(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の判定部は、前記バケットが前記基準高さを通過したと判定されたこと、および前記バケットが前記掘削物を保持する姿勢を取っていることを条件に、前記作業機械の動作が前記積込動作であると判定する、請求項1に記載の作業機械。
前記第2の判定部は、前記バケットが基準高さを通過したと判定されたこと、および前記ブームが上昇していることを条件に、前記作業機械の動作が前記積込動作であると判定する、請求項1に記載の作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。実施形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
また、以下においては、作業機械として、建設機械を例に挙げて説明する。特に、建設機械のうち作業車両である油圧ショベルを例に挙げて説明する。ただし、作業機械は、建設機械に限定されず、マイニング機械であってもよい。さらに、以下の説明において、「上」「下」「前」「後」「左」「右」とは、運転席に着座したオペレータを基準とする用語である。
【0012】
また、以下では、掘削した掘削物を積込するための積込対象として、ダンプトラックを例に挙げて説明する。しかしながら、積込対象は、これに限定されるものではなく、たとえば、土砂用コンテナ等であってもよい。
【0013】
<A.構成>
図1は、油圧ショベルの構成を概略的に示す側面図である。
【0014】
図1に示されるように、油圧ショベル100は、走行体101と、旋回体103と、作業機104とを主に有している。走行体101と旋回体103とにより油圧ショベル100の本体が構成されている。当該本体は、バルブ106,107と、旋回用の油圧モータ109とをさらに有する。
【0015】
走行体101は左右一対の履帯装置101aを有している。この左右一対の履帯装置101aの各々は履帯を有している。左右一対の履帯が回転駆動されることにより油圧ショベル100が自走する。
【0016】
旋回体103は、油圧モータ109によって、走行体101に対して旋回自在に設置されている。旋回体103は、運転室108を有している。運転室108は、旋回体103のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。
【0017】
作業機104は、旋回体103の前方側であって運転室108のたとえば右側にて軸支されている。作業機104は、ブーム110、アーム120、バケット130、ブームシリンダ111、アームシリンダ121、バケットシリンダ131などを有している。
【0018】
ブーム110は、旋回体103に取り付けられている。ブーム110の基端部は、ブームフートピン141により旋回体103に回転可能に連結されている。
【0019】
アーム120は、ブーム110の先端に取り付けられている。アーム120の基端部は、ブーム先端ピン142によりブーム110の先端部に回転可能に連結されている。
【0020】
バケット130は、アーム120の先端に取り付けられている。バケット130は、アーム先端ピン143によりアーム120の先端部に回転可能に連結されている。
【0021】
ブーム110は、ブームシリンダ111により駆動可能である。この駆動により、ブーム110は、ブームフートピン141を中心に旋回体103に対して上下方向に回動可能である。アーム120は、アームシリンダ121により駆動可能である。この駆動により、アーム120は、ブーム先端ピン142を中心にブーム110に対して上下方向に回動可能である。バケット130は、バケットシリンダ131により駆動可能である。この駆動によりバケット130は、アーム先端ピン143を中心にアーム120に対して上下方向に回動可能である。このように作業機104は駆動可能である。
【0022】
ブームシリンダ111、アームシリンダ121およびバケットシリンダ131のそれぞれには、ストロークセンサ112、122、132が取り付けられている。
【0023】
ブームシリンダ111は、バルブ106を介して油圧源(図示していない油圧ポンプおよび油タンク)から供給される作動油によって駆動する。
【0024】
バルブ106は、本例では、切換弁(方向制御弁)である。バルブ106は、ブームシリンダ111に供給する作動油の流量を、パイロット圧(PPC圧)に基づき調整する。バルブ106は、スプール(図示せず)を有する。パイロット圧に応じた位置に当該スプールが移動することにより、ブームシリンダ111に供給される作動油の流量が調整される。
【0025】
油圧ショベル100は、当該パイロット圧を検出するための圧力センサ51(
図4参照)を備えている。
【0026】
油圧モータ109は、バルブ107を介して油圧源から供給される作動油によって駆動する。
【0027】
バルブ107は、本例では、切換弁(方向制御弁)である。バルブ107は、油圧モータ109に供給する作動油の流量を、パイロット圧(PPC圧)に基づき調整する。バルブ107は、スプール(図示せず)を有する。パイロット圧に応じた位置に当該スプールが移動することにより、油圧モータ109に供給される作動油の流量が調整される。
【0028】
油圧ショベル100は、当該パイロット圧を検出するための圧力センサを備えている。本例では、油圧ショベル100は、この圧力センサとして、右旋回を行うためのパイロット圧を検出するための圧力センサ61(
図4参照)と、左旋回を行うためのパイロット圧を検出するための圧力センサ62(
図4参照)とを備えている。
【0029】
さらに、ブームシリンダ111のヘッド側およびボトム側のそれぞれには、圧力センサ(図示せず)が取り付けられている。これらの圧力センサは、ブームシリンダ111のシリンダヘッド側油室内の作動油の圧力(ヘッド圧)、ブームシリンダ111のシリンダボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出する。
【0030】
<B.積込判定>
(b1.積込動作の例)
図2は、ダンプトラックに対する土砂等の掘削物の積込動作を説明するための図である。
【0031】
図2に示されるように、土砂をダンプトラック700の荷台701に積込む際には、油圧ショベル100は、掘削対象900からの土砂の掘削と、油圧モータ109によるホイスト旋回と、バケット130の土砂の荷台701への積込(排土)と、次の掘削のためのダウン旋回とを、この順に実行する。
【0032】
以下、油圧ショベル100の動作がダンプトラック700等の積込対象への掘削物の積込動作か否かを判定するためのロジックについて説明する。
【0033】
(b2.積込動作の際のデータ特性)
図3は、ダンプトラックに対する土砂等の掘削物の積込動作時に得られる各種のデータを表した図である。なお、
図3の各グラフ(A)〜(C)においては、縦軸の値は0から上側に行くほど値が大きくなっている。
【0034】
図3のグラフ(A)は、掘削、ホイスト旋回、排土、およびダウン旋回といった一連の積込動作における、バケット130内の荷重の重量(荷重計算値)の遷移を表している。
【0035】
掘削が進むに連れて、バケット130内の掘削物の量が多くなるため、荷重計算値は増加する。ホイスト旋回時には、バケット130内の掘削物の量の変化は少ないため、荷重計算値の変化は少なく、概ね一定となる。排土時には、バケット130から掘削物が排出されるため、荷重計算値は減少する。ダウン旋回時には、バケット130内の掘削物の量の変化は少ないため、荷重計算値の変化は少なく、概ね一定となる。
【0036】
図3のグラフ(B)は、上記一連の積込動作における、ブーム110を上昇させるためのパイロット圧(以下、「ブーム上げPPC圧」とも称する)と、右旋回を行うためのパイロット圧(以下、「右旋回PPC圧」とも称する)と、左旋回を行うためのパイロット圧(以下、「左旋回PPC圧」とも称する)と、バケット対地角度θgとの遷移を表している。なお、ブーム上げPPC圧は、ブームシリンダ111が伸びるときにバルブ106のスプールに加わっているパイロット圧であって、かつ圧力センサ51(
図4参照)によって検出される油圧である。
【0037】
バケット対地角度θgは、
図1に示したように、本例では、アーム先端ピン143を通る水平面K2を基準とし、水平面K2とバケット130の開口面とのなす角度として定義される。バケット対地角度θgは、バケットの刃先139が水平面K2よりも上にある場合を、正の値とする。
図1の場合には、バケット対地角度θgは負の値となる。
【0038】
図3のグラフ(B)に示されるように、掘削のときには、バケット対地角度θgは、負の値から徐々に0度に近づく。掘削に続くホイスト旋回時(時刻t1〜t3)には、バケット130に掘削物を保持しておく必要があるため、バケット対地角度θgは概ね一定となる。
【0039】
本例では左方向にホイスト旋回をしているため、ホイスト旋回時には、左旋回PPC圧の値が上昇する。また、掘削物をダンプトラック700の荷台701に積込むため、ホイスト旋回時には、ブーム110を上げるオペレータ操作がなされる。さらに、ブーム110の上昇に伴って、バケット130の高さH(荷重高さ(
図2参照))が所望の高さとなると、ブーム上げの操作が取止められる。このため、ブーム上げPPC圧の値は、一旦上昇し、ホイスト旋回の最終段階では0となっている。
【0040】
なお、高さHは、油圧ショベル100を基準とした高さである。
図2の場合には、高さHは、油圧ショベル100がいる地面Gとバケット130との距離である。
【0041】
ホイスト旋回に続く排土時(時刻t3〜t4)には、掘削物をバケット130から排出するためのオペレータ操作によって、バケット対地角度θgはマイナス方向に大きくなる。さらに、排土は、左旋回が終了する前に開始されるため、排土の途中までは、左旋回PPC圧の値は正の値を保っている。また、排土の途中からオペレータがブーム110を上げる操作を行なため、再び、ブーム上げPPC圧は上昇する。
【0042】
排土に続くダウン旋回時(時刻t4〜t5)には、旋回体103を右旋回させて、旋回体103を掘削位置に戻すオペレータ操作がなされるため、右旋回PPC圧の値が上昇する。また、ダウン旋回時には、ブーム110を下げるオペレータ操作が行われるため、ブーム上げPPC圧は0となっている。
【0043】
図3のグラフ(C)は、上記一連の積込動作における、バケット130の高さHの遷移を表している。
図3の例では、掘削の際に、バケット130が地中に入っているため、バケット130の高さHの値は負の値となっている。
【0044】
掘削が終わってホイスト旋回に移ると、ブーム110の上昇に伴い、バケット130の高さHの値は上昇する。グラフ(C)の場合、ホイスト旋回中の時刻t2(t1<t2<t3)において、バケット130の高さHが基準高さHs(たとえば、500mm)に達する。なお、詳しくは後述するが、この基準高さHsは、後述する積込判定に用いられる高さである。また、基準高さHsは、油圧ショベル100のユーザによって設定される。
【0045】
排土時(時刻t3〜t4)においては、バケット130の高さHは、概ね一定となる。排土に続くダウン旋回時(時刻t4〜t5)においては、ブーム110の下降に伴い、バケット130の高さHの値は減少する。
【0046】
(b3.積込判定に用いる条件)
油圧ショベル100では、
図3に示したような積込動作におけるデータの特性を鑑みて、ダンプトラック700に掘削物が積み込まれたか否かを判定する。本例では、油圧ショベル100は、以下の4つの条件が成立した時に、積込動作が行われたと判定する。
【0047】
なお、以下では、tnは任意(nは自然数)の時刻を表している。また、tn−1とtnとの間は、演算周期であって、nの値に関わらず一定である。また、基準圧Psは、圧力の閾値である。
【0048】
(α)第1の条件
ブーム110が上昇していること。本例では、以下の式(1)を満たす場合に、ブーム110が上昇していると判定する。
【0049】
ブーム上げPPC圧(Pbou(tn))>基準圧Ps … (1)
(β)第2の条件
旋回体103が旋回中であること。本例では、以下の式(2)または(2’)を満たす場合に、旋回中であると判定する。
【0050】
右旋回PPC圧(Ptr(tn))>基準圧Ps … (2)
左旋回PPC圧(Ptl(tn))>基準圧Ps … (2’)
(γ)第3の条件
バケット130が基準高さHsを通過したこと。本例では、以下の式(3)を満たす場合に、バケット130が基準高さHsを通過したと判定する。
【0051】
バケットの高さH(tn−1)<基準高さHs<バケットの高さH(tn) … (3)
なお、式(3)は、一演算周期前のバケット130の高さH(tn−1)が基準高さHsよりも低く、かつ現在の演算周期のバケット130の高さH(tn)が基準高さHsよりも高くなっていることを表す条件式である。
【0052】
(δ)第4の条件
バケット130が掘削物を保持する姿勢を取っていること。本例では、以下の式(4)を満たす場合に、バケット130が掘削物を保持する姿勢を取っていると判定する。
【0053】
バケット対地角度θg>−45° … (4)
なお、バケット対地角度θgは、以下の式(5)で定義される。
【0054】
θg=270°−(θbo(tn)+θa(tn)+θbu(tn)) … (5)
また、
図1にも示すように、θbo(tn)、θa(tn)、θbu(tn)は、それぞれ、時刻tnにおける、ブーム角度、アーム角度、バケット角度を表している。なお、
図1に示すように、ブーム角度θbo(tn)は、ブームフートピン141とブーム先端ピン142とを結ぶ線分L1と、水平面K1とのなす角度である。アーム角度θa(tn)は、線分L1と、ブーム先端ピン142とアーム先端ピン143とを結ぶ線分L2とのなす角度である。バケット角度θbu(tn)は、線分L2と、バケット130の開口面とのなす角度である。
【0055】
基準圧Ps(
図3のグラフ(2)参照)の値は、一例として、0.5MPaとすることができる。なお、基準圧Psの値を、Pbou(tn)と、Ptr(tn)またはPtl(tn)とで別々の値としてもよい。
【0056】
図3の例の場合、一連の積込動作(掘削開始から次の掘削開始(ダウン旋回終了)まで)において時刻t2においてのみ、上記の4つの条件(第1〜4の条件)が満たされる。
【0057】
積込判定の際に上述した各条件を用いる理由は、以下のとおりである。
上記第1の条件を採用した理由は、積込動作時には、ブーム上げが行われるためである。上記第2の条件を採用した理由は、積込動作時には、旋回体103の旋回が行われるためのである。
【0058】
上記第3の条件を採用した理由は、積込動作時には、バケット130が基準高さHsを通過するためである。また、第3の条件は、誤判定防止にも有効である。地面等を掘削しているときにブーム上げが行われるが、第3の条件を用いれば、この動作を積込動作と判定しないためである。
【0059】
上記第4の条件を採用した理由は、誤判定防止のためである。上記第4の条件を採用した理由は、掘削物をダンプトラック700に積込んだ後にバケット130が空の状態でホイスト旋回で戻る場合(たとえば、油圧ショベル100がダンプトラック700よりも高い位置にある場合)に、第1の条件と第2の条件と第3の条件とを満たすと、積込動作が行われたと判定されるためである。上記第4の条件がなければ、実際には1回の積込動作であるにもかかわらず、2回の積込動作と判断されてしまうためである。
【0060】
(b4.実装例)
図4は、油圧ショベル100の構成を説明するためのブロック図である。
【0061】
図4に示されるように、油圧ショベル100は、操作部10と、コントローラ20と、モニタ装置30と、圧力センサ51,61,62と、ストロークセンサ112、122、132とを備えている。
【0062】
操作部10は、作業機104を動作させる複数の操作レバーを含んで構成される。操作部10は、たとえば、ブーム用の操作レバー、アーム用の操作レバー、バケット用の操作レバー、旋回用の操作レバー等を含む。操作部10からの操作指令は、メインコントローラとしてのポンプコントローラ210に送られる。
【0063】
コントローラ20は、油圧ショベル100の全体の動作を制御する。コントローラ20は、ポンプコントローラ210と、ペイロード用コントローラ220とを含んで構成される。ポンプコントローラ210は、高さ算出部221を有する。ペイロード用コントローラ220は、積込判定部221と、荷重値算出部222と、積込荷重値決定部223とを有する。積込判定部221は、対地角度算出部228を有する。
【0064】
モニタ装置30は、タッチ入力を受け付けるとともに、各種の情報をモニタ表示するタッチスクリーンである。モニタ装置30は、入力部31と、表示部32とを備える。入力部31は、タッチスクリーンで構成され得る。表示部32は、ディスプレイで構成される。なお、入力部31は、ハードキーで構成されていてもよい。なお、モニタ装置30は、本発明の「表示装置」の一例であり、かつ本発明の「入力装置」の一例である。
【0065】
入力部31は、基準高さHsを設定するためのオペレータ入力を受け付ける。入力部31は、入力された基準高さHsを積込判定部221に送る。
【0066】
油圧ショベル100が基準高さHsを設定するためのオペレータ入力を受け付ける理由は、油圧ショベル100とダンプトラック700とが、常に同じ高さの地面にいるとは限らないためである。油圧ショベル100がダンプトラック700よりも高い場所で作業している状況、あるいは油圧ショベル100がダンプトラック700よりも低い場所で作業している状況があるためである。また、ダンプトラック700の種別によっては、荷台701の高さまたは荷台701の枠の高さが異なることも、理由の一つである。
【0067】
圧力センサ51,61,62は、各検出結果を、ポンプコントローラ210に送る。これにより、ポンプコントローラ210は、ブーム上げPPC圧(Pbou(tn))と、右旋回PPC圧(Ptr(tn))と、左旋回PPC圧(Ptl(tn))とを取得する。
【0068】
ストロークセンサ112,122,132は、各検出結果を、ポンプコントローラ210に送る。これにより、ポンプコントローラ210は、ブーム角度θbo(tn)と、アーム角度θa(tn)と、バケット角度θbu(tn)とを取得する。
【0069】
ポンプコントローラ210の高さ算出部221は、バケット130の高さH(tn)を算出する。
【0070】
ポンプコントローラ210には、履帯装置101aの下部からブームフートピン141までの高さL9(
図1参照)が予め記憶されている。高さ算出部221は、ブームシリンダ111のストローク長と、アームシリンダ121のストローク長と、バケットシリンダ131のストローク長と、作業機104の寸法とに基づき、ブームフートピン141からバケット130までの高さを算出する。高さ算出部221は、高さL9と、算出されたブームフートピン141からバケット130までの高さとに基づき、バケット130の高さH(tn)を算出する。
【0071】
なお、バケット130の高さH(tn)を算出するときのバケット130の算出対象部分は、たとえば、
図2に示すように、バケット130における最も低い部分とすることができる。また、バケット130の刃先139の位置を算出対象部分とすることもできる。
【0072】
ポンプコントローラ210は、ブーム上げPPC圧(Pbou(tn))と、右旋回PPC圧(Ptr(tn))と、左旋回PPC圧(Ptl(tn))と、ブーム角度θbo(tn)と、アーム角度θa(tn)と、バケット角度θbu(tn)と、バケット130の高さH(tn)とを、ペイロード用コントローラ220に送る。
【0073】
積込判定部221の対地角度算出部228は、上述した式(5)に、ブーム角度θbo(tn)と、アーム角度θa(tn)と、バケット角度θbu(tn)とを代入することにより、バケット対地角度θg(tn)を算出する。
【0074】
積込判定部221は、ブーム上げPPC圧(Pbou(tn))と、右旋回PPC圧(Ptr(tn))と、左旋回PPC圧(Ptl(tn))と、バケット対地角度θg(tn)と、バケット130の高さH(tn)とを用いて、積込判定を行う。積込判定部221は、これらの5つのデータに基づき、上述した4つの条件(第1〜4の条件)を同時に満たす状態が生じるか否かを判定する。
【0075】
積込判定部221は、上記4つの条件全てを同時に満たした場合、積込が行われたと判定する。積込判定部221は、上記4つの条件のうち全ての条件を満たしていないと判定した場合には、積込みが行われていないと判定する。
【0076】
上述したように、積込動作時にはブーム上げが行われ、かつ旋回体103の旋回が行われる。上記第1および第2の条件の成否判定によれば、これらの動作を判定できる。また、積込動作時には、バケット130が基準高さHsを通過する。上記第3の条件によれば、この動作を判定できる。さらに、上記第3の条件の成否判定を利用することにより、地面等を掘削しているときのブーム上げ動作を積込動作と判定してしまうことを防止できる。また、上記第4の条件の成否判定によれば、掘削物をダンプトラック700に積込んだ後にバケット130が空の状態でホイスト旋回で戻る場合に積込動作が行われたと判定してしまうことを防止できる。
【0077】
したがって、油圧ショベル100によれば、ダンプトラック700の積込対象への積込動作を精度よく検出可能となる。
【0078】
上記においては、積込判定に、4つの条件(第1〜4の条件)を用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。少なくとも上記第3の条件を用いることにより、積込判定は可能である。また、積込判定に、上記第2の条件を用いなくてもよい。
【0079】
(b5.まとめ)
(1)第3の条件の利用
油圧ショベル100は、バケット130が基準高さHsを通過したことを条件に、油圧ショベル100の動作がダンプトラック700に対する掘削物の積込動作であると判定する積込判定部221を備えている。このような構成によれば、ダンプトラック700への積込動作を精度よく検出可能となる。
【0080】
(2)第3の条件および第4の条件の利用
積込判定部221は、バケット130が基準高さHsを通過し、かつバケット130が掘削物を保持する姿勢を取っていることを条件に、油圧ショベル100の動作が前記積込動作であると判定する。
【0081】
このような判定の一例として、積込判定部221は、バケット130のバケット対地角度θg(tn)を算出する対地角度算出部228をさらに有し、積込判定部221は、バケット対地角度θg(tn)が予め定められた範囲内(θg>−45°)にあることを条件に、バケット130が掘削物を保持する姿勢を取っていると判定する。
【0082】
このような構成によれば、第3の条件のみを利用する場合に比べて、ダンプトラック700への積込動作をさらに精度よく検出できる。
【0083】
(3)第3の条件および第1の条件の利用
積込判定部221は、ブーム110が上昇しており、かつバケット130が基準高さHsを通過したことを条件に、油圧ショベル100の動作がダンプトラック700に対する掘削物の積込動作であると判定する。このような構成によれば、第3の条件のみを利用する場合に比べて、ダンプトラック700への積込動作をさらに精度よく検出可能となる。
【0084】
特に、上記第1の条件に関し、積込判定部221は、ブーム上げPPC圧(tn)が基準圧Psよりも高い場合に、ブーム110が上昇していると判定する。このような構成によれば、ブーム110の上昇を検知できる。
【0085】
また、積込判定部221は、基準高さHsを設定するためのオペレータ入力をモニタ装置30の入力部31を介して受け付ける。このような構成によれば、オペレータは、油圧ショベル100とダンプトラック700との位置関係を考慮して、基準高さHsを設定することができる。
【0086】
高さ算出部211は、ブームシリンダ111のストローク長と、アームシリンダ121のストローク長と、バケットシリンダ131のストローク長とに基づいて、バケット130の高さを算出する。これにより、油圧ショベル100は、バケット130の高さを検出できる。積込判定部221は、算出されたバケット130の高さに基づき、バケット130が基準高さHsを通過したか否かを判定する。
【0087】
(4)第3の条件、第1の条件、および第4の条件の利用
積込判定部221は、ブーム110が上昇しており、バケット130が基準高さHsを通過し、かつバケット130が掘削物を保持する姿勢を取っていることを条件に、油圧ショベル100の動作が積込動作であると判定する。
【0088】
このような構成によれば、第3の条件と第1の条件(または第4の条件)とを利用する場合に比べて、ダンプトラック700への積込動作をさらに精度よく検出可能となる。
【0089】
(5)第3の条件、第1の条件、および第2の条件の利用
積込判定部221は、ブーム110が上昇しており、バケット130が基準高さHsを通過し、かつ旋回体103が旋回中であることを条件に、油圧ショベル100の動作が積込動作であると判定する。このような構成によれば、第3の条件と第1の条件を利用する場合に比べて、ダンプトラック700への積込動作をさらに精度よく検出可能となる。
【0090】
一例として、積込判定部221は、右旋回PPC圧(Ptr(tn))が基準圧Psよりも高い場合に、旋回体が旋回中であると判定する。また、積込判定部221は、右旋回PPC圧(Ptl(tn))が基準圧Psよりも高い場合に、旋回体が旋回中であると判定する。
【0091】
(6)第3の条件、第4の条件、および第2の条件の利用
積込判定部221は、バケット130が基準高さHsを通過し、バケット130が掘削物を保持する姿勢を取っており、かつ旋回体103が旋回中であることを条件に、油圧ショベル100の動作が積込動作であると判定する。このような構成によれば、第3の条件と第4の条件を利用する場合に比べて、ダンプトラック700への積込動作をさらに精度よく検出可能となる。
【0092】
(7)第3の条件、第1の条件、第2の条件、および第4の条件の利用
積込判定部221は、ブーム110が上昇しており、バケット130が基準高さHsを通過し、旋回体103が旋回中であり、かつバケット対地角度θg(tn)が予め定められた範囲内(θg>−45°)にあることを条件に、油圧ショベル100の動作が積込動作であると判定する。このような構成によれば、第3の条件と第1の条件と第4の条件とを利用する場合に比べて、ダンプトラック700への積込動作をさらに精度よく検出可能となる。
【0093】
<C.積込荷重値の算出>
油圧ショベル100は、積込判定を行うと、バケット130の荷重値を決定するための処理を行なう。以下では、荷重値を決定するための一処理例について説明する。
【0094】
ペイロード用コントローラ220は、上述したように、荷重値算出部222と、積込荷重値決定部223とを有する。
【0095】
荷重値算出部222は、時刻tnにおけるバケット130内の荷重の荷重値W(tn)を算出する。荷重値算出部222は、ブームシリンダ111のシリンダヘッド側油室内の作動油の圧力(ヘッド圧)と、ブームシリンダ111のシリンダボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)とを用いて、バケット130内の荷重の荷重値を算出する。荷重値算出部222は、算出された荷重値W(tn)を積込判定部221に送る。なお、荷重値の算出方法については、従来から知られているため、ここでは説明を繰り返さない。
【0096】
以下では、時刻tmにおいて、上記の第1〜4の条件をすべて満たしたとする。この場合、積込判定部221は、時刻tm以降において連続する所定個数の荷重値W(tm),W(tm+1),W(tm+2),…,W(tm+9)を一時的にストックする。積込判定部221は、ストックした荷重値W(tm),W(tm+1),W(tm+2),…,W(tm+9)を、積込荷重値決定部223に送る。
【0097】
積込荷重値決定部223は、荷重値W(tm),W(tm+1),W(tm+2),…,W(tm+9)の中から、予め定められた規則に基づき1つの荷重値を選択し、この荷重値をバケット130内の荷重の荷重値として決定する。一例として、積込荷重値決定部223は、時刻tmから予め定められた時間が経過したときの荷重値(たとえば、W(tm+5))をバケット130内の荷重の荷重値とする。予め定められた時間は、ホイスト旋回に要する時間を考慮して、予め設定される。たとえば、予め定められた時間は、
図3の点Qで示すように、1秒とすることができる。積込荷重値決定部223は、決定した荷重値をモニタ装置30に送る。
【0098】
モニタ装置30は、荷重値を受信したことに基づき、この荷重値を表示部32に表示する。
【0099】
以上のように、旋回体103の旋回中であって、かつ上記第1〜4の条件が成立してから予め定められた時間が経過したときの荷重値を積込荷重値に決定することにより、精度の高い積込荷重値を得ることができる。
【0100】
<D.処理>
図5は、油圧ショベル100における処理の流れを説明するためのフロー図である。
【0101】
図5に示されるように、ステップS1からステップS6までが積込判定に関する処理である。この例は、上記の第1〜4の条件全てが使用される場合を示している。
【0102】
また、ステップS1〜S4に示す各判定処理は、本例では、演算周期毎(Δt=tn−tn−1)に実行される。さらに、演算周期毎に、ステップS5の判定およびステップS6の判定がなされる。
【0103】
ステップS1において、ペイロード用コントローラ220の積込判定部221は、ブーム上げPPC圧(Pbou(tn))に基づいて、ブーム110が上昇しているか否かを判定する。ブーム110が上昇していると判定されると(ステップS1においてYES)、ステップS2において、積込判定部221は、旋回体103が走行体101に対して旋回中であるか否かを判定する。ブーム110が上昇していないと判定されると(ステップS1においてNO)、ステップS6において、積込判定部221は、油圧ショベル100の動作が積込動作ではないと判定する。
【0104】
旋回動作中であると判定されると(ステップS2においてYES)、ステップS3において、積込判定部221は、ブーム110の上昇に伴い、バケット130が基準高さHsを通過したか否かを判定する。本例の場合、積込判定部221は、バケット130の高さH(tn−1)と高さH(tn)とが、式(3)を満たしているか否かを判定する。旋回動作中でないと判定されると(ステップS2においてNO)、積込判定部221は、油圧ショベル100の動作が積込動作ではないと判定する(ステップS6)。
【0105】
バケット130が基準高さHsを通過したと判定されると(ステップS3においてYES)、ステップS4において、積込判定部221は、バケット130のバケット対地角度θg(tn)が予め定められた範囲内であるかを判定する。バケット130が基準高さHsを通過していない(ステップS3においてNO)、積込判定部221は、油圧ショベル100の動作が積込動作ではないと判定する(ステップS6)。
【0106】
バケット対地角度θg(tn)が予め定められた範囲内であると判定された場合(ステップS4においてYES)、ステップS5において、積込判定部221は、油圧ショベル100の動作が積込動作であると判定する。バケット対地角度θg(tn)が予め定められた範囲内にないと判定された場合(ステップS4においてNO)、積込判定部221は、油圧ショベル100の動作が積込動作ではないと判定する(ステップS6)。
【0107】
ステップS5の後は、ステップS7において、積込荷重値決定部223によって、積込荷重値が決定される。その後、ステップS8において、モニタ装置30の表示部32に、決定された積込荷重値が表示される。
【0108】
<E.変形例>
(積込判定の変形例)
(1)第1の条件の代替手法
上述した第1の条件の代替手法を説明する。
図6は、油圧ショベル100Aの構成を説明するためのブロック図である。
【0109】
図6に示されるように、油圧ショベル100Aは、コントローラ20Aと、ポンプコントローラ210Aと、ペイロード用コントローラ220Aと、積込判定部221Aとを備える点において、コントローラ20と、ポンプコントローラ210と、ペイロード用コントローラ220と、積込判定部221とを備える油圧ショベル100(
図4参照)とは異なる。以下では、油圧ショベル100と異なる点を説明する。
【0110】
ポンプコントローラ210Aは、ブーム上げPPC圧(Pbou(tn))の代わりに、ブームシリンダ111のストローク長(Lb(tn))をペイロード用コントローラ220Aに送る。
【0111】
積込判定部221Aは、ストローク長(Lb(tn))に基づき、ブームシリンダ111のストローク長の変化速度(ロッドの移動速度)を算出する。積込判定部221Aは、ストローク長が基準速度よりも早い速度で長くなっている場合に、ブーム110が上昇していると判定する。このような構成によっても、ダンプトラック700等の積込対象への積込動作を精度よく検出可能となる。
【0112】
なお、ストローク長の変化速度が、ペイロード用コントローラ220ではなく、ポンプコントローラ210において算出される構成であってもよい。
【0113】
(2)第2の条件の代替手法
上述した第2の条件の代替手法を説明する。
図7は、油圧ショベル100Bの構成を説明するためのブロック図である。
【0114】
図7に示されるように、油圧ショベル100Bは、コントローラ20Bと、ポンプコントローラ210Bと、ペイロード用コントローラ220Bと、積込判定部221Bとを備える点において、コントローラ20と、ポンプコントローラ210と、ペイロード用コントローラ220と、積込判定部221とを備える油圧ショベル100(
図4参照)とは異なる。
【0115】
また、油圧ショベル100Bは、旋回体103の旋回角度θrを検出する角度センサ71をさらに備え、ポンプコントローラ210Bには角度センサ71からの検出結果が入力される。
【0116】
ポンプコントローラ210Bは、右旋回PPC圧(Ptr(tn))および左旋回PPC圧(Ptl(tn))の代わりに、旋回角度θr(tn)をペイロード用コントローラ220Bに送る。
【0117】
積込判定部221Bは、旋回角度θr(tn)が時間の経過とともに変化している場合に、旋回体103が旋回中であると判定する。このような構成によっても、ダンプトラック700等の積込対象への積込動作を精度よく検出可能となる。
【0118】
上述した第2の条件の他の代替手法を説明する。
図8は、油圧ショベル100Cの構成を説明するためのブロック図である。
【0119】
図8に示されるように、油圧ショベル100Cは、コントローラ20Cと、ペイロード用コントローラ220Cと、積込判定部221Cとを備える点において、コントローラ20Bと、ペイロード用コントローラ220Bと、積込判定部221Bとを備える油圧ショベル100B(
図7参照)とは異なる。
【0120】
積込判定部221Cは、旋回角度算出部229を有する。旋回角度算出部229は、旋回角度θr(tn)に基づいて、旋回体103の旋回角速度を算出する。
【0121】
積込判定部221Cは、旋回角速度が予め定められた角速度以上の場合に、旋回体103が旋回中であると判定する。このような構成によっても、ダンプトラック700等の積込対象への積込動作を精度よく検出可能となる。
【0122】
(3)第4の条件の代替手法
上述した第4の条件の代替手法を説明する。本手法では、荷重値算出部222によって算出された、バケット130内の掘削物の荷重値W(tn)を利用する。
【0123】
積込判定部221は、ブーム110が上昇しており、バケット130が基準高さHsを通過し、かつ荷重値W(tn)が基準値よりも大きいことを条件に、油圧ショベル100の動作が積込動作であると判定する。一例として、この基準値を400kgとすることができる。
【0124】
このような構成であっても、ダンプトラック700等の積込対象への積込動作を精度よく検出可能となる。
【0125】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。