(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置及び誘導装置について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る誘導装置の構成を示すブロック図である。実施の形態に係る誘導装置1は、第1の受信部20、算出部30、制御部40、送受信部50、アンテナ部60、及び目標追尾部70を備える。誘導装置1は、図示しない飛しょう体に搭載される。なお、第1の受信部20、算出部30、制御部40、送受信部50、アンテナ部60、及び目標追尾部70なる構成は機能区分であり、機能区分の変更に伴って
図1とは異なる構成を採ってもよい。
【0012】
図1に示されるように、第1の受信部20は、パッシブアンテナ3及びパッシブ用受信部4を備える。算出部30は、周波数算出部5を備える。制御部40は、傾斜角補正部6及び傾斜角制御部7を備える。送受信部50は、発振部9、送信部10、送受信切換部12、アクティブ用受信部13、及びアナログディジタル(Analog Digital:AD)変換部14を備える。アンテナ部60は、反射制御板8及びアクティブアンテナ11を備える。目標追尾部70は、目標検出部15及び追尾処理部16を備える。なお、送受信部50において、アクティブ用受信部13及びAD変換部14は、第2の受信部50aを構成する。また、第1の受信部20、算出部30、制御部40、及びアンテナ部60は、実施の形態に係るRCSを低減させるアンテナ装置を構成する。
【0013】
次に、誘導装置1を構成する各部の機能について説明する。なお、
図1において、目標2は、追尾対象の目標物体である。目標2には、固定目標も含まれる。また、目標2がレーダ信号源となる場合もあれば、目標2を誘導する図示しない誘導装置がレーダ信号源となる場合もある。
【0014】
パッシブアンテナ3は、相手レーダから送信される第1のレーダ信号を受信する。パッシブ用受信部4は、パッシブアンテナ3が受信した第1のレーダ信号を周波数変換及び増幅した信号を生成する。周波数算出部5は、パッシブ用受信部4から出力される信号に基づいて、第1のレーダ信号の周波数である第1の周波数を算出する。傾斜角補正部6は、第1の周波数に基づいて、アンテナ部60のRCSを低減させるための反射制御板8の傾斜角を演算する。なお、傾斜角自体の演算に替えて、傾斜角を制御する際の傾斜角の補正値、即ち現在の傾斜角からの変更値を演算してもよい。傾斜角制御部7は、傾斜角補正部6から出力される傾斜角の演算値もしくは補正値を反射制御板8に送信する。
【0015】
図2は、実施の形態に係るアンテナ装置におけるアンテナ部の構造を模式的に示す図である。
図2に示されるように、反射制御板8は、アクティブアンテナ11の前面に、傾斜角θの傾斜をつけて配置される。なお、前面とは、アクティブアンテナ11における電波の放射方向の側にある面である。反射制御板8は、特定の周波数帯の信号を透過又は通過させ、特定の周波数帯以外の信号は別方向へ反射させる制御板である。反射制御板8としては、板面にスロットが設けられた金属板、又は、透過特性の異なる部材を積層して構成した周波数選択板などが例示できる。反射制御板8は、傾斜角制御部7から出力される傾斜角指令に基づいて傾斜角θが制御される。
【0016】
図1に戻り、発振部9は、目標2の追尾に用いる第2のレーダ信号を生成する。第2のレーダ信号は、送信部10に与えられる。第2のレーダ信号は、発振部9の内部で生成される基準信号を用いて生成される。発振部9の内部で生成される基準信号は、ローカル信号としてアクティブ用受信部13に与えられる。
【0017】
送信部10は、第2のレーダ信号を増幅して送受信切換部12に出力する。アクティブアンテナ11は、送信部10で増幅された第2のレーダ信号を空間へ放射する。また、アクティブアンテナ11は、目標2によって反射された第2のレーダ信号の反射波を受信する。送受信切換部12は、アクティブアンテナ11から送信される第2のレーダ信号と、アクティブアンテナ11が受信する第2の受信信号との経路切換を行う。即ち、送受信切換部12は、アクティブアンテナ11から第2のレーダ信号を放射する際には、アクティブアンテナ11と送信部10とを電気的又は機械的に接続し、アクティブアンテナ11が受信した目標2からの反射信号を受信する際には、アクティブアンテナ11とアクティブ用受信部13とを電気的又は機械的に接続する。
【0018】
アクティブ用受信部13は、アクティブアンテナ11が受信した第2の受信信号を、発振部9から出力されるローカル信号によってダウンコンバート、即ち周波数変換する。アクティブ用受信部13は、周波数変換した信号を増幅してAD変換部14に出力する。AD変換部14は、アクティブ用受信部13から出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換して、目標追尾部70の目標検出部15に出力する。
【0019】
AD変換部14から出力される信号には、追尾対象である目標2からの反射信号以外のものも含まれる。このため、目標検出部15は、AD変換されたディジタル信号から、目標2からの反射信号が含まれる目標信号を検出する。追尾処理部16は、目標信号に基づいて、目標位置、目標速度及び目標方位を計算する。追尾処理部16は、目標2における目標位置、目標速度及び目標方位の情報に基づいて、誘導装置1によって誘導される図示しない飛しょう体を目標2に向けて誘導するための誘導信号を生成する。
【0020】
次に、本実施の形態における要部の動作について、
図1から
図5の図面を参照して説明する。
図3は、実施の形態に係るアンテナ装置のアンテナ部における反射の説明に供する図である。
図4は、実施の形態に係るアンテナ装置のアンテナ部におけるRCS特性の説明に供する図である。
図5は、実施の形態に係るアンテナ装置のアンテナ部におけるRCS低減効果の説明に供する図である。
【0021】
図3には、
図2に示されるアンテナ装置をX方向から視認した図が示されている。
図3において、W1は反射制御板8の上端部に入射される入射信号の経路、W2は反射制御板8の下端部に入射される入射信号の経路を示している。経路W1,W2で入射する入射信号は共に、アクティブアンテナ11の正面方向からアクティブアンテナ11のアンテナ面11aに直交する方向から入射する入射信号である。
【0022】
ここで、反射制御板8の上端部と下端部との間の長さをdとする。このとき、経路W1と経路W2との間には、片道で以下の位相差φが生ずる。
【0023】
φ=(2π/λ)dsinθ
=(2πf/c)dsinθ
=Kfsinθ …(1)
【0024】
上記(1)式において、cは光速、λは入射信号の波長、fは入射信号の周波数である。なお、最後の式変形では、係数“2πd/c”を“K”と置いている。
【0025】
前述の通り、経路W1と経路W2との間には、片道でφ、往復では2φの位相差が生ずる。このため、反射制御板8には、入射信号の周波数によってRCSが変化する周波数特性が表れる。
図4には、入射信号の周波数によって入射信号と反射信号とが強め合う場合と弱め合う場合の様子が示されている。
【0026】
図4において、実線は、反射制御板8の傾斜角がθ1であるときの反射特性であり、破線は、反射制御板8の傾斜角がθ2(θ1<θ2)であるときの反射特性である。例えば、傾斜角がθ1のときのRCSのピークAは、周波数が10.2[GHz]付近にあり、傾斜角がθ2のときのRCSのピークBは、周波数が10.0[GHz]付近にある。
【0027】
図4に示されるように、反射制御板8の反射特性は、周波数によって山と谷が形成される形状となる。また、反射制御板8の傾斜角θによって経路差による位相差φが変化する。このため、同じ周波数でも、傾斜角θによってRCS特性が大きく変化する。本実施の形態では、これらの2つの性質を利用し、入射信号の周波数に応じて、反射制御板8における反射信号が入射信号に対し逆位相で重なり合うようにして、反射信号の多くが相手レーダ側に戻らないように反射制御板8の傾斜角θを制御する。
【0028】
図5には、「傾斜角制御有り」の周波数特性が実線で示され、「傾斜角制御無し」の周波数特性が破線で示されている。「傾斜角制御有り」の周波数特性とは、本実施の形態による傾斜角制御、即ち入射信号の周波数に応じて反射制御板8の傾斜角θを制御したときの周波数特性である。これに対して、「傾斜角制御無し」の周波数特性とは、反射制御板8の傾斜角制御は行わず、反射制御板8の傾斜角θを固定したままの周波数特性である。
【0029】
図5において、横軸に示される周波数f1は、入射信号の周波数である。
図5の例によれば、周波数f1のときのRCSは、破線で示される曲線のピーク付近に位置するA1点にあり、RCSが大きくなっている。これに対し、傾斜角制御を行った場合には、実線で示されるように、周波数f1のときのRCSは、反射特性の曲線のヌル(ナル:null)点に位置しており、RCSの値が小さくなっている。
【0030】
なお、
図5の例において、破線で示される曲線の傾斜角に対し、反射制御板8の傾斜角が小さくなる方向に制御すれば、A1点をB1点に移動させることができる。また、破線で示される曲線の傾斜角に対し、反射制御板8の傾斜角が大きくなる方向に制御すれば、A1点をB2点に移動させることができる。何れの場合も、曲線上のヌル点であるC1点を周波数f1の位置に移動させることができる。このことから、RCSを所望の値以下にするには、反射制御板8の傾斜角θを小さくする制御を行ってもよいし、大きくする制御を行ってもよいことが分かる。
【0031】
次に、実施の形態に係る誘導装置1の機能を実現するためのハードウェア構成について、
図6及び
図7の図面を参照して説明する。
図6は、実施の形態におけるパッシブ処理部及び目標追尾部の機能を具現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7は、実施の形態におけるパッシブ処理部及び目標追尾部の機能を具現するハードウェア構成の他の例を示すブロック図である。
【0032】
実施の形態に係る誘導装置1の機能を実現する場合には、
図6に示すように、演算を行うプロセッサ200、プロセッサ200によって読みとられるプログラムが保存されるメモリ202、信号の入出力を行うインタフェース204、及び検出結果を表示する表示器206を含む構成とすることができる。
【0033】
プロセッサ200は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、メモリ202には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)を例示することができる。
【0034】
メモリ202には、誘導装置1の機能を実行するプログラム及びプロセッサ200によって参照されるテーブルが格納されている。プロセッサ200は、インタフェース204を介して必要な情報を授受し、メモリ202に格納されたプログラムをプロセッサ200が実行し、メモリ202に格納されたテーブルをプロセッサ200が参照することにより、上述した算出部30、制御部40及び目標追尾部70の処理を行うことができる。プロセッサ200による演算結果は、メモリ202に記憶することができる。また、プロセッサ200の処理結果を表示器206に表示することもできる。なお、表示器206は、目標追尾部70の外部に備えられていてもよい。
【0035】
また、
図6に示すプロセッサ200及びメモリ202は、
図7のように処理回路203に置き換えてもよい。処理回路203は、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。なお、算出部30、制御部40及び目標追尾部70における一部の処理を処理回路203で実施し、処理回路203で実施しない処理をプロセッサ200及びメモリ202で実施してもよい。
【0036】
次に、実施の形態に係るアンテナ装置の制御方法について、
図8を参照して説明する。
図8は、実施の形態に係るアンテナ装置の制御方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
図8において、算出部30は、パッシブアンテナ3を介して受信される第1のレーダ信号の周波数を測定する(ステップS101)。制御部40は、測定周波数におけるRCS特性を評価する(ステップS102)。ステップS102の処理では、例えば第1のレーダ信号がアクティブアンテナ11のアンテナ面11aに直交する方向から入射するときの反射制御板8のRCSを演算する。なお、処理時間の短縮化を図るため、予め周波数とRCSとの関係を測定して、RCSの極小値を求めておき、求めた値をテーブルとして
図6に示されるメモリ202に記憶してもよい。また、測定周波数に対応するRCSの値がテーブルにない場合、内挿計算又は外挿計算による線形近似、多項式近似等で求めてもよい。
【0038】
図8に戻り、制御部40は、ステップS102で算出したRCSの値を閾値と比較する(ステップS103)。RCSの値が閾値よりも大きい場合(ステップS103,Yes)、上述した傾斜角制御を実施して(ステップS104)、処理を終了する。一方、RCSの値が閾値以下の場合(ステップS103,No)、傾斜角制御は実施せずに(ステップS105)、処理を終了する。
【0039】
なお、上記のステップS103では、RCSの値と閾値とが等しい場合を“No”で判定しているが、“Yes”で判定してもよい。即ち、RCSの値と閾値とが等しい場合に、傾斜角制御を実施してもよい。
【0040】
また、上記の処理について補足する。例えばステップS101の処理において、パッシブアンテナ3を介して受信されるパッシプ信号が複数ある場合、それぞれの周波数におけるRCSの値が閾値未満となるような傾斜角θを選択する。
【0041】
また、複数のパッシブ信号に対して、全てのRCSの値が閾値未満となるような傾斜角θを選択できない場合には、傾斜角θを制御できる角度単位でRCSの値が平均化されるような傾斜角θを選択すればよい。
【0042】
また、上記のステップS103の処理に代え、RCSの反射特性における極小値の位置にステップS101で測定された測定周波数が位置するように反射制御板8の傾斜角制御を行ってもよい。なお、
図5に示されるように、極小値の位置は複数ある。このため、RCSの反射特性における最も近い極小値の位置に測定周波数が位置されるように傾斜角制御を行うことが好ましい。このようにすれば、傾斜角θの制御量を小さくすることができるので、応答性の高い傾斜角制御を実施することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係るRCSを低減させるアンテナ装置は、相手レーダから送信される第1のレーダ信号を受信する第1の受信部と、第1のレーダ信号の周波数である第1の周波数を算出する算出部と、目標の追尾に用いる第2のレーダ信号を空間に放射するアクティブアンテナと、アクティブアンテナの前面に傾斜をつけて配置される反射制御板と、算出部によって算出された第1の周波数に基づいて、反射制御板の傾斜角を制御する制御部を備えることにより、相手レーダから送信される第1のレーダ信号の第1の周波数を算出し、算出された第1の周波数に基づいて反射制御板の傾斜角を制御するので、RCSの値を制御して、RCSの値の変動を抑制することができる。これにより、アンテナ部の反射特性が周波数選択性を有する場合であっても、周波数に依存することなく、低被探知性の劣化を抑制することができる。
【0044】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。