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特許6986944SiCエピタキシャルウェハの評価方法及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986944
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】SiCエピタキシャルウェハの評価方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20211213BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20211213BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20211213BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C30B29/36 A
   C23C16/42
   C23C16/52
   H01L21/205
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-234586(P2017-234586)
(22)【出願日】2017年12月6日
(65)【公開番号】特開2019-99438(P2019-99438A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】西原 禎孝
(72)【発明者】
【氏名】亀井 宏二
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/094764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/144614(WO,A1)
【文献】 特開2007−318029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/36
C23C 16/42
C23C 16/52
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層に対して励起光を照射し、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを介して前記励起光の照射面を観測する第1工程を有し、
前記第1工程において、オフセット方向に延在しアスペクト比が1より大きい欠陥を観測する、SiCエピタキシャルウェハの評価方法。
【請求項2】
不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層に対して励起光を照射し、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを介して前記励起光の照射面を観測する第1工程を有し、
前記励起光の照射面を430nmより大きい波長帯のバンドパスフィルターを介して観測する第2工程と、
前記第1工程の観測結果と前記第2工程の評価結果を比較する第1判定工程をさらに有する、SiCエピタキシャルウェハの評価方法。
【請求項3】
不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層に対して励起光を照射し、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを介して前記励起光の照射面を観測する第1工程を有し、
前記励起光の照射面と同一面を表面観察する第3工程と、
前記第1工程の観測結果と前記第3工程の評価結果を比較する第2判定工程をさらに有する、SiCエピタキシャルウェハの評価方法。
【請求項4】
前記励起光の照射面を430nmより大きい波長帯のバンドパスフィルターを介して観測する第2工程と、
前記第1工程の観測結果と前記第2工程の評価結果を比較する第1判定工程をさらに有する、請求項1に記載のSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
【請求項5】
前記励起光の照射面と同一面を表面観察する第3工程と、
前記第1工程の観測結果と前記第3工程の評価結果を比較する第2判定工程をさらに有する、請求項1,2および4のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
【請求項6】
不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層をSiC基板の一面に積層する工程と、
請求項1〜のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャルウェハの評価方法を用いて、前記高濃度エピタキシャル層を評価する工程と、
前記高濃度エピタキシャル層上にドリフト層を積層する工程と、を有する、SiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項7】
前記SiC基板と前記高濃度エピタキシャル層との間に、前記高濃度エピタキシャル層より不純物濃度が低いバッファ層を積層する工程をさらに有する、請求項に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCエピタキシャルウェハの評価方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きく、熱伝導率が3倍程度高い。そのため、炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。
【0003】
SiCデバイスの実用化の促進には、高品質のSiCエピタキシャルウェハ、及び高品質のエピタキシャル成長技術の確立が求められている。
【0004】
SiCデバイスは、SiC基板と当該基板上に積層されたエピタキシャル層とを備えるSiCエピタキシャルウェハに形成される。SiC基板は、昇華再結晶法等で成長させたSiCのバルク単結晶から加工して得られる。エピタキシャル層は、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)等によって作製され、デバイスの活性領域となる。
【0005】
エピタキシャル層は、より具体的には、(0001)面から<11−20>方向にオフ角を有する面を成長面とするSiC基板上に形成される。エピタキシャル層は、SiC基板上にステップフロー成長(原子ステップからの横方向成長)し、4H−SiCとなる。
【0006】
SiCエピタキシャルウェハにおいて、SiCデバイスに致命的な欠陥を引き起こすデバイスキラー欠陥の一つとして、基底面転位(Basal plane dislocation:BPD)が知られている。たとえば、バイポーラデバイスに順電流を印加した際に流れる少数キャリアの再結合エネルギーによって、SiC基板からエピタキシャル層に引き継がれたBPDが拡張し高抵抗な積層欠陥となる。そして、デバイス内に高抵抗部が生じると、デバイスの信頼性が低下する。そのため、このようにエピタキシャル層に引き継がれるBPDの低減がこれまで行われてきた。
【0007】
SiC基板中におけるBPDの多くは、エピタキシャル層が形成される際に欠陥拡張が生じない貫通刃状転位(Threading edge dislocation:TED)に変換することができる。この変換率は現在99.9%以上を実現できており、エピタキシャル層中のBPDによるデバイス不良はほとんど無視できるまでになった。一方で、最近、TEDに変換されたSiC基板中のBPDが、順方向に大電流を流した際に、エピタキシャル層中で積層欠陥を形成してしまうことが明らかになってきた。これを抑えなくては、如何にTEDへの変換率を上げたとしても、BPDによるデバイス不良を完全に解消したとはいえない。そこで、この抑制手段として、基板中のBPD近傍で少数キャリアを再結合させないことが効果的であると考えられている。
【0008】
特許文献1及び2には、SiC基板上に高濃度に不純物ドーピングされたエピタキシャル層を積層することで、デバイスに順電流を印加した際に、少数キャリアの基板中のBPDへの到達確率を抑制でき、その拡張による高抵抗な積層欠陥の形成を防ぐことができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/094764号
【特許文献2】国際公開第2017/104751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
エピタキシャル層内のBPDの特定は、一般にフォトルミネッセンス法(PL法)によって行う。例えば、313nmの励起光をSiCエピタキシャルウェハの照射し、660nm以上の波長帯を通すバンドパスフィルターを介して照射面を観測する。照射面内にBPDが存在する場合は、当該場所が発光する。
【0011】
一方で、高濃度エピタキシャル層を用いた場合、高濃度エピタキシャル層内のBPDは、当該波長帯では周囲の発光がBPDの発光よりも強くなるため見えなくなってしまう。つまり、高濃度エピタキシャル層内に存在するBPDを特定することができなかった。
【0012】
上述のようなSiC基板上に高濃度エピタキシャル層を積層したウェハを用いることで、バイポーラデバイスの様な少数キャリアによる伝導が生じるデバイスに順電流を印加した際に、BPDが拡張して高抵抗な積層欠陥となることを防ぐことができる。しかしながら、この高濃度エピタキシャル層のために、TEDに変換されなかったBPDを特定できないことは品質管理の観点において問題である。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高濃度エピタキシャル層内の基底面転位(BPD)を評価できるSiCエピタキシャルウェハの評価方法及び製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測すると、BPDが他の領域と比較して黒く見えることを見出した。従来の方法ではBPDを発光により特定していたのに対し、本発明ではBPDを黒線として特定している。これらのBPDの検出過程は異なり、単にバンドパスフィルターの波長帯を変更するという発想により到達できるものではない。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0015】
(1)第1の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの評価方法は、不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層に対して励起光を照射し、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを介して前記励起光の照射面を観測する第1工程を有する。
【0016】
(2)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの評価方法の前記第1工程において、オフセット方向に延在しアスペクト比が1より大きい欠陥を観測してもよい。
【0017】
(3)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの評価方法は、前記励起光の照射面を430nmより大きい波長帯のバンドパスフィルターを介して観測する第2工程と、前記第1工程の観測結果と前記第2工程の評価結果を比較する第1判定工程をさらに有してもよい。
【0018】
(4)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの評価方法は、前記励起光の照射面と同一面を表面観察する第3工程と、前記第1工程の観測結果と前記第3工程の評価結果を比較する第2判定工程をさらに有してもよい。
【0019】
(5)第2の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層をSiC基板の一面に積層する工程と、上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの評価方法を用いて、前記高濃度エピタキシャル層を評価する工程と、前記高濃度エピタキシャル層上にドリフト層を積層する工程と、を有する。
【0020】
(6)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において、前記SiC基板と前記高濃度エピタキシャル層との間に、前記高濃度エピタキシャル層より不純物濃度が低いバッファ層を積層する工程をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの評価方法によれば、高濃度エピタキシャル層内の基底面転位(BPD)を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】高濃度エピタキシャル層を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。
図2】不純物濃度が1×1016cm−3程度であるエピタキシャル層を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。
図3】420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果と、高濃度エピタキシャル層の表面をKOHエッチングした後に共焦点顕微鏡で表面観察した結果とを比較した図である。
図4】バンドパスフィルターの波長帯を変えて、励起光の照射面を観測した結果をまとめた図である。
図5】420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、高濃度エピタキシャル層の不純物濃度を変えた結果である。
図6】エピタキシャル層内でTEDに変換された場合のBPDを第1工程により測定した結果である。
図7】プリズム面積層欠陥を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。
図8】基底面積層欠陥を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
「SiCエピタキシャルウェハの製造方法」
本実施形態にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層をSiC基板上に積層する工程と、所定のSiCエピタキシャルウェハの評価方法を用いて高濃度エピタキシャル層を評価する工程と、高濃度エピタキシャル層上にドリフト層を積層する工程と、を有する。
【0025】
(高濃度エピタキシャル層の積層工程)
まずSiC基板を準備する。SiC基板の作製方法は特に問わない。例えば、昇華法等で得られたSiCインゴットをスライスすることで得られる。本明細書において、SiCエピタキシャルウェハはエピタキシャル膜を形成後のウェハを意味し、SiC基板はエピタキシャル膜を形成前のウェハを意味する。
【0026】
SiC基板には、BPDが(0001)面(c面)に沿って存在する。SiC基板の成長面に露出しているBPDの個数は、少ない方が好ましいが、特に限定するものではない。現段階での技術水準では、6インチのSiC基板の表面(成長面)に存在するBPDの個数は1cmあたり500〜5000個程度である。
【0027】
次いで、SiC基板上に高濃度エピタキシャル層をエピタキシャル成長させる。ドープする不純物は、窒素、ホウ素、チタン、バナジウム、アルミニウム、ガリウム、リン等を用いることができる。高濃度エピタキシャル層は、エピタキシャル成長により形成された層であり、不純物濃度が1.0×1018cm−3以上の層である。当該層を積層することで、BPDを有するバイポーラデバイスの順方向に電流を流した場合に、その少数キャリアが基板に存在するBPDまで到達することを防ぐことができる。その結果、ショックレイ型の積層欠陥が形成され、その欠陥が拡大することを抑制できる。つまり、デバイスの順方向特性の劣化を抑制することができる。
【0028】
高濃度エピタキシャル層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。
【0029】
またSiC基板と前記高濃度エピタキシャル層との間に、高濃度エピタキシャル層と同等かそれより低い不純物濃度を有するバッファ層を積層してもよい。バッファ層は高濃度エピタキシャル層とSiC基板のキャリア濃度の違いを緩和するための層である。
【0030】
(高濃度エピタキシャル層の評価工程:第1工程)
次いで、高濃度エピタキシャル層の評価工程(第1工程)として、高濃度エピタキシャル層内にBPDが存在するかを評価する。第1工程では、不純物濃度が1×1018cm−3以上の高濃度エピタキシャル層に対して励起光を照射し、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測する。
【0031】
励起光の光源には水銀ランプを使用し、その照射時間は、10msec以上100sec以下であることが好ましく、200msec以上10sec以下であることがより好ましい。励起光を充分照射すると、BPDとその他の領域のコントラストが明確になるが、一方で励起光による「焼け」が生じてしまい、検出感度の低下も同時に引き起こす。そのため、照射する励起光の強度は低く抑えることが好ましく、具体的には1Wcm−2以下であることが好ましく、500mWcm−2以下であることがより好ましい。照射する励起光は、280nm以上375nm以下の波長であることが好ましい。水銀ランプを用いると照射する励起光の強度は低く抑えることができる。
【0032】
図1は、高濃度エピタキシャル層を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。
【0033】
図1に示すように、高濃度エピタキシャル層の場合、660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測しても、BPDは特定されなかった。また共焦点顕微鏡で表面観察をしても、BPDは特定されなかった。これに対し、420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測すると、BPDが黒く観測された。
【0034】
一方、図2は、不純物濃度が1×1016cm−3程度であるエピタキシャル層を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。
【0035】
図2に示すように、不純物濃度がドリフト層と同等(1×1016cm−3程度)のエピタキシャル層の場合、660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測すると、BPDが発光(フォトルミネッセンス光)して観測された。
【0036】
図2に示すように、不純物濃度が1×1016cm−3程度のエピタキシャル層においても、420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した。この場合においても、BPDは黒く観測された。すなわち、BPDの観測状態が発光と吸収とで異なるが、420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介した観測で特定しているものがBPDであることが確認できた。なお、当該層においても共焦点顕微鏡では、BPDを特定できなかった。
【0037】
また図3は、420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果と、高濃度エピタキシャル層の表面をKOHエッチングした後に共焦点顕微鏡で表面観察した結果とを比較した図である。BPDを有するエピタキシャル層をKOHでエッチングすると、BPDが存在する箇所にピットが発生する。図3に示すように、420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果と、高濃度エピタキシャル層の表面をKOHエッチングした後に共焦点顕微鏡で表面観察した結果と、は対応関係を有する。すなわち、この点からも420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介した観測で特定しているものがBPDであることが確認できた。
【0038】
図1では、420nmの波長帯のバンドパスフィルターを用いてBPDを特定した。しかしながら、第1工程に用いるバンドパスフィルターは、当該波長帯に限られず、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを用いることができる。
【0039】
図4は、バンドパスフィルターの波長帯を変えて、励起光の照射面を観測した結果をまとめた図である。図4に示すように、420nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを用いるとBPDを特定できるが、420nmより大きい波長帯のバンドパスフィルターを用いるとBPDが特定できなかった。ここで特定波長のバンドパスフィルターは、特定波長±10nm程度の波長帯の光を通過することができる。すなわち、420nmの波長帯のバンドパスフィルターでBPDを特定できれば、430nmの波長帯のバンドパスフィルターでも特定できる。従って、第1工程では、430nm以下の波長帯のバンドパスフィルターを用いることができる。
【0040】
また高濃度エピタキシャル層の不純物濃度は、1×1018cm−3以上であり、2×1019cm−3以下であることが好ましく、1×1019cm−3以下であることがより好ましい。高濃度エピタキシャル層の不純物濃度が高すぎると、BPD以外の欠陥の発生確率が高まる。
【0041】
図5は、420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、高濃度エピタキシャル層の不純物濃度を変えた結果である。図5に示すように、1×1018cm−3から1×1019cm−3のいずれの不純物濃度においても、第1工程を行うことでBPDを特定できる。
【0042】
また当該方法では、BPD以外の欠陥も特定される場合がある。BPDの有無を判断することができれば目的は達成できるが、BPDの位置を特定できるとより好ましい。そのため、BPDとその他の欠陥との分別ができることがより好ましい。
【0043】
分別の方法の一つが、特定される欠陥の形状で分別する方法(第1分別方法)である。BPDは、SiC基板の基底面である(0001)面(c面)に存在する転位である。一般に、SiC基板は、(0001)から<11−20>方向にオフセット角を有する面を成長面とする。そのため、BPDはオフセット方向に延在して観測される。つまり、BPDは、<11−20>方向を基準に45°以内の傾き角内に長軸を有する欠陥である。
【0044】
そこで、オフセット方向に延在しアスペクト比が1より大きい欠陥をBPDとして、欠陥を分別することが好ましい。また欠陥の分別の精度によっては、アスペクト比を1.5以上としてもよいし、2.0以上としてもよい。ここでアスペクト比は、測定される欠陥の長軸を短軸で割った値である。
【0045】
図1に示すように、SiC基板からエピタキシャル層内に引き継がれたBPDがエピタキシャル層表面まで延在する場合のアスペクト比は、2.0以上となる。一方で、エピタキシャル層内でTEDに変換された場合のアスペクト比は、2.0未満となる場合がある。図6は、エピタキシャル層内でTEDに変換された場合のBPDを第1工程により測定した結果である。図6(a)のBPDのアスペクト比は1.67であり、図6(b)のBPDのアスペクト比は1.85である。
【0046】
またBPDを他の欠陥と分別する別の分別方法として、その他の評価結果と比較する方法がある。例えば、第2分別方法は、励起光の照射面を430nm以上の波長帯のバンドパスフィルターを介して観測する第2工程と、第1工程の観測結果と第2工程の評価結果を比較する第1判定工程をさらに有する。また例えば、第3分別方法は、励起光の照射面と同一面を表面観察する第3工程と、第1工程の観測結果と第3工程の評価結果を比較する第2判定工程をさらに有する。
【0047】
BPDと形状が類似して見える欠陥として、プリズム面積層欠陥(キャロット欠陥)、基底面積層欠陥等がある。図7は、プリズム面積層欠陥を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。また図8は、基底面積層欠陥を観測した図であり、(a)は共焦点顕微鏡により高濃度エピタキシャル層の表面を撮影した図であり、(b)は660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果であり、(c)は420nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した結果である。
【0048】
プリズム面積層欠陥は、図7に示すように共焦点顕微鏡で特定できる。またプリズム面積層欠陥は、660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した場合、発光せず黒く見える。つまり、第2工程と第3工程との少なくとも一方を行い、第1判定工程と第2判定工程との少なくとも一方を行うことで、プリズム面積層欠陥とBPDは分別できる。
【0049】
基底面積層欠陥は、図8に示すように基底面積層欠陥は共焦点顕微鏡で特定できない。一方で、基底面積層欠陥は、660nmの波長帯のバンドパスフィルターを介して励起光の照射面を観測した場合、発光せず黒く見える。つまり、第2工程を行い、第1判定工程を行うことで、基底面積層欠陥は分別できる。
【0050】
上述のように、本実施形態にかかるSiCエピタキシャルウェハの評価方法を用いれば、高濃度エピタキシャル層を積層した場合でも基底面転位(BPD)を評価できる。
また、この評価方法により測定したBPDは画像解析ソフトを使用しての自動検出が可能であり、定量的に計数できる。
【0051】
(ドリフト層の積層工程)
最後に、高濃度エピタキシャル層上にドリフト層を積層する。ドリフト層は、公知の方法で積層される。ドリフト層の不純物濃度は、高濃度エピタキシャル層より低く、1×1016cm−3程度である。ドリフト層は、SiCデバイスが形成される層である。ドリフト層にBPDが含まれると、SiCデバイスの順方向特性の劣化要因となる。これについては、基板とエピタキシャル層の界面においてTEDへの転換することで、ドリフト層に含まれるBPDを低減することができる。また、ドリフト層は、高濃度エピタキシャル層上に積層されるため、基板中のBPDによる特性劣化もまた抑制されている。
【0052】
上述のように、本実施形態にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法によれば、BPDがデバイスの特性劣化を引き起こすことを抑制できる。また高濃度エピタキシャル層を有しているにもかかわらず、BPDの有無、位置を特定することができ、SiCエピタキシャルウェハの品質管理を簡便に行うことができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
図1
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図7
図8