【文献】
Targeting the proper amyloid-beta neuronal toxins: a path forward for Alzheimer's disease immunotherapeutics,ALZHEIMERS RES THER,2014年,Vol.6:42,p.1-15
【文献】
SCIENCE,2003年,Vol. 300,p. 486-489
【文献】
Nucleic Acids Research,1990年,Vol.18, No. 7,p.1904
【文献】
Journal of the Neurological Sciences,2008年,Vol.267,p.36-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベータアミロイドペプチド42(BAP42)の少なくとも1つのオリゴマー形態及びモノマーBAP42に対して免疫特異性を有し、フィブリルBAP42に対して免疫特異性を有さない、血液脳関門を通過する特徴を有する抗体分子であって、配列番号1、2、又は4のアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するBAP42結合断片を含み、単一の軽鎖可変ドメインである前記抗体分子であって、前記BAP42結合断片は、配列番号1、2、又は4のCDRを保持しており、前記BAP42結合断片が、前記ベータアミロイドペプチド42(BAP42)の少なくとも1つの前記オリゴマー形態及び前記モノマーBAP42に対して免疫特異性を有し、前記フィブリルBAP42に対して免疫特異性を有さない、血液脳関門を通過する、前記抗体分子。
抗体分子に融合しているペプチドをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の抗体分子であって、前記ペプチドが、配列番号24のアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、前記ペプチドと融合していない前記抗体分子より大きい血液脳関門通過能力を示す抗体−ペプチドコンストラクトをもたらす、前記抗体分子。
ペプチドの少なくとも30%が、0.1〜1mMの非融合ペプチドをマウスに注射して2分以内に前記マウスの脳に到達する、請求項6〜10のいずれかに記載の抗体分子。
マウスの脳に到達したペプチドの少なくとも90%が、0.1〜1mMの非融合ペプチドを前記マウスに注射して60分以内に前記脳から排除される、請求項11に記載の抗体分子。
メマンチン、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、及びタクリンからなる群から選択される少なくとも1つの追加の薬剤をさらに含む、請求項14に記載の医薬組成物。
それを必要とする対象のアルツハイマー病、関連障害、又はその症状の、治療、遅延、緩徐化、防止、又は発生率低下のための医薬を調製するための、請求項14又は15に記載の医薬組成物の有効量の使用。
症状が、短期記憶喪失、見当識障害、認知症、認知障害、軽度認知障害、気分変動、無気力、セルフケア欠如、会話困難、及び問題解決困難からなる群から選択される、請求項19に記載の使用。
関連障害が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン病、海綿状脳症、及びCNS障害からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項19又は20に記載の使用。
抗体分子が、アルツハイマー病の早期又は軽度認知障害を伴う病期に特有のBAP42オリゴマーに免疫特異的に結合する、請求項33〜35のいずれかに記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.定義
「神経疾患又は障害」は、これらに限定されるものではないが、てんかん、全及び局所虚血性及び出血性脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、心停止及び新生児仮死におけるような低酸素誘導神経細胞障害、並びにがんに関連する神経学的疾患、並びに神経変性疾患を含む、神経系の疾患又は障害を意味する。
【0020】
「神経変性疾患」は、これらに限定されるものではないがアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症(ALS,amyotrophic lateral sclerosis)を含む、疾患を意味する。アルツハイマー病(AD)は、アルツハイマー病(Alzheimer disease)又は単にアルツハイマーとも呼ばれ、日常業務を果すことができなくなり、最終的には認知症に至る、進行する記憶喪失はもちろん言語、判断、及び問題解決に関する問題も伴う進行性認知衰退を特徴とする、慢性神経変性障害である。
【0021】
「ベータアミロイドペプチド」(BAP)は、ADの疾患過程において重大な役割を果す、脳内で形成されるペプチドを指す。この疾患過程は、より大きいアミロイド前駆体タンパク質(APP)の断片である、長さ37〜42アミノ酸の範囲の異常に折り畳まれたベータアミロイドペプチド(BAP)の蓄積に起因する、プラーク形成に関連する。APPは、ニューロン膜を透過し、ニューロン成長、生存及び修復に関与する、膜貫通タンパク質である。あるBAP、詳細には、APPの最初の42アミノ酸で構成されているC末端断片を、本明細書では、「BAP42」、「Aβ42」、「βA42」、「ベータアミロイドペプチド42」、又は「ベータアミロイドペプチド1−42」と呼ぶ。この断片は、ニューロンの外側で沈着物にともに凝集塊となるフィブリルの一因となる高凝集傾向を有し、したがって、ADに特有の「老人斑」の形成に重要な役割を果す。
【0022】
BAP42の「非フィブリル形態」は、プラークを形成するほど密にともに凝集塊とならない、該ペプチド分子のモノマー、ダイマー、トリマー及び低級オリゴマーを指す。「オリゴマー形態」又は「BAP42オリゴマー」は、2個の会合した(associated)モノマーのダイマー、又は2個より多くのモノマー、例えば3、4、6、8若しくは10個のモノマーの会合体、並びにBAP42の15、20、25、30、35及び40個のモノマーの会合体に対応する、10〜200kDaの範囲の分子量を有するペプチドのオリゴマーを指す。
【0023】
BAP42の「フィブリル形態」又は「BAP42フィブリル」は、ADに特有の老人斑を構成する、BAP42分子のより高次の凝集塊を指す。試料中の「粒子」又は「分子種」は、試料中の個々のモノマー、ダイマー、オリゴマーなど、複合体を指す。試料中の個々の分子種のパーセンテージを与えることによって、その試料中に存在する様々な分子種の配分を記述することができる。
【0024】
「抗体分子」は、免疫グロブリンの少なくとも1つのドメイン、例えば、天然に存在する免疫グロブリンの重鎖ドメイン若しくは軽鎖ドメイン又は合成(例えば組換え)結合タンパク質(例えば、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体など)の対応するドメインを含有する、免疫特異性ポリペプチド又はその結合断片を意味する。天然に存在する免疫グロブリンの基本構造単位(例えば、IgG)は、約150,000Daの糖タンパク質として通常は表現される、2本の軽鎖(L)と2本の重鎖(H)を有する四量体である。各軽鎖は、一般に、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)で構成され、その一方で各重鎖は、一般に、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH
1、CH
2及びCH
3)、並びにヒンジ領域(H)を含む。抗体又は抗体断片の可変領域は、抗原と接触している残基を含有する相補性決定領域(CDR,complementarity determining region)と、(ある一定のフレームワーク残基は抗原に接触することもあるが)一般に、CDRループの構造を維持し、配置を決定する、フレームワークセグメント又はフレームワーク領域(FR若しくはFwR,framework region)と呼ばれる、非CDRセグメントとを含む。
【0025】
抗体断片は、インタクトな通常のIgGから生成することができ、抗原結合断片、Fcドメイン、Fab断片(F(ab))、F(ab’)断片、一本鎖Fv断片(scFv,single-chain Fv)、VH−VL二量体、重鎖ドメインのみ、軽鎖ドメインのみ、並びに個々の(単一)ドメイン、例えば、VHドメイン、VLドメイン、CH
1ドメイン、CH
2メイン、CH
1ドメイン、CLドメインなどを含む。
【0026】
用語「抗体単一ドメイン」、「単一ドメイン抗体」、「小ドメイン抗体」又は「sdAb」は、軽鎖可変ドメイン(VL)又は重鎖可変ドメイン(VH)のみを有する、抗体の単一の単量体型断片を含む、又はそのような断片からなる、抗体断片を指す。インタクトな抗体同様、単一ドメイン抗体は、特異的抗原に免疫特異的に結合することができる。しかし、全抗体とは異なり、単一ドメイン抗体は、Fc領域がないので補体系誘発細胞毒性を示さない。2つ又は3つ以上の単一ドメイン抗体が組み合わさって、それらの二量体及びより高次の構造を生ずることもある。
【0027】
本明細書において用いる用語「ヒト化抗体分子」は、ヒトフレームワーク領域を含む少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域と本発明の抗体分子の1つ又は2つ以上のCDRとを含むポリペプチドを指す。一部の実施形態において、本発明の抗体分子は、全免疫グロブリンを含まず、例えば、単一免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、VH又はVLドメイン)を含むが、他の一切の免疫グロブリンドメイン及び領域を含まない(例えば、Fc、CH
1、CH
2、CH
3、CLなどを含まない)。CDRを提供する抗体分子(例えば、VLドメイン)は、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリン又はその断片(例えば、ヒト可変ドメイン)は、「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は、存在する必要はないが、存在する場合、好ましくは、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%又は96%以上同一である。それ故、本発明の抗体分子がヒト化される実施形態に従って、抗体分子の、おそらくCDRを除いて、すべての部分は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。結果として生ずるヒト化分子が、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原と結合すると予想される場合、ドナー分子は「ヒト化」されたと言われる。一般に、ヒト化免疫特異性分子は、超可変領域残基が、望ましい特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種からの超可変領域残基(例えば、ウサギVLドメインからのドナーCDR)によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(又はそれらの可変ドメイン及び/又は断片)である。
【0028】
さらに、ヒト化分子は、レシピエント抗体においてもドナー抗体においても見つけられない残基を含むことがある。これらの修飾は、機能性、例えば免疫特異性をさらに洗練させるために、又は免疫原性を低下させるために行われる。一般に、ヒト化抗体分子は、超可変領域のすべて又は実質的にすべてがウサギ可変ドメインのものに対応する、少なくとも1つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになり、FRのすべて又は実質的にすべてはヒト免疫グロブリン配列のものである。一部の実施形態において、本発明のヒト化抗体分子は、バリアントである。そのようなヒト化分子は、非ヒト、例えばウサギCDRの1つ又は2つ以上にアミノ酸残基置換、欠失又は付加を含むことがある。ヒト化分子のバリアントは、親ヒト化抗体分子と比較したとき、実質的に同じ結合を有することもあり、より良好な結合を有することもあり、又はより不良な結合を有することもある。
【0029】
本明細書において用いる用語「免疫特異性」は、生理条件下で抗原(例えば、エピトープ又は免疫複合体)と特異的に結合するが別の分子とは特異的に結合しない分子の能力を指す。他の部分構造よりその標的抗原と優先的に結合する抗体分子は、その標的抗原に「免疫特異的に結合する」又はその標的抗原を「免疫特異的に認識する」と言うことができる。所与の抗原への免疫特異性を有する分子を、その特定の抗原に対して「抗原結合性」又は「抗原特異的」と記述することもある。抗原に免疫特異的に結合する分子は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、又は当業者に公知の他の技術によって同定することができる。免疫特異的結合を、最小結合パラメータ、例えば、約0.001nM〜約1,000pMによって、定量的に定義することもできる。抗原に免疫特異的に結合する分子は、他の部分構造に結合(又は、と「交差反応」)することがあるが、例えばイムノアッセイ、BIAcore又は当技術分野において公知の他のアッセイによって判定して、より低い親和性、好ましくは、はるかに低い親和性で結合(又は「交差反応」)する。
【0030】
「血液脳関門」又は「BBB」は、CNS内の循環血と脳細胞外液とを分離するバリアを指す。BBBは、高い選択的透過性を有し、大脳毛細血管レベルでタイトジャンクションによって接続された脳内皮細胞(「BEC,brain endothelial cell」又は「bEnd3細胞」)により形成される。BBBは、体内の他の箇所の毛細血管の内皮細胞よりはるかに厳しい程度で、血流からの物質の通過を制限する。例えば、BBBは、小さい疎水性の分子、例えば酸素、二酸化炭素及びある特定のホルモンの拡散のみを許すことによって、微視的細菌及び大きい又は親水性の分子の拡散を制限する。BBBの細胞はまた、特異的タンパク質を利用して、このバリアを越えて代謝産物、例えばグルコース及びアミノ酸を能動輸送する。逆に、「非脳内皮細胞層」は、脳内皮細胞以外の細胞で構成された内皮細胞層、例えば、血液脳関門以外の内皮細胞層を指す。
【0031】
「ペプチド送達システム」は、本明細書では「トランスポゾンペプチド」又は「細胞膜透過性ペプチド」(CPP)とも呼ぶ「送達ペプチド」を使用して、カーゴ分子を送達するアプローチを意味する。CPPは、細胞膜を通過する能力がある短いペプチドであり、したがって、細胞の内部に様々な担持カーゴ物質を移行させることができ、これは、低分子量薬物、リポソーム、プラスミド、抗体及びナノ粒子を移行させることを含む。カーゴ分子は、共有結合性相互作用又は非共有結合性相互作用のどちらかによって、ペプチドと会合(associate)する。CPPは、一般に、それらのカーゴ分子を、エンドサイトーシス、特に吸着媒介トランスサイトーシスの過程を通して細胞内に送達する。
【0032】
典型的に、CPPは、リシン若しくはアルギニン残基などの正荷電アミノ酸を多く含有するアミノ酸組成を有するか、極性/荷電アミノ酸と非極性/疎水性アミノ酸の交互パターンを示す。CPPのこれら2つのタイプは、それぞれ、ポリカチオン性及び両親媒性と呼ばれる。CPPの第三のタイプは、非極性残基を多く含有し正味電荷が低い、疎水性ペプチド、又は細胞内取り込みを促進する疎水性アミノ酸基を多く含有する、疎水性ペプチドである。CPPの様々な例としては、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1,human immunodeficiency virus 1)からのトランス活性化転写活性化因子(TAT);アンテナペディアホメオドメインの第3ヘリックス、pAntp(4358);及び2型デング熱ウイルス(「DEN2C」)のカプシドタンパク質が挙げられる。DEN2Cは、RNAと相互作用するための塩基性残基と、膜と相互作用するための非極性領域とを有する対称ダイマーを形成する、12kDaタンパク質である。タンパク質は、4つのドメイン:α1、α2、α3及びα4から形成される(Ma, et al., Proc Natl Acad Sci USA (2004) 101(10): 3414-3419)。
【0033】
「血液脳関門特異的」又は「BBB特異的」は、体内の他の膜又はバリアを通過するより高い度合いで血液脳関門を通過し、そのようにして脳を透過してカーゴ分子をCNSに送達する、送達ペプチドの能力を指す。
【0034】
ポリペプチドとの関連で本明細書において用いる用語「誘導体」又は「バリアント」は、アミノ酸残基置換、欠失又は付加の導入によって変更されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。用語「誘導体」又は「バリアント」は、修飾されたポリペプチド、すなわち、該ポリペプチドへの任意のタイプの分子の共有結合によって修飾されたポリペプチドも指す。例えば、限定としてではないが、ポリペプチドは、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合などによって修飾されることがある。誘導体ポリペプチドは、これらに限定されるものではないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、当業者に公知の技術を使用する化学修飾によって生成されることもある。さらに、誘導体ポリペプチドは、1つ又は2つ以上の非古典的アミノ酸を含有することもある。ポリペプチド誘導体又はバリアントは、それが由来したポリペプチドと同様の又は同一の機能を有する。生物に「由来する」ポリペプチドに関して用いる用語「由来する」は、前記生物(例えば、細菌細胞又はファージ)から直接ポリペプチドを単離することも指すことがある。
【0035】
用語「対象」、「宿主」及び「患者」は、互換的に用いられる。本明細書で用いる対象は、好ましくは哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)、最も好ましくはヒトである。
【0036】
本明細書において用いる用語「治療剤」は、アルツハイマー病又は関連障害(脳内の、フィブリルを形成するオリゴマーベータアミロイドペプチドの蓄積若しくは他の凝集しやすいペプチドの蓄積に関連する状態を含む)に関連する症状の治療、管理又は改善に使用することができるあらゆる薬剤を指す。本明細書において用いる「治療有効量」は、標的疾患又は障害の治療又は管理に際して、そのような疾患又は障害に罹患している対象に投与したとき、少なくとも1つの治療的恩恵をもたらす薬剤の量(例えば、本発明の医薬組成物中の、単一ドメイン抗体の量、又は該抗体と送達ペプチドのコンストラクトの量)を指す。さらに、本発明の薬剤に関する治療有効量は、疾患又は障害の治療又は管理に際して少なくとも1つの治療的恩恵をもたらす、単独での、又は他の治療と併用での、薬剤の量を意味する。
【0037】
アルツハイマー病の場合、抗体分子又はそのコンストラクトの治療有効量は、この疾患の1つ又は2つ以上の認知又は情動症状を軽減すること、例えば、短期記憶喪失を軽減すること、見当識障害、気分変動、又は意欲低下を軽減すること、及びこの疾患のより後期に特有の他の方法で介護者からの自立を増すことができるだろう。
【0038】
本明細書において用いる用語「予防剤」は、アルツハイマー病若しくは関連障害又はその症状の防止、遅延、又は進行の緩徐化に使用することができる、あらゆる薬剤を指す。本明細書において用いる「予防有効量」は、標的疾患又は症状の防止又は遅延に際して、そのような疾患又は障害の素因がある対象に投与したとき、少なくとも1つの予防的恩恵をもたらす予防剤の量(例えば、本発明の医薬組成物中の、単一ドメイン抗体の量、又は該抗体と送達ペプチドのコンストラクトの量)を指す。予防有効量は、標的疾患若しくは障害を防止する、遅延させる、若しくはその発生率を低下させる、又は標的疾患若しくは障害の進行を緩徐化する、又は標的疾患若しくは障害の発症を遅延させる若しくは最小化する、又は標的疾患若しくは障害の再発若しくは再燃を防止する若しくは遅延させるのに十分な、薬剤の量を指すこともある。予防有効量は、標的疾患又は障害の症状の増悪を防止する又は遅延させるのに十分な薬剤の量を指すこともある。さらに、予防有効量は、疾患又は障害の防止又は遅延に際して少なくとも1つの予防的恩恵をもたらす、単独での、又は他の薬剤と併用時の、予防剤の量を指す。
【0039】
本発明の予防剤は、標的疾患又は障害の「素因がある」、すなわち、アルツハイマー病又は関連障害(非フィブリルルベータアミロイドペプチド若しくは他の凝集しやすいオリゴマーの蓄積に関連する状態を含む)の素因がある、対象に投与することができる。疾患又は障害の「素因がある」対象は、その疾患若しくは障害の発症に関連する症状を示す対象、又は体質、環境曝露、若しくはそのような疾患若しくは障害の他のリスク因子を有するが、症状がまだその疾患若しくは障害と診断されるレベルでない対象である。例えば、アルツハイマー病の家族歴を有する患者は、その素因がある者とみなされることがある。
【0040】
本明細書において用いる用語「併用で」は、1以上の予防及び/若しくは治療剤又は活性薬剤の使用を指す。用語「併用で」の使用は、予防及び/又は治療剤を対象に投与する順序を限定しない。第一の予防又は治療剤を、(第一の予防又は治療剤とは異なる)第二の予防又は治療剤の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間若しくは12週間前)に、投与と同時に、又は投与の後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間若しくは12週間後)に、それを必要とする対象に投与することができる。
【0041】
2.ベータアミロイドペプチドの非フィブリル形態を標的とする抗体分子
本発明の1つの態様は、ベータアミロイドペプチド42(BAP42)の非フィブリル形態、例えばモノマー及びオリゴマー形態に、ペプチドのフィブリル形態より優先的に結合する抗体分子に関する。例えば、抗体分子は、ペプチドのフィブリル形態と比較してオリゴマー形態に少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1,000、少なくとも約2,000、少なくとも約4,000、少なくとも約6,000、少なくとも約8,000、又は少なくとも約10,000倍高度な結合を示すことができる。詳細には、BAP42の1つ又は2つ以上のオリゴマー形態に対して免疫特異性を有するが、BAP42フィブリルへの免疫特異性を示さない(又はフィブリルへの非常に低い免疫特異性を示す)、抗体分子を提供する。
【0042】
一部の実施形態において、抗体分子は、ウサギ免疫グロブリンに由来する及び/又はウサギ免疫グロブリンにおいて同定された可変ドメイン又はアミノ酸配列若しくは残基を含み、該分子は、BAP42モノマー及び/若しくはオリゴマー又はどちらかのエピトープに免疫特異的に結合する。免疫特異的結合は、抗原/タンパク質結合特異性を評定するための当技術分野において公知のいずれの標準的方法によって判定してもよい。抗体又はその抗原結合断片の抗原又はエピトープに対する結合特異性を判定するためのアッセイは、ELISA、ウェスタンブロット、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore)、及びラジオイムノアッセイを含むが、これらに限定されない。結合特異性を評定するための当技術分野において公知のいずれの方法を使用して本発明の抗体分子を同定してもよい。好ましい実施形態において、本発明の単離された単一ドメイン抗体分子は、0.001nMより大きい、0.005nMより大きい、0.01nMより大きい、0.05nMより大きい、0.1nMより大きい、0.5nMより大きい、1nMより大きい、2nMより大きい、しかし5nM以下、10nM以下、20nM以下、30nM以下、40nM以下、50nM以下、60nM以下、70nM以下、80nM以下、90nM以下又は100nM以下のKdを示す。ある特定の実施形態において、本発明の単離された単一ドメイン抗体分子は、おおよそ10nM、おおよそ15nM、おおよそ20nM、おおよそ25nM、おおよそ30nM、おおよそ35nM、おおよそ40nM、おおよそ45nM、おおよそ50nM、おおよそ55nM、おおよそ60nM、おおよそ65nM、おおよそ70nM、おおよそ75nM、おおよそ80nM、おおよそ85nM、又はおおよそ90nMのKdを示す。
図16A〜16Dも参照されたい。
【0043】
好ましい実施形態において、抗体分子は、BAP42のオリゴマー形態にBAP42のフィブリル形態より優先的に結合する。例えば、抗体分子は、BAP42オリゴマーにフィブリルより強く、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍又は少なくとも約50倍といった倍率で、結合することができる。一部の実施形態において、抗体分子は、BAP42フィブリルに対する免疫特異的結合を示さず、又は実質的に示さず、例えば、抗体特異性を評定するための当技術分野において公知の標準的方法によって検出することができない結合を示す。
【0044】
本発明の抗体分子は、多価であることもあり、又は一価であることもある。多価抗体分子は、二価のもの(例えば、本発明の単一ドメイン抗体分子の二量体)、三価のもの、及びより高次の結合価のもの、例えば、同じエピトープを各々が認識する2つの抗原結合部位を有する二価IgG複合体を含む。好ましい実施形態において、抗体分子は一価であり、したがって分子1つ当たり1つだけの抗原結合部位を提示する。特定の実施形態において、抗体分子は、単一ドメイン抗体、又はその抗原結合断片、例えば、単一の軽鎖可変ドメイン(VL)又は単一の重鎖可変ドメイン(VH)、さらにいっそう好ましくは、ウサギのVL若しくはVH、又はそのVH若しくはVLの抗原結合ドメインである。
【0045】
免疫グロブリンVH又はVLドメインをコードするヌクレオチド配列は、無感作ウサギから得てもよく、又は抗原で、例えばBAP42モノマー又はオリゴマーで、以前に免疫されたウサギから得てもよい。ウサギを免疫すること、及びウサギVH又はVLドメインをコードするヌクレオチド配列(例えば、cDNA)の単離は、当技術分野において公知の又は本明細書に記載するいずれの方法によって行ってもよい。ある特定の実施形態では、VH又はVLドメインをコードするヌクレオチド配列を無感作ウサギ又は免疫されたウサギのいかなる組織から得てもよいが、形質細胞、例えばB細胞を多く含む組織源から得ることが好ましい。ある特定の実施形態において、VH又はVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含むウサギ組織は、骨髄である。他の実施形態において、VH又はVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含むウサギ組織は、虫垂組織及び/又はリンパ系組織、例えば脾臓若しくはリンパ節組織である(例えば、その全体が参照により組み込まれている、Goncalves et alの国際公開第2008/136694号パンフレットを参照されたい)。
【0046】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖Fv(scFv)、VH−VL二量体、一本鎖抗体、抗イディオタイプ(抗Id,anti-Id)抗体(例えば、本発明の抗体の抗Id及び抗・抗Id抗体を含む)、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、又は上記のもののいずれかの抗原結合断片(Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv,bispecific Fv)を含むがこれらに限定されない)、及びイントラボディである。
【0047】
本発明の抗体分子は、二重又は多重特異性であることがあり、例えば、異なる抗原又は異なるエピトープに対して親和性を示す2つの抗原結合部位を有する二重特異性分子であってもよい。本発明の二重又は多重特異性分子は、当技術分野において周知の方法、例えば、本発明の1つ又は2つ以上の単一ドメイン抗体分子同士の及び/又は異なるエピトープ結合ポリペプチドとの化学的コンジュゲーションを用いて、形成することができる。例えば、本発明の抗体分子は、第一及び第二のVLドメイン、又は第一及び第二のVHドメインであって、異なる結合特異性を有する(すなわち、異なる抗原に結合する)第一及び第二のドメインを含むこともある。
【0048】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子又はそれらの抗原結合断片は、CH
1ドメインを含まない。他の実施形態において、本発明の抗体分子又はそれらの抗原結合断片は、CH
1ドメイン、CH
2ドメイン、CLドメイン、CH
3ドメイン若しくはHドメインのうちのいずれかの1つ若しくは2つ以上を含まず、又はCH
1ドメイン、CH
2ドメイン、CLドメイン、CH
3ドメイン又はHドメインのいずれも含まない。さらに他の実施形態において、本発明の抗体分子又はそれらの抗原結合断片は、CH
1ドメイン、Hドメイン、CH
2ドメイン、CLドメイン又はCH
3ドメインのうちの1つを含み、免疫グロブリンに由来する他のいずれの定常ドメインもヒンジ領域も含まない。
【0049】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、VH CDR1ドメイン、VH CDR2ドメイン、VH CDR3ドメイン、VL CDR1ドメイン、VL CDR2ドメイン及び/又はVL CDR3ドメインのうちの1つ又は2つ以上を含む。ある特定の実施形態において、抗体分子は、VH CDR1ドメイン、VH CDR2ドメイン及びVH CDR3ドメインの各々、又はVL CDR1ドメイン、VL CDR2ドメイン及びVL CDR3ドメインの各々を含む。好ましい実施形態において、抗体分子は、VL CDR1ドメイン、VL CDR2ドメイン及びVL CDR3ドメインの各々を含む。
【0050】
本発明の抗体分子は、いかなる種(例えば、ウサギ、マウス、ラット)に由来する免疫グロブリン分子を含んでもよいが、ヒト又はヒト化免疫グロブリン分子であることが好ましく、該免疫グロブリン分子は、いかなるタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)又はクラス(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1及びIgA
2)又はサブクラスのものであってもよい。本発明の抗体分子又はそれらの抗原結合断片は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、化学合成又は組換え技術によって産生することができる。
【0051】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、脱免疫化されている。すなわち、抗体分子を、その免疫原性を低下させるように修飾してもよく、例えば、その場合、少なくとも1つのT
Hエピトープを除去及び/又は減少させる。一部の実施形態では、免疫原性低下はもちろん(免疫原性低下とは別に)、溶解度及び/又は免疫特異性向上も得られるように、抗体分子を変異させる。免疫原性を低下させた抗体分子を「脱免疫化」抗体分子と呼ぶ。一般に、抗体分子は、1つ又は2つ以上のHLAクラスII受容体に結合するエピトープを減少又は除去するような1つ又は2つ以上のアミノ酸位置での置換を含む。本発明の脱免疫化抗体分子によって、所期の宿主での、例えば、ヒト患者での免疫原性低下が得られる。
【0052】
脱免疫化は、当技術分野において公知の及び/又は本明細書に記載するいずれの方法によって果してもよい。1つのアプローチでは、抗体分子の3D構造のモデルを構築する。次いで、T
Hエピトープ数を最小にするように一連の置換を計画して、好ましくは、抗体分子の安定性、又は標的、例えばBAP42オリゴマーへのその結合親和性に影響を与えることなく最も重要なエピトープを除去する。一部の実施形態において、脱免疫化抗体分子は、少なくとも約10個のT
Hエピトープ、少なくとも約15個のT
Hエピトープ、少なくとも約20個のT
Hエピトープ、少なくとも約25個のT
Hエピトープ、少なくとも約30個のT
Hエピトープ、少なくとも約40個のT
Hエピトープ、又は少なくとも約50個のT
Hエピトープを除去する置換を含む。好ましい実施形態において、置換は、脱免疫化前の抗体分子と比較して、抗体分子の免疫特異的結合に影響を与えない、又は少なくとも実質的に影響を与えない。
【0053】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、例えば該抗体分子の半減期を延長するように、Fcドメイン、好ましくはヒトFcドメインと会合している。抗体分子は、Fcドメインに直接結合されることもあり、又はペプチドリンカーを含む若しくはペプチドリンカーからなる介在アミノ酸配列などのリンカーを介して間接的に結合されることもある。好ましい実施形態では、抗体分子は、二価コンストラクトを得るために、融合生成物としてヒトFcドメインのN末端に結合される(Farrington et alの国際公開第2013/106577号パンフレット(Biogen社)も参照されたい)。一部の実施形態において、本発明の2つの抗体分子各々は、完全Fc領域の2つのFcドメインの各々のN末端に、好ましくはペプチドリンカーを介して、結合され、2つの抗体分子は、同じであってもよく、又は異なってもよい。一部の実施形態において、抗体分子は、scFv分子のN末端に結合される。
【0054】
理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明の抗体分子は、脳内のBAP42又は他の凝集しやすいペプチドの凝集に干渉することによって作用して、アルツハイマー又は関連障害において有益な治療/予防効果を生じさせることができる。BAP42は、アルツハイマー患者の脳内に様々な会合形態で存在する。BAP42は、高いオリゴマー化能力と繊維を形成する能力がある一連の分子の1つであり、様々な成熟段階を経るこのペプチドに関わる過程を
図1に模式的に示す。
【0055】
図1が示すように、BAP42は、ペプチドのモノマーから、プラークを形成することができる繊維へと進行する、凝集スキームに従って凝集する。ペプチドは、高いオリゴマー化能力を有し、自己会合によって開始して小さいオリゴマーを生じさせ、その後、それらのオリゴマーがこのペプチドの他の分子と会合する。ペプチドの構造は、繊維の特徴である、ベータシートを多く含む二次構造をもたらすように変化する。BAP42及び他のアミロイド形成タンパク質の毒性は、蓄積する不溶性繊維中にではなく、むしろ可溶性オリゴマー中間体中に存在しうる(Rakez et al (2003) Science 300: 486-489;Selkoe (1991) Neuron 6: 487-498;及びHardy (1992) Science 256: 184-185)。この仮説によると、脳内におけるBAP42の産生と排除又は分解との不均衡は、アルツハイマーの開始事象であり、最終的にシナプス及び神経の機能障害及び変性に至り、その後、認知の障害となる。
【0056】
非フィブリルBAP42を優先的に標的とする抗体分子は、本明細書に開示する配列情報を用いて開始して組換え手段によって得てもよく、又は本明細書に開示する手順に従って、免疫グロブリンを産生させ、単離してBAP42形態を選択することによって生じさせてもよい。実施例1は、そのような手順を例示する。簡単に述べると、異なるBAP42形態を調製して特性解析し、次いでモノマー又はオリゴマー形態を使用してウサギを免疫した。単離したウサギ抗体を使用して、VL抗体ライブラリーを構築し、ファージディスプレイによって抗BAP42抗体を選択した。
【0057】
特定の実施形態では、「ファージディスプレイ膜」を使用してファージディスプレイプロセスを最適化し、この最適化は、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE,sodium dodecyl sulphate-polyacrylamide gel electrophoresis)によって分離してポリフッ化ビニリデン(PVDF,polyvinylidene fluoride)膜にエレクトロブロットしたタンパク質に対するファージディスプレイ抗体レパートリーのパニングを含む。これらの膜には、他の膜より有意に低いバックグラウンドファージ結合レベルという利点がある(Marks et al. (2001) “Towards Proteome-wide Production of Monoclonal Antibody by Phage Display” J. Mol. Biol. 315:1063-1073)。それ故、モノマー及びオリゴマーBAP42形態をPVDF膜に固定化して、これらの形態に特異的な単一ドメイン抗体分子についてパニングする。本発明の別の態様は、抗体ライブラリーのパニングに使用するための、異なるBAP42形態の膜接合体に関する。
【0058】
本発明の抗体分子は、以前のアプローチと比較して有利である、アルツハイマー病及び関連障害に関する治療及び予防アプローチを一般に提供する。例えば、単一ドメイン形式の抗体分子は、非フィブリルBAP42形態に対する高い免疫特異性と小さいサイズ及び安定性を兼ね備えており、したがって、アルツハイマーの免疫治療での使用に有利な薬剤をもたらす。
【0059】
一部の実施形態において、抗体分子は、サイズが小さく、例えば、約30kDa未満、約20kDa未満、約15kDa未満若しくは10kDa未満であり、及び/又は約5kDaより大きい、約10kDaより大きい、又は約15kDaより大きい。特に好ましい実施形態において、抗体分子は、サイズが約12〜15kDaの単一ドメイン抗体である。この小さいサイズは、IgG
1分子のサイズ(約150kDa)より約1桁小さい。小さいサイズは、組織への透過を増すことができ、フルサイズの抗体には接近できないこともあるタンパク質標的の空洞又は活性部位内に結合することができる。小さいサイズは、生成物1グラム当たりのモル当量をより高くさせることもあり、その結果、1用量当たりの力価が増され、全製造コストが低下される。小さいサイズは、下でより詳細に説明するように、単独での、又は送達ペプチドに融合した状態での、BBBの通過も促進する。
【0060】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、VLドメインを含み、VHドメインを含まない。特定の実施形態において、抗体分子は、単一ドメイン抗体、好ましくは、ウサギVLドメイン又はそれに由来するヒト化VLドメインからなる。単一ドメイン抗体は、一般に、長さ約100アミノ酸、例えば、長さ約90、約100、約110又は約115アミノ酸である。
【0061】
一部の実施形態において、抗体分子は、モノマーであり、可溶性であり、したがって、好ましくは、凝集物を形成しない、又は有意な程度には凝集物を形成しない(又は凝集を減少させるように抗体分子を改変することができる)。本発明の単一ドメイン抗体分子は、例えば、細菌、酵母及び/又は哺乳動物細胞系において一般によく発現するので、産生する上でさらに有利である。一部の実施形態において、抗体分子は安定しており、例えば、単一ドメイン抗体は、一般に、循環内でフルサイズの抗体より安定しているが、それらの安定性をさらに増すように改変することもできる。一部の実施形態において、抗体分子の血清半減期は、例えば、半減期を延長するためのアプローチ、例えば、これらに限定されるものではないが、PEG化、ヒト血清アルブミン(HAS,human serum albumin)への融合、及びHAS結合ペプチドへの融合を用いて、数分又は数時間から数週間に増される(例えば、その全体が参照により組み込まれているda Silva, et al.の国際公開第2013/043071号パンフレットに記載されているアプローチも参照されたい)。安定性が増した本発明の抗体分子は、経口投与又は肺経路による送達の選択肢を与えることもあり、及び/又はBBBに透過できることもある。安定性が増した抗体分子は、例えば精製、保管及び/又は輸送中に、活性をよりよく保持できることもある。例えば、一部の実施形態において、抗体分子は、凍結乾燥又は熱変性などの厳しい条件に付された後、活性を保持する。
【0062】
特定の実施形態では、改良型CAT融合アッセイ(例えば、その全体が参照により組み込まれているGoncalves et alの国際公開第2008/136694号パンフレットを参照されたい)を用いて、抗体分子を安定性について選択する。CAT融合アッセイを用いる安定したsdAbライブラリーの選択を説明する、下に提供する実施例1、パート(c)、サブパート(iv)も参照されたい。簡単に述べると、安定したドメインを含有する融合体を発現する細菌がクロラムフェニコールに対してより耐性である場合、推定ドメインのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼへの融合によって、安定したドメインを選択することができる。安定性をこのアッセイによって定義することができ、例えば、本発明の安定した抗体分子は、CATに融合されて所与の細菌において発現したときに、定められた量のクロラムフェニコールの存在下で、ある特定の時間内に、その細菌のある特定の数のコロニーの増殖を可能ならしめるものとして定義することができる。
【0063】
ある特定の実施形態において、抗体分子の安定性は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼと融合している前記抗体分子をコードする1コロニー形成単位のベクターによる形質転換、及び形質転換された大腸菌(E. Coli)による融合体の発現を介して、24時間以内に、37℃及び1.86mMクロラムフェニコールの存在下で形質転換された大腸菌の400〜600コロニーの増殖を可能ならしめることとして定義される。下の実施例1、表6を参照されたい。安定性を、他のパラメータ、例えば、表6及び附属の文章の中で提供するパラメータによって定義することもできる。
【0064】
好ましい実施形態において、抗体分子は、BAP42のモノマー又はオリゴマー種の凝集に干渉し、その結果、脳内でフィブリルを形成するオリゴマーのフィブリル化及び/若しくは凝集を減少、逆行、防止、緩徐化若しくは遅延させる、又は脳内でプラークの解凝集を起こさせる。特定の実施形態において、抗体分子は、脳内でのBAP42のフィブリル化を少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%妨げる。フィブリル化を妨げる程度は、例えば、候補抗オリゴマーBAP42抗体分子を使用するインビトロアッセイによって評定することができる。そのようなインビトロアッセイの例については、実施例1、パート(c)、サブパート(v)を参照されたい。
【0065】
一部の実施形態において、抗体分子は、脳内皮細胞を含む内皮細胞層、例えば、ヒトのBBBを通過する。抗体分子は、投与後、例えば、対象への非経口投与後、BBBを通過して脳及びCNSに到達することができる。好ましい実施形態において、抗体分子は、送達ペプチドを使用しなくてもBBBを通過する。より好ましい実施形態において、抗体分子は、脳内皮細胞を含まないバリアなどの他の内皮細胞層より高い度合いでBBBを通過する。
【0066】
好ましい実施形態において、抗体分子は、送達ペプチドに融合されていなくても、モデルBBBを越える有効な移行を示す。例えば、本発明の抗体分子は、例えば標識された抗体分子の放射活性によって測定して、BBBモデルにおいて24時間以内のインキュベーションで少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%の移行を好ましくは示す。特に好ましい実施形態では、BBBの細胞と相互作用することなく、又はBBBの細胞と実質的に相互作用することなく、例えば、BBB細胞内に内在化されて蓄積することなく、又は実質的にBBB細胞内に内在化されて蓄積することなく、移行が起こる。したがって、非常に好ましい実施形態において、本発明の抗体分子は、驚くべきことに、脳内皮細胞内に少ししか捕捉されないばかりでなく水性媒体への高い溶解度とBBBを越える効率的移行も兼ね備えている。
【0067】
好ましい実施形態において、抗体分子は、対象の脳に到達するのに及び/又はその後、脳から排除され、最終的に対象の身体から除去されるのに好適な生体内分布プロファイルを有する。生体内分布プロファイルを、当技術分野において公知の又は本明細書に記載する技術によって判定してもよい。例えば、抗体分子を1つ又は2つ以上の放射性同位元素で標識し、被験動物に注射してもよい。注射後、様々な時点で屠殺後、脳組織を含む様々な器官/組織を除去し、計量し、放射活性について試験する。BBBの通過又はBBBを越える移行を当技術分野において公知の又は本明細書に記載する技術によってインビボで測定してもよい。例えば、健常又は5xFADトランスジェニックマウスを使用してもよく、その場合、送達ペプチドに融合している又はしていない抗体分子を動物に注射し、その後、脳を画像化して抗体分子の移行を判定する。実施例4は、本発明の例示的な抗体分子の投与後、チアジンレッドを使用して2光子顕微鏡法に従ってプラークを同定する、このアプローチに関するさらなる詳細を提供する。
【0068】
特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、配列番号1〜21からなる群から選択される1つのアミノ酸配列若しくは配列番号1〜21のいずれか1つのBAP42オリゴマー結合断片を含む、又はそのようなアミノ酸配列若しくは断片からなる単一ドメイン抗体の1つ若しくは2つ以上を含む。特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、配列番号1〜21からなる群から選択される1つのアミノ酸配列若しくはそのBAP42オリゴマー結合断片を含む、又はそのようなアミノ酸配列若しくは断片からなる単一ドメイン抗体である。BAP42オリゴマー結合断片は、親分子の免疫特異性を保持する、又は親の免疫特異性を実質的に保持する、同定された抗体分子の短縮形態を指す。例えば、断片は、BAP42オリゴマーに対する優先的免疫特異的結合を保持することができるが、BAP42の繊維とは免疫特異的に結合しないだろう。この活性を保持する断片は、本明細書に記載する及び下の実施例1で詳細に述べるように、所与のアミノ酸配列の様々な長さの断片を生成し、BAP42繊維と比較してBAP42オリゴマーとの結合について試験することによって、選択することができる。
【0069】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、ヒト化されている。例えば、本発明のヒト化抗体分子は、超可変領域残基が、BAP42オリゴマー及び/又はモノマーへの優先的及び免疫特異的結合を有するウサギVLドメインからの超可変領域残基によって置換されている、ヒト可変ドメイン及び/又はそれらの断片を含むことがある。好ましい実施形態において、ヒト化抗体分子は、超可変領域のすべて又は実質的にすべてがウサギVLドメインのものに対応するヒトVLドメインの実質的にすべてを含み、FRのすべて又は実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。
【0070】
一部の実施形態において、本発明のヒト化抗体分子は、バリアントである。そのようなヒト化分子は、非ヒト、例えばウサギ、CDRの1つ又は2つ以上にアミノ酸残基置換、欠失又は付加を含む。ヒト化抗体分子のバリアントは、例えば1つ若しくは2つ以上のBAP42オリゴマー若しくはBAP42モノマーに関して、親ヒト化抗体分子と比較して実質的に同じ結合若しくは良好な結合を有することがあり、及び/又はBAP42フィブリルに関して、本発明の親ヒト化抗体分子と比較して実質的に同じ結合若しくは不良な結合を有することがある。一部の実施形態において、本発明のヒト化抗体分子は、当技術分野において公知の方法に基づいてヒトフレームワーク領域にグラフトされたウサギ単一ドメイン抗体からのVL CDR1ドメイン、VL CDR2ドメイン及びVL CDR3ドメインのうちの1つ若しくは2つ以上を含む。さらなる実施形態では、当技術分野において公知の方法に基づいてフレームワーク領域をさらに変化させて、親と比較して結合をさらに修飾すること、例えば、1つ若しくは2つ以上のBAP42オリゴマー若しくはBAP42モノマーに対する免疫特異的結合を増すこと、及び/又はBAP42フィブリルに対する結合を減少させることができる。
【0071】
ある特定の実施形態において、本発明は、配列番号1〜21のアミノ酸配列のヒト化バリアント又は誘導体であって、例えば配列番号1〜21のいずれかからの1つ又は2つ以上のCDRを含み、CDRがヒトフレームワーク領域にグラフトされている、ヒト化バリアント又は誘導体であり、親配列の少なくとも1つの活性を保持するヒト化バリアント又は誘導体を包含する。例えば、ヒト化バリアント又はその断片は、BAP42オリゴマー及び/又はモノマーに優先的に及び免疫特異的に結合することができる。この活性を保持するヒト化バリアント(及びそれらの断片)は、本明細書に記載する及び下の実施例1で詳細に述べるように、親配列の1つ又は2つ以上のVL CDRを保持して他の領域又はアミノ酸残基をヒト抗体ドメインの対応する領域又はアミノ酸残基で置換し、BAP42の繊維と比較してBAP42オリゴマー又はモノマーとの結合について試験することによって、選択することができる。
【0072】
ある特定の実施形態において、本発明は、親配列の少なくとも1つの活性を保持する、配列番号1〜21のアミノ酸配列のバリアント若しくは誘導体、又は同じ親の少なくとも1つの活性も保持する、前記バリアント若しくは誘導体の断片を包含する。例えば、バリアント又は断片は、BAP42オリゴマー及び/又はモノマーに優先的に及び免疫特異的に結合することができる。この活性を保持するバリアント(及びそれらの断片)は、本明細書に記載する及び下の実施例1で詳細に述べるように、所与のアミノ酸配列のバリアントを生成し、BAP42の繊維と比較してBAP42オリゴマー又はモノマーへの結合について試験することによって、選択することができる。
【0073】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体分子は、同じ長さの(すなわち、同数の残基からなる)第二のアミノ酸配列(該第二のアミノ酸配列は配列番号1〜21から選択される)と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれを超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、若しくはそのようなアミノ酸配列からなるバリアント、及び/又はその断片であり、バリアントは、それが由来した親配列の少なくとも1つの活性を示す(例えば、BAP42オリゴマー及び/又はモノマーに優先的に及び免疫特異的に結合する)。
【0074】
本発明の抗体分子のアミノ酸配列バリアントは、候補配列に関して本明細書に提供する開示に基づいて、当技術分野において公知の技術によって生成することができる。一部の実施形態において、バリアントは、置換、挿入及び/又は欠失バリアントでありうる。欠失バリアントには親アミノ酸配列の1つ又は2つ以上の残基がなく、これらの残基は、通常、機能(例えばBAP42オリゴマー結合)にとって不可欠なものでない。挿入変異体は、通常は、ポリペプチドの非末端位置における物質の付加を含む。
【0075】
置換バリアントは、通常は、アミノ酸配列内の1つ又は2つ以上の部位におけるあるアミノ酸と別のアミノ酸の交換を含むものであるが、タンパク質切断に対する安定性などの抗体分子の1つ又は2つ以上の特性を、好ましくは他の機能又は特性の喪失(又は実質的喪失)なく、モジュレートするために設計されることもある。この種の置換は、保存的であることが好ましく、すなわち、あるアミノ酸を同様の形状及び電荷の別のアミノ酸で置換する。保存的置換は、当技術分野において周知であり、例えば、アラニンのセリンへの、アルギニンのリシンへの、アスパラギンのグルタミン又はヒスチジンへの、アスパルテートのグルタメートへの、システインのセリンへの、グルタミンのアスパラギンへの、グルタメートのアスパルテートへの、グリシンのプロリンへの、ヒスチジンのアスパラギン又はグルタミンへの、イソロイシンのロイシン又はバリンへの、ロイシンのバリン又はイソロイシンへの、リシンのアルギニンへの、メチオニンのロイシン又はイソロイシンへの、フェニルアラニンのチロシン、ロイシン又はメチオニンへの、セリンのトレオニンへの、トレオニンのセリンへの、トリプトファンのチロシンへの、チロシンのトリプトファン又はフェニルアラニンへの、及びバリンのイソロイシン又はロイシンへの変化を含む。
【0076】
当業者は、例えば、単一アミノ酸変化を、好ましくは配列番号1〜21の中の非保存位置で、発生させて、どのアミノ酸残基が免疫特異的結合に重要であるのかを非常に詳細に特定することができる。好ましくは、アミノ酸の変異は、等価の、又はさらには改善された、次世代抗体分子を生じさせる。例えば、ある特定のアミノ酸で他のアミノ酸を、機能(例えば、BAP42オリゴマーへの優先的結合)の検出可能な又は実質的な喪失なく、置換することができる。そのような変化を加える際、アミノ酸のヒドロパシー指数を考慮することがある。免疫特異性を付与する際のヒドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている。アミノ酸の相対ヒドロパシー性は、結果として生ずるタンパク質の二次構造に寄与し、そしてまたこの二次構造が、そのタンパク質の他の分子との相互作用、例えば、フィブリルと比較してBAP42オリゴマー又はモノマーへの免疫特異的結合を規定すると理解されている。各アミノ酸には、それらの疎水性及び電荷特性に基づいてヒドロパシー指数が割り当てられている。例えば、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、トレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン 0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リシン(−3.9)、及びアルギニン(−4.5)。同様のアミノ酸の置換を親水性に基づいて有効に行うことができることも、当技術分野では理解されている。疎水性同様、親水性の値が各アミノ酸に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパルテート(+3.0+1)、グルタメート(+3.0+1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5+1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)及びトリプトファン(−3.4)。あるアミノ酸での別のアミノ酸の置換によって、それらのヒドロパシー指数及び/又はそれらの親水性指数が互いに+2、好ましくは1、又は最も好ましくは+5以内である場合、等価の分子を得ることができる。
【0077】
ある特定の実施形態において、本発明は、本明細書に開示するアミノ酸配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又は11以上のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失など)を含む抗体分子を包含する。好ましい実施形態では、免疫特異性が保持される又は実質的に保持されるように変異を起こさせる。
【0078】
3.血液脳関門を通過するペプチド
本発明の別の態様は、血液脳関門を通過するペプチド、特に、配列番号127のアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片であって、BBBを特異的に通過する断片に関する。ペプチドは、脳及びCNSへの送達のためにBBBを越えてカーゴ分子、例えば治療及び予防剤を移送するのを促進する、送達システムを提供する。特定の実施形態において、送達ペプチドは、長さ約10〜約30アミノ酸の断片、好ましくは約15〜約25アミノ酸、又は約10〜約20アミノ酸の断片を含む。
【0079】
本発明の送達ペプチドは、脳内皮細胞を含む内皮細胞層、例えば、哺乳動物のBBB、好ましくはヒトのBBBを通過する能力を示す。ある特定の実施形態において、送達ペプチドは、血液脳関門以外の内皮層などの他の細胞を含む内皮細胞層より高い度合いで、脳内皮細胞層を通過する。特定の実施形態において、送達ペプチドは、BBBを選択的に又は優先的に通過し、したがって、BBBの方が一般には通過困難であるにもかかわらず、他の内皮層を通過するより高い度合いでこのバリアを通過する。
【0080】
BBBへの選択的又は優先的送達を「BBB特異的送達」と呼び、そのような送達を果すペプチドを「BBB特異的送達ペプチド」又は「BBB特異的ペプチド」と呼ぶ。例えば、送達ペプチドは、脳内皮細胞を含まない内皮細胞層より高い度合いで、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、又は少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、又は少なくとも約80倍といった倍率で、BBBを通過することができる。一部の実施形態において、ペプチド分子は、BBB以外の内皮細胞層を通過しない、又は実質的に通過しない。
【0081】
血液脳関門の通過、又は血液脳関門を越える移行を、当技術分野において公知の又は本明細書に記載する技術によって測定してもよい。実施例2は、BBB通過を測定するための幾つかの例示的なアプローチを提供する。例えば、トランズウェルシステムの組織培養インサートで増殖する脳内皮細胞(BEC、例えばbEnd3細胞)からなるインビトロBBBモデルを使用することができる。BECをミクロ多孔質膜上で増殖させて、システムの上の区画(頂部)と下の区画(基底部)の間にインビトロで内皮バリアを形成することができる。単離して標識した送達ペプチド、又はファージディスプレイ技術によって提示された送達ペプチド、いずれかを頂端に導入し、様々な期間にわたってインキュベートすることができる。所与のインキュベーション期間の後、標識又はファージを基底部において検出し、これらの測定値と頂部の標識又はファージの量と比較することによって、ペプチドがモデルBBBを通過した程度を決定することになる。実施例2、パート(a)(
図17も参照されたい)も、実施例2、パート(c)(
図22A〜22Fも参照されたい)も、このアプローチのさらなる詳細を提供する。
【0082】
ある特定の実施形態において、送達ペプチドは、疎水性と親水性を兼ね備えており、正電荷に起因して負荷電膜と優先的に相互作用する。アミノ酸の疎水性及び親水性は、上に記載しており、所与のペプチドについてそのアミノ酸組成に基づいて算出することができる。様々な膜との相互作用をインビトロ及びインビボモデルで試験することができる。インビトロアッセイは、モデルBBBの細胞による取り込みを測定してペプチドの内在化能力を判定することを含む。例えば、実施例2、パート(c)は、このアプローチのさらなる詳細を提供する(
図23A〜23E及び表9も参照されたい)。
【0083】
インビトロアッセイは、表面に異なる量の負電荷を有する様々な膜、例えば、異なる脂質組成を有するように設計された膜モデルについての膜電位、分配係数、又はそのような膜に対する送達ペプチドの親和定数の測定も含む。例えば、実施例2、パート(e)は、このアプローチのさらなる詳細を提供する(
図26A〜26C、
図27及び表10も参照されたい)。真核細胞の大多数はそれらの膜の内部に負荷電脂質を有するが、BBBからの内皮細胞は、他の内皮からの細胞と比較して高い負電荷をもつ表面を有する。この負電荷は、その負荷電脂質にばかりでなく、より高いグリコシル化レベルにも起因する。負荷電BBBを模倣する膜モデルによって、本発明の送達ペプチドとのそれらの静電相互作用の分析が可能になる。好ましい実施形態において、送達ペプチドは、負電荷を多く含む膜、例えば、負荷電リン脂質を多く含む膜、例えば、リン脂質の少なくとも約50%が負に荷電している、リン脂質製のモデル膜、との相互作用しか示さない。より好ましい実施形態において、送達ペプチドは、リン脂質の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%が負に荷電している膜としか相互作用を示さない。負荷電脂質としては、限定ではないが、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルセリン(POPS,1-palmitoyl-2-oleoyl-phosphatidylserine)及び1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルグリセロール(POPG,1-palmitoyl-2-oleoyl-phosphatidylglycerol)が挙げられる。
【0084】
好ましい実施形態において、送達ペプチドは、モデルBBBを越える有効な移行を示す。例えば、本発明の送達ペプチドは、例えば標識された送達ペプチドの放射活性によって測定して、BBBモデルにおいて24時間以内のインキュベーションで少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%の移行又は移動を好ましくは示す。特に好ましい実施形態では、BBBの細胞と相互作用することなく、又はBBBの細胞と実質的に相互作用することなく、例えば、BBB細胞内に内在化されて蓄積することなく、又は実質的にBBB細胞内に内在化されて蓄積することなく、移行が起こる。したがって、非常に好ましい実施形態において、本発明の送達ペプチドは、脳内皮細胞内に少ししか捕捉されないばかりでなく、水性媒体への高い溶解度とBBBを越える効率的移行も兼ね備えている。
【0085】
本発明の送達ペプチドは、例えば、BBBの完全性を壊さないこと及び/又は内皮細胞に対する毒性を欠如していること、特に、脳内皮細胞に対する毒性を欠如していることを含む、BBBを越えてカーゴを送達する上での利点を提供する。
【0086】
好ましい実施形態において、本発明の送達ペプチドは内皮細胞に対する毒性を欠如しており、特に、脳内皮細胞に対する毒性を欠如している。毒性を当技術分野において公知の又は本明細書に記載する技術によって測定してもよい。例えば、MTTアッセイなどの比色アッセイを使用して、様々な濃度の送達ペプチドの存在下でBBB細胞の毒性をインビトロで測定して細胞代謝を評定することができる。実施例2、パート(d)は、このアプローチに関するさらなる詳細を提供する(
図24A〜24Eも参照されたい)。脳内皮細胞に対する毒性を欠如している送達ペプチドは、所与のインキュベーション期間にわたってある特定の濃度のペプチドとのインキュベーションによって、層内の細胞の生存率を低下させないものと定義することができる。例えば、血液脳関門の内皮細胞に対して毒性を欠如している送達ペプチドは、100μMのペプチドとの24時間のインキュベーション後に内皮細胞の生存率の、20%を超える減少を生じさせない、又は10%を超える低下を生じさせないペプチドと定義することができる。毒性の欠如を、他のパラメータ、例えば、
図24A〜24E及び附属の文章の中で提供するパラメータによって定義することもできる。
【0087】
好ましい実施形態において、送達ペプチドは、対象の脳に到達するのに及び/又はその後、脳から排除され、最終的に対象の身体から除去されるのに好適な生体内分布プロファイルを有する。生体内分布プロファイルを、当技術分野において公知の又は本明細書に記載する技術によって判定してもよい。例えば、送達ペプチドを1つ又は2つ以上の放射性同位元素で標識し、被験動物に注射してもよい。屠殺後、脳組織を含む、様々な器官/組織を除去し、計量し、放射活性について試験する。実施例2、パート(f)は、迅速な脳への取り込みを示す送達ペプチドを同定する、このアプローチに関するさらなる詳細を提供する(表11も参照されたい)。迅速な脳への取り込みを示す送達ペプチドは、ある特定の量のペプチドの注射後、ある特定の期間内に被験動物の脳に到達するものと定義することができる。例えば、104μgのペプチドをマウスに注射して約2分以内にそのマウスの脳に到達する送達ペプチドは、迅速な脳への取り込みの点から望ましい生体内分布を示すものとして同定されうる。迅速な脳への取り込みを、他のパラメータ、例えば、表11及び附属の文章の中で提供するパラメータによって定義することもできる。
【0088】
生体内分布は、いかに迅速に送達ペプチドがBBBを通過して脳に到達するのかのみならず、その後、いかに迅速に脳から排除されて排泄のために循環に戻るのかにも関係する。脳からの排除を「脳からの排出(brain washout)」と言うこともあり、その場合、望ましい送達ペプチドは、脳への迅速な透過、その後、迅速な脳からの排出を示すものである。脳からの排除を、当技術分野において公知の又は本明細書に記載する技術によって、例えば、放射標識した候補ペプチドの注射後に屠殺した動物の脳を放射活性について測定することによって、判定してもよい。実施例2、パート(f)は、迅速な脳からの排除を示す送達ペプチドを同定する、このアプローチに関するさらなる詳細を提供する(表11も参照されたい)。脳からの送達ペプチドの望ましい排除は、ある特定の量のペプチドの注射後、ある特定の期間内に被験動物の脳内に残存するペプチドのパーセンテージ、又は逆に、脳から排除されるパーセンテージによって定義することができる。例えば、好ましい実施形態において、マウスの脳に到達した送達ペプチドの少なくとも約90%は、104μgのペプチドをマウスに注射して60分以内にマウスの脳から排除されうる。迅速な排除を、他のパラメータ、例えば、表11及び附属の文章の中で提供するパラメータによって定義することもできる。
【0089】
生体内分布は、送達ペプチドが、排出器官に加えて他の器官内に蓄積するかどうかにも関係する。上記の及び/又は当技術分野において公知の、生体内分布プロファイルを生成する方法を用いて、この特徴についてさらにアッセイしてもよい。この場合もやはり、例えば実施例2、パート(f)、及び表11を参照されたい。
【0090】
従って、本発明の送達ペプチドは、疎水性と親水性を兼ね備えている配列番号127の断片であって、正荷電アミノ酸残基に起因して、BBBを模倣する負荷電膜としか又は実質的にそのような膜としか相互作用しない;好ましくは、BEC内に蓄積しない、若しくは実質的に蓄積しない、及び/又はBBB膜を破壊しない、若しくは実質的に破壊しない、及び/又はBEC生存率を低下させない、若しくは実質的に低下させない;より好ましくは、動物モデルにおいて迅速な脳への取り込み及び/又は迅速な脳からの排除を示す、断片を含む。本アプローチは、BBBを優先的に及び効率的に通過し、驚くべきことに、文献(Muruganandam, et al. (2002) FASEB J, 16(2): 240-241、及びAbulrob, et al. (2005) J Neurochem 95(4):1201-1214)に記載されている他の分子より優れた又はそのような他の分子に匹敵する脳への送達を果すBBB特異的送達ペプチドを提供する。例えば、他の放射標識ペプチド、例えば、TAT、ペネトラチン、synB1及びその他のものの脳への取り込み率は、組織1グラム当たりたった0.2〜0.9%IDの範囲である(Sarko, et al., Mol Pharm (2010) 7(6):2224-2231)。
【0091】
特定の実施形態において、本発明の送達ペプチドは、配列番号22〜25からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、若しくは配列番号22〜25のいずれか1つのBBB特異的断片を含む、又はそのようなアミノ酸配列若しくはそのような断片からなる。特定の実施形態において、送達ペプチドは、配列番号22〜25からなる群から選択される1つのアミノ酸配列、若しくはそのBBB特異的断片を含む、又はそのようなアミノ酸配列若しくはそのような断片からなる。BBB特異的断片は、親分子の能力を保持する、又はBBBを選択的に通過する親の能力を実質的に保持する、同定された送達ペプチドの短縮形態を指す。例えば、断片は、非脳内皮細胞層より高い度合いで、BBBを通過する能力を保持しうる。この活性を保持する断片は、本明細書に記載する及び下の実施例2で詳細に述べるように、所与のアミノ酸配列の様々な長さの断片を生成し、優先的なBBB通過について試験することによって、選択することができる。
【0092】
ある特定の実施形態において、本発明は、親配列の少なくとも1つの活性を保持する、配列番号22〜25のアミノ酸配列のバリアント若しくは誘導体、又は同じく親配列の少なくとも1つの活性を保持する、前記バリアント若しくは誘導体の断片を包含する。例えば、バリアント又はその断片は、BBBを優先的に通過しうる。この活性を保持するバリアント(及びそれらの断片)は、本明細書に記載する及び下の実施例2で詳細に述べるように、所与のアミノ酸配列のバリアントを生成し、優先的なBBB通過について試験することによって、選択することができる。
【0093】
ある特定の実施形態において、本発明の送達ペプチドは、同じ長さの(すなわち、同数の残基からなる)第二のアミノ酸配列(該第二のアミノ酸配列は配列番号22〜25から選択される)と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれを超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、若しくはそのようなアミノ酸配列からなるバリアント、及び/又はその断片であり、バリアントは、それが由来した親配列の少なくとも1つの活性を示す(例えば、他の内皮細胞層より高い度合いで、BBBを通過する)。
【0094】
本発明の送達ペプチドのアミノ酸配列バリアントは、候補配列に関して本明細書に提供する開示に基づいて、当技術分野において公知の技術によって生成することができる。一部の実施形態において、バリアントは、上記の保存的置換を含む、置換、挿入及び/又は欠失バリアントでありうる。そのような変化を加える際、アミノ酸のヒドロパシー指数を上記のように考慮することがあり、及び/又は同じく上記のように疎水性尺度を考慮することもある。例えば、送達ペプチドの疎水性スコアを変化させない、又はより強い全体的疎水性を有するバリアントを生じさせる、保存的置換を行うことによって、バリアントを生じさせてもよい。ある特定の実施形態において、本発明は、本明細書に開示するアミノ酸配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又は11以上のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失など)を含む送達ペプチドを包含する。好ましい実施形態では、親ペプチドのBBB特異的送達が保持される又は実質的に保持されるように、変異を起こさせる。
【0095】
理論によって拘束されるものではないが、送達ペプチド、例えば、配列番号24のペプチド(pepH3)は、受容体非依存的様式で脳内皮細胞膜を通過する。受容体に頼らない通過は、輸送が受容体の発現によっても飽和によっても制限されないので、さらに有利である。
【0096】
特定の実施形態において、送達ペプチドは、カーゴ分子と会合している。カーゴ分子と送達ペプチドの会合は、BBBなどの脳内皮細胞層を越えるカーゴ分子の移行を一般に増加させる。カーゴ分子は、例えば治療上の、予防上の若しくは診断上の使用のために、又は脳若しくはCNS内の構造とのカーゴ分子の相互作用の分析などの基礎研究を前進させるために、BBBを越える分子の輸送を増進することが望ましい場合、いかなる分子であってもよい。カーゴ分子は、例えば、核酸、ポリペプチド、抗体分子、多糖類、小分子化合物、ナノ粒子、合成ポリマー、ウイルス、プラスミド、金属、脂質、リポソーム、高分子、高分子複合体、毒素、又は標識を含みうる。
【0097】
適するカーゴ分子でありうる核酸の例は、当業者に公知のあらゆる核酸、例えば、DNA、RNA、一本鎖DNA、cDNA、又はこれらの誘導体を含み、誘導体には、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、一本鎖又は二本鎖標的に対するアンチセンス配列、リボソーム、及びアンチセンスRNAが含まれる。アナログは、荷電及び非荷電骨格アナログ、例えば、リン酸エステル、メチルリン酸エステル、アミド亜リン酸エステル、例えばN−3’又はN−5’、チオリン酸エステル、非荷電モルホリノ系ポリマー、及びタンパク質核酸(PNA,protein nucleic acid)を含む。核酸は、プラスミドも含みうる。プラスミドは、染色体DNAとは異なる染色体外遺伝物質であって、自律複製することができる、あらゆる染色体外遺伝物質を含みうる。例えば、プラスミドは、真核細胞において自律複製することができるDNA分子であって、所望のポリペプチド、例えば治療用タンパク質をコードするDNA分子を含みうる。
【0098】
適するカーゴ分子でありうるポリペプチドの例は、ある特定の酵素若しくはホルモンのような治療若しくは予防効果が分かっているタンパク質、又はEGFP若しくはルシフェリンのような標識として役立つことができるタンパク質を含む、当業者に公知のあらゆるポリペプチドを含む。治療用ポリペプチドとしては、限定ではないが、腫瘍抑制タンパク質、転写因子、キナーゼ阻害剤、キナーゼ、サイトカイン、調節タンパク質、アポトーシスタンパク質、抗アポトーシスタンパク質、微生物抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原又は細胞性抗原、並びにある特定の抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗増殖剤、免疫抑制剤、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、接着分子及び受容体分子を挙げることができる。ポリペプチドは、糖タンパク質も含む。
【0099】
送達ペプチドとともに使用するためのホルモンの例としては、限定ではないが、プロスタグランジン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、カリクレイン、及び胃腸ホルモン、放出ホルモン、下垂体ホルモン、インスリン、バソプレッシン(ADH)、グルカゴン、及びエンセファリンが挙げられる。送達ペプチドとともに使用するための接着分子の例としては、限定ではないが、IgSF CAM、例えばNCAM、ICAM−1、VCAM−1、PECAM−1、L1、CHL1、MAG、インテグリン又はセレクチン、並びに細胞接着過程で細胞又は細胞外マトリックス(ECM,extracellular matrix)に結合することが公知の他の分子が挙げられる。送達ペプチドとともに使用するための受容体分子の例としては、限定ではないが、代謝調節型受容体、Gタンパク質結合受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレナリン受容体、GABA受容体、アンジオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、コレシストキニン受容体、ドーパミン受容体、グルカゴン受容体、代謝調節型グルタミン酸受容体、ヒスタミン受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、ケモカイン受容体、カルシウム感知受容体、ソマトスタチン受容体、セロトニン受容体又はセクレチン受容体、及びリガンドと結合すること、例えばシグナルを伝達することが公知の、細胞膜上、細胞質中又は核内の、他のタンパク質が挙げられる。
【0100】
送達ペプチドとともに使用するための適するカーゴ分子でありうる抗体分子の例は、当業者に公知のあらゆる抗体、又は本明細書に記載のあらゆる抗体を含む。抗体分子は、哺乳動物免疫系の活性を阻害、低下又は遅延させる抗体分子を含む免疫抑制剤を含みうる。公知の免疫抑制剤としては、限定ではないが、抗IL−2受容体抗体、抗OKT3抗体、抗CD3抗体、及びTNF−アルファ結合抗体が挙げられる。
【0101】
適するカーゴ分子でありうる多糖類の例は、当業者に公知のあらゆる多糖類、又は本明細書に記載のあらゆる多糖類を含む。
【0102】
適するカーゴ分子でありうる小分子化合物の例は、あらゆる有機分子、例えば、治療活性を有する旧来の薬物分子、及びある特定の化学療法剤、ビタミン、鎮痛剤、抗炎症剤などを含む。小分子化合物は、ウイルス又は細菌種の増殖を阻害する化合物をそれぞれ含む、抗ウイルス剤及び抗菌剤も含みうる。小分子化合物は、真菌種の増殖を阻害する化合物を含む抗真菌剤も含みうる。
【0103】
送達ペプチドとともに使用するための抗真菌剤の例としては、限定ではないが、アンホテリシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ニスタチン、クロトリマゾール、フルコナゾール、シクロピロクス、エコナゾール、ナフチフィン、テルビナフィン、及びグリセオフルビンが挙げられる。送達ペプチドとともに使用するための抗ウイルス剤の例としては、限定ではないが、アシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、ホスカルネット、イドクスウリジン、ソリブジン、トリフルリジン(トリフルオロピリジン)、バラシクロビル、シドホビル、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、リバビリン、及びリマンタジン(rimantatine)が挙げられる。送達ペプチドとともに使用するための抗菌剤の例としては、限定ではないが、ベータラクタム系抗生物質若しくはキノロン系抗生物質、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、セファロスポリン、セフォタキシム、セフトリアキソン、リファンピン、ミノサイクリン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、マクロライド、キノロン、β−ラクトン、P−ラクタマーゼ阻害剤、サリチルアミド、バンコマイシン、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルフィソキサゾール、スルファジアジン、ペニシリン、例えば、ペニシリンG及びV、メチシリン、オキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン並びにピペラシリン、セファロスポリン、例えば、セファロチン、セファキソリン、セファレキシン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロル、セフロキシン(cefuroxine)、ロラカルベフ、セフォニシド、セフォテタン、セフォラニド、セフォタキシム、セフポドキシム、プロキセチル(cefpodoxime, proxetil)、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフタジジム及びセフェピム、アミノグリコシド、例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンなど、テトラサイクリン、例えば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン及びミノサイクリン、並びにマクロライド、例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン及びアジスロマイシン、又はこれらのアナログが挙げられる。
【0104】
小分子化合物は、細胞増殖を阻害又は制限する化合物を含む、抗増殖剤も含みうる。送達ペプチドとともに使用するための抗増殖剤の例としては、限定ではないが、メトトレキサート、アザチオプリン、フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、6−チオグアニン、シクロホスファミド、メクロレタミン塩酸塩、カルムスチン、シクロスポリン、タキソール、タクロリムス、ビンブラスチン、ダプソン、ネドクロミル、クロモリン(クロモグリク酸)、及びスルファサラジンが挙げられる。小分子化合物は、腫瘍を阻害、減少又は遅延させる化合物を含む、抗悪性腫瘍剤も含みうる。送達ペプチドとともに使用するための抗悪性腫瘍剤の例としては、限定ではないが、ペントスタチン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、メトトレキサート、ブレオマイシン、エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、5−フルオロウラシル、シタラビン、フルダラビン、マイトマイシン、シスプラチン、プロカルバジン、ダカルバジン、パクリタキセル、コルヒチン、及びビンカアルカロイドが挙げられる。
【0105】
送達ペプチドとともに使用するための適するカーゴ分子でありうるナノ粒子の例は、400nm未満の少なくとも1つの寸法又は当業者に公知の任意の他の適する形及びサイズを有するあらゆる小粒子、例えば、金粒子、量子ドット担持高分子ミセル、又はある特定のリポソームを含む。より好ましくは、ナノ粒子は、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20未満、約10nm未満又は3nm未満の少なくとも1つの直径を有する。
【0106】
送達ペプチドとともに使用するための適するカーゴ分子でありうる合成ポリマーの例は、当業者に公知のあらゆる人工ポリマー、又は本明細書に記載のあらゆる人工ポリマーを含む。
【0107】
送達ペプチドとともに使用するための適するカーゴ分子でありうるウイルスの例は、当業者に公知のあらゆるタイプのウイルス又はウイルス粒子、例えば、限定ではないが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、シンプレックスウイルス、レンチウイルス及びレトロウイルスを含む。ウイルスは、修飾されていてもよく、例えば、感染力を増加又は減少させるように変化させたウイルスであってもよい。ウイルス粒子は、ウイルスに由来する遺伝要素を含むウイルスベクターを含む。典型的に、ウイルスベクターの場合、ウイルス複製に必要なウイルスゲノムの一部が欠失されており、したがって、新たなビリオンの産生を可能ならしめるためにヘルパーウイルスを供給しなければならない。
【0108】
送達ペプチドとともに使用するための適するカーゴ分子でありうる金属の例は、当業者に公知のあらゆる金属、例えば、金、白金、ランタニド金属、アクチニド金属などはもちろん、放射性金属も含み、この場合のカーゴ分子は、検出及び/又は画像化を促進する。
【0109】
送達ペプチドとともに使用するための適するカーゴ分子でありうる毒素の例は、体組織との接触又は吸着時に細胞死を引き起こすことができるあらゆる分子を含む。例としては、限定ではないが、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、熱安定性及び熱不安定性大腸菌エンテロトキシン、コレラ毒素、志賀毒素、細胞致死性膨張性毒素、気管細胞毒素、ジフテリア毒素、クロストリジウム毒素、テトロドトキシン、バトラコトキシン、マウロトキシン、アジトキシン、カリブドトキシン、マルガトキシン、スロトキシン、シラトキシン、カルシセプチン、タイカトキシン、並びにカルシクルジンが挙げられる。
【0110】
送達ペプチドとともに使用するための適するカーゴ分子でありうる脂質の例には、脂肪酸(例えば、飽和の、不飽和の、4炭素超の鎖長の、プロスタノイド、ロイコトリエン、エコサノイドなど)、天然脂質(例えば、コレステロール及びそのエステル、トリグリセリド、ステロイド、スペルマセチ(パルミチン酸セチル)、蝋、脂肪アルコールなど)、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、エタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、血小板活性化因子、脂肪酸グリセロールエーテル、カルジオリピドなど)、及び複合脂質(例えば、スフィンゴ脂質、セラミド、糖脂質、ガングリオシド、スルホリピドなど)を限定ではないが含む、当業者に公知のあらゆる脂質が含まれる。
【0111】
ある特定の実施形態において、カーゴ分子は、BBBを通過することによって治療的及び/又は予防的恩恵をもたらす、治療又は予防剤である。特定の実施形態において、送達ペプチドは、本明細書に記載のカーゴ分子に結合されているばかりでなく、さらに、例えばCNS/脳内の特異的構造又は受容体にカーゴ分子を指向させるための、標的化剤にも結合されている。そのような結合は、本明細書に記載のいずれの結合であってもよく、好ましくは、ペプチド結合である。標的化剤の例は、限定ではないが、細胞受容体のリガンド(例えば、NGF、EGF及びその他)、及び受容体に対する抗体を含む。
【0112】
ある特定の実施形態において、カーゴは、送達ペプチドの位置及び同じくカーゴ分子と会合していることがある任意の分子の位置の画像化又は検出のために、標識を含む。本発明の文脈の中での「標識」は、巨視的又は微視的レベルでの分子及び/又は細胞プロセスの可視化を可能ならしめる、あらゆる画像診断剤又は造影剤を含む。標識の例としては、限定ではないが、
mTcグルコヘプトン酸;磁気共鳴画像法(MRI,magnetic resonance imaging)手順に使用される物質、例えば、ガドリニウムドープキレート剤、例えばGd−DTPA;発現したときに検出可能なタンパク質、例えば、ベータガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP,horse-radish peroxidase)、ルシフェラーゼ、又は細胞のマーキングに適している他の酵素をコードするマーカー遺伝子;重金属;ハロゲン;酵素;酵素基質;酵素補因子;酵素阻害剤;リガンド;及びハプテン;並びに蛍光部分構造、例えば蛍光体;蛍光消光部分構造、放射性部分構造、例えば放射性核種;放射線不透過性部分構造;常磁性部分構造;ナノ粒子;小胞;分子ビーコン;同位元素;マーカー、色素、放射線増感剤(例えば、放射線治療用のもの)、又は他の画像診断剤若しくは造影剤が挙げられる。
【0113】
例示的な蛍光標識としては、限定ではないが、蛍光色素、フルオレセイン、半導体量子ドット、ランタニド原子含有錯体、及び蛍光タンパク質が挙げられる。例示的な蛍光タンパク質としては、限定ではないが、天然に存在する緑色蛍光タンパク質と修飾された(すなわち変異体)緑色蛍光タンパク質の両方(Prasher et al., Gene 111:229-233 (1992)、PCT出願国際公開第95/07463号パンフレット(これらの参考文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている))、天然に存在する青色蛍光タンパク質と修飾された青色蛍光タンパク質の両方(Karatani et al., Photochem. Photobiol. 55(2):293-299 (1992)、Lee et al., Methods Enzymol. (Biolumin. Chemilumin.) 57:226-234 (1978)、Gast et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 80(1):14-21 (1978)(これらの参考文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている))、及びラン藻類及び真核性藻類に由来するタイプのフィコビリタンパク質(Apt et al., J. Mol. Biol. 238:79-96 (1995)、Glazer, Ann. Rev. Microbiol. 36:173-198 (1982)、Fairchild et al., J. Biol. Chem. 269:8686-8694 (1994)、Pilot et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6983-6987 (1984)、Lui et al., Plant Physiol. 103:293-294 (1993)、Houmard et al., J. Bacteriol. 170:5512-5521 (1988)(これらの参考文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている))が挙げられ、これらのうちの幾つかは、ProZyme社(San Leandro、Calif.)から市販されている。
【0114】
送達ペプチドを標識するための適するカーゴ分子でありうる同位元素の例は、あらゆる放射性同位元素を含む。放射性同位元素の例としては、限定ではないが、N
15、C
13、P
31、F
19、又はI
131が挙げられる。好ましい放射性同位元素としては、テクネチウム(例えば、
99mTc)及びガリウム(例えば、GaCl
3)が挙げられる。実施例2、パート(b)は、BBBモデルでのインビトロアッセイに使用するための本発明の送達ペプチドを標識するためのこれらの放射性同位元素の使用に関するさらなる詳細を提供し、実施例2、パート(f)は、マウスにおけるインビボ生体内分布研究での使用についての詳細を提供する。
【0115】
送達ペプチドを標識するための適するカーゴ分子でありうる色素の例は、分子用のあらゆる有色物質を含む。例示的な色素としては、限定ではないが、Cy2、Cy3、Cy5、Cy7、テキサスレッド、カルセイン、FITC、FluorX(商標)、Alexa 405、430、488、546、559、594、633、660、674、680、700、ローダミン色素、カスケードブルー、パシフィックブルー、5−FAM、Oregon Green(商標)500、Oregon Green(商標)488、RiboGreen(商標)、Magnesium Green(商標)、Calcium Green(商標)、564/570、Magnesium Orange(商標)、フィコエリトリン、Calcium Orange(商標)、ピロニンY、Cy3.5(商標)、Calcium Crimson(商標)、Alexa(商標)594、ナイルレッド、R−フィコシアニン、C−フィコシアニン、DiD DilC(5)、CyS(商標)、チアジカルボシアニン、及びCy5.5(商標)が挙げられる。例示的なランタニド原子としては、限定ではないが、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLvが挙げられる。これらのうち、Nd、Er及びTbは、画像化用途に一般に使用されているので、好ましい。
【0116】
送達ペプチドは、そのカーゴ分子と、共有結合性及び/又は非共有結合性相互作用によって、好ましくは、BBBを通過して送達するための安定したコンストラクト又は複合体を形成するように、会合していることがある。例えば、送達ペプチドとそのカーゴ分子は、静電相互作用、ファンデルワールス力、及び/又は水素結合によって非共有結合的に会合していることがある。好ましくは、会合は、共有結合性手段、例えば、送達ペプチド上の基とカーゴ分子上の基との化学結合の形成による。結合は、直接的であってもよく、又は例えばリンカーを使用して、間接的であってもよい。特定の実施形態において、リンカーは、ペプチドリンカーである。カーゴ分子を送達ペプチドのN末端若しくはC末端のどちらかに結合させてもよく、又はそのアミノ酸配列内の部位に結合させてもよい。
【0117】
カーゴ分子がポリペプチドを含む一部の実施形態では、カーゴ分子は、送達ペプチドに融合体として結合されていることもある。例えば、カーゴ分子及び送達ペプチドを単一の核酸(又はポリヌクレオチド)から単一の連続領域として発現することもある。これらの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、これらの核酸を含むベクター又は宿主細胞、並びにこれらの宿主細胞、ベクター及び/又はポリヌクレオチドを含む医薬組成物が、本発明によって企図される。
【0118】
本明細書に記載する送達システムを1つ又は2つ以上の他の送達アプローチと併用してもよい(例えば、Neuwelt et al. “Strategies to advance translational research into brain barriers” Lancet Neurol. 2008 (7):84-96、Pardridge, Pharmaceutical research (2007) 24:1733-1744、Pardridge, Drug Discov Today (2007) 12(1-2): 54-61、Pardridge, Nat Rev Drug Discov (2002) 1(2):131-139、Strazielle, et al. Mol Pharm (2013) 10(5):1473-1491、Abbott, et al. Neurobiol Dis. (2010) 37:13-25、Patel, et al., CNS Drugs (2009) 23(1): 35-58、Neuwelt, et al. Nature reviews Neuroscience (2011) 12:169-182、Interlandi, Scientific American (2013) 308:52-57、Niewoehner, et al. Neuron. (2014) 81:49-60、Yu, et al. Science translational medicine (2014) 6:261ra154、Sharma, et al. Journal of pharmaceutical sciences (2012) 101:2468-2478、Derossi, et al. The Journal of biological chemistry (1994) 269:10444-10450、Zou, et al. Curr Neuropharmacol (2013) 11(2): 197-208、及びGupta, et al. Advanced drug delivery reviews (2005) 57:637-651において論じられているアプローチを参照されたく、これらの参考文献の各々は、その全体が参照により組み込まれている)。
【0119】
特定の実施形態において、カーゴ分子は、アルツハイマー又は関連障害を治療するための、当技術分野において使用されている又は試験中の、活性薬剤を含む。例えば、カーゴ分子は、オリゴマー形成の阻害剤であるELN 0005;BAPのN末端B細胞エピトープに由来するBAP1−6ペプチドを提供するCAD 106(Novartis社);BAP1−6アミノ末端断片を提供するACC−001(Affitope AD02);及びISCO−MATRIXにコンジュゲートされたアミノ末端BAPを提供するV950のうちの1つ又は2つ以上であってもよい。CNS及び脳への送達を向上させるために、これらの活性薬剤のいずれかの1つ又は2つ以上を本発明の1つ又は2つ以上の送達ペプチドと、例えば融合体として、会合させてもよい。
【0120】
特定の実施形態において、カーゴ分子は、アルツハイマー又は関連障害を治療するための、当技術分野において使用されている又は試験中の、抗体を含む。好ましい実施形態において、カーゴ分子は、例えば、本明細書に記載の又は当技術分野において公知の、BAP又はその断片に免疫特異的に結合する抗体分子を含む。当技術分野における抗BAP抗体の例としては、BAPの可溶性形態とフィブリル形態の両方と結合するヒト化モノクローナル抗BAP抗体バピネオズマブ(Wyeth社及びElan社)(その全体が本明細書に組み込まれている、Bard et al. (2000) Nature Medicine 6: 916-919);プロトフィブリルを標的とするヒト化モノクローナル抗体であるBAN2401;BAP1−40及びBAP42に対するヒト化抗体であるクレネズマブ;BAP1−11に対するヒト化モノクローナル抗体であるガンテネルマブ;BAPのN末端に対するヒト化IgG
1モノクローナル抗体であるGSK933776;及び可溶性BAPに優先的に結合するBAP16−24に対するヒト化モノクローナル抗体であるソラネズマブ(Eli Lilly社)(その全体が本明細書に組み込まれている、Teich (2012) Biochem.J. 446: 165-177);並びにSumbria, et al. “Disaggregation of amyloid plaque in brain of Alzheimer's disease transgenic mice with daily subcutaneous administration of a tetravalent bispecific antibody that targets the transferrin receptor and the beta amyloid peptide” Molecular pharmaceutics (2013) 10: 3507-3513(その全体が本明細書に組み込まれている)に記載されている抗体が挙げられる。CNS及び脳への送達を向上させるために、これらの抗体のいずれかの1つ又は2つ以上を本発明の1つ又は2つ以上の送達ペプチドと、例えば融合体として、会合させてもよい。
【0121】
より好ましい実施形態において、カーゴ分子は、例えば本発明の送達ペプチドに融合している、本発明の抗体分子、例えば、下でより詳細に説明するものを含む。
【0122】
4.抗体−ペプチドコンストラクト
特定の実施形態では、本発明の抗体分子を本発明の送達ペプチドに結合させて抗体−ペプチドコンストラクトを形成する。一般に、抗体−ペプチドコンストラクトが示す、血液脳関門を通過する及び特異的に通過する能力は、ペプチドが結合していない抗体分子より高い。抗体分子の送達は、アルツハイマー又はその関連障害(脳内の凝集しやすいペプチドの蓄積に関連する状態を含む)に治療的及び/又は予防的恩恵をもたらすことができる。上で述べたように、送達ペプチドは、例えば、好ましい実施形態では、非毒性化合物に分解すること、及び/又はインビボで薬物間相互作用をもたらす可能性が低いことなどの、治療上及び予防上の使用にとっての利点を提供する。それらは、一般に、大きいタンパク質と比較して免疫反応を引き起こす確率も低く、したがって、担体分子としてもたらす免疫原性が低い。
【0123】
血液脳関門通過の増加は、本発明の抗体分子の、該抗体分子が脳内のBAP42オリゴマーのフィブリル化を減少、防止、緩徐化、遅延又は逆行させるように作用する、脳への送達を促進する。好ましい実施形態において、抗体−ペプチドコンストラクトは、BBB通過を、ペプチドが結合していない抗体分子と比較して少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約5.5倍、又は少なくとも約6倍といった倍率で増加させる。
【0124】
特定の好ましい実施形態において、抗体−ペプチドコンストラクトは、BBBを優先的に通過し、したがって、BBBの方が一般には通過困難であるにもかかわらず、他の内皮層を通過するより高い度合いでこのバリアを通過する。例えば、抗体−ペプチドコンストラクトは、脳内皮細胞を含まない内皮細胞層より高い度合いで、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、又は少なくとも約80倍といった倍率で、BBBを通過しうる。一部の実施形態において、抗体−ペプチドコンストラクトは、血液脳関門以外の内皮細胞層を通過しない、又は実質的に通過しない。
【0125】
特定の実施形態では、抗体分子を共有結合で、好ましくは融合体として、送達ペプチドに結合させる。抗体分子及び送達ペプチドを互いに対していかなる順序で配置してもよく、例えば、送達ペプチドを抗体分子のN末端の上流に融合させてもよく、又は送達ペプチドを抗体分子のC末端の下流に融合させてもよい。一部の実施形態では、抗体分子をリンカー、好ましくはペプチドリカーによって送達ペプチドに結合させる。例えば、リンカーを抗体分子のN末端の上流又は抗体分子のC末端の下流に結合させ、そのリンカーの遊離末端に送達ペプチドを結合させてもよい。
【0126】
一部の実施形態では、1以上の抗体分子を所与の送達ペプチドと結合させてもよく、それらの複数の抗体分子は、同じ抗体分子であってもよく、又は異なる抗体分子であってもよい。例えば、下でより詳細に論じるように、2つのVL抗体分子を結合させて二量体を得てもよく、その二量体自体を1つの送達ペプチドに、又は2つ若しくは3つ以上の送達ペプチドに結合させる。
【0127】
すなわち、一部の実施形態では、1以上の送達ペプチドを所与の抗体分子に結合させてもよく、それらの複数の送達ペプチドは、同じ送達ペプチドであってもよく、又は異なる送達ペプチドであってもよい。特定の実施形態では、2つ又は3つ又は4つの送達ペプチドを所与の抗体分子に、例えば、抗体分子のC末端若しくはN末端に連続して結合させるか、又は1つを抗体分子のC末端に及び2つを連続してN末端に結合させてもよく、又は2つを連続して抗体分子のC末端に及び1つをN末端に結合させてもよい。所与のコンストラクトに使用される複数の送達ペプチドは、各々が同じであってもよく、又は2つ若しくは3つ若しくは4つ以上の異なる送達ペプチドを使用してもよい。抗体分子1つ当たり1以上の送達ペプチドの使用は、結合力を増し、好ましくは、BBBを通過するコンストラクトの能力を増す。
【0128】
抗体−ペプチドコンストラクトは、上で論じたような、本発明の抗体分子の1つ若しくは2つ以上の好ましい特性、及び/又は同じく上で論じたような、本発明の送達ペプチドの1つ若しくは2つ以上の好ましい特性を兼ね備えていることが好ましい。
【0129】
さらに、抗体−ペプチドコンストラクトは、安定性、可溶性、及び/又は宿主細胞における高度な発現といった特性を示すことが好ましい。これらの特性を有するコンストラクトを得るために抗体分子、例えば単一ドメイン抗体分子に結合する、適する送達ペプチドは、被検単一ドメイン抗体を用いてクローニングし、それらの安定性、可溶性及び/発現の判定によって、選択することができる。実施例3、パート(a)〜(b)は、送達ペプチドの例示的な実施形態のテストクローニング、及び被検抗体−ペプチドコンストラクトの発現の測定についての詳細を提供する。例えば、適する条件下で所与の宿主細胞において所与の発現ベクターからよく発現することが公知の被検抗体と少なくとも同様の高さの発現を有するような被検コンストラクトを選択することができる。適する条件下で所与の宿主細胞において所与の発現ベクターから安定的に及び可溶性形態で発現することが公知の被検抗体と少なくとも同様の高さの安定性及び/又は少なくとも同様の高さの溶解度を有する被検コンストラクトを選択することもできる。例えば、高い発現レベルを示す対照pT7−sdAbと結果を比較する、実施例3、パート(b)を参照されたい。
【0130】
本発明の好ましい抗体−ペプチドコンストラクトは、一般に、BAP42のオリゴマー種の凝集に干渉して、脳内でのオリゴマーのフィブリル化を減少、逆行、防止、緩徐化又は遅延させる。好ましい実施形態において、コンストラクトは、送達ペプチドが結合されていない抗体分子と同程度に、又は実質的に同程度に、脳内でのオリゴマーのフィブリル化を減少、逆行、防止、緩徐化又は遅延させる。例えば、抗体−ペプチドコンストラクトは、候補抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトの非存在下でのフィブリル化と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、フィブリル化を妨げることができる。インビトロアッセイでフィブリル化が妨げられる程度は、本発明の所与の抗体−ペプチドコンストラクトによって脳内でのフィブリル化が妨げられる程度を示すことができる。実施例3、パート(c)は、BAP42凝集を妨げる本発明の例示的なコンストラクトの能力についての試験の詳細を提供する(
図29A〜29Bも参照されたい)。
【0131】
本発明の好ましい抗体−ペプチドコンストラクトは、対象の脳に到達するのに及び/又はその後、脳から排除され、最終的に対象の身体から除去されるのに好適な生体内分布プロファイルを一般に有する。生体内分布プロファイルを、当技術分野において公知の及び/又は本明細書に記載する技術によって判定してもよい。例えば、上で説明したように、抗体−ペプチドコンストラクトを1つ又は2つ以上の放射性同位元素で標識し、被験動物に注射し、その後、屠殺した動物の脳を放射活性について所与の時間間隔後に測定してもよい。実施例3、パート(e)は、迅速な脳への取り込み及び/又は迅速な脳からの排出を示す抗体−送達コンストラクトを同定する、このアプローチに関するさらなる詳細を提供する(表14〜16も参照されたい)。迅速な脳への取り込みを示す抗体−ペプチドコンストラクトは、ある特定の量のペプチドの注射後、ある特定の期間内に被験動物の脳に到達するものと定義することができる。例えば、約0.1mM〜約0.2mM抗体−ペプチドコンストラクトをマウスに注射して約2分以内にそのマウスの脳に到達する抗体−ペプチドコンストラクトは、迅速な脳への取り込みの点から望ましい生体内分布を示すものとして同定されうる。脳からの抗体−ペプチドコンストラクトの望ましい排除は、ある特定の量の抗体−ペプチドコンストラクトの注射後、ある特定の期間内に被験動物の脳内に残存するペプチドのパーセンテージ、又は逆に、脳から排除されるパーセンテージによって定義することができる。例えば、好ましい実施形態において、マウスの脳に到達した抗体−ペプチドコンストラクトの少なくとも約90%は、約0.1mM〜約0.2mM抗体−ペプチドコンストラクトをマウスに注射して60分以内にマウスの脳から排除されうる。(0.1mM〜約0.2mMは、約150μg〜約250μgの抗体又は抗体−ペプチドコンストラクトと等価である)。迅速な脳への取り込み及び迅速な脳からの排除を含む、望ましい生体内分布を、他のパラメータ、例えば、表14〜16及び附属の文章の中で提供するパラメータによって定義することもできる。
【0132】
好ましい実施形態において、コンストラクトは、送達ペプチドに結合していない対応する抗体分子と比較して驚くほど向上した生体内分布プロファイルを示す。例えば、未結合抗体分子と比較して、抗体−ペプチドコンストラクトは、脳への取り込みの少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、又は少なくとも約10倍増加を示すことができる。未結合抗体分子と比較して、抗体−ペプチドコンストラクトは、脳からの排出の増加を示すこともあり、又は脳への取り込みの向上より少ない程度に脳からの排出の減少を示すこともある。表14は、例えば、驚くべきことに、「#2」sdAbの送達ペプチド「pepH3」への結合が、2分以内に脳内のその存在を約3倍に増加させ、1時間後、脳からの排出における約2倍の遅延しか示さなかったことを示す。すなわち、約3倍の抗体が2分で脳に到達したが、1時間後に残存した(すなわち、洗い出されなかった)抗体は約2倍に過ぎなかった。さらにいっそう驚くべきことに、表16は、「#27in」sdAbの送達ペプチド「pepH3」への結合が、2分以内に脳内のその存在を約6倍に増加させ、1時間後に脳からの排出における約2倍の遅延しか示さなかったことを示す。すなわち、約6倍の抗体が2分で脳に到達したが、1時間後に残存した抗体は約2倍に過ぎなかった。
【0133】
本発明の好ましい抗体−ペプチドコンストラクトは、一般に、インビボで、例えば動物モデルにおいて、有効性を示す。アルツハイマー又は関連障害の適する動物モデルは、当技術分野において公知のもの又は本明細書に記載するものを含む。例えば、動物に抗体分子又はそれらのペプチドコンストラクトを注射し、その後、画像化して、動物の脳内のベータアミロイドプラークの存在及び程度を判定する場合に、5xFADトランスジェニックマウスを使用してもよい(Jawhar, et al. (2012) Neurobiology of Aging 33(1): 96.e29-196.e40)。実施例4は、本発明の例示的な抗体−ペプチドコンストラクトの投与後、チアジンレッドを使用して2光子顕微鏡法に従ってプラークを同定する、このアプローチに関するさらなる詳細を提供する。
【0134】
特定の実施形態において、本発明の抗体−ペプチドコンストラクトは、配列番号28〜111からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列、若しくは配列番号28〜111のいずれか1つの断片を含み、又はそのようなアミノ酸配列若しくはそのような断片からなり、断片は、親配列のBAP42オリゴマー免疫特異性及び/若しくはBBB特異性を保持する、又は親のBAP42オリゴマー免疫特異性及び/若しくはBBB特異性を実質的に保持するものである。特定の実施形態において、抗体−ペプチドコンストラクトは、配列番号28〜111からなる群から選択される1つのアミノ酸配列、若しくはそのBAP42オリゴマー免疫特異性、BBB特異的断片を含む、又はそのようなアミノ酸配列若しくはそのような断片からなる。これらの活性を保持する断片は、本明細書に記載するように、所与のアミノ酸配列の様々な長さの断片を生成し、BAP42オリゴマーへの優先結合及びBBBの優先的通過について試験することによって、選択することができる。
【0135】
ある特定の実施形態において、本発明は、親配列の少なくとも1つの活性を保持する、配列番号28〜111のアミノ酸配列のバリアント若しくは誘導体、又は同じく親の少なくとも1つの活性を保持する、前記バリアント若しくは誘導体の断片を包含する。例えば、バリアント又はその断片は、BBBを優先的に通過し、BAP42オリゴマー及び/又はモノマーに免疫特異的に及び優先的に結合することができる。これらの活性を保持するバリアント(及びそれらの断片)は、本明細書に記載するように、所与のアミノ酸配列のバリアントを生成し、BAP42オリゴマー及び/又はモノマーとの免疫特異的結合、並びに優先的BBB通過について試験することによって、選択することができる。
【0136】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体−ペプチドコンストラクトは、同じ長さの(すなわち、同数の残基からなる)第二のアミノ酸配列(該第二のアミノ酸配列は配列番号26〜109から選択される)と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれを超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、若しくはそのようなアミノ酸配列からなるバリアント、及び/又はその断片であり、バリアントは、それが由来した親配列の少なくとも1つの活性を示す(例えば、BAP42オリゴマーに優先的に及び免疫特異的に結合する、並びに/又は他の内皮細胞層より高い度合いでBBBを通過する)。
【0137】
本発明の抗体−ペプチドコンストラクトのアミノ酸配列バリアントは、候補配列に関して本明細書に提供する開示に基づいて、当技術分野において公知の技術によって生成することができる。一部の実施形態において、バリアントは、上記の保存的置換を含む、置換、挿入及び/又は欠失バリアントでありうる。そのような変化を加える際、アミノ酸のヒドロパシー指数を上記のように考慮することがあり、及び/又は同じく上記のように疎水性尺度を考慮することもある。
【0138】
ある特定の実施形態において、本発明は、本明細書に開示するアミノ酸配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又は11以上のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失など)を含む抗体−ペプチドコンストラクトを包含する。好ましい実施形態では、BAP42オリゴマー結合及びBBB特異的送達が保持される又は実質的に保持されるように、変異を起こさせる。
【0139】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体−ペプチドコンストラクトは、脱免疫化されている。すなわち、抗体−ペプチドコンストラクトを、その免疫原性を低下させるように修飾してもよく、例えば、その場合、少なくとも1つのT
Hエピトープを除去及び/又は減少させる。具体的には、送達ペプチドに融合している又はしていない抗体分子を修飾することができ、この場合の修飾は免疫原性を低下させる。一部の実施形態では、融合体の送達ペプチドを、別途、脱免疫化することもある。詳細には、本発明は、1つ又は2つ以上の送達ペプチドに融合している1つ又は2つ以上の抗体単一ドメインを含む抗体分子であって、ペプチド又はドメインのどちらか又は両方が、当技術分野において公知の及び/又は本明細書に記載する任意の方法によって抗体−ペプチドコンストラクトの免疫原性を低下させるように修飾されている、抗体分子を包含する。
【0140】
脱免疫化は、上で述べたように、当技術分野において公知の及び/又は本明細書に記載するいずれの方法によって果してもよい。したがって、一部の実施形態では、脱免疫化されている抗体分子、及び送達ペプチドとその融合体を提供する。この「脱免疫化」ポリペプチドは、T
Hエピトープ含有量を減少させるように変異されたものであり、免疫原性を低下させる1つ又は2つ以上の置換を含む。一般に、抗体−ペプチドコンストラクトは、1つ又は2つ以上のHLAクラスII受容体に結合するエピトープを減少又は除去するような1つ又は2つ以上のアミノ酸位置での置換を含む。
【0141】
置換は、例えば、抗体単一ドメインに、例えば軽鎖可変ドメインに起こることもあり、及び/又は融合された送達ペプチド内に起こることもある。一部の実施形態において、脱免疫化抗体分子は、少なくとも10個のT
Hエピトープ、少なくとも15個のT
Hエピトープ、少なくとも20個のT
Hエピトープ、少なくとも25個のT
Hエピトープ、少なくとも30個のT
Hエピトープ、少なくとも40個のT
Hエピトープ、又は少なくとも50個のT
Hエピトープを除去する置換を含む。好ましい実施形態において、置換は、脱免疫化前の抗体分子及び/又は送達ペプチドと比較して、抗体分子の免疫特異的結合に影響を与えず、若しくは少なくとも実質的に影響を与えず、及び/又は送達ペプチドのBBB特異性に影響を与えず、若しくは少なくとも実質的に影響を与えない。
【0142】
本発明の抗体−ペプチドコンストラクトは、アルツハイマー及び関連障害を治療又は防止するための方法及び医薬組成物に使用はもちろん、下でより詳細に論じるような、これらの障害を診断するための方法及びキットへの使用も見出す。
【0143】
5.医薬組成物及びそれらの作製方法
本発明の別の態様は、本発明の医薬組成物及び該医薬組成物の作製方法を含む。医薬組成物は、本発明の少なくとも1つの抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトを使用し、薬学的に許容される担体と混合することによって、製剤化することができる。抗体分子、送達ペプチド、及び抗体−ペプチドコンストラクトは、本発明の「活性薬剤」と考えられ、治療又は予防活性薬剤(「治療又は予防剤」とも呼ばれる)でありうる。医薬組成物を、CNS又は脳に対するそれらの作用から「神経医薬品」と呼ぶこともある。一部の実施形態において、医薬組成物は、それを必要とする対象への投与後の発現のために、薬学的に許容される担体と配合された、本発明の少なくとも1つの抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0144】
薬学的に許容される担体は、一般に、所期の投与方法、及び送達すべき活性薬剤に基づいて選択される。特定の実施形態において、用語「薬学的に許容される」は、動物での使用、さらに特にヒトでの使用が、連邦若しくは州政府の監督官庁によって承認されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認知されている薬局方に記載されているという意味である。この用語は、例えば本明細書の実施例において、活性薬剤とともに使用される製剤も指すことがある。
【0145】
用語「担体」は、薬剤を投与するために用いられる希釈剤、アジュバント(例えば、フロイント完全及び不完全アジュバント)、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような医薬担体は、水及び油などの滅菌液であることができ、油には、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む、石油、動物、植物又は合成起源のものが含まれる。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合の一般的な担体である。食塩溶液、並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、特に注射用溶液に、液体担体として用いることができる。適する医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール(propylene, glycol)、水、エタノールなどが挙げられる。薬学的に許容される担体、賦形剤及び安定剤のさらなる例としては、緩衝剤、例えば、リン酸、クエン酸及び他の有機酸;アスコルビン酸をはじめとする、酸化防止剤;低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン及びゼラチン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリシン;グルコース、マンノース又はデキストリンをはじめとする、単糖類、二糖類及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトール若しくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;並びに/又は当技術分野において公知の非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG,polyethylene glycol)及びPLURONICS(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、粉末、徐放性製剤などの形態をとることができる。
【0146】
ある特定の実施形態では、本発明の方法に従って使用するための医薬組成物であって、本発明の活性薬剤の治療及び/又は予防有効量を薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物を、当技術分野において公知の及び/又は本明細書に記載するいずれの技術によって作製してもよい。
【0147】
一部の実施形態において、医薬組成物は、非経口投与のための本発明の1つ若しくは2つ以上の抗体分子、1つ若しくは2つ以上の送達ペプチド及び/又は1つ若しくは2つ以上の抗体−ペプチドコンストラクトを含む。非経口投与は、例えば、静脈内、皮内、皮下、腹腔内及び筋肉内投与を含む。活性薬剤を送達するための他の投与経路としては、例えば、経口、吸入、経皮(局所)及び経粘膜投与はもちろん、鼻腔内及び髄腔内投与も挙げられる。
【0148】
非経口投与に使用される液剤又は懸濁剤は、次の成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩;等張性を調整するための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース、抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸。非経口製剤を、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0149】
注射剤用に適する医薬組成物としては、滅菌水溶液又は水性分散液、及び無菌注射用液剤又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。静脈内投与に適する担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL.(BASF社、Parsippany、N.J.)又はリン酸緩衝食塩水(PBS,phosphate buffered saline)が挙げられる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適する混合物を含有する、溶媒又は分散媒であることができる。例えば界面活性剤を使用して、適する流動度を維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって果すことができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に組み入れることによってもたらすことができる。
【0150】
無菌注射用液剤は、上に列挙した成分の1つ又は2つ以上とともに必要量の抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトを適切な溶媒に添合し、その後、滅菌濾過することによって、調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒を含有する滅菌ビヒクルを使用することによって調製される。無菌注射用液剤の調製のための無菌粉末の場合、真空乾燥又は凍結乾燥が使用されうる。
【0151】
一部の実施形態において、医薬組成物は、例えば画像化及び/又は診断のための標識と会合している、本発明の抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む。標識は、当技術分野において公知の又は本明細書に記載するいずれの標識であってもよい。好ましい実施形態において、標識は、投与後の患者の脳又はCSFの画像化を促進する。特定の標識は、限定ではないが、放射標識、例えば、テクネチウム又はガリウムのような放射性同位元素;蛍光標識;あるいはSPECT若しくはPET画像化又はCT若しくはMRIスキャンに適しているあらゆる標識を含む。好ましい実施形態において、使用される標識は、患者にとって有害でない。実施例2、パート(b)は、テクネチウム又はガリウムで本発明の薬剤を標識することに関する詳細を提供し、実施例5、パート(b)は、画像化における本発明の放射標識された薬剤の使用に関する詳細を提供する。
【0152】
本発明の組成物は、医薬組成物(すなわち、対象又は患者への投与に適している組成物)ばかりでなく、医薬組成物の製造に有用なバルク薬組成物(例えば、不純又は非滅菌組成物)も含む。バルク薬組成物は、例えば、本明細書に開示する活性薬剤又はそれらの薬剤の組合せの予防又は治療有効量と薬学的に許容される担体とを含む、単位剤形の調製において使用することができる。好ましい実施形態において、本発明の抗体分子、送達ペプチド、又は抗体−ペプチドコンストラクトは、実質的に精製されている(すなわち、その効果を制限する又は望ましくない副作用を生じさせる物質が実質的にない)。
【0153】
本発明は、開示する方法で使用することができるキットをさらに提供する。一実施形態において、キットは、例えば1つ又は2つ以上の容器内の、本発明の1つ又は2つ以上の薬剤を含む。別の実施形態において、キットは、1つ又は2つ以上の容器内の、アルツハイマー病又はその関連障害に有用な1つ又は2つ以上の他の予防又は治療剤をさらに含む。例えば、一部の実施形態において、本発明は、本発明の医薬組成物の活性薬剤の1つ又は2つ以上を充填した1つ又は2つ以上の容器を含む医薬品パック又はキットを提供する。医薬品若しくは生物学的製剤の製造、使用若しくは販売を監督する政府機関によって指示された形式での注意書きであって、ヒトへの投与のための製造、使用若しくは販売についての機関による承認を表す注意書き;及び/又は使用説明書を、場合によってはそのような容器に付随させることができる。
【0154】
一般に、本発明の医薬組成物の成分は、別々に、又は単位剤形にともに混合された状態で、例えば、活性薬剤の量を示すアンプル又は小袋などの密封容器内の乾燥粉末又は無水濃縮製剤として、供給される。組成物が経口投与されることになる場合、例えば投与のための1つ又は2つ以上の活性薬剤各々の単位用量を提供する、1つ又は2つ以上の錠剤又はカプセルで、組成物を提供することができる。あるいは、組成物が経口投与される場合、水又は他の飲料に添加して飲用の液剤を調製するための粉末として、組成物を提供してもよい。組成物が吸入によって投与されることになる場合、医薬品グレードの滅菌水又は食塩水が入っている吸入ボトルで組成物を投薬することができる。組成物が注射によって投与される場合、投与前に活性薬剤と他の成分を混合することができるように無菌注射用水又は食塩水のアンプルを提供することができる。
【0155】
本発明の抗体分子若しくは抗体−ペプチドコンストラクト、又は本発明の送達ペプチドとアルツハイマー若しくは関連障害を治療するために当技術分野において使用される異なる活性薬剤を含むコンストラクトを含む医薬組成物で、本抗体分子又はコンストラクトを唯一の活性成分として提供してもよい。あるいは、抗体分子、抗体−ペプチドコンストラクト、又は本発明の送達ペプチドとアルツハイマー若しくは関連障害を治療するために当技術分野において使用される抗体を含むコンストラクトを、アルツハイマー病又は関連障害に使用するための1つ又は2つ以上の他の治療若しくは予防剤又は治療若しくは予防アプローチとの組合せで提供してもよい。例えば、本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物は、アメリカ食品医薬品局(FDA,Food and Drug Administration)によってアルツハイマーの治療に承認されている5つの薬物、すなわち、非競合的NMDA受容体アンタゴニスト、メマンチン、並びにコリンエステラーゼ阻害剤、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン及びタクリンのうちの1つ又は2つ以上をさらに含むこともある。
【0156】
本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物を、アルツハイマーを治療するための以下のアプローチの1つ又は2つ以上と併用してもよい:タウベースの治療(例えば、タウリン酸化阻害、微小管安定化、タウオリゴマー化の阻止、タウ分解の増進、及びタウベースの免疫治療);他のアミロイドベースの戦略(例えば、セクレターゼ酵素調節、アミロイド輸送、アミロイド凝集防止、及びアミロイド排除促進);細胞内シグナル伝達カスケードのモジュレーション;酸化ストレス低減(例えば、外因性抗酸化物質補充及び内因性防御増強);ミトコンドリア標的治療;細胞カルシウム恒常性のモジュレーション、及び抗炎症治療、並びに性腺刺激ホルモン補充、脂質修飾因子、例えばスタチン、成長因子補充、金属キレート化、エピジェネティック修飾因子、カスパーゼ阻害剤、一酸化窒素合成酵素調節、核酸薬、及び複数標的指向性リガンド。
【0157】
本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物は、アルツハイマー又は関連障害を治療するための1つ又は2つ以上の活性薬剤をさらに含むこともある。例えば、本発明の医薬組成物を、オリゴマー形成の阻害剤である、ELN 0005;バクテリオファージQβコートタンパク質の180コピーを含有する担体にそれ自体がカップリングしている、BAPのN末端B細胞エピトープに由来するBAP1−6ペプチドの複数のコピーを提供するワクチンである、CAD 106(Novartis社);BAP1−6アミノ末端断片を提供する別のワクチンである、ACC−001(Affitope AD02);及びISCO−MATRIXにコンジュゲートされたアミノ末端BAPを含むV950のうちの1つ又は2つ以上と併用してもよい。例えば、本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物にこれらの活性薬剤のいずれかの1つ又は2つ以上を兼備させてもよい。さらに、CNS及び脳への送達を向上させるためにこれらの活性薬剤のいずれかの1つ又は2つ以上を本発明の1つ又は2つ以上の送達ペプチドと例えば融合体として会合させ、本発明の医薬組成物に備えさせてもよい。
【0158】
本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物は、アルツハイマー又は関連障害を治療するための1つ又は2つ以上の他の抗体をさらに含むことがある。例えば、本発明の医薬組成物を、Ohshima-Hosoyama, S., et al., PLoS One (2012) 7(6):e39036、及びCouch, et al., Sci Transl Med (2013) 5(183): 183ra57, 1-12に開示されている抗体の1つ又は2つ以上と併用してもよい。本発明の抗体分子を、例えば抗炎症性T細胞反応を回避するために、1つ又は2つ以上の他の抗BAP抗体の受動免疫と併用してもよい。他の抗BAP抗体の例としては、BAPの可溶性形態とフィブリル形態の両方と結合するヒト化モノクローナル抗BAP抗体バピネオズマブ(Wyeth社及びElan社);プロトフィブリルを標的とするヒト化モノクローナル抗体であるBAN2401;BAP1−40及びBAP42に対するヒト化抗体であるクレネズマブ;BAP1−11に対するヒト化モノクローナル抗体であるガンテネルマブ;BAPのN末端に対するヒト化IgG
1モノクローナル抗体であるGSK933776;並びに可溶性BAPに優先的に結合するBAP16−24に対するヒト化モノクローナル抗体であるソラネズマブ(Eli Lilly社)(しかし、ソラネズマブそれだけでは、有意な機能向上も脳へのアミロイド蓄積の変化も実証することができなかった(参照により組み込まれている、Williams (2013) Pharmacology 85: 289-305))が挙げられる。例えば、これらの他の抗BAP抗体のいずれか1つ又は2つ以上を、本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物に兼備させてもよい。さらに、CNS及び脳への送達を向上させるためにこれらの抗BAP抗体のいずれかの1つ又は2つ以上を本発明の1つ又は2つ以上の送達ペプチドと例えば融合体として会合させ、本発明の医薬組成物に備えさせてもよい。
【0159】
本発明の医薬組成物は、下でより詳細に説明するように、アルツハイマー病又は関連障害に対する治療及び/又は予防戦略への使用を見出す。
【0160】
6.治療上の及び予防上の使用
本発明の別の態様は、神経疾患若しくは障害の、遅延、緩徐化、防止、治療、好転、発生率低下、及び/若しくは管理、並びに/又は神経疾患若しくは障害に関連する1つ若しくは2つ以上の症状の改善のための戦略であって、それを必要とする対象に本発明による医薬組成物を投与することを含む戦略に関する。それを必要とする対象は、疾患若しくは障害に罹患している対象、又はその素因がある対象、例えば、疾患若しくは障害を発症若しくは再発するリスクがある対象を含む。
【0161】
神経障害には、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むがこれらに限定されない、神経変性疾患が含まれる。神経障害には、脳内の他の凝集しやすいオリゴマーペプチドの蓄積に関連する状態も含まれる。
【0162】
病理組織学的レベルでは、アルツハイマーは、逐次的に相互作用する病理学的カスケードが炎症及び酸化ストレスなどの下流のプロセスと組み合わさった(これらのすべてが、シナプス完全性、有効な神経回路網の結合性の喪失、及び進行性の局所的神経変性の一因となる)複雑な進行性状態である。アルツハイマーの2つの主な神経病理学的特徴は、細胞外ベータアミロイドプラーク、及びタウ(τ)タンパク質過剰リン酸化に由来する細胞内神経原線維変化である。アルツハイマー脳は、老人斑でのベータアミロイドタンパク質の沈着を示す。このタンパク質は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の分解によって産生され、APPは、細胞分化において重要な発生学的機能を果し、酵素ベータセクレターゼ及びガンマセクレターゼによるシナプスの確立において重要な発生学的機能を果す可能性がある。
【0163】
アルツハイマーの発症過程でのベータアミロイド蓄積に加えて、タウタンパク質は、神経原線維変化でも蓄積する。このタンパク質は、細胞体から軸索末端及び後方に栄養素、小胞、ミトコンドリア及び染色体を輸送する内部支持構造である微小管の不可欠成分である。アルツハイマーでは、タウタンパク質が過剰リン酸化される。このリン酸化に起因して、タンパク質が互いに結合してもつれた糸を形成し、このもつれた糸は輸送の乱れをもたらし、最終的にはニューロン死の一因となる。
【0164】
タウ及びベータアミロイドは、内側側頭葉(海馬及び海馬傍回)の嗅内皮質及び海馬の小領域の神経連絡を必要とするエピソード記憶の形成をもたらすと考えられる。見ること、聞くこと及び感じることによって獲得される膨大な量の情報は、新皮質で処理され、ほぼすべての新皮質野から投射によって嗅内野に収束される。タウ及びベータアミロイドの異常、例えば上で説明したような異常は、これらのプロセスに干渉し、その結果、アルツハイマーの臨床症状に至ると考えられる。
【0165】
本発明は、それを必要とする対象におけるアルツハイマー若しくは関連障害の遅延、緩徐化、防止、発生率低下、治療、好転及び/若しくは管理、又はアルツハイマー若しくは関連障害の1つ若しくは2つ以上の症状の改善のための方法を提供する。方法は、一般に、本発明の医薬組成物、例えば、本発明の抗体分子若しくは抗体−ペプチドコンストラクトを含む組成物又は本発明の送達ペプチドと別の活性薬剤を含むコンストラクトを含む組成物の治療又は予防有効量の前記対象への投与を含む。特定の実施形態において、本発明は、アルツハイマー又は関連障害のリスクがある対象における該疾患それ自体の進行の緩徐化又は遅延はもちろん、該疾患の発症の防止又は遅延ももたらす。
【0166】
本発明の医薬組成物は、アルツハイマー及び/又は関連障害に関する治療的及び/又は予防的恩恵をもたらす。関連障害は、CNSに関連する他の状態、例えば、オリゴマー形態又はより高次の形態のBAP、特にBAP42の蓄積を伴う他の神経学的状態はもちろん、他の認知症も含む。関連障害は、同じく本発明の抗体分子が標的としうる別の凝集しやすいオリゴマー、すなわち、他の神経変性疾患又はプリオン障害を特徴付ける他の凝集しやすいペプチドが関与する状態も含む。他の凝集しやすいペプチドの例としては、例えば、次の組換え疾患タンパク質に由来する可溶性オリゴマーが挙げられる:α−シヌクレイン(パーキンソン病に関与する)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP,islet amyloid polypeptide;II型糖尿病に関与する)、伸長したポリグルタミンストレッチを伴うハンチントン(ハンチントン病に関与する)、及びプリオンタンパク質(PrP,the prion protein;伝達性及び遺伝性海綿状脳症に関与する)。
【0167】
理論によって拘束されることを望むものではないが、これらの異なる凝集しやすいオリゴマーは、全く異なる配列の可溶性ペプチドが折り重なって、1つ又は2つ以上の共有立体構造エピトープを含有するベータシートを多く含む構造になることができるような、多少共通の構造的特徴を有しうる。したがって、異なる病原性タンパク質によって産生されるコンストラクトには類似の細胞毒性メカニズムを開始させる可能性があり、さらに、治療的及び/又は予防的介入のために本発明の抗体分子を使用してコンストラクトをそれらの共通の構造によって標的化することができるだろうということになる。
【0168】
アルツハイマー及びそれに関連する一部の疾患の症状は、例えば、記憶喪失、見当識障害、認知症、認知障害、軽度認知障害、並びに言語、判断、及び問題解決に関する問題を含む。これらの問題は、一般に、日常業務の遂行不能につながり、そして最終的には認知症に至る。最も一般的な初期症状は、最近の出来事を思い出すことが難しいこと(短期記憶喪失)であり、続いて、会話の問題、忘れやすくなる問題、気分変動の問題、意欲低下の問題、及びセルフケアの管理ができない問題が起こることが多い。アルツハイマーは、次の4つの病期に分けられる:記憶喪失に対する加齢の影響に似ている、前認知症;物忘れの増加及び不慣れな状況での混乱を伴う、早期;最近知った情報を思い出すことが難しいこと、及び自立性の喪失を伴う、中期;並びに介護者への完全依存、失語症の可能性、及び寝たきりになることを特徴とする後期。徐々に、身体機能さえも喪失し、最終的には死に至る。
【0169】
好ましい実施形態において、本発明の抗体分子若しくは抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物、又は本発明の送達ペプチドと異なる活性薬剤を含むコンストラクトを含む医薬組成物は、アルツハイマーの早期、より好ましくは前認知症の間に投与されるか、又は前認知症の徴候をまだ示していない、アルツハイマーの素因がある患者に投与される。アルツハイマーの素因がある又はリスクがある対象は、この疾患のバイオマーカー、例えば、当技術分野において公知の及び/又は本明細書において開示するバイオマーカーによって同定することができる。アルツハイマーの素因がある又はリスクがある対象は、家族歴によって又は家族歴とバイオマーカー情報の組合せによって同定することができる。理論によって拘束されることを望むものではないが、早期若しくは前認知症期での、又はさらにはこれらの病期の前の介入によって、老人斑の形成を、それらが集積する前に、又はそれらが有意な量に集積する前に防止して、正常な脳の構造及び機能を保つことができる。
【0170】
本発明の医薬組成物は、一般に、所望の治療的及び/又は予防的恩恵を得るのに有効な時間にわたって、そのような恩恵を得るのに有効な量で投与されることになる。好ましい実施形態において、処方される及び/又は投与される有効量は、慢性使用でも実質的な毒性をもたらさない。細胞培養アッセイ及び動物研究から得たデータを、ヒトにおいて使用するための本発明の活性薬剤の投薬範囲及び/又は投薬スケジュールの策定に使用することができる。治療及び/又は予防有効用量をもたらすための本発明の活性薬剤の量は、本明細書において提示する開示に鑑みて、臨床的手法によって決定することができる。例えば、本発明の例示的な抗体分子及び抗体−ペプチドコンストラクトの適切な投薬量及び投与経路に関する情報を提供する、CD1マウスでの生体内分布研究(例えば、実施例3、パート(e)を参照されたい)及び5xFADマウスでの有効性研究(実施例4を参照されたい)から、有効用量を推定してもよい。そのような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。
【0171】
投薬量及び頻度は、投与される特定の治療又は予防剤、疾患の重症度及びタイプ、投与経路、並びに患者の年齢、体重、応答及び過去の病歴に依存する、各患者に特異的な因子によって変わることがあり、一部の実施形態では、施術者の判断及び各患者の事情によって決定される。当業者は、そのような因子を考慮することによって、並びに例えば文献に報告されている及びPhysician 's Desk Reference (56
th ed., 2002)において推奨されている投薬量に従うことによって、適する用量及び投与計画を選択することができる。治療又は予防剤を反復投与することができる。その手順の幾つかの態様、例えば、治療又は予防剤を投与するための経時的投与計画、及びそのような薬剤を別々に投与するのか、又は他の薬剤と併用で投与するのかは、変わることがある。
【0172】
予防及び/又は治療剤、並びにそれらの組合せを、ヒトにおいて使用する前に適する動物モデル系で試験することができる。そのような動物モデル系としては、マウス、ラット、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが挙げられるが、これらに限定されない。当技術分野において周知のいずれの動物系を使用してもよい。そのようなモデル系、例えば5xFADマウスモデルは、広く使用されており、当業者に周知である。一部の好ましい実施形態では、ラット、マウス又は他の小さい哺乳動物に基づく、アルツハイマー又は関連障害のための動物モデル系を使用する。例えば、特定の実施形態では、BBB特異的、BAP42オリゴマー免疫特異性抗体−ペプチドコンストラクトの推定される予防用及び/治療用組成物を5xFADマウスモデルで試験する。
【0173】
本発明の予防及び/又は治療剤を動物モデルで試験したら、それらを臨床試験で試験して有効性を確証することができる。確証する臨床試験は、当業者に公知の一般的方法論、並びに最適な投薬量及び投与経路に従って行われることになり、本発明の薬剤の毒性プロファイルを確証することができる。例えば、配列番号1〜21から選択されるアミノ酸配列の1つ又は2つ以上のCDRを含むヒト化抗体−ペプチドコンストラクトを含む医薬組成物を、アルツハイマー病を有するヒト患者において有効性及び毒性について試験するように臨床試験を設計することができる。一部の実施形態では、ヒト化抗体−ペプチドコンストラクトを約0.1ng〜約1gの用量で投与して、アルツハイマーを治療する。この約0.1ng〜約1gの用量を単一用量として投与してもよく、又は治療過程にわたって複数の用量として投与してもよい。
【0174】
本発明の予防及び/又は治療剤の毒性及び有効性は、細胞培養物又は実験動物で、例えばLD
50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED
50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、標準的な薬学的手順によって、判定することができる。毒性効果対治療効果の用量比が治療指数であり、例えば比率LD
50/ED
50として表される。大きい治療指数を示す予防及び/又は治療剤が好ましい。さらに、本発明の薬剤の特異性、例えば、BAP42オリゴマーへの免疫特異的結合及びBBBを越える優先的移行を示す好ましい実施形態における特異性は、十分に毒性範囲外の有効性の達成を促進する。
【0175】
さらに、当業者は、アルツハイマー又は関連障害の関連でのBAP42オリゴマー免疫特異的及びBBB特異的薬剤の様々な特性に関する本開示を考慮して、有効用量及び投与計画を選択することができる。例えば、好ましい実施形態では、上で論じたように、本発明の抗体分子、又はコンストラクトの抗体分子成分は、BAP42フィブリルと比較してBAP42オリゴマー及び/又はモノマーに対する高い免疫特異性をもたらす。好ましい実施形態では、上で論じたように、本発明の抗体分子、又はコンストラクトの抗体分子成分は、小さく、一価であり、及び/又は安定している。好ましい実施形態では、上で論じたように、本発明の送達ペプチド、又はコンストラクトの送達ペプチド成分は、優先的なBBB移行、脳内皮細胞に対する低い毒性、迅速な脳への取り込み、及び/又は迅速な脳からの排除をもたらす。好ましい実施形態では、上で論じたように、本発明の抗体−ペプチドコンストラクトは、上記特性を兼ね備えており、より好ましくは、安定した及び/又は可溶性形態での高度な発現をさらに示す。
【0176】
本発明の活性薬剤を単独で投与してもよく、あるいは本発明の異なる活性薬剤又はさらに他の予防及び/若しくは治療剤と併用で投与してもよい。各予防又は治療剤を、同じ若しくは別の製剤で同時に投与してもよく、又は別個の製剤で、任意の順序で異なる時点で逐次的に投与してもよいが、同時に投与しない場合、あらゆる相乗効果を含む所望の治療又は予防効果をもたらすのに十分な時間的な近さでそれらを投与すべきである。各治療/予防剤を別々に、任意の適切な形態で、及び任意の適する経路によって投与することができる。
【0177】
様々な実施形態では、異なる予防及び/又は治療剤を、1時間以上離さずに、約1時間離して、約1〜約2時間離して、約2時間〜約3時間離して、約3時間〜約4時間離して、約4時間〜約5時間離して、約5時間〜約6時間離して、約6時間〜約7時間離して、約7時間〜約8時間離して、約8時間〜約9時間離して、約9時間〜約10時間離して、約10時間〜約11時間離して、約11時間〜約12時間離して、24時間より長くは離さずに、又は48時間より長くは離さずに投与する。
【0178】
本発明の活性薬剤の治療又は予防有効量での対象の治療は、単回投与を含むことができ、又は治療過程にわたっての一連の投与を含むことができる。例えば、BAP42オリゴマーに特異的な本発明の抗体分子を含む医薬組成物を1日1回、1日2回、又は1日3回投与してもよい。一部の実施形態では、活性薬剤を1日1回、1日おきに、週1回、週2回、2週間に1回、月1回、1ヶ月おきに、6週間に1回、年2回、又は1年に1回投与してもよい。好ましい実施形態では、週1回用量を用い、より好ましくは、疾患の経過にわたって継続する。ある特定の活性薬剤の有効投薬量が、治療の過程で、例えば治療の過程での対象の改善に依存して、増加又は減少することがあることも理解されるであろう。
【0179】
一部の実施形態では、継続的治療が、例えば、長期的に、例えば、アルツハイマーのような慢性疾患の継続的治療及び/又は管理の際に、指示される。例えば、特定の実施形態では、本発明の活性薬剤をある期間にわたって、例えば、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年間、又はそれを必要とする対象の残りの生涯にわたって投与する。
【0180】
様々な送達システムが公知であり、それらを使用して本発明の活性薬剤を投与することができる。本発明の活性薬剤を投与する方法としては、非経口投与(例えば、注入又はボーラス注射を含む、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下投与)、硬膜外投与、経口投与(例えば、カプセル、錠剤、又は摂取用液剤での投与)、髄腔内投与、及び上皮又は皮膚粘膜若しくは粘膜内層(例えば、鼻腔内、口腔粘膜、直腸、及び腸粘膜など)経由の吸収による投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
鼻腔内又は吸入による投与のための本発明の活性薬剤は、乾燥粉末吸入器の形態で又はエアロゾルスプレーの体裁で送達することができる。エアロゾルは、加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザーから、好ましくは、適する噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A(商標))若しくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA(商標))、二酸化炭素又は他の適するガスを使用して、送達することができる。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するための弁を設けることによって投薬量単位を判定することができる。加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザーは、活性薬剤の溶液又は懸濁液であって、例えば、溶媒としてエタノールと噴射剤の混合物を使用し、滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンをさらに含有することもある、溶液又は懸濁液を収容することができる。吸入器又は注入器で使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチン製のもの)を、例えば、抗体分子とラクトース又はデンプンなどの適する粉末基剤との粉末混合物を含有するように処方することもできる。
【0182】
別の特定の実施形態では、本発明の活性薬剤を髄腔内(IT,intrathecal)注射、すなわち、脳脊髄液(CSF,cerebrospinal fluid)へのタンパク質の投与によって送達することができる。CSFが脳及び髄膜への優れた到達をもたらすことから、髄腔内注射は他の標準的投与経路より有利である。CSFは、脳を覆っており、表面より6mm下までの皮質ニューロンとの大きな表面積の接触を提供し、それによって、本発明の抗体分子若しくは抗体−ペプチドコンストラクト、又は本発明の送達ペプチドと異なる活性薬剤を含むコンストラクトの、脳組織へのより十分な透過が可能になる。
【0183】
別の特定の実施形態では、本発明の活性薬剤を徐放性製剤で送達することができ、例えば、この場合、製剤は、投与された薬剤の持続放出及びしたがって半減期延長をもたらす。一般的な貯留デバイスとしては、例えば、膜、カプセル、フィルムコートカプセル、マイクロカプセル、リポソーム及び中空繊維が挙げられる。モノリシック(マトリックス)デバイスは、医薬組成物を律速マトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)に分散又は溶解させる、第二のタイプの拡散制御システムである。本発明の活性薬剤を律速マトリックス全体にわたって均一に分散させることができるので、該マトリックス経由の拡散によって放出速度が制御される。モノリシックマトリックスデバイスでの使用に適するポリマーは、天然に存在するポリマー、合成ポリマー、及び合成的に修飾された天然ポリマーはもちろん、ポリマー誘導体も含む。
【0184】
7.診断上の使用
本発明の抗体分子若しくは抗体−ペプチドコンストラクト、又は本発明の送達ペプチドと異なる活性薬剤を含むコンストラクトは、アルツハイマー及び関連障害のバイオマーカー、好ましくは、診断応用に有用な抗原認識パターンを提供するバイオマーカーを同定することができる。特定の実施形態において、本明細書において開示する抗体分子及び抗体−ペプチドコンストラクトは、脳内のBAP42又は他の凝集しやすいペプチドの異常を伴う脳/神経疾患の診断のための組成物、キット及び方法を提供する。特定の実施形態において、組成物、キット及び方法は、アルツハイマーの前認知症期若しくは早期の早期臨床診断を促進し、又はアルツハイマーを発症する患者のリスクを予測する。より好ましい実施形態において、本発明は、アルツハイマー患者における軽度認知障害(MCI,mild cognitive impairment)の進行の診断を促進する。
【0185】
アルツハイマーは、一般に、他の型の認知症の除外に基づいて臨床的に診断される。その診断を特定の脳領域における大量の老人斑(neuritic / senile plaques)及び神経原線維変化(NFT,neurofibrillary tangles)の立証によって神経病理学的に確認することができる。
【0186】
本発明の抗体分子及び抗体−ペプチドコンストラクトは、アルツハイマー若しくは関連障害を有する患者又はその素因がある患者の脳内、CSF中又は血液(血清)中に変化したレベルで存在する、BAP42モノマー及びオリゴマー並びに/又は他の凝集しやすいペプチドに免疫特異的に結合し、変化したレベルはフィブリル化増加と相関する。すなわち、アルツハイマー若しくは関連障害を有する患者又はアルツハイマー若しくは関連障害のリスクがある患者については、BAP42モノマー及びオリゴマー並びに/又は他の凝集しやすいペプチドのレベルが、一般に、健常な対照対象についての正常範囲外になる。免疫複合体を形成するような免疫特異的結合の検出によって、インビトロ状況で又はインビボ画像化により診断を得ることができることはもちろん、疾患若しくは障害の進行をモニターするための、又は治療過程にわたって治療若しくは予防剤の有効性を判定するための、他の情報を得ることもできる。
【0187】
特定の実施形態では、被検試料を対象から得て、例えばインビトロでの診断を行う。被検試料は、血清、脳組織、又はCSFの試料でありうる。好ましい実施形態において、被検試料はCSFを含む。CSF試料を、腰椎穿刺又は脊椎穿刺などの当技術分野において公知の方法によって得てもよい。一般に、患者が膝を胸の方に引いて横向きに寝て、医療提供者がその下部脊椎に局所麻酔薬(麻酔剤)を注射し、その後、くも膜下穿刺針を通常はその腰部に挿入して、被検試料を収集する。場合によっては、蛍光透視法を用いて針の誘導を助ける。代替アプローチとしては、後頭骨(頭蓋骨の後部)の下に配置された針を使用する大槽穿刺、及び頭蓋骨にドリルで穴をあけて脳室の1つに針を直接挿入することを含む脳室穿刺が挙げられる。
【0188】
患者又は対象は、アルツハイマー若しくは関連障害のあらゆる病期を有することがあり、又は例えば家族歴及び/若しくは他の早期マーカーに基づいて、アルツハイマー若しくは関連障害のリスクがあると疑われることもある。好ましい実施形態において、患者は、軽度認知障害(MCI)を特徴とする早期にある。例えば、認知愁訴、記憶の問題、及び/若しくは同定された認知症を有する患者、又は脳画像化(CTスキャン、MRI、PET、SPECT)によってアルツハイマーの早期にあると同定された患者から、被検試料を得ることができる。
【0189】
例えば、アルツハイマー病もいかなる関連障害も有さない対象、及び/又はアルツハイマー病のリスクもいかなる関連障害のリスクもない対象から、対照試料を収集することもできる。対照試料は、アルツハイマー及び関連障害に関連する凝集しやすいオリゴマーペプチド(本発明に関しては「関連脳ペプチド」と呼ぶ)の正常な量を有すると予想される。例えば、対照試料は、一般に、BAP42オリゴマー、α−シヌクレインのペプチド(パーキンソン病で指示される)、膵島アミロイドポリペプチドのペプチド(II型糖尿病で指示される)、ハンチントンのペプチド(ハンチントン病で指示される)、及び/又はプリオンタンパク質のペプチド(海綿状脳症で指示される)について健常範囲内の量を有する。一部の実施形態において、対照試料は、例えば、正常な健常対象における関連脳ペプチドの量、例えば、アルツハイマーも関連障害を有さない又はアルツハイマーのリスクも関連障害のリスクもない対象のCSF、脳又は血清中の関連脳ペプチドの濃度に関する情報が既に利用可能である場合、収集されない。
【0190】
本発明の抗体分子を、アルツハイマー若しくは関連障害を有する又はアルツハイマー若しくは関連障害の素因がある対象からの被検試料と接触させると、一般に、対照試料との接触時に得られるものの範囲外のレベルの免疫特異的結合が得られる。具体的には、被検試料中のBAP42オリゴマー又は他の関連脳ペプチドの量を判定するために、被検試料を本発明の1つ若しくは2つ以上の抗体分子、又はそれらのペプチドコンストラクトと接触させて、免疫特異的に結合させる。抗体分子及び/又は抗体−ペプチドコンストラクトを、該抗体分子、又は該コンストラクトの抗体成分と、それが免疫特異的に認識し結合する抗原との免疫複合体の形成を可能ならしめる条件下で、被検試料と接触させる。特定の実施形態において、抗体分子又はコンストラクトは、アルツハイマーの早期の患者のCSFと接触させると免疫特異的結合の中等度の上昇、又は統計的に有意な上昇を示す。
【0191】
一部の実施形態では、被検試料と接触させるとき、抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは固定化されている。例えば、複数の抗体分子又はコンストラクトを適する支持体上に固定化することができる。支持体は、樹脂、チップ(例えば、マイクロ流体チップ)、マイクロアレイ、ビーズ、ガラス、バイアル、クロマトグラフィーカラム、プレート、セラミック、エンジニアリング熱可塑性プラスチック、クレー、ポリエステル繊維、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、生体膜若しくは人工膜などの、又は当業者に公知のいかなる免疫アッセイ形式による、いかなる固体又は半固体物質であってもよい。
【0192】
固定化は、抗体分子又はそれらのコンストラクトを、本明細書に記載の又は当技術分野において公知の共有結合性又は非共有結合性相互作用により支持体に結合させることによって、果すことができる。非共有結合性相互作用は、静電引力、ファンデルワールス力、及び/又は水素結合を含む。好ましくは、固定化は、共有結合性相互作用、例えば、抗体分子又はそのコンストラクト上の基と支持体上の基との化学結合の形成による。固定化は、支持体に直接行われることもあり、又は間接的に、例えば、リンカー若しくは結合抗体を介して行われることもあり、結合抗体は、それ自体が本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを認識し、本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトに結合するものである。さらに、固定化が、抗体分子、又はそのコンストラクトの抗体成分の機能性を保持するように、例えば、BAP42オリゴマー又は他の関連脳ペプチドへの優先的及び免疫特異的結合を保持又は実質的に保持するように行われることは、当業者に認識されるであろう。
【0193】
固定化された抗体分子又は、抗体−ペプチドコンストラクトとの接触前に、試料を1又は2以上のステップに付すこともある。例えば、試料中のBAP42オリゴマー又は他の関連脳ペプチドを濃縮してもよく、又はある特定の不純物、例えば、本発明の抗体分子との免疫特異的結合に干渉しうる物質を除去することによって部分的に精製してもよい。あるいは、試料中の関連脳ペプチドを、本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトと接触させる前に、例えば上記の適する支持体上に、固定化してもよい。
【0194】
被検試料中の関連脳ペプチド、例えばBAP42オリゴマーへの免疫特異的結合を検出することができる。検出は、抗体分子とその標的抗原の免疫複合体の形成を検出、測定又は定量するための、すなわち、イムノアッセイを使用して免疫特異的結合を検出するための、当技術分野において公知のいずれの手段によって行ってもよい。使用することができるイムノアッセイは、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA,enzyme linked immunosorbent assay)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光イムノアッセイ及びプロテインAイムノアッセイなどの技術を使用する、競合及び非競合アッセイシステムはもちろん、BIAcore分析も含むが、これらに限定されない。そのようなアッセイは、当技術分野において説明されている(例えば、その全体が参照により組み込まれている、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい)。免疫特異的結合は、例えば、フローサイトメトリー又はシンチレーションアッセイを使用して、検出、測定又は定量することもできる。例えば、本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、例えば、放射標識(例えば、
99Tc、
67Ga、
68Ga、
32P、
35S及び
125I)、蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド及びフルオレスカミン)、又は免疫特異的結合の検出を可能ならしめるための本明細書に記載する若しくは当技術分野において公知の標識を使用して、標識することができる。
【0195】
免疫特異的結合の検出は、試料中に存在する関連脳ペプチドの量を示すことになり、この量は、正常量に相当することもあり、又は正常量より多い若しくは少ない量に相当することもあり、この場合の正常量は、アルツハイマーも関連障害を有さず、アルツハイマーの素因も関連障害の素因もない対象から得た対照試料中で検出されるものに相当する。
【0196】
対照試料で得られる範囲外の、又はその範囲の下限若しくは上限に近い免疫特異的結合は、アルツハイマー又は関連障害の診断をもたらすことができる。例えば、BAP42オリゴマーに免疫特異的に結合する本発明の抗体分子は、対象からのCSF試料中のBAP42オリゴマー量の中等度の上昇(統計的に有意な上昇)を示すことによって、特に他の診断法と併用したとき、前記対象をアルツハイマーと診断することができる。免疫特異的結合の程度は、アルツハイマーの異なる病期を示すことができ、例えば、わずかに正常範囲外のBAP42オリゴマーの量は、前認知症期又は早期アルツハイマーを示し、変化が顕著であるほど、進行した病期を示す。実施例5、パート(a)は、本発明の例示的な抗体分子及び抗体−ペプチドコンストラクトを使用するインビトロでの診断のさらなる詳細を提供する。
【0197】
本発明の異なる抗体分子は、アルツハイマーの異なる病期を示すことができ、例えば、第一の抗体分子による異常な免疫特異的結合レベルは、より早期を示し、第二の抗体分子による異常な免疫特異的結合レベルは、より後期を示す。したがって、本発明は、アルツハイマーの特定の病期、特に、早期及びMCIを伴う病期のバイオマーカーを同定する。
【0198】
本発明は、インビボでの診断又は画像化方法も提供する。具体的には、本発明の抗体分子及び抗体−ペプチドコンストラクトは、健常な対照対象と比較して、アルツハイマー若しくは関連障害を有する患者又はその素因がある患者の脳内又はCSF中に変化した量及び/又は変化した分布パターンで存在する、BAP42モノマー及びオリゴマー並びに/又は他の凝集しやすいペプチドに免疫特異的に結合する。インビボ画像化による免疫特異的結合の検出によって疾患又は障害の診断を得ることができる。
【0199】
特定の実施形態において、本発明は、患者の体内の凝集しやすいペプチドを画像化する方法を提供する。例えば、本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを標識と会合させ、患者に投与してもよい。標識は、当技術分野において公知の又は本明細書に記載するいずれの標識であってもよい。好ましい実施形態において、標識は、投与後の患者の脳又はCSFの画像化を促進する。特定の標識としては、限定ではないが、放射標識又は蛍光標識が挙げられる。好ましい実施形態において、使用する標識は、患者にとって有害でない。
【0200】
投与は、一般に、非経口投与、好ましくは、対象のBBBを越えて脳又はCNSへの抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトの送達を促進する様式での非経口投与を含む。好ましい実施形態において、インビボ画像化に使用する抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、ヒト化されており、本明細書に記載するようにBBB特異的移行及び/又はBAP42オリゴマー免疫特異的結合を示す。より好ましい実施形態において、使用する抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、この場合もやはり本明細書に記載するように、患者におけるBBBの破壊の原因にならない。
【0201】
凝集しやすいペプチドは、本明細書に記載するような、BAP42オリゴマー又は他の関連脳ペプチドでありうる。免疫特異的結合の検出は、患者の脳内に存在する関連脳ペプチドの量を示すことになり、この量は、正常量に相当することもあり、又は正常量より多い若しくは少ない量に相当することもあり、この場合の正常量は、アルツハイマーも関連障害も有さず、アルツハイマーの素因も関連障害の素因もない対象において検出されるものに相当する。
【0202】
特定の実施形態では、BAP42オリゴマーの免疫特異的結合の中等度の上昇(統計的に有意な上昇)を示す画像によってアルツハイマーの診断が得られる。さらに、免疫特異的結合の程度及び/又はパターンは、本明細書に記載するような、アルツハイマーの異なる病期を示すことができる。実施例5、パート(b)は、本発明の例示的な抗体分子及びそれらのコンストラクトを使用するインビトロでの画像化及び診断のさらなる詳細を提供する。
【0203】
本発明の異なる抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、アルツハイマーの異なる病期を示すこともでき、例えば、第一の抗体分子は、より早期を示し、第二の抗体分子は、より後期を示す。したがって、本発明は、アルツハイマーの特定の病期、特に、早期及びMCIを伴う病期のバイオマーカー及び結合パターンを同定する。
【0204】
本明細書に記載する診断方法を単独で使用してもよく、又は互いに併用してもよく、又はアルツハイマーを診断するための1つ若しくは2つ以上の他の手段と併用してもよい。一部の実施形態では、タウタンパク質(T−tau)及びリン酸化タウタンパク質(P−tau181)の総量についてのアッセイを本発明によるアプローチと併用することがある。特定の例では、BAP42オリゴマー測定と組み合わせたT−tauの分析によって、アルツハイマーの際の軽微な認知機能障害の進行に対する83%特異性及び95%感受性が得られる。別の特定の実施形態では、BAP42オリゴマー/P−tau比と組み合わせたT−tauの分析によって、95%感受性及び87%特異性が得られる。CSF中のこれらのタンパク質の組合せは、アルツハイマーの際の軽微な認知障害の進行の予測バイオマーカーの構成要素であり、この組合せをアルツハイマーの診断基準に組み入れることができる。
【0205】
本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを使用する診断によって患者の神経化学的異常に関する情報を得ることができ、それによって、新たな神経保護治療に関する臨床試験のための特定の治療的介入及び/又は可能性のある患者の選択が可能になる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載のインビトロ又はインビボでの診断後、治療的介入、例えば、診断された患者への本明細書に記載する医薬組成物の有効量の投与、並びに/又は当技術分野において公知の及び/若しくは本明細書に記載する任意の他のアルツハイマー治療の投与が行われる。特定の実施形態において、患者に投与する本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、インビトロ若しくはインビボで診断を得るために使用したのと同じ抗体分子若しくは抗体−ペプチドコンストラクト、又はそれらのヒト化バージョンである。
【0206】
抗体分子又はコンストラクトは、特定の患者に異常な量で又は異常なパターンで存在すると同定された脳ペプチドに対する免疫特異性を示すので、同抗体分子又はそのコンストラクトの投与は、その特定の患者の治療に適切な脳ペプチドを中和するための有望な治療剤を与えることになるということは、当業者には分かるであろう。特定の実施形態において、患者を治療するステップは、適する治療剤、例えば、本発明の抗体分子を含む医薬組成物を投与するステップを含む。特定の実施形態において、患者を治療するステップは、その後治療を施す医療提供者が診断に関する情報を入手できるようにするステップを含む。
【0207】
本アプローチを使用して、所与の対象又は対象集団についてのインビボでの画像化及び/又はインビトロでのアッセイを繰り返すことにより、アルツハイマー病又は関連障害を経時的にモニターすることもできる。対象が、ある治療コースでの治療を、例えば臨床又は研究設定で、受けているときに反復試験を使用して、その治療コース全体を通して有効性を評定することができる。例えば、治療を始める前に、例えば本発明の抗体分子の投与前に、患者を試験し、その後、活性薬剤の何回かの投与後に又は投与ごとに再び試験してもよい。例えばCFS試料中の又は脳画像中の、BAP42オリゴマー又は他の凝集しやすいペプチドの量の変化を経時的に判定することによって、投与している薬剤の有効性に関する情報を得ることができる。
【0208】
具体的には、第二の被検試料をより後の時点で同じ患者から得てもよい。その第二の被検試料を本発明の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトと接触させた後、免疫特異的結合の検出を行うことができる。異なる時点での免疫特異的結合量の比較によって、対象における凝集しやすいペプチドの量のモニターが可能になる。例えば、対象からのCSF試料中のBAP42オリゴマーレベルの増加/減少は、アルツハイマーの改善を経時的に示すことができ、そのレベルが正常範囲に近づく場合、それによって、投与している治療の有効性が立証される。同様に、患者の脳のインビボでの画像化を経時的に反復することによって、凝集しやすいペプチドの量及び/又はパターンの変化、例えばアルツハイマー患者におけるBAP42オリゴマーの変化を示す一連の画像を得ることができる。患者の脳内のBAP42オリゴマーの正常量及び/又は正常パターンに向かう傾向を示す画像は、経時的なアルツハイマーの改善を示すことができ、それによって投与している治療の有効性が立証される。
【0209】
8.診断キット
本発明の別の態様は、本発明の抗体分子、送達ペプチド及び/又は抗体−ペプチドコンストラクトを含むキット、例えば、アルツハイマー病又は関連障害の診断に使用するためのキットに関する。本発明は、上で説明したインビトロ又はインビボでの診断方法を使用するためのキットを提供する。
【0210】
一部の実施形態において、本発明は、本発明の複数の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含むキットを提供する。複数の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、一緒に使用するための集合体として提供される、同じタイプの抗体又はそのコンストラクトの1以上の分子を指す。特定の実施形態において、複数の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、CSF試料中のBAP42オリゴマーへの結合などの、インビトロでの標的抗原への免疫特異的結合の検出を可能ならしめるのに十分な量の分子を提供する。特定の実施形態において、複数の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、患者の脳内でBAP42オリゴマーとともに形成された免疫複合体の画像を提供することなどの、インビボでの標的抗原への免疫特異的結合の検出を可能ならしめるのに十分な量の分子を提供する。必要とされる量が、免疫特異的結合を判定、測定又は定量するために使用される検出アプローチ又はイムノアッセイに依存することになることは、当業者に認識されるであろう。
【0211】
一部の実施形態において、キットは、例えば、薬剤が(例えば、インビボでの画像化又は診断方法で)患者に投与することを目的としたものである場合、抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトのヒト化バージョンを含む。一部の実施形態において、キットは、免疫特異的結合の検出を促進するための標識も含む。標識は、キットの別の区画に含まれていることもあり、又は抗体分子若しくは抗体−ペプチドコンストラクトと会合していることもある。適する標識は、イムノアッセイでの使用のための、本明細書において開示する及び/又は当技術分野において公知のあらゆる標識を含む。
【0212】
特に好ましい実施形態において、複数の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、適する支持体上に固定化されている。支持体は、上で開示したような、いかなる固体又は半固体物質であってもよく、固定化は、この場合もやはり上で述べたように、いかなる共有結合性又は非共有結合性相互作用によって果してもよい。
【0213】
一部の実施形態において、キットは、本発明の1つのタイプの抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む。一部の実施形態において、キットは、2つ又は3つ以上の異なる抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを含む。上で論じたように、本発明の異なる抗体分子は、異なる免疫特異的結合パターンを示すことができ、それによって、アルツハイマー及び/又は関連障害の異なる病期の診断が可能になる。したがって、一部の実施形態において、キットは、本発明の第一の複数の第一の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクト、及び本発明の第二の複数の第二の抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトを提供する。
【0214】
インビトロでの検出に関する特定の実施形態において、第一の抗体分子又はコンストラクトは、アルツハイマーの早期の患者からの被検試料と接触させたとき、異常な免疫特異的結合レベルを示し、第二の抗体分子又はコンストラクトは、アルツハイマーのより後期の患者からの被検試料と接触させたとき、異常な免疫特異的結合レベルを示す。インビボでの画像化に関する特定の実施形態において、第一の抗体分子又はコンストラクトは、アルツハイマーの早期の患者の脳において免疫特異的結合の中等度の上昇(統計的に有意な上昇)を示し、第二の抗体分子又はコンストラクトは、アルツハイマーのより後期の患者の脳において免疫特異的結合の中等度の上昇(統計的に有意な上昇)を示す。対象の疾患の異なる病期の診断を促進するために、アルツハイマーの異なる病期に対する複数の異なる抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトをキットに備えさせることができることは、当業者には理解されるであろう。
【0215】
インビトロでの診断に関する特に好ましい実施形態において、異なる複数の異なる抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、キット内の、適する支持体上の又は異なる支持体上の又は異なる区画内の、区別可能な位置に固定化されている。区別可能な位置は、2つの複数のもの各々についての免疫特異的結合の検出中に第一の部位と識別することができる、キット内の別の部位を指す。一部の実施形態において、異なる複数の異なる抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは区別可能に標識されており、したがって、例えば、抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトが重複位置に固定化されている場合でも、又はそれらが固定化されていない場合でも、2つの複数のものの各々についての免疫特異的結合を識別することができる。
【0216】
9.抗体分子、送達ペプチド、及びそれらのコンストラクトを作製する方法
本発明の別の態様は、本発明の抗体分子、送達ペプチド、及び抗体−ペプチドコンストラクト、並びにそれらのBBB特異的及び/又はBAP42オリゴマー結合断片又は誘導体(脱免疫化及び/又はヒト化バリアントを含む)の作製する方法を含む。一部の実施形態において、抗体分子、送達ペプチド、抗体−ペプチドコンストラクト、並びにそれらの断片及びバリアントは、組換えDNA技術によって、又は他のタンパク質合成技術、例えばペプチド合成装置の使用によって、産生される。
【0217】
一部の実施形態において、抗体分子又はその抗体−ペプチドコンストラクトは、結合されている、例えば、二量体、三量体、四量体、例えばVL−VL二量体を形成するように結合されている、1以上の抗体単一ドメインを含む。二量体ポリペプチド、及びより高次のポリペプチドコンストラクトを産生する方法は、当技術分野において公知である。例えば、第一の抗体単一ドメインをコードする核酸を、第二の抗体単一ドメインを含有する発現ベクターにクローニングすることができ、したがって、これら2つのドメインは、リンカーが介在して及び介在せずに、インフレームで結合される。例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202、Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214、Gillies et al., 1989, J. Immunol.Methods 125:191-202、及び米国特許第6,311,415号明細書、同第5,807,715号明細書、同第4,816,567号明細書及び同第4,816,397号明細書を参照されたく、これらの参考文献は、それら全体が参照により組み込まれている。
【0218】
一部の実施形態において、本発明の抗体分子は、送達ペプチドに融合されている。融合タンパク質も標準的な組換えDNA技術によって、又はタンパク質合成技術によって、例えばペプチド合成装置の使用によって、又はPCR増幅によって生成することができる。組換え融合に加えて、送達ペプチドへの結合は、例えば、共有結合性のコンジュゲーションと非共有結合性のコンジュゲーションの両方を含む化学的コンジュゲーションを含みうる。
【0219】
結合は、必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列によって行われることもあり、又は化学的コンジュゲーションによって行われることもある。所望の抗体分子と送達ペプチド間のタンパク質リンカーは、可撓性及び適正な折り畳みを維持するように、好ましくは、結合された生成物が、BBB特異性及びBAP42オリゴマー免疫特異性を示すように、選択することができる。例えば、BAP42オリゴマーへの良好な同時結合及びBBBの選択的通過を可能ならしめる、リンカーを選択することができる。そのような結合を、当業者に公知の及び/又は本明細書に記載する技術によってアッセイすることができる。
【0220】
本発明のポリヌクレオチドは、ベクター、例えば、本発明の抗体分子の発現のためのベクターも包含する。本発明による抗BAP42オリゴマー抗体のコード配列とともに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを、当業者に周知の方法を使用して構築することができる。これらの方法は、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えを含む。(例えば、Sambrook et al., 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.及びAusubel et al. eds., 1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NYに記載されている技術を参照されたい)。
【0221】
本発明の抗体分子の核酸配列を含む発現ベクター、例えば、本明細書に記載の送達ペプチドとの融合体タンパク質を、従来技術(例えば、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、及びリン酸カルシウム沈降法)によって宿主細胞に移入し、その後、それらのトランスフェクト細胞を従来技術によって培養して、本発明のコンストラクトを産生することができる。特定の実施形態において、抗体分子又は抗体−ペプチド融合体の発現は、構成的プロモーターによって調節される。別の実施形態において、発現は、誘導性プロモーターによって調節される。これらの実施形態に従って、プロモーターは、組織特異的プロモーターであってもよい。
【0222】
特定の実施形態では、タンパク質をコードする核酸に作動可能に結合されたプロモーターと、1つ又は2つ以上の複製起点と、場合により1つ又は2つ以上の選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)とを含む、ベクターを使用する。様々な宿主発現ベクター系を用いて、本発明の抗体分子及び送達ペプチド並びに/又はそれらの融合体を発現させることができる。組換え抗体分子、送達ペプチド又はそれらの融合体を発現させるために使用する宿主細胞は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞であってもよく、又は真核細胞であってもよい。適する細菌細胞の例としては、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌大腸菌又は枯草菌(B. subtilis)が挙げられる。
【0223】
特定の実施形態では、大腸菌Tuner(商標)(DE3)細胞を本発明の抗体分子、送達ペプチド及び抗体−ペプチドコンストラクトの大規模発現に使用する。「Tuner(商標)株」は、細胞培養でのタンパク質発現レベルの制御調整を促進する大腸菌BL21のlacZY欠失変異体である。発現レベルは、lacパーミアーゼ(lacY)変異によって制御され、この変異は、集団内の細胞へのIPTGの均一な侵入を可能ならしめ、その結果、様々なIPTG濃度に応じた濃度依存性の均一な導入が生ずる。「DE3」は、宿主が、lacUV5プロモーターの制御下にあるT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを有するλυE3の溶原菌であることを示す。
【0224】
本発明の抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトの発現レベルを、例えば、ベクター増幅によって増加させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Vol. 3. (Academic Press, New York, 1987)を参照されたい)。本明細書に記載するポリペプチドを発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、培養培地の変化がマーカー遺伝子のコピー数を増加しうる。増幅領域は、本発明の抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトをコードするヌクレオチド配列を伴うことができるので、薬剤の産生も増加しうる(Crouse et al., 1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
【0225】
組換えタンパク質の長期、高収率産生のために、安定した発現が好ましい。例えば、本発明の抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトを安定的に発現する細胞株を改変してもよい。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択マーカーによって制御されたDNAで宿主細胞を形質転換させることができる。異種DNAの導入後、改変細胞を富化培地中で1〜2日間増殖させ、そしてその後、選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性をもたらし、細胞がプラスミドをそれらの染色体に安定的に組み込むこと及び増殖してフォーカスを形成することを可能ならしめ、そしてまたそれらのフォーカスをクローニングし、増殖させて細胞株にすることができる。有利には、この方法を使用して、長期、高収率産生のために本発明の抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトを発現する細胞株を改変することができる。そのような改変細胞株は、抗体分子、送達ペプチド及び/又はそれらの融合体と直接又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価にも、特に有用でありうる。
【0226】
本発明の抗体分子、送達ペプチド、又は抗体−ペプチドコンストラクトを組換え発現させたら、それを、薬剤の精製のための当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、特に、プロテインAクロマトグラフィー後の特異的抗原に対するアフィニティークロマトグラフィー、及びサイズ選別カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、較差溶解度によって精製してもよく、又はタンパク質の精製のための他の任意の標準的技術によって精製してもよい。本発明のポリペプチドをペプチドなどのマーカー配列に融合させて、精製を促進することができる。一部の実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、数ある中でもpQEベクター(QIAGEN社、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif, 91311)に備えられているタグなどの、ヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、それらの多くが市販されている。例えば、Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:821 824, 1989(その全体が参照により本明細書に組み込まれている)に記載されているように、ヘキサ−ヒスチジンタグによって、抗体分子、送達ペプチド又はそれらの融合体の適便な精製が実現される。精製に有用な他のペプチドタグとしては、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応するヘマグルチニン「HA,hemagglutinin」タグ(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wilson et al., Cell, 37:767 1984)、及び「flag」タグ(Knappik et al., Biotechniques, 17(4):754-761, 1994)が挙げられるが、これらに限定されず、参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。別の技術は、大腸菌における発現後、エンドトキシン除去のためのニッケルアフィニティークロマトグラフィーを含む。
【0227】
本発明の脱免疫化抗体分子、送達ペプチド又は抗体−ペプチドコンストラクトは、詳細に上で説明したように、ポリペプチド中の1つ又は2つ以上のT
Hエピトープを減少又は除去するための技術を使用して生成することができる。アミノ酸レベルでの置換は、同じくより詳細に下で説明するように、それをコードする対応する核酸の構築の情報を与える。
【0228】
本発明のヒト化抗体分子又は抗体−ペプチドコンストラクトは、上で詳細に説明したように、非ヒト抗体の領域又はアミノ酸残基をヒト抗体からの対応する領域又はアミノ酸残基で置換する技術を使用して生成することができる。一般に、ヒト化抗体分子は、超可変領域残基が、望ましい免疫特異性を有する非ヒト種からの超可変領域残基(例えば、ウサギVLドメインからのドナーCDR)によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(又はそれらの可変ドメイン及び/又は断片)である。
【0229】
10.本発明の薬剤をコードするポリヌクレオチド
本発明は、本発明のポリペプチド、例えば抗体分子、送達ペプチド、抗体−ペプチドコンストラクト、又はそれらの断片若しくはバリアントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書において開示する抗体分子、例えば、配列番号1〜21の1つ若しくは2つ以上、又はそれらのBAP42オリゴマー結合断片、又はそれらのヒト化バリアント、例えば、ヒト抗体ドメインのフレームワーク領域にグラフトされた配位列番号1〜21の1つ若しくは2つ以上のCDRを含むものをコードする核酸を含む、又はそのような核酸からなる。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書において開示する送達ペプチド、例えば、配列番号22〜25の1つ又は2つ以上をコードする核酸を含む、又はそのような核酸からなる。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書において開示する抗体−ペプチドコンストラクト、例えば、配列番号28〜111の1つ若しくは2つ以上、又はそれらのBAP42オリゴマー結合及び/若しくはBBB特異的断片、又はそれらのヒト化バージョンをコードする核酸を含む、又はそのような核酸からなる。本発明は、上記の本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに高ストリンジェンシー、中又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチドも包含する。
【0230】
当技術分野において公知のいずれの方法によって、ポリヌクレオチドを得てもよく、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定してもよい。例えば、本発明の薬剤をコードするポリヌクレオチドを、適する源(例えば、BAP42オリゴマーで免疫したウサギ)からの核酸から生成してもよい。特定のポリペプチドをコードする核酸を含有する源を入手できないが、本発明の薬剤のアミノ酸配列が分かっている場合、その薬剤をコードする核酸を化学的に合成し、当技術分野において周知の方法を使用して複製可能なクローニングベクターにクローニングしてもよい。
【0231】
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定したら、当技術分野において周知のヌクレオチド配列操作方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなど(例えば、the techniques described in Sambrook et al., 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY及びAusubel et al., eds., 1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NYに記載されている技術を参照されたく、これらの参考文献は、それら全体が参照により組み込まれている)を使用して、異なるアミノ酸配列を有するポリヌクレオチドを生成するように、例えば、アミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を生じさせるように、そのヌクレオチド配列を操作してもよい。上で説明したように、そのような変異配列によって、薬学的特性が向上された、例えば、免疫特異性が改善された、BBB特異性が改善された、及び/又は免疫原性が減少された、本発明の薬剤を得ることができる。
【0232】
当技術分野において周知であり、常例的に実施されているような組換え技術によって、融合生成物をコードするポリヌクレオチドを得てもよい。そのようなポリヌクレオチドを「キメラポリヌクレオチド」と呼ぶこともある。組換えキメラポリヌクレオチドは、元々別のタンパク質をコードしていた2つ若しくは3つ以上の遺伝子、又はそれらの一部を連結させることによって、通常は創製される。個々の配列は、通常は、それぞれのタンパク質各々の機能性ドメインのコード配列に対応し、したがって、融合ポリペプチドは、二重機能性を有する(例えば、BAP42オリゴマーと結合し、及びBBBを特異的に通過する)融合タンパク質をコードする。例えば、第一のコード配列又はその一部を第二のコード配列又はその一部にインフレームで連結させてもよく、この連結は、通常は、ライゲーション又はオーバーラップ伸長PCRによって果される。ライゲーションは、「カセット変異誘発法」と呼ばれる、従来のキメラ遺伝子創製方法と併用される。この方法では、制限エンドヌクレアーゼ認識部位に作用する制限エンドヌクレアーゼによってDNAを特異的断片に切断することができ、その後、それらの特異的断片をライゲーションすることができる。特定の断片を、適合性末端を有する異種のもので置換して、それを親DNAにライゲーションすることができる。例えば、その全体が参照により組み込まれている、Wells et al., Gene 34:315-23 (1985)を参照されたい。
【0233】
あるいは、オーバーラップ伸長PCR法などの、PCRを含む様々なアプローチを使用してもよい。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Ho, S.N., et al (1989). Site-directed mutagenesis by overlap extension using the polymerase chain reaction. Gene. 77:51-59を参照されたい。このPCRアプローチの幾つかの変形形態は公知であり、融合生成物を生成するために使用されている。1つのそのようなアプローチは、例えば、制限酵素の非存在下でキメラ遺伝子を生じさせるための次の3ステップでの改良型オーバーラップ伸長PCRを含む:(i)融合すべき隣接断片に5’末端が部分的に相補的なプライマーを使用してキメラ分子を生じさせる、従来のPCRステップ;(ii)プライマーの相補的末端を使用して、第一のステップで生成されたPCR断片を融合させる、第二のPCRステップ;及び(iii)その融合生成物のPCR増幅を含む第三のステップ。最終PCR生成物は、異なる増幅PCR断片で構成されているキメラ遺伝子である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wurch, T. et al (1998) A modified overlap extension PCR method to create chimeric genes in the absence of restriction enzymes. Biotechnology Techniques. 12(9):653-657を参照されたい。いかなるライゲーション及び/又はPCRベースの組換えアプローチを使用して、本発明のキメラ(融合)ポリヌクレオチドを生じさせてもよい。
【0234】
あるいは、融合生成物をコードする核酸を化学合成してもよい。例えば、本発明の抗体−ペプチドコンストラクトの所望のアミノ酸配列を使用して、例えば当技術分野において周知の方法を使用して、対応するヌクレオチド配列を考案し、化学的に合成し、複製可能なクローニングベクターにクローニングしてもよい。
【0235】
本発明は、本発明の薬剤をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むベクターをさらに提供する。一部の実施形態において、ベクターは、発現ベクターである。本発明は、本発明の1つ又は2つ以上のベクターを含む宿主細胞、例えば、コードされたポリペプチドの発現を可能ならしめる宿主細胞を、さらに提供する。ベクター、発現ベクター及び宿主細胞は、上で論じたポリヌクレオチドをどれでも含むことができる。
【0236】
[実施例]
以下の実施例は、ベータアミロイドペプチドの非フィブリル形態を特異的に標的とする、単一ドメイン形式の抗体分子の開発、及び血液脳関門を特異的に通過するペプチドの開発、並びにペプチド及び単一ドメイン抗体のコンストラクトを証明するものである。以下の実施例は、抗体分子及びコンストラクトが、アルツハイマーの動物モデルにおいて老人斑の形成を有効に減少させ、防止するという予想外の結果をさらに証明することはもちろん、疾患の早期を同定するためのインビトロでの診断及びインビボでの画像化のためのバイオマーカーも提供する。
【実施例1】
【0237】
非フィブリルBAP42を標的とするsdAbの産生
BAP42のモノマー及びオリゴマー形態を特異的に認識するが、フィブリル形態を認識しない、単一ドメイン抗体(sdAb,single domain antibody)を開発した。sdAbの開発は、下に(a)〜(c)として概要を示す3パートプロセスを含む。簡単に述べると、(a)異なるBAP42形態を調製し、(b)特性解析し、そしてその後、(c)モノマー又はオリゴマー形態でウサギを免疫し、ウサギ抗体を使用して、これら2つの形態の各々に対する、VLドメインの、単一ドメイン抗体ライブラリーを構築することによって、非フィブリル形態を特異的に標的とするsdAbを開発した。固定化された異なる形態の抗原を有する「ファージディスプレイ膜」を使用してこの選択プロセスを最適化して、BAP42モノマー及びオリゴマー形態に特異的なsdAbのパネルを得た。
【0238】
a.BAP42の異なる形態の生成
上で述べたように、BAP42は、アルツハイマー患者の脳内に様々な会合形態で存在する。BAP42には、高いオリゴマー化能力及び繊維を形成する能力があり、様々な成熟段階を経るこのペプチドに関わると考えられるプロセスを
図1に模式的に示す。
【0239】
図1が示すように、BAP42は、ペプチドのモノマーから、プラークを形成することができる繊維へと進行する凝集スキームに従って凝集する。ペプチドは、高いオリゴマー化能力を有し、自己会合によって開始して小さいオリゴマーを生じさせ、その後、それらのオリゴマーがこのペプチドの他の分子と会合する。ペプチドの構造は、繊維の特徴である、ベータシートを多く含む二次構造をもたらすように変化する。
【0240】
したがって、第一のステップとして、BAP42の様々な分子種(モノマー、オリゴマー、フィブリル)を生成するためのペプチド再構成プロトコルを確立した。使用した出発物質は、凍結乾燥された合成BAP42であり、それをPBS緩衝液、pH7.4に再懸濁させて、最終濃度10mg/mLにした。この濃度及びpHで、ペプチドは可溶性でなかった。可溶化pHをアンモニアでの滴定によって最適化した。pH10で、ペプチドは可溶性になった。その後、ペプチドをPBS中1mg/mLの作業濃度に希釈し、pHを7.4に戻した。ペプチド濃度を分光測定で定量するために、
図2に示すようにλ=280nmでのモル吸光係数を決定した。
【0241】
図2は、BAP42のモル吸光係数の決定を示す。簡単に述べると、濃度が分かっているペプチドの様々な溶液を使用して吸光度を測定し、相関させて、係数を算出した。ε280nm=0.3265±0.0043(mg/mL)
−1cm
−1又は±1474.041 ε280nm=19,287M
−1cm
−1。
【0242】
BAP42の様々な分子種を得るために、タンパク質再構成後、5kDaの細孔を有するフィルターに通してタンパク質を濾過した。このフィルターは、ペプチドのオリゴマー/フィブリル種の可能性のあるものを保持するが、すぐに使用するためのより低い分子量を有するモノマー種を溶出した。オリゴマー又は繊維を得るために最適化した、BAP42の様々な分子種を調製するための代表的方法は、
図3A〜3Bに示す通り。
【0243】
図3Aに示すように、及び上で述べたように、第一のステップは、pHを上昇させ、その後7.4に戻すことによる、凍結乾燥された合成BAP42の可溶化、続いて、可溶化されたBAP42を使用するCentricon遠心分離、そしてモノマーを得るためのフロースルーの収集を含む。モノマー種を使用して、16時間にわたる37℃での1mg/mL BAP42のオリゴマー化反応でオリゴマーを生成し、このオリゴマー化反応を一定したかき混ぜ(撹拌)によって促進した。この期間の後、得られた繊維を超遠心分離によって分離し、上で説明したように上清を遠心分離することによってモノマーを分離した。フィルターに保持された画分は、オリゴマーBAP42画分に相当し、前に算出した係数を使用して分光測定でその画分をアッセイした。オリゴマー濃度は1mg/mLであると決定された。
【0244】
図3Bに示すように、別の反応でモノマー種を使用して、40時間にわたる37℃での1mg/mL BAP42の一定したかき混ぜに基づいて、フィブリルを生成した。得られたフィブリルを再び超遠心分離によって分離し、沈降物を収集した。試料中に存在するモノマーの初期量と、モノマー及びオリゴマーを含有する超遠心分離からの上清中に存在する最終量との差を算出することによって、フィブリルの量を決定した。
【0245】
b.BAP42の異なる形態の特性解析
上で説明したようにBAP42の異なる形態を単離した後、それらを次の3つの方法によって特性解析した:(i)チオフラビンT結合、(ii)動的光散乱(DLS,Dynamic Light Scattering)、及び(iii)分子排除クロマトグラフィー。
【0246】
i.チオフラビンT結合による特性解析
単離されたBAP42種を、先ず、チオフラビンT蛍光を使用して特性解析した。チオフラビンT化合物は、ベータシート二次構造を多く含むタンパク質混合物と特異的に会合し、すると、蛍光収量の増加を伴うより高い波長を放出する、蛍光プローブである。したがって、この技術によって、蛍光シグナル強度をタンパク質試料中に存在する繊維の濃度と関係付けられる。具体的には、モノマーは、チオフラビンTとの反応性を示さず、オリゴマー画分は、低レベルの反応性を示すが、フィブリル画分は、高レベルの反応性を示す。
図4は、上で説明した最適化プロセスで単離されたBAP42種を特性解析するためのチオフラビンTアッセイの結果を示す。
【0247】
ペプチド種をそれらの分子量に従って分散させるための、変性条件下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を使用したウェスタンブロットによって、モノマー、オリゴマー及び繊維試料をさらに分析した。ウェスタンブロット検出は、ウサギに行った様々な免疫に関して、下でより詳細に説明するようなウサギ由来のポリクローナル血清を使用して行った。
図5は、SDS−PAGE電気泳動によって分離された、BAP42種の混合物のウェスタンブロッティングの結果を示す。
【0248】
図5を参照すると、BAP42モノマーは、約5kDaの質量を有し(10kDa未満の分子質量を分散させる膜領域で見出される)、オリゴマーは、10〜200kDaの間で分散され(この集団が、様々な数のモノマー単位を有する異なるオリゴマーの組合せで不均一であることを示す)、フィブリル種は、ゲルの染色部に保持された(それらが300kDaより高い分子量を有することを示す)。試料の形態も原子間力顕微鏡によって評価して、これらの様々な分子種の特性解析を完了した。
【0249】
ii.動的光散乱(DLS)による特性解析
単離されたBAP42種を動的光散乱(DLS)によっても特性解析した。この技術は、懸濁プロファイルとして粒径分布を決定する。
【0250】
単離されたBAP42の異なる形態を0.1mg/mLの濃度に希釈した後、Zetasizer Nano ZS(Malvern社、UK)を使用する独立した実験各々について8つの測定値を得た。異なる粒子のシグナル強度パーセントを粒子の直径の関数として表して、モノマー、オリゴマー及び繊維の試料中に存在する個々の粒子のサイズ分布のプロファイルを得たことはもちろん、ある範囲の直径を有する粒子を各々が有するクラスサイズ分布のプロファイルも得た。すべての分析を独立した単離からの試料で三連で行った。結果を
図6A〜6Bに示す。
【0251】
図6Aは、モノマー(灰色)、オリゴマー(赤色)及び繊維(緑色)試料のサイズ分布のプロファイルを示す。モノマー種は、最大ピーク強度が直径122nmに対応するサイズ分布、及び2,500nmより大きい強度を有する小集団を示した。オリゴマー種は、直径164nmに対応する最大強度を有する集団内では同一のプロファイルを示したが、この外に、直径が2,500nmより大きい粒子のより有意な集団を示した。フィブリル種は、最大強度が直径142nmサイズ、531nmサイズ、及び2,500nmより大きいサイズに対応する、3つの別個の集団を示した。
【0252】
図6Bは、クラスサイズ分布のプロファイルを示し、すなわち、シグナル強度のパーセンテージの分布プロファイルを異なるサイズの粒子の範囲について流体力学的粒子径の関数として分析した。モノマー試料と比較して、オリゴマー試料は、より大きい直径への予想されたシフトを示した。オリゴマー試料については、100nm未満の分子種に起因するシグナル強度の割合は36.7%であり、その一方で100〜250nmの直径を有する分子種に起因するシグナル強度の割合は29.1%であり、したがって、(直径が100nm未満の分子種について39.9%の強度、及び直径が100〜250nmの分子種について35.2%の強度を示した)同様のサイズのモノマーと比較して、それぞれ、8%及び17%の減少を示した。とはいえ、251〜500nmの範囲の分子種のパーセンテージは同一であった。直径範囲501〜1,000nmの分子種及び直径範囲が1mmを超える分子種について、モノマー試料は、それぞれ、4.9%及び3.6%のシグナル強度パーセントを示し、同じ範囲又はクラスについて、オリゴマー試料は、それぞれ、5.8%及び12.1%の強度を示した。これらの範囲では、オリゴマー試料は、モノマー試料と比較して高い強度パーセントを明確に示し、オリゴマー試料は、直径範囲501〜1,000nmの粒子についてはモノマー試料に対して20%増加、及び直径範囲が1mmを超える粒子については234%増加を示した。
【0253】
繊維試料に関しては、モノマーとの差がさらに強調された。繊維試料では、粒子が大きいほど、強度パーセントの増加が大きく、強度パーセントが直径範囲251〜500nm、直径範囲501〜1,000nm、及び直径範囲1mm超えの粒子について、それぞれ、23.3%、20.9%及び16.6%であった。したがって、繊維とモノマーを比較すると、直径範囲251〜500nmの分子種については42%の増加、直径範囲501〜1,000nmの分子種については330%の増加、及び1,000nmを超える直径範囲の分子種については361%の増加があった。
【0254】
結論として、BAP42のモノマー形態の試料は、モノマー種の集団に対応する小サイズの集団を実際に主に有した。オリゴマー形態の試料は、モノマー試料と同様の集団に加えて、オリゴマーBAP42にまさに対応する、直径が1,000nmより大きい、より大きい分子種の集団を有した。繊維の試料は、小さい直径の集団に加えて、直径が501〜1,000nmのサイズの範囲の分子種のより大きい集団と、直径が1,000nmを超えるサイズを有する分子種の別の集団を有し、より後期のオリゴマー化及びフィブリル化段階を確かに示した。
【0255】
iii.サイズ排除クロマトグラフィー(SEC,Size Exclusion Chromatography)による特性解析
オリゴマー化混合物中のBAP42種の形成を分子サイズ排除クロマトグラフィーによって評定した。この技術は、各粒子の分子質量及び流体力学的半径に従って分子種を分離する。(より高い分子量を有する)より高度な会合体は、カラムの固体マトリックスと相互作用せず、最初に溶出し、その一方で(より低い分子量を有する)モノマー種は、固体マトリックスと相互作用し、より長い滞留時間後に溶出する。
【0256】
上で説明したように、1mg/mL BAP42調製物を16時間にわたる37℃での一定した撹拌に付した。この期間の後、得られた繊維を超遠心分離によって分離し、収集した上清をサイズ排除カラムにかけた。結果を
図7に示す。
【0257】
図7を参照すると、BAP42のモノマーとオリゴマー種の両方がこの混合物中に存在した。モノマー及びオリゴマーBAP42種の分離についての代表的クロマトグラムは、モノマー画分(青色曲線)がペプチドモノマーのみに対応する滞留時間で溶出したことを示す。16時間、37℃での一定した撹拌の結果として得た混合物のクロマトグラフィー装置への注入(緑色曲線)は、モノマーばかりでなく、オリゴマー種もより短い滞留時間で溶出することを示した。
【0258】
c.非フィブリルBAP42を標的とするsdAbの開発
非フィブリル形態を特異的に標的とするsdAbを開発するために、5段階プロセスに従った。簡単に述べると、(i)ウサギをモノマー又はオリゴマー形態で免疫し、その後、(ii)ウサギ抗体を得て、使用して、これら2つの形態各々に対する単一ドメイン抗体ライブラリー(VL)を構築し、(iii)モノマー及びオリゴマーBAP42形態を特異的に標的とする単一ドメイン抗体を、膜ファージディスプレイを使用して選択し、(iv)ELISAでそれらの結合及び発現によってさらに選択し、その後、選択されたクローンを、CAT融合アッセイを使用して安定性についてなおさらに選択し、(v)最後に最上位の候補をシークエンシングし、分析した。
【0259】
i.異なるBAP42形態によるウサギの免疫
2匹のニュージーランド白ウサギの各々を、BAP42の異なる形態の生成に関するセクションにおいて上で説明したようにBAP42のモノマー及びオリゴマー形態で免疫した。免疫は、製造業者(Ribi Immunochem Research社、Hamilton, Mont.)の指示書に従って1mLアジュバント中、2〜3週間間隔で4回の皮下注射をウサギに投与するプロトコルに従って、約100〜150μgの各精製抗原、モノマー又はオリゴマーで、74日間継続した。免疫付与プロセスを通して、血清を収集し、試料をELISAによって評価して、各抗原に対する免疫応答の進展を判定した。結果を
図8A〜8B及び
図9A〜9Bに示す。
【0260】
図8A〜8B及び
図9A〜9Bに示すように、血清力価は免疫付与の間全体にわたって増加した。これは、モノマー及びオリゴマー形態の各々についての富化及び特異性を明らかに示す。さらに、両方のウサギからの血清は、フィブリルBAP42に対する抗体のより低い力価を明らかに示した。血清力価及び抗体特異性を26日目(
図8A〜8B)及び74日目(最終採血)(
図9A〜9B)に評価した。
【0261】
具体的には、
図8A〜8Bは、BAP42モノマーで免疫したウサギ(
図8A)又はBAP42オリゴマーで免疫したウサギ(
図8B)のELISAによる免疫応答を示す。結果は、2回目の採血(26日目)に対応する血清抗体の力価測定に対応し、この場合、免疫した動物からの抗血清を、二次抗体としてHRPコンジュゲートされたヤギ抗ウサギFcポリクローナル抗体(PIERCE)を使用してELISAによりBAP42のモノマー、オリゴマー及びフィブリル200ngへの結合について分析した。
【0262】
図9A〜9Bは、血清力価及び抗体特異性を上で説明したように74日目(最終採血)に評価したときの、BAP42モノマーで免疫したウサギ(
図9A)又はBAP42オリゴマーで免疫したウサギ(
図9B)のELISAによる、より後の免疫応答を示す。得られた結果は非常に有望であり、この免疫付与プロトコルが、BAP42のモノマー及びオリゴマー形態各々に対して特異的なより多くの抗体を産生したことを示した。
【0263】
ii.sdAbライブラリーの構築
動物を74日目に屠殺し、その後、一次抗体産生及び成熟のための器官、すなわち骨髄及び脾臓を取り出した。その後、RNAを器官から抽出し、cDNAを合成して単一ドメイン抗体のライブラリーを構築した(PCR生成物の増幅及びファージミドでのクローニング)。
【0264】
具体的には、組織試料を採取し、TRI試薬(Molecular Research Centre社)をその製造業者のプロトコルに従って使用して全RNA単離用に調製した。単離した全RNAを500μlのリボヌクレアーゼ不含水に溶解し、濃度及び純度を分光光度測定によって判定した。製造業者のプロトコルを用いてオリゴ(dT)プライマー及び逆転写酵素(Superscript、Invitrogen社)を使用して、第一鎖cDNAを全RNAから合成した。
【0265】
表1に提示するセンスプライマー(可変領域の5’部分)及び表2に提示するアンチセンスプライマー(軽鎖の定常領域の3’部分)を使用して、軽鎖の可変領域をコードする遺伝子の一次増幅を行った。
【0266】
【表1】
【0267】
【表2】
【0268】
25pmolの各プライマーを使用して反応容積50μlで一次PCRを行った。2.5μlのランダムプライミングした又はオリゴ−dT cDNA(mRNA 5μgと等価)をテンプレートとして使用した。一次PCRの反応条件は、94℃で11分、続いて、30サイクルにわたって54/55/72℃で30/60/120秒、そして72℃で5分であった。すべての反応は、2.5mM MgCl
2、200μM dNTP(Roche Diagnostics社、Brussels、Belgium)及び1.25U AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Roche社)で行った。したがって、各ウサギからのcDNAを、ウサギVL sdAb(9×Vκ及び1×Vλ)コード配列の増幅のための、別個の30サイクルポリメラーゼ連鎖反応と10個の特異的オリゴヌクレオチドプライマーの組合せに付した。
【0269】
PCR生成物を2%アガロースゲルで分離し、QIAquickゲル抽出キット又はQIAEXII(Qiagen社)を使用してDNAを溶離した。RNA抽出及びcDNA合成後、純度及び濃度を判定した。
【0270】
すべてのプライマーは、SfiI部位を有した。最終PCR生成物をSfiI切断し、精製し、適切に切断されたファージミドベクターにクローニングした。ファージミドは、サプレッサー終止コドンと、精製用のペプチドタグ(His
6)及び検出用のペプチドタグ(HA)をコードする配列とを含有した。
【0271】
ベクターを使用してライブラリーを形成し、大腸菌を形質転換させた。具体的には、(既知量に対するゲル電気泳動によって判定して)約1.4μgの直線化ベクターDNAをおおよそ1〜3倍過剰のインサートと、付着末端ライゲーションについてのライゲーションのために、1Xリガーゼ緩衝液(50mM Tris pH7.5、5mM MgCl
2、1mM ジチオエリトリトール、1mM ATP、pH7.5)及び1U T4 DNAリガーゼ(Roche社)を含有する20μL反応物中でライゲーションした。ライゲーション物を16〜18時間、12〜14℃でインキュベートした。
【0272】
ライゲーションの結果及び対応する数のキュベットを氷上で10分間インキュベートした。同時に、エレクトロコンピテント大腸菌を氷上で解凍した。2μLの各ライゲーション反応物をそのエレクトロコンピテント細菌に添加し、キュベットに移し、1分間、氷上で保管した。エレクトロポレーションを2.5kV、25μF、及び200Ωで行った。室温で1mlのSOC培地で直ちにキュベットをフラッシュし、培養物を250rpmで1時間、37℃又は30℃で震盪した。次いで、100μg/mL アンピシリンと10μg/mL テトラサイクリンとを含有するLB寒天プレートに培養物を塗り広げ、一晩、37℃又は30℃でインキュベートした。
【0273】
ファージミドベクターを単離し、製造業者のプロトコルに従って宿主細胞にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、5mLのSOCを添加し、培養物を1時間、37℃で震盪した。その後、10mLのSB培地を37℃で1時間にわたって添加した。次に、4.5μLの100mg/mL カルベニシリンを添加し、培養物をさらに1時間、37℃で震盪した後、1mLのVSCM13(ヘルパーファージ、10
13pfu/mL)を15mL培養物各々に添加した。合計170mLのSB培地/carbを培養物に添加し、それらを2時間、37℃でインキュベートした。280μLの50mg/mL カナマイシンを添加し、それらの培養物を一晩、37℃で震盪し続けた。翌朝、培養物を遠心分離し、25mLのPEG−8000(ポリエチレングリコール)/NaClを添加することによってファージ上清を沈降させ、氷上で30分間、インキュベートした。ファージを上清から遠心分離し、ペレットを2mLのTBS/BSA 1%に再懸濁させ、回転沈降させ、0.2μmのフィルターに通して滅菌チューブへと濾過した。
【0274】
異なるライブラリーの構築後、所望のsdAbを、下で説明するように選択した。
【0275】
iii.非フィブリルBAP42に対するsdAbの選択 − 膜ファージディスプレイ
96ウェルポリスチレンマイクロタイタープレート内に固定化された抗原での旧来のファージディスプレイ(Barbas, et al. (1991). Assembly of combinatorial antibody libraries on phage surfaces: The gene III site. Proc. Natl. Acad. Sci. 88:7978-7982を参照されたい)の代わりに、膜によるファージディスプレイを行った。それを
図10に模式的に示す。BAP42の異なる形態に対する抗体を選択するための選択技術としてこの方法を開発して、それらの形態が所望の形状に合い、凝集を被らないことを確認した。この方法論は、BAP42の異なる形態をSDS−PAGEによって分離し、次いでウェスタンブロッティングによってPVDF膜に移送するステップを含み、そのときすべての選択ラウンドを標的抗原の固定化に役立つ膜で行った。このプロセスは「ウェスタンパニング」としても公知である(Ravn et al. (2000) “Identification of phage antibodies toward the Werner protein by selection on Western blots” Electrophoresis 21:509-516)。
【0276】
ブロットされた膜でのファージディスプレイの条件を最適化するために、幾つかの試験を行って、BAP42のモノマー又はオリゴマーに対する小ドメインの抗体の選択で使用するためのプロトコルを設計した。これらの試験は、ブロッキング条件、洗浄条件及び溶離を含んだ。これらの条件を同じプロトコルに従って別々に試験して、最適条件を特定した。ブロットされた抗原を用いずに、VCSM13ヘルパーファージ及びPVDF膜(BioRad社)を使用してこれらのプロトコルを実行して、バックグラウンド、すなわち、膜に対する非特異的結合、及び使用した溶液に対する非特異的結合を分析した。各試験の前に、第一のステップは、膜の非特異的ファージ結合に対する耐性をより大きくするメタノール(Applichem社)処理での、膜の活性化であった。
【0277】
最適化は、標準プロトコルで開始した:メタノールでの活性化後の膜をPBST中5%ミルクで1時間30分にわたってブロックし、PBST 0.2%で3回洗浄した。次いで、PBST 0.2%中1%ミルク中の1.0×10
11CFU/mLのヘルパーファージを1時間にわたって室温で添加し、PBST 0.2で5回洗浄した。次いで、グリシン pH3.0及びTris HCl pH10.5でファージを溶離し、結合ファージの力価をlogファージ大腸菌、具体的にはER2738又はSS320エレクトロコンピテントセルの感染によって決定した。
【0278】
評価した第一の条件はブロッキング溶液であった。次の6つのブロッキング溶液を評価した:PBST 0.2%中のミルク5%;PBST 0.2%中のBSA 3%;Pierceブロッキング溶液(Blocking Pierce);PBST 0.2%中のゼラチン5%;PBST 0.2%中のカゼイン0.5%;及びブロッキング溶液としてのVCSM13ヘルパーファージ。それらのすべてを4℃で一晩、評価した。洗浄条件の評価のために、次の3つの異なる溶液を試験した:PBST 0.5%;PBST 0.2%中の1M NaCl;及びPBST 0.2%中の0.5M NaCl。これらの試験も、洗浄ステップを除いて、同じ標準プロトコルに従った。
【0279】
溶離ステップを評価するために、前に選択した条件を用いて、2つの異なるタイプの溶離(グリシンでの溶離及びトリプシンでの溶離)各々について試験を行った。logファージ大腸菌、具体的にはER2738エレクトロコンピテントセルの感染によって決定した結合ファージの力価によって、結果を比較した。
【0280】
膜パニングは、次のように進行した:1μg/ウェルでBAPをブロットしたPVDF膜をメタノール100%で活性化し、次いでPierceブロッキング溶液(Pierce blocking)又はBSA 3%で一晩、4℃でブロックした。その一方で、1μgのフィブリルをELISAプレートの4つのウェル内に固定化し、そのプレートを一晩、4℃でインキュベートした。このステップは、繊維に対する特異性がより高いファージ/抗体を除去するために行った。翌日、膜及びウェルをPBSで1回洗浄し、ブロックした。そのELISAプレートを、膜に使用したのと同じブロッキング溶液で、1時間、37℃でブロックした。ブロッキング後、1%結合溶液、例えばPBS−Pierce、中の調製したてのファージ 1.1mLをフィブリルELISAプレートに15分間にわたって室温(RT,room temperature)で添加した。膜をヘルパーファージ(1×10
12ファージ/mL)とともに30分間、室温でインキュベートし、その後、PBSで1回洗浄した。
【0281】
洗浄後、フィブリルELISAプレートから得た調製したてのファージとともに膜を2時間、20〜25℃で、穏やかに揺動しながらインキュベートした。その後、ファージ溶液を廃棄し、揺動プラットフォームにおいて膜をPBS/Tween 0.2%又は0.5%で5回洗浄して、抗原に対して特異的でないファージを除去した。膜のモノマー、オリゴマー及びフィブリルに対応する領域をハサミで切断し、10mg/mLの調製したてのトリプシン 1mLを30分にわたって37℃で添加して、膜内の抗原に特異的である抗体を回収した。
【0282】
ファージ溶離後、大腸菌SS320培養物(おおよそ0.6であるO.D.)を30分間、37℃で所望の抗原に対応するファージ溶離物に感染させることによってファージ再増幅を果した。インキュベーション後、3μLの100mg/mL アンピシリンを培養物に添加し、1時間、37℃、250rpmでインキュベートした。その後、4.5μLの100mg/mL アンピシリンを添加し、さらに1時間、250rpm、37℃で震盪した。最後に、46μLの100μg/mL アンピシリンと184μLの5mg/mL テトラサイクリンとを含有する85mLの予温SB培地を添加した。その培養物を一晩、210rpmで、37℃でインキュベートした。翌日、100mg/mL アンピシリンと10mg/mL テトラサイクリンとを含有する5〜95mLのSB培地を、O.D.が約0.6に達するまで、添加することによって、培養物を希釈した。その後、培養物を1mLのVCSM13ヘルパーファージに感染させ、2時間、210rpm、37℃でインキュベートした。140μLの50mg/mL カナマイシンを添加し、一晩、37℃、210rpmで震盪し続けた。産生されたファージを前に説明したようにPEG 8000及びNaClでの沈降によって回収し、新たな選択ラウンドを行った。
【0283】
膜ファージディスプレイを使用する第4回膜パニング(選択ラウンド)後、次のものを得た:BAP42のオリゴマー形態に特異的な7.5×10
5ファージ/mL、及びBAP42のモノマー形態に特異的な1.8×10
5ファージ/mL。表3は、ELISAウェル内に固定化されたオリゴマー形態を用い、標準ファージディスプレイプロトコルを使用して第4回パニング(選択ラウンド)後に得た結果を示す。膜ファージディスプレイを使用した結果を、各ラウンドに使用した条件とともに下の表4〜5に示す。
【0284】
【表3】
【0285】
【表4】
【0286】
【表5】
【0287】
iv.CAT融合アッセイを使用する安定した単一ドメイン抗体ライブラリーの選択
標的分子種、モノマー及びオリゴマーに特異的な安定した抗体をプールした後、次の目標は、対応する抗原に対して高い免疫特異性を示す候補を選択することであった。したがって、スクリーニングを行い、その後、抗オリゴマー及び抗モノマー活性についてELISAによって評価して、それぞれの抗原に対する結合プロファイルを決定した。結果を
図11〜12に示す。
【0288】
具体的には、
図11は、BAP42のオリゴマー形態を用いてELISAによって分析した、膜ファージディスプレイから得た94クローンの結合プロファイル及びライゲーション値を示し(M−モノマー、O−オリゴマー、F−繊維;X−BSA 3%)、
図12は、BAP42のモノマー形態を用いてELISAによって分析した及び膜ファージディスプレイから得た94クローンの結合プロファイルライゲーション値を示す(M−モノマー、O−オリゴマー、F−繊維;X−BSA 3%)。
【0289】
以前に記載されたような改良型CAT融合アッセイ(例えば、Goncalves et alのWO2008/136694号パンフレットを参照されたい)を使用して、クローンを安定性についてさらに選択した。具体的には、CAT遺伝子をPCRによってpCAT(Stratagene社)から増幅し、EcoRI及びSphI制限部位を使用してpET由来プラスミドに挿入してpE−CATを生成した。可変ドメインをクローニングするために最初に使用した5’PCRプライマーも、2つの逐次的な異なるSfiIクローニング部位と、CAT遺伝子の開始直前にアンバーコドン(TAG)とを含有するように、設計した。
【0290】
CAT遺伝子に融合した単一ドメイン抗体ライブラリーをクローニングするために、パニングによって選択されたファージミドベクターからPCRによってSDVL断片を生成した。得られたSDVL PCR断片をゲル精製し、制限エンドヌクレアーゼSfiIで消化し、適切なSfiI切断ベクターpE−CATに独立してクローニングした。pSDVL−CATコンストラクトは、N末端His
6アフィニティータグ及びアンピシリン耐性遺伝子も含む、強力なLacプロモーターの制御下にあった。あるいは、クローニングされた配列をCATとの融合タンパク質として発現するように設計された容易に入手できるベクター、例えばPCFN1ベクター(その全体が参照により組み込まれている、Maxwell, et al (1999) J Prot Sci 8:1908-1911を参照されたい)に、SDVL断片をクローニングしてもよい。
【0291】
ER2783細胞(New England Biolabs社)を各単一ドメインCAT融合ライブラリーで形質転換させることによって、クロラムフェニコール耐性アッセイを行った。形質転換混合物を5mLのSOCに接種し、37℃で1時間インキュベートした。次に、3μLの100mg/ml アンピシリンを有する10mLのSB培地を各ライブラリーに添加した。合計15mLの各培養物を1時間、37℃で震盪した。その後、4.5μLの100mg/ml アンピシリンを添加し、培養物を1時間、37℃で震盪した。次いで、85μLの100mg/ml アンピシリンを有する85mLのSB培地を添加し、培養物を一晩、37℃で増殖させた。翌日、600μLの各培養物を使用して、100μg/mL アンピシリンを含有する20mLのSB培地に接種した。
【0292】
培養物の光学密度が(600nMで)0.9に達したら、0.5mM IPTGの添加によってCAT融合単一ドメインタンパク質の発現を誘導した。37℃で2時間のインキュベーション後、各ライブラリーの100μLアリコートをIPTG(200μg/mL)及び様々な濃度のクロラムフェニコールとともに寒天プレートに蒔いた。プレートを37℃で16〜20時間インキュベートした。37℃インキュベーション期間後にコロニーが出現した時点での最高クロラムフェニコールレベルとして耐性レベルを定量した。1.86mM又はそれより高いクロラムフェニコール濃度で検出されたコロニーを、安定しているとして選択した。結果を下の表6に示す。表中、+++は、検出された600を超えるコロニーを示し、++は、検出された400〜600コロニーを示し、+は、検出された1〜399コロニーを示し、−は、対応するクロラムフェニコール濃度で検出されたコロニーがなかったことを示す。「sdAb2」、「sdAb6」「sdAb20」及び「sdAb26」は、BAP42オリゴマーに結合するsdAb候補である。
【0293】
【表6】
【0294】
v.非フィブリルBAP42に対する選択sdAbの分析
ELISAによって分析したクローンから、モノマー及びオリゴマーに対して高い特異性を有するがフィブリルBAP42を認識しない、ある特定のクローンを、シークエンシングした。配列情報を配列番号1〜21として配列表に提供する。シークエンシング後、候補間の相同性を評価し、相同性アラインメントを行い、ホモロジーツリーを構築した。
【0295】
10の抗体を選択して、ウェスタンブロットによって異なるBAP42形態についてのそれらの認識を評価した。結果を
図13及び
図14に示す。
【0296】
具体的には、
図13は、オリゴマーBAP42に対するELISAによる10クローンの精製及び分析後、ウェスタンブロットによって精製及び検出した、10クローンの検出を示す。
図14は、PVDF膜中の異なるBAP42アイソフォームのウェスタンブロット分析での主にモノマー及びオリゴマーの認識を示す。他の選択抗オリゴマーsdAbは、BAP42オリゴマー形態の認識に関して同様のプロファイルを示す。
【0297】
精製し、BAP42オリゴマーの認識に関して検証したら、精製された抗オリゴマー抗体を、ペプチドのフィブリル形態への凝集を阻害するそれらの能力について試験した。このアッセイは、チオフラビンT(ThT,thioflavin T)を使用して行った。チオフラビンTは、上で論じたように、「ベータシート」を多く含む二次構造(フィブリルBAP42にまさに特有の構造)を認識するプローブである。したがって、候補抗オリゴマーsdAbによる凝集阻害が大きいほど、形成されるフィブリルは少なく、それ故、アッセイ中にThTによって放出されるシグナルは小さい。他の選択抗オリゴマーsdAbは、同様の凝集阻害を示す。
【0298】
抗オリゴマーsdAbを、BIAcoreによってBAP42オリゴマーに対するそれらの相対結合プロファイルに関してさらに特性解析した。結果を
図15に示す。
【0299】
最後に、BIAcoreによって解析した抗体から、BAP42のオリゴマー形態への最高結合プロファイルを示す候補(すなわち、「VL#26」、「VL#20」、「VL#6」及び「VL#2」)を、BIAcoreでのさらなる動態研究及び生体内分布研究のために選択した。結果を、
図16A〜16D(動態研究)にそれぞれ、及び下に提示する表14〜16(生体内分布研究)にそれぞれ示すことにする。
【実施例2】
【0300】
ウイルスカプシドタンパク質からのBBB特異的送達ペプチドの開発
送達ペプチドをカプシドタンパク質(DEN2C)に基づいて調製した。DEN2Cのセグメントは、DNAカーゴの細胞内在化を果す能力と、緑色蛍光タンパク質(GFP,Green fluorescent protein)の発現を示した(Freire, et al. FEBS (2014) 281(1):191-215)。DEN2Cタンパク質をこの実施例で使用して、6段階プロセスで血液脳関門(BBB)に特異的なペプチドライブラリーを構築した。簡単に述べると、(a)全DEN2Cタンパク質の移行能力を判定し、(b)DEN2Cペプチドを産生し、放射標識し、その後(c)BBB特異的移行及びBBB細胞内在化についてインビトロで試験し、及び(d)BBB細胞に対する毒性について試験し、(e)それらの膜電位効果及び分配係数に関して研究し、そして最後に(f)生体内分布及び安定性についてインビボで試験した。
【0301】
a.インビトロBBBモデルにおけるDEN2C移行能力の判定
先ず、DEN2C遺伝子によってコードされた全タンパク質配列をファージの表面に露出させ、それを使用してBBBモデルとの相互作用を試験した。
【0302】
所望の遺伝子を含有するファージミドDNA(DEN2C−pIII融合ファージミド)を大腸菌SS320細胞に導入し、ペプチドをコードする遺伝子を細胞の周辺質において発現させた。M13ファージの形成に重要なエンベロープタンパク質及び遺伝子を、パッケージングシグナルが欠失しているヘルパーファージによって供給した。宿主細菌のファージミド及びヘルパーファージでの同時感染によって、pIII−DEN2融合体を露出する、ハイブリッドビリオン(ファージ−DEN2又はDEN−ファージ)を産生した。
【0303】
トランズウェルシステムにおいて増殖するBECを使用して、インビトロBBBモデルを調製した。具体的には、トランズウェルシステムは、「組織培養インサート」の上の区画(頂部)と下の区画(基底部)の間にインビトロで内皮バリアを形成する、ミクロ多孔質膜上のbEnd3細胞で構成されていた。次いで、ファージ−DEN2をbEnd3細胞とともにインキュベートした。すなわち、調製したファージを上の区画(頂部)に添加し、30分間インキュベートした。ヘルパーファージ、カプシドタンパク質に融合したファージ(DEN−ファージ)、及びBBBを通過する陽性対照(+ファージ)の試料を使用して、この実験を反復した。ヘルパーファージ、DEN−ファージ及び陽性対象の試料についての、総初期ファージ(ストック)に対する、BBBモデルの両側の頂部及び基底部におけるファージ力価の比較に基づいて、DEN−ファージの移動能力を判定した。結果を
図17に示す。
【0304】
図17が立証するように、DEN2C遺伝子は、陽性対照と比較してファージの移行能力を強化する。結果は、頂部と基底部の両方が10
12という同じファージ力価を有する場合、モデルBBBを介して頂部と基底部の間で平衡が達成されたことを示した。これらの結果は、驚くべきことに、DEN−ファージが内皮バリアを通って自由に移動したことを立証する。バリアを移行する能力を有するファージを基底部から収集し、再増幅した。
【0305】
モデルバリアの完全性を保証するための試験を行った。バリアの完全性は、様々な方法で、例えば、異なる分子質量の蛍光分子を使用して、試験することができる。具体的には、使用したインビトロBBBシステムにおいて蛍光分子と40kDaデキストラン(FD40)を使用して内皮バリア完全性を試験した。FD40を頂部に適用した後、細胞不含対照(ブランク)、bEnd3細胞を有するBBBモデル(細胞)、及びファージとのインキュベーション後のBBBモデル(ファージ)のいずれかを使用して、基底部における蛍光をアッセイした。結果を
図18に示す。
【0306】
図18が示すように、細胞バリアでの分子の滞留(FD40による通過2%未満)は、バリアがない場合(基底部では約8%FD40)と比較して大きかった。さらに、バリアの完全性は、ファージとのインキュベーションによる影響を受けるようには見えなかった(ファージが存在するFD40の通過は依然として約2%)。
【0307】
b.DEN2Cペプチドの産生及び放射標識
約5〜約25個のアミノ酸を有する、タンパク質のDEN2Cドメインに由来する小ペプチドを、カップリング−洗浄、洗浄そして脱保護の反復サイクルからなる固相でのFmoc化学に基づいて合成した。
【0308】
次いで、これらのペプチド(配列番号22〜27及び127によるもの)をキレートとコンジュゲートさせた、又は放射性同位元素、テクネチウム又はガリウムでマーキングした。次いで、BBBインビトロモデルにおけるペプチドの移行能力と細胞内在化についてのそれらの能力の両方を分析するために、化合物をbEnd3細胞と相互作用させた。結果を確認できるようにするために、2つの異なるタグをこれらの分析に使用した。
【0309】
より具体的には、コンジュゲーションは次のステップを含んだ:樹脂を膨潤させるステップ、末端アミノ酸の脱保護ステップ、活性化剤と塩基を使用するコンジュゲーション反応ステップ、及び切断終了時にペプチド−キレート生成物を得るステップ。使用したキレートは、ピラゾール誘導体、例えば、テクネチウムでの標識を促進するt−BuPz4(Morais, et al. J Med Chem (2013) 56(5):1961-73)、及びガリウムでのマーキングを促進するNODA-GA(tBu)3(4−(4,7−ビス(2−tert−ブトキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7−トリアザシクロノナン−1−イル)−5−(tert−ブトキシ)5−オキソペンタン酸)であった。
【0310】
HPLC(High-performance liquid chromatography、高速液体クロマトグラフィー)を行って、ペプチド−キレートを精製し、精製を質量分光測定(MS,mass spectroscopy)によって確認した。結果を
図19A〜19F(異なるペプチドについて得たHPLC結果)及び
図20A〜20F(t−BuPz4のMWが326.6gmol
−1の場合の異なるペプチドについてのMS結果)を示す。HPLC結果は、ペプチド単独(より短い滞留時間)及びキレートとコンジュゲーションしているペプチド(より長い滞留時間)に対応する、2つの主要な分子種を示した。MS結果は、(ペプチド単独より高いMWを有する)ペプチド−キレート種の精製を確証した。同様に、NODA-GA(tBu)3とのコンジュゲートを分析した(データを示さない)。最後に、ペプチドに8×10
−5Mの最終濃度で放射標識した。
【0311】
元のペプチド及びコンジュゲートしたペプチドの特徴を下の表7に要約する。表7は、各ペプチドの名称、等電点(PI,isoelectric point)、電荷(正の残基の数)、計算質量(Daで)、及び実測されたイオン、並びに対応するコンジュゲートについての名称、計算質量及び実測イオン、並びにまたHPLCでの滞留時間、及び分配係数(log Po/w)を収載するものである。これらの値によってペプチドの親水性の性質を判定することが可能であり、pepH1及びpepH4を、最も親水性が高いペプチドと同定した。
【0312】
【表7】
【0313】
c.DEN2CペプチドのBBB特異的移行及び細胞内在化のインビトロ試験
上で説明したのと同じインビトロBBBモデルを使用して、テクネチウム及びガリウムで標識したペプチドを、内皮バリアを通過する能力について試験した。各ペプチドについて、「組織培養インサート」で培養したbEnd3細胞を、5μCi・mL
−1標識ペプチドとともに、異なるインキュベーション時間:15分、5時間及び24時間、インキュベートした。対照として、細胞を有さないモデル(無細胞対照)又は(フィルター)を使用し、細胞を有するモデル(BBB)又は(細胞)と比較した。5時間インキュベーションについての結果を
図21A〜21Fに示す。
【0314】
図21A〜21Fは、BBBモデル又は(対照として)無細胞を使用する、上記インビトロモデルとの5時間のインキュベーション後の頂部及び基底部における放射性同位元素テクネチウム標識ペプチドの活性パーセントを示すものであり、値は、2回の独立したアッセイから得た。放射性同位元素活性は、テクネチウム標識ペプチドを使用する5時間のインキュベーション後の移動が、バリアが存在する場合とそれがない場合とで異なったことを示した。これは、ペプチドの自由な通過に干渉するバリアを細胞が実際に形成したことをさらに確証する。さらに、結果は、有望な候補を示した。具体的には、pepH1及びpepH3の各々について、細胞バリアの存在下でのわずか20%と比較して、対照では50%の過剰通過があった。pepH2の移行は、対照においても、BBBモデルにおいても観察されなかった。PepR’についての通過は、対照とBBBモデルの両方において同様であった。
【0315】
15分、5時間及び24時間のインキュベーションについての結果を
図22A〜22Fに一緒に示す。すなわち、
図22A〜22Fは、BBBモデル又は(対照として)無細胞を使用する、上記インビトロモデルとの15分、5時間及び24時間のインキュベーション後の頂部及び基底部における放射性同位元素テクネチウム標識ペプチドの活性パーセントを示すものであり、値は、2回の独立したアッセイから得た。バリアの完全性を確証することはもちろんバリアを通過するペプチドを同定することになる差が、この場合もやはり観察された。具体的には、pepH2は、24時間後でさえ限られた移行を示し、バリアを通過したペプチドは9%に過ぎなかった。これは、上で述べたように、高い遮断能力を有するバリアが形成したことを確証する。とはいえ、pepH1及びpepH3は、驚くべきことに、このバリアを越える有効な移行を示し、すなわち、24時間後に基底部で約70%放射活性を各々が示した。pepH4及びpepMも、良好な移行及び移動能力を示す(それぞれ、約60%及び50%を示す)。pepR’は、バリアの通過に関してより大きく限定され、インサートの表面と強く相互作用し、回収困難であった。それ故、pepR’をさらなる試験から除外した。
【0316】
BBBのモデルを試験することに加えて、取り込み試験を行って、候補ペプチドの内在化能力を判定した。bEnd3細胞を24ウェルプレートで培養した。各時点で、細胞と相互作用していなかったペプチドを含有する培地を収集した。次のステップでは、細胞膜とより強く結合したペプチドを放出する酸性緩衝液で細胞を洗浄した(試料酸洗浄)。最後に、細胞を溶解して、内在化ペプチドを放出し、細胞内部の活性を定量した。結果を
図23A〜23Eに示すことにする。
【0317】
図23A〜23Eは、bEnd3細胞との15分、5時間及び24時間のインキュベーション後の培地、洗浄用緩衝液(酸洗浄液)及び溶解物中の放射性同位元素テクネチウム標識ペプチドの活性パーセントを示すものであり、値は、2回の独立したアッセイから得た。結果は、BBBモデルを移行する良好な能力を有するペプチドが、細胞との低い相互作用も有することを示した。具体的には、pepH1、pepH3、pepH4は、主としてインキュベーション培地中に残存した。pepH2は、細胞と非常に相互作用して細胞に内在化することが観察され、溶解物中で40%を超える放射活性を示した。pepM’は、高い移動(約50%)を示すばかりでなく、細胞内に内在化され、蓄積されるようにも見えた(溶解物中の放射活性約13%)。
【0318】
これらの有望な結果は、驚くべきことに、pepH1及びpepH3がBBB特異的送達ペプチドをもたらすことも立証する。表8は、次の通り、配列情報を提供するものである:
【0319】
【表8】
【0320】
表9は、15分、5時間及び24時間のインキュベーション後の、テクネチウム及びガリウムで標識したペプチドについての、取り込み(内在化)及び細胞相互作用、並びにインビトロBBBモデルを越える移行に関する結果を、放射性ペプチドの回収パーセントに基づいて要約するものである。この表は、ペプチドを収載するものであり、各ペプチドの名称、各々25分、5時間及び24時間のインキュベーション後の%BBB移行、細胞相互作用%及び%内在化を提供する。
【0321】
【表9】
【0322】
表9が示すように、移動の結果は、両方のタイプのマーキングに再現性があった。pepH1及びpepH3は、両方とも、多い(約70%)移動を示し、細胞との相互作用を殆ど示さなかったので、BBB特異的送達ペプチドをもたらす。対照的に、pepH2は、細胞と強く相互作用するようであり、少ない移動を示した一方で、pepH4及びpepMは、移動能力を有するばかりでなく、細胞と相互作用するようにも見えた。要約すると、このBBBインビトロアッセイは、pepH1及びpepH3の多い移行(24時間で70%を超える)及び少ない細胞相互作用/細胞への蓄積を立証した。しかし、pepH2は、少ないBBB移行、並びに多い細胞相互作用及び細胞への内在化(40%を超える)を提示した。さらに、これらの結果は、pepH1及びpepH3が、BEC内に少ししか捕捉されないばかりでなく、水性媒体への高い溶解度とBBBを越える移行の向上も兼ね備えていることを立証した。
【0323】
d.毒性:pepH1及びpepH3の存在下での細胞生存率及びBBB完全性のアッセイ
選択ペプチドのBBB細胞に対する可能性のある毒性を試験するために、5×10
4個のbEnd3細胞を96ウェルプレートにおいて100μL/ウェルで培養し、24時間インキュベートした。その後、(0.1〜50μMの濃度で添加した)pepM’を除いて、ペプチドを0.1〜100μMの濃度で添加した。生存率100%を与える対照として、無血清培地を有するウェルを組み入れた。
【0324】
24時間のインキュベーション後、細胞代謝活性を評定するための比色アッセイであるMTTアッセイを行った。PBS中5mg/mLのMTT溶液を各ウェルに添加し、2時間インキュベートした。この期間の後、溶液を除去し、DMSOを添加して、形成された青紫色結晶を可溶化した。吸光度を540nmで測定した。生存率パーセンテージ[(吸光度
ペプチド処理細胞/吸光度
未処理細胞)×100]を計算し、IC50値を3回の独立したアッセイから計算した。結果を
図24A〜24Eに示す。
【0325】
図24A〜24Eが示すように、選択ペプチドは、細胞生存率に影響を与えず、具体的には、記載したアッセイを使用して観察可能な影響はなく、測定可能な影響もなかった。生存率の小さい減少がpepH2及びpepM’の各々で観察されたが、これは、実際には、ペプチドを希釈するために使用したDMSO濃度に起因した(結果をDMSO対照で得たものと比較することによって達した結論である)。
【0326】
細胞生存率及びペプチド毒性の判定に加えて、選択ペプチドの存在下でのバリア完全性を確認するためのアッセイを行った。BBBを通過しない(それぞれ、4kDa及び40kDaの分子量を有する)蛍光デキストランFD4及びFD40を、上で説明したのと同様に使用した。326Daの分子量を有する蛍光分子(FITC)を対照として使用した(文献に基づいて、500Da未満の分子量を有する分子は移動能力を有しうる)。
【0327】
bEnd3細胞を「組織培養インサート」において上で説明したように培養し、各々がおおよそ0.1μM及び1μMの濃度の様々なペプチドとともに24時間インキュベートした。すなわち、放射標識ペプチドを使用して、細胞を24時間にわたって5μCi・mL
−1(おおよそ0.1μM)とともに、及びそれより100倍高い濃度でインキュベートした。pepH2及びpepM’は、可溶化にDMSOを必要とし、ペプチド/DMSO濃度が高いほど、結果として、誤差が大きく、細胞死が多かった。40μM未満の濃度については、細胞死がなかった。値は、2回の独立したアッセイから得た。結果を
図25A〜25Cに示す。
【0328】
図25A−25Cは、BBB細胞を有さないフィルター(対照)を通過する、bEnd3バリアを通過する、及び異なるペプチドとプレインキュベートしたbEnd3バリアを通過する、蛍光分子(ストック)の移動能力を示す。各々の蛍光分子は、細胞を使用する実験(BBB)より対照(フィルター)実験での方が多い移行を示した。これにより、インビトロBBBモデルアッセイが機能性であることが実証される。BBB実験からの結果とBBB+ペプチド実験からの結果の比較は、予想した通り、分子量が高いほど移動能力が低いことを示した。
【0329】
重要なこととして、異なるペプチドの存在下での頂端区画からの蛍光プローブ(FITC、FD4及びFD40)の排除は、細胞バリアの開口部及び傍細胞への漏出が存在しないことを明らかに示す対照と同様であった。さらに、細胞生存率アッセイは、100μMのペプチドであっても、生細胞のパーセンテージが90%より高いことを示した。したがって、生存率及びバリア完全性試験からの結果は、選択ペプチドが、驚くべきことに、毒性でないことを立証した。
【0330】
e.ペプチドpepHI及びpepH3の膜電位並びにpepH3のK
pに対する効果
ペプチドpepH1及びpepH3を膜モデルとの、具体的には100nm単層小胞(「LUV」)との、それらの相互作用について研究し、pepH2を移動能力に関する陰性対照として組み入れた。異なる量の脂質膜成分、例えば、POPC、POPS、POPG及びコレステロール(ChoI)を有する、異なる脂質組成で、小胞を作製した。POPCは、生体膜において見出されるものと同様の流動特性を有する脂質である。POPCの存在下でコレステロールは流体膜に剛性を付与し、それによって真核生物の膜の二重層に存在することが公知の「脂質ラフト様プラットフォーム」の形成が可能になる。POPS及びPOPGは、真核細胞及び細菌細胞にそれぞれ存在する負荷電脂質である。上で述べたように、大多数の真核細胞はそれらの膜の内部に負荷電脂質を有するが、BBBからの内皮細胞は、他の内皮からの細胞と比較して高い負電荷をもつ表面を有する。この負電荷は、その負荷電脂質にばかりでなく、より高いグリコシル化レベルにも起因する。いずれにせよ、POPS及びPOPGの負電荷によって、負荷電BBBを模倣するモデルが得られ、それによって、選択ペプチドとそれらの静電相互作用の分析が可能になる。
【0331】
異なる脂質組成を試験した:POPC,POPC:POPS(4:1)、POPC:POPG(4:1)、POPC:Chol(2:1)、POPC:POPS(3:2)、及びPOPC:POPS(1:4)。結果を
図26A〜26Cに示す。
【0332】
図26A〜26Cは、プローブ、ジ−8ANEPPSを使用して膜の両極性電位の乱れを評価するアッセイで得た結果を示す。pepH1は、微分スペクトルの変化を示さず、したがって、試験した様々な膜モデルにおいて相互作用を提示しなかった。pepH3は、膜との、特に、POPC:POPS(1:4)などの負荷電膜との、相互作用を示す、スペクトルの変化を示した。最後に、pepH2は、試験した様々な膜モデルとの高い相互作用を示した。これらの結果は、pepH2が高い内在化パーセンテージ並びにpepH1及びpepH3と比較して高い細胞相互作用を示した、BBBモデルを使用した結果と、よく相関した。
【0333】
pepH3については、このペプチドが元々トリプトファンを提示し、したがって、この脂質組成物をうまく投与することによってpepH3の親和定数を決定することができたので、「分配係数」又は「親和定数」も決定した。結果を
図27及び表10に示す。
【0334】
図27及び表10が示すように、このアッセイは、POPC:POPS(1:4)の親和定数が、研究した他の脂質組成についてのものより(例えば、K
p=324を有するPOPC:POPS(4:1)と比較して)5倍高い(K
p=1,558)ので、POPSを多く含む膜モデルとpepH3のより高い相互作用を確証した。pepH2及びpepH3は、疎水性(Po/w)が最も高いペプチドである。加えて、pepH2は、膜モデルの様々な脂質組成物と相互作用するが、pepH3は、PSを多く含む膜(負荷電リン脂質)としか相互作用しない。得られた蛍光スペクトルによって、pepH1は、研究した脂質膜と相互作用せず、様々な膜モデルの双極子ポテンシャルの変化を示さなかったが、その一方でpepH2は、すべての膜モデルとのより高い相互作用を示し、pepH3は、PSなどの負電荷を多く含む脂質モデルに対して、より高い相互作用を示すことが確認された。
【0335】
【表10】
【0336】
これらの研究、例えば、異なる細胞区画についての特異的マーカー又は細胞阻害剤も使用する研究は、これらのペプチドについての移動メカニズムの理解も促進した。
【0337】
f.ペプチドpepHI及びpepH3の生体内分布及び安定性についてのインビボ試験
BBBを通過する能力をインビボで評価するために、選択ペプチド、pepH1及びpepH3をCD1マウスにおいて生体内分布について分析した。これらのペプチドを8.5×10
−5Mの最終濃度のテクネチウムで標識し、PBSで希釈した。CD1マウスに注射した(iv注射、尾静脈)。インキュベーションの5及び60分後に頸椎脱臼によってマウスを屠殺した。所望の組織を切断し、洗浄して過剰な血液を除去し、計量し、放射活性について測定した。異なるペプチドのテクネチウム放射活性を異なる器官について測定した。
【0338】
最初の結果を表11に示す。表中の「%I.A.」は、「%注射された活性」、すなわち、最初に注射した全放射活性量と比較した、所与の器官において測定された放射活性量を指す。
【0339】
【表11】
【0340】
表11が示すように、マウスに10μgのpepH1及びpepH3を注射したとき、脳における放射活性は、0.11〜0.15%であると判定された。腎臓及び肝臓などの排出器官への蓄積を考えれば、60分後にはペプチドの大半が排出されたことが認められた。脳で収集されたパーセンテージは、試験した用量の約0.15%であり、したがって、選択ペプチドの驚くほどよい移行パーセンテージが得られた(Rosler et al. Neuropharmacology (2011) 61:1413-1418、及びYu et al. Sci Transl Med (2011) 84(3):84ra44と比較されたい)。
【0341】
各ペプチドのより高い用量、具体的には100倍増加を用いて、及び陰性対照としてpepH2を使用して、並びに2分及び60分間インキュベーションして、生体内分布研究を反復した。組織/器官1グラム当たりの注射放射性ペプチド活性のパーセンテージで組織生体内分布プロファイルを測定した。結果を表12に提示する。
【0342】
【表12】
【0343】
140μgのペプチドは、次の通りのモル量に相当する:pepH1について140μgは1.15mMに等しく、pepH2について140μgは0.84mMに等しく、pepH3について140μgは1.67mMに等しく、及びpepH4について140μgは0.524mMに等しい。表12が示すように、ペプチドpepH1及びpepH3については140μgに並びにpepH2については80μgに用量を増加させると、脳内のpepH3に起因する放射活性は倍増(0.31%)したが、pepH1に起因する%放射活性の増加はなかった。これらのペプチド(pepH1及びpepH3)について、放射活性は、排出器官、例えば、腎臓及び肝臓に蓄積したが、60分までにかなりの減少が観察された。これは、これらのペプチドの大部分がその時間までに排出されたことを示す。
【0344】
pepH2は、60分後に肝臓内の蓄積増加を示すばかりでなく、排出のための器官に加えて肺などの他の器官にも蓄積した。脳内の放射活性レベルに関して、pepH2及びpepH3は、両方とも、0.37%を示したが、pepH2は60分後に0.2%を示した。さらに、上で述べたように、pepH2が非常に疎水性であることから予想された通り、60分後に排出されたpepH2(12.7%)は、pepH1及びpepH3(それぞれ、32.7%及び36%)と比較して少なかった。
【0345】
要約すると、pepH1、pepH2及びpepH3は、迅速な脳への取り込み(2分後)を実証した。pepH1及びpepH3については、脳への取り込み後、迅速に脳から洗い出され、相伴って殆どの器官から全放射活性が迅速に除去された。放射性ペプチドは、血液、肝臓、腎臓及びよく洗浄される器官から迅速に排除されて、腸に蓄積する。1時間の時点で、注射活性の重要な画分が排出された(30%を超える)。特に、pepH2は、脳によって取り込まれたが、脳からの排出は、より緩徐であった。肝臓、脾臓及び肺への蓄積も観察された。これらの結果は、pepH2の高い疎水性と一致した。理論によって拘束されるものではないが、このデータは、BBB移行のAMTメカニズムと一致した。
【0346】
最後に、ペプチドの安定性を判定した。尿及び血液を死後の動物から取り出し、濾過し、RT−HPLCによって分析した。HPLC分析を行って、投与5及び60分後の血液及び尿中でのpepH1及びpepH3ペプチドの安定性を、それぞれの元々の調製物と比較して評定した。結果を
図28A〜28Dに示す。
【0347】
図28A〜28Dは、pepH1及びpepH3についての動物への注射前のその元々の調製物中の、そしてその後、注射から5及び60分後の、血液及び尿中の各々のプロファイルを示す。結果は、それらのペプチドが血液及び尿中で驚くほど安定しているが、より短い滞留時間を有する新たな分子種が60分後に尿中に現れることを証明した。
【0348】
要約すると、インビトロ及びインビボでの結果は、選択DEN2CペプチドがBBBを効率的に通過することを示す。特に、上で述べたように、これらの結果は、驚くべきことに、pepH3が脳に浸透し、血液循環に戻って排出されることを実証した。したがって、pepH3を、文献(Muruganandam, et al. (2002) FASEB J, 16(2): 240-241、及びAbulrob, et al. (2005) J Neurochem 95(4):1201-1214)に記載されている他の分子より多い又はそのような分子に匹敵する脳への送達を示すとともに、脳に侵入でき、脳から退出できることはもちろん、排出器官に加えて他の臓器に蓄積もしないという驚くべき利点を示す、例示的な送達ペプチドであると同定した。実際、脳内のpepH3のパーセンテージは、非常に少数の公知の「高性能」BBB移行ペプチドに匹敵した。例えば、他の放射標識ペプチド、例えば、TAT、ペネトラチン、synB1及びその他のものの脳への取り込み率は、組織1グラム当たりたった0.2〜0.9%IDの範囲である(Sarko, et al., Mol Pharm (2010) 7(6):2224-2231)。pepH3を、上に記載した例示的な抗BAP42オリゴマーsdAbへの結合のために選択した。
【実施例3】
【0349】
抗非フィブリルBAP42 sdAb及びBBB特異的送達ペプチドの構築
アルツハイマー及び関連障害を治療するための治療薬のバイオアベイラビリティを増加させるために、所望の送達ペプチドをBAP42オリゴマーに特異的な選択sdAbとコンジュゲートさせることによってコンストラクトを調製した。この方法は、次の5段階を含んだ:(a)被検sdAbを有する送達ペプチドをテストクローニングする段階、及び(b)それらの発現を判定する段階、続いて(c)抗体−ペプチドコンストラクトを調製する段階、(d)BAP42凝集を妨げるそれらの能力を判定する段階、そしてその後(e)それらのインビボでの生体内分布及びBBB通過を分析する段階。
【0350】
a.被検sdAbを有する選択送達ペプチドのテストクローニング
安定性(例えば、良好な発現レベル、及び発現したときの可溶性)及び良好な活性(例えば、低い毒性での有望なBBB特異的通過)の点で有望な融合コンストラクトを選択するためにテストクローニングを行った。具体的には、pepH1、pepH2、pepH3及びpepM’のテストクローニングを行い、ここでは各ペプチドを、最終抗体−ペプチドコンストラクトを模倣するように無関係の抗体と融合させた。
【0351】
pepH2を移動の陰性対照として使用した。使用した無関係の抗体は、非常に安定しているsdAbであって、最終抗体−ペプチド生成物を模倣するのに役立つsdAbである。N末端、C末端又は両方に送達ペプチドを有する二重特異性抗体のような形式を含む、様々な形式でコンジュゲーションを行った。ヒスチジンタグ、HA及びsfil部位を含む被検sdAbのN又はC末端のどちらかに、リンカーを使用してpepH1、pepH2、pepH3又はpepM’(「pepDEN」)を結合させた。
【0352】
b.被検抗体−ペプチドコンストラクトの発現
抗体−ペプチドコンストラクトをPCRによって増幅し、次いで精製し、その後、発現ベクター、すなわち発現ベクターT7及びpET21に挿入し、シークエンシングによってキメラを確認した。その後、それらのキメラを使用して、細菌細胞、具体的には細菌株BL21を形質転換させた。BL21の形質転換によって幾つかのコロニーが産生された。それらのコロニーをPCRによって「スクリーニング」して、所望のクローンを同定した。同定された所望のクローンを、IPTG又は自動誘導培地を使用して発現させた。
【0353】
クマシーゲルの結果は、sdAb−pepHが、sdAbのC末端にペプチドを有するコンストラクトからの特に高い発現を示すばかりでなく、他のペプチドコンストラクトと比較して高レベルで及び可溶性の高い生成物として発現することも立証した。
【0354】
これらの結果は、生体内分布及び安定性/発現分析からの結果とともに、送達ペプチドとしてのpepH3の、例えば抗オリゴマーBAP42 sdAbを脳に送達する際の使用に対する、有用性を確証する。次に、pepH3を、下で説明するように本発明の抗オリゴマーBAP42 sdAbにコンジュゲートさせた。
【0355】
c.抗体−ペプチドコンストラクトの調製
下の表13に要約する通り、異なる抗体分子及び抗体−ペプチドコンストラクトをクローニングした。
【0356】
【表13】
【0357】
表13が示すように、BBB移動能力を示すpepH3とともにさらなるコンストラクトを使用した。BBB移動の陽性対照としてFC5抗体をクローニングし、BAPへの結合の陽性対照としてBAPに対する抗体(「Abx」)をクローニングし、陰性対照として無関係の抗体(「PMP6A6」)もクローニングした。FC5は、ヒト脳の内皮細胞に対するファージディスプレイによって開発されたものであり、BBB上の受容体、特に、グリコシル化管腔BECタンパク質(Cdc50A)に結合することができる、文献に記載されているsdAbである(例えば、Muruganandam, et al. (2002) FASEB J, 16(2): 240-241、及びAbulrob, et al. (2005) J Neurochem 95(4):1201-1214を参照されたい)。Abxは、BAPポリペプチドに対するナノボディである(例えば、Lauwereys, et al.の米国特許第2008/0107601号明細書を参照されたい)。PMP6A6もナノボディであって、血清アルブミンに結合するものである(例えば、Dombrecht, et al.の米国特許第2014/0228546号明細書を参照されたい)。
【0358】
抗体遺伝子に依存して、最終コンストラクトをpET21a、pET28aのどちらかに、又はpT7ベクター内にクローニングした。クローニング後、これらのコンストラクトをシークエンシングし、さらなる特性解析のために発現させた。
【0359】
d.BAP42凝集を妨げる点での抗体−ペプチドコンストラクトの効果
産生し、精製したら、コンストラクトの免疫特異性も測定し、ペプチドと融合していない対応するsdAbのものと同様であることを確認した。
【0360】
抗オリゴマーを、BAP42の凝集を阻害するそれらの能力についても試験した。このアッセイは、チオフラビンT(ThT)を使用して行った。チオフラビンTは、上で説明したように、BAP42のフィブリル形態に特有の、ベータシートを多く含む構造を認識し、したがって、凝集を阻害するsdAbの能力を評定することができる。具体的には、阻害される凝集が多いほど、ThTによって放出されるシグナルは小さい。2つの比率、すなわち、1:5(BAP42分子5個ごとに1個のsdAb分子)及び1:20(BAP42分子20個ごとに1個のsdAb分子)を試験した。結果を
図29A〜29Bに示す。
【0361】
図29A〜29Bは、ペプチドと融合している又はしていない本発明のsdAbが実際にフィブリル化を防止したのに対して、BAP42に特異的でない抗体(例えば、FC5並びに他の関連のない単一軽鎖可変ドメイン抗体、VL18及びVL218)がフィブリル化を阻害しない、又はフィブリル化を促進することさえあることを示す。
【0362】
e.抗体−ペプチドコンストラクトの生体内分布及びBBB通過
異なる抗体−ペプチドコンストラクトを生体内分布アッセイに使用し、結果を、それぞれのDEN2Cペプチド(化学的に合成したpepH1、pepH2、pepH3及びpepM’)の生体内分布と比較した。選択抗体分子(sdAb)は、インビトロでBAPオリゴマーの凝集を有効に阻害するばかりでなく、BAP42への強い結合も示すものであった。発現及び精製後、sdAb及びsdAb−ペプチドコンストラクトを、前に説明したように、テクネチウム(
99Tc)とコンジュゲートさせて生体内分布アッセイを行った。結果を下の表14〜16に示す。
【0363】
表14〜16は、異なる抗BAP42 sdAb及び異なるペプチド(「pepH3」)とそれらのコンストラクトの生体内分布を示す。表14は、「#2」及び「#2−pepH3」のキメラについての生体内分布結果を示し、表15は、「#20」及び「#20−pepH3」についての分布結果を示し、表16は、「#27in」及び「#27in−pepH3」についての分布結果を示す。
【0364】
【表14】
【0365】
【表15】
【0366】
【表16】
【0367】
これらの結果は、例示的なコンストラクトの生体内分布プロファイルの驚くべき向上を示す。表14は、例えば、「#2」sdAbの送達ペプチドへの結合が、2分以内に脳内のその存在を約3倍増加させ、1時間後に脳からの排出における約2倍の遅延しか示さなかったことを示す。すなわち、約3倍の抗体が2分で脳に到達したが、1時間後に残存した抗体は約2倍に過ぎなかった。さらにいっそう驚くべきことに、表16は、「#27in」sdAbの送達ペプチドへの結合は、2分以内に脳にその存在を約6倍増加させ、1時間後に脳からの排出における約2倍の遅延しか示さなかったことを示す。すなわち、約6倍が2分で脳に到達したが、1時間後に残存したのは約2倍に過ぎなかった。下の実施例で説明するような、アルツハイマー病のトランスジェニック動物モデルにおいてインビボで有効性を確認するための予備研究に、選択抗体を使用した。
【実施例4】
【0368】
候補化合物の前臨床有効性
選択BBB特異的送達ペプチドにコンジュゲーションされている及びされていない選択抗BAP42 sdAbを使用して、5xFADトランスジェニックマウスにおいてインビボで試験を行った。動物の脳内のベータアミロイドプラークに対する効果についてのインビボでの画像化及び観察を用いて、結果を評定した。具体的には、以下のように識別した、以下の3つの製剤を動物に注射した:
・「sdAb#2」を含む製剤に対応する化合物「A」、
・「sdAb#2−pep」を含む製剤に対応する化合物「B」、及び
・活性薬剤を有さないビヒクルに対応する化合物「C」。
【0369】
投与1回当たり375μgの活性薬剤を使用して、週3回、月曜、水曜及び金曜ごとに各化合物を被験動物にip注射した。動物の屠殺後、免疫組織化学的検査及び画像化を行った。具体的には、動物を屠殺し、脳の海馬及び皮質領域を切除し、プラークの存在を示す化合物であるチアジンレッドで染色した。結果を
図30A〜30B、表17、及び
図31A〜31Dに示す。
【0370】
図30A〜30Bは、上で識別した通りの候補「A」、「B」及び「C」で治療した5xFADトランスジェニックマウスからの、チアジンレッドでの海馬(
図30A)及び皮質(
図30B)染色後の結果を示す。対照として使用した化合物C(100%)に測定値を正規化した。化合物A及びBは、対照と比較してプラーク数を有効に示した。これは、抗体−ペプチドコンストラクト「sdAb#2−pep」に対応する化合物Bについて特にそうである。表17は、チアジンレッドによって同定されたプラークの絶対及び相対数を提供する。表31A〜31Dは、これらの結果をさらに立証するものであり、海馬における正規化プラーク負荷量(
図31A)及び1mm当たりのプラーク数(
図31B)、並びに皮質における正規化プラーク負荷量(
図31C)及び1mm当たりのプラーク数(
図31D)を示す。
【0371】
【表17】
【0372】
実施例で使用したさらなる抗体分子及び抗体−ペプチドコンストラクトを下の表18、表19及び表20に要約する。
【0373】
【表18】
【0374】
【表19】
【0375】
【表20】
【実施例5】
【0376】
ADを予測するバイオマーカーとしての候補化合物の診断上の使用
以下の実施例は、BBB特異的送達ペプチドにコンジュゲーションしている及びしていない、本発明の抗BAP42 sdAbの、(a)インビトロ及び(b)インビボでの診断における使用を実証する。
【0377】
a.AD患者の脳脊髄液を使用するADのインビトロでの診断
ADを診断するために、脳脊髄液の試料をアルツハイマー病の異なる病期の患者から、倫理的手順に従って収集した。具体的には、認知愁訴、記憶の問題、リスボンのHospital Santa Mariaで適切に同定された認知症を有する患者からCSF試料を得た。病歴を評価するための標準プロトコル、並びに神経学的検査、検査室検査及び脳画像化(CTスキャン又はMRIスキャン)、及びまたbattery of Lisbon for Evaluation of Dementia(BLAD)での神経生理学的検査に患者を付した。MCI(軽度認知障害)群の患者の組み入れは、European Consortium on Alzheimer's disease(EADC)及びAmerican Psychiatric Association(DSM−IV−TR、2000)の基準に基づいた。
【0378】
対照試料も収集した。試料収集は、Department of Neurology of the Hospital de Santa Mariaの標準手順に従って行った。この研究は、Ethics Committee of the Hospital de Santa Mariaによって承認され、患者は彼らのインフォームドコンセントに同意した。
【0379】
少なくとも86名の患者からのCSF試料を収集し、これらの患者は、62.2±9.0歳であり、45名が男性であり、43名が女性であり、41名は、MCIを有すると診断され、45名は、認知症と診断された(その大部分がアルツハイマー病に関連していた)。
【0380】
収集した試料を、本発明の抗BAP42 sdAb(sdAb)に、又は本発明のsdAbとBBB特異的送達ペプチドのコンストラクト(sdAb−pep)、特に、上の表13に提示したコンストラクトに曝露する。具体的には、sdAb及び/又はsdAb−pepをCM5チップに固定化し、異なるCSF試料をそのチップに接触させ、BIAcoreを使用して結合を検出する。接続すると、登録されたシグナルが、対応するsdAb又はsdAb−pepをADのバイオマーカーとして同定することはもちろん、存在するBAP42オリゴマー/モノマーの量を定量もする。これらの異なるCSF試料中のBAP42オリゴマーを認識し、該BAP42オリゴマーに免疫特異的に結合する、ある特定のsdAb及びsdAb−pepは、認識とアルツハイマーの病期との相関関係も示し、したがって、ADの特定の病期のためのバイオマーカー、特に、早期臨床診断においてアルツハイマーの早期及び/又は軽度認知障害を伴う病期を特定するバイオマーカーになる。
【0381】
b.標識sdAb、及びBBB特異的ペプチドとそれらのコンストラクトを使用する、インビボでの画像化
選択sdAb及びsdAb−pepを画像化のために
99Tc/
67Gaでマーキングする。このために、インビトロでBAP42を認識し、BBBを移行することができるが、形成されたベータアミロイドプラークの解凝集を明らかに示さない、sdAb/sdAb−pepを選択する。画像化のために、必ずしも解凝集を生じさせる必要はないが、BAP42オリゴマーに結合して脳内のオリゴマーの存在を示す画像をもたらす、sdAbを選択する。そのようなsdAb/sdAb−pepは、ADに特有の「老人斑」の画像化によるインビボでの診断のためのバイオマーカーになる。
【0382】
具体的には、sdAb#2−pepを、上で説明したように
99Tcで標識した。2匹の健常なマウスに標識コンストラクトを注射し、注射の2分又は60分後に屠殺し、その動物に対して単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT,Single-Photon Emission Computed Tomography)を行った。結果を
図32A〜32Bに示す。
【0383】
図32Aが示すように、2分後、脳において、並びに膀胱及び腎臓のような器官において、シグナルが検出された。
図32Bが示すように、60分後、脳からのシグナルはもはや観察されなかったが、腎臓でのシグナルは持続する。これらの結果は、sdAbコンストラクトが動物の脳に実際に到達し、その後、脳から除去されたことを証明する。注射60分後に対応する画像において尾で検出されたシグナルは正常であり、使用した老齢マウスにおける注射部位に相当した。
【0384】
本明細書に引用した特許出願及び出版物を含むすべての参考文献は、個々の出版物又は特許又は特許出願が具体的に及び個々に、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれていると示されている場合と同程度に、それら全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれている。当業者には明白であるであろうが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく本発明の多くの修飾形態及び変形形態を行うことができる。本明細書に記載する特定の実施形態は、例として提供するものに過ぎず、本発明は、添付の特許請求の範囲の条項、及びそのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲によってのみ限定されるものとする。