特許第6986945号(P6986945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986945
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】鋳造方法および鋳造品
(51)【国際特許分類】
   B22D 27/04 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B22D27/04 A
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-234773(P2017-234773)
(22)【出願日】2017年12月7日
(65)【公開番号】特開2018-122355(P2018-122355A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年11月30日
(31)【優先権主張番号】15/383,384
(32)【優先日】2016年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】チャン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・エス・ペック
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−075999(JP,A)
【文献】 特開2000−107852(JP,A)
【文献】 特開2010−037658(JP,A)
【文献】 米国特許第05275227(US,A)
【文献】 特開2014−131816(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/126114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 27/04
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端(201)に引き出し領域(205)を備えている鋳造炉(200)における鋳造方法(100)であって、
前記鋳造炉(200)内に鋳型(210)を配置するステップ(120)と、
前記鋳型(210)内に溶融した状態の材料(220)を配置するステップ(130)と、
前記鋳型(210)を、部分的に引き出された部分(213)をもたらす引き出し距離(217)だけ、前記鋳造炉(200)の前記引き出し領域(205)を通って部分的に引き出し、前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に凝固させるステップ(140)と、
その後に、前記部分的に引き出された部分(213)の少なくとも一部分を、前記引き出し領域(205)を通って前記鋳造炉(200)へと再挿入し、前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に再び溶融させるステップ(150)と、
次いで、前記鋳型(210)を前記引き出し領域(205)を通って前記鋳造炉(200)から完全に引き出し、方向性凝固または単結晶の鋳造品(300)を生み出すステップ(160)と
を含んでおり、
前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に再び溶融させることで、前記部分的に引き出された部分(213)からフレックル粒子(214)が低減され、あるいは除去される、鋳造方法(100)。
【請求項2】
前記鋳型(210)を部分的に引き出す際の部分引き出し速度を変更することを含んでおり、該変更は、前記鋳型(210)のうちのフレックル粒子(214)の形成が多いという特徴を含む部分に対応する、請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【請求項3】
前記鋳型(210)を完全に引き出す際の完全引き出し速度を変更することを含んでおり、該変更は、前記鋳型(210)のうちのフレックル粒子(214)の形成が多いという特徴を含む部分に対応する、請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【請求項4】
前記鋳型(210)のうちの大きな厚さを含んでいる部分に対応して部分引き出し速度および完全引き出し速度の少なくとも一方を下げることを含む、請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【請求項5】
前記鋳型(210)の部分的な引き出し(140)は、インチ/時〜0インチ/時の部分引き出し速度を含み、前記鋳型(210)の完全な引き出し(160)は、インチ/時〜0インチ/時の完全引き出し速度を含み、前記再挿入(150)は、インチ/時〜0インチ/時の再挿入速度を含む、請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【請求項6】
前記部分引き出し速度は、前記完全引き出し速度から相違する、請求項5に記載の鋳造方法(100)。
【請求項7】
前記再挿入速度は、前記部分引き出し速度および前記完全引き出し速度よりも大きい、請求項5に記載の鋳造方法(100)。
【請求項8】
前記再挿入(150)の前の部分引き出し保持時間および前記完全な引き出し(160)の前の再挿入保持時間をさらに含む、請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【請求項9】
前記引き出し距離(217)は、.250インチ〜.0インチである、請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【請求項10】
前記完全な引き出し(160)の前に前記鋳型(210)の前記部分的な引き出し(140)および前記再挿入(150)を繰り返すこと(155)、をさらに含む請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【請求項11】
前記部分的な引き出し(140)の繰り返し(155)により、前記鋳型(210)の未露出部分(413)が露出させられ、前記再挿入(150)の繰り返し(155)により、前記鋳型(210)の前記未露出部分(413)内の凝固部分が部分的に再び溶融させられる、請求項10に記載の鋳造方法(100)。
【請求項12】
前記部分的に引き出された部分(213)は、タービンバケット先端シュラウドを含み、前記鋳造品(300)は、タービンバケットを含む、請求項1に記載の鋳造方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造方法および鋳造品に関する。より詳細には、本発明は、フレックル(freckle)粒子を低減または排除するための鋳造方法、ならびにこの方法から形成された鋳造品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジン用のタービンバケットなどの種々の部品は、多くの場合に、方向性凝固(DS)/単結晶(SC)鋳造技術によって形成される。より具体的には、多数の部品が、多くの場合に、溶融物で満たされたインベストメント鋳型が鋳造炉から引き出される鋳造「引き出し」技術によって形成される。溶融物で満たされたインベストメント鋳型を鋳造炉から引き出すことにより、鋳型内の溶融した状態の金属または合金が冷めて凝固し、鋳型の内側で部品を形成することができる。
【0003】
溶融した状態の金属または合金が冷めるとき、固体/液体の界面を横切る温度勾配が低すぎ、あるいは界面の傾斜が水平と比べて大きすぎると、フレックル粒子の形成につながる可能性がある。フレックル粒子は、樹枝状組織間の流体の流れに起因して形成され、共晶相に囲まれた等軸相をもたらし得る。フレックル粒子は、望ましくない特徴と考えられ、特に疲労強度の低下の形で、許容できない脆弱性を有する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8,870,999号明細書
【発明の概要】
【0005】
1つの典型的な実施形態においては、鋳造方法が、下端に引き出し領域を備えている鋳造炉を用意し、鋳造炉内に鋳型を配置し、鋳型内に溶融した状態の材料を配置し、鋳型を、部分的に引き出された部分をもたらす引き出し距離だけ、鋳造炉の引き出し領域を通って部分的に引き出すことで、部分的に引き出された部分を少なくとも部分的に凝固させ、その後に部分的に引き出された部分の少なくとも一部分を引き出し領域を通って鋳造炉へと再挿入することで、部分的に引き出された部分を少なくとも部分的に再び溶融させ、次いで鋳型を引き出し領域を通って鋳造炉から完全に引き出すことで、方向性凝固または単結晶の鋳造品を生み出すことを含む。部分的に引き出された部分を少なくとも部分的に再び溶融させることで、部分的に引き出された部分からフレックル粒子が低減または除去される。
【0006】
別の典型的な実施形態においては、鋳造方法が、下端に引き出し領域を備えている鋳造炉を用意し、鋳造炉内に鋳型を配置し、鋳型内に溶融した状態の材料を配置し、鋳型を、部分的に引き出された部分をもたらすべく引き出し時間にわたって鋳造炉の引き出し領域を通って部分的に引き出すことで、部分的に引き出された部分を少なくとも部分的に凝固させ、部分的に引き出された部分の少なくとも一部分を引き出し領域を通って鋳造炉へと再挿入することで、部分的に引き出された部分を少なくとも部分的に再び溶融させ、次いで鋳型を引き出し領域を通って鋳造炉から完全に引き出すことで、方向性凝固または単結晶の鋳造品を生み出すことを含む。部分的に引き出された部分を少なくとも部分的に再び溶融させることで、部分的に引き出された部分からフレックル粒子が低減または除去される。
【0007】
別の典型的な実施形態においては、方向性凝固または単結晶の鋳造品が、部分的な引き出しによる引き出された部分の一部分の凝固と、引き出された部分を少なくとも部分的に再び溶融させるための再挿入と、鋳型を鋳造炉から完全に引き出すことによる方向性凝固または単結晶の鋳造品の形成とを含むプロセスによる形成に対応する方向性凝固または単結晶のミクロ組織ならびにフレックル粒子の発生を含む。
【0008】
本発明の他の特徴および利点は、以下の好ましい実施形態のさらに詳細な説明を、本発明の原理を例として示している添付の図面と併せて検討することにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態による鋳造方法のフロー図である。
図2】本開示の一実施形態による鋳造方法のプロセス図を示している。
図3】本開示の一実施形態による鋳造方法の拡大図を示している。
図4】本開示の一実施形態による複数回の再挿入を含む鋳造方法の拡大図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
可能な限り、同一の参照符号が同一の部分を表すために図面の全体にわたって使用される。
【0011】
鋳造方法および鋳造品が提供される。本開示の実施形態は、本明細書に開示される特徴のうちの1つ以上を使用しない鋳造方法および鋳造品と比較して、鋳造品におけるフレックル粒子の低減または排除、鋳造品の効率の向上、鋳造コストの低減、あるいはこれらの組み合わせを達成する。
【0012】
図1図3を参照すると、鋳造方法100は、鋳造炉200を用意すること(ステップ110)と、鋳造炉200内に鋳型210を配置すること(ステップ120)と、鋳型210内に溶融した状態の材料220を配置すること(ステップ130)とを含む。次に、溶融した状態の材料220を含んでいる鋳型210を、例えば一実施形態によれば鋳造炉200の下端201に位置する引き出し領域205を通って引き出し距離217だけ部分的に引き出すこと(ステップ140)で、部分的に引き出された部分213がもたらされる。部分的に引き出された部分213の溶融した状態の材料220が、少なくとも部分的に凝固して、凝固部分215を形成する。
【0013】
一実施形態においては、部分的な引き出し(ステップ140)の後で、鋳造方法100は、鋳型210を部分引き出し保持時間にわたって引き出し距離217に保持し、その後に、部分的に引き出された部分213の少なくとも一部分を引き出し領域205を通って鋳造炉200へと再挿入(ステップ150)し、再挿入部分を形成する。部分引き出し保持時間は、これらに限られるわけではないが、約5分まで、約15秒〜約5分、約30秒〜約5分、あるいはこれらの任意の組み合わせ、部分的組み合わせ、範囲、または部分的範囲など、任意の適切な継続時間を含む。再挿入(ステップ150)は、凝固部分215を少なくとも部分的に再び溶融させることで、例えば部分的な引き出し(ステップ140)の際に凝固部分215に形成されたフレックル粒子214(図3を参照)を低減または除去する。再挿入(ステップ150)の後に、再挿入部分は、再挿入保持時間にわたって鋳造炉200内に保持され、次いで鋳型210が鋳造炉200から完全に引き出され(ステップ160)、溶融した状態の材料220が結晶化し、鋳造品300を形成する。再挿入保持時間は、これらに限られるわけではないが、約5分まで、約15秒〜約5分、約30秒〜約5分、あるいはこれらの任意の組み合わせ、部分的組み合わせ、範囲、または部分的範囲など、任意の適切な継続時間を含む。部分引き出し保持時間と再挿入保持時間とは、同じであり、同様であり、実質的に同様であり、あるいは異なる。
【0014】
図2図3を参照すると、鋳造炉200は、鋳型210(図2を参照)を受け入れ、溶融した状態の材料220(図3を参照)の温度を溶融した状態の材料の結晶化温度以上に維持するための任意の適切な鋳造炉を含む。1つの適切な鋳造炉として、これに限られるわけではないが、方向性凝固鋳造炉が挙げられる。一実施形態において、鋳造炉200は、溶融した状態の材料220を鋳型210内に配置(ステップ130)する前に、鋳型210を受け入れ、さらには/あるいは予熱する。別の実施形態において、鋳造炉200は、複数の鋳型210を受け入れ、さらには/あるいは予熱する。さらなる実施形態においては、鋳造炉200内の複数の鋳型210の間にギャップが形成される。複数の鋳型210における温度の制御の向上を容易にするために、鋳型210の配置は、これらに限られるわけではないが、垂直インデキシング(vertical indexing)、計算された案内、ギャップの熱的な半絶縁、あるいはこれらの組み合わせを含む。次いで、溶融した状態の材料220が、鋳造炉200の開口206を通って鋳型210へと導入される。開口206は、これらに限られるわけではないが、炉200の上端202の穴、パイプ、漏斗、またはこれらの組み合わせなど、任意の適切な開口を含む。
【0015】
鋳型210は、溶融した状態の材料220を受け入れ、鋳造品300を形成するための任意の適切な鋳型を含む。例えば、一実施形態において、鋳型210は、鋳造品300の形状に対応する1つ以上の空洞に連通した注ぎカップを有するセラミックインベストメントシェルモールドを含む。溶融した状態の材料220は、鋳造に適した任意の材料を含み、形成すべき鋳造品300に基づいて選択される。例えば、タービンバケットを形成するための溶融した状態の材料220は、方向性凝固および/または単結晶形成が可能な任意の材料を含む。適切な材料として、これらに限られるわけではないが、金属、超合金(例えば、ニッケル、コバルト、または鉄ベースの超合金)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。別の例において、溶融状態の材料220は、約9.8%のCr、約7.5%のCo、約1.5%のMo、約6%のW、約4.8%のTa、約0.5%のNb、約4.2%のAl、約3.6%のTi、約0.08%のC、約0.01%のB、約0.1%のHf、およびNiからなる残部という重量組成を有する。
【0016】
図3を参照すると、鋳型210を引き出し距離217だけ部分的に引き出すこと(ステップ140)により、部分的に引き出された部分213の溶融した状態の材料220が、鋳造炉200の外部の低い温度に曝される。鋳造炉200の外部の低い温度は、部分的に引き出された部分213の内部の溶融した状態の材料220を冷却する。溶融した状態の材料220の冷却は、溶融した状態の材料220を少なくとも部分的に凝固させ、部分的に引き出された部分213の内部に凝固部分215を形成する。凝固は、溶融した状態の材料220を収縮させ、凝固部分215において凝固した材料の密度を高め、フレックル粒子214を形成する。凝固が続くにつれて、樹枝状組織間の流体の流れが、フレックル粒子214を形成する。これらに限られるわけではないが鋳型210のサイズおよび/または形状などの種々の特徴が、凝固部分215におけるフレックル粒子214の発生の増加または減少を促す。
【0017】
一実施形態において、引き出し距離217は、これらに限られるわけではないが、最初に引き出される部分、大きな厚さを含む部分、中断のない部分、またはこれらの組み合わせなど、フレックル粒子の形成が多いという特徴を有する鋳造品300の少なくとも1つの領域に対応するように選択される。例えば、別の実施形態において、引き出し距離217は、タービンバケットのバケット先端シュラウドに対応する。引き出し距離217は、これらに限られるわけではないが、約0.250インチ(約0.635cm)〜約6インチ(約15.24cm)、約0.250インチ(約0.635cm)〜約3インチ(約7.62cm)約0.250インチ(約0.635cm)〜約1インチ(約2.54cm)、約0.250インチ(約0.635cm)〜約0.750インチ(約1.910cm)、約0.250インチ(約0.635cm)〜約0.500インチ(約1.270cm)、あるいはこれらの任意の組み合わせ、部分的組み合わせ、範囲、または部分的範囲を含む。引き出し距離217に達した後に、部分的に引き出された部分213は、鋳造炉200へと再挿入される(ステップ150)。
【0018】
部分的に引き出された部分213の再挿入(ステップ150)は、凝固部分215に形成された凝固した材料を少なくとも部分的に再び溶融させて、フレックル粒子214を低減または除去する。以前にフレックル粒子214を形成していた溶融した状態の材料220は、鋳造品300におけるフレックル粒子214の発生を低減または排除するように、鋳型210の完全な引き出し(ステップ160)の際に凝固する。部分的な引き出し(ステップ140)および再挿入(ステップ150)の際にフレックル粒子214の発生を低減または排除することによって、鋳造方法100は、これに限られるわけではないがフレックル粒子214を溶け込ませるなどの鋳造後のフレックル粒子の処理を伴わずに、フレックル粒子214の発生を低減または排除することができる。
【0019】
部分的な引き出し(ステップ140)の際に、鋳型210は、鋳造炉200から部分引き出し速度で引き出される。適切な部分引き出し速度は、これらに限られるわけではないが、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約30インチ/時(約76.2cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約15インチ/時(約38.1cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約10インチ/時(約25.4cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約7インチ/時(約17.8cm/時)、あるいはこれらの任意の組み合わせ、部分的組み合わせ、範囲、または部分的範囲を含む。別の実施形態において、部分引き出し速度は、凝固部分215の凝固の際に形成される結晶化の種類および/または量を容易にする。例えば、鋳型210の部分的な引き抜き(ステップ140)の際に、部分引き出し速度を低くすると、部分的に引き出された部分213の鋳造炉200の外部の低温への暴露の時間が長くなる。暴露が長くなると、凝固部分215の凝固の際に形成される結晶化の量が増加する。
【0020】
完全な引き出し(ステップ150)の際に、鋳型210は、鋳造炉200から完全引き出し速度で引き出される。適切な完全引き出し速度は、これらに限られるわけではないが、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約30インチ/時(約76.2cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約15インチ/時(約38.1cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約10インチ/時(約25.4cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約7インチ/時(約17.8cm/時)、あるいはこれらの任意の組み合わせ、部分的組み合わせ、範囲、または部分的範囲を含む。完全引き出し速度は、鋳造品300における結晶化の種類および/または速度を容易にする。例えば、鋳型210の完全な引き出し(ステップ160)の際に、完全引き出し速度は、方向性凝固または単結晶凝固のいずれかの量の増加を容易にする。
【0021】
再挿入(ステップ150)の際に、部分的に引き出された部分213の少なくとも一部分が、部分的な引き出し(ステップ140)の方向の反対方向または実質的に反対方向に進む再挿入速度で鋳造炉200へと再挿入される。一実施形態において、再挿入速度は、本明細書に開示の適切な部分引き出し速度または完全引き出し速度のいずれかと同等である。別の実施形態において、再挿入の速度は、本明細書に開示の適切な部分引き出し速度または完全引き出し速度よりも小さい。さらに別の実施形態において、再挿入の速度は、本明細書に開示の適切な部分引き出し速度または完全引き出し速度よりも大きい。例えば、適切な再挿入速度は、これらに限られるわけではないが、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約30インチ/時(約76.2cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約15インチ/時(約38.1cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約10インチ/時(約25.4cm/時)、約1インチ/時(約2.54cm/時)〜約7インチ/時(約17.8cm/時)、あるいはこれらの任意の組み合わせ、部分的組み合わせ、範囲、または部分的範囲を含む。
【0022】
さらに、一実施形態において、部分引き出し速度、完全引き出し速度、および/または再挿入速度は、鋳造方法100の全体にわたって任意の適切な技術によって自動化される。適切な自動化技術として、これらに限られるわけではないが、部分的な引き出し(ステップ140)、再挿入(ステップ150)、および/または完全な引き出し(ステップ160)の間の推移の提供、部分的な引き出し(ステップ140)を自動的に逆にすることによる再挿入(ステップ150)の提供、再挿入(ステップ150)を自動的に逆にすることによる完全な引き出し(ステップ160)の提供、部分引き出し速度、再挿入速度、および/または完全引き出し速度の変化、鋳造炉200内の温度のばらつきに合わせた調節、フレックル粒子214の形成が多いという特徴を有する鋳造品300の領域に合わせた調節、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
一実施形態において、部分引き出し速度、再挿入速度、および/または完全引き出し速度は、各々のステップの全体を通して維持される(各々のステップを開始するための加速および各々のステップを終了するための減速を除く)。例えば、部分引き出し速度、再挿入速度、および完全引き出し速度は、約5インチ/時(約12.7cm)である。別の実施形態においては、部分引き出し速度、再挿入速度、および完全引き出し速度のうちの少なくとも1つが、鋳造方法100の最中に変化する。鋳造方法100の最中の変化として、これらに限られるわけではないが、ステップの間(例えば、部分的な引き出し(ステップ140)、再挿入(ステップ150)、および/または完全な引き出し(ステップ160)の間)、少なくとも1つのステップの最中、フレックル粒子214の形成が多いという特徴を有する鋳造品300の領域に対応、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、一実施形態においては、部分引き出し速度および完全引き出し速度が約3インチ/時(約7.6cm/時)である一方で、再挿入速度は約10インチ/時(約25.4cm/時)である。
【0024】
図4を参照すると、別の実施形態において、鋳造方法100は、鋳型210の部分的な引き出し(ステップ140)および/または再挿入(ステップ150)の繰り返し(ステップ155)を含む。一実施形態においては、繰り返し(ステップ155)の際に、部分的な引き出し(ステップ140)によって、未露出部分413が新たに露出させられ、再挿入(ステップ150)によって、未露出部分413の再挿入部分の範囲内の凝固部分215が少なくとも部分的に再び溶融させられる。再挿入部分は、これらに限られるわけではないが、未露出部分413のすべてまたは実質的にすべて、未露出部分413の全体よりも小さい部分、フレックル粒子214の形成が多いという特徴を有する鋳造品300の領域、あるいはこれらの組み合わせを含む。例えば、別の実施形態においては、繰り返し(ステップ155)の際に、部分的な引き出し(ステップ140)が、厚さの大きい領域に対応する約0.5インチ(約1.27cm)の再挿入部分を含む約1インチ(約2.54cm)の未露出部分413を露出させる。再挿入部分の範囲内の凝固部分215の再溶融は、この部分に形成されたフレックル粒子214を減少または除去する。
【0025】
別の例においては、部分的な引き出し(ステップ140)が、約0.5インチ(約1.27cm)の部分的に引き出された部分213を露出させ、再挿入(ステップ150)が、部分的に引き出された部分213内の凝固部分215を部分的に再び溶融させる。次に、部分的な引き出し(ステップ140)の繰り返し(ステップ155)により、部分的に再び溶融させられた凝固部分215を含む約0.5インチ(約1.27cm)の部分的に引き出された部分213と、約0.5インチ(約1.27cm)の未露出部分413とが、露出させられる。その後に、再挿入(ステップ150)の繰り返し(ステップ155)により、未露出部分413の範囲内に形成された凝固部分215を、部分的に再び溶融させられた部分的に引き出された部分213内の凝固部分215を再び溶融させることなく、再び溶融させられる。
【0026】
一実施形態において、鋳造方法100は、溶融した状態の材料220を有する鋳型210を引き出し時間にわたって部分的に引き出すこと(ステップ140)を含む。引き出し時間は、凝固部分215の形成に対応する任意の適切な時間量を含む。適切な時間量として、これらに限られるわけではないが、約2時間まで、約1.5時間まで、約1時間まで、約1時間〜約2時間、約0.5時間まで、あるいはこれらの任意の組み合わせ、部分的組み合わせ、範囲、または部分的範囲が挙げられる。引き出し時間における部分引き出し速度は、本明細書に開示される任意の適切な部分引き出し速度を含む。さらなる実施形態において、引き出し時間における部分引き出し速度は、これらに限られるわけではないが、一定の速度、あらかじめ設定された引き出し速度の変化、漸進的な速度、またはこれらの組み合わせを含む。
【0027】
本発明について好適な実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、またその要素を等価物で置き換えることができることは、当業者には理解されるであろう。さらに、特定の状況または材料に適応させるために、その本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲内に属するすべての実施形態を含むことになることを意図している。
[実施態様1]
下端(201)に引き出し領域(205)を備えている鋳造炉(200)における鋳造方法(100)であって、
前記鋳造炉(200)内に鋳型(210)を配置するステップ(120)と、
前記鋳型(210)内に溶融した状態の材料(220)を配置するステップ(130)と、
前記鋳型(210)を、部分的に引き出された部分(213)をもたらす引き出し距離(217)だけ、前記鋳造炉(200)の前記引き出し領域(205)を通って部分的に引き出し、前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に凝固させるステップ(140)と、
その後に、前記部分的に引き出された部分(213)の少なくとも一部分を、前記引き出し領域(205)を通って前記鋳造炉(200)へと再挿入し、前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に再び溶融させるステップ(150)と、
次いで、前記鋳型(210)を前記引き出し領域(205)を通って前記鋳造炉(200)から完全に引き出し、方向性凝固または単結晶の鋳造品(300)を生み出すステップ(160)と
を含んでおり、
前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に再び溶融させることで、前記部分的に引き出された部分(213)からフレックル粒子(214)が低減され、あるいは除去される、鋳造方法(100)。
[実施態様2]
前記鋳型(210)を部分的に引き出す際の部分引き出し速度を変更することを含んでおり、該変更は、前記鋳型(210)のうちのフレックル粒子(214)の形成が多いという特徴を含む部分に対応する、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様3]
前記鋳型(210)を完全に引き出す際の完全引き出し速度を変更することを含んでおり、該変更は、前記鋳型(210)のうちのフレックル粒子(214)の形成が多いという特徴を含む部分に対応する、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様4]
前記鋳型(210)のうちの大きな厚さを含んでいる部分に対応して部分引き出し速度および完全引き出し速度の少なくとも一方を下げることを含む、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様5]
前記鋳型(210)の部分的な引き出し(140)は、約1インチ/時〜約10インチ/時の部分引き出し速度を含み、前記鋳型(210)の完全な引き出し(160)は、約1インチ/時〜約10インチ/時の完全引き出し速度を含み、前記再挿入(150)は、約1インチ/時〜約20インチ/時の再挿入速度を含む、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様6]
前記部分引き出し速度は、前記完全引き出し速度から相違する、実施態様5に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様7]
前記再挿入速度は、前記部分引き出し速度および前記完全引き出し速度よりも大きい、実施態様5に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様8]
前記再挿入速度、前記部分引き出し速度、および前記完全引き出し速度は、同等である、実施態様5に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様9]
前記再挿入(150)の前の部分引き出し保持時間および前記完全な引き出し(160)の前の再挿入保持時間をさらに含む、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様10]
1つ以上の追加の鋳型を前記鋳造炉(200)内に配置することをさらに含む、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様11]
前記1つ以上の追加の鋳型を配置することは、垂直インデキシング、計算された案内、前記1つ以上の追加の鋳型の間に形成される熱的に半絶縁のギャップ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様10に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様12]
前記引き出し距離(217)は、約0.250インチ〜約6.0インチである、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様13]
前記完全な引き出し(160)の前に前記鋳型(210)の前記部分的な引き出し(140)および前記再挿入(150)を繰り返すこと(155)、をさらに含む実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様14]
前記部分的な引き出し(140)の繰り返し(155)により、前記鋳型(210)の未露出部分(413)が露出させられ、前記再挿入(150)の繰り返し(155)により、前記鋳型(210)の前記未露出部分(413)内の凝固部分が部分的に再び溶融させられる、実施態様13に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様15]
前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に再び溶融させることで、前記鋳造品(300)からフレックル粒子(214)が除去される、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様16]
前記部分的に引き出された部分(213)は、タービンバケット先端シュラウドを含み、前記鋳造品(300)は、タービンバケットを含む、実施態様1に記載の鋳造方法(100)。
[実施態様17]
下端(201)に引き出し領域(205)を備えている鋳造炉(200)における鋳造方法(100)であって、
前記鋳造炉(200)内に鋳型(210)を配置するステップ(120)と、
前記鋳型(210)内に溶融した状態の材料(220)を配置するステップ(130)と、
前記鋳型(210)を引き出し時間にわたって前記鋳造炉(200)の前記引き出し領域(205)を通って部分的に引き出すことによって部分的に引き出された部分(213)をもたらし、該部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に凝固させるステップ(140)と、
前記部分的に引き出された部分(213)の少なくとも一部分を、前記引き出し領域(205)を通って前記鋳造炉(200)へと再挿入し、前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に再び溶融させるステップ(150)と、
次いで前記鋳型(210)を前記引き出し領域(205)を通って前記鋳造炉(200)から完全に引き出し、方向性凝固または単結晶の鋳造品(300)を生み出すステップ(160)と
を含んでおり、
前記部分的に引き出された部分(213)を少なくとも部分的に再び溶融させることで、前記部分的に引き出された部分(213)からフレックル粒子(214)が低減され、あるいは除去される、鋳造方法(100)。
[実施態様18]
方向性凝固または単結晶の鋳造品(300)であって、
部分的な引き出し(140)による引き出された部分の一部分の凝固と、前記引き出された部分を少なくとも部分的に再び溶融させるための再挿入(150)と、鋳型(210)を鋳造炉(200)から完全に引き出す(160)ことによる方向性凝固または単結晶の鋳造品(300)の形成とを含むプロセスによる形成に対応する方向性凝固または単結晶のミクロ組織ならびにフレックル粒子(214)の発生を含む、方向性凝固または単結晶の鋳造品(300)。
[実施態様19]
前記ミクロ組織は、方向性凝固である、実施態様18に記載の鋳造品(300)。
[実施態様20]
前記ミクロ組織は、単結晶である、実施態様18に記載の鋳造品(300)。
【符号の説明】
【0028】
100 鋳造方法
200 鋳造炉
201 (鋳造炉の)下端
202 (鋳造炉の)上端
205 (鋳造炉の)引き出し領域
206 開口
210 鋳型
213 部分的に引き出された部分
214 フレックル粒子
215 凝固部分
217 引き出し距離
220 溶融した状態の材料
300 鋳造品
413 未露出部分
図1
図2
図3
図4