特許第6987045号(P6987045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987045
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】エンコーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   G01D5/347 110L
   G01D5/347 110T
【請求項の数】26
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-512563(P2018-512563)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公表番号】特表2018-530751(P2018-530751A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】GB2016052781
(87)【国際公開番号】WO2017042570
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】15184459.4
(32)【優先日】2015年9月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン スラック
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジェームズ ベイル
【審査官】 岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−220460(JP,A)
【文献】 特表2005−526951(JP,A)
【文献】 特表2012−519297(JP,A)
【文献】 特開2012−168177(JP,A)
【文献】 特表2012−519296(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0181122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/62
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を回折するように構成された一連の概して周期的なフィーチャを含む少なくとも1つのトラックを含むインクリメンタルスケールと、前記スケールおよび読取ヘッドの相対位置を決定するために使用されるセンサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドと、を含むエンコーダ装置であって、前記スケール信号は、干渉縞を含み、前記装置は、前記センサの長さに沿った前記センサの出力が、前記スケール信号における望ましくない周波数の悪影響を低減しそれによってエンコーダ装置のサブディビジョナルエラーを低減するように構成された窓関数によって、重み付けされるように構成され、前記重み付けは、決定される相対位置に及ぼす前記センサの出力の影響が、前記センサの端部に向かって主に低減するように構成されることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記窓関数による前記重み付けは、前記センサの空間周波数応答のサイドローブを抑制するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記センサの空間周波数応答の少なくともプライマリサイドローブの大きさは、前記センサの空間周波数応答のメインローブの大きさの10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記重み付けは、前記決定される相対位置に及ぼす前記センサからの出力の影響が前記センサの端部に向かって一般に漸進的に低減するように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記決定される相対位置に及ぼす前記センサの出力の影響は、前記センサの中央3分の1において、前記センサの外側3分の1におけるよりも、実質的に大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記センサの端部に向かう前記センサの影響は、前記センサの中央に向かう前記センサの出力の影響の25%以下であるように構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記重み付けは、前記センサに到達する信号を制限することによって達成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記センサの幅は、前記センサの端部に向かって主に低減することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記重み付けは、前記センサによって検出可能な前記スケール信号が前記センサの端部に向かって低減するように前記センサ素子に到達する前記スケール信号を制限するように構成される少なくとも1つの信号制限部材によって達成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記重み付けは、前記センサに到達する前記スケール信号を部分的にブロックすることによって達成されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記重み付けは、非矩形の形状を有するマスクによって達成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
マスクと相隔てられた光源を含み、および前記スケールに近づくおよび/または前記スケールから離れる光は、前記センサによって検出可能な信号のフットプリントを形成するように前記マスクを通過するように構成されることを特徴とする請求項11に記載のエンコーダ装置。
【請求項13】
前記マスクは、前記センサ上に直接形成されることを特徴とする請求項11または12に記載のエンコーダ装置。
【請求項14】
前記センサの出力は、釣鐘状の窓関数によって、重み付けされるように構成されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項15】
前記読取ヘッドは、前記スケールを照射するように構成された、光源を含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項16】
前記読取ヘッドは、非コリメート光で前記スケールを照射するように構成された、光源を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項17】
前記読取ヘッドは前記スケールを照射するためのコヒーレント光源を含むことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項18】
前記光源のスペクトルバンド幅は1nm以下であることを特徴とする請求項17に記載のエンコーダ装置。
【請求項19】
前記スケール信号はフリンジ領域を含むことを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項20】
前記フリンジ領域は干渉縞を含むことを特徴とする請求項19に記載のエンコーダ装置。
【請求項21】
前記読取ヘッドは前記干渉縞を生成するための1つまたは複数の回折格子を含むことを特徴とする請求項20に記載のエンコーダ装置。
【請求項22】
前記センサは、2セット以上の櫛の歯状のセンサ素子を含む電気格子を含み、各セットは、前記フリンジ領域の異なる位相を検出するように構成されることを特徴とする請求項19から21のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項23】
前記読取ヘッドは、前記スケール上の少なくとも1つの基準マークを検出するための少なくとも1つの別個の基準マークセンサをさらに含み、前記少なくとも1つの基準マークセンサは、前記センサ素子の配列内に位置付けられていないことを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項24】
前記センサ素子の配列はセンサ素子の連続的配列であることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項25】
前記窓関数の形状は実質的には三角形または釣鐘状であることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項26】
前記望ましくない周波数は、前記干渉縞における非高調波成分に起因することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置、特に、互いに関して移動可能なスケールおよび読取ヘッドを含む位置測定エンコーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、位置測定エンコーダ装置は、典型的には、相対位置(および速度および/または加速度のようなその派生物)を決定および測定するために読取ヘッドが読み取ることのできる一連のフィーチャを有するスケールを含む。エンコーダは、典型的には、インクリメンタルまたはアブソリュートのいずれかであるとして分類される。インクリメンタルエンコーダ(レニショー株式会社(Renishaw plc)から入手可能であり、以下に、より詳細に記載されるTONiC(商標)エンコーダなど)用のスケールは、スケールおよび読取ヘッドの相対位置および移動を決定するために読取ヘッドが検出する一連の一般に周期的なフィーチャを含む。スケールおよび読取ヘッドの相対位置をそこからカウントすることができる基準位置を提供するために、1つまたは複数の基準マークをスケールに設けることができる。アブソリュートエンコーダ(レニショー株式会社から入手可能であり、以下に、より詳細に記載されるRESOLUTE(商標)エンコーダなど)用のスケールは、スケール長に沿った一意的な位置、例えば一連の一意的なアブソリュート位置を定義するフィーチャを含み、読取ヘッドが起動時に何ら相対運動を必要とせずにそのアブソリュート位置を決定することを可能にすることができる。
【0003】
本発明者らは、改善されたエンコーダ、特に、精度が改善されたエンコーダを提供することを望んだ。
【0004】
位置測定エンコーダの分野においてよく知られているように、サブディビジョナルエラー(sub-divisional error:SDE)は、スケールフィーチャの読取値の内挿法の不備に起因して起こる。そのような不備は、読取値が処理される方法に起因する可能性があり、および/または読取ヘッドによって検出される信号が不完全であることに起因する可能性がある。読取ヘッドによって検出される信号は、数多くの理由により、例えば、次善の光学部品、光学部品の次善の配列、スケール上の汚れ、および/または基準マーク、例えば埋め込まれた基準マークに起因して、不完全である可能性がある。SDEは、決定される位置の精度に悪影響を与える。また、SDEは、一般に、「内挿誤差」として知られている。本明細書において、用語SDEおよび内挿誤差を、交換可能に用いることができる。理解されるように、エンコーダ装置のSDEは、スケールの範囲に沿って(例えば、線形エンコーダに関してその長さに沿って、または回転式エンコーダに関して軸の周りにおいて)変化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/139964号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、例えば、例えばSDEは読取ヘッドのセンサに当たる信号の不備によって引き起こされるというようなエンコーダ装置のSDEを低減させることによってエンコーダ装置の出力を改善するための構成を提供する。これは、センサに当たる信号のそのような不備に対してエンコーダ装置を低感受性にするように(例えば、いくつかの実施形態において、フィルタリング効果を及ぼすように)構成された所定の窓関数によってセンサ(例えば、その出力)がその長さに沿って重み付けされる(例えば、センサのセンサ素子の出力が重み付けされる)ようにエンコーダ装置を構成することによって実現される。
【0007】
例えば、本明細書には、スケールと、センサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドと、を含み、スケールおよび読取ヘッドの相対位置(例えば、スケール周期内まで)を決定するために使用されるセンサ素子の出力が、スケール信号における(例えば、フィルターの)望ましくない周波数の悪影響を低減しそれによってエンコーダ装置のサブディビジョナルエラーを低減するように構成された所定の非矩形の窓関数によって、スケールおよび読取ヘッドの決定される相対位置に及ぼすセンサ素子の影響が配列に亘って変化するように、重み付けされるように構成された、エンコーダ装置が記載されている。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、スケールと、スケールおよび読取ヘッドの相対位置(例えば、スケール周期内まで)を決定するために使用されるセンサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドと、を含むインクリメンタルエンコーダ装置があり、装置は、その長さに沿ったセンサの出力が、(例えば、それによってエンコーダ装置のサブディビジョナルエラーを低減させるように)スケール信号における望ましくない周波数の悪影響を低減させるように構成された(所定の)窓関数によって、重み付けされるように構成され、前記重み付けは、決定される相対位置に及ぼすセンサ出力の影響がセンサの端部に向かって主に低減するように構成される。
【0009】
望ましくない周波数の存在がエンコーダ装置の測定性能に及ぼす悪影響を著しく低減させるように、センサ素子の重み付けられていない/矩形の配列を使用するよりもむしろ、非矩形の窓関数を、センサ素子の出力を重み付けするために使用することができることが見出された。そのような重み付けは、前記望ましくない周波数を実質的にフィルタリングするように構成されてもよい。特に、そのような重み付けの使用は、そのような望ましくない周波数に対するエンコーダ装置の感度を低減させる効果を有することが見出された。従って、そのような重み付けをエンコーダ装置のSDEを低減するために使用することができ、これは延いてはエンコーダ装置の精度を改善することができる。リサジュー(Lissajous)を生成するために使用することができる直交信号を含むインクリメンタルエンコーダの場合は、SDEの低減は、リサジューの循環性(circularity)を改善する。
【0010】
理解されるように、「望ましくない周波数」であるとみなされるそれらの周波数は、エンコーダ装置によって異なることとなる。それにもかかわらず、理解されるように、「望ましくない周波数」によって意味されるものは、エンコーダ装置のSDEの一因となる周波数である。例えば、望ましくない周波数は、スケール信号の少なくとも1つの成分周波数のセンサの範囲の全体に非整数のサイクル数の存在をもたらす周波数を含み得る。例えば、センサに当たる信号の少なくとも1つの成分周波数のそのような非整数のサイクル数は、例えば、(例えば、イメージに基づくシステムにおける)イメージ拡大、または、最低地上高(rideheight)によって変化し得る(例えば、回折に基づくシステムにおける)フリンジとセンサの周期不整合に起因することがあり、および/または信号における非高調波成分の存在に起因することがある。センサが2セット以上の櫛の歯状の(interdigitated)
【0011】
/交互配置された(interleaved)センサ素子の繰り返し配列を含む実施形態(例えば、多重チャネルを有するインクリメンタル検出器)において、望ましくない周波数は、繰り返しの周波数の非整数倍(non-integer multiples)である周波数を含み得る。これらは、本発明の実施形態の具体例に関連して以下により詳細に説明される。従って、本発明による重み付けは、スケール信号の少なくとも1つの成分周波数のセンサの範囲の全体における非整数のサイクル数の存在に対するエンコーダ装置の感度を低減することができる。
【0012】
理解されるように、(例えば、所定の非矩形)窓関数による、センサの(例えば、センサ素子の出力の)そのような重み付けを、センサの(例えば、空間)周波数応答のサイドローブを抑制するように構成することができる。好ましくは、窓関数は、センサの(例えば、空間)周波数応答の少なくともプライマリサイドローブの大きさが、メインローブの大きさの10%以下、より好ましくは5%以下、例えば2.5%以下、例えば1%以下であるように構成(例えば、形成)される。理解されるように、センサの周波数応答を、センサ反応性/応答性の空間フーリエ変換によって決定/として定義することができる。
【0013】
理解されるように、本発明を、様々な適切な重み付けスキームによって実現することができる。任意選択的に、センサ出力は、決定される位置に及ぼすセンサからの出力の影響がセンサの端部に向かって概して漸進的に低減するように、重み付けされる(例えば、センサ素子の出力が重み付けされる)。任意選択的に、前記低減は、なだらか、換言すれば連続的である。
【0014】
任意選択的に、重み付けは、センサの中央が、決定される位置に最も大きな影響を及ぼす(例えば、決定される位置にセンサの中心に向かう(における)センサ素子が最も大きな影響を及ぼす)ように構成される。換言すれば、任意選択的に、前記影響は、センサの中心に向かって(例えば、センサの中心において)ピークに達する。理解されるように、重み付けは、センサの中央およびその近くの複数のセンサ素子が同一の影響を及ぼすように構成され得る(例えば、窓関数がその中心に平坦領域を有するように)。任意選択的に、重み付けは、前記窓がセンサの中心線に関して実質的に対称であるように構成される。任意選択的に、出力は、センサ素子の出力が決定される位置に及ぼす影響に低下/減少傾向があるように(例えば、配列の中央の/に近い位置から配列の端部に向かって)重み付けされる。
【0015】
任意選択的に、センサの出力は、センサの端部に向かう(例えば、センサの端部における)センサの影響がセンサの中央に向かう(例えば、センサの中央における)センサの影響のたかだか25%であるように、決定される位置に及ぼすセンサからの出力の影響がセンサの端部に向かって一般に漸進的に低減するように、重み付けされる。換言すれば、任意選択的に、センサ素子の出力は、センサの端部に向かう(例えば、センサの端部における)センサ素子の影響がセンサの中央に向かう(例えば、センサの中央における)センサ素子の影響のたかだか25%であるように、決定される位置に及ぼすセンサ素子からの出力の影響がセンサの端部に向かって一般に漸進的に低減するように重み付けされる。
【0016】
センサを、概念上、セグメントまたはポーションに区切ることができ、および決定される相対位置に及ぼすセンサの影響は、その長さに沿ったセグメントまたはポーションによって異なり得る。任意選択的に、センサを、概念上、その長さに沿った3つの実質的に等しいセグメント/ポーションに区切ることができ、換言すれば、3分の1に区切ることができる。任意選択的に、決定される相対位置に及ぼすセンサ出力の影響は、センサの中央3分の1において、センサの外側3分の1におけるよりも大きい。例えば、外側3分の1の影響は、それぞれ、中央3分の1の影響のたかだか50%であり得る。任意選択的に、センサを、概念上、その長さに沿った5つの実質的に等しいセグメント/ポーションに区切ることができ、換言すれば、その長さに沿って5分の1に区切ることができる。任意選択的に、決定される相対位置に及ぼすセンサ出力の影響は、センサの中央5分の1において、センサの外側5分の1よりも大きい。例えば、外側5分の1の影響は、それぞれ、中央5分の1の影響のたかだか30%であり得る。この場合において、任意選択的に、決定される相対位置に及ぼすセンサ出力の影響は、センサの中央5分の1において、中央5分の1の両側のセンサの隣接する5分の1よりも大きい。
【0017】
前記重み付けを、センサ素子の出力を操作することによって達成することができる。例えば、前記重み付けを、1つまたは複数の減衰器(例えば、レジスタ)および/または1つまたは複数の増幅器(例えば、演算増幅器)を使用してセンサ素子の出力を抑制および/または増幅することによって達成することができる。任意選択的に、重み付けを、センサ素子を欠落させることによって(by missing out)達成することができる。例えば、センサ素子の周期的な配列を有するセンサ素子の配列において、重み付けを、1つまたは複数のセンサ素子を欠落させることによって実現することができる。
【0018】
任意選択的に、前記重み付けを、センサ(例えば、センサ素子)が検出し得る信号を制限することによって達成することができる。例えば、読取ヘッドを、センサ(例えば、センサ素子)が検出し得る信号をセンサの端部に向かって概して漸進的に制限するように構成することができる。これは、センサに当たるスケール信号のフットプリントを構成することによって実現され得る。任意選択的に、例えば前記制限の範囲がセンサの端部に向かって漸進的に増大するように、配列に亘って量を変化させることによって、センサ素子に到達するスケール信号の(例えば、量/電力/強度/大きさ)を制限するように構成された信号操作/制限部材が提供される。換言すれば、信号操作/制限部材を、センサに当たるスケール信号の量が、センサの端部に向かって、例えばセンサ素子の配列の端部に向かって、漸進的に低減するように構成することができる。任意選択的に、これは、例えばブロッキングの範囲がセンサの端部に向かって漸進的に増大するように、換言すれば、センサに当たるスケール信号の量がセンサの端部に向かって例えばセンサ素子の配列の端部に向かって漸進的に低減するように、配列に亘って量を変更することによって、センサ(例えば、センサ素子)に到達するスケール信号をブロックするように構成された信号ブロッキング部材を提供することによって実現され得る。任意選択的に、エンコーダ装置は、非矩形の形状を有するマスク(換言すれば、物理的な窓)を含む。換言すれば、マスクは、スケール信号がセンサに到達するように通過することのできる非矩形の形状の開口部を有し得る。エンコーダ装置が光学エンコーダ装置である実施形態において、マスクは、センサによって検出可能な信号のフットプリントを形成するように、光源と相隔てられおよびスケールに近づくまたはスケールから離れる光が通過することのできる非矩形の開口部を含むことができる。任意選択的に、マスクは、センサに(例えば、センサ素子に)直接形成される(換言すれば、設けられる)。例えば、マスクは、センサの上面に(例えば、センサ素子の上面に)堆積された(deposited)層(例えば、金属化ポリマー層)を含むことができる。任意選択的に、エンコーダ装置は、光源を含む照射システムを含む。任意選択的に、光源から離間された少なくとも1つの光操作/制限部材が、提供され、および、センサによって検出可能な光の有効なフットプリントはセンサの端部に向かってサイズが主に低減するように構成される。
【0019】
任意選択的に、センサの形状および/またはサイズを、センサが検出する信号の量をセンサの端部に向かって概して漸進的に制限するように構成することができる(例えば、センサの幅はセンサの端部に向かって減少し得る)。換言すれば、任意選択的に、センサ素子の形状および/またはサイズを、センサ素子が検出する信号の量をセンサの端部に向かって概して漸進的に制限するように構成することができる(例えば、それらはセンサの端部に向かって小さく、例えば長さが短くなり得る)。
【0020】
任意選択的に、その長さに沿ったセンサ出力の重み付けは、決定される位置に及ぼす出力の影響が、配列の端部に向かって非線形的に低減するように構成される。換言すれば、任意選択的に、センサ素子出力の重み付けは、決定される位置に及ぼすそれらの影響が、配列の端部に向かって非線形的に低減するように構成される。従って、好ましくは、窓関数の形状は、辺が直線状の三角形ではない。換言すれば、決定される位置に及ぼすセンサ出力の影響がセンサの端部に向かって低減する全般的な割合は一定ではない(換言すれば、低減の割合の局部的な傾向は一定ではない)ということであり得る。重み付けは、決定される位置に及ぼすセンサ出力の影響がセンサの端部に向かって次第に小さくなる(換言すれば、徐々に減少する)ように構成されることが好ましいことがあり得る。
【0021】
任意選択的に、その長さに沿ったセンサ出力の重み付け(例えば、センサ素子の出力の重み付け)は、決定される位置に及ぼすセンサの影響の低減の割合が、センサの端部に向かって低減するように構成される。換言すれば、任意選択的に、低減の割合の局部的な傾向は、配列の端部に向かって低減する。好ましくは、その長さに沿ったセンサ出力の重み付けは、決定される位置に及ぼすセンサ出力の影響の低減の割合が、センサの中心からセンサの端部に向かって、最初は増大し、次いでセンサの端部に向かって低減するように構成される。換言すれば、影響の低減の割合の局部的な傾向は、最初は増大し、次いで低減する。別の言い方をすれば、重み付けの傾斜/勾配は、センサの中央から離れて最初は増大し、それからセンサの端部に向かって低減する。例えば、窓/重み付けの勾配(例えば、フォトダイオードが次第にブロックされる割合)は、センサの中央およびその近くで相対的に緩く、次いでセンサの中央から離れるにつれて急になり、それからセンサの端部の近くで再び緩くなる。従って、センサ出力の重み付けは、窓関数の概略的な形状がほぼ釣鐘状であるようなものであり得る。例えば、任意選択的に、センサ素子の出力は、以下の関数:カイザー(Kaiser)、ハン(Hann)、ハミング(Hamming)、ウェルチ(Welch)、チェビシェフ(Chebyshev)、余弦(Cosine)、スレピアン(Slepian)、ガウス(Gaussian)、ランチョス(Lanczos)、パルツェン(Parzen)、ブラックマン(Blackman)、ナットール(Nuttall)、テューキー(Tukey)またはそれらの任意の混成物のうちの1つに従って重み付けされる。
【0022】
エンコーダ装置は、光学エンコーダと一般にいわれるものであり得る。読取ヘッドは、スケールを照射するように構成された光源を含むことができる。スケール信号は、光領域を含み得る。任意選択的に、エンコーダ装置は、非コリメート光(non-collimated light)でスケールを照射するように構成される。読取ヘッドは、スケールを照射するためのコヒーレント光源を含むことができる。任意選択的に、光源のスペクトルバンド幅は、1nm以下、例えば0.5nm以下、例えば0.2nm以下、例えばほぼ0.1nmである。
【0023】
エンコーダ装置は、インクリメンタルエンコーダ装置を含み得る。従って、スケールは、インクリメンタルスケールを含み得る。スケールは、一連の(一般に)周期的に配列されたフィーチャを含む少なくとも1つのトラックを含み得る。理解されるように、前記少なくとも1つのトラックに隣接するまたは埋め込まれた1つまたは複数の基準フィーチャが提供され得る。
【0024】
任意選択的に、スケール信号(例えば、光領域)はフリンジ(例えば、フリンジ領域)を含む。フリンジは、干渉縞を含み得る。読取ヘッドは、前記干渉縞を生成するための1つまたは複数の回折格子を含むことができる。例えば、1つまたは複数の回折格子は、前記干渉縞を生成するように、スケールに向かう/からの光と相互作用することができる。任意選択的に、読取ヘッドは、前記干渉縞を生成するように、スケールから離れる光と相互作用するように構成された回折格子を含む。任意選択的に、スケールは、光を回折するように構成された一連のフィーチャを含む。任意選択的に、前記干渉縞は、スケールおよび回折格子からの光の回折される次数(diffracted orders)の再結合によって(および任意選択的にその次数で)生み出される。従って、任意選択的に、スケール前の光路には、回折格子が無い。理解されるように、読取ヘッドは必ずしも回折格子を含む必要はない。例えば、読取ヘッドは、以下により詳細に記載されるように、スケールのイメージを検出し得る。
【0025】
任意選択的に、センサは、2セット以上の櫛の歯状の/交互配置されたセンサ素子を含む電気格子(electrograting)を含み、各セットは、干渉縞の異なる位相を検出するように構成されている。各セットは、チャンネルと称され得る。好ましくは、センサ(例えば、電気格子)は、エイリアスを生じない。換言すれば、好ましくは、各セットにおけるセンサ素子間の距離(例えば、チャンネル)は、公称で、1つのフリンジ周期である。任意選択的に、スケール信号は、スケールのイメージを含む。従って、読取ヘッドを、センサ上にスケールを描くように構成することができる。任意選択的に、読取ヘッドは、センサ上にスケールのイメージを形成するように構成された1つまたは複数のレンズを含む。任意選択的に、センサは、前記イメージを撮像するように構成される。
【0026】
任意選択的に、スケール信号は、センサ素子と整列していない、例えばセンサ素子に対して非平行に延びる、フィーチャを含む。任意選択的に、スケール信号は、非平行フィーチャを含む。任意選択的に、スケール信号は、扇型(fanned)フィーチャを含む。任意選択的に、スケールは、ディスクスケールを含む。任意選択的に、前記ディスクスケールは、ディスクの表面に配列されたスケールフィーチャを含む。任意選択的に、前記スケールフィーチャは、スケールおよび読取ヘッドが読取位置にあるときに、センサ素子に関して整列していない(例えば、非平行である)。任意選択的に、前記スケールフィーチャは、扇形である。前記スケールフィーチャは、インクリメンタルスケールフィーチャおよび/またはアブソリュートスケールフィーチャであり得る。
【0027】
エンコーダ装置は、アブソリュートエンコーダ装置であり得る。従って、スケールは、アブソリュートスケールを含むことができる。換言すれば、スケールは、アブソリュート位置情報を定義するフィーチャを含むことができる。スケールは、一連の一意的なアブソリュート位置を定義するフィーチャを含み得る。アブソリュート位置情報を定義するフィーチャは、少なくとも1つのトラックに含まれ得る。アブソリュート位置情報を定義するフィーチャに加えて、スケールは、インクリメンタル位置を定義するフィーチャを含むことができる。例えば、スケールは、一連の一般に周期的に配列されたフィーチャを含むトラックを含み得る。
【0028】
エンコーダ装置は、少なくとも2つの技術により/2つの段階においてスケール信号を処理するように構成され得る。この場合において、エンコーダ装置は、前記技術のうちの1つによって使用されるセンサ素子の出力が、本発明によって重み付けされるが、前記技術のうちの別の1つに関して重み付けされないように構成され得る。例えば、エンコーダ装置は、スケールのイメージから、粗い位置情報(第1の技術を使用する)および細かい位置情報(第2の技術を使用する)を決定するように構成され得る。粗い位置情報は、1つまたは複数のスケール周期の分解能(resolution)に対するスケールおよび読取ヘッドの相対位置の尺度(measure)となり得る。細かい位置情報は、粗い位置よりも細かい分解能に対するスケールおよび読取ヘッドの相対位置の尺度となり得る。例えば、それは、1つのスケール周期よりも細かい分解能に対するスケールおよび読取ヘッドの相対位置の尺度となり得る。これは、例えば位相抽出によって行われ得る。そのような位置を決定するための方法の例は、その内容全体が本参照によって組み込まれる特許文献1に、より詳細に記載される。そのような場合において、粗い位置の決定および細かい位置の決定の両方のために、同一のセンサ素子出力が使用され得る。しかしながら、エンコーダ装置は、細かい位置を決定するための処理に回されるセンサ素子出力は本発明によって重み付けされ、一方、粗い位置を決定するための処理に回されるセンサ素子出力は重み付けされないように構成され得る。例えば、これは、センサ素子の出力を第1の信号および第2の信号に分割することによって達成されることができ、第1の信号のために、生の出力が1つの処理に回され、および第2の信号のために、減衰器(単数または複数)および/または増幅器(単数または複数)が、出力を抑制および/または増幅し従ってそれからそれらが他の処理に回されるように、使用される。
【0029】
本発明の別の態様によると、上記により構成された読取ヘッドが提供される。例えば、本発明の別の態様によると、センサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドであって、スケールおよび読取ヘッドの相対位置を決定するために使用されるセンサ素子の出力が、スケール信号における望ましくない周波数の悪影響を低減しそれによってエンコーダ装置のサブディビジョナルエラーを低減するように構成された所定の非矩形の窓関数によって、スケールおよび読取ヘッドの決定される相対位置に及ぼすセンサ素子の影響が配列に亘って変化するように、重み付けされるように構成された、読取ヘッドが提供される。特定の例によると、スケールおよび読取ヘッドの相対位置を決定するために使用されるセンサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドが提供され、読取ヘッドは、その長さに沿ったセンサの出力が、スケール信号における望ましくない周波数の悪影響を低減しそれによってエンコーダ装置のサブディビジョナルエラーを低減するように構成された窓関数によって重み付けされるように構成され、前記重み付けは、決定される相対位置に及ぼすセンサ出力の影響がセンサの端部に向かって主に低減するように構成される。別の特定の実施形態の例によると、センサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドであって、スケールおよび読取ヘッドの相対位置を決定するために使用されるセンサ素子の出力が、決定される相対位置に及ぼすセンサ素子からの出力の影響がセンサの端部に向かって一般に漸進的に低減するようなものである、読取ヘッドが提供される。任意選択的に、前記重み付けは、センサ(例えば、センサ素子)が検出可能な信号の量を制限することによって達成される。例えば、センサ/センサ素子の形状および/またはサイズを、センサ/センサ素子が検出する信号の量をセンサの端部に向かって一般に漸進的に制限するように構成することができる(例えば、それらはセンサの端部に向かって小さく、例えば長さが短くなり得る)。
【0030】
本発明の別の態様によると、センサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサと、スケール上の少なくとも1つの基準マークを検出するための少なくとも1つの別個の基準マークセンサと、を含む読取ヘッドであって、少なくとも1つの基準マークセンサはセンサ素子の配列内に位置付けられておらず、およびセンサの幅はセンサの端部に向かって低減する、および/または、センサによって検出された際のスケール信号の量がセンサの端部に向かって低減するようにセンサ素子に到達するスケール信号の量を制限するように構成された少なくとも1つの信号制限部材を含む、読取ヘッドが提供される。
【0031】
本発明の別の態様によると、一連の一意的な位置を定義するマーキングを有するスケールと、センサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドと、を含むアブソリュートエンコーダ装置であって、センサの幅はセンサの端部に向かってサイズが低減する、および/または、センサによって検出された際のスケール信号の量が配列の端部に向かって低減するように、スケール信号がセンサ素子に到達することを制限するように構成された少なくとも1つの信号制限部材を含む、アブソリュートエンコーダ装置が提供される。
【0032】
本発明の別の態様によると、センサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドが提供され、読取ヘッドは、スケールおよび読取ヘッドの相対位置を決定するために使用されるセンサ素子の出力が、センサの周波数応答の少なくともプライマリサイドローブの大きさがメインローブの大きさの10%以下であるように、重み付けされるように構成される。
【0033】
本発明の別の態様によると、スケールおよび読取ヘッドの相対位置を決定するために使用されるセンサに当たるスケール信号を検出するためのセンサ素子の配列を含むセンサを含む読取ヘッドが提供され、読取ヘッドは、その長さに沿ったセンサの出力が、決定される相対位置に及ぼすセンサ出力の影響がセンサの中央3分の1においてセンサの外側3分の1におけるよりも実質的に大きいように重み付けされるように構成される。
【0034】
本発明の実施形態は、これより単に例示の目的で以下の図面を参照しつつ記載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によるエンコーダ装置を説明する模式図である。
図2図1のエンコーダ装置の光学スキームを模式的に示す図である。
図3】スケールに関する読取ヘッド位置のインクリメンタル読取を容易にするような、回折光の使用によるインクリメンタル光検出器における干渉縞の生成を示す模式的光線図である。
図4】スケールに関する読取ヘッド位置のインクリメンタル読取を容易にするような、回折光の使用によるインクリメンタル光検出器における干渉縞の生成を示す模式的光線図である。
図5】その上に重ね合わされた干渉縞の例の強度変化を伴う、図1および図2のエンコーダ装置での使用に適した電気格子の部分の模式図である。
図6a図1から図5のエンコーダ装置のインコヒーレント光源および2つの格子配列を使用して得ることのできる干渉縞の強度変化を示す図である。
図6b図6aの干渉縞のフーリエ変換を示す図である。
図7a】インコヒーレント光源をコヒーレント光源に置き換えること、およびそのフーリエ変換によって得られた、生成された干渉縞の強度変化を示す図である。
図7b】インコヒーレント光源をコヒーレント光源に置き換えること、およびそのフーリエ変換によって得られた、生成された干渉縞の強度変化を示す図である。
図8】その上に重ね合わされた部分的な高調波を含む干渉縞の成分部分の強度変化を伴う、図1および図2のエンコーダ装置での使用に適した電気格子の部分の模式図である。
図9】本発明による電気格子の例を模式的に示す図である。
図10】それぞれ、図9の電気格子の電気格子構造を図9の電気格子の変調伝達関数(MTF)と共に示す2つのグラフを含む図である。
図11】それぞれ、標準的な重み付けられていない電気格子の電気格子構造をそのような電気格子の変調伝達関数(MTF)と共に示す2つのグラフを含む図である。
図12】本発明の別の実施形態による電気格子の例を模式的に示す図である。
図13】それぞれ、図12の電気格子の電気格子構造を図12の電気格子の変調伝達関数(MTF)と共に示す2つのグラフを含む図である。
図14】本発明の別の実施形態による例の電気格子を模式的に説明する図である。
図15】その上に重ね合わされた(例えば、フリンジとセンサの周期不整合に起因して)引き延ばされた干渉縞の強度変化を伴う、図1および図2のエンコーダ装置での使用に適した電気格子の部分の模式図である。
図16】(a)および(b)は、様々な窓形状とそれらの個々の周波数応答グラフを示す図である。
図17】(a)および(b)は、様々な窓形状とそれらの個々の周波数応答グラフを示す図である。
図18】(a)および(b)は、様々な窓形状とそれらの個々の周波数応答グラフを示す図である。
図19】(a)および(b)は、様々な窓形状とそれらの個々の周波数応答グラフを示す図である。
図20a】その上に扇形のアブソリュートパターンが当たる、アブソリュートエンコーダ用のマスクされていないセンサを示す図である。
図20b】その上に扇形のアブソリュートパターンが当たる、アブソリュートエンコーダ用のマスクされたセンサを示す図である。
図21】インクリメンタル検出器と基準マーク検出器の配列例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および図2を参照して、本発明による第1の例のエンコーダ装置2が示される。エンコーダ装置は、読取ヘッド4およびスケール6を含む。示されていないが、使用時に、読取ヘッド4は機械の1つの部分におよびスケール6は機械の別の部分に固定されることができ、それらは互いに関して移動可能である。読取ヘッド4は、それ自体およびスケール6の相対位置を測定するために使用され、従って、機械の2つの移動可能な部分の相対位置の尺度を提供するために使用され得る。読取ヘッド4は、有線の(示されるように)および/または無線の通信チャネルを介してコントローラ8のような処理装置と通信する。理解されるように、処理装置は、それが使用される用途の要求に従って、(例えばソフトウェアを介して)プログラムされ得る、より汎用の処理装置はもちろんのこと、特定の用途(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ「FPGA」)のために構成される特注の処理装置を含み得る。読取ヘッド4は、その検出器(以下により詳細に説明される)からの信号をコントローラ8に報告することができ、次いでコントローラ8は信号を処理して位置情報を決定する、および/または、読取ヘッド4は、その検出器からの信号をそれ自体が処理し、および位置情報をコントローラ8に送信することができる。別の実施形態において、中間ユニット(intermediate unit)、例えばインターフェースユニットは、読取ヘッド4とコントローラ8との間に位置し得る。インターフェースユニットは、読取ヘッド4とコントローラ8との間の通信を容易にすることができる。例えば、インターフェースユニットは、読取ヘッドの信号を処理しおよびコントローラ8に位置情報を提供するように構成され得る。
【0037】
スケール6は、インクリメンタルトラック10を定義する複数のスケールマーキングを含む。また、記載される実施形態において、スケール6は、基準トラック12を含む。
【0038】
本実施形態において、エンコーダ装置は、光学上の回折に基づくエンコーダである。従って、インクリメンタルトラック10は、回折格子を形成する一連の周期的なスケールマーク14を含む。インクリメンタルトラック10は、振幅スケールまたは位相スケールと一般に称されるものであり得る。理解されるように、それが振幅スケールであるならば、フィーチャは、読取ヘッドのインクリメンタル検出器(例えば、その光を選択的に吸収、散乱および/または反射する)に向かって送信される光の振幅を制御するように構成され、一方、それが位相スケールであるならば、フィーチャは、読取ヘッドのインクリメンタル検出器に向かって送信される光の位相を(例えば、その光の位相を遅らせることによって)制御するように構成される。本実施形態において、インクリメンタルトラック10は振幅スケールであるが、いずれの場合においても、以下に、より詳細に説明されるように、光は周期的なスケールマーク14と相互作用して、回折される次数を生成する。
【0039】
基準トラック12は、反射基準マーク16によって定義される基準位置を含む。トラックの残部は、光を吸収するフィーチャ17を含む。従って、基準位置は、それが含まれるトラックの残部よりも基準マーク光検出器24(以下に記載される)に対して相対的により多くの光が到達することを可能にするマークによって定義され、この場合、それが含まれるトラックの残部よりも、相対的に、より多く反射する。基準位置は、読取ヘッド4が、スケール6に関してそれがどこにあるかを正確に決定することができることを可能にするのに有用であり得る。従って、インクリメンタル位置を、基準位置からカウントすることができる。さらに、そのような基準位置は、それらの間において読取ヘッド4が移動することが許されるスケール6の限界または端部を定義するために使用することができるという点で、「限界位置(limit position)」と称されることもできる。
【0040】
本実施形態において、エンコーダ装置は、電磁放射線(EMR)源18、例えば赤外光源18と、スケール6の同じ側の少なくとも1つの検出器(以下により詳細に説明される)と、を含むという点で、反射光学エンコーダである。一般に、光源18からの赤外光は、スケール6によって反射して読取ヘッドに向かって戻されるように構成される。示されるように、光源18は、発散型であり、光源の照射フットプリントは、インクリメンタルトラック10および基準トラック12の両方に当たる。記載される実施形態において、光源18は、赤外領域のEMRを放射するが、しかしながら理解されるように、これは必ずしもそうである必要はなく、他の領域、例えば、赤外から紫外におけるどこかのEMRを放射し得る。理解されるように、光源18に適当な波長の選択は、電磁放射線(EMR)の波長で動作する適当な格子および検出器の入手可能性を含む多くの要因に依存し得る。また、示されるように、読取ヘッド4は、また、回折格子20(以下、「インデックス格子」20と称する)、インクリメンタル光検出器22および基準光検出器24を含む。
【0041】
図2に示されるように、光源18は、インクリメンタル光検出器22と基準光検出器24との間に、読取ヘッドの読取方向を横切る方向に、位置付けられる。これは、インクリメンタルトラック10および基準マークトラック12の両方の一様な照射を容易にする。 光源18からの光は、読取ヘッド4からスケール6に向かって放射され、そこで光源18のフットプリントの一部は基準トラック12と相互作用し、および光源のフットプリントの一部はインクリメンタルトラック10と相互作用する。現在記載される実施形態において、基準位置は、基準光検出器24に向かって反射して戻される光源18からの光の量を基準マークが含まれるトラックの残部と比較して変更する、基準マークトラック12内のフィーチャ16によって定義される。これは、例えば、基準マーク16よりも多くの光を吸収、送信および/または散乱する基準マークトラック12の残部内のフィーチャ17によって達成され得る。図2に示される位置において、読取ヘッド4は基準位置と位置合わせされており、そのようにして光は基準光検出器24に向かって反射して戻されているように示されている。
【0042】
インクリメンタルトラック10に関して、源18からの光は、回折格子を定義する周期的なスケールマーク14に当たる。光は、従って、複数の次数で(multiple orders)回折し、これは、次いで、読取ヘッド4のインデックス格子20に当たる。本実施形態において、インデックス格子20は位相格子である。光は次いでインデックス格子20によって複数の次数でさらに回折され、これは次いでインクリメンタル光検出器22で干渉して、結果として得られるフィールド、これは本例では干渉縞26である、を形成する。
【0043】
干渉縞の発生は、図3および図4を参照して、より詳細に説明される。理解されるように、図3は、エンコーダ装置において遭遇する現実の光学上の状況の非常に単純化された図である。特に、図3において、光源からのたった1つの光線が示されているが、一方、実際には、インクリメンタルトラック10の領域は光源によって照射されている。従って、実のところ、図3に示される光学上の状況は、スケールの長さに沿って全体(すなわち、源によって照らされる領域全体)において何回も繰り返され、従って、検出器において長い干渉パターンを生成し、これは図4に模式的に示される。また、単に例示の目的で、+/−1次の次数(order)が示される(例えば、理解されるように、光は複数の次数、例えば+/−3次、+/−5次等の回折次数で回折されることがある)。光は、スケール6のインクリメンタルトラック10内の一連の周期的なフィーチャ14によって回折され、および回折次数は、光が再び回折されるインデックス格子20に向かって伝搬し、それからインクリメンタル検出器22において、結果として得られるフィールド26(この場合において、干渉縞、しかし例えば変調されたスポット(単数、複数)であり得る)を形成する。図4に示されるように、結果として得られるフィールド26は、インデックス格子20およびスケール6からの光の回折された次数の再結合によって生成される。
【0044】
説明の単純化の目的で、図3および図4における光線図は、透過光線図として示されており(すなわち、光はスケールおよびインデックス格子のそれぞれを通って透過しているものとして示されている)、一方、実のところ、これらのうちの少なくとも1つは、反射であり得る。例えば、図1および図2に関連して上述されるように、光線は、スケール6によって反射され得る。
【0045】
インクリメンタル検出器22は、干渉縞26を検出して、読取ヘッド4によってコントローラ8のような外部装置に対して出力される信号を生成する。特に、読取ヘッド4およびスケール6の相対運動は、インクリメンタル検出器22に関する干渉縞26の移動を引き起こし、その出力は、変位のインクリメンタル測定を可能にするインクリメンタル上/下(up/down)カウントを提供するように処理されてもよい。理解されるように、典型的には、エンコーダは、直交する(互いから位相が90度ずれている)、および(たとえ、それらが実際には正弦信号または余弦信号ではない場合でも)SIN信号およびCOS信号として一般に分類される、2つの信号を提供するように構成されている。直交信号は、1周期未満までの反復スケールパターンの読取ヘッドの位置の正確な測定を提供するように、内挿され得る。エンコーダ装置によるそのような直交信号の提供は、読取ヘッドおよびスケールの相対運動だけでなく方向の指標を提供するために、よく知られている。
【0046】
記載される実施形態において、インクリメンタル検出器22は電気格子の形式であり、換言すれば、2セット以上の櫛の歯状の/組み合わされた(interlaced)/交互配置された感光性センサ素子(本明細書において「光検出器」または「フィンガー」ともいう)を含む光センサ配列である。各セットは、例えば、検出器22で干渉縞26の異なる位相を検出することができる。電気格子の例は図5に示され、その中で、インクリメンタル検出器22の一部が示され、4セットのフォトダイオード(A、B、CおよびD)のフィンガー/フォトダイオードは、櫛の歯状であり/交互配置されて、センサの長さ「L」に沿って延びるセンサ素子の配列を形成する。フォトダイオードのセットは、周期「p」を有する繰り返し配列に配列される(および従って、周波数「f」は1/「p」である)。
【0047】
示されるように、記載される実施形態において、個々のフィンガー/フォトダイオード/センサ素子は、インクリメンタル検出器22の長さLに対して実質的に垂直に延びる。また、個々のフィンガー/フォトダイオード/センサ素子は、実質的に矩形の形状である。また、理解されるように、本発明は、他の形状および配列のセンサ素子に適用可能である。
【0048】
セット中の各フィンガー/フォトダイオードからの出力は、単一出力を提供するために結合され、それによって、4つのチャンネル出力:A’、B’、C’およびD’をもたらす。これらの出力は、次いで、直交信号SINおよびCOSを得るために使用される。特に、A'〜C’は第1の信号(SIN)を提供するために使用され、およびB’〜D’は第1の信号から位相が90度ずれている第2の信号(COS)を提供するために使用される。特定の実施形態において電気格子は4つのチャンネルA’、B’、C’およびD’を提供する4セットのフォトダイオードを含むが、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、電気格子は、2つのチャンネルA’およびB’だけを提供する2セットのフォトダイオードを含み得る。さらに、本実施形態において、インクリメンタル検出器22は、エイリアスを生じない(non-aliased)。しかしながら、理解されるように、本発明は、エイリアスを生じる(aliased)センサ(例えば、各セットにおけるセンサ素子間の距離が1つのフリンジ周期よりも大きいセンサ)に対しても等しく適用できる。
【0049】
図5において、干渉縞26は、インクリメンタル検出器22に亘って、理想的な干渉縞の変化する強度を模式的に示す線によって表される。示されるように、エンコーダ装置は、時間内の任意の1つの瞬間において、(フリンジ周期p’およびセンサ周期pが同一であるならば)任意の1セットの全てのフォトダイオードが干渉縞の同一の位相を検出するように構成される。
【0050】
図5は、干渉縞が純粋に正弦波的に変化する強度を有し、およびフリンジ周期p’が電気格子の周期「p」(例えば、2つの同様のフォトダイオード、例えば2つの「A」フォトダイオードの中心の周期)に一致し、それによってチャンネル毎の干渉縞の周期的なパターンの繰り返しの整数を提供する)、理想的なシナリオを示す。換言すれば、干渉縞の空間周波数(例えば、1/p’)は、フォトダイオードのセットの繰り返しの空間周波数(例えば、1/p)の整数の倍数である(および、特にこの場合、干渉縞の空間周波数は、フォトダイオードのセットの繰り返しの空間周波数に等しい)。
【0051】
図6aは、理想的な干渉縞の強度プロフィールを模式的に示し、および図6bは、そのような干渉縞のフーリエ変換を示す。見ることができるように、干渉縞は、基本周波数(時には、第1高調波(first harmonic)といわれる)のみを主に含む。典型的には、本発明者らは、エンコーダ装置の良好な性能を実現するために、特に、不純な干渉縞によって引き起こされ得るSDEを回避するために、そのような理想的な干渉縞を目指して努力してきた。
【0052】
しかしながら、本発明者らは、さもなければセンサに当たる干渉縞における不純物によって引き起こされ得るSDEは、決定される位置に及ぼすフォトダイオード/フィンガーからの出力の影響がセンサの端部に向かって漸進的に低減するようにフォトダイオード/フィンガーからの出力が重み付けされるようにエンコーダ装置を適切に構成することによって、実質的に低減され得ることを見出した。これは、とても効果的であるので、そのような重み付けを使用せず、許容できない位置測定信号を提供し得る干渉縞をもたらし得る光学スキームの使用を可能にすることが見出された。
【0053】
例えば、本発明者らは、干渉縞の純度を最適化するために、低コヒーレンス光源、例えば発光ダイオード(LED)を過去に使用してきたが、面発光レーザー(SEL)、例えば、垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)のような他のタイプの光源は、改善されたシステム効率のために有益であり得ることが見出された。しかしながら、これらのタイプの光源は、使用される伝統的な光源よりもコヒーレントであり、よりコヒーレントな光源の使用は、生成される干渉縞に劇的な悪影響を及ぼし得ることが見出された。例えば、図7aは、コヒーレント(特に、VCSEL)光源を含む本発明の読取ヘッドのセンサに当たる干渉縞の強度プロフィールを模式的に示す。図7bはそのような干渉縞のフーリエ変換を示し、そこから、相当量の基本周波数を有することに加え、干渉縞は、また、顕著な大きさを有する他の周波数で構成されていることが分かる。特に、干渉縞は、顕著な非高調波成分を含む。例えば、図7bに示されるように、基本周波数に関連して、基本波(fundamental)の1.2倍の(同様に、基本周波数の他の非整数倍の)顕著な大きさがある。理解されるように、本発明はLEDのような、より伝統的な低コヒーレンス光源を使用するものを含む他のタイプのシステムにも適用可能である。これは、本発明は、他の要因によって引き起こされる望ましくない周波数の悪影響を低減させるのに役立つ可能性があり、および、例えば、汚れ免疫性および/またはエンコーダシステムの最低地上高の許容誤差を改善するのに役立つ可能性があるためである。
【0054】
図8は、図7の干渉縞の基本周波数成分26’を1.2倍の周波数成分26”と共に模式的に示す。示されるように、基本波の1.2倍である成分26”は、電気格子22のフォトダイオード(A、B、C、D)の繰り返しセットの空間周波数(例えば、1/「p」)と一致する空間周波数をもはや有さず、これはまた、この特定の例において、電気格子の範囲に亘る干渉縞のこの成分周波数の非整数のサイクル数をもたらす。
【0055】
そのような非高調波周波数成分は、エンコーダ装置の測定性能に悪影響を与える実質的なSDEを引き起こす。また、SDEは、基本周波数が、櫛の歯状のフォトダイオードの繰り返しセットの周波数の非整数倍であるときに、引き起こされる。例えば、SDEは、たとえフリンジが実質的に正弦波的に純粋である(およびそのため基本周波数の非整数倍成分を実質的になんら含まない)としても結果として生じ得るが、しかし、正弦波信号(その基本周期)の周波数は、櫛の歯状のフォトダイオードの繰り返しセットの周波数の非整数倍である。この場合において、本発明の重み付けは、信号の基本周期と、櫛の歯状のフォトダイオードのインクリメンタル検出器のセットの繰り返しと、の間のそのような不一致の悪影響を低減することができる。(これは、図15に関連して、以下に、より詳細に説明される)。従って、本発明は、スケール信号の少なくとも1つの成分周波数、および例えばスケール信号の基本周波数が、櫛の歯状のフォトダイオードの繰り返しセットの周波数の非整数倍であるときに、利点を有する。
【0056】
本発明者らは、電気格子のフォトダイオードの出力を重み付けることは、スケール信号の不備に起因するサブディビジョナルエラーを実質的に低減することができることを見出した(例えば、上記に説明されるように、スケール信号の少なくとも成分空間周波数が、および例えばスケール信号の基本的な空間周波数が、櫛の歯状のフォトダイオードの繰り返しセットの空間周波数「1/p」の非整数倍であるとき、またはスケール信号の少なくとも1つの成分周波数のセンサの範囲の全体における非整数のサイクル数の存在に起因して)。これが行われ得る多数の方法がある。例えば、不透明(例えば、金属化)層23は、フォトダイオード/フィンガーを部分的にブロックするように、ブロッキングの程度が電気格子の端部に向かって増大するような方法で(センサの有効幅「W」がインクリメンタル検出器22の端部に向かって主に低減するように)、電気格子の全体に適用し得る。そのような層は、例えば、光を、それがセンサ素子に到達するのを防ぐように、例えば、吸収、散乱および/または反射し得る。図9は、1つのそのような構成を示し、図10は、図9に示される構成に関する。特に、図10の上のグラフ(A)は、電気格子の中央から始まって、どのようにして、各チャンネルのフォトダイオードの有効なセンシング領域が電気格子の端部に向かって漸進的に低減するかを示す。示されるように、インクリメンタル検出器22の有効なセンシング領域は、電気格子の中央に向かってピークとなり、および電気格子の端部に向かって漸進的に低減する。換言すれば、センサの有効幅「W」は、インクリメンタル検出器22の端部に向かって低減する。特に、例えばもしセンサが概念上3分の1に分割されるならば、不透明層23は、インクリメンタル検出器22の中央3分の1がセンサの外側3分の1よりも実質的に少なく覆われているように構成される。従って、インクリメンタル検出器22の中央3分の1は、インクリメンタル検出器22の外側3分の1よりも、決定される相対位置に実質的により大きい影響を及ぼすことになる。
【0057】
この特定の構成において、重み付けは、形状において実質的に三角形である。そのような不透明層23は、電気格子のフォトダイオードがスケールおよび読取ヘッドの相対位置を決定するために使用される信号への寄与および影響が漸進的に減少するように、効果的に、インクリメンタル検出器22、特にフォトダイオードを、フォトダイオード配列の端部に向かって漸進的により小さくする。特に、そのようなマスキングの結果として、これらのフィンガー/フォトダイオードから配列の端部に向かう信号の大きさは、これらフィンガー/フォトダイオードから配列の中央に向かう信号の大きさよりも小さくなることとなる。従って、これらのフィンガー/フォトダイオードから配列の端部に向かう出力は、結果として生じる直交信号SINおよびCOSに及ぼす影響が小さい。
【0058】
図10の下のグラフ(B)は、そのような電気格子22のA〜Cチャンネルの変調伝達関数(Modulation Transfer Function:MTF)(これはB〜Dチャンネルと同一である)を示す。示されるように、電気格子は、基本周波数に対して高度におよび最も感受性であるが、見られるように(特に、規則正しい、矩形の、重み付けがされていない、電気格子のMTFと比べられたとき;図11参照)、電気格子は、実質的に低減された非高調波周波数成分の感度を有する。従って、そのような重み付けに起因して、電気格子は、図11に示されるような標準的な電気格子と比べて、電気格子に当たる干渉縞におけるそのような非高調波周波数成分の存在に著しく低感受性である。図10および図11の下のグラフ上の挿入図(C)は、基本周波数の周辺の電気格子のMTFの拡大図を示す;見られるように、基本周波数の周辺のサイドローブは、電気格子のフォトダイオード出力を重み付けることによって実質的に低減される。
【0059】
電気格子の感度をそのような非高調波周波数まで低減させることによって、電気格子22は、より純粋な信号を後続の位置決定電子機器まで通過させ、実質的に低減されたエンコーダ装置のSDEをもたらす。特に、そのような重み付けは、エンコーダ装置によって提供される直交信号の純度を、例えば、それらが、より純粋な正弦信号および余弦信号を含むように、改善してもよい。
【0060】
図12および図13は、再び、電気格子22が、センサの有効幅「W」がインクリメンタル検出器22の端部に向かって低減するように、電気格子22の端部に向かってフォトダイオードを次第にブロックするようにマスクされた別の構成を示す。図9および図10の実施形態とは対照的に、今回は、ブロッキングの範囲の増大は、非線形である。図12および図13に示されるように、フォトダイオードがブロックされる割合は変化する。特に、窓/重み付けの勾配(この場合において、フォトダイオードが次第にブロックされる割合)は、電気格子の中央でおよびその近くで相対的に緩く(実際には、中央の/中央の近くの1つの点においてゼロ勾配であり得る)、次いで電気格子の中央から離れるにつれて増大し、それから電気格子の端部の近くで再び緩くなる。そのような形状は、釣鐘状であるとして記載され得る。この特定の例において、図12および図13に示されるようなフォトダイオードのマスキングは、電気格子のフォトダイオードの出力がカイザー窓関数によって重み付けされるように構成され、これは、示されるように、電気格子の感度を非高調波周波数成分まで低減させることに対してさらに大きな影響を及ぼし(例えば、図9および図10の線形/三角形状の重み付けと比較して)、およびそれによって、センサに当たる干渉縞の少なくとも1つの成分周波数のセンサの範囲の全体における非整数のサイクル数によってさもなければ引き起こされ得るエンコーダのSDEを、実質的に除去する。図12において、電気格子の異なるチャンネルは、ラベルA、B、C、Dによるのではなく、異なる陰影によって表される。理解されるように、ハン(Hann)、ハミング(Hamming)、ウェルチ(Welch)、チェビシェフ(Chebyshev)、余弦(Cosine)、スレピアン(Slepian)、ガウス(Gaussian)、ランチョス(Lanczos)、パルツェン(Parzen)、ブラックマン(Blackman)、ナットール(Nuttall)、テューキー(Tukey)、カイザー(Kaiser)およびこれらの任意の混成物を含む数多くの知られている窓関数が使用され得る。
【0061】
上記は、本発明による構成がどのようにして、干渉縞における非高調波周波数成分の存在によって引き起こされる、例えばコヒーレント/モノクロ光源の使用によって引き起こされる、エンコーダ装置のSDEを実質的に低減させるのに役立つことができるかを説明する。しかしながら、本発明者らは、本発明の構成は、また、他の要因によって引き起こされるSDEを有益に低減することができることを見出した。例えば、インコヒーレント光源が使用されおよび純粋な正弦波的に変化する強度を有する干渉縞がセンサに当たるときでさえ、干渉縞は、フリンジとセンサの周期不整合(例えば、最低地上高の変化に起因するフリンジの周期の延び/縮み)の対象となり得る。例えば、図15に示されるように、フリンジとセンサの周期不整合に起因して、電気格子に当たる干渉縞は、今や、正弦波的に変化する強度の整数の繰り返しがもはや無いように、(図5に示される干渉縞に比べて)引き延ばされている。特に、図15によって示されるように、干渉縞のそのような延びは、電気格子のチャンネルに関して次第に位相がずれる干渉縞をもたらす。特に、正弦波信号の空間周波数(1/p’)は、今や、櫛の歯状のフォトダイオードの繰り返しセットの空間周波数(1/p)の非整数倍である。これは、読取ヘッドによって生成される直交信号の純度を乱し、それによって著しいSDEをもたらす。しかしながら、スケールおよび読取ヘッドの位置を決定するために使用されるセンサ素子の出力が、決定される位置に及ぼすセンサ素子からの出力の影響がセンサ22の端部に向かって漸進的に低減するように重み付けられるように、エンコーダ装置を構成することは、電気格子に関して電気格子の端部に向かってますます位相がずれるようになるフリンジに対して、電気格子を低感受性にし、およびそれによって直角位相のSIN信号およびCOS信号の位相関係を実質的に改善し、これは延いては、エンコーダ装置のSDEを実質的に低減する。
【0062】
さらに、本発明の構成は、他のタイプの位置測定エンコーダにおいて有益であることが見出された。例えば、本発明の構成は、アブソリュートエンコーダ装置で有益であることが見出された。例えば、特許文献1は、細かい位置(例えば、スケールのフィーチャの周期よりも細かい分解能に対する位置)が、どのようにして、一連の一意的なアブソリュート位置を定義するフィーチャを含むスケールのイメージから決定され得るかを記載する。簡単に言うと、これは、読取ヘッドのセンサによって出力された信号の、基準SINEおよびCOSINE波とのドット積(dot product)を見出すことによって、イメージされたスケールのマーキングの位相オフセットを見出すことを伴う。特許文献1の処理は、レニショー株式会社によってRESOLUTE(商標)の商標が付けられたアブソリュートエンコーダにおいて使用される。その製品において、ハン窓関数によって重み付けされた基準SINEおよびCOSINE波の係数は、ルックアップテーブルにあらかじめ記憶されている。センサ素子の重み付けられていない出力と前記基準SINEおよびCOSINE波とのドット積は、位相オフセットを決定するために計算される。対照的に、本発明は、ドット積計算に使用されるセンサ素子の出力の重み付けを伴う。従って、上述の実施形態のように、本発明は、ピクセルからの出力が本発明に従って重み付けされるように、センサが検出することのできる信号の強度/大きさ/電力をセンサの端部に向かって漸進的に制限することによって(例えば、その有効なセンシング幅がイメージセンサの端部に向かって低減するように、センサ素子を形成すること/寸法付けることによって、またはイメージセンサの領域をマスキングすることによって)、アブソリュートエンコーダに組み込まれ得る。特許文献1に記載されるように、スケールから得られるイメージを、粗いアブソリュート位置および細かい位置の両方を決定するために、2つの段階において/2つの方法を使用して処理することができる。センサが検出することのできる信号の強度/大きさ/電力を(例えば、センサ素子を形成すること/寸法付けることによって、またはイメージセンサの領域をマスキングすることによって)センサの端部に向かって漸進的に制限することは、粗いおよび/または細かい位置決定のために有益である可能性がある。
【0063】
例えば、図20aを参照して、等しく形成されおよび寸法付けられたセンサ素子124の配列を含む、アブソリュートエンコーダのためのマスクされていないセンサ122と、一意的な位置が決定されるのを可能にするアブソリュート符号語(code word)を定義するようにパターン内に配置された一連のスケールフィーチャ114を含むディスクスケール106と、が模式的に示される。示されるように、スケールフィーチャ114はディスク106の表面に配置されるので、それらは扇形である。これは、センサ122の端部に向かって、フィーチャ114が多数のセンサ素子124を横切ることを意味する。粗い位置決定に関して、これは、フィーチャ114によって定義される符号語を復号することを困難にし得る。細かい位置決定に関して、決定される細かい位置の精度に影響を与える望ましくない周波数は、そのようなファニング(fanning)(および、また、拡大誤差のような他の要因)によってもたらされ得る。図20bは、同一の、しかしセンサが検出可能な信号の強度/大きさ/電力が(この場合において、層123を作ることによって)センサの端部に向かって漸進的に制限されるように構成された、配列を示す。見られるように、そのような配列は、センサの端部(ファニングが最悪の場所)に向かって、センサ素子の範囲/有効な長さは、スケールフィーチャ114の小部分しか見ず、および従って、より少ないセンサ素子を横切るように制限されるので、粗い位置決定に及ぼすファニングの悪影響を低減する。理解されるように、そのようなファニングは、また、インクリメンタルシステムの問題であり得る。本発明の重み付けは、また、そのようなファニングの悪影響を抑制するのに役立ち得る。また、理解されるように、もしエンコーダシステム(アブソリュートまたはインクリメンタル)が内挿法に関係していない(および従ってSDEは問題ではない)ならば、その結果、理解されるように、重み付けは、センサをSDEの一因となる望ましくない周波数に対して低感受性にするように構成される必要はない。従って、例えば、重み付けは必ずしもセンサの空間周波数応答のサイドローブを抑制する必要はない。従って、鋭い角を含むものを含む、多種多様な窓形状が使用され得る。
【0064】
図20(b)に関して、また、そのような重み付けは、決定される細かい位置の精度に影響を与える信号の望ましくない周波数の悪影響を低減する。そのような重み付けは、センサ122の有効幅「W」がその端部に向かって主に低減するように、センサの端部に向かってセンサ素子124のサイズを低減させるような他の方法で実現され得る。
【0065】
あるいはまた、いくつかのエンコーダにおいて、センサが検出可能な信号の強度をセンサの端部に向かって漸進的に制限しないこと(例えば、センサ素子を形成/寸法付けしない、またはセンサをマスクしないこと)が望まれることがある。いくつかの状況においては、全てを考慮して、粗い位置決定のために信号を重み付けすることは望ましくないが、しかし、細かい位置決定のために信号を重み付けすることは(それは決定される細かい位置の精度に影響を与えるそれらの望ましくない周波数の悪影響を低減するのに役立ち得るので)、依然として望ましいと考えられることがある。従って、センサ素子の出力を、第1の出力および第2の出力に分割し、第1の出力は粗い位置を決定するために生の状態で使用され、および第2の出力は重み付けされてから細かい位置を決定するために使用されることは好ましくあり得る。また、インクリメンタル型エンコーダにおいて、センサが検出可能な信号の強度をセンサの端部に向かって漸進的に制限しないことが所望されることがあり、したがって、その代わりに(例えば、1つまたは複数の減衰器および/または増幅器によって)センサ素子の出力を操作することによって信号を重み付けすることが所望されることがある。
【0066】
図16(a)は、知られている読取ヘッドにおいて典型的に採用される標準的な矩形の窓形状を示す(理解されるように、既存のエンコーダにおいては、(例えば、光源に起因して)ある程度の自然の口径食(vignetting)が起こるが、しかし、例えば口径食の範囲および形状に起因して、望ましくない周波数の悪影響を低減させるのに実質的になんら影響を及ぼさない)。示されるように、図16(b)において、そのようなセンサの周波数応答(そのようなセンサの応答性の空間フーリエ変換によって得られる)は、メインローブおよび複数のサイドローブを含む。図17(a)および(b)は、同様に、レニショー株式会社から入手可能なTONiC(商標)と呼ばれる別の知られているエンコーダのセンサの窓形状および周波数応答を示す。窓形状の中央における下落(dip)は、インクリメンタル検出器のセンサ素子配列内に位置付けられた別個の基準マークセンサに起因する、配列内の複数のセンサ素子の脱落(omission)によって引き起こされる。この設計に示されるように、サイドローブは、標準的な矩形の窓形状のものよりもさらに大きい。
【0067】
対照的に、図18(a)および(b)ならびに図19(a)および(b)は、新規なエンコーダセンサの窓形状(それぞれ、ダイヤモンド窓およびカイザー窓)を示し、それらの周波数応答は、実質的に抑制されたサイドローブを有する。そのような形状は、SDEの一因となるそれらの望ましくない周波数に対して実質的に非感受性であることを保証する。
【0068】
図21は、基準マーク16を検出するための別個の基準マーク検出器25(この場合において、分割検出器は4つのフォトダイオードのうちの少なくとも2つおよび例えば3つを含む)が、インクリメンタル検出器内に位置付けられないようにインクリメンタル検出器22に隣接して提供される、配列の例を示す。従って、基準マーク検出器は、インクリメンタル検出器のセンサ素子の配列内に位置付けられないが、しかしむしろインクリメンタル検出器の横に位置付けられる。理解されるように、他の配列が可能であり、例えば、基準マーク検出器は、インクリメンタル検出器の端部に別個に提供される。
【0069】
上記に説明され示されるように、図9および図12において、電気格子の大面積が、単一の連続的マスクによって被覆されている。しかしながら、これは必ずしもそうである必要はなく、および複数の個々のマスキングフィーチャを含む各フォトダイオードによって同一の効果を実現することができる。そのような実施形態は図14に模式的に示され、その中で、マスキングのレベルは、出力がカイザー窓関数によって重み付けされるように、配列の端部に向かって増大する。従って、図14に関する電気格子構造のグラフは、図13(A)に示されるものと同一であり得る。
【0070】
理解されるように、センサ上に直接マスクを適用するのではなく、適切に形成され/構成されたマスクは、それがセンサ上に影を投じるように、フォトダイオードが、漸進的に、配列の端部に向かって影のより大きい部分の下にあるように、センサから離れて提供され得る。例えば、記載される実施形態において、そのようなマスクはインデックス格子20に適用され得る。
【0071】
そのような重み付けを実現する別の代替的な方法は、センサに当たる光のフットプリントが、本発明によって出力を重み付けるように(例えば、フォトダイオードが、一般に漸進的に、センサの端部に向かってより少ない光を受けるように)フォトダイオードに到達する光を制限する方法において形成されおよび寸法付けられるように構成された照射システム/配列を使用することを含む。
【0072】
本発明を実施するさらなる代替的な方法は、本発明によって出力を重み付けするように、フォトダイオードの出力を操作するように構成された1つまたは複数の信号操作機を含むことができる。例えば、フォトダイオードの出力を抑制および/または増幅するために、1つまたは複数の減衰器および/または1つまたは複数の増幅器を使用することができる。必要ならば、1つまたは複数の減衰器および/または1つまたは複数の増幅器を、個々のフォトダイオードのために提供することができる。そのような信号操作機を、出力を処理および/または結合するように構成された後続の電子機器の前に設置することができる。例えば、電気格子を含むエンコーダ装置において、そのような信号操作機を、出力が結合される前に、チャンネル信号、例えばA’、B’、C’またはD’を形成するように作動するように構成することができる。
【0073】
上記実施形態は、センサ素子の1次元の配列を含むセンサ22、122を説明する。理解されるように、センサ22、122は、センシング素子の2次元の配列を含み得る。もしそうならば、その結果、重み付けは、センサの端部に向かって、より少ないピクセルを用いることによって実現し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20a
図20b
図21