(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(C)次の構造式を有するエポキシ樹脂と、
を含むとともに、(B−1)光重合開始剤及び(B−2)光塩基発生剤のうちの少なくとも一方を含み、かつ、無機フィラーとして、当該(B−1)光重合開始剤を含むときは光反応性の表面処理をされた無機フィラーを、当該(B−2)光塩基発生材を含むときは、熱光反応性の表面処理をされた無機フィラーを、それぞれ含有するものである。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記の特定の構造式を有するエポキシ樹脂を含有する。このエポキシ樹脂は、ガードナー色相が低く、つまり光透過率が高いことから、硬化性樹脂組成物を塗布した被膜の深部にまで光が到達する。したがって、光反応性の表面処理された無機フィラーを含む組成物の場合には、その被膜の深部に存在する光反応性の表面処理された無機フィラーの表面処理剤と反応することができる。また、熱反応性の表面処理された無機フィラーを含む組成物の場合には、その深部に存在する光塩基発生剤により熱反応性の表面処理された無機フィラーの表面処理剤と反応することができる。したがって、深部においても硬化物を十分に硬化させることができ、耐湿性が向上し、信頼性、密着性に優れた硬化物を得ることができる。
また、上記の特定の構造式を有するエポキシ樹脂は、疎水性で耐熱性の骨格を有していることから、耐湿性に優れ、信頼性、密着性に優れた硬化物を得ることができる。
さらに、上記の特定の構造式を有するエポキシ樹脂は、疎水性で耐熱性の骨格を有していることからガラス転移温度(Tg)が高いことと、また、無機フィラーを含有していることから線膨張係数が低いこととが相俟って、優れたクラック耐性を有し、また低反り性を有している。
また、上記の特定の構造式を有するエポキシ樹脂が、ガードナー色相が低いことから、光反応性を阻害することがないので、本発明の樹脂組成物は高解像性を有している。
このような特性に基づき、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物、密着性及び信頼性の高いものと考えられる。
【0016】
以下に、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0017】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸又はそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光反応性モノマーを併用する必要がある。
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0018】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0019】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0020】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0021】
(4)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0022】
(5)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0023】
(6)2官能又はそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0024】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0025】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0026】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0027】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0028】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(12)前記(1)〜(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0030】
(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20〜200mgKOH/gであることが好ましい。(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価が20〜200mgKOH/gであると、硬化物のパターンの形成が容易となる。より好ましくは、50〜130mgKOH/gである。
【0031】
また、前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上であると、露光部の被膜の耐現像性が向上し、解像性に優れる。一方、重量平均分子量が150,000以下であると、未露光部の溶解性が良好で解像性に優れるとともに、貯蔵安定性においても向上することがある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0032】
(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、溶剤を除いた硬化性樹脂組成物全量基準で、例えば、10〜60質量%であり、20〜60質量%であることが好ましい。10質量%以上、好ましくは20質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したものに限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。中でも、前記カルボキシル基含有樹脂(10)、(11)のごときフェノール化合物を出発原料と使用して合成されるカルボキシル基含有樹脂は高電圧下におけるHAST試験、すなわちB−HAST耐性や、PCT耐性に優れるため好適に用いることができる。
【0033】
[(B−1)光重合開始剤又は(B−2)光塩基発生剤]
光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもできる。
【0034】
光重合開始剤としては、例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins社製Omnirad(オムニラッド)819)等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins社製Omnirad(オムニラッド)TPO)等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもモノアシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類が好ましく、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)がより好ましい。
【0035】
光重合開始剤の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましい。0.5質量部以上の場合、表面硬化性が良好となり、20質量部以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0036】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、熱硬化反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。
【0037】
光塩基発生剤として、例えば、α−アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物、N−ホルミル化芳香族アミノ化合物、N−アシル化芳香族アミノ化合物、ニトロベンジルカーバメイト化合物、アルコオキシベンジルカーバメート化合物等が挙げられる。なかでも、オキシムエステル化合物、α−アミノアセトフェノン化合物が好ましく、オキシムエステル化合物がより好ましく、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)がより好ましい。α−アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。光塩基発生剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
この他、光塩基発生剤としては、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0039】
その他の光塩基発生剤として、WPBG−018(商品名:9−anthrylmethyl N,N’−diethylcarbamate)、WPBG−027(商品名:(E)−1−[3−(2−hydroxyphenyl)−2−propenoyl]piperidine)、WPBG−082(商品名:guanidinium2−(3−benzoylphenyl)propionate)、WPBG−140(商品名:1−(anthraquinon−2−yl)ethyl imidazolecarboxylate)等を使用することもできる。
【0040】
さらに、前述した光重合開始剤の一部の物質が光塩基発生剤としても機能する。光塩基発生剤としても機能する光重合開始剤としては、オキシムエステル系光重合開始剤およびα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤が好ましい。
【0041】
光塩基発生剤の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。0.1質量部以上の場合、表面硬化性が良好となり、20質量部以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0042】
[(C)特定構造式を有するエポキシ樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は、次の構造式を有するエポキシ樹脂を含む。
ガードナー色相が低い上記エポキシ樹脂を含むことにより、被膜の深部まで光を到達させることができ、密着性、信頼性に優れた硬化物を得ることができる。したがって、本発明の硬化性樹脂組成物は、高温、多湿な環境での信頼性が要求されるようになっているプリント配線板、なかでもゲージ用絶縁材や半導体装置に用いられる積層体等に用いて好適であり半導体パッケージや車載用に好適である。
なお、硬化性樹脂組成物は、上記エポキシ化合物と、後述する特定の表面処理された無機フィラーとを必須成分として含有するものであり、これにより耐クラック性、高温高湿環境での優れた密着性等を有している。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(C)特定構造式を有するエポキシ樹脂と共に、本発明特有の効果を損なわない範囲で、上記(C)特定構造式を有するエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を、含むことができる。かかる上記(C)特定構造式を有するエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂は、エポキシ化植物油;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂;チオエーテル型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0044】
(C)特定構造式を有するエポキシ樹脂の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対し、例えば、1〜100質量部であり、10〜80質量部が好ましく、20〜60質量部がより好ましい。(C)特定構造式を有するエポキシ樹脂の配合量が10質量部以上であると、クラック耐性および絶縁信頼性がより向上し、100質量部以下であると、保存安定性が向上する。
【0045】
[(D−1)光反応性の表面処理をされた無機フィラー又は(D−2)熱反応性の表面処理をされた無機フィラー]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D−1)光反応性の表面処理をされた無機フィラー又は(D−2)熱反応性の表面処理をされた無機フィラーを含有する。無機フィラーを含むことにより、硬化物のクラック耐性がより向上する。
ここで、表面処理された無機フィラーであることにより、(A)カルボキシル基含有樹脂または(C)エポキシ樹脂との相溶性を向上させることができる。
また、(D−1)光反応性の表面処理をされた無機フィラーを含む本発明の硬化性樹脂組成物は、(B−1)光重合開始剤が、透過した光により開裂し、光反応性の表面処理をされた無機フィラーと反応することから、被膜の深部の硬化性を向上させることができる。
また、(D−2)熱反応性の表面処理をされた無機フィラーを含む本発明の硬化性樹脂組成物は、(B−2)光塩基発生剤が、透過した光により塩基を発生し、熱反応性の表面処理をされた無機フィラーと反応することから、被膜の深部の硬化性を向上させることができる。
したがって、本発明の硬化性樹脂組成物は、(D−1)光反応性の表面処理をされた無機フィラーを含むときには(B−1)光重合開始剤を含み、(D−2)熱反応性の表面処理をされた無機フィラーを含むときには、(B−2)光塩基発生剤を含む。なお、前述したように光重合開始剤の一部の物質は光塩基発生剤としても機能することから、光重合開始剤と光塩基発生剤とを峻別するものではない。
【0046】
表面処理がされる無機フィラーとしては、特に限定されず、公知慣用の充填剤、例えばシリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、非繊維状ガラス、ハイドロタルサイト、ミネラルウール、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、亜鉛華等の無機フィラーを用いることができる。中でも、シリカが好ましく、表面積が小さく、応力が全体に分散するためクラックの起点になりにくいことから球状シリカであることがより好ましい。
【0047】
ここで、表面処理された無機フィラーは、(D−1)の無機フィラーにおいては、(B−1)光重合開始剤と反応する硬化性反応基として、光硬化性反応基を無機フィラーの表面に導入可能な表面処理が施されたものであり、(D−2)の無機フィラーにおいては、(B−2)光塩基発生剤と反応する硬化性反応基として、熱硬化性反応基を無機フィラーの表面に導入可能な表面処理が施されたものである。
(D−1)光反応性の表面処理をされた無機フィラーの光硬化性反応基としては、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基等が挙げられる。なかでも、光硬化性反応基としては、メタクリル基、アクリル基、ビニル基が好ましい。
(D−2)熱反応性の表面処理をされた無機フィラーの熱硬化性反応基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。なかでも、アミノ基、エポキシ基が好ましい。
また、(D−1)の無機フィラー又は(D−2)の無機フィラーは2種以上の硬化性反応基を有していてもよい。(D)無機フィラーとしては、表面処理されたシリカが好ましい。表面処理されたシリカを含むことにより、CTEを低く、ガラス転移温度を高くさせることができる。
【0048】
(D)無機フィラーの表面に硬化性反応基の導入方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いて導入すればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理すればよい。
【0049】
(D)無機フィラーの表面処理としては、カップリング剤による表面処理が好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。中でも、シランカップリング剤が好ましい。
【0050】
シランカップリング剤としては、(D)無機フィラーに、硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤が好ましい。熱硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤としては、エポキシ基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、イソシアネート基を有するシランカップリング剤が挙げられ、中でもエポキシ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。光硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤としては、ビニル基を有するシランカップリング剤、スチリル基を有するシランカップリング剤、メタクリル基を有するシランカップリング剤、アクリル基を有するシランカップリング剤が好ましく、中でもメタクリル基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0051】
(D−1)又は(D−2)の無機フィラーは、表面処理された状態で本発明の硬化性樹脂組成物に配合されていればよく、表面未処理の無機フィラーと表面処理剤とを別々に配合して組成物中で無機フィラーが表面処理されてもよいが、予め表面処理した無機フィラーを配合することが好ましい。予め表面処理した無機フィラーを配合することによって、別々に配合した場合に残存しうる表面処理で消費されなかった表面処理剤によるクラック耐性等の低下を防ぐことができる。予め表面処理する場合は、溶剤や樹脂成分に(D)無機フィラーを予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理した無機フィラーを溶剤に予備分散し、該予備分散液を組成物に配合するか、表面未処理の無機フィラーを溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、該予備分散液を組成物に配合することがより好ましい。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物において、(D−1)の無機フィラー又は(D−2)の無機フィラーは、平均粒径が1μm以下であることが、クラック耐性により優れることから好ましい。より好ましくは、0.8μm以下である。なお、本明細書において、平均粒径とはD50の値のことをいい、例えば日機装社製マイクロトラック粒度分析計を用いて測定した値である。
【0053】
また、(D−1)の無機フィラー又は(D−2)の無機フィラーは、最大粒径が4.0μm以下であることが、効率よく反応させ、またクラック耐性、密着性により優れることから好ましい。より好ましくは3.0μm以下である。なお、本明細書において、最大粒径とはD100の値のことをいい、例えば日機装社製マイクロトラック粒度分析計を用いて測定した値である。
【0054】
無機フィラーの配合量は、硬化性樹脂組成物の固形分の全量あたり25〜85質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましく、35〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらは、要求特性に合わせて、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
エチレン性不飽和結合を有する化合物の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して3〜40質量部であることが好ましい。3質量部以上の場合、表面硬化性が向上し、40質量部以下の場合、ハレーションが抑制される。より好ましくは、5〜30質量部である。
【0058】
(熱硬化触媒)
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0059】
熱硬化触媒の配合量は、(C)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜40質量部、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0060】
(硬化剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は硬化剤を含有することができる。硬化剤としては、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、マレイミド化合物、脂環式オレフィン重合体等が挙げられる。硬化剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
硬化剤は、(C)エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂のエポキシ基等の熱硬化反応が可能な官能基と、その官能基と反応する硬化剤中の官能基との比率が、硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.2〜3となるような割合で配合することが好ましい。上記範囲とすることにより、保存安定性と硬化性のバランスに優れる。
【0062】
(着色剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄、黒、白等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0063】
着色剤の添加量は特に制限はないが、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、特に好ましくは0.1〜7質量部の割合で充分である。
【0064】
(有機溶剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板やキャリアフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で、または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0065】
(その他の任意成分)
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、電子材料の分野において公知慣用の他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光開始助剤、増感剤、熱可塑性樹脂、有機フィラー、離型剤、表面処理剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、安定剤、蛍光体等が挙げられる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(C)エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含有してもよい。熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えば、(C)エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げることができ、これらは併用してもよい。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いても良い。液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0068】
次に、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムを形成する際には、まず、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等により、キャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、40〜130℃の温度で1〜30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、3〜150μm、好ましくは5〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0069】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。より好ましくは15〜130μmの範囲である。
【0070】
キャリアフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成した後、樹脂層の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、樹脂層の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0071】
なお、本発明においては、上記カバーフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面にキャリアフィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、キャリアフィルムおよびカバーフィルムのいずれを用いてもよい。
【0072】
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0073】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0075】
プリント配線板上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後加熱硬化(例えば、100〜220℃)、もしくは加熱硬化後活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
なお、本発明の硬化性樹脂組成物が、光塩基発生剤を含む場合、露光後現像前に加熱することが好ましく、露光後現像前の加熱条件としては、例えば、60〜150℃で1〜60分加熱することが好ましい。
【0076】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10〜1000mJ/cm
2、好ましくは20〜800mJ/cm
2の範囲内とすることができる。
【0077】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板上に硬化膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成するために使用される。また、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、クラック耐性および絶縁信頼性に優れた硬化物を得ることができることから、高度な信頼性が求められるファインピッチの配線パターンを備えるプリント配線板、例えばパッケージ基板、特にFC−BGA用の永久被膜(特にソルダーレジスト)の形成に好適に用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
表1〜3に示す各成分を表1〜3に示す割合で配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練して実施例1〜20、比較例1〜5の硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性組成物について諸特性を評価し、その結果を表1〜3に併記した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
表1〜3におけるアルカリ現像性樹脂は、次のようにして調製した。
[(A−1) アルカリ現像性樹脂の合成]
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製ショウノールCRG951、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部およびトルエン119.4部を導入し、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm
2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキシドが平均1.08モル付加したものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部およびトルエン252.9部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部およびトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして、固形分65%、固形分の酸価87.7mgKOH/gの感光性のカルボキシル基含有樹脂A−1の溶液を得た。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液を樹脂溶液A−1と称す。
【0084】
[(A−2) アルカリ現像性樹脂の合成]
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製EPICLON N−695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に、芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却し、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。このようにして得られた樹脂溶液の固形分は65%、固形分の酸価は89mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液を樹脂溶液A−2と称す。
【0085】
[(A−3) アルカリ現像性樹脂の合成]
温度計、撹拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル325.0部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0部、ε−カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0部、メタクリル酸メチル77.0部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル222.0部、および重合触媒としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日油社製パーブチルO)12.0部の混合物を、3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間攪拌し、重合触媒を失活させて、樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液を冷却後、ダイセル化学工業社製サイクロマーA200を289.0部、トリフェニルホスフィン3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.3部を加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
このようにして得られた樹脂溶液は、重量平均分子量(Mw)が15,000で、かつ、固形分が57%、固形物の酸価が79.8mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液を樹脂溶液A−3と称す。
【0086】
表1〜3において、光重合開始剤は、次のものである。
(B−1.1):IGM Resins社製Omnirad(オムニラッド)TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)
(B−1、B‐2.1):IGM Resins社製Omnirad(オムニラッド)907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)
(B−1、B‐2.1):BASFジャパン社製イルガキュアOXE02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)
(B−2.1):和光純薬社製WPBG−082(グアニジウム2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート)
【0087】
表1〜3において、本発明の(C)特定構造式を有するエポキシ樹脂である特殊エポキシ樹脂は、次のものである。
(C−1):下記の骨格を有するエポキシ樹脂(エポキシ当量210)
(C−2):上記の骨格を有するエポキシ樹脂(エポキシ当量232)
【0088】
また表1〜3の硬化樹脂組成物は、上記(C)特定構造式を含むエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として次のエポキシ樹脂(C−3)〜(C−6)を含むことがある。
(C−3)下記骨格を有する脂環式エポキシ樹脂(エポキシ当量96)
(C−4)ダウケミカル社製DEN431(フェノールノボラックエポキシ樹脂)
(C−5)DIC社製N−870 75EA(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂)
(C−6)DIC社製HP−7241(トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂)
【0089】
[(D−1.1) 無機処理→メタクリルシラン処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gの水スラリーを70℃に昇温後、10%ケイ酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対して、シリカ粒子換算で1%添加した。このスラリ−に塩酸を加えてpHを4とし、30分間熟成し、さらに、塩酸によりpHを7±1に維持しながら、20%アルミン酸ナトリウム(NaAlO
2)水溶液をシリカ粒子に対してアルミナ(Al
2O
3)換算で5%添加した。この後、20%水酸化ナトリウム水浴液を加え、pHを7に調整し、30分間熟成した。この後、スラリーをフィルタープレスにてろ過水洗し、真空乾燥し、ケイ素の水和酸化物およびアルミニウムの水和酸化物で被覆されたシリカ粒子の固形物を得た。上記と同様にして得られたケイ素の水和酸化物で被覆されたシリカ粒子50gと、溶剤としてPMA48gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−503)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0090】
[(D−1.2) 無機処理→メタクリルシラン処理硫酸バリウムスラリーの調整]
硫酸バリウム粒子(堺化学工業社製沈降性バリウム100)50gの水スラリーを70℃に昇温後、10%ケイ酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対して、シリカ粒子換算で1%添加した。このスラリ−に塩酸を加えてpHを4とし、30分間熟成し、さらに、塩酸によりpHを7±1に維持しながら、20%アルミン酸ナトリウム(NaAlO
2)水溶液をシリカ粒子に対してアルミナ(Al
2O
3)換算で5%添加した。この後、20%水酸化ナトリウム水浴液を加え、pHを7に調整し、30分間熟成した。この後、スラリーをフィルタープレスにてろ過水洗し、真空乾燥し、ケイ素の水和酸化物およびアルミニウムの水和酸化物で被覆された硫酸バリウム粒子の固形物を得た。上記と同様にして得られたケイ素の水和酸化物で被覆された硫酸バリウム粒子50gと、溶剤としてPMA48gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−503)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0091】
[(D−1.3)メタクリルシラン処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gと、溶剤としてPMA48gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−503)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0092】
[(D−1.4)アクリルシラン処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gと、溶剤としてPMA48gと、アクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−5103)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0093】
[(D−1.5)ビニルシラン処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gと、溶剤としてPMA48gと、ビニル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−1003)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0094】
[(D−1.6) 無機処理→メタクリルシラン処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(デンカ社製SFP−20M、平均粒径:400nm)50gの水スラリーを70℃に昇温後、10%ケイ酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対して、シリカ粒子換算で1%添加した。このスラリ−に塩酸を加えてpHを4とし、30分間熟成し、さらに、塩酸によりpHを7±1に維持しながら、20%アルミン酸ナトリウム(NaAlO
2)水溶液をシリカ粒子に対してアルミナ(Al
2O
3)換算で5%添加した。この後、20%水酸化ナトリウム水浴液を加え、pHを7に調整し、30分間熟成した。この後、スラリーをフィルタープレスにてろ過水洗し、真空乾燥し、ケイ素の水和酸化物およびアルミニウムの水和酸化物で被覆されたシリカ粒子の固形物を得た。上記と同様にして得られたケイ素の水和酸化物で被覆されたシリカ粒子50gと、溶剤としてPMA48gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−503)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0095】
[(D−2.1) 無機処理→エポキシシラン処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gの水スラリーを70℃に昇温後、10%ケイ酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対して、シリカ粒子換算で1%添加した。このスラリ−に塩酸を加えてpHを4とし、30分間熟成し、さらに、塩酸によりpHを7±1に維持しながら、20%アルミン酸ナトリウム(NaAlO
2)水溶液をシリカ粒子に対してアルミナ(Al
2O
3)換算で5%添加した。この後、20%水酸化ナトリウム水浴液を加え、pHを7に調整し、30分間熟成した。この後、スラリーをフィルタープレスにてろ過水洗し、真空乾燥し、ケイ素の水和酸化物およびアルミニウムの水和酸化物で被覆されたシリカ粒子の固形物を得た。上記と同様にして得られたケイ素の水和酸化物で被覆されたシリカ粒子50gと、溶剤としてPMA48gと、エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−403)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0096】
[(D−2.2) 無機処理→エポキシシラン処理硫酸バリウムスラリーの調整]
硫酸バリウム粒子(堺化学工業社製沈降性バリウム100)50gの水スラリーを70℃に昇温後、10%ケイ酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対して、シリカ粒子換算で1%添加した。このスラリ−に塩酸を加えてpHを4とし、30分間熟成し、さらに、塩酸によりpHを7±1に維持しながら、20%アルミン酸ナトリウム(NaAlO
2)水溶液をシリカ粒子に対してアルミナ(Al
2O
3)換算で5%添加した。この後、20%水酸化ナトリウム水浴液を加え、pHを7に調整し、30分間熟成した。この後、スラリーをフィルタープレスにてろ過水洗し、真空乾燥し、ケイ素の水和酸化物およびアルミニウムの水和酸化物で被覆された硫酸バリウム粒子の固形物を得た。上記と同様にして得られたケイ素の水和酸化物で被覆された硫酸バリウム粒子50gと、溶剤としてPMA48gと、エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−403)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0097】
[(D−2.3)エポキシシラン処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gと、溶剤としてPMA48gと、エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−403)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0098】
[(D−2.4)アミノ処理シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gと、溶剤としてPMA48gと、アクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM−573)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0099】
[(D−3)シリカスラリーの調整]
球状シリカ粒子(アドマテックス社製SO−C2、平均粒径:500nm)50gと、溶剤としてPMA48gと、分散剤(BYK−111)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0100】
[(D−4) 無機処理硫酸バリウムスラリーの調整]
硫酸バリウム粒子(堺化学工業社製沈降性バリウム100)50gの水スラリーを70℃に昇温後、10%ケイ酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対して、シリカ粒子換算で1%添加した。このスラリ−に塩酸を加えてpHを4とし、30分間熟成し、さらに、塩酸によりpHを7±1に維持しながら、20%アルミン酸ナトリウム(NaAlO
2)水溶液をシリカ粒子に対してアルミナ(Al
2O
3)換算で5%添加した。この後、20%水酸化ナトリウム水浴液を加え、pHを7に調整し、30分間熟成した。この後、スラリーをフィルタープレスにてろ過水洗し、真空乾燥し、ケイ素の水和酸化物およびアルミニウムの水和酸化物で被覆された硫酸バリウム粒子の固形物を得た。上記と同様にして得られたケイ素の水和酸化物で被覆された硫酸バリウム粒子50gと、溶剤としてPMA48gと、分散剤(BYK−111)2gとを均一分散させたシリカ溶剤分散品を得た。
【0101】
[(D−5)硫酸バリウムスラリーの調整]
硫酸バリウム粒子(堺化学工業社製沈降性バリウム100)50gと、溶剤としてPMA48gと、分散剤(BYK−111)2gとを均一分散させた硫酸バリウム溶剤分散品を得た。
【0102】
また表1〜3の硬化樹脂組成物は、以下の成分を含むことがある。
・日本化薬社製DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
・日弘ビックス社製CZ−601D(青色着色剤)
・日弘ビックス社製CZ−309D(黄色着色剤)
・DICY(ジシアンジアミド)
【0103】
(ドライフィルムの作製)
表1〜3に示す各実施例、各比較例の硬化性樹脂組成物は、それぞれ実施例、比較例ごとに硬化性樹脂組成物を、ダイコーターを用いてPET上に10m/minで60〜120℃の乾燥炉を通過させ、溶剤を揮発させることによりドライフィルムを得た。
【0104】
(標準評価基板の作製)
上記の方法で得られたドライフィルムを真空ラミネーターCVP−300(ニッコーマテリアルズ社製)を用いて試験基板にラミネートし、感光性樹脂組成物の積層体を得た。この積層体にDXP−3580(ORC社製、超高圧水銀灯DI露光機)を用いてStouffer41段ステップタブレットで10段の硬化段数になるよう評価項目にあわせてパターン露光を実施した。露光後10分後にPETフィルムを剥離させ、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液でブレイクポイント(最短現像時間)の2倍の現像時間で現像を行った。その後UVコンベア(ORC社製、メタルハライドランプ)で積算露光量2000mJ/cm
2で露光、熱循環式Box炉で170℃60分硬化させることにより評価基板を得た。
【0105】
<ガラス転移温度Tg>
銅箔基板上に、各硬化性樹脂組成物が膜厚約40μmになるように形成し、50mm×3mmの短冊状のパターンで露光を行った。その後、上記標準評価基板の作製と同じ条件で現像、硬化を実施した。
上記により得られた評価基板の硬化被膜を銅箔より剥離し、評価を実施した。測定は、TMA測定装置 (島津製作所社製 機種名:TMA6000)を用いて行い、Tgの評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎…180℃以上
○…170℃以上180未満
△…160℃以上170未満
×…160℃未満
【0106】
<強靭性評価(樹脂層を備える銅箔基板の作製)>
銅箔基板上に、硬化性樹脂組成物が膜厚約40μmになるように形成し、80mm×10mmの短冊状のパターンで露光を行った。その後、上記標準評価基板の作製と同じ条件で現像、硬化を実施した。
上記により得られた評価基板の硬化被膜を銅箔より剥離し、評価を実施した。測定は、引張試験機(島津製作所社製 機種名:AGS-G 100N)を用いて行い、最大点応力または破断点伸び率について評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎…最大点応力80MPa以上、または破断点伸び率6%以上
○…最大点応力70MPa以上80MPa未満、または破断点伸び率4%以上6%未満
△…最大点応力50MPa以上70MPa未満、破断点伸び率2%以上4%未満
×…最大点応力50MPa未満、または破断点伸び率2%未満
【0107】
<反り>
CZ−8101Bでエッチングレート1.0μm/m
2の条件で処理された35μm銅箔基板上に、各硬化性樹脂組成物を膜厚約20μmになるように形成し、全面露光を行った。その後、既定の条件で現像、硬化を実施した。
上記により得られた評価基板の硬化被膜を50mm×50mmに切り出し、硬化被膜面を下に向け水平な台に静置した。静置後、水平な台からCu箔までの距離を測定し反り量を測定した。
◎…10mm未満
○…10mm以上、15mm未満
△…15mm以上、20mm未満
×…20mm未満
【0108】
<Low−Profile密着性―初期密着>
CZ−8201Bでエッチングレート0.5μm/m
2の条件で処理された銅箔に硬化性樹脂組成物を膜厚約20μmになるように形成し、全面露光を行った。その後、既定の上記標準評価基板の作製と同じ条件で現像、硬化を実施した。その後、熱硬化性接着剤アラルダイト(ニチバン社製)を硬化性樹脂組成物表面に形成し、FR−4基材に接着させ80℃6h硬化させた。その後、評価基板を20mm間隔で裁断し、Cu箔幅が10mm幅になるよう両サイドを剥離させ、評価短冊を作製した。この評価短冊を引張試験機(島津製作所社製 機種名:AGS-G 100N)を用いて90°ピール試験を行い、密着性の評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:6.0N/cm以上
○:5.0以上6.0N/cm未満
△:4.0以上5.0N/cm未満
×:4.0N/cm未満
【0109】
<Low−Profile密着性―HAST50h後密着>
CZ−8201Bでエッチングレート0.5μm/m
2の条件で処理された銅箔に硬化性樹脂組成物を膜厚約20μmになるように形成し、全面露光を行った。その後、上記標準評価基板の作製と同じ条件で現像、硬化を実施した。その後、熱硬化性接着剤アラルダイト(ニチバン社製)を硬化性樹脂組成物表面に形成し、FR−4基材に接着させ80℃6h硬化させた。その後、評価基板を20mm間隔で裁断し、Cu箔幅が10mm幅になるよう両サイドを剥離させ、評価短冊を作製した。この評価短冊を130℃、85%で50h処理し、引張試験機(島津製作所社製 機種名:AGS-G 100N)を用いて90°ピール試験を行い、密着性の評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:5.0N/cm以上
○:4.0以上5.0N/cm未満
△:3.0以上4.0N/cm未満
×:3.0N/cm未満
【0110】
<解像性評価>
CZ−8101Bでエッチングレート1.0μm/m
2の条件で処理されためっき銅基板に、硬化性樹脂組成物を膜厚約20μmになるように形成し、各種開口パターンで露光を行った。その後、上記標準評価基板の作製と同じ条件で現像、評価条件で硬化を実施した。
上記により得られた評価基板の開口径を観測し、ハレーション、アンダーカットの発生がない確認し評価を行った。
◎…60μmにて良好な開口径
○…70μmにて良好な開口径
△…80μmにて良好な開口径
×…80μmにて良好な開口径がえられない、または現像不可
【0111】
<HAST耐性>
CZ−8101Bでエッチングレート1.0μm/m
2の条件で処理されたL/S=20/20μmの櫛形パターンが形成された基板に硬化性樹脂組成物を膜厚約20μmになるように形成し、全面露光を行った。その後、上記標準評価基板の作製と同じ条件で現像、硬化を実施した。
その後電極をつなぎ130℃、85%、5Vの条件でHAST試験を実施。
◎:400h pass
○:350h pass
△:300h pass
×:250h以内でNG
【0112】
<TCT耐性>
CZ−8101Bでエッチングレート1.0μm/m
2の条件で処理されたパッケージ基板上に、硬化性樹脂組成物をCu上膜厚約18μmになるように形成し、銅パッド上にSRO80μm露光を行った。その後、上記標準評価基板の作製と同じ条件で現像、硬化を実施した。その後、Auめっき処理、はんだバンプ形成、Siチップを実装し、評価基板を得た。
上記により得られた評価基板を、−65℃と150℃の間で温度サイクルが行われる冷熱サイクル機に入れ、TCT(Thermal Cycle Test)を行った。そして、600サイクル時、800サイクル時および1000サイクル時の硬化被膜の表面を観察した。判定基準は以下の通りである。
◎:1000サイクルで異常なし
○:800サイクルで異常なし、1000サイクルでクラック発生
△:600サイクルで異常なし、800サイクルでクラック発生
×:600サイクルでクラック発生
【0113】
表1〜3に示す結果から、本発明の実施例1〜20の硬化性樹脂組成物の硬化物は、クラック耐性および絶縁信頼性、密着性に優れることがわかる。これに対し、比較例1〜5の硬化性樹脂組成物を用いると、密着性が悪く絶縁信頼性を得ることが困難であった。