(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1の溶接用センサ装置によれば、溶接部からセンサユニットが収容された収容部に向かう輻射熱を、遮蔽部により遮蔽することができるため、輻射熱に起因したセンサユニットの加熱を低減することができる。
【0007】
しかしながら、たとえば、連続して長時間溶接を行う場合、溶接部からの輻射熱が遮蔽部に連続して入熱されることがある。この他にも、たとえば、これまでよりも板厚が厚い被溶接部材同士を溶接する場合、溶接部に入熱されるエネルギをこれまでよりも高く設定されることもある。これらの場合には、溶接部から遮蔽部に入熱される輻射熱のエネルギが、これまで以上に大きくなり、結果として、遮蔽部の熱が収容部に伝わり、センサユニットが想定以上に加熱されてしまうことがある。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、溶接時にワークからセンサユニットに向かう輻射熱が、遮蔽部からセンサユニットを収容する収容部に伝導することを低減することができる溶接用センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を鑑みて、本発明に係る溶接用センサ装置は、溶接されるワークの状態または前記ワークまでの距離を測定するセンサユニットと、前記センサユニットを収容する収容部と、前記ワークの溶接時に発生する輻射熱のうち、前記収容部に向かう輻射熱を遮蔽する遮蔽部と、を有した収容体と、を少なくとも備えた、溶接用センサ装置であって、前記ワークが溶接される側の表面を前記遮蔽部の表側表面とし、その反対側を裏側表面としたときに、前記遮蔽部の裏側表面の放熱面積は、前記表側表面の放熱面積よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、溶接用センサ装置の収容体が、遮蔽部を備えることにより、ワークの溶接時に発生する輻射熱のうち、収容部に向かう輻射熱を、遮蔽部で遮蔽することができる。これの結果、この輻射熱により、収容部に収容されたセンサユニットが加熱されることを抑えることができる。
【0011】
さらに、本発明では、遮蔽部の裏側表面の放熱面積は、表側表面の放熱面積よりも大きいため、遮蔽部に入熱された熱は、遮蔽部から、ワークが溶接されている側とは反対側に放熱される。これにより、輻射熱により入熱された熱が、収容部に収容されたセンサユニットに伝達されることを抑えることができる。ここで、本発明でいう「裏側表面(表側表面)の放熱面積」とは、裏側(表側)において、遮蔽部が実質的に露出している表面の面積のことである。
【0012】
ここで、遮蔽部の裏側表面の放熱面積が、表側表面の放熱面積よりも大きければ、裏側表面の形状は特に限定されないが、より好ましい態様としては、前記裏側表面には、複数の凹部または凸部が形成されている。この態様によれば、裏側表面に、複数の凹部または凸部が形成されているため、凹部または凸部を形成する側壁面からも熱を効率的に放熱することができる。
【0013】
さらに、この他の好ましい態様として、前記遮蔽部は、前記遮蔽部の表側表面を形成する板状部材と、前記板状部材に積層され、前記遮蔽部の裏側表面の一部を形成する網状部材と、を備える。
【0014】
この態様によれば、網状部材を積層することにより、網状部材を構成する素線により、板状部材の裏側表面のうち、網状部材から露出した部分の表面と、網状部材を構成する素線の表面により、遮蔽部の裏側表面の放熱面積を増大させることができる。また、この態様では、網状部材を準備して、板状部材に配置することにより、放熱面積の大きい裏側表面を有した遮蔽部を得ることができる。
【0015】
さらに、このような網状部材は、1枚の網材からなるもの、または複数の網材を積層したものからなるもののいずれであってもよい。しかしながら、より好ましい態様としては、前記網状部材は、厚さ方向に沿って、複数の網材を積層した構造であり、前記遮蔽部の裏側に位置する網材の網目の大きさは、前記遮蔽部の表側に位置する網材の網目の大きさよりも大きい。
【0016】
この態様によれば、各網材において、遮蔽部の裏側に位置する網材の網目の大きさは、遮蔽部の表側に位置する網材の網目の大きさよりも大きいので、網状部材は、フラクタル構造に近い構造となる。したがって、遮蔽部の表側表面から入熱された熱は、同じ構造の網材を積層した場合に比べて裏側に、放熱し易い。なお、「遮蔽部の裏側に位置する網材の網目の大きさは、遮蔽部の表側に位置する網材の網目の大きさよりも大きい」とは、たとえば、網材の素線が配向されている場合には、「遮蔽部の裏側に位置する網材素線の間隔が、遮蔽部の表側に位置する網材の間隔よりも大きい」ことをいう。
【0017】
より好ましくは、前記網材は、金属製の素線が織り込まれた部材である。この態様によれば、金属製の素線が織り込まれた網材は、素線が等ピッチで配列された規則性を有した構造となるため、よりフラクタル構造に近くなり、放熱性を高めることができる。
【0018】
さらに好ましい態様としては、前記遮蔽部は、金属材料またはセラミックス材料からなる多孔質体であり、前記遮蔽部は、複数の層から形成されており、裏側に形成された層の空隙率は、表側に形成された層の空隙率に比べて高い。この態様によれば、各層において、表側の層の空隙率に比べて裏側の層の空隙率が高いため、遮蔽部の裏側表面の実質的な表面積は大きい。したがって、遮蔽部に入熱された熱を、遮蔽部から、ワークが溶接されている側とは反対側に積極的に放熱させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、溶接時にワークからセンサユニットに向かう輻射熱が、遮蔽部からセンサユニットを収容する収容部に伝導することを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態に係る溶接用センサ装置(以下、センサ装置という)を
図1〜
図13を参照しながら詳述する。
【0022】
<第1実施形態>
以下に
図1〜
図6を参照して、第1実施形態に係るセンサ装置1を説明する。
1.センサ装置1の取付け状態とセンサ装置1の全体構成について
図1に示すように、本実施形態に係るセンサ装置1は、取付け用治具8を介して、溶接装置9に取付けられている。溶接装置9の溶接トーチ91には、溶接用ワイヤ93が供給され、溶接の際には、溶接トーチ91から送られる溶接用ワイヤ93の先端と、ワークWとの間に電圧を印加することにより、これらの間にアークAを発生させる。これにより、溶接用ワイヤ93が溶融するとともに、ワークWに溶融池Pが生成され、ワークWの溶接を行うことができる。ワークWに溶融池Pを形成しつつ、
図1に示す矢印の方向に溶接装置9が移動し、ワークW同士に溶接部(ビード)Bを形成する。なお、
図1では、便宜的にワークWを1つのワークとして描いているが、2つ以上のワーク同士に対して突合せ溶接、すみ肉溶接、重ね溶接等するものであり、溶接方法は、特に限定されるものではない。また、本実施形態では、ワーク同士の溶接を溶接用ワイヤを用いたアーク溶接に特定しているが、この他にも、たとえば、TIG溶接、電子ビーム溶接、レーザビーム溶接、ガス溶接等の他の溶接であってもよい。
【0023】
溶接装置9により、ワークWに対して安定した溶接を行うためには、溶接トーチ91とワークWとの距離または、ワークWの形状を、測定することは重要である。そこで、本実施形態では、その一例としてセンサ装置1で、ワークWとの形状またはワークWまでの距離を測定する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るセンサ装置(センサヘッド)1は、センサユニット2と、センサユニット2を収容する収容体3Aとを備えている。本実施形態では、収容体3Aは、保護カバー40を備えた収容ケース(収容部)3と、収容ケース3に取付けられた遮蔽部材(遮蔽部)5と、を備えている。本実施形態では、収容ケース3と、遮蔽部材5とは、分離可能な部材であるが、これらが一体化した構造であってもよい。なお、これらの構成は、後述する第2および第3実施形態に係る溶接装置も同様である。
【0025】
2.センサユニット2について
センサユニット2は、検出されたレーザ光(検出光)L2により、ワークWの形状または(センサユニット2から)ワークWまでの距離を測定するための装置である。本実施形態では、センサユニット2は、その一例として、溶接されるワークWの表面にレーザ光L1を投光する投光部21と、ワークの表面から反射したレーザ光L2を検出する検出部22と、を備えている。投光部21は、レーザ光を発生させるレーザ光源21bと、レーザ光源21bから発生したレーザ光L1を、ワークWに投光(投射)する投光装置(光学系)21aと、を備えている。
【0026】
検出部22は、投光装置21aから投光されたレーザ光L1が、ワークWの表面から反射したレーザ光L2を受光する受光装置(光学系)22aと、受光装置22aから送られたレーザ光L2を検出する検出装置22bと、を備えている。受光装置22aは、検出装置22bに受光したレーザ光L2を送り、検出装置22bは、例えば撮像装置(カメラ)であり、レーザ光L2を検出し、検出したレーザ光L2のデータを、センサ装置外部またはセンサ装置内部の画像処理装置(図示せず)に送信する。画像処理装置では、ワークWの形状(状態)またはセンサユニット2(具体的にはレーザ光源21b)からワークWまでの距離が測定され、例えば、測定された距離から、溶接トーチ91とワークWとの距離が換算される。
【0027】
なお、本実施形態では、センサユニットの一例として、投光部21と検出部22とを備えたセンサユニット2を示したが、例えば、投光部を別ユニットとして、これを溶接用センサ装置1の外部に設け、センサユニット2の投光部21を省略してもよい。
【0028】
また、本実施形態では、センサユニット2は、レーザ光L1、L2を利用して、ワークWの状態(形状)または検出部22からワークWまでの距離を測定したが、例えば、レーザ光を利用せず、溶接時にワークWの例えば溶融池Pから発生した光、または、外部の光源等からワークWに反射した光を検出光として検出してもよい。この場合も、本実施形態で示した、センサユニット2の投光部21が省略され、検出部は、ワークWの表面に向かう検出光を受光する受光装置(光学系)と、受光装置から送られた検出光を検出する撮像装置(カメラ)とを少なくとも備えればよい。溶接用センサ装置1は、投光部21を有しないので、投光用の各部位を省略することができる。検出した検出光のデータは、センサ装置外部またはセンサ装置内部の画像処理装置(図示せず)に送信され、ワークWの状態(例えば溶融池Pの溶融状態等)を測定することができる。この測定したワークWの状態から、溶接時の溶接トーチ91から送られる溶接用ワイヤ93の先端と、ワークWとの間に印加される電圧を制御してもよい。その他にも、センサユニットが、超音波または電磁波を利用して、溶接されるワークWの状態またはワークWまでの距離を測定してもよい。なお、これらの構成は、後述する第2および第3実施形態に係る溶接装置も同じである。
【0029】
3.収容ケース3について
図1および
図4に示すように、収容ケース3は、センサユニット2を収容するとともに、投光部21から発するレーザ光L1および検出部22へ向かうレーザ光L2が通過するように構成されている。レーザ光L1およびL2を透過させることができれば、例えば、開口した状態のものであってもよく、この開口した部分に、レーザ光L1およびL2が透過可能な材料(例えば、透明な樹脂またはガラスなど)が覆われていてもよい。本実施形態では、収容ケース3は、ケース本体30と、保護カバー40と、を備えている。
【0030】
3−1.ケース本体30について
本実施形態では、ケース本体30は、センサユニット2を収容するための組立体である。
図2および
図3に示すように、ケース本体30は、センサユニット2を収容する凹部(図示せず)を有した筐体31の両側に、カバー32a、32bがネジなどの締結具71を介して被着されている。なお、
図2〜4では、センサ装置1の表面うち、溶接装置9が配置される側の表面を表側表面30aとし、その反対側を裏側表面30bとして表している。
【0031】
図4に示すように、ケース本体30には、保護カバー40に連通するパージ用の第1ガス流路35が形成されている。第1ガス流路35に供給される気体としては、エア(大気)、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、および、これらの気体を混合した気体等を挙げることができる。ここで、溶接時にセンサ装置1の後述する第1および第2放出口42、43からパージエアを放出し、センサ装置1を冷却することができ、ワークWの溶接部に対し化学的に安定した気体であることがより好ましく、たとえば、溶接用のシールドガスの供給源(図示せず)からの気体を利用してもよい。
【0032】
ケース本体30の上面には、センサユニット2からの検出信号の出力等を行うための接続端子37a、センサユニット2に向かう電力の供給、および、センサユニット2への制御信号の入力等を行うための接続端子37bが、設けられている。さらに、ケース本体30の上面には、第1ガス流路35を介して保護カバー40に気体を供給するガス供給口37eと、が設けられている。この他にも、センサユニット2の電源のON,OFF等の状態を表示するランプ37dが設けられている。
【0033】
3−2.保護カバー40について
図2〜4に示すように、保護カバー40は、収容ケース3の一部を構成するものである。保護カバー40は、例えば、金属材料または樹脂材料からなり、ケース本体30の底面側からネジなどの締結具74により取付けられている。保護カバー40は、ケース本体30に取付けることにより、第1ガス流路35に連通した第2ガス流路45が形成されており、第2ガス流路45には、第1放出口42および第2放出口43が形成されている。
【0034】
第1放出口42は、第2ガス流路45からの気体が放出されるとともに、投光装置21aから投光されたレーザ光L1が通過する位置に形成されている。第1放出口42の下流には、第2放出口43がさらに形成されており、第2放出口43は、第2ガス流路45から気体が放出されるとともに、受光装置22aから投光されたレーザ光L2が通過する位置に形成されている。第2放出口43は、後述する遮蔽部材5の裏側表面50bに、放出された気体が吹き付けられるように形成されている。これにより、遮蔽部材5の放熱性を高めることができる。
【0035】
さらに、
図5に示すように、保護カバー40には、後述する遮蔽部材5を取り付けるための第1取付け部47が形成されており、第1取付け部47には、シャフト(取付け具)73を挿通する貫通孔47aが形成されている。さらに、第1取付け部47には、レーザ光L1、L2等に対して適切な角度で、遮蔽部材5を保護カバー40に取付けるための設置面47bが形成されている。
【0036】
4.遮蔽部材5について
図1〜4に示すように、センサ装置1を構成する遮蔽部材5は、ワークWの溶接時に発生する輻射熱のうち、収容ケース3の下方側(具体的には、第1および第2放出口42、43)に向かう輻射熱Hを遮蔽している。遮蔽部材5は、溶融池Pから飛散して、収容ケース3の下方側の表面に向かうスパッタSを遮蔽している。遮蔽部材5は、収容ケース3からワークW側に向かって延在した板状本体51を備えている。
【0037】
ここで、
図5および
図6に示すように、ワークWが溶接される側を遮蔽部材5の表側とし、その反対側を裏側としたときに、遮蔽部材5の裏側表面50bには、保護カバー40に取付けるための一対の第2取付け部57、57が形成されている。遮蔽部材5を保護カバー40に取付けた状態で、保護カバー40の第1取付け部47は、遮蔽部材5の2つの第2取付け部57、57の間に配置される。
【0038】
第2取付け部57には、シャフト73を挿通する貫通孔57aが形成されている。ここで、2つの第2取付け部57、57の間に、第1取付け部47が配置され、かつ、設置面47bに遮蔽部材5を設置した状態で、第1取付け部47の貫通孔47aと、第2取付け部57の貫通孔57aとが繋がり、1つの貫通孔となる。これにより、シャフト73を、第1取付け部47の貫通孔47aと、第2取付け部57の貫通孔57aとに、遮蔽部材5の幅方向(横方向)から、挿通することができる。この結果、シャフト73の頭部73cと、ネジ体73bの頭部73dで挟み込み、遮蔽部材5を保護カバー40に取付けることができる。
【0039】
本実施形態では、遮蔽部材5は、樹脂材料、金属材料、またはセラミックス材料からなり、700℃以上の耐熱温度(少なくとも融点)を有している材料からなることが好ましく、700℃以上でも機械的強度が低下し難い材料がより好ましい。
【0040】
たとえば、樹脂材料としては、たとえば、熱硬化性樹脂が好ましく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。金属材料としては、鋳鉄、鋼、アルミニウム、銅、または、黄銅などを挙げることができる。セラミックス材料としては、アルミナ、イットリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、コージライト、サーメット、ステタイト、ムライト、窒化アルミニウム、またはサファイア等を挙げることができる。
【0041】
図6に示すように、本実施形態では、ワークWが溶接される側の表面を遮蔽部材5の表側表面50aとし、その反対側を裏側表面50bとしたときに、遮蔽部材5の裏側表面50bの放熱面積は、表側表面50aの放熱面積よりも大きい。具体的には、裏側表面50bには、遮蔽部材5が取付けられた収容ケース3側にある基端から、遮蔽部材5が延在する方向に沿って、複数(具体的には6本)の凸条52が形成されている。
【0042】
本実施形態では、センサ装置1の収容体3Aが、遮蔽部材5を備えることにより、ワークWの溶接時に発生する輻射熱のうち、収容ケース3に向かう輻射熱を、遮蔽部材5で遮蔽することができる。これにより、この輻射熱により、収容ケース3に収容されたセンサユニット2が加熱されることを抑えることができる。特に、遮蔽部材5がセラミックス材料からなる場合、遮蔽部材5の耐熱性を確保することができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、裏側表面50bの凸条52を設けることにより、遮蔽部材5の裏側表面50bの放熱面積は、表側表面50aの放熱面積よりも大きい。すなわち、裏側表面50bは、表側表面50aに比べて実質的な表面積が大きいので、遮蔽部材5に入熱された熱は、遮蔽部材5から、ワークWが溶接されている側とは反対側に放熱される。この放出された熱は、第1放出口42および第2放出口43から放出される気体を冷却媒体として吸熱される。このようにして、輻射熱により入熱された熱が、収容ケース3に収容されたセンサユニット2に伝達されることを抑えることができる。
【0044】
このような遮蔽部材5は、例えば、上述した材料のバルク材から機械加工により製造してもよく、例えば、その材料が樹脂材料の場合には、射出により成形してもよい。遮蔽部材5の材料が、金属材料またはセラミックス材料である場合には、これらの粉末を焼結することにより製造することができる。
【0045】
上述した実施形態では、遮蔽部材5の裏側表面50bに複数の凸条52を形成したが、例えば、
図7に示すように、遮蔽部材5の裏側表面50bに複数の突起52Aを形成してもよい。この場合には、遮蔽部材5の裏側表面50bの放熱面積を、
図6の場合に比べてよりも大きくすることができるため、遮蔽部材5に入熱されたより多くの熱を、遮蔽部材5からワークが溶接されている側とは反対側に放熱させることができる。
【0046】
さらに、
図8に示すように、遮蔽部材5の裏側表面50bに、遮蔽部材5が取付けられた収容ケース3側にある基端から、遮蔽部材5が延在する方向に沿って、複数の凹溝53を形成してもよい。この場合であっても、凹溝53を設けることにより、遮蔽部材5の裏側表面50bの放熱面積を、表側表面50aの放熱面積よりも大きくすることができる。この結果、遮蔽部材5に入熱された熱を、遮蔽部材5から、ワークWが溶接されている側とは反対側に積極的に放熱することができる。さらに、
図9に示すように、遮蔽部材5の裏側表面50bに、複数の凹部53Aを設けてもよい。
【0047】
<第2実施形態>
以下に
図10〜
図12を参照して、第2実施形態に係るセンサ装置1を説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態に対して、遮蔽部材5の構造のみが、相違するので、その他の構成は、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0048】
図10および
図11に示すように、本実施形態では、遮蔽部材5は、遮蔽部材5の表側表面50aを形成する板状部材50と、板状部材50に積層され、遮蔽部材5の裏側表面50bの一部を形成する網状部材54と、を備える。板状部材50は、第1実施形態で示した遮蔽部材5に相当するものであり、第1実施形態の遮蔽部材5と相違する点は、裏側表面50bは、凸条等がなく平坦な表面である。
【0049】
網状部材54は、複数の素線54aにより織り込まれた部材であり、素線54aが交差する(具体的には直交する)ように、等間隔に配向されている。本実施形態では、素線54aは、金属材料からなり、例えば、金属材料としては、ステンレス鋼などの鋼材、アルミニウム、黄銅、銅などを挙げることができる。網状部材54は、接着剤等により、板状部材50に積層されており、これらを固定することができるのであれば、その積層方法は特に限定されない。また、網状部材54は、平織で金属製の素線を織り込んだものであるが、互いの交差する方向に配向された繊維を接着等により貼り付けてもよい。
【0050】
本実施形態によれば、板状部材50の裏側表面のうち、網状部材54から露出した部分の表面と、網状部材54を構成する素線54aの表面により、遮蔽部材5の裏側表面50bの放熱面積を増大させることができる。また、網状部材54を準備して、板状部材50に配置することにより、放熱面積の大きい裏側表面50bを有した遮蔽部材5を得ることができる。
【0051】
さらに、
図12に示すように、網状部材54は、複数の網材54A、54B、54Cを積層した構造であってもよい。本実施形態では、網材54A、54B、54Cは、上述した同じ径の金属製の素線が織り込まれたものであり、本実施形態では、平織で織り込まれているが、例えば、綾織または朱子織などであってもよい。
【0052】
本実施形態では、遮蔽部材5の裏側(50b側)に位置する網材54Aの網目の大きさは、遮蔽部材5の表側(50a側)に位置する網材54B、54Cの網目の大きさよりも大きい。さらに、遮蔽部材5の裏側(50b側)に位置する網材54Bの網目の大きさは、遮蔽部材5の表側(50a側)に位置する網材54Cの網目の大きさよりも大きい。
【0053】
ここで、本実施形態では、網目の大きさとは、素線54aで囲まれた空間(内部領域)の大きさであり、例えば網材54Aで例示すると、縦方向の隣接する素線54a、54aと、横方向に隣接する素線54a、54aとにより形成される内部領域の大きさのことをいう。すなわち、本実施形態では、遮蔽部材5の裏側(50b側)に位置する網材54Aの素線の間隔が、遮蔽部材5の表側(50a側)に位置する網材54B、54Cの間隔よりも大きい。
【0054】
この態様によれば、遮蔽部材5の裏側に位置する網材54Aの網目の大きさは、遮蔽部材5の表側に位置する網材54B、54Cの網目の大きさよりも大きい。遮蔽部材5の裏側に位置する網材54Bの網目の大きさは、遮蔽部材5の表側に位置する網材54Cの網目の大きさよりも大きい。このような構造により、網状部材54は、フラクタル構造に近い構造となる。
【0055】
したがって、遮蔽部材5の表側表面50aから入熱された熱は、同じ構造の網材を積層した場合に比べて裏面側に、放熱し易い。金属製の素線54aが織り込まれた網材54A、54B、54Cは、素線54aが等ピッチで配列された規則性を有した構造となるため、よりフラクタル構造に近くなり、放熱性を高めることができる。
【0056】
<第3実施形態>
以下に
図13を参照して、第3実施形態に係るセンサ装置1を説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態に対して、遮蔽部材5の構造のみが、相違するので、その他の構成は、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施形態に係る遮蔽部材5は、上述した金属材料またはセラミックス材料からなる。遮蔽部材5は、多孔質体であり、第1実施形態に示す遮蔽部材5に対して、裏側表面50bが、凸条等がなく、平坦面からなる。遮蔽部材5の板状本体51は、表面層51a、中間層51b、裏面層51cの3層構造であり、これらの空隙率が相違する。
【0058】
具体的には、裏側に形成された裏面層51cの空隙率は、表側に形成された中間層51b、表面層51aの空隙率に比べて高い。さらに、裏側に形成された中間層51bの空隙率は、表側に形成された表面層51aの空隙率に比べて高い。このように構成することにより、遮蔽部材5の裏側表面50bの実質的な表面積を大きくすることができる。この結果、遮蔽部材5に入熱された熱を、遮蔽部材5から、ワークWが溶接されている側とは反対側に積極的に放熱させることができる。
【0059】
このような遮蔽部材5は、空隙率が異なるように、金属材料またはセラミックス材料からなる粉末に、焼結時に揮発性を有する揮発剤を混練した混練物を積層し、これを焼結することにより得ることができる。また、空隙率の異なる板材を準備し、これらの周縁を貼り合わせてもよい。なお、空隙率は、材料そのものの密度から各層の密度を差し引くことにより、算出することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0061】
たとえば、第2実施形態の変形例では、網材を3枚積層したが、たとえば、これを2枚、4枚以上積層してもよく、第3実施形態では、遮蔽部材5を3層構造にしたが、たとえば、2層または4層構造にしてもよい。
【0062】
本実施形態では、センサユニットは、レーザ光をワークに投光し、ワークから反射したレーザ光を検出光として受光し、ワークの状態(形状)および検出部からワークまでの距離を測定したが、たとえば、センサユニットが、ワークから反射する光または溶接時にワークから発する光を、検出光として撮像装置(カメラ)で撮像し、ワークの溶接状態等を検出してもよい。
【0063】
1:(溶接用)センサ装置、2:センサユニット、21:投光部、22:検出部、3A:収容体、3:収容ケース、30:ケース本体、35:第1ガス流路、40:保護カバー、42:第1放出口、43:第2放出口、45:第2ガス流路、47:第2取付け部、47a:貫通孔、47b:設置面、5:遮蔽部材、50:板状部材、50a:表面層、50b:中間層、50c:裏面層、51:板状本体、52:凸条、52A:突起、53:凹溝、53A:凹部、54:網状部材、54a:素線、54A〜54C:網材、L1,L2:レーザ光、W:ワーク