(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正処理部は、前記予測誤差共分散行列を補正する際に、前記予測誤差共分散行列における各要素の中で誤差の広がりが最も小さい要素を補正することを特徴とする請求項3に記載の追尾処理装置。
前記補正処理部は、前記観測誤差共分散行列を補正する際に、前記観測誤差共分散行列における各要素の中で誤差の広がりが最も小さい要素を補正することを特徴とする請求項5に記載の追尾処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る追尾処理装置及び追尾処理方法について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る追尾処理装置100の構成を示すブロック図である。実施の形態に係る追尾処理装置100は、複数のセンサからの観測情報を基に、目標の追尾処理を行う装置である。実施の形態に係る追尾処理装置100は、
図1に示すように、第1の演算部20、第2の演算部30、及び第3の演算部50を備えると共に、第2の演算部30と第3の演算部50との間に補正処理部40を備えている。なお、第1の演算部20、第2の演算部30及び第3の演算部50は機能区分であり、機能区分の変更に伴って
図1とは異なる構成を採ってもよい。
【0012】
図1に示すように、追尾処理装置100には、第1のセンサ10及び第2のセンサ11からの観測情報が入力される。第1のセンサ10及び第2のセンサ11は複数のセンサの例示である。すなわち、追尾処理装置100は、3つ以上のセンサからの観測情報が入力される構成であってもよい。前述したように、観測情報には、目標の運動諸元に関する観測値と、目標の運動諸元を観測したときの観測時刻とが含まれる。以下、「目標の運動諸元」を「目標運動諸元」と呼ぶ。なお、観測値とは、センサが観測した観測情報の値である。
【0013】
追尾処理装置100の外部には、表示装置110が備えられている。表示装置110は、表示手段の一例である。追尾処理装置100の演算結果は、表示装置110に出力される。追尾処理装置100の演算結果は、
図1では図示しない記憶装置に出力されてもよい。
【0014】
次に、追尾処理装置100を構成する各構成部間の信号又は情報の流れについて説明する。
【0015】
第1のセンサ10は、目標80を観測する。第1のセンサ10による観測値10aは、第1の演算部20、補正処理部40及び第3の演算部50に伝送される。観測値10aには、第1のセンサ10が観測した目標運動諸元に関する情報と、第1のセンサ10が目標80を観測したときの観測精度に関する情報とが含まれる。第2の演算部30には、第1のセンサ10が目標80を観測したときの観測時刻10bに関する情報が第1のセンサ10から伝送される。
【0016】
第2のセンサ11も第1のセンサ10と同様に、目標80を観測する。第1のセンサ10が観測する目標と第2のセンサ11が観測する目標とは、同じ目標である場合もあれば、異なる目標である場合もある。第2のセンサ11による観測値11aは、第1の演算部20、補正処理部40及び第3の演算部50に伝送される。観測値11aには、第2のセンサ11が観測した目標運動諸元に関する情報と、第2のセンサ11が目標80を観測したときの観測精度に関する情報とが含まれる。第2の演算部30には、第2のセンサ11が目標80を観測したときの観測時刻11bに関する情報が第2のセンサ11から伝送される。
【0017】
第1の演算部20には、上述した観測値10a及び観測値11aが入力される。第1の演算部20は、観測値10a及び観測値11aの情報を基に、観測誤差共分散行列20aを演算する。観測誤差共分散行列20aの詳細については後述する。第1の演算部20が演算した観測誤差共分散行列20aは、補正処理部40及び第3の演算部50に伝送される。
【0018】
第2の演算部30には、上述した観測時刻10b及び観測時刻11bに加え、第3の演算部50が演算した平滑値50a及び平滑誤差共分散行列50bが入力される。平滑値50a及び平滑誤差共分散行列50bは、前回の観測時刻で取得した観測情報を基に演算された値である。平滑値50a及び平滑誤差共分散行列50bの詳細については後述する。なお、演算処理は、観測時刻を基準に行われる。このため、「観測時刻」と「演算時刻」とは同義とし、本明細書では、「観測時刻」という用語を使用する。
【0019】
第2の演算部30は、前回の観測時刻において演算された平滑値50a及び平滑誤差共分散行列50bの情報と、今回の観測時刻10b及び11bの情報とを基に、今回の観測時刻における目標運動諸元の予測値30aと、今回の観測時刻における予測誤差共分散行列30bとを演算する。予測値30a及び予測誤差共分散行列30bの詳細については後述する。第2の演算部30が演算した予測値30a及び予測誤差共分散行列30bは、補正処理部40及び第3の演算部50に伝送される。
【0020】
補正処理部40には、観測値10a及び観測値11aと、第1の演算部20が演算した観測誤差共分散行列20aと、第2の演算部30が演算した予測値30a及び予測誤差共分散行列30bとが入力される。補正処理部40による補正処理は、観測値10a、観測値11a、観測誤差共分散行列20a、予測値30a及び予測誤差共分散行列30bに関する各情報を基に行われる。当該補正処理では、第1の演算部20が演算した観測誤差共分散行列20aと、第2の演算部30が演算した予測誤差共分散行列30bに対する補正処理の要否が判定される。
【0021】
当該補正処理が必要と判定された場合、観測誤差共分散行列20a、または、予測誤差共分散行列30bに対する補正処理が実施される。一方、当該補正処理が不要と判定された場合、補正処理は実施されずに、第1の演算部20により演算された観測誤差共分散行列20aと、第2の演算部30により演算された予測誤差共分散行列30bが、そのまま出力される。補正処理の詳細については後述する。
【0022】
第3の演算部50には、観測値10a及び観測値11aと、第2の演算部30が演算した予測値30aと、補正処理部40が演算した補正処理後の観測誤差共分散行列40aもしくは補正処理前の観測誤差共分散行列40aと、補正処理後の予測誤差共分散行列40bもしくは補正処理前の予測誤差共分散行列40bとが入力される。第3の演算部50は、これらの入力情報を基に、平滑値50a及び平滑誤差共分散行列50bを演算し、表示装置110に出力する。
【0023】
次に、補正処理部40を設ける理由について、
図1から
図5の図面を参照して説明する。
図2は、第1の演算部20の動作説明に供する図である。
図3は、第2の演算部30の動作説明に供する図である。
図4は、第3の演算部50の動作説明に供する第1の図である。
図5は、第3の演算部50の動作説明に供する第2の図である。
【0024】
図2には、観測値が丸記号「○」で示され、当該観測値の観測誤差の広がりを表す概念を有する観測誤差共分散行列が一点鎖線で示されている。前述したように、観測誤差共分散行列は、第1の演算部20によって演算される。観測誤差共分散行列は、
図2の一点鎖線で示されるように、観測値に対して、破線で示されるセンサ視線方向にセンサの距離精度に応じた広がりと、センサの視線方向に直交する方向にセンサの角度精度に応じた広がりとを持って表される。すなわち、第1の演算部20は、センサの観測精度である距離精度及び角度精度に応じた観測誤差共分散行列を演算することにより、目標状態の真値が存在すると考えられる範囲を推定している。
【0025】
図3には、前回の観測時刻t
k−1において演算された平滑値がプラス記号「+」で示され、当該平滑値の推定誤差の広がりを表す概念を有する平滑誤差共分散行列が実線で示されている。また、
図3には、今回の観測時刻t
kにおいて演算される予測値が白抜きの三角記号「△」で示され、当該予測値の予測誤差の広がりを表す概念を有する予測誤差共分散行列が破線で示されている。前述したように、予測値及び予測誤差共分散行列は、第2の演算部30によって演算される。予測値及び予測誤差共分散行列は、前回の観測時刻t
k−1において演算された平滑値及び平滑誤差共分散行列と、前回の観測時刻t
k−1から今回の観測時刻t
kまでの経過時間Δt=t
k−t
k−1とを基に演算される。すなわち、予測値は、前回の観測時刻t
k−1で取得した観測情報を基に演算で求めた平滑値を用いて予測される目標運動諸元の予測値である。
【0026】
図4は、センサ間にバイアス誤差が存在しない場合の図である。ここで、バイアス誤差とは、異なるセンサ間の観測値に存在する誤差である。バイアス誤差には、センサ間の位置誤差、及びセンサ間の角度誤差が含まれる。
図4には、プラス記号「+」で示される平滑値が、丸記号「○」で示される観測値と、白抜きの三角記号「△」で示される予測値とを用いて算出される様子が示されている。すなわち、平滑値は、観測値と予測値とから求められる目標運動諸元の推定値である。また、
図4には、
図2に示した観測誤差共分散行列が一点鎖線で示され、
図3に示した予測誤差共分散行列が破線で示されている。
図4を参照すると、平滑値は、観測値と予測値とを内分する値として求められている。すなわち、
図4によれば、平滑値は、観測値と予測値とから精度よく求められる状況が理解できる。
【0027】
図4に対して
図5は、センサ間にバイアス誤差が存在する場合の図である。
図5において、破線で示される予測誤差共分散行列は、
図4に示すものと同一である。一方、
図5において、二点鎖線で示される観測誤差共分散行列は、
図4に示すものよりも紙面の左上部寄りに変位している。この変位は、バイアス誤差によるズレに起因するものである。バイアス誤差のズレによって、演算される観測値は丸記号で示される位置から太字の丸記号で示される位置に推移する。その結果、演算される平滑値はプラス記号で示される位置から太字のプラス記号で示される位置に推移する。このように、バイアス誤差のズレによって、目標運動諸元の推定精度は悪化してしまうことになる。
【0028】
ここで、
図1に示す構成から補正処理部40を有さない追尾処理装置を仮定し、この追尾処理装置が複数センサの観測情報を処理する場合について考える。具体的には、第1のセンサ10による目標80の観測情報を基に追尾処理演算を実施後、次の追尾処理演算において、第2のセンサ11による目標80の観測情報を基に追尾処理演算を実施することを考える。
【0029】
まず、一般的に、センサ間において、時刻同期が常に行われているわけではない。このため、各センサは絶対時刻を検知することができない。その結果、第1のセンサ10から伝送される観測時刻と、第2のセンサ11から伝送される観測時刻との間には、誤差が存在する。この観測時刻の誤差もバイアス誤差の一つであり、本明細書では「時刻同期誤差」と呼ぶ。よって、センサ間に存在するバイアス誤差には、上記特許文献1及び特許文献2に示されているセンサ間の位置誤差、及びセンサ間の角度誤差に、ここで定義した時刻同期誤差が加わる。その結果、第1のセンサ10の観測情報を基に演算される予測値と、第2のセンサ11の観測情報を基に演算される予測値との間には、センサ間のバイアス誤差が付加される。
【0030】
よって、第3の演算部50が、平滑値及び平滑誤差共分散行列を演算する際には、センサ間のバイアス誤差によって、
図5に示すように、平滑値の推定精度が悪化してしまう。そこで、
図1に示すように、第3の演算部50の前段に補正処理部40を設ける構成にしたものが、実施の形態に係る追尾処理装置100である。
【0031】
次に、実施の形態に係る追尾処理装置における演算処理の詳細について、
図1、
図6、
図7、及び
図8の図面、並びに下記に示す幾つかの数式を参照して説明する。
図6は、実施の形態に係る追尾処理装置100における要部の処理の流れを示すフローチャートである。
図7は、補正処理部40における補正処理の詳細説明に供する第1の図である。
図8は、補正処理部40における補正処理の詳細説明に供する第2の図である。
【0032】
まず、各センサから伝送される観測値及び観測精度をベクトル量として、それぞれ「z
→k」及び「v
→k」で表す。観測値ベクトルz
→kは、今回の観測時刻t
kにおいて観測された観測値を表すベクトルである。観測精度ベクトルv
→kは、今回の観測時刻t
kにおいて観測された観測値の観測精度を表すベクトルである。ここで、「z
→k」における「z
→」の表記は、「z」の上部に矢印記号「→」が配置された文字の代替表記である。本明細書では、文書内においては、当該代替表記を使用する。
【0033】
観測時刻t
kにおける観測値ベクトルz
→k、及び観測精度ベクトルv
→kは、以下の(1−1)式、及び(1−2)式で表すことができる。ここで、観測値ベクトルz
→kは、基準となる直交座標系である追尾基準座標系で定義されたベクトルとする。追尾基準座標系の一例は、北基準直交座標系である。また、観測精度ベクトルv
→kは、センサを基準とする極座標系であるセンサ基準極座標系で定義されたベクトルとする。
【0035】
上記(1−1)式において、「x
ok」は、観測時刻t
kにおける観測値のx軸成分である。「y
ok」は、観測時刻t
kにおける観測値のy軸成分である。「z
ok」は、観測時刻t
kにおける観測値のz軸成分である。記号「T」は、転置を表す。この表記は、後述の数式においても同様である。また、上記(1−2)式において、「σ
rk」は、観測時刻t
kにおける観測精度の距離方向の成分である。「σ
ek」は、観測時刻t
kにおける観測精度の仰角方向の成分である。「σ
byk」は、観測時刻t
kにおける観測精度の方位角方向の成分である。なお、観測精度の距離方向の成分を「距離精度」と呼び、観測精度の仰角方向の成分を「仰角精度」と呼び、観測精度の方位角方向の成分を「方位角精度」と呼ぶ場合がある。
【0036】
次いで、第1の演算部20によって演算される観測誤差共分散行列を「R
k」で表す。観測誤差共分散行列R
kは、目標運動諸元の真値が存在すると考えられる範囲を表す行列である。観測誤差共分散行列R
kは、以下の(2)式で表すことができる。
【0038】
上記(2)式に示されるように、観測誤差共分散行列R
kは、上記(1−2)式に示した観測精度ベクトルv
→kの距離精度σ
rk、仰角精度σ
ek及び方位角精度σ
bykの2乗成分を対角要素とする行列と、座標変換行列G
kとを用いて表すことができる。座標変換行列G
kは、センサ基準極座標系から基準となる直交座標系への変換行列である。
【0039】
また、第2の演算部30によって演算される観測時刻t
kにおける予測値のベクトルを「x
→k|k−1」で表す。観測時刻t
kにおける予測値ベクトルx
→k|k−1は、以下の(3)式で表すことができる。
【0041】
上記(3)式において、「x
k|k−1」は、観測時刻t
kにおける位置予測値のx軸成分である。「y
k|k−1」は、観測時刻t
kにおける位置予測値のy軸成分である。「z
k|k−1」は、観測時刻t
kにおける位置予測値のz軸成分である。「x
・k|k−1」は、観測時刻t
kにおける速度予測値のx軸成分である。「y
・k|k−1」は、観測時刻t
kにおける速度予測値のy軸成分である。「z
・k|k−1」は、観測時刻t
kにおける速度予測値のz軸成分である。ここで、「x
・k|k−1」における「x
・」の表記は、「x」の上部にドット記号「・」が配置された文字の代替表記である。「y」及び「z」についても同様である。本明細書では、イメージで挿入する数式を除き、当該代替表記を使用する。
【0042】
また、第3の演算部50によって演算される、前回の観測時刻t
k−1における平滑値のベクトルを「x
→k−1|k−1」で表す。前回の観測時刻t
k−1における平滑値ベクトルx
→k−1|k−1は、以下の(4)式で表すことができる。
【0044】
上記(4)式において、「x
k−1|k−1」は、前回の観測時刻t
k−1における位置平滑値のx軸成分である。「y
k−1|k−1」は、前回の観測時刻t
k−1における位置平滑値のy軸成分である。「z
k−1|k−1」は、前回の観測時刻t
k−1における位置平滑値のz軸成分である。「x
・k−1|k−1」は、前回の観測時刻t
k−1における速度平滑値のx軸成分である。「y
・k−1|k−1」は、前回の観測時刻t
k−1における速度平滑値のy軸成分である。「z
・k−1|k−1」は、前回の観測時刻t
k−1における速度平滑値のz軸成分である。
【0045】
前回の観測時刻t
k−1における平滑値ベクトルx
→k−1|k−1と、今回の観測時刻t
kにおける予測値ベクトルx
→k|k−1との関係は、以下の(5)式で表すことができる。
【0047】
上記(5)式において、Φ(t
k,t
k−1)は、前回の観測時刻t
k−1から今回の観測時刻t
kまでの経過時間による目標諸元の変化を表す行列である。以下、この行列を「状態遷移行列」と呼ぶ。
【0048】
上記(5)式に示した状態遷移行列Φ(t
k,t
k−1)を用いると、第2の演算部30によって演算される観測時刻t
kにおける予測誤差共分散行列P
k|k−1は、以下の(6)式を用いて表すことができる。
【0050】
上記(6)式において、「P
k−1|k−1」は、前回の観測時刻t
k−1における平滑誤差共分散行列であり、「Q
k−1」は、前回の観測時刻t
k−1におけるシステム雑音を表すシステム雑音共分散行列である。
【0051】
上述したように、第3の演算部50は、平滑値及び平滑誤差共分散行列を演算する。平滑値は、上述した通りである。また、観測時刻t
kにおけるカルマンゲイン行列を「K
k」で表す。カルマンゲイン行列K
kは、以下の(7)式で表すことができる。
【0053】
上記(7)式において、「P
k|k−1」は、上記(6)式で表される観測時刻t
kにおける予測誤差共分散行列であり、「R
k」は、上記(2)式で表される観測時刻t
kにおける観測誤差共分散行列である。また、「H
k」は、観測時刻t
kにおける位置のセンサ観測行列である。位置のセンサ観測行列H
kは、以下の(8)式で表すことができる。
【0055】
上記(8)式において、「O
3×3」は、3行3列の零行列である。位置のセンサ観測行列H
kは、予測値ベクトルx
→k|k−1からx軸、y軸及びz軸の位置成分を取り出すための行列である。
【0056】
上記(7)式、及び(8)式を用いると、観測時刻t
kにおける平滑値ベクトルx
→k|k、及び観測時刻t
kにおける平滑誤差共分散行列P
k|kのそれぞれは、以下の(9−1)式、及び(9−2)式で表すことができる。
【0058】
補正処理部40の処理の流れは
図6に示す通りである。
図6に示す処理は、補正処理部40によって実施される。ステップST6−1では、第1のセンサ10と第2のセンサ11との間にバイアス誤差が存在するか否かが判定される。前述の通り、バイアス誤差とは、異なるセンサ間の観測値に存在する誤差である。
【0059】
前述した
図5の例に示すように、観測値のズレが大きい場合、第1のセンサ10と第2のセンサ11との間に、バイアス誤差が存在すると判定される(ステップST6−1,Yes)。この場合、ステップST6−2に進む。観測値のズレが大きいか否かは、閾値で判定することができる。
【0060】
一方、ステップST6−1において、バイアス誤差が存在しないと判定された場合(ステップST6−1,No)、
図6に示す補正処理のフローを終了する。
【0061】
ステップST6−2では、バイアス誤差の発生要因が時刻であるか否かが判定される。バイアス誤差の発生要因が時刻である場合、第1のセンサ10の観測情報を基に演算される予測値と、第2のセンサ11の観測情報を基に演算される予測値との間に、前述した時刻同期誤差が表れる。予測値のズレが大きいか否かは、閾値で判定することができる。
【0062】
第1のセンサ10と第2のセンサ11との間に時刻同期誤差があると判定された場合(ステップST6−2,Yes)、ステップST6−3に進む。
【0063】
ステップST6−3では、予測誤差共分散行列が補正される。より詳細には、予測誤差共分散行列の位置に関する広がりが最も小さい要素のみが補正される。ステップST6−3の処理を終えると、
図6のフローを抜ける。
【0064】
予測誤差共分散行列の補正式は、以下の(10−1)式、(10−2)式、(10−3)式、(10−4)式及び(10−5)式で表すことができる。
【0066】
上記(10−2)式において、「D
k」は、「(H
k・P
k|k−1・H
kT)
−1」の固有値を対角要素に持つ対角行列である。「H
k・P
k|k−1・H
kT」は、予測誤差共分散行列の位置に関する成分から成る行列である。
【0067】
また、上記(10−2)式の右辺に現れる「V
k」は、対角行列D
kに対応する右固有ベクトルを列にもつ行列である。(10−2)式に示されるように、予測誤差共分散行列P
k|k−1の位置に関する成分から成る行列「H
k・P
k|k−1・H
kT」は、右固有ベクトルを列にもつ行列V
kによって、対角化される。
【0068】
上記(10−1)式には、時刻Δ
iの補正式が示されている。添字「i」は、x,y,zのうちの何れか1つを表すという意味で使用される。すなわち、Δ
iは、Δ
x,Δ
y,Δ
zのうちの何れか1つを表す。δ
iについても同様である。
【0069】
上記(10−3)式に示されるように、対角行列D
kにおける対角要素d
x,d
y,d
zのうちの最大要素に対して、δ
iが“1”に設定され、最大要素以外の他の2つの要素は“0”に設定される。なお、対角行列D
kにおいて、対角要素d
x,d
y,d
zのうちの最大要素は、誤差の広がりが最小の要素を意味する。これにより、対角要素d
x,d
y,d
zのうちの最大要素のみが、(10−1)式を用いて補正される。また、(10−4)式によって、対角行列D
kが補正される。そして、補正後の対角行列D
k,newを(10−5)式に代入して演算することにより、補正後の予測誤差共分散行列P
k|k−1,newが生成される。
【0070】
なお、(10−1)式において、「m」は予測誤差共分散行列の補正量を決定する補正係数である。ここで、m>1の場合、観測値と予測値とを結ぶ直線方向において、観測誤差共分散行列と予測誤差共分散行列との間で、重なる範囲がある状態を意味している。
【0071】
図7には、補正前の予測誤差共分散行列が破線で示され、補正後の予測誤差共分散行列が太破線で示されている。
図7に示すように、補正後の予測誤差共分散行列は、(10−1)式で表される補正量によって、ある方向に膨らむように制御される。このときに制御される方向が、「対角要素d
x,d
y,d
zのうちの最大要素」に対応する方向である。
【0072】
また、
図7には、センサ間にバイアス誤差が存在しない場合の平滑値が、細字のプラス記号で示され、センサ間に時刻同期誤差が存在する場合の補正前の平滑値が、中太字のプラス記号で示され、センサ間に時刻同期誤差が存在する場合の補正後の平滑値が太字のプラス記号で示されている。ステップST6−3による補正処理によって、中太字のプラス記号で示される補正前の平滑値は、太字のプラス記号で示される補正後の平滑値に変更される。これにより、補正後の平滑値は、センサ間に時刻同期誤差が存在しない場合の平滑値に近い位置となる。すなわち、ステップST6−3の補正処理によって、平滑値が時刻同期誤差が存在しない場合の平滑値に近い値となるように補正されるので、平滑値の推定精度を高めることができる。
【0073】
ステップST6−2に戻り、第1のセンサ10と第2のセンサ11との間に時刻同期誤差がないと判定された場合(ステップST6−2,No)、ステップST6−4に進む。ステップST6−4に進む場合は、第1のセンサ10と第2のセンサ11との間において、バイアス誤差があり、且つ時刻同期誤差がない場合である。すなわち、ステップST6−4は、時刻同期誤差以外のバイアス誤差である、センサ間の位置誤差及びセンサ間の角度誤差により、観測値にズレが生じた場合の補正処理である。
【0074】
ステップST6−4では、観測誤差共分散行列が補正される。より詳細には、観測誤差共分散行列の位置及び角度に関する広がりが最も小さい要素のみが補正される。ステップST6−4の処理を終えると、
図6のフローを抜ける。
【0075】
なお、
図6のフローでは、バイアス誤差の発生要因が時刻であるか否かを判定するステップST6−2が設けられているが、このステップST6−2の判定処理は省略してもよい。ステップST6−2の判定処理を省略した場合、予測誤差共分散行列及び観測誤差共分散行列のうちの何れの誤差共分散行列を補正するか、予め決めておけばよい。予測誤差共分散行列及び観測誤差共分散行列のうちの何れかの誤差共分散行列の補正を実施した場合、平滑値の精度は、補正前よりも改善されるため、ステップST6−1の判定処理をクリアすることが可能となる。なお、一般的に、バイアス誤差による平滑値への影響が大きいのは方位角成分である。このため、何れか一方のみを補正するのであれば、観測誤差共分散行列を補正する方が平滑値の精度を改善するのに適している。
【0076】
観測誤差共分散行列の補正式は、以下の(11−1)式、(11−2)式、及び(11−3)式で表すことができる。
【0078】
上記(11−1)式には、観測誤差共分散行列R
kにおける補正後の各要素であるσ
j,newの補正式が示されている。添字「j」は、「rk」,「ek」,「byk」のうちの何れか1つを表すという意味で使用される。上記(11−2)式に示されるδ
jについても同様である。すなわち、σ
j,newは、σ
rk,new,σ
ek,new,σ
byk,newのうちの何れか1つを表す。
【0079】
(11−2)式に示されるように、観測誤差共分散行列R
kにおける補正前の各要素であるσ
rk,σ
ek,σ
bykのうちの最小要素に対して、δ
jが“1”に設定され、最小要素以外の他の2つの要素は“0”に設定される。これらの値が(11−1)式に代入され、(11−1)式に従って補正量が演算される。また、(11−3)式によって、補正後の観測誤差共分散行列R
k,newが演算される。
【0080】
なお、(11−1)式において、「n」は観測誤差共分散行列の補正量を決定する補正係数である。ここで、n>1の場合、観測値と予測値を結ぶ直線方向において、観測誤差共分散行列と予測誤差共分散行列が重なる範囲がある状態を意味している。
【0081】
図8には、補正前の観測誤差共分散行列が破線で示され、補正後の観測誤差共分散行列が太破線で示されている。
図8に示すように、補正後の観測誤差共分散行列は、(11−1)式で表される補正量によって、ある方向に膨らむように制御される。このときに制御される方向が、「σ
rk,σ
ek,σ
bykのうちの最小要素」に対応する方向である。
【0082】
また、
図8には、センサ間にバイアス誤差が存在しない場合の平滑値が、細字のプラス記号で示され、センサ間に時刻同期誤差以外のバイアス誤差が存在する場合の補正前の平滑値が、中太字のプラス記号で示され、センサ間に時刻同期誤差以外のバイアス誤差が存在する場合の補正後の平滑値が太字のプラス記号で示されている。ステップST6−4による補正処理によって、中太字のプラス記号で示される補正前の平滑値は、太字のプラス記号で示される補正後の平滑値に変更される。これにより、補正後の平滑値は、センサ間にバイアス誤差が存在しない場合の平滑値に近い位置となる。すなわち、ステップST6−4の補正処理によって、平滑値がバイアス誤差の存在しない場合の平滑値に近い値となるように補正されるので、平滑値の推定精度を高めることができる。
【0083】
以上のように、補正処理部40は、第1のセンサ10と第2のセンサ11との間にバイアス誤差が存在すると判定された場合に、観測誤差共分散行列及び予測誤差共分散行列のうちの何れかを補正し、補正後の観測誤差共分散行列又は補正後の予測誤差共分散行列を第3の演算部50に出力する。第3の演算部50は、補正後の観測誤差共分散行列又は補正後の予測誤差共分散行列を基に、平滑値50a及び平滑誤差共分散行列50bの演算を行う。これにより、バイアス誤差の推定に伴って生じ得る追尾処理の遅延及び追尾精度の低下を抑制することができる。
【0084】
また、補正処理部40は、バイアス誤差の要因が時刻であるか否かの判定処理によって、バイアス誤差の要因の切り分けを行い、切り分けの結果に基づいて、観測誤差共分散行列及び予測誤差共分散行列のうちの何れかを補正する。これにより、精度を一時的に下げる制御が、観測誤差共分散行列及び予測誤差共分散行列のうちの何れか一方に限定されるので、補正処理によって平滑値の推定精度が悪化することを防止することができる。また、観測誤差共分散行列及び予測誤差共分散行列のうちの何れかを補正するので、平滑値50a及び平滑誤差共分散行列50bの出力が遅延するのを抑制することができる。
【0085】
次に、実施の形態に係る追尾処理方法について説明する。実施の形態に係る追尾処理装置を用いて行う追尾処理方法の特徴は、以下の通りである。
【0086】
(1)第1のステップでは、観測情報を基に、観測誤差共分散行列が演算される。
(2)第2のステップでは、前回の観測時刻における平滑値と、前回の観測時刻から今回の観測時刻までの経過時間とを基に、今回の観測時刻における目標運動諸元の予測値と、今回の観測時刻における予測誤差共分散行列が演算される。
(3)第3のステップでは、観測情報及び予測値を基に、観測誤差共分散行列が補正される。或いは、観測情報及び予測値を基に、予測誤差共分散行列が補正される。
(4)第4のステップでは、観測情報、予測値、補正後の観測誤差共分散行列、及び補正前の予測誤差共分散行列を基に、平滑値及び平滑誤差共分散行列が演算される。或いは、観測情報、予測値、補正前の観測誤差共分散行列、及び補正後の予測誤差共分散行列を基に、平滑値及び平滑誤差共分散行列が演算される。
【0087】
上記したように、第3のステップでは、観測情報、観測誤差共分散行列、及び予測値を基に、観測誤差共分散行列が補正され、又は、観測情報、予測値、及び予測誤差共分散行列を基に、予測誤差共分散行列が補正される。これらの処理により、平滑値の推定精度を高めることができ、バイアス誤差の推定に伴って生じ得る追尾処理の遅延及び追尾精度の低下を抑制することが可能となる。
【0088】
最後に、実施の形態における追尾処理装置100の機能を実現するためのハードウェア構成について、
図9及び
図10の図面を参照して説明する。
図9は、実施の形態の追尾処理装置100におけるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図10は、実施の形態の追尾処理装置100におけるハードウェア構成の他の例を示すブロック図である。
【0089】
実施の形態における追尾処理装置100の機能を実現する場合には、
図9に示すように、演算を行うプロセッサ200、プロセッサ200によって読みとられるプログラムが保存されるメモリ202、及び信号の入出力を行うインタフェース204を含む構成とすることができる。
【0090】
プロセッサ200は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、メモリ202には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)を例示することができる。
【0091】
メモリ202には、追尾処理装置100の機能を実行するプログラム及びプロセッサ200によって参照されるテーブルが格納されている。プロセッサ200は、インタフェース204を介して必要な情報を授受し、メモリ202に格納されたプログラムをプロセッサ200が実行し、メモリ202に格納されたテーブルをプロセッサ200が参照することにより、上述した第1の演算部20、第2の演算部30、補正処理部40及び第3の演算部50の演算処理を行うことができる。プロセッサ200による演算結果は、インタフェース204を介して表示装置110に出力することができる。プロセッサ200による演算結果は、表示装置110への出力と共に、メモリ202に記憶してもよい。
【0092】
図9に示すプロセッサ200及びメモリ202は、
図10のように処理回路203に置き換えてもよい。処理回路203は、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。なお、第1の演算部20、第2の演算部30、補正処理部40及び第3の演算部50における一部の処理を処理回路203で実施し、処理回路203で実施しない処理をプロセッサ200及びメモリ202で実施してもよい。
【0093】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。