【文献】
平川圭祐他,シリコン光導波路との結合に適した細径コア光ファイバ,フジクラ技報,日本,株式会社フジクラ,2017年04月10日,No.130,pp.7-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔光ファイバの構造〕
本発明の一実施形態に係る光ファイバ1の構造について、
図1を参照して説明する。
図1の上段は、光ファイバ1の構造を示す断面図であり、
図1の下段は、光ファイバ1の屈折率分布を示すグラフである。
【0020】
光ファイバ1は、石英ガラスを主成分とする円柱状の構造体であり、
図1の上段に示すように、(1)円形(半径r1)状の断面を有するコア11と、(2)コアの側面を覆う、円環(内周半径r1,外周半径r3)状の断面を有するクラッド12と、を備えている。クラッド12は、(2a)コアの側面を覆う、円環(内周半径r1,外周半径r2)状の断面を有する内側クラッド12aと、(2b)内側クラッド12aの側面を覆う、円環(内周半径r2,外周半径r3)状の断面を有する外側クラッド12bと、を含む。なお、光ファイバ1は、(4)外側クラッド12bの外側面を覆う、円環状の断面を有する保護被覆層(不図示)を更に備えていてもよい。
【0021】
コア11は、アップドーパントであるゲルマニウム(Ge)が添加された石英ガラスにより構成されている。コア11の屈折率分布は、
図1の下段に示す一様分布であるか、又は、
図1の下段に示す一様分布により近似される。コア11の屈折率n1は、
図1の下段に示すように、後述する外側クラッド12bの屈折率n2bよりも高くなる。なお、コア11の屈折率分布が完全な一様分布でない場合、コア11の屈折率n1とは、コア11の屈折率の平均値のことを指す。コア11の屈折率n1と外側クラッド12bの屈折率n2bとから、Δ1={(n1−n2b)/n1}×100により定義される量Δ1を、外側クラッド12bに対するコア11の比屈折率差と呼ぶ。
【0022】
コア11に添加するアップドーパントの濃度は、比屈折率差Δ1が0.7%以上4%以下になるように設定されていることが好ましく、比屈折率差Δ1が0.9%以上4%以下になるように設定されていることが更に好ましい。
【0023】
比屈折率差Δ1を小さくなり過ぎると、曲げ損失が許容範囲の上限を上回るという問題を生じ得る。例えば、比屈折率差を0.9%よりも小さくすると、曲げ半径を5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失が0.1dB/turnを上回るという問題を生じ易くなる。また、比屈折率差を0.7%よりも小さくすると、曲げ半径を7.5mmとしたときの1ターンあたりの曲げ損失が波長1550nmにおいて0.1dBを上回るという問題を生じ易くなる。比屈折率差Δ1を上記のように設定すれば、このような問題が生じ難くなる。
【0024】
逆に、比屈折率差Δ1を大きく設定し過ぎると、光ファイバ1の母材を製造する際に、コア−クラッド間に生じる応力が大きくなり、その結果、旋盤等を用いて母材を加工する際に、母材が割れ易くなるという問題を生じ得る。比屈折率差Δ1を上記のように設定すれば、このような問題が生じ難くなる。また、SiO2に対するGeO2の添加効率の観点からも、比屈折率差Δ1は4%以下であることが好ましい。
【0025】
なお、本実施形態においては、ゲルマニウムをアップドーパントとしてコア11に添加する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、ゲルマニウムの代わりにリン(P)をアップドーパントとしてコア11に添加する構成を採用してもよいし、ゲルマニウムに加えてリンをアップドーパントとしてコア11に添加する構成を採用してもよい。
【0026】
内側クラッド12aは、ダウンドーパントであるフッ素(F)とアップドーパントであるゲルマニウム(Ge)及びリン(P)とが添加された石英ガラスにより構成されている。内側クラッド12aに添加されたアップドーパントは、コア11に添加されたアップドーパントの加熱拡散を促進するためのものである。内側クラッド12aに添加されたダウンドーパントは、内側クラッド12aに添加されたアップドーパントによる屈折率低下を相殺するためのものである。内側クラッド12aの屈折率分布は、
図1の下段に示す一様分布であるか、又は、
図1の下段に示す一様分布により近似される。内側クラッド12aの屈折率n2aは、
図1の下段に示すように、後述する外側クラッド12bの屈折率n2bと実質的に同一になる。なお、内側クラッド12aの屈折率分布が完全な一様分布でない場合、内側クラッド12aの屈折率n2aとは、内側クラッド12aの屈折率の平均値のことを指す。内側クラッド12aの屈折率n2aと外側クラッド12bの屈折率n2bとから、Δ2={(n2a−n2b)/n2a}×100により定義される量Δ2を、外側クラッド12bに対する内側クラッド12aの比屈折率差と呼ぶ。
【0027】
内側クラッド12aに添加するダウンドーパント及びアップドーパントの濃度は、比屈折率差Δ2の絶対値|Δ2|が0.1%以下となるように設定されていることが好ましい。
【0028】
比屈折率差Δ2の絶対値|Δ2|が大きくなり過ぎると、コア11と内側クラッド12aとの屈折率差が光ファイバ1の光学特性に無視できない影響を与える。例えば、比屈折率差Δ2を−0.1よりも小さくすると、内側クラッド12aによるコア11への光の閉じ込めが強くなり、カットオフ波長が許容範囲の上限値を上回る。また、比屈折率差Δ2を0.1よりも大きくすると、内側クラッド12aによるコア11への光の閉じ込めが弱くなり、曲げ損失が許容範囲の上限を上回るという問題を生じ得る。比屈折率差Δ2を上記のように設定すれば、このような問題が生じ難くなる。
【0029】
なお、本実施形態においては、フッ素をダウンドーパントとして内側クラッド12aに添加する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、フッ素の代わりにホウ素(B)をダウンドーパントとして内側クラッド12aに添加する構成を採用してもよいし、フッ素に加えてホウ素をダウンドーパントとして内側クラッド12aに添加する構成を採用してもよい。また、本実施形態においては、ゲルマニウム及びリンの両方をアップドーパントとして内側クラッド12aに添加する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ゲルマニウムのみをアップドーパントとして内側クラッド12aに添加する構成を採用してもよいし、リンのみをアップドーパントとして内側クラッド12aに添加する構成を採用してもよい。
【0030】
外側クラッド12bは、塩素(Cl)以外のドーパントが意図的に添加されていない石英ガラスにより構成されている。外側クラッド12bの屈折率分布は、
図1の下段に示す一様分布であるか、又は、
図1の下段に示す一様分布により近似される。外側クラッド12bを構成する石英ガラスには、アップドーパントもダウンドーパントも添加されていないので、外側クラッド12bの屈折率n2bは、純粋石英ガラスの屈折率1.46と実質的に同一になる。なお、外側クラッド12bの屈折率分布が完全な一様分布でない場合、外側クラッド12bの屈折率n2bとは、外側クラッド12bの屈折率の平均値のことを指す。
【0031】
以上のように、光ファイバ1においては、内側クラッド12aにダウンドーパントが含まれている。このダウンドーパントは、(1)それ自身がコア11に熱拡散することにより、コア11の屈折率n1を低下させると共に、内側クラッド12aの屈折率n2aを上昇させる作用と、(2)コア11に添加されたアップドーパントの内側クラッド12aへの熱拡散を促進することにより、内側クラッド12aの屈折率n2aを上昇させる作用とを有する。総じて言うと、このダウンドーパントは、コア11と内側クラッド12aとの屈折率差n1−n2aを小さくする作用を有する。このため、光ファイバ1は、加熱によりコア径を拡大することが可能なTEC(Thermally-Diffused Expanded Core)ファイバとして機能する。
【0032】
〔コア径とコアΔとの好ましい組み合わせ〕
光ファイバ1におけるコア径とモードフィールド径との関係について、
図2及び
図3を参照して説明する。なお、光ファイバ1のコア径とは、コア11の直径(
図1におけるr1の2倍)のことを指す。以下では、光ファイバ1のコア径を記号Rで表す。また、光ファイバ1のモードフィールド径とは、光ファイバ1の断面における基本モードの強度分布に関して、光強度がピーク強度の1/e
2倍(ピーク強度の0.135倍)になる領域の直径のことを指す。以下では、光ファイバ1のモードフィールド径を記号ωで表す。なお、モードフィールド径ωは、コア径Rよりも大きくなる。これは、コア11を導波される光の一部が内側クラッド12aに浸み出しているためである。
【0033】
図2は、光ファイバ1におけるコア径Rとモードフィールド径ωとの関係を示すグラフである。
図2の(a)に示すグラフは、コアΔを0.3%とした場合に得られたものであり、
図2の(b)に示すグラフは、コアΔを1.0%とした場合に得られたものであり、
図2の(c)に示すグラフは、コアΔを2.0%とした場合に得られたものであり、
図2の(d)に示すグラフは、コアΔを2.5%とした場合に得られたものである。なお、コアΔとは、クラッド12の平均屈折率をn2として、Δ={(n1−n2)/n1}×100により定義される比屈折率差のことを指す。
【0034】
図2を参照することにより、以下のことが確かめられる。すなわち、コア径Rを大きくしていくと、あるコア半径R0を境にモードフィールド径ωが減少から増加へと転じる。換言すれば、コア径Rを大きくしていくと、あるコア半径R0を境に変化率dω/dRの符号が負から正へと転じる。例えば、コアΔが0.3%である場合、コア半径R0=7.9μmを境に変化率dω/dRの符号が負から正へと転じる。
【0035】
このため、方程式ω(R)=ω0には、第1の解R=Raと第2の解R=Rbとが存在する(Ra<Rb)。換言すれば、モードフィールド径ωがω0となる光ファイバ1として、コア径RがRaとなる第1の光ファイバ1とコア径RがRbとなる第2の光ファイバ1とが存在する。例えば、コアΔが0.3%である場合、モードフィールド径ωが4.3μmとなる光ファイバ1として、コア径Rが2.5μmとなる第1の光ファイバ1と、コア径Rが3.7μmになる第2の光ファイバ1とが存在する。
【0036】
同一のモードフィールド径ωを有する2つの光ファイバ1のうち、コア径RがRaである第1の光ファイバ1は、モードフィールド径の変化率dω/dRの符号が負であることをもって特徴付けられる。また、同一のモードフィールド径ωを有する2つの光ファイバ1のうち、コア径RがRbである第2の光ファイバ1は、モードフィールド径の変化率dω/dRの符号が正であることをもって特徴付けられる。
【0037】
図3は、モードフィールド径ωが4.3μmとなる2つの光ファイバ1の電界分布を示すグラフである。
図3に示すグラフは、コアΔを0.3%とした場合に得られたものである。
図3において、実線で表したグラフは、変化率dω/dRの符号が負になる光ファイバ1の電界分布を示し、点線で表したグラフは、変化率dω/dRの符号が正になる光ファイバ1の電界分布を示す。なお、
図3においては、ピーク強度を基準として電界強度を規格化することで得られる規格化電界強度を縦軸としている。
【0038】
図3を参照することにより、以下のことが確かめられる。すなわち、同一のモードフィールド径ωを有する2つの光ファイバ1では、電界分布の形状が異なる。具体的に言うと、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバ1では、コア11への光の閉じ込めが弱く、内側クラッド12aに浸み出す光量が大きいのに対して、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバ1においては、コア11への光の閉じ込めが強く、内側クラッド12aに浸み出す光量が小さい。
【0039】
ここで、光ファイバ1を他の光導波路に接続することを考える。光導波路には、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバ1と同様、コアへの光の閉じ込めが弱く、クラッドに浸み出す光量が多いものと、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバ1と同様、コアへの光の閉じ込めが強く、クラッドに浸み出す光量が少ないものとがある。他の光導波路との接続に際し、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバ1には、以下のメリットがある。(1)前者の光導波路と接続する際に、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバ1よりも高い結合効率が得られる。(2)後者の光導波路と接続する際に、コア径RがRaからRbへと変化するまで加熱することによって、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバ1と同等の結合効率が得られる。
【0040】
しかしながら、変化率dω/dRの符号を負にするためには、コア径R及びコアΔを小さくする必要がある。このため、小コア光ファイバ1には、曲げ損失が大きくなり易いというデメリットがある。したがって、小コア光ファイバ1の設計に際しては、曲げ損失が許容範囲の上限値を上回らないように注意して、コア径R及びコアΔを設定する必要がある。
【0041】
以下、低曲げ損失条件を満たすと共に、変化率dω/dRの符号が負になるコア径R及びコアΔの組み合わせについて検討する。なお、低曲げ損失条件としては、下記の2つを考える。
【0042】
低曲げ損失条件1:曲げ半径を7.5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失が0.1dB/turn以下となる。
【0043】
低曲げ損失条件2:曲げ半径を5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失が0.1dB/turn以下となる。
【0044】
図4は、変化率dω/drが0になるコア径RとコアΔとの組み合わせを実線でプロットし、曲げ半径を7.5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失が0.1dB/turnとなるコア径RとコアΔとの組み合わせを点線でプロットしたグラフである。
図4において、変化率dω/drの符号が負になる領域は、実線で示すグラフよりも左下に位置する領域である。一方、低曲げ損失条件1を満たす領域は、点線で示すグラフよりも右上に位置する領域である。
【0045】
図4を参照することにより、以下のことが確かめられる。すなわち、コア直径Rが4.7μm以下であり、コアΔが0.7以上であれば、上述した2つの領域に共通部分(
図4においてハッチングを付した領域)が存在する。換言すれば、コア直径Rが4.7μm以下であり、コアΔが0.7以上であれば、変化率dω/drの符号を負にすると共に、低曲げ損失条件2を満たすことができる。
【0046】
図5は、変化率dω/drが0になるコア径RとコアΔとの組み合わせを実線でプロットし、曲げ半径を5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失が0.1dB/turnとなるコア径RとコアΔとの組み合わせを点線でプロットしたグラフである。
図5において、変化率dω/drの符号が負になる領域は、実線で示すグラフよりも左下に位置する領域である。一方、低曲げ損失条件2を満たす領域は、点線で示すグラフよりも右上に位置する領域である。
【0047】
図5を参照することにより、以下のことが確かめられる。すなわち、コア直径Rが4.2μm以下であり、コアΔが0.9以上であれば、上述した2つの領域に共通部分(
図4においてハッチングを付した領域)が存在する。換言すれば、コア直径Rが4.2μm以下であり、コアΔが0.9以上であれば、変化率dω/drの符号を負にすると共に、低曲げ損失条件2を満たすことができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る光ファイバ1においては、コア11コアの直径Rが4.7μm以下であり、外側クラッド12bに対するコア11のコアΔが0.7%以上であることが好ましい。これにより、コアの直径Rに対するモードフィールド径ωの変化率dω/dRの符号を負にすると共に、曲げ半径を7.5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失が0.1dB/turn以下にすることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る光ファイバ1においては、コア11の直径Rが4.2μm以下であり、外側クラッド12bに対するコア11のコアΔが0.9%以上であることが好ましい。これにより、コア11の直径Rに対するモードフィールド径ωの変化率dω/dRの符号を負にすると共に、曲げ半径を5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失が0.1dB/turn以下にすることができる。
【0050】
〔実施例1〕
本実施形態に係る光ファイバ1の実施例として、コア径R(コア11の半径r1×2)が2.4μmであり、コアΔが2.2%であり、内側クラッド径(内側クラッド12aの外周半径r2a×2)が16μmであり、外側クラッド径(外側クラッド12bの外周半径r2b×2)が125μmであり、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバAを作成した。光ファイバAにおいて、波長1550nmにおけるモードフィールド径ωは、4.3μmであった。また、光ファイバAにおいて、曲げ半径を7.5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失は、0.1dB/turn以下であった。
【0051】
また、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバAを、コア径Rが2.4μmから4.0μmへと変化するまで加熱することによって、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバBを作成した。光ファイバBにおいても、波長1550nmにおけるモードフィールド径ωは、4.3μmであった。
【0052】
図6の(a)は、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバAの電界分布を示すグラフであり、
図6の(b)は、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバBの電界分布を示すグラフである。
図6の(a)及び
図6の(b)においては、スポット径が4μmのシリコン光導波路Sの電界分布も併せて示している。なお、
図6に示すグラフにおいて、「Horizontal」は、シリコン光導波路Sの基板面と平行な方向の電界分布を示し、「Vertical」は、シリコン光導波路Sの基板面と垂直な方向の電界分布を示す。
【0053】
図6の(a)と
図6の(b)とを比較すると、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバAの電界分布の方が、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバBの電界分布よりも、シリコン光導波路Sの電界分布に近いことが分かる。
【0054】
変化率dω/dRの符号が負である光ファイバAとシリコン光導波路Sとの結合効率ηを下記の式(1)に従って算出したところ、η=95%となった。また、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバBとシリコン光導波路Sとの結合効率ηを下記の式(1)に従って算出したところ、η=88%となった。このことから、光ファイバAとシリコン光導波路Sとが空間結合された光デバイスの結合損失は、光ファイバBとシリコン光導波路Sとが空間結合された光デバイスの結合損失よりも0.3dB小さくなることが分かった。
【0056】
〔実施例2〕
本実施形態に係る光ファイバ1の実施例として、コア径R(コア11の半径r1×2)が3.9μmであり、コアΔが1.1%であり、内側クラッド径(内側クラッド12aの外周半径r2a×2)が28μmであり、外側クラッド径(外側クラッド12bの外周半径r2b×2)が125μmであり、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバCを作成した。光ファイバCにおいて、波長1550nmにおけるモードフィールド径ωは、6.1μmであった。
【0057】
また、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバCを加熱することによって、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバDを作成した。光ファイバDにおいても、波長1550nmにおけるモードフィールド径ωは、6.1μmであった。また、光ファイバDにおいて、曲げ半径を7.5mmとしたときの波長1550nmにおける曲げ損失は、0.1dB/turn以下であった。
【0058】
図7の(a)は、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバCの電界分布を示すグラフであり、
図7の(b)は、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバDの電界分布を示すグラフである。
図7の(a)及び
図7の(b)においては、スポット径が6μmのシリコン光導波路Tの電界分布も併せて示している。なお、
図6に示すグラフにおいて、「Horizontal」は、シリコン光導波路Tの基板面と平行な方向の電界分布を示し、「Vertical」は、シリコン光導波路Tの基板面と垂直な方向の電界分布を示す。
【0059】
図7の(a)と
図7の(b)とを比較すると、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバDの電界分布の方が、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバCの電界分布よりも、シリコン光導波路Tの電界分布に近いことが分かる。
【0060】
変化率dω/dRの符号が正である光ファイバDとシリコン光導波路Tとの結合効率ηを上記の式(1)に従って算出したところ、η=91%となった。また、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバCとシリコン光導波路Tとの結合効率ηを下記の式(1)に従って算出したところ、η=84%となった。このことから、光ファイバDとシリコン光導波路Tとが空間結合された光デバイスの結合損失は、光ファイバCとシリコン光導波路Tとが空間結合された光デバイスの結合損失よりも0.4dB小さくなることが分かった。
【0061】
〔光デバイスとその製造方法〕
本実施形態に係る光ファイバ1は、他の光学素子と共に光デバイスを構成することができる。このような光デバイスの構成例を
図8に示す。
図8の(a)に示す光デバイス10Aは、本実施形態に係る光ファイバ1と、光ファイバ1に空間結合された半導体光導波路2と、を備えた光デバイスである。半導体光導波路2としては、例えば、スポットサイズ変換器を有するシリコン光導波路などが挙げられる。
図8の(b)に示す光デバイス10Bは、本実施形態に係る光ファイバ1と、光ファイバ1に融着接続された汎用シングルモードファイバ3とを備えた光デバイスである。
【0062】
図8の(a)に示す光デバイス10Aは、下記の工程を含む製造方法を用いて製造することにより、効率的に量産することができる。
【0063】
工程1:半導体光導波路2を複数作成する。
【0064】
工程2:変化率dω/dRの符号が負である光ファイバ1を複数作成する。
【0065】
工程3:工程2にて作成した複数の光ファイバ1から選出した光ファイバ1を第1のサンプルとし、第1のサンプルの電界分布を測定する。
【0066】
工程4:工程2にて作成した複数の光ファイバ1から選出した別の光ファイバ1を加熱することにより得られた、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバ1を第2のサンプルとし、第2のサンプルの電界分布を測定する。
【0067】
上記の工程1〜4を実施した後、上記の工程1にて作成した複数の半導体光導波路2の各々について、下記の工程を実施する。
【0068】
工程5:半導体光導波路2の電界分布を測定する。
【0069】
工程6: 工程3にて測定した第1のサンプルの電界分布と、工程4にて測定した第2のサンプルの電界分布とのうち、どちらの電界分布が工程5にて測定した半導体光導波路2の電界分布に近いかを判定する。なお、2つの電界分布の遠近は、例えば、これら2つの電界分布の二乗誤差の大小に基づいて判定することができる。
【0070】
工程6にて第1のサンプルの電界分布の方が半導体光導波路2の電界分布に近いと判定された場合、下記の工程7を実施することにより光デバイス10Aを製造する。この場合、下記の工程8〜9は実施しない。一方、工程6にて第2のサンプルの電界分布の方が半導体光導波路2の電界分布に近いと判定された場合、下記の工程8〜9を実施することにより光デバイス10Aを製造する。この場合、下記の工程7は実施しない。
【0071】
工程7:工程1にて作成された、変化率dω/dRの符号が負である光ファイバ1に半導体光導波路2を空間結合させる。なお、光ファイバ1に半導体光導波路2を空間結合させる前に、ファイバクリーバを用いて光ファイバ1の端面を平滑化する工程を実施してもよい。
【0072】
工程8:工程1にて製造された光ファイバ1を加熱することよって、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバ1を作成する。なお、光ファイバ1の加熱には、例えば、アーク放電型の融着接続装置を用いればよい。また、光ファイバ1を加熱する際のパワーは、汎用シングルモードファイバ同士を融着接続する際のパワーよりも低いことが好ましい。光ファイバ1を加熱する際のパワーが大き過ぎると、光ファイバ1に好ましくない外形変化が生じたり、光ファイバ1のコア径Rを所望の値に変化させることが困難になったりする可能性があるためである。
【0073】
工程9:工程8にて作成された、変化率dω/dRの符号が正である光ファイバ1に半導体光導波路2を空間結合させる。なお、光ファイバ1に半導体光導波路2を空間結合させる前に、ファイバクリーバを用いて光ファイバ1の端面を平滑化する工程を実施してもよい。
【0074】
以上の製造方法を用いることによって、工程1にて作成される半導体光導波路2の電界分布にばらつきがある場合でも、結合効率の高い光デバイス10Aを効率的に量産することができる。
【0075】
なお、
図8の(b)に示す光デバイス10Bは、光ファイバ1と汎用シングルモードファイバ3とを融着接続することによって製造することができる。光ファイバ1と汎用シングルモードファイバ3とを融着接続する際の熱により光ファイバ1のコア拡大が生じるため、光ファイバ1と汎用シングルモードファイバ3との境界において生じ得るモードフィールド径の不整合が軽減される。
【0076】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、本明細書に開示した技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。