(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体酸触媒を用い、炭素原子数1〜5の脂肪族カルボン酸と炭素原子数2〜4のオレフィンとを気相中で反応させる脂肪族カルボン酸エステルの製造方法において、燃焼法により得られたフュームドシリカと、ゲル法で得られたシリカゲルと、ゾルゲル法又は水ガラス法で得られたコロイダルシリカとを混練し、得られた混練物を成形し、次いで得られた成形体を焼成して得られたシリカ担体に、ヘテロポリ酸又はその塩が担持された固体酸触媒を用いることを特徴とする脂肪族カルボン酸エステルの製造方法であって、フュームドシリカの配合量が5〜50質量部であり、シリカゲルの配合量が40〜90質量部であり、コロイダルシリカの固形分の配合量が5〜30質量部である、脂肪族カルボン酸エステルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な応用が可能であることを理解されたい。
【0016】
(シリカ担体)
一般に、合成非晶質シリカは、乾式法又は湿式法のいずれかで製造される。四塩化ケイ素を酸素存在下、水素炎中で燃焼する燃焼法は乾式法に分類され、ケイ酸ナトリウムと鉱酸の中和反応を酸性のpH領域で進行させることにより、一次粒子の成長を抑えた状態で凝集を起こさせるゲル法、アルコキシシランの加水分解を行うゾルゲル法、及びケイ酸ソーダをイオン交換し、活性ケイ酸を調製後、加熱下でpH調整した種粒子含有水溶液中で粒子成長させる水ガラス法は湿式法に分類される。燃焼法で得られたシリカはフュームドシリカ、ゲル法で得られたシリカはシリカゲル、ゾルゲル法及び水ガラス法で得られたシリカ粒子を水等の媒体に分散させたシリカはコロイダルシリカと、それぞれ一般に呼ばれている。
【0017】
一実施形態のシリカ担体は、燃焼法により得られたフュームドシリカと、ゲル法で得られたシリカゲルと、ゾルゲル法又は水ガラス法で得られたコロイダルシリカとを混練し、混練物を成形し、次いで成形体を焼成することにより得ることができる。
【0018】
フュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカを混練し、成形加工を行い、焼成した場合、各成分の配合割合、混練方法、焼成条件等によって、焼成後のシリカ担体の一次粒子及び二次粒子の大きさ、多孔体の内部状態などが変化するため、本発明のシリカ担体の高次構造は規定することができない。シリカ担体の組成式はSiO
2である。
【0019】
フュームドシリカに制限は無く、一般的なフュームドシリカを使用することができる。市販されているフュームドシリカの例としては、日本アエロジル株式会社製のアエロジル(商標)、株式会社トクヤマ製のレオロシール(商標)、キャボットコーポレーション社製のCAB−O−SIL(商標)等を挙げることができる。市販されているフュームドシリカには、親水性と疎水性のグレードがあるが、いずれのものも使用することができる。代表的なフュームドシリカは、物性値として例えば一次粒子径7〜40nm、比表面積50〜500m
2/gを有し、多孔質ではなく内部表面積がなく非晶質であり、酸化ケイ素としての純度が99%以上と高く、金属及び重金属を殆ど含まないといった特徴を有する。
【0020】
シリカゲルにも制限は無く、一般的なシリカゲルを使用することができる。市販されているシリカゲルの例としては、東ソー・シリカ株式会社製のNIPGEL、水澤化学工業株式会社製のMIZUKASIL、富士シリシア化学株式会社製のCARiACT、AGCエスアイテック株式会社製のサンスフェア等を挙げることができる。一般に、シリカゲルは、珪砂(SiO
2)とソーダ灰(Na
2CO
3)を混合溶融して得られるケイ酸ソーダガラス(カレット)を水に溶解したケイ酸ソーダを原料に用い、ケイ酸ソーダと硫酸のような鉱酸との反応を酸性条件下で行い、一次粒子の成長を抑えた状態で凝集を起こすことで、反応液全体をゲル化させることにより製造される。シリカゲルの物性としては特に制限されないが、シリカゲルは、一次粒子が小さく、比表面積が高く、二次粒子が硬いといった特徴を有する。シリカゲルの具体的な物性の例としては、BET比表面積が200〜1000m
2/g、二次粒子径が1〜30μm、窒素ガス吸着法(BJH法)による細孔容積が0.3〜2.5mL/gであることが挙げられる。シリカゲルの純度は高いほど好ましく、好ましい純度としては95質量%以上、より好ましくは98質量%以上である。
【0021】
コロイダルシリカも特に制限されず、一般的なコロイダルシリカを使用することができる。市販されているコロイダルシリカの例としては、日産化学工業株式会社製のスノーテック(商標)、日本化学工業株式会社製のシリカドール、株式会社ADEKA製のアデライト、キャボットコーポレーション社製のCAB−O−SIL(商標)TG−Cコロイダルシリカ、扶桑化学工業株式会社製のクォートロン(商標)等を挙げることができる。コロイダルシリカは、シリカ微粒子を水等の媒体に分散させたものである。コロイダルシリカの製造方法として、水ガラス法とアルコキシシランの加水分解によるゾルゲル法があり、どちらの製法で製造されたコロイダルシリカでも用いることができる。水ガラス法で製造されたコロイダルシリカとゾルゲル法で製造されたコロイダルシリカを組み合わせて使用してもよい。コロイダルシリカの代表的な物性としては、粒子径が4〜80nm、水又は有機溶剤中に分散しているシリカの固形分濃度が5〜40質量%であることが挙げられる。コロイダルシリカ中の不純物濃度は、担持する触媒活性成分に影響を及ぼすおそれがあるので、低い方が望ましい。固形分中のシリカ純度は、99質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましい。
【0022】
シリカ担体は、フュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカを混練し、得られた混練物を成形した後、成形体を焼成することにより得ることができる。混練の際、適当な添加剤を加えてもよい。フュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカの配合比は、フュームドシリカ5〜50質量部、シリカゲル40〜90質量部、コロイダルシリカの固形分5〜30質量部とすることが好ましい。より好ましくは、フュームドシリカ15〜40質量部、シリカゲル45〜70質量部、コロイダルシリカの固形分5〜15質量部である。
【0023】
フュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカを混ぜ合わせる際に、成形性の改善、最終的なシリカ担体の強度向上などを目的として、水又は添加剤を加えることができる。添加剤としては、特に制限されず、一般的なセラミックス成形物を製造する際に使用される添加剤を用いることができる。その目的に応じて、結合剤、可塑剤、分散剤、潤滑剤、湿潤剤、消泡剤などを用いることができる。
【0024】
結合剤としては、ワックスエマルジョン、アラビアゴム、リグニン、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、澱粉、メチルセルロース、Na−カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギンアンモニウム、トラガントゴムなどを挙げることができる。結合剤の種類と濃度によって、混練物の粘性は大きく変化するので、使用する成形法に適した粘性となるように、結合剤の種類と量を選定する。
【0025】
可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート等が挙げられ、混練物の柔軟性を高めることができる。
【0026】
分散剤としては、水系では、カルボキシメチルセルロースアンモニウム(CMC−NH
4)、アクリル酸又はそのアンモニウム塩のオリゴマー、アニオン系界面活性剤、ポリカルボン酸アンモニウム、ワックスエマルジョン、モノエチルアミン等各種アミン、ピリジン、ピペリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム等が挙げられ、非水系では、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン酸エステル、合成界面活性剤、ベンゼンスルホン酸等を挙げることができる。これらの分散剤を添加することで、凝集粒子の生成を避け、焼成後に均一な微細構造を持つ、シリカ担体を得ることができる。
【0027】
潤滑剤としては、炭化水素系では、流動パラフィン、パラフィンワックス、塩素化炭化水素等が挙げられ、脂肪酸系では、ステアリン酸、ラウリル酸、及びその金属塩等、脂肪酸アミド系等を挙げることができる。潤滑剤を添加することにより、粉末間の摩擦を少なくして、流動性をよくし、成形を容易にすることができ、また、成形品の型からの抜き取りが容易となる。
【0028】
粉末と分散剤とのぬれ特性を向上させるために、湿潤剤を添加することができる。湿潤剤としては、水系として、非イオン系界面活性剤、アルコール、グリコール、非水系として、ポリエチレングリコールエチルエーテル、ポリオキシエチレンエステル等が挙げられる。これらの物質は固液界面に吸着されやすく、界面張力を低下させることにより、固体の濡れをよくする。
【0029】
スラリー系の混練物を取り扱う場合には、非イオン系界面活性剤、ポリアルキレングリコール系誘導体、ポリエーテル系誘導体などの消泡剤を添加することもできる。
【0030】
これらの添加剤は、単独でも使用でき、複数を同時に組み合わせて使用することもできるが、できるだけ少量の添加で効果があり、安価であること、粉末と反応しないこと、水又は溶媒に溶けること、酸化又は非酸化雰囲気中、例えば400℃以下の比較的低温で完全に分解すること、分解爆発した後に灰分、特にアルカリ金属及び重金属が残らないこと、分解ガスは毒性及び腐食性が無いこと、製品とならなかった破片の再生利用を妨げないことが望ましい。
【0031】
シリカ担体の形状は、特に限定されるものではない。例えば球状、円柱状、中空円柱状、板状、楕円状、シート状、ハニカム状等が挙げられる。好ましくは、反応器への充填及び触媒活性成分の担持を容易にする、球状、円柱状、中空円柱状、又は楕円状であり、さらに好ましくは、球状、又は円柱状である。
【0032】
シリカ担体の成形方法は、特に限定されない。型込成形、押出成形、転動造粒、噴霧乾燥などの任意の都合のよい方法によって、フュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカを含む混練物から成形される。一般的な型込成形は、混練物を金属製の型に入れて何度も槌などで打ちながらよく詰め、さらにピストンで加圧した後に型から取り出すことを含み、スタンプ成形とも呼ばれている。押出成形は、混練物をプレスに詰めてダイス(口金)から押出し、適当な長さに切断して希望する形に成形することを一般的に含む。転動造粒は、混練物を斜めに置いた回転円盤上に落とし、粒を円盤上で転がして成長させ、球形とすることを含む。噴霧乾燥は、一般に、あまり大きな粒子にはならないが、濃厚なスラリーを熱風中に噴霧させて多孔質の粒子を得ることを含む。
【0033】
シリカ担体のサイズは特に制限されない。触媒活性成分を担持する触媒の製造時又は触媒充填時のハンドリング、反応器に充填した後の差圧、触媒反応の反応成績などに影響を与えるので、それらを考慮した大きさにすることが望ましい。シリカ担体は、成形体の焼成時に担体の収縮が起こるため、焼成条件によってサイズが決まる。シリカ担体の大きさ(焼成後)は、シリカ担体が球状の場合、その直径が0.5mm〜12mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましく、2mm〜8mmであることがさらに好ましい。シリカ担体が球状ではない形状の場合のシリカ担体の大きさ(焼成後)は、大きさを測定した際に最大となる次元の長さが、0.5mm〜12mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましく、2mm〜8mmであることがさらに好ましい。シリカ担体の粒径が0.5mm以上であると、担体製造時の生産性の低下、及び触媒として使用した場合の圧力損失の増大を防止することができる。シリカ担体の粒径が12mm以下であれば、担体内の拡散律速による反応速度の低下、及び副生成物の増加を防止することができる。
【0034】
焼成前又は焼成後に必要に応じて、マルメライザー(登録商標)(不二パウダル株式会社)等を用いた処理を行い、シリカ担体の形状を調整することもできる。例えば、焼成前の円柱状の成形体を前記マルメライザーで処理することで球状に成形することができる。
【0035】
焼成方法は特に制限されないが、添加物を分解し、シリカの構造破壊を防止するという観点から、適切な焼成温度の範囲がある。焼成温度は、300℃〜1000℃であることが好ましく、500℃〜900℃であることがより好ましい。焼成温度がこの範囲であると、添加物が完全に分解され、シリカ担体の性能に悪影響を与えることがない。また、シリカ担体の比表面積も向上する。焼成処理は、酸化及び非酸化のいずれの条件でも実施することができる。例えば、焼成処理を空気雰囲気下で行ってもよく、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。焼成処理の時間についても特に制限は無く、成形体の形状及び大きさ、使用する添加剤の種類及び量などに応じて、適宜決定することができる。
【0036】
一実施形態のシリカ担体は、細孔径分布測定において、細孔径が2〜50nmのメソ細孔及び細孔径が50nm超、1000nm以下のマクロ細孔を有している。メソ細孔の存在はガス吸着法(BJH法)で確認することができる。マクロ細孔の存在は水銀圧入法で確認することができる。一般に、シリカ等の多孔質物質の細孔径分布測定には、水銀圧入法とガス吸着法(BJH法)が広く利用されている。IUPAC(国際純正・応用化学連合)の細孔の分類で見ると、水銀圧入法では50nm以上のマクロ細孔及び2nm〜50nm未満のメソ細孔の一部が、ガス吸着法ではメソ細孔と2nm以下のミクロ細孔を測定することができる。シリカ担体が前記サイズのマクロ細孔を有することにより、細孔内における物質の拡散速度がより向上する。触媒としてこのようなシリカ担体を使用した場合、主反応速度の上昇にともなう活性向上、及び目的生成物の逐次的な副反応抑制にともなう選択性向上が期待できる。マクロ細孔と合わせて前記サイズのメソ細孔を有することにより、担持成分を高分散化させることができ、反応活性点の増加にともなう触媒活性の向上が期待できる。
【0037】
シリカ担体において、各細孔の分布割合については特に制限されず、シリカ担体を用いる反応の種類によって適切な細孔径分布割合を選択することができる。細孔径分布割合は、シリカ担体を製造する際のフュームドシリカ、シリカゲル、コロイダルシリカの混合比率、使用する添加剤の種類及び量、焼成温度、成形方法などによって調整することが可能である。
【0038】
水銀圧入法による細孔径分布において、シリカ担体のマクロ細孔の細孔容積(全マクロ細孔容積の積分値)が0.05〜0.50cc/gであることが好ましい。シリカ担体のマクロ細孔の細孔容積は、より好ましくは0.07〜0.40cc/gであり、さらに好ましくは0.10〜0.30cc/gである。シリカ担体のマクロ細孔の細孔容積が0.05〜0.50cc/gの範囲であると、物質の拡散速度と担体の強度が両立できる。
【0039】
シリカ担体のBET法による比表面積(BET比表面積)は、200〜500m
2/gであることが好ましい。シリカ担体のBET比表面積は、より好ましくは220〜400m
2/gであり、さらに好ましくは240〜400m
2/gである。シリカ担体のBET比表面積が200〜500m
2/gの範囲であると触媒化した場合に十分な反応速度を得ることができる。
【0040】
シリカ担体の嵩密度は、300〜700g/Lであることが好ましい。シリカ担体の嵩密度は、より好ましくは400〜650g/Lであり、さらに好ましくは450〜600g/Lである。シリカ担体の嵩密度が300〜700g/Lの範囲であると、必要量の活性成分を担持できるとともに、担体の強度も維持できる。
【0041】
シリカ担体のガス吸着法(BJH法)によるメソ細孔の平均細孔径は、3〜16nmであることが好ましい。シリカ担体のガス吸着法(BJH法)によるメソ細孔の平均細孔径は、より好ましくは4〜14nmであり、さらに好ましくは5〜12nmである。シリカ担体のガス吸着法(BJH法)によるメソ細孔の平均細孔径が3〜16nmの範囲であると、BET法による比表面積が十分な値となる。
【0042】
本明細書において、ガス吸着法(BJH法)による細孔径分布、水銀圧入法による細孔径分布、BET比表面積、嵩密度、及びBJH法によるメソ細孔の平均細孔径は実施例に記載の方法によって測定される。
【0043】
ヘテロポリ酸とは、中心元素及び酸素が結合した周辺元素からなるものである。中心元素は、通常ケイ素又はリンであるが、元素の周期律表の1族〜17族の多種の元素から選ばれる任意の1つからなることができる。具体的には、例えば、第二銅イオン;二価のベリリウム、亜鉛、コバルト又はニッケルのイオン;三価のホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、セリウム、ヒ素、アンチモン、リン、ビスマス、クロム又はロジウムのイオン;四価のケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、バナジウム、硫黄、テルル、マンガン、ニッケル、白金、トリウム、ハフニウム、セリウムのイオン及び他の希土類イオン;五価の燐、ヒ素、バナジウム、アンチモンイオン;六価のテルルイオン;及び七価のヨウ素イオン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、周辺元素の具体例としては、タングステン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
このようなヘテロポリ酸は、また、「ポリオキソアニオン」、「ポリオキソ金属塩」又は「酸化金属クラスター」として知られている。よく知られているアニオン類のいくつかの構造には、この分野の研究者本人にちなんで名前が付けられており、例えば、ケギン(Keggin)型構造、ウエルス−ドーソン(Wells−Dawson)型構造及びアンダーソン−エバンス−ペアロフ(Anderson−Evans−Perloff)型構造が知られている。詳しくは、「ポリ酸の化学」(社団法人日本化学会編、季刊化学総説No.20、1993年)に記載がある。ヘテロポリ酸は、通常高分子量、例えば、700〜8500の範囲の分子量を有し、その単量体だけでなく、二量体錯体をも含む。
【0045】
ヘテロポリ酸の塩とは、上記ヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全てを置換した金属塩又はオニウム塩であれば特に制限はない。具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、バリウム、銅、金及びガリウムの金属塩、並びにアンモニアなどのオニウム塩を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
ヘテロポリ酸は、特にヘテロポリ酸が遊離酸及びいくつかの塩である場合、水又は他の酸素化溶媒のような極性溶媒に対して比較的高い溶解度を有する。それらの溶解度は適当な対イオンを選択することにより制御することができる。
【0047】
本発明において触媒として用いることができるヘテロポリ酸の特に好ましい例としては
ケイタングステン酸 H
4[SiW
12O
40]・xH
2O
リンタングステン酸 H
3[PW
12O
40]・xH
2O
リンモリブデン酸 H
3[PMo
12O
40]・xH
2O
ケイモリブデン酸 H
4[SiMo
12O
40]・xH
2O
ケイバナドタングステン酸 H
4+n[SiV
nW
12−nO
40]・xH
2O
リンバナドタングステン酸 H
3+n[PV
nW
12−nO
40]・xH
2O
リンバナドモリブデン酸 H
3+n[PV
nMo
12−nO
40]・xH
2O
ケイバナドモリブデン酸 H
4+n[SiV
nMo
12−nO
40]・xH
2O
ケイモリブドタングステン酸 H
4[SiMo
nW
12−nO
40]・xH
2O
リンモリブドタングステン酸 H
3[PMo
nW
12−nO
40]・xH
2O
(式中、nは1〜11の整数であり、xは1以上の整数である。)
などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0048】
ヘテロポリ酸は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、ケイバナドタングステン酸、又はリンバナドタングステン酸であることが好ましく、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイバナドタングステン酸、又はリンバナドタングステン酸であることがより好ましい。
【0049】
このようなヘテロポリ酸の合成方法としては、特に制限はなく、どのような方法を用いてもよい。例えば、モリブデン酸又はタングステン酸の塩とヘテロ原子の単純酸素酸又はその塩を含む酸性水溶液(pH1〜pH2程度)を熱することによってヘテロポリ酸を得ることができる。ヘテロポリ酸化合物は、例えば生成したヘテロポリ酸水溶液から金属塩として晶析分離して単離することができる。ヘテロポリ酸の製造の具体例は、「新実験化学講座8 無機化合物の合成(III)」(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行、昭和59年8月20日、第3版)の1413頁に記載されているが、これに限定されるものではない。合成したヘテロポリ酸の構造確認は、化学分析のほか、X線回折、UV、又はIRの測定により行うことができる。
【0050】
ヘテロポリ酸塩の好ましい例としては、上記の好ましいヘテロポリ酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、銅塩、金塩、ガリウム塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。
【0051】
ヘテロポリ酸塩の具体例としては、ケイタングステン酸のリチウム塩、ケイタングステン酸のナトリウム塩、ケイタングステン酸のセシウム塩、ケイタングステン酸の銅塩、ケイタングステン酸の金塩、ケイタングステン酸のガリウム塩;リンタングステン酸のリチウム塩、リンタングステン酸のナトリウム塩、リンタングステン酸のセシウム塩、リンタングステン酸の銅塩、リンタングステン酸の金塩、リンタングステン酸のガリウム塩;リンモリブデン酸のリチウム塩、リンモリブデン酸のナトリウム塩、リンモリブデン酸のセシウム塩、リンモリブデン酸の銅塩、リンモリブデン酸の金塩、リンモリブデン酸のガリウム塩;ケイモリブデン酸のリチウム塩、ケイモリブデン酸のナトリウム塩、ケイモリブデン酸のセシウム塩、ケイモリブデン酸の銅塩、ケイモリブデン酸の金塩、ケイモリブデン酸のガリウム塩;ケイバナドタングステン酸のリチウム塩、ケイバナドタングステン酸のナトリウム塩、ケイバナドタングステン酸のセシウム塩、ケイバナドタングステン酸の銅塩、ケイバナドタングステン酸の金塩、ケイバナドタングステン酸のガリウム塩;リンバナドタングステン酸のリチウム塩、リンバナドタングステン酸のナトリウム塩、リンバナドタングステン酸のセシウム塩、リンバナドタングステン酸の銅塩、リンバナドタングステン酸の金塩、リンバナドタングステン酸のガリウム塩;リンバナドモリブデン酸のリチウム塩、リンバナドモリブデン酸のナトリウム塩、リンバナドモリブデン酸のセシウム塩、リンバナドモリブデン酸の銅塩、リンバナドモリブデン酸の金塩、リンバナドモリブデン酸のガリウム塩;ケイバナドモリブデン酸のリチウム塩、ケイバナドモリブデン酸のナトリウム塩、ケイバナドモリブデン酸のセシウム塩、ケイバナドモリブデン酸の銅塩、ケイバナドモリブデン酸の金塩、ケイバナドモリブデン酸のガリウム塩等を挙げることができる。
【0052】
ヘテロポリ酸塩は、ケイタングステン酸のリチウム塩、ケイタングステン酸のナトリウム塩、ケイタングステン酸のセシウム塩、ケイタングステン酸の銅塩、ケイタングステン酸の金塩、ケイタングステン酸のガリウム塩;リンタングステン酸のリチウム塩、リンタングステン酸のナトリウム塩、リンタングステン酸のセシウム塩、リンタングステン酸の銅塩、リンタングステン酸の金塩、リンタングステン酸のガリウム塩;リンモリブデン酸のリチウム塩、リンモリブデン酸のナトリウム塩、リンモリブデン酸のセシウム塩、リンモリブデン酸の銅塩、リンモリブデン酸の金塩、リンモリブデン酸のガリウム塩;ケイモリブデン酸のリチウム塩、ケイモリブデン酸のナトリウム塩、ケイモリブデン酸のセシウム塩、ケイモリブデン酸の銅塩、ケイモリブデン酸の金塩、ケイモリブデン酸のガリウム塩;ケイバナドタングステン酸のリチウム塩、ケイバナドタングステン酸のナトリウム塩、ケイバナドタングステン酸のセシウム塩、ケイバナドタングステン酸の銅塩、ケイバナドタングステン酸の金塩、ケイバナドタングステン酸のガリウム塩;リンバナドタングステン酸のリチウム塩、リンバナドタングステン酸のナトリウム塩、リンバナドタングステン酸のセシウム塩、リンバナドタングステン酸の銅塩、リンバナドタングステン酸の金塩、又はリンバナドタングステン酸のガリウム塩であることが好ましい。
【0053】
ヘテロポリ酸塩は、ケイタングステン酸のリチウム塩、ケイタングステン酸のナトリウム塩、ケイタングステン酸のセシウム塩、ケイタングステン酸の銅塩、ケイタングステン酸の金塩、ケイタングステン酸のガリウム塩;リンタングステン酸のリチウム塩、リンタングステン酸のナトリウム塩、リンタングステン酸のセシウム塩、リンタングステン酸の銅塩、リンタングステン酸の金塩、リンタングステン酸のガリウム塩;ケイバナドタングステン酸のリチウム塩、ケイバナドタングステン酸のナトリウム塩、ケイバナドタングステン酸のセシウム塩、ケイバナドタングステン酸の銅塩、ケイバナドタングステン酸の金塩、ケイバナドタングステン酸のガリウム塩;リンバナドタングステン酸のリチウム塩、リンバナドタングステン酸のナトリウム塩、リンバナドタングステン酸のセシウム塩、リンバナドタングステン酸の銅塩、リンバナドタングステン酸の金塩、又はリンバナドタングステン酸のガリウム塩であることがより好ましい。
【0054】
ヘテロポリ酸塩として、ケイタングステン酸のリチウム塩又はリンタングステン酸のセシウム塩を用いることが特に好適である。
【0055】
担体として上述のシリカ担体を用いる。
【0056】
担体はいかなる形状であってもよく、その形状に特に制限はない。担体は、例えば、粉末状、球状、ペレット状などであってよく、球状、又はペレット状であることが好ましい。担体の粒径も特に制限はない。担体の粒径は、反応の形態により異なるが、固定床方式で用いる場合には、2mm〜10mmであることが好ましく、3mm〜7mmであることがより好ましい。
【0057】
ヘテロポリ酸又はその塩の担体への担持方法に特に制限はない。一般的には、ヘテロポリ酸又はその塩を溶媒に溶解又は懸濁させて得られた溶液又は懸濁液を担体に吸収させ、溶媒を蒸発させることにより行うことができる。
【0058】
ヘテロポリ酸塩の担体への担持方法として、担体にヘテロポリ酸を担持させたのちに塩を形成する元素の原料を担持させる方法、担体にヘテロポリ酸及び塩を形成する元素の原料を一緒に担持させる方法、担体にあらかじめ調製したヘテロポリ酸塩を担持させる方法、担体に塩を形成する元素の原料を担持させたのちにヘテロポリ酸を担持させる方法が挙げられるが、これらに限定されない。上記のいずれの方法においても、ヘテロポリ酸、その塩、及び塩を形成する元素の原料は、適当な溶媒に溶解又は懸濁させて担体に担持させることができる。溶媒は、ヘテロポリ酸、その塩、又は塩を形成する元素の原料を溶解又は懸濁できるものであればよく、水、有機溶媒又はそれらの混合物などが用いられ、好ましくは水、アルコール又はそれらの混合物が用いられる。
【0059】
ヘテロポリ酸又はその塩の担体への担持は、具体的には、例えばヘテロポリ酸又はその塩を担体の吸水液量相当の蒸留水などに溶解させ、その溶液を担体に含浸させることにより調整することができる。別の実施態様では、ヘテロポリ酸又はその塩の担体への担持量は、担体を過剰量のヘテロポリ酸又はその塩の溶液中に適度に動かしながら浸漬し、その後濾過して過剰のヘテロポリ酸又はその塩を取り除くことにより調整することもできる。溶液又は懸濁液の容積は用いる担体、担持方法などにより異なる。ヘテロポリ酸又はその塩が含浸された担体を、加熱オーブン内に数時間おいて溶媒を蒸発させることにより、担体に担持された固体酸触媒を得ることができる。乾燥方法に特に制限はなく、静置式、ベルトコンベア式など、様々な方法を用いることができる。
【0060】
ヘテロポリ酸又はその塩の担体への担持量は、担体100質量部に対して、ヘテロポリ酸又はその塩の合計質量を10〜150質量部とすることが好ましく、30〜100質量部とすることがより好ましい。
【0061】
[脂肪族カルボン酸エステルの製造]
本発明において、脂肪族カルボン酸エステルは、ヘテロポリ酸又はその塩を固体酸触媒として用い、炭素原子数1〜5の脂肪族カルボン酸と炭素原子数2〜4のオレフィンとを気相中で反応させることで得ることができる。脂肪族カルボン酸及びオレフィンは窒素ガスなどの不活性気体で希釈することが反応熱の除去の面で好ましい。具体的には、固体酸触媒が充填された容器に、原料として炭素原子数1〜5の脂肪族カルボン酸及び炭素原子数2〜4のオレフィンを含む気体を流通させ、固体酸触媒と接触させることにより、これらを反応させることができる。原料を含む気体に少量の水を添加することが、触媒活性の維持の観点から好ましく、ある実施態様では反応は水蒸気の存在下で行なわれる。ただし、あまりに多量の水を添加すると、アルコール、エーテルなどの副生成物の生成量も増えてくるおそれがある。好ましい水の添加量は、炭素原子数1〜5の脂肪族カルボン酸、炭素原子数2〜4のオレフィン、及び水の合計に対する水のモル比として、0.5モル%〜15モル%であることが好ましく、2モル%〜8モル%であることがより好ましい。
【0062】
炭素原子数1〜5の脂肪族カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、メタクリル酸、及びクロトン酸を挙げることができる。原料の入手しやすさ、生成するカルボン酸エステルの工業的有用性などの面で酢酸が好ましい。
【0063】
炭素原子数2〜4のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、及びイソブテンを挙げることができる。原料の入手しやすさ、生成するカルボン酸エステルの工業的有用性などの面でエチレン及びプロピレンが好ましい。
【0064】
原料である炭素原子数2〜4のオレフィンと炭素原子数1〜5の脂肪族カルボン酸との使用割合には特に制限はないが、オレフィンと脂肪族カルボン酸とのモル比で、オレフィン:脂肪族カルボン酸=1:1〜40:1の範囲であることが好ましく、3:1〜20:1の範囲であることがより好ましく、5:1〜15:1の範囲であることがさらに好ましい。
【0065】
本発明の製造方法における好ましい温度、圧力などの反応条件は、原料として用いられる脂肪族カルボン酸及びオレフィンの種類に応じて異なる。温度、圧力などの反応条件の組み合わせは、原料が気体状を保つことが可能であり、かつ、反応が十分に進行する範囲であることが好ましい。一般的には、反応温度は、50℃〜300℃の範囲にあることが好ましく、140℃〜250℃の範囲にあることがより好ましい。反応圧力は、0PaG〜3MPaG(ゲージ圧)の範囲にあることが好ましく、0.1MPaG〜2MPaG(ゲージ圧)の範囲にあることがより好ましい。ある実施態様では、反応温度は50〜300℃であり、反応圧力は0.1〜2.0MPaGである。
【0066】
原料を含む気体のSV(気体時空速度)は、特に制限はないが、あまりに大きいと反応が十分に進行しないままに原料が通過してしまうことになり、一方であまりに小さいと生産性が低くなるなどの問題が生じるおそれがある。SV(触媒1Lあたりを1時間で通過する原料の体積(L/L・h=h
−1))は500h
−1〜20000h
−1であることが好ましく、1000h
−1〜10000h
−1であることがより好ましい。
【実施例】
【0067】
本発明をさらに以下の実施例及び比較例を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
1.シリカ担体の製造
フュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカ、並びに必要に応じて、水及び/又は添加剤をニーダーに入れて混練し、混練物を調製した。次いで、所望のサイズの円孔を先端に設けたダイスを取り付けた押出成形機に、混練物を投入した。次いで、押出成形機から押し出された中間物を所望のサイズになるように、カッターで切断しながら、円柱状の焼成前成形体を得た。焼成前成形体をマルメライザーで処理を行った後、予備乾燥を行い、次いで、空気雰囲気下、700℃〜900℃の温度で焼成処理を行い、シリカ担体を得た。詳細な条件は各製造例に記載する。
【0069】
2.シリカ担体の嵩密度測定
風袋を測定したガラス製のメスシリンダーに、シリカ担体を数回に分けて投入するとともに、投入時毎に、担体、又は触媒(触媒金属等が担体に担持されたもの)の入ったメスシリンダーをタッピングして、メスシリンダーの計量容積丁度になるまで、担体を投入した。次いで、担体が入った状態で、メスシリンダーの重量を測定し、メスシリンダーの風袋と容積から、担体の嵩密度を決定した。
【0070】
3.シリカ担体のBET比表面積測定
株式会社島津製作所製のガス吸着装置(アサップ2020)を用いて、シリカ担体又は触媒の窒素ガス吸着によるBET比表面積を測定した。また、BJH法によるシリカ担体の細孔径分布を測定し、メソ細孔の平均細孔径を測定した。
【0071】
4.シリカ担体の水銀圧入法による細孔径分布測定
株式会社島津製作所製のオートポアIV9500を用いて、水銀圧入法によるシリカ担体の細孔径分布を測定した。また、細孔径分布において、30〜300nmのマクロ細孔に由来するピークの細孔容積(cc/g)を計測した。
【0072】
5.原料シリカ
使用した原料シリカを表1に示す。
【表1】
【0073】
<製造例1>
フュームドシリカF−1 25質量部、シリカゲルS−1 75質量部、コロイダルシリカC−1 45質量部(固形分で9質量部)をニーダーにて混練した後、混練物の状態を観察しながら、水及び添加剤(メチルセルロース:信越化学工業株式会社製SM−4000 10質量部、樹脂系バインダー:ユケン工業株式会社製セランダー(登録商標)YB−132A 5質量部)を適量加え、さらに混練して、混練物を得た。次いで、混練物を6mmφの円孔を設けたダイスを取り付けた押出成形機に投入し、混練物を押出し、押し出された中間物を長さが用いた円孔の直径と同じ長さになるようにカッターで切断しながら押出成形を行った。得られた焼成前成形体をマルメライザー(登録商標)で球状に成形し、次いで70℃で24時間以上乾燥した後、空気雰囲気下約820℃で焼成し、冷却してシリカ担体Aを得た。得られたシリカ担体AのBET比表面積、BJH法平均細孔径、嵩密度等の測定結果を表2に示す。また、シリカ担体AのBJH法による細孔径分布を
図1に、さらに、水銀圧入法による細孔径分布の測定結果を
図2に示す。
【0074】
<製造例2〜11>
フュームドシリカ、シリカゲル、及びコロイダルシリカの種類と量、並びに焼成温度を表2に記載のとおりとした以外は製造例1と同様にして、シリカ担体B〜Kを得た。但し、製造例4〜11では、3mmφの円孔を設けたダイスを使用した。得られたシリカ担体のBET比表面積、BJH法平均細孔径、嵩密度等の測定結果を表2に示す。また、シリカ担体B及びCの水銀圧入法による細孔径分布の測定結果を
図2に示す。
【0075】
<比較製造例1>
コロイダルシリカを用いない以外は、実施例1と同様にして、比較製造例1のシリカ担体の製造を試みたが、担体として使用可能な成形体は得られなかった。
【0076】
<比較製造例2>
フュームドシリカを用いない以外は、実施例1と同様にして、比較製造例2のシリカ担体の製造を試みたが、担体として使用可能な成形体は得られなかった。
【0077】
<比較製造例3>
シリカゲルを用いない以外は、実施例1と同様にして、比較製造例3のシリカ担体の製造を試みたが、担体として使用可能な成形体は得られなかった。
【0078】
<比較担体例4>
市販の、天然物由来のシリカゲルであるクラリアント触媒株式会社製シリカ担体のKA−160(シリカ担体P)のBET比表面積、BJH法平均細孔径、嵩密度等の測定結果を表3に示す。また、シリカ担体PのBJH法による細孔径分布を
図1に、さらに、水銀圧入法による細孔径分布の測定結果を
図2に示す。
【0079】
<比較担体例5>
市販のシリカゲルである富士シリシア化学株式会社製シリカ担体のCARiACT Q−15(シリカ担体Q)のBET比表面積、BJH法平均細孔径、嵩密度等の測定結果を表3に示す。また、シリカ担体QのBJH法による細孔径分布を
図1に、さらに、水銀圧入法による細孔径分布の測定結果を
図2に示す。
【0080】
<比較担体例6>
市販のシリカゲルである富士シリシア化学株式会社製シリカ担体のCARiACT Q−30(シリカ担体R)のBET比表面積、BJH法平均細孔径、嵩密度等の測定結果を表3に示す。また、シリカ担体RのBJH法による細孔径分布の測定結果を
図1に示す。
【0081】
<比較担体例7>
市販のシリカゲルである富士シリシア化学株式会社製シリカ担体のCARiACT Q−10(シリカ担体S)のBET比表面積、BJH法平均細孔径、嵩密度等の測定結果を表3に示す。
【0082】
<比較担体例8>
市販のシリカゲルである富士シリシア化学株式会社製シリカ担体のCARiACT Q−6(シリカ担体T)のBET比表面積、BJH法平均細孔径、嵩密度等の測定結果を表3に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
図1及び
図2から明らかなように、製造例1のシリカ担体Aには、4.5nm付近にピークを有するメソ細孔と90nm付近にピークを有するマクロ細孔が存在し、マクロ細孔の細孔容積は0.15cc/gである。一方、比較担体例4及び5のシリカ担体P及びQには、
図2にてマクロ細孔に相当するピークは見られない。
【0086】
表2及び表3に、水銀圧入法における細孔径分布から、50nm超、1000nm以下の範囲のマクロ細孔の細孔容積を積分して計算した値を示す。製造例のシリカ担体A〜Kのマクロ細孔の細孔容積はいずれも0.10cc/g以上であるが、比較担体例5、7及び8のシリカ担体Q、S及びTのマクロ細孔の細孔容積は0.02cc/g未満しかなく、マクロ細孔は存在しない。また、比較担体例4のシリカ担体Pは0.19cc/gのマクロ細孔の細孔容積を持つと計算されるが、
図2にて明確なマクロ細孔のピークが見られないことから、実質的にはマクロ孔が存在しない。
【0087】
<触媒性能の評価>
製造例1〜3及び5〜8のシリカ担体A〜C及びE〜H、並びに比較担体例4、5、7及び8のシリカ担体P、Q、S及びTに下記手順でヘテロポリ酸を担持した触媒を調製し、エチレンと酢酸とから酢酸エチルを製造する反応に用いて触媒性能を評価した。
【0088】
(触媒Aの調製)
市販のKeggin型ケイタングステン酸H
4SiW
12O
40・26H
2O(日本無機化学工業株式会社製)40.7gを蒸留水34.1mLに溶解させた。その後、得られた溶液をシリカ担体A 100mL(54.8g)に加え、よくかき混ぜて担体に含浸させた。溶液を含浸させた担体を磁製皿に移し、1時間風乾させたのち、130℃に調節した乾燥機で5時間乾燥させ触媒Aを得た。
【0089】
(触媒B、C、及びE〜H、並びに比較触媒P、Q、S及びTの調製)
シリカ担体Aの代わりに、シリカ担体B、C若しくはE〜H、又はシリカ担体P、Q、S若しくはTのいずれかを用いた以外は触媒Aの調製と同様にして各触媒を得た。
【0090】
(触媒比表面積)
触媒A〜C及びE〜H、並びに比較触媒P、Q、S及びTの触媒比表面積は、株式会社島津製作所製のガス吸着装置(アサップ2020)を用いて、窒素ガス吸着によるBET比表面積として測定した。
【0091】
(実施例1〜7及び比較例1〜3−酢酸エチルの製造)
上記で得られた各触媒40mLを半径25mmの円柱状のSUS316Lの耐圧容器に充填し、0.75MPaGまで昇圧したのち、155℃まで昇温した。窒素ガス/酢酸(気体)/水蒸気=85.5mol%/10.0mol%/4.5mol%、SV(触媒1Lあたりを1時間で通過する原料の体積(L/L・h=h
−1))=1500h
−1の条件で30分間前処理をしたのちに、エチレン(気体)/窒素ガス/酢酸(気体)/水蒸気=78.5mol%/7.0mol%/10.0mol%/4.5mol%、SV=1500h
−1の条件で5時間反応を行った。反応は触媒層を10分割した部分のうち、最も反応温度が高い部分が165.0℃になるように反応温度を調整して行った。反応開始から3時間から5時間の間を通過したガスを、所定時間、氷水で冷却捕集して全量を回収し(以下これを「凝縮液」と呼ぶ。)、分析を行った。また、凝縮せずに残った未凝集ガス(以下、これを「未凝縮ガス」と呼ぶ。)について、凝縮液と同じ時間ガス流量を量り、その100mLを取り出し、分析を行った。得られた反応結果を表4に示す。
【0092】
(凝縮液の分析方法)
内部標準法を用い、反応液10mLに対し、内部標準として1,4−ジオキサンを1mL添加したものを分析液として、そのうちの0.2μLを注入し以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:株式会社島津製作所製GC−14A
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(スプリット比36、カラム流量1.2mL/分)
温度条件:検出器及び気化室温度を200℃とし、カラム温度を、分析開始から7分間は40℃に保持し、その後10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した。
検出器:FID(H
2圧49KPa、空気圧98KPa)
【0093】
(未凝縮ガスの分析方法)
絶対検量線法を用い、未凝縮ガスを100mL採取し、これをガスクロマトグラフィー装置に付属した1mLのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
【0094】
1.ジエチルエーテル、酢酸エチル、及びエタノール
ガスクロマトグラフィー装置:Agilent Technologies製 7890A
カラム:Agilent J&W GCカラム DB−624
キャリアーガス:He(流量1.7mL/分)
温度条件:検出器及び気化室温度を230℃とし、カラム温度を、分析開始から3分間は40℃に保持し、その後20℃/分の速度で200℃まで昇温した。
検出器:FID(H
2 40mL/分、空気圧400mL/分)
【0095】
2.エチレン
ガスクロマトグラフィー装置:Agilent Technologies製 7890A
カラム:SHIMADZU GC GasPro(30m)、Agilent J&W GCカラム HP−1
キャリアーガス:He(流量2.7mL/分)
温度条件:検出器及び気化室温度を230℃とし、カラム温度を、分析開始から3分間は40℃に保持し、その後20℃/分の速度で200℃まで昇温した。
検出器:FID(H
2 40mL/分、空気圧400mL/分)
【0096】
3.窒素
ガスクロマトグラフィー装置:Agilent Technologies製 7890A
カラム:HayesepQ G3591−80004
キャリアーガス:He(流量60psi)
温度条件:検出器及び気化室温度を230℃とし、カラム温度を、分析開始から3分間は40℃に保持し、その後20℃/分の速度で200℃まで昇温した。
検出器:TCD(He 45mL/分、空気圧2mL/分)
【0097】
【表4】
【0098】
一般的に触媒の比表面積と活性の間には相関があることが知られている。
図3に、触媒B、C、及びE〜H、並びに比較触媒P、Q、S及びTの比表面積と反応活性(酢酸エチルのSTY)との関係をグラフで示す。
図3より、実施例のシリカ担体に担持させた触媒は、その特徴的な細孔径分布から、市販品のシリカ担体(シリカ担体P、Q、S及びT)を用いた触媒と比較して、同一の比表面積においてより高い活性を示すことが分かる。
【0099】
また、シリカ担体が、大きなマクロ細孔の細孔容積と大きなBET比表面積を同時に有する実施例1〜2及び実施例4〜7では、市販品のシリカ担体(シリカ担体P、Q、S及びT)を用いた触媒と比較して、より高い活性を示すことが分かる。