【実施例1】
【0019】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る空圧システムのリアルタイム制御装置の概略構成図である。
【0020】
図1に示した空圧システムのリアルタイム制御装置は、空気圧縮機ユニット1、空気槽7、配管系統8、末端9〜11、末端圧力センサ12〜14、流量差分演算装置15を備えている。
【0021】
空気圧縮機ユニット1は、大気から吸込んだ空気Aを圧縮し圧縮空気を吐出する。空気圧縮機ユニット1は、空気圧縮機本体2、空気圧縮機吐出部圧力センサ3、制御装置4、可変速装置5、電動機6から構成される。以下では、空気圧縮機ユニット1の概略構成について説明する。
【0022】
空気圧縮機本体2は、空気Aを吸込んで圧縮する。
空気圧縮機吐出部圧力センサ3は、空気圧縮機本体2から吐出する圧縮空気の圧力を計測する。計測された圧力値は、制御装置4および流量差分演算装置15に出力される。
【0023】
制御装置4は、空気圧縮機吐出部圧力センサ3の圧力計測値、流量差分演算装置15の流量偏差量を入力として、流量偏差量がゼロとなるように電動機6の回転数を制御し、電動機6に対する回転数指令値を計算、出力する。電動機6の回転数を制御する具体的な演算方法については、例えば、特許文献2に記載された方法により実現可能である。
【0024】
可変速装置5は、回転数指令値を入力として電動機6を指定した回転数で回転させるために必要となる電力を出力する。
【0025】
電動機6は空気圧縮機本体2と回転軸を介して結合しており、入力された電力をもとに回転し、空気圧縮機本体2を駆動させる。
【0026】
以上が、空気圧縮機ユニット1の概略構成である。
【0027】
空気槽7は、空気圧縮機から供給される圧縮空気を溜める装置である。空気槽容量の大きさが応答遅れの要因である。
【0028】
配管系統8は、フィルタ、ドライヤー、配管、エルボ、分岐、弁等の機器から構成され、空気槽7から吐出した圧縮空気は配管系統8を介して、末端9〜11に供給される。
【0029】
末端圧力センサ12〜14は、末端9〜11に供給される圧縮機空気の圧力を計測する。計測された圧力値は、流量差分演算装置15に出力される。
【0030】
流量差分演算装置15は、空気圧縮機吐出部圧力センサ3の圧力計測値、末端圧力センサ12〜14の圧力計測値を入力として、末端9〜11での使用空気量と空気圧縮機の吐出流量の偏差量ΔQを出力する。
【0031】
以下では、
図2を用いて流量差分演算装置15の詳細について説明する。流量差分演算装置15は、圧力計測値取得・蓄積部100、空気槽容量、配管系統入力部101、配管モデル記憶部102、予測モデル構築部103、末端流量予測部104、圧縮機流量予測部105、流量偏差量演算部106から構成される。
【0032】
圧力計測値取得・蓄積部100は、空気圧縮機吐出部圧力センサ3の圧力計測値、末端圧力センサ12〜14の圧力計測値を取得・格納し、センサ計測値D1を出力する。
【0033】
空気槽容量、配管系統入力部101は、時系列応答における空圧システム内の空気の流れ、圧力損失を計算するために必要となるデータの入力を受付けし、配管モデルD2を出力する。上記データとは具体的には、空圧システムを構成する機器間の接続関係を定義するデータ、機器の属性(例えば、配管に対しては配管長さ、配管口径等、空気槽に対しては空気槽の容量)を定義するデータ、および空気圧縮機ユニット1の吐出空気流量を計算するためのデータである。
【0034】
配管モデル記憶部102は、メモリやハードディスクで構成されており、空気槽容量、配管系統入力部101が出力する配管モデルD2を格納する。
【0035】
予測モデル構築部103は、配管モデルD2より、空気圧縮機から各末端までの空気圧力の伝達遅れおよび圧力損失を評価できる数値モデルを構築し、予測モデルD3を出力する。
【0036】
末端流量予測部104は、予測モデルD3より、末端9〜11での使用空気量を計算し、全末端での使用空気量計算値D4を計算し、出力する。
【0037】
圧縮機流量予測部105は、予測モデルD3より、空気圧縮機の吐出流量を計算し、空気圧縮機の吐出流量計算値D5を出力する。
【0038】
流量偏差量演算部106は、全末端での使用空気量計算値D4、空気圧縮機の吐出流量計算値D5より、全末端の使用空気量と空気圧縮機の吐出流量の差分を計算し、偏差量ΔQを出力する。
【0039】
以上が、空圧システムのリアルタイム制御装置の構成である。次に、流量差分演算装置15の処理の内容を詳細に説明する。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る空圧システムのリアルタイム制御装置における流量差分演算装置15の処理手順を示す。
【0040】
ステップS1(計測値取得過程)として、圧力計測値取得・蓄積部100は、空気圧縮機吐出部圧力センサ3および末端圧力センサ12〜14で取得した圧力計測値をメモリやハードディスクに格納し、センサ計測値D1を出力する。
図4は、各センサからサンプリング時間2秒で取得した計測値を格納する具体例を示している。
【0041】
ステップS2(配管モデル生成過程)として、空気槽容量、配管系統入力部101は、時系列応答における空圧システム内の空気の流れを計算するために必要となるデータを入力し、配管モデルD2を出力する。配管モデルD2は、配管モデル記憶部102によりメモリやハードディスクに格納される。
【0042】
ステップS3(予測モデル生成過程)として、予測モデル構築部103は、配管モデルD2より、空気圧縮機から各末端までの空気圧力の伝達遅れおよび圧力損失を評価できる数値モデルを構築し、予測モデルD3を出力する。
【0043】
ステップS4(末端流量、圧縮機流量計算過程)として、末端流量予測部104および圧縮機流量予測部105は、センサ計測値D1、予測モデルD3より、末端9〜11での使用空気量、空気圧縮機の吐出流量を計算し、全末端での使用空気量計算値D4、空気圧縮機の吐出流量計算値D5を出力する。
【0044】
ステップS5(流量偏差量計算過程)として、流量偏差量演算部106は、全末端での使用空気量計算値D4、空気圧縮機の吐出流量計算値D5より、全末端の使用空気量と空気圧縮機の吐出流量の差分を計算し、偏差量ΔQを制御装置4に出力する。ここで、偏差量ΔQは、例えば式1に示すように、各時刻に対する全末端の使用空気量と空気圧縮機の吐出流量を引き算することで算出する。
式1:ΔQ
i=D4
i−D5
i
制御装置4は、偏差量ΔQを解消するように電動機6を制御する。具体的には、偏差量ΔQが正の値であれば電動機6の回転数を上げ、負の値であれば回転数を下げることで偏差量ΔQが0に近づくように制御を行う。より詳細な制御方法については、例えばPID制御のようなフィードバック制御を行っても良いし、ΔQが0となる電動機6の回転数を演算して電動機6の回転数を指定するように制御してもよい。
【0045】
図5〜
図7を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る全末端の使用空気量と空気圧縮機の吐出流量の差分を計算の一例を説明する。
【0046】
図5は末端流量予測部104で計算する末端9〜11での使用空気量、および出力する全末端での使用空気量計算値D4において時刻00s〜60sの60秒間に対する時系列計算結果の例を示す。
【0047】
図6は圧縮機流量予測部105で計算する空気圧縮機の吐出流量計算値D5において時刻00s〜60sの60秒間に対する時系列計算結果の例を示す。
【0048】
図7は流量偏差量演算部106で計算する偏差量ΔQにおいて時刻00s〜60sの60秒間に対する時系列計算結果である。
【0049】
以上が、流量差分演算装置15の処理の詳細に関する説明である。
【0050】
本実施形態では、流量偏差量演算部106において、複数の末端への供給圧力と空気圧縮機の吐出圧力の不明確な関係性について考慮不要とし、全末端での使用空気量に応じて供給される流量を制御する観点から、複数の末端に対して、圧縮空気の使用実態に合せて無駄に使用しない供給方法で、空気圧縮機をリアルタイムで制御することができる。
【0051】
また、予測モデル構築部103において、体積応答の時間遅れを評価する予測モデルを基に、圧力損失が急に変化する場合は、応答遅れのない安定した動作で不要な電力消費を防止できる。
【0052】
また、本実施例では、末端9〜11を設けた構成を例にとって説明したが、これに限られず、末端の数が三つ以上の場合も適用可能である。その場合、それぞれの末端に供給される圧縮機空気の圧力を計測する。
【実施例2】
【0053】
図8は本発明の第2の実施の形態に係る空圧システムのリアルタイム制御装置の概略構成図である。第1の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、空気槽7の吐出部に圧力センサを設置し、電動機6に電流センサを設置し、空気槽7の吐出部圧力、空気圧縮機本体2の運転電流値を取得する点である。具体的には、本実施の形態における空圧システムのリアルタイム制御装置の構成は、空気槽圧力センサ31、電流センサ61を新たに備える。また、流量差分演算装置15の代わりに流量差分演算装置215を備える。計測された空気槽圧力・圧縮機電流値は、第1の実施の形態において流量差分演算装置15に入力された値とともに流量差分演算装置215に入力される。
【0055】
以上が、本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点であり、その他の点は第1の実施の形態と同様である。次に、流量差分演算装置215の概略を説明する。
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る流量差分演算装置215の概略構成図である。第1の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施の形態の流量差分演算装置215の概略構成が第1の実施の形態の概略構成と相違する点は、空気槽7の吐出部圧力、空気圧縮機本体2の運転電流値を補正データとして入力し、予測モデル補正部203を新たに備え、予測モデルを補正する点である。具体的には、本実施の形態における構成は、補正用計測値取得・蓄積部200、予測モデル補正部203を新たに備える。空気槽圧力センサ31の圧力計測値、電流センサ61の電流計測値を取得・格納し、電流計測値から圧縮機の吐出流量を算出し、補正用センサ計測値D21を出力する。また、予測モデル補正部203は、予測モデルD3、補正用センサ計測値D21より、補正モデルを構築し、補正モデルD23を出力する。
【0057】
以上が、本実施の形態の流量差分演算装置215の概略構成が第1の実施の形態と相違する点であり、その他の点は第1の実施の形態と同様である。次に、流量差分演算装置215の処理手順を説明する。
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る流量差分演算装置215の処理手順を示す図である。第1の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施の形態の流量差分演算装置の処理手順が第1の実施の形態と相違する点は、ステップS3(予測モデル生成過程)の後に、ステップS23、ステップS24の処理過程を含む点である。
【0059】
ステップS23(補正用計測値取得過程)として、補正用計測値取得・蓄積部200は、空気槽圧力センサ31および電流センサ61で取得した圧力計測値、電流計測値をメモリやハードディスクに格納し、電流計測値から圧縮機の吐出流量を算出し、補正用センサ計測値D21を出力する。圧縮機の吐出流量は、電流計測値から電動機6の回転数、電動機6の回転数に連動した空気圧縮機本体2の回転数を求め、空気圧縮機本体2が1回転当たりに吐出する空気量を乗算することなどによって求めることが可能である。
【0060】
ステップS24(補正モデル生成過程)として、予測モデル補正部203は、予測モデルD3、補正用センサ計測値D21より、空気漏れ、配管劣化等の要素から生じる計測値と計算値のずれを修正し、予測モデルを補正し、補正モデルD23を出力する。予測モデルを修正する具体的な計算方法としては、例えば、公知の最適化アルゴリズムである遺伝的アルゴリズム法、焼きなまし法等の手法により実現可能である。
【0061】
以上が、本実施の形態の流量差分演算装置215の処理手順が第1の実施の形態の流量差分演算装置15と相違する点であり、その他の点は第1の実施の形態と同様である。
【0062】
本実施形態では、空気槽7の吐出部に圧力センサ、空気圧縮機本体2に電流センサを設置する構成としたが、片方のみを設置、または配管系統の任意の場所では圧力センサを設置する構成としてもよい。その場合、圧力センサの計測値を流量差分演算装置215に入力する。
【0063】
上述の通り、本実施形態では第1実施形態で得られる各効果に加えて、空気槽7の吐出圧力、空気圧縮機本体2の吐出流量を予測モデルに加え、空気漏れ、配管劣化等の要素から生じる計測値と計算値のずれを補正できる補正モデルより、末端流量予測部104、圧縮機流量予測部105における全末端での使用空気量計算値D4、空気圧縮機ユニット1の吐出流量計算値D5の計算精度を高めるため、空圧システムのリアルタイム制御装置の精度を高めることができる。
【実施例3】
【0064】
図11は本発明の第3の実施の形態に係る空圧システムのリアルタイム制御装置の概略構成図である。第2の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施の形態が第2の実施の形態と相違する点は、末端圧力センサが故障した場合に、補正用センサの計測値より、予測モデルを構築する点である。また、流量差分演算装置215の代わりに流量差分演算装置315を備える点である。補正用センサの計測値として、例えば空気槽圧力センサ31が計測した値に基づく空気槽7の吐出圧力、電流センサ61が計測した値に基づく空気圧縮機本体2の吐出流量等の補正用の計測値などが利用可能である。第3の実施の形態の説明のため、
図11において、点線で表示している末端圧力センサ12が故障したものとする。
【0066】
以上が、本実施の形態が第2の実施の形態と相違する点であり、その他の点は第2の実施の形態と同様である。次に、流量差分演算装置315の概略を説明する。
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る流量差分演算装置315の概略構成図である。第2の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施の形態の流量差分演算装置315の概略構成が第2の実施の形態の概略構成と相違する点は、末端圧力センサ12の計測値が異常があるか否かを判定し、補正用センサ計測値を加えて予測モデルを構築する点である。具体的には、本実施の形態における構成は、末端圧力計測値異常判定部204を新たに備える。また、センサ計測値D1より、末端圧力計測値の異常を判定し、異常なしのセンサ計測値D31を予測モデル構築部103に送る。
【0068】
以上が、本実施の形態が第2の実施の形態と相違する点であり、その他の点は第2の実施の形態と同様である。次に、流量差分演算装置315の処理手順を説明する。
図13は、本発明の第3の実施の形態に係る流量差分演算装置315の処理手順を示す図である。第2の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施の形態の流量差分演算装置315の処理手順が第2の実施の形態と相違する点は、ステップS2(配管モデル生成過程)の後に、ステップS223の処理過程を含む点である。
【0070】
ステップS223(計測値異常判定過程)として、末端圧力計測値異常判定部204は、各末端圧力センサの計測値が異常があるか否かを判定する。判定結果がYesならば、ステップS23に進み、Noならば、ステップS3(予測モデル生成過程)の処理を継続する。
【0071】
以上が、本実施の形態の流量差分演算装置315の処理手順が第2の実施の形態と相違する点であり、その他の点は第2の実施の形態と同様である。
【0072】
本実施形態では、末端圧力センサ12が故障になる構成としたが、任意の末端圧力センサが故障になる構成としてもよい。
【0073】
上述の通り、本実施形態では第1実施形態で得られる各効果に加えて、末端圧力センサが故障した場合は、空気槽7の吐出圧力、空気圧縮機本体2の吐出流量等の補正用の計測値を利用し、予測モデルを構築する。末端圧力センサの異常が発生しても空圧システムのリアルタイム制御装置が対応できる。
【実施例4】
【0074】
図14は本発明の第4の実施の形態に係る空圧システムのリアルタイム制御装置における流量差分演算装置415の概略構成図である。第1の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0075】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、流量差分演算部で、全末端の使用空気量と空気圧縮機の吐出流量の差分を計算し、偏差量ΔQより各末端への供給圧力を要求圧力P
0より下回るか否かを判定し、偏差量ΔQを修正し、出力する点である。具体的には、本実施の形態における構成は、流量差分演算部106の代わりに流量差分演算部406を備える。流量偏差量演算部406は、全末端での使用空気量計算値D4、空気圧縮機の吐出流量計算値D5より、全末端の使用空気量と空気圧縮機の吐出流量の偏差量ΔQを計算し、出力する。ここで、偏差量ΔQは、末端供給圧力が要求圧力P
0以上となるように、偏差量ΔQを修正する。例えば式2に示すように、各時刻に対する全末端の使用空気量と空気圧縮機の吐出流量を引き算し、流量修正値ΔQcを足し算することで算出する。
【0076】
式2:ΔQ
i=D4
i−D5
i+ΔQc
△Q
C=K(Pi−P0) (P≦Piの場合)
△Q
C=0 (P>Piの場合)
ここで、Pは、偏差量ΔQ=0の時の末端圧力で、Kは、圧力差と流量偏差量との関係を表す係数である。
【0077】
上述の通り、本実施形態では第1実施形態で得られる各効果に加えて、末端使用空気量に応じて供給される流量を制御する方法でも、各末端への供給圧力を要求圧力より下回らないことを保証できる。