【0005】
図1は、従来の光ガイド光学素子の断面図を示す。第1の反射面16は、表示源4から放射され、装置の後方に配置されたレンズ6によりコリメートされた平面光波18により照明される。反射面16は、光源からの入射光を反射し、全反射により平面基板20の内部に光が閉じ込められる。基板の主面26,27から数回反射した後、トラップされた光波は部分反射面22のアレイに到達し、光は基板からカップルアウトし、視者の眼24の瞳孔25にカップルする。光源からの中心光波が基板表面26に垂直な方向に基板20の外にカップルアウトされると仮定すると、部分反射面22はフラットで、基板20内でカップルされた光波の軸外れ角はαinである。基板の主面と反射面との角αsur2は次式で与えられる。
図1から分かるように、トラップされた光線は、2つの異なる方向28,30から反射面に到達する。この例では、トラップされた光線は、基板主面26,27で偶数回反射された後に、一方の方向28から部分反射面22に到達する。トラップされた光線と反射面の法線との間の入射角βref、次式で与えられる。
トラップされた光線は、基板面26及び27で奇数回反射された後に、第2の方向30から部分反射面22に到達する。ここで、軸外れ角はα'in = −αinであり、トラップされた光線と反射面の法線との間の入射角βrefは次のようになる。
ここで、負の記号はトラップされた光線が部分反射面22の反対側に入射することを意味する。
図1にさらに示すように、各反射面について、各光線は、最初に方向30から表面に到達し、ここで一部の光線は再度反射面に方向28から入射する。望ましくない反射及びゴースト画像を防止するために、第2の方向28を有する面に入射する光線の反射率が無視できる程度に小さいことが重要である。
考慮すべき重要な問題は、各反射面の実際の活性領域である。反射面に到達する光線の反射シーケンスが異なると、潜在的な不均一性が生じる可能性がある。一部の光線は反射面に直接入射し、他の光線は1回以上の部分反射の後に入射する。この効果を
図2Aに示す。例えば、αin= 50°の場合、光線31は点32で第1の部分反射面22と交差する。光線の入射角は25°であり、光線のエネルギーの一部は基板からカップルアウトされる。次に、光線は、点34で75°の入射角で同じ部分反射面と顕著な反射なしに交差し、次に点36で25°の入射角で再び交差する。ここでも、光線のエネルギー一部が基板からカップルアウトされる。対照的に、
図2Bに示す光線38は同じ面で1回のみの反射40を受ける。さらに他の部分反射面で多重反射が生じる。
図3は、部分反射面22の詳細な断面により、この不均一性現象を説明する。部分反射面は、基板内に閉じ込められた光をカップルアウトし、視者の眼24に結合する。図示のように、光線31は線50に隣接する上面27で反射され、この線は反射面22と上面27との交線である。この光線は反射面22に衝突しないので、輝度は同じままで、両方の外部表面で二重反射後に、点52で面22に最初に入射する。この点で光波は部分的に反射され、光線54は基板から部分的にカップルアウトされる。光線31のすぐ下に位置する光線38のような他の光線では、面22への最初の入射は点56で、次いで上面27に入射し、光波は部分的に反射され、光線58は基板からカップルアウトされる。従って、光線が外部表面26,27からの二重反射に続いて点60で表面22に入射するとき、カップルアウトされた光線の輝度は、隣接する光線54よりも低い。その結果、点52の左から面22に到着し、31と同じカップルイン角度で入射しカップルアウトされた光線は、より低い輝度を有する。従って、表面22での反射は、この特定のカップルイン角度の点52の左側で実際に”暗く”なる。
射率は、実際には、この特定のカップルイン角度の点52よりも”暗く”残っている。
そのような多重干渉効果の違いを完全に補正することは困難である。それにもかかわらず実際には、人間の眼は明るさの著しい変化を許容し、気付かないままであることがある。眼に近いディスプレイの場合、眼は単一の視野角から出てくる光を統合し、それを網膜上の1点に集束させる。眼の応答曲線は対数であるので、ディスプレイの明るさの変化は目立たない。従って、ディスプレイ内の照明の均一性が低くても、人間の眼には高品質の画像に見える。要求される適度な均一性は、
図1に示す素子で容易に達成できる。大きなFOVを有し、大きなEMBが必要とされるシステムでは、所望の出力アパーチャを達成するため、比較的多数の部分反射面が必要とされる。結果として、多数の部分反射面との複数の交わりによる不均一性が、特にHUDのような眼から離れた位置にあるディスプレイの場合に許容できないほどに著しくなる。これらの場合、不均一性を克服するためのより体系的な方法が必要である。
部分反射面22の”より暗い”部分は、トラップされた光波の基板へのカップリングへの寄与が小さいので、基板の性能への影響は無視でき、システムの出力アパーチャにより暗い部分が生じ、暗い縞が画像に発生する。しかしながら、各反射面の透明度は、外部のシーンからの光波に対し一様である。従って、出力アパーチャ内のより暗い部分を補償するために、部分反射面間でオーバーラップが設定されると、これらの重複領域を横切る出力シーンからの光線は2倍の減衰を受け、より暗いストライプが外部シーンに生成される。この現象は、ヘッドアップディスプレイのように眼から離れた位置にあるディスプレイだけでなく、ニアアイディスプレイのディスプレイの性能を著しく低下させるので、利用できない。
図4A-4Bは、本発明での上記の問題を克服するための実施例を示す。部分反射面からの望ましくない二次反射を部分的に克服する代わりに、これらの反射を利用して光学システムの出力開口を拡張する。
図4Aに示すように、表示源から発し、レンズ(図示せず)によりコリメートコリメートされた平面光波である2つの光線63は、透明基板64に入射する。基板64は2つの平行な主面70,72を有し、基板の主面72,72に垂直な軸61に関し、光線63は入射角αin0で入射する。光線は、基板の主面に対し角度αsur1で傾斜している反射面65に入射する。反射面65により入射光は平面基板64にトラップされるように反射され、トラップは基板の主面による全反射により生じる。トラップされた光線と主面70,72の法線との間の軸外れ角は次式で与えられる。
基板の表面から数回反射した後、トラップされた光線は第2のフラットな反射面67に到達し、光線は基板から外へ出て行く。面67が第1の面65と同じ角度で主面に対し傾斜していると仮定する。すなわち、面65と67は平行であり、
αsur2=αsur1 であると仮定する。すると、結合された光線と基板の法線との角αoutは次式で与えられる。
すなわち、結合された光線は、入射光線と同じ角度で基板に対し傾斜している。ここまでの説明では、結合された光波は、
図1の従来技術に示される光波と同様に挙動する。しかし
図4Bは異なる挙動を説明し、光線63と同じ入射角の2つの光線68は点69に入射し、この点は反射面65の右側に位置する。面65からの第1回の反射の後、結合された光線が軸外れ角αin
(1)で基板内にトラップされたとき、光線は上部主面70で反射され、再度、面65の点71に入射する。光線は面65で再び反射され、基板内にトラップされた光線の軸外れ角は、次式で与えられる。
基板の表面で複数回反射された後、トラップされた光線は第2の反射面67に達する。光線68は最初に、点74に衝突し、この点は反射面67の右側(作用上アクティブな面)に位置する。複数回反射した後に、結合された光線が基板内に軸外れ角αin(1)で閉じ込められているとき、光線は下部主面72で反射され、反射面67の右側の点76に再度衝突する。光線は再反射され、光線の軸外れ角度は次のようになる。
即ち、カップリングイン反射面65で2回反射された光線68は、カップリングアウト面の活性部と同様に、基板からカップルアウトする。ここでの軸外れ角αoutは、基板35,67で1回だけ反射された他の2つの光線63と同じで、これらの光線の基板主面への入射角と同じである。
図4A,4Bに示すように、本発明の光学素子64は、
図1-3に示した従来技術の素子20と顕著に異なる。第1に、同じ入力光波(
図4A,4Bの光線63,68など)から発生した異なる光線は、異なる軸外れ角度(αin(
1)及びαin(
2))で、基板内を伝搬する。さらに、捕捉された光線のうちのいくつかは、2つの異なる入射角でカップリングアウト反射面の同じ側に入射し、基板から外に結合される前に、この表面で少なくとも2回反射される。その結果、基板内部に閉じ込められた光線の様々なパラメータを正確に表現するために、適切な表記規則を定義しなければならない。簡単のため、基板に入射または出射する際の第2スネル則によるカップリングインまたはカップリングアウト光の屈折を無視し、基板の表面に隣接する光学素子の材料は基板の材料と類似であるとする。素子は、基板内に閉じ込められた光線の全反射を可能にするために、エアギャップにより、または低い屈折率を有する接着剤により分離される。基板内の光線の方向のみを考慮する。トラップされた光波の様々な”伝播次数”を区別するため、上付き文字(i)により次数を示す。ゼロ次で基板上に入射する入力光波は、上付き文字(0)で示す。カップリングイン反射面での反射の後、次数を(i)から(i+1)へ1だけ増す。
同様に、カップリングアウト反射面からの各反射の後、捕捉された光の次数は、(i)から(I-1)へ1減少し、次式が成立する。
与えられた次数に位置する光波の角度スペクトルは、これらの次数の2つの極端な角度の間に制限される。
ここでαin(i)(min)およびαin(i)(max)は次数iの最小角度と最大角度である。画像の中心光波の方向は、次式で与えられる。
基板内での画像のFOVは、次式で与えられる。
基板内でのFOVは次数(i)に依存しない。与えられた次数(i)の光波の全角度スペクトルは、次式で与えられる。
カップリングイン及びカップリングアウト反射面への光線の入射角を、αsi(
i)及びαso(
i)とすると、次式が成立する。
式(5)、(7)から明らかなように、反射面での反射回数が異なる異なる光線の出射方向を同一にするため、2つの反射面を厳密に平行にする。さらにトラップされた光線の2つの主面への入射角に偏差があると、反射サイクル毎に軸外れ角のドリフトが生じる。高次のトラップされた光線は、低次のものよりも基板の主面での反射回数が少ないので、低次の光線でのドリフトは高次のものより顕著である。その結果、基板の主面は高度に平行でなければならない。
光波が全反射により基板64に結合されるためには、画像の全視野に対し基板内の軸外れ角が以下の式を満たす必要がある。
ここで、αcrは、基板内での全反射の臨界角である。一方、光波が基板から外部へ出て行くためには、画像のFOV全体に渡って出力光波の軸外れ角が以下の式を満たす必要がある。
(9)、(11)、(12)、(17)式を結合すると、下式が得られる。
最初の2つのオーダーが全て基板内にカップルされるために、以下の条件が満たされねばならない。
さらに、屈折率が極めて高い材料でも、また基板の主面に隣接する外部媒体が空気でも、臨界角には以下の制限がある。
(9)、(12)、(18)、(20)及び(21)式を結合すると、
となり、基材内部のFOVが10°と適切な場合でも以下の制限が生じる。
(19)、(21)及び(23)式を結合すると、
となり、αout(0)(cen)は空気中での傾斜した出力角である。即ち、結合された画像は、基板平面への法線に対し実質的に傾斜している。より広いFOV及びより小さいαsur2では、傾斜角が増加する。しかしながら通常、視者の眼に投影される結合された画像は、基板平面に対し実質的に垂直な向きであることが要求される。
図5Aに示すように、画像の傾きは、基板の面72に対し、αin(0)(cen)×1/2の角度で傾斜した部分反射面79を加えることにより調整できる。
図5Bに示すように、歪みと色収差を最小限に抑えるために、プリズム80に表面79を埋設し、基板64に第2のプリズムを設けることが好ましい。なおプリズムの材料を基板と同様にすることが好ましい。システムの厚さを最小にするために、
図5Cに示すように、単一の反射面80を、平行な部分反射面79a、79bのアレイで置き換えることが可能で、部分反射面の数はシステムの要求に従って決定する。
基板64とプリズム80との間の界面83(
図5D)には、2つの矛盾する要求がある。一方では、1次の画像F(1)は面で反射されなければならず、0次の画像F(0)は面67で反射された後、有意な反射無しに、界面を透過しなければならない。さらに
図5A-5Cに示すように、表面79で反射された後、光波は再び界面83を透過する。ここでも、望ましくない反射が最小限に抑えられることが要求される。これを達成するための可能な方法は、
図5Dに示すように、インターフェース面83にエアギャップを使用することである。しかし、剛性の高いシステムを達成するために、プリズム80を基板64に接着するため、インターフェース面に光学接着剤を用いることが好ましい以下のパラメータの光学システムについて、このことを説明する。
光波はs偏光される。基板64及びプリズム80,82の光学材料は、屈折率ndが1.8467のSchott N-SF57であり、光学接着剤は屈折率が1.315のNOA 1315である。従って、臨界角は、45.4° より大きい。1次及び2次の光線は、臨界角よりも大きな軸外れ角を有し、界面83で全反射される。0次の光線は全て、臨界角よりも小さい入射角で界面に入射するため、基板を透過する。界面とカップルアウトされる光波のフレネル反射を最小にするために、この面に適切な反射防止(AR)コーティングを施すことが好ましい。
図6は、ARコーティングされた界面での反射グラフを示す。関連する波長領域をカバーする3つの異なる波長:450nm、550nm及び650nmの入射角の関数として、グラフを示す。反射率は45°を超える角度で100%、ゼロ次の入射角{30°、40°}の光線、及び面79で反射された後に面83に垂直に入射する光線では、3%以下である。
別の要求は、面67が高次の入射角αso(1)およびαso(2)に対して反射性で、基板からカップルアウトされた後、この面を通り、面79により反射され、界面83を再度通過する光波には透明であることである。即ち上記のシステムでは、面は40°を超える入射角に対し反射的で、15°未満の入射角に対し実質的に透明でなければならない。ここでも面67とプリズム82との間のエアギャップが1つの解決策であるが、光学接着剤と共に素子を接着することが好ましい。従って、面67に適用すべき誘電体コーティングへの要求は、40°と45°の間の入射角αso(1)で反射性(45°以上で全反射)、15°以下の入射角で実質的に透過性であることである。
図7は、450nm、550nm及び650nmの3つの異なる波長に対する入射角の関数として、適切な角度敏感性コーティングでコーティングされた界面の反射グラフを示す。図示のように、40°と45°との間で93%より高く、入射角が15°未満で2%以下である。
表面79の反射率に関して、このパラメータは、光学システムの性質に依存する。バーチャルリアリティディスプレイのようなシースルーではないシステムでは、基板は不透明で、システムの透過率は重要ではない。この場合、表面に金属または誘電体の単純な高反射コーティングを施すことが可能である。またこの場合、面65及び79の反射は、入射する光波に対し非常に高く、他方では、面67及び83の反射は、それらから反射すべき光波に対し非常に高く、従って、それらを透過すべき光波に対して非常に低いので、光学システムの全効率は高い。軍用または業務用のHMDや拡張現実感システムなどのシースルーシステムでは、視者は基板を通して外部のシーンを見る。このため表面79は少なくとも部分的に透明でなければならない。その結果、部分的に反射するコーティングが表面79に塗布される。コーティングの透過率と反射率との間の正確な比は、光学システムの様々な要求に従って決定される。視者の眼に光波を反射するために部分反射面79a、79bのアレイが使用される場合、コーティングの反射率は、視者の眼に均一な画像を投影しかつ外界のシーンを伝達するため、全ての部分反射面に対して同じでなければならない。
上記の本発明の実施例の全てにおいて、基板により送信された画像は、無限遠にコリメートされる。しかし近視のため遠距離に位置する画像を適切に見ることができない人々のために、送信された画像をより近くに焦点を合わせるべき用途がある。
図8Aは、本発明に基づくレンズを実装するための例を示す。コリメートされた像84は、反射面65により基板64にカップルインされ、角度選択性反射面67により(結合された光線の次数に応じて1回または2回)反射され、界面83を透過し、部分反射面79a、79bのアレイで部分反射され、表面83を通り視者の眼24に入る。眼科用平凹レンズ86、これは基板の上面70に取り付けられ、画像を適切な距離に集束させ、また非点収差を含む視者の眼の他の収差を補正する。レンズ86は、全反射により基板64内に光波をトラップするための機構では作動していないプリズム82に取り付けられ、レンズ86をプリズム82に光学的に取り付けるために簡単な接合手順を用いることができる。しかしながら、
図8Bに示すように、レンズ86が延長された開口を有し、従って基板の上面70に取り付けるべき用途がある。ここで、この表面は基板内の光波を捕捉するのに能動的であるので、レンズと基板との間の界面85に分離層を設け、内部全反射により基板内に画像光線をトラップする必要がある。これを達成するための可能な方法は、界面85にエアギャップを使用することである。しかし、レンズ86でプリズム82を接着するために、界面接着面に光学接着剤を塗布することが好ましい。
図6に例示したように、この平面からのフレネル反射を最小にするために、適切なARコーティングを界面85に適用できる。
上記した本発明の実施例の全てにおいて、外部シーンは無限遠に位置すると仮定している。しかし、プロフェッショナル用や医療スタッフ用のように、外的シーンがより近い距離にある用途がある。
図8Cは、本発明に基づく二重レンズ構成を実施するためのシステムを示す。コリメートされた画像84は、反射面65により基板64に結合され、角度選択性反射面67により反射され、界面83を透過し、部分反射面のアレイ79a、79b ...により部分的に反射され、再び表面83を通り視者の眼24に入る。近距離からの別のシーン画像90がレンズ89により無限遠にコリメートされ、次いで基板64を透過し眼に入る。レンズ86は、画像84及び90を適切な距離、通常は外部シーン90の元の距離に合焦させ、必要に応じ、視者の眼の他の収差を補正する。全反射により基板64の内部で結合され、反射面79により視者の眼に導かれる光波に関して、プリズム80の下面81は活性ではなく、プリズム80を従来の接合手順を用いてレンズ89に接合できる。
図8A-8Cにプロットしたレンズ86及び89は、単純な平凹レンズ及び平凸レンズである。しかしながら基板を平面形状にするため、フレネルレンズを使用することが可能で、フレネルレンズは細かいステップを有する薄く成形されたプラスチックプレートで作ることができる。さらに、上記の固定レンズ以外に、電子制御ダイナミックレンズによりレンズ86または89を実現できる。ユーザーが、コリメートされていない画像を見るだけでなく、画像の焦点を動的に制御できることが必要な用途がある。最近、高解像度の空間光変調器(SLM)を使用し、動的集束素子を形成することが示された。現在、その目的のために最も代表的なソースはLCDデバイスであるが、他のダイナミックSLMデバイスも同様に使用できる。数百本/ mmの高解像度ダイナミックレンズが知られている。この種の電気光学的に制御されたレンズは、
図8A-8Cのに固定レンズの代わりに、本発明における所望の動的素子として使用できる。従って、オペレータは、基板64により投影された虚像と、外界の実像の両方の正確な焦点面をリアルタイムで設定できる。
図4-8の本発明の実施例は、
図1-3の従来技術と比較し、いくつかの重要な利点を有する。主な理由は、αsur 2が小さいため、単一の反射面67を有する基板の出力開口部の活性領域は、単一の部分反射性カップリングアウト面を有する、従来技術の基板の活性領域よりもはるかに大きいことである。例えば、傾斜角 αsur2=10°の単一の反射面67を有する基板は、傾斜角αsur2が約30°の同じ厚さのファセットを少なくとも3-4枚有する従来技術の基板と、同じ出力アパーチャを有する。結果として、基板の製造プロセスが従来技術よりもずっと簡単になる。さらに、多くの用途で必要な出力アパーチャを達成するために単一のファセットだけが必要とされるので、投影画像は、従来技術のマルチファセット素子よりもはるかに滑らかで、より高い光学品質を有する。しかしながら、本発明の光デバイスの出力及び入力アパーチャに関し、考慮すべき点がある。
図9Aに示す出力アパーチャに関して、反射面67のエッジでゴースト像が発生する可能性がある。図に示すように、軸外れ角αin(0)を有する光線91を、出力アパーチャから入力アパーチャへトレースする。光線91は、点93aで反射面に衝突し、反射面67で2回ではなく3回反射される。その結果、光線は軸外れ角αon(3)で基板64にトラップされ、3次のカップリング光となる。
図9Aに示すように、この角度は αin(3)>−αsur2 の関係を満たし、”不適正”な角度となる。図から明らかに、光線91は、第3の点93cから下部主面72に向かってではなく、上面70に向かって反射される。従って、光線91は面72に以下の角度で衝突する。
その結果、基板主面で奇数回反射した後、光線は入射面65から以下の角度で反射される
従って、下式が成立する。
明らかに、この角度は必ずしも必要な角度ではない。例えば、式 (23)に関連して与えた例のパラメータを用い、αin(0)を31°と仮定すると、基板64に結合され、光線91として出射する光線は、実際には αin(0)(act)=29°の方向でなければならない。つまり、光線91として出射すべき”正しい”光線が欠落し、その結果、画像にギャップが形成される、さらに、ギャップに”間違った”方向からの光線により、ゴースト画像が生成される。
この問題を克服するための方法を
図9Bに示す。図示されるように、平らな透明板95が、界面64を画定する基板64の下面72に接着剤で接合される。光線91は、基板64に結合される前に、面67で2回だけ反射される。従って、カップルされた光線97は基板内を軸外れ角αin(2)で”正しい”向きに伝搬し、ゴースト画像は生じない。界面96の点98での結合光線97のフレネル反射を最小にする必要がある場合、基板64及びプレート95と類似の屈折率の光学セメントを使用することが好ましい。
ゴースト像の問題を克服する別の方法を、
図9Cに示す。ここで、反射面79は、反射面67の開口全体を覆わないように、プリズム80の内側にシフトされている。即ち、反射面67のセグメント99により、遠い側のエッジで反射された光線は、面79で反射され視者の眼に戻ることはない。従って、”間違った”方向の光線91は、視者の眼に入射せず、ゴースト像は回避される。ゴースト画像の問題が存在するとして、正確なパラメータの値、どの実施例を使用するか、またはそれらの組み合わせを使用するか、プレート95の厚さ、面79のシフト量などは、光学システムのパラメータに応じて決定できる。これらのパラメータには、出力開口のサイズ(measure)、システムのFOV,基板の全体厚さなどがある。
ゴースト像の問題を克服するための別の変形例を
図9Dに示す。ここに示すように、結合光線91は、先に下部主面72に入射し、次いで軸外れ角がαin(3)で反射面65に衝突する。即ち光線91は、面67の第3の点95で反射される間、同じ軸外れ角を有する。その結果、結合光線91は点93d、93e、93fで面65から3回反射された後、”適正な”軸外れ角αin(1)で基板から出射される。面67での三重反射を面65での三重反射により補償するため、光線が面67から表面70に向かって上方に反射される場合、光線が上面70と下面72で同じ回数だけ反射されることが必要である。通常、光学システムの設計において、光線が面67で3回反射され、面65でも3回半シャされるようにすることは不可能である。一部の光線、即ち、基板67のセグメント99を照らし(
図9C)、次いで面67で3回反射される光線が、光学システムのEMBに達する。光学システムのパラメータを適切に選択し、即ち、反射面65、67の傾斜角、基板の厚さ、長さ、屈折率などのパラメータである。すると光線の大部分が基板67で3重反射され、基板65でも3重反射されるようにして、ギャップに生じるゴースト画像を回避できる。
考慮すべきもう一つの問題は、入力アパーチャのサイズ(measure)である。画像中の隙間及び縞を回避するために、全ての次数のカップルされた光波が基板内を満たし、反射面67の全体が結合された光波により照射されることが望ましい。
図10Aに示すように、反射面65の縁部と基板64の下面72との間の境界線100上の点は、入射する2つの異なる光線から成る単一の光波により照射されるべきである。即ち境界線100で面65を直接照射する光線101(点線)、及び点線103で反射面65により最初に反射され、次に境界線のすぐ左にある下面72を照射する前に、基板64の上面70により最初に反射される別の光線102(破線)である。図示のように、基板内を1次で伝搬される、ディスプレイソース内の同じ点からの2つの光線101、102は、互いから離れた位置で基板64に結合される。即ち、光線101は左のエッジで。光線102は面65のほぼ中心で結合される。光線は、面67の右側で互いに隣接するカップリングアウト素子67から射出される。従って、点103、100間の面65の全領が光線101,102により照射されるべきである。このようにすると、このエリアを基板にカップルされた光波により全面的に照射できる。
同様に、
図10Bに示すように、反射面65のエッジと下面72との間の境界線100上の点は、
図10Aと同様に、2つの光線から成る単一の光波により照明されるべきである。2つの光線は、基板に異なる位置で入射する。破線の光線105は、103の直ぐ右側の面65で1回反射し面70でも1回反射した後に、面65の境界線100を照射する。実線の別の光線106は、反射面65で2回反射され、基板64の上面70でも2回反射され、次いで境界線の直ぐ左側の下面72を照射する。図示のように、基板内を2次で伝搬する、ディスプレイソース内の同じ点からの2つの光線105、106は、互いに離れた位置で基板64にカップリングされる。光線105はほぼ中央で、光線106は面65の右端の付近でカップリングされる。それらは、面67の左側部分で互いに隣接して配置されたカップリングアウト素子67によりカップリングアウトされる。従って、面65の右端104と点103の間の全領域が光波により照射され、光線105,106は同じ位置から発したものである。
図10A、10Bから2つの結論が得られる。
a・ 面65の全領域が基板に結合された光波により照射されるべきである。
b・ 結合された1次の光波は、面65の左側を照射し、面67の右側で結合される。結合された2次の光波は、面65の右側を照射し、面67の左側でカップルアウトする。
図10A-10Bに示すように、カップリングイン面65の開口は、カップリングアウト面67の開口と同様である。しかし、FOVが広く、EMBが大きいシステムが存在するため、大きな出力開口が必要な場合がある。さらに、光学システム全体が可能な限りコンパクトであることが望ましい。その結果、基板の入力開口を最小にする必要がある。その結果、大きな出力アパーチャと小さな入力アパーチャとを同時に実現るという、要求が生じる。従って、所与の出力アパーチャに対し入力アパチャーを減らす、所与の入力アパーチャに対し出力アパーチャを増加させる方法が必要である
所与の入力アパーチャに対する出力アパーチャを増加させるための実施例を、
図11A-11Dに示す。
図11Aに示すように、2枚の基板110a,110bから成る光学素子109に、軸外れ角αin(0)で光線110が入射する。ここで基板110aの下面111aが基板110bの上面112bに取り付けられている。
図4-10に示した基板とは異なり、上部基板110aのカップリングイン素子114aは、基板64の面65とは異なり、部分反射面である。即ち、入力光線107は2本の光線107a,107b(好ましくは同じ輝度の2本の光線)に分かれ、面114a,114bで反射され、内部全反射により、基板110a,110b内に結合される。面114aとは異なり、面114bは単純な反射面である。図示のように、光線107a,107bは、それぞれ面114a,114bの左側部分で1回反射され、角度αin
(1)の1次光として基板内を伝搬する。その結果、光線はカップリングアウト面116a,116bの右側で1回の反射により出射角αin(0)で出射する。
図11Bは、同じ実施例で、面114a,114bの右側に入射する入力光線107を示す。光線107a、107bは、それぞれ表面114a,114bで2回反射され、角度αin(2)の2次の光として基板内を伝播する。その結果、それらは、カップリングアウト面116a,116bの左側で2回反射され、出射角αin(0)で出射する。光学装置109の実質的な入力開口である面114aは出力開口の約1/2のサイズである。出力開口は実質的にカップリングアウト面116a,116bの組み合わせから成る。
基板110a,110b間の界面117には矛盾する2つの要求がある。一方では、最初の2つの次数の画像F(1)およびF(2)はこの面で反射されるべきである。しかし上部基板110aからの0次の画像F(0)は面116aで反射された後、反射無しで基板を通過すべきである。同様に、入射角αin(0)で面114aを通過した光線107bに対し、面117は透明であるべきである。さらに、シースルーシステムでは、垂直な入射光に対し光学装置109は透明なほどよい。このための1つの手段は、界面117にエアギャップを用いることである。別の手段は、基板110a,110bを、
図5Dの界面83と同様に、低屈折率の接着剤でリジッドに接続することである。
図11A-11Bに示す実施例では、基板110a、110bは互いに類似している。即ち、カップリングデバイス114a、114bの傾斜角αsur1は同じで、カップリングデバイス116a、116bの傾斜角αsur2も同じである。さらに、2つの基板は同じ厚さを有する。しかしながら、異なる特性を有する2つの基板を取り付けることも可能である。
図11Cに示すように、上部基板110aは、式(23)に関連して例示したシステムと同じパラメータを有する。下部基板は以下のパラメータを有する。
光波はs偏光されている。基板110a及び110bの光学材料は、前述のように、屈折率nd= 1.8467のSchott N-SF57であり、光学接着剤は、屈折率nd=1.315のNOA1315である。従って、臨界角αCTは45.4° より大きい。デバイス109にカップルされる画像のFOVは、単一基板64の場合の{30°,40°}から2枚基板の場合の{24°,40°}に拡大される。1次で伝搬し、{46°,60°}の合成FOVを有する全ての光波は、臨界角よりも軸外れ角が大きいため、基板間の界面117で全反射する。各基板の実際の出力アパーチャは、tanαsur2に直接依存するので、下部基板110bの厚さをわずかに増加させ、2枚の基板の出力アパーチャを等しくする。素子109の出力アパーチャは
図5Aの単一基板64の出力アパーチャに比べて2倍で、FOVは6°増加する。欠点は、デバイスの厚さが2倍になり、結合された画像の輝度が50%低下することである。表面116aの左端がアクティブでない場合、
図9A-9Cに示すように、下部基板110bをわずかにずらすことによりこの部分を塞ぐことができる。
図11Dに示すように、反射面116a及び116bはもはや同一直線上にない。面110aの左エッジ118は、基板110bの右エッジ120と一致しておらず、右に若干移動しているので、面110aの不活性部122を部分的に塞ぐことができる。
光デバイスの入力アパーチャを減少させるためのさらに別の実施例を、
図12A-12Bに示す。ここで、
図10A-10Bに示すように、カップリングイン面65の左側部分に入射する光波は、面65で1回だけ反射され、1次の軸外れ角αin(0)で基板64内を伝播する。これに対して、カップリングイン面65の右側部分に入射する光波は、面65で2回反射され、従って、2次の軸外れ角αin
(2)で基板64内を伝播することをい用いる。
図12Aに示すように、角度敏感性の部分反射面124が基板64の内部に埋設されている。面124は、カップリングイン面65及びカップリングアウト面67に平行で、即ち、面124の基板64の主面への傾斜角は、次式のようになる。
基板64内を伝搬する画像全体のFOVに対して、面124は入射角が次式で与えられる光波に対し実質的に透明である。
入射角が次式で与えられる光波に対し、実質的に、あるいは少なくもと部分的に反射性である。
さらに、カップリング面65の左側部125のみが、画像光波により照明されるものとする。
図12Aに示すように、光線127は面65の左側部分125に入射し、面65で1回反射した後に、基板64に結合され、基板64内を1次の軸外れ角αin(1)で伝搬する。光線127は基材64の主面から数回反射した後、点128aで表面124に衝突する。光線は表面へ左側から入射するので、面67に衝突する光線と同様に挙動する。従って式(16)を、点128aにおける光線127の入射角の計算に使用でき、次式が成立する。
その結果、式 (31)の条件が満たされ、光線127は有意な反射なしに表面124を透過する。上部主面70で1回反射した後に、光線127は点128bで表面124に再び衝突する。光線は表面へ右側から入射し、面65に衝突する光線と同様に挙動する。従って式(15)を、点128bへ入射する光線127の入射角の計算に利用でき、入射角は次式で与えられる。
その結果、式 (32)の条件が満たされ、光線127は面124により実質的に均等に分割される。即ち、光線の強度の約1/2が光線129として表面124を透過し、同じ軸外れ角αin(1)で基板124内を伝播する。一方、光線の強度の他の1/2は、光線130として表面124で反射され、以下の軸外れ角で基板124内を伝播する。
特に光線130は2次の軸外れ角αin(2)で基板64内を伝搬する。基板64の下部主面72で1回反射した後、光線129は点128cで表面124に衝突する。光線は再び左側から表面に衝突するので、面67に衝突する光線と同様に挙動し、従って式 (16)を点128cでの光線129の入射角の計算に使用できる。
式(31)の条件が満たされているので、光線129は有意な反射なしに面124を透過し、1次の軸外れ角で基板内を伝播する。その結果、面65の左部分125全体が、基板に結合された全ての光波により照射されるならば、
図10Aに関連して説明したように、基板64は1次のカップリング光により満たされる。面124により分割された後、光の一部は1次の光として基板内を満たし、表面124により反射された光の一部は2次の結合光波として基板内を満たす。結果として、カップリングアウト面67の実質的に全開口が1及び2次の光波により照射され、出力光波は実質的に面67のアクティブアパーチャ全体からカップルアウトされる。結果として、出力アパーチャは面67の全アクティブアパーチャを占め、基板の入力アパーチャは実質的に1/2に縮小する。ペナルティは出力光波の輝度が半減することである。
入力開口を半分に縮小する同様の実施例を
図12Bに示す。ここでは、カップリングイン面65の右側部分のみが入力光波により照射される。図示のように、光線132は面65の右側部分134に入射し、面65で2回反射した後に基板64に結合され、2次の軸外れ角αin
(2)で基板内を伝搬する。
基板64の主面で少数回反射した後、光線132は点135aで表面124に衝突する。光線は表面へ左側に入射するので、面67に入射する光線と同様に挙動し、式(16)を点135aでの光線132の入射角の計算に利用できる。
その結果、式 (32)の条件が満たされ、光線132は面124により均等に分割される。光線の約半分は光線136として表面124を透過し、同じ軸外れ角αin
(2)で基板124内を伝播する。他の半分は面124で光線137として反射され、次式の軸外れ角で基板124内を伝搬する。
具体的には、光線137は、1次の軸外れ角αin(1)で基板64内を伝搬する。基板64の下部主面72で1回反射した後、光線137は点135bで面124に衝突する。光線は表面に左側から入射するので、面67に入射する光線と同様に挙動する。従って式(16)を点128cにおける光線127の入射角の計算に使用できる。
式 (29)の条件が満たされ、光線137は有意な反射なしに表面124を透過し、1次の軸外れ角で基板内を伝播し続ける。
図12Bの実施例の実際の機能は、
図12Aの実施例と同様である。入力光波により入力開口65の半分だけが照明され、出力光波はカップリングアウト面67の開口全体からカップルアウトされる。相違点は、
図12Aでは面65の左側のみが入力光波により照明され、
図15Bでは面65の右側が用いられる点である。結果は同様であり、出力面全体が利用される。通常、面65のどの部分を使用するかは、光学システムの様々なパラメータに従い決定する。
図12A-12Bに示す実施例は、角度選択性反射面を基板64内に取り付けると、入力開口を縮小する以外の他の用途にも利用できる。考慮すべき問題は、入力アパーチャ65を照らす入力光波の均一性である。たとえば、
図10Aの光線101の明るさが光線102の明るさよりも低いと仮定すると、不完全なイメージングシステムぷるであるため、この不均一性は、光線が互いに離れているため、入力平面波を直接見てもほとんど感じられない。しかしながら基板64に結合された後状態は変化し、2つの光線101,102は互いに隣接して、基板64内を伝搬する。その結果、面67で反射され、基板からカップルアウトされた2つの光線は輝度が異なる。入力光波とは異なり、2つの光線は互いに隣接しており、この不均一性はカップルアウトされた画像の暗い線として容易に見える。同じ問題は、
図10Bの光線106の輝度が光線105の輝度よりも低い、あるいはその逆の場合に生じる。
図12Cは不均一性の問題を克服する実施例を示す。同じ角度敏感性の部分反射面124が基板64の内部に埋設されている。しかし入力開口65全体が入力光波により照明される。図示のように、面65の中心に近い左部分125を照らす光線127と、右部分134の遠端を照らす(結果として光線127よりも低い輝度を有する)光線132の2つの異なる光線が、1次及び2次の軸外れ角を基板64内を伝搬する。2つの光線は面124上の点138で一致し、
図12A、12Bに示すように、両者は表面124により部分的に反射され、部分的に透過する。その結果、1次の軸外れ角で基板内を伝播する光線139は、表面124を透過する光線127の部分と、表面により反射される光線132の部分の混合物となる。さらに、2次の軸外れ角で基板内を伝搬する光線140は、表面124を透過する光線132の部分と、表面により反射される光線127の部分の混合物となる。従って、光線139,140は、元の光線127,132の混合物であるが、元の光線とは異なり、面124から発せられた2つの光線139,140は、同様の輝度を有する。その結果、面65の開口全体が入力光波により照射される場合、面124から生じる光波は出力開口全体に渡り遙かに均一で、不均一性の問題は改良される。
考慮すべきもう一つの問題は、基板の両主面の平行度である。
図4A-4Bに示したように、基板64の2つの主面は厳密に互いに平行でなければならない。なぜなら、2つの主面への入射角にトラップされた光線の間で偏差があると、反射毎に軸外れ角αin(i)にドリフトが生じる。また低次のトラップ光に比べ、高次のトラップ光は反射回数が少ない。このため低次のトラップ光のドリフトは、高次のトラップ光に比べ3遙かに目立つ。しかしながら、非常に高い解像度が要求される用途がある。また、基板の長さと厚さとの比を大きく、低次の光の主面での反射回数が極めて大きく、必要が平行度を従来法では達成できない場合がある。
上記の問題を克服するためのアプローチを
図12Dに示す。面65及び67に平行な角度敏感性反射面141が基板64内に埋設されている。この表面の反射特性は
図12A-12Cの表面124の反射特性とは異なる。面64内を伝搬する画像の全FOVに対し、以下の入射角の光波に対し、面141は実質的に透明である。
しかし、以下の入射角の光波に対して、
面141は実質的に反射性である。前述のように、点142,144に各々衝突し。1次の軸外れ角を持ち、かつ基板の右側に入射した光線127,132に対し、面141は実質的に透明である。面141の左側に衝突し1次の軸外れ角を有する光線127と、面141の右側に衝突し2次の軸外れ角を有する光線132が合致する点146では、面141は実質的に反射性である。その結果、面141で光線127は反射され2次の軸外れ角を持ち、面141で光線132は反射され1次の軸外れ角を持ち、光線127,132は点146で軸外れ角を交換する。面141が基板64の中心に位置し面65,67から等間隔であるとすると、光線127,132は基板64の主面で同数だけ反射されることになる。面65の全開口が入射する各光線により均等に照明されるとすると、結合された全ての光線は基板64の主面で同回数だけ反射されることになる。従って、平行性の問題はほぼ解決される。
図12A-12Cの実施例で利用する角度敏感性反射面124の実現を、以下のパラメータを有する光学システムを例に説明する。
光波はs偏光される。基板64の光学材料は、屈折率がnd = 1.8052のSchott N-SF6であり、表面124に隣接する光学接着剤は屈折率がnd = 1.71であるNTT6205である。
図13は、450nm、550nm及び650nmの3波長に対し、入射角の関数として、適切な角度敏感性誘電体コーティングでコーティングされた反射面124での反射率のグラフを示す。図示のように、反射は57°と67°との間の角度で約50%であり、ゼロ次の入射角{33°、43°}に対しては非常に低い。
図12Dの実施例で利用されている角度敏感性反射面141の実現を、式(42)と同じパラメータを有する光学システムに対し、説明する。ここで、表面141に隣接する光学接着剤は、nd = 1.52の屈折率を有するNOA165である。
図14は、450nm、550nm及び650nmの3つの波長に対する、入射角の関数として、適切な角度敏感性誘電体コーティングでコーティングされた反射面141での反射率のグラフを示す。図示のように、反射率は57°を超える角度で100%で、0次の入射角{33°、43°}に対しては実質的にゼロである。
図4-11に示す全ての実施例において、カップリングイン素子は傾斜反射面である。この理由は、1次の光波と2次の光波を基板内にカップルさせるためである。
図12A,12Bの実施例では、カップリングイン素子により1次及び2次の光線のみをカップリングするので、他の光学手段を用いることができる。
図15Aに示すように、プリズム148が基板64の上部主面70に光学的に取り付けられている。同じ入力光波からの2つの光線149,150は、プリズム148の入力開口部152の2つの縁部に衝突し、プリズム内の光線の傾斜角はαin(1)である。左の光線149はプリズムのエッジ153の直ぐ右側で上主面70を照射するが、右の光線150は面70を透過し、下面72で全反射され、エッヂ453で上面72に衝突する。その結果、2つの光線149,150は基板64内で結合され、1次の軸外れ角αin(1)を有し、隣接して基板64内を伝搬する。面124の点154,156で部分的に反射された後、反射光線158,160は2次の軸外れ角αin(2)を有し、互いに隣接して基板20内を伝搬する。従って、入力開口152を覆う同じ入力光波の全ての光線は、一次の光波により基板を充填し、面124で部分的に反射された後、二次の光波により基板を満たす。その結果、出力光波は、面67の能動的な全開口で基板からカップルアウトされる。わずかに異なる実施例を
図15Bに示し、カップリングイン素子は、基板の傾斜したエッジ163に斜めに取り付けられたプリズム162である。図示のように、
図15A及び
図15Bに示す実施例では、入力アパーチャは
図4-11の実施例よりも充分に小さい。当然、
図15A,15Bと類似のプリズムをカップリングイン素子に用い、2次の軸外れ角を有する光波を直接に基板に結合する変形例も可能である。その場合、
図12Bに示す方法と同様の方法で、基板内で1次の軸外れ角度を有する光波が生成される。
考慮すべき別の問題は、
図12A-12Cの実施例で、面124により分割された光波の均一性である。図示のように、1次の軸外れ角αin
(1)でトラップされた光線は、面124の左側で1回だけ部分反射される。しかし、
図16Aに示すように、面124で部分的に2回反射される光線がある。図示のように、光線164は、面124と上部主要面70との間の交点に近接する点165で、面124から最初に部分反射される。点165で表面124を透過する光線164の部分は、下部主面72で反射され、面124を透過し、上面70で反射され、点166で面124から部分的に再び反射される。この部分の光線は最初の輝度の1/2で、点165でスプリットされるため、輝度は最初の光線164の約1/4となる。光線164は3つの光線に分かれ、光線164aは点165で面124で反射され、最初の光線164の約1/2の輝度を持つ。光線164b,164cは点165で面164を透過し、点166で面164を再透過または反射され、当初の光線164の約1/4の輝度を持つ。その結果、画像波には他よりも暗いものが含まれ、これらの変動はカップルアウトされた画像での暗い縞として見える。この現象は、FOVにおいて光波が高次の軸外れ角を有する場合は無視できる。しかし低次の軸外れ角に対しては顕著になる。
基板から結合された画像の不均一性の問題を解決するためには、この問題と、表示面から実像を放射する従来の表示源の不均一性の問題、との違いを理解することが重要である。一般に、従来の表示源から投射される画像の不均一性は、ディスプレイ自体の不均一性により引き起こされ、例えば、ディスプレイの異なるピクセルは異なる強度の光波を放出する。その結果、不均一性問題を解決する唯一の方法は、ディスプレイのピクセルを直接管理することである。しかしながら、
図16Aに示すように、ここでの画像の不均一の原因は全く異なる。ここでは不均一性は、画像の単一のピクセルに関する単一の光波の異なる光線の不均一性により引き起こされ、方向が同じで強度が異なるのである。従って、この不規則波の様々な光線を混在させることにより、この平面波の不均一性を解決できる。従って、全反射により基板内に閉じ込められた平面波の均一性を改善するために、適切な混合装置を基板64に付加することが有利である。
図16Bに示すように、この凹凸の問題は、基板64の主面72の1つにフラットな透明板167を取り付けることにより解決でき、この場合、基板64と基板64との間の界面168にビーム分割構成が適用される。図示のように、異なる強度を有する2つの光線164,169は、界面168に位置する点170で互いに交差する。
図16Aで上に示した光線164は、既に部分的に反射されている従って、表面124により、元の光線よりも低い輝度を有する。点171で界面を透過し、プレート167の下面172で反射された他方の光線169は、まだ面124を透過しておらず、従ってより高い強度を有する。そこに適用されるビーム分割構成の結果として、2つの交差する光線のそれぞれが部分的に反射され、界面を部分的に透過する。その結果、2つの光線は、それらの間でエネルギーを交換し、交点170からの出射光線164dは、2つの入射光線164,169の平均強度に近い強度を有する。点166で表面124により部分的に反射され、以前よりも高く、不均一性の問題が緩和される。(
図16Bでは、より多くの交点及び分割線164,169が存在するが、図を簡略化するために、点170の交点及びそれから出現する光線164dのみがプロットされる)。点170での光線164と169の混合に加えて、
最も効率的なビーム分割構成は、入力光波の半分が透過され、半分が表面で反射される部分反射コーティングを界面に適用することである。その場合、出射光線164dの強度は実質的に2つの入射光線164,169の平均強度であり、光線の混合が最適である。しかしながら、コーティング方法の主な欠点は、像の収差及びスミアリングを避けるために、基板内にトラップされた光線の方向を厳密に保持しなければならないことである。従って、3つの反射面、即ち基板64の上面70、プレート167の下面172及び界面168を高度に平行に保つ必要がある。その結果、基板64とプレート167の外面は、それらを一緒に取り付ける前に、高い平行性と非常に良好な光学的品質を有さなければならない。しかし、これらの外面の1つに光学コーティングを施すと、特にこのプレートが特に薄い場合、コーティングされたプレートの表面が、コーティングプロセスにより、通常変形する。別の問題は、面67で反射された光線が、基板64からカップルアウトされる前に界面168と交差することである。その結果、界面168に単純な反射コーティングを容易には適用できない。何故なら、この面は基板64を出る光波に対して透明でなければならず、シースルー用途の場合、外部のシーンからの光波に対しても透明でなければならないからである。このように、光波は小さな入射角で実質的な反射なしに平面168を透過すべきであり、より高い入射角では部分的に反射されるべきである。この要求は、コーティング手順を複雑にし、コーティングプロセス中にプレートが変形される可能性を高める。わずかな変形でさえ結像系の性能を低下させるので、別の混合配置が適用されるべきである。
別の実施例を
図16Cに示す。ここでは、基板64とプレート167は、透光性基板64と平板167の屈折率とは実質的に異なる屈折率を有する光学接着剤176を用いて光学的に接合されている。屈折率の違いとトラップされた光線の斜め入射角のため、界面168と比較して、平面168でのフレネル反射が顕著であり、基板内にカップルされた光波は界面で部分的に反射される。実際には、入射光線は界面168で2回反射される。即ち、基板64と接着剤176との間の界面で1回反射され、光学接着剤176と透明板167との間の界面でもう1回反射される。図示のように、3つの異なる光線164,169,178が基板内に閉じ込められている。光線169,178は、界面168に位置する点171で互いに交差する。フレネル反射の結果、2つの交差する光線のそれぞれが部分的に反射され、界面を部分的に透過する。結果として、2つの光線は交点171から出てくる光線179及び180との間でエネルギーを交換し、2つの入射光線169,178の平均強度に近い強度を有する。同様に、2つの光線164,179は点170で交差し、交点170から出てくる光線181,182との間でエネルギーを交換し、2つの入射光線164,179の平均強度に近い強度を有する。従って、光線164,179,178は、このプロセス中にエネルギーを交換し、強度は平均強度に近づく。光線164,178はエネルギーを直接には交換しないが、点170,171で光線179を介して間接的にエネルギを交換する。
界面168からのフレネル反射が50%に近い場合、最適な混合が達成される。しかしながら、フレネル反射は入射角に対して非常に敏感であるため、結合された画像のFOV全体に対して50%のフレネル反射を生じる屈折率の光学接着剤はない。トラップされた光線は1回交差するだけでなく、複数回交差する。このため50%の最適値から大きく異なるフレネル反射に対しても、許容できる混合配置を見つけることが可能である。
図16B,16Cの実施例で利用される光線混合インターフェース面167の実現を式(42)と同じパラメータを有する光学システムを用いて示す。ここで基板64を平面167に接合する光学接着剤は、屈折率ndが1.43のNTT-E3341である。
図17は、1次のFOV全体を{45°,55°}として、波長550nm(光線領域における他の波長は同様の曲線を有する)での、入射角の関数として界面167での反射率のグラフを示す。図示のように、全反射の結果、53°を超える角度で反射率は100%であり、従って、これらの角度では混合効果は生じない。2次のFOVの全体{69°,79°}では、全ての光波は界面168で全反射され、オーダー全体に対して混合効果は得られない。上記のように、これらの角度の光線では不均一性の問題は実質的に無視できる。 αin(1)<52° の他のスペクトル範囲では、反射率は20%と80%との間で、良好な混合効果を達成できる。さらに、ここに示す装置は、単一の平板の利用に限定されない。様々な厚さと屈折率の2つ以上の平板を、種々の光学接着剤により、主面の一方または両方に光学的に接着できる。いずれにしても、透明板及び接着剤の正確なパラメータは、システムの様々な要求に従って定める。
図11A-11Dに示す実施例109では、ビームスプリッタ114aは、入射光線を、全反射により実質的に同じ輝度を有し、かつ基板110a、110b内に結合された2つの光線に均等に分割すると仮定した。その結果、ビームスプリッタ114aは入力光波の入射角に敏感ではなく、さらに出力輝度は約50%低下した。
図18A-18Cは装置109の変形例を示す。入力ビームスプリッタ183は入力光波の入射角に敏感であり、結果として、光学システムの効率が著しく改善され、カップルアウトされる画像は入力画像と実質的に同様の輝度を持つ。この改善を達成するために、基板からカップルアウトされる光波は、結合表面の活性領域全体を照らす必要がないという事実を、
図11A-11Dの実施例と同様に利用する。
図19にEMB 197を照明するために表面79に入射する光線を示す。画像の2つの周縁及び中央の光波が基板からカップルアウトされ、視者の眼24に再指向される。図示のように、光線107R,107M,107Lは0次の軸外れ角αin(0)(max)、αin(0)(mid)、およびαin(0)(min)を各々有し、カップリングアウト反射面67の部分67R,67M,67Lのみを各々照らし、面79で反射されEMB197に入射する。結合された光波が、面67の必要なそれぞれの部分のみを照射するように分割し、元の輝度を保存する方法がある。これを達成するために、入力面183へ入射する(
図18A)光波の角度範囲
Fsur(1)≡{αmin、αmax} を3つのつのほぼ等しいセグメントに分割する。即ち、 Flow(0)≡{αmin、αm1}, Fmid(0)≡{αm1、αm2}, Fmax(0)≡{αm2、αmax}である。この実施例の目的は、Fmax(0)≡{αm2、αmax} のFOVで高い入射角を有する光波を、カップリングアウト素子190a,190bの双方により、上部基板110aからカップリングアウトすることにある。また Fmin(0)≡{αmin、αm1} のFOVで低い入射角の光波を、カップリングアウト素子190c,190dの双方により、下部基板110bからカップリングアウトする。さらに Fmid(0)≡{αm1、αm2}のFOVの光波を、下部カップリングアウト素子190bにより上部基板110aからカップリングアウトし、また上部カップリングアウト素子190cにより下部基板110bからカップリングアウトする。
これを達成するために、面183はFmax(0) の全ての光波を実質的に反射し、上部基板110aに結合し、またFmin(0) の全ての光波を実質的に透過させ、反射面114により下部基板110bにカップルする。さらにFmid(0) の光波の一部は面183で反射され、上部基板110a内にトラップされ、カップリングアウト素子190bの下部によりカップルアウトされる。Fmid(0) の光波の他の一部は面183を透過し、下部基板110b内にトラップされ、カップリングアウト素子190cの上部でのみカップルアウトされる。
図4A,4Bに示すように、1次のオフ角で基板内を伝播する光波はカップリングアウト素子67の上部で、基板から出射する。しかし2次の基板軸外れ角の光波はカップリングアウト素子67の下部で、基板からカップルアウトされる。光波Fmid(0) のカップリングイン要件を達成するため、このFOVの光波が、2次の軸外れ角を持つ場合、上部基板110aでカップリングインされ、下部190bでカップルアウトされるようにし、1次の軸外れ角を持つ場合、下部基板110bでカップリングインされ、上部190cでカップルアウトされるようにする。
従って、角度敏感性反射面183は、全明視野範囲に対し、以下の3つの特性を満たす必要がある。
a・ 角度範囲{α m2、α m ax}に対し、実質的に全反射
b・ 角度範囲{α m i n、α m1 }に対し、実質的に透明
c・ 面183の上部183a(
図18C)で角度範囲{α m1、α m2 }に対し、実質的に全反射であり、面183の下部183b(
図18C)で角度範囲{α m1、α m2 }に対し、実質的に透明。
表面183a,183に角度に敏感な誘電体コーティングを施すことによりこれらの要求を達成することが可能である。しかし、これらのコーティングの実現プロセスはかなり複雑である。簡単な方法は、面183a,183bで各々αm1、αm20の臨界角を持つ適切な屈折率の光学接着剤を用いて、面183a,183bを装置109の不活性部分177に接着することである。臨界角よりも低い角度での高い透過性は適切なARコーティングにより達成できる
図18Aは、面183の各々下部及び上部から入射する、入射角 αsi(0)<αm1 の同じ平面入射波からの、2つの光線184a,184bを示す。上記の条件(b)の結果、光線は面183を透過し、反射面114により下部基板110bに結合され、1次及び2次の軸外れ角をそれぞれ有する光線となる。その結果、光線は反射面190c,190dによりそれぞれ基板からカップルアウトされる。
図18Bは、 αsi(0)>αm2 の入射角をそれぞれ有する、同一平面入力波からの2つの光線185a,185bを示す。それらは面183の下部及び上部に衝突する。上記の条件(a)の結果、光線は面183で反射され、1次及び2次の軸外れ角をそれぞれ有する光線として、上部基板110aに結合される。その結果、光線は反射面190a,190bによりそれぞれ基板からカップルアウトされる。
図18Cは同一平面入力波からの2つの光線186a、186bを示す。これらは
αm1<αsi(0)<αm2 の入射角を有し、面183b,183aにそれぞれ衝突する。上記の条件(c)の結果、光線186bは面183aで反射され、2次の軸外れ角を有する光線として上部基板110aに結合される。その結果、光線は下部反射面190bで基板からカップルアウトされる。さらに、光線186aは面183bを透過し、1次の軸外れ角を有する光線として反射面114により下部基板110bに結合される。その結果、光線は要求通りに上部反射面190cにより基板からカップルアウトされる。
通常、2つの部分183a,183bが、2つの異なる接着剤により、部品間のクロストークを起こさずに部品177に接合されるように、面183を不活性部品177に接合することは困難である。
図18Cに示すこの問題を克服するための方法は、界面189に一緒に取り付けられた2つの平行なスライス110a,110aにより、基板110aを製造することである。上部基板110aを110a,110aの組み合わせにより製造することには、3つの重要な問題がある。第1に、界面189での内部全反射により、上部スライス 110aa中に二次光波がトラップされることを回避するためには、スライス110a,110aを光学的に取り付けるために使用される光学接着剤が、スライスの屈折率に近い屈折率を有する必要がある。第2に、カップルアウトされる画像の乱れを防止するには、カップリングイン面183a、183bとカップルアウト面190a、190bは、厳密に共線形(co-linear)である必要がある。さらに、トラップされた光波、特に2次の軸外れ角を有する光波の、残留フレネル反射を完全に防止することは困難であるため、界面189は基板110aの主面111a,112aと平行でなければならない。
必要とされる角度敏感性ビームスプリッタを実現する代替的な実施例を、
図20A-20Cに示す。図示のように、光学装置199全体は4つの異なる基板191a、191b、191c,191dで構成され、それらは3つの界面193a、193b,193cをそれぞれ規定するように光学的に接合されたる。
図18A-18Cの実施例との他の相違点は、ビームスプリッタ183aと183bとが入れ替わっている(interchanged)ことである。即ち、面183a,183bは不活性部分177に接合され、用いる光学接着剤は適切な屈折率を有し、面183a,183bは各々臨界角αm1.αm2を持つ。
図20Aは入射角 αsi(0)<αm1 の同一平面入力波からの2つの光線184a ,184bを示し、これらは面183b及び面183aにそれぞれ入射する。前述のように、光線は面を透過し、基板191d,191cにそれぞれ結合される。前記のように、入力波は面183a,183bの前面を照らし、1次及び2次の軸外れ角全体を満たし、面190a、190bの全活性エリアに入射し、基板からカップルアウトする。
図20Bは、入射角 αsi(0)>αm2 の同一平面入力波からの2つの光線185a,185bを示す。これらの光線は面183b及び面183aにそれぞれ入射する。前述のように、光線は表面で反射され、基板191b,191aにそれぞれ結合される。上記したように、入力光波は面183a,183bの全領域を照射し、従って、それらは1次及び2次の軸外れ角全体を満たし、その結果、面190a,190bの全活性領域を照らし、基板から出射する。
図20Cは、入射角 αm1<αsi(0)<αm2 の同一平面入力波からの2つの光線の186a,186bを示す。それは面183b、183aにそれぞれ衝突する。ビーム分割機構が面183a,183b間で交換され、光線186aは面183bで反射され、基板191bに結合され、反射面190bによりカップルアウトされる。さらに、光線186bは面183aを透過し、反射面195aにより基板191cに結合され、必要なように、反射面190cにより基板からカップルアウトされる。
4つの基板191i(i = a、b、c、d)は各々独立して機能し、隣接するカップリングイン及びカップリングアウト面間の共直線性に関する制約は、
図18A-18Cの実施例とは異なり、解消される。唯一の制約は、それぞれの基板191iに対して、主面とカップリングインとカップリングアウト表面が互いに平行であることである。さらに、それぞれの基板は、光学システムの要求に従って、異なる厚さ及び異なる傾斜角を有することができる。
図18A-18C及び
図20A-20Cの実施例で利用した、角度敏感性反射面183s,183bの実装を、以下に説明する。この例では、光学システムは、
図18A-18Cの基板110a及び
図20A-20Cの基板191a,191bに関し、以下のパラメータを有する。
図18A-18Cの基板110b及び
図20A-20Cの基板191c,191dに関し、以下のパラメータを有する。
光波はs偏光である。基板64の光学材料は、屈折率 nd = 1.846 のSchott N-SF57であり、
図18A-18Cの面183a,183b(または
図20A-20Cの面183b,183a)に隣接する光学接着剤は、屈折率 nd=1.315 のNTT-E3337と屈折率nd = 1.42 のNOA 1315である。カップリング画像の全体的なFOVは F(0)={30°,46°}(空気中で実質的に30°のFPV)、角度範囲 Fsur1(0)≡{39°,55°} は、以下の3個の実質的に等しいセグメントに分割される:
Flow(0)≡{39°,45°}、Fmid(0)≡{45°,50°}、 Fmax(0)≡{50°,55°}。
図21Aは、適切なAR誘電体コーティングでコーティングされた
図18Cの反射面183a(または
図20Cの面183b)での反射率のグラフを、3つの異なる波長:450nm、550 nm及び650nmに対して示す。示されているように、45.6°を超える角度の場合、反射率は内部全反射のために100%であり、入射角が{39°、44.5°}の場合は非常に低い。
図21Bは、適切なAR誘電体コーティングでコーティングされた
図18Cの反射面183b(または
図20Cの面183a)での反射率のグラフを、3つの異なる波長:450nm、550 nm及び650nmに対して示す。示されているように、反射率は50.7°以上の角度に対して内部全反射のために100%であるが、入射角は{39°、50°}では極めて低い。
図22は、基板からカップルアウトされ、視者の眼24に再指向される画像の、2つの周縁光波及び中心光波を示す。図示のように、ゼロ次の軸外れ角の光波185,186,184は軸外れ角αin(0)(max)、αin(0)(mid)、およびαin(0)(min)を持ち、それぞれ反射面190a-190b、190b-190c,190c-190dのみを照明し、面79により反射され、EMB 197に入射する。EMB197の範囲は、素子199の出力開口全体の2つのエッジで反射される境界光線185R,184Lで定まる。EMB197の範囲は、新しい配置の結果出力開口の中心へ移動した光線185R,184Lの影響を受けない。従って
図18A−18C、
図20A-20Cの実施例は、
図11A-11Cの実施例のEMBと同じ開口を有し、出力輝度は倍増する。
図20A、
図20B及び
図20Cは、投影画像の明るさを低下させることなく、出力アパーチャを2倍に増加させる、2対の基板を含む実施例の概要を示す。しかしながら、広いFOV及びEMBから遠隔に配置された入力アパーチャを有するシステムがあり、この場合、主基板への入力アパーチャを著しく増加させる必要がある。これらの場合、開口を2倍にするだけでは不十分で、さらに増すことが必要とされる。この目的のため、上記の増加方法での増加率nを n> 2 に一般化する。イメージのアパーチャをn倍に増加させる必要があると仮定すると、n対の透明基板を一緒に取り付ける。ここで、各対に対して、カップリングイン面及びカップリングアウト面を、例えば、面183a,183b、ならびに面190a,190b(
図20A)と同様に、隣接して配置する。さらに、全てのカップリングアウト面を、実施例199の面190iのように、隣接配置する。上部ペアの入力面に入射する角度範囲を、2n-2の等間隔の分割角αjで、Fsur1≡{αmin、αmax}を2n-1個の実質的に等しいセグメントに分割する。jをボトム1からトップ2nまで変化する数とし、基板をSjで表す。すると下位の基板S1,S2のカップリングイン素子は、正常反射面である。これ以外の2n-2個のカップリングイン素子は角度敏感性部分反射面で、j>2 の各基板は全画像範囲に対し以下の条件を充たす。
a.角度範囲 αsi(0)>αj-2に対し、実質的に全反射、
b.角度範囲 αsi(0)<αj-2に対し、実質的に透明.
即ち、基板Sjのカップリングイン素子は、限界角αj-2よりも大きな入射角の光波を全反射し、基板Sjに結合する。また他の全ての光波を、隣接する基板Sj-2へ透過させる。前記のように、これらを達成する最も簡単な手法は、それぞれのカップリングイン面を素子の隣接する不活性部に接着し、用いる光学接着剤を臨界角αj-2が得られるように屈折率を選ぶことである。前記のように、臨界角未満で入射した光波への高い透過率は適当なARコートで達成できる。
n対の透明基板を含む上記の実施例は、以下の特徴を有する。
a・ 下部基板及び上部基板の他に、各基板Sj( j = 2 ... 2n-1)に結合される光波は、角度範囲が{αj-2,αj}である{αminとαmaxをα0及びα2n-1と表記する)。基板S 1及びS 2nに結合される光波は、角度範囲が各々
{α0、α1}と{α2n-2,α2n-1}内にある。
b・ 入射角がαj-1<αs<αj(j=1−2n)の各光波(上部ペアFsur1≡{αmin、αmax}の入射面に入射する光波の角度範囲において)は2つの隣接する基板Sj及びSj+1に結合され、それぞれのカップリングアウト素子190j,190j+1からカップルアウトされる。各光波内部全反射により結合され、カップリングアウト素子により1/nの部分がカップリングアウトされる。適切な設計により、カップルされた光波のほぼ全体がシステムの指定されたEMBに入射する。
図11-20に示す全ての実施例において、出力アパーチャを拡張する結果の1つは、光モジュールの厚さもまた拡張されることである。しかしながら、基板をできるだけ薄く保ちながら、大きな出力アパーチャを必要とする用途がある。
図23Aは、基板の厚さを増大させることなく、出力アパーチャを拡張する実施例を示す。図示されているように、角度敏感性部分反射面198が基板200に埋設されている。面198はカップリングイン面65及びカップリングアウト面67に平行である。基板200の主面に対する面198の傾斜角は、次式を満たす。
基板200内を伝播する画像のFOV全体について、面198は実質的に均一に部分反射する。即ち、以下の入射角の光波を、均一に反射及び透過させる。
また以下の入射角では、全反射する。
さらに、この面は、基板からカップルアウトされ視者の眼に再指向される光波、ならびに外部のシーンからの光波に対して実質的に透明である。
図23Aに示すように、光線202は面65で1回反射した後に基板200に結合され、1次の軸外れ角αで基板200内を伝播する。基板200の主面で複数回反射した後、光線202は点206aで面198に衝突する。光線は、面に左側から入射するので、面67に入射する光線と同様に挙動し、式 (16)を用いて、点206aにおける光線202の入射角まで計算できる。
その結果、式(46)の条件が充たされ、光線202は面198により均等に分割される。即ち、光線202の強度の約半分が面198で軸外れ角αin(0)の光線202aとして反射され、下部面72を介して基板200からカップルアウトされる。光線202の強度の残りは、光線202bとして面198を通過し、同じ軸外れ角αin(0)で基板200内を伝搬する。上部主面70で1回反射された後、光線202bは点206bで面198に再度入射する。光線は面に右側から入射するので、式 (15)を用いて、点206bにおける光線202bの入射角まで計算できる。
その結果、式 (47)の条件が満たされ、光線202bは面198で全反射され、以下の軸外れ角で基板200内を伝播し続ける。
具体的には、光線202bは、2次の軸外れ角αin(2)で基板200内を伝搬する。カップリングアウト面67で2回反射された後、光線202bは基板200から光線202aと同じ軸外れ角αin(0)でカップルアウトされる。
図23Aに示すように、別の光線204が面65での2回反射された後に基板200に結合され、基板内を2次の軸外れ角αin(2)で伝播する。基板64の主面で複数回反射された後、光線204は点207aで面198に衝突する。光線は、表面へ左側から入射し、面67に衝突する光線と同様に挙動するので、式 (16)を点207aにおける光線204の入射角を計算するために使用できる。従って次式が成立する。
その結果、式 (47)の条件が満たされ、光線204は面198から全反射され、以下の軸外れ角で基板200内を伝播し続ける。
特に、光線204は、1次の軸外れ角αin(1)で基板200内を伝搬する。基板200の下部主面72で1回反射した後、光線204は点207bで面198に再び衝突する。点206aでの光線202の挙動と同様に、光線204は面198で実質的に均等に分割される。光線204の強度のおよそ半分は面198として反射され、軸外れ角αin(0)の光線204aとなり、下部面70を介して基板200からカップルアウトされる。光線204の残り半分は光線204bとして面198を透過し、同じ軸外れ角αin(1)で基板200内を伝搬する。カップリングアウト面67で一回反射した後、光線204bは、光線202a、202b、204aと同じ軸外れ角αin(0)で基板200からカップリングアウトされる。その結果、基板200の出力アパーチャは、面198,面67の合成となる。従って基板200の出力アパーチャの実際の活性領域は、
図4の基板64の2倍になる。ただし基板の厚さは同じままである。一方、基板200から結合された光波の輝度は、基板64の輝度の50%になる。
図23Aの拡張された実施例は、1つの基板または1つの部分反射面に限定されない。いくつかの異なる基板、または単一の基板内に埋設されたいくつかの異なる部分反射面からなる光学システムも、実現可能である。
図23Bは、2つの異なる基板210a,210bが一緒に取り付けられている、光学システム208を示す。
図23Aの面198と同じ光学特性を有する2つの部分反射面212a,212bが、基板210a,210bの内部にそれぞれ埋設されている。入力光線214は、ビームスプリット面216により2つの部分、即ち面216により基板210aに結合された光線214aと、面216を透過し、面218により基板210bに結合された光線214bに分割される。結合された光線214a,214bは、それぞれ表面212a,212bにより分割される。光線214aa及び214bbはこれらの面により反射され、基板からカップルアウトする。これに対して、光線214ab, 214bbはこれらの面を透過し、反射面220a,220bによりそれぞれ基板からカップルアウトされる。その結果、システム208の出力アパーチャ(開口)は、4つの面212a, 212b, 220a, 220bから構成され、このアパーチャのアクティブエリアもそれに応じて拡張される。図示のように実施例208では、下部基板210bのカップルアウト表面212b,220bを、必要に応じ、表面212a,220aの非活性部分によりそれぞれ部分的にブロックできる。
図23A,23Bに示す実施例では、基板に埋設された部分反射面は、入射光波強度を均等に分割する、即ち、表面の反射率(従って、透過率)は角度スペクトル全体に対し50%であるとする。 結合された画像の しかしながら、
図19及び
図22に関して考慮したのと同じ議論により、像の角度スペクトルの上部に軸外れ角を持つ光波は、部分反射面198により大部分がEMBへカップルアウトされる。一方、画像の角度スペクトルの下部に軸外れ角を持つ光波は、反射面67により大部分がEMBにカップルアウトされる。そのため、部分反射面に部分反射コーティングを設け、角度スペクトルの上部領域に50%より高い反射率を与え、下部領域に対して50%より低い反射率を与えることが有利である。この場合、上部及び下部の光波の輝度は、それぞれ部分反射面198の反射率及び透過率に依存するので、これらの領域では50%より高くなる。一方、部分反射面198と反射面67とによりEMBに均一にカップルされる、角度スペクトルの中心領域の光波は、反射率、従って輝度は約50である%であり、画像のエッジの輝度よりわずかに低くなる。LCD及びLCOSのような背面照明及び前面照明の大部分ディスプレイでは、しかし、LCD及びLCOSのような表示装置では、照明の明るさ、従って表示源の明るさは、通常ディスプレイの中央で高い。その結果、部分反射面の不均一な反射率カーブが不均一な照明を補償でき、さらに出力画像全体の輝度が改善される。
図23Cの変形例255では、基板の厚さを増加させることなく、また面198のために必要な特殊な部分反射コーティングに頼らずに、出力開口を拡張する。図示のように、反射面256は基板258の内部に埋設されている。面256は面67と同じ反射特性を有し、カップリングイン面65及びカップリングアウト面67に平行である。基板258の主面に対する面256の傾斜角は次式で与えられる。
図23Cに示すように、光線260は面65で1回反射した後に基板258にカップルされ、従って1次の軸外れ角αで基板258内を伝播する。基板258の主面で複数回反射した後、光線260は表面256に衝突する。光線は表面へ右側から入射するので、面67に衝突する光線と同様に挙動し、軸外れ角αin(0)で基板258から外に出され、次いで
図5A-5Cの実施例のように、視者の眼に反射される(または、シースルー用途において部分的に反射される)。しかし反射光は、ここでは、
図5A-5Cの実施例とは異なり、視者の眼の中に乱されずに伝搬するのではない。反射光は表面79aに平行な部分反射面264aに入射し、基板の下部面72に取り付けられたプリズム80と同様に、基板268の上面70に取り付けられたフラットなプリズム267内にカップルされる。基板の下面72と接触する。従って、上記のことを達成する1つの方法は、プリズム267と基板258との間の界面268にエアギャップを使用することである。剛性なシステムとするための別の方法は、適切な屈折率を有する光学接着剤を界面268に塗布し、プリズム268を基板258に結合することである。面264aに入射した光線260の強度の一部はこの面を光線260aとして透過し、視者の眼に向かって伝播し続ける。表面79a,264aは平行なので、光線260の強度の残りは軸外れ角αin(0)の光線260bとして面264aで反射され、面256に再度入射する。この光線は、面に左側から入射し、面65に衝突する光線と同様に振る舞い、表面256で2回反射した後に、2次の軸外れ角αin(2)で基板258内を伝搬する。カップリングアウト面67で2回反射した後、光線260bは同じ軸外れ角αin(2)で基板258からカップルアウトされ、面79aに平行な面79dで反射され、光線260aと同じ方向から視者の眼に入射する。
図23Cに示すように、別の光線262は面65で2回反射した後に基板258に結合され、2次の軸外れ角αin(2)で基板内を伝搬する。基板258の主面で複数回反射された後、光線262は面256に衝突する。光線は表面へ右側から入射し、面67に衝突する光線と同様に挙動し、従って、軸外れ角αin(0)で基板258からカップルアウトされる。次いで、面79aに平行な面79bにより反射され(または透視用途において部分的に反射され)、光線260と同様にして視者の眼に入射する。反射光は面79b,264aに平行な部分反射面264bに入射し、プリズム267内に結合される。面264bに衝突する光線262の強度の一部は、光線262aとして表面を透過し、視者の眼に向かって伝播する。面79b,264bは平行なので、光線260の強度の残りの部分は、軸外れ角度αin(0)の光線262bとして表面264bで反射され、面256に再び衝突する。光線は、この面に左側から入射し、面65に衝突する光線と同様に挙動するので、面256で1回反射された後に、1次の軸外れ角α(1)で基板258内を伝搬する。カップリングアウト面67で1回反射された後、光線262bは同じ軸外れ角αin(0)で基板258からカップルアウトし、面79bに平行な面79cで反射され、光線260aと同じ方向から、視者の眼に入射する。以上のように、光源の同じ点から発生した全ての光線260a,260b,262a,262bは、同じ方向から視者の眼に入射する。
その結果、基板258の出力アパーチャは、表面256と67との組み合わせで構成される。その結果、基板258の出力アパーチャの実際のアクティブ領域は、
図4の基板64の2倍になり、しかも基板の厚さは同じままである。一方、基板258からカップルアウトされた光波の輝度は、基板64からの輝度と比較して小さくなる。しかし、カップルアウトされた光波の輝度を改善する方法がある。基板内に結合された光波が直線偏光している実施例では、例えばディスプレイソースがLCD及びLCOSであるようなシステムでは、部分反射面79i、264i(i = a、b、...)を偏光に敏感な反射面となるように設計できる。これらの面は1つの偏光(好ましくはs-偏光)に対して反射性(または部分反射性)であり、直交偏光(好ましくはp-偏光)に対して実質的に透過性である。そのような場合、シースルー用途で外部のシーンを透過させることができる。何故なら、素子255全体が1つの偏光方向(基板内にカップルされる光波と直交する方向)に対し、実質的に透明だからである。反射面79iは、関連する偏光(基板内部に結合された光波と同じ)を全反射しても良いが、面254iはこの偏光を部分反射し、正確な反射率はシステムの反射面264iの数に応じて定める。
図23Cの実施例では、基板258内に2個の反射面256,267が埋設され、反射率を0.5とすると、基板にカップルされた光の寄与を50%、外部シーンの透過光を50%にできる。
反射面256を基板258に埋設することにより出力アパーチャを拡大する
図23Cの実施例は、単一の反射面に限定されない。出力反射面67に平行なn個のフラットな反射面256i(i = a、b ...)のアレイを基板内に埋設し、基板の出力開口をn + 1倍にできる。従って、反射面264i(i = a、b ...)の数を増し、埋設面256iの出力開口を完全に覆う。各反射面264iの反射率及び横幅は、視者の眼に入射する光波の均一性を確保するように定める。
基板200内に埋設された、
図23Aに示す部分反射面198の実現を、以下のパラメータを有する光学システムについて示す。
光波はs偏光している。基板200の光学材料は屈折率がnd = 1.846のSchott N-SF57であり、面198に隣接する光学接着剤は屈折率n d = 1.49のNTT-AT9390であり、臨界角はαcr = 53.5°である。面198の反射率は、αsp(0)=40°の44%からαsp(0)=50°の55%へ単調増加するように設計されている。
図24は、450nm、550nm及び650nmの3つの波長に対し、入射角の関数として、適切な誘電体コーティングで被覆された部分反射面198の反射率のグラフを示す。示されているように、反射率は、{60°、70°}の角度範囲について全反射で100%である。加えて、反射率は40°で44%から50°で55%に増加するが、入射角が15°未満では非常に低い。
図5A-5Dは、結合された光波を視者の眼24に向けるための実施例を示し、光波は反射面79により反射され、再び基板64を透過し視者の眼に向かって伝搬する。視者の眼を基板の他の側に配置する他の方法を、
図25A-25Cに示す。
図25Aに示すように、同じ光波からの4つの光線222a、222b、222c、222dは、反射面65により基板64に結合され、その後、軸外れ角度αin(0)で面67からカップルアウトされる。カップルアウトされた光線は視者の眼を向く反射面224で反射され、この面は基板の下部主面72に対し αref=90°−1/2・αin(0)(cen)だけ傾斜している。この実施例の主な欠点は、反射面224の長手方向(y軸に沿った)の寸法が大きく、大きく面倒な光学システムとなることである。
図25Bはこの実施例の変形例を示す。平行は反射面のアレイ(または部分反射する平行な反射面のアレイ)は基板224と同じ傾斜角を備え、基板64の出口開口の隣に配置されている。アレイ225は、好ましくは屈折率が基板64の屈折率と同様である、透明なプリズム226内に埋設されている。光学システムは、アレイ225の反射面の数及びプリズム226の厚さに依存するが、
図25Aに示したものよりはるかにコンパクトにできる。
図25Bに示すように、反射面は互いに隣接している、即ち、各面の右側が隣接面の縁の左側に隣接している。提案された実施例には問題がある。図示のように、光線222b(破線)は面225aの上部により反射され、この面は光線222b 'の続き(continuation)(灰色矢印)が点227で反射面225bに到達するのを(少なくとも部分的に)防止するる。結果として、面225bの点227よりも下の部分は面225aによるブロックされ、不活性になる (表面225aの反射率に依存して少なくとも部分的に)。さらに、ここで示した構成は、中心でカップルアウトされる光波には適しているが、より低い軸外れ角を有する光波には適していない。図示されているように、−1/2・FOVの軸外れ角を有するカップルアウトされた光線228は(光線の一部は基板内に結合されているが、ここには示さない)、面225cの下部によりブロックされる。
図25Cは、非アクティブ部分を構成する反射面225の下部がトリミングされ、プリズム226の厚さがそれに応じて減少する、変形例を示す。このバージョンの主な結果は、反射面225がもはや互いに隣接していないことである。図示されているように、結合された光波とプリズム226の下面232との交点230は、交互の暗い縞と明るい縞の形態を有する。これは、HUDのような眼から遠くに位置するディスプレイの性能を著しく低下させ、ストライプが眼に見えるようになり、従って、この方法はこれらの用途に利用できない。近視眼ディスプレイの場合、眼は単一の視角から出てくる光波を積分し、それを網膜上の1点に集束させ、眼の応答曲線は対数であるので、ディスプレイの明るさの変化があっても目立たない。従って、ストライプが十分に密である(即ち、各ストライプの横方向の寸法が眼の瞳孔よりもかなり小さい)場合、及び眼が基板に十分に近接して配置されている場合、ストライプがあっても、視聴者は依然として高品質の画像を経験できる。さらに、反射面225の活性領域は、表面232上の照射領域のより低い充填率をもたらすようにさらにトリミングできる。反射面225を表面232に投影したエリア230では、投影画像の結合された光波が視者の眼に向かって透過し、他の非照射領域234では、シースルー用途のために、外部のシーンから眼に向かって光が透過できる。結果として、投影画像の輝度と外部シーンの輝度との比は、投影領域230の適切なフィルファクタを設定することにより制御できる。また、プリズム226よりも屈折率の低い光学接着剤を表面に塗布することにより、反射面225の反射率を実現でき、反射された光波が反射面225に入射する斜めの角度が臨界角より大きくなり、表面からの光波の内部全反射が生じる。結合された光を視者の眼に偏向させる
図25Cに示す”整えられたアレイ”の実施例は、
図5Cに示す実施例にも適用できる。これは、反射面79i(i = a、b ...)が互いに隣接して配置されなくなることを意味し、投影画像の輝度と外部シーンの輝度との間の比は、プリズム80内の反射面79iのフィルファクタを変化させると共に、面79iの反射率を設定することにより達成される。さらに、”トリムアレイ”の実施例は、
図23Cに示す多重反射面の実施例にも適用できる。即ち、反射面264i(i = a、b ...)は、もはや互いに隣接しなくなり、反射面264iを透過し視者の眼に到達する光波の輝度と、これらの表面により反射されて基板に再び結合される光波は、プリズム267内の反射面264iの適切な充填率を設定すること、及びプリズム267の表面264Lの反射率を設定することにより決定される。
図25B,25Cに示す再指向の実施例は、主に、カップリングアウト面が全反射性である実施例に適している。
図23A,23Bの実施例の場合、カップリングアウト素子の一部が部分反射面である場合、外部のシーンからの光波が部分反射面200を透過せず、表面225により視者の眼に反射され、ゴースト画像を作成する。
上記の全ての実施例において、1次及び2次の軸外れ角を有する光波だけが基板内を伝搬すると仮定した。しかしながら、比較的小さなFOVを有するシステムでは3次も利用できる。
図5Cを参照し、例えば、以下のパラメータを有する光学システムを想定する。
光波はs偏光であ、基板の光学材料は屈折率が nd = 1.846 であるSchott N-SF57であり、基板64をプリズム80に接着するために使用される光学接着剤はNTT-E3337で、屈折率 nd= 1.42 であり、基板64とプリズム80間の界面83(
図5D)は、下主面72全体を覆っている。従って、下面の臨界角は、α
lcr=50.3°である。基板と入力光波のコリメート素子との間の界面は空隙であり、従って上面の臨界角はα
ucr=32.8°である。高次のF
(2)及びF
(3)の光線の全ては、臨界角よりも大きな軸外れ角を有し、従って、界面70及び上面70から完全に反射される。さらに、光波は、上面70から全反射され、従って、カップリングインプロセスの間に2次及び3次の光線を生成するために使用できる。一方、1次の全ての光線は、界面臨界角よりも低い入射角で界面83に入射するため、全反射により基板内部を伝搬できない。加えて、カップリングアウトプロセスの間に、面67での高次の反射により1次に転送された光波は、界面83を透過し、カップリングアウト素子67により出力光波として基板64からカップルアウトされる。入力光波は0次のF
(0)であり、出力光波は1次のF
(1)である。基板内を伝播する光波はより高次のF
(2)及びF
(3)である。従って、高次の次数を生成するために必要な入力光波の幅は、カップルアウトされた1次の幅よりもはるかに狭いので、システムの実際の入力開口は、出力開口よりも実質的に小さい。
図26に示すように、入力光線250は軸外れ角αin
(0)で基板64上に衝突する。面65の点252A、252B,252Cで3回反射した後、光線は、基板内に結合さ、3次の光波、軸外れ角αin(3)で基板内を伝搬する。基板64の主面で複数回反射した後、光線250は面67に衝突する。点254a,254bで2回反射した後に、1次の軸外れ角αin
(1)で基板64からカップルアウトする。次いで、光線250は、基板の主面に実質的に垂直な表面79aで反射され、視者の眼24に入射する。
図27a,27bは、必要な透明基板を製造する方法を示す。最初に、必要な寸法を有する一群のプリズム236が製造される。これらのプリズムは、Schott SF-57のようなシリケート系材料を用い、従来の研削技術及び研磨技術により製造でき、あるいは、射出成形または鋳造技術を用いてポリマーまたはゾルゲル材料で製造できる。これらのプリズムの適当な表面を、必要な光学コーティング237でコーティングする。最後に、プリズムを接着し、所望の基板238を形成する。光学表面の品質が重要な場合、表面、またはそれらの少なくとも一部の研磨を最終プロセスとして加えることができる。
図28a-28eは、透明基板を製造する別の方法を示す。適切な光学コーティング240により被覆された複数の透明な平板239を用意する(ステップ(a))。必要であれば、適切な光学接着剤を用いて接合し、スタック242を製造する(ステップ(b))。ステップ(c)のように、スタックを切断によりスタックし、研削と研磨を施し、複数のセグメント244を製造し、所望の基板246とする(ステップ(d))。スライス246から複数の素子248を切り出し、上面図をステップ(e)に示す。
図27、28は、2つの反射面を有する基板の製造を示す。
図12または
図23に示す実施例では、他の反射面が基板内に埋設され、より多くのプリズムが形成され(
図27)、または平板(
図28)が製造工程に追加される。
図5-26は、
図4A-4Bに示す基本構成に追加できる様々な特徴を示している。これらには、
様々なタイプの多重反射面(
図5及び
図25);
外部補正レンズ(
図8A-8C);
結合アウト素子の非活性部分のブロッキング(
図9A-9C);
特殊な補償設計(
図9D):
複数の基板の組み合わせ(
図11,18,20及び23B);
入力開口を小さくするため(
図12A-12B)、あるはカップルインされた光波の混合のための(
図12C-12D)、基板への角度敏感性反射面の埋設;
異なるカップリングイン素子の追加(
図15A-15B);
カップルインされた光波を混合するために、基板の主面の1つ(またはそれ以上)への薄い透明板の接合(
図16B-16C);
光学システムの輝度を増加させるための、角度敏感性カップリングイン面の利用(
図18及び
図20);
基板内または基板の主面の隣への、部分反射面の埋設(
図23A-23C);
基板内にカップルインされた光波の、3以上の伝搬次数の利用(
図26)、などがある。最終的には、これらの特徴の任意の数の任意の組合せを、光学システムの特定の要求に従って、
図4A-4Bに示されている基本的な実施例に追加できる。
本発明は前述の実施例の詳細に限定されず、本発明の精神または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施できることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明の実施例は、全ての点で例示的であって制限的でないと考えられるべきであり、本発明の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲その中に包含されることが意図されている。