特許第6987027号(P6987027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987027シューズ用ソール構造およびそれを備えたシューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987027
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】シューズ用ソール構造およびそれを備えたシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   A43B13/14 B
   A43B13/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-122900(P2018-122900)
(22)【出願日】2018年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-63491(P2019-63491A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2017-188242(P2017-188242)
(32)【優先日】2017年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】松井 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】平井 森
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
【審査官】 今村 亘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/151388(WO,A1)
【文献】 特表2000−507466(JP,A)
【文献】 実開平02−038904(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0088140(US,A1)
【文献】 実開昭49−078144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の足裏全体を支持するソール本体部と、
前記ソール本体部の下部から路面側に向かって下方に突出し、互いに間隔をあけて配置された複数の下側凸部と、
前記ソール本体部の上部から着用者の足裏側に向かって上方に突出し、各々が前記ソール本体部の上側で前記各下側凸部と重なる位置に配置された複数の上側凸部と、を備え、
前記各下側凸部は、下部に路面に接地する第1領域を有しており、
前記各下側凸部は、略柱状に形成され、かつ、平面視で四角形であり、
前記第1領域は、前記各下側凸部における下側の底面として構成されており、
前記各上側凸部は、略柱状の基部と、前記基部と一体に形成されかつ上方に向かって先細るように形成された先端部と、を含み、
前記各上側凸部は、平面視で四角形であり、かつ、前記先端部の水平方向断面が、その下方に位置する前記各下側凸部の前記第1領域よりも小さく、
前記複数の下側凸部は、前記ソール本体部の所定領域において互いに隣接する下側凸部同士の間にある溝の幅が、前記下側凸部の幅よりも小さくなるように隣接しており、
前記複数の上側凸部は、前記所定領域において互いに隣接する上側凸部同士の間にある溝の幅が、前記上側凸部の幅よりも小さくなるように隣接しており、
互いに隣接する前記各上側凸部同士が、該上側凸部同士の間にある前記溝を介して、互いに一体であ
前記複数の上側凸部は、弾性材の発泡体から構成され、前記ソール本体部に固定されており、
接地時において、路面から受ける反力が前記複数の下側凸部に伝達されるとともに、該反力が前記ソール本体部の上側で前記各下側凸部と重なる位置に配置された前記各上側凸部により前記各下側凸部から前記各上側凸部を介して直接的に着用者の足裏に伝達されるように構成されている、シューズ用ソール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシューズ用ソール構造において、
前記複数の上側凸部は、各々の突出高さが着用者の足裏の部位に応じて異なるように形成されている、シューズ用ソール構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシューズ用ソール構造を備えた、シューズ。
【請求項4】
請求項3に記載のシューズにおいて、
前記シューズ用ソール構造の上側に取り付けられたアッパーをさらに備え、
前記アッパーは、アッパー本体と、該アッパー本体と一体に形成された中底とを有する、シューズ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のシューズにおいて、
前記シューズ用ソール構造の上側に配置されたインソールをさらに備えた、シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズ用ソール構造およびそれを備えたシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1のように、ソール本体の下面から路面側に向かって下方に突出し、互いに間隔をあけて配置された複数の第1の突起と、ソール本体の上面からシューズを着用した者(以下、「着用者」という)の足裏側に向かって上方に突出し、互いに間隔をあけて配置された複数の第2の突起と、を備えたシューズ用のソール構造体が開示されている。第1および第2の突起は、ソール本体を挟んで上下に相対する位置にそれぞれ配置されている。また、第1の突起は、下端部が半球状に形成されていて、該下端部の路面に対する接触部分が比較的小さくなるように形成されている。さらに、このソール構造体では、路面に対する第1の突起の接地面積と着用者の足裏に対する第2の突起の当接面積とが略同じとなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−144170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のソール構造体では、着用者の足(ソール構造体)が路面に接地した時(以下「接地時」という)に路面からソール構造体に作用する反力が第1の突起からソール本体を介して第2の突起に伝達される。これにより、上記反力が着用者の足裏に伝わるようになっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のソール構造体では、第1の突起の下端部における路面に対する接触部分が比較的小さく形成され、かつ路面に対する第1の突起の接地面積と着用者の足裏に対する第2の突起の当接面積とが略同じとなるように構成されていることから、接地時に上記反力が第1の突起から第2の突起に向かう過程で分散しやすくなり、上記反力が第2の突起から着用者の足裏各所に正確に伝わりにくくなってしまう。このため、着用者は、接地時に足裏各所に伝達される圧力の強弱をそれぞれの部位ごとに認識することができず、接地時における足裏の部位ごとにかかる荷重を適時に把握して身体の動きをコントロールし難いものとなっていた。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、接地時における足裏の部位ごとにかかる荷重を適時に把握して身体の動きをコントロールしやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の形態はシューズ用ソール構造に係るものであり、このソール構造は、着用者の足裏全体を支持するソール本体部と、ソール本体部の下部から路面側に向かって下方に突出し、互いに間隔をあけて配置された複数の下側凸部と、ソール本体部の上部から着用者の足裏側に向かって上方に突出し、各々がソール本体部の上側で各下側凸部と重なる位置に配置された複数の上側凸部と、を備えている。そして、各下側凸部は、下部に路面に接地する第1領域を有しており、各下側凸部は、略柱状に形成され、かつ、平面視で四角形であり、第1領域は、各下側凸部における下側の底面として構成されており、各上側凸部は、略柱状の基部と、基部と一体に形成されかつ上方に向かって先細るように形成された先端部と、を含み、各上側凸部は、平面視で四角形であり、かつ、先端部の水平方向断面が、その下方に位置する各下側凸部の第1領域よりも小さく、複数の下側凸部は、ソール本体部の所定領域において互いに隣接する下側凸部同士の間にある溝の幅が、下側凸部の幅よりも小さくなるように隣接しており、複数の上側凸部は、所定領域において互いに隣接する上側凸部同士の間にある溝の幅が、上側凸部の幅よりも小さくなるように隣接しており、互いに隣接する各上側凸部同士が、上側凸部同士の間にある前記溝を介して、互いに一体であり、複数の上側凸部は、弾性材の発泡体から構成され、ソール本体部に固定されており、接地時において、路面から受ける反力が複数の下側凸部に伝達されるとともに、該反力がソール本体部の上側で各下側凸部と重なる位置に配置された各上側凸部により各下側凸部から各上側凸部を介して直接的に着用者の足裏に伝達されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この第1の形態では、例えば歩行動作、走行動作、またはジャンプ動作のような各種動作により着用者の足の接地時において、路面から受ける反力が複数の下側凸部に伝達されるとともに、該反力がソール本体部の上側で各下側凸部と重なる位置に配置された各上側凸部により各下側凸部から各上側凸部を介して直接的に着用者の足裏に伝達される。そして、各上側凸部の先端部の水平方向断面(すなわち、先端部の足裏に当接する部分の、平面視での大きさ)が各下側凸部の第1領域よりも小さいことから、接地時に上記反力が第1領域から前記先端部に向かって集約される。これにより、上記反力は、各上側凸部の先端部から増幅された圧力として着用者の足裏各所に伝達されるようになる。その結果、着用者は、接地時に足裏各所に伝達される圧力の強弱をそれぞれの部位ごとに認識することが可能となる。したがって、第1の形態では、接地時における足裏の部位ごとにかかる荷重を適時に把握して身体の動きをコントロールしやすくすることができる。
【0009】
第2の形態は、第1の形態において、複数の上側凸部は、各々の突出高さが着用者の足裏の部位に応じて異なるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
この第2の形態では、接地時に生じる上記反力を足裏の各部位に応じて適切に伝達することが可能となり、特に足裏において痛みを感じやすい部位に対する過度な圧力を調整することができる。
【0011】
第3の形態は、第1または第2の形態のシューズ用ソール構造を備える、シューズである。
【0012】
この第3の形態では、上記第1または第2の形態と同様の作用効果を奏するシューズを得ることができる。
【0013】
第4の形態は、第3の形態において、シューズ用ソール構造の上側に取り付けられたアッパーをさらに備え、アッパーは、アッパー本体と、アッパー本体と一体に形成された中底とを有することを特徴とする。
【0014】
この第4の形態では、アッパーがアッパー本体および中底を有していることから、中底を有しない形態と比較して、容易に製靴することができる。
【0015】
第5の形態は、第3または第4の形態において、シューズ用ソール構造の上側に配置されたインソールをさらに備えていることを特徴とする。
【0016】
この第5の形態では、インソールが上側凸部の上側に配置されているため、インソールがシューズ用ソール構造と着用者の足裏との間に配置されるようになる。すなわち、各上側凸部は、インソールを介して足裏に当接するように構成されている。その結果、例えば各上側凸部から過度な圧力がかかるような場合であっても、インソールにより足裏に対する上記圧力を調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接地時における足裏の部位ごとにかかる荷重を適時に把握して身体の動きをコントロールしやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係るソール構造を上方から見て示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るソール構造を下方から見て示す斜視図である。
図3図3は、ソール構造の縦断面状態を部分的に示す部分拡大断面図である。
図4図4は、第1および第2領域の重なり状態を上方から見て示す模式図である。
図5図5は、ソール構造と足の骨格構造との位置関係を模式的に示す平面図である。
図6図6は、実施形態の変形例1に係るシューズの縦断面状態を示す断面図である。
図7図7は、実施形態の変形例2に係るシューズの縦断面状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るシューズSの全体を示し、このシューズSは、例えばランニング、球技等の各種競技におけるスポーツ用シューズ、日常使用のスニーカー、リハビリ用シューズなどに適用される。
【0021】
ここで、シューズSは、右足用シューズのみを例示している。左足用シューズは、右足用シューズと左右対称になるように構成されているので、以下の説明では右足用シューズのみについて説明し、左足用シューズの説明は省略する。
【0022】
また、以下の説明において、上方(上側)および下方(下側)とはシューズSの上下方向の位置関係を表し、前方(前側)および後方(後側)とはシューズSの前後方向の位置関係を表すものとする。
【0023】
図1および図2に示すように、シューズSは、ソール1を備えている。ソール1は、シューズSを着用した者(以下「着用者」という)の足の前足部から後足部に亘る範囲に設けられている。このソール1は、例えば弾性材からなり、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体などが適している。また、ソール1の周縁部には、着用者の足を覆うアッパー2が設けられている(図1および図2の仮想線を参照)。
【0024】
この実施形態において、アッパー2は、アッパー本体2aからなる。アッパー本体2aは、主に着用者の足の甲を覆うためのものである。アッパー本体2aは、その下端部がソール1における後述の上側周縁部5の位置に対応して開口するように構成されている。また、アッパー本体2aは、その下端部が上側周縁部5に固着された状態でソール1に取り付けられている。具体的に、アッパー本体2aの下端部は、上側周縁部5の上面5aに対し例えば接着剤や縫製により固着されている。
【0025】
図3に示すように、ソール1は、ソール本体部3を備えている。ソール本体部3は、着用者の足裏F全体を支持するように形成されている。具体的に、ソール本体部3は、略板状に形成されていて、着用者の足裏F全体に対応するようにシューズSの前後方向および足幅方向に広がっている。
【0026】
図2および図3に示すように、ソール1の下側には、ソール本体部3と一体に形成された下側周縁部4が設けられている。この下側周縁部4は、下面4aがソール本体部3の下端部よりも下方に位置するように形成されていて、ソール本体部3の外周を覆うように配置されている。
【0027】
図1および図3に示すように、ソール1の上側には、ソール本体部3と一体に形成された上側周縁部5が設けられている。この上側周縁部5は、上面5aがソール本体部3の上端部よりも上方に位置するように形成されていて、ソール本体部3の外周を覆う位置に配置されている。なお、上側周縁部5には、前端側に湾曲状の前壁部6が形成されている一方、後端側に湾曲状の後壁部7が形成されている。
【0028】
図2および図3に示すように、ソール1は、複数の下側凸部11,11,…を備えている。各下側凸部11は、例えば断面視で正四角形となる四角柱状に形成されていて、ソール本体部3の下部から路面G側に向かって下方に突出している。具体的に、各下側凸部11は、下部が下側周縁部4の下面4aよりも下方に位置するように形成されている。また、下側凸部11,11,…は、互いに間隔をあけて配置されている。
【0029】
隣接する下側凸部11,11,…同士の間には、溝部12が各下側凸部11の底面から上方に向かって凹陥形成されている。この溝部12は、下側凸部11,11,…同士の間隔よりも幅が小さくかつ深さが浅くなるように形成されている。
【0030】
図1および図3に示すように、ソール1は、複数の上側凸部13,13,…を備えている。各上側凸部13は、ソール本体部3の上部から着用者の足裏F側に向かって上方に突出している。具体的に、各上側凸部13は、基部13a、および基部13aと一体に形成された先端部13bを有している。基部13aは、例えば断面視で正四角形となる四角柱状に形成されていて、ソール本体部3の上部から上側周縁部5と略同じ高さ寸法h0となるように形成されている。また、先端部13bは、基部13a上端から高さ寸法h1〜h3のいずれかの寸法となるように上方に向かって先細るように形成されている。すなわち、上側凸部13,13,…は、上部が上側周縁部5の上面5aよりも上方に位置するように形成されている。なお、先端部13bの頂点部分は、断面視で半円状に形成されているのが好ましい。
【0031】
また、上側凸部13,13,…は、互いに所定の間隔をあけて配置されていて、各々が断面視で各下側凸部11と上下一対となるように構成されている。すなわち、各上側凸部13は、ソール本体部3の上側で各下側凸部11と重なる位置に配置されている。
【0032】
そして、図3および図4に示すように、各下側凸部11は、下部が路面G(地面および床面など)に接地する第1領域R1を有している。具体的に、各第1領域R1は、各下側凸部11における四角柱下側の底面として構成されていて、平面視で該底面における一辺の長さが寸法a1となっている。一方、各上側凸部13は、上部が着用者の足裏Fに当接
する第2領域R2を有している。この第2領域R2,R2,…は、平面視で略四角形における一辺の長さが寸法a1よりも小さい寸法b1〜b3のいずれかの寸法となっている。すなわち、各上側凸部13の第2領域R2は、各下側凸部11の第1領域R1よりも小さくなるように形成されている。
【0033】
ここで、図5において、着用者の足裏Fの母指球および踵部などを含む領域をドットハッチングにより示した領域Xとして定める一方、領域X以外の領域(例えば足裏Fの土踏まずに対応する部位などを含む領域)を斜線のハッチングにより示した領域Yとして定めている。
【0034】
図3に示すように、上側凸部13,13,…は、第2領域R2,R2,…の大きさが着用者の足裏Fの部位に応じて異なるように形成されている。具体的に、図4にも示すように、領域X内に配置されている各上側凸部13は、第2領域R2の一辺の長さが寸法b1となるように形成されている。一方、領域Yに配置されている各上側凸部13は、第2領域R2の一辺の長さが寸法b2または寸法b3のいずれかの寸法となるように形成されている。ここで、寸法b1は、寸法b2および寸法b3よりも大きい。また、寸法b2は、寸法b3よりも大きい。このような各寸法の大小関係により、領域X内の各上側凸部13は、その第2領域R2が領域Y内における各上側凸部13の第2領域R2よりも大きくなるように構成されている。つまり、領域X内の各上側凸部13は、着用者の足裏Fに対する当接面積が領域Y内における各上側凸部13の着用者の足裏Fに対する当接面積よりも大きくなるように構成されている。
【0035】
また、図3に示すように、複数の上側凸部13,13,…は、各々の突出高さが着用者の足裏Fの部位に応じて異なるように形成されている。具体的に、領域X内に配置されている各上側凸部13は、その突出高さが寸法h0+h1となるように形成されている。一方、領域Y内に配置されている各上側凸部13は、その突出高さが寸法h0+h2または寸法h0+h3のいずれかの寸法となるように形成されている。ここで、寸法h1は、寸法h2および寸法h3よりも小さい。また、寸法h2は、寸法h3よりも小さい。このような各寸法の大小関係により、領域X内の各上側凸部13は、その突出高さが領域Y内における各上側凸部13の突出高さよりも低くなるように構成されている。
【0036】
[実施形態の作用効果]
以上のように、ソール1によれば、例えば歩行動作、走行動作、またはジャンプ動作のような各種動作により着用者の足が路面Gに接地した時(以下「接地時」という)において、路面Gから受ける反力が複数の下側凸部11,11,…に伝達されるとともに、該反力がソール本体部3の上側で各下側凸部11と重なる位置に配置された各上側凸部13により各下側凸部11から各上側凸部13を介して直接的に着用者の足裏Fに伝達される。そして、各上側凸部13の第2領域R2が各下側凸部11の第1領域R1よりも小さいことから、接地時に上記反力が各第1領域R1から各第2領域R2に向かって集約される。これにより、上記反力は、各上側凸部13の第2領域R2から増幅された圧力として着用者の足裏F各所に伝達されるようになる。その結果、着用者は、接地時に足裏F各所に伝達される圧力の強弱をそれぞれの部位ごとに認識することが可能となる。したがって、本発明の実施形態に係るシューズSのソール1では、接地時における足裏Fの部位ごとにかかる荷重を適時に把握して身体の動きをコントロールしやすくすることができる。
【0037】
また、各下側凸部11は、略柱状に形成されており、各第1領域R1は、各下側凸部11における下側の底面として構成されている。これにより、各第1領域R1が比較的広い平面状に形成されるため、路面Gからの反力が各第1領域R1に伝わりやすくなる。その結果、接地時に生じる上記反力を、各第1領域R1から各第2領域R2に向かって適切に伝達することができる。
【0038】
また、上側凸部13,13,…は、第2領域R2,R2,…の大きさが着用者の足裏Fの部位に応じて異なるように形成されている。このため、接地時に生じる上記反力を足裏Fの各部位に応じて適切に伝達することが可能となり、特に足裏Fにおいて痛みを感じやすい部位に対する過度な圧力を調整することができる。
【0039】
また、上側凸部13,13,…は、各々の突出高さが着用者の足裏Fの部位に応じて異なるように形成されている。このため、接地時に生じる上記反力を足裏Fの各部位に応じて適切に伝達することが可能となり、特に足裏Fにおいて痛みを感じやすい部位に対する過度な圧力を調整することができる。
【0040】
さらに、領域X内の各上側凸部13は、突出高さが領域Y内の各上側凸部13の突出高さよりも低くなるように形成されているため、領域X内の各上側凸部13を、対応する各下側凸部11から伝達される上記反力の大きさによらずに倒れにくくすることができる。
【0041】
[実施形態の変形例1]
上記実施形態に係るシューズSでは、アッパー2がアッパー本体2aのみからなる形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図6に示した変形例1に係るシューズSのように、アッパー2がアッパー本体2aおよび中底2bを有していてもよい。
【0042】
中底2bは、例えば伸縮性のある網目状のメッシュ生地からなる。すなわち、中底2bは、その厚さや材料が上側凸部13の反力が着用者の足裏に伝達可能な厚み、材料および構成であることが好ましい。図6に示すように、中底2bは、アッパー本体2a下側の開口を覆いかつ上下方向においてシューズSを着用した着用者の足裏Fとソール1との間に位置するように構成されている。
【0043】
中底2bは、アッパー本体2aと一体に形成されている。具体的に、中底2bは、シューズSにおける足幅方向の各端部がアッパー本体2aの各下端部に対し接着剤や縫製などにより固着されるように構成されている。さらに、中底2bの上記各端部およびアッパー本体2aの各下端部は、上側周縁部5の上面5aに対して接着剤や縫製などにより固着されている。
【0044】
中底2bは、上側凸部13,13,…の上側に配置されている。具体的に、中底2bは、上下方向においてシューズSにおける足幅方向の中間部が上側凸部13,13,…と対向するように配置されている。
【0045】
以上のように、この変形例のシューズSによれば、アッパー2がアッパー本体2aおよび中底2bを有しているため、アッパー2が中底2bを有しない形態と比較して、容易に製靴することができる。
【0046】
また、この変形例のシューズSでは、各上側凸部13が中底2bを介して足裏Fに当接するように構成されている。このため、例えば足裏Fに対し各上側凸部13から過度な圧力がかかるような場合であっても、中底2bにより足裏Fに対する上記圧力を調整することができる。
【0047】
[実施形態の変形例2]
また、上記実施形態では、上側凸部13,13,…が着用者の足裏Fと直接的に当接する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図7に示した変形例2に係るシューズSのように、上側凸部13,13,…がインソール14を介して着用者の足裏Fと間接的に当接するような形態としてもよい。
【0048】
インソール14は、編物、織物、不織布、布地等からなる。インソール14は、その厚さや材料が上側凸部13の反力が着用者の足裏に伝達可能な厚み、材料および構成であることが好ましい。図7に示すように、インソール14は、上側凸部13,13,…の上側に配置されている。具体的に、インソール14は、上下方向においてシューズSにおける足幅方向の中間部が上側凸部13,13,…と対向するように配置されている。すなわち、インソール14は、シューズSを着用した着用者の足裏Fとソール1との間に配置されている。なお、インソール14は、その周縁部がソール1における上側周縁部5の上面5aに対して接着剤や縫製などにより固着されていてもよい。
【0049】
以上のように、この変形例のシューズSでは、各上側凸部13がインソール14を介して足裏Fに当接するように構成されている。このため、例えば足裏Fに対し各上側凸部13から過度な圧力がかかるような場合であっても、インソール14により足裏Fに対する上記圧力を調整することができる。
【0050】
[その他の実施形態]
上記実施形態として、単一の材料からなるソール本体部3を備えるソール1の形態を示したが、このような形態に限られない。例えば、ソール1として、ソール本体部3が高硬度の硬質弾性部材からなるアウトソール(図示せず)と、軟質の弾性材からなるミッドソール(図示せず)とを有する形態にしてもよい。このような形態では、ソール本体部3の下部に相当するアウトソールの下面側に下側凸部11,11,…を形成する一方、ソール本体部3の上部に相当するミッドソールの上面側に上側凸部13,13,…を形成すればよい。
【0051】
また、上記実施形態として、各下側凸部11が四角柱状に形成された形態を示したが、この形態に限られない。例えば、各下側凸部11は、三角柱状に形成されていてもよく、あるいは円柱状に形成されていてもよい。要は、各下側凸部11が略柱状に形成されていればよい。
【0052】
また、上記実施形態の変形例1では、中底2bが伸縮性のある網目状のメッシュ生地からなる形態を示したが、この形態に限られない。例えば、中底2bがニット生地、編物、織物、不織布、布地、樹脂やラバーの発泡体などの材料のうち、いずれか一種からなる形態であってもよい。
【0053】
また、中底2bは、複数の層からなる形態としてもよい。この形態において、各層の材料は同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態の変形例2では、インソール14は、その周縁部がソール1における上側周縁部5の上面5aに対して接着剤または縫製などにより固着される形態を示したが、この形態に限られない。例えば、インソール14は、その周縁部がソール1における上側周縁部5の上面5aに配置され、着脱可能に載置されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、アッパー本体2aの下端部を、接着剤により上側周縁部5の上面5aに対し直接的に固着した形態を示したが、この形態に限られない。例えば、シューズSを組み立てる工程において、パルプ材などの水溶性の素材からなる中底(図示せず)を一時的にアッパー本体2aの下端部およびソール1における上側周縁部5の上面5aに固着した中間体(図示せず)を構成するとともに、この中間体を水溶液中に浸すことにより上記中底のみを溶解させて取り除くという工程を含めてもよい。かかる工程を経ることにより、上記変形例1のように、容易に製靴することができる。
【0056】
また、上記実施形態の変形例1では、変形例2で示したインソール14を、中底2bの上側に配置してもよい。
【0057】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えばランニング、球技等の各種競技におけるスポーツ用シューズ、それらの競技におけるトレーニング用シューズ、日常使用のスニーカー、リハビリ用シューズとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0059】
S:シューズ
1:ソール
2:アッパー
2a:アッパー本体
2b:中底
3:ソール本体部
4:下側周縁部
5:上側周縁部
11:下側凸部
13:上側凸部
13a:基部
13b:先端部
14:インソール
R1:第1領域
R2:第2領域
G:路面
F:足裏
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7