(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、市場では、ゴム組成物において、よりスコーチ性(加工性)に優れ、かつ当該ゴム組成物を原料としたタイヤ(加硫ゴム)において、より低発熱性を有するものが求められているが、上記の特許文献のようなゴム組成物から得られた加硫ゴムは、当該特性に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、低発熱性を有する加硫ゴムが得られ、かつスコーチ性の低下が抑制できるゴム組成物が得られる、表面処理カーボンブラックおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カーボンブラックの表面が、ジヒドラジド化合物で処理された表面処理カーボンブラックに関する。
【0007】
また、本発明は、前記表面処理カーボンブラックの製造方法であって、前記カーボンブラックの表面を、前記ジヒドラジド化合物で処理する工程を含む表面処理カーボンブラックの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る表面処理カーボンブラックにおける効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。但し、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0009】
本発明の表面処理カーボンブラックは、カーボンブラックの表面が、ジヒドラジド化合物で処理されている。ジヒドラジド化合物により、予め、カーボンブラックの表面を処理することで、当該ジヒドラジド化合物がカーボンブラックの表面(当該表面に存在する数少ない官能基(例えば、カルボキシル基など))に効率よく付着(結合)できるものと推定される。とくに、当該ジヒドラジド化合物を含む水溶液を用いた場合、カーボンブラックと当該ジヒドラジド化合物の接触効率が上がるため、当該ジヒドラジド化合物がさらに効率よく付着(結合)できるものと推定される。
【0010】
このような表面処理カーボンブラックをタイヤ用ゴム組成物の原料として用いることで、表面処理カーボンブラックに存在する前記ジヒドラジド化合物の炭素−炭素二重結合の部分が、ゴム成分(ポリマー)のラジカルとの反応や硫黄架橋に伴う反応によりゴム成分(ポリマー)と結合することができると推定されるため、得られる加硫ゴムは優れた低発熱性を有する。
【0011】
上記のような表面処理カーボンブラックをタイヤ用ゴム組成物の原料として用いることで、未反応の前記ジヒドラジド化合物が加硫反応を促進しないであることが推定されるため、ゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<表面処理カーボンブラック>
本発明の表面処理カーボンブラックは、カーボンブラックの表面が、ジヒドラジド化合物で処理されたものである。
【0013】
前記カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、DBP吸収量(ジブチルフタレート吸収量)が、80cm
3/100g以上であることが好ましく、110cm
3/100g以上であることがより好ましく、そして、180cm
3/100g以下であることが好ましく、140cm
3/100g以下であることがより好ましい。
【0015】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、窒素吸着比表面積が、30m
2/g以上であることが好ましく、50m
2/g以上であることがより好ましく、100m
2/g以上であることがさらに好ましく、そして、250m
2/g以下であることが好ましく、200m
2/g以下であることがより好ましく、180m
2/g以下であることがさらに好ましい。
【0016】
前記ジヒドラジド化合物は、ヒドラジド基(−CONHNH
2)を分子中に2つ有する化合物であり、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジドなどが挙げられる。前記ジヒドラジド化合物は、これらの中でも、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドが好ましく、イソフタル酸ジヒドラジドがより好ましい。前記ジヒドラジド化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記ジヒドラジド化合物は、カーボンブラックに対する接触効率を高める観点から、前記ジヒドラジド化合物を含む水溶液で使用することが好ましい。前記水溶液における媒体は、イオン交換水、蒸留水、工業用水などの水を主成分とする媒体であるが、例えば、有機溶媒を含有する水であってもよい。前記媒体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0018】
前記ジヒドラジド化合物を含む水溶液中の、前記ジヒドラジド化合物の割合は、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、0.1重量%以上であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましく、1.5重量%以上であることがよりさらに好ましく、そして、前記媒体中に前記ジヒドラジド化合物を十分に溶解させる観点、およびゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制(防止)する観点から、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
また、前記ジヒドラジド化合物を含む水溶液は、前記媒体中に前記ジヒドラジド化合物を十分に溶解させる観点から、温度が60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、90℃以上であることがよりさらに好ましく、そして、安全性の観点からは、前記媒体の沸点以下であることが好ましい。
【0020】
前記表面処理カーボンブラックにおいて、前記ジヒドラジド化合物の使用量(表面処理量)は、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、前記カーボンブラック100重量部に対して、0.02重量部以上であることが好ましく、0.05重量部以上であることがより好ましく、0.1重量部以上であることがさらに好ましく、0.2重量部以上であることがよりさらに好ましく、そして、ゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制(防止)する観点から、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましく、3重量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0021】
<表面処理カーボンブラックの製造方法>
本発明の表面処理カーボンブラックの製造方法において、その表面処理の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ミキサーやブレンダー中で、カーボンブラックを攪拌(流動)しながら、1)前記ジヒドラジド化合物または当該化合物を含む水溶液を添加して攪拌処理する方法、2)前記ジヒドラジド化合物を含む水溶液を、スプレーなどの噴霧機を用いて噴霧処理する方法、また、3)カーボンブラックの造粒工程に使用する水に前記ジヒドラジド化合物を添加して処理する方法などが挙げられる。前記表面処理の方法は、均一塗布の観点から、噴霧処理する方法が好ましい。
【0022】
前記表面処理において、処理温度は、何ら限定されないが、前記ジヒドラジド化合物を含む水溶液を用いる場合、ジヒドラジド化合物の析出を抑制する観点から、当該水溶液の温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、90℃以上であることがよりさらに好ましく、そして、安全性の観点からは、前記媒体の沸点以下であることが好ましい。また、処理時間は、使用するカーボンブラックの量に依存するため一概に言えないが、通常、3.0〜5.0分程度である。
【0023】
上記の表面処理にて得られた表面処理カーボンブラックは、混合時間短縮の観点から、自然乾燥、強制乾燥などの乾燥工程を設けずに使用することができるが、上記の表面処理の工程のあとには、前記乾燥工程を設けることもできる。
【0024】
<ゴム組成物>
本発明では、前記表面処理カーボンブラックを用いて、ゴム組成物を調製することができる。ゴム組成物の原料としては、通常ゴム業界で使用される、ゴム、各種配合剤が挙げられる。
【0025】
前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、前記表面処理カーボンブラックにおける前記ジヒドラジド化合物は、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、0.01重量部以上であることが好ましく、0.03重量部以上であることがより好ましく、0.05重量部以上であることがさらに好ましく、0.1重量部以上であることがよりさらに好ましく、そして、ゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制(防止)する観点から、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましく、3重量部以下であることがさらに好ましく、1.5重量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0027】
前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、前記表面処理カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、30〜100重量部であることが好ましく、35〜80重量部であることがより好ましく、40〜70重量部であることがさらに好ましい。
【0028】
前記各種配合剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などが挙げられる。
【0029】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記硫黄の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して0.3〜6.5重量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3重量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5重量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1.0〜5.5重量部であることがより好ましい。
【0031】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0032】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0033】
前記老化防止剤としては、通常のゴム用老化防止剤であればよく、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記老化防止剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0035】
前記表面処理カーボンブラック、前記ゴム、および前記各種配合剤の配合(添加)の方法は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練する方法が挙げられる。
【0036】
前記混練する方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。また、混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。なお、混練機の排出温度は、前記加硫系成分を含む場合、80〜110℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。
【0037】
本発明の表面処理カーボンブラックを含むゴム組成物は、耐スコーチ性を有する。また、当該ゴム組成物から得られた加硫ゴムは、低発熱性を有するため、空気入りタイヤ用に適している。
【実施例】
【0038】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0039】
(使用原料)
a)ジヒドラジド化合物:イソフタル酸ジヒドラジド(日本ファインケム社製)
b)カーボンブラック(1):「シースト300(HAF−LS)」(窒素吸着比表面積84m
2/g、DBP吸収量75cm
3/100g)(東海カーボン社製)
c)天然ゴム:「RSS#3」
d)亜鉛華:「酸化亜鉛2種」(三井金属鉱山社製)
e)ステアリン酸:「ビーズステアリン酸」(日油社製)
f)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
g)加硫促進剤(A):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、「サンセラーCM−G」(三新化学工業社製)
h)加硫促進剤(B):N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、「ノクセラーNS−P」(大内新興化学社製)
【0040】
<実施例1>
<表面処理カーボンブラック1の製造>
所定量のカーボンブラック(1)に、ジヒドラジド化合物として、イソフタル酸ジヒドラジドを、カーボンブラック/ジヒドラジド化合物の重量比が、表1に記載の重量比になるように測り取った。測り取ったジヒドラジド化合物の全量に対して、ジヒドラジド化合物の濃度が0.5重量%になるように蒸留水を加え、60℃まで加熱混合した。得られたジヒドラジド化合物を含む水溶液(0.5重量%)の全量を、上記の所定量のカーボンブラック(1)に、ミキサー(株式会社カワタ製「SMV−20」)で攪拌しながら、スプレーガンを用いて噴霧して、表面処理カーボンブラック1を製造した。なお、表1中の配合比率は、表2記載のゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0041】
<ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
上記で得られた表面処理カーボンブラック1と、表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表2中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。また、表2中の表面処理カーボンブラックの重量部は、カーボンブラックとジヒドラジド化合物の合計重量のみを表す。
【0042】
<実施例2〜6>
<表面処理カーボンブラックの製造>
カーボンブラック/ジヒドラジド化合物の重量比、およびジヒドラジド化合物を含む水溶液の濃度を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、表面処理カーボンブラック2〜6を製造した。
【0043】
<ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
表面処理カーボンブラックの種類を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。
【0044】
<比較例1〜2>
表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)して、未加硫ゴム組成物を製造した。
【0045】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物について以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0046】
<耐スコーチ性の評価>
耐スコーチ性の評価は、JIS K6300に準拠して、(株)東洋精機製作所製のロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴム組成物を125℃で1分間予熱後、最低粘度Vmより5ムーニー単位上昇するのに要した時間t5を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、スコーチタイムが長く、耐スコーチ性に優れることを意味する。
【0047】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0048】
<発熱性の評価>
発熱性の評価は、(株)東洋精機製作所製の粘弾性試験機を用い、静歪み10%、動歪み±2%、周波数50Hz、温度60℃の条件下で、損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100として指数で表示した。指数が小さいほど、発熱し難く、低発熱性に優れることを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】