特許第6987035号(P6987035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987035
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電磁弁駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/22 20060101AFI20211213BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20211213BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20211213BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20211213BHJP
   F02D 41/20 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F02D41/22
   F02M51/06 M
   F02M61/16 W
   F02M51/00 F
   F02D41/20
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-181629(P2018-181629)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-51336(P2020-51336A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】小川 功史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大顕
(72)【発明者】
【氏名】野村 賢吾
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−096229(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/168935(WO,A1)
【文献】 特開2013−036398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 − 45/00
F02M 51/00 − 61/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチがオン状態、かつ、第2スイッチがオフ状態である場合にインダクタにエネルギーを蓄積し、前記第1スイッチがオフ状態、かつ、前記第2スイッチがオン状態である場合に前記インダクタに蓄積された前記エネルギーを出力コンデンサに供給することで入力電圧を昇圧する昇圧動作を実行可能な昇圧回路と、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのオン状態又はオフ状態を検出する状態検出部と、
前記状態検出部により検出された前記第1スイッチ又は前記第2スイッチの状態に応じて前記第1スイッチ及び第2スイッチのスイッチングを同期整流制御することで前記昇圧動作を制御する昇圧制御部と、
前記昇圧動作により昇圧された電圧を電磁弁に供給することで前記電磁弁を駆動する駆動回路と、
を備えることを特徴とする電磁弁駆動装置。
【請求項2】
前記昇圧制御部は、前記状態検出部により前記第1スイッチのオフ状態を検出した場合には、前記第2スイッチをオフ状態からオン状態に制御し、前記第2スイッチのオフ状態を検出した場合には、前記第1スイッチをオフ状態からオン状態に制御することを特徴とする請求項1に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項3】
前記第1スイッチ又は前記第2スイッチは、制御端子に印加される電圧に応じてオン状態又はオフ状態となり、
前記状態検出部は、前記第1スイッチ又は前記第2スイッチの制御端子に印加されている電圧を読み取り、前記読み取った電圧の電圧値が閾値以下である場合に、前記第1スイッチ又は前記第2スイッチがオフ状態であると判定することを特徴とする請求項2に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項4】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチはMOSFETであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項5】
前記電磁弁は、内燃機関において燃料を噴射する燃料噴射弁であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バッテリの電圧(以下、「バッテリ電圧」という。)を昇圧回路で昇圧し、その昇圧した電圧(以下、「出力電圧」という。)を燃料噴射弁に供給することで、燃料噴射弁を開弁させる燃料噴射弁駆動装置が開示されている。
【0003】
この昇圧回路は、インダクタ、第1スイッチ、第2スイッチ、ダイオード、及び出力コンデンサから構成されている。より具体的にはインダクタは、一端がバッテリ電源に接続され、他端がダイオードのアノードに接続されている。第1スイッチは、インダクタの他端と接地レベルとの間に接続されている。第2スイッチは、ダイオードと並列に接続されている。出力コンデンサは、ダイオードのカソードと接地レベルとの間に接続されている。
【0004】
このような構成により、上記燃料噴射弁駆動装置は、第1スイッチがオン状態、かつ、第2スイッチがオフ状態のときにエネルギーをインダクタに蓄積する。そして、燃料噴射弁駆動装置は、第1スイッチをオフ状態に制御した後に第2スイッチをオン状態にすることで上記エネルギーを、第2スイッチを介して出力コンデンサに供給する同期整流制御を実行可能である。これにより、ダイオードに流れる電流を低減可能となるため、ダイオードの発熱を抑制して損失を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−158985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記燃料噴射弁駆動装置では、同期整流制御を実行する場合において、第1スイッチ及び第2スイッチが同時にオン状態になることを防止するために、第1スイッチのターンオフ動作を実行してから、タイマで所定時間を計時した後に第2スイッチをオン状態にすることで、いわゆるデットタイム期間が設けられている。
【0007】
ただし、上記タイマの時間設定の分解能が低い場合には、安全性の観点からデットタイム期間を必要以上に長く設定する必要がある。したがって、同期整流制御において、第1スイッチ及び第2スイッチがオフ状態となる期間が長くなってしまう。その結果、インダクタに蓄積されたエネルギーがダイオードを介して出力コンデンサに供給される時間が長くなり、同期整流制御の実行によるダイオードの損失低減に対して効果を上げることができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、同期整流制御において、ダイオードによる発熱を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、第1スイッチがオン状態、かつ、第2スイッチがオフ状態である場合にインダクタにエネルギーを蓄積し、前記第1スイッチがオフ状態、かつ、前記第2スイッチがオン状態である場合に前記インダクタに蓄積された前記エネルギーを出力コンデンサに供給することで入力電圧を昇圧する昇圧動作を実行可能な昇圧回路と、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのオン状態又はオフ状態を検出する状態検出部と、前記状態検出部により検出された前記第1スイッチ又は前記第2スイッチの状態に応じて前記第1スイッチ及び第2スイッチのスイッチングを同期整流制御することで前記昇圧動作を制御する昇圧制御部と、前記昇圧動作により昇圧された電圧を電磁弁に供給することで前記電磁弁を駆動する駆動回路と、を備えることを特徴とする電磁弁駆動装置である。
【0010】
本発明の一態様は、上述の電磁弁駆動装置であって、前記昇圧制御部は、前記状態検出部により前記第1スイッチのオフ状態を検出した場合には、前記第2スイッチをオフ状態からオン状態に制御し、前記第2スイッチのオフ状態を検出した場合には、前記第1スイッチをオフ状態からオン状態に制御する。
【0011】
本発明の一態様は、上述の電磁弁駆動装置であって、前記第1スイッチ又は前記第2スイッチは、制御端子に印加される電圧に応じてオン状態又はオフ状態となり、前記状態検出部は、前記第1スイッチ又は前記第2スイッチの制御端子に印加されている電圧を読み取り、前記読み取った電圧の電圧値が閾値以下である場合に、前記第1スイッチ又は前記第2スイッチがオフ状態であると判定する。
【0012】
本発明の一態様は、上述の電磁弁駆動装置であって、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチはMOSFETである。
【0013】
本発明の一態様は、上述の電磁弁駆動装置であって、前記電磁弁は、内燃機関において燃料を噴射する燃料噴射弁である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、同期整流制御において、ダイオードによる発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Aの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御部3の概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Aにおける同期整流制御の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置を、図面を用いて説明する。
本実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Aは、燃料噴射弁Lを駆動する駆動装置である。すなわち、本実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Aは、車両に搭載された内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁L(電磁弁)を駆動する電磁弁駆動装置である。
【0017】
図1に示すように、燃料噴射弁駆動装置Aは、昇圧回路1、駆動回路2、及び制御部3を備える。
【0018】
昇圧回路1は、車両に搭載されたバッテリBTから入力されるバッテリ電圧VBを所定の目標電圧(昇圧電圧Vc)に昇圧する昇圧動作を実行可能なチョッパ回路である。昇圧回路1は、この昇圧動作を実行することによりバッテリ電圧VBから所定の昇圧電圧Vcを生成する。この昇圧回路1は、昇圧比が例えば十〜数十程度であり、制御部3によって昇圧動作が制御される。なお、昇圧回路1は、同期整流及び非同期整流の双方の機能を備えている。ここで、バッテリ電圧VBは、本発明の「入力電圧」の一例である。
【0019】
駆動回路2は、制御部3からの駆動信号に基づいて、バッテリ電圧VB又は昇圧電圧Vcを燃料噴射弁Lに供給する。例えば、駆動回路2は、制御部3から第1の駆動信号を取得した場合には、昇圧電圧Vcを燃料噴射弁Lに供給することで燃料噴射弁Lを開弁させる。また、駆動回路2は、制御部3から第2の駆動信号を取得した場合には、バッテリ電圧VBを燃料噴射弁Lに供給することで開弁後の燃料噴射弁Lの開弁状態を保持する。
【0020】
制御部3は、上位制御系から入力される指令信号に基づいて昇圧回路1、及び駆動回路2を制御する、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)である。
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係る昇圧回路1の構成を、図2を用いて具体的に説明する。
【0022】
図2に示すように、昇圧回路1は、シャント抵抗11、インダクタ12、第1スイッチ13、第2スイッチ14、整流用ダイオード15、及び出力コンデンサ16を備える。
【0023】
シャント抵抗11は、一端がバッテリBTのプラス端子に接続され、他端がインダクタ12の一端に接続されている。
【0024】
インダクタ12の他端は、第1スイッチ及び第2スイッチに接続されている。また、インダクタの他端は、整流用ダイオード15のアノードに接続されている。
【0025】
第1スイッチ13は、MOSFETである。第1スイッチ13は、ドレイン端子がインダクタ12の他端に接続され、ソース端子がバッテリBTのマイナス端子に接続されている。また、第1スイッチ13のゲート端子(制御端子)は、制御部3に接続されている。
【0026】
第2スイッチ14は、MOSFETである。第2スイッチ14は、ソース端子がインダクタ12の他端及び第1スイッチ13のドレイン端子に接続され、ドレイン端子が出力コンデンサ16の一端に接続されている。また、第2スイッチ14のゲート端子(制御端子)は、制御部3に接続されている。この第2スイッチ14は、昇圧回路1における同期整流素子であって、オン抵抗の小さいMOSFETである。
【0027】
整流用ダイオード15は、第2スイッチ14と並列に接続されている。すなわち、整流用ダイオード15は、アノードが第2スイッチ14のソース端子に接続され、カソードが第2スイッチ14のドレイン端子に接続されている。なお、整流用ダイオード15は、昇圧回路1における非同期整流素子である。
【0028】
出力コンデンサ16の一端は、整流用ダイオード15のカソード、第2スイッチ14のドレイン端子、及び駆動回路2に接続される。また、出力コンデンサ16の他端は、バッテリBTのマイナス端子に接続されている。
【0029】
以下に、本発明の一実施形態に係る制御部3の構成を、図2を用いて具体的に説明する。
【0030】
制御部3は、電流検出部31、状態検出部32、昇圧制御部33、電圧検出部34、及び駆動制御部35を備える。
【0031】
電流検出部31は、シャント抵抗11を介してインダクタ12を流れる電流値(以下、「充電電流値」という。)を検出する。具体的には、電流検出部31は、シャント抵抗11の両端の電位差を計測することで、充電電流値を検出する。
【0032】
状態検出部32は、第1スイッチ13及び第2スイッチ14のオン状態又はオフ状態を検出する。すなわち、状態検出部32は、第1スイッチ13がオン状態及びオフ状態のいずれかの状態であるかを検出する。また、状態検出部32は、第2スイッチ14がオン状態及びオフ状態のいずれかの状態であるかを検出する。
【0033】
例えば、状態検出部32は、第1スイッチ13のゲート端子に接続されており、このゲート端子の電圧(以下、「ゲート電圧」という。)Vg1を取得する。そして、状態検出部32は、取得した第1スイッチ13のゲート電圧Vg1が第1閾値Vth1以上である場合には、第1スイッチ13がオン状態であると判定する。この第1閾値Vth1は、第1スイッチ13をオン状態にさせるために必要なゲート電圧である。
また、状態検出部32は、取得した第1スイッチ13のゲート電圧Vg1が第2閾値Vth2(<第1閾値Vth1)以下である場合には、第1スイッチ13がオフ状態であると判定する。この第2閾値Vth2は、第1スイッチ13がオフ状態となるゲート電圧である。
【0034】
例えば、状態検出部32は、第2スイッチ14のゲート端子に接続されており、このゲート端子のゲート電圧Vg2を取得する。そして、状態検出部32は、取得した第2スイッチ14のゲート電圧Vg2が第3閾値Vth3以上である場合には、第2スイッチ14がオン状態であると判定する。この第3閾値Vth3は、第2スイッチ14をオン状態にさせるために必要なゲート電圧である。
また、状態検出部32は、取得した第2スイッチ14のゲート電圧Vg2が第4閾値Vth4(<第3閾値Vth3)以下である場合には、第2スイッチ14がオフ状態であると判定する。この第4閾値Vth4は、第2スイッチ14がオフ状態となる電圧である。
【0035】
昇圧制御部33は、第1スイッチ13及び第2スイッチ14のゲート端子のそれぞれに接続されている。昇圧制御部33は、第1スイッチ13及び第2スイッチ14のオン状態又はオフ状態を制御することで、昇圧回路1の昇圧動作を実行させる。具体的には、昇圧制御部33は、第1制御信号を第1スイッチ13のゲート端子に出力することで、第1スイッチ13をオン状態に制御する。なお、第1制御信号とは、第1閾値Vth1以上の電圧である。昇圧制御部33は、第2制御信号を第2スイッチ14のゲート端子に出力することで、第2スイッチ14をオン状態に制御する。なお、第2制御信号とは、第3閾値Vth3以上の電圧である。
【0036】
ここで、本実施形態に係る昇圧制御部33の特徴の一つは、状態検出部32により検出された第1スイッチ13又は第2スイッチ14の状態に応じて、第1スイッチ13及び第2スイッチ14のスイッチングを同期整流制御し、昇圧動作を実行させることである。すなわち、昇圧制御部33は、第1スイッチ13が確実にオフ状態になったことを確認し、その確認後に第2スイッチ14をオン状態に制御する。これにより、タイマを用いずに第1スイッチ13及び第2スイッチ14が同時にオン状態になることを防止することができる。
【0037】
電圧検出部34は、昇圧回路1から出力される電圧、すなわち、昇圧電圧Vcを検出する。例えば、電圧検出部34は、出力コンデンサ16の一端から出力される電圧(昇圧電圧Vc)を、抵抗分圧して取得することで昇圧電圧Vcを検出する。電圧検出部34は、検出した昇圧電圧Vcを駆動制御部35に出力する。
【0038】
駆動制御部35は、駆動回路2を制御する。具体的には、駆動制御部35は、電圧検出部34が検出した昇圧電圧Vcが所定値以上になった場合には、駆動回路2に第1の駆動信号を出力する。
【0039】
また、駆動制御部35は、開弁後において、燃料噴射弁Lの開弁を保持するために、当第2の駆動信号を駆動回路2に出力する。
【0040】
以下に、本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Aの動作について、詳しく説明する。まず、燃料噴射弁駆動装置Aの燃料噴射弁Lに対する動作について説明する。
【0041】
燃料噴射弁駆動装置Aで燃料噴射弁Lを閉弁状態から開弁状態に駆動する場合、駆動制御部35は、昇圧回路1が生成する昇圧電圧Vcを燃料噴射弁Lに供給する。したがって、まず、昇圧制御部33は、第1スイッチ13及び第2スイッチ14のスイッチングを同期整流制御することで昇圧回路1に対して昇圧動作を実行させ昇圧電圧Vcを発生させる。
【0042】
そして、駆動制御部35は、電圧検出部34が検出した昇圧電圧Vcが所定値以上になった場合には、昇圧電圧Vcを燃料噴射弁Lに供給する。この結果、ピーク状の立ち上がり電流が燃料噴射弁Lに流れる。このようなピーク状の立ち上がり電流は、燃料噴射弁Lの開弁動作を高速化するものである。
【0043】
駆動制御部35は、燃料噴射弁Lが開弁すると、燃料噴射弁Lの開弁状態を保持するために、昇圧電圧Vcよりも低い電圧であるバッテリ電圧BTを燃料噴射弁Lに供給する。この結果、燃料噴射弁Lの開弁状態を保持される。
【0044】
次に、燃料噴射弁駆動装置Aにおける同期整流制御の動作について、図3を用いて説明する。
【0045】
まず、昇圧制御部33は、第2スイッチ14がオフ状態である場合に、第1スイッチ13をオン状態にするために、第1スイッチ13のゲート端子に第1制御信号を出力する(ステップS101)。これにより、第1スイッチ13のゲート電圧Vg1が上昇し、当該ゲート電圧Vg1が第1閾値Vth1以上となると、オン状態となる。これにより、バッテリ電圧BTがインダクタ12に印加され、当該インダクタ12にエネルギーが蓄積される。
【0046】
昇圧制御部33は、第1制御信号を出力した後、電流検出部31で検出される充電電流値が予め設定された電流上限閾値に到達したか否かを判定する(ステップS102)。昇圧制御部33は、電流検出部31で検出される充電電流値が電流上限閾値に到達したと判定した場合には、第1スイッチ13をオフ状態に制御するために第1制御信号の出力を停止する(ステップS103)。一方、昇圧制御部33は、電流検出部31で検出される充電電流値が電流上限閾値に到達していないと判定した場合には、第1制御信号の出力を継続し、再度ステップS102の処理を行う。
【0047】
昇圧制御部33により第1制御信号の出力が停止されると、ゲート電圧Vg1の電圧値が徐々に低下し、第2閾値Vth2以下となった時点で、第1スイッチ13がオフ状態となる。そこで、状態検出部32は、昇圧制御部33により第1制御信号の出力が停止されると、第1スイッチ13のゲート電圧Vg1を一定周期で取得し(ステップS104)、その取得したゲート電圧Vg1が第2閾値Vth2以下であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0048】
状態検出部32は、ゲート電圧Vg1が第2閾値Vth2以下であると判定した場合には、第1スイッチ13がオン状態からオフ状態になったと判定する。そして、昇圧制御部33は、状態検出部32により第1スイッチ13がオン状態からオフ状態になった判定されると、第2スイッチ14をオン状態に制御するために第2制御信号を出力する(ステップS106)。これにより、第2スイッチ14のターンオン時において、タイマを用いずに、第1スイッチ13及び第2スイッチ14が同時にオン状態になることを防止することができる。すなわち、第2スイッチ14のターンオン時において、デットタイム期間を必要以上に長く設定することなく、第1スイッチ13及び第2スイッチ14が同時にオン状態になることを防止することができる。
【0049】
第2スイッチ14に第2制御信号が出力されると、ゲート電圧Vg2の電圧値が徐々に上昇し、第3閾値Vth3以上となった時点で、第2スイッチ14がオン状態となる。ここで、第2スイッチ14がオン状態となるまでは、インダクタ12に蓄積されたエネルギーが整流用ダイオード15を介して出力コンデンサ16に供給される。そして、第2スイッチ14がオン状態となった時点で、インダクタ12に蓄積されたエネルギーが第2スイッチ14を介して出力コンデンサ16に供給される。
【0050】
昇圧制御部33は、第2制御信号を出力した後、電流検出部31で検出される充電電流値が予め設定された電流下限閾値(<電流上限閾値)以下になったか否かを判定する(ステップS107)。昇圧制御部33は、電流検出部31で検出される充電電流値が電流下限閾値以下になったと判定した場合には、第2スイッチ14をオフ状態に制御するために第2制御信号の出力を停止する(ステップS108)。一方、昇圧制御部33は、電流検出部31で検出される充電電流値が電流下限閾値以下になっていないと判定した場合には、第2制御信号の出力を継続し、再度ステップS107の処理を行う。
【0051】
昇圧制御部33により第2制御信号の出力が停止されると、ゲート電圧Vg2の電圧値が徐々に低下し、第4閾値Vth4以下となった時点で、第2スイッチ14がオフ状態となる。そこで、状態検出部32は、昇圧制御部33により第2制御信号の出力が停止されると、第2スイッチ14のゲート電圧Vg2を一定周期で取得し(ステップS109)、その取得したゲート電圧Vg2が第4閾値Vth4以下であるか否かを判定する(ステップS110)。そして、状態検出部32は、ゲート電圧Vg2が第2閾値Vth2以下であると判定した場合には、第2スイッチ14がオン状態からオフ状態になったと判定する。
【0052】
昇圧制御部33は、状態検出部32により第2スイッチ14がオン状態からオフ状態になったと判定されると、ステップS101の処理に戻り、第1スイッチ13をオン状態に制御するために第1制御信号を出力する。これにより、第1スイッチ13のターンオン時においても、タイマを用いずに、第1スイッチ13及び第2スイッチ14が同時にオン状態になることを防止することができる。すなわち、第1スイッチ13のターンオン時においても、デットタイム期間を必要以上に長く設定することなく、第1スイッチ13及び第2スイッチ14が同時にオン状態になることを防止することができる。
【0053】
以上、説明したように、本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Aは、第1スイッチ13及び第2スイッチ14のオン状態又はオフ状態を検出する状態検出部32と、状態検出部32により検出された第1スイッチ13又は第2スイッチ14の状態に応じて第1スイッチ13及び第2スイッチ14のスイッチングを同期整流制御する。
【0054】
このような構成によれば、デットタイム期間をタイマで設定する必要がないため、デットタイム期間を必要以上に長くなることがない。これにより、インダクタ12に蓄積されたエネルギーが整流用ダイオード15を介して出力コンデンサ16に供給される時間を短縮することが可能となる。そのため、同期整流制御において、整流用ダイオード15による発熱を抑制することが可能となり、整流用ダイオード15の損失低減に対して効果を上げることが可能となる。
【0055】
さらに、整流用ダイオード15の損失が低減することで、出力コンデンサ16への充電効率を向上させることができるため、昇圧回路1の昇圧復帰能力を向上させることができる。この昇圧復帰能力とは、燃料噴射弁Lの開弁より低下した昇圧電圧Vcを、再度燃料噴射弁Lを開弁させるために必要な電圧値(所定値)まで上昇させることである。すなわち、燃料噴射弁駆動装置Aは、燃料噴射弁Lの開弁より低下した昇圧電圧Vcを、再度所定値まで上昇させる時間を短縮させることが可能となり、多段噴射の性能向上に寄与する。
【0056】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0057】
上記実施形態では、第1スイッチ13及び第2スイッチ14がMOSFETである場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1スイッチ13及び第2スイッチ14は、IGBT(Insulated gate bipolar transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やリレー等であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
A 燃料噴射弁駆動装置
1 昇圧回路
2 駆動回路
3 制御部
12 インダクタ
13 第1スイッチ
14 第2スイッチ
15 整流用ダイオード
16 出力コンデンサ
31 電流検出部
32 状態検出部
33 昇圧制御部
34 電圧検出部
35 駆動制御部
L 燃料噴射弁
図1
図2
図3