(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第1のゲート絶縁層と、第2のゲート絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、半導体層と、を有し、
前記第1の絶縁層は凸部を有し、
前記第2の絶縁層は前記第1の絶縁層の上にあり、
前記第1のゲート電極は前記第2の絶縁層の上にあり、
前記第1のゲート絶縁層は前記第1のゲート電極の上にあり、
前記半導体層は前記第1のゲート絶縁層の上にあり、
前記ソース電極は、前記半導体層と接する領域を有し、
前記ドレイン電極は、前記半導体層と接する領域を有し、
前記第2のゲート絶縁層は、前記半導体層、前記ソース電極、および前記ドレイン電極の上にあり、
前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁層の上にあり、
前記凸部、前記第1のゲート電極、前記第1のゲート絶縁層、前記半導体層、前記第2のゲート絶縁層、および前記第2のゲート電極は、互いに重なる領域を有し、
前記第1の絶縁層は有機樹脂を含むことを特徴とするトランジスタ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
また、図面などにおいて示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面などに開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために省略して示すことがある。
【0021】
また、特に上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0022】
本明細書等における「第1」、「第2」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0023】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって設けられている場合なども含む。
【0024】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して設けられている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0025】
また、ソースおよびドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合など、動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。このため、本明細書においては、ソースおよびドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0026】
また、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものとする。
【0027】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。よって、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0028】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)からドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)までの間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0029】
チャネル幅とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合う長さ(幅)をいう。チャネル長の延伸方向とチャネル幅の延伸方向は、直交する場合が多い。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0030】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、「実効的なチャネル幅」ともいう。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、「見かけ上のチャネル幅」ともいう。)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体層の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル形成領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0031】
このような場合、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0032】
そこで、本明細書では、見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定することができる。
【0033】
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
【0034】
なお、半導体の「不純物」とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体のDOS(Density Of State)が高くなることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および遷移金属などの、酸化物半導体の主成分以外の元素があり、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。
【0035】
また、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」および「直交」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0036】
なお、本明細書等において、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」(これらの同意語を含む)などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0037】
また、本明細書等において、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成し、その後にエッチング工程(除去工程)を行う場合は、特段の説明がない限り、当該レジストマスクは、エッチング工程終了後に除去するものとする。
【0038】
また、本明細書等において、高電源電位VDD(「VDD」または「H電位」ともいう。)とは、低電源電位VSS(「VSS」または「L電位」ともいう。)よりも高い電位の電源電位を示す。また、低電源電位VSSとは、高電源電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位(「GND」または「GND電位」ともいう。)をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
【0039】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0040】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0041】
また、本明細書等に示すトランジスタは、特に断りがない場合、エンハンスメント型(ノーマリーオフ型)の電界効果トランジスタとする。また、本明細書等に示すトランジスタは、特に断りがない場合、nチャネル型のトランジスタとする。よって、そのしきい値電圧(「Vth」ともいう。)は、特に断りがない場合、0Vよりも大きいものとする。
【0042】
なお、本明細書等において、バックゲートを有するトランジスタのVthは、特に断りがない場合、バックゲートの電位をソースまたはゲートと同電位としたときのVthをいう。
【0043】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0044】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。従って、トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られるVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0045】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイン電流が1×10
−9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10
−13Aであり、Vgsが−0.5Vにおけるドレイン電流が1×10
−19Aであり、Vgsが−0.8Vにおけるドレイン電流が1×10
−22Aであるようなnチャネル型トランジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが−0.5Vにおいて、または、Vgsが−0.8V以上−0.5V以下の範囲において、1×10
−19A以下であるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10
−19A以下である、と言う場合がある。当該トランジスタのドレイン電流が1×10
−22A以下となるVgsが存在するため、当該トランジスタのオフ電流は1×10
−22A以下である、と言う場合がある。
【0046】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、室温(RT:Room Temperature)、60℃、85℃、95℃、または125℃におけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃以上35℃以下の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、RT、60℃、85℃、95℃、125℃、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃以上35℃以下の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0047】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、または20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0048】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0049】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0050】
(実施の形態1)
本発明の一態様のトランジスタ100について、図面を用いて説明する。
【0051】
<トランジスタ100の構造例>
図1(A)は、トランジスタ100の平面図である。
図1(B)、
図3(A)および
図3(B)は、
図1(A)にX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。なお、
図3(B)は基板101と絶縁層102のみを示している。
図2は、
図1(A)にY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0052】
本実施の形態に示すトランジスタ100は、トップゲート型のトランジスタの一種である。トランジスタ100は、絶縁層102および絶縁層103を介して基板101上に設けられている。また、トランジスタ100は、電極104、絶縁層105、半導体層106、絶縁層107、電極108、絶縁層109、および絶縁層110を有する。
【0053】
具体的には、基板101上に凸部を有する絶縁層102が設けられ、絶縁層102上に絶縁層103が設けられている。また、絶縁層103上に電極104が設けられ、電極104を覆って絶縁層105が設けられている。また、絶縁層105上に半導体層106が設けられている。また、半導体層106上に絶縁層107が設けられ、絶縁層107上に電極108が設けられている。また、電極108、絶縁層107、および半導体層106を覆って絶縁層109が設けられている。絶縁層109は半導体層106の一部と接する領域を有する。また、絶縁層109上に絶縁層110が設けられている。
【0054】
また、絶縁層110の上に電極112aおよび電極112bが設けられている。電極112aは、絶縁層110および絶縁層109の一部を除去して設けられた開口111aにおいて、半導体層106の一部と電気的に接続される。電極112bは、絶縁層110および絶縁層109の一部を除去して設けられた開口111bにおいて、半導体層106の他の一部と電気的に接続される。
【0055】
電極112aは、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能できる。電極112bは、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能できる。また、電極112a、電極112b、および絶縁層110上に平坦な表面を有する絶縁層113を設けてもよい。
【0056】
トランジスタ100において、半導体層106の電極108と重なる領域がチャネル形成領域として機能する。また、半導体層106の電極108と重ならない領域がソース領域またはドレイン領域として機能する。具体的には、
図1(B)に示す領域106cがチャネル形成領域として機能する。また、
図1(B)に示す領域106sがソース領域またはドレイン領域の一方として機能する。また、
図1(B)に示す領域106dがソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。トランジスタ100のチャネル長Lは、半導体層106の電極108と重なる領域の、キャリアの流れる方向と平行な方向の長さである。
【0057】
なお、
図2以降の図面では、領域106c、領域106s、および領域106dの表記を省略する場合がある。
【0058】
半導体層106、電極104、および電極108は、それぞれが絶縁層102の凸部と重なる領域を有する。絶縁層102の凸部に重ねて半導体層106、電極104、および電極108を設けることで、例えば、半導体層106の開口111aから開口111bまでの実際の長さAに対して、平面図で見たときの長さBを短くすることができる(
図1(A)および
図3(A)参照。)。よって、トランジスタ100は、湾曲した断面形状を有する。トランジスタ100を湾曲させることで、トランジスタ100の占有面積を小さくすることができる。
【0059】
また、外部からトランジスタ100に光が入射すると、入射した光が散乱するなどして半導体層106のチャネル形成領域に到達する場合がある。半導体層106のチャネル形成領域に到達した光は、トランジスタの電気特性の変動や、信頼性低下の一因となる場合がある。トランジスタ100に湾曲した断面形状を付与することで、外部からトランジスタ100に入射した光191を、半導体層106のチャネル形成領域から遠ざかる方向に反射することができる(
図3(A)参照。)。よって、トランジスタの電気特性の変動を抑え、信頼性を高めることができる。
【0060】
トランジスタ100では、チャネル形成領域が絶縁層102の凸部に重なる。絶縁層102が有する凸部先端またはその近傍の曲率半径Rは、チャネル長Lの1倍以上20倍以下が好ましく、2倍以上10倍以下がより好ましく、3倍以上5倍以下がより好ましい(
図3(A)参照。)。
【0061】
また、絶縁層102の凸部の高さHは、半導体層106の厚さの2倍以上20倍以下が好ましく、5倍以上10倍以下がより好ましい(
図3(A)参照。)。
【0062】
また、絶縁層102の凸部から凹部までの変化が急激過ぎると、後の工程で絶縁層102上に設ける層の被覆性が損なわれる恐れがある。よって、基板101表面と平行な線141と凸部側面の接線142が成す最大角度θ
Mは、5度以上60度以下が好ましく、5度以上45度以下がより好ましく、5度以上20度以下がさらに好ましい(
図3(B)参照。)。
【0063】
絶縁層102が有する凸部は、各層の機械的強度の差を利用して設けることができる。例えば、絶縁層102として、電極104のヤング率の10分の1以下、好ましくは50分の1以下、より好ましくは100分の1以下の材料を用いる。また、絶縁層102として、絶縁層103のヤング率の10分の1以下、好ましくは50分の1以下、より好ましくは100分の1以下の材料を用いる。
【0064】
ここで、任意の「層A」が複数層の積層で構成されている場合、「層Aのヤング率」とは、層Aを構成する全ての層のうち、最もヤング率の大きい層の値をいう。または、複数層の積層で構成されている層Aを、単層として評価した場合のヤング率をいう。
【0065】
絶縁層105は、200MPa以上、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは1500MPa以上の圧縮応力を有する材料を用いる。また、電極104として圧縮応力を有する材料を用いることが好ましい。電極104として引張応力を有する材料を用いる場合、電極104の応力の絶対値が、絶縁層105の応力の絶対値以下であることが好ましい。
【0066】
ここで、任意の「層A」が複数層の積層で構成されている場合、「層Aの応力」とは、層Aを構成する全ての層の応力の合計をいう。例えば、絶縁層105が絶縁層105aおよび絶縁層105bの2層の積層で構成されている場合、「絶縁層105の応力」とは、絶縁層105aの応力と絶縁層105bの応力の合計応力をいう。
【0067】
また、絶縁層103の厚さは、絶縁層105の厚さの1/2以下が好ましく、1/5以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。
【0068】
また、絶縁層105として不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、絶縁層103を省略してもよい(
図4(A)および
図4(B)参照。)。なお、
図4(A)は
図1(B)に相当する断面図である。
図4(B)は
図2に相当する断面図である。
【0069】
半導体層106は、単層に限らず、複数層の積層でもよい。例えば、
図5(A)に示すように、半導体層106を半導体層106_1および半導体層106_2の二層積層としてもよい。また、例えば、
図5(B)に示すように、半導体層106を半導体層106_1、半導体層106_2、および半導体層106_3の三層積層としてもよい。もちろん、半導体層106を四層以上の積層としてもよい。なお、
図5(A)および
図5(B)は、どちらも
図1(B)に相当する断面図である。
【0070】
〔ゲート電極とバックゲート電極〕
電極104と電極108は、ゲート電極として機能できる。なお、電極104または電極108の一方を、「ゲート電極」または「ゲート」という場合、他方を「バックゲート電極」または「バックゲート」という。例えば、トランジスタ100において、電極108を「ゲート電極」と言う場合、電極104を「バックゲート電極」と言う。また、例えば、トランジスタ100において、電極104を「ゲート電極」と言う場合、電極108を「バックゲート電極」と言う。
【0071】
なお、電極104を「ゲート電極」として用いる場合は、トランジスタ100をボトムゲート型のトランジスタの一種と考えることができる。また、電極104および電極108のどちらか一方を、「第1のゲート電極」といい、他方を「第2のゲート電極」という場合がある。
【0072】
一般に、ゲート電極とバックゲート電極は導電層で形成される。また、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。言い換えると、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層を取り囲む構成となる。このような構成を有することで、トランジスタ100に含まれる半導体層106を、ゲート電極として機能する電極108と、バックゲート電極として機能する電極104の電界によって電気的に取り囲むことができる。ゲート電極およびバックゲート電極の電界によって、チャネルが形成される半導体層を電気的に取り囲むトランジスタの構造をSurrounded channel(S−channel)構造と呼ぶことができる。
【0073】
バックゲート電極はゲート電極と同様に機能させることができる。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、接地電位や、任意の電位としてもよい。また、バックゲート電極の電位をゲート電極と連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0074】
前述した通り、電極108はゲート電極として機能できる。よって、絶縁層107は、ゲート絶縁層として機能できる。また、電極104も、ゲート電極として機能できる。よって、絶縁層105も、ゲート絶縁層として機能できる。
【0075】
半導体層106を挟んで電極104および電極108を設けることで、更には、電極104および電極108を同電位とすることで、半導体層106においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタのオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
【0076】
したがって、トランジスタを占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタとすることができる。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0077】
また、ゲート電極とバックゲート電極は導電層で形成されるため、トランジスタの外部で生じる電界が、チャネルが形成される半導体層に作用しないようにする機能(特に静電気などに対する電界遮蔽機能)を有する。なお、平面視において、バックゲート電極を半導体層よりも大きく形成し、バックゲート電極で半導体層を覆うことで、電界遮蔽機能を高めることができる。
【0078】
電極104および電極108は、それぞれが外部からの電界を遮蔽する機能を有するため、電極108の上方および電極104の下方に生じる荷電粒子等の電荷が半導体層106のチャネル形成領域に影響しない。この結果、ストレス試験(例えば、ゲートに負の電圧を印加する−GBT(Minus Gate Bias−Temperature)ストレス試験)での電気特性の劣化が抑制される。また、電極104および電極108は、ドレイン電極から生じる電界が半導体層に作用しないように遮断することができる。よって、ドレイン電圧の変動に起因する、オン電流の立ち上がり電圧の変動を抑制することができる。なお、この効果は、電極104および電極108に電位が供給されている場合において顕著に生じる。
【0079】
なお、GBTストレス試験は加速試験の一種であり、長期間の使用によって起こるトランジスタの特性変化(経年変化)を短時間で評価することができる。特に、GBTストレス試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変動量は、信頼性を調べるための重要な指標となる。GBTストレス試験前後において、しきい値電圧の変動量が少ないほど、信頼性が高いトランジスタであるといえる。
【0080】
また、電極104および電極108を有し、且つ電極104および電極108を同電位とすることで、しきい値電圧の変動量が低減される。このため、複数のトランジスタ間における電気特性のばらつきも同時に低減される。
【0081】
また、バックゲート電極を有するトランジスタは、ゲートに正の電圧を印加する+GBTストレス試験前後におけるしきい値電圧の変動も、バックゲート電極を有さないトランジスタより小さい。
【0082】
また、バックゲート電極側から光が入射する場合に、バックゲート電極を、遮光性を有する導電層で形成することで、バックゲート電極側から半導体層に光が入射することを防ぐことができる。よって、半導体層の光劣化を防ぎ、トランジスタのしきい値電圧が変動するなどの、電気特性の劣化を防ぐことができる。
【0083】
〔基板〕
基板101としては、ガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる程度の耐熱性を有する可撓性基板(フレキシブル基板)等を用いることができる。また、基板に透光性を要しない場合には、ステンレス合金等の金属の基板の表面に絶縁層を設けたものを用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板を用いるとよい。他に、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。
【0084】
また、基板101として、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm、または620mm×750mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のガラス基板を用いることができる。
【0085】
基板101として、可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に、トランジスタや容量素子などを直接作製してもよいし、他の作製基板上にトランジスタや容量素子などを作製し、その後可撓性基板に転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に転置するために、作製基板とトランジスタや容量素子などとの間に剥離層を設けるとよい。
【0086】
可撓性基板としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。基板101に用いる可撓性基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。基板101に用いる可撓性基板は、例えば、線膨張率が1×10
−3/K以下、5×10
−5/K以下、または1×10
−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂などがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板として好適である。
【0087】
なお、基板101としてシリコンや炭化シリコンなどを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどを材料とした化合物半導体基板等を用いることもできる。また、SOI基板や、半導体基板上に歪トランジスタやFIN型トランジスタなどの半導体素子が設けられたものなどを用いることもできる。または、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)に適用可能なヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、ヒ化インジウムガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、シリコンゲルマニウムなどを用いてもよい。すなわち、基板101は、単なる支持基板に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。この場合、トランジスタ100のゲート、ソース、またはドレインの少なくとも一つは、上記他のデバイスと電気的に接続されていてもよい。
【0088】
〔絶縁層〕
絶縁層102は、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機樹脂(有機材料)を用いて形成することができる。なお、目的や用途に応じて、絶縁層102を、後述する絶縁層103、絶縁層105、絶縁層107、絶縁層109、絶縁層110、または絶縁層113などと同様の材料および方法で形成してもよい。また、絶縁層102を、これらの材料の積層としてもよい。
【0089】
絶縁層102の形成方法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)などを用いればよい。また、一般に、液状の有機樹脂を絶縁層に用いる場合は、有機樹脂の焼成工程が必要となる。当該焼成工程と他の熱処理工程を兼ねることで、効率よくトランジスタを作製することが可能となる。
【0090】
絶縁層103、絶縁層105、絶縁層107、絶縁層109、絶縁層110、絶縁層113は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどから選ばれた材料を、単層でまたは積層して用いる。また、酸化物材料、窒化物材料、酸化窒化物材料、窒化酸化物材料のうち、複数の材料を混合した材料を用いてもよい。
【0091】
なお、本明細書中において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0092】
特に、絶縁層103は、不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いて形成することが好ましい。また、絶縁層109および/または絶縁層110は、不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いて形成することが好ましい。例えば、不純物が透過しにくい絶縁性材料として、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、窒化シリコンなどを挙げることができる。
【0093】
絶縁層103に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、基板101側からの不純物の拡散を防ぎ、トランジスタの信頼性を高めることができる。絶縁層109および/または絶縁層110に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、絶縁層113側からの不純物の拡散を防ぎ、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0094】
半導体層106として酸化物半導体層を用いる場合は、絶縁層103は、酸素が拡散しにくい、および/または吸収されにくい絶縁性材料を用いることが好ましい。また、絶縁層109および/または絶縁層110は、酸素が拡散しにくい、および/または吸収されにくい絶縁性材料を用いることが好ましい。酸素が拡散されにくい、および/または吸収されにくい絶縁性材料を用いることで、酸素の外部への拡散を防ぐことができる。
【0095】
なお、絶縁層103、絶縁層109および/または絶縁層110として、これらの材料で形成される絶縁層を複数層積層して用いてもよい。
【0096】
また、半導体層106として酸化物半導体層を用いる場合は、半導体層106中の水素濃度の増加を防ぐために、絶縁層中の水素濃度を低減することが好ましい。特に、半導体層106に接する絶縁層中の水素濃度を低減することが好ましい。本実施の形態においては、絶縁層105、および絶縁層107の水素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の水素濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において2×10
20atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
19atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
19atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下とする。また、酸化物半導体層中の窒素濃度の増加を防ぐために、絶縁層中の窒素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の窒素濃度を、SIMSにおいて5×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0097】
また、絶縁層105および絶縁層107のうち、少なくとも一方は、加熱により酸素が放出される絶縁層であることが好ましい。具体的には、絶縁層の表面温度が100℃以上700℃以下、好ましくは100℃以上500℃以下の加熱処理で行われる昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)において、酸素原子に換算した酸素の脱離量が1.0×10
18atoms/cm
3以上、好ましくは1.0×10
19atoms/cm
3以上、より好ましくは1.0×10
20atoms/cm
3以上である絶縁層を用いるとよい。なお、本明細書などにおいて、加熱により放出される酸素を「過剰酸素」ともいう。
【0098】
また、特に、酸化物半導体層に接する絶縁層は、欠陥量が少ないことが好ましい。代表的には、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が3×10
17spins/cm
3以下であることが好ましい。絶縁層に欠陥が多いと、該欠陥に酸素が結合して過剰酸素が減少する場合がある。
【0099】
また、特に、酸化物半導体層に接する絶縁層は、窒素酸化物(NO
X:Xは0より大きく2以下、代表的にはNOまたはNO
2。)に起因する準位密度が低い酸化物絶縁層を用いることが好ましい。上記酸化物絶縁層として、窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化シリコン層、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミニウム層等を用いることができる。窒素酸化物の放出量の少ない酸化物絶縁層とは、昇温脱離ガス分析法において、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い層である。代表的にはアンモニア分子の放出量が1×10
18分子/cm
3以上5×10
19分子/cm
3以下である。なお、アンモニア分子の放出量は、酸化物絶縁層の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃以下の加熱処理による放出量とする。
【0100】
窒素酸化物は、酸化物半導体層や絶縁層中で準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体のエネルギーギャップ内に位置する。窒素酸化物が、絶縁層と酸化物半導体層の界面に到達すると、当該準位が絶縁層側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁層と酸化物半導体層の界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向にシフトされる。
【0101】
なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体層の価電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と酸化物半導体層の伝導帯の下端のエネルギー(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。
【0102】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニアおよび酸素と反応する。絶縁層に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁層に含まれるアンモニアと反応するため、絶縁層に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁層と酸化物半導体層の界面において、電子がトラップされにくい。
【0103】
特に、酸化物半導体層に接する絶縁層に、上記酸化物絶縁層を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0104】
過剰酸素を含む絶縁層は、絶縁層に酸素を添加する処理を行って形成することもできる。酸素を添加する処理は、イオン注入法、イオンドーピング法、またはプラズマイマージョンイオン注入法などで行うことができる。また、酸素を添加する処理は、酸化性雰囲気下での加熱処理、プラズマ処理、または逆スパッタリング処理などで行うことができる。また、酸化性雰囲気下でのプラズマ処理は、例えばマイクロ波を用いた高密度プラズマを発生させる電源を有する装置を用いることが好ましい。または、基板側にRF(Radio Frequency)を印加する電源を有してもよい。高密度プラズマを用いることにより高密度の酸素ラジカルを生成することができる。また、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを効率よく対象となる層内に導くことができる。または、不活性雰囲気下でプラズマ処理を行った後に、脱離した酸素を補うために、酸化性雰囲気下でプラズマ処理を行ってもよい。逆スパッタリング処理による酸素の添加は、試料表面の洗浄効果も期待できる。一方で、処理条件によっては試料表面にダメージが生じる場合がある。酸素を添加するためのガスとしては、
16O
2もしくは
18O
2などの酸素ガス、亜酸化窒素ガスまたはオゾンガスなどを用いることができる。なお、本明細書では酸素を添加する処理を「酸素ドープ処理」ともいう。
【0105】
また、酸素ドープ処理によって、半導体層の結晶性が高まる場合がある。また、酸素ドープ処理によって、対象となる層中の水素や水などの不純物を除去できる場合がある。つまり、「酸素ドープ処理」は、「不純物除去処理」ともいえる。特に、酸素ドープ処理として、減圧下かつ酸化性雰囲気下で酸素を含むプラズマ処理を行うことで、対象となる絶縁層または半導体層に含まれる、水素および水に関する結合が切断される。よって、対象となる層中の水素および水が脱離しやすい状態に変化する。従って、プラズマ処理による酸素ドープ処理は、加熱しながら行うことが好ましい。または、プラズマ処理後に加熱処理を行うことが好ましい。また、加熱処理後に、プラズマ処理を行い、さらに加熱処理を行うことで、対象となる層中の不純物濃度を低減することができる。
【0106】
また、絶縁層113は、トランジスタ等に起因する凹凸等を平坦化させる機能を有する絶縁層(以下、「平坦化層」ともいう。)であることが好ましい。例えば、絶縁層113として、絶縁層102と同様の有機樹脂を用いることができる。また、絶縁層113として、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)などを用いてもよい。
【0107】
なお、シロキサン樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
【0108】
なお、絶縁層113に用いる材料は、絶縁性材料であればよい。よって、絶縁層113は前述した無機材料または前述した有機材料を用いて形成することができる。無機材料および/または有機材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層113を形成してもよい。
【0109】
〔電極〕
電極104、電極112a、電極112b、および電極108を形成するための導電性材料としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)などから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0110】
また、導電性材料として、Cu−X合金(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu−X合金で形成した層は、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
【0111】
また、前述した金属元素および酸素を含む導電性材料を用いてもよい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。
【0112】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料、酸素を含む導電性材料、および窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0113】
なお、電極112aおよび電極112bの抵抗を下げるために、電極112aおよび電極112bに銅を用いる場合は、電極112aと半導体層106の間に銅が拡散しにくい導電性材料を設けることが好ましい。また、電極112bと半導体層106の間に銅が拡散しにくい導電性材料を設けることが好ましい。銅は半導体層中で拡散しやすいため、半導体装置の動作を不安定にし、歩留まりを著しく低下させてしまう恐れがある。銅を含む配線または電極と半導体層の間に銅が拡散しにくい導電性材料を設けることで、トランジスタ100の信頼性を高めることができる。
【0114】
銅が拡散しにくい導電性材料としては、例えば、タングステン、チタン、タンタルなどの銅よりも融点の高い金属材料や、それらの窒化物材料などがある。また、これらの導電性材料で銅を含む電極または配線を覆ってもよい。銅を含む配線または電極を銅が拡散しにくい導電性材料で覆うまたは包むことで、トランジスタ100の信頼性をさらに高めることができる。
【0115】
また、半導体層106として酸化物半導体層を用いる場合、電極112aおよび電極112bの半導体層106と接する領域を、加熱処理により水素を吸収する機能を有する導電性材料とすることで、後の加熱処理によって半導体層106中の水素濃度を低減することができる。水素を吸収する機能を有する導電性材料の一例としては、チタン、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物などがある。
【0116】
〔半導体層〕
半導体層106は、非晶質半導体、微結晶半導体、多結晶半導体等を用いて形成することができる。例えば、非晶質シリコンや、微結晶ゲルマニウム等を用いることができる。また、炭化シリコン、ガリウム砒素、酸化物半導体、窒化物半導体などの化合物半導体や、有機半導体等を用いることができる。
【0117】
特に、半導体層106として酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体のバンドギャップは2eV以上あるため、半導体層106に酸化物半導体を用いると、オフ電流が極めて少ないトランジスタを実現することができる。また、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう。)は、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高い。よって、信頼性の良好なトランジスタを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧なトランジスタを提供できる。また、信頼性の良好な半導体装置などを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧な半導体装置を提供することができる。
【0118】
本実施の形態では、半導体層106として酸化物半導体を用いる場合について説明する。
【0119】
なお、本明細書等において、酸化物半導体(OS:Oxide Semiconductor)とは、スイッチ機能(on/off)を生じさせるための導電部と誘電体部とが分かれている材料を示す。なお、当該材料は、全体(全電場)が半導体として働く。また、導電体成分と、誘電体成分とがナノ粒子レベルで分離している材料の一つである金属酸化物(metal oxide)も、全体としてはスイッチ機能(on/off)を有するため、本明細書等において、OSとして分類される。
【0120】
ここで、酸化物半導体について説明する。酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、元素M(Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)が含まれていてもよい。
【0121】
[酸化物半導体の構造について]
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0122】
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0123】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、または七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0124】
また、CAAC−OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0125】
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0126】
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、結晶性が低い。
【0127】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様に用いることができる酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0128】
[CAC−OSについて]
ここで、本発明の一態様に係るトランジスタに用いることができるCAC(Cloud−Aligned Composite)−OSの構成について説明する。
【0129】
CAC−OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状という場合がある。
【0130】
例えば、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OS(CAC−OSの中でもIn−Ga−Zn酸化物を、特にCAC−IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InO
X1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、In
X2Zn
Y2O
Z2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaO
X3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、Ga
X4Zn
Y4O
Z4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInO
X1、またはIn
X2Zn
Y2O
Z2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0131】
つまり、CAC−OSは、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合酸化物半導体である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0132】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO
3(ZnO)
m1(m1は自然数)、またはIn
(1+x0)Ga
(1−x0)O
3(ZnO)
m0(−1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0133】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0134】
一方、CAC−OSは、酸化物半導体の材料構成に関する。CAC−OSとは、In、Ga、Zn、およびOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CAC−OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0135】
なお、CAC−OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0136】
なお、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0137】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれている場合、CAC−OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0138】
CAC−OSは、例えば基板を意図的に加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC−OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、及び窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つまたは複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0139】
CAC−OSは、X線回折(XRD:X−ray diffraction)測定法のひとつであるOut−of−plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折から、測定領域のa−b面方向、およびc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0140】
またCAC−OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域と、該リング領域に複数の輝点が観測される。従って、電子線回折パターンから、CAC−OSの結晶構造が、平面方向、および断面方向において、配向性を有さないnc(nano−crystal)構造を有することがわかる。
【0141】
また例えば、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0142】
CAC−OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC−OSは、GaO
X3などが主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0143】
ここで、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域は、GaO
X3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。従って、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0144】
一方、GaO
X3などが主成分である領域は、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaO
X3などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0145】
従って、CAC−OSをトランジスタに用いた場合、GaO
X3などに起因する絶縁性と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(I
on)、および高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0146】
また、CAC−OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。CAC−OSは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に用いることができる。
【0147】
[酸化物半導体の原子数比について]
次に、
図33(A)、
図33(B)、および
図33(C)を用いて、本発明の一態様に用いることができる酸化物半導体が有するインジウム、元素Mおよび亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明する。なお、
図33(A)、
図33(B)、および
図33(C)には、酸素の原子数比については記載しない。また、酸化物半導体が有するインジウム、元素M、および亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とする。
【0148】
図33(A)、
図33(B)、および
図33(C)において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(−1≦α≦1)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す。
【0149】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比(β≧0)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるラインを表す。
【0150】
また、
図33(A)、
図33(B)、および
図33(C)に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比、およびその近傍値の酸化物半導体は、スピネル型の結晶構造をとりやすい。
【0151】
また、酸化物半導体中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の近傍値である場合、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=1:0:0の近傍値である場合、ビックスバイト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。酸化物半導体中に複数の相が共存する場合、異なる結晶構造の間において、結晶粒界が形成される場合がある。
【0152】
図33(A)に示す領域Aは、酸化物半導体が有する、インジウム、元素M、および亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
【0153】
酸化物半導体は、インジウムの含有率を高くすることで、酸化物半導体のキャリア移動度(電子移動度)を高くすることができる。従って、インジウムの含有率が高い酸化物半導体はインジウムの含有率が低い酸化物半導体と比較してキャリア移動度が高くなる。
【0154】
一方、酸化物半導体中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が低くなる。従って、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近傍値である場合(例えば
図33(C)に示す領域C)は、絶縁性が高くなる。
【0155】
従って、本発明の一態様に用いることができる酸化物半導体は、キャリア移動度が高く、かつ、結晶粒界が少ない層状構造となりやすい、
図33(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ましい。
【0156】
特に、
図33(B)に示す領域Bでは、領域Aの中でも、CAAC−OSとなりやすく、キャリア移動度も高い優れた酸化物半導体が得られる。
【0157】
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC−OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0158】
なお、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:(3から4.1まで)、およびその近傍値を含む。近傍値には、例えば、[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。また、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値、および[In]:[M]:[Zn]=5:1:7、およびその近傍値を含む。
【0159】
なお、酸化物半導体が有する性質は、原子数比によって一義的に定まらない。同じ原子数比であっても、形成条件により、酸化物半導体の性質が異なる場合がある。例えば、酸化物半導体をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される。また、成膜時の基板温度によっては、ターゲットの[Zn]よりも、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。従って、図示する領域は、酸化物半導体が特定の特性を有する傾向がある原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
【0160】
[酸化物半導体を有するトランジスタについて]
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0161】
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、結晶粒界におけるキャリア散乱等を減少させることができるため、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0162】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×10
11/cm
3未満、好ましくは1×10
11/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
10/cm
3未満であり、1×10
−9/cm
3以上とすればよい。
【0163】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0164】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0165】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0166】
[酸化物半導体の不純物について]
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0167】
酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
16atoms/cm
3以下にする。
【0168】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×10
20atoms/cm
3未満、好ましくは1×10
19atoms/cm
3未満、より好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
18atoms/cm
3未満とする。
【0169】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
【0170】
例えば、半導体層106として、熱CVD法でInGaZnO
X(X>0)膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム(In(CH
3)
3)、トリメチルガリウム(Ga(CH
3)
3)、およびジメチル亜鉛(Zn(CH
3)
2)を用いる。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(Ga(C
2H
5)
3)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(Zn(C
2H
5)
2)を用いることもできる。
【0171】
例えば、半導体層106として、ALD法で、InGaZnO
X(X>0)膜を成膜する場合には、In(CH
3)
3ガスとO
3ガスを順次繰り返し導入してInO
2層を形成し、その後、Ga(CH
3)
3ガスとO
3ガスを順次繰り返し導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH
3)
2ガスとO
3ガスを順次繰り返し導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを用いてInGaO
2層やInZnO
2層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O
3ガスに代えてAr等の不活性ガスで水をバブリングしたH
2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO
3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH
3)
3ガスにかえて、In(C
2H
5)
3ガスやトリス(アセチルアセトナト)インジウムを用いても良い。なお、トリス(アセチルアセトナト)インジウムは、In(acac)
3とも呼ぶ。また、Ga(CH
3)
3ガスにかえて、Ga(C
2H
5)
3ガスやトリス(アセチルアセトナト)ガリウムを用いても良い。なお、トリス(アセチルアセトナト)ガリウムは、Ga(acac)
3とも呼ぶ。また、Zn(CH
3)
2ガスや、酢酸亜鉛を用いても良い。これらのガス種には限定されない。
【0172】
半導体層106をスパッタリング法で成膜する場合、パーティクル数低減のため、インジウムを含むターゲットを用いると好ましい。また、元素Mの原子数比が高い酸化物ターゲットを用いた場合、ターゲットの導電性が低くなる場合がある。インジウムを含むターゲットを用いる場合、ターゲットの導電率を高めることができ、DC放電、AC放電が容易となるため、大面積の基板へ対応しやすくなる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0173】
半導体層106をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比は、In:M:Znが3:1:1、3:1:2、3:1:4、1:1:0.5、1:1:1、1:1:2、1:1:1.2、1:4:4、4:2:4.1、1:3:2、1:3:4、5:1:6、5:1:8などとすればよい。
【0174】
半導体層106をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される場合がある。特に、亜鉛は、ターゲットの原子数比よりも膜の原子数比が小さくなる場合がある。具体的には、ターゲットに含まれる亜鉛の原子数比の40atomic%以上90atomic%程度以下となる場合がある。
【0175】
また、
図5(A)および
図5(B)に示したように、半導体層106を複数層の積層とする場合、半導体層106_1は、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物半導体を用いることが好ましい。半導体層106_1のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。
【0176】
半導体層106_3および半導体層106_2は、半導体層106_1を構成する酸素以外の元素のうち、1種類以上の同じ金属元素を含む材料により形成されることが好ましい。このような材料を用いると、半導体層106_3および半導体層106_1との界面、ならびに半導体層106_2および半導体層106_1との界面に界面準位を生じにくくすることができる。よって、界面におけるキャリアの散乱や捕獲が生じにくく、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧のばらつきを低減することが可能となる。よって、良好な電気特性を有する半導体装置を実現することが可能となる。
【0177】
また、半導体層106_1がIn−M−Zn酸化物(Inと元素MとZnを含む酸化物)であり、半導体層106_3および半導体層106_2もIn−M−Zn酸化物であるとき、半導体層106_3および半導体層106_2をIn:M:Zn=x
1:y
1:z
1[原子数比]、半導体層106_1をIn:M:Zn=x
2:y
2:z
2[原子数比]とすると、好ましくはy
1/x
1がy
2/x
2よりも大きくなる半導体層106_3、半導体層106_2、および半導体層106_1を選択する。より好ましくは、y
1/x
1がy
2/x
2よりも1.5倍以上大きくなる半導体層106_3、半導体層106_2、および半導体層106_1を選択する。さらに好ましくは、y
1/x
1がy
2/x
2よりも2倍以上大きくなる半導体層106_3、半導体層106_2、および半導体層106_1を選択する。より好ましくは、y
1/x
1がy
2/x
2よりも3倍以上大きくなる半導体層106_3、半導体層106_2および半導体層106_1を選択する。このとき、半導体層106_1において、y
2がx
2以上であるとトランジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。ただし、y
2がx
2の5倍以上になると、トランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y
2がx
2の5倍未満であると好ましい。半導体層106_3および半導体層106_2を上記構成とすることにより、半導体層106_3および半導体層106_2を、半導体層106_1よりも酸素欠損が生じにくい層とすることができる。
【0178】
なお、半導体層106_3がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。また、半導体層106_1がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。また、半導体層106_2がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。なお、半導体層106_2は、半導体層106_3と同種の酸化物を用いても構わない。
【0179】
例えば、InまたはGaを含む半導体層106_3、およびInまたはGaを含む半導体層106_2として、In:Ga:Zn=1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:4:5、1:6:4、または1:9:6などの原子数比のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物や、In:Ga=1:9、または7:93などの原子数比のターゲットを用いて形成したIn−Ga酸化物を用いることができる。また、半導体層106_1として、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1または3:1:2などの原子数比のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。なお、半導体層106_3、半導体層106_1、および半導体層106_2の原子数比はそれぞれ、上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0180】
半導体層106_1は、半導体層106_3および半導体層106_2よりも電子親和力の大きい酸化物を用いることが好ましい。例えば、半導体層106_1として、半導体層106_3および半導体層106_2よりも電子親和力が0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いてもよい。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
【0181】
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。そのため、半導体層106_2がインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とする。
【0182】
ただし、半導体層106_3または/および半導体層106_2が、酸化ガリウムであっても構わない。例えば、半導体層106_3として、酸化ガリウムを用いると電極108と半導体層106との間に生じるリーク電流を低減することができる。即ち、トランジスタ100のオフ電流を小さくすることができる。
【0183】
このとき、ゲート電圧を印加すると、半導体層106_3、半導体層106_1、半導体層106_2のうち、電子親和力の大きい半導体層106_1にチャネルが形成される。
【0184】
OSトランジスタに安定した電気特性を付与するためには、酸化物半導体層中の不純物および酸素欠損を低減して高純度真性化し、少なくとも半導体層106_1を真性または実質的に真性と見なせる酸化物半導体層とすることが好ましい。また、少なくとも半導体層106_1中のチャネル形成領域が真性または実質的に真性と見なせる半導体層とすることが好ましい。
【0185】
〔成膜方法について〕
絶縁層、電極や配線を形成するための導電層、または半導体層などは、スパッタリング法、スピンコート法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(熱CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法、高密度プラズマCVD(High density plasma CVD)法、LPCVD法(low pressure CVD)、APCVD法(atmospheric pressure CVD)等を含む)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、または、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、または、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、ディップ法、スプレー塗布法、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)を用いて形成することができる。
【0186】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。MOCVD法、ALD法、または熱CVD法などの、成膜時にプラズマを用いない成膜方法を用いると、被形成面にダメージが生じにくい。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない成膜方法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0187】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0188】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間の分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0189】
なお、ALD法により成膜する場合は、材料ガスとして塩素を含まないガスを用いることが好ましい。
【0190】
また、スパッタリング法で酸化物半導体を形成する場合、スパッタリング装置におけるチャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10
−7Paから1×10
−4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、チャンバー内のH
2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10
−4Pa以下、好ましく5×10
−5Pa以下とすることが好ましい。成膜温度はRT以上500℃以下が好ましく、RT以上300℃以下がより好ましく、RT以上200℃以下がさらに好ましい。
【0191】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0192】
また、スパッタリング法で絶縁層、導電層、または半導体層などを形成する場合、酸素を含むスパッタリングガスを用いることで、被形成層に酸素を供給することができる。スパッタリングガスに含まれる酸素が多いほど、被形成層に供給される酸素が多くなりやすい。
【0193】
<トランジスタ100の作製方法例>
トランジスタ100の作製方法例について
図6(A)乃至
図11(B)を用いて説明する。
図6(A)乃至
図11(B)に示す断面図は、
図1(A)にX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面に相当する。
【0194】
[工程1]
まず、基板101上に絶縁層102を形成する(
図6(A)参照。)。本実施の形態では、基板101としてアルミノホウケイ酸ガラスを用いる。また、本実施の形態では、絶縁層102として厚さ2μmのポリイミド層を形成する。具体的には、液状のポリイミドを液滴吐出法により基板101上に塗布し、400℃の窒素雰囲気中で1時間焼成する。なお、本実施の形態で用いる絶縁層102の焼成後のヤング率は、3GPa以上5GPa以下程度である。
【0195】
[工程2]
次に、絶縁層103を形成する(
図6(B)参照。)。本実施の形態では、絶縁層103として厚さ200nmの酸化窒化シリコン層をPECVD法により形成する。例えば、流量75sccmのシランガス、および流量1200sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を70Paに制御し、基板温度を330℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて120Wの電力を供給すればよい。なお、本実施の形態で用いる絶縁層103のヤング率は、60GPa以上80GPa以下程度である。
【0196】
前述した通り、絶縁層103を不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いて形成してもよい。また、絶縁層103を酸素が拡散しにくい絶縁性材料を用いて形成してもよい。例えば、絶縁層103として酸化アルミニウム層を用いる場合は、アルミニウムターゲットを用いたDCスパッタリング法で形成してもよいし、酸化アルミニウムターゲットを用いたACスパッタリング法で形成してもよい。
【0197】
[工程3]
次に、電極104を形成するための導電層181を形成する(
図6(C)参照。)。本実施の形態では、導電層181としてチタンを用いる。具体的には、厚さ100nmのチタン層をスパッタリング法により形成する。なお、本実施の形態で用いる導電層181のヤング率は、100GPa以上120GPa以下程度である。
【0198】
[工程4]
次に、レジストマスクを形成する(図示せず。)。レジストマスクの形成は、フォトリソグラフィ法、印刷法、インクジェット法等を適宜用いて行うことができる。レジストマスクを印刷法やインクジェット法などで形成すると、フォトマスクを使用しないため製造コストを低減できる。
【0199】
フォトリソグラフィ法によるレジストマスクの形成は、感光性レジストにフォトマスクを介して光を照射し、現像液を用いて感光した部分(または感光していない部分)のレジストを除去して行なうことができる。感光性レジストに照射する光は、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などがある。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、フォトマスクは不要となる。
【0200】
当該レジストマスクをマスクとして用いて、導電層181の一部を選択的に除去して電極104を形成する(
図7(A)参照。)。導電層181の除去は、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
【0201】
導電層181の一部を除去した後、レジストマスクを除去する。レジストマスクの除去は、アッシングなどのドライエッチング法または専用の剥離液などを用いたウェットエッチング法で行うことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
【0202】
また、電極104側面の断面形状をテーパー形状とすることが好ましい。電極104側面のテーパー角θは、20°以上90°未満が好ましく、30°以上80°未満がより好ましく、40°以上70°未満がさらに好ましい。なお、テーパー角θとは、テーパー形状を有する層を断面(基板の表面と直交する面)方向から観察した際に、当該層の側面と底面がなす角度を示す。
【0203】
電極104の側面にテーパー形状を付与することで、その上に形成する層の段切れを防ぎ、被覆性を向上させることができる。また、電極104の側面をテーパー形状とすることで、電極104の上端部の電界集中を緩和できる。一方で、テーパー角θが小さすぎると、トランジスタの微細化が困難になる場合がある。また、テーパー角θが小さすぎると、開口の大きさや配線の幅などのばらつきが大きくなる場合がある。
【0204】
また、電極104の側面を階段形状としてもよい。側面を階段状とすることで、その上に形成する層の段切れを防ぎ、被覆性を向上させることができる。なお、電極104の側面に限らず、各層の端部をテーパー形状または階段形状とすることで、その上に被覆する層が途切れてしまう現象(段切れ)を防ぎ、被覆性を良好なものとすることができる。
【0205】
[工程5]
次に、絶縁層105をPECVD法で形成する(
図7(B)参照。)。本実施の形態では、絶縁層105として第1の窒化シリコン層、第2の窒化シリコン層、第3の窒化シリコン層、および酸化窒化シリコン層を順に積層する四層積層構造とする。
【0206】
第1の窒化シリコン層としては、例えば、流量200sccmのシランガス、流量2000sccmの窒素ガス、および流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
【0207】
第2の窒化シリコン層としては、例えば、流量200sccmのシランガス、流量2000sccmの窒素ガス、および流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成すればよい。
【0208】
第3の窒化シリコン層としては、例えば、流量200sccmのシランガス、流量2000sccmの窒素ガス、および流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
【0209】
酸化窒化シリコン層としては、例えば、流量20sccmのシランガス、および流量3000sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を40Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
【0210】
なお、本実施の形態で用いる絶縁層105は、1000MPa以上1200MPa以下程度の圧縮応力を有する。
【0211】
絶縁層102は、電極104および絶縁層103よりもヤング率が小さいため、電極104および絶縁層103よりも変形し易い。また、絶縁層102は、絶縁層105の圧縮応力によって、電極104の外周近傍の領域が押し込まれ、電極104と重なる領域が凸状に変形する。このようにして絶縁層102に凸部が形成される。当該凸部は電極104と重なる位置に、自己整合(セルフアライン)により形成される。
【0212】
絶縁層105は、過剰酸素を含む絶縁層を用いてもよい。絶縁層105に酸素ドープ処理を行ってもよい。また、絶縁層105の形成後に加熱処理を行なって、絶縁層105中に含まれる水素や水分を低減させることが好ましい。加熱処理の後に酸素ドープ処理を行ってもよい。酸素ドープ処理は、例えば、基板を350℃に加熱して、アルゴンと酸素を含むガスを周波数2.45GHzで励起して行なえばよい。加熱処理と酸素ドープ処理を複数回繰り返し行なってもよい。
【0213】
加熱処理は、例えば、窒素や希ガスなどを含む不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下、または超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で行なう。なお、「酸化性雰囲気」とは、酸素、オゾンまたは窒化酸素などの酸化性ガスを10ppm以上含有する雰囲気をいう。また、「不活性雰囲気」とは、前述の酸化性ガスが10ppm未満であり、その他、窒素または希ガスで充填された雰囲気をいう。加熱処理中の圧力に特段の制約はないが、加熱処理は減圧下で行なうことが好ましい。
【0214】
加熱処理は、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは200℃以上500℃以下、より好ましくは250℃以上400℃以下で行えばよい。処理時間は24時間以内とする。24時間を超える加熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0215】
また、加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いて行なうことができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、加熱時間を短縮することが可能となる。また、加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。
【0216】
[工程6]
次に、半導体層182を形成する(
図7(C)参照。)。なお、半導体層182を形成する前に、酸素ガスを供給してプラズマを発生させてもよい。このことにより、半導体層182の被形成面となる絶縁層105中に酸素を添加できる。
【0217】
半導体層182としては、インジウム亜鉛酸化物や、組成がIn:Ga:Zn=5:1:7[原子数比]のターゲットを用いて形成したインジウムガリウム亜鉛酸化物や、組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて形成したインジウムガリウム亜鉛酸化物などを用いることが好ましい。
【0218】
本実施の形態では、半導体層182として、インジウムガリウム亜鉛酸化物を組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いたスパッタリング法で形成する。また、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。本実施の形態では、スパッタリングガスとして酸素の流量比が10%の酸素とアルゴンの混合ガスを用いる。
【0219】
スパッタリングガスに含まれる酸素の流量比を0%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体層が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体層を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。
【0220】
また、半導体層182の形成時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が絶縁層105に供給される場合がある。スパッタリングガスに含まれる酸素が多いほど、絶縁層105に供給される酸素も増加する。絶縁層105に供給された酸素の一部は、絶縁層105中に残存する水素と反応して水となり、後の加熱処理によって絶縁層105から放出される。このようにして、絶縁層105中の水素濃度を低減することができる。また、絶縁層105中の過剰酸素を増やすことで、後の加熱処理において半導体層182(後の半導体層106)に酸素を供給することもできる。
【0221】
図4(A)および
図4(B)に示したように、半導体層106を二層または三層の積層とする場合、半導体層106_1を形成するための酸化物半導体層は、上記の材料および方法で形成する。
【0222】
また、半導体層106_2および/または半導体層106_3を形成するための酸化物半導体層は、結晶性の高い酸化物半導体層を用いることが好ましい。例えば、CAAC−OSを用いることが好ましい。例えば、後に行なわれる絶縁層107、および電極108を形成するためのエッチング工程の際に、露出した酸化物半導体層がエッチングされて、酸化物半導体層にダメージが生じる場合がある。結晶性の高い酸化物半導体層は、当該エッチング工程でエッチングされにくい。半導体層106_2および/または半導体層106_3に結晶性の高い酸化物半導体層を用いることで、当該エッチング工程で酸化物半導体層に生じるダメージを低減することができる。よって、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0223】
半導体層106_2および/または半導体層106_3を形成するための酸化物半導体層として、例えば、インジウムガリウム亜鉛酸化物を組成がIn:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比]のターゲットを用いたスパッタリング法で形成する。また、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。例えば、スパッタリングガスとして酸素を100%の割合で用いる。半導体層106_2および/または半導体層106_3を形成するためのスパッタリングガスに含まれる酸素の流量比は、70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましく、100%がより好ましい。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合(流量比)を高めることで、酸化物半導体層の結晶性を高めることができる。
【0224】
なお、半導体層182の形成後に不純物元素を導入することで、トランジスタ100のしきい値電圧を変化させることができる。不純物元素の導入は、イオン注入法、イオンドーピング法、またはプラズマイマージョンイオン注入法、または不純物元素を含むガスを用いたプラズマ処理などで行うことができる。
【0225】
また、半導体層182の形成後に、加熱処理を行ってもよいし、酸素ドープ処理を行なってもよい。加熱処理と酸素ドープ処理を複数回繰り返してもよい。
【0226】
また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理を行なった後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱処理を行なってもよい。この結果、酸化物半導体層に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸化物半導体層に酸素を供給することができる。この結果、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損を低減することができる。
【0227】
[工程7]
次に、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成する(図示せず。)。当該レジストマスクをマスクとして用いて、半導体層182の一部を選択的に除去して、島状の半導体層106を形成する(
図8(A)参照。)。
【0228】
半導体層182の除去は、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。なお、半導体層106の形成後に不純物元素を導入することで、トランジスタ100のしきい値電圧を変化させることができる。
【0229】
半導体層106の形成後に加熱処理を行ってもよいし、酸素ドープ処理を行なってもよい。加熱処理と酸素ドープ処理を繰り返してもよい。
【0230】
図5(A)および
図5(B)に示したように、半導体層106を二層または三層の積層とする場合は、半導体層106_1の形成後、半導体層106_1および半導体層106_2の形成後、または、半導体層106_1乃至半導体層106_3の形成後に加熱処理を行ってもよいし、酸素ドープ処理を行なってもよい。加熱処理と酸素ドープ処理を繰り返してもよい。
【0231】
[工程8]
次に、後に絶縁層107となる絶縁層183を形成する(
図8(B)参照。)。絶縁層183として、例えば、PECVD法で形成した酸化窒化シリコン層を用いることができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体および酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シランガス、ジシランガス、トリシランガス、フッ化シランガス等がある。酸化性気体としては、一酸化二窒素ガス、二酸化窒素ガス等がある。また、上記の堆積性気体の流量に対して酸化性気体の流量を20倍以上5000倍以下、好ましくは40倍以上100倍以下とする。
【0232】
本実施の形態では、絶縁層183として第1の酸化窒化シリコン層、第2の酸化窒化シリコン層、および第3の酸化窒化シリコン層を順に積層する三層積層構造とする。
【0233】
第1の酸化窒化シリコン層としては、例えば、流量20sccmのシランガス、流量3000sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を200Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して、厚さが30nmとなるように形成すればよい。
【0234】
第2の酸化窒化シリコン層としては、例えば、流量160sccmのシランガス、流量4000sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を200Paに制御し、基板温度を220℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの電力を供給して、厚さが100nmとなるように形成すればよい。
【0235】
第2の酸化窒化シリコン層は、過剰酸素を含む絶縁層であることが好ましい。また、第2の酸化窒化シリコン層は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が1.5×10
18spins/cm
3未満、さらには1×10
18spins/cm
3以下であることが好ましい。なお、第2の酸化窒化シリコン層は、第1の酸化窒化シリコン層と比較して半導体層106から離れているため、第1の酸化窒化シリコン層よりも欠陥密度が多くてもよい。
【0236】
なお、第2の酸化窒化シリコン層として、基板を180℃以上400℃以下に保持し、反応室に原料ガスを導入して反応室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、反応室内に設けられる電極に0.17W/cm
2以上0.5W/cm
2以下、さらに好ましくは0.25W/cm
2以上0.35W/cm
2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化窒化シリコン層を形成してもよい。
【0237】
第2の酸化窒化シリコン層の形成において、上記圧力の反応室内で上記パワー密度の高周波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まる。すなわち、反応室内の酸素ラジカルが増加し、原料ガスの酸化が進む。このため、形成される第2の酸化窒化シリコン層中の酸素含有量を化学量論的組成よりも多くすることができる。
【0238】
また、上記の基板温度で形成された絶縁層では、シリコンと酸素の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により絶縁層中の酸素の一部が脱離する。この結果、脱離した酸素の一部が半導体層106に供給される。
【0239】
なお、第2の酸化窒化シリコン層の形成条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気体の流量を増加することで、第2の酸化窒化シリコン層の欠陥量を低減することが可能である。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が6×10
17spins/cm
3未満、好ましくは3×10
17spins/cm
3以下、好ましくは1.5×10
17spins/cm
3以下である欠陥量の少ない酸化物絶縁層を形成することができる。この結果、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0240】
なお、第2の酸化窒化シリコン層の形成工程において、第1の酸化窒化シリコン層が半導体層106の保護層として機能する。したがって、半導体層106へのダメージを低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて第2の酸化窒化シリコン層を形成することができる。
【0241】
第3の酸化窒化シリコン層としては、例えば、流量20sccmのシランガス、流量3000sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を200Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して、厚さが20nmとなるように形成すればよい。
【0242】
なお、この後行なう導電層184の形成工程において、第3の酸化窒化シリコン層が第2の酸化窒化シリコン層の保護層として機能する。
【0243】
工程8の終了後、加熱処理を行ってもよい。例えば、窒素雰囲気中で、350℃、1時間の加熱処理を行ってもよい。また、工程8の終了後、酸素ドープ処理を行なってもよい。加熱処理と酸素ドープ処理を交互に複数回繰り返し行ってもよい。
【0244】
[工程9]
次に電極108を形成するための導電層184を形成する(
図8(C)参照。)。本実施の形態では、導電層184としてインジウムガリウム亜鉛酸化物層を用いる。より具体的には、導電層184としてインジウムガリウム亜鉛酸化物の二層積層を用いる。
【0245】
まず、組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットと、酸素の割合が100%のスパッタリングガスと、を用いて、厚さ10nmのインジウムガリウム亜鉛酸化物層を形成する。次に、組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットと、酸素の割合が10%でアルゴンの割合が90%のスパッタリングガスと、を用いて、厚さ90nmのインジウムガリウム亜鉛酸化物層を形成する。
【0246】
[工程10]
次に、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成する(図示せず。)。当該レジストマスクをマスクとして用いて、導電層184の一部を選択的に除去して、電極108を形成する。この時、電極108をマスクとして用いて、絶縁層183の一部も選択的に除去して絶縁層107を形成する(
図9(A)参照。)。工程10により、半導体層106の一部が露出する。なお、半導体層106中の、電極108と重なる領域にチャネルが形成される。
【0247】
導電層184、および絶縁層183の除去は、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
【0248】
[工程11]
次に、半導体層106の工程8で露出した領域に不純物を導入する。不純物の導入は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などで行ってもよい。当該領域に窒素などの不純物を導入することにより、当該領域の抵抗値を低下させることができる。
【0249】
また、当該領域を窒素や不活性ガスのプラズマ雰囲気に曝してもよい。当該領域をプラズマ雰囲気に曝すことにより、当該領域に欠陥を生じさせて、当該領域の抵抗値を低下させることができる。
【0250】
半導体層106の不純物が導入された領域、またはプラズマ雰囲気に曝された領域は、トランジスタのソース領域またはドレイン領域として機能できる。また、半導体層106の電極108と重なる領域は、チャネル形成領域として機能できる。すなわち、トランジスタのソース領域とドレイン領域を、自己整合で形成することができる。
【0251】
本実施の形態では、アルゴンと窒素を含む雰囲気中でプラズマ処理を行う。
【0252】
[工程12]
次に、絶縁層109を形成する(
図9(B)参照。)。本実施の形態では、絶縁層109として厚さ100nmの窒化シリコン層を用いる。
【0253】
絶縁層109に用いる窒化シリコン層は、例えば、PECVD法により形成する。例えば、流量50sccmのシランガス、流量5000sccmの窒素ガス、および流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、基板温度を220℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて1000Wの電力を供給して形成すればよい。
【0254】
窒化シリコン層は不純物が透過しにくい絶縁性材料であるため、上方から半導体層106への不純物拡散を防ぐことができる。また、半導体層106の窒化シリコン層が接する領域は、窒化シリコン層の形成時に水素や窒素などの不純物が供給されて抵抗値が低下する。よって、工程11で説明したソース領域として機能できる領域と、ドレイン領域として機能できる領域の抵抗値をさらに下げることができる。
【0255】
[工程13]
次に、絶縁層110を形成する(
図9(B)参照。)。本実施の形態では、絶縁層110としてPECVD法により厚さ300nmの酸化窒化シリコン層を形成する。
【0256】
絶縁層110に用いる酸化窒化シリコン層は、例えば、流量160sccmのシランガス、および流量4000sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を200Paに制御し、基板温度を220℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの電力を供給して形成すればよい。
【0257】
[工程14]
次に、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成する(図示せず。)。当該レジストマスクをマスクとして用いて、絶縁層110および絶縁層109それぞれの一部を選択的に除去して、開口111aおよび開口111bを形成する(
図10(A)参照。)。この時、半導体層106の一部が露出する。
【0258】
絶縁層110および絶縁層109の除去は、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
【0259】
[工程15]
次に、電極112aおよび電極112bを形成するための導電層186を形成する(
図10(B)参照。)。本実施の形態では、導電層186としてチタンと銅の積層を用いる。具体的には、厚さ10nmのチタン層と、厚さ100nmの銅層を、それぞれ順にスパッタリング法により形成する。
【0260】
[工程16]
次に、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成する(図示せず。)。当該レジストマスクをマスクとして用いて、導電層186の一部を選択的に除去して、電極112aおよび電極112bを形成する(
図11(A)参照。)。電極112aまたは電極112bの一方はソース電極として機能でき、他方はドレイン電極として機能できる。
【0261】
導電層186の除去は、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
【0262】
[工程17]
次に、平坦な表面を有する絶縁層113を形成する(
図11(B)参照。)。本実施の形態では、絶縁層113として厚さ1.5μmのアクリル樹脂層を形成する。なお、絶縁層113は、目的または用途によっては設けない場合がある。
【0263】
以上の工程により、トランジスタ100を作製することができる。本発明の一態様によれば、トランジスタ100を形成するための最高プロセス温度を400℃以下とすることができる。よって、トランジスタ100の生産性を高めることができる。また、トランジスタ100を含む半導体装置の生産性を高めることができる。
【0264】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0265】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示したトランジスタ100の変形例について、図面を用いて説明する。なお、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ100と異なる点について説明する。本実施の形態で説明の無い部分については、実施の形態1を参照すればよい。
【0266】
〔変形例1〕
図12(A)は、トランジスタ100Aの平面図である。
図12(B)は、
図12(A)に記したX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。
図13は、
図12(A)に記したY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0267】
トランジスタ100Aは、トランジスタ100とほぼ同様の構成を有するが、絶縁層102と基板101の間に構造体122を有する点が異なる。トランジスタ100Aは、半導体層106、電極104、および電極108が、それぞれ構造体122と重なる領域を有する。
【0268】
構造体122を覆って絶縁層102を設けることで、絶縁層102に凸部を設けることができる。また、構造体122の大きさを調節することで、凸部の高さや形状を任意に設定することができる。構造体122は、前述した絶縁性材料を用いて設けることができる。なお、目的や用途に応じて、構造体122を、導電性材料または半導体材料などを用いて設けてもよい。
【0269】
構造体122を用いて絶縁層102に凸部を設けるため、上記実施の形態に示した各層の機械的強度の差を利用する方法と比較して、トランジスタに用いる材料の選択自由度が高い。よって、絶縁層102、絶縁層103、電極104、および絶縁層105の、厚さ、ヤング率、応力などを比較的自由に設定できる。
【0270】
次に、トランジスタ100Aの作製方法例について説明する。
【0271】
[工程1a]
実施の形態1に示した工程1に代えて、工程1aを行う。本実施の形態では、基板101上に感光性ポリイミド層を形成し、フォトリソグラフィ法により構造体122を形成する(
図14(A)参照。)。感光性ポリイミド層を用いることで、レジストマスクを設けることなく構造体122を形成することができる。構造体122の高さH
Sは、感光性ポリイミド層の厚さを調節することによって制御できる。本実施の形態では、高さH
Sが2.0μmの構造体122を形成する。
【0272】
なお、非感光性材料を用いて構造体122を形成してもよい。この場合は、レジストマスク等を用いる一般的なパターン形成方法などにより構造体122を設ければよい。
【0273】
[工程2a]
次に、絶縁層102を形成する(
図14(B)参照。)。本実施の形態では、絶縁層102として、構造体122と重ならない領域での最薄部分の厚さT
Bが1.0μmのポリイミド層を形成する。具体的には、液状のポリイミドを液滴吐出法により基板101および構造体122上に塗布し、400℃の窒素雰囲気中で1時間焼成する。
【0274】
液状の材料を用いて絶縁層102を形成する場合、構造体122の頂上部分と重なる絶縁層102の厚さT
Gおよび厚さT
Bは、当該材料の粘度および塗布量などによって決定される。また、凸部の高さHは、高さH
Sと厚さT
Gの合計から厚さT
Bを引いた値となる。
【0275】
構造体122および絶縁層102は、同じ成分を有する材料で形成することが好ましい。
【0276】
工程1b以降の工程は、実施の形態1で説明した工程2以降と同様に行えばよい。
【0277】
〔変形例2〕
図15(A)は、トランジスタ100Bの平面図である。
図15(B)は、
図15(A)に記したX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。
図16は、
図15(A)に記したY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0278】
トランジスタ100Bは、トランジスタ100Aから電極104を除去した構成を有する。トランジスタに求められる性能や目的などによっては、電極104を設けなくてもよい。電極104を設けないことで、トランジスタの作製工程数が減るため、製造コストを低減できる。また、トランジスタの製造歩留まりを高めることができる。
【0279】
〔変形例3〕
図17(A)は、トランジスタ100Cの平面図である。
図17(B)は、
図17(A)に記したX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。
図18は、
図17(A)に記したY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0280】
複数の構造体122を設けることで、絶縁層102に凹部を設けることができる。トランジスタ100Cは、トランジスタ100Aと同様の構成を有する。ただし、トランジスタ100Cは、半導体層106、電極104、および電極108のそれぞれが、絶縁層102の凹部と重なる領域を有する点が、トランジスタ100Aと異なる。トランジスタ100Cでは、チャネル形成領域が絶縁層102の凹部と重なる領域を有する。また、トランジスタ100Cでは、チャネル形成領域が絶縁層102の凸部と重ならない領域を有する。
【0281】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0282】
(実施の形態3)
上記実施の形態に示したトランジスタ100、トランジスタ100A、トランジスタ100B、およびトランジスタ100C、と異なる構成を有するトランジスタ150について、図面を用いて説明する。なお、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ100と異なる点について説明する。本実施の形態で説明の無い部分については、上記実施の形態を参照すればよい。
【0283】
<トランジスタ150の構造例>
図19(A)は、トランジスタ150の平面図である。
図19(B)は、
図19(A)にX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。
図20は、
図19(A)にY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0284】
本実施の形態に示すトランジスタ150は、ボトムゲート型のトランジスタの一種である。トランジスタ150は、絶縁層102および絶縁層103を介して基板101上に設けられている。また、トランジスタ150は、電極104、絶縁層105、半導体層106(半導体層106_1、半導体層106_2)、電極112a、電極112b、絶縁層115、絶縁層116、絶縁層117、および電極108を有する。
【0285】
電極112aは、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能できる。電極112bは、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能できる。また、トランジスタ150上に平坦な表面を有する絶縁層113を設けてもよい。
【0286】
また、絶縁層105として不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、絶縁層103を省略してもよい(
図21(A)および
図21(B)参照。)。なお、
図21(A)は
図19(B)に相当する断面図である。
図21(B)は
図20に相当する断面図である。
【0287】
図19および
図20に示すトランジスタ150では、半導体層106を半導体層106_1と半導体層106_2の二層積層とする例を示している。ただし、半導体層106は、単層でもよいし、三層以上の積層でもよい。例えば、
図22(A)に示すように、半導体層106を半導体層106_1のみの単層としてもよい。また、例えば、
図22(B)に示すように、半導体層106を半導体層106_1、半導体層106_2、および半導体層106_3の三層積層としてもよい。もちろん、半導体層106を四層以上の積層としてもよい。なお、
図22(A)および
図22(B)は、どちらも
図19(B)に相当する断面図である。
【0288】
トランジスタ150では、平面図において、電極104と重なり、かつ、電極112aと電極112bに挟まれる半導体層106中の領域がチャネル形成領域として機能する。また、半導体層106の電極112aと接する領域がソース領域またはドレイン領域の一方として機能する。また、半導体層106の電極112bと接する領域がソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。具体的には、
図19(B)に示す領域106cがチャネル形成領域として機能する。また、
図19(B)に示す領域106sがソース領域またはドレイン領域の一方として機能する。また、
図19(B)に示す領域106dがソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。
【0289】
なお、
図20以降の図面では、領域106c、領域106s、および領域106dの表記を省略する場合がある。
【0290】
トランジスタ150のチャネル長Lは、電極112aの半導体層106と重なる端部から、電極112bの半導体層106と重なる端部までの長さである(
図19(A)および(B)参照。)。また、トランジスタ150のチャネル形成領域は、絶縁層102の凸部に重なる。
【0291】
<トランジスタ150の作製方法例>
トランジスタ150の作製方法例について
図23(A)乃至
図26(B)を用いて説明する。
図23(A)乃至
図26(B)に示す断面図は、
図19(A)にX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面に相当する。なお、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ100の作製方法と異なる点について説明する。本実施の形態で説明の無い部分については、実施の形態1などを参照すればよい。
【0292】
まず、トランジスタ100の作製方法と同様に工程5まで行う。
【0293】
[工程1b]
次に、半導体層182_1を形成し、半導体層182_1上に半導体層182_2を形成する(
図23(A)参照。)。なお、半導体層182_1を形成する前に、酸素ガスを供給してプラズマを発生させてもよい。このことにより、半導体層182_1の被形成面となる絶縁層105中に酸素を添加できる。
【0294】
本実施の形態では、半導体層182_1として、インジウムガリウム亜鉛酸化物を組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いたスパッタリング法で形成する。また、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。本実施の形態では、スパッタリングガスとして酸素の流量比が10%の酸素とアルゴンの混合ガスを用いる。
【0295】
続いて、半導体層182_2として、インジウムガリウム亜鉛酸化物を組成がIn:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比]のターゲットを用いたスパッタリング法で形成する。また、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。例えば、スパッタリングガスとして酸素を100%の割合で用いる。半導体層182_2を形成するためのスパッタリングガスに含まれる酸素の流量比は、70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましく、100%がより好ましい。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合(流量比)を高めることで、酸化物半導体層の結晶性を高めることができる。
【0296】
前述した通り、半導体層106_2を形成するための酸化物半導体層は、結晶性の高い酸化物半導体層を用いることが好ましい。例えば、後に行なわれる電極112a、および電極112bを形成するためのエッチング工程の際に、露出した半導体層106の一部がエッチングされて、半導体層106にダメージが生じる場合がある。結晶性の高い酸化物半導体層は、当該エッチング工程でエッチングされにくい。半導体層106_2に結晶性の高い酸化物半導体層を用いることで、当該エッチング工程で酸化物半導体層に生じるダメージを低減することができる。よって、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0297】
なお、半導体層182_2の形成後に不純物元素を導入することで、トランジスタ150のしきい値電圧を変化させることができる。不純物元素の導入は、イオン注入法、イオンドーピング法、またはプラズマイマージョンイオン注入法、または不純物元素を含むガスを用いたプラズマ処理などで行うことができる。
【0298】
また、半導体層182_2の形成後に、加熱処理を行ってもよいし、酸素ドープ処理を行なってもよい。加熱処理と酸素ドープ処理を複数回繰り返してもよい。
【0299】
また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理を行なった後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱処理を行なってもよい。この結果、酸化物半導体層に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸化物半導体層に酸素を供給することができる。この結果、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損を低減することができる。
【0300】
[工程2b]
次に、前述した工程7と同様に、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成する(図示せず。)。当該レジストマスクをマスクとして用いて、半導体層182_1および半導体層182_2の一部を選択的に除去して、島状の半導体層106_1および半導体層106_2を形成する(
図23(B)参照。)。
【0301】
[工程3b]
次に、前述した工程15と同様に、電極112aおよび電極112bを形成するための導電層186を形成する(
図24(A)参照。)。本実施の形態では、導電層186としてタングステン、アルミニウム、およびチタンの積層を用いる。具体的には、厚さ50nmのタングステン層、厚さ400nmのアルミニウム層、および厚さ100nmのチタン層を、それぞれ順にスパッタリング法により形成する。
【0302】
[工程4b]
次に、前述した工程16と同様に、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成する(図示せず。)。当該レジストマスクをマスクとして用いて、導電層186の一部を選択的に除去して、電極112aおよび電極112bを形成する(
図24(B)参照。)。電極112aまたは電極112bの一方はソース電極として機能でき、他方はドレイン電極として機能できる。この時、露出した半導体層106_2の一部が除去される場合がある。
【0303】
[工程5b]
次に、絶縁層115、絶縁層116、絶縁層117を順に形成する(
図25(A)参照。)。
【0304】
本実施の形態では、絶縁層115として、流量50sccmのシランガス、流量2000sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を20Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて130Wの電力を供給して、厚さが30nmの酸化窒化シリコン層を形成する。
【0305】
絶縁層116として、流量160sccmのシランガス、流量4000sccmの一酸化二窒素ガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を200Paに制御し、基板温度を220℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの電力を供給して、厚さが400nmの酸化窒化シリコン層を形成する。
【0306】
絶縁層116は、過剰酸素を含む絶縁層であることが好ましい。また、絶縁層116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が1.5×10
18spins/cm
3未満、さらには1×10
18spins/cm
3以下であることが好ましい。なお、絶縁層116は、絶縁層115と比較して半導体層106から離れているため、絶縁層115よりも欠陥密度が多くてもよい。
【0307】
なお、絶縁層116として、基板を180℃以上400℃以下に保持し、反応室に原料ガスを導入して反応室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、反応室内に設けられる電極に0.17W/cm
2以上0.5W/cm
2以下、さらに好ましくは0.25W/cm
2以上0.35W/cm
2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を形成してもよい。
【0308】
絶縁層116の形成において、上記圧力の反応室内で上記パワー密度の高周波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まる。すなわち、反応室内の酸素ラジカルが増加し、原料ガスの酸化が進む。このため、形成される絶縁層116中の酸素含有量を化学量論的組成よりも多くすることができる。
【0309】
また、上記の基板温度で形成された絶縁層では、シリコンと酸素の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により絶縁層中の酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、過剰酸素を含む絶縁層を形成することができる。
【0310】
なお、絶縁層116の形成条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気体の流量を増加することで、絶縁層116の欠陥量を低減することが可能である。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が6×10
17spins/cm
3未満、好ましくは3×10
17spins/cm
3以下、好ましくは1.5×10
17spins/cm
3以下である欠陥量の少ない酸化物絶縁層を形成することができる。この結果、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0311】
なお、絶縁層116の形成工程において、絶縁層115が半導体層106の保護層として機能する。したがって、半導体層106へのダメージを低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて絶縁層116を形成することができる。
【0312】
絶縁層117として、流量50sccmのシランガス、流量5000sccmの窒素ガス、および流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、基板温度を350℃に制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて1000Wの電力を供給して厚さ100nmの窒化シリコン層を形成する。
【0313】
[工程6b]
次に、前述した工程9と同様に、電極108を形成するための導電層184を形成する(
図25(B)参照。)。本実施の形態では、導電層184として、シリコンを含むインジウム錫酸化物層を、スパッタリング法により厚さ100nm形成する。
【0314】
[工程7b]
次に、前述した工程10と同様にフォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成する(図示せず。)。当該レジストマスクをマスクとして用いて、導電層184の一部を選択的に除去して、電極108を形成する(
図26(A)参照。)。
【0315】
[工程8b]
次に、平坦な表面を有する絶縁層113を形成する(
図26(B)参照。)。本実施の形態では、絶縁層113として厚さ1.5μmのアクリル樹脂層を形成する。なお、絶縁層113は、目的または用途によっては設けない場合がある。
【0316】
以上の工程により、トランジスタ150を作製することができる。
【0317】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0318】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示したトランジスタ150の変形例について、図面を用いて説明する。なお、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ150と異なる点について説明する。本実施の形態で説明の無い部分については、実施の形態3を参照すればよい。
【0319】
〔変形例1〕
図27(A)は、トランジスタ150Aの平面図である。
図27(B)は、
図27(A)に記したX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。
図28は、
図27(A)に記したY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0320】
トランジスタ150Aは、トランジスタ150とほぼ同様の構成を有するが、絶縁層102と基板101の間に構造体122を有する点が異なる。トランジスタ150Aは、半導体層106、電極104、および電極108が、それぞれ構造体122と重なる領域を有する。
【0321】
構造体122を用いる場合の効果や、構造体の作製方法については実施の形態2に記載があるため、本実施の形態での説明は省略する。
【0322】
〔変形例2〕
図29(A)は、トランジスタ150Bの平面図である。
図29(B)は、
図29(A)に記したX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。
図30は、
図29(A)に記したY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0323】
トランジスタ150Bは、トランジスタ150Aから電極108を除去した構成を有する。トランジスタに求められる性能や目的などによっては、電極108を設けなくてもよい。電極108を設けないことで、トランジスタの作製工程数が減るため、製造コストを低減できる。また、トランジスタの製造歩留まりを高めることができる。
【0324】
〔変形例3〕
図31(A)は、トランジスタ150Cの平面図である。
図31(B)は、
図31(A)に記したX1−X2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル長方向の断面図)である。
図32は、
図31(A)に記したY1−Y2の一点鎖線で示す部位の断面図(チャネル幅方向の断面図)である。
【0325】
複数の構造体122を設けることで、絶縁層102に凹部を設けることができる。トランジスタ150Cは、トランジスタ150Aと同様の構成を有する。ただし、トランジスタ150Cは、半導体層106、電極104、および電極108のそれぞれが、絶縁層102の凹部と重なる領域を有する点が、トランジスタ150Aと異なる。トランジスタ150Cでは、チャネル形成領域が絶縁層102の凹部と重なる領域を有する。また、トランジスタ150Cでは、チャネル形成領域が絶縁層102の凸部と重ならない領域を有する。
【0326】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0327】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本明細書等に開示したトランジスタを用いた半導体装置の一例として、表示装置および表示モジュールについて説明する。
【0328】
表示装置200の構成例について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態では、主に表示素子として発光素子を用いた発光表示装置を例示する。また、表示装置200として、トップエミッション構造(上面射出構造)の表示装置を例示する。ただし、表示装置200は、ボトムエミッション構造(下面射出構造)、またはデュアルエミッション構造(両面射出構造)の表示装置とすることも可能である。
【0329】
なお、表示素子として液晶素子を用いることで、表示装置200を液晶表示装置とすることもできる。
【0330】
<表示装置の構成例>
図34(A)は、外部電極としてFPC(Flexible Printed Circuit)224が接続された表示装置200の斜視図である。また、
図34(B)は、
図34(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図である。
【0331】
本実施の形態に示す表示装置200は、表示領域231、回路232、および回路233を有する。表示領域231は、複数の画素を有する。また、1つの画素は、電極215、EL層217、および電極218を含む発光素子225と、トランジスタ251と、を有する。トランジスタ251は発光素子225と電気的に接続される。トランジスタ251は、発光素子225の発光量を制御する機能を有する。また、表示装置200は端子電極216を有する。発光素子225は、例えば白色光を発する機能を有する。
【0332】
端子電極216は、異方性導電層223を介してFPC224と電気的に接続されている。また、端子電極216の一部は回路232および/または回路233と電気的に接続されている。なお、端子電極216は、電極112aおよび電極112bを形成するための導電層と同じ導電層を用いて形成される。
【0333】
回路232および回路233は、複数のトランジスタ252により構成されている。回路232および回路233は、FPC224を介して供給された信号を、表示領域231中のどの発光素子225に供給するかを決定する機能を有する。
【0334】
トランジスタ251およびトランジスタ252として、上記実施の形態に開示したトランジスタを用いることができる。例えば、トランジスタ100やトランジスタ150などを用いることができる。また、トランジスタ251およびトランジスタ252上に絶縁層113が形成され、絶縁層113上に電極215が形成されている。電極215は、絶縁層113に形成された開口においてトランジスタ251のドレイン電極と電気的に接続されている。また、電極215上に隔壁214が形成され、電極215および隔壁214上に、EL層217および電極218が形成されている。
【0335】
また、表示装置200は、接着層220を介して基板211と基板221が貼り合わされた構造を有する。
【0336】
また、基板211の一方の面は、接着層212を介して絶縁層102と隣接している。また、基板221の一方の面は、接着層244を介して絶縁層245と隣接している。また、基板221の一方の面には、絶縁層245を介して遮光層264が形成されている。また、基板221の一方の面には、絶縁層245を介して着色層266、オーバーコート層268が形成されている。
【0337】
着色層266は、発光素子225と重ねて設けられる。着色層266は、特定の波長域の光を透過する機能を有する。発光素子225が発する白色光は、着色層266を透過することで特定の波長域を有する光に変換される。例えば、赤の波長域の光を透過する着色層266を用いることで、該白色光を赤色光に変換することができる。また、緑の波長域の光を透過する着色層266を用いることで、該白色光を緑色光に変換することができる。また、青の波長域の光を透過する着色層266を用いることで、該白色光を青色光に変換することができる。
【0338】
このようにして、特定の波長域の光を発する画素が実現できる。また、赤色光を発する画素、緑色光を発する画素、および青色光を発する画素をまとめて1つの画素として機能させ、それぞれの画素の発光量を制御することで、フルカラー表示を実現することができる。よって、当該3つの画素は副画素として機能する。なお、3つの副画素が発する光の色は、赤、緑、青の組み合わせに限らず、黄、シアン、マゼンタであってもよい。
【0339】
また、4つの副画素をまとめて1つの画素として機能させてもよい。例えば、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ発する3つの副画素に、白色光を発する副画素を加えてもよい。白色光を制御する副画素を加えることで、表示領域の輝度を高めることができる。1つの画素として機能させる副画素の数を増やし、赤、緑、青、黄、シアン、およびマゼンタなどの光を発する副画素を適宜組み合わせて用いることにより、再現可能な色域を広げることができる。
【0340】
なお、発光素子225が発する光は白色に限定されない。例えば、赤色光を発する発光素子225、緑色光を発する発光素子225、および青色光を発する発光素子225などを用いることで、着色層266を省略することができる。
【0341】
また、赤色光を発する発光素子225に、赤の波長域の光を透過する着色層266を重ねて設けてもよい。また、緑色光を発する発光素子225に、緑の波長域の光を透過する着色層266を重ねて設けてもよい。また、青色光を発する発光素子225に、青の波長域の光を透過する着色層266を重ねて設けてもよい。発光素子225に着色層266を重ねて設けることで、外光の映りこみが軽減され、表示装置の表示品位を高めることができる。
【0342】
画素を1920×1080のマトリクス状に配置すると、いわゆるフルハイビジョン(「2K解像度」、「2K1K」、「2K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置200を実現することができる。また、例えば、画素を3840×2160のマトリクス状に配置すると、いわゆるウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、「4K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置200を実現することができる。また、例えば、画素を7680×4320のマトリクス状に配置すると、いわゆるスーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、「8K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置200を実現することができる。画素を増やすことで、16Kや32Kの解像度で表示可能な表示装置200を実現することも可能である。
【0343】
基板211および基板221としては、有機樹脂などの可撓性を有する材料などを用いることができる。表示装置200をボトムエミッション構造の表示装置、またはデュアルエミッション構造の表示装置とする場合には、基板211としてEL層217から射出される光を透過できる材料を用いる。また、表示装置200をトップエミッション構造の表示装置、またはデュアルエミッション構造の表示装置とする場合には、基板221としてEL層217から射出される光を透過できる材料を用いる。
【0344】
基板211および基板221の厚さは、5μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。また、基板211または基板221の一方、もしくは両方を、複数の層を含む積層基板としてもよい。
【0345】
基板211および基板221は、互いに同じ材料で同じ厚さとすることが好ましい。ただし、目的に応じて、互いに異なる材料や、異なる厚さとしてもよい。
【0346】
基板211および基板221に用いることができる、可撓性および可視光に対する透光性を有する材料の一例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがある。また、光を透過させる必要がない場合には、非透光性の基板を用いてもよい。例えば、基板221または基板211として、アルミニウムなどを用いてもよい。
【0347】
また、基板221および基板211の熱膨張係数は、好ましくは30ppm/K以下、さらに好ましくは10ppm/K以下とする。また、基板221および基板211の表面に、予め窒化シリコンや酸化窒化シリコン等の窒素と珪素を含む膜や窒化アルミニウム等の窒素とアルミニウムを含む膜のような透水性の低い保護膜を成膜しておいても良い。なお、基板221および基板211として、繊維体に有機樹脂が含浸された構造物(所謂、プリプレグとも言う)を用いてもよい。
【0348】
このような基板を用いることにより、割れにくい表示装置を提供することができる。または、軽量な表示装置を提供することができる。または、屈曲しやすい表示装置を提供することができる。
【0349】
<画素回路構成例>
次に、
図35を用いて、表示装置200のより具体的な構成例について説明する。
図35(A)は、表示装置200の構成を説明するためのブロック図である。表示装置200は、表示領域231、回路232、および回路233を有する。回路232は、例えば走査線駆動回路として機能する。また、回路233は、例えば信号線駆動回路として機能する。
【0350】
また、表示装置200は、各々が略平行に配設され、且つ、回路232によって電位が制御されるm本の走査線235と、各々が略平行に配設され、且つ、回路233によって電位が制御されるn本の信号線236と、を有する。さらに、表示領域231はm行n列のマトリクス状に配設された複数の画素230を有する。m、nは、ともに1以上の整数である。
【0351】
表示領域231において、各走査線235は、画素230のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素230と電気的に接続される。また、各信号線236は、画素230のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素230に電気的に接続される。
【0352】
また、回路232および回路233をまとめて駆動回路部という場合がある。画素230は、画素回路237および発光素子225を有する。画素回路237は発光素子225を駆動する回路である。駆動回路部が有するトランジスタは、画素回路237を構成するトランジスタと同時に形成することができる。すなわち、本明細書等に開示したトランジスタを用いて駆動回路部の一部または全体を画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0353】
また、駆動回路部の一部または全部を他の基板上に形成して、表示装置200と電気的に接続してもよい。例えば、駆動回路部の一部または全部を、単結晶基板を用いて形成し、表示装置200と電気的に接続してもよい。
【0354】
図35(B)および
図35(C)は、
図35(A)に示す表示装置の画素230に用いることができる回路構成を示している。
【0355】
〔発光表示装置用画素回路の一例〕
また、
図35(B)に示す画素回路237は、トランジスタ431と、容量素子438と、トランジスタ433と、トランジスタ434と、を有する。また、画素回路237は、表示素子として機能できる発光素子225と電気的に接続されている。
【0356】
トランジスタ431のソースおよびドレインの一方は、データ信号が与えられる配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ431のゲートは、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気的に接続される。
【0357】
トランジスタ431は、データ信号のノード435への書き込みを制御する機能を有する。
【0358】
容量素子438の一対の電極の一方は、ノード435に電気的に接続され、他方は、ノード437に電気的に接続される。また、トランジスタ431のソースおよびドレインの他方は、ノード435に電気的に接続される。
【0359】
容量素子438は、ノード435に書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0360】
トランジスタ433のソースおよびドレインの一方は、電位供給線VL_aに電気的に接続され、他方はノード437に電気的に接続される。さらに、トランジスタ433のゲートは、ノード435に電気的に接続される。
【0361】
トランジスタ434のソースおよびドレインの一方は、電位供給線V0に電気的に接続され、他方はノード437に電気的に接続される。さらに、トランジスタ434のゲートは、走査線GL_mに電気的に接続される。
【0362】
発光素子225のアノードおよびカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方は、ノード437に電気的に接続される。
【0363】
発光素子225としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう)などを用いることができる。ただし、発光素子225としては、これに限定されず、例えば無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0364】
なお、電源電位としては、例えば相対的に高電位側の電位または低電位側の電位を用いることができる。高電位側の電源電位を高電源電位(「VDD」ともいう)といい、低電位側の電源電位を低電源電位(「VSS」ともいう)という。また、接地電位を高電源電位または低電源電位として用いることもできる。例えば高電源電位が接地電位の場合には、低電源電位は接地電位より低い電位であり、低電源電位が接地電位の場合には、高電源電位は接地電位より高い電位である。
【0365】
例えば、電位供給線VL_aまたは電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0366】
図35(B)の画素回路237を有する表示装置では、回路232により各行の画素回路237を順次選択し、トランジスタ431、およびトランジスタ434をオン状態にしてデータ信号をノード435に書き込む。
【0367】
ノード435にデータ信号が書き込まれた画素回路237は、トランジスタ431、およびトランジスタ434がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、ノード435に書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ433のソースとドレインの間に流れる電流量が制御され、発光素子225は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0368】
〔液晶表示装置用画素回路の一例〕
図35(C)に示す画素回路237は、トランジスタ431と、容量素子438と、を有する。また、画素回路237は、表示素子として機能できる液晶素子432と電気的に接続されている。
【0369】
液晶素子432の一対の電極の一方の電位は、画素回路237の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子432は、ノード436に書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路237のそれぞれが有する液晶素子432の一対の電極の一方に、共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路237毎の液晶素子432の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0370】
液晶素子432を備える表示装置の駆動方法としては、例えば、TNモード、STNモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子およびその駆動方式として様々なものを用いることができる。
【0371】
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物により液晶素子432を構成してもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、かつ視野角依存性が小さい。
【0372】
m行n列目の画素回路237において、トランジスタ431のソースおよびドレインの一方は、信号線DL_nに電気的に接続され、他方はノード436に電気的に接続される。トランジスタ431のゲートは、走査線GL_mに電気的に接続される。トランジスタ431は、ノード436へのデータ信号の書き込みを制御する機能を有する。
【0373】
容量素子438の一対の電極の一方は、特定の電位が供給される配線(容量線CL)に電気的に接続され、他方は、ノード436に電気的に接続される。また、液晶素子432の一対の電極の他方はノード436に電気的に接続される。なお、容量線CLの電位の値は、画素回路237の仕様に応じて適宜設定される。容量素子438は、ノード436に書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0374】
例えば、
図35(C)の画素回路237を有する表示装置では、回路232により各行の画素回路237を順次選択し、トランジスタ431をオン状態にしてノード436にデータ信号を書き込む。
【0375】
ノード436にデータ信号が書き込まれた画素回路237は、トランジスタ431がオフ状態になることで保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、表示領域231に画像を表示できる。
【0376】
〔表示素子〕
本発明の一態様の表示装置は、様々な形態を用いること、または様々な表示素子を有することが出来る。表示素子の一例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物および無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャッター(DMS)、MIRASOL(登録商標)、インターフェロメトリック・モジュレーション(IMOD)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表示素子、など、電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体がある。また、表示素子として量子ドットを用いてもよい。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)または表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。量子ドットを用いた表示装置の一例としては、量子ドットディスプレイなどがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク、電子粉流体(登録商標)、または電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。また、表示装置はプラズマディスプレイパネル(PDP)であってもよい。また、表示装置は網膜走査型の投影装置であってもよい。
【0377】
なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0378】
なお、LEDを用いる場合、LEDの電極や窒化物半導体の下に、グラフェンやグラファイトを配置してもよい。グラフェンやグラファイトは、複数の層を重ねて、多層膜としてもよい。このように、グラフェンやグラファイトを設けることにより、その上に、窒化物半導体、例えば、結晶を有するn型GaN半導体層などを容易に成膜することができる。さらに、その上に、結晶を有するp型GaN半導体層などを設けて、LEDを構成することができる。なお、グラフェンやグラファイトと、結晶を有するn型GaN半導体層との間に、AlN層を設けてもよい。なお、LEDが有するGaN半導体層は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)で成膜してもよい。ただし、グラフェンを設けることにより、LEDが有するGaN半導体層は、スパッタ法で成膜することも可能である。
【0379】
<表示装置の作製方法例>
〔素子基板の作製〕
まず、基板101上に剥離層242を形成し、剥離層242上に絶縁層102を形成する(
図36(A)参照。)。以降は実施の形態1で説明した作製方法と同様に行い、絶縁層113まで形成する。本実施の形態では、剥離層242として、光を吸収して発熱することにより水素を放出する機能を有する層を用いる。このような層として、例えば、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)層を用いることができる。水素化アモルファスシリコン層は、例えばシラン(SiH
4)を含む成膜ガスを用いて、PECVD法により形成することができる。また、剥離層242として結晶性を有するシリコン層を用いてもよい。剥離層242に水素を多く含有させるため、剥離層242の形成後に水素を含む雰囲気下で加熱処理をしてもよい。
【0380】
剥離層242の厚さは、例えば、1nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0381】
絶縁層113まで形成した後、電極112bと重なる領域に開口129を形成する。また、絶縁層113に感光性を有する材料を用いることで、レジストマスクを用いることなく開口129を形成することができる。開口129の底部で電極112b表面の一部が露出する。
【0382】
次に、絶縁層113上に電極215を形成する(
図36(B)参照。)。電極215は、後に形成されるEL層217が発する光を効率よく反射する導電性材料を用いて形成することが好ましい。なお、電極215は単層に限らず、複数層の積層構造としてもよい。例えば、電極215を陽極として用いる場合、EL層217と接する層を、インジウム錫酸化物などのEL層217よりも仕事関数が大きく透光性を有する層とし、その層に接して反射率の高い層(アルミニウム、アルミニウムを含む合金、または銀など)を設けてもよい。
【0383】
電極215は、絶縁層113上に電極215となる導電層を形成し、該導電層上にレジストマスクを形成し、該導電層のレジストマスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成できる。該導電層のエッチングは、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、または双方を組み合わせたエッチング法を用いることができる。レジストマスクの形成は、フォトリソグラフィ法、印刷法、インクジェット法等を適宜用いて行うことができる。レジストマスクをインクジェット法で形成すると、フォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。電極215の形成後、レジストマスクを除去する。
【0384】
次に、隔壁214を形成する(
図36(C)参照。)。隔壁214は、隣接する画素の発光素子225が意図せず電気的に短絡し、誤発光することを防ぐために設ける。また、後述するEL層217の形成にメタルマスクを用いる場合、メタルマスクが電極215に接触しないようにする機能も有する。隔壁214は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂などの有機樹脂や、酸化シリコンなどの無機材料で形成することができる。隔壁214は、その側壁がテーパーまたは連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。隔壁214の側壁をこのような形状とすることで、後に形成されるEL層217や電極218の被覆性を良好なものとすることができる。
【0385】
次に、EL層217を形成する。なお、EL層217の構成については、実施の形態8で説明する。
【0386】
本実施の形態では電極218を陰極として用いるため、電極218をEL層217に電子を注入できる仕事関数の小さい材料を用いて形成することが好ましい。また、仕事関数の小さい金属単体ではなく、仕事関数の小さいアルカリ金属、またはアルカリ土類金属を数nm形成した層を緩衝層として形成し、その上にアルミニウムなどの金属材料、インジウム錫酸化物等の導電性を有する酸化物材料、または半導体材料を用いて形成してもよい。また、緩衝層として、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、または、マグネシウム−銀等の合金を用いることもできる。
【0387】
また、電極218を介して、EL層217が発する光を取り出す場合には、電極218は、可視光に対し透光性を有することが好ましい。電極215、EL層217、電極218により、発光素子225が形成される(
図36(D)参照。)。
【0388】
本実施の形態では、トランジスタおよび発光素子225が設けられた基板101を、素子基板271と呼ぶ。
【0389】
〔対向基板の作製〕
基板241上に剥離層243と絶縁層245を形成する(
図37(A)参照)。基板241としては、基板101と同様の材料を用いることができる。剥離層243は、剥離層242と同様の材料および方法で形成することができる。また、絶縁層245は、絶縁層102と同様の材料および方法で形成することができる。
【0390】
次に、絶縁層245上に、遮光層264を形成する(
図37(B)参照)。その後、着色層266を形成する(
図37(C)参照)。
【0391】
遮光層264および着色層266は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を用いて、それぞれ所望の位置に形成する。
【0392】
次に、遮光層264および着色層266上にオーバーコート層268を形成する(
図37(D)参照)。
【0393】
オーバーコート層268としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の有機絶縁層を用いることができる。オーバーコート層268を形成することによって、例えば、着色層266中に含まれる不純物等を発光素子225側に拡散することを抑制することができる。ただし、オーバーコート層268は、必ずしも設ける必要はなく、オーバーコート層268を形成しない構造としてもよい。
【0394】
また、オーバーコート層268として透光性を有する導電層を形成してもよい。オーバーコート層268として透光性を有する導電層を設けることで、発光素子225から発せられた光を透過し、かつ、イオン化した不純物の透過を防ぐことができる。
【0395】
透光性を有する導電層は、例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などを用いて形成することができる。また、グラフェン等の他、透光性を有する程度に薄く形成された金属層を用いてもよい。
【0396】
以上の工程で基板241上に着色層266などの構造物を設けることができる。本実施の形態では、着色層266などが設けられた基板241を、対向基板281と呼ぶ。
【0397】
〔素子基板と対向基板を貼り合わせる〕
次に、素子基板271が有する発光素子225と、対向基板281が有する着色層266が向かい合うように、素子基板271と対向基板281を、接着層220を介して貼り合わせる(
図38参照。)。
【0398】
接着層220としては、光硬化型の接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、または嫌気型接着剤を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂等を用いることができる。トップエミッション構造の場合は接着層220に光の波長以下の大きさの乾燥剤(ゼオライト等)や、屈折率の大きいフィラー(酸化チタンや、ジルコニウム等)を混合すると、EL層217が発する光の取り出し効率が向上するため好適である。
【0399】
次に、基板241を介して剥離層243にレーザ光272を照射する(
図39(A)参照。)。レーザ光272は、剥離層243の全ての剥離対象領域に同時に照射してもよい。また、当該剥離対象領域を複数の領域に分割し、分割された領域毎に、順にレーザ光272を照射してもよい。また、レーザ光272として線状のレーザ光を用いてもよい。
【0400】
レーザ光272の剥離対象領域の照射は、レーザ光272および/または基板241を相対的に移動させながら行ってもよい。例えば、レーザ光272として線状のレーザ光を用いる場合は、レーザ光272および/または基板241を、レーザ光272の短軸方向に沿って、相対的に移動させればよい。
【0401】
レーザ光272の照射により、剥離層243が加熱され、剥離層243から水素が放出される。このとき放出される水素は、ガス状となって放出される。放出されたガスは、剥離層243と絶縁層245の界面近傍、または剥離層243と基板241の界面近傍に留まる。その結果、特に、剥離層243と絶縁層245の密着性が低下し、基板241と剥離層243を、絶縁層245から容易に分離可能な状態とすることができる。
【0402】
また、剥離層243に含まれる水素の一部が、剥離層243中に留まる場合もある。そのため、剥離層243が脆化し、剥離層243の内部で分離しやすい状態となる場合がある。
【0403】
レーザ光272としては、少なくともその一部が、基板241を透過し、かつ剥離層243に吸収される波長の光を用いることが好ましい。また、レーザ光272は、絶縁層245に吸収される波長の光であることが好ましい。
【0404】
なお、絶縁層245がレーザ光272を一部吸収することがある。これにより、剥離層243を透過したレーザ光272がトランジスタ等の素子に照射され、素子の特性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0405】
レーザ光272は、可視光線から紫外線の波長領域の光であることが好ましい。例えば波長が200nm以上400nm以下の光、好ましくは波長が250nm以上350nm以下の光を用いることができる。特に、波長308nmのエキシマレーザを用いると、生産性に優れるため好ましい。エキシマレーザは、LTPS(Low Temperature Poly−Silicon)におけるレーザ結晶化にも用いるため、既存のLTPS製造ラインの装置を流用することができ、新たな設備投資を必要としないため好ましい。また、Nd:YAGレーザの第三高調波である波長355nmのUVレーザなどの固体UVレーザ(半導体UVレーザともいう)を用いてもよい。なお、固体レーザはガスを用いないため、エキシマレーザに比べて、ランニングコストを約1/3にでき、好ましい。また、ピコ秒レーザ等のパルスレーザーを用いてもよい。
【0406】
次に、基板241と剥離層243を、絶縁層245から分離する(
図39(B)参照。)。例えば、基板241に垂直方向に引っ張る力を与えることにより、基板241と剥離層243を絶縁層245から分離することができる。具体的には、基板241の上面の一部を吸着して、上方に引っ張ることにより、基板241と剥離層243を引き剥がすことができる。この時、基板241と絶縁層245との間に、刃物などの鋭利な形状の器具を差し込むことで分離の起点を形成することが好ましい。
【0407】
次に、接着層244を介して基板221を絶縁層245に貼り合わせる(
図40(A)参照。)。接着層244には、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤等の各種硬化型接着剤を用いることができる。また、接着シート等を用いてもよい。
【0408】
次に、基板101を介して剥離層242にレーザ光272を照射する(
図40(B)参照。)。レーザ光272は、剥離層242の全ての剥離対象領域に同時に照射してもよい。また、当該剥離対象領域を複数の領域に分割し、分割された領域毎に、順にレーザ光272を照射してもよい。また、レーザ光272として線状のレーザ光を用いてもよい。
【0409】
次に、基板101と剥離層242を、絶縁層245から分離する(
図41(A)参照。)。基板101と剥離層242の絶縁層245からの分離は、前述した基板241と剥離層243を絶縁層245から分離する場合と同様に行うことができる。
【0410】
次に、接着層212を介して基板211を絶縁層245に貼り合わせる(
図41(B)参照。)。接着層212は、接着層244と同様の材料を用いればよい。基板211は、基板221と同様の材料を用いればよい。
【0411】
次に、端子電極216を露出させるため、絶縁層113、接着層220、オーバーコート層268、着色層266、絶縁層245、接着層244、および基板221のそれぞれの一部を除去する(
図42(A)参照。)。
【0412】
次に、FPC224を、異方性導電層223を介して端子電極216と電気的に接続する(
図42(B)参照。)。このようにして、FPC224が接続された表示装置200を作製することができる。
【0413】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0414】
(実施の形態6)
本実施の形態では、表示装置の他の一例について説明する。なお、説明の繰り返しを防ぐため、本実施の形態では、主に上記実施の形態と異なる部分について説明する。本実施の形態に説明の無い部分については、他の実施の形態などを参照すればよい。
【0415】
図43(A)乃至(C)に、本実施の形態に係る表示装置の平面図を示す。
図43(A)において、表示領域231を囲むようにして、シール材4005が設けられている。また、基板211および基板221は、シール材4005を介して互いに重なる領域を有する。また、基板211および基板221は、表示領域231を介して互いに重なる領域を有する。
【0416】
図43(A)に示す表示装置では、基板211上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体または多結晶半導体で形成された、回路232および回路233が実装されている。回路232は、例えば信号線駆動回路として機能する。回路233は、例えば走査線駆動回路として機能する。
【0417】
また、回路232、回路233、または表示領域231に与えられる各種信号および電位は、FPC224a、FPC224bから供給される。
【0418】
図43(B)および
図43(C)において、基板211上に設けられた表示領域231と、回路233とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また、基板211および基板221は、シール材4005を介して互いに重なる領域を有する。また、基板211および基板221は、表示領域231を介して互いに重なる領域を有する。また、基板211および基板221は、回路233を介して互いに重なる領域を有する。
【0419】
表示領域231と、回路233は、基板211とシール材4005と基板221とによって、表示素子と共に封止されている。
図43(B)および
図43(C)においては、基板211上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体または多結晶半導体で形成された、回路232が実装されている。
【0420】
図43(A)では、表示領域231とFPC224aの間の基板211上に、回路232が実装されている。また、表示領域231とFPC224bの間の基板211上に、回路233が実装されている。
図43(B)では、表示領域231とFPC224の間の基板211上に、回路232が実装されている。また、
図43(C)では、FPC224上に回路232が実装されている。
【0421】
また
図43(B)および
図43(C)においては、回路232を別途形成し、基板211またはFPC224に実装している例を示しているが、本発明の一態様はこの構成に限定されない。例えば、回路232を構成する回路の一部を基板211上のシール材4005によって囲まれている領域に設けてもよい。また、例えば、回路232を構成する回路の一部をFPC224に設けてもよい。
【0422】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、ワイヤボンディング、COG(Chip On Glass)、TCP(Tape Carrier Package)、COF(Chip On Film)などを用いることができる。
図43(A)は、COGにより回路232および回路233を実装する例であり、
図43(B)は、COGにより回路232を実装する例であり、
図43(C)は、TCPにより回路232を実装する例である。
【0423】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む場合がある。
【0424】
図44に、一つの画素にEL素子と液晶素子を有する表示装置の断面構成例を示す。なお、説明の繰り返しを防ぐため、主に
図34(A)および
図34(B)に示した表示装置と異なる部分について説明する。
図44は、
図43(B)中でN1−N2の一点鎖線で示した部位の断面構成を示す断面図である。
図44に示す表示装置は電極4015を有しており、電極4015はFPC224が有する端子と異方性導電層223を介して、電気的に接続されている。また、電極4015は、絶縁層4101、絶縁層4102、絶縁層102、および絶縁層103に設けられた開口において配線4014と電気的に接続されている。
【0425】
電極4015は、電極4131と同じ導電層から形成され、配線4014は、トランジスタ251a、トランジスタ251b、およびトランジスタ252の電極104を形成するための導電層と同じ導電層で形成されている。
【0426】
図44では、表示領域231に含まれるトランジスタ251aおよびトランジスタ251bと、回路233に含まれるトランジスタ252を示している。
図44に示す表示装置は、絶縁層102上にトランジスタ251a、トランジスタ251b、トランジスタ252、容量素子4020a、および容量素子4020bを有する。トランジスタ251a、およびトランジスタ251bは、トランジスタ251と同様の構成を有する。また、容量素子4020aは、トランジスタ251aの、電極112aまたは電極112bの一方の一部と、電極4021が、絶縁層を介して互いに重なる領域を有する。電極4021は、トランジスタ251aの電極104と同じ導電層で形成されている。容量素子4020bは、容量素子4020aと同様の構成を有する。トランジスタ251aは発光素子225を駆動する機能を有し、トランジスタ251bは液晶素子4013を駆動する機能を有する。
【0427】
また、
図44に示す表示装置は、絶縁層102の下方に絶縁層4102を有する。また、絶縁層4102の下方に反射電極4130、絶縁層4101、電極4131、配向膜4032、液晶層4008、配向膜4033、スペーサ4035、電極4031、オーバーコート層268、着色層266、基板211、および偏光板4134を有する。
【0428】
液晶素子4013は、電極4131、電極4031、および液晶層4008を含む。なお、
図44に示す表示装置では、液晶層4008を挟持するように配向膜4032、および配向膜4033が設けられている。電極4131と電極4031は液晶層4008を介して互いに重畳する領域を有する。また、電極4131は反射電極4130と重なる領域を有する。また、電極4131は反射電極4130を介してトランジスタ251bのソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。
【0429】
またスペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、電極4131と電極4031との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお、スペーサ4035として球状のスペーサを用いていても良い。
【0430】
図44に示す表示装置は、ボトムエミッション構造の発光表示装置としての機能と、反射型の液晶表示装置としての機能を有する。
図44に示す表示装置では、着色層266、遮光層264、およびオーバーコート層268を基板211側に設けている。
【0431】
発光素子225で発生した光4520は、基板211側から射出される。また、基板211側から入射した光4521は、反射電極4130で反射され、基板211側から射出される。なお、光4521は着色層266を透過する際に特定の波長域が吸収され、光4521とは異なる波長域を有する光4522となる。ただし、入射する光4521の波長域が、着色層266が透過する波長域よりも内側にあれば、光4522の波長域は光4521とほぼ変わらない。
【0432】
絶縁層4101および絶縁層4102は、絶縁層103などと同様の材料および方法で形成することができる。反射電極4130、電極4131、および電極4031は、電極104などと同様の材料および方法で形成することができる。ただし、
図44に示す表示装置では、反射電極4130を光の反射率の高い導電性材料で形成し、電極4131、および電極4031を、透光性を有する導電性材料で形成する。
【0433】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0434】
(実施の形態7)
本実施の形態では、上述したトランジスタを使用した半導体装置の一例として、表示モジュールについて説明する。
図45に示す表示モジュール6000は、上部カバー6001と下部カバー6002との間に、FPC6003に接続されたタッチセンサ6004、FPC6005に接続された表示パネル6006、バックライトユニット6007、フレーム6009、プリント基板6010、バッテリ6011を有する。なお、バックライトユニット6007、バッテリ6011、タッチセンサ6004などは、設けられない場合もある。
【0435】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、タッチセンサ6004、表示パネル6006、プリント基板6010に実装された集積回路などに用いることができる。例えば、表示パネル6006に前述した表示装置を用いることができる。
【0436】
上部カバー6001および下部カバー6002は、タッチセンサ6004や表示パネル6006などのサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0437】
タッチセンサ6004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチセンサを表示パネル6006に重畳して用いることができる。表示パネル6006にタッチセンサの機能を付加することも可能である。例えば、表示パネル6006の各画素内にタッチセンサ用電極を設け、静電容量方式のタッチセンサ機能を付加することなども可能である。または、表示パネル6006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチセンサの機能を付加することなども可能である。また、タッチセンサ6004を設ける必要が無い場合は、タッチセンサ6004を省略することができる。
【0438】
バックライトユニット6007は、光源6008を有する。光源6008をバックライトユニット6007の端部に設け、光拡散板を用いる構成としてもよい。また、表示パネル6006に発光表示装置などを用いる場合は、バックライトユニット6007を省略することができる。
【0439】
フレーム6009は、表示パネル6006の保護機能の他、プリント基板6010側から発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。また、フレーム6009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0440】
プリント基板6010は、電源回路、ビデオ信号およびクロック信号を出力するための信号処理回路などを有する。電源回路に電力を供給する電源としては、バッテリ6011であってもよいし、商用電源であってもよい。なお、電源として商用電源を用いる場合には、バッテリ6011を省略することができる。
【0441】
また、表示モジュール6000に、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
【0442】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0443】
(実施の形態8)
本実施の形態では、発光素子225に用いることができる発光素子の構成例について説明する。なお、本実施の形態に示すEL層320が、他の実施の形態に示したEL層217に相当する。
【0444】
<発光素子の構成>
図46(A)に示す発光素子330は、一対の電極(電極318、電極322)間にEL層320が挟まれた構造を有する。なお、以下の本実施の形態の説明においては、例として、電極318を陽極として用い、電極322を陰極として用いるものとする。
【0445】
また、EL層320は、少なくとも発光層を含んで形成されていればよく、発光層以外の機能層を含む積層構造であっても良い。発光層以外の機能層としては、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、バイポーラ性(電子および正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層を用いることができる。具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の機能層を適宜組み合わせて用いることができる。
【0446】
図46(A)に示す発光素子330は、電極318と電極322との間に与えられた電位差により電流が流れ、EL層320において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまりEL層320に発光領域が形成されるような構成となっている。
【0447】
本発明において、発光素子330からの発光は、電極318、または電極322側から外部に取り出される。従って、電極318、または電極322のいずれか一方は透光性を有する物質で成る。
【0448】
なお、EL層320は
図46(B)に示す発光素子331のように、電極318と電極322との間に複数積層されていても良い。n層(nは2以上の自然数)の積層構造を有する場合には、m番目(mは、1≦m<nを満たす自然数)のEL層320と、(m+1)番目のEL層320との間には、それぞれ電荷発生層320aを設けることが好ましい。
【0449】
電荷発生層320aは、有機化合物と金属酸化物の複合材料、金属酸化物、有機化合物とアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物との複合材料の他、これらを適宜組み合わせて形成することができる。有機化合物と金属酸化物の複合材料としては、例えば、有機化合物と酸化バナジウムや酸化モリブデンや酸化タングステン等の金属酸化物を含む。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素等の低分子化合物、または、それらの低分子化合物のオリゴマー、デンドリマー、ポリマー等、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10
−6cm
2/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、電荷発生層320aに用いるこれらの材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、発光素子331の低電流駆動、および低電圧駆動を実現することができる。
【0450】
なお、電荷発生層320aは、有機化合物と金属酸化物の複合材料と他の材料とを組み合わせて形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
【0451】
このような構成を有する発光素子331は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方の発光層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。
【0452】
なお、電荷発生層320aとは、電極318と電極322に電圧を印加したときに、電荷発生層320aに接して形成される一方のEL層320に対して正孔を注入する機能を有し、他方のEL層320に電子を注入する機能を有する。
【0453】
図46(B)に示す発光素子331は、EL層320に用いる発光物質の種類を変えることにより様々な発光色を得ることができる。また、発光物質として発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、ブロードなスペクトルの発光や白色発光を得ることもできる。
【0454】
図46(B)に示す発光素子331を用いて、白色発光を得る場合、複数のEL層の組み合わせとしては、赤、青および緑色の光を含んで白色に発光する構成であればよく、例えば、青色の蛍光材料を発光物質として含む発光層と、緑色と赤色の燐光材料を発光物質として含む発光層を有する構成が挙げられる。また、赤色の発光を示す発光層と、緑色の発光を示す発光層と、青色の発光を示す発光層とを有する構成とすることもできる。または、補色の関係にある光を発する発光層を有する構成であっても白色発光が得られる。発光層が2層積層された積層型素子において、発光層から得られる発光の発光色と別の発光層から得られる発光の発光色を補色の関係にする場合、補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。
【0455】
なお、上述した積層型素子の構成において、積層される発光層の間に電荷発生層を配置することにより、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での長寿命素子を実現することができる。また、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一な発光が可能となる。
【0456】
また、発光素子330または発光素子331を、EL層320から発する光を共振させる微小光共振器(「マイクロキャビティ」ともいう)構造とすることで、異なる発光素子330または異なる発光素子331で同じEL層320を用いても、異なる波長の光を狭線化して取り出すことができる。本実施の形態に示した発光素子330および発光素子331は、発光素子225に用いることができる。
【0457】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0458】
(実施の形態9)
本発明の一態様に係るトランジスタおよび/または半導体装置は、様々な電子機器に用いることができる。
図47および
図48に、本発明の一態様に係るトランジスタおよび/または半導体装置を用いた電子機器の例を示す。
【0459】
本発明の一態様に係る半導体装置を用いた電子機器として、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、タブレット型端末、パチンコ機などの大型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍端末、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナー、加湿器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソーなどの工具、煙感知器、透析装置などの医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置などの産業機器が挙げられる。
【0460】
また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電子機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
【0461】
図47(A)乃至
図47(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0462】
図47(A)乃至
図47(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図47(A)乃至
図47(G)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。また、
図47(A)乃至
図47(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0463】
図47(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9100は、大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0464】
図47(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えば電話機、手帳または情報閲覧装置等から選ばれた一つまたは複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0465】
図47(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信した電話の発信者の電話番号または氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0466】
図47(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧および作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0467】
図47(E)、
図47(F)、および
図47(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、
図47(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、
図47(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、
図47(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0468】
次に、
図47(A)乃至
図47(G)に示す電子機器と異なる電子機器の一例を
図48(A)、
図48(B)に示す。
図48(A)、
図48(B)は、複数の表示パネルを有する表示装置の斜視図である。なお、
図48(A)は、複数の表示パネルが巻き取られた形態の斜視図であり、
図48(B)は、複数の表示パネルが展開された状態の斜視図である。
【0469】
図48(A)、
図48(B)に示す表示装置9500は、複数の表示パネル9501と、軸部9511と、軸受部9512と、を有する。また、複数の表示パネル9501は、表示領域9502と、透光性を有する領域9503と、を有する。
【0470】
また、複数の表示パネル9501は、可撓性を有する。また、隣接する2つの表示パネル9501は、それらの一部が互いに重なるように設けられる。例えば、隣接する2つの表示パネル9501の透光性を有する領域9503を重ね合わせることができる。複数の表示パネル9501を用いることで、大画面の表示装置とすることができる。また、使用状況に応じて、表示パネル9501を巻き取ることが可能であるため、汎用性に優れた表示装置とすることができる。
【0471】
また、
図48(A)、
図48(B)では、隣接する2つの表示パネル9501のそれぞれの表示領域9502が重ならないように設ける状態を図示しているが、これに限定されず、例えば、隣接する2つの表示パネル9501のそれぞれの表示領域9502を隙間なく重ねあわせることで、連続した表示領域9502としてもよい。
【0472】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。