特許第6987093号(P6987093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987093提供サーバ、提供方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987093
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】提供サーバ、提供方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20211213BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20211213BHJP
【FI】
   G01S5/02 Z
   H04W64/00 173
   H04W64/00 160
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-105512(P2019-105512)
(22)【出願日】2019年6月5日
(65)【公開番号】特開2020-197508(P2020-197508A)
(43)【公開日】2020年12月10日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 修三
(72)【発明者】
【氏名】山口 寛暁
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕
(72)【発明者】
【氏名】早水 謙
(72)【発明者】
【氏名】山田 康二
(72)【発明者】
【氏名】及川 拓人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慎也
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−046724(JP,A)
【文献】 特開2018−066638(JP,A)
【文献】 特開2012−145586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0021207(US,A1)
【文献】 特開2007−166448(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0055897(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14,
G01S 19/00−19/55,
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバであって、
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部と、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信する受信部と、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出する抽出部と、
抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数する計数部と、
前記アクセスポイントの数が最大である前記領域に含まれるアクセスポイントを特定する特定部と、
前記位置データを参照して、前記特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出する算出部と、
前記緯度の中央値及び前記経度の中央値によって示される位置に基づいて前記測位データを作成する作成部と
を備えることを特徴とする提供サーバ。
【請求項2】
前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記緯度の中央値及び前記経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定する判定部を更に備え、
前記作成部は、前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの緯度の平均値と、前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される位置を示す前記測位データを作成する、請求項に記載の提供サーバ。
【請求項3】
携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバであって、
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、各領域をさらに分割した複数の分割領域を示す分割領域データと、を記憶する記憶部と、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信する受信部と、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出する抽出部と、
前記測位データ要求に含まれる識別データの数が所定の判定値を超えている場合、抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記分割領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各分割領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、前記測位データ要求に含まれる識別データの数が前記所定の判定値以下である場合、抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数する計数部と、
前記計数されたアクセスポイントの数が最大である前記領域又は前記分割領域に含まれるアクセスポイントを特定する特定部と、
前記特定された複数のアクセスポイントの前記位置データに基づいて前記測位データを作成する作成部と
を備えることを特徴とする提供サーバ。
【請求項4】
前記測位データを前記携帯端末に送信する送信部を更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の提供サーバ。
【請求項5】
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバによる提供方法であって、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信し、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出し、
抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、
前記アクセスポイントの数が最大である前記領域に含まれるアクセスポイントを特定し、
前記位置データを参照して、前記特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出し、
前記緯度の中央値及び前記経度の中央値によって示される位置に基づいて前記測位データを作成する
ことを含むことを特徴とする提供方法。
【請求項6】
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、各領域をさらに分割した複数の分割領域を示す分割領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバによる提供方法であって、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信し、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出し、
前記測位データ要求に含まれる識別データの数が所定の判定値を超えている場合、抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記分割領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各分割領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、前記測位データ要求に含まれる識別データの数が前記所定の判定値以下である場合、抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、
前記計数されたアクセスポイントの数が最大である前記領域又は前記分割領域に含まれるアクセスポイントを特定し、
前記特定された複数のアクセスポイントの前記位置データに基づいて前記測位データを作成する
ことを含むことを特徴とする提供方法。
【請求項7】
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバの制御プログラムであって、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信し、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出し、
抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、
前記アクセスポイントの数が最大である前記領域に含まれるアクセスポイントを特定し、
前記位置データを参照して、前記特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出し、
前記緯度の中央値及び前記経度の中央値によって示される位置に基づいて前記測位データを作成する
ことを前記提供サーバに実行させるための制御プログラム。
【請求項8】
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、各領域をさらに分割した複数の分割領域を示す分割領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバの制御プログラムであって、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信し、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出し、
前記測位データ要求に含まれる識別データの数が所定の判定値を超えている場合、抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記分割領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各分割領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、前記測位データ要求に含まれる識別データの数が前記所定の判定値以下である場合、抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、
前記計数されたアクセスポイントの数が最大である前記領域又は前記分割領域に含まれるアクセスポイントを特定し、
前記特定された複数のアクセスポイントの前記位置データに基づいて前記測位データを作成する
ことを前記提供サーバに実行させるための制御プログラム。
【請求項9】
携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバであって、
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部と、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信する受信部と、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出する抽出部と、
抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数する計数部と、
前記アクセスポイントの数が最大である前記領域に含まれるアクセスポイントを特定する特定部と、
前記位置データを参照して、前記特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出する算出部と、
前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記緯度の中央値及び前記経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定する判定部と、
前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの緯度の平均値と、前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される推定位置を示す測位データを作成する作成部と
を備えることを特徴とする提供サーバ。
【請求項10】
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバによる提供方法であって、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信し、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出し、
抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、
前記アクセスポイントの数が最大である前記領域に含まれるアクセスポイントを特定し、
前記位置データを参照して、前記特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出し、
前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記緯度の中央値及び前記経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定し、
前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの緯度の平均値と、前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される推定位置を示す測位データを作成する
ことを含むことを特徴とする提供方法。
【請求項11】
アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられた前記アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバの制御プログラムであって、
前記携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、前記携帯端末から受信し、
前記測位データ要求に含まれる前記複数の識別データのそれぞれに関連付けられた前記複数の前記位置データを、前記記憶部から抽出し、
抽出された前記複数のアクセスポイントの前記位置データと前記領域データとに基づいて、前記複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれる前記アクセスポイントの数を計数し、
前記アクセスポイントの数が最大である前記領域に含まれるアクセスポイントを特定し、
前記位置データを参照して、前記特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出し、
前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記緯度の中央値及び前記経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、前記特定された複数のアクセスポイントのうち、前記第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定し、
前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの緯度の平均値と、前記第1アクセスポイント及び前記第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される推定位置を示す測位データを作成する
ことを前記提供サーバに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、提供サーバ、提供方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機等の携帯端末は、当該携帯端末の現在位置を示す現在位置情報を取得する機能を有している。このような携帯端末は、現在位置情報に基づいて当該携帯端末の現在位置を示すマークを重畳した地図画像を表示することによって、携帯端末のユーザに現在位置を提示する。
【0003】
例えば、特許文献1には、WiFi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントから取得したアクセスポイントの識別情報と、サーバ装置に記憶されたアクセスポイントの位置情報とに基づく現在位置を提示することが可能な携帯端末が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−66638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクセスポイントの位置情報に基づく現在位置を提示する携帯端末では、現実の携帯端末の位置と大きく異なるアクセスポイントに関する情報が取得されることがあった。このような場合、携帯端末は、精度の高い現在位置をユーザに提示することができないという問題が生じていた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決すべくなされたものであり、アクセスポイントの位置情報に基づいて精度の高い位置情報をユーザに提示することが可能となる提供サーバ、提供方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る提供サーバは、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバであって、アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられたアクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部と、携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、携帯端末から受信する受信部と、測位データ要求に含まれる複数の識別データのそれぞれに関連付けられた複数の位置データを、記憶部から抽出する抽出部と、抽出された複数のアクセスポイントの位置データと領域データとに基づいて、複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれるアクセスポイントの数を計数する計数部と、アクセスポイントの数が最大である領域に含まれるアクセスポイントを特定する特定部と、特定された複数のアクセスポイントの位置データに基づいて測位データを作成する作成部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る提供サーバにおいて、位置データを参照して、特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出する算出部を更に備え、作成部は、緯度の中央値及び経度の中央値によって示される位置に基づいて測位データを作成することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る提供サーバにおいて、特定された複数のアクセスポイントのうち、緯度の中央値及び経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、特定された複数のアクセスポイントのうち、第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定する判定部を更に備え、作成部は、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの緯度の平均値と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される位置を示す測位データを作成することが好ましい。
【0010】
本発明に係る提供サーバは、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバであって、アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられたアクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データを記憶する記憶部と、携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、携帯端末から受信する受信部と、位置データを参照して、測位データ要求に含まれる複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出する算出部と、複数のアクセスポイントのうち、緯度の中央値及び経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、複数のアクセスポイントのうち、第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定する判定部と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの緯度の平均値と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される推定位置を示す測位データを作成する作成部とを備える。
【0011】
また、本発明に係る提供サーバにおいて、記憶部は、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データを更に記憶し、提供サーバは、測位データ要求に含まれる複数の識別データのそれぞれに関連付けられた複数の位置データを、記憶部から抽出する抽出部と、抽出された複数のアクセスポイントの位置データと領域データとに基づいて、複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれるアクセスポイントの数を計数する計数部と、アクセスポイントの数が最大である領域に含まれるアクセスポイントを特定する特定部と、を更に備え、算出部は、測位データ要求に含まれる複数のアクセスポイントのうち、特定されたアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る提供サーバにおいて、測位データを携帯端末に送信する送信部を更に備えることが好ましい。
【0013】
本発明に係る提供方法は、アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられたアクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバによる提供方法であって、携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、携帯端末から受信し、測位データ要求に含まれる複数の識別データのそれぞれに関連付けられた複数の位置データを、記憶部から抽出し、抽出された複数のアクセスポイントの位置データと領域データとに基づいて、複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれるアクセスポイントの数を計数し、アクセスポイントの数が最大である領域に含まれるアクセスポイントを特定し、特定された複数のアクセスポイントの位置データに基づいて測位データを作成することを含む。
【0014】
本発明に係る提供方法は、アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられたアクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データを記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバによる提供方法であって、携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、携帯端末から受信し、位置データを参照して、測位データ要求に含まれる複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出し、複数のアクセスポイントのうち、緯度の中央値及び経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、複数のアクセスポイントのうち、第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定し、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの緯度の平均値と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される推定位置を示す測位データを作成することを含む。
【0015】
本発明に係る制御プログラムは、アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられたアクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバの制御プログラムであって、携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、携帯端末から受信し、測位データ要求に含まれる複数の識別データのそれぞれに関連付けられた複数の位置データを、記憶部から抽出し、抽出された複数のアクセスポイントの位置データと領域データとに基づいて、複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれるアクセスポイントの数を計数し、アクセスポイントの数が最大である領域に含まれるアクセスポイントを特定し、特定された複数のアクセスポイントの位置データに基づいて測位データを作成することを提供サーバに実行させる。
【0016】
本発明に係る制御プログラムは、アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられたアクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データを記憶する記憶部を有し、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバの制御プログラムであって、携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、携帯端末から受信し、位置データを参照して、測位データ要求に含まれる複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出し、複数のアクセスポイントのうち、緯度の中央値及び経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、複数のアクセスポイントのうち、第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定し、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの緯度の平均値と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される推定位置を示す測位データを作成することを提供サーバに実行させる。
【0017】
本発明に係る提供サーバは、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する提供サーバであって、アクセスポイントを識別するための識別データに関連付けられたアクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データと、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データと、を記憶する記憶部と、携帯端末によって取得された複数のアクセスポイントを識別するための識別データを含む測位データ要求を、携帯端末から受信する受信部と、測位データ要求に含まれる複数の識別データのそれぞれに関連付けられた複数の位置データを、記憶部から抽出する抽出部と、抽出された複数のアクセスポイントの位置データと領域データとに基づいて、複数のアクセスポイントのうち、各領域に含まれるアクセスポイントの数を計数する計数部と、アクセスポイントの数が最大である領域に含まれるアクセスポイントを特定する特定部と、位置データを参照して、特定された複数のアクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値を算出する算出部と、特定された複数のアクセスポイントのうち、緯度の中央値及び経度の中央値によって示される位置に最も近い第1アクセスポイントを判定し、且つ、特定された複数のアクセスポイントのうち、第1アクセスポイントから所定範囲内の第2アクセスポイントを判定する判定部と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの緯度の平均値と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される推定位置を示す測位データを作成する作成部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る提供サーバ、提供方法、及び制御プログラムは、アクセスポイントの位置情報に基づいて精度の高い位置情報をユーザに提示することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】測位システムの概略を説明するための模式図である。
図2】測位システムの概略を説明するための模式図である。
図3】測位システムの概略を説明するための模式図である。
図4】測位システムの概略構成の一例を示す図である。
図5】携帯端末の概略構成の一例を示す図である。
図6】提供サーバの概略構成の一例を示す図である。
図7】(a)は、サーバ記憶部に記憶された各種データを説明するための模式図であり、(b)は、AP位置データのデータ構造の一例を示す図である。
図8】(a)は、測位用データのデータ構造の一例を示す図であり、(b)は、領域データのデータ構造の一例を示す図である。
図9】測位システムに係る動作シーケンスの一例を示す図である。
図10】測位システムに係る他の動作シーケンスの一例を示す図である。
図11】測位データ表示画面の一例を示す図である。
図12】測位データ作成処理の動作フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0021】
(測位システムの概略)
図1〜3は、測位システムの概略を説明するための模式図である。測位システムは、携帯端末及び提供サーバを有する。携帯端末及び提供サーバは、互いに通信可能に接続される。提供サーバは、携帯端末に対して、当該携帯端末の現在位置を示す測位データを提供する。
【0022】
携帯端末は、例えば、「スマートフォン」と呼ばれる多機能携帯電話機である。提供サーバは、例えば、携帯端末のユーザが通信契約した移動通信事業者によって管理されるサーバ装置である。
【0023】
提供サーバは、アクセスポイントを識別するための識別データを記憶する。アクセスポイントは、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11規格等の無線通信方式の無線WiFi等によって、携帯端末との間で無線通信を行う通信機器である。アクセスポイントは、例えば、無線通信によって取得した携帯端末からのデータを、ルータ(図示しない)及びモデム(図示しない)を介してインターネット等のネットワークに送信する。アクセスポイントは、ルータ及びモデムを介してネットワークから取得したデータを、無線通信によって携帯端末に送信する。
【0024】
アクセスポイントを識別するための識別データは、例えば、SSID(Service Set Identifier)である。以降、この識別データをAP識別データと称する場合がある。アクセスポイントは、AP識別データをブロードキャストし、例えば、携帯端末がアクセスポイントの無線通信可能範囲に位置した場合、携帯端末は、アクセスポイントから送信(ブロードキャスト)されたAP識別データを受信する。
【0025】
以下、図1〜3を参照して、測位システムによる測位データ作成処理について説明する。
【0026】
まず、携帯端末は、周囲の複数のアクセスポイントのそれぞれから送信されたAP識別データを受信する。図1に示す例では、携帯端末は、アクセスポイントAP1〜AP9のそれぞれからAP識別データを受信する。
【0027】
携帯端末は、所定の測位要求条件が満たされた場合、受信した複数のAP識別データを含む測位データ要求を提供サーバに送信し、提供サーバは、携帯端末から送信された複数の測位データ要求を受信する。
【0028】
所定の測位要求条件は、例えば、前回の測位データ要求の送信から所定時間(例えば、10秒)が経過したという条件である。この場合、携帯端末は、所定時間ごとに複数の測位データ要求を提供サーバに送信する。所定の測位要求条件は、携帯端末に表示された要求オブジェクト(例えば、要求ボタン)がユーザによって選択操作されたという条件でもよい。所定の測位要求条件は、携帯端末において特定のアプリケーションが起動したという条件でもよい。
【0029】
図1に示すように、提供サーバは、測位用データを記憶している。測位用データは、各アクセスポイントのAP識別データと各アクセスポイントの緯度及び経度を示す位置データとを含む。各アクセスポイントのAP識別データと各アクセスポイントの位置データとは、互いに関連付けられている。位置データには、高度を示すデータが含まれてもよい。
【0030】
提供サーバは、測位用データを参照し、測位データ要求に含まれる複数のAP識別データに対応する複数の位置データを抽出する。図2(a)は、抽出された複数の位置データに基づく複数のアクセスポイントの地表面上の位置を説明するための模式図である。
【0031】
提供サーバは、携帯端末の現在位置の測位が可能な領域(「測位可能領域」と称する場合がある。)を分割した複数の領域を示す領域データを記憶する。測位可能領域は、携帯端末が移動通信事業者の通信サービスを受けることが可能な領域であり、例えば、移動通信事業者によって運用される基地局から送信された電波が届く範囲(セル)である。
【0032】
測位可能領域を分割した複数の領域は、例えば、格子状のメッシュ領域である。メッシュ領域は、緯度線及び経度線に応じて区切られた略正方形の区画領域である。例えば、メッシュ領域は、測位可能領域を略1km単位の略正方形の区画領域に区切ることにより構成される。メッシュ領域の形状は、略500m単位の略正方形、略2km単位の略正方形、又は略2kmを超える単位の略正方形でもよく、メッシュ領域は、所謂「標準地域メッシュ」でもよい。
【0033】
図2(a)には、複数のアクセスポイントAP1〜AP9の位置と、領域データによって示される複数の領域の境界とが示されている。図2(a)に示す例では、複数のアクセスポイントAP1〜AP9は、領域A、領域B、領域C、及び領域Dのうちのいずれかの領域内に位置する。
【0034】
提供サーバは、領域A、領域B、領域C、及び領域Dのそれぞれに含まれるアクセスポイントの数を計数する。領域Aにはアクセスポイントが含まれておらず、領域Aのアクセスポイントの数は「0(ゼロ)」である。領域BにはアクセスポイントAP1が含まれており、領域Bのアクセスポイントの数は「1」である。領域CにはアクセスポイントAP2、AP3、及びAP6−AP9が含まれており、領域Cのアクセスポイントの数は「6」である。領域DにはアクセスポイントAP4及びAP5が含まれており、領域Dのアクセスポイントの数は「2」である。
【0035】
提供サーバは、各領域に含まれるアクセスポイントの数を計数した後に、アクセスポイントの数が最大である領域を現在領域として特定し、現在領域に含まれるアクセスポイントを特定する。図2(a)に示す例では、領域Cのアクセスポイントの数は、領域A、領域B、及び領域Dのそれぞれのアクセスポイントの数よりも多いため、現在領域として「領域C」が特定される。そして、現在領域(領域C)に含まれるアクセスポイントとして、アクセスポイントAP2、AP3、及びAP6−AP9が特定される。
【0036】
アクセスポイントの数が最大である領域が2以上特定された場合、提供サーバは、特定された2以上の領域から、前回特定した現在領域と同一の領域を選択し、選択された領域を現在領域として特定する。特定された2以上の領域に、前回特定した現在領域と同一の領域が含まれない場合、提供サーバは、特定された2以上の領域のうち、前回特定した現在領域に最も近い領域を現在領域として特定する。この場合において、前回特定した現在領域に最も近い領域が2以上特定された場合、提供サーバは、当該2以上の領域からランダムに選択した1の領域を現在領域として特定する。
【0037】
図2(b)には、現実の携帯端末の位置と、アクセスポイントAP2、AP3、及びAP6−AP9の位置と、の関係が示されている。
【0038】
次に、図3(a)に示すように、提供サーバは、アクセスポイントAP2、AP3、及びAP6−AP9の緯度の中央値を算出するとともに、アクセスポイントAP2、AP3、及びAP6−AP9の経度の中央値を算出する。
【0039】
次に、提供サーバは、アクセスポイントAP2、AP3、及びAP6−AP9のうち、算出した緯度の中央値及び経度の中央値によって示される位置に最も近いアクセスポイントを第1アクセスポイントとして判定する。図3(b)に示す例では、アクセスポイントAP9が第1アクセスポイントとして判定される。
【0040】
提供サーバは、アクセスポイントAP2、AP3、及びAP6−AP9のうち、第1アクセスポイントから所定範囲内のアクセスポイントを第2アクセスポイントとして判定する。所定範囲は、第1アクセスポイントを中心とした半径略300mの範囲等である。図3(b)に示す例では、アクセスポイントAP2及びAP6が第2アクセスポイントとして判定される。
【0041】
そして、図3(b)に示すように、提供サーバは、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの緯度の平均値と、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの経度の平均値と、によって示される、携帯端末の推定位置(現在位置)を示す測位データを作成する。
【0042】
提供サーバは、作成した測位データを携帯端末に送信し、携帯端末は、受信した測位データに基づいて、携帯端末の推定位置を表示することによりユーザに対して現在位置を提示する。
【0043】
上述のとおり、測位システムは、測位データ作成処理において、携帯端末の周囲に位置していると想定されるアクセスポイントのうち、携帯端末が位置する可能性が高い地理的領域内にあるアクセスポイントを示す情報に基づいて、携帯端末の位置を推定する。このように、測位システムは、携帯端末が位置する可能性が低い地理的領域内にあるアクセスポイントを除いて測位データ作成処理を実行するため、精度の高い位置情報をユーザに提示することが可能となる。
【0044】
また、測位システムは、携帯端末の周囲に位置していると想定される各アクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値に示される位置に基づいて、携帯端末の近傍に位置すると推定されるアクセスポイント(第1アクセスポイント及び第2アクセスポイント)を判定する。測位システムは、携帯端末の近傍に位置しないと推定されるアクセスポイントを除いて測位データ作成処理を実行するため、精度の高い位置情報をユーザに提示することが可能となる。
【0045】
例えば、図3(c)に示すように、測位システムは、携帯端末の近傍に位置すると推定されるアクセスポイントを判定するために、携帯端末の周囲に位置していると想定される各アクセスポイントの緯度の平均値及び経度の平均値に示される位置を用いた場合、少なくとも一つのアクセスポイントが、現実の携帯端末の位置から大きく離れていると、携帯端末の近傍に位置すると推定されるアクセスポイント(第1アクセスポイント及び第2アクセスポイント)の判定精度が低下する。これに対して、本実施形態の測位システムは、携帯端末の周囲に位置していると想定される各アクセスポイントの緯度の中央値及び経度の中央値に示される位置に基づいて、携帯端末の現在位置の近傍に位置すると推定されるアクセスポイント(第1アクセスポイント及び第2アクセスポイント)を判定するため、現実の携帯端末の位置から大きく離れているアクセスポイントの影響を受けずに測位データ作成処理を実行することができ、精度の高い位置情報をユーザに提示することが可能となる。
【0046】
なお、上述した図1〜3の説明は、本発明の内容への理解を深めるための説明にすぎない。本発明は、具体的には、次に説明する各実施形態において実施され、且つ、本発明の原則を実質的に超えずに、さまざまな変形例によって実施されてもよい。このような変形例はすべて、本発明および本明細書の開示範囲に含まれる。
【0047】
(測位システム1)
図4は、測位システム1の概略構成の一例を示す図である。
【0048】
測位システム1は、複数の携帯端末2及び提供サーバ3を有する。携帯端末2及び提供サーバ3は、通信ネットワークを介して相互に接続される。例えば、携帯端末2及び提供サーバ3は、基地局4、移動体通信網5、ゲートウェイ6、及びインターネット7を介して相互に接続される。
【0049】
携帯端末2は、多機能携帯電話(所謂「スマートフォン」)である。携帯端末2は、携帯電話(所謂「フィーチャーフォン」)、携帯情報端末(Personal Digital Assistant, PDA)、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、タブレットPC(Personal Computer)等でもよい。
【0050】
提供サーバ3で実行されるプログラム(例えば、測位データ作成処理プログラム)と、携帯端末2で実行されるプログラム(例えば、データ送受信プログラム)とは、ハイパーテキスト転送プロトコル(Hypertext Transfer Protocol, HTTP)等の通信プロトコルを用いて通信を行う。
【0051】
(携帯端末2)
図5は、携帯端末2の概略構成の一例を示す図である。
【0052】
携帯端末2は、基地局4、移動体通信網5、ゲートウェイ6、及びインターネット7を介して提供サーバ3に接続し、接続された提供サーバ3と通信を行う。携帯端末2は、提供サーバ3に各種要求を送信すること、各種要求に対応するデータを提供サーバ3から受信すること、提供サーバ3からのデータに基づいて各種処理(表示処理等)を実行すること等を可能とする。そのために、携帯端末2は、第1無線通信部21と、第2無線通信部22と、端末記憶部23と、端末操作部24と、端末表示部25と、GPS部26と、端末処理部27とを備える。
【0053】
第1無線通信部21は、主に2.1GHz帯を感受帯域とするアンテナを含む通信インターフェース回路を有し、携帯端末2を通信ネットワークに接続する。第1無線通信部21は、基地局4により割り当てられるチャネルを介して、基地局4との間でLTE(Long Term Evolution)方式等による無線信号回線を確立し、基地局4との間で通信を行う。
【0054】
第1無線通信部21及び基地局4の間の通信方式は、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式等の他の通信方式でもよい。第1無線通信部21及び基地局4の間の通信方式は、今後使用される第5世代(5G)移動通信システム等でもよい。第1無線通信部21及び基地局4の間の通信方式は、PHS(Personal Handy-phone System)等の他の通信方式でもよい。第1無線通信部21の周波数帯域は、上記した周波数帯域に限定されない。
【0055】
第1無線通信部21は、基地局4から受信したデータを端末処理部27に供給する。第1無線通信部21は、端末処理部27から供給されたデータを基地局4に送信する。
【0056】
第2無線通信部22は、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナを含む通信インターフェース回路を有し、図示しない無線LANのアクセスポイントとの間でIEEE802.11規格の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。第2無線通信部22の周波数帯域は、上記した周波数帯域に限定されない。
【0057】
第2無線通信部22は、アクセスポイントから受信したデータを端末処理部27に供給する。第2無線通信部22は、端末処理部27から供給されたデータをアクセスポイントに送信する。
【0058】
端末記憶部23は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ装置を備える。端末記憶部23は、端末処理部27での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。端末記憶部23に記憶されるドライバプログラムは、第1無線通信部21を制御する携帯電話通信デバイスドライバプログラム、第2無線通信部22を制御する無線LAN通信デバイスドライバプログラム、端末操作部24を制御する入力デバイスドライバプログラム、端末表示部25を制御する出力デバイスドライバプログラム等である。端末記憶部23に記憶されるオペレーティングシステムプログラムは、IEEE802.11規格等の無線通信方式を実行する接続制御プログラム、携帯電話の接続制御プログラム等である。端末記憶部23に記憶されるアプリケーションプログラムは、現在位置を表示するナビゲーションアプリケーションプログラム等である。端末記憶部23に記憶される各種プログラムは、例えば外部のサーバ装置等から送信された公知のセットアッププログラム等を用いて端末記憶部23にインストールされてもよい。端末記憶部23に記憶されるデータは、例えば、携帯端末2を識別するための端末識別データである。端末記憶部23は、所定の処理に係るデータを一時的に記憶してもよい。
【0059】
端末操作部24は、例えば、タッチパネル等のポインティングデバイスである。端末操作部24は、携帯端末2の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、キーパッドでもよい。ユーザは、端末操作部24を用いて、文字、数字及び記号、若しくは、端末表示部25の表示画面上の位置等を入力することができる。端末操作部24は、ユーザにより操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、ユーザの指示として端末処理部27に供給される。
【0060】
端末表示部25は、液晶ディスプレイである。なお、端末表示部25は、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等でもよい。端末表示部25は、端末処理部27から供給された映像データに応じた映像、動画像データに応じた動画像、静止画像データに応じた静止画像等を表示する。
【0061】
GPS部26は、主に1.5GHz帯を感受帯域とするアンテナを含むGPS回路を有し、GPS衛星(図示しない)からGPS信号を受信する。GPS部26は、そのGPS信号をデコードし、時刻情報等を取得する。次に、GPS部26は、その時刻情報等に基づいてGPS衛星から携帯端末2までの擬似距離を計算し、その擬似距離を代入して得られる連立方程式を解くことにより、携帯端末2が存在する位置(緯度、経度、高度等)を検出する。そして、GPS部26は、検出した位置を示す位置データと取得した位置時刻情報とを関連付けて所定のGPS出力時間ごとに出力する。所定のGPS出力時間は、どのような時間でもよく、例えば、1/10秒、1/5秒、1/2秒等である。
【0062】
端末処理部27は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。端末処理部27は、携帯端末2の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。端末処理部27は、携帯端末2の各種処理が端末記憶部23に記憶されているプログラムや端末操作部24の操作等に基づいて適切な手順で実行されるように、第1無線通信部21、第2無線通信部22、及び端末表示部25等の動作を制御する。端末処理部27は、端末記憶部23に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、端末処理部27は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0063】
端末処理部27は、端末受信部271と、端末作成部272と、端末送信部273と、表示処理部274と、を有する。端末処理部27が有するこれらの各部は、端末処理部27が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、端末処理部27が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして携帯端末2に実装されてもよい。
【0064】
(提供サーバ3)
図6は、提供サーバ3の概略構成の一例を示す図である。
【0065】
提供サーバ3は、携帯端末2の周囲に位置すると推定されるアクセスポイントに関する情報に基づいて、携帯端末2の現在位置を推定して携帯端末2に提示する機能を有する。この機能を実現するために、提供サーバ3は、サーバ通信部31と、サーバ記憶部32と、サーバ処理部33とを備える。
【0066】
サーバ通信部31は、提供サーバ3をインターネット7に接続するための通信インターフェース回路を有する。サーバ通信部31は、携帯端末2から受信したデータをサーバ処理部33に供給する。サーバ通信部31は、サーバ処理部33から供給されたデータを携帯端末2に送信する。
【0067】
サーバ記憶部32は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、及び光ディスク装置の内の少なくとも一つを有する。サーバ記憶部32は、サーバ処理部33による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、サーバ記憶部32は、ドライバプログラムとして、サーバ通信部31を制御する通信デバイスドライバプログラム等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いてサーバ記憶部32にインストールされてもよい。
【0068】
図7(a)は、サーバ記憶部32に記憶された各種データを説明するための模式図である。サーバ記憶部32は、データとして、測位用データ321及び領域データ322等を記憶する。サーバ記憶部32は、所定の処理に係るデータを一時的に記憶してもよい。測位用データ321及び領域データ322の詳細は後述する。
【0069】
図6に戻り、サーバ処理部33は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。サーバ処理部33は、提供サーバ3の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。サーバ処理部33は、提供サーバ3の各種処理がサーバ記憶部32に記憶されているプログラム等に応じて適切な手順で実行されるように、サーバ通信部31等の動作を制御する。サーバ処理部33は、サーバ記憶部32に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、サーバ処理部33は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0070】
サーバ処理部33は、サーバ受信部331と、抽出部332と、計数部333と、特定部334と、算出部335と、判定部336と、サーバ作成部337と、サーバ送信部338とを有する。サーバ処理部33が有するこれらの各部は、サーバ処理部33が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、サーバ処理部33が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして提供サーバ3に実装されてもよい。
【0071】
(測位システム1に係る動作シーケンス)
図9は、測位システム1に係る動作シーケンスの一例を示す図である。以下に説明する動作シーケンスでは、予め端末記憶部23及びサーバ記憶部32に記憶されているプログラムに基づいて、主に端末処理部27及びサーバ処理部33により、携帯端末2及び提供サーバ3の各要素が協働して実行される。
【0072】
まず、携帯端末2の端末受信部271は、周囲の各アクセスポイントによって送信(ブロードキャスト)された各AP識別データを、第2無線通信部22を介して受信することで、各AP識別データを取得する(ステップS101)。
【0073】
次に、端末作成部272は、ステップS101において受信された各AP識別データと、携帯端末2の現在位置を示す緯度及び経度を示す位置データとを含むAP位置データを作成する(ステップS102)。例えば、端末作成部272は、端末受信部271によってAP識別データが受信されると、GPS部26によって所定のGPS出力時間ごとに出力された位置データ(携帯端末の現在位置)のうちの最新の位置データを取得する。次に、端末作成部272は、端末記憶部23に記憶された端末識別データを取得する。そして、端末作成部272は、取得した端末識別データと、受信したAP識別データと、取得した位置データとを少なくとも含むAP位置データを作成する。
【0074】
端末作成部272によって作成されたAP位置データは、測位用データの基となるデータである。AP位置データは、後述のステップにおいて、提供サーバ3に送信され、データクレンジングされた後に、測位用データとして提供サーバ3のサーバ記憶部32に記憶される。
【0075】
図7(b)は、AP位置データのデータ構造の一例を示す図である。図7(b)に示すAP位置データには、携帯端末2の端末識別データ「89452158」と、AP識別データ「5pg9Rt56」、「99uyTyTg」及び「76hJbK」と、位置データ「35.662855,139.760974」と、が含まれる。AP位置データに、携帯端末2の端末識別データが含まれなくてもよく、また、AP位置データに、AP位置データの作成時間等の他のデータが含まれてもよい。
【0076】
図9に戻り、端末送信部273は、端末作成部272によって作成されたAP位置データを、第1無線通信部21を介して提供サーバ3に送信する(ステップS103)。ステップS101〜S103の一連の処理は、所定の送信時間(例えば、30分)ごとに実行される。
【0077】
提供サーバ3のサーバ受信部331は、携帯端末2から送信されたAP位置データを、サーバ通信部31を介して受信すると、受信したAP位置データをサーバ記憶部32に記憶する(ステップS104)。
【0078】
次に、サーバ受信部331は、サーバ記憶部32に記憶したAP位置データに対してデータクレンジングを実行する。以下、データクレンジングの一例を説明する。
【0079】
まず、サーバ受信部331は、サーバ記憶部32に記憶したAP位置データを読み出す。次に、サーバ受信部331は、読み出したAP位置データに含まれるAP識別データ及び位置データを互いに関連付けたデータセットを作成する。図7(b)に示すAP位置データの場合、3つのデータセット「5pg9Rt56,(35.662855,139.760974)」、「99uyTyTg,(35.662855,139.760974)」、「76hJbK,(35.662855,139.760974)」が作成される。次に、サーバ受信部331は、サーバ記憶部32に記憶された測位用データ321を読み出し、各データセットのAP識別データと同一のAP識別データが測位用データ321に含まれるか否かを判定する。
【0080】
測位用データ321の一例について説明する。図8(a)は、測位用データ321のデータ構造の一例を示す図である。図8(a)に示す測位用データ321には、アクセスポイントごとに、AP識別データ、緯度及び経度を示す位置データ、並びに、領域識別データが互いに関連付けられている。領域識別データは、測位可能領域を分割した複数の領域のそれぞれを識別するための識別データである。例えば、領域が標準地域メッシュである場合、領域識別データは地域メッシュコードである。測位用データ321において、領域識別データは、当該領域識別データによって示される領域内に含まれるアクセスポイントのAP識別データに関連付けられる。
【0081】
図8(b)は、領域データ322のデータ構造の一例を示す図である。図8(b)に示す領域データ322には、領域ごとに、領域識別データ、及び頂点座標が互いに関連付けられている。頂点座標は、領域の形状(領域の境界線)を規定するための座標である。例えば、領域の形状が閉多角形である場合、頂点座標は、形状を規定する頂点を示す座標である。図8(b)に示す領域データ322では、領域識別データ「53393690」及び「53393691」のそれぞれに対応する領域はメッシュ形状(略正方形)である。
【0082】
データクレンジングの一例の説明に戻り、データセットのAP識別データと同一のAP識別データが測位用データ321に含まれない場合、サーバ受信部331は、このデータセットに含まれるAP識別データ及び位置データを、新たなレコードとして測位用データ321に追加する。次に、サーバ受信部331は、領域データ322から読み出した各頂点座標を参照し、測位用データ321に追加した位置データによって示される位置を含む領域を判定する。次に、サーバ受信部331は、判定された領域の領域識別データを、測位用データ321に追加した新たなレコード(AP識別データ及び位置データ)に関連付ける。
【0083】
データセットのAP識別データと同一のAP識別データが測位用データ321に含まれる場合、サーバ受信部331は、データセット及び測位用データ321の両者から、当該AP識別データに関連付けられた位置データを抽出する。サーバ受信部331は、抽出されたデータセットの位置データに示される位置と、抽出された測位用データ321の位置データに示される位置との間の距離(例えば、ユークリッド距離)を算出する。サーバ受信部331は、算出した距離が所定閾値を超えている場合、測位用データ321にデータセットを追加しない。サーバ受信部331は、算出した距離が所定閾値を超えていない場合、測位用データ321に含まれる、上述のAP識別データ(データセットのAP識別データと同一のAP識別データ)と、当該AP識別データに関連付けられた、位置データ、領域識別データを削除する。そして、サーバ受信部331は、データセットに含まれるAP識別データ及び位置データを、新たなレコードとして測位用データ321に追加する。次に、サーバ受信部331は、領域データ322から読み出した各頂点座標を参照し、測位用データ321に追加した位置データによって示される位置を含む領域を判定する。次に、サーバ受信部331は、判定された領域の領域識別データを、測位用データ321に追加した新たなレコード(AP識別データ及び位置データ)に関連付ける。
【0084】
以上により、AP位置データに対するデータクレンジングが終了し、サーバ受信部331は、新たなレコードが追加された測位用データ321をサーバ記憶部32に記憶する(ステップS106)。
【0085】
上述のとおり、測位システム1は、携帯端末2によって取得されたアクセスポイントのAP識別データに、携帯端末2の位置データを関連付けることにより、アクセスポイントの位置を示す位置データとして携帯端末2の位置データを記憶することが可能となる。したがって、測位システム1は、携帯端末2がアクセスポイントのAP識別データを捕捉するたびに、アクセスポイントの位置を示す位置データを蓄積することが可能となる。また、データクレンジングにより、テザリング機能を有する他の携帯端末をアクセスポイントとして認識したとしても、極端に距離の離れたアクセスポイントが除かれるため、後述の測位精度の低下を未然に防止することが可能となる。
【0086】
(測位システム1に係る他の動作シーケンス)
図10は、測位システム1に係る他の動作シーケンスの一例を示す図である。以下に説明する他の動作シーケンスでは、予め端末記憶部23及びサーバ記憶部32に記憶されているプログラムに基づいて、主に端末処理部27及びサーバ処理部33により、携帯端末2及び提供サーバ3の各要素が協働して実行される。他の動作シーケンスにおいて用いられる携帯端末2は、GPS部26を備えなくてもよい。
【0087】
まず、携帯端末2の端末受信部271は、周囲の各アクセスポイントによって送信(ブロードキャスト)された各AP識別データを、第2無線通信部22を介して受信することで、各AP識別データを取得する(ステップS201)。ステップS201によるAP識別データの取得処理は、所定の要求時間ごとに実行される。AP識別データの取得処理は、測位データを使用するアプリケーションプログラムが実行されている場合において、当該アプリケーションプログラムによって自動的に又はユーザの所定操作に応じて実行されてもよい。以降、測位データを使用するアプリケーションプログラムとして、電子地図画像上に携帯端末2の現在位置(推定位置)を示すマーク画像を表示するナビゲーションプログラムが実行されている場合を例にして説明する。
【0088】
端末送信部273は、端末受信部271によって取得されたAP識別データを含む測位データ要求を、第1無線通信部21を介して提供サーバ3に送信する(ステップS202)。
【0089】
提供サーバ3のサーバ受信部331によって、携帯端末2から送信された測位データ要求がサーバ通信部31を介して受信されると、抽出部332と、計数部333と、特定部334と、算出部335と、判定部336と、サーバ作成部337とが、測位データ作成処理を実行する(ステップS203)。測位データ作成処理の詳細は後述する。
【0090】
提供サーバ3のサーバ送信部338は、測位データ作成処理によって作成された測位データを、サーバ通信部31を介して携帯端末2に送信する(ステップS204)。
【0091】
携帯端末2の端末受信部271によって、提供サーバ3から送信された測位データが、第1無線通信部21を介して受信されると、表示処理部274は、測位データによって示される携帯端末2の推定位置(現在位置)を含む測位データ表示画面800を端末表示部25に表示する(ステップS205)。
【0092】
(測位データ表示画面)
図11は、携帯端末2の端末表示部25に表示される測位データ表示画面800の一例を示す図である。測位データ表示画面800には、電子地図データに基づく電子地図画像801と、測位データによって示される携帯端末2の推定位置のマーク画像802が表示される。
【0093】
(測位データ作成処理)
図12は、提供サーバ3の抽出部332と、計数部333と、特定部334と、算出部335と、判定部336と、サーバ作成部337とによって実行される測位データ作成処理の動作フローの一例を示す図である。
【0094】
まず、抽出部332は、サーバ受信部331によって取得された測位データ要求からAP識別データを抽出する(ステップS301)。
【0095】
次に、抽出部332は、サーバ記憶部32に記憶された測位用データ321を読み出し、ステップS301において抽出されたAP識別データに関連付けられた位置データ及び領域識別データを測位用データ321から抽出する(ステップS302)。
【0096】
次に、計数部333は、ステップS301において抽出されたAP識別データ及びステップS302において抽出された領域識別データを参照し、領域識別データごとに、各領域識別データに関連付けられたAP識別データの数を計数する(ステップS303)。これにより、各領域に含まれる可能性の高いアクセスポイントの数が計数される。
【0097】
次に、特定部334は、計数された各領域に含まれるアクセスポイントの数を参照し、アクセスポイントの数が最大である現在領域に含まれるAP識別データを特定する(ステップS304)。例えば、特定部334は、計数された数のうちの最大数を特定し、最大数に対応する領域(現在領域)の領域識別データを特定する。次に、特定部334は、ステップS302によって特定されたAP識別データの中から、特定した領域識別データに関連付けられたAP識別情報を特定する。
【0098】
最大数に対応する領域の領域識別データが2以上特定された場合、特定部334は、特定された2以上の領域識別データから、前回特定した現在領域の領域識別データと同一の領域識別データを選択し、選択した領域識別データを現在領域の領域識別データとして特定する。特定された2以上の領域識別データに、前回特定した現在領域の領域識別データと同一の領域識別データが含まれない場合、特定部334は、特定された2以上の領域識別データのうち、前回特定した現在領域に最も近い領域の領域識別データを現在領域の領域識別データとして特定する。この場合において、前回特定した現在領域に最も近い領域が2以上特定された場合、特定部334は、当該2以上の領域からランダムに選択した1の領域の領域識別データを現在領域の領域識別データとして特定する。
【0099】
次に、算出部335は、ステップS304において特定されたAP識別データの数が複数であるか否かを判定する(ステップS305)。
【0100】
ステップS304において特定されたAP識別データの数が1であると判定された場合(ステップS305−No)。算出部335は、ステップS309に処理を進める。
【0101】
ステップS304において特定されたAP識別データの数が2以上であると判定された場合(ステップS305−Yes)。算出部335は、ステップS304において特定された複数のAP識別データに関連付けられた複数の位置データに基づいて、緯度及び経度の中央値を算出する(ステップS306)。例えば、算出部335は、特定された複数のAP識別データに関連付けられた複数の位置データによって示される、複数の緯度及び複数の経度を抽出する。そして、算出部335は、抽出した複数の緯度の中央値(緯度中央値)を算出するとともに、抽出した複数の経度の中央値(経度中央値)を算出する。
【0102】
次に、判定部336は、ステップS304において特定された複数のAP識別データに関連付けられた複数の位置データによって示される複数のアクセスポイントの位置のうち、緯度中央値及び経度中央値によって示される位置に最も近いアクセスポイントの位置を、第1アクセスポイントの位置であると判定する(ステップS307)。
【0103】
次に、判定部336は、ステップS304において特定された複数のAP識別データに関連付けられた複数の位置データによって示される複数のアクセスポイントの位置のうち、第1アクセスポイントの位置から所定範囲内のアクセスポイントの位置を、第2アクセスポイントの位置であると判定する(ステップS308)。
【0104】
そして、サーバ作成部337は、第1アクセスポイントの位置データと、一又は複数の第2アクセスポイントの位置データとに基づいて、携帯端末2の推定位置(現在位置)を示す測位データを作成して(ステップS309)、測位データ作成処理を終了する。例えば、サーバ作成部337は、第1アクセスポイントの位置データによって示される緯度と、一又は複数の第2アクセスポイントのそれぞれの位置データによって示される緯度と、の平均値(緯度平均値)を算出する。サーバ作成部337は、第1アクセスポイントの位置データによって示される経度と、一又は複数の第2アクセスポイントのそれぞれの位置データによって示される経度と、の平均値(経度平均値)を算出する。そして、サーバ作成部337は、緯度平均値及び経度平均値を携帯端末2の推定位置として特定し、携帯端末2の推定位置を示す測位データを作成する。
【0105】
ステップS304において特定されたAP識別データの数が1であると判定された場合、サーバ作成部337は、ステップS309において、1のAP識別データに関連付けられた位置データを携帯端末2の推定位置を示す測位データに設定する。
【0106】
以上説明してきたように、測位システム1は、携帯端末が位置する可能性が低い地理的領域内にあるアクセスポイントを除いて測位データ作成処理を実行し、及び/又は、携帯端末の近傍に位置しないと推定されるアクセスポイントを除いて測位データ作成処理を実行する。これにより、測位システムは、精度の高い位置情報をユーザに提示することが可能となる。
【0107】
(変形例1)
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、図12に示す測位データ作成処理のステップS303及びS304に代えて、特定部334は、基地局4に関する情報に基づいて現在領域を特定してもよい。
【0108】
この場合、サーバ記憶部32は、基地局4を識別するための基地局識別データと、基地局4を含む領域を識別するための領域識別データとを関連付けて記憶する。基地局識別データは、例えばセルID(identification)である。携帯端末2は、第1無線通信部21を介して基地局4との無線通信を確立したときに、無線通信を確立した基地局4を識別するための基地局識別データ、接続開始日時等を端末記憶部23に記憶する。
【0109】
ステップS202において、端末送信部273は、端末受信部271によって取得されたAP識別データと、端末記憶部23に記憶された基地局識別データとを含む測位データ要求を、第1無線通信部21を介して提供サーバ3に送信する。
【0110】
特定部334は、ステップS302の後に、測位データ要求に含まれた基地局識別データを抽出する。次に、特定部334は、サーバ記憶部32を参照して、測位データ要求に含まれた基地局識別データに関連付けられた領域識別データを特定する。そして、特定部334は、ステップS302によって特定されたAP識別データの中から、特定した領域識別データに関連付けられたAP識別情報を特定する。
【0111】
このように、提供サーバ3は、基地局4に関する情報に基づいて現在領域を特定することにより、現実の携帯端末2が複数の領域の境界付近に位置する場合において、現実に位置する領域とは異なる領域に含まれるアクセスポイントによって、携帯端末2の現在位置が推定されることを未然に防止することができる。これにより、測位システムは、精度の高い位置情報をユーザに提示することが可能となる。
【0112】
(変形例2)
また、サーバ記憶部32は、測位可能領域を分割した複数の領域を示す領域データとともに、各領域を更に分割した複数の分割領域を示す分割領域データを記憶してもよい。また、測位用データ321には、AP識別データに関連付けて、領域を識別するための領域識別データと、分割領域を識別するための分割領域識別データとが含まれる。
【0113】
この場合、ステップS301において抽出されたAP識別データの数が所定の判定値を超えている場合、抽出部332は、ステップS302において、ステップS301において抽出されたAP識別データに関連付けられた位置データ及び分割領域識別データを測位用データ321から抽出する。以降のステップにおいて、分割領域識別データが、領域識別データに代えて用いられる。
【0114】
また、ステップS301において抽出されたAP識別データの数が所定の判定値以下である場合、抽出部332は、ステップS302において、ステップS301において抽出されたAP識別データに関連付けられた位置データ及び領域識別データを測位用データ321から抽出する。
【0115】
このように、測位システム1は、測位データ要求に含まれるAP識別データの数が所定の判定値よりも多い場合、測位可能領域を更に分割した地理的領域を用いて測位データ作成処理を実行する。これにより、測位システム1は、より近傍に位置するアクセスポイントのみを用いた、精度の高い位置情報をユーザに提示することが可能となる。なお、サーバ記憶部32は、複数の分割領域を更に分割した再分割領域を示す再分割領域データを記憶してもよく、また、分割領域を複数回分割してそれぞれの分割後の領域を示す分割領域データを記憶してもよい。この場合、分割回数に応じた判定値が設定されてもよい。
【0116】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0117】
1 測位システム
2 携帯端末
21 第1無線通信部
22 第2無線通信部
23 端末記憶部
24 端末操作部
25 端末表示部
26 GPS部
27 端末処理部
271 端末受信部
272 端末作成部
273 端末送信部
274 表示処理部
3 提供サーバ
31 サーバ通信部
32 サーバ記憶部
33 サーバ処理部
331 サーバ受信部
332 抽出部
333 計数部
334 特定部
335 算出部
336 判定部
337 サーバ作成部
338 サーバ送信部
4 基地局
5 移動体通信網
6 ゲートウェイ
7 インターネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12