【実施例】
【0029】
〈実施例1〉Physics細胞の製造
図1は、本発明のPhysics(
pluripotent sp
here
yielded by ultra
son
icstimulus)細胞形成を示す模式図であり、5W/cm
2の強度で10分間超音波処理したES(embryonic stem)培地にヒト皮膚線維芽細胞(HDFa、Cat.No.C−013−5C、GIBCO(Invitrogen cell culture))(1×10
6)を混ぜ、細胞を含む混合物に超音波を5秒間1W/cm
2の強度で処理した。生きている細胞を選別した後、35mm細菌用ペトリディッシュで2×10
5のHDFをヒトES培養培地で6日間浮遊培養した。
培養1日目からスフェロイド(spheroid)が形成され、3日後から未分化マーカーが発現される。
【0030】
〈実験例1〉スフェロイド形成の最適条件実験
ヒト皮膚線維芽細胞は、超音波処理時、スフェロイドを形成するので、スフェロイド形成効率を高めるための最適条件を確立するために、超音波処理条件、細胞培養方式などを異ならしめて、実験を行った。
細胞培養方式は、細胞培養ディッシュの表面がコーティングされていないディッシュ(細菌用ペトリディッシュ)で培養する浮遊培養(Suspended culture)と、細胞培養ディッシュの表面がコーティングされ、細胞が表面によく付くディッシュ(組織培養ディッシュ)で培養する単層培養(Monolayer culture)を使用した。
【0031】
また、対照群として、何らの処理をしないグループ(Null)、培地に超音波を処理したグループ(UM:Ultrasound treated Media、5W/cm
2の超音波強度で10分間処理)、細胞に超音波を処理したグループ(UC:Ultrasound treated Cell、1W/cm
2の超音波強度で5秒間処理)、及び細胞と培地に超音波を全部処理したグループ(UCUM:UM+UC)に分け、培養時間による細胞形態の変化を観察し、スフェロイドの数を測定し、培養時間によるスフェロイド数とサイズの変化を分析することによって、スフェロイド形成効率を確認した。実験対象細胞は、ヒト皮膚線維芽細胞である。
【0032】
まず、超音波強度条件を確立するために、超音波強度(5秒間0、0.5、1、3、5、10W/cm
2)別にHDF(1×10
6)に直接的に露出させた。生きている細胞を選別した後、35mm細菌用ペトリディッシュで2×10
5のHDFをヒトES培養培地で6日間培養した。
【0033】
【表1】
【0034】
図2aの(a)に示されたように、0.5、1及び3W/cm
2の超音波強度で、超音波処理された大部分のHDFは、自発的に凝集され、多細胞スフェロイドを形成した。対照群は、ディッシュの表面に付着しているが、5及び10W/cm
2強度の超音波が処理されたHDFは、スフェロイド形成なしに、細胞死滅が増加した。
図2aの(b)は、
図2aの(a)で超音波強度別に生成された多細胞スフェロイドの数を示すものである。
1W/cm
2の超音波強度で生きている/死んだ細胞分析及びイメージ分析結果、
図2bの(c)及び(d)に示されたように、25%の細胞が部分的に損傷を受け、95%以上の細胞生存能が維持された。しかし、1W/cm
2より高い超音波強度で、HDFは、深刻に損傷を受け、細胞死滅に至った。
したがって、1W/cm
2の固定された超音波強度条件で、露出時間(0、1、2、5、10、20、40秒)を異ならしめて、35mm細菌用ペトリディッシュでヒトES細胞培養培地で3日間培養した。
【0035】
図3a及び
図3bの(a)〜(d)に示されたように、超音波に5秒間露出させた場合、生成されたスフェロイドの数は、他の露出時間に比べて最も高かった。しかし、10秒以上露出した場合、細胞死滅が極的に増加したが、これは、細胞膜の損傷から起因したものと認められる。
次に、ES細胞培養培地に超音波露出強度(0、1、5、10W/cm
2)を異ならしめて、10分間処理した。35mm細菌用ペトリディッシュで超音波露出した2×10
5HDF(1W/cm
2、5秒)をこれら培地で3日間培養した。
【0036】
図4に示されたように、1W/cm
2より5W/cm
2の超音波処理された培養培地で約2倍のスフェロイドが発生した。
露出時間(0、5、10、20分)の変化は、スフェロイド形成効率に対して有意的な効果を示さなかった。一般的に、短い露出時間が一定のサイズ範囲とさらに多い数を引き起こした(
図5)。
【0037】
次に、培養条件を異ならしめたとき、スフェロイド形成効果を調査するために、ESC培養培地に超音波を処理し(5W/cm
2、10分)、HDF(1×10
6)に超音波を処理した(1W/cm
2、5秒)。生きているHDF(×10
5)を選別した後、細菌用ペトリディッシュで浮遊培養するか、又は、組織培養ディッシュで単層培養を行った。
【0038】
図6に示されたように、浮遊培養(suspended culture)された超音波処理されたHDFは、単層培養されたものと比べて、さらに高いスフェロイド形成効率を示した。また、超音波の刺激を細胞及び培養培地の両方に加えたとき、さらに高いスフェロイド形成効率を示した。
浮遊培養又は単層培養の下で超音波刺激別に生成された多細胞性スフェロイドのサイズ分布を観察するために、超音波処理されたHDF又は非処理HDFを細菌用ペトリディッシュ又は組織培養ディッシュで超音波処理又は非処理されたES培養培地で培養した。
【0039】
図7及び
図8に示されたように、二つの培養ディッシュで、HDF及び培養培地の両方が超音波処理されるとき(UCUM)、さらに高いスフェロイド形成効率が観察された。
また、浮遊培養条件は、さらに高い効率を示し、スフェロイドは、数とサイズ面において大きくて(200μm以上の直径)、単層培養(monolayer culture)条件より一定のサイズ分布を示す。
【0040】
非処理されたES細胞培養培地で成長した超音波処理されたHDF(UC)は、スフェロイドを形成した。しかし、UCUM条件と比べて、スフェロイドの数とサイズ(200μmまで)は、非常に低い。超音波処理されたES細胞培地で正常HDF培養(UM)結果、サイズが小さい(100μm以下)少量のスフェロイドが形成された。組織培養ディッシュを利用した単層培養のUC及びUM条件は、スフェロイド形成効率が非常に低かった。大部分のHDFは、培養ディッシュ表面に付着しており、スフェロイド数は、非常に小さい。
【0041】
また、浮遊培養又は単層培養の下で超音波刺激別に生成された多細胞性スフェロイドの培養時間別に代表的な未分化遺伝子の発現を分析するために、前記実施例1の方法によって対照群及び超音波処理されたグループ(Null、UM、UC、UCUM)の細胞を培養時間(1、2、3、4、5及び6日)別に回収し、Dynabeads(登録商標)mRNA direct kit(ambion)を利用してmRNAを抽出し、SuperScrip−II(invtrogen)cDNAを合成した後、表2に記載されたプライマーを使用してPCRで増幅し、電気泳動し、分析した。
RT−PCRを通じて分析した結果、
図9でHDF及び培養培地の両方が超音波処理されるとき(UCUM)、未分化マーカー遺伝子の発現が安定的に発現され、特に浮遊培養した場合が単層培養細胞に比べてさらに高く現われた。
【0042】
培養環境による未分化属性のスフェロイド形成差異を確認するために、浮遊培養又は単層培養の下で未分化マーカーであるOCT3/4発現水準を比較した。このために、超音波処理後、培養時間(0、1、2、3、4、5及び6日)の間に培養された細胞を4%パラホルムアルデヒドで30分間固定し、抗体の浸透能力を向上させるために、0.1%TritonX100が添加されたPBSバッファーに40分間露出させた後、非特異的なタンパク質反応を防止するために、5%non goat serumが添加されたPBSバッファーで30分間室温でブロッキング過程を行った。その後、細胞を洗浄した後、それぞれの1次抗体(OCT4;1:200、abcam)を入れ、4℃で一晩反応させ、0.03%TritonX100が添加されたPBSバッファーで3回洗浄後、2次抗体(IgG anti−rabbit conjugate alexa 488)をD−PBSバッファーでそれぞれ1:1000で希釈し、2時間室温で染色した。染色された細胞は、0.03%TritonX100が添加されたPBSバッファーを使用して4回洗浄した後、スライドにDAPIが添加されたマウンティング溶液(mounting sol.)を噴霧し、カバースリップで覆い、マニキュアで角部を密封した後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
【0043】
図10に示されたように、おもしろくも、UCUM条件で超音波処理1日後直ちにOCT3/4発現が検出された。OCT3/4発現は、徐々に増加し、浮遊培養条件は、単層培養条件よりさらに高い発現水準を示した。
【0044】
次に、浮遊培養でUCUM条件の下でスフェロイド培養6日間、6種の未分化マーカー遺伝子であるOCT3/4、SOX2、NANOG、TDGF1、c−MYC及びKLF4をRT−PCRで分析した結果、
図11のように、処理後、1日にOCT3/4とNANOG遺伝子発現が増加し、その後、他の遺伝子の発現も、培養時間が経過するにつれて、増加するものと現われ、すべてのマーカー遺伝子の発現が2日に観察されたが、安定的な発現は、3日後に観察された。最初のOCT3/4発現時点は、超音波処理10時間後直ちに検出された(
図12)。
【0045】
Physics細胞の未分化能力を確認するために、4種の無作為に選別されたスフェロイドにおいてのRT−PCR結果、OCT3/4、SOX2、NANOG、REX1、TDGF1、FOXD3、FGF4、UTF1、ESG1、LIN28a、KLF4、c−MYCを含む多能性マーカー遺伝子の発現を確認し、ヒトH9ESC及び正常HDFと比較した(
図13)。実験は、5日培養されたphysics細胞を回収し、Dynabead(登録商標)smRNA direct kit(ambion)を利用してmRNAを抽出し、SuperScrip−II(invtrogen)cDNAを合成した後、表2に記載されたプライマーを使用してPCRで増幅し、電気泳動し、分析した。
【0046】
【表2】
【0047】
アルカラインフォスファターゼ(AP)染色結果、多細胞スフェロイドの多能性状態の特徴を示すものと確認した。浮遊培養されたスフェロイドは、単層培養されたスフェロイドより明らかな赤色を示す(
図14)。
OCT3/4、SOX2、NANOG、SSEA−4及びTRA−1−60の発現は、H9ヒトES細胞と類似していた(
図15)。また、多細胞スフェロイドの多能性特性は、フローサイトメトリーを通じて確認した(
図16)。SSEA4及びTRA−60の99.5%以上がスフェロイドで発現され、各発現水準は、H9ヒトES細胞と類似していた。
【0048】
また、スフェロイドを移し、マウス胚芽線維芽細胞(MEF)栄養細胞とゼラチンコーティングされた組織培養プレートで共培養(coculture)したとき、細胞スプレッディングと成長が観察された。また、多能性マーカー遺伝子の発現が相変らず維持された(
図17)。
【0049】
また、未分化マーカーの発現をさらに確認するために、DNAメチル化分析を行った。遺伝子発現が始まるプロモーター部分がメチル化されると、当該部分で遺伝子発現されないことが分かり、脱メチル化された場合、すなわちDNAでメチル基が脱落した場合、当該部分の遺伝子が発現されることを意味する。したがって、ES細胞の主要遺伝子である未分化幹細胞主要遺伝子であるOCT3/4とNANOG遺伝子発現が起きているかを、二つの遺伝子のプロモーター部分のメチル化可否を調べた。
【0050】
このために、PhysicsスフェロイドからDNAをproteinase Kとフェノールを利用して抽出した後、EZ DNAメチル化キット(Zymo Reaserch)を利用してPhysicsスフェロイドのOCT3/4とNANOG DNAメチル化を分析した。分析に利用したDNA増幅用プライマーは、次の通りである。
1)ヒトNANOG増幅用プライマー:
正方向プライマー:5’−TAGGAGTAGAGTGTAGAGGAGAATGAGTTA−3’
逆方向プライマー:5’−ATCTATCCCTCCTCCCAAATAATC−3’
増幅産物のサイズ:377bp、Tm:55、産物でCpGs:6
2)ヒトOCT4増幅用プライマー:
正方向プライマー:5’−TTTTTTTAAATTAGAAATTTTAATTATTTG−3’
逆方向プライマー:5/−AATTACAAAAACCATACCTACAACC−3’
増幅産物のサイズ:417bp、Tm:55、産物でCpGs:4
【0051】
バイサルファイトゲノムシケーンシングにより評価される多能性特異OCT3/4及びNANOG遺伝子のプロモーター領域においてサイトシングアニンジヌクレオチド(CpG)のメチル化は、Physics細胞がES細胞と類似に高度で脱メチル化されるが、オリジナルHDF細胞においてこの領域のCpGジヌクレオチドは、低い脱メチル化が認められる(
図18)。これらの結果は、OCT3/4とNANOGプロモーターは、超音波処理により活性化されることを示唆する。
【0052】
〈実施例2〉Physics細胞の増殖能及び多分化能力
Physics細胞の増殖能は、増殖マーカータンパク質であるKi−67免疫染色方法及びヘキスト(Hoechst33342)とプロピジウムアイオダイド (PI)を利用した時間差細胞核染色を通じて評価した。
【0053】
図19に示されたように、5日目に、Physics細胞でKi−67の発現が検出された。
これより、さらに確かな証明のために、次のような方法を通じて細胞増殖を確認した。侵透性が良くて、生きている細胞の核に染色が可能なHoechst33342を利用して5日目に培養されたPhysics細胞を染色し、染色試薬を完全に除去後、3日間培養してから、総8日間培養されたPhysics細胞を4%paraformaldehydeで固定した後、さらにPIで細胞核を染色した。重複されない赤色信号は、5日後、細胞分裂により新しく形成されたPhysics細胞を意味する。また、動画を通じて単一スフェロイドを5日間培養し、スフェロイド直径を測定した結果、サイズの増加を通じてPhysics細胞の増殖能を立証する。
【0054】
Physics細胞の自己再生能力を評価するために、Hoechst33342で染色されたPhysics細胞をさらに5日間培養してから、4%paraformaldehydeで固定した後、PI及びOCT3/4でさらに染色した。PI信号は、Physics細胞内の核を意味する。Hoechst33342とほぼ合併されたOCT3/4で対比染色された核は、Hoechst33342が5日前にPhysics細胞を染色したことを意味する。
【0055】
図20に示されたように、追加培養の5日間、多能性特性(OCT3/4)が娘Physics細胞に伝達されなかった。これら結果は、Physics細胞が増殖することができるが、5日後、自己再生をしないことを意味する。
また、Physics細胞の初期培養時期の間に、各胚葉で特異マーカー遺伝子の発現を発見した。未分化した及び分化したマーカーの両方を発現するPhysics細胞の独特な遺伝子発現パターンは、ヒトESCに由来するEBと比較できる(
図21)。なぜならば、それらの形態が非常に類似しているからである。
【0056】
免疫細胞化学分析結果、Physics細胞とEBは、内胚葉(GATA4及びAFP)、外胚葉(PAX6及びNestin)、中胚葉(Brachyury及びSMA)のマーカーを高く発現した。OCT3/4以外にも、PAX6の発現も、超音波処理後1日目にすぐ検出された。3胚葉の他の遺伝子の発現は、Physics細胞の生成後3日目に始まった。培養15日間、3胚葉マーカーの発現水準は、徐々に増加した。しかし、OCT3/4発現は、8日後、減少した(
図22)。
【0057】
〈実施例3〉超音波刺激による細胞変化
Physics細胞発生中に、HDFへの超音波刺激の効果を評価するために、超音波条件別に比較した。超音波処理後及び超音波処理されたHDFの2時間培養後、直接的にSEM分析を行った。
図23に示されたように、複数の細胞膜の気孔がUC及びUCUM条件の両方で発生した。たぶんHDFが超音波に直接的に露出したからであると認められる。しかし、UM条件でHDFは、細胞膜を通過するどんな気孔発生も示さなかった。これは、培養培地にのみ超音波を処理することは、細胞膜の損傷に十分でないからである。特に、細胞培養の2時間後に生成された気孔は、UC及びUCUM条件の両方で消えた。これらの結果は、超音波刺激は、細胞死滅を誘導するほどに深刻なことでないが、細胞膜の一時的な透過を誘導するには十分であり、その後、初期細胞培養時期の間に、損傷された細胞膜が回復されることを示唆する。
【0058】
損傷された細胞膜の回復過程は、また、live/deadキットを利用して細胞膜の損傷がないものは、(緑色蛍光)/死ぬか又は細胞膜の損傷がある細胞は、(赤色蛍光)分析によって立証された。HDF細胞に超音波処理直後及び2時間が経過した後、蛍光試薬で染色した結果、2時間後、赤色蛍光の比率が減少することから見て、SEM分析結果と同様に、2時間後、超音波による細胞膜の損傷が回復されるものと現われた(
図24)。
また、試薬を超音波刺激を受けた細胞とスフェロイド形成の連関性を確認するために、超音波処理されたHDFにlive/deadキットを付加し、緑色/赤色の二重染色されたHDFは、生きている細胞イメージング装置を利用して24時間追跡した。
【0059】
図25に示されたように、HDFは、ただ緑色又は赤色/緑色の二重で染色された他のHDFと凝集し、多細胞スフェロイドを形成した。24時間後、大部分の若干損傷されたHDFは、安定したPhysics細胞を形成した。
また、超音波誘導された細胞膜の損傷及び一時的な透過は、それぞれ、蛍光染料Fluo−4染料及びCM−H2DCFDAを使用して増加した細胞内Ca
2+濃度及び細胞内H
2O
2生産によって特徴を示した。超音波を露出し次第に、Physics細胞のCa
2+濃度が急に増加してから、150秒に減少した(
図26)。Physics細胞で細胞内H
2O
2の濃度は、未処理対照群HDFと比べて、超音波露出60分後、6倍さらに高かった(
図27及び
図28)。
さらに、ATPが多様な細胞性ストレスに対する反応において信号として利用されるため、細胞外に放出されたATPの濃度を分析した。
【0060】
図29に示されたように、超音波は、未処理HDFに比べてPhysics細胞でATPの22倍さらに多い放出を刺激した。
イオノトロピック型P2X受容体及び代謝型P2Y受容体は、ATP放出によって発現が活性化されものと知られていて、これら受容体の発現を比較した。
【0061】
Physics細胞においてP2X4、P2X7、P2Y1、P2Y2及びP2Y11のさらに高い発現が検出された(
図30)。
Physics細胞の向上した細胞吸収は、さらに、Alexa−705標識された量子点(QD705)を利用して確認した。QD705を培養ディッシュに付加し、24時間後、共焦点顕微鏡イメージを得た。
【0062】
スフェロイドタイプ内Physics細胞及び隣合う単一Physics細胞と凝集しない単一細胞タイプが両方ともQD705を吸収した。しかし、正常HDFは、QD705を吸収しなかった(
図31)。これは、外部の要素の細胞吸収が超音波刺激によって向上させることを立証するものである。
【0063】
なお、エキソソームRNAは、Physics細胞培養培地から用意し、RT−PCR分析を通じてPhysics細胞の発生中に細胞培養環境の遺伝子発現パターンを研究した。一般的に、エキソソームは、複数の遺伝子要素、例えば、RNA、microRNA、DNA、タンパク質を含む。また、エキソソームにおいて遺伝子要素の発現プロファイルは、細胞状態依存的である。
【0064】
図32に示されたように、多能性マーカー遺伝子の高い発現がPhysics細胞培養培地から精製されたエキソソームで観察された。最も顕著な遺伝子発現は、OCT3/4及びNANOGであった。培養時間が進行されるにつれて、OCT3/4発現は、顕著に増加した。NANOG発現は、4日後に低下した。c−MYC発現は、浮遊培養条件で一定であるが、単層培養条件で2日後に減少した。すべての多能性マーカー遺伝子、例えば、REX1、TDGF1、FOXD3、UTF1、LIN28の発現は、たとえそれらの発現水準が低いが、浮遊培養条件で検出された。しかし、これらの遺伝子は、単層培養条件では検出されなかった。これらの結果は、超音波処理されたHDFのうち遺伝子要素の伝達可能性を示唆する。
【0065】
この仮説を立証するために、超音波−未処理されたHDFをPhysics細胞と共培養した。イメージング分析のために、リポフェクタミンによりCy5.5赤色蛍光染料をHDFで感染させた。Physics細胞は、別に生成され、2日維持後、Physics細胞をCy5.5−感染されたHDF培養ディッシュに付加した。共培養中に、培養培地に超音波を処理しなかった。これは、UM条件も多能性マーカー遺伝子発現を誘導できるからである。
共焦点顕微鏡イメージは、Physics細胞との共培養中に、Cy5.5感染されたHDFからOCT3/4発現が観察された。OCT3/4発現は、Cy5.5感染されたHDF単独培養では、検出されなかった。これらの結果は、Physics細胞の多能性特性が隣合う正常細胞に伝達され、その後、正常細胞のPhysics細胞へのリプログラミングを強く立証する。一般的に、細胞において遺伝子要素伝達にエキソソームが参加する(
図33)。
【0066】
〈実施例4〉Physics細胞のインビトロ分化
インビトロ分化のために、5日培養されたPhysics細胞をゼラチンがコーティングされた組織培養ディッシュに移した。移した細胞は、特異分化培地を利用して神経又は心臓系への分化を誘導した。前記特異分化培地は、表3の通りである。分化誘導後、8日になった細胞で3胚葉の主要タンパク質(GATA4、AFP、PAX6、Nestin、Brachyury、SMA)が発現された(
図34)。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4-1】
【表4-2】
【0069】
図35及び
図36に示されたように、1〜2週分化時期の間に、遺伝子17(SOX17、内胚葉)、paired box 6(PAX6、外胚葉)、Nestin(神経細胞マーカー)、microtubule−associated protein 2(MAP2、外胚葉)、class III beta−tubulin(TuJ1、神経細胞マーカー)、msh homeobox 1(MSX1、中胚葉)、Brachyury(中胚葉)、myosin light chain 7(MYL7、心筋細胞)、NK2 homeo box 5(NKX2.5、心筋細胞)、及びTroponin Ttype 2(TnnT2、心筋細胞)を含むSRY−boxの発現がRT−PCRにより観察された。
特に、OCT3/4の発現が分化誘導後に有意に減少した。
神経又は心臓細胞への分化は、また、免疫細胞化学によって確認された。
【0070】
図37〜
図39に示されたように、星状細胞培地で成長したPhysics細胞で神経前駆細胞マーカー(PAX6及びNestin)が観察された。これらの分化したPhysics細胞は、星状細胞培地を希突起膠細胞培地又はニューロン培地に替えた後、2週間追加分化が誘導されたとき、それぞれ希突起膠細胞マーカー(MAP2及びO4)又はニューロンマーカー(MAP2及びTuj1)の発現が観察された。分化時期の2週は、MHC、SMA、Actinin、NKX2.5及びTnTcを含む心臓マーカーを検出するのに十分であった。特に、典型的な分節されたアクチンパターンがアクチニンで検出された。しかし、同じ培養条件の下で、HDFは、何らの神経又は心臓マーカーを発現しなかった。
【0071】
〈実施例5〉安定性検査
超音波は、突然変異、遺伝子変形、癌発生などの好ましくない副作用を誘導しなかった。Physics細胞は、正常核型を持っていた(
図40)。
【0072】
〈実施例6〉Physics細胞のインビボ分化能評価
Physics細胞のインビボ分化能力を評価するために、5日培養されたPhysics細胞を4〜5週齢の欠乏マウス(NOD/SCID mouse)の精巣と股筋肉に1×10
6細胞を注入し、4週間飼育後、精巣と筋肉を回収し、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、冷凍切片(cryosection)し、Human Nuclear antigen染色を通じて注入した細胞の位置を把握し、多様な増殖及び分化関連タンパク質マーカー(Ki67、CD44、SMA)を染色し、注入された細胞の分化有無を確認した。
【0073】
図41で、精巣に注入されたPhysics細胞は、4週後、精巣内の血管内皮細胞で観察され、Ki67染色を通じて増殖されていることを確認し、矢印で表示した細胞から分かるように、血管内皮細胞マーカーであるCD44が染色されたことを確認した。
マウス股に注入された細胞は、筋肉繊維層の外部であるラミナ層で発見され、筋肉タンパク質マーカーであるSMA染色が施されたことを確認した(
図42)。このような結果は、体内に注入されたPhysics細胞が周辺細胞と環境に合わせて分化したことを示唆するものである。
【0074】
〈実施例7〉細胞培養培地の効果
Physics細胞を発生させるために、ヒトES細胞培養培地を使用した。ES細胞培養培地は、未分化状態でES細胞を維持及び繁殖するための制限培地として開発された。細胞培養培地の効果を調査するために、Physics細胞を発生させるために、正常HDF培養培地を使用した。
【0075】
図43の(a)及び(b)に示されたように、ES細胞培養培地と比べて、形態及びスフェロイド形成効率は、非常に相異した。超音波処理されたHDF培地でシーディングした後、1日目に、多細胞スフェロイドは、少量形成された。しかし、2日後、多数のスフェロイドは、ディッシュ表面に付着していた。培養4日目に、すべてのスフェロイドは、ディッシュ表面に付着し、典型的な線維芽細胞形態で成長した。免疫細胞化学結果も、二つの種類の異なる培養培地条件間の異なる遺伝子発現パターンを示した。ES細胞培養培地を利用して発生した典型的なPhysics細胞は、OCT3/4、SOX2、NANOG、SSEA−4、及びTRA−1−60の高い発現水準を示した。DMEM培地は、未分化マーカー遺伝子及び3胚葉マーカー遺伝子発現を誘導するためのどんな効果も認められなかった。これら結果は、スフェロイド形成及び特異マーカー遺伝子の発現が細胞培養培地の成分と密接に関連していることを示唆するものである。
【0076】
〈実施例8〉細胞株の効果
Physics細胞発生方法が他の細胞株に適用できるか、今後の臨床適用に適用できるかを評価するために、HeLa細胞、L132ヒト肺上皮細胞及び患者由来皮膚線維芽細胞のような他の細胞株を利用してPhysics細胞発生を照射した。
【0077】
図44の(a)〜(c)に示されたように、2種の細胞株も、超音波の直接的な露出後、細菌用ペトリディッシュで超音波処理されたES細胞培養培地で培養された後、多細胞スフェロイドを形成した。おもしろくも、HDFから生ずるPhysics細胞と比べて、2種の細胞株から生じた新しいPhysics細胞の形態及びサイズ分布は、非常に相異する。HeLa細胞由来のPhysics細胞のサイズ分布は、非常に一貫性がなく、サイズは、非常に大きかった。L132細胞由来のPhysics細胞は、さらに複雑であり、凝集された形態を示した。各スフェロイドは、さらに融合され、板のような構造を形成した。
【0078】
図44の(b)及び(c)に示されたように、2種の異なるPhysics細胞からOCT3/4、SOX2、NANOG、SSEA4、及びTRA−1−60を含む多能性マーカー及びGATA4、AFP、PAX6、Nestin、Brachyury、及びSMAを含む3胚葉マーカー遺伝子の発現は、免疫細胞化学によって確認された。
また、患者皮膚細胞を利用した実験結果でも、Physics細胞のようなスフェロイドを形成し、多能性マーカー及び3胚葉マーカーの発現が免疫細胞化学によって確認された(
図45)。
これらの結果は、Physics細胞発生を誘導する超音波刺激が多様な細胞株に適用され得ることを強く立証し、患者細胞を利用した自己細胞治療の可能性を示す。
【0079】
〈実施例9〉他のエネルギー源提供の効果
追加的な外部刺激をHDF及びES細胞培養培地に加えて、Physics細胞の発生機作を確認及び評価した。
超音波処理の代わりに、レーザー処理を用いてPhysics細胞が形成されるかを確認した。このために、超音波処理に使用されたヒト皮膚線維芽細胞を同一に使用し、レーザー処理条件は、Ocla治療用レーザー(Ndlux)を使用して、808nmのレーザーを5秒間照射した後、培養した。
熱処理のために、皮膚線維芽細胞を42℃に2分間露出させた後、アイスで約5秒間静置した。
【0080】
図46及び
図47に示されたように、HDF及びES細胞培養培地の両方にレーザー又は熱処理後、多細胞スフェロイドが成功的に発生した。レーザー処理されたHDFは、また、レーザー誘導後、多細胞スフェロイドを直ちに形成した。たとえスフェロイドの形態が不規則的であり、サイズ分布が均一でないが、多能性マーカー及び3胚葉マーカーの高い水準の発現が観察された。熱処理も、スフェロイド形成を誘導した。しかし、効率は、超音波及びレーザー処理より低かった。維持8日間、熱により誘導された多細胞スフェロイドの半分以上がディッシュ表面に付着した。さらに低いスフェロイド形成効率にもかかわらず、多能性マーカー及び3胚葉マーカーの高い発現水準が観察された。これらの結果は、Physics細胞の発生が物理的刺激と密接に関連していることを強く立証するものである。
【0081】
〈実施例10〉マウスPhysics細胞の製造
図48に示された過程によってマウスPhysics細胞を製造した。このために、20KHz超音波を5W/cm
2の強度で10分間処理したES培地にOG2マウスMEF(Mouse Embryonic Fibroblast cell;マウス胚芽線維芽細胞)を混ぜ、該細胞に直接的に超音波を5秒間1W/cm
2の強度で処理し、培養した。培養された細胞は、1、3、5、8及び10日間隔で蛍光顕微鏡で細胞の形態変化とGFP蛍光の発現を観察した。超音波処理のための培地組成は、表1の通りである。
前記MEF細胞は、OCT4プロモーターが挿入されたGFP遺伝子を形質転換させたマウスの13.5日になった胚芽の線維芽細胞であって、一般的に、OCT4が発現されない細胞であるが、もしOCT4が発現されると、GFPが発現され、緑色蛍光が認められる。
【0082】
図49のAで、対照群は、OG2MEF細胞写真を示す図であって、緑色蛍光が現われなかった(OCT4発現がない)。しかし、超音波を処理したOG2MEFの場合、培養時間が経過するほど、細胞球体のサイズが増加し、緑色蛍光の強度が強くなることが分かる。これは、超音波処理がOCT4発現を誘発したことを意味し、OCT4は、未分化幹細胞の主な特徴であって、これは、超音波処理によってOG2MEF細胞が幹細胞に逆分化することが分かる結果である。
図49のBは、Tile scan写真であって、広い範囲を複数枚の写真を撮って結合した写真を示す図であって、超音波処理効果を示す結果であり、多数のMEF細胞が超音波処理による逆分化でOCT4−GFPを発現し、
図50で生成されたスフェロイドのGFP発現効率を分析した結果、約93%程度のOCT4−GFP発現効率が現われ、フローサイトメトリーを利用して全体細胞においてのGFP発現を確認した結果、約85.3%の細胞でGFPが発現され、細胞表面において未分化タンパク質マーカーであるSSEA1の発現を分析した結果でも、約75.5%の発現が現われた(
図51)。このような結果は、超音波による逆分化効率が非常に高いことを示唆する。
【0083】
次に、下記表5に示されたプライマーセットを使用して代表的なマウス胚芽幹細胞(ESc)の未分化マーカー遺伝子とタンパク質マーカー(OCT4、SOX2、NANOG、SSEA1)の発現をRT−PCRと細胞免疫化学法で確認した。
【0084】
図52及び
図53に示されたように、マウスPhysics細胞において未分化マーカーが発現されることを確認した。
また、アルカラインフォスファターゼ染色を通じて確認した(
図54)。
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
3胚葉マーカーを確認した結果、mPhysicsは、内胚葉(GATA6)、外胚葉(Nestin)、中胚葉(Brachyury)のマーカーを高く発現した。3胚葉の他の遺伝子の発現は、Physics細胞の生成後、3日目に始まった。培養20日間、3胚葉マーカーの発現水準は、徐々に増加した(
図55)。また、
図56で、免疫染色を通じて3胚葉タンパク質マーカーの発現が確認された。
【0088】
また、マウス細胞において超音波により形成されたmPhysics細胞は、正常核型を持っていた(
図57)。