特許第6986888号(P6986888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6986888-ナット締め装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986888
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ナット締め装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20211213BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B25B23/14 620G
   B23P19/06 K
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-147230(P2017-147230)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-25593(P2019-25593A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大原 雅洋
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−083123(JP,A)
【文献】 特開2016−049598(JP,A)
【文献】 実開昭63−147229(JP,U)
【文献】 実開昭58−084821(JP,U)
【文献】 米国特許第05211061(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットに嵌合する嵌合部を備えモータの回転駆動を受けて回転するボックスビットと、このボックスビット内を摺動自在かつ前記ナットを螺入するおねじの上面に当接可能なガイド軸と、前記モータを回転駆動制御する制御装置とを備えたナット締め装置において、
前記ボックスビットは、これと一体に回転するよう接続された連結軸を備え、
前記連結軸は、前記ガイド軸を挿通自在な挿通穴と、この挿通穴を直交する方向へ貫通した長穴とを備えて成り、
前記ガイド軸は、前記長穴に沿って摺動自在に支持された抜け止め部材に係止されて成り、
前記抜け止め部材は、前記連結軸の外形に摺動自在に配された検出板を前記ガイド軸とともに係止して成り、
前記検出板は、これを常時ボックスビット側へ付勢する付勢部材に付勢されて成り、
前記制御装置は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ガイド軸とともに軸方向へ相対移動する前記検出板との距離を検出するセンサを接続して成り、前記センサの検出信号に基づいて締結した前記ナットとこれに螺合したおねじとの螺合量を適切か否か判定する判定部を備えて成ることを特徴とするナット締め装置。
【請求項2】
前記ボックスビットが、磁化されていることを特徴とする請求項1に記載のナット締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットをおねじへ締結した後に当該ナットとおねじとの螺合寸法に基づいて締結の良否を判定するナット締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナット締め装置は、特許文献1に開示されているようにおねじに螺合可能なナットに嵌合するボックスビットと、このボックスビットに内挿され前記ナットのめねじに挿通可能なガイド軸と、前記ボックスビットに回転を付与するモータと、前記ナットを一時的に保持し前記ボックスビットへ受け渡すチャックと、前記ボックスビットを前記おねじへ向かって昇降自在に移動可能な昇降ユニットとを備えて成る。
【0003】
このように構成された従来のナット締め装置は、ナットを前記チャック内に保持すると前記モータMおよび昇降ユニットがそれぞれ作動する。これにより、前記ボックスビットは、前記おねじへ接近する方向へ下降しながら回転し、前記ガイド軸がチャックに保持されているナットへ挿通される。この後もボックスビットが下降するので、前記ナットは当該ボックスビットに嵌合し回転し始める。やがて、チャックは、回転かつ下降するボックスビットに嵌合した前記ナットによって押し広げられ、前記ガイド軸の先端が前記おねじの上面に当接する。これにより、前記ナットは、ガイド軸およびボックスビットにガイドされて前記おねじと螺合し始め、予め設定されてる締付けトルクまで前記モータの回転を付与される。よって、従来のナット締め装置は、所定の締付けトルクによって前記ナットをおねじへ締結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61-141075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のナット締め装置は、予め設定した締付けトルクに達するとナットの締結を完了するので、おねじまたはナットのねじ山形の成形不良などがある場合、ナットを正規の高さまで螺入できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ナットに嵌合する嵌合部を備えモータの回転駆動を受けて回転するボックスビットと、このボックスビット内を摺動自在かつ前記ナットを螺入するおねじの上面に当接可能なガイド軸と、前記モータを回転駆動制御する制御装置とを備えたナット締め装置において、前記ボックスビットは、これと一体に回転するよう接続された連結軸を備え、前記連結軸は、前記ガイド軸を挿通自在な挿通穴と、この挿通穴を直交する方向へ貫通した長穴とを備えて成り、前記ガイド軸は、前記長穴に沿って摺動自在に支持された抜け止め部材に係止されて成り、前記抜け止め部材は、前記連結軸の外形に摺動自在に配された検出板を前記ガイド軸とともに係止して成り、前記検出板は、これを常時ボックスビット側へ付勢する付勢部材に付勢されて成り、前記制御装置は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ガイド軸とともに軸方向へ相対移動する前記検出板との距離を検出するセンサを接続して成り、前記センサの検出信号に基づいて締結した前記ナットとこれに螺合したおねじとの螺合量を適切か否か判定する判定部を備えて成ることを特徴とする。なお、前記ボックスビットは、磁化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明のナット締め装置は、ボックスビットに対して相対移動する検出板を検出するセンサを備え、当該センサの検出信号に基づいてナットとおねじとの螺合量を適切か否か判定する判定部を備えるので、ナットNのめねじに全ておねじが噛み合っていないようなナットの締結を不良であると判断できる利点がある。また、ボックスビットが磁化されているため、ナットを磁力により吸着保持可能となる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るナット締め装置の概略を説明するための一部切欠き断面図である。
図2図1のナット締め装置によりナットを螺入している状態を示した動作説明図である。
図3図1のナット締付装置によりナットを締結し終えた状態を示した動作説明図である。
図4】正規よりも全長の短いおねじへナットを締結し終えた状態を示した動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るナット締め装置について図1ないし図4に基づき説明する。本発明のナット締め装置1は、予め設定された回転数により回転駆動するモータMと、このモータMの出力軸M1に接続された連結軸3と、この連結軸3の先端に接続されたボックスビットBと、前記モータMへ回転駆動指令を発する制御装置20とから構成される。
【0010】
前記ボックスビットBは、おねじSoに螺合するナットNを嵌合可能な嵌合部Baと、この嵌合部Baに連通し前記ナットNのめねじよりも大径の貫通穴Bbと、前記連結軸3の先端部に螺合する連結ねじ部Bcとを備えて成る。また、前記嵌合部Baは磁化されており、鉄製のナットNを吸着保持可能に構成されている。
【0011】
前記連結軸3は、前記連結ねじ部Bcに螺合する先端部と、軸方向へ延び前記貫通穴Bbに連通する袋穴3bと、この袋穴3bに対して直交する方向へ延び当該袋穴3bを貫通する長穴3a,3aと、この外周に配された後記検出板4を抜け落ちないよう規制する軸用止め輪9とを備える。
【0012】
前記モータMは、これを固定する取付板2に載置されており、この取付板2の一端から突出する出力軸M1を備えて成る。この出力軸M1は、前記連結軸3を連結可能に構成されており、前記連結軸3およびボックスビットBが当該出力軸M1と一体になって回転する。また、前記取付板2には、前記検出板4のつば部4cを検出することで検出信号を発するセンサ10が配置されており、当該センサ10は、前記制御装置20へ配線接続されて成る。
【0013】
前記センサ10は、この一端へ接近する部材が所定距離まで近づくとONまたはOFFの信号を発する近接センサまたは接近する部材までの距離を適宜出力するレーザセンサの何れかで構成される。
【0014】
前記検出板4は、前記連結軸3を挿通可能な摺動穴4aと、この摺動穴4aに対して直交し前記長穴3a,3aに連通するピン穴4bと、前記摺動穴4aよりも大径のつば部4cとを備えて成り、前記取付板2の下面および前記つば部4cの上面に常時当接する付勢部材5に付勢されて成る。
【0015】
前記連結軸3の袋穴3bには、前記ナットNのめねじに挿通可能かつ前記おねじSoの上面に当接可能なガイド軸6が配置されており、このガイド軸6は、その他端に取り付けられた抜け止め部材7を固着して成る。この抜け止め部材7は、前記ピン穴4bに挿通され前記長穴3a,3aを通過するよう配されて成る。これにより、抜け止め部材7は、長穴3a,3aの範囲においてガイド軸6および検出板4とともに一体に軸方向へ移動することができる。よって、前記検出板4は、前記付勢部材5の付勢力に抗して軸方向へ摺動するので、前記ボックスビットBに対して相対移動可能となっている。
【0016】
前記制御装置20は、前記出力軸M1を回転駆動するために必要な各条件などを予め記憶する記憶部を備えて成り、この記憶した条件である出力軸M1の回転数およびナットNの締付けトルクなどに基づき前記モータMを回転駆動制御して成る。また、制御装置20は、センサ10の出力信号に基づき締結したナットNの高さ位置とおねじSoの上面高さ位置との関係性を判断してナット締結の良否を判定する判定部を備えて成る。
【0017】
前記記憶部は、上述した各条件を記憶するのみならず、前記判定部によってナット締結の良否を判定する基準となる数値も予め記憶可能に構成されており、この数値は、前記センサ10がレーザセンサの場合に使用され、上下限の範囲として予め記憶されるものである。
【0018】
このように構成された本発明のナット締め装置1は、図1に示すように被締結物Wから突出しているおねじSoへ螺入するナットNを作業者(図示せず)により予めボックスビットBに吸着保持させ、前記ガイド軸6の先端が当該ナットNのめねじへ挿通された状態となる。
【0019】
次に作業者は、図示しないスイッチをONして制御装置20へスタート信号を入力する。これにより、制御装置20は、前記モータMへ回転駆動指令を送り前記回転数および締付けトルクに基づいてモータMを回転駆動制御する。また、この時、作業者は、前記取付板2を把持して回転するボックスビットBを図2に示すように下方へ押し下げる。
【0020】
これにより、ボックスビットBとともに回転するナットNが前記おねじSoへ螺合し始め、当該おねじSoの上面に前記ガイド軸6の先端が当接する。このようにガイド軸6の先端がおねじSoの上面に当接すると、これ以降はナットNが前記被締結物Wに当接するまでの間、前記ガイド軸6が回転するボックスビットBに対して相対移動する。これにより、前記付勢部材5は、前記抜け止め部材7を介してガイド軸6と一体に上方へ移動する前記検出板4によって圧縮する方向へ弾性変形する。
【0021】
やがて、図3および図4に示すように前記ナットNが被締結物Wに当接して前記締付けトルクに達すると、前記制御装置20は、モータMの回転を停止させるとともに、前記センサ10から出力される検出信号の有無または上述したナットNおよびおねじSoの高さの関係性を前記判断部によって判定する。なお、この判定結果であるナット締結の合否は、制御装置20に設置されたランプやブザーなどを介して作業者へ知らせられる。
【0022】
ここで、判定結果が合格である場合を図3を用いて説明し、次に不合格である場合を図4を用いて説明する。なお、この合否判定は、ナットNのめねじへのおねじSoの噛み合い量を基に判定されている。
【0023】
まず、判定結果が合格である図3は、前記締付けトルクに達するまで締結されたナットNとおねじSoとの位置関係が示されており、前記おねじSoの上面が前記ナットNの上面から突出している。つまり、前記ナットNのめねじは、図3に示すおねじSoに100%螺合している。
【0024】
一方、判定結果が不合格である図4は、締付けトルクに達するまで締結されたナットNの上面がおねじSoの上面よりも上方に位置しており、当該ナットNのめねじは、図4に示すおねじSoと約60%螺合している。
【0025】
前記制御装置20は、図3または図4に示すようにナットNとおねじSoとの位置関係の違いからナットNの螺合量の合否を判定部によって判定する。具体的には、前記センサが近接センサであればこれから出力される検出板4の有無を意味する前記検出信号から螺合量の合否が判定され、前記センサがレーザセンサであればこれから出力される検出板4の上面までの距離を意味する数値信号に基づいて螺合量の合否が判定されている。
【0026】
このように、本発明のナット締め装置1は、センサから取得した信号に基づき締付けトルクの良否に加えてナットNのめねじの螺合量が適切か否か判断しているので、締付けトルクの合否判定に加えて適切な螺合量が得られているか判定し、より詳細なナットの締結良否を評価することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 … ナット締め装置
3 … 連結軸
3a… 長穴
3b… 挿通穴
4 … 検出板
6 … ガイド軸
7 … 抜け止め部材
10 … センサ
20 … 制御装置
B … ボックスビット
M … モータ
N … ナット
図1
図2
図3
図4