(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986867
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】内視鏡の構成部品及び内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20211213BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20211213BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
A61B1/00 715
G02B23/24 A
B29C45/14
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-118445(P2017-118445)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2019-430(P2019-430A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭
【審査官】
佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/013787(WO,A1)
【文献】
特開2014−236833(JP,A)
【文献】
特開2004−305770(JP,A)
【文献】
特開平10−028669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
B29C 39/18
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型にインサート品が装填された後、前記金型に溶融された樹脂が注入されて固化されることにより、前記インサート品と前記樹脂とが一体化された内視鏡の構成部品において、
前記インサート品に設けられるとともに前記金型に対して前記樹脂が注入される方向となる前記インサート品の第1方向に沿って延在された、内周に前記樹脂が注入された第1貫通孔と、
前記インサート品に設けられるとともに、前記第1貫通孔に対して前記第1方向と交わる第2方向に沿って連結された第2貫通孔と、
前記インサート品における前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との連結部に前記第1方向に沿って設けられ、前記第1貫通孔よりも大径に形成された柱状の穴と、
前記柱状の穴の前記第1貫通孔側に設けられ、前記第1貫通孔の前記内周と前記柱状の穴の内周とを前記第2方向に沿って接続するフランジ面と、
を具備し、
前記インサート品の前記柱状の穴側から前記第1貫通孔に挿通される前記金型の柱状部位に、前記第1貫通孔側の端面が前記第1貫通孔の全周に亘って前記フランジ面に当接する太径部が設けられていることにより、前記第1貫通孔の前記内周に注入された前記樹脂は、前記第1方向において前記フランジ面と同じ面上で堰き止められていることを特徴とする内視鏡の構成部品。
【請求項2】
前記第1貫通孔の前記内周に注入された前記樹脂は、前記第1貫通孔の内周面に沿って存在している状態であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の構成部品。
【請求項3】
内視鏡の挿入部の先端に設けられる先端硬質部を構成する部品であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の構成部品。
【請求項4】
前記太径部の前記第1貫通孔側の前記端面が前記フランジ面に当接していることにより、前記柱状の穴及び前記第2貫通孔への前記樹脂の進入が防がれていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の構成部品。
【請求項5】
前記第1貫通孔及び前記柱状の穴は複数から構成されており、
前記第2貫通孔は、各前記第1貫通孔に対して各前記柱状の穴を介してそれぞれ連結されるよう複数から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の構成部品。
【請求項6】
前記第1貫通孔及び前記柱状の穴は1つから構成されており、
前記第2貫通孔は、前記第1貫通孔に対して前記柱状の穴を介してそれぞれ連結されるよう複数から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の構成部品。
【請求項7】
請求項1に記載の内視鏡の構成部品を備えたことを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型にインサート品が装填された後、金型に溶融された樹脂が注入されて固化されることにより、インサート品と樹脂とが一体化された内視鏡の構成部品
及び内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内に挿入される内視鏡は、医療分野及び工業用分野において広く利用されている。内視鏡は、細長い挿入部を被検体内に挿入することによって、被検体内を観察することができる。
【0003】
また、内視鏡の挿入部の先端側に設けられた先端部内における内視鏡の構成部品である先端硬質部を構成する部品(以下、先端硬質部材と称す)の外周面及び先端面の一部は、先端カバーに覆われている。
【0004】
さらに、先端硬質部材において挿入部の延在方向に略等しい第1方向に沿って貫通するよう形成された1つまたは複数の配置孔に、撮像ユニットや照明ユニット、流体供給管路等の内蔵物が固定されている。
【0005】
尚、配置孔に対して、先端硬質部材の内蔵物は、第1方向と交わる第2方向に沿って、先端硬質部材の外周面から配置孔まで形成されたネジ孔に螺合されたネジにより固定されている。
【0006】
ここで、先端硬質部材は、金属から削り出しによって形成された構成が周知であるが、先端硬質部材が小型化するとともに形状が複雑化するほど、削り出しでは形成が難しくなってしまうばかりか形成コストが高くなってしまうといった問題があった。
【0007】
尚、先端硬質部材が、樹脂のみにより射出成形された構成も周知であるが、樹脂のみから形成すると先端硬質部材の強度を十分に確保することが出来ないといった問題があった。
【0008】
このような問題に鑑み、特許文献1には、金型にインサート品となる金属部品が装填された後、金型に溶融された樹脂が注入されて固化されることにより、即ち、金型を用いて金属部品へ樹脂をインサート成形することにより、複雑な形状かつ小型化を図っても、容易かつ安価に形成することができる金属部品と樹脂とが一体化された先端硬質部材の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2014/013787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6は、従来の先端硬質部材をインサート成形する際の、下側金型、金属部品、上側金型、射出成形ノズルを分解して示す斜視図、
図7は、
図6の下側金型及び上側金型に金属部分を装填し、射出成形ノズルから溶融された樹脂を注入する様子を示す斜視図である。
【0011】
また、
図8は、インサート成形後の先端硬質部材を示す斜視図、
図9は、
図8中のIX-IX線に沿う金属部品及び樹脂の断面図、
図10は、
図7中のX-X線に沿う下側金型、金属部品、樹脂の断面図である。
【0012】
特許文献1に開示されているような金属部品上に樹脂が一体化された先端硬質部材をインサート成形する際には、先ず、
図6に示すように、下側金型162と、金属部品180と、上側金型161とを用意する。
【0013】
下側金型162は、各金型162、161への樹脂が注入される方向と平行な第1方向Zに沿って下側金型162から起立する複数の柱状部位である金型ピン163と、該各金型ピン163の下側金型162側の根元にそれぞれ設けられた段部165とを具備して主要部が構成されている。
【0014】
金属部品180に、第1方向Zに沿って金型ピン163が遊嵌状態で貫通される第1貫通孔181が複数形成されており、さらに、第1方向Zと交わる、例えば直交する第2方向X、Yに沿って、金属部品180の外周から各第1貫通孔181に連通する複数の第2貫通孔182が形成されている。尚、第2貫通孔182は、ネジ孔として機能する。
【0015】
上側金型161は、下側金型162との間に
図7に示すように、各第1貫通孔181に各金型ピン163が貫通された金属部品180を第1方向Zに沿って挟む込む樹脂成形空間161cを有しており、樹脂成形空間161cに、射出成形ノズル170から溶融された樹脂190が注入可能となっている。
【0016】
尚、樹脂成形空間161cの第2方向X、Yにおける外形の大きさ、形状は、金属部品180の第2方向X、Yにおける外形の大きさ、形状に等しく形成されている。即ち、金属部品180は、樹脂成形空間161cに緊密に嵌入する。
【0017】
よって、
図8に示すような金属部品180上に樹脂190が一体化された先端硬質部材200を形成する際には、
図7に示すように、金属部品180の各第1貫通孔181に、各金型ピン163が第1方向Zに沿って貫通するようセットした後、下側金型162との間に金属部品180を第1方向Zに沿って挟み込むように、上側金型161をセットして型締めする。
【0018】
この際、
図10に示すように、第2方向X、Yにおいてそれぞれ異なる方向を指向する各段部165は、各第1貫通孔181の内周181nに当接されるとともに、第2方向X、Yにおいてそれぞれ異なる方向を指向する各第2貫通孔182を塞ぐ。
【0019】
その後、樹脂成形空間161c内に、射出成形ノズル170から溶融された樹脂190が注入されると、金属部品180上及び第1貫通孔181の内周181nにおける各金型ピン163、段部165の周りに、樹脂190が位置し固化される。
【0020】
この際、上述したように、各段部165が各第1貫通孔181の内周181nに当接して第2貫通孔182を塞いでいるため、樹脂190が第2貫通孔182に流れ込んでしまうことが防がれている。
【0021】
その結果、
図9に示すように、インサート成形後の各第1貫通孔181には、各段部165を除いたC字状の樹脂190がそれぞれ形成される。
【0022】
最後に、上側金型161、下側金型162を取り外すと、
図8に示すように、第1方向Zに沿って複数の内蔵物が配置される配置孔210が樹脂190に複数形成され、第2方向X、Yに沿って複数のネジ孔182を有する、金属部品180と樹脂190とが一体化された先端硬質部材200がインサート成形される。尚、各配置孔210の径は、各金型ピン163の径に等しく形成される。
【0023】
しかしながら、このインサート成形方法では、各第2貫通孔182が各第1貫通孔181に連通するよう金属部品180に複数形成された構成においては、上述した
図10に示したように、第2貫通孔182に樹脂190が流れて込んでしまうことがないよう、第2方向X、Yにおいてそれぞれ異なる方向を指向する各段部165の全てを各内周181nに位置精度良く当接させなければならない。
【0024】
即ち、各段部165の第2方向X、Yにおける成形精度や各内周181nの成形精度が悪いと、各段部165と内周181nとの間に隙間が出来てしまい、第2貫通孔182に樹脂190が流れ込んでしまったり、第1貫通孔181の内周181nに段部165が引っ掛かってしまい金型ピン163が第1貫通孔181を貫通出来なくなってしまったりするといった問題があった。
【0025】
尚、以上の問題は、各段部165、各第1貫通孔181、各第2貫通孔182が複数形成されているからこそ発生する問題である。さらに、第1貫通孔181や金型ピン163が1つであっても、段部165及び1つの第1貫通孔181に連通する第2貫通孔182が複数から構成されている場合には、同様の問題が生じる。
【0026】
よって、各段部165を有する下側金型162や、金属部品180を精度良く成形しなければならず、先端硬質部材200を安価に成形することが出来ないといった問題があった。
【0027】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、安価かつ容易に第2貫通孔に第1貫通孔から樹脂が流れ込むことが防止されたインサート品と樹脂とが一体化された構成を具備する内視鏡の構成部品
及び内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するため本発明の一態様における内視鏡の構成部品は、金型にインサート品が装填された後、前記金型に溶融された樹脂が注入されて固化されることにより、前記インサート品と前記樹脂とが一体化された内視鏡の構成部品において、前記インサート品に設けられるとともに前記金型に対して前記樹脂が注入される方向となる前記インサート品の第1方向に沿って延在された、内周に前記樹脂が注入された第1貫通孔と、前記インサート品に設けられるとともに、前記第1貫通孔に対して前記第1方向と交わる第2方向に沿って連結された第2貫通孔と、前記インサート品における前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との連結部に前記第1方向に沿って設けられ、前記第1貫通孔よりも大径に形成された柱状の穴と、前記柱状の穴の前記第1貫通孔側に設けられ、前記第1貫通孔の前記内周と前記柱状の穴の内周とを前記第2方向に沿って接続するフランジ面と、を具備し、
前記インサート品の前記柱状の穴側から前記第1貫通孔に挿通される前記金型の柱状部位に、前記第1貫通孔側の端面が前記第1貫通孔の全周に亘って前記フランジ面に当接する太径部が設けられていることにより、前記第1貫通孔の前記内周に注入された前記樹脂は、前記第1方向において前記フランジ面と同じ面上で堰き止められている。
また、本発明の一態様における内視鏡は、前記内視鏡の構成部品を備えている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、安価かつ容易に第2貫通孔に第1貫通孔から樹脂が流れ込むことが防止されたインサート品と樹脂とが一体化された構成を具備する内視鏡の構成部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施の形態の先端硬質部材を挿入部の先端部に具備する内視鏡を示す図
【
図3】
図2の先端硬質部材をインサート成形する際の、下側金型、金属部品、上側金型、射出成形ノズルを分解して示す斜視図
【
図4】
図3の下側金型及び上側金型に金属部分を装填し、射出成形ノズルから溶融された樹脂を注入する様子を示す斜視図
【
図5】
図4中のV-V線に沿う下側金型、金属部品、樹脂の断面図
【
図6】従来の先端硬質部材をインサート成形する際の、下側金型、金属部品、上側金型、射出成形ノズルを分解して示す斜視図
【
図7】
図6の下側金型及び上側金型に金属部分を装填し、射出成形ノズルから溶融された樹脂を注入する様子を示す斜視図
【
図8】インサート成形後の先端硬質部材を示す斜視図
【
図9】
図8中のIX-IX線に沿う金属部品及び樹脂の断面図
【
図10】
図7中のX-X線に沿う下側金型、金属部品、樹脂の断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、以下に示す実施の形態において、内視鏡の構成部品は、先端硬質部材を例に挙げて説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態の先端硬質部材を挿入部の先端部に具備する内視鏡を示す図、
図2は、本実施の形態の先端硬質部材を示す斜視図である。
【0033】
図1に示すように、内視鏡1は、被検体内に挿入される挿入部2と、該挿入部2の基端側に連設された操作部3と、該操作部3から延出されたユニバーサルコード8と、該ユニバーサルコード8の延出端に設けられたコネクタ9とを具備して主要部が構成されている。尚、コネクタ9を介して、内視鏡1は、制御装置や照明装置等の外部装置と電気的に接続される。
【0034】
挿入部2は、先端側から順に、先端部11と湾曲部12と可撓管部13とを具備して構成されており細長に形成されている。
【0035】
湾曲部12は、湾曲操作に伴い、例えば上下左右の4方向に湾曲されることにより、先端部11内に設けられた図示しない撮像ユニットの観察方向を可変したり、被検体内における先端部11の挿入性を向上させたりするものである。さらに、可撓管部13は、湾曲部12の基端側に連設されている。
【0036】
また、先端部11内には、
図2に示すように、先端硬質部材100が設けられている。先端硬質部材100は、インサート品である金属部品80と、樹脂90とから構成されている。
【0037】
具体的には、先端硬質部材100は、後述する下側金型62、上側金型61(
図3参照)に金属部品80が装填された後、後述する樹脂成形空間61c(
図3参照)に溶融された樹脂90が注入されて固化されることにより、金属部品80上に樹脂90が一体化されてインサート成形されている。
【0038】
樹脂90に、樹脂成形空間61c(
図3参照)に樹脂90が注入される方向に平行な第1方向Zに沿って、撮像ユニットや照明ユニット、流体供給管路等の複数の内蔵物が配置される配置孔110が複数、例えば3つ形成されている。
【0039】
また、金属部品80に、第1方向Zと交わる、例えば直交する第2方向X、Yに沿って、金属部品80の外周80gから各第1貫通孔81に連通する複数の第2貫通孔82が、第2方向X、Yにおけるそれぞれ異なる方向に沿って、例えば3つ形成されている(
図2では、第2貫通孔82は1つのみ図示)。尚、第2貫通孔82は、ネジ孔として機能する。また、第2貫通孔82は、複数であれば、3つに限定されない。
【0040】
次に、先端硬質部材100のインサート成形方法について、上述した
図2とともに、
図3〜
図5を用いて説明する。
【0041】
図3は、
図2の先端硬質部材をインサート成形する際の、下側金型、金属部品、上側金型、射出成形ノズルを分解して示す斜視図、
図4は、
図3の下側金型及び上側金型に金属部分を装填し、射出成形ノズルから溶融された樹脂を注入する様子を示す斜視図、
図5は、
図4中のV-V線に沿う下側金型、金属部品、樹脂の断面図である。
【0042】
図2に示すような先端硬質部材100をインサート成形する際には、先ず、
図3に示すように、上側金型61及び下側金型62と、上述した金属部品80とを用意する。
【0043】
金属部品80に、第1方向Zに沿って下側金型62の各金型ピン63が遊嵌状態で貫通される第1貫通孔81が複数、例えば3つ形成されており、さらに、第2方向X、Yに沿って、各第1貫通孔81に連結される複数、例えば3つの上述した第2貫通孔82が形成されている。
【0044】
また、
図5に示すように、金属部品80における各第1貫通孔81と各第2貫通孔82との連結部に、第1方向Zに沿って第1貫通孔81よりも大径な柱状の穴85がそれぞれ形成されている。
【0045】
さらに、金属部品80における各柱状の穴85の第1方向Zにおける第1貫通孔81側に、第1貫通孔81の内周81nと柱状の穴85の内周85nとを第2方向X、Yに沿って接続するフランジ面80fがそれぞれ形成されている。
【0046】
即ち、フランジ面80fは、第2貫通孔82よりも第1方向Zにおける樹脂90の注入方向の上流側、即ち、第1貫通孔81側に形成されている。
【0047】
上側金型61は、下側金型62との間に
図4に示すように、各第1貫通孔81に各金型ピン63が貫通された金属部品80を第1方向Zに沿って挟む込む樹脂成形空間61cを有しており、樹脂成形空間61cに、射出成形ノズル70から溶融された樹脂90が注入可能となっている。
【0048】
尚、樹脂成形空間61cの第2方向X、Yにおける外形の大きさ、形状は、金属部品80の第2方向X、Yにおける外形の大きさ、形状に等しく形成されている。即ち、金属部品80は、樹脂成形空間61cに緊密に嵌入する。
【0049】
下側金型62は、第1方向Zに沿って下側金型162から起立する複数、例えば3本の柱状部位である金型ピン63と、該各金型ピン63の下側金型62側の根元にそれぞれ設けられた太径部64とを具備して主要部が構成されている。
【0050】
尚、金型ピン63、太径部64の本数は、3本に限定されない。また、金型ピン63、太径部64は、円柱状に形成されており、太径部64は、金型ピン63よりも大径に形成されているとともに、柱状の穴85より小径に形成されている。さらに、各金型ピン163は、形成される各配置孔110の径に等しく形成されている。
【0051】
各金型ピン63は、下側金型62に対して金属部品80がセットされた際、
図4、
図5に示すように、各第1貫通孔81に対して、各柱状の穴85側から第1方向Zに沿って遊嵌状態で貫通される。
【0052】
また、各太径部64は、下側金型62に対して金属部品80がセットされた際、
図5に示すように、柱状の穴85に対して嵌入される。
【0053】
さらに、各太径部64は、下側金型62に対して金属部品80がセットされた際、
図5に示すように、第1貫通孔81側の端面64tが第1貫通孔81の全周に亘ってフランジ面80fに当接される。
【0054】
よって、
図2に示すような金属部品80上に樹脂90が一体化された先端硬質部材100を形成する際には、
図4に示すように、金属部品80の各第1貫通孔81に、各金型ピン63を第1方向Zに沿って貫通させるとともに各柱状の穴85に、各太径部64を嵌入させるようセットした後、下側金型62との間に金属部品80を第1方向Zに沿って挟み込むように、上側金型61をセットして型締めする。
【0055】
この際、
図5に示すように各太径部64の端面64tは、各フランジ面80fに当接する。
【0056】
その後、樹脂成形空間61c内に、射出成形ノズル70から溶融された樹脂90が注入されると、金属部品80上及び第1貫通孔81の内周81nにおける各金型ピン63の周りに、樹脂90が位置し固化される。
【0057】
この際、上述したように、各端面64tが各フランジ面80fに周状に当接しているため、第1貫通孔81の内周81n内に注入された樹脂90は、第1方向Zにおいてフランジ面80fと同じ面上で堰き止められている。即ち、樹脂90は、第1方向Zにおいて第2貫通孔82よりも上流側で堰き止められている。
【0058】
このことにより、樹脂90が第2貫通孔82に流れ込んで進入してしまうことが防がれている。
【0059】
最後に、上側金型61、下側金型62を取り外すと、
図2に示すように、第1方向Zに沿って複数の内蔵物が配置される配置孔110が樹脂90に複数形成され、第2方向X、Yに沿って複数の第2貫通孔82を有する、金属部品80上に樹脂90が一体化された先端硬質部材100がインサート成形される。
【0060】
このように、本実施の形態においては、下側金型162の各金型ピン63の根元に、金型ピン63よりも大径であり、柱状の穴85よりも小径な太径部64がそれぞれ形成されていると示した。
【0061】
また、各太径部64は、各柱状の穴85に嵌入された際、金属部品80において第2貫通孔82よりも上流側に位置する内周81nと内周85nとを第2方向X、Yに沿って接続するフランジ面80fに周状に当接することにより、樹脂成形空間61c内に溶融された樹脂90が注入された際、フランジ面80fと同じ面上で樹脂90を堰き止めると示した。
【0062】
このことによれば、金属部品80に形成された各第1貫通孔81に連通する該第1貫通孔よりも大径な各柱状の穴85に各太径部64を嵌入させ、各端面64tをフランジ面80fに周状に当接させることにより、樹脂成形空間61c内に注入された樹脂90は、各端面64tによりフランジ面80fと同じ面上で堰き止められることから、第2貫通孔82に進入してしまうことを容易に防止することができる。
【0063】
また、各太径部64も各柱状の穴85よりも小径に形成されているため、各柱状の穴85に各太径部64を嵌入させる際、各太径部64が引っ掛かってしまうことがない。
【0064】
さらに、各太径部64の径は、各第1貫通孔81よりも大径で、各柱状の穴85よりも小径に形成すれば良いことから、高精度に形成する必要がない。即ち、下側金型62を高精度に形成する必要がない。よって、下側金型62を安価に形成することができる。
【0065】
以上から、安価かつ容易に第2貫通孔82に第1貫通孔81から樹脂90が流れ込むことが防止された金属部品80上に樹脂90が一体化された構成を具備する先端硬質部材100を提供することができる。
【0066】
尚、上述した本実施の形態においては、金属部品80に、複数の第1貫通孔81、複数の柱状の穴85が形成されている場合を例に挙げて示したが、これに限らず、それぞれ1つから構成され、1つの柱状の穴85に複数の第2貫通孔82が連通している構成においても適用可能である。
【0067】
この場合、下側金型62から起立する金型ピン63や、該金型ピン63の根元に設けられた太径部64は1つで良い。
【0068】
さらに、上述した本実施の形態においては、内視鏡の構成部品は、先端硬質部材100を例に挙げて示したが、これに限らず、金属部品と樹脂とを一体的にインサート成形することにより形成されるとともに、第1貫通孔81に対して複数の第2貫通孔82が連通する金属部品の構成であれば、内視鏡に用いる他の部品においても適用可能であるということは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
61…上側金型
62…下側金型
63…金型ピン(柱状部位)
64…太径部
64t…太径部の端面
80…金属部品(インサート品)
80f…フランジ面
81…第1貫通孔
81n…第1貫通孔内周
82…第2貫通孔
85…柱状の穴
85n…柱状の穴の内周
90…樹脂
100…先端硬質部材(内視鏡の構成部品)(先端硬質部を構成する部品)
X、Y…第2方向
Z…第1方向