特許第6986869号(P6986869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986869
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0606 20160101AFI20211213BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20211213BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20211213BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20211213BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20211213BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20211213BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20211213BHJP
【FI】
   H01M8/0606
   B01D53/04 110
   B01D53/86 280
   B01J20/20 B
   B01J20/20 C
   H01M8/04 J
   !H01M8/10
   !H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-119906(P2017-119906)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-3903(P2019-3903A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年11月14日
【審判番号】不服2020-16368(P2020-16368/J1)
【審判請求日】2020年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 好孝
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 信
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃平
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 関口 哲生
【審判官】 塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−111167(JP,A)
【文献】 特開2005−327650(JP,A)
【文献】 特開2002−263175(JP,A)
【文献】 特開平9−262273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/02-53/12
B01D53/73
B01D53/86-53/90
B01D53/94
B01D53/96
B01J20/00-20/281
B01J20/30-20/34
H01M8/04-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄化合物以外の付臭剤により付臭された水素ガスを流通させて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の上流及び下流に配置され、前記付臭剤を吸着する吸着剤を備える吸着部、及び、前記水素ガスとの反応により無臭化可能な付臭剤を前記水素ガスと反応させて無臭成分とする無臭化部の少なくとも一方である脱臭部と、
前記燃料電池の上流に配置され、前記水素ガスを減圧する減圧部と、
を備え、
前記脱臭部が、前記減圧部の上流に配置されており、
前記脱臭部として前記吸着部を少なくとも備え、
前記吸着剤は、金属が添着された活性炭を含み、
前記金属が、銅と、ニッケル、タングステン、及びモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記付臭剤は、二重結合を有する不飽和炭化水素であり、前記吸着剤に含まれる前記金属が添着された活性炭に前記二重結合を有する不飽和炭化水素を吸着させて用いる燃料電池システム。
【請求項2】
硫黄化合物以外の付臭剤により付臭された水素ガスを流通させて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の上流及び下流の少なくとも一方に配置され、前記付臭剤を吸着する吸着剤を備える吸着部、及び、前記水素ガスとの反応により無臭化可能な付臭剤を前記水素ガスと反応させて無臭成分とする無臭化部の少なくとも一方である脱臭部と、
前記燃料電池の上流に配置され、前記脱臭部に供給される前記水素ガスの圧力よりも前記水素ガスを減圧する減圧部と、
を備え、
前記脱臭部が、前記減圧部の上流に配置されており、
前記脱臭部として前記吸着部を少なくとも備え、
前記吸着剤は、金属が添着された活性炭を含み、
前記金属が、銅と、ニッケル、タングステン、及びモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記付臭剤は、二重結合を有する不飽和炭化水素であり、前記吸着剤に含まれる前記金属が添着された活性炭に前記二重結合を有する不飽和炭化水素を吸着させて用いる燃料電池システム。
【請求項3】
前記脱臭部が、前記燃料電池の下流に配置されている請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池の下流に配置されている前記脱臭部として前記無臭化部を少なくとも備え、
前記燃料電池にて未反応の水素ガスが前記燃料電池の下流に配置された前記脱臭部に供給されるように前記燃料電池を作動させる請求項1又は請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記脱臭部は、前記燃料電池の上流及び下流に配置され、
前記燃料電池の上流に配置された前記脱臭部及び前記燃料電池の下流に配置された前記脱臭部の少なくとも一方にシステム内を流通するガスが供給されるようにガスの流通経路を切り替え可能な切り替え部を更に備える請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池の出力に応じて前記切り替え部の切り替えを制御する制御部を更に備え、
前記制御部は前記燃料電池の出力が所定値以下となったときに前記切り替え部の切り替えを制御することにより、前記システム内を流通するガスである前記付臭剤にて付臭された前記水素ガスが前記燃料電池の上流に配置された前記脱臭部に供給されるようにガスの流通経路を切り替える請求項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素社会実現に向けた具体的な動きが、国、地方自治体及び民間企業にてそれぞれ進んでいる。例えば、燃料電池車向け水素ステーションが建設され、家庭用・業務用の燃料電池の開発がなされている。
【0003】
燃料電池は電気的化学反応により高効率に電力を生成する。燃料電池では、一般に都市ガス、液化石油(LP:liquefied petroleum)ガス、天然ガス等の炭化水素燃料を改質して得られた水素が使用される。今後の水素社会では、水素がそのまま燃料として導管を通じて供給されるため、炭化水素燃料を改質する改質器が不要となり、また、燃料電池は燃料として供給される水素を有効活用できる機器であると考えられる。
【0004】
ところで、導管から燃料ガスが漏洩した場合、火災等の事故につながる可能性があるため、燃料ガスの漏洩を検知でき、事故を未然に防ぐ仕組みが必要となる。そのための対策として、燃料ガスが漏洩しても検知できるように、燃料ガスを付臭する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、都市ガスにおける代表的な付臭剤としては、t-ブチルメルカプタン(TBM:tertiary-butyl mercaptan)とジメチルスルフィド(DMS:dimethyl sulfide)との混合物、等が挙げられる。また、シクロへキセンのみで水素を付臭する方法も検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−46250号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2011年度〜2014年度北九州水素タウンを活用した実証研究、インターネット検索<http://hysut.or.jp/archive/business/2011/02/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料ガスとして水素を用い、その水素を付臭する場合、水素を利用した後の排出ガス(オフガス)に付臭剤が残留していると、水素漏洩と誤認されるおそれがある。そこで、排気ガス中の付臭剤を人が検知できる濃度未満に低減した後に大気放出することが好ましい。
【0008】
本発明の一形態は、付臭剤で付臭された水素ガスを効率的に脱臭する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 硫黄化合物以外の付臭剤により付臭された水素ガスを流通させて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池の上流及び下流の少なくとも一方に配置され、前記付臭剤を吸着する吸着剤を備える吸着部、及び、前記水素ガスとの反応により無臭化可能な付臭剤を前記水素ガスと反応させて無臭成分とする無臭化部の少なくとも一方である脱臭部と、前記燃料電池の上流に配置され、前記水素ガスを減圧する減圧部と、を備える燃料電池システム。
<2> 前記脱臭部が、前記減圧部の上流に配置されている<1>に記載の燃料電池システム。
<3> 前記脱臭部が、前記燃料電池の下流に配置されている<1>又は<2>に記載の燃料電池システム。
<4> 前記燃料電池の下流に配置されている前記脱臭部として前記無臭化部を少なくとも備え、前記燃料電池にて未反応の水素ガスが前記燃料電池の下流に配置された前記脱臭部に供給されるように前記燃料電池を作動させる<3>に記載の燃料電池システム。
<5> 前記脱臭部として前記吸着部を少なくとも備え、前記吸着剤は、活性炭及び金属が添着された活性炭の少なくとも一方を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
<6> 前記吸着剤は、金属が添着された活性炭を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
<7> 前記脱臭部は、前記燃料電池の上流及び下流に配置され、
前記燃料電池の上流に配置された前記脱臭部及び前記燃料電池の下流に配置された前記脱臭部の少なくとも一方にシステム内を流通するガスが供給されるようにガスの流通経路を切り替え可能な切り替え部を更に備える<1>〜<6>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
<8> 前記燃料電池の出力に応じて前記切り替え部の切り替えを制御する制御部を更に備え、
前記制御部は前記燃料電池の出力が所定値以下となったときに前記切り替え部の切り替えを制御することにより、前記システム内を流通するガスである前記付臭剤にて付臭された前記水素ガスが前記燃料電池の上流に配置された前記脱臭部に供給されるようにガスの流通経路を切り替える<7>に記載の燃料電池システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態によれば、付臭剤で付臭された水素ガスを効率的に脱臭する燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の燃料電池システムの具体的構成1を示す図である。
図2】本実施形態の燃料電池システムの具体的構成2を示す図である。
図3】本実施形態の燃料電池システムの具体的構成3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0013】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
[燃料電池システム]
本発明の一実施形態に係る燃料電池システムは、硫黄化合物以外の付臭剤により付臭された水素ガスを流通させて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池の上流及び下流の少なくとも一方に配置され、前記付臭剤を吸着する吸着剤を備える吸着部、及び、前記水素ガスとの反応により無臭化可能な付臭剤を前記水素ガスと反応させて無臭成分とする無臭化部の少なくとも一方である脱臭部と、前記燃料電池の上流に配置され、前記水素ガスを減圧する減圧部と、を備える。吸着部及び無臭化部の少なくとも一方である脱臭部を燃料電池の上流及び下流の少なくとも一方に備えることにより、付臭剤で付臭された水素ガスを効率的に脱臭することができる。
【0015】
水素ガスとしては、高純度の水素ガス、例えば、純度99%以上の水素ガスを用いてもよい。高純度の水素ガスとしては、液体水素由来、精製された炭化水素改質由来、水の電気分解由来等の水素ガスが挙げられる。
また、本実施形態の燃料電池システムは、炭化水素ガスを改質して水素を生成する改質器を備えていない構成が好ましい。これにより、改質器、改質により生じる一酸化炭素を除去する装置等が不要となり、燃料電池システムの小型化及び簡素化が可能である。
【0016】
(燃料電池)
本実施形態の燃料電池システムは、水素ガスを用いて発電を行う燃料電池を備える。燃料電池としては、例えば、カソード(空気極)、電解質及びアノード(燃料極)を備える燃料電池セル、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。カソードは、空気等の酸素を含むガスが供給される電極であり、アノードは、水素を含むガスが供給される電極である。カソード、電解質及びアノードとしては、燃料電池の種類に応じて従来公知のものを使用すればよい。
【0017】
燃料電池の種類としては、特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)が挙げられる。
【0018】
燃料電池として、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)等を用いた場合、一般にアノードに供給された水素がプロトンとして電解質内を移動してカソード側にて酸素と反応し、電子がアノードからカソードに移動にすることで発電が行われる。また、発電により生じた水(水蒸気)は、未反応の酸素とともにカソードオフガスとしてカソード側から排出され、未反応の水素は、アノードオフガスとしてアノード側から排出される。
【0019】
燃料電池として、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等を用いた場合、一般にカソードに供給された、酸素及び二酸化炭素、又は酸素が、それぞれ炭酸イオン又は酸素イオンとして電解質内を移動してアノード側にて水素と反応し、電子がアノードからカソードに移動にすることで発電が行われる。また、発電により生じた水(水蒸気)は、未反応の水素とともにアノードオフガスとしてアノード側から排出され、未反応の酸素は、カソードオフガスとしてカソード側から排出される。
【0020】
燃料電池の上流に後述する脱臭部を配置していない場合、水素ガスを付臭する付臭剤が水素ガスとともに燃料電池に供給される構成となる。このとき、後述のように、硫黄化合物以外の付臭剤を用いた場合、特に、シクロヘキセン等の炭化水素系付臭剤を用いた場合、付臭剤による燃料電池の電極触媒の被毒が抑制され、燃料電池の出力低下等の悪影響が抑制される傾向にある。なお、水素ガスを付臭する付臭剤が水素ガスとともに燃料電池に供給される場合、付臭剤はアノードオフガスとしてアノード側から排出される。
【0021】
(脱臭部)
本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池の上流及び下流の少なくとも一方に配置され、水素ガスを付臭する硫黄化合物以外の付臭剤を吸着する吸着剤を備える吸着部、及び、付臭剤を水素ガスと反応させて無臭成分とする無臭化部の少なくとも一方である脱臭部を備える。脱臭部としては、燃料電池の上流及び下流のどちらかに配置されていてもよく、燃料電池の上流及び下流の両方に配置されていてもよい。
【0022】
吸着部としては、水素ガスを付臭する付臭剤を吸着する吸着剤を備える構成であれば特に限定されない。吸着剤としては、吸着部に供給された水素ガスを付臭する付臭剤を吸着可能な構成であればよく、付臭剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
吸着剤としては、付臭剤の吸着性能に優れ、かつ安価であるため、活性炭及び金属が添着された活性炭の少なくとも一方を含むことが好ましく、付臭剤の吸着性能により優れるため、金属が添着された活性炭を含むことが好ましい。
【0024】
活性炭としては、脱硫分野、脱臭分野等において、通常用いられる活性炭を特に制限なく用いることができる。
【0025】
活性炭の原料としては、ヤシ殻、石炭(無煙炭、瀝青炭等)、木粉、ピート炭、竹炭などが挙げられる。
これらの中でも、活性炭の原料としては、平均細孔径が小さく、不純物の含有量が少ないという観点から、ヤシ殻が好ましい。
【0026】
活性炭は、無機酸で処理された活性炭であることが好ましい。活性炭を無機酸で処理すると、不純物が除去され、比表面積が向上したり、活性炭の表面が親水化されたりする。そのため、付臭剤の吸着性能がより向上し、活性炭に添着される金属の分散度がより向上する傾向にある。
活性炭を処理する無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。
【0027】
活性炭の形状としては、特に制限されず、粒状、柱状(例えば、円柱状)、繊維状、ハニカム状、破砕状等が挙げられる。
これらの中でも、活性炭の形状としては、例えば、コスト面の観点から、粒状、柱状、及び破砕状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状が好ましく、また、密度が高く、かつ、微細粉を含まないという観点から、粒状及び柱状から選ばれる少なくとも1種の形状がより好ましい。
【0028】
活性炭に添着される金属としては、例えば、銅を含むことが好ましく、銅と、ニッケル、タングステン、及びモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含むことがより好ましい。
なお、活性炭に添着された金属の大部分は、金属元素を含む化合物(酸化物、無機酸塩、有機酸塩等)として含まれていると考えられるが、金属単体として含まれていてもよい。
【0029】
活性炭に添着された金属の量としては、活性炭の全質量に対して、1.0質量%〜20.0質量%であることが好ましく、2.0質量%〜15.0質量%であることがより好ましく、2.0質量%〜8.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
活性炭に添着された金属が銅及びその他の金属を含む場合、銅の添着量は、例えば、活性炭に添着された金属の全質量に対して、20質量%〜80質量%であることが好ましく、30質量%〜80質量%以下であることがより好ましく、40質量%〜80質量%以下であることが更に好ましく、40質量%〜65質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
本明細書において、活性炭に添着された金属の量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により測定される値である。測定装置としては、例えば、Perkin−Elmer製のOptima 8000(製品名)を好適に用いることができる。但し、測定装置は、これに限定されない。
【0032】
金属が添着された活性炭の製造方法の一例を説明する。金属が添着された活性炭は、例えば、下記の方法により製造することができる。但し、金属が添着された活性炭の製造方法は、これに限定されるものではない。
(1)活性炭に添着させる金属の元素を含む金属化合物を、溶媒に溶解又は分散させた溶液(含浸溶液)を調製する。
(2)含浸溶液に、活性炭を浸漬させる。
(3)含浸溶液に浸漬させた活性炭を乾燥させ、溶媒を除去する。
(4)乾燥した浸漬後の活性炭を焼成して、活性炭上に金属酸化物等を形成させる。
以上の方法により、金属が添着された活性炭を製造することができる。
【0033】
含浸溶液を調製するための金属化合物としては、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物、金属リン酸塩等の金属塩類が挙げられる。
具体的には、硝酸銅三水和物、酢酸銅一水和物、硝酸ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、12−タングストリン酸n水和物、モリブデン酸アンモニウム四水和物等が挙げられる。
【0034】
含浸溶液を調製するための溶剤としては、特に制限されず、水、酸性水溶液(硝酸水溶液等)、塩基性水溶液(アンモニア水溶液等)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素系溶剤(トルエン等)などが挙げられる。
これらの中でも、含浸溶液を調製するための溶媒としては、焼成後に残留しない等の観点から、水が好ましい。
含浸溶液の調製には、溶媒を1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
含浸溶液における金属化合物の濃度は、特に制限されず、例えば、金属化合物の種類、活性炭に添着させる金属の添着量、活性炭の種類等に応じて、適宜設定することができる。
【0036】
浸漬温度は、特に制限されず、例えば、10℃〜80℃の範囲とすることができる。
浸漬時間についても、特に制限されず、例えば、5分間〜2時間の範囲とすることができる。
【0037】
乾燥方法は、特に制限されず、例えば、加熱により乾燥させる方法が挙げられる。
加熱温度は、特に制限されず、例えば、50℃〜150℃の範囲とすることができる。
【0038】
焼成温度は、例えば、金属化合物の分解促進、及び金属添着炭の発火抑制の観点から、150℃〜300℃の範囲であることが好ましい。
焼成時間は、特に制限されず、例えば、1時間〜24時間の範囲とすることができる。
【0039】
燃料電池システムが脱臭部として吸着部を少なくとも備える場合、水素ガスの付臭に用いる付臭剤としては、硫黄化合物以外であって、吸着剤に吸着され、水素ガスの脱臭が可能なものであれば特に限定されない。具体的には、付臭剤としては、1−ペンテン、cis−2−ペンテン、trans−2−ペンテン、2−メチル1−ブテン、3−メチル1−ブテン、2−メチル2−ブテン、アレン、メチルアレン、エチルアレン、1,3−ペンタジエン、2−メチル1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,3,5−ヘキサトリエン、1−ブチン、2−ブチン、スチレン、ビニルアセチレン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、trans−2−ブテン、cis−2−ブテン、1,5−ヘキサジエン3−イン、ジイソブチレン、1−ヘキセン、イソプレン、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン(ジシクロペンタンジエン)、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、4−ビニルシクロヘキセン−1、1−ビニルシクロヘキセン−1、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロペンタジエン、シクロヘキセン、1−メチルピロール、ピラジン、2−メチルピラジン、2−メチル−3−イソブチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,3,5−トリメチルピラジン、2−エチルピラジン、2−プロピルピラジン、2−ビニルピラジン、2−アリルピラジン、2−ピコリン、α.p−ジメチル−スチレン、クメン、2,5−ジエチルピラジン、リモネン、メシチレン、2−メチルナフタレン、3−メチルインドール(スカトール)、ミルセン、α−ピネン、1−オクテン−3−オン、2,3−ブタンジオン、ペンタン−2,3−ジオン、ヘキサン−2,5−ジオン、ヘプタン−2,5−ジオン、エチリデンジエチルエーテル、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、プロパギルアルコール、β,γ−ヘキセノール(cis−ヘキセン−1−オール)、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ヘキサナール(カプロアルデヒド)、クミンアルデヒド、アセトン、2−オクタノン、3−オクタノン、ジアセチル(2,3−ブタンジオン)、アセトフェノン、メチルホーメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルフェニルアセテート、エチルホーメート、エチルアセテート、イソプロピルホーメート、イソアミルアセテート、n−アミルアセテート、フェニルエチルホーメート、2−イソペンテニルアセテート、エチルプロピオネート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、アミルプロピオネート、エチルカプロエート、アミルブチレート、エチルカプリレート、エチルカプレート、ヘキシルブチレート、エチルシンナメート、ベンジルアセテート、エチルクロトネート、エチル3,3−ジメチルアクリレート、エチル−4−メチル−4−ペンテノエート、エチル−4−メチル−3−ペンテノエート、エチルヘプト−3−エノエート、エチルピルベート、プロピルクロトネート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、アリルアクリレート、メチルメタアクリレート、メンチルアセテート、ボルニルアセテート、β−フェニルエチルアセテート、アリルカプロエート、エチルメチルフェニルグリシデート、p−クレジルアセテート、アセトールアセテート、エチル9−デセノエート、2,3オクタンジオン、メチル−3−アセトキシ−ブタノエート、プロピオノイン、2−メチル−2−ペンテナール、アセトインアセテート、メチル3−ヒドロキシ−ブチレート、2−メチル−1−ヘプテン−3−オール、8−ノネン−2−オン、アセトイン、3−メチル−3−ブテニルアセテート、テトラヒドロシトラール、アリルアルコール、ブタナール(ブチルアルデヒド)、2,3−ブタンジオン(ジアセチル)、イソブチルセロソルブ、イソブチルアルデヒド、カルビトールアセテート、2−デセナール、デカナール、ジイソブチルカルビノール、ドデカナール(ラウリルアルデヒド)、エチルアクリレート、エチルブチレート、エチルバレレート、エチルビニルケトン、エチル2−メチルブチレート、ヘプタナール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノン、2−ヘプテナール、2−ヘクセノール、メシチルオキサイド、2−メチルブタナール−1、3−メチルブタナール−1、2−メチルブタノール、メチルイソアミルケトン(5−メチル−2−ヘキサノン)、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチルブチルアセテート、2−メチルプロパナール(イソブチルアルデヒド)、2−ノナナール、n−ノナナール(ペラルゴンアルデヒド)、2−オクテナール、オクタナール(n−カプリルアルデヒド)、オクチルアセテート、1−ペンテン−3−オン(エチルビニルケトン)、イソペンタナール、ペンタナール(バレルアルデヒド)、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)、イソペンチルアセテート(イソアミルアセテート)、ペンチルアセテート(n−アミルアセテート)、プロパナール(プロピオンアルデヒド)、プロパノン酸、プロピルブチレート、ウンデカナール、ブチロイン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロヘキセンオキサイド、m−クレゾール、N−(2′−フルフリル)ピロール、2−ピロールアルデヒド、5−メチル−2−ピロールアルデヒド、N−エチルピロールアルデヒド、2−アセチル−N−メチルピロール、ジケテン、5−アセチル2−メチルオキサゾール、2−アセチルフラン、2−メチルフラン、フルフラール、フルフリルアセトン、5−メチル−2−フルフラール、ジヒドロフラノン、シクロペンタノン、フェニルn−ブチレート、2−フェニル−2−ブテナール、ジフルフリルエーテル、クリサンテノン、2−ブテン−4−オリド、2−メトキシフェノール(ガイアコール)、2−メトキシ−3−エチルピラジン、2−メトキシ−3−イソブチルピラジン、2−メトキシ−3−イソブチルピリジン、2−メトキシ−3−イソプロピルピラジン、2−メトキシ−3−プロピルピラジン、アニソール、ベンズアルデヒド、1,8−シネオール、シクロペンチルアセテート、2−エトキシ−3−エチルピラジン、2−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(o−バニリン)、フェニルエーテル等が挙げられる。中でもシクロヘキセンが好ましい。
なお、付臭剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
無臭化部としては、付臭剤を水素ガスと反応させて無臭成分(元の付臭剤よりも臭いが低減されたものも含む)とする構成であれば特に限定されない。付臭剤としては、水素ガスとの反応、例えば、水素付加反応により無臭成分となるものであれば限定されず、具体的には、前掲の付臭剤における二重結合を有する不飽和炭化水素が好ましく、シクロへキセンがより好ましい。
【0041】
また、無臭化部では、燃料電池の燃料として用いる水素ガスの一部を用いて付臭剤を無臭成分とするため、別途水素ガスを無臭化部に供給するための配管、バルブ等が不要であり、燃料電池システムの構成を簡略化することができる。
【0042】
無臭化部としては、付臭剤における水素付加反応用の触媒を備えていてもよく、また、加熱手段を備えていてもよい。
【0043】
触媒としては、例えば、二重結合を有する不飽和炭化水素の接触水素化反応に用いるものを好適に用いることができ、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル等が挙げられる。
【0044】
無臭化部は、水素付加反応を促進させる観点から、加熱手段を備えていてもよい。加熱手段としては、ヒータ等の熱源であってもよく、燃料電池にて発生した熱(例えば、固体高分子形燃料電池等にて発生した温水)が供給される構成、後述する燃焼部での無臭成分の燃焼により生じた熱が供給される構成等であってもよい。
【0045】
水素ガスを付臭する付臭剤の濃度(脱臭部及び燃料電池に供給される前の付臭剤の濃度)としては、特にシクロへキセンの濃度としては、0.1ppm〜5000ppmであることが好ましく、1ppm〜1000ppmであることがより好ましく、10ppm〜500ppmであることが更に好ましく、50ppm〜300ppmであることが特に好ましい。
【0046】
また、脱臭部において付臭剤を全て吸着、あるいは、無臭成分とする必要はなく、大気放出の際に付臭剤の濃度が検知濃度以下となっていればよい。
【0047】
水素ガスと付臭剤との水素付加反応をより低温で進行させる観点から、無臭化部は、触媒が一対の電極間に配置され、電極間に電圧が印加される構成を備えていてもよい。電極間に生じた電場により、触媒活性が向上し、反応の低温化、反応効率の向上等を図ることができる。
更に、副生成物の発生及び必要となる電気エネルギーを抑制する観点から、電極間に印加される電圧は、電極間に放電を生じさせる最低電圧(放電発生電圧)未満であることが好ましい。また、水素ガスと付臭剤との水素付加反応にて用いる触媒についても、電極間に電圧を印加した際に放電が生じにくいものを選択することが好ましい。
【0048】
また、前述の加熱手段の電源及び電極間に電圧を印加する電源として、本実施形態の燃料電池システムにて発電した電力を使用してもよい。
【0049】
(減圧部)
本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池の上流に配置され、水素ガスを減圧する減圧部を備えている。例えば、減圧部により、燃料電池等の仕様に適した圧力まで水素ガスを減圧する構成が好ましく、水素ガスの供給圧を中圧の0.1MPa程度から低圧の0.02MPa程度に減圧する構成が好ましい。減圧部としては、供給された水素ガスの供給圧を下げる構成を備えるものであれば特に限定されない。
【0050】
燃料電池システムは、脱臭部を減圧部の上流に備えることが好ましい。すなわち、水素ガスを減圧する前に、水素ガスを付臭する付臭剤を吸着したり、付臭剤を水素ガスと反応させて無臭成分としたりすることが好ましい。付臭剤の分圧がより高いことにより、吸着剤の吸着性能が高まり、また、より圧力が高いことにより、付臭剤と水素との反応(例えば、付臭剤の水素付加反応)が進行しやすくなって無臭成分の生成効率が高まる傾向にある。更に、脱臭部を減圧部の下流に配置した場合と比較して、吸着剤の搭載量を削減したり、付臭剤を水素ガスと反応させる際に必要となり得る触媒の搭載量を削減したりすることができ、燃料電池システムの低コスト化が可能となる。また、減圧部は、脱臭部に供給される水素ガスの圧力よりも水素ガスを減圧する構成であることが好ましい。
【0051】
また、付臭剤を水素ガスと反応させて無臭成分とする場合、脱臭部としての無臭化部を燃料電池の上流に配置してもよい。これにより、水素ガスは、付臭剤との混合ガスではなく、無臭成分との混合ガスの形態にて燃料電池に供給される。通常、無臭成分(例えば、不飽和炭化水素に水素が付加されてなる飽和炭化水素、好ましくはシクロヘキセン)は、付臭剤(例えば、二重結合を有する不飽和炭化水素、好ましくはシクロへキセン)よりも化学的に安定であり、燃料電池の電極触媒等に付着しにくい。そのため、無臭成分が燃料電池に供給される場合、付臭剤が燃料電池に供給される場合よりも燃料電池の出力低下が抑制されると考えられる。
【0052】
燃料電池システムにおいて、脱臭部を減圧部の上流に備える場合、減圧部に水素検知器等を配置して水素漏洩を検知可能とすることが好ましい。
【0053】
燃料電池システムは、脱臭部を燃料電池の下流に備えていてもよい。例えば、TBM(t-ブチルメルカプタン)、DMS(ジメチルスルフィド)等の硫黄化合物以外の付臭剤を用いた場合、特に、シクロヘキセン等の炭化水素系付臭剤を用いた場合、付臭剤による燃料電池の電極触媒の被毒が抑制され、脱臭部を燃料電池の下流に設けても、燃料電池の出力低下等の悪影響が抑制される傾向にある。
【0054】
燃料電池システムにて、脱臭部である無臭化部が燃料電池の下流に配置されている場合、燃料電池にて未反応の水素ガスがこの脱臭部に供給されるように燃料電池を作動させることが好ましい。すなわち、燃料電池から排出されるアノードオフガス中に付臭剤と反応させる際に必要な量の水素ガスが含まれるように、燃料電池を作動させ、燃料電池における水素ガスの消費量を調整することが好ましい。
【0055】
また、脱臭部が燃料電池の下流に配置されている場合、燃料電池として固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)等を用いたとき、アノードに供給され発電に用いられる水素は、プロトンとして電解質内を移動してカソード側にて酸素と反応するため、発電に用いられた水素ガスの分だけアノードオフガス中の付臭剤の濃度が高くなる。したがって、脱臭部が燃料電池の下流に配置されている場合、吸着部における付臭剤の吸着、及び、無臭化部における付臭剤と水素ガスとの反応がより効率的に生じる傾向にある。そのため、吸着剤の搭載量を削減したり、付臭剤を水素ガスと反応させる際に必要となり得る触媒の搭載量を削減したりすることができ、コストの削減が可能であると考えられる。
【0056】
また、脱臭部として無臭化部を備えている場合、無臭化部及び燃料電池の下流に無臭成分を燃焼する燃焼部を更に備えていてもよい。これにより、無臭化部において生成された無臭成分が未反応の水素ガスとともに燃焼反応に供される。燃焼反応により生じた熱は、無臭化部に供給される構成であってもよい。このとき、アノードオフガスである未反応の水素及び無臭成分を含むガスが燃焼部に供給され、カソードオフガスである未反応の酸素を含むガスが燃焼部に供給される構成であってもよい。
【0057】
燃料電池システムでは、脱臭部が燃料電池の上流及び下流に配置されていてもよい。このとき、燃料電池の上流に配置された脱臭部及び燃料電池の下流に配置された脱臭部の少なくとも一方にシステム内を流通するガスが供給されるようにガスの流通経路を切り替え可能な切り替え部を更に備えることが好ましい。これにより、少なくとも一方の脱臭部にシステム内を流通するガスが供給されるため、例えば、一方の脱臭部のメンテナンスが必要になった場合であっても、燃料電池システムの作動を停止させる必要がなく、燃料電池システムの連続運転が可能となる。
【0058】
脱臭部が燃料電池の上流及び下流に配置されている場合、上流の脱臭部(第1脱臭部)、燃料電池、及び下流の脱臭部(第2脱臭部)の順でアノードガスが供給されるようにガスの流通経路を設けてもよい。このとき、第1脱臭部の上流にて流通経路から分岐し、かつ燃料電池の上流にて流通経路と合流する第1分岐経路を配置してもよく、燃料電池の下流かつ第2脱臭部の上流にて流通経路を分岐し、かつ第2脱臭部の下流にて流通経路と合流する第2分岐経路を配置してもよい。切り替え部により、第1脱臭部及び第1分岐経路のどちらにガスを供給するか、及び、第2脱臭部及び第2分岐経路のどちらにガスを供給するかを適宜切り替えてもよい。
【0059】
更に、燃料電池システムは、燃料電池の出力(出力電圧)に応じて切り替え部の切り替えを制御する制御部を更に備えていてもよい。例えば、制御部は、燃料電池の出力が所定値よりも大きいときは、システム内を流通するガスである付臭剤にて付臭された水素ガスが燃料電池の上流に配置された第1脱臭部に供給されず、かつ、燃料電池から排出された付臭剤を含むガス(アノードオフガス)が第2脱臭部に供給されるように切り替え部の切り替えを制御してガスの流通経路を切り替えてもよい。また、制御部は、燃料電池の出力が所定値以下となったときに、システム内を流通するガスである付臭剤にて付臭された水素ガスが燃料電池の上流に配置された第1脱臭部に供給され、かつ、燃料電池から排出された付臭剤を含むガス(アノードオフガス)が第2脱臭部に供給されないように切り替え部の切り替えを制御してガスの流通経路を切り替えてもよい。
【0060】
以下、本実施形態の燃料電池システムの具体的構成1〜具体的構成3について、図1図3を用いて説明する。本発明はこれらの具体的構成に限定されるものではない。
【0061】
<燃料電池システムの具体的構成1>
図1に示すように、燃料電池システム10は、脱臭部1、減圧部2及び燃料電池3を備える。更に、燃料電池システム10では、流通経路4を通じて付臭剤により付臭された水素ガスが脱臭部1に供給され、流通経路4を通じて脱臭された水素ガスが減圧部2及び燃料電池3の順に供給される構成となっている。
【0062】
付臭剤により付臭された水素ガスは、流通経路4を通じて脱臭部1に供給され、付臭剤は、脱臭部1において、吸着剤に吸着されるか、又は、水素ガスと反応して無臭成分となる。そして、脱臭された水素ガスは、流通経路4を通じて減圧部2にて減圧された後、燃料電池3にアノードガスとして供給され、カソードガスとして燃料電池3に供給される酸素ガスとの電気化学的な反応により発電が行われる。燃料電池3から排出されたガス(アノードオフガス)は大気中へと放出される。減圧部2が脱臭部1よりも下流に位置しているため、付臭剤の分圧がより高いことにより、吸着剤の吸着性能が高まる傾向にあり、また、より圧力が高いことにより、付臭剤と水素との反応(例えば、付臭剤の水素付加反応)が進行しやすくなって無臭成分の生成効率が高まる傾向にある。
【0063】
<燃料電池システムの具体的構成2>
図2に示すように、燃料電池システム20は、脱臭部1としての無臭化部、減圧部2、燃料電池3及び燃焼部5を備える。更に、燃料電池システム20では、流通経路4を通じて付臭剤により付臭された水素ガスが無臭化部に供給され、流通経路4を通じて無臭成分と水素との混合ガスが減圧部2及び燃料電池3の順に供給され、かつ、燃料電池3から排出されたガス(アノードオフガス)が燃焼部5に供給される構成となっている。また、燃焼部5での無臭成分の燃焼反応により生じた熱は、無臭化部に供給され、無臭化部における水素付加反応が促進され、燃焼部5から排出された燃焼オフガスは大気中へと放出される。更に、無臭成分は、付臭剤よりも化学的に安定であり、燃料電池の電極触媒等に付着しにくいため、無臭成分が燃料電池に供給される場合、付臭剤が燃料電池に供給される場合よりも燃料電池の出力低下が抑制されると考えられる。
【0064】
燃焼部5を配置する替わりに、燃料電池3にて発生した熱(例えば、固体高分子形燃料電池等にて発生した温水)が脱臭部1としての無臭化部に供給される構成であってもよい。また、図2では図示していないが、燃料電池3から排出された未反応の酸素を含むカソードオフガスが燃焼部に供給される構成であってもよく、カソードガス等の酸素を含むガスが燃焼部に供給される構成であってもよい。
【0065】
<燃料電池システムの具体的構成3>
図3に示すように、燃料電池システム30は、第1脱臭部11、減圧部2、燃料電池3及び第2脱臭部12を備える。更に、燃料電池システム30は、切り替え部として開閉弁21〜28及び開閉弁21〜28の開閉を制御する制御部8を備えており、制御部8による開閉弁21〜28の開閉制御により、流通経路4と分岐した第1分岐経路6にガスを供給するか否か、及び、流通経路4と分岐した第2分岐経路にガスを供給するか否かを切り替えることができる。
【0066】
以下、制御部8による開閉弁21〜28の開閉制御の例について説明する。まず、開閉弁21、23、26及び28を開き、かつ、開閉弁22、24、25及び27を閉めるように制御部8により制御し、付臭剤に付臭された水素ガスを流通経路4に流通させる。これにより、付臭剤に付臭された水素ガスは第1脱臭部11に供給され、かつ、燃料電池3から排出されたガス(アノードオフガス)は、第2脱臭部12に供給されずに第2分岐経路7を流通する。
【0067】
そして、第1脱臭部11のメンテナンス等が必要になった場合、開閉弁22、24、25及び27を開き、かつ開閉弁21、23、26及び28を閉めるように制御部8により制御する。これにより、付臭剤に付臭された水素ガスは、第1脱臭部11に供給されずに第1分岐経路6を流通し、かつ燃料電池3から排出されたガス(アノードオフガス)は第2脱臭部12に供給される。
【0068】
次に、第2脱臭部12のメンテナンス等が必要になった場合、開閉弁21、23、26及び28を開き、かつ、開閉弁22、24、25及び27を閉めるように制御部8により制御する。これにより、付臭剤に付臭された水素ガスは第1脱臭部11に供給され、かつ、燃料電池3から排出されたガス(アノードオフガス)は、第2脱臭部12に供給されずに第2分岐経路7を流通する。以下、これらの操作を繰り返せばよい。
以上により、第1脱臭部11又は第2脱臭部12のメンテナンスが必要になった場合であっても、燃料電池システムの作動を停止させる必要がなく、燃料電池システムの連続運転が可能となる。
【0069】
また、第1脱臭部11に付臭剤に付臭された水素ガスが供給されず、かつ第2脱臭部12に燃料電池3から排出されたガスが供給される場合、燃料電池3に付臭剤に付臭された水素ガスが供給されることになり、付臭剤が燃料電池3の電極触媒に付着する等の影響により徐々に燃料電池3の出力が低下するおそれがある。そこで、燃料電池3の出力に応じて開閉弁21〜28の開閉制御を行う構成としてもよい。
【0070】
例えば、燃料電池3の出力が所定値(第1の閾値)以下となったときに開閉弁21、23、26及び28を開き、かつ、開閉弁22、24、25及び27を閉めるように制御部8により制御する。これにより、付臭剤が除去された水素ガス、あるいは、付臭剤が無臭成分に変換された、無臭成分と水素との混合ガスが燃料電池3に供給されることになり、燃料電池3の電極触媒に付着した付臭剤等が除去され、燃料電池3の出力が回復する。
【0071】
また、燃料電池3の出力が回復し、燃料電池の出力が所定値(第2の閾値)以上となったときに開閉弁22、24、25及び27を開き、かつ、開閉弁22、24、25及び27を閉じるように制御部8により制御してもよい。
【0072】
なお、制御部8による開閉弁21〜28の開閉制御については、前述の構成に限定されない。例えば、通常時は開閉弁21、23、25及び27を開き、かつ開閉弁22、24、26及び28を閉じるように制御し、メンテナンス等、必要に応じて第1脱臭部11及び第2脱臭部12にガスが供給されないように開閉弁21〜28を適宜制御してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、付臭対象となるベースガスとして水素ガス及び都市ガスを用いたときの吸着剤による付臭剤の吸着効果についての実験結果を示す。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1及び参考例1)
付臭対象となるベースガスとして、実施例1では水素ガスを用い、参考例1では都市ガス(脱硫済みの都市ガス)を用いた。付臭剤としてはシクロへキセンを用い、表1に示す濃度となるようにベースガスを付臭させた。
参考例にて用いた都市ガスの成分は、メタン89.6%、エタン5.62%、プロパン3.43%及びブタン1.35%である。
【0075】
吸着剤としては、表2に示すように、Cu及びNiを添着させた活性炭(CuNi添着炭、CuNi添着炭の全量に対して、Cuの添着量3.3質量%及びNiの添着量3.1質量%)、Brを添着させた活性炭(Br添着炭、大阪ガスケミカル株式会社、商品名:粒状白鷺SRCX)及び銀担持ゼオライト(Ag−Yゼオライト、日揮触媒化成株式会社、商品名:FKS−A、銀の担持量:ゼオライトの質量に対して14質量%)を用いた。
なお、CuNi添着炭における銅及びニッケルの添着量は、Perkin−Elmer製のOptima 8000(製品名)を用い、ICP発光分光分析法により測定した。
【0076】
付臭剤に付臭されたガスを吸着剤が配置された試験管に流通させる際の各条件は、表1に示す通りである。
【0077】
<シクロヘキセン吸着量試験>
以下に示すようにして吸着剤におけるシクロヘキセンの吸着量を測定した。
まず、参考例1にて用いた脱硫済みの都市ガス及びシクロへキセンをMFC(マスフローコントローラ)によりそれぞれ流量調節した後に混合する。混合ガスをシクロヘキセンを吸着除去する吸着剤に通し、吸着剤に通した後のガスをGC(ガスクロマトグラフ)により分析した。GCによりシクロへキセンが検出されなかった場合、吸着剤にてシクロへキセンが除去されていることが分かる。GCによりシクロへキセンが検出されたときに吸着剤にてシクロへキセンが除去できなくなったと判断し、シクロへキセンが検出されるまでに流した混合ガスの総流量をもとに吸着剤にて吸着されたシクロへキセンの量を算出し、それをシクロへキセン吸着量とした。
結果を表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表2の実施例1に示すように、ベースガスとして水素ガスを用いた場合、活性炭(CuNi添着炭又はBr添着炭)を用いることにより、ゼオライト(Ag−Yゼオライト)を用いたときよりも吸着剤におけるシクロヘキセン吸着量に優れることが示された。
一方、表2の参考例1に示すように、ベースガスとして都市ガスを用いた場合、活性炭(CuNi添着炭又はBr添着炭)を用いることにより、ゼオライト(Ag−Yゼオライト)を用いたときよりも吸着剤におけるシクロヘキセン吸着量が低下することが示された。
したがって、ベースガスによって好ましい吸着剤の種類が変わり、ベースガスとして水素ガスを用いた場合には、吸着剤として活性炭、好ましくは金属を添着させた活性炭を用いることで、シクロヘキセンの吸着効果に優れることが示された。
【符号の説明】
【0081】
1・・・脱臭部、2・・・減圧部、3・・・燃料電池、4・・・流通経路、5・・・燃焼部、6・・・第1分岐経路、7・・・第2分岐経路、10、20、30・・・燃料電池システム、11・・・第1脱臭部、12・・・第2脱臭部、21〜28・・・開閉弁(切り替え部)
図1
図2
図3