特許第6986969号(P6986969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6986969液体製剤を投与するためのマイクロニードルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986969
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】液体製剤を投与するためのマイクロニードルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   A61M37/00 512
   A61M37/00 505
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-553004(P2017-553004)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公表番号】特表2018-510734(P2018-510734A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016057675
(87)【国際公開番号】WO2016162449
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】15162636.3
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・ホイザー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ・シュピルギース
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−528818(JP,A)
【文献】 特開2011−036491(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/059104(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0109065(US,A1)
【文献】 特表2013−525078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮内送達のためのマイクロニードルシステムであって:
i)作用物質容器(2)を覆うカバー要素(1)であって、作用物質容器(2)は、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)に収容される、カバー要素と;
ii)マイクロニードルアレイ(4)を受ける開口部を有するベースプレート(5)であって、ベースプレート(5)は、ベースプレートの縁部に対して内側にオフセットされる、オープニングを含む周縁の突出物を有し、該周縁の突出物の外側に、カバー要素(1)のねじ山に対して相補的なねじ山が提供され、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、ねじ山を介して互いに可動で連結される、ベースプレート(5)とを含み;
iii)該ベースプレート(5)は、全体的または部分的にサージカルテープ(6)に接合され;
iv)フレーム(3)およびベースプレート(5)は互いに可動で連結され、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)は、ベースプレート(5)の開口部の方向に直線変位され、ベースプレート(5)は、作用物質容器(2)を開けるための少なくとも1つのオープニング要素(8)を含む、前記マイクロニードルシステム。
【請求項2】
フレーム(3)は、ベースプレート(5)の凹部(10)と係合できる、1つまたはそれ以上のキャッチフック(9)を含む、請求項1に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項3】
カバー要素(1)の内側が、ベースプレート(5)の周縁の突出物の外側のねじ山に対して相補的な周縁のねじ山を含む、請求項1または2に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項4】
カバー要素(1)は、マイクロニードルシステムの収納位置及び/又は送達位置を定める、1つまたはそれ以上のマーキングを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項5】
サージカルテープ(6)は保護フィルム(7)によって保護される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項6】
マイクロニードルシステムの径は、少なくとも10mmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項7】
マイクロニードルシステムの高さは、30mm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項8】
作用物質容器(2)は、成形同時充填容器、または使い捨て容器である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項9】
作用物質容器(2)は、1つまたはそれ以上の物質、医薬物、作用剤、溶液または(液体)製剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステムを製造するための方法であって、
a)用物質容器(2)が提供され;
b)マイクロニードルアレイ(4)が提供され;
c)作用物質容器(2)およびマイクロニードルアレイ(4)を、フレーム(3)、ベースプレート(5)、およびサージカルテープ(6)と組み合わせてマイクロニードルシステムを形成して、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、ねじ山を介して互いに可動で連結し、カバー要素(1)のベースプレート(5)に対する回転によって、オープニング要素(8)が作用物質容器(2)を開ける、前記方法。
【請求項11】
皮内送達に使用するため、液体製剤に作用物質を含む作用物質容器(2)を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロニードルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液または製剤を皮内に送達するための、マイクロニードルシステム(略してMNS)に関する。本発明は、カバー要素(1)、作用物質容器(2)、フレーム(3)、マイクロニードルアレイ(略してMNA)(4)、およびベースプレート(5)を含み、ここで、マイクロニードルアレイ(MNA)(4)はフレーム(3)に連結され、ベースプレート(5)はマイクロニードルアレイ(4)を受ける開口部を有し、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は互いに可動に連結され、ベースプレート(5)はサージカルテープ(6)に接合され、フレーム(3)およびベースプレート(5)は互いに対して直線変位させることができる、マイクロニードルシステムに関する。
【0002】
本発明によるMNSは、医薬物、作用物質、医薬組成物もしくは化粧組成物、または他の物質を、個人、好ましくは患者に長時間にわたって皮内投与するのに好適である。
【背景技術】
【0003】
マイクロニードルアレイが医薬物を無痛で皮内投与するために使用される、マイクロニードルシステムおよびデバイスが、従来技術で知られている。
【0004】
皮膚は数層から構成される。角質層である皮膚の最外層は、外部の物質が体に貫入するのを防ぎ、かつ体内の物質が体から出るのを防ぐ、既知の遮蔽特性を有する。約10〜30マイクロメートルの厚さを有する、凝縮された角質細胞の残滓から構成される複雑な構造である角質層は、体を防護する目的のための水密膜を形成する。角質層の本来の不浸透性は、ほとんどの薬剤および他の物質が、皮内送達の一環として皮膚を通して投与されるのを妨げる。
【0005】
その結果として、たとえば角質層に微小孔を生成するか、もしくは切開して、医薬物を角質層内もしくは角質層下に供給または送達することによって、種々の物質が投与される。このように、いくつかの医薬物を、たとえば皮下または皮内に投与することも可能である。
【0006】
使用するためには、マイクロニードルアレイ(MNA)、および考えられる別の構成要素から構成されるマイクロニードルシステム(MNS)は、MNAによって角質層に貫入させて、外部の医薬物のリザーバ(容器など)と皮膚との間に流体チャネルを確立するために、皮膚上の送達箇所に対してアレイ(MNA)のマイクロニードルを押圧する要素(皮膚貫入要素とも称される)を必要とする。液体製剤が医薬物として選択される場合、作用物質容器を開ける要素、および設計によっては医薬物を作用物質容器から押し出す要素もまた、MNSに必要である。作用物質容器を開けるために、一般的に機械式エネルギー貯蔵(mechanical energy store)を採用する従来の要素を実装する種々の実施形態が知られている。たとえばMNSに一体化されたシリンジ、または小型ポンプが、作用物質容器からの押出しを実行する。
【0007】
対応する簡易なマイクロニードルシステムが、特許文献1に記載されている。このデバイスは、可撓性空気袋の形態である作用物質の内部容器を有する、ハウジングを含む。可撓性空気袋は、ハウジング内の空洞部に位置する。空洞部はカバー部材で覆われ、カバー部材は、ハウジングの底部に配置されたマイクロニードルアレイに可撓性空気袋を押付けるように、下方に押圧される。これによって作用物質容器を開け、可撓性空気袋に含まれる液体が、いくつかのマイクロニードルに流れる。
【0008】
特許文献2は、ハウジングおよびカートリッジから構成されるデバイスを開示している。カートリッジは、作用物質を含む溶液のための容器を含み、加えてその底壁に、底壁から離隔された下部の外壁を含み、一体化されたニードルアレイを有している。ハウジングは、ベース部、周縁の側壁、および開位置と閉位置との間で枢動して、ヒンジ連結、スナップ嵌め、締り嵌め、または摩擦嵌めによってベース部と連結される、カバー部材を含む。マイクロニードルシステムは、カートリッジをハウジングに位置することによって組立てられ、カートリッジは、ノッチによってハウジング内で画成された位置に合わせられる。マイクロニードルシステムは、ハウジングのカバー部材が閉位置に枢動する前に、ニードルアレイが皮膚の表面を穿孔するように、患者の皮膚の表面に位置される。カバー部材が閉じると、作用物質容器が穿孔される。ハウジングのカバー部材は、カートリッジに圧力を加えるためのばねを含み、カバー部材が閉じられると、作用物質を含む溶液が供給される。さらに、リストバンドが固定のために必要となる。
【0009】
作用物質を皮内送達するための、従来技術の既知のデバイスおよび方法は、ある程度までの成果に過ぎない。
【0010】
既知のマイクロニードルシステムは、短い使用の間(数秒以下)だけMNAに力を加えるという欠点があり、後続の使用段階の間(数分から数日)のMNAは、皮膚から再度取り外す傾向にある。しかし数々の使用状況のため、送達の間または長時間にわたって、皮膚に適合した継続する力を保証することが必要である。
【0011】
多くの既知のマイクロニードルシステムはさらに、アプリケータを必要とするという欠点がある。アプリケータはマイクロニードルシステムの一体部材ではなく、追加の別個のユニットとして提供される必要がある。皮内送達のためには、MNSと送達システムを1つのユニットに組み合わせる実施形態が望ましく、システム全体の設計、特に高さおよび径は、MNSの快適な使用または装着に影響しない。
【0012】
作用物質容器を含む全ての既知のデバイスはさらに、マイクロニードルアレイと、作用物質を含む溶液を供給するためのシリンジ、ポンプ、またはばねとの組合せから構成される。設計によっては、これらのデバイスは使用するには不便で、製造するには複雑となる。製造および使用が容易であるデバイスに対する要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO02/05889A1
【特許文献2】DE60305901T2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この目的は、特許請求項1およびその従属請求項に記載の、カバー要素(1)、作用物質容器(2)、フレーム(3)、マイクロニードルアレイ(4)、ベースプレート(5)、およびサージカルテープ(6)を含むマイクロニードルシステム(MNS)によって、本発明で実現される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるMNSにおいて、マイクロニードルアレイ(4)はフレーム(3)に、好ましくはフレーム(3)の下面に連結され、ベースプレート(5)はマイクロニードルアレイ(4)を受けるための開口部を有する。
【0016】
フレーム(3)は、マイクロニードルアレイ(4)の支持具としても見なされ、マイクロニードルアレイ(4)を固定するために、かつ作用物質容器(2)を受けるために使用される。
【0017】
カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、好ましくはねじ山を介して、互いに可動に連結される。ベースプレート(5)はさらに、全体的または部分的にサージカルテープ(6)と接合するか、またはサージカルテープ(6)を供給され、フレーム(3)とベースプレート(5)とは互いに直線変位させることができる。
【0018】
MNSは、好ましくは使用するまで保護フィルム(7)によって、詳細にはサージカルテープ(6)上で、保護される。
【0019】
そのため、従来技術の既知のマイクロニードルシステムとは対照的に、本発明によるMNSは実質的に、サージカルテープによって1つのユニットで皮膚に接合される、作用物質容器から構成される。本発明によるMNSは、追加のアプリケータ、ポンプ、シリンジ、またはばねを必要としない。製造が簡易で経済的である。MNSには、必須ではないが、別の一体部材が追加される。MNSは、医薬物、作用物質、医薬組成物もしくは化粧組成物、または他の物質を、個人、好ましくは患者に長時間にわたって皮内投与するのに好適である。本発明によるMNSは取扱いが簡単であり、自宅または治療場所で、たとえば、患者による自己治療の一環として、または美容に使用するため、個人によって直接実施される。特に、マイクロニードルを皮膚に穿孔することは日常的な処理であり、医師による検査および監視、または医療スタッフの指示を必要としない。これは、長い送達の期間、または繰り返される送達に特に有利である。なぜなら、患者または個人は、医療スタッフによる、または長時間にわたる繰り返される治療を必要としないからである。これは、MNAの針が容易に角質層に導入されるために可能となり、再押圧することもなく、針は長時間にわたってとどまり、その結果、医薬製品、作用物質、医薬組成物、または他の物質を、患者または個人によって直接、所望の量だけ送達することが、本発明によるMNSによって保証される。
【0020】
したがって、本発明は皮内送達のためのマイクロニードルシステムに関し、マイクロニードルシステムは:
i)作用物質容器(2)を覆うカバー要素(1)であって、作用物質容器(2)は、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)に収容される、カバー要素(1)と;
ii)マイクロニードルアレイ(4)を受ける開口部を有するベースプレート(5)であって、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は互いに可動に連結される、ベースプレート(5)とを含み;
iii)ベースプレート(5)は、全体的または部分的にサージカルテープ(6)に接合され;
iv)フレーム(3)およびベースプレート(5)は互いに可動に連結され、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)は、ベースプレート(5)の開口部の方向に直線変位させることができる。
【0021】
さらに、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、好ましくはねじ山を介して、互いに可動に連結される。
【0022】
本発明による「皮内送達」という用語は、MNAを介して皮膚の中に物質を投与することを表現し、マイクロニードルを皮膚に穿孔することを要する。
【0023】
本発明によると、サージカルテープ(6)によってマイクロニードルシステムを皮膚上に固定した後、第1の工程で、ねじ山を介してカバー要素(1)をベースプレート(5)上で回転させることによって、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)がベースプレート(5)の開口部の方向に移動される。
【0024】
この動きまたは行程の中で、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)は、ベースプレート(5)の開口部の面に到達し、ここで、突出したマイクロニードルが皮膚に貫入する。同時に、一緒に移動した作用物質容器(2)が、1つまたはそれ以上のオープニング要素(opening element)(8)(マンドレルなど)に到達して、その結果容器は破れて開き、溶液または製剤が、より詳細には提供されたMNAの中に供給される。マイクロニードルアレイ(4)がベースプレート(5)の開口部の面(送達位置と称される)に到達するとすぐ、オープニング要素(8)が作用物質容器(2)と接触して作用物質容器(2)を開けるように、オープニング要素(8)は提供される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、マイクロニードルシステムのフレーム(3)は、好ましくは突出してベースプレート(5)と係合できる、少なくとも1つまたはそれ以上のキャッチフック(9)を含む。ベースプレート(5)は適切な凹部(10)を含むことができる。さらにキャッチフック(9)は、ベースプレート(5)に対するカバー要素(1)の上述の回転運動の行程が終わる際の、係合点としての役割を担う。
【0026】
キャッチフック(9)は、フレーム(3)に、ベースプレート(5)に対して画成された位置を提供し、またフレーム(3)の(全)回転またはベースプレート(5)上の回転を防止する。同時に、フレーム(3)がベースプレート(5)に可動に取り付けられるように、キャッチフックがフレーム(3)上に形成され、凹部(10)がベースプレート(5)に形成される。
【0027】
フレーム(3)がベースプレート(5)の面またはサージカルテープ(6)に配置された後で、MNA(4)はベースプレート(5)の開口部で局所配置される。
【0028】
フレーム(3)およびベースプレート(5)は、互いに可動に連結されるが、互いに対して直線変位させることができ、ここでキャッチフック(9)は、ベースプレート(5)上でのフレーム(3)の回転運動または回転を防止するためのものである。
【0029】
マイクロニードルシステムの特に好ましい実施形態において、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、ねじ山を介して互いに可動に連結される。マイクロニードルシステムの好ましい実施形態において、作用物質容器は、ねじ山を4分の1回すことによって開けられる。好ましい回転角度は90°である。設計によっては、回転角度は10°と350°の間とされる。最大回転角度に達したときに、最も簡単なケースとして、たとえば停止位置にマーキングを付けることによって、使用者に示される。
【0030】
マイクロニードルシステムの別の好ましい実施形態において、サージカルテープ(6)が保護フィルム(7)によって保護される。
【0031】
マイクロニードルシステムの別の好ましい実施形態において、マイクロニードルシステムの径は、少なくとも10mm、好ましくは少なくとも25mm、および特に好ましくは少なくとも50mmである。
【0032】
マイクロニードルシステムの別の好ましい実施形態において、マイクロニードルシステムの高さは、30mm以下、好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
【0033】
マイクロニードルシステムの別の好ましい実施形態において、作用物質容器(2)は成形同時充填(blow−fill−seal)容器、または使い捨て容器である。
【0034】
マイクロニードルシステムの別の好ましい実施形態において、作用物質容器(2)は、1つまたはそれ以上の物質、医薬物、作用物質、詳細には医薬作用剤または詳細には抗生物質の医薬組成物の溶液または(液体)製剤、抗ウィルス性作用剤、鎮痛薬物、麻酔薬、食欲抑制剤、関節炎薬物、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗悪性腫瘍薬、DNAワクチンなどを含むワクチン、タンパク質、ペプチドまたはその一部分、核酸またはその一部、ならびに化粧品、栄養補給剤、日焼け止め剤、防虫剤、ラジカル捕捉剤、水和剤、および染料液を含む。
【0035】
作用物質容器(2)は、好ましくは作用剤または補助剤を含む溶液または(液体)製剤を含む。
【0036】
「溶液」または「(液体)製剤」という用語は、1つまたはそれ以上の物質が関係し、室温で所定の送達期間内に、物質がMNA(4)によって皮内送達されるような凝集状態を、少なくとも有していることを意味する。好適な粘度は、0から200mPa・s(ミリパスカル秒)の間の値である。
【0037】
同様に本発明は、本発明によるマイクロニードルシステムを製造するための方法に関し、以下の工程を含む:
a)好ましくは成形同時充填法によって製造される作用物質容器(2)を提供する工程;
b)マイクロニードルアレイ(4)を提供する工程;
c)作用物質容器(2)およびマイクロニードルアレイ(4)を、フレーム(3)、ベースプレート(5)、およびサージカルテープ(6)と組み合わせて、マイクロニードルシステムを形成する工程。
【0038】
本発明はまた、皮内送達を実行する方法に関し、以下の工程を含む:
a)本発明によるマイクロニードルシステムを、サージカルテープ(6)によって皮膚に固定する工程;
b)マイクロニードルシステムを、収納位置(第1の位置)から送達位置(第2の位置)に、たとえばカバー要素(1)をベースプレート(5)に対して回転させることによって移動する工程。
【0039】
本発明の好ましい実施形態は、皮内送達を実行する方法に関し、以下の工程を含む:
a)
i)作用物質容器(2)を覆うカバー要素(1)であって、作用物質容器(2)は、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)に収容されるカバー要素(1)と;
ii)ベースプレート(5)はマイクロニードルアレイ(4)を受ける開口部を有するベースプレート(5)であって、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は互いに可動に連結される、ベースプレート(5)とを含み;
iii)ベースプレート(5)は、全体的または部分的にサージカルテープ(6)に接合され;
iv)フレーム(3)およびベースプレート(5)は互いに可動に連結され、マイクロニードルアレイ(4)を含むフレーム(3)は、ベースプレート(5)の開口部の方向に直線変位させることができる、
マイクロニードルシステムを、サージカルテープ(6)によって皮膚に固定する工程;
b)マイクロニードルシステムを、収納位置(第1の位置)から送達位置(第2の位置)に、たとえばカバー要素(1)をベースプレート(5)に対して回転させることによって移動させる工程であって、作用物質容器(2)がオープニング要素(8)によって開けられる、工程。
【0040】
本発明はまた、皮内送達のための方法に関し、以下の工程を含む:
a)本発明によるマイクロニードルシステムを、サージカルテープ(6)によって皮膚に固定する工程;
b)本発明によるマイクロニードルシステムを、収納位置から送達位置に、たとえばカバー要素(1)とベースプレート(5)との間のねじ山を回すことによって移動させる工程;
c)1つまたはそれ以上の物質を、個人の皮膚の選択された領域に送達する工程。
【0041】
本発明はさらに、1つまたはそれ以上の物質、医薬物、作用物質、本発明によるマイクロニードルシステムで皮内送達する溶液または(液体)製剤の調製に関する。
【0042】
本発明によるMNSは、1つまたはそれ以上のMNA(4)、および1つまたはそれ以上の作用物質容器(2)を含むことができる。本発明によるMNSによって、無痛で角質層を穿孔することができ、マイクロニードルを、ほとんど力を使うことなく皮膚に貫入することができる。本発明によるMNSは、特に有利に、一定の力で皮膚と適合でき、皮膚とMNA(4)との間の一定かつ継続する力の適合が、送達の間維持される。本発明によるMNSは、使用中にまず皮膚に貼って固定するように設計される。MNA(4)は第1の位置にあり、これが収納位置である。カバー要素(1)をベースプレート(5)の周りを回転させることによって、フレーム(3)がベースプレート(5)に対して直線変位される(送達機構)。MNA(4)は、収納位置から送達位置に移動し、その一方で作用物質容器(2)がオープニング要素(8)によって開けられる。作用物質容器(2)に含まれた溶液が、作用物質容器(2)から流れ出て、MNAまたはマイクロニードルに入る。送達位置において、マイクロニードルは角質層を穿孔して皮膚に貫入する。液体は、マイクロニードルを通って皮内送達される。送達機構を作動させることによって一定の張力が発生して、皮膚とMNSとの間で維持される。その結果、皮内送達の全期間において、MNSと皮膚との間に継続する力が適合され、それによって溶液もまた長時間にわたって投与される。MNA(4)は、MNA(4)の針が皮膚から外れることなく、送達の全期間において皮膚にとどまる。
【0043】
カバー要素(1)は、ベースプレート(5)の形状および寸法に対して相補的な形状および寸法を有する。カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、ハウジングを形成する。好ましくはカバー要素(1)は、カバー要素(1)を閉位置にロックするための、およびMNAを収納位置から送達位置に移動させるための、ねじ山を含む。
【0044】
カバー要素(1)は、上面および底面を有し、底面はベースプレート(5)に対向して内側に向き、好ましくはキャッチフック(9)と接触している。カバー要素(1)は、たとえば湾曲した蓋の形状を有する。カバー要素(1)の上面は、好ましくは収納位置から送達位置への移動を容易にする構造を有する。たとえば、カバー要素(1)の上面は、すべりを防止する1つまたはそれ以上の溝を有する。さらにカバー要素(1)は、MNSが収納位置から送達位置まで、いかに移動されるかを画成する、1つまたはそれ以上のマーキングを含むことができる。底面は、ベースプレート(5)のねじ山に対して相補的である周縁のねじ山を含み、それによって、カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、ねじ山を回すことにより連結される。同時に、カバー要素(1)とベースプレート(5)との間のねじ山を回すことによって、MNAを収納位置から送達位置へ移動させる。
【0045】
カバー要素(1)およびベースプレート(5)は、フレーム(3)、MNA(4)、および作用物質容器(2)を収容するのに適する内部空洞を有するハウジングを形成する。
【0046】
ベースプレート(5)は、ベースプレートの縁部に対して内側にオフセットされる、開口部を含む周縁の突出部を有する。この突出部は、空洞を生成するためのスペーサの役割を担う。周縁の突出部の外側には、カバー要素(1)のねじ山に対して相補的な、ねじ山が提供される。空洞を生み出すため、カバー要素(1)はベースプレート(5)上に配設され、ねじ山は回されない。カバー要素(1)およびベースプレート(5)によって範囲を定められた空洞は、ねじ山を一部または全て回すことによって、またはねじ山を複数周回すことによって減少する。
【0047】
収納位置において、MNA(4)は皮膚上に配置され、マイクロニードルは角質層に貫入していない。送達位置に移動する間、空洞は減少し、MNA(4)は下げられる。このプロセスにおいて、マイクロニードルは、皮膚に、好ましくは角質層の中または角質層を越えて貫入し、送達が継続する間またはMNSの使用が継続する間、この位置にとどまる。
【0048】
フレーム(3)は、作用物質容器(2)を収容できるように寸法設定される。好ましくは作用物質容器(2)は、ねじ山を回す間、ベースプレート(5)に対して同様に直線変位されるように、フレーム(3)に挿入または固定される。
【0049】
作用物質容器(2)は、少なくとも1つのオープニング要素(8)によって開けられる材料で作られる。本発明の好ましい実施形態において、作用物質容器(2)は、成形同時充填プロセスによって製造される。適切な方法が、たとえばAndrew.W.Gollによる「ISPE(2012)Knowledge Brief,KB−0025−Jun12」に記載される従来技術で知られている。本発明によるMNSの特に好ましい実施形態は、成形同時充填容器が使用されるMNSに関する。
【0050】
本発明によるMNSは、MNSを皮膚に取り付けるためのサージカルテープ(6)をさらに含む。サージカルテープ(6)という用語は、MNSを皮膚の表面に取り付けるのに好適な、任意の取り付け方法を包含する。たとえば、サージカルテープ(6)は、固定キャリア、および化学物質または生体物質、ならびに好ましくは粘着剤を含むことができる。サージカルテープ(6)はまた、1つもしくはそれ以上の化学物質および/もしくは生体物質のみを含むか、または1つもしくはそれ以上の化学物質および/もしくは生体物質のみで構成され、この1つまたはそれ以上の化学物質および/もしくは生体物質は、ベースプレート(5)の下面に直接貼られ、皮膚の表面にMNSを取り付けるのに好適である。サージカルテープ(6)はまた、たとえばナノ構造などの、構造化された表面を含むか、または構造化された表面で構成され、構造化された表面は、MNSを皮膚の表面に取り付けるのに好適である。重要な態様は、サージカルテープ(6)が、皮膚の表面上に適切に強く取り付けて固定し、それによって皮膚とMNA(4)との間で一定の力の適合が生じ、皮膚とMNA(4)との間での一定の力の適合が送達の間維持されることである。好適なサージカルテープ(6)の選択は、特定の領域(たとえば腹部または背中)の皮膚の堅さ、特定の領域の角質層中および角質層下の脂肪組織量、個人の体容積指数、個人の年齢、個人の食習慣(液体の摂取など)、個人の生活習慣(特定の皮膚領域の日光曝露など)、および考えられる他の要因に依存する。したがって当業者は、さまざまな個人もしくは患者、および/または皮膚の領域のための、それぞれ好適なサージカルテープ(6)を選択することができる。サージカルテープ(6)の選択は、MNSおよびMNSに使用される材料のサイズ、ならびに/またはそれらの材料の重量に、さらに依存する。好適なサージカルテープ(6)の例として、両面被覆を含むこともまた可能である、通常の市販のキャリア上の(感圧性の)粘着剤が挙げられる。
【0051】
サージカルテープ(6)は、しっかりとベースプレート(5)に接合される。特定の実施形態において、サージカルテープ(6)はベースプレート(5)の一体部材を形成する。サージカルテープ(6)は、1つまたはそれ以上の凹部を有し、送達位置に設定されると、MNA(4)のマイクロニードルは凹部を介して通り抜け、送達中にマイクロニードルは凹部を介して突出する。サージカルテープ(6)の凹部領域は、送達まで、または皮膚上に固定するまで、場合により保護フィルム(7)などによって保護される。
【0052】
本発明によると、マイクロニードルアレイ(MNA)(4)(同義語:マイクロニードルパスまたはマイクロニードルパッド)は、1つまたはそれ以上の皮膚貫入要素を保持する。いくつかの実施形態において、皮膚貫入要素は、行および列のアレイで配置され、実質的に等距離で互いに離隔される。皮膚貫入要素の実際の長さおよび間隔は、投与される溶液および個人または患者の体の投与箇所に依存する場合がある。典型的には、皮膚貫入要素は針、好ましくは中空針であり、これらはキャリア上またはキャリアの中で固定され、このキャリアから突出する。皮膚貫入要素は、効果的な溶液量を規定の時間期間にわたって、個人/患者の皮膚を通して投与するために提供されるアレイに配置される。典型的には、マイクロニードルアレイ(4)は、約1cm〜約10cm、好ましくは約2〜5cmの表面積を有する。
【0053】
皮膚貫入要素は、好ましくは、各針が軸方向の通路、および個人/患者の皮膚を穿孔するために面取りを施して尖らせた外側先端部を有する、中空針である。皮膚貫入要素は、溶液が作用物質容器(2)から中空針の軸方向通路を通って流れることができるように、固定キャリアの穴に取り付けられる。皮膚貫入要素は、好適な接着剤または締り嵌めによって、固定キャリアの開口部に取り付けることができる。代替の実施形態において、微小な皮膚貫入要素は、固定キャリアを伴って1つの部品に設計される。皮膚貫入要素は、好ましくは各々が、作用物質容器(2)と患者の皮膚内の皮内箇所との間の流体連結を確立するように、1つの面取りを施したテーパーが付いた先端部、および1つの軸方向通路を有する。
【0054】
皮膚貫入要素は、好ましくは所望の皮膚貫入深さを実現するために、好適な長さを有する。皮膚貫入要素の長さおよび厚さは、投与する溶液、皮膚の厚さ、およびMNSが提供される対象領域に基づいて選択される。本発明の実施形態において、皮膚貫入要素は、マイクロニードル、マイクロチューブ、中実針または中空針、ランセットなどであってよい。好ましい実施形態において、皮膚貫入要素は、ステンレス鋼で作られた中空針またはカニューレである。針のサイズは、約24ゲージ〜50ゲージ、好ましくは約30ゲージ〜約36ゲージ、最も好ましい変形におけるサイズは約34ゲージである。より小さい針はより大きい針よりも、皮膚の表面により容易に貫入し、一般的に好ましい。針は、約50マイクロメートル〜約5000マイクロメートルの有効長を提供するように、MNSのフレーム(3)の下面に配置される。別の実施形態によると、針は約500マイクロメートル〜約3000マイクロメートルの有効長を有する。別の実施形態によると、針は約1000マイクロメートル〜約2000マイクロメートルの範囲の有効長を有することができる。典型的に、針は約500マイクロメートル〜約1000マイクロメートルの有効長を有する。
【0055】
MNSの一体部材、特にカバー要素(1)、フレーム(3)、ベースプレート(5)、場合によりMNA(4)のキャリア材料、および/または場合によりサージカルテープ(6)のキャリア材料は、好適なプラスチック材料で作られる。典型的には、たとえば皮膚科学的にテスト済みの、非反応性、不活性、耐容性、生体適合性であるプラスチック材料が、この目的のために使用される。好適なプラスチック材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、およびそれらの共重合体が挙げられる。
【0056】
MNA(4)において、皮膚貫入要素は、たとえば行および列が互いに離隔された形態のアレイ(すなわち配列)を形成する。1本、少なくとも2本、それ以上すなわち複数、たとえば10本〜1,000,000本、好ましくは50本〜100,000本、特に好ましくは100本〜10,000本の皮膚貫入要素が、MNA(4)に提供される。MNA(4)は、たとえば個々の針を形成するように加工、エッチングされる、シリコンウェハから製造される。代替の実施形態において、MNA(4)は、ステンレス鋼、タングステン鋼、および、ニッケルとモリブデンとクロムとコバルトとチタンとの合金から製造することができる。別の実施形態において、MNA(4)は、セラミック材料、ガラス、ポリマ、および他の非反応性材料から製造することができる。
【0057】
皮膚貫入要素のアレイは、通常は行および列に配置される;しかし皮膚貫入要素は他の好適なパターンで配置される場合がある。皮膚貫入要素は、互いに干渉することなく、アレイ全体にわたって実質的に同一の深さまで皮膚に貫入できるように、好ましくは互いに十分離隔させる。針の好ましい貫入深さは、好ましくは完全に、または実質的に完全に穿孔される角質層によって画成される。好ましい実施形態において、皮膚貫入要素は皮膚の同一の深さまで貫入し、および/または選択された皮膚の深さに溶液を投与するように皮膚を穿孔し、物質の投与中の漏れのリスクを減少させる。アレイ内の皮膚貫入要素の数は、皮膚貫入要素の寸法、投与する物質、および貫入深さに応じて変化させてよい。
【0058】
本発明によるMNSは、1つまたはそれ以上の作用物質容器(2)を含むことができる。作用物質容器(2)は異なる容積を有することができ、または異なる容積の溶液を詰めるように設計することができる。容積の選択は、投与する(作用)物質または投与する薬剤、選択した製剤、投与量、治療法、および他の要因に依存する。送達継続時間は、作用物質容器(2)の容積、投与する(作用)物質、選択した製剤、投与量、治療法、選択したMNA(4)(皮膚貫入要素の内径など)、特定の領域における皮膚の特性、および他の要因に依存する。たとえばMNSは、0.5分〜10日、特に5分〜1日、好ましくは1〜5時間、特に好ましくは約2時間の送達に好適である。この時間の間、本発明によるMNSは、針を再押圧する必要なく、皮膚とMNA(4)との間における、一定の力の適合を保証する。
【0059】
本発明によるMNSの一実施形態が、以下の図面および実施例によって、例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明によるMNSの一体部材の分解図である。示される例示の実施形態において、システム全体の最大径は、サージカルテープ(6)および保護フィルム(7)に着目した場合には50mmであり、全高は約7mmである。
図2】収納位置にあるMNSの断面図である。
図3】送達位置にあるMNSの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
〔実施例1〕
図1によるMNSの構成:
作用物質の溶液は、成形同時充填容器(2)内に配置され、フレーム(3)に配置される。MNA(4)はフレーム(3)の下面に連結される。フレーム(3)はベースプレート(5)に可動に取り付けられ、フレーム(3)とベースプレート(5)とは互いに対して直線変位可能であり、フレーム(3)のキャッチフックは行程を画成して回転運動を防止する。ベースプレート(5)は、サージカルテープ(6)にしっかりと接合され、使用まで保護フィルム(7)によって保護される。蓋(1)およびベースプレート(5)は、ねじ山を介して可動に連結される。
【0062】
〔実施例2〕
送達機構の使用:
図2による収納位置におけるMNSの断面図からの手順として、まず、保護フィルム(7)が取り除かれ、MNSがサージカルテープ(6)によって皮膚に固定される。蓋(1)のねじ山を、ベースプレート(5)の周りに4分の1回すことによって、成形同時充填容器、フレーム(3)、およびMNA(4)は、ベースプレート(5)に対して直線変位され、作用物質容器(2)はベースプレート(5)上のマンドレル(オープニング要素(8))によって開けられる。
図1
図2
図3