(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987060
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】子宮内膜症治療剤の用法・用量
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20211213BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20211213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
A61K31/519ZMD
A61P15/00
A61P29/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-533017(P2018-533017)
(86)(22)【出願日】2017年8月7日
(86)【国際出願番号】JP2017028504
(87)【国際公開番号】WO2018030317
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2020年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-155175(P2016-155175)
(32)【優先日】2016年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196807
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雅人
(72)【発明者】
【氏名】段 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀臣
(72)【発明者】
【氏名】倉持 有
【審査官】
新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/099507(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/046392(WO,A1)
【文献】
大須賀穣,GnRHの生理・病理 GnRHの臨床応用 GnRHアナログ GnRHアンタゴニストの臨床応用 子宮内,日本臨牀,2006年,Vol.64, Suppl.4,p.112-115, ISSN: 0047-1852,第114頁左欄第13行〜37行、第112頁右欄第1行〜5行
【文献】
KUPKER W.,Use of GnRH antagonists in the treatment of endometriosis,Reproductive BioMedicine Online,2002年,Vol.5, No.1,p.12-16, ISSN: 1472-6483,Abstract、第13頁左欄第1行〜9行、第14頁右欄第14行〜17行、第15頁右欄第33行〜41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61P 15/00
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸又はその薬理学的に許容される塩を含む、子宮内膜症の治療用医薬組成物であって、
フリー体換算値で50mgから75mgの前記化合物を、1日用量として1日1回経口投与することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
薬理学的に許容される塩が、3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸・コリン塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1日用量が、フリー体換算値で50mgである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1日用量が、フリー体換算値で75mgである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
子宮内膜症の治療用が、子宮内膜症に伴う疼痛の治療用である、請求項1から4の何れか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減し、かつ子宮内膜症に対し優れた治療効果を発揮する薬剤に関する。
【0002】
さらに詳しくは、3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸又はその薬理学的に許容される塩を含む、子宮内膜症の治療用医薬組成物であって、フリー体換算値で50mgから75mgの前記化合物を、1日用量として1日1回経口投与することを特徴とする医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
子宮内膜症は、エストロゲンの増加に依存して子宮内膜又はそれに類似する組織が子宮以外の部位で発生する疾患である。子宮内膜症は良性疾患であるが、月経痛をはじめとする疼痛や妊孕性の低下をもたらし、社会活動及び生殖活動において女性のQOLを著しく低下させる。子宮内膜症では月経痛は極めて高頻度にみられ、月経時以外の下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛等の疼痛症状も高頻度に認められる。
【0004】
子宮内膜症は根治手術を行わない限り、閉経まで再燃又は再発を繰り返す患者も多く、長期間にわたる治療及び管理が必要である。子宮内膜症の治療において、初めに薬物治療が選択されることが多い。薬物療法は、対症療法と内分泌療法に大別される。対処療法としては、主に子宮内膜症に伴う疼痛の改善を目的として鎮痛薬等が用いられる。内分泌療法には、疼痛の改善に加え、エストロゲン依存性の子宮内膜増殖の抑制を目的として、低用量エストロゲン-プロゲスチン製剤、ジエノゲスト、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト等が用いられる。
【0005】
しかしながら、子宮内膜症患者の10%から30%において、鎮痛薬では子宮内膜症に伴う疼痛をコントロールできないといわれている。また、低用量エストロゲン-プロゲスチン製剤の使用においては、血栓症、肝機能障害等に注意が必要である。ジエノゲストは長期投与試験における不正性器出血の副作用発現が71.9%と報告されており、重度の貧血に至ることもある。GnRHアゴニストは、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下が認められることがあるため、6か月を超える投与が原則として認められていない。
【0006】
上述のように、子宮内膜症治療の薬物療法において、それぞれの薬剤に特有の副作用が認められるため、継続投与が困難な患者も多い。そのため、副作用が軽減され、長期にわたり投与可能な新たな薬剤の開発が望まれている。
【0007】
子宮内膜症の治療において、子宮内膜症病変の増殖を抑制しつつ、かつエストロゲン低下作用に基づく骨塩量の重篤な低下等が発現しない血中エストラジオール(E2)の閾値として、「Estradiol therapeutic window」と呼ばれる考え方がある(非特許文献1)。例えば、非特許文献1において、30pg/mLから50pg/mLのE2濃度がtherapeutic windowであろうと記載されている。また、E2濃度が20pg/mL未満の場合、子宮内膜症の病変は萎縮するが、骨塩量低下が顕著であることも示唆されている。
【0008】
下記式(I)で表される、3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸(以下、化合物1と称する)が特許文献1に記載されている。また、化合物1のコリン塩(以下、化合物2と称する)が特許文献2に記載されている。特許文献1及び2には、化合物1を含む縮合複素環誘導体又は化合物2がGnRH拮抗作用を有し、前立腺肥大症、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮線維腫、思春期早発症、無月経症、月経前症候群、月経困難症等の性ホルモン依存性疾患の予防又は治療剤として用いることができると記載されている。また特許文献1及び2には、前記縮合複素環誘導体又は化合物2が0.1mgから1000mgの範囲で投与されるように、その経口投与剤を製造できると記載されている。
【化1】
【0009】
特許文献1及び2には、GnRH拮抗作用に基づく化合物1を含む縮合複素環誘導体又は化合物2の一般的な医薬用途の記載、及び一般的な投与量の記載があるのみである。エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減し、かつ子宮内膜症に対し優れた治療効果を発揮するための化合物1及び2の用法・用量については、具体的に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/046392号
【特許文献2】国際公開第2011/099507号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Robert L. Barbieri、「The Journal of Reproductive Medicine」、1998年、第43巻、supplement、p.287-292
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減し、かつ子宮内膜症に対し優れた治療効果を発揮する薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、薬効及び副作用の最適なバランスのみならず、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減する化合物1の用法・用量を見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の〔1〕〜〔5〕等に関する。
〔1〕3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸又はその薬理学的に許容される塩を含む、子宮内膜症の治療用医薬組成物であって、
フリー体換算値で50mgから75mgの前記化合物を、1日用量として1日1回経口投与することを特徴とする、医薬組成物。
〔2〕薬理学的に許容される塩が、3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸・コリン塩である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔3〕1日用量が、フリー体換算値で50mgである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の医薬組成物。
〔4〕1日用量が、フリー体換算値で75mgである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の医薬組成物。
〔5〕子宮内膜症の治療用が、子宮内膜症に伴う疼痛の治療用である、前記〔1〕から〔4〕の何れかに記載の医薬組成物。
【0015】
また一つの実施態様として、本発明は、必要量の3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸又はその薬理学的に許容される塩を含む医薬組成物を患者に投与することを含む、子宮内膜症の治療方法であって、
フリー体換算値で50mgから75mgの前記化合物を、1日用量として1日1回経口投与することを特徴とする、治療方法に関する。
【0016】
また一つの実施態様として、本発明は、子宮内膜症の治療用医薬組成物を製造するための、3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸又はその薬理学的に許容される塩の使用であって、
フリー体換算値で50mgから75mgの前記化合物を、1日用量として1日1回経口投与することを特徴とする使用に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の医薬組成物は、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減し、かつ優れた子宮内膜症の治療効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】子宮内膜症患者のNRSスコアを示す。縦軸は、前観察期からの骨盤痛に対する平均NRSスコア(月経時又は月経時以外を問わない)の変化量(Changes in average NRS of pelvic pain)を示す。横軸は、測定時期を示す。「Pre treatment」は前観察期、「Week 4」、「Week 8」及び「Week 12」は投与開始から4週目、8週目及び12週目、並びに「End of Treatment」は治療期最終評価時をそれぞれ意味する。図中、黒四角は50mg投与群、黒三角は100mg投与群、黒丸は200mg投与群、及び白四角はプラセボ群の値をそれぞれ示す。
【
図2】子宮内膜症患者の治療期におけるE2濃度を示す。縦軸は、E2濃度(pg/mL)の中央値を示す。横軸は、測定時期を示す。「Pre treatment」は前観察期、並びに「Week 4」、「Week 8」及び「Week 12」は投与開始から4週目、8週目及び12週目をそれぞれ示す。図中、黒四角は50mg投与群、黒三角は100mg投与群、黒丸は200mg投与群、及び白四角はプラセボ群の値をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0020】
本発明において、各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0021】
本発明において、化合物1とは、「3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸」を意味し、化合物2は、「3−[2−フルオロ−5−(2 ,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン−5−カルボン酸・コリン塩」を意味する。なお、化合物1と特許文献1に記載の「5−カルボキシ−3−[2−フルオロ−5−(2,3−ジフルオロ−6−メトキシベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]チエノ[3,4−d]ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン」とは、同一の化合物である。
【0022】
本発明において、化合物1は、必要に応じて常法に従い、その薬理学的に許容される塩にすることもできる。このような塩としては、例えば、ナトリウム塩;カリウム塩;N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、2−アミノエタノール、コリン等の有機塩基との付加塩等が挙げられる。好ましくは、化合物1のコリン塩(化合物2)が挙げられる。
【0023】
本発明において、「化合物1の薬理学的に許容される塩」には、水、エタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0024】
本発明の化合物1及び2は、公知の方法で製造することができる。例えば、本発明の化合物1はWO 2007/046392(特許文献1)、化合物2はWO 2011/099507(特許文献2)に記載の方法又はそれに準じた方法でそれぞれ製造することもできる。
【0025】
本発明の医薬組成物は、用法に応じて種々の剤型のものが使用される。このような剤型としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤等の経口投与剤が挙げられる。
【0026】
本発明の医薬組成物は、有効成分としての化合物1又はその薬理学的に許容される塩、及び少なくとも1つの医薬品添加物を用いて調製される。本発明の医薬組成物は、その剤型に応じ製剤学的に公知の手法により、医薬品添加物と適宜混合、希釈又は溶解することにより調製することもできる。そのような医薬品添加物としては、乳糖等の賦形剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤、マクロゴール等の界面活性剤、炭酸水素ナトリウム等の発泡剤、シクロデキストリン等の溶解補助剤、クエン酸等の酸味剤、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、リン酸塩等のpH調整剤等が挙げられる。
【0027】
本発明の医薬組成物は、子宮内膜症の治療剤として有用であり、子宮内膜症に伴う疼痛(骨盤痛、排便痛、内診時疼痛、性交痛等)に対する改善効果、子宮内膜症に伴う卵巣チョコレート嚢胞に対する縮小効果、他覚所見(ダグラス窩の硬結、及び子宮可動性の制限)への改善効果、鎮痛薬の使用率の減少等の一又は二以上を有する。
【0028】
また一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、その実施態様に応じて子宮内膜症の治療期において月経が維持されるため、月経を止めることに抵抗を感じている子宮内膜症患者に対して使用することもできる。
【0029】
本発明において、有効成分(化合物1又はその薬理学的に許容される塩)の成人に対する1日用量は、経口投与の場合、50mgから75mg(化合物1がその薬理学的に許容される塩である場合には、フリー体換算値として50mgから75mg)の範囲で定めることができる。例えば、成人に対し、フリー体換算値として化合物2の50mg又は75mgを初回投与量とし、治療期には、フリー体換算値として化合物2の50mg又は75mgを経口投与することができる。また、患者の年齢、体重、疾患の程度、副作用の発現状況等に基づいて、医師の判断で、フリー体換算値として化合物2の25mgから100mgの範囲で適宜増減して使用することもできる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、例えば、月経1日目から5日目より投与することもできる。
【0031】
本発明の医薬組成物の用法・用量としては、例えば、1日用量としてフリー体換算値で50mg又は75mgの化合物2を1日1回経口投与する方法が挙げられる。
なお、医師の判断で、1日用量を上述の範囲で増減して投与しても良い。また、医師の判断で、1日用量を2回又は3回に分けて投与しても良い。
【0032】
本発明において、「エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスク」とは、E2の分泌抑制に伴う骨塩量減少のリスクを意味する。本発明の医薬組成物による「エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスク」の程度は、E2濃度、又は、ほてり、頭痛、浮動性めまい及び多汗症等の低エストロゲン症状の発現状況により評価することもできる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減することができる適切なE2濃度に調節することができる。適切なE2濃度は、治療期において、20pg/mLから50pg/mLであることが好ましく、より好ましくは、30pg/mLから50pg/mLである。
【0034】
本発明の医薬組成物は、E2の過度な分泌抑制による副作用、例えば、薬剤投与に伴うほてり、頭痛、浮動性めまい、多汗症等の低エストロゲン症状の発現を軽減することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。実施例において、化合物2の投与量(用量)については、特に他の記載が無い限り、フリー体としての投与量(フリー体換算値)を意味する。
【0036】
実施例1
子宮内膜症患者を対象とした臨床試験1(二重盲検並行群間比較試験)
1.試験方法
子宮内膜症患者107例を対象として、50mg(29例)、100mg(26例)若しくは200mg(28例)の化合物2、又はプラセボ(24例)を1日1回、朝食後に12週間それぞれ経口投与した。以下、それぞれ50mg投与群、100mg投与群、200mg投与群、及びプラセボ群と称する。なお、月経開始2日目から5日目より投薬を開始した。
【0037】
2.有効性及び安全性に関する評価項目
有効性に関する評価項目として、月経時又は月経時以外の骨盤痛に対するNRSスコア(0:痛みなし〜10:これまでに経験した1番強い痛み)、月経時又は月経時以外の骨盤痛の重症度(0:痛みなし〜4:鎮痛薬を用いても耐えられない程度)、一時的な疼痛(排便痛、内診時疼痛及び性交痛)、他覚所見(ダグラス窩の硬結及び子宮可動性の制限)の重症度、鎮痛薬の使用率、卵巣チョコレート嚢胞及び子宮の大きさ、内分泌学的検査(E2、黄体形成ホルモン(LH)、卵巣刺激ホルモン(FSH)及びプロゲステロン)、月経の有無等を評価した。
安全性に関する評価項目として、有害事象の発現状況、副作用の発現状況、性器出血等を評価した。
【0038】
3.結果
骨盤痛に対する平均NRSスコア(月経時又は月経時以外を問わない)の変化量の推移を
図1に示した。前観察期から治療期最終評価時における骨盤痛に対する平均NRSスコア(月経時又は月経時以外を問わない)の変化量は、50mg投与群、100mg投与群、200mg投与群、及びプラセボ群の順に、-1.13、-1.27、-1.33及び-0.19であった。すべての化合物2投与群において、プラセボ群に比較して、有意な改善が認められた。また、一時的疼痛、他覚所見、鎮痛薬使用率、卵巣チョコレート嚢胞及び子宮の大きさにおいても、化合物2投与群において、プラセボ群と比較して改善が認められた。
低エストロゲン症状に関連する副作用(ほてり、頭痛、浮動性めまい及び多汗症)の発現件数は、合わせて50mg投与群で9件、100g投与群で12件、200mg投与群で28件、プラセボ群で1件であった。
治療期におけるE2濃度の中央値の推移を
図2に示した。すべての化合物2投与群において、E2の分泌抑制が認められた。また、治療期間におけるE2の濃度ごとに低エストロゲン症状に関連する副作用(ほてり、頭痛、浮動性めまい及び多汗症)の発現状況を解析した結果、E2濃度が20pg/mL以上の群では副作用の発現率が28.2%であったのに対し、E2濃度が20pg/mL未満の群では副作用の発現率が54.8%であった。
治療期における月経の有無を表1に示した。表中、「Compound 2 50mg」は50mg投与群、「Compound 2 100mg」は100mg投与群、「Compound 2 200mg」は200mg投与群、「Placebo」はプラセボ群、「Yes」は治療期に月経が認められた患者の割合、及び「No」は治療期に月経が認められなかった患者の割合をそれぞれ意味する。投与量が低下するほど治療期に月経が認められた患者の割合が増加した。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1の結果から、50mg投与群は、子宮内膜症に伴う疼痛に対する治療効果において、100mg投与群及び200mg投与群と近い効果を示すと共に、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクが低減できることが示された。
一方、100mg投与群及び200mg投与群は、子宮内膜症に伴う疼痛に対する治療効果において、十分な効果を示したが、低エストロゲン症状の副作用発現率が高く、治療期間におけるE2の濃度が20pg/mLを下回った。
また、治療期間におけるE2の濃度が20pg/mL以上の群では、20pg/mL未満の群に比較して、低エストロゲン症状の副作用が低減されることが示された。
【0041】
実施例2
子宮内膜症患者を対象とした臨床試験2(無作為化非盲検並行群間比較試験)
1.試験方法
子宮内膜症患者21例を対象として、75mg(11例)、又は150mg(10例)の化合物2を1日1回、朝食後に8週間それぞれ経口投与した。以下、それぞれ75mg投与群、及び150mg投与群と称する。なお、月経開始2日目から5日目より投薬を開始した。
【0042】
2.有効性及び安全性に関する評価項目
有効性及び安全性に関する評価項目として、実施例1と同様の項目を評価した。
【0043】
3.結果
前観察期から治療期最終評価時における骨盤痛に対する平均NRSスコア(月経時又は月経時以外を問わない)の変化量は、75mg投与群、及び150mg投与群の順に、-0.94、及び-1.68であった。すべての化合物2投与群において、改善傾向が認められた。
治療期におけるE2濃度の中央値は、75mg投与群、及び150mg投与群の順に、4週時に35pg/mL及び10pg/mL、並びに8週時に24pg/mL及び10pg/mLであった。
【0044】
実施例2の結果から、75mg投与群も子宮内膜症に伴う疼痛に対する治療効果においては、100mg投与群及び200mg投与群と近い効果を示すと共に、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減できることが示された。
【0045】
実施例3
子宮内膜症患者を対象とした臨床試験3(無作為化二重盲検並行群間比較試験)
1.試験方法
子宮内膜症患者400例を目標として、25mg、50mg、75mg若しくは100mgの化合物2、又はプラセボを1日1回、朝食後に12週間それぞれ経口投与する。なお、月経開始1日目から5日目より投薬を開始する。
2.有効性及び安全性に関する評価項目
有効性に関する評価項目として、月経時又は月経時以外の骨盤痛に対するNRSスコア(0:痛みなし〜10:これまでに経験した1番強い痛み)、月経時又は月経時以外の骨盤痛の重症度(0:痛みなし〜4:鎮痛薬を用いても耐えられない程度)、一時的な疼痛(排便痛、内診時疼痛及び性交痛)、他覚所見(ダグラス窩の硬結及び子宮可動性の制限)の重症度、卵巣チョコレート嚢胞及び子宮の大きさ、QOL(Endometriosis Health Profile-30 (EHP-30))、鎮痛薬の使用率、内分泌学的検査(E2、黄体形成ホルモン(LH)、卵巣刺激ホルモン(FSH)及びプロゲステロン)、月経の有無等を評価する。
安全性に関する評価項目として、有害事象の発現状況、副作用の発現状況、性器出血、骨代謝マーカー(血清I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(血清NTX)及び骨型アルカリフォスファターゼ(BAP))、骨密度(DXA法による)等を評価する。
【0046】
実施例1及び2の結果から、フリー体換算値で50mgから75mgの化合物2を1日用量として1日1回経口投与することにより、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下のリスクを低減し、かつ子宮内膜症に対し優れた治療効果を発揮することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の医薬組成物は、子宮内膜症の治療剤として極めて有用である。