(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987023
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/00 20060101AFI20211213BHJP
H02K 1/12 20060101ALI20211213BHJP
H02K 5/16 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
H02K1/00 C
H02K1/12 A
H02K5/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-108501(P2018-108501)
(22)【出願日】2018年6月6日
(65)【公開番号】特開2019-213369(P2019-213369A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 啓宇
(72)【発明者】
【氏名】▲今▼井 淳文
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−301551(JP,A)
【文献】
特開2006−136164(JP,A)
【文献】
特開2014−204601(JP,A)
【文献】
特開2001−148315(JP,A)
【文献】
特開2007−159187(JP,A)
【文献】
特開2000−188835(JP,A)
【文献】
特開2002−218691(JP,A)
【文献】
特開2008−295203(JP,A)
【文献】
特開2017−127151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00
H02K 1/12
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された固定子と、前記固定子の内側に配置された回転子と、前記固定子の軸方向と平行に前記回転子に固定された回転軸と、前記固定子を支持する外郭とを備え、
前記固定子は、
円環状のヨークと、前記ヨークの内周面から径方向に突出して円周方向に並んだ複数のティースとを有する固定子鉄心と、
前記ティースに絶縁物を介して巻回された巻線と、
前記回転軸の軸方向に沿った断面において前記ヨークを取り囲み、電気的導通が可能な少なくとも一つの閉路とを有し、
前記閉路は、前記巻線とは独立して前記ヨークに巻かれ、前記回転軸の周囲に発生する高次の磁束を打ち消す誘導電流を発生させるキャンセルコイルと、前記キャンセルコイルに直列に接続されたコンデンサとを含み、
前記ヨークは、前記ティース同士を繋ぐヨーク部を複数備え、
前記ヨーク部の少なくとも一つには、前記外郭との間に隙間を形成する狭断面部が形成されており、
前記閉路は、前記狭断面部の部分に巻かれていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
円筒状に形成された固定子と、前記固定子の内側に配置された回転子と、前記固定子の軸方向と平行に前記回転子に固定された回転軸と、前記固定子を支持する外郭とを備え、
前記固定子は、
円環状のヨークと、前記ヨークの内周面から径方向に突出して円周方向に並んだ複数のティースとを有する固定子鉄心と、
前記ティースに絶縁物を介して巻回された巻線と、
前記回転軸の軸方向に沿った断面において前記ヨークを取り囲み、電気的導通が可能な少なくとも一つの閉路とを有し、
前記閉路は、前記巻線とは独立して前記ヨークに巻かれ、前記回転軸の周囲に発生する高次の磁束を打ち消す誘導電流を発生させるキャンセルコイルと、前記キャンセルコイルに直列に接続されたコンデンサとを含み、
前記ヨークは、前記ティース同士を繋ぐヨーク部を複数備え、
前記ヨーク部の少なくとも一つは、空隙で円周方向に分断されており、
前記閉路は、前記空隙で分断された前記ヨーク部に巻かれていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
円筒状に形成された固定子と、前記固定子の内側に配置された回転子と、前記固定子の軸方向と平行に前記回転子に固定された回転軸と、前記固定子を支持する外郭とを備え、
前記固定子は、
円環状のヨークと、前記ヨークの内周面から径方向に突出して円周方向に並んだ複数のティースとを有する固定子鉄心と、
前記ティースに絶縁物を介して巻回された巻線と、
前記回転軸の軸方向に沿った断面において前記ヨークを取り囲み、電気的導通が可能な少なくとも一つの閉路とを有し、
前記ヨークは、前記ティース同士を繋ぐヨーク部を複数備え、
前記閉路は、前記巻線とは独立して前記ヨーク部に巻かれ、前記回転軸の周囲に発生する高次の磁束を打ち消す誘導電流を発生させるキャンセルコイルと、前記キャンセルコイルに直列に接続されたコンデンサとを含むことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子及び固定子を備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機において、巻線の中性点電位変動などにより回転軸に電圧が発生すると、回転軸に発生した電圧は、回転子を支持する軸受に印加される。軸受に印加される電圧が軸受潤滑油の絶縁破壊電圧を超えた場合には、放電により軸受面が局部発熱して溶融痕が生じる電食現象が発生してしまう。
【0003】
近年の回転電機は、高周波のインバータで駆動されるようになっており、インバータの変調方式による中性点基本波電圧の変動が増加している。また、インバータのスイッチングによる矩形波状の電圧が短周期で重畳されて波高値が高くなっている。インバータ制御の回転電機は、中性点基本波電圧の変動の増加及び波高値の増大に起因して放電回数が増加しており、短期間に電食が進行して異常な振動騒音が発生する場合がある。
【0004】
特許文献1には、固定子の円環状ヨーク及び円環状ヨークと併設された磁性コアとともにコイルを巻回して閉路を構成するキャンセルコイルを設け、円環状ヨーク内を周方向に流れる不平衡磁束をキャンセルコイルに貫かせて三次の電圧を誘導することにより不平衡磁束を妨げる電流をキャンセルコイルに流して、軸電圧を低減することで軸受の電食を抑制する方法が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−26894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示される発明は、回転トルクへの影響を最小限にするために、一つの閉路に三つの要素コイルを直列に接続する必要があるため、構造及び加工が複雑となる。一方、一つの要素コイルだけで閉路を構成すると、回転トルクを発生する有効磁束まで低減してしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構造及び加工を複雑とせず、有効磁束に影響を及ぼすことなく軸電圧を低減して、軸受電食を抑制した回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、円筒状に形成された固定子と、固定子の内側に配置された回転子と、固定子の軸方向と平行に回転子に固定された回転軸と、固定子を支持する外郭とを備える。固定子は、円環状のヨークと、ヨークの内周面から径方向に突出して円周方向に並んだ複数のティースとを有する固定子鉄心と、ティースに絶縁物を介して巻回された巻線と、回転軸の軸方向に沿った断面においてヨークを取り囲み、電気的導通が可能な少なくとも一つの閉路とを有する。閉路は、巻線とは独立してヨークに巻かれ、回転軸の周囲に発生する高次の磁束を打ち消す誘導電流を発生させるキャンセルコイルを含む。ヨークは、ティース同士を繋ぐヨーク部を複数備える。ヨーク部の少なくとも一つには、外郭との間に隙間を形成する狭断面部が形成されている。閉路は、狭断面部の部分に巻かれている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構造及び加工を複雑とせず、有効磁束に影響を及ぼすことなく軸電圧を低減して、軸受電食を抑制した回転電機を得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る回転電機の縦断面図
【
図3】実施の形態1に係る回転電機の固定子の斜視図
【
図4】実施の形態1に係る回転電機のインバータと巻線との結線図
【
図5】実施の形態1に係る回転電機の3倍の周波数の電圧を重畳した相電圧と相間電圧と中性点電圧の基本波波形とを示す図
【
図6】実施の形態1に係る回転電機の中性点電圧波形と軸受電圧波形との実例を示す図
【
図7】本発明の実施の形態2に係る回転電機の横断面図
【
図8】本発明の実施の形態3に係る回転電機を示す縦断面図
【
図10】実施の形態3に係る回転電機の固定子の斜視図
【
図11】実施の形態3に係る回転電機のインバータの出力電圧と、巻線、固定子鉄心及びキャンセルコイル回路との関係を示す等価回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態に係る回転電機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る回転電機の縦断面図である。
図2は、実施の形態1に係る回転電機の横断面図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿った断面を示している。
図3は、実施の形態1に係る回転電機の固定子の斜視図である。回転電機10は、円筒状に形成された固定子11と、固定子11の内側に空隙を介して配置された円筒状の回転子12と、固定子11の軸方向と平行に回転子12に固定された回転軸13と、回転軸13を回転可能に支持する第1軸受14及び第2軸受15とを備えている。また、回転電機10は、固定子11、第1軸受14及び第2軸受15を支持する外郭16を備えている。
【0013】
固定子11は、円環状のヨーク17及びヨーク17の内周面から径方向に突出して円周方向に並んだ複数のティース181,182,183,184,185,186からなる固定子鉄心19と、巻線20とを有する。以下、ティース181,182,183,184,185,186全体を指してティース18という。固定子鉄心19は透磁率の高い磁性材料で形成される。ヨーク17は、ヨーク部171,172,173,174,175,176を備える。ティース18は、ヨーク17から回転子12に向けて突出している。ティース181とティース182とは、ヨーク部171で接続されている。ティース182とティース183とは、ヨーク部172で接続されている。ティース183とティース184とは、ヨーク部173で接続されている。ティース184とティース185とは、ヨーク部174で接続されている。ティース185とティース186とは、ヨーク部175で接続されている。ティース186とティース181とは、ヨーク部176で接続されている。巻線20は、ティース18に不図示の絶縁物を介して巻回されている。
【0014】
ヨーク部173,176には、外郭16との間に隙間を形成した狭断面部21が設けられている。狭断面部21においてヨーク部173,176の断面積は、ヨーク部171,172,174,175の断面積よりも小さくなっている。ヨーク部173,176は、狭断面部21を含む部分にキャンセルコイル22が巻回されている。キャンセルコイル22は、ティース18に巻回された巻線20とは独立している。キャンセルコイル22は、回転軸13の周囲に発生する高次の磁束を打ち消す誘導電流を発生させる。
【0015】
固定子11は、U相の巻線20が巻回されているティース181と、V相の巻線20が巻回されているティース182と、W相の巻線20が巻回されているティース183とが一つのセットをなしており、U相の巻線20が巻回されているティース184と、V相の巻線20が巻回されているティース185と、W相の巻線20が巻回されているティース186とが一つのセットをなしている。ティース181に巻回された巻線20は、コイルU1を形成している。ティース182に巻回された巻線20は、コイルV1を形成している。ティース183に巻回された巻線20は、コイルW1を形成している。ティース184に巻回された巻線20は、コイルU2を形成している。ティース185に巻回された巻線20は、コイルV2を形成している。ティース186に巻回された巻線20は、コイルW2を形成している。
【0016】
図4は、実施の形態1に係る回転電機のインバータと巻線との結線図である。U相は二つのコイルU1,U2が直列接続されている。V相は二つのコイルV1,V2が直列接続されている。W相は二つのコイルW1,W2が直列接続されている。U相のU1側、V相のV1側及びW相のW1側は、インバータ30に接続されている。U相のU2側、V相のV2側及びW相のW2側は互いに接合されて中性点Nとなっており、U相、V相及びW相は、Y結線されている。
【0017】
インバータ30は、アームをなす6個のスイッチング素子31,32,33,34,35,36を備えている。上段のアームをなすスイッチング素子31と下段のアームをなすスイッチング素子34とが直列に接続されて第1のレグを構成している。上段のアームをなすスイッチング素子32と下段のアームをなすスイッチング素子35とが直列に接続されて第2のレグを構成している。上段のアームをなすスイッチング素子33と下段のアームをなすスイッチング素子36とが直列に接続されて第3のレグを構成している。第1のレグ、第2のレグ及び第3のレグは、直流電源40に並列に接続されている。第1のレグから出力端子Rが出ており、回転電機10のU相と接続されている。第2のレグから出力端子Sが出ており、回転電機10のV相と接続されている。第3のレグから出力端子Tが出ており、回転電機10のW相と接続されている。
【0018】
直流電源40は、商用電源といった交流給電であれば交流電源を整流素子で整流後、コンデンサで平滑することで得られる。直流電源40は、電気自動車などによる直流給電であれば、蓄電池から直接得られるが、直流電圧変換器で電圧調整してもよい。
【0019】
次に、軸受電食発生原理と、実施の形態1にかかる回転電機10において電食が抑制される仕組みについて説明する。
【0020】
インバータ30は、直流電源40の直流電圧V
DCが印加される。インバータ30は、スイッチング素子31,32,33,34,35,36をパルス幅変調信号に基づいてオン又はオフし、出力端子R,S,Tの電位が、直流電源40のプラス側の電位VS及びマイナス側の電位PSCのいずれかとなるようにする。インバータ30は、回転電機10の巻線20の相間電圧の平均値の位相差が120度ずれた3相正弦波電圧となるように動作する。直流電源40のマイナス側の電位PSCを基準に出力端子R,S,Tの電圧波形を見ると、矩形波となる。
【0021】
パルス幅変調は、原理的には巻線20へ印加する所望の正弦波状基本波と三角波搬送波との大小を比較することで、各レグの上段のアームをオンするか下段のアームをオンするのかを決める。ただし、直流電圧V
DCの範囲の中で、相間電圧をできるだけ大きくとるために、巻線20へ印加する正弦波電圧の3倍の周波数の正弦波を各相の相電圧へ重畳したものを三角波搬送波と比較することがある。
【0022】
巻線20へ印加する正弦波電圧の3倍の周波数の正弦波を各相の相電圧へ重畳すると、相電圧の平均値は馬蹄形の波形となるが、相間では重畳した3倍の周波数の正弦波は差し引かれるため、相間電圧は正弦波電圧となる。
【0023】
図5は、実施の形態1に係る回転電機の3倍の周波数の電圧を重畳した相電圧と相間電圧と中性点電圧の基本波波形とを示す図である。出力端子R,S,Tにおける電圧は、U相、V相及びW相の相電圧を示している。出力端子Rと出力端子Sとの間の電圧は、U相とV相との相間電圧を示している。出力端子Sと出力端子Tとの間の電圧は、V相とW相との相間電圧を示している。出力端子Tと出力端子Rとの間の電圧は、W相とU相との相間電圧を示している。正弦波電圧の3倍の周波数の正弦波の電圧を巻線20へ印加すると、零相電圧とよばれる巻線20全体の電圧は、前述の重畳された3倍の周波数の正弦波で振れ、中性点Nの中性点電圧となって現れる。零相電圧により、ヨーク17には円周方向に循環する磁束が発生する。そして、ヨーク17を貫通している回転軸13には電磁誘導による軸電圧が発生し、軸受の油膜に電圧が印加される。
【0024】
前述したようにインバータ30の出力電圧の基本波は正弦波状であるが、パルス幅変調された矩形波状の電圧のため、実際には巻線20全体の電圧も矩形波状に変動している。したがって、軸受の油膜には基本波だけの場合に比べて波高値が高い高周波の矩形波状電圧が印加され、絶縁破壊による放電が頻繁に発生して、軸受面の劣化が急速に進む。
【0025】
図6は、実施の形態1に係る回転電機の中性点電圧波形と軸受電圧波形との実例を示す図である。中性点電圧よりも鈍ってはいるが、中性点電圧の変動により誘起された軸電圧が約60マイクロ秒の周期で発生している。
【0026】
ヨーク部173,176に設けた狭断面部21とキャンセルコイル22の動作について説明する。ティース181,182,183のセット及びティース184,185,186のセットの各セット内では、回転子12からの鎖交磁束の総和は基本的にはゼロである。したがって、ティース181,182,183がヨーク部171,172にて低い磁気抵抗で磁気的に結合されており、かつティース184,185,186がヨーク部174,175にて低い磁気抵抗で磁気的に結合されていれば、セット同士の間のヨーク部173及びヨーク部176に狭断面部21を設けて磁気抵抗を高くしても、回転子12からの磁束の流れを各セット内でクローズしてコイルU1,V1,W1及びコイルU2,V2,W2へ有効に鎖交させることができる。
【0027】
一方、軸電圧を発生させる磁束はヨーク17を1周するため、狭断面部21を通る。したがって、狭断面部21にキャンセルコイル22を巻回すことで、有効磁束への影響を小さくした上で、軸電圧を発生させる磁束を抑制する電流をキャンセルコイル22に流すことができ、軸電圧を低減することができる。すなわち、巻線20とは独立してヨーク17に巻かれたキャンセルコイル22は、回転軸13の周囲に発生する高次の磁束を打ち消す誘導電流を発生させる。
【0028】
なお、
図1、
図2及び
図3には、キャンセルコイル22を狭断面部21へ巻回した例を示したが、ヨーク部173,176には有効磁束はほとんど通らないため、ヨーク部173及びヨーク部176の周辺にキャンセルコイル22を巻回せば、軸電圧を発生する磁束だけがキャンセルコイル22を通り、軸電圧を低減する効果が得られる。また、
図1、
図2及び
図3には、ヨーク部173及びヨーク部176に狭断面部21を設けた構成を例示したが、3相分のコイルが巻回されたティース18がヨーク17で磁気的に結合されていればよい。すなわち、ヨーク部171及びヨーク部174に狭断面部を設けても良いし、ヨーク部172及びヨーク部175に狭断面部を設けてもよい。また、上記の説明では狭断面部21をヨーク17の2箇所に設けたが、1箇所でもよい。狭断面部21が1箇所だけならば、ティース数と極数とがどのような組み合せの場合でも有効磁束へほとんど影響ないため、ヨーク17の任意の箇所に狭断面部21を設けることができる。
【0029】
実施の形態1に係る回転電機10は、固定子11のヨーク17の一部の磁気抵抗を高くして回転トルクを発生する磁束を通りにくくしたヨーク部173,176の狭断面部21にキャンセルコイル22を巻くため、回転トルクを発生する有効磁束への影響は少なくなり、軸電圧発生の原因となるヨーク17を1周する磁束はキャンセルコイル22で低減することができる。したがって、実施の形態1に係る回転電機10は、構造及び加工を複雑とせず、有効磁束に影響を及ぼすことなく軸電圧を低減して、第1軸受14及び第2軸受15の電食を抑制できる。
【0030】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る回転電機の横断面図である。
図7は、
図1中のII-II線に沿った断面に相当する断面を示している。実施の形態1に係る回転電機10では、キャンセルコイル22を巻回するヨーク部173,176に有効磁束が通りにくくするために、狭断面部21を設けたが、実施の形態2に係る回転電機では、
図7に示すようにヨーク部173,176は、空隙24によって円周方向に分断されている。ヨーク部173,176を分断する空隙24の距離は、有効磁束は通りにくいが、軸電圧を発生させる磁束は通る距離とされている。
【0031】
実施の形態2に係る回転電機10は、ヨーク部173,176には有効磁束はほとんど通らないため、ヨーク部173及びヨーク部176の周辺にキャンセルコイル22を巻回せば、軸電圧を発生する磁束だけがキャンセルコイル22を通り、軸電圧を低減する効果が得られる。
【0032】
実施の形態2に係る回転電機10は、空隙24によって分断されて磁気抵抗が高くなっており回転トルクを発生する磁束が通りにくいヨーク部173,176にキャンセルコイル22を巻くため、回転トルクを発生する有効磁束への影響は少なくなり、軸電圧発生の原因となるヨーク17を1周する磁束はキャンセルコイル22で低減することができ、軸電圧を低減して第1軸受14及び第2軸受15の電食を抑制することができる。
【0033】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3に係る回転電機を示す縦断面図である。
図9は、実施の形態3に係る回転電機の横断面図である。
図9は、
図8中のIX-IX線に沿った断面を示している。
図10は、実施の形態3に係る回転電機の固定子の斜視図である。実施の形態3に係る回転電機10は、キャンセルコイル22に直列に接続されたコンデンサ50を備える点で実施の形態1に係る回転電機10と相違している。
【0034】
コンデンサ50とキャンセルコイル22とが直列に接続された閉路の動作について説明する。
図11は、実施の形態3に係る回転電機のインバータの出力電圧と、巻線、固定子鉄心及びキャンセルコイル回路との関係を示す等価回路を示す図である。キャンセルコイル22にコンデンサ50が直列接続されているため、キャンセルコイル22及びコンデンサ50を有する閉路へ流れる電流Iには、低周波電流はほとんど含まれておらず、高周波電流が大半を占める。よって、中性点電圧の基本波成分による磁束及びトルク発生に寄与する有効磁束の低周波成分は減衰されないが、中性点電圧による磁束の高周波成分はキャンセルコイル22の電流により減衰される。したがって、軸電圧の高周波成分を低減できるので、軸受の油膜に印加される高周波の矩形波状電圧が低減され、絶縁破壊による放電が頻繁に発生するのを防止でき、軸受電食を抑制できる。
【0035】
なお、
図8、
図9及び
図10には、キャンセルコイル22を軸対称な2箇所のヨーク部173,176へ巻回した構造を示したが、キャンセルコイル22は、ヨーク17のどこに巻回しても同様の効果が得られ、その数も限定されない。
【0036】
また、
図8、
図9及び
図10には、ヨーク17に狭断面部21が形成されている構造を示したが、狭断面部を形成していないヨークにキャンセルコイル22及びコンデンサ50を追加してもよい。また、間隙で分断されたヨーク部を備える構造にコンデンサ50を追加してもよい。
【0037】
上記の各実施の形態においては、3相4極の永久磁石式同期電動機について説明したが、相数、極数及び電動機の種類は例示した構成に限定されるものではない。すなわち、本発明は、誘導電動機又はリラクタンス電動機といった交流電動機であれば適用可能である。
【0038】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 回転電機、11 固定子、12 回転子、13 回転軸、14 第1軸受、15 第2軸受、16 外郭、17 ヨーク、18,181,182,183,184,185,186 ティース、19 固定子鉄心、20 巻線、21 狭断面部、22 キャンセルコイル、24 空隙、30 インバータ、31,32,33,34,35,36 スイッチング素子、40 直流電源、50 コンデンサ、171,172,173,174,175,176 ヨーク部。