(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
層状岩塩構造を有し、Liと、Niと、Coと、Mn、Al及びMgから選ばれた少なくとも1つ(ただし、Mn及びAlの少なくとも一方を含む)とを含有するリチウム複合酸化物を用いてなる正極活物質粒子粉末であって、
前記正極活物質粒子粉末が、組成式:
Lia(NipCoqMnrAl1−p−q−rMgu)O2
で表される基本組成を有しており、
前記組成式において、0.96≦a≦1.15、0<p≦0.97、0<q≦0.50であり、p+q<1.00を満足しており、前記正極活物質粒子粉末がMnを含む場合は0<r≦0.50で、前記正極活物質粒子粉末がAlを含む場合は0<(1−p−q−r)≦0.20で、前記正極活物質粒子粉末がMgを含む場合は0<u≦0.20であり、
前記正極活物質粒子粉末が、前記Ni、Co、Mn、Al、及びMgの他に、P、Ca、Ti、Y、Sn、Bi、Ce、Zr、La、Mo、Sc、Nb、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属を任意に含有しており、
前記正極活物質粒子粉末が、前記P、Ca、Ti、Y、Sn、Bi、Ce、Zr、La、Mo、Sc、Nb、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属を含む場合、該少なくとも1種の金属は、前記リチウム複合酸化物における前記Ni、Co、Mn、Al、及びMgから選ばれた少なくとも1種の一部と置換されているか、又は、前記リチウム複合酸化物の凝集二次粒子の表面及び粒界に被覆されており、
前記リチウム複合酸化物は、水分暴露未処理の複合酸化物であり、
前記正極活物質粒子粉末は、前記リチウム複合酸化物に相対湿度30%以上80%以下の雰囲気にて水分暴露処理が施されてなる水分暴露処理済の複合酸化物で、300ppm以上1200ppm以下の含有水分量を有し、
以下の式(1)で表される含有水分量の変化率(単位なし)が、0.3以上9.5以下であることを特徴とする、正極活物質粒子粉末:
含有水分量の変化率=|(W2−W1)/W1| ・・・(1)
ここで、
W1:リチウム複合酸化物の含有水分量(ppm)
W2:正極活物質粒子粉末の含有水分量(ppm)
である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
[正極活物質粒子粉末の製造方法]
本発明の一実施形態に係る正極活物質粒子粉末の製造方法について説明する。本発明によって製造された該正極活物質粒子粉末は、非水電解質二次電池の正極に用いられる。
【0026】
本実施形態に係る製造方法で製造される正極活物質粒子粉末は、層状岩塩構造を有し、Liと、Niと、Coと、Mn、Al及びMgから選ばれた少なくとも1つ(ただし、Mn及びAlの少なくとも一方を含む)とを含有するリチウム複合酸化物からなるものである。このような正極活物質粒子粉末の製造方法は、少なくとも、以下の第1ステップ及び第2ステップを備える。
【0027】
<第1ステップ>
第1ステップでは、ニッケル化合物と、コバルト化合物と、マンガン化合物、アルミニウム化合物及びマグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物(ただし、マンガン化合物及びアルミニウム化合物の少なくとも一方を含む)とを用いて複合化合物前駆体を調製した後、該複合化合物前駆体に、リチウム化合物と、任意にマンガン化合物、アルミニウム化合物及びマグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物とを混合して得た混合物を焼成して、Liと、Niと、Coと、Mn、Al及びMgから選ばれた少なくとも1つ(ただし、Mn及びAlの少なくとも一方を含む)とを含有するリチウム複合酸化物を調製する。
【0028】
前記複合化合物前駆体の調製に用いる前記ニッケル化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、ヨウ化ニッケル、及び金属ニッケル等が挙げられる。これらの中でも、後述する湿式工程による共沈反応を容易に行うことができる点から、硫酸ニッケルが好ましい。
【0029】
前記コバルト化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、塩化コバルト、ヨウ化コバルト、及び金属コバルト等が挙げられる。これらの中でも、後述する湿式工程による共沈反応を容易に行うことができる点から、硫酸コバルトが好ましい。
【0030】
前記マンガン化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸マンガン、酸化マンガン、水酸化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、塩化マンガン、ヨウ化マンガン、及び金属マンガン等が挙げられる。これらの中でも、後述する湿式工程による共沈反応に用いる場合は、共沈反応を容易に行うことができる点から、硫酸マンガンが好ましい。また、後述する乾式工程にて用いる場合は、酸化マンガンが好ましい。
【0031】
前記アルミニウム化合物としては、特に限定がないが、例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、及び金属アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、後述する湿式工程による共沈反応に用いる場合は、共沈反応を容易に行うことができる点から、アルミン酸ナトリウムが好ましい。また、後述する乾式工程にて用いる場合は、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0032】
前記マグネシウム化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及び金属マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、後述する湿式工程による共沈反応に用いる場合は、共沈反応を容易に行うことができる点から、硫酸マグネシウムが好ましい。また、後述する乾式工程にて用いる場合は、酸化マグネシウムが好ましい。
【0033】
前記複合化合物前駆体の調製は、例えば、各化合物を湿式で共沈反応させることによって行うことができる。具体的には、ニッケル化合物と、コバルト化合物と、マンガン化合物、アルミニウム化合物及びマグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物(ただし、マンガン化合物及びアルミニウム化合物の少なくとも一方を含む)との割合を、各元素(Niと、Coと、Mn、Al及びMgの少なくとも1つ(Mn及び/又はAlは必須))が所望の割合となるように調整し、これらの化合物を水及び/又は有機溶媒に溶解させる。次いで、これらの化合物の溶液に適量の沈殿剤を添加して撹拌混合し、これらの化合物を共沈反応させ、オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体が得られる。
【0034】
前記溶液中のニッケル化合物、コバルト化合物、並びに、マンガン化合物、アルミニウム化合物及びマグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物(ただし、マンガン化合物及びアルミニウム化合物の少なくとも一方を含む)の濃度は、特に限定がないが、約1mol/L〜約2mol/Lであることが好ましい。また、前記沈殿剤としては、例えば、苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を好適に用いることができる。該苛性ソーダ溶液の濃度及びアンモニア溶液の濃度は、いずれも特に限定がないが、苛性ソーダ溶液の濃度は、約5.0mol/L〜約8.0mol/Lであることが好ましく、アンモニア溶液の濃度は、約5.0mol/L〜約8.0mol/Lであることが好ましい。
【0035】
複合化合物前駆体中、残留S分が約0.2wt%以下、Na分が約300ppm以下、水分を含む総不純物量が約0.4wt%以下となるように、前記共沈反応の条件を適宜設定することがより好ましい。複合化合物前駆体中の不純物量が多いと、リチウム化合物と混合して得た混合物からリチウム複合酸化物を調製し難くなるほか、得られる正極活物質粒子粉末を用いて非水電解質二次電池を製造した際に、安定性が低下する恐れが生じる。
【0036】
なお、マンガン化合物を用いた場合、共沈反応後にオーバーフローさせて得られた反応物は、NiMnO
3が発生しない程度に乾燥させることが好ましい。このような乾燥の結果、リチウム化合物と混合して得た混合物からリチウム複合酸化物を調製する際に、充分に反応が進み易くなり、安定性の高い正極活物質粒子粉末を得ることができる。
【0037】
次いで、前記のごとく得られた複合化合物前駆体と、リチウム化合物と、任意にマンガン化合物、アルミニウム化合物及びマグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物とを所望の割合で混合して、均一な混合物を得る。これら任意のマンガン化合物、アルミニウム化合物及びマグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物は、乾式工程にて、複合化合物前駆体及びリチウム化合物と混合することができる。
【0038】
前記リチウム化合物としては、特に限定がないが、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム・一水和物、無水水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、乳酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム、ピルビン酸リチウム、硫酸リチウム、及び酸化リチウム等が挙げられる。これらの中でも、前記複合化合物前駆体と混合して得た混合物からリチウム複合酸化物を調製する際に、容易に反応を進行させることができる点から、炭酸リチウム、水酸化リチウム・一水和物、及び無水水酸化リチウムが好ましい。
【0039】
前記複合化合物前駆体と、前記リチウム化合物と、任意のマンガン化合物、アルミニウム化合物及びマグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物との所望の割合とは、後述するリチウム複合酸化物の基本組成(組成式:Li
a(Ni
pCo
qMn
rAl
1−p−q−rMg
u)O
2)を有するような割合である。Liと、Ni、Co、(Mn及び/又はAl)、及び任意のMgの合計とのモル比[Li/(Ni+Co+(Mn及び/又はAl)+任意のMg)]、すなわち式中のaの範囲の具体例については、後に記載する。
【0040】
得られた混合物を、適宜条件を調整した酸化性雰囲気において焼成して、Liと、Niと、Coと、Mn、Al及びMgから選ばれた少なくとも1つ(ただし、Mn及びAlの少なくとも一方を含む)とを含有するリチウム複合酸化物を調製する。
【0041】
前記焼成時の加熱温度は、特に限定がないが、例えば、約700℃〜約1000℃であることが好ましい。この範囲の加熱温度で焼成を行うと、Liと、Ni、Co、Mn及び/又はAl、並びに任意のMgとが均一になり易く、酸素欠陥が増大する恐れもない。また、該焼成時の保持時間は、特に限定がないが、例えば、約3時間〜約7時間であることが好ましい。
【0042】
このような第1ステップで得られるリチウム複合酸化物の含有水分量は、通常、約80ppm〜約220ppmである。
【0043】
<第2ステップ>
第2ステップでは、前記第1ステップで得られたリチウム複合酸化物に、相対湿度30%以上80%以下の雰囲気において水分暴露処理を施す。
【0044】
一般的に正極や負極に用いられる電池材料は、通常、水分による悪影響を受ける成分(元素)を含んでいることが多い。よって、例えば正極活物質粒子粉末を構成するリチウム複合酸化物への水分暴露処理は、正極活物質粒子粉末の品質を大いに低下させることが懸念されるので、従来は行われていない。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、特定範囲の相対湿度の雰囲気において、第1ステップで得られたリチウム複合酸化物に水分暴露処理を施す第2ステップが備えられることが、大きな特徴の1つである。
【0046】
前記リチウム複合酸化物に水分暴露処理を施す際には、相対湿度を30%以上80%以下、好ましくは30%以上70%以下に調整する。該相対湿度を30%以上に調整することにより、リチウム複合酸化物が充分に水分暴露処理され、得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池の放電容量を上昇させ、充放電効率を向上させる効果、及び抵抗を改善する効果が充分に発揮される。また、該相対湿度を80%以下に調整することにより、得られる正極活物質粒子粉末の含有水分量が多くなり過ぎず、該正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池のサイクル特性の低下を小さく抑えることができるほか、非水電解質二次電池の正極を作製する際に、該正極活物質粒子粉末を含むスラリーがゲル化することがない。
【0047】
前記水分暴露処理を施す際の温度は、特に限定がないが、例えば、約20℃〜約30℃に調整することが好ましい。また、水分暴露処理を施す時間は、特に限定がないが、前記相対湿度の設定と併せて、得られる正極活物質粒子粉末の含有水分量が後述する好適な範囲となるように、例えば、約1分間〜約30分間とすることが好ましい。
【0048】
水分暴露処理には、例えば、通常の恒温恒湿槽を用いることができる。該恒温恒湿槽を、前記範囲の所定の相対湿度、及び、例えば前記範囲の所定の温度に設定し、第1ステップで得られたリチウム複合酸化物の粉末を、例えば前記範囲の所定の時間、該恒温恒湿槽内に載置することにより、リチウム複合酸化物に水分暴露処理が施される。
【0049】
このように、本実施形態に係る製造方法の第1ステップ及び第2ステップを経て調製される、正極活物質粒子粉末である水分暴露処理後のリチウム複合酸化物は、例えば、組成式:Li
a(Ni
pCo
qMn
rAl
1−p−q−rMg
u)O
2で表される基本組成を有する。
【0050】
前記組成式中、aは、第1ステップにて調製されたリチウム複合酸化物中の、(Ni+Co+(Mn及び/又はAl)+任意のMg)1モルに対するLiの量(モル)を示す。aの範囲は、0.96≦a≦1.15であることが好ましく、0.98≦a≦1.10であることがより好ましい。
【0051】
前記組成式中、pは、第1ステップにて調製されたリチウム複合酸化物中のNiの量(モル)を示す。pの範囲は、0<p≦0.97であることが好ましく、0.20≦p≦0.97であることがより好ましい。
【0052】
前記組成式中、qは、第1ステップにて調製されたリチウム複合酸化物中のCoの量(モル)を示す。qの範囲は、0<q≦0.50であることが好ましく、0.03≦q≦0.40であることがより好ましい。
【0053】
なお、前記組成式中、p及びqは、p+q<1.00を満足している。
【0054】
目的とする正極活物質粒子粉末がMnを含む場合、前記組成式中、rは、第1ステップにて調製されたリチウム複合酸化物中のMnの量(モル)を示す。rの範囲は、0<r≦0.50であることが好ましく、0<r≦0.40であり、p+q+r≦1.00であることがより好ましい。
【0055】
目的とする正極活物質粒子粉末がAlを含む場合、第1ステップにて調製されたリチウム複合酸化物中のAlの量(モル)は、(1−p−q−r)で表される。(1−p−q−r)の範囲は、0<(1−p−q−r)≦0.20であることが好ましく、0<(1−p−q−r)≦0.10であることがより好ましい。
【0056】
目的とする正極活物質粒子粉末がさらにMgを含む場合、第1ステップにて調製されたリチウム複合酸化物中のMgの量(モル)は、uで表される。uの範囲は、0<u≦0.20であることが好ましく、0<u≦0.15であることがより好ましい。
【0057】
なお、前記リチウム複合酸化物は、層状岩塩構造を有し、例えばLiMn
2O
4スピネル酸化物とは異なり、Liの固溶領域が極めて小さい。このため、該リチウム複合酸化物の調製直後の結晶中において、Liと、Ni、Co、Mn及び/又はAl、並びに任意のMgとの比[Li/(Ni+Co+(Mn及び/又はAl)+任意のMg)=a]は、前記のとおり、1.00から大きく外れることはない。また、本実施形態において、正極活物質粒子粉末は、一次粒子の集合体である凝集二次粒子によって形成されるため、粒子内には結晶粒界が存在する。
【0058】
さらに、本実施形態に係る正極活物質粒子粉末は、Ni、Co、Mn、Al、及びMg以外に、例えば、P、Ca、Ti、Y、Sn、Bi、Ce、Zr、La、Mo、Sc、Nb、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属を含有することができる。その含有形態には特に限定がなく、結晶格子におけるNi、Co、Mn、Al、及びMgから選ばれた少なくとも1種の一部と置換されて存在していてもよく、前記リチウム複合酸化物の凝集二次粒子の表面及び粒界に被覆されて存在していてもよい。
【0059】
なお、前記P、Ca、Ti、Y、Sn、Bi、Ce、Zr、La、Mo、Sc、Nb、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属を正極活物質粒子粉末に含有させるには、これら金属の化合物を用いて、前記湿式工程にて複合化合物前駆体を調製してもよく、前記複合化合物前駆体に、前記乾式工程にてこれら金属の化合物を混合させてもよい。
【0060】
第2ステップの水分暴露処理により、目的とする正極活物質粒子粉末の含有水分量は、300ppm以上1200ppm以下に調整されていることが好ましく、400ppm以上1100ppm以下に調整されていることがより好ましい。該水分暴露処理後に得られた正極活物質粒子粉末の含有水分量が300ppm以上であると、正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池の放電容量を上昇させ、充放電効率を向上させる効果がより充分に発揮される。該含有水分量が1200ppm以下であると、正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池のサイクル特性の低下を小さく抑えることができるほか、非水電解質二次電池の正極を作製する際に、該正極活物質粒子粉末を含むスラリーがゲル化することがない。
【0061】
同組成で水分暴露処理を施していない正極活物質粒子粉末と比較すると、水分暴露処理後に得られる正極活物質粒子粉末では、0.02%程度〜0.06%程度の結晶歪の低減(数値の減少)が認められる。
【0062】
水分暴露処理後に得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた場合、非水電解質二次電池の放電容量は、正極活物質粒子粉末の組成、含有水分量、結晶歪等によっても異なるが、例えば、Li
1.04(Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3)O
2を用いたときは、同組成で水分暴露処理を施していない正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた場合と比較して、水分暴露処理後に得られる正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池では、1mAh/g程度〜5mAh/g程度の放電容量の上昇(数値の増加)が認められる。
【0063】
同様に、水分暴露処理後に得られる前記正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた場合、非水電解質二次電池の充放電効率は、正極活物質粒子粉末の組成、含有水分量、結晶歪等によっても異なるが、同組成で水分暴露処理を施していない正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた場合と比較して、水分暴露処理後に得られる正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池では、1%程度〜2.5%程度の充放電効率の向上(数値の増加)が認められる。
【0064】
<第3ステップ>
前記のとおり、本実施形態に係る製造方法の第1ステップ及び第2ステップを経て、正極活物質粒子粉末となる水分暴露処理が施されたリチウム複合酸化物を調製することができるが、本実施形態に係る製造方法は、該水分暴露処理が施されたリチウム複合酸化物に加熱処理を施し、正極活物質粒子粉末から水分を乾燥させる第3ステップをさらに備えることが好ましい。
【0065】
前記水分暴露処理が施されたリチウム複合酸化物にさらに加熱処理を施して得られた正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いると、該非水電解質二次電池のサイクル特性、特に高温サイクル特性を、加熱処理前の正極活物質粒子粉末を用いた場合よりも向上させることができる。しかも、リチウム複合酸化物に水分暴露処理を施すことによって発現された効果(得られた特性)を含めて、各特性を維持した状態のままで正極活物質粒子粉末の含有水分量を低減させることができるので、非水電解質二次電池の正極としてより好適である。
【0066】
水分暴露処理が施されたリチウム複合酸化物に加熱処理を施す際には、加熱温度を、好ましくは180℃以上400℃以下、より好ましくは200℃以上350℃以下に調整する。該加熱温度を180℃以上に調整することにより、前記サイクル特性、特に高温サイクル特性の向上効果及び前記ゲル化の阻止効果が充分に発揮される。また、該加熱温度を400℃以下に調整することにより、正極活物質粒子粉末の含有水分量を充分に少なくすることができ、非水電解質二次電池の放電容量及び充放電効率がより好適な状態で維持される。
【0067】
加熱処理を施す時間は、特に限定がないが、前記加熱温度の設定と併せて、得られる正極活物質粒子粉末の含有水分量が後述する好適な範囲となるように、例えば、約1時間〜約6時間とすることが好ましい。ただし、Ni量が60mol%を超えるリチウム複合酸化物に関しては、酸素雰囲気下や脱炭酸雰囲気下にて実施することが好ましい。
【0068】
また、水分暴露処理が施されたリチウム複合酸化物に対する加熱処理は、例えば、20℃前後、30〜40%程度の相対湿度の雰囲気下にリチウム複合酸化物を曝した後、空気雰囲気下にて行えばよい。ただし、Ni量が60mol%を超えるリチウム複合酸化物に関しては、酸素雰囲気下や脱炭酸雰囲気下にて加熱処理を実施することが好ましい。
【0069】
加熱処理には、例えば、通常の焼成炉を用いることができる。該焼成炉を、例えば前記範囲の所定の加熱温度に設定し、第2ステップで得られた水分暴露処理後のリチウム複合酸化物を、例えば前記範囲の所定の時間、該焼成炉内に載置することにより、水分暴露処理後のリチウム複合酸化物に加熱処理が施される。
【0070】
このように、本実施形態に係る製造方法の第1ステップ及び第2ステップ、さらには第3ステップを経て調製される正極活物質粒子粉末の含有水分量は、100ppm以下に調整されていることが好ましく、90ppm以下に調整されていることがより好ましい。加熱処理後に得られた正極活物質粒子粉末の含有水分量が100ppm以下であると、正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池のサイクル特性、特に高温サイクル特性の向上効果及び前記スラリーのゲル化の阻止効果がより充分に発揮される。
【0071】
加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末の結晶歪は、正極活物質粒子粉末の組成、含有水分量等によっても異なるが、例えば、前記Li
1.04(Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3)O
2を用いたときは、0.40%程度以上0.46%程度以下となる。よって、加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末の結晶歪は、同組成で水分暴露処理及び加熱処理を施していない正極活物質粒子粉末の結晶歪である0.471%と比較して小さいことが認められる。
【0072】
加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた場合、非水電解質二次電池の放電容量は、正極活物質粒子粉末の組成、含有水分量、結晶歪等によっても異なるが、例えば、前記Li
1.04(Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3)O
2を用いたときは、167mAh/g程度以上172mAh/g程度以下となる。よって、加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の放電容量は、同組成で水分暴露処理及び加熱処理を施していない正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の放電容量である166.9mAh/gと比較した場合、同程度以上であることが認められる。
【0073】
同様に、加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた場合、非水電解質二次電池の充放電効率は、正極活物質粒子粉末の組成、含有水分量、結晶歪等によっても異なるが、例えば、前記Li
1.04(Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3)O
2を用いたときは、87%程度以上92%程度以下となる。よって、加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の充放電効率は、同組成で水分暴露処理及び加熱処理を施していない正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の充放電効率である87.3%と比較した場合、同程度以上であることが認められる。
【0074】
同様に、加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた場合、非水電解質二次電池の高温サイクル特性は、正極活物質粒子粉末の組成、含有水分量、結晶歪等によっても異なるが、例えば、前記Li
1.04(Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3)O
2を用いたときは、90%程度以上92%程度以下となる。よって、加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の高温サイクル特性は、同組成で水分暴露処理及び加熱処理を施していない正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の高温サイクル特性である90.7%と比較した場合、同程度であることが認められる。また、同組成で、水分暴露処理を施し、加熱処理を施していない正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池と比較して、加熱処理後に得られる正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池では、0.5%程度〜1.0%程度の高温サイクル特性の向上(数値の増加)が認められる。
【0075】
なお、前記含有水分量、結晶歪、及び放電容量の測定方法、並びに充放電効率及び高温サイクル特性の算出方法については、後の[実施例]にて詳細に説明する。
【0076】
[正極活物質粒子粉末]
本実施形態に係る正極活物質粒子粉末は、層状岩塩構造を有し、Liと、Niと、Coと、Mn、Al及びMgから選ばれた少なくとも1つ(ただし、Mn及びAlの少なくとも一方を含む)とを含有するリチウム複合酸化物を用いたものであり、前記本実施形態に係る製造方法によって得ることができる。該正極活物質粒子粉末は、例えば、前記組成式:Li
a(Ni
pCo
qMn
rAl
1−p−q−rMg
u)O
2で表される基本組成を有する。そして、該正極活物質粒子粉末は、前記[正極活物質粒子粉末の製造方法]にて記載したとおりの、含有水分量及び結晶歪等を有し、非水電解質二次電池の正極に用いた際に、該非水電解質二次電池の放電容量、充放電効率、及び高温サイクル特性等の特性を向上させるものであり、以下の特徴を有する。
【0077】
すなわち、本実施形態に係る正極活物質粒子粉末は、以下の式(1)で表される含有水分量の変化率(単位なし)が、0.3以上9.5以下であることを特徴とする。
含有水分量の変化率=|(W
2−W
1)/W
1| ・・・(1)
ここで、
W
1:リチウム複合酸化物の含有水分量(ppm)
W
2:正極活物質粒子粉末の含有水分量(ppm)
である。
【0078】
前記リチウム複合酸化物の含有水分量W
1は、本実施形態に係る製造方法における第1ステップを経て得られたリチウム複合酸化物、すなわち、水分暴露処理前のリチウム複合酸化物の含有水分量である。一方、前記正極活物質粒子粉末の含有水分量W
2は、第2ステップを経て得られた正極活物質粒子粉末、すなわち、水分暴露処理後のリチウム複合酸化物の含有水分量、又は、さらに第3ステップを経て得られた正極活物質粒子粉末、すなわち、加熱処理後のリチウム複合酸化物の含有水分量である。
【0079】
水分暴露処理によって、リチウム複合酸化物の含有水分量は、水分暴露処理前と比較して大きく増加し、得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池の放電容量を上昇させ、充放電効率を向上させる効果が充分に発揮される。一方、さらに加熱処理を行った場合には、リチウム複合酸化物の含有水分量は、加熱処理前と比較して減少するのは勿論のこと、水分暴露処理前と比較しても減少し、得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池のサイクル特性、特に高温サイクル特性の向上効果及び正極活物質粒子粉末を含むスラリーのゲル化の阻止効果が充分に発揮される。
【0080】
このように、第2ステップの水分暴露処理によって含有水分量が変化(増加)し、第3ステップの加熱処理を行っても含有水分量は変化(減少)するが、いずれの場合も、前記式(1)で表される正極活物質粒子粉末の含有水分量の変化率は、0.3以上9.5以下であり、0.5以上9.0以下であることが好ましい。正極活物質粒子粉末は、その含有水分量の変化率が0.3以上であるので、その結果正極として用いられた際に非水電解質二次電池の特性を悪化させることがない。また、正極活物質粒子粉末は、その含有水分量の変化率が9.5以下であるので、スラリー化の際にゲル化することがなく、非水電解質二次電池の正極として充分に作用する。
【0081】
さらに、本実施形態に係る正極活物質粒子粉末は、以下の式(2)で表される結晶歪の低下率(単位なし)が、−0.25以上0未満であることが好ましい。
結晶歪の低下率=(S
2−S
1)/S
1 ・・・(2)
ここで、
S
1:リチウム複合酸化物の結晶歪(%)
S
2:正極活物質粒子粉末の結晶歪(%)
である。
【0082】
前記リチウム複合酸化物の結晶歪S
1は、本実施形態に係る製造方法における第1ステップを経て得られたリチウム複合酸化物、すなわち、水分暴露処理前のリチウム複合酸化物の結晶歪である。一方、前記正極活物質粒子粉末の結晶歪S
2は、第2ステップを経て得られた正極活物質粒子粉末、すなわち、水分暴露処理後のリチウム複合酸化物の結晶歪、又は、さらに第3ステップを経て得られた正極活物質粒子粉末、すなわち、加熱処理後のリチウム複合酸化物の結晶歪である。
【0083】
水分暴露処理によっても、さらなる加熱処理を行っても、リチウム複合酸化物の結晶歪は、水分暴露処理前と比較して低下し、得られる正極活物質粒子粉末を非水電解質二次電池の正極に用いた際に、非水電解質二次電池の放電容量を上昇させ、充放電効率を向上させる効果が充分に発揮される。
【0084】
このように、第2ステップの水分暴露処理によって含有水分量が低下し、第3ステップの加熱処理を行っても含有水分量は低下するが、いずれの場合も、前記式(2)で表される正極活物質粒子粉末の結晶歪の低下率は、−0.25以上0未満であることが好ましく、−0.20以上0未満であることがより好ましい。正極活物質粒子粉末は、その結晶歪の低下率が−0.25以上であると、正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の高温サイクル特性が悪化することがない。また、正極活物質粒子粉末は、その結晶歪の低下率が0未満、すなわち、水分暴露処理前と比較して結晶歪が低下しているので、非水電解質二次電池の特性を向上し得る正極として充分である。
【0085】
[非水電解質二次電池]
本実施形態に係る非水電解質二次電池は、前記のごとき本実施形態に係る正極活物質粒子粉末を正極に用いたものである。該非水電解質二次電池について説明する。
【0086】
非水電解質二次電池は、前記正極活物質粒子粉末からなる正極活物質を含む正極、負極、及び電解質から構成される。
【0087】
前記正極は、特に限定がないが、通常、正極活物質、導電剤、及び結着剤を混練して得られる。該導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンブラック、及び黒鉛等が挙げられる。該結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0088】
前記負極は、負極活物質からなる。該負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/スズ合金、ケイ素、ケイ素/カーボン複合体、及びグラファイト等が挙げられる。
【0089】
前記電解質としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)以外に、過塩素酸リチウム(LiClO
4)及び四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)等のリチウム塩の少なくとも1種類が挙げられ、これらを溶媒に溶解して電解液とすることができる。
【0090】
前記電解液の溶媒としては、例えば、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との組み合わせ以外に、炭酸プロピレン(PC)、及び炭酸ジメチル(DMC)等を基本構造としたカーボネート類や、ジメトキシエタン(DME)等のエーテル類の少なくとも1種類を含む有機溶媒を用いることができる。
【0091】
[作用]
本発明において重要な点は、本発明に係る正極活物質粒子粉末は、水分暴露して結晶歪を小さくすることによる効果を得ることと、吸収した水分を乾燥させることにある。よって、このような正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池は、充放電効率が向上し、抵抗が改善されるということである。
【0092】
加えて、本発明において重要な点は、本発明に係る製造方法では、Liと、Niと、Coと、Mn、Al及びMgから選ばれた少なくとも1つ(ただし、Mn及びAlの少なくとも一方を含む)とを含有するリチウム複合酸化物に、特定の相対湿度範囲の雰囲気、すなわち、相対湿度30%以上80%以下の雰囲気において水分暴露処理を施し、その後加熱処理することである。水分暴露処理が施されていない従来のリチウム複合酸化物とは異なり、このような水分暴露処理を一度施した正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池は、前記のとおり、充放電効率が向上し、抵抗も改善される。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明の代表的な実施例と比較例とを挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0094】
(正極活物質粒子粉末の組成)
正極活物質粒子粉末の組成は、1.0gの試料を25mlの20%塩酸溶液中で加熱溶解させ、冷却後100mlメスフラスコに移し、純水を入れて調整液を作製した。測定にはICAP[Optima8300、(株)パーキンエルマー製]を用い、各元素を定量して決定した。
【0095】
(正極活物質粒子粉末の化合物の相)
正極活物質粒子粉末の化合物の相の同定には、XRDを用いた。XRDは、X線回折装置[SmartLab、(株)リガク製]にて、線源はCuKα、加速電圧及び電流はそれぞれ45kV及び200mAとし、2θ/θが15°〜122°の範囲を、スリット2/3、0.02°刻みで1.2°/minステップスキャンを行ってXRD回折を得た。
【0096】
(含有水分量)
各化合物の含有水分量(ppm)は、カールフィッシャー法(電量滴定法)に基づき、150℃までに発生した水分量とした。
【0097】
(正極活物質粒子粉末の圧縮密度)
正極活物質粒子粉末の圧縮密度(g/cm
3)は、5gの正極活物質粒子粉末をΦ15mmの金型に入れて、2t/cm
2の加圧を行った際の数値とした。
【0098】
(正極活物質粒子粉末の残存リチウム量)
正極活物質粒子粉末の残存リチウム量は、ワルダー法を用いて測定した。具体的には、水100mlに対して、正極活物質粒子粉末20gを添加し、20分間室温下で攪拌した後、固形分を濾別、除去して得られた上澄み液について、0.2Nの塩酸を用いて滴定して求めた。横軸に滴定量(ml)、縦軸に上澄み液のpHをプロットして描いたpH曲線上で、傾の最も大きくなる2つの点を、滴定量の少ない方から第一滴定点及び第二滴定点とし、これらの点での滴定量から、それぞれの量を以下の式を用いて計算し、残存リチウム量とした。後の表2中には、残存リチウム量(ppm)として示す。なお、計算式中の各略号は、以下のとおりである。
T
1:第一滴定点までの滴定量(ml)
T
2:第二滴定点までの滴定量(ml)
C
HCl:滴定に使用した塩酸の濃度(mol/l)
F
HCl:滴定に使用した塩酸のファクター
M
LiOH:水酸化リチウムの分子量
M
Li2CO3:炭酸リチウムの分子量
W:正極活物質粒子粉末の重量(g)
【0099】
残存水酸化リチウム量(重量%)
={T
2−2×(T
2−T
1)}×C
HCl×F
HCl×M
LiOH×2×100/(W×1000)
残存炭酸リチウム量(重量%)
=(T
2−T
1)×C
HCl×F
HCl×M
Li2CO3×2×100/(W×1000)
なお、残存リチウム量は、残存水酸化リチウム量を残存炭酸リチウム量に変換し、元の残存炭酸リチウム量と合算とした数値とした。
【0100】
<コインセルの作製>
電池評価に係るコインセルは、以下のように作製した。まず、後に説明する各実施例、比較例、及び参考例に係る正極活物質粒子粉末としてのリチウム複合酸化物90重量%と、導電剤としてアセチレンブラック3重量%及びグラファイト3重量%と、結着剤としてN−メチルピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン4重量%とを混合した後、Al金属箔に塗布し、120℃にて乾燥してシートを作製した。このシートを14mmΦに打ち抜いた後、1.5t/cm
2で圧着したものを正極とした。負極は、16mmΦに打ち抜いた厚さ500μmの金属リチウムとした。電解液は、1mol/LのLiPF
6を溶解したECとDMCとを、EC:DMC=1:2(体積比)で混合した溶液とした。これら正極、負極、及び電解液を用いて、2032型コインセルを作製した。
【0101】
(非水電解質二次電池の放電容量及び充放電効率)
前記コインセルを用い、25℃の環境下で、電圧3.0Vから4.3V(cc−cv)まで0.1Cレートの電流密度で充電を行い、充電容量を測定した。次いで、同環境下で、電圧4.3Vから3.0V(cc)まで0.1Cレートの電流密度で放電を行い、放電容量(mAh/g)を測定した。充電容量に対する放電容量の割合(放電容量/充電容量)から、充放電効率(%)を求めた。
【0102】
(非水電解質二次電池の内部抵抗)
インピーダンスアナライザー[1252型、ソーラトロン社製]にて正極によるシンメトリックセルを組み立て、インピーダンス測定を行った。インピーダンス測定結果としてCole−Coleプロットを得た。
【0103】
(非水電解質二次電池の高温サイクル特性)
前記コインセルを用い、60℃の環境下で、電圧3.0Vから4.3V(cc−cv)まで0.5Cレートの電流密度での充電と、電圧4.3Vから3.0V(cc)まで1Cレートの電流密度での放電とを100回繰り返したときの、1回目の放電容量に対する100回目の放電容量の割合(維持率=100回目の放電容量/1回目の放電容量)を求め、高温サイクル特性(%)とした。
【0104】
(正極活物質粒子粉末の結晶歪)
前記化合物の相の同定と同様にして得た正極活物質粒子粉末のXRD回折を用い、Rietveld解析を行って結晶歪(%)を算出した。その後、該正極活物質粒子粉末を高湿槽にて所定の湿度で保存後、再び得たXRD回折を用い、Rietveld解析を行った。なお、Rietveld解析には、例えば、「R.A.Young,ed.,“The Rietvelt Method”,Oxford University Press(1992)」を参考にした。
【0105】
<参考例1>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを、各元素の割合(Ni/Co/Mn)がモル比で5.0/2.0/3.0となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
【0106】
次に、炭酸リチウムと、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びMnとの割合[Li/(Ni+Co+Mn)]が1.04となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸化性雰囲気において、930℃で5時間保持して焼成し、[Li
1.04(Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3)O
2]であるリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0107】
<実施例1>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度40%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0108】
<実施例2>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度60%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0109】
<実施例3>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度30%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0110】
<実施例4>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度80%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0111】
<実施例5>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度70%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0112】
<実施例6>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度60%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施した。
【0113】
次に、水分暴露処理後のリチウム複合酸化物粒子粉末を、温度300℃に設定した焼成炉内に3時間載置し、加熱処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0114】
<実施例7>
実施例6において、水分暴露処理後のリチウム複合酸化物粒子粉末を、温度200℃に設定した焼成炉内に3時間載置し、加熱処理を施したほかは、実施例6と同様にして正極活物質粒子粉末を得た。
【0115】
<実施例8>
実施例6において、水分暴露処理後のリチウム複合酸化物粒子粉末を、温度400℃に設定した焼成炉内に3時間載置し、加熱処理を施したほかは、実施例6と同様にして正極活物質粒子粉末を得た。
【0116】
<参考例2>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを、各元素の割合(Ni/Co/Mn)がモル比で1.0/1.0/1.0となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
【0117】
次に、炭酸リチウムと、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びMnとの割合[Li/(Ni+Co+Mn)]が1.08となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸化性雰囲気において、960℃で5時間保持して焼成し、[Li
1.08(Ni
0.33Co
0.33Mn
0.33)O
2]であるリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0118】
<実施例9>
参考例2で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度60%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0119】
<参考例3>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを、各元素の割合(Ni/Co/Mn)がモル比で6.0/2.0/2.0となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
【0120】
次に、水酸化リチウム・一水和物と、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びMnとの割合[Li/(Ni+Co+Mn)]が1.02となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸化性雰囲気において、900℃で5時間保持して焼成し、[Li
1.02(Ni
0.6Co
0.2Mn
0.2)O
2]であるリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0121】
<実施例10>
参考例3で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度60%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0122】
<参考例4>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及びアルミン酸ナトリウムを、各元素の割合(Ni/Co/Al)がモル比で8.0/1.5/0.5となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及びアルミン酸ナトリウムを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
【0123】
次に、水酸化リチウム・一水和物と、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びAlとの割合[Li/(Ni+Co+Al)]が1.01となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸化性雰囲気において、740℃で5時間保持して焼成し、[Li
1.01(Ni
0.80Co
0.15Al
0.05)O
2]であるリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0124】
<実施例11>
参考例4で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度60%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0125】
<比較例1>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度20%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。
【0126】
<比較例2>
参考例1で得られたリチウム複合酸化物粒子粉末を、相対湿度90%、温度30℃に設定した恒温恒湿器内に10分間載置し、水分暴露処理を施して、正極活物質粒子粉末を得た。なお、この正極活物質粒子粉末は、スラリー化の際にゲル化が発生し、非水電解質二次電池の正極とすることができなかった。
【0127】
実施例1〜11、比較例1〜2、及び参考例1〜4で得られた、リチウム複合酸化物粒子粉末及び正極活物質粒子粉末の各特性を、各々前記方法に従って調べた。その結果を以下の表1及び表2に示す。なお、正極活物質粒子粉末の組成、水分暴露処理の条件、及び加熱処理の条件等は、以下の表1に纏めて示す。
【0128】
さらに、実施例2で得られた正極活物質粒子粉末について、前記方法に従って相を同定した。その結果を
図1に示す。また、実施例1及び参考例1において、前記方法に従って非水電解質二次電池のインピーダンスを測定し、Cole−Coleプロットを得た。これを
図2に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
表1の条件及び結果、並びに表2の結果のとおり、実施例1〜5及び9〜11のようにリチウム複合酸化物に水分暴露処理を施して得られた正極活物質粒子粉末も、実施例6〜8のようにさらに加熱処理を施して得られた正極活物質粒子粉末も、0.3以上9.5以下といった特定範囲の含有水分量の変化率を有し、かつ、−0.25以上0未満といった特定範囲の結晶歪の低下率を有する。
【0132】
表1の条件及び表2の結果のとおり、実施例1〜5と参考例1及び比較例1、2との比較、実施例9と参考例2との比較、実施例10と参考例3との比較、並びに、実施例11と参考例4との比較から、各実施例のように相対湿度30%以上80%以下の雰囲気においてリチウム複合酸化物に水分暴露処理を施した場合には、各参考例のように水分暴露処理を施さなかった場合や、各比較例のように30%未満又は80%を超える相対湿度の雰囲気においてリチウム複合酸化物に水分暴露処理を施した場合と比較して、非水電解質二次電池の放電容量が上昇(数値が増加)し、充放電効率が向上(数値が増加)していることが分かる。
【0133】
また、実施例6〜8のように水分暴露処理後のリチウム複合酸化物にさらに加熱処理を施した場合には、加熱処理を施していない実施例2と比較して、正極活物質粒子粉末の含有水分量が著しく減少している。その結果、実施例6〜8では、正極活物質粒子粉末の結晶歪の低減や、非水電解質二次電池の放電容量及び充放電効率等の特性が、加熱処理を施していない実施例2とほぼ同程度に維持されているうえに、高温サイクル特性が、水分暴露処理前の参考例1とほぼ同程度まで向上していることが分かる。
【0134】
さらに、
図2に示すように、参考例1の非水電解質二次電池と比較して、実施例1の非水電解質二次電池のCole−Coleプロットが描く円弧は小さく、リチウム複合酸化物に水分暴露処理を施した正極活物質粒子粉末を正極に用いることにより、実施例1の非水電解質二次電池では、抵抗が改善されていることが分かる。