(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニューロンの同一性は、ニューロンサブタイプ特異的なマーカの発現及び/又はニューロンサブタイプ特異的な空間位置を含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記結合性モデルを生成する際に、動的因果モデリング(DCM )を使用してDCM 結合性モデルを生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記一組の係数を導く際に、一般線形モデル、線形最小二乗回帰、ロバスト線形回帰、サポートベクトルマシン、二次計画法又はリッジ回帰を使用することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
前記脳の領域は、視床、皮質、腹側被蓋野(VTA )、前頭前皮質(PFC )、側坐核(NAc )、扁桃体(BLA )、黒質(SN)、腹側淡蒼球、淡蒼球、背側線条体、腹側線条体、視床下核(STN )、前方尾状核被殻(CPu )、淡蒼球外節(GPe )、淡蒼球内節(GPi )、海馬、歯状回、帯状回、嗅内皮質、嗅覚皮質、運動皮質、小脳又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
前記ニューロンサブタイプは、視床、皮質、腹側被蓋野(VTA )、前頭前皮質(PFC )、側坐核(NAc )、扁桃体(BLA )、黒質(SN)、腹側淡蒼球、淡蒼球、線条体、背側線条体、腹側線条体、視床下核(STN )、前方尾状核被殻(CPu )、淡蒼球外節(GPe )、淡蒼球内節(GPi )、海馬、歯状回、帯状回、嗅内皮質、嗅覚皮質、運動皮質又は小脳のニューロンを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
前記ニューロンサブタイプは、ドーパミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ガンマアミノ酪酸(GABA)作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン又はペプチド作動性ニューロンを含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
前記ニューロンサブタイプは、ドーパミン受容体サブタイプ、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ、イオンチャネル型グルタミン酸受容体サブタイプ、代謝型アセチルコリン受容体サブタイプ、イオンチャネル型アセチルコリン受容体サブタイプ、GABAA 受容体サブタイプ又はGABAB 受容体サブタイプを発現するニューロンを含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
前記神経疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、てんかん、自閉症、双極性障害、統合失調症、トゥーレット症候群、強迫性障害、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、多発性硬化症又は片頭痛であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
前記ニューロンサブタイプ特異的結合性モデルを生成する際に、動的因果モデリング(DCM )を使用してニューロンサブタイプ特異的DCM 結合性モデルを生成することを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
前記神経疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、てんかん、自閉症、双極性障害、統合失調症、トゥーレット症候群、強迫性障害、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、多発性硬化症又は片頭痛であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1-1】神経核及び随意運動に関わる基底核−視床皮質複合体の領域の進化的保存性を表す機能的磁気共鳴画像法(fMRI)の一群の画像を示す図である。
【
図1-2】神経核及び随意運動に関わる基底核−視床皮質複合体の領域の進化的保存性を表す機能的磁気共鳴画像法(fMRI)の一群の画像を示す図である。
【
図2A】本開示の方法及びシステムの実施形態を示す概略図である。
【
図2B】本開示の方法及びシステムの実施形態を示す概略図である。
【
図2C】本開示の方法及びシステムの実施形態を示す概略図である。
【
図3A】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示す図である。
【
図3B】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示すグラフである。
【
図3C】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示すグラフである。
【
図3D】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示す図である。
【
図3E】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示すグラフである。
【
図3F】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示すグラフである。
【
図3G】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示す画像である。
【
図3H】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示す画像である。
【
図3I】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示す画像である。
【
図3J-1】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示すグラフである。
【
図3J-2】本開示の実施形態に係るD1中型有棘ニューロン(MSN )刺激及びD2中型有棘ニューロン(MSN )刺激を用いた光遺伝学fMRI(ofMRI )の結果を示すグラフである。
【
図4A】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激が別個で反対のfMRI応答を駆動することを示すグラフである。
【
図4B】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激が別個で反対のfMRI応答を駆動することを示す図である。
【
図4C】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激が別個で反対のfMRI応答を駆動することを示すグラフである。
【
図4D】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激が別個で反対のfMRI応答を駆動することを示すグラフである。
【
図5A】本開示の実施形態に係るニューロン活動がD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体及び視床で誘発されるfMRI応答の極性を反映させることを示すグラフである。
【
図5B】本開示の実施形態に係るニューロン活動がD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体及び視床で誘発されるfMRI応答の極性を反映させることを示すグラフである。
【
図5C】本開示の実施形態に係るニューロン活動がD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体及び視床で誘発されるfMRI応答の極性を反映させることを示すグラフである。
【
図5D】本開示の実施形態に係るニューロン活動がD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体及び視床で誘発されるfMRI応答の極性を反映させることを示すグラフである。
【
図5E】本開示の実施形態に係るニューロン活動がD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体及び視床で誘発されるfMRI応答の極性を反映させることを示すグラフである。
【
図5F】本開示の実施形態に係るニューロン活動がD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体及び視床で誘発されるfMRI応答の極性を反映させることを示すグラフである。
【
図6】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質複合体の回路網モデルを示す概略図である。
【
図7A】本開示の実施形態に係る基底核経路によって駆動される全脳回路機能のスペクトル動的因果モデリングを示す概略図である。
【
図7B】本開示の実施形態に係る基底核経路によって駆動される全脳回路機能のスペクトル動的因果モデリングを示す概略図である。
【
図7C】本開示の実施形態に係る基底核経路によって駆動される全脳回路機能のスペクトル動的因果モデリングを示すグラフである。
【
図8】本開示の実施形態に係る本方法の様々な態様の構成を示す概略図である。
【
図9A】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網内の注目領域から抽出された解剖学的マスク及び時系列を示す画像である。MCX 回路網モデルの時系列抽出及びモデル推定のための解剖学的マスクを示す図である。
【
図9B】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網内の注目領域から抽出された解剖学的マスク及び時系列を示す画像である。SCX 回路網モデルの時系列抽出及びモデル推定のための解剖学的マスクを示す図である。
【
図9C-1】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網内の注目領域から抽出された解剖学的マスク及び時系列を示すグラフである。
図9Cは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に左(ipsi-刺激)半球の注目領域(ROI )から抽出された時系列を示す図である。時系列はゼロ平均であり、全てのボクセル及び被験体全体の平均的な信号変化を表している(D1-MSN刺激:n = 12)。エラーバーは被験体全体のSEM 活性化値を表す。時系列に重なる青色の矩形は、6分間毎分与えられた20秒間の光遺伝学的活性化を表す。
【
図9C-2】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網内の注目領域から抽出された解剖学的マスク及び時系列を示すグラフである。
図9Cは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に左(ipsi-刺激)半球の注目領域(ROI )から抽出された時系列を示す図である。時系列はゼロ平均であり、全てのボクセル及び被験体全体の平均的な信号変化を表している(D1-MSN刺激:n = 12)。エラーバーは被験体全体のSEM 活性化値を表す。時系列に重なる青色の矩形は、6分間毎分与えられた20秒間の光遺伝学的活性化を表す。
【
図9D-1】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網内の注目領域から抽出された解剖学的マスク及び時系列を示すグラフである。
図9Dは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に左(ipsi-刺激)半球の注目領域(ROI )から抽出された時系列を示す図である。時系列はゼロ平均であり、全てのボクセル及び被験体全体の平均的な信号変化を表している(D2-MSN刺激:n = 11)。エラーバーは被験体全体のSEM 活性化値を表す。時系列に重なる青色の矩形は、6分間毎分与えられた20秒間の光遺伝学的活性化を表す。
【
図9D-2】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網内の注目領域から抽出された解剖学的マスク及び時系列を示すグラフである。
図9Dは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に左(ipsi-刺激)半球の注目領域(ROI )から抽出された時系列を示す図である。時系列はゼロ平均であり、全てのボクセル及び被験体全体の平均的な信号変化を表している(D2-MSN刺激:n = 11)。エラーバーは被験体全体のSEM 活性化値を表す。時系列に重なる青色の矩形は、6分間毎分与えられた20秒間の光遺伝学的活性化を表す。
【
図10A】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網モデルを示す概略図である。
図10A は、先験的生成回路網モデルを示す概略図である。u(t)は、光遺伝学的刺激をモデル化するCPu 回路網ノードへの入力を表す。
【
図10B】本開示の実施形態に係る基底核−視床皮質回路網モデルを示すグラフである。
図10B は、外部からの(領域間)解剖学的結合について記載したマトリクスAを示すグラフである。
【
図11A】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのMCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激中の有意な有効結合及び略有意な有効結合を示すグラフである。遮断周波数全体の複数の結合性推定値のp値の実質的な変動性を観察した。被験体全体の有効な結合性強度を試験することにより、統計的有意性を決定した。有意,P<0.05;略有意,P<0.10。
【
図11B】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのSCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激中の有意な有効結合及び略有意な有効結合を示すグラフである。遮断周波数全体の複数の結合性推定値のp値の実質的な変動性を観察した。被験体全体の有効な結合性強度を試験することにより、統計的有意性を決定した。有意,P<0.05;略有意,P<0.10。
【
図11C】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのMCX 回路網モデルに関するD2-MSN刺激中の有意な有効結合及び略有意な有効結合を示すグラフである。遮断周波数全体の複数の結合性推定値のp値の実質的な変動性を観察した。被験体全体の有効な結合性強度を試験することにより、統計的有意性を決定した。有意,P<0.05;略有意,P<0.10。
【
図11D】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのSCX 回路網モデルに関するD2-MSN刺激中の有意な有効結合及び略有意な有効結合を示すグラフである。遮断周波数全体の複数の結合性推定値のp値の実質的な変動性を観察した。被験体全体の有効な結合性強度を試験することにより、統計的有意性を決定した。有意,P<0.05;略有意,P<0.10。
【
図11E】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのMCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激中の有意な結合及び略有意な結合の加重和を示すグラフである。垂直の点線でマークされた最適な遮断周波数は0.29Hzであった。
【
図11F】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのSCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激中の有意な結合及び略有意な結合の加重和を示すグラフである。垂直の点線でマークされた最適な遮断周波数は0.24Hzであった。
【
図11G】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのMCX 回路網モデルに関するD2-MSN刺激中の有意な結合及び略有意な結合の加重和を示すグラフである。垂直の点線でマークされた最適な遮断周波数は0.27Hzであった。
【
図11H】本開示の実施形態に係る、各遮断周波数でのSCX 回路網モデルに関するD2-MSN刺激中の有意な結合及び略有意な結合の加重和を示すグラフである。垂直の点線でマークされた最適な遮断周波数は0.22Hzであった。
【
図12A】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証する概略図及びグラフである。
図12A は、MCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激中の有意な結合を示す概略図である。この回路網モデルに関する最大の結合は、直接路を画定するCPu からGPi 及びSNであった。回路網図の右側のマトリクスは、有意な結合を示すグラフである。簡略化のために、自己結合は含まれていない。有意水準は多重比較についてFDR によって補正された。
【
図12B-1】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図12B は、MCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図12B-2】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図12B は、MCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図12C】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図12C は、ベイズモデル選択に応じて、MCX 回路網に関して確率論的モデリングが決定論的モデリングより観察されたBOLD反応に適合することを示す。
【
図12D】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証する概略図及びグラフである。
図12D は、SCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激中の有意な結合を示す概略図である。この回路網モデルに関する最大の結合は、直接路を画定するCPu からGPi 及びSNであった。回路網図の右側のマトリクスは、有意な結合を示すグラフである。簡略化のために、自己結合は含まれていない。有意水準は多重比較についてFDR によって補正された。
【
図12E-1】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図12E は、SCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図12E-2】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図12E は、SCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図12F】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網が直接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図12F は、ベイズモデル選択に応じて、SCX 回路網に関して確率論的モデリングが決定論的モデリングより観察されたBOLD反応に適合することを示す。
【
図13】
図12に関連する表3を示す。
図13は、本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網モデルに関する結合性推定値、被験体全体の95%信頼区間、及び統計的有意水準の表を示す。有意な結合は直接路を反映している。アスタリスクは、多重比較補正後の有意な結合性推定値を示す(* P < 0.05,** P < 0.005,*** P < 0.001)。「cts 」は、多重比較補正後の略有意な結合性推定値を示す。
【
図14A】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証する概略図及びグラフである。
図14A は、MCX 回路網モデルに関するD2-MSN刺激中の有意な結合を示す概略図である。間接路を部分的に画定するGPe からSTN への結合がこのモデル内で最大の結合であった。回路網図の右側のマトリクスは、結合強度を示すグラフである。簡略化のために、自己結合は含まれていない。有意水準は多重比較についてFDR によって補正された。
【
図14B-1】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図14B は、MCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図14B-2】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図14B は、MCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図14C】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図14C は、ベイズモデル選択に応じて、MCX 回路網モデルに関して動物の大部分で確率論的モデリングが決定論的モデリングより観察されたBOLD反応に適合することを示す図である。
【
図14D】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証する概略図及びグラフである。
図14D は、SCX 回路網モデルに関するD2-MSN刺激中の有意な結合を示す概略図である。間接路を部分的に画定するGPe からSTN への結合がこのモデル内で最大の結合であった。回路網図の右側のマトリクスは、結合強度を示すグラフである。簡略化のために、自己結合は含まれていない。有意水準は多重比較についてFDR によって補正された。
【
図14E-1】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図14E は、SCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図14E-2】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図14E は、SCX 回路網モデルに関して観察されたBOLD反応及び予測されたBOLD反応を示すグラフである。予測された反応は観察された時系列に密接に適合している。
【
図14F】本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網が間接路と一致する結合性推定値を示すことを実証するグラフである。
図14F は、ベイズモデル選択に応じて、SCX 回路網モデルに関して動物の大部分で確率論的モデリングが決定論的モデリングより観察されたBOLD反応に適合することを示す図である。
【
図15】
図14に関連する表4を示す。
図15は、本開示の実施形態に係るD2-MSN刺激回路網モデルに関する結合性推定値、被験体全体の95%信頼区間、及び統計的有意水準の表を示す。有意な結合は間接路を反映している。アスタリスクは、多重比較補正後の有意な結合性推定値を示す(* P < 0.05,** P < 0.005,*** P < 0.001)。「cts 」は、多重比較補正後の略有意な結合性推定値を示す。
【
図16A】本開示の実施形態に係るMCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデル間の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。
図16Aは、MCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデル間のD1-MSN刺激中の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。MCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデル間のD1-MSN刺激中の結合性推定値に有意差が観察されなかった。エラーバーは、被験体全体の結合性推定値のSEを表す。
【
図16B】本開示の実施形態に係るMCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデル間の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。
図16B は、MCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデル間のD2-MSN刺激中の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。CTX 内の自己結合を除いてD2-MSN刺激中の結合性推定値に差が観察されなかった。エラーバーは、被験体全体の結合性推定値のSEを表す。「cts 」は、FDR (p<0.10)を用いて多重比較補正を先験的結合全体に適合した後の被験体全体の略有意な差を示す。
【
図17】
図16に関連する表5を示す。
図17は、本開示の実施形態に係るMCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデル間の結合性推定値の統計的な比較結果を示す表である。有意差は観察されなかった。「cts 」は、多重比較補正後の略有意な差を示す。
【
図18A】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網モデル及びD2-MSN刺激回路網モデル間の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。
図18A は、MCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激間の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。統計的な差が、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激間の結合性推定値で観察された。エラーバーは、被験体全体の結合性推定値のSEを表す。* 及び*** は夫々、FDR を用いて多重比較補正を先験的結合全体に適合した後の被験体全体のp<0.05及びp<0.001 を示す。「cts 」は略有意な差(p<0.10)を示す。
【
図18B】本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網モデル及びD2-MSN刺激回路網モデル間の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。
図18B は、SCX 回路網モデルに関するD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激間の結合性推定値の比較結果を示すグラフである。統計的な差が、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激間の結合性推定値で観察された。エラーバーは、被験体全体の結合性推定値のSEを表す。* 及び*** は夫々、FDR を用いて多重比較補正を先験的結合全体に適合した後の被験体全体のp<0.05及びp<0.001 を示す。「cts 」は略有意な差(p<0.10)を示す。
【
図19】
図18に関連する表6を示す。
図19は、本開示の実施形態に係るD1-MSN刺激回路網モデル及びD2-MSN刺激回路網モデル間の結合性推定値の統計的な比較結果を示す表である。アスタリスクは、多重比較補正後の有意な結合性推定値を示す(* P < 0.05,*** P < 0.001)。「cts 」は、多重比較補正後の略有意な差を示す。
【
図20】
図12及び
図14に関連する。
図20は、本開示の実施形態に係る決定論的モデリングと確率論的モデリングとの比較結果、及び遮断周波数全体の確率論的仮定の下の自己回帰モデルの評価結果を示す図である。
図20のA〜Dは、決定論的モデリング及び確率論的モデリング間のモデル超過確率の比較結果を示すグラフである。
図20のE〜Hは、確率論的仮定の下の自己回帰プロセスのモデル超過確率の比較結果を示すグラフである。エラーバーは、遮断周波数全体の平均超過確率の標準誤差を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。ポリマーは線形であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって遮断されてもよい。用語は、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分との接合などの任意の他の操作など、修飾されたアミノ酸ポリマーを更に包含する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸又は合成アミノ酸を指し、グリシン、及びD型又はL型の光学異性体の両方、及びアミノ酸類似体及びペプチドミメティクスを含む。
【0015】
「遺伝子改変」という用語は、異種核酸(例えば細胞外の核酸)の細胞への導入に続いて細胞内で誘起された永続的又は一時的な遺伝子変化を指す。遺伝子変化(「改変」)は、異種核酸をホスト細胞のゲノムに取り込むことにより、又は異種核酸を染色体外因子として一時的若しくは安定的に維持することにより達成され得る。ここで細胞が真核細胞の場合、永続的な遺伝子変化は核酸を細胞のゲノムに導入することにより達成され得る。遺伝子改変の好適な方法として、ウイルス感染、トランスフェクション、接合、原形質融合、電気穿孔法、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、及び同種のものが含まれる。
【0016】
「複数」とは、少なくとも2つのメンバーを含む。ある場合には、複数は少なくとも10、少なくとも100 、少なくとも1000、少なくとも10,000、少なくとも100,000 、少なくとも10
6 、少なくとも10
7 、少なくとも10
8 又は少なくとも10
9 、又はそれ以上のメンバーを含んでもよい。
【0017】
本明細書に使用されている「個体」とは、本明細書に記載の方法及び技術に従う任意の好適な動物であってもよく、ある場合には個体は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類などを含む脊椎動物であってもよい。個体は、例えばヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、サル、非ヒト霊長類など、任意の好適な哺乳動物であってもよい。
【0018】
本明細書に使用されている「動的」とは、系統の時間的に変化する性質を記述するために使用されてもよい。
【0019】
本明細書に使用されている「静的」とは、性質のあらゆる時間依存性に関係なく、系統の性質を記述するために使用されてもよい。
【0020】
本明細書に使用されている「機能活動」は、系統の第1の要素の変化の時間的に変化する指標を指してもよく、変化は系統の第2の要素に特異的効果をもたらす。
【0021】
本明細書に使用されている「ニューロンサブタイプ」は、ニューロンの静的同一性及び/又はニューロンの動的性質に基づくニューロンの分類を指してもよい。ニューロンの静的同一性は、マーカ発現(例えばmRNA転写又はタンパク質発現)、解剖学的位置及び/又は結合などを含んでもよい。ニューロンの動的性質は、脱分極/活動電位発火のパターン(例えば頻度、継続時間、タイミングなど)を含んでもよい。ある場合には、例えばニューロンが異なる脱分極性刺激パターンに別個の反応を示す場合、単一のニューロンが多数のサブタイプに属してもよい。
【0022】
本明細書に使用されている「回路網」は、縁部を通って互いに直接的又は間接的に結合されているノードの集合体を指してもよい。本明細書に使用されている「直接」は、単一の縁部を通った2つのノード間の結合を指してもよい。本明細書に使用されている「間接」は、少なくとも2つの縁部及び少なくとも第3の介在するノードを必要とする2つのノード間の結合を指してもよい。回路網内の単一のノードは、回路網の他の1つのノード、複数のノード又は全てのノードに直接結合されてもよい。単一のノードは、特定の時間に他の一又は複数のノードに結合されてもよく、他の時間にあらゆるノードに結合されなくてもよい。本明細書に使用されている「ノード」は、要素、例えばニューロンの実質的に機能上等価な集合体を含んでもよい。ニューロンのサブタイプは神経回路網のノードを定めてもよい。本明細書に使用されている「相互に結合され」は、各ノードが他の少なくとも1つのノードに直接結合されているノードの集合体を記述するために使用されてもよい。
【0023】
本明細書に使用されている「結合性」は、回路網の2つのノード間の機能的結合の強度の指標を指してもよい。この指標は、構造的態様(例えば神経突起の数、一又は複数のニューロンに亘るシナプス結合の数)を反映してもよく、及び/又は結合の機能的態様(例えばシナプスの強度)を反映してもよい。
【0024】
本明細書に使用されている「神経経路」は、回路網のノード間の結合性の特異的分布によって定められたニューロンの回路網の機能的な状態を指してもよい。機能的な状態は、回路網中のニューロンの一又は複数のサブタイプの特異的活動によって促進又は誘起されてもよい。
【0025】
本明細書に使用されている「モデル」は、ある場合にはパラメータの数より小さい次元性を有する経験的な情報に基づき生成されてもよい定められた一組のパラメータを使用した系統(例えば回路網を形成するニューロンの集合体)を表してもよい。この表示は、系統の実際の解剖学的性質及び/又は機能的性質の近似であってもよい。「結合性モデル」は、回路網のノード間の機能的結合の強度を表す動的モデルを指してもよい。「回路網モデル」は、結合(つまり回路網のトポロジーの表示)の強度に関係なく回路網のノード間の物理的結合及び機能的結合を静的に表してもよい。
【0026】
本明細書に使用されている「同一性」は、対象、例えばニューロンの静的な性質を指してもよい。静的な性質は、細胞又はニューロンによるマーカ、例えば受容体の発現であってもよい。
【0027】
本明細書に使用されている「神経活動」は、ニューロンの電気的活動(例えばニューロンの膜電位の変化)、及び一又は複数のニューロン、例えば神経経路のニューロンの電気的活動の間接的指標を指してもよい。従って、神経活動は、電場電位の変化、細胞内イオン濃度(例えば細胞内カルシウム濃度)の変化、及び例えば機能的磁気共鳴画像法で血液酸素濃度依存性(BOLD)信号によって測定されるような、ニューロンの電気的活動によって誘起される磁気共鳴の変化を指してもよい。
【0028】
本明細書に使用されている「静止」又は「静止状態」は、明示的又は外部的に促されたタスクを行わない個体を指してもよい。静止状態fMRIデータのような静止状態機能活動データは、機能活動データを収集しながら、明示的なタスクを行うように指示されていない個体から集められた機能活動データを指してもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「差測定」という用語は、2つの値又は2つのベクトル間の関係の任意の測定(例えば減算、除算、相関性、偏差など)を指す。
【0030】
本開示を更に記述する前に、開示された主題は記述された特定の実施形態に限定されず、言うまでもなくそれ自体変わり得ると理解されたい。本明細書に使用されている専門用語は、具体的な実施形態について説明するためだけのものであり、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定的であることを意図するものではないことも更に理解されたい。
【0031】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が別段に明示しない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値が開示された主題に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として開示された主題に更に包含される。記載された範囲が限度のうちの一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限度の一方又は両方を除外した範囲も開示された主題に包含される。
【0032】
特に定義されていない限り、本明細書に使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、開示された主題が属する技術分野の当業者によって共通して理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等である全ての方法及び材料を、開示された主題の実施又はテストに更に使用することができるが、好ましい方法及び材料を本明細書に記載している。本明細書に述べられている全ての刊行物は、引用されている刊行物に関連して本方法及び/又は本材料を開示して記載すべく参照によって本明細書に組み込まれている。
【0033】
単数形の「1つの(a )」、「1つの(an)」及び「その(the )」が、本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられている場合、文脈が別段に明示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。従って、例えば「ニューロン」への言及はこのような複数のニューロンを含んでおり、「プロセッサ」への言及は、一又は複数のプロセッサ及び当業者に公知のこの均等物などへの言及を含んでいる。更に、請求項がいかなる選択的な要素も排除して記載されていることに留意すべきである。従って、この記述は、請求項の要素の記載に関する「唯一の」、「のみの」等の排他的用語の使用、又は「否定的な」限定の使用のための先行記載として機能すべく意図される。
【0034】
明瞭化のために別々の実施形態との関連で記述されている開示された主題の特定の特徴も、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが認識される。逆に、簡潔化のために単一の実施形態との関連で記述されている開示された主題の様々な特徴も、個別に又は任意の好適な下位組み合わせで提供され得る。本開示に係る実施形態の全ての組み合わせは、開示された主題によって明確に包含されており、各々及び全ての組み合わせが個別に明示的に開示されているかのように、本明細書に開示されている。加えて、様々な実施形態及びその要素の全ての下位組み合わせも、本開示によって明確に包含されており、各々及び全てのこのような下位組み合わせが個別に明示的に本明細書に開示されているかのように、本明細書に開示されている。
【0035】
本明細書に記載されている刊行物は、本出願の出願日に先立ってその開示のためだけに提供されている。本明細書では、先行発明を理由として、開示された主題がこのような刊行物に先行する権限がないことを認めるものであると解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認する必要がある。
【0036】
上述したように、脳の機能活動データを解析するための方法及びシステムを提供する。一般的には、本開示は、非侵襲的にモニタされる脳の機能活動とこの機能活動の基礎となるニューロン機構との関係を記述するモデルを構築するために、神経回路内の別個の神経経路の細胞型特異的活性化及び/又は周波数特異的活性化に対する神経経路の反応を解析するための方法及びシステムを含んでいる。神経回路の反応は、局所的な神経回路反応の局所電場電位(LFP )記録又はマルチユニット活動(MUA )記録から脳全体の反応の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)まで様々な方法によって測定されてもよい。特に、細胞型特異的神経経路及び/又は周波数特異的神経経路に生じさせる神経回路の結合性が本方法によって推定されてもよい。
【0037】
本開示は、上記に記載されているような細胞型特異的ニューロン活動及び/又は周波数特異的ニューロン活動への神経回路レベルの反応の経験的測定から推定されるような細胞型特異的神経経路及び/又は周波数特異的神経経路の一次結合として、測定された脳の機能活動から得られた結合性モデルをモデル化することにより、非侵襲的に測定される個体、例えば静止状態の個体の脳の機能活動の基礎となる細胞型特異的神経経路及び/又は周波数特異的神経経路を推定するための方法及びシステムを更に含んでいる。
【0038】
従って、本方法及び本システムによって、動物の有効な神経生物物理学的モデルを使用した静止状態の脳の機能活動データに基づき、健康なヒト及び罹患したヒトの脳のニューロン機構の定量的特性解析が可能になり得る。
【0039】
方法
本開示の実施形態を
図2A及び
図2Bを参照して記述する。
図2Aは、脳の機能活動データを解析する方法の実施形態を示す。本方法は、個体、例えばヒトの個体の脳の機能活動に関する一組のデータ、例えばfMRIデータを得ること2100を有してもよい。fMRIデータは、ある場合には静止状態のfMRIデータであってもよい。機能活動データを処理して、例えば計算処理して、注目する領域を表すノード間の機能的結合の回路網モデル2121によって制限された結合性モデルを生成してもよい2120。基底核−視床皮質系の回路網モデルの一例が
図6に示されている。結合性モデルをあらゆる好適なアルゴリズム、例えば動的因果モデリング(DCM )を使用して生成してもよい。
【0040】
そのため、結合性モデルを使用して、様々なニューロンサブタイプに関して結合性推定値2141に対して線形回帰を行って回帰係数を得る2140。回帰係数は、異なるニューロンサブタイプによって夫々調節される異なる神経経路の相対活動の推定値を与える。
【0041】
本開示は、ニューロンサブタイプ特異的結合性推定値を推定する方法を更に提供する(
図2B)。このような方法は、ニューロンのサブタイプ特異的な選択的活性化によって生じる神経回路の機能活動を測定すること2200を有してもよい。ニューロンのサブタイプ特異的な選択的調節、例えば脱分極又は過分極は、例えば光遺伝学的刺激又は電気生理学的刺激を含んでもよく、選択的刺激に応じた機能活動を、例えば光遺伝学fMRI(ofMRI )のようなfMRIによって測定してもよい。本明細書に使用されている「選択的」は、作用が与えられるか、又は性質が存在する第2のグループのメンバーの割合と比較して、第1のグループ内のメンバーのより大きな割合に与えられる作用又は存在する性質を記述するために使用されてもよく、相対的割合は、作用又は性質の機能的重要性が主に第1のグループのメンバーへの影響に起因し得るような割合である。
【0042】
測定されたニューロンサブタイプ特異的機能活動データを処理して、例えば計算処理して、注目する領域を表すノード間の機能的結合の回路網モデル2121によって制限されたサブタイプ特異的結合性モデルを生成してもよい2220。ニューロンサブタイプ毎に、ニューロンサブタイプの活動によって調節される神経経路の結合性を、サブタイプ特異的結合性モデルから推定してもよい2240。
【0043】
データ収集2100, 2200、結合性モデルの生成2120, 2220、線形回帰解析2140及びニューロンサブタイプ特異的結合性の推定を、以下に述べるようなシステムを使用して行ってもよく、このシステムは、一又は複数のプロセッサと、一又は複数のプロセッサによって実行されると一又は複数のプロセッサに本開示の方法を実行させる神経経路解析プログラムとを備えている。
【0044】
ニューロンサブタイプ特異的結合性推定値をあらゆる好適な個体から得てもよい。ある場合には、ニューロンサブタイプ特異的結合性推定値を、脳の機能活動データを解析する個体と同一の個体から得る。ある実施形態では、ニューロンサブタイプ特異的結合性推定値を、脳の機能活動データを解析する第1の個体とは異なる第2の個体から得る。第2の個体は、第1の個体が属する種と同一の種又は異なる種の個体であってもよい。ある場合には、第2の個体及び第1の個体は両方共、哺乳類であるが、哺乳類の異なる種に属する。ある場合には、第1の個体及び第2の個体は、齧歯動物、ネコ科の動物、イヌ科の動物、サル、非ヒト霊長類及びヒトから夫々選択される。
【0045】
ニューロンサブタイプ機能活動データを含む機能活動データは、機能活動データのあらゆる好適な形式であってもよい。機能活動データは、ニューロン活動が個体のニューロンのレベルで空間的に分解されない脳の領域内のニューロンの集団的な活動の測定値を含んでもよい。言い換えれば、測定された機能活動データの成分は、あらゆる特異的なニューロンサブタイプに容易に起因し得ない(例えば、成分を推定するためにアルゴリズムを適用せずに、成分はあらゆる特異的なニューロンサブタイプに起因し得ない)。ある場合には、機能活動データは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、脳磁図(MEG )、脳波記録法(EEG )又はこれらの組合せから得られたデータである。
【0046】
ある場合には、機能活動データを、静止状態、例えば目が覚めている静止状態の個体から得る。従って、ある場合には、機能活動データを得る個体は、データを得るために個体がモニタされている間に行う明示的なタスクを与えられなくてもよい。
【0047】
ニューロンサブタイプ特異的結合性モデルを含む結合性モデルは、大規模な機能活動データに基づく脳の生物物理学的性質をモデル化するあらゆる好適な方法、例えばfMRI、MEG 又はEEG を使用して生成されてもよい。ある場合には、動的因果モデリング(DCM )のような畳み込み原理に基づくアルゴリズムを使用して結合性モデルを生成する。ある場合には、DCM がスペクトルDCM 又は時間領域DCM であってもよい。ある場合には、spDCM が確率論的spDCM 又は決定論的spDCM である。好適なDCM 法は、例えばFriston, Karl J.等著,「A DCM for resting state fMRI」,Neuroimage,94 (2014): 396-407に記載されており、この開示は参照によって本明細書に組み込まれる。ある場合には、ニューラルマスモデリング(NMM )のようなニューロンのメゾスコピック性質に基づくアルゴリズムを使用して結合性モデルを生成する。
【0048】
ニューロンサブタイプ特異的結合性モデルを含む結合性モデルを生成するプロセスは、注目する脳領域の相互に結合されたノード間の機能的結合の回路網モデルによって制限されてもよい。ある場合には、本開示の実施形態によれば、脳の機能活動データが解析される個体の結合性モデルを生成するために使用される回路網モデルは、ニューロンサブタイプ特異的結合性モデルを生成するために使用される同一の結合性モデルである。
【0049】
回路網モデルのノードは一又は複数の解剖学的脳領域及び/又は機能的脳領域を表してもよい。好適な解剖学的脳領域及び/又は機能的脳領域は、視床、皮質、腹側被蓋野(VTA )、前頭前皮質(PFC )、側坐核(NAc )、扁桃体(BLA )、黒質(SN)、腹側淡蒼球、淡蒼球、背側線条体、腹側線条体、視床下核(STN )、前方尾状核被殻(CPu )、淡蒼球外節(GPe )、淡蒼球内節(GPi )、海馬、歯状回、帯状回、嗅内皮質、嗅覚皮質、運動皮質、小脳を含むが、これらに限定されない。ノードは、ある場合には、上記に記載されているような解剖学的脳領域及び/又は機能的脳領域のあらゆる小領域を更に表してもよく、小領域は、上記に記載されているような解剖学的脳領域及び/又は機能的脳領域の少なくとも一部を含んでいる。ノードは、ある場合には解剖学的脳領域及び/又は機能的脳領域のあらゆる超領域を更に表してもよく、超領域は、上記に記載されているような2以上の解剖学的脳領域及び/又は機能的脳領域(又はその一部)を含んでいる。
【0050】
ある実施形態では、脳及び/又は回路網モデルの領域は、哺乳類の様々な種に亘って保護されている神経系を表す。保護されている神経系は、個体の2つの異なる種の間で同様の時間的順序で同様に解剖学的及び/又は機能的に定められた脳構造の機能活動を示し得る。ある場合には、保護されている神経系は、
図1に示されているような基底核−視床皮質回路である。
【0051】
回路網モデルは、あらゆる好適な数のノードを含んでもよい。ある場合には、回路網モデルは、2以上、3以上、例えば4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、50以上、100 以上、1,000 以上の相互に結合されたノードを含んでおり、ある実施形態では、回路網モデルは、100,000 以下、例えば10,000以下、5,000 以下、1,000 以下、500 以下、200 以下、100 以下、80以下、60以下、40以下、20以下、15以下、10以下のノードを含んでいる。ある実施形態では、回路網モデルは2〜100,000 の範囲の数のノードを含んでおり、例えば3〜100,000 、4〜10,000、4〜5,000 、4〜1,000 、4〜500 、4〜200 、4〜100 、4〜80、5〜60、5〜40、5〜20、6〜15の範囲の数のノードを含んでいる。
【0052】
回路網モデルをあらゆる好適な源から導き出してもよい。ある場合には、回路網モデルは、回路網のノードに対応する脳領域間の解剖学的結合及び/又は機能的結合に関する公開された文献の調査に基づいている。ある場合には、回路網モデルは、経験的データ、例えば拡散テンソルfMRIデータ、免疫組織化学データ、トレーサデータなどに基づいている。ある場合には、回路網モデルは拡散テンソルfMRIデータに基づいている。ある場合には、回路網モデルは免疫組織化学データに基づいている。ある場合には、回路網モデルはトレーサデータに基づいている。
【0053】
回帰係数を、あらゆる好適な回帰法を使用して結合性モデルから導き出してもよい。ある場合には、回帰は一般線形モデル、線形最小二乗回帰、ロバスト線形回帰、サポートベクトルマシン、二次計画法又はリッジ回帰である。ある場合には、回帰は一般線形モデルである。ある場合には、回帰は線形最小二乗回帰である。ある場合には、回帰はロバスト線形回帰である。ある場合には、回帰はサポートベクトルマシンである。ある場合には、回帰は二次計画法である。ある場合には、回帰はリッジ回帰である。
【0054】
ニューロンサブタイプは、脳のニューロンのあらゆる好適な性質を使用して定められてもよい。ニューロンサブタイプを定める性質は、物理的形状、位置、マーカ発現、活動パターン(例えば活動の頻度、継続時間又は大きさなど)及びこれらの組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0055】
ニューロンサブタイプは、あらゆる好適な脳領域からのニューロンを含んでもよい。好適な脳領域は、視床、皮質、腹側被蓋野(VTA )、前頭前皮質(PFC )、側坐核(NAc )、扁桃体(BLA )、黒質(SN)、腹側淡蒼球、淡蒼球、背側線条体、腹側線条体、視床下核(STN )、前方尾状核被殻(CPu )、淡蒼球外節(GPe )、淡蒼球内節(GPi )、海馬、歯状回、帯状回、嗅内皮質、嗅覚皮質、運動皮質、小脳を含むが、これらに限定されない。
【0056】
ニューロンサブタイプは、ニューロンのあらゆる好適な物理的形状に基づき分類されてもよい。好適なニューロンタイプは、中型有棘ニューロン(MSN )、錐体細胞、小さなゲル状細胞、紡錘状細胞、顆粒細胞、卵形細胞、淡蒼球細胞、小さな網様体、大きな網様体及びプルキンエ細胞を含むが、これらに限定されない。
【0057】
ニューロンサブタイプは、サブタイプのニューロンによって生成される一又は複数の神経伝達物質によって定められてもよい。ある場合には、ニューロンサブタイプのニューロンは、ドーパミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ガンマアミノ酪酸(GABA)作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン又はペプチド作動性ニューロン及び同種のものであるが、これらに限定されない。
【0058】
ニューロンサブタイプは、あらゆる好適な受容体発現によって定められてもよい。サブタイプのニューロンによって発現される好適な受容体は、ドーパミン受容体サブタイプ(D
1,D
2,D
3,D
4及び/又はD
5);代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ(mGluR
1,mGluR
2,mGluR
3,mGluR
4,mGluR
5,mGluR
6,mGluR
7及び/又はmGluR
8);イオンチャネル型グルタミン酸受容体サブタイプ(α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)、カイニン酸及び/又はN−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA));代謝型アセチルコリン受容体サブタイプ(M
1,M
2,M
3,M
4及び/又はM
5);イオンチャネル型アセチルコリン受容体サブタイプ;GABA
A 受容体サブタイプ(α,β,γ,δ,ε,π,θ及び/又はρ);及び/又はGABA
B 受容体サブタイプ(GABA
B1及び/又はGABA
B2)を含むが、これらに限定されない。
【0059】
ニューロンサブタイプは、サブタイプのニューロンによるあらゆる他の好適なマーカの発現によって定められてもよい。
【0060】
複数のニューロンサブタイプは、あらゆる好適な数のサブタイプを含んでもよい。ある場合には、ニューロンサブタイプの数は、2以上、例えば3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、50以上、100 以上であり、ある実施形態では、10,000以下、例えば5,000 以下、1,000 以下、500 以下、200 以下、100 以下、80以下、60以下、40以下、20以下、15以下、10以下である。ある実施形態では、ニューロンサブタイプは2〜10,000の範囲の数のサブタイプを含んでおり、例えば2〜5,000 、2〜1,000 、2〜500 、2〜200 、2〜100 、2〜80、2〜60、2〜40、2〜20、2〜10の範囲の数のサブタイプを含んでいる。
【0061】
ある実施形態では、2つのニューロンサブタイプ間のニューロンサブタイプ特異的結合性推定値は実質的に互いに統計的に関連がない。ある場合には、2つのニューロンサブタイプ間のニューロンサブタイプ特異的結合性推定値は、0.5 以下、例えば0.4 以下、0.3 以下、0.2 以下、0.1 以下、0.05以下、0.03以下、0.01以下の相関係数、例えばピアソンの相関係数を有してもよく、−0.5 以上、例えば−0.4 以上、−0.3 以上、−0.2 以上、−0.1 以上、−0.05 以上、−0.03 以上、0.01以上の相関係数を有してもよい。ある実施形態では、2つのニューロンサブタイプ間のニューロンサブタイプ特異的結合性推定値は、−0.5 〜0.5 、例えば−0.4 〜0.4 、−0.3 〜0.3 、−0.2 〜0.2 、−0.1 〜0.1 、−0.05〜0.05、−0.03〜0.03の範囲の相関係数、例えばピアソンの相関係数を有してもよい。
【0062】
個体は個体の脳の機能活動データを解析するためのあらゆる好適な個体であってもよい。ある場合には、個体はヒトの個体である。ある場合には、ヒトは健康なヒト、又は神経障害を有するヒトである。神経障害はあらゆる神経障害であってもよい。ある場合には、神経障害は疾患、例えば神経疾患によって引き起こされる。神経疾患は、ニューロンの回路網の病理的活動に関連したあらゆる疾患であってもよい。好適な神経疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、てんかん、自閉症、双極性障害、統合失調症、トゥーレット症候群、強迫性障害、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、多発性硬化症又は片頭痛を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、神経障害は脳機能の加齢に関連した障害である。
【0063】
サブタイプ特異的機能活動を測定するためのニューロンの選択的活性化を、あらゆる好適な方法を用いて行ってもよい。ニューロンの選択的活性化の好適な方法は、光遺伝学的刺激、単一ユニット電気生理学などを含むが、これらに限定されない。光遺伝学的刺激に適した複数の方法及びシステムの例が、米国特許第8696722 号明細書、米国特許第8834546 号明細書及び米国特許第9271674 号明細書、米国特許出願公開第2016/0270723 号明細書、国際出願第PCT /US2016/043179号、国際出願第PCT /US2016/064250号及び国際出願第PCT /US2016/049508号に更に詳細に記載されており、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
ニューロンが光遺伝学的刺激によって選択的に活性化される場合、ニューロンはニューロンを過分極又は脱分極させるように構成された一又は複数の光活性化ポリペプチドを発現してもよい。好適な光活性化ポリペプチド及び光活性化ポリペプチドの使用方法を以下に更に記載する。
【0065】
光活性化ポリペプチド
本開示の光活性化ポリペプチドは、ニューロンに活性化光刺激を照射することによりサブタイプのニューロンを選択的に活性化するためのあらゆる好適な光活性化ポリペプチドであってもよい。場合によっては、光活性化ポリペプチドは光活性化イオンチャネルポリペプチドである。光活性化イオンチャネルポリペプチドは、ポリペプチドに活性化波長の光を照射すると、一又は複数のイオンが標的細胞の原形質膜を通過可能であるように適合されている。光活性化タンパク質は、少数のイオンが光の光子によって原形質膜を通過することを容易にするイオンポンプタンパク質として特徴付けられてもよく、又はチャネルが開いているときにイオン流が原形質膜を自在に貫流することを可能にするイオンチャネルタンパク質として特徴付けられてもよい。ある実施形態では、光活性化ポリペプチドは、活性化波長の光によって活性化されると、細胞を脱分極させる。ある実施形態では、光活性化ポリペプチドは、活性化波長の光によって活性化されると、細胞を過分極させる。好適な過分極性ポリペプチド及び脱分極性ポリペプチドは、本技術分野では公知であり、例えばチャネルロドプシン(例えばChR2)、ChR2の変異体(例えばC128S 、D156A 、C128S + D156A 、E123A 、E123T )、iC1C2 、C1C2、GtACR2、NpHR、eNpHR3.0、C1V1、VChR1 、VChR2 、SwiChR、Arch、ArchT 、KR2 、ReaChR、ChiEF 、Chronos 、ChRGR 、CsChrimson及び同種のものを含む。ある場合には、光活性化ポリペプチドは、本明細書に記述されているような、更に例えば本明細書に参照によって組み込まれるRajasethupathy等著,Nature,2015年10月29日,526(7575):653に記述されているようなbReaCh-ES を含む。過分極性オプシン及び脱分極性オプシンは様々な刊行物に記述されており、例えばBerndt及びDeisseroth著,2015年,Science,349:590 ;Berndt等著,2014年,Science ,344:420 ;及びGuru等著,2015年7月25日,Intl. J. Neuropsychopharmacol.,p.1-8 (PMID 26209858 )参照。
【0066】
光活性化ポリペプチドは、あらゆる好適な方法を使用してニューロンに導入されてもよい。ある場合には、注目するサブタイプのニューロンは遺伝子改変されて光活性化ポリペプチドを発現する。ある場合には、ニューロンは、光活性化ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含むウイルスベクター、例えばアデノ随伴ウイルスベクターを使用して遺伝子改変されてもよい。ウイルスベクターは、ニューロンサブタイプ、タイミング、誘発因子の存在などに応じて光活性化ポリペプチドの発現を制御するためのあらゆる好適な制御因子(例えばプロモータ、エンハンサ、組換え部位など)を含んでもよい。
【0067】
ニューロン特異的プロモータ及び他の制御因子(例えばエンハンサ)は本技術分野では公知である。好適なニューロン特異的制御配列は、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE )プロモータ(例えばEMBL HSENO2 ,X51956;更に、例えば米国特許第6649811 号明細書、米国特許第5387742 号明細書参照);芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)プロモータ;神経フィラメントプロモータ(例えばGenBank HUMNFL,L04147参照);シナプシンプロモータ(例えばGenBank HUMSYNIB,M55301参照);thy-1 プロモータ(例えば、Chen等著,1987年,Cell,51:7-19 ;及びLlewellyn 等著,2010年,Nat. Med. ,16:1161 参照);セロトニン受容体プロモータ(例えばGenBank S62283参照);チロシンヒドロキシラーゼ(TH)プロモータ(例えば、Nucl. Acids. Res. ,15:2363-2384,1987年及びNeuron,6:583-594 1991年参照);GnRHプロモータ(例えばRadovick等著,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88:3402-3406,1991年参照);L7プロモータ(例えばOberdick等著,Science ,248:223-226 ,1990年参照);DNMTプロモータ(例えばBartge等著,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,85:3648-3652,1988年参照);エンケファリンプロモータ(例えばComb等著,EMBO J. ,17:3793-3805,1988年参照);ミエリン塩基性タンパク質(MBP )プロモータ;CMV エンハンサ/血小板由来増殖因子−βプロモータ(例えば、Liu 等著,(2620),Gene Therapy,11:52-60);運動ニューロン特異的遺伝子Hb9 プロモータ(例えば、米国特許第7632679 号明細書;及びLee 等著,(2620),Development ,131:3295-3306 参照);及びCa(
2+)−カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKIIα)プロモータのαサブユニット(例えば、Mayford 等著,1996年,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,93:13250参照)を含むが、これらに限定されない。他の好適なプロモータとして、伸張因子(EF)1α及びドーパミントランスポータ(DAT )プロモータが含まれる。
【0068】
ある場合には、光活性化ポリペプチドのニューロンサブタイプ特異的発現は、例えばCre-Lox 組換え、Flp-FRT 組換えなどの組換えシステムを使用することにより達成されてもよい。組換えを使用した遺伝子の細胞型特異的発現は、例えばFenno 等著,Nat Methods.,2014年7月,11(7):763 ;及びGompf 等著,Front Behav Neurosci. ,2015年7月2日;9:152 に記載されており、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0069】
システム
上記に記載されているような本開示の方法を行うためのシステムを本明細書に更に提供する。
図2Cを参照すると、本システム2500は、fMRIデバイス2700、プロセッサ2610及びメモリ2620(例えばコンピュータ可読媒体上の非一時的なメモリ)を備えてもよい。メモリ2620は、プロセッサ2610によって実行されると、fMRIデバイス2700に個体の脳の機能活動を記録させて個体の機能活動データを生成させ、更に本明細書に記載されているような機能活動データを解析する方法を行わせるアプリケーション2624又はプログラムを含んでもよい。
【0070】
fMRIデバイス2700はあらゆる好適なデバイスであってもよい。好適なデバイスが、例えば米国特許第8834546 号明細書、米国特許出願公開第2016/0270723 号明細書、国際出願第PCT /US2016/043179号、国際出願第PCT /US2016/064250号及び国際出願第PCT /US2016/049508号に記載されており、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0071】
システム2500は、一又は複数の処理装置(本明細書では「プロセッサ」とも称される)2610、メモリ2620(つまりコンピュータ可読記憶媒体)、入出力(I/O )インタフェース2640及び通信インタフェース2630を備えている。これらの構成要素は一又は複数の通信バス又は信号線を介して互いに通信する。ある実施形態では、メモリ2620、つまりコンピュータ可読記憶媒体又はコンピュータ可読記憶メモリは、オペレーティングシステム2622、プログラム2624、モジュール、指示及び記憶データを記憶している。一又は複数のプロセッサはメモリに接続されており、これらのプログラム、モジュール及び指示を実行して記憶データを読み書きすべく動作可能である。
【0072】
ある実施形態では、処理装置2610は、シングルコアマイクロプロセッサ又はマルチコアマイクロプロセッサのような一又は複数のマイクロプロセッサを有している。ある実施形態では、処理装置は一又は複数の汎用プロセッサを有している。ある実施形態では、処理装置は(例えば、本明細書に記載されている方法を実行するようにプログラムされた)一又は複数の専用プロセッサを有している。
【0073】
ある実施形態では、メモリ2620は、高速ランダムアクセスメモリ、例えばDRAM、SRAM、DDR RAM 又は他のランダムアクセス固体メモリ装置を有している。ある実施形態では、メモリは不揮発性メモリ、例えば一又は複数の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリ装置又は他の不揮発性固体記憶装置を有している。ある実施形態では、メモリは、処理装置2610から遠隔地に配置された一又は複数の記憶装置を有している。メモリ、或いはメモリ内の一又は複数の不揮発性メモリ装置がコンピュータ可読記憶媒体を有している。ある実施形態では、メモリは非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を有している。
【0074】
ある実施形態では、I/O インタフェース2640は、一又は複数の入出力装置、例えば一又は複数のディスプレイ、キーボード、(トラックパッド若しくはタッチセンサディスプレイのタッチセンサ面のような)タッチセンサ面、スピーカ及びマイクロホンに接続されている。I/O インタフェースは、ユーザからユーザ入力(例えば音声入力、キーボード入力、タッチ入力など)を受けて、ユーザ入力に応じてユーザ入力を処理するように構成されてもよい。I/O インタフェースは、システム2500上で実行される様々なプログラム指示に応じて出力(例えば音、画像、テキストなど)をユーザに提示するように更に構成されてもよい。
【0075】
ある実施形態では、通信インタフェース2630は、一又は複数の有線通信ポート及び/又は無線送受信回路を有している。一又は複数の有線通信ポートは、一又は複数の有線インタフェース、例えばイーサネット(登録商標)、ユニバーサルシリアルバス(USB )、FIREWIRE(登録商標)などを介して通信信号を送受信する。無線回路は、通信ネットワーク及び他の通信デバイスとRF信号、赤外線信号及び/又は光信号を送受信する。無線通信は、複数の通信規格、通信プロトコル及び通信技術、例えばGSM(登録商標) 、EDGE、CDMA、TDMA、Bluetooth (登録商標)、Wi-Fi、VoIP、Wi-MAXのいずれか、又はあらゆる他の好適な無線通信プロトコルを使用してもよい。ネットワーク通信インタフェースによって、ネットワーク、例えばインターネット、イントラネット及び/又は無線ネットワーク、例えば携帯電話ネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN )、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)及び/又はメトロポリタンエリアネットワーク(MAN )及び他のデバイスとシステム2500との通信が可能になる。ネットワーク通信インタフェースは、ネットワーク上でシステムと他のデバイスとの通信を促進するように構成されている。
【0076】
ある態様では、システムはコンピュータ2600を備えてもよく、このコンピュータは個人のデバイス(例えばラップトップ、デスクトップ、仕事場のコンピュータ、携帯機器など)であってもよい。個人のデバイスであるコンピュータは、ネットワークに接続される必要がなくてもよい。他の場合では、個人のデバイスであるコンピュータは、ネットワーク(例えば上記に記載されているような有線接続又は無線接続)に接続されている。
【0077】
ある態様では、コンピュータ2600はサーバ又はサーバの集合体であり、I/O インタフェースを必要としなくてもよい。例えば、コンピュータ2600はサーバであってもよく、本開示の神経経路解析プログラム2124はユーザによってウェブサイトを通じてアクセスされてもよい。
【0078】
ある実施形態では、オペレーティングシステム2622(例えばLINUX (登録商標)、UNIX(登録商標)、OS X(登録商標)、WINDOWS (登録商標)又は埋め込まれたオペレーティングシステム)は、一般的なシステムタスク(例えばメモリ管理、記憶装置の制御、電力管理など)を制御して管理するための様々なソフトウェア部品及び/又はドライバを有しており、様々なハードウェア部品、ファームウェア部品及びソフトウェア部品間の通信を促進する。
【0079】
システム2500は単なる一例であり、システム2500が示された部品をより多く若しくはより少なく有してもよく、2以上の部品を組み合わせてもよく、又は部品の異なる構成若しくは配置を有してもよいことに注目すべきである。
図2Cに示されている様々な部品は、一又は複数の信号処理集積回路及び/又は特定用途向け集積回路又はこれらの組合せを含むハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアで実現されてもよい。
【0080】
図2Cでは、神経経路解析プログラム2624は、メモリ2620に記憶された一又は複数のプログラムを有しており、本明細書に記載されている方法の一又は複数の実施形態に係る方法を行うための指示を含んでもよい。神経経路解析プログラム2624は、以下の例のモジュール、そのサブセット又はそのスーパーセットのいずれかを有してもよい。
【0081】
ある場合には、神経経路解析プログラム2624は、上記に記載されているような個体の脳の領域に関する機能活動データを計算処理して、本明細書に記載されているように、領域を表す相互に結合されたノード間の機能的結合の回路網モデル2628に基づき機能活動データから結合性モデルを生成し、本明細書に記載されているようにa)結合性モデルと、b)相互に結合されたノード間のニューロンサブタイプ特異的結合性推定値2627との線形回帰から一組の係数を導くことにより、複数のニューロンサブタイプの各々によって調節される神経経路の相対活動の推定値を生成するように構成されてもよい。
【0082】
本システム2500は、個体の脳の機能活動を測定するように構成されたfMRIデバイス2700を備えてもよい。コンピュータシステム2600は、通信インタフェース2630を介してfMRIデバイスと通信してもよく、例えば、コンピュータシステムはfMRIデバイスの動作を制御する、及び/又はfMRIデバイスから機能画像データを検索することができる。
【0083】
神経経路解析プログラム2624は、領域を表す相互に結合されたノード間の機能的結合の回路網モデル2628に基づき機能活動データから結合性モデルを生成するように構成されたモデル生成モジュール、例えばspDCM モジュール2625を有してもよい。
【0084】
神経経路解析プログラム2624は、a)結合性モデルとb)ニューロンサブタイプ特異的結合性推定値2627との線形回帰を行って、異なるニューロンサブタイプによって調節される神経経路の機能活動データへの寄与を表す一組の係数を導くように構成された線形回帰モジュール2626を有してもよい。
【0085】
本明細書に記載された方法は、コンピュータシステム2600によって行われてもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム2600は分散型コンピュータシステムである。例えば、コンピュータシステム2600は、第2組の一又は複数のプロセッサから遠隔地に配置された第1組の一又は複数のプロセッサを有してもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム2600は、ウェブインタフェースを提供するように構成されたウェブサーバを有している。ある実施形態では、ウェブインタフェースはデータを受けるように構成されている。ある実施形態では、ウェブインタフェースは結果を表示するように構成されている。
【0086】
ある態様では、神経経路解析プログラム2624はユーザによって設定可能であってもよい。例えば、神経経路解析プログラムは、回路網モデル2628、ニューロンサブタイプ特異的結合性推定値2627、神経変動などを含めてモデル生成アルゴリズム及び/又は線形回帰アルゴリズムに適用するか否かなどの一又は複数の設定、或いは本明細書に記載された方法の一又は複数の実施形態の実行を可能にするあらゆる他の設定をユーザに決定させ得るように構成されたユーザインタフェースモジュール(不図示)を有してもよい。
【0087】
ある実施形態では、システム2500は、fMRIデバイス2700によってモニタされている個体の脳領域を刺激するように構成された脳刺激デバイス2800、例えば脳深部刺激デバイス又は経頭蓋磁気刺激デバイスを備えている。ある実施形態では、コンピュータシステム2600は、本開示の方法に従って脳の機能活動データに寄与する神経経路の解析に基づき脳刺激デバイスを制御するように構成されてもよい。例えば、個体が患っている神経障害に関連した神経経路の個体の活動が不十分であると神経経路解析が示す場合、コンピュータシステムは、神経経路を脳刺激デバイスを介して調節する関連した脳領域に適切な刺激を与えることにより、個体の脳の神経経路活動のレベルの均衡を再度保ってもよい。
【0088】
有用性
本開示の方法及びシステムは、個体の非侵襲的に得られる脳の機能活動データの基礎となる神経経路機構の理解が望まれる様々な用途に使用される。本方法及び本システムは、神経障害、例えばパーキンソン病の基礎となる神経経路の機構的理解を得る際、神経障害に関する診断/予後/予測ツールを提供する際、新しい治療(例えば医薬品開発及び/又は脳深部刺激のための)例えば細胞特異的な治験及び/又は周波数依存性の治験の開発に貢献する際、神経障害の中核症状、例えばパーキンソン病(PD)のジスキネジア及び/又は動作緩慢の進行のモニタを支援する際、神経障害の治療の効力などをモニタする際などに使用されてもよい。
【0089】
従って、本開示の態様は、上記に記載されているような方法及びシステムを使用して、神経障害に関連した神経回路レベルバイオマーカを識別する方法を含んでいる。本明細書に使用されているような「関連」は、障害の治療との関係を含む神経経路と神経障害とのあらゆる特異的な関係を指してもよい。関係は因果関係又は相関関係であってもよい。
【0090】
従って、本明細書に記載されているような脳の機能活動データの解析に基づき様々なニューロンサブタイプによって調節される神経経路の相対活動を推定する方法を使用して、神経障害に関連する一又は複数の態様に関して互いに異なる2つのグループの個体からの解析結果を比較することにより、神経障害に関連した神経回路レベルバイオマーカを識別してもよい。解析は、ニューロンサブタイプ特異的結合性推定値を脳の機能活動データに関する結合性モデルに個体のグループ毎に関連付ける一組の回帰係数を与えてもよい。その後、様々な組の回帰係数間の差測定を計算して、1つのグループの回帰係数の分布が別のグループの分布とは異なるか否かを判断してもよい。2つのグループが神経障害を患っている個体の症例グループ、及び神経障害を患っていない個体の対照グループである場合、差測定は、回帰係数の症例組が神経障害に関連した神経回路レベルバイオマーカであることを示してもよい。2つのグループが、神経障害を患って神経障害の治療を受けている個体の症例グループ、及び神経障害を患って神経障害の治療を受けていない個体の対照グループである場合、差測定は、回帰係数の症例組が神経障害の治療に関連した神経回路レベルバイオマーカであることを示してもよい。
【0091】
差測定は、異なる組の回帰係数間の関係のあらゆる好適な指標であってもよい。好適な差測定は、減算、除算、相関関係、偏差を含むが、これらに限定されない。ある場合には、差測定は、ピアソンの積率相関係数、スピアマンの順位相関係数、二乗平均平方根誤差(RMSE)、ユークリッド距離又は平均絶対偏差(MAD )である。
【0092】
差測定を閾値基準と比較してもよい。差測定が閾値基準を満たす場合、神経回路レベルバイオマーカと神経障害との関連性が存在すると結論付けられてもよい。ある場合には、閾値基準が閾値を有しており、閾値を超える(又は閾値未満の)差測定は、神経回路レベルバイオマーカと神経障害との関連性を裏付ける。ある場合には、差測定は統計的に有意な値、例えばp値であり、p値未満の差測定は、神経回路レベルバイオマーカと神経障害との関連性を裏付ける。
【0093】
別の態様では、本明細書に記載されているような脳の機能活動データの解析に基づき様々なニューロンサブタイプによって調節される神経経路の相対活動を推定する方法を使用して、個体の神経障害の治療に対する進行、予後及び/又は反応に関して神経回路レベルバイオマーカの予測値を評価してもよい。
【0094】
ある実施形態では、本明細書に記載されているような脳の機能活動データの解析に基づき様々なニューロンサブタイプによって調節される神経経路の相対活動を推定する方法を使用して、神経障害の治療法に関するパラメータを決定又は調節してもよい。ある場合には、脳刺激療法(例えば、刺激の周波数、刺激の標的、刺激の継続時間などの刺激パラメータを有する脳深部刺激、経頭蓋磁気刺激など)の刺激プロトコルを脳の機能活動の解析に基づき調節してもよい。
【0095】
神経障害はあらゆる好適な神経障害であってもよい。ある場合には、神経障害は神経疾患、又は加齢に関連した神経障害である。ある実施形態では、神経疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、てんかん、自閉症、双極性障害、統合失調症、トゥーレット症候群、強迫性障害、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、多発性硬化症又は片頭痛である。
【0096】
更なる実施形態
本開示の更なる実施形態を以下に記述する。
【0097】
本開示の実施形態は、a)動物データ、b)計算モデリング及びc)ヒトデータの3つのモジュールを含んでいる。
図8は、本開示の実施形態の3つのモジュール及びワークフローを示す。
【0098】
第1のモジュールは、動物の脳のデータの実験計画、計測、取得及び処理を含んでいる。このモジュールは、光遺伝学的ツール及び/又は他の神経調節ツールを用いて特異的なニューロンタイプを操作しながら、侵襲的記録及び/又は非侵襲的記録を使用して脳機能をマッピングする技術を与える。第2のモジュールは、動物データの計算モデリングを指す。第2のモジュールは、特異的なニューロンタイプの光遺伝学的(非)活性化によって駆動される神経障害及び/又は精神障害に関与している脳回路網を推定する。最後に、第3のモジュールは、ヒトの脳データの取得、処理及び回路網解析を構成している。第3のモジュールは、静止状態の条件中に疾患特異的なヒトの脳回路網への特異的な細胞型及び刺激周波数の寄与を検査して定量化する。
【0099】
M1:動物データ
第1のモジュールは、動物の細胞型及び周波数に特異的な神経画像データを収集すべく用いられる手順を含んでもよい。侵襲的/非侵襲的な神経記録に関連した
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を使用して、脳機能をマッピングしながら、異なる周波数の光パルスを使用して特異的な細胞の調節を可能にする。光遺伝学fMRI(ofMRI )は、脳領域間のニューロン結合性をインビボで調査するツールを与える。
【0100】
このモジュール内では光遺伝学的実験が行われ、実験は、特異的なニューロンタイプ(例えば興奮性錐体ニューロン及び/又は抑制介在ニューロン)を標的とし、次に特異的な脳回路(例えば基底核経路)を駆動する。特異的な細胞型によって駆動されるこれらの脳回路は、ヒトの脳データに観察される全分散に寄与してもよく、潜在的に本発明者らは、ヒトの脳回路網へのこのような特定の寄与を定量化することができる(より詳細には第3のモジュール参照)。
【0101】
例えば、基底核回路の2つのニューロンタイプの機能的有意性が調査されてもよい。基底核は、目標指向運動作用に重要な神経核の系統発生的に古く、進化的に保存されたグループである。ある場合には、回路モデルをヒトに変換するとき、及び治療介入を開発及び/又は試験するとき、進化的に保存された脳領域を考慮に入れてもよい。
図2は、マウス及びヒトの基底核−視床皮質複合体の解剖学的マスクを示す。
【0102】
基底核は、随意運動を制御する複数の相互に結合された皮質下神経核を含んでいる。基底核の2つの出力核、淡蒼球内節態様及び黒質(網様部)は視床を持続的に抑制し、皮質に投射を送信して運動を開始又は終了させる。この抑制出力は、線条体から延びる直接路及び間接路によって調整されると考えられている。線条体内で、2つの出力核に直接突出する中型有棘ニューロン(MSN )は、送信を促進するD1ドーパミン受容体を有している一方、間接路に突出する中型有棘ニューロンは、送信を低下させるD2ドーパミン受容体を有している。これらの経路は比較的よく特徴付けられ、組織分布的に分離され、機能的に反対であるので、異なるニューロンの寄与を分離するためのシステムを与え得る。
【0103】
これらの光遺伝学的実験では、基底核−視床皮質複合体の作業に対する背内側尾状核−被殻態様内の各ニューロンタイプの影響を確立してもよい。2つの光遺伝学的操作によって、静止状態データ中の脳活動の細胞型依存性反応及び周波数依存性反応に関する説明が与えられてもよい。表1は実験計画の例を示す。
【0105】
ある実施形態では、より多くのofMRI データが収集されてもよく、最初の計画が第2の要因で更新されてもよい。表2は、例えば、基底核回路の作業に対して高刺激周波数及び低刺激周波数でD1-MSN細胞型及びD2-MSN細胞型の個別の影響を評価し得る2×2要因計画を示す。
【0107】
ある実施形態では、線条体態様内の3つの異なる領域(亜領域)に照射してもよい。注目する亜領域は、例えば腹側線条体、背側尾状核及び背側前被殻を含んでいる。従って、第3の要因の定義及び実施は照明源の位置を含んでもよい。この要因を用いて、遠隔の脳領域への光刺激の空間効果を明らかにする新たな組のリグレッサを生成してもよい。
【0108】
M2:計算モデリング
計算モデリングツールボックスは、前のモジュール、つまり光遺伝学及びマルチモーダル記録技術を使用して収集されたデータから脳システムをモデル化して特徴付けてもよい。計算モデリングツールボックスは、撮像/記録技術−光遺伝学fMRI、LFP 、MUA 、SUA 及び光学撮像反応、及び生物物理学的モデリングイニシアチブ−メゾスコピック性質に基づき畳み込み原理及び/又はニューラルマスモデリング(NMM )に基づく動的因果モデリング(DCM )を含んでいる。計算モデリングと共に光遺伝学及び撮像方法を組み合わせることにより、脳回路網の生物学的基礎が理解されてもよい。
【0109】
上記に導入されているように、ofMRI を使用して基底核経路に関する2つの細胞型の寄与を調査してもよい。このモデリングユニット内では、スペクトルDCM (spDCM )を使用して脳領域間の有効な結合性を推定してもよい。刺激部位と同側の尾状核−被殻態様(CPu )、淡蒼球外節(GPe )、淡蒼球内節(GPi )、視床下核(STN )、黒質(SN)、視床(THL )及び運動皮質(MOT )態様から構成された7つのノードの脳回路網をモデル化してもよい。
【0110】
一般に、結合性アルゴリズムは、神経生物学的に妥当性のある候補間のデータの最も適切な生成モデルの識別に基づいてもよい。モデルを制限するために、拡散テンソルMRI 免疫組織化学データ及び/又は文献検索を通じて得られた解剖学的結合性情報を一般に使用する。特にこの場合、本発明者らは文献を検索して最も可能性が高い生成モデルを選択した。
図6は、この例で使用されてもよい結合機構の例を示す。
【0111】
ある実施形態では、上記に記載された他の実験(要因)、つまり高周波でのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激を同様に行って脳回路網の推定を続行してもよい。
図7A〜7Cで低周波刺激に関して行われたように、この解析は高周波での新たな組の回路網推定値を生成する。
【0112】
M3:ヒトデータ
ある実施形態では、第3のモジュールはヒトに行われる実験、データ収集及び解析を含んでいる。上述したように、本開示の態様は、動物(m
1、m
2、・・・)で収集されたデータを用いて構築されたモデルをヒトのfMRIデータに変換することを含んでいる。この手法によって、健康なヒトの脳及び罹患したヒトの脳の脳回路網機能の細胞型特異的な記述が与えられてもよい。動物モデルで既に検査されている脳回路網と同一の脳回路網が検査されてもよく、ヒトの脳の各細胞型依存性回路網及び周波数依存性回路網の寄与が、一般線形モデル(GLM )のような回帰分析又はサポートベクトルマシン(SVM )のような上級統計手法によって推定されてもよい。
【0113】
これらの解析は、個体(α
i 、β
i 、・・・)毎に回帰係数を生成してもよく、回帰係数は、注目する静止状態の脳回路網、例えば基底核−視床皮質回路への特異的な細胞型(及び周波数)の影響を明らかにし得る。これらの回帰係数、これ以降の神経生理学的スコアは、これらの個体に観察される行動、形質又は症状を潜在的に特徴付けられ得るベクトル部分空間を構成してもよい。そのため、これらのスコアの分布は個体(α、β、・・・)全体に亘って推定されて検査されてもよく、これらのスコアに関する統計的な差が、健康な脳と罹患した脳との間でグループレベルで調査されてもよい。この状況では、グループ解析はこれらの解析に適している。
【0114】
例えば、前の例を考慮すると、正常なヒトの脳及びパーキンソン病のヒトの脳の基底核−視床皮質回路網へのD1-MSN細胞型及びD2-MSN細胞型の寄与はrsfMRIによって定量化されてもよい。ある場合には、2つの光遺伝学的操作に関して、脳領域間の有効な結合性の2つの異なる統計的に略関連がないパターンが存在してもよい(
図7A〜7C参照)。言い換えれば、D1結合性推定値とD2結合性推定値との間でピアソンの相関係数rは0.02である。
【0115】
与えられたi番目のヒトの被験体の同一の静止状態回路網が推定されてもよく、D1-MSN細胞型及びD2-MSN細胞型の寄与が計算されてもよい。言い換えれば、多重線形回帰問題を以下の式(I) によって解いてもよい。
spDCM
i=α
i×[spDCM
D1-MSN]+β
i×[spDCM
D2-MSN]+ζ
i×[constant]
(式(I) 最初の実験計画を考慮した多重線形回帰)
【0116】
ここで、spDCM
iはi番目のヒトの被験体に関する回路網推定値(つまり結合性パラメータ)のベクトルであり、spDCM
D1-MSN及びspDCM
D2-MSNは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激に関する平均回路網推定値(例えば閾値処理された推定値)のベクトルであり、α
i 及びβ
i は、i番目のヒトの被験体の静止状態回路網への直接路及び間接路の寄与を示し、iは1〜N
sであり、N
sは参加者の総数である。
【0117】
グループ間の差を識別するとき、この手法は2つの(多変量)分布p(α
c ,β
c )及びp(α
p ,β
p )を生成してもよく、ここで、対{α
c ,β
c }及び{α
p ,β
p }は、対照のグループ及びパーキンソン病のグループに関する直接路回路網及び間接路回路網の寄与を夫々示す。2つのグループを比較することによって、神経生理学的スコアの分布の統計的な差p(α
c ,β
c )対p(α
p ,β
p )が観察されてもよく、この差は、D1-MSN細胞型及びD2-MSN細胞型に関するPDコホートの異常な神経生物現象を示し得る。
【0118】
上記に注記されているように、より多くの複合体実験計画、例えば2×2要因計画がある実施形態で使用されてもよい。同様に、より多くの光遺伝学的実験(要因)を用いることにより、同一の多重線形回帰手法を使用してもよい。例えば、上記の2×2要因計画を考慮すると、回帰モデルは以下の式(II)によって以下のように実施され得る。
spDCM
i=α
i×[spDCM
D1-MSN,low-frequency]+β
i×[spDCM
D2-MSN,low-frequency]+γ
i×[spDCM
D1-MSN,high-frequency]+δ
i×[spDCM
D2-MSN,high-frequency]+ζ
i×[constant]
(式(II) 2×2要因計画を考慮した多重線形回帰)
【0119】
ここで、spDCM
iはi番目のヒトの被験体に関する回路網推定値(つまり結合性パラメータ)のベクトルであり、spDCM
D1-MSN, low-frequency及びspDCM
D2-MSN, low-frequencyは、低周波でのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激に関する平均回路網推定値(例えば閾値処理された推定値)のベクトルであり、spDCM
D1-MSN, high-frequency及びspDCM
D2-MSN, high-frequencyは、高周波でのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激に関する平均回路網推定値(例えば閾値処理された推定値)のベクトルであり、α
i 及びβ
i は、i番目のヒトの被験体の静止状態回路網への低周波でのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激の寄与を示し、γ
i 及びδ
i は、高周波でのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激の寄与を示し、iは1〜N
sであり、N
sは参加者の総数である。
【0120】
次に、この手法は、新たな組の2つの(多変量)分布p(α
c ,β
c ,γ
c ,δ
c )及びp(α
p ,β
p ,γ
p ,δ
p )を生成してもよく、ここで、四重項{α
c ,β
c ,γ
c ,δ
c }及び{α
p ,β
p ,γ
p ,δ
p }は、対照のグループ及びパーキンソン病のグループに関する静止状態回路網への低刺激周波数及び高刺激周波数でのD1-MSN及びD2-MSNの寄与を夫々示してもよい。再度、2つのグループを比較することにより、神経生理学的スコアの統計的な差p(α
c ,β
c ,γ
c ,δ
c )対p(α
p ,β
p ,γ
p ,δ
p )が観察されてもよく、この差は、同様に細胞型及び刺激周波数に関して基本的な生物学に関する洞察を与えてもよい。
【0121】
要約すると、このモジュールは動物で既に推定されている脳回路網と同一の脳回路網を推定し、静止状態のヒトの脳データへの各細胞型(及び刺激周波数)回路網記述の寄与を確立する。このユニットは、診断ツールとしての機能を果たし、更に新たな治療(細胞特異的治験及び周波数依存性治験)の開発に更に寄与し得る一組の神経生理学的スコアを生成してもよく、症状の中核(例えばPDのジスキネジア及び/又は動作緩慢)の進行をモニタするのを潜在的に支援してもよい。
【0122】
細胞型
線条体内の全てのニューロンの90〜95%に相当する中型有棘ニューロン(MSN )は、2つの混合された亜集団を含んでいる。MSN の1つの亜集団は(物質P及びダイノルフィンと共に)高レベルのドーパミンD1受容体を発現し(D1-MSN)、他の亜集団は(エンケファリンと共に)高レベルのドーパミンD2受容体を発現する(D2-MSN)。
【0123】
生物物理学的モデリングイニシアチブ
スペクトルDCM は、分布した神経回路網の結合されたニューロン変動の生物物理学的に妥当性のあるモデルから予測交差スペクトルを生成する決定論的モデルである。ニューラルマスモデリング(NMM )は、平均された発火頻度及び膜電位によって表される神経集団全体の平均活動を記述する。両方の手法は、非侵襲性の脳の画像測定法、つまりfMRI、MEG 及びEEG のための生成モデルとして使用されてもよい。
【0124】
実施例
以下の実施例は、開示された主題をどのように作製して使用するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載されるのであって、本発明者らが自身の発明であるとみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が、行われた全ての又は唯一の実験であると表明することを意図するものでもない。使用された数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を確保するために努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮に入れられるべきである。別途記載のない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧であるか又は大気圧に近い圧力である。例えば、bp(塩基対)、kb(キロベース)、pl(ピコリットル)、s又はsec(秒)、min(分)、h又はhr(時)、aa(アミノ酸)、kb(キロベース)、bp(塩基対)、nt(ヌクレオチド)、i.m.(筋肉内)、i.p.(腹腔内)、s.c.(皮下)などの標準的な略語が使用され得る。
【0125】
実施例1:マウスに光遺伝学機能的磁気共鳴画像法(ofMRI )を使用する運動制御の基礎となる全体的な脳回路機構の細胞型特異的調査
D1中型有棘ニューロン(MSN )及びD2中型有棘ニューロン(MSN )をインビボで選択的に駆動するために、ドーパミンD1受容体調節要素又はドーパミンD2受容体調節要素夫々の制御下でCre リコンビナーゼを発現する細菌人工染色体(BAC )トランスジェニックマウス系統を使用した。double-floxed inverted(DIO )組換えアデノ随伴ウイルス(AAV )2ウイルスが背内側線条体に注入されて、ChR2黄色蛍光タンパク質(YFP )をCre 発現ニューロンに発現させて、両方の経路の選択的な光遺伝学的制御を可能にする。直接路の抑制性中型有棘ニューロン(D1-MSN)及び間接路の抑制性中型有棘ニューロン(D2-MSN)がインビボで選択的に駆動され得ることを確認するために、背内側線条体の光遺伝学的刺激を20秒間繰り返している間の動物の回転行動を評価した。既に示されているように、両方の線条体のD1-MSN又はD2-MSNの片側刺激は強い対側回転及び同側回転を夫々生じさせた(
図3C及び
図3F;刺激期間及び非刺激期間の同側性/対側性の差に関するウィルコクソンの符号付順位検定;D1,p = 0.0005;D2,p = 0.002 )。
【0126】
D1-MSN及びD2-MSN両方の刺激により、刺激部位でのインビボ細胞外記録中に線条体の発火頻度が著しく増加した(
図3B及び
図3E)。抑制性D1-MSN及び抑制性D2-MSNによって駆動される脳全体のBOLD反応を評価するために、光遺伝学的D1-MSN刺激又は光遺伝学的D2-MSN刺激を20秒間繰り返している間の脳全体の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を行った。fMRI画像の取得は、スライディングウィンドウ再構成を用いて25×25mm
2 の面内視野(FOV )及び0.36×0.36×0.5 mm
3 の空間分解能を有するように設計されており、繰り返し時間(TR)毎に画像を更新した。2次元マルチスライスグラジェントエコーシーケンスは4インターリーブスパイラルリードアウト、750 msのTR及び12msのエコー時間を使用し、23の冠状スライスを得た。スパイラルk空間サンプルは、2次元グリッド再構成法によって再構成された。最後に、特注設計のGPU ベースのシステムを使用してリアルタイム動き補正を行った。反復刺激に著しく同期したものとしてアクティブボクセルを識別した。刺激部位でのローカル信号は、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激の両方に関して正であり(
図3J)、抑制性ニューロンの活動が正のBOLD反応を誘発し得るという広く議論された問題点を確認したことが重要である。D2-MSN刺激はより大きな振幅のBOLD信号を生じさせたことが興味深い。これは、D2-MSNがより高い入力抵抗により所定量の電流注入に関してより興奮性を有することを示す以前の結果と十分一致している。
【0127】
その後、下流の基底核回路要素、例えば視床下核、黒質、淡蒼球、視床及び皮質を分割した(
図3I)。技術開発によって提供される高画質により、これらの領域の信号の検出に成功することができた。従来、fMRI信号は、空気−組織界面近くのこれらの領域に信号ドロップアウト及び大きな画像のゆがみを有している。高度なシミング法が、画質を改善するために高速撮像と組み合わせて利用された。更に、ロバストでリアルタイムの動き補正の使用により、小核から生じる信号を分解する能力が大幅に高められた。
【0128】
図3A-3Jは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激を用いたofMRI を示す。
図3Aは、背内側線条体の20Hz D1-MSN 刺激により、平均発火頻度(n = 120 ,100 %)の増加(
図3B)及び対側回転(n = 13,*** P<0.001 )の数の増加(
図3C)が生じたことを示している。
図3Dは、背内側線条体の20Hz D2-MSN 刺激により、平均発火頻度(n = 15,93%)の増加(
図3E)及び同側回転(n = 11,** P<0.005)の数の増加(
図3F)が生じたことを示している。
図3G及び3Hは、グループに関する活性化マップがD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に、基底核を含む皮質領域及び皮質下領域の大規模な調節を実証していることを示している。著しく変調されたボクセルは、20Hzの刺激を20秒間6回繰り返すサイクルに関する位相に応じて色分けされる。
図3Iは、
図3Jでの時系列抽出に使用された注目領域(ROI )を示す。
図3Jは、各ROI 内でのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中のアクティブボクセルの平均時系列(夫々、左/赤トレース及び右/青トレース)を示す。値は動物全体の平均値+/- s.e.m.である(n = 13(D1-MSN),11(D2-MSN))。反応の方向は、前方尾状核被殻及び淡蒼球外節(GPe )を除いて一般に反対である。
【0129】
GPe 、GPi 、STN 、SN、視床及び運動皮質を含む刺激部位以外の同側基底核−視床皮質ループの全ての領域では、所与の領域での誘発反応は、D1-MSN刺激とD2-MSN刺激との間で定性的に異なる時間的プロファイルを示した(
図3J)。一般に、D1-MSN刺激中に正の反応が誘発された一方、D2-MSN刺激中に負の反応が誘発された。時間パターンのこれらの差を定量化するために、各ROI 内のアクティブボクセルの平均位相を比較した。この値は、モデル化されたデータに最良適合するシヌソイドの時間的な変化を表した(
図4A)。前方尾状核被殻での変調されたボクセルの平均位相は、D1-MSN刺激とD2-MSN刺激との間で有意差がなかった(
図4B及び4C;p>0.05,循環的なワトソン−ウィリアムズの検定)。対照的に、GPe 、Gpi 、STN 、SN、視床、及び皮質の12に分割された全ての領域での誘発反応は有意差があった(
図4B及び4C;p<0.001 ,循環的なワトソン−ウィリアムズの検定)。誘発反応を更に特徴付けるために、次に各ROI の時系列の積分(ΣBOLD)を計算した(
図4D)。前方尾状核被殻を除いて、全てのROI は、D1-MSN刺激中に正の平均ΣBOLD値を示し、D2-MSN刺激中に負の平均ΣBOLD値を示した。この差は、基底核の出力核GPi 及びSN、視床、及び12に分割された皮質領域の内の10を含む、ほとんどの試験されたROI に亘って有意であった(p<0.05;両側t検定)。
【0130】
図4A〜4Dは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激が別個で反対のfMRI応答を駆動することを示している。
図4Aは、2つのfMRI時系列に関する位相計算を示す。
図4Bは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中の基底核視床皮質ループ内の位相値の分布を示す。太い矢印は動物全体の平均値を示す。前方尾状核被殻(刺激部位)を除いた全ての領域は著しく異なる位相値を示す(p<0.001 、循環的なワトソン−ウィリアムズの検定;D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激夫々に関してn = 12動物及び11動物)。
図4Cは、
図4Bの循環的なワトソン−ウィリアムズの検定からのp値のヒストグラムを示す。
図4Dは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激間の統計的な比較結果を用いたROI 毎のΣBOLD値の定量化結果を示す。
【0131】
D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激によって誘発されるBOLD反応の多様性を考慮すると、これら2つの反応の関係は、基本的なニューロン活動が次に検証されたことを反映していた。具体的には、ofMRI を用いて巨視的なスケールで測定された直接路及び間接路の反対の影響が、単一ユニットの活動レベルで更に存在した。従って、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激によって誘発される反応の差が夫々最小有意及び最大有意であり(
図4C)、ΣBOLDの符号が2つの刺激グループで夫々同一及び反対である(
図4D)線条体及び視床の細胞外記録を行った。D2-MSN刺激によって誘発される線条体のBOLD反応の大きさはD1-MSN刺激によって誘発される反応の大きさより僅かに大きいが、両方の時系列は、20Hzの光送達で明瞭且つ安定した増加を示した(
図5A)。2つの代表的ニューロンからのペリイベントヒストグラムは、両方の経路の刺激によって誘発されるBOLDの増加が反復試験に亘って発火頻度の増加と関連付けられていることを示した(
図5B)。実際、記録された略全てのユニットは発火頻度の著しい増加を示した(
図5C;D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激夫々に関して7動物全体でn=144/144 ユニット及び5動物全体でn=122/123 ユニット,p<0.05片側対応t検定)。線条体の刺激部位で観察されるBOLD信号とは異なり、視床のfMRI BOLD 信号はD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に反対の反応を示した。具体的には、誘発される時系列は、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激夫々で顕著且つ確実な増加及び減少を示した(
図5D)。2つの代表的ニューロンからのペリイベント時間ヒストグラムは、これらの変化が多くの反復試験で常に駆動され得るニューロン活動の対応する変化と関連付けられていることを示している(
図5E)。実際、全ての記録されたニューロン全体で単一ユニットの95%は、D1-MSN刺激中に発火頻度の増加を示した(
図5F;8動物全体でn=107/114 ユニット;p<0.05片側対応t検定)。D2-MSN刺激中に、記録されたユニットの1%のみが発火頻度の増加を示した(5動物全体でn=1/70ユニット;p<0.05片側対応t検定)。しかしながら、fMRI BOLD 信号と一致して、細胞の79%は、D2-MSN刺激中に発火頻度の減少を示した(
図5F;n=55/70 )。従って、ofMRI で測定された視床活動の直接路及び間接路の広範囲の反対の影響がニューロンレベルで更に確認された。
【0132】
図5A〜5Fは、ニューロン活動がD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体及び視床で誘発されるfMRI応答の極性を反映させることを示す。
図5Aは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激の両方が顕著な正のfMRI応答を駆動することを示している。動物全体の平均±s.t.e(D1及びD2夫々に関してn=12及び11)。
図5Bでは2つの代表的ニューロンのペリイベント時間ヒストグラムが、直接路刺激中及び間接路刺激中の両方で線条体のニューロン活動の即時且つ持続的な増加を示している。
図5Cは、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中に線条体の記録された略全ての細胞が発火頻度を増加させていることを示している。
図5Dは、D1-MSN刺激が顕著な正のBOLD反応を駆動する一方、D2-MSN刺激が視床で顕著な負の反応を駆動することを示している。動物全体の平均±s.t.e(D1及びD2夫々に関してn=12及び11)。
図5Eは、直接路の刺激がニューロン活動の持続的増加を誘発する一方、間接路の刺激がニューロン活動の即時且つ持続的な減少を誘発することを示している。
図5Fは、D1-MSN刺激中に記録された略全ての細胞が発火頻度を増加させている一方、D2-MSN刺激中に記録されたユニットの大部分が発火頻度を減少させていることを示している。
【0133】
実施例2:全脳回路の基底核経路の動的調節の計算モデリング
動的因果モデル(DCM )の概要
DCM は、一連の特定の摂動、つまり実験タスク中に相互に結合された領域の動的系として脳をモデル化する。ここで、摂動は実施例1に示されている光刺激であった。u(t)によって定められる単一入力が光遺伝学的操作の影響、つまり0及び1の二乗関数をコード化すると仮定すると、光遺伝学fMRI(ofMRI )応答に関するDCM の状態式及び測定式は以下の通りである。
状態モデル:(dx(t)/dt)=f(x(t),θ
n,u(t))=Ax(t)+Cu(t)+ω(t)
測定モデル:y(t)=g(θ
h)×x(t)+ε(t)
(式1 時間領域のofMRI 応答に関するDCM の状態式及び測定式)
【0134】
ここで、x(t)がニューロン状態を表し、θ
n =(A, C)はニューロンパラメータであり、Aは内在的結合強度のマトリクスであり、Cは光遺伝学的入力の強度を示し、g(θh)は、血管拡張、血流、血液量及びデオキシヘモグロビン量の変化によってニューロン状態x(t)を予測されるBOLD信号y(t)に関連付ける非線形畳み込み演算子であり、θ
h は血液動態パラメータである。
【0135】
スペクトルDCM
スペクトルDCM は、分布した神経回路網の結合されたニューロン変動の生物物理学的に妥当性のあるモデルから予測交差スペクトルを生成する決定論的モデルに基づいている。
【0136】
スペクトルDCM を使用して細胞型特異的ofMRI データをモデル化した。ニューロンレベル、つまりω(t) 及び観察レベル、つまりε(t) での変動をパラメータ化する一次の自己回帰モデル、つまりAR(1) プロセス(式1)は、以下のように周波数領域で書き換えられた。
状態モデル:X(f)=(j2πf−A)
-1(CU(f)+ω(f))
測定モデル:y(f)=G(θ
h)(j2πf−A)
-1(CU(f))+ω(f)+ε(f)
(式2 周波数領域のofMRI 応答に関するDCM の状態式及び測定式)
クロススペクトル応答:G
y(f)=Y(f)Y(f)
*=S(f)G
i(f)S(f)
*+G
ε(f)
(式3 クロススペクトル応答)
【0137】
ここで、G
u(f)=PSD{u(t)}、
【0139】
G
u(f) は実験入力のパワースペクトル密度(PSD )であり、G
ω(f)は、一次の自己回帰プロセスとしてパラメータ化された内在的神経変動のスペクトル密度であり、G
ε(f)は、一次の自己回帰プロセスとして更にパラメータ化された観察ノイズのスペクトル密度である。
【0141】
AR
1,ω及びAR
1,εは対応する自己回帰係数である。S(f)=G(θ
h)(j2πf−A)
-1は伝達関数(TF)を示し、G
i(f)=CG
u(f)C
T+G
ω(f)は入力関数を示す。この数式を用いて、内在的神経変動、つまりG
ω(f)項(確率論的モデリング)を含めることができるか、又は内在的神経変動を含めることができない(決定論的モデリング)。
【0142】
モデル反転及びベイズモデル選択(BMS )
式3に記述されているクロススペクトル応答を使用して、ラプラス近似の条件下で変動自由エネルギを用いてモデルを反転した。この研究では、負の自由エネルギの推定値がログモデル証拠への近似として使用された。モデリングの最適なタイプ(つまり、確率論的又は決定論的)を選択するために、fMRI応答のためのベイズモデル選択(BMS )を使用した。この設定では、最適なモデルの検索が適合と複雑性との最良のバランスを表すモデルの選択に対応した。被験体全体の潜在的な不均一性を説明するグループレベルの変量効果BMS 機構を更に使用した。神経変動を含めることにより、モデルが更に適合された。
【0143】
結果
ofMRI を使用して基底核経路に関する2つの細胞型の寄与を調査した。このモデリングユニット内では、スペクトルDCM (spDCM )を使用して脳領域間の有効な結合性を推定した。刺激部位と同側の尾状核−被殻態様(CPu )、淡蒼球外節(GPe )、淡蒼球内節(GPi )、視床下核(STN )、黒質(SN)、視床(THL )及び運動皮質(MOT )態様から構成された7つのノードの脳回路網をモデル化した。モデルを制限するために、文献の解剖学的結合性情報を検索して、神経生物学的に妥当性のある候補(
図6)間のデータに関する最も可能性の高い生成モデルを選択した。
【0144】
20HzのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激での測定されたofMRI 応答を、スペクトルDCM を使用してモデル化した。1つの領域から他の領域への情報の流れ全体を定量化する結合性(解剖学的結合性ではない)を、スペクトルDCM を使用して推定した(
図7A〜7C)。結果は、結合性推定値が2つのニューロンタイプの刺激の間で著しく異なり、2つの経路の別個の動態を反映していることを明瞭に示した。より具体的には、基底核の2つの出力核への線条体の結合は、D2-MSN刺激と比較してD1-MSN刺激中により大きく、この結果は文献に十分裏付けられている。同様に、運動皮質から視床への結合はD1実験で更により大きかった。他方で、視床下核から黒質への結合はD2操作でより強く、運動皮質から視床下核への結合はD2操作で負の極性を有した。
【0145】
従って、基底核回路の古典的モデルと一致するD1-MSN直接路に、線条体(Cpu )から淡蒼球内節(Gpi )及び黒質(SN)への直接の情報の流れのみが存在した。他方では、視床下核(STN )からSNへの情報の流れのみがD2-MSN間接路に存在した。これらの結果は、D2-MSNのベータ帯域刺激によって、運動皮質からSTN への強い抑制的影響がもたらされるという機械論的な関連付けの可能性(
図7B)が提供される。
【0146】
図7A〜7Cは、基底核経路によって駆動される全脳回路機能のスペクトル動的因果モデリングを示す。20HzのD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激を用いたofMRI データのスペクトル動的因果モデルによって、基底核経路全体の結合性(情報の流れ)が定量的に推定される。
図7Aは20HzのD1-MSN刺激を用いた結合性を示し、
図7Bは20HzのD2-MSN刺激を用いた結合性を示す。
図7Cは、D1(黒)MSN刺激実験及びD2(灰色)MSN刺激実験に関する平均結合性推定値を示す。黒い星印は、統計的に有意な結合を示す位置を表す。* p<0.1 、** p<0.01 、*** p<0.001 。
【0147】
実施例3:運動障害を細胞精度で診断するためのヒトfMRIデータの定量的モデリング
K23 NS075097及びP50 AG047366(Stanford ADRC)の一部として既に収集されたデータを使用する。5年のプロジェクトの間に、498 個体からの画像データを使用する。具体的には、パーキンソン病(PD)の245 人の患者、及びこれら2つの研究からの243 の神経生物学的に正常な対照データをこの計画に含める。研究仮説がこれらの集団に関係するので、軽度認知障害を有する被験体が含まれている。K23 からの118 の参加者(断続的な薬剤投与中の80のPD及び38の正常対照)は既に募集されており、全ての研究手順を完了した。P50 AG047366(Stanford ADRC)からの残りの370 の参加者(断続的な薬剤投与中の165 のPD及び205 の正常対照)は現在募集されている。スキャンに関して、厚さが4.0 mmの29の軸スライスを得て、2秒の繰り返し時間、30ミリ秒のエコー時間、80°のフリップ角、20cmの視野及び3.125 mmの面内空間分解能を与える64×64のマトリクスサイズのパラメータと共にT2* 強調グラジェントエコースパイラルイン−アウトパルスシーケンスを用いて、全脳をカバーするAC−PCラインと平行に0.5 mmのスキップで収集した。ADRCデータは、490 msのTR、30msのTE、45°のフリップ角、3mmの等方分解能で収集される。42スライスを取得する6(同時的に取得されるスライスの数)の加速係数、[1;5;2;6;3;7;4] の取得順序及び222 ×222 mmの視野と共にマルチバンド取得を使用する。
【0148】
実施例4:光遺伝学fMRIのための動的因果モデリングを用いた脳回路機能
概要
脳全体の同時的な測定から動的且つ細胞型特異的な結合性マップを開発するために実験を行った。このような動的因果モデリング(DCM )に関して光遺伝学fMRI実験を行い、細胞型特異的な脳全体の機能的な測定結果を得ることが可能になり、細胞型特異性を用いて分布した脳回路網の領域間の因果関係をパラメータ化するために使用した。脳全体の基底核−視床皮質回路網に適用されると、DCM は経験的に観察される時系列を正確に再現し、最も強い結合が光遺伝学的に刺激された経路の重要な結合であった。動的結合性の定量的且つ細胞型特異的な記述を使用して、神経回路の動態のシステムレベルでの理解を確定し、より有効な神経調節治療法の設計を容易にすることが可能である。
【0149】
導入部
神経系の重要な機能の多くは、運動制御を担う基底核−視床皮質回路を含む脳全体の大規模な分布した回路網によって調整される。多数の脳領域とニューロン集団との有効な結合性が、運動制御の基礎となる回路機構を理解するために決定された。有効な結合性は、脳領域間の因果結合又は指令された結合として従来、定められている一方、機能的な結合性は、脳領域間の相関関係を指す。これらの因果関係を決定することにより、基底核に関わる神経疾患の更なる理解を促進して、パーキンソン病のための脳深部刺激(DBS )のような運動障害のための治療法の最適化を可能にする。
【0150】
機能的MRI (fMRI)により、血液酸素濃度依存性(BOLD)信号のような代わりの血液動態反応を通じて大規模な脳回路網に亘る神経活動が非侵襲的に測定される。基底核−視床皮質回路網は細胞型特異的な回路網機能を定めるために使用され得る。線条体−基底核の主要な入力構造は、周囲の基底核の神経核に固有の抑制性投射を送信するD1受容体発現中型有棘ニューロン(D1-MSN)及びD2受容体発現中型有棘ニューロン(D2-MSN)を含む別個の細胞型を有している。D1-MSNは、基底核の2つの出力核、つまり淡蒼球内節及び黒質網様部に直接突出しており、下流の視床皮質回路の脱抑制によって運動行動を促進すると考えられている一方、D2-MSNは、淡蒼球外節及び視床下核を介して2つの出力核に間接的に突出しており、視床皮質回路を抑制することにより運動を抑制すると考えられている。
【0151】
光遺伝学fMRI(ofMRI )は、細胞型特異的な摂動によって生じる脳全体に亘る機能活動のモニタリングに使用され得る。例えば、基底核−視床皮質回路網に亘る活動の反対のパターンは、D1-MSN又はD2-MSNの選択的な刺激で特徴付けられた。脳全体に亘る時間信号パターンは正確に追跡され、基本的な単一ユニット電気生理学と略一致することが分かっている。
【0152】
本明細書で行われている実験では、動的因果モデリング(DCM )を使用して、細胞型特異性を有する分布した脳回路網の領域間の因果関係をパラメータ化した。DCM は、神経画像データの様々な回路網モデルに関する結合(有効な結合性)及び証拠を推定することを可能にするベイズ手法である。非線形モデル、確率手法及びスペクトル構築を含む幅広い種類のモデルを使用してもよい。確率論的DCM では、有効な結合性及び内在的(ニューロン)変動の両方が推定される。同時EEG-fMRI記録を使用して確率論的DCM が神経生物学的検証の対象にされて高い再現性を提示することが示された。スペクトルDCM (spDCM )は内在的変動をパラメータ化して、ニューロン活動の決定論的モデルを適合させ、確率論的DCM と比較して計算速度を著しく上昇させる。
【0153】
この実施例では、スペクトルDCM を使用して、細胞型特異性を有する基底核−視床皮質回路網領域間の相互作用を調査し、観察された活性化パターンを有効な結合性強度を表す定量パラメータに関連付けた。動的因果モデリング手法を使用して、基底核を越えて細胞型特異性を有する脳全体の回路網を実証する機能的関係性を決定した。
【0154】
結果
ofMRI データの動的因果モデリング
D1-MSN刺激ofMRI データ及びD2-MSN刺激ofMRI データを計算的にモデル化して有効な結合強度を識別するために、スペクトルDCM を使用した。fMRIに関して、DCM を時系列に直接適合させる(標準DCM)、又はフーリエ変換を適用した後のデータの相互スペクトル密度に適合させる(スペクトルDCM )ことができる。標準DCM 及びスペクトルDCM の両方は、実験効果を越えて内在的変動を更に含むことができる。実験効果及び内在的変動は通常共に考慮されないが、この実施例で使用されるfMRI時系列は、光遺伝学的に制御される実験刺激(つまり決定論的入力)下で導き出され、同一データの決定論的モデル及び確率論的モデルの比較を可能にした。確率論的な内在的変動がデータを説明するために必要であるか否かを更に決定した。従って、内在的変動を有するスペクトルDCM 及び内在的変動を有さないスペクトルDCM を用いてベイズモデルの比較を行った。スペクトルDCM の適合の質を定量化するために、スペクトルDCM からの事後推定は標準(確率論的)DCM で事前推定として使用され、時系列は再度反転された。このため、その後、観察された信号と比較される時間領域の予測反応が与えられた。回路網モデルが、既知の基底核の解剖学的構造に基づき先験的生成モデルとして使用するために選択された。尾状核−被殻(CPu )、淡蒼球外節(GPe )、淡蒼球内節(GPi )、視床下核(STN )、黒質(SN)、視床(THL )及び運動皮質(MCX )を含む7つのノード脳回路網を使用した。運動皮質を感覚皮質(SCX )に置き換えることにより定められる代替の回路網を更にモデル化して、回路網に対する摂動の際の結合性推定値の安定性として本明細書に定められている回路網の安定性を検査した。
【0155】
解剖学的な注目領域がノード毎に定められ、ボクセル平均されたfMRI時系列が抽出された(
図9A〜
図9D)。
図10A 及び
図10B は、研究全体に亘って使用された生成モデルの先験的結合機構を示す。結合性推定値が、時系列を10の異なる遮断周波数でローパスフィルタした後に計算され、各結合の有意性が、被験体全体で結合性推定値をゼロに対して試験することにより各遮断周波数で決定された(D1:n = 12及びD2:n = 10)。偽発見率(FDR )を使用して、(被験体間レベルで)回路網結合の多くの試験に関して生じるp値を補正した。p値の有意な変動性が遮断周波数全体で観察された(
図11)。モデルの最終出力に関して、有意な結合及び略有意な結合の数の加重和を最大化するフィルタ遮断周波数を選択した。0.05未満の補正されたp値を有する結合が有意とみなされた一方、0.05と0.10との間の補正されたp値を有する結合は略有意とみなされた。D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激並びにMCX 回路網及びSCX 回路網下で結合を比較するとき、統計的有意性のために同一の基準を適用した。
【0156】
モデル内の内在的変動及び観察ノイズパラメータをモデル化するために、振幅係数及び自己回帰モデル係数によってパラメータ化された一次〜四次の自己回帰モデルを使用した。上記に記載されているように、各回路網の内在的変動の重要性が、確率論的モデリング及び決定論的モデリングに関するモデル方程式で内在的変動を有する結果及び内在的変動を有さない結果を夫々比較することにより更に決定された。特に、変量効果ベイズモデル選択(BMS )を使用して、最大のモデル証拠を与える2つのモデリング手法のいずれか、言い換えれば正確性と複雑性との最良のバランスを選択し、自己回帰プロセスの最適な順序を調べた。本明細書に記述されている実験は、自己回帰モデリング、内在的変動を有するモデル及び内在的変動を有さないモデルの比較、並びにローパスフィルタ遮断周波数の最適化された選択を含んでいる。
【0157】
D1-MSN刺激回路網及びD2-MSN刺激回路網
D1-MSN刺激中の有意な結合は直接路の活性化とほとんど一致した(
図12A 及び12D )。被験体全体の95%信頼区間、補正されていないp値及び補正されたp値と共に平均結合性推定値が、
図13に示されている表3に記載されている。注目すべきことに、MCX 回路網及びSCX 回路網の両方で最も強い結合性推定値を示す投射がCPu からGPi (MCX 回路網の平均結合性推定値:0.9177Hz,p値[補正]:0.0072)であり、CPu からSN(MCX 回路網の平均結合性推定値:0.9155Hz,p値[補正]:3.6572×10
-5)であり、これらは直接路の2つの定められた結合である。標準(確率論的)DCM で事前推定としてスペクトルDCM からの事後推定を使用する際に、結果として生じる時系列は、MCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデルの両方に関して脳領域全体に亘る経験的に観察されたBOLD反応の振幅、極性及び遅延を再現した(
図12B 及び12E )。一般に、(内在的変動を有する)確率論的モデルは決定論的モデルより優れていた。MCX 回路網では、確率論的モデリングの超過確率(つまり、このモデリング手法が考慮対象のあらゆる他のモデリング手法より可能性が高い確率)は0.9148であった(
図12C )。SCX 回路網では、確率論的モデリングのモデル超過確率は0.5918であった(
図12F )。
【0158】
D2-MSN刺激に対する脳全体のfMRI応答はD1-MSN刺激によって誘発されるfMRI応答とは著しく異なった。特に、皮質下領域の多くが刺激中に信号の減少を示した。上述した同一の先験的回路網を使用することにより、間接路の活性化を反映した有意な結合がもたらされたことが重要である(
図14A 及び14D )。被験体全体の95%信頼区間、補正されていないp値及び補正されたp値と共に平均結合性推定値が、
図15に示されている表4に記載されている。MCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデルの両方の最大の結合はGPe からSTN (MCX 回路網の平均結合性推定値:1.1176Hz,p値(補正):5.7809×10
-4)であり、これは間接路の重要な投射であった。これらの事後推定から計算された時系列は、視床内の顕著な負の信号のようなD2-MSN刺激によって生じた別個のBOLD反応と更に正確に一致した(
図14B 及び14E )。D1-MSN刺激のように、確率論的モデルは被験体の大部分で決定論的モデルより優れていた。確率論的モデリングの超過確率は、MCX 回路網で0.6025であり(
図14C )、SCX 回路網で0.7529であった(
図14F )。
【0159】
モデル推定と基本的な生理学との密接な関係の観点から、同一のモデリングの枠組を使用して、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中の回路網を推定した。生成モデル、変動及び事前推定は同一のままであった。これは、提案されたアルゴリズムが様々な光遺伝学fMRI実験をパラメータ化する際に使用するために一般化され得ることを実証した。
【0160】
MCX 回路網モデルとSCX 回路網モデルとの比較
D1-MSNで駆動される回路網の安定性を検査した。SCX とのMCX の交換はモデル内のあらゆる結合の強度を変えず(
図16A 及び
図17(表5))、運動皮質及び感覚皮質がD1-MSN刺激中に基底核回路に対して相応する影響を一般に及ぼすという考えを裏付けている。同様に、D2-MSN刺激モデルに関して運動皮質を感覚皮質と置き換えることにより、領域間の結合性推定値の強度は著しく変わらなかった(
図16B 及び
図17(表5))。皮質内の自己結合の強度のみが置換後に異なった(略有意,p<0.10)。まとめると、これらの結果は、D1-MSN刺激回路網及びD2-MSN刺激回路網での動的因果モデリングの安定性を実証した。
【0161】
D1-MSN刺激回路網モデルとD2-MSN刺激回路網モデルとの比較
D1-MSN刺激回路網モデルとD2-MSN刺激回路網モデルとを定量的に比較するために、各モデルの生じた結合性推定値の統計比較を行った(
図18及び
図19(表6))。CPu からGPi への結合及びCPu からSNへの結合、つまり直接路の定められた投射は、MCX 回路網及びSCX 回路網の両方でD1-MSN刺激中に著しく増加した。STN からSNへの結合、つまり間接路内の別の有意な投射は、SCX 回路網でD2-MSN刺激中に増加した(略有意,p<0.10)。D1-MSN刺激とD2-MSN刺激との間で皮質の遠心性神経の強度の差が更に観察された。他方では、MCX からTHL への結合が、D1-MSN刺激中に著しく増加した。これらの投射は一般に、D1-MSN刺激中に正であり、D2-MSN刺激中に負であった。更に、D1-MSN刺激とD2-MSN刺激との間で領域内推定値に複数の有意差が存在した(
図19(表6))。
【0162】
CPu 内の自己結合パラメータの大きさが、MCX 回路網及びSCX 回路網の両方のD1-MSN刺激中に著しく増加した(更に負であった)。GPe では、自己結合パラメータの大きさが、MCX 回路網でD2-MSN刺激中に著しく増加した(更に負であった)。更に、GPi の自己結合パラメータの大きさが、SCX 回路網でD2-MSN刺激中に増加した(更に負であった)(略有意、p<0.10)。同様にSTN の自己結合パラメータの大きさが、MCX 回路網でD2-MSN刺激中に増加した(更に負であった)(略有意、p<0.10)。SN内の自己結合パラメータの大きさが、MCX 回路網及びSCX 回路網の両方でD2-MSN刺激中に著しく増加した(更に負であった)。最後にSCX 回路網では、SCX の自己結合パラメータの大きさが、D2-MSN刺激中に著しく増加した(更に負であった)。
【0163】
検討
基底核経路の回路図が解剖学的結合性及び電気生理学的活動を分離して測定することにより従来通り示されているが、これらは脳全体に亘って同時に直接測定されなかった。本明細書に開示されたモデルは、生きた被験体で測定されたデータに基づき細胞型特異的な動的脳回路図を構築するために脳全体の光遺伝学fMRI測定値を利用している。これらの実験では、D1-受容体発現線条体MSN 又はD2受容体発現線条体MSN の細胞型特異的な刺激中に誘発されるfMRI応答によって測定される脳全体の回路網機能をパラメータ化することができる計算手法が開発された。意外にも、D1-MSN刺激中の最も強い結合はCPu からGPi 及びSNまでの遠心性神経であったが、D2-MSN刺激中の最も強い結合はGPe からSTN であった。これらは夫々直接路及び間接路の重要な投射であった。2つの刺激グループの結合性推定値を比較することにより、直接路に属する結合がD1-MSN刺激中により大きく、間接路に属する結合がD2-MSN刺激中により大きかったことが更に示された。これらの結果により、細胞型特異的な介在の下の分布した回路網内の有効な結合性の選択的な変化を検出して、領域間の有効な結合性が活性化された細胞型によってどのように決まるかを明らかにするという本明細書に開示された方法の能力が確認された。形式上、本明細書は、基底核−視床皮質系の既知の機能解剖学及びシナプス回路にアピールすることにより光遺伝学fMRI DCMの構成検証結果を提示している。
【0164】
確率論的モデルは、回路網及び刺激グループ全体に亘って決定論的モデルより優れていた。確率論的モデルによって示されたより大きなモデル証拠は、実験刺激によって厳密に説明することができない神経突起が存在したことを示唆した。従って、内在的変動を説明する確率論的モデリングは、測定データを説明するために正確性と複雑性との最良のバランス(つまり最大のモデル証拠)を提供する(
図20のA〜D)ので、将来のモデリング研究に最適であって、実験全体に亘って更なる一般化を提示し得る。これらの内在的変動の複雑性の最適度を、増加する次数の自己回帰モデルの適合により更に検査した。結果は、局所的な時間的相関関係(例えばAR(1) プロセス又はAR(2) プロセス)の比較的低い次数が回路網及び刺激グループ全体に亘って最適であることを示した(
図20のE〜H)。
【0165】
運動皮質を感覚皮質と置き換えることにより、基底核−視床皮質回路内の結合性パラメータの安定性が実証された。MCX をSCX に置き換えるとき、領域間の結合性推定値の強度に有意差が観察されず(
図17(表5))、両方の回路網モデルは同様の結合をもたらした(
図13(表3)及び
図15(表4))。この性質は、因果推定アルゴリズムがロバストであるとみなされることに当てはまる。しかしながら、どちらかのモデルを選択したことにより、D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激に亘って統計効果が変わったことに注目すべきである(
図13(表3)及び
図15(表4))。例えば、視床から皮質への結合は、D2-MSN刺激中にSCX 回路網モデルに統計的有意性がなく、刺激部位から皮質への経路を残さず、従って、基底核−視床皮質系内の因果関係の解釈が損われた(
図14D )。この点に関して、MCX 回路網モデルは、両方の摂動中に視床から皮質への結合及び皮質から線条体への結合を含む、系統全体に亘る領域間の因果関係を示したので、SCX 回路網モデルより機構的な洞察を提供し得る(
図12及び
図14)。D2-MSN刺激中の視床から感覚皮質への因果関係は検出されず、これは、視床がD2-MSN刺激中に感覚皮質ではなく運動皮質に直接影響を及ぼし得ることを示し得る。このため、両方の回路網モデルを用いて観察された反応の正確な予測が妨げられなかった。これは、回路網モデルに明示的に含まれなかった隠されたニューロン反応を説明することができるモデル方程式の内在的変動が包含されているためであり得る。
【0166】
D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激中の有意な結合の符号は、fMRI応答の時間的プロファイル及び極性の多様性と一致していた。例えば、D1-MSN刺激中、基底核全体に亘る時系列は増加した。予期した通り、基底核−視床皮質系全体に亘る有意な結合性推定値は正であった(
図12及び
図13(表3))。感覚皮質の最初の低下がこの例外とみなされ得るが、実験モデルは、この一時的な現象を皮質の活性化での遅延の反映として解釈した。D2-MSN刺激中、結合性推定値はCPu から皮質に至るまで正であった(
図14及び
図15(表4))。しかしながら、特に視床でのBOLD反応は、一般的に刺激中に減少した。従って、間接路のフィードフォワード態様は、STN 、GPi 、SN及び視床内に観察された反応の減少について説明しなかった。それにもかかわらず、信号が皮質を通過すると、この問題点は解決され得る。
図14に示されているように、皮質からSTN への結合は著しく負であったが、STN からGPi への結合、GPi からTHL への結合及びSTN からSNへの結合は正であった。この経路に沿って乗算演算を適用すると、STN 、GPi 、SN及びTHL 内に負の反応がもたらされ、この経路が、D2-MSN刺激中に統計的に有意であって負であり、これらの領域内の負のBOLD反応について説明するハイパー直接路であり得ることが示された。
【0167】
正常な基底核情報処理の理解を越えて、結果は、この回路網の欠陥から生じる運動障害の機構に対する洞察を与えた。例えば、光遺伝学的に駆動するD2-MSNは、直接路及び間接路の活動に不均衡を生じさせることにより、パーキンソン病(PD)に関連付けられている線条体のドーパミンの損失をシミュレートした。D2-MSN刺激からの結合性解析は、PDに一般に観察される複数の特徴を明らかにした。第一に、系統的に更に負の自己結合パラメータが、D1-MSN刺激と比較して、D2-MSN刺激中に基底核の神経核(STN 、Gpe 、Gpi 及びSN)内に観察された。自己結合の多くは、MCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデルの両方でD1-MSN刺激とD2-MSN刺激との統計的に有意な差又は略有意な差を示した(
図19(表6))。状態方程式の数学的な解決(以下の方法の詳細を参照)に基づき、更に負の自己結合強度が、活性化状態に達するために必要な時間がより短いことを示した。この1つの解釈は、基底核内の脳領域がD2-MSN刺激中に、より速く同期したということであった。STN 及びGPi の同期性及び神経発振の増加が、PDの霊長類モデル及び齧歯類モデルに観察された。PDのサルにおいてSTN 活動が下流の基底核活動と相互に関連することが更に示されている。STN 発振とPD症状との因果関係は定義しにくいままであるが、随意運動、ドーパミン補充療法及びSTN-DBS 療法によって病理学的発振が抑えられることが示された。PDへの別のあり得る関連性として、D1-MSN刺激中ではなく、D2-MSN刺激中に統計的に有意なMCX-STN 結合及び略有意なSCX-STN 結合が観察された。皮質−STN 相互作用がPD機構に関与していた。ある場合には、STN 刺激の抗パーキンソン病作用がM1-STN経路の選択的活性化に起因する。
【0168】
PDのための神経刺激療法は、基底核−視床皮質系のニューロン活動を調節することを目的としている。臨床的に、DBS によりPDの運動症状の処置を対象とする最も一般的な脳領域はSTN 及びGPi である。PDのDBS のための正確な作用機序が不明瞭なままであるが、多くの仮説が提案されている。例えば、DBS は、基底核とM1のような皮質領域との間の異常な同期発振活動を調節し得る。治療法の代替案として、最近のデータは、硬膜外の長期間運動皮質刺激(MCS )がPDのような運動障害に起因する症状を更に改善し得ることを示した。MCS のための可能な作用機序の中には、STN 刺激と同様に、基底核の神経核での同期した発振活動を低下させると仮定されている。本明細書に開示された実験で開発された結合性解析を使用して、治療標的として異なる領域の有効性を解明してもよい。例えば、運動皮質がD2-MSN刺激中に皮質下構造とのより強い結合性を示すという結果は、運動皮質の調節がパーキンソン病の回路にバランスを取り戻し得ることを示し、この領域が基底核回路網活動の下方調節に重要な役割を果たすことを示した。
【0169】
D1-MSN刺激とD2-MSN刺激との有意な領域間結合及び略有意な領域間結合の別個の統計的に略関係がないパターンが存在した(MCX 回路網モデル及びSCX 回路網モデル夫々に関してピアソンの相関関数r=−0.0036及び−0.0165)。分散空間表現では、有効な結合性の直交配置を使用して識別性を最大化してもよい。例えば、直交配置は、別個の細胞型を有する2つの集団の個別の同一性及び処理内容を維持する際に有用であり得る。加えて、統計的に関係がないパターンを用いて2つの独立したシーケンス(例えば一組の運動プログラム)を同時的に放出し、(例えば大脳皮質内で)受信情報を後で分離することができる。
【0170】
本開示の方法は、特異的な細胞型によって駆動される脳領域間の因果的影響を決定するために使用されてもよく、この因果的影響は、光遺伝学fMRI及び本明細書に開示されている回路網モデルを利用することにより健康な脳及び罹患した脳で定量化されて比較され得る。特異的な細胞集団によって駆動される神経経路がどのようにPDのような疾患に寄与するかを知ることにより、疾患の定量的回路機構に基づく治療の開発を支援し、有効性を高めて副作用を削減した改善された対象の治療法がもたらされる。
【0171】
方法の詳細
実験モデル及び被験体の詳細
マウス
遺伝子発現神経系アトラス(GENSAT)からの細菌人工染色体(BAC )介在トランスジェニックマウス系統を被験体として使用した(オス、18〜20g、4週齢以下)。マウスは、ドーパミンD1受容体(BAC-Cre Drd1a-262マウス、RRID:MMRRC_017264-UCD)調節要素又はドーパミンD2受容体(BAC-Cre Drd2-44マウス、RRID:MMRRC_017263-UCD)調節要素のいずれかの制御下でCre リコンビナーゼを発現した。double-floxed inverted(DIO )組換えAAV1ウイルスAAV-EF1a-DIOhChR2(H134R) - EYFP を背内側線条体に注入し(+0.48mm Ap、−1.50mm ML、−3.00mm DV)、D1発現中型有棘ニューロン又はD2発現中型有棘ニューロンにチャネルロドプシン2を発現させた。Addgene プラスミド#20298 を使用してノースカロライナ大学のvector core からウイルスを得た。動物を、カニューレを埋め込んだ後に個々に収容して、食物及び水を適宜与えた。全ての実験手順及び動物の飼育を、NIH のガイドライン、UCLA Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC )のガイドライン及びスタンフォード大学IACUC のガイドラインに厳密に従って行った。動物は、ofMRI 実験に先立って機能性オプシン発現を確認するために行動回転試験に関与していたが、その他の点では実験に使われておらず、健康であった。比較されるグループ(D1-MSN刺激及びD2-MSN刺激)は単に動物の遺伝的性質(つまりD1-Cre及びD2-Cre)によって決定されたので、動物を実験グループに割り当てるためのランダム化手順は必要ではなかった。サンプルサイズを推定するための手順を使用しなかった。
【0172】
方法の詳細
ofMRI 実験
7 Tesla Bruker Biospec小動物MRI システムを使用してfMRIスキャニングを行った。単一のofMRI スキャンは、6分間に亘って1分間に1回与えられる光刺激の6つの20秒のパルス列を含んだ。光刺激を、105 mm直径の光ファイバを介して30%のデューティサイクルで20Hzで与えた。473 nmのレーザ源(Laserglow Technologies,Toronto,ON)に接続された光ファイバは較正されて2.5 mWの出力電力を有した。fMRIスキャニング中、動物を、O
2(35%)、N
2O (65%)及びイソフルラン(0.4 %〜0.7 %;Henry Schein,Melville,NY,USA)の混合物を使用して較正済の気化器(Vet Equipment,,Pleasanton,CA,USA)で非常に軽く麻酔しながら、磁石のアイソセンタに置いた。空気流加熱器(SA Instrument,Stony Brook,NY,USA)を使用して体温を36〜38℃に維持した。グラジェントエコー(GRE )BOLD法を使用して、光刺激中のfMRI画像を得た。fMRI画像の取得は、スライディングウィンドウ再構成を用いて25×25mm
2 の面内視野(FOV )及び0.36×0.36×0.5 mm
3 の空間分解能を有するように設計されており、繰り返し時間(TR)毎に画像を更新した。2次元マルチスライスグラジェントエコーシーケンスは4インターリーブスパイラルリードアウト、750 msのTR及び12msのエコー時間を使用して23の冠状スライスを得た。スパイラルk空間サンプルは、2次元グリッド再構成法を通して再構成された。最後に、特注設計のGPU ベースのシステムを使用して、リアルタイム動き補正を行った。
【0173】
加熱、及び視覚に関連するアーチファクトを避けるために、ofMRI 実験中に予防策を講じた。視覚に関連するアーチファクトを確実に生成させないために、各被験体の目を黒い絶縁テープで慎重に覆った。光ファイバケーブルと埋め込まれたカニューレとの接続部分も、光のあらゆる漏れを防ぐために黒いテープで覆った。更に、加熱を防ぐために、刺激は30%のデューティサイクルで2.5 mWであった。使用された105 mm直径のファイバを考慮したこれらの数により、86.6mW/mm
2の時間平均光パワー密度になる。56〜167 mW/mm
2の時間平均光強度の範囲は、あらゆるアーチファクト由来の反応を引き起こした範囲をはるかに下回る。光遺伝学的なD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激が単に正のローカルBOLD信号をもたらしたことを示す結果に加えて、これらのデータは、加熱交絡因子が現在の実験に存在しなかったことを実証した。
【0174】
ofMRI データ処理
各動物の個々のスキャンに対応する動き補正画像を、まずNiftyRegツールボックスを使用して単一の共通座標フレームに並べた。次に、MATLAB(MathWorks,Natick,MA)のmrVista ソフトウェアパッケージ(Vision Imaging Science and Technology Laboratory,Stanford University,CA)を使用して刺激部位の平均コヒーレンス値を計算することにより、各画像の信号品質を定量化した。スキャニングセッション及び動物毎に、N個の最良の動き補正画像を平均した。ここで、Nは典型的には14であり、10以上である。最後に、統計的パラメトリックマッピングツールボックス(SPM12,Welcome Trust Centre for Neuroimaging,London,UK)を使用してスライス−タイミング補正及び画像の平滑化(4mm FWHM ガウスカーネル)を行った。
【0175】
刺激に先立って収集された30秒のベースライン期間に関連したBOLD信号の変調率として時系列をボクセル毎に計算した。起こり得るスキャナドリフトを補正するための時間的なトレンド除去及び平均補正後、デジタル規格マウス脳地図からの解剖学的領域を使用して、注目領域(ROI )特異的な解析のために脳を分割した。最後に、時系列を各ROI 内の全てのボクセルに亘って平均した。
【0176】
動的因果モデリング
動的因果モデリング(DCM )は、一連の特定の摂動又は実験タスク中に、相互に結合された領域の動的系として脳をモデル化する。ここで、摂動は光刺激であった。u(t)によって定められる単一の決定論的入力が光遺伝学的操作の影響(つまり、レーザがオフであるときに0の二乗関数、及びレーザがオンであるときに1の二乗関数)をコード化し、u(t)が、内在的変動と称される確率論的領域依存の障害を表すと仮定すると、式1は、時間領域のofMRI 応答の一般的DCM の状態空間モデルを示す。
(dx(t)/dt)=f(x(t),θ
n,u(t))=Ax(t)+Cu(t)+ω(t),
y(t)=g(x(t),θ
h)+ε(t) (式1)
【0177】
ここで、x(t)がニューロン状態であり、θ
n =(A, C)はニューロンパラメータであり、Aは内在的結合強度のマトリクスであり、Cは光遺伝学的入力の強度であり、g(x(t),θ
h) は、血管拡張、血流、血液量及びデオキシヘモグロビン量の変化によってニューロン状態x(t)を予測されるBOLD信号y(t)に関連付ける非線形演算子であり、θ
h は血液動態パラメータであり、ε(t)は観察ノイズである。この研究では、入力関数u(t)を特にCPu 回路網ノードに適用してインビボ光遺伝学的刺激の影響をモデル化した。関数f(x(t),θ
n,u(t)) 及び関数g(x(t),θ
h) は、Friston らによって導入された関数と同一である。
【0178】
スペクトルDCM
スペクトルDCM は、分布した神経系の結合された内在的変動の生物物理学的に妥当性のあるモデルから交差スペクトルを予測した決定論的モデルに基づいている。適切な脳回路網モデルを生成するために内在的変動及び観察ノイズを考慮に入れるべきである。そのため、内在的変動(及び観察ノイズ)の性質をパラメータ化する必要がある。この研究では、本発明者らは、内在的変動u(t)及び観察ノイズε(t) を自由なパラメータとして振幅及び自己回帰係数と共にパラメータ化した一次〜四次[つまり、AR(1) プロセス〜AR(4) プロセス]の自己回帰モデルを選択した。このステップを、SPM12 ツールボックスで関数spm_csd_fmri_mtf.mを変更することによって行った。関数f(x(t),θ
n,u(t)) 及び関数g(x(t),θ
h)の線形化後、式1を周波数領域で書き直すことができる。式2は、周波数領域のofMRI 応答のDCM の状態空間モデルを示す。
【0180】
上記に記載されているように、スペクトルDCM は、観察されたBOLD反応の相互スペクトル密度Y(f)を予測した。式3は、ofMRI に関するDCM のクロススペクトル応答を示す。
【0182】
ここで、G
u(f) は実験入力のパワースペクトル密度であった。G
w,n(f)は、n次の自己回帰プロセスとしてパラメータ化された内在的変動のスペクトル密度であった。G
ε,n(f)は、n次の自己回帰プロセスとして更にパラメータ化された観察ノイズのスペクトル密度であった。これらの項はFriston らによって導入された項と同一であったが、G
w,n(f)及びG
ε,n(f)は自己回帰プロセスとしてパラメータ化された。σ
2w,n及びσ
2ε,nは、n次の対応する自己回帰プロセスの分散であり、AR
w,n及びAR
ε,nは対応する自己回帰係数であった。この数式を用いて、内在的変動をG
w,n(f)項によって含めることができる(確率論的モデリング)、又は除外することができる(決定論的モデリング)。そのために、関数spm_csd_fmri_mtf.mをSPM12 で変更した。
【0184】
式4は、ofMRI に関するDCM のクロススペクトル応答の簡略版を示す。
【0186】
実験計画
D1-MSN刺激実験及びD2-MSN刺激実験を無作為化した順序で行った。モデルを実施する研究者は、個々の被験体の実験グループを知らされていなかった。サンプルサイズを推定するための手順を使用しなかった。
【0187】
定量化及び統計解析
有効な結合性推定値の計算
データのオーバーフィッテングを避けるために、生の時系列をローパスフィルタした後に生成モデルを推定した。4つの回路網モデル毎に、被験体全体の平均時系列を適合させて、AR(1) プロセスの一次導関数が4´10
-5以下である周波数を計算することにより、適切な遮断周波数を領域毎に推定した。D1-MSN刺激中、領域全体に亘って、0.2489Hzの平均遮断周波数及び0.2137〜0.2841Hzの95%信頼区間がMCX 回路網に関して得られ、0.2533Hzの平均遮断周波数及び0.2209〜0.2858Hzの95%信頼区間がSCX 回路網に関して得られた。D2-MSN刺激中、0.2623Hzの平均遮断周波数及び0.2241〜0.3004Hzの95%信頼区間がMCX 回路網に関して得られ、0.2563Hzの平均遮断周波数及び0.2105〜0.3022Hzの95%信頼区間がSCX 回路網に関して得られた。従って、0.21〜0.30Hzの遮断周波数を0.01Hzのステップサイズで使用して生成モデルを評価し、これら10の遮断周波数からの結合性推定値及びp値の分布を生成した。最適な遮断周波数を、(整合フィルタ定理と一致する)p値の識別性を最大化した遮断周波数として選択した。特に、有意な結合及び略有意な結合(夫々1.0 及び0.5 の重み)の数の加重和を最大化した遮断周波数を選択した。これらは、D1-MSN刺激中、MCX 回路網及びSCX 回路網夫々に関して0.29Hz及び0.24Hzであり、D2-MSN刺激中、MCX 回路網及びSCX 回路網夫々に関して0.27Hz及び0.22Hzであった。
【0188】
式4に記述されているクロススペクトル応答を使用して、ラプラス近似の条件下で変動自由エネルギを最小化することにより、回路網モデルを反転した(つまり、回路網パラメータを推定した)。特に、負の自由エネルギの推定値がログモデル証拠の近似として使用された。このステップを、SPM12 で関数spm_nlsi_GN.mを呼び出すことによって行った。最適なモデリング手法(つまり、確率論的又は決定論的)、及びwinning手法内の自己回帰プロセスの最適な順序を選択するために、ベイズモデル選択(BMS )を使用し、被験体全体の潜在的な不均一性を説明するグループレベルの変量効果BMS 機構を使用した。
【0189】
まず、モデルの2つのファミリー(確率論的及び決定論的)を比較した。各ファミリーは一次〜四次の自己回帰モデルを含んでいる。そのために、ベイズモデル選択をまず使用して、確率論的ファミリー及び決定論的ファミリーの超過確率を計算した。このステップを、SPM12 で関数spm_run_bms_dcm.mを使用して7つのローパスフィルタ遮断周波数毎に行った。確率論的モデリングが刺激及び注目する回路網毎に遮断周波数全体で最適である(
図20のA〜D)ことを見出した後、ベイズモデルを使用して、確率論的仮定の下で最大の負の自由エネルギ(つまり、モデル証拠)を与えた自己回帰モデルの次数を決定した。異なる次数のARプロセスを試験する理由は、モデルの複雑性(つまり自由なパラメータの数)の増加が自由エネルギを最小化したか否かを調査するためであった。解析により、1つのwinningモデルではなく、比較可能な超過確率を有するモデルのサブセットが明らかになった。D1-MSN刺激では、AR(1) プロセスが両方の回路網の場合で最適であったが、D2-MSN刺激では、AR(2) プロセスがMCX モデルで優れており、AR(1) プロセスがSCX モデル最適であった(
図20のE〜H)。明らかなwinningモデルがどちらの光遺伝学的操作でも得られなかったので、ベイズモデル平均化(BMA )を使用して、信頼できるパラメータ推定値を計算してモデルの不確実性を説明した。この計算を、SPM12 で関数spm_run_bms_dcm.mを呼び出すことによって行った。BMA は、パラメータ推定値に対応するモデル事後確率により重みを加えることによって、生成モデル(例えば自己回帰プロセス)に亘って回路網推定値を平均化した。
【0190】
BMA の前に、あり得る外れ値を識別するためにwinningモデルを被験体レベルでチェックした。D2-MSN刺激グループ内の被験体が、1.00に等しい超過確率でAR(3) のwinningモデルを示した。この外れ値の存在の確認するために、BMA の後、ユークリッド距離を、同一タイプの刺激の被験体全体でグループ平均推定値及び個々の推定値の(非)類似性の指標として計算した。この被験体に関して計算されたユークリッド距離は、D2-MSN刺激グループの平均ユークリッド距離の分布によって定められた信頼区間内にないことが観察され、この被験体を後の解析から除外した。
【0191】
統計情報
最後に、BMA の後、平均確率論的モデルから生じる結合性推定値平均を使用して、(以下に示すように統計的検定の仮定を評価するために古典的なt検定を用いた)通常の方法で被験体間レベルでD1-MSN刺激及びD2-MSN刺激の統計的有意性を検査した。各遮断周波数で推定された回路網パラメータを使用して、光遺伝学的刺激内の統計的有意性及び光遺伝学的刺激間の統計的有意性を決定した。各遮断周波数での同一の刺激内の結合性強度の統計的有意性を、1サンプルのt検定によって評価し、95%信頼区間を遮断周波数全体に亘って計算した。同様に、各遮断周波数でのMCX 回路網とSCX 回路網との統計的な差、及びD1-MSN刺激回路網とD2-MSN刺激回路網との統計的な差を2サンプルのt検定によって評価し、95%信頼区間を遮断周波数全体に亘って計算した。その後、偽発見率(FDR )を使用して、先験的回路網結合の数に等しい数の試験、つまり
図10B に示されているような24の結合/試験で多くの試験を補正した。統計的検定の正確なp値は、
図13(表3)、
図15(表4)、
図17(表5)及び
図19(表6)に報告されている。報告された全てのモデリング結果(
図12、
図14、
図16、
図18、
図11及び
図20、
図13(表3)、
図15(表4)、
図17(表5)及び
図19(表6)に関して、統計試験に使用された被験体の数は、D1-MSN刺激ではn=12であり、D2-MSN刺激ではn=10であった。前のセクションで説明されているように、D2-MSN刺激グループからの1つの被験体は外れ値として除外された。
図9に示されている時系列は、D2-MSN刺激中に当初にスキャンされた(つまり、外れ値を含む)11の被験体の平均を表す。
【0192】
本発明者らは、(MATLABで実行されるような)リリーフォース検定を使用して結合性推定値の正規性を試験した。より具体的には、本発明者らは、合計960 の統計的検定を与える2つの光遺伝学的刺激、2つの注目する回路網及び10の遮断周波数の各々で計算された24の結合性推定値のガウス性を試験した。試験の大部分(88%)で、結合性推定値が正常に分布しているという帰無仮説を却下しなかった(未補正p>0.05)。従って、本発明者らは、グループ内の統計的有意性及びグループ間の統計的有意性を検査するためにパラメトリック検定(古典的なt検定)を選んだ。
【0193】
本開示はその特定の実施形態に関して説明されてきたが、当業者は様々な変更をなし得ること、並びに本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく等価物に置き換え得ることを理解すべきである。加えて、特定の状況、材料、物質組成、プロセス、プロセスステップ又は複数のプロセスに適合するため、本開示の目的、主旨及び範囲には多くの変更がなされ得る。このような変更は全て、以下に添付された特許請求の範囲内にあると意図される。
【0194】
関連出願の相互参照
本願は、2016年2月1日に出願された米国仮出願第62/289741号の優先権を主張しており、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0195】
連邦政府の支援を受けた研究の記載
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた助成金第1R01NS091461を用いて政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において決められた権利を有している。