図10A及び
図10Bは各々実施例2の
図6A及び
図6Bに対応しており、第二の基板SU2上の映像信号線SL、走査線GL、台座層BS、コンタクトホールCH、第二の電極E2、第三の電極E3の平面分布を示す。
図10A及び
図10Bと
図6A及び
図6Bを比較して明らかなように、本実施例ではコンタクトホールCHを台座層BSの中央からずらしたことにより、第三の電極E3のスリット構造のコンタクトホールCHを迂回する部分を小さくすることができた。これにより、第三の電極E3のスリット構造をより安定して形成することが可能になった。また電極E3のスリット構造が画素中央にある部分をより長くできるので、透過率を向上することができる。
【実施例6】
【0072】
本実施例は、実施例1の液晶表示装置に対し、
図11A及び
図11Bに示したように映像信号線SLと台座層BSを別の層にした。具体的には映像信号線SLと台座層BSの間には第六の絶縁層IL6を配置し、台座層BSとポリシリコン層PS間のコンタクトホールは第六の絶縁層IL6も通貫して台座層BSとポリシリコン層PSを接続するようにした。
【0073】
図11A及び
図11Bはそれぞれ画素中央、低温ポリシリコン層PSを含む面における断面図であり、それぞれ
図12Aの断面AA’、BB’に対応する。
図12A及び
図12Bはそれぞれ
図2A及び
図2Bに対応しており、両者を比較して明らかなように、本実施例の方が台座層BSと映像信号線SLの間隔を短縮しており、これに伴い画素サイズが低減している。これは本実施例において映像信号線SLと台座層BSを別の層にしたことによるもので、映像信号線SLと台座層BSが短絡する可能性がなくなったため、実施例一の液晶表示装置よりも画素幅の更に狭い高精細画素を作成することができる。
【0074】
一方で映像信号線SLと台座層BS間の寄生容量は低減すべきであり、例えば映像信号線SLと台座層BSが平面図上で重畳するならば映像信号線SLと台座層BS間の寄生容量が増大する。第六の絶縁層IL6の膜厚を増大すればこの様な場合の寄生容量を低減できるが、この場合台座層BSとポリシリコン層PS間の接続が困難になる。そのため平面図上において映像信号線SLと台座層BSが重畳しないように配置すべきであり、尚且つ
図12A、12Bに示した様に台座層BSを近接する2つの映像信号線SLのほぼ中央に配置すれば寄生容量を最も低減することができる。
【0075】
この様に映像信号線SLと台座層BSを別の層にした場合にも、台座層BSは近接する2つの映像信号線SLのほぼ中央に位置することになる。その結果コンタクトホールCHも画素の中央に位置し、同様にして第三の電極E3のスリット構造もまたブラックマトリクスBMに被覆されない部分において画素中央に位置するように配置すべきである。
【0076】
第三の電極E3のスリット構造はコンタクトホールCHを内側に含むか、あるいはまたこれを迂回するような平面分布が必要になり、
図12A及び
図12Bはこのうち前者の平面分布とした例である。この場合にも保持容量を確保しながらドメインを安定化し、なおかつ高透過率を得ることができる。
【実施例7】
【0077】
実施例7は、実施例1の液晶表示装置に対し、
図13A及び
図13Bに示した様に膜構成を簡略化した。
図13A、
図13Bはそれぞれ画素中央、低温ポリシリコン層PSを含む面における断面図であり、これを
図2A、
図2Bと比較して明らかなように、
図13A、
図13Bでは
図2A、
図2Bにおける第一の電極E1と第四の絶縁膜IL4に相当する構成を除いている。
【0078】
本実施例では保持容量は第一の電極E1と第二の電極E2の重畳部のみとなるが、例えば駆動周波数の増大が必要な用途では保持期間が短くなるので保持容量が少なくてもフリッカが発生しない。あるいはまた、第4の絶縁膜に誘電率の大きい、いわゆるHigh−K膜を用いれば保持容量が一層であっても十分な保持容量を確保できる可能性があり、High−K膜には例えばアルミナや酸化ハフニウム、酸化プラセオジムを用いることができる。また、この場合第一の電極E1がソース電位に、第二の電極E2がコモン電位の所謂コモントップ構造になる。
【0079】
この場合にもコンタクトホールCHは画素中央に位置し、第二の電極E2のスリット構造もブラックマトリクスBMに被覆されない部分において画素中央に位置する。そのため、画素端部において第二の電極E2のスリット構造はコンタクトホールCHを内側に含むか、あるいはまたこれを迂回するような平面分布にすれば、ドメインを安定化し、なおかつ高透過率を得ることができる。
【実施例8】
【0080】
実施例8では、
図14A乃至14Cに示すように、スリット構造の幅を可能な限り広くし、スリット構造内部に第二の電極E2を設け、第二の電極E2と第三の電極E3が重ならない構造とするために、スリット構造の幅を可能な限り広くし、コンタクトホールCHをスリット構造の内部に形成している。スリット構造内部に第二の電極E2を設けることで、スリット境界と第二の電極E2との間隔を広く取ることが可能である。
【0081】
第二の電極E2と第三の電極E3が重ならない構造では、保持容量が小さくなる問題があるが、
図14Bに示すように、第一の電極E1と第二の電極E2が重なっていることで、一定の保持容量を確保できる。
コンタクトホールCHは隣り合う2本の映像信号線SLの間の中央に形成されており、映像信号線SLが図中左右(第1方向X)に蛇行しており、映像信号線SLの蛇行に合わせてコンタクトホールCHの位置も左右に移動し、第2方向Yに対して左側に移動したコンタクトホールCHと右側に移動したコンタクトホールCHとが形成されている。以下、左側に移動したコンタクトホールCHを左移動コンタクトホールCHLと呼び、右側に移動したコンタクトホールCHを右移動コンタクトホールCHRと呼ぶ。
【0082】
左移動コンタクトホールCHLと右移動コンタクトホールCHRとは、図中上下(第2方向Y)に並んで配置される。すなわち走査線GLを挟んだ上下の位置関係にあり、同一の映像信号線SLに接続する2つの第二の電極E2において、映像信号線SLと第二の電極E2との接続に関与するコンタクトホールCHとして、左移動コンタクトホールCHLと右移動コンタクトホールCHRとが設けられる。
スリット構造は右側のスリット境界E3Rと左側のスリット境界E3Lを有しており、スリット構造の第1方向Xの幅を最も広くし、かつコンタクトホールCHとスリット境界が重ならないためには、左移動コンタクトホールCHLの右側の縁に近接して右側のスリット境界E3Rが形成され、右移動コンタクトホールCHRの左側の縁に近接して左側のスリット境界E3Lが形成される。
【0083】
ただし、前述したように、スリット境界が画素境界に近接して配置されると隣接する画素上の液晶層LCにも配向変化が及び、純色表示時に色純度が低下するなどの不都合が生じる。
【0084】
従って、
図2A等で示したように、スリット境界の映像信号線SLに対する傾きを変化させて、コンタクトホールCH近傍でスリット構造の第1方向Xの幅を広くし、スリット境界を隣接画素から離間させた構造を
図14Cに示す。
図14Cでは、
図14A同様に隣合う2つの映像信号線SLの間に、スリット構造が形成され、スリット構造の内部に第二の電極E2を形成されている。さらには、
図14Aよりもスリット境界が隣接画素から離間している。
図14Cに示すように、図中上側から左移動コンタクトホールCHLに近接する右側のスリット境界E3Rは、左移動コンタクトホールCHLの右側の縁を避けるように、第2方向Yに対して第2角度−θの方向から第2方向Yに沿うように方向を変え(右側のスリット境界E3Rの第2方向Yに対する角度の絶対値が小さくなり、スリット構造の第1方向Xの幅が広がる)、左移動コンタクトホールCHLを越えると一旦第2角度−θ方向にもどり、走査線GL近傍で映像信号線SLに対して第1の角度θよりも大きな角度に向きを変え、ブラックマトリクスBMの開口に近接すると映像信号線SLに対して第1の角度θで傾き、第二の電極E2に沿って右移動コンタクトホールCHRを越えるまで、第1の角度θの方向に進む。さらに走査線GL近傍で、映像信号線SLに対して第2の角度−θよりも大きな角度に向きを変え、ブラックマトリクスBMの開口に近接すると映像信号線SLに対して第2の角度−θで傾く。なお、スリット境界が第1の角度θよりも大きな角度で傾く部分に対向する第二の電極E2も第1の角度θよりも大きな角度で傾いている。
さらに、図中上側から左移動コンタクトホールCHLに近接する左側のスリット境界E3Lは、左移動コンタクトホールCHLを越えるまで、第2の角度−θの方向に進み、走査線GL近傍で、映像信号線SLに対して第1の角度θよりも大きな角度に向きを変え、ブラックマトリクスBMの開口に近接すると映像信号線SLに対して第1の角度θで傾き第二の電極E2に沿って、右移動コンタクトホールCHRに向かい、右移動コンタクトホールCHRに近接すると、右移動コンタクトホールCHRの左側の縁を避けるように、第2方向Yに対して第1角度θの方向から第2方向Yに沿うように方向を変え(左側のスリット境界E3Lの第2方向Yに対する角度の絶対値が小さくなり、スリット構造の第1方向Xの幅が広がる)、右移動コンタクトホールCHRを越えると一旦第1角度θ方向にもどり、走査線GL近傍で映像信号線SLに対して第2の角度−θよりも大きな角度に向きを変え、ブラックマトリクスBMの開口に近接すると映像信号線SLに対して第2の角度−θで傾く。
図14Cの構成とすることで、スリット構造の内部に第二の電極E2を形成し、スリット境界を隣接する第二の電極E2から十分に離間して形成することが可能になる。
【0085】
実施例1の液晶表示装置において第三の電極E3のスリット構造を複数画素間で連続した平面形状とせずに、
図15に示した様に一画素毎に分断し、尚且つ最も単純な直線状の形状にした。また、スリット構造はコンタクトホールCHを内側に含むような分布にした。
【0086】
スリットの両端はマスクデータ上の角が消失して丸みを帯びるため、液晶層LCに逆方向の回転を与える部位が発生し、ドメインとなる。ドメインと正常配向部の境界では液晶配向の逆方向への回転と正常方向の回転が拮抗して液晶配向が変化しないので、境界は暗線となって見える。表示状態を目視観察したところ表示ムラが観察されたので、光学顕微鏡で画素内を観察したところ、ドメインが観察された。ドメインはブラックマトリクスBMで被覆されない部分まで伸長していて、なおかつその大きさは画素毎に異なっていた。ドメインが画素端部から画素中央まで伸長した画素もあり、更には画素両端のドメインが融合した画素もあった。ドメインがブラックマトリクスBMで被覆されない部分まで伸長して、尚且つその分布が画素毎に異なることから表示ムラとなって観察された。
【0087】
実施例1の液晶表示装置において第三の電極E3のスリット構造を複数画素間で連続した平面形状とせずに、
図16に示した様に一画素毎に分断し、尚且つ画素両端を屈曲した平面構造とした。また、スリット構造はコンタクトホールCHを内側に含むような分布にした。
【0088】
ドメインはスリット構造の両端に発生するものの、その分布は屈曲部内に限定することができた。しかし屈曲部では液晶層の回転が小さいため透過率が低く、尚且つ高精細画素では屈曲部が画素内に占める割合が大きい為ブラックマトリクスBMで被覆されていない部分にも分布することになり、透過率が低下した。
【0089】
比較例3では第三の電極E3のスリット構造を形成するマスクパターンを複数画素間で連続した平面形状としたが、画素端に屈曲構造を形成していないのでスリット構造はコンタクトホールCHと重畳している。
図17Aはフォトリソグラフ工程で用いるフォトマスクの通りにスリット構造が形成された場合の平面構造を示しており、第三の電極E3のスリット構造の境界の片側がコンタクトホールCHと重畳している。
図17Aのように、パターニング後においても、スリットが複数画素間で連続して形成されれば、本発明の効果をある程度得ることが出来る。
【0090】
しかし、フォトマスクパターンを
図17Aに示すような形状とした場合、複数画素間でスリットが連続して形成されない場合がある。
図17Bはこのような場合であり、実際に形成されたスリット構造において、コンタクトホールCHと重畳した部分にはスリット構造が形成されていない状態となっている。
【0091】
さらに、形成された第三の電極E3のスリット構造は画素毎に異なり、
図17B中の両端の画素ではスリット構造はコンタクトホールCHにより近接しているものの、中央の画素ではスリット構造の端部がコンタクトホールCHから離れて丸みを帯びていた。中央の画素のスリット端ではドメインが発生して、ブラックマトリクスBMで被覆されていない部分にまで伸長した。ドメインが伸長した画素とドメインが見えない画素があることから表示ムラとなって観察された。
【0092】
実施例1の液晶表示装置において第三の電極E3のスリット構造を複数画素間で連続した平面形状とせずに一画素毎に分断した。またスリット構造の両端に屈曲構造を付加し、なおかつこれをなるべく単純にするべく2回転対称な形状にしたところ、スリット構造とコンタクトホールCHが重畳した。
【0093】
図18Aはフォトリソグラフ工程で用いるフォトマスクの通りにスリット構造が形成された場合の平面構造を示しており、第三の電極E3のスリット構造の境界の片側がコンタクトホールCHと重畳している。即ち、長方形の台座部BSと映像信号線SL間の距離を一定にするには、台座部BSに隣接する部分においてこれに平行に映像信号線SLを延ばさざるを得ず、画素構造は平行四辺形に長方形を継いだ形状になり、尚且つコンタクトホールCHも台座部BS上になければならない為、上記の様な形状のスリット構造を配置すれば必然的にコンタクトホールCHとスリットは重畳することになる。
【0094】
図18Bは実際に形成されたスリット構造を示しており、スリット構造の形状は画素毎に若干異なるものの、コンタクトホールCHと重畳した部分にはスリット構造が形成されていない点において共通である。また、スリット構造の端部はコンタクトホールCHから画素中央側に離れた位置にあって丸みを帯びており、この部分を起点としてドメインが発生した。ドメインはブラックマトリクスBMで被覆されていない部分にまで伸長し、ドメインの伸長の仕方が画素毎に異なることから表示ムラとなって観察された。