(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マッチング部は、前記軌道上の所定の範囲における構造物の3次元形状を示すデータ群の各々と前記センシング部で測定された物体の3次元形状を示すデータ群との類似度を算出し、各類似度がしきい値を超えるか否かを判定し、
前記推定位置決定部は、前記マッチング部で前記しきい値を超える類似度がないと判定された場合、前記走行距離計測部で計測された走行距離を前記基準位置に加算したものを前記車両の推定位置として決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両制御システム。
前記マッチング部は、前記所定の範囲の次にマッチング処理の対象とする範囲として、前記車両の推定位置と前記車両の速度とに基づいて、前記車両が位置していると予測する前記軌道上の範囲を設定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両制御システム。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両を時刻通りに運行したり、車両同士の安全距離を保つように制御したりするためには、車両の位置情報が不可欠である。
【0003】
現在、鉄道車両の位置を推定する手段として、基準地点からの走行距離を、車輪の回転数と車輪径との積により算出する手段(オドメトリ)が広く利用されている。しかしながら、この手段は、車輪の空転滑走、磨耗の影響等により、走行距離に比例して推定位置の誤差が累積するのを避けられない。
【0004】
そこで、累積した誤差をリセットする位置補正手段として、それ自身の位置情報を予め記憶した地上子を軌間に設置し、車両がその上を通過するときにその位置情報を読み出す手段が、前述のオドメトリと合わせて広く利用されている。この手段は、推定位置の補正に効果的であるが、補正後に再び推定位置の誤差が累積するのを避けられない。このため、推定位置の誤差を車両の運行制御に必要な範囲で抑え続けるには、地上子をある程度(例えば数百m)の間隔で連続して敷設する必要があり、その分インフラ工事、保全のコストなどを必要とする。
【0005】
この点、車両に給電するためのトロリ線の形状と絶対位置との関係を予めデータベースに格納しておき、走行中に取得したトロリ線の形状をデータベースの内容と比較することで、車両の絶対位置を特定する方法が開示されている(特許文献1参照)。ここで、走行中にトロリ線の形状を取得する方法として、パンタグラフに備えた角度センサを挙げている。
【0006】
また、架線を測距センサで計測して得た時系列データを、予め計測して記憶したその時系列データと連続的にマッチングさせることで、車両の自己位置を推定する方法が開示されている(特許文献2参照)。ここで、位置と関連付けられる架線の特徴量として、架線の磨耗、偏位、高さを挙げている。
【0007】
また、枕木、架線の継ぎ目、碍子など軌道沿線の構造物(地物)を予めデータベース化し、非接触式センサでそれらを検出し、数や間隔などを参考に現在位置を特定する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0008】
これらの方法によれば、電気鉄道において、車両に駆動エネルギーを与えるために元々ある架線を利用することで、地上子もその代替となる地上設備も新たに設置することなく、その分だけ安価に車両位置を推定できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】
(1)第1の実施の形態
図1において、100は全体として第1の実施の形態による車両制御システムを示す。かかる車両制御システム100は、車両101を含んで構成される。車両101は、軌道102に沿って設けられている電路設備より給電され、軌道102を走行する。
【0019】
電路設備の代表的な構成要素としては、車両101とパンタグラフで接するトロリ線103と、トロリ線103を吊り支えるちょう架線104およびハンガ105と、これらを支持する支持具106および絶縁具107とがある。電路設備は、これらに加えて、張力調整具、き電分岐装置、絶縁用の碍子など、様々な要素で構成されていることが普通である。以下、特に断らない限り、車両101の上方で電路設備を構成するこれらの構成要素を纏めて「架線」と称する。
【0020】
車両101は、センシング部108、地図情報109、マッチング部110、推定位置決定部111、走行距離計測部112、および制御部113を備える。
【0021】
センシング部108は、LIDAR(Light Detection and Ranging)で架線をスキャンし、架線の3次元形状を計測し、その3次元形状のデータ(計測データ)をマッチング部110に伝送する。ここで、LIDARとは、対象にレーザを照射し、その反射を受光することで対象までの距離を測定する装置である。その原理から、測距の精度は、数mm〜数cmと比較的高い。1本の直進するレーザを基本単位とし、数十Hzと高速で照射の方向を次々と周期的に変化させることで、対象の表面形状を細密な点の集まり(点群)として捉えられる。このため、前述の計測データは、架線の3次元形状を点群として表現したデータ(データ群)である。
【0022】
なお、センシング部108のLIDARには、照射の方向を立体的に変化させられる3次元LIDARを想定する。LIDARには、これ以外にも照射の方向を平面的に変化させる2次元LIDARがあり、これを単独で、または複数組み合わせて用いたとしても、同様に対象の表面形状を(3次元LIDARを利用する場合よりも一度に取得できる情報量は少ないものの)捉えることができるので、以下で記す内容を同様に実施できる。
【0023】
ここで、車両101を断面方向から見た様子を示す
図2を用いて、車両101、センシング部108、および架線(トロリ線103、ちょう架線104、ハンガ105、支持具106、絶縁具107)の位置関係を詳しく説明する。
【0024】
センシング部108において、LIDARは、パンタグラフとトロリ線103の接点を中心とすると斜め方向から架線をスキャンできるように車両101に設置されている。これは、架線の特徴点の情報を多く捉えられた方がこの後の処理(
図5で説明するマッチング処理)に有利であるという考えであり、架線の構成要素をできるだけ多く捉えられるようにするためである。例えば、トロリ線103の直下の位置からスキャンをすると、原則鉛直方向にトロリ線103を吊っているハンガ105およびちょう架線104が、トロリ線103の背後に隠れる形で、スキャンが及ばなくなる。これに対し、トロリ線103の直下よりもずれた位置にセンシング部108を設け、当該位置から斜めにスキャンをすれば、周期的に張られたハンガ105、および周期的にたわみを見せるちょう架線104の側面にスキャンが及び、それらの特徴を計測データの中に取り込むことができる。
【0025】
ここで、支持具106の形状について説明を補足する。支持具106は、ちょう架線104およびトロリ線103を含む、その下方にある構造物全てを支持する必要から、通常、鉄骨などの強靭な材質で成り、大きさも架線の構造物の中でひときわ大きい。このため、LIDARでその3次元形状を比較的捉え易い。電線のようにたわんだり揺れたりする心配も無いため、車両101の走行の都度、毎回同じように、また比較的見落とす心配も少なく、LIDARによるスキャンで捉えることができると言える。支持具106は、数百mの間隔で建てられているのが普通である。
【0026】
以上で
図2を用いた説明を終え、再び
図1を用いて、車両101が備える残りの構成について説明する。
【0027】
地図情報109は、軌道102に亘る架線の3次元形状を、その位置情報と対応付けて予め記憶したデータベースである。このようなデータベースを作成するには、センシング部108と同様または更に高精細なLIDARを備えた車両を軌道に沿って事前に走らせ、その計測データを(必要に応じて加工し)保存すればよい。計測して得られた3次元形状と位置との対応付けは、例えばDGPS(Differential Global Positioning System)などの高々数十cm程度の誤差で絶対位置を計測できる手法を組み合わせることで実現できる。この手段によるものと同等の結果が得られさえすれば、データベースを作成する方法はこれに限らない。
【0028】
地図情報109は、軌道102に亘っての3次元形状の情報であるから、データのサイズが比較的大きい。そのデータを記憶する方法は特に問わないが、本実施の形態では、2次記憶装置(磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリ記憶装置などであり、図示は省略する。)に記憶されているものとする。後に説明するマッチング部110の処理で、地図情報109は、必要な区間の分だけ主記憶装置(図示は省略する。)上に読み出されて利用される。
【0029】
ここで、
図3を用い、地図情報109が記憶する3次元形状のデータフォーマットを説明する。3次元形状のデータは、3次元空間の座標系を表すX,Y,Zおよび各点での値Pで構成される。X,Y,Zは、架線の構成要素の3次元形状を点群として表現するのに十分なきめ細かさ(例えば数cm)で3次元空間を格子に区切った各点の座標である。値Pは、点の有無を表す2値で、便宜上「1」のときに点が有ることを表し、「0」のときに点が無いことを表すものとする。X,Y,Zの組で表される各点について、値Pが「1」のときに点を描画していけば、3次元形状を点群で表現できる仕組みである。
【0030】
なお、X,Y,Zの各軸は、必ずしも互いに90度で直行する必要はなく、3次元空間を表現できるように、互いに一次独立であればよい。例えば、Xを軌道102に沿う方向にとり、Yを軌道を横切る方向に、Zを高さ方向にとれば、Xの値がそのまま軌道102上の位置に対応付くので、いま処理の対象としている軌道102沿線の3次元空間を記述するのに便利である。
【0031】
以上で
図3の説明を終え、再び
図1の説明に戻る。
【0032】
マッチング部110は、地図情報109から読み出した予め記憶した架線の3次元形状のデータ(地図データ)の中から、センシング部108から受信した架線の3次元形状の計測データに最もよく一致するものを1つ特定し、それに対応する位置を特定する手段である。特定した位置は、推定位置決定部111に出力される。後に
図4および
図5を用いて具体的な処理の内容を説明する。
【0033】
推定位置決定部111は、マッチング部110が特定した位置と、次に説明する走行距離計測部112求めた車両101の走行距離とから、車両101の位置を推定(推定位置を決定)する手段である。後に
図6を用いて具体的な処理の内容を説明する。決定された推定位置は、制御部113に送信される。
【0034】
走行距離計測部112は、車両101の走行距離を計測し、推定位置決定部111に送信する。走行距離を計測する手段は、特に問わない。車輪の回転数を計数し、それに予め記憶した車輪径を掛けることで走行距離を算出する手段が、背景技術に記載した通り鉄道車両でよく用いられており、例えばその手段を想定する。他に、速度センサの出力を積分して走行距離を算出する方法もある。
【0035】
制御部113は、車両101の推定位置を用いた車両制御のアプリケーションである。車両101が決められた地点間(例えば、駅間)を予定された時刻(ダイヤ)通りに走行するように加減速を自動制御する自動運転システム(ATO:Automatic Train Operation)が、例えばそれに当たる。位置毎に決められた制限速度に従って車両101を自動で加減速するには、少なくとも数m単位で車両101の位置を把握するのが望ましく、また駅のホームのように停止位置の決められた所へ車両101を自動で停止させる定位置停止制御(TASC:Train Automatic Stopping-position Control)では、少なくとも数cmの精度で車両101の位置を把握する必要がある。数mm〜数cmの測距精度を持つLIDARを用いてセンシング部108を実装し、また地図情報109を作成したとき、マッチング部110で情報量を落とさない限り、推定位置決定部111で求めた推定位置は、これらの機能を持つATOの用途に堪えると期待できる。またATOの他に、車両同士の安全距離を確保するようにブレーキを制御する信号システム(ATP:Automatic Train Protection)も、車両101の推定位置を用いるアプリケーションの一例である。
【0036】
なお、車両101の機能(センシング部108、マッチング部110、推定位置決定部111、走行距離計測部112、および制御部113)の一部または全部は、図示は省略するCPU(Central Processing Unit)が主記憶装置にプログラムを読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。また、車両101の機能の一部または全部は、車両101と通信可能なコンピュータにより実現されてもよい。
【0037】
以上で
図1の説明を終え、続いてマッチング部110の処理について
図4および
図5を用いて説明する。
【0038】
図4に示す各処理(ステップS401〜ステップS406)は、マッチング部110により実行される。以下、各処理について説明する。
【0039】
ステップS401では、マッチング部110は、以降の処理を適用する軌道102上の区間を定める。区間を定める理由は、続くステップS402で、地図情報109からその区間の分だけ架線の3次元形状の地図(地図データ)を主記憶装置上に読み込むためである。このため、区間をどう選ぶかは地図データのサイズと主記憶装置の容量との兼ね合いによるが、実用上、例えば駅間を1つの区間に定め、駅での停車中に次の駅間の地図データを読み込むようにすれば、走行中に新たに地図データを読み込む必要がなく好適である。
【0040】
ステップS402では、前述したように、マッチング部110は、地図情報109からステップS401で定めた区間の分だけ地図データを主記憶装置上に読み込む。
【0041】
ステップS403では、マッチング部110は、主記憶装置上に読み込んだ地図データのうちどの範囲を、次のステップS404でセンシング部108から読み込んだ計測データと比較するかを決定する(マッチング範囲の設定)。この比較の詳細についてはステップS405のところで説明するが、比較の目的は、車両101の位置(車両位置)の候補を特定することである。このため、車両101が走行する軌道102が決まっており、車両101が前回に観測した位置から急激には移動しない以上、合理的な範囲で、いま車両101が位置していると予測する軌道102上の所定の範囲を特定できる。
【0042】
本処理は、計測データとの比較に使う地図データをこの合理的な範囲に予め絞り、後のステップS405で計算量を低減する意図で設けられている。範囲の定め方は、例えば、後で説明するように車両位置の候補を特定するステップS406を経てステップS407からステップS403に戻るループがあることから、ステップS406で一度特定した車両位置を基準に、そこからループの周期(例えば100ms)のうちに車両101が走行し得る距離を加味した分で定めることができる。この例に従うと、基準の車両位置をx0として、車両101が約72km/hで走行していれば、100msの間に走行するのは約2mであるから、範囲を[x0,x0+2m]と定められる。実用上は、位置、車両速度の誤差等を考慮したマージンαを持たせ、[x0−α,x0+2m+α]と範囲を定めるのがよい。なお、ステップS403の初回実行時は、まだステップS406で特定した位置の候補の情報が無いため、始点駅の位置など何らかの初期位置情報を基準に範囲を定めればよい。
【0043】
ステップS404では、マッチング部110は、センシング部108から、LIDARで計測した架線の計測データを受信し、主記憶装置に読み込む。このとき、後のステップS405の中で、計測データを先のステップS402で読み込んだ地図データと比較するので、2つのデータの形式を比較可能なように揃える変換処理も同時に行う。なお、ステップS404は、ステップS403〜ステップS407のループの中で何度も計算するため、地図データの形式に合わせて計測データの形式を変換するよりは、先のステップS402で地図データを読み込んだ時点で、地図データの形式の方を計測データの形式に予め合わせておいた方が、ループの計算が容易になる。
【0044】
ステップS405では、マッチング部110は、先述の地図データで定めた範囲の中から、先述の計測データと類似するデータを1つ見付け、それに対応する位置を特定する(マッチング処理)。このマッチング処理の詳細については後に
図5を用いて説明する。
【0045】
ステップS406では、マッチング部110は、ステップS405で特定した位置を推定位置決定部111に通知する。
【0046】
ステップS407では、マッチング部110は、ステップS405で特定した位置が、ステップS401で定めた区間の終端に達しているか否かを判定する。マッチング部110は、達していないと判定した場合、位置を続けて推定するために、ステップS403に処理を戻す。マッチング部110は、達していると判定した処理を終了する。これによりステップS403〜ステップS407は、ループを形成する。その計算周期は、前述した通り、例えば100ms程度の想定である。
【0047】
次にステップS405の詳細を
図5のフローチャートを用いて説明する。
図5に示す各処理(ステップS501〜ステップS507)は、マッチング部110により実行される。以下、各処理について説明する。
【0048】
ステップS501では、マッチング部110は、続くステップS502で計測データとの比較に使う地図データを1つ選択する。後述するように、ステップS501からステップS505は、ループを形成している。その意図は、先述したステップS403で定めたマッチング範囲内の地図データを網羅するためである。このために、ステップS501では、マッチング部110は、マッチング範囲の始点位置から次々と地図データを選択していく。
【0049】
ステップS502では、マッチング部110は、ステップS501で選択した地図データと計測データとを比較し、類似度を評価する。類似度の尺度については様々考えられるが、例えば
図3で示したデータ形式で表現するならば、3次元空間内の同じ格子(X,Y,Zの組)にデータが有る(P=1)かデータが無い(P=0)か、仮に相違するときは隣接する格子(X+1,Y,Zなど)とはどうかを調べ、同じセルにあれば2点、隣接するセルにあれば1点などと重み付きの得点を与え、その総合得点で類似度を測る尺度が考えられる。この場合、得点が高いほど類似度が高い。類似度の評価の尺度は、目的に適うものであれば、これに限らない。
【0050】
ステップS503では、マッチング部110は、ステップS502で求めた類似度の評価値が、予め定めた基準値を満足する(しきい値を超える)か否か(つまり例示した尺度の場合なら基準値よりも大きいか否か)を判定する。マッチング部110は、満足していると判定した場合、ステップS504に処理を移し、満足していないと判定した場合、ステップS504をスキップしてステップS505に処理を移す。
【0051】
この判定処理の意図は、類似度が基準値以下の場合、いかにマッチング範囲内で相対的に類似度が高かろうと、車両位置の候補には採用しないようにするためである。例えば、センシング部108が故障していたり、悪天候などの理由で測距が正常に機能しない場合、測定データは、本来期待された地図データのそれとは少なからず異なり、結果として地図データといくら比較しても基準を満足するような類似度は、おそらく得られない。これを利用して、センシング部108が正常に機能しない場合(つまり得られた推定位置に信頼の置けない場合)にそのことを検出するという目的が、前述の意図の先にある。
【0052】
ステップS504では、マッチング部110は、目下設定されているマッチング範囲において、ステップS501で次々と地図データを選択してきた中で、ステップS502における類似度が最も高いものを選び、その位置を特定する。このとき、ステップS503の説明で記述した通り、類似度が基準値を下回るものはこの処理の対象にならない。すなわち、仮にマッチング範囲内の全ての地図データの類似度が基準値を下回る場合は、ステップS504では位置を特定せず、1つでも基準値を上回れば、ステップS504ではその中で類似度が最大の位置を特定する。後のステップS506で利用するため、ステップS504ではこれら2つが区別されている。
【0053】
ステップS505では、マッチング部110は、ステップS501で選択した地図データがマッチング範囲の始端から終端へと達するに至ったか否か(つまり、マッチング範囲の地図データが網羅されたか否か)を判定する。マッチング部110は、終端に達しないと判定した場合、ステップS501に処理を戻し、終端に達したと判定した場合、ステップS506に処理を移す。
【0054】
ステップS506では、マッチング部110は、前述のステップS504において、位置を特定したか否かを判定する。マッチング部110は、位置を特定したと判定した場合、その位置を車両位置の候補として処理を終了し、位置を特定していないと判定した場合、ステップS503の判定処理を経て全ての地図データの各類似度が基準値を下回っていたということなので異常を判断し、ステップS507に処理を移す。
【0055】
ステップS507では、マッチング部110は、位置を特定する代わりに例外の発生を示す情報が後段の処理(
図4のステップS406)に渡されるように処理する。
【0056】
以上で
図5の説明を終え、
図4の説明に戻る。
【0057】
先の説明によって、ステップS405では、マッチング部110は、車両位置の候補として特定した位置の情報または例外の発生を示す情報をステップS406に用いることを明らかにした。ステップS406では、マッチング部110は、何れかの情報を推定位置決定部111に通知する。例えば、ステップS405で例外の発生があった場合、推定位置決定部111もまた、その例外の発生を知ることができる。
【0058】
以上で
図4の説明を終え、続いて推定位置決定部111の処理について
図6を用いて説明する。
図6に示す各処理(ステップS601〜ステップS604)は、推定位置決定部111により実行される。以下、各処理について説明する。
【0059】
ステップS601では、推定位置決定部111は、マッチング部110で特定された位置を基準位置として読み込む。前述の通り、マッチング部110からの情報は、特定した位置を示す情報ではなく、例外の発生を示す情報である場合がある。この場合は、前に読み込んだ基準位置をそのままにする。
【0060】
ステップS602では、推定位置決定部111は、ステップS601で読み込んだマッチング部110からの情報が、例外の発生を示す情報であるか否かを判定する。推定位置決定部111は、例外の発生を示す情報であると判定した場合、ステップS603に処理を移し、例外の発生を示す情報でないと判定した場合、ステップS604に処理を移す。
【0061】
ステップS603は、推定位置決定部111は、走行距離計測部112から走行距離を読み込み、前回の基準位置を設定して以来の走行距離を、その基準位置に加算したものを推定位置に決定した上で、処理を終了する。例外が発生するのは計測データと地図データとの類似度がある基準を満足しない場合であったから、この処理は、すなわち、マッチング部110で特定された位置の信頼性が十分でない場合は、その位置情報を車両101の推定位置には反映させず、代わりに前回得られた信頼できる位置を基準に、そこから走行距離の情報を使って車両位置の推定を補ったということである。
【0062】
ステップS604では、推定位置決定部111は、例外が発生しなかった場合、ステップS601で決定した基準位置、例外が発生した場合、ステップS603で決定した推定位置を制御部113に出力し、処理を終了する。
【0063】
以上のように、第1の実施の形態によると、車両101上方に展開された給電用の電路設備(架線)の3次元形状を用いて同定することで、軌道102を走行する車両101の位置を高精度に推定できる。また、センシング部108(測距センサ)の故障、悪天候などの要因で架線の3次元形状を十分正確に捉えられないとき、別の手段で計測した走行距離の情報を使って車両位置の推定を補うことで、推定位置の信頼性を保ち、推定位置を用いた車両101の制御機能を継続できる。
【0064】
(2)第2の実施の形態
以下、
図7〜
図9を用いて第2の実施の形態について説明する。
【0065】
図7は、本実施の形態の車両制御システム700の構成の一例を示す図である。第1の実施の形態において
図1で説明した構成に比べ、指定位置情報701が追加されたことと、それに伴って推定位置決定部702が変更されたことが異なり、それ以外は
図1で説明した構成と同じである。以下では、異なる構成について主に説明する。
【0066】
指定位置情報701は、センシング部108を用いた車両位置の推定を特に高信頼に行える区間を予め記録したデータである。このような区間として想定されるのは、例えば、架線の支持具106を捉えることのできる区間である。これは、第1の実施の形態で説明したように、支持具106がその用途から必然的に、鉄柱などの強靭な材質で、かつ架線の構成要素の中で比較的巨大に作られており、センシング部108で検出されない可能性が相対的に低いためである。他にも、高架の下を通過する区間などであってもよく、このような区間であっても、センシング部108で検出されない可能性が相対的に低くなることが期待できる。
【0067】
指定位置情報701のデータ形式を、
図8を用いて説明する。指定位置情報701は、指定位置IDと、その指定位置の区間とで構成される。後の説明を通じて分かるように、架線の3次元形状から同定した位置が車両101の推定位置に反映されるのは、この指定位置でのみとなる。
【0068】
ここで、指定位置IDは、
図7中の支持具106を指す表記と合わせて「A」、「B」、「C」などとしたが、この表記に限るものではなく、指定位置を識別可能な他の表記を用いてもよい。また、この例では、指定位置の区間は、支持具106の付近10mを指すようにした。センシング部108は、支持具106の位置の前後5mから支持具106をセンシング可能であり、その範囲を指定位置の区間としているが、これに限られるものではない。例えば、指定位置を軌道上の1点で表し、推定位置決定部702で、その点を基準に区間を定めるようにしてもよい。
【0069】
推定位置決定部702の処理について
図9を用いて説明する。推定位置決定部702の処理は、第1の実施の形態において
図6を用いて説明した推定位置決定部111の処理と比べ、ステップS601とステップS602との間にステップS901が追加された以外は同様である。
【0070】
ステップS901では、推定位置決定部702は、指定位置情報701を参照し、ステップS405で特定された位置が、指定位置であるか否か(指定位置の区間内にあるか否か)を判定する。推定位置決定部702は、指定位置であると判定した場合、ステップS602に処理を移し、指定位置でないと判定した場合、ステップS603に処理を移すので、以降は、
図6で説明した処理と同様の流れになる。
【0071】
つまり、推定位置決定部111は、第1の実施の形態で
図6を用いて説明したのと同じ処理により、指定位置においてのみ、ステップS405で特定した位置を基準位置に設定し、指定位置ではない位置には、走行距離に基づいて車両位置を推定することになる。これは言い換えると、見かけ上、普段は走行距離に基づいて車両位置を連続的に推定し、時々現れる指定位置で架線の3次元形状から高精度かつ高信頼に位置を同定して、走行距離に累積する誤差を補正する仕組みであるとも言える。
【0072】
以上のように、第2の実施の形態によると、第1の実施の形態と同様、車両101上方に展開された給電用の電路設備(架線)の3次元形状を用いて同定することで、軌道102を走行する車両101の位置を高精度に推定できる。加えて、架線の3次元形状を用いた車両位置の推定を、3次元形状の特徴上、それを比較的高精度かつ高信頼に行える区間に絞ることで誤同定により推定位置を誤る機会を減らし、より高信頼な位置情報を提供できる。
【0073】
なお、ステップS405の中で発生した例外を区間に亘ってラッチ(保持)するようにし、指定位置ではない位置で例外が発生した場合、指定位置でも補正が行われないようにすることができる。これは、指定位置ではない位置で、車両101の推定位置には反映しないものの、機能診断の用途で架線の3次元形状から位置を同定する処理を行うことに等しい。例外の発生は、センシング部108(測距センサ)の異常、悪天候などで十分に精確な架線の3次元形状を得られない場合への対処を想定したものであったので、そのような場合、指定位置でも正確な位置情報を提供し損なうおそれが大きい。したがって、指定位置ではない位置で機能を診断し、異常を検出した場合に早めに機能を停止することは、誤った位置情報を提供する可能性を減少させるという意味で、より高信頼な位置情報を提供することになる。
【0074】
上述した構成によれば、信頼性の高い車両制御システムを実現することができる。
【0075】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1および第2の実施の形態においては、本発明を車両制御システム100,700に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の車両制御システムに広く適用することができる。
【0076】
また上述の実施の形態においては、車両101が走行する軌道102に沿って設けられる架線をスキャンしてマッチング処理する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、車両101が走行する軌道102と並行して設けられる他の軌道(例えば、軌道102が上り線、他の軌道が下り線。)に沿って設けられる架線をスキャンしてマッチング処理するようにしてもよい。この場合、マッチング部110は、広義には、車両101が走行する軌道102付近に予め設けられている構造物の3次元形状を示すデータ群と、センシング部108で測定された物体の3次元形状を示すデータ群とのマッチング処理を行うものである。付言するならば、地図情報109は、車両101が走行する軌道102付近に予め設けられている構造物の3次元形状を示すデータ群と構造物の位置を示す位置情報とが対応付けられている複数の構造物情報の一例である。
【0077】
また、例えば、車両101が走行する軌道102に沿って設けられる架線と軌道102と並行して設けられる他の軌道(例えば、軌道102が上り線、他の軌道が下り線。)に沿って設けられる架線との両方をスキャンしてマッチング処理するようにしてもよい。両方の架線をマッチング処理の対象とする場合、一方の架線の場合よりも多くのマッチング処理を行うことができるので、より高精度に車両101の推定位置を決定することができるようになる。
【0078】
上述した構成については、発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み合わせたり、省略したりすることができる。