(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力維持手段は、装置を停止させる際、一部の吸着塔の内部圧力が第2所定値に到達するまで装置の運転を継続した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する請求項1記載のガス精製装置。
前記圧力維持手段は、装置を停止させる際、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断した状態で、その遮断直前に吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔と、脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔とを連通させる請求項1又は2記載のガス精製装置。
前記吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記吸着工程であった各吸着塔であり、前記脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記脱着工程であった各吸着塔である請求項3記載のガス精製装置。
前記圧力維持手段は、装置を停止させる際、吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔を前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと遮断、又は前記原料ガス供給流路から前記吸着塔に原料ガスを供給すると共に、脱着工程であった少なくとも一部の前記吸着塔に、前記原料ガス供給流路から原料ガスを供給した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する請求項1又は2記載のガス精製装置。
前記ガス精製装置を停止させる際、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断するまで、前記改質器と前記圧縮機の運転を継続する請求項7記載の水素製造装置。
複数の吸着塔のうちの一部の吸着塔に原料ガス供給流路から原料ガスを供給し、吸着塔内部に充填された吸着剤に不純物を吸着させて、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを精製ガス貯留タンクに送出すると共に、前記複数の吸着塔のうちの他の一部の吸着塔内部に充填された吸着剤から不純物を含有するオフガスをオフガス流路に排出するガス精製装置において、
前記ガス精製装置の電源がオフされる停止中には、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔と遮断すると共に、各吸着塔の内部圧力を第1所定値以上に維持し、
前記ガス精製装置の再起動時には、停止直前に脱着工程であった吸着塔を吸着工程で運転を開始するガス精製装置の制御方法。
前記ガス精製装置を停止させる際、一部の吸着塔の内部圧力が第2所定値に到達するまで装置の運転を継続した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する請求項9記載のガス精製装置の制御方法。
前記ガス精製装置を停止させる際、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断した状態で、その遮断直前に吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔と、脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔とを連通させる請求項9又は10記載のガス精製装置の制御方法。
前記吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記吸着工程であった各吸着塔であり、前記脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記脱着工程であった各吸着塔である請求項11記載のガス精製装置の制御方法。
前記ガス精製装置を停止させる際、吸着工程であった少なくとも一部の前記吸着塔を前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと遮断、又は前記原料ガス供給流路から当該吸着塔に原料ガスを供給すると共に、脱着工程であった少なくとも一部の前記吸着塔に、前記原料ガス供給流路から原料ガスを供給した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する請求項9又は10記載のガス精製装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、PSA装置は検査等で運転を停止することがある。この場合、各吸着塔からガスを抜くことが一般に行われている。なお、上記特許文献には装置の停止時の制御は記載されていない。
【0007】
各吸着塔からガスを抜いた状態でPSA装置の運転を停止すると、吸着塔の内部圧力が低下するため、吸着塔の吸着剤に付着した不純物が吸着剤内で拡散する。この結果、PSA装置を再起動させた場合、吸着塔内から不純物を除去して所定純度の精製ガスを送出可能にするまでの時間(再起動時間)が長期化するという不都合があった。
【0008】
すなわち、PSA装置を停止させた後の再起動時間の短縮という点では改善の余地があった。
【0009】
本発明の課題は、再起動時間を短縮したガス精製装置及びその制御方法、並びに水素製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載のガス精製装置は、原料ガス中の不純物を吸着する吸着剤が充填され、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを送出する複数の吸着塔と、前記吸着塔に原料ガスを供給する原料ガス供給流路と、前記精製ガスを貯留する精製ガス貯留タンクと、前記不純物を含有するオフガスが前記吸着塔から排出されるオフガス流路と、装置の電源がオフされる装置停止中は、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断し、各前記吸着塔の内部圧力を第1所定値以上に維持する圧力維持手段と、を備え、
前記装置の再起動時には、停止直前に脱着工程であった吸着塔を吸着工程で運転を開始する。
【0011】
このガス精製装置では、装置停止中に、圧力維持手段によって、原料ガス供給流路、オフガス流路、精製ガス貯留タンクと各吸着塔とが遮断されることによって各吸着塔内に残存するガスが外部に排出されることが阻止され、各吸着塔の内部圧力が第1所定値以上に維持される。
【0012】
この結果、ガス精製装置の停止中に吸着塔の吸着剤に付着した不純物が拡散することが防止又は抑制される。したがって、ガス精製装置の再起動時に吸着塔内から不純物を除去して精製ガスが所定の純度(製品ガスの純度)に到達するまでの時間が短縮される。すなわち、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0013】
請求項2記載のガス精製装置は、請求項1記載のガス精製装置において、前記圧力維持手段は、装置を停止させる際、一部の吸着塔の内部圧力が第2所定値に到達するまで装置の運転を継続した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する。
【0014】
このガス精製装置では、装置を停止させる際、一部の吸着塔の内部圧力が第2所定値以上となるまで装置の運転を継続した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する。
【0015】
すなわち、ガス精製装置では一部の吸着塔の内部圧力を第2所定値以上にした状態で外部と遮断しているため、装置停止中に当該吸着塔の内部圧力が高く維持される。これにより、装置停止中に、当該吸着塔の内部に充填された吸着剤の内部で不純物の拡散が一層抑制される。したがって、ガス精製装置の再起動時に当該吸着塔の吸着工程で開始すれば、他の吸着塔の
吸着行程で開始する場合と比較して相対的に純度の高い精製ガスが精製ガス貯留タンクに供給されることになる。この結果、ガス精製貯留タンクに貯留される精製ガスが所定の純度に到達するまでの時間、すなわち、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0016】
請求項3記載のガス精製装置は、請求項1又は2記載のガス精製装置において、前記圧力維持手段は、装置を停止させる際、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断した状態で、その遮断直前に吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔と、脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔とを連通させる。
【0017】
このガス精製装置では、装置を停止させる際、圧力維持手段が前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各吸着塔とを遮断させた状態で、その遮断直前に吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔と、脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔とを連通させる。これにより、当該吸着塔の内部圧力が平均化(均圧化)され、装置の停止中に一部の吸着塔の内部圧力が他の吸着塔の内部圧力と比較して相対的に低く、吸着剤に付着した不純物の拡散が他の吸着塔と比較して進行することが防止又は抑制される。したがって、ガス精製装置の再起動時に全吸着塔内から不純物を除去して精製ガスが所定の純度に到達するまでの時間が短縮される。すなわち、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0018】
請求項4記載のガス精製装置は、請求項3記載のガス精製装置において、前記吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記吸着工程であった各吸着塔であり、前記脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記脱着工程であった各吸着塔である。
【0019】
このガス精製装置では、装置を停止させる際、圧力維持手段が前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各吸着塔とを遮断させた状態で、装置の停止直前に吸着工程であった各吸着塔と、脱着工程であった各吸着塔とを連通させる。
【0020】
すなわち、吸着工程であった全吸着塔と脱着工程であった全吸着塔の圧力が平均化されているため、全吸着塔の圧力が一層平均化される。この結果、複数の吸着塔間において不純物の分散度合いの差が抑制され、ガス精製装置の再起動時間が一層短縮される。
【0021】
請求項5記載のガス精製装置は、請求項1又は2記載のガス精製装置において、前記圧力維持手段は、装置を停止させる際、吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔を前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと遮断、又は前記原料ガス供給流路から前記吸着塔に原料ガスを供給すると共に、脱着工程であった少なくとも一部の前記吸着塔に、前記原料ガス供給流路から原料ガスを供給した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する。
【0022】
このガス精製装置では、装置を停止させる際、脱着工程であった吸着塔の内部圧力は、吸着工程であった吸着塔の内部圧力と比較して相対的に圧力の低い状態とされている。
【0023】
圧力維持手段は、装置を停止させる際、脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔に原料ガス供給流路から原料ガスを供給する。これにより、当該吸着塔の内部圧力が、装置の停止直前に圧力が上昇され、装置停止中の当該吸着塔内における不純物の拡散が一層抑制される。
【0024】
一方、吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔が外部(原料ガス供給流路、オフガス流路、精製ガス貯留タンク)と遮断される、又は原料ガス供給流路から原料ガスが供給される。これにより、装置の停止直前に吸着塔の内部圧力が低下することが抑制される。この結果、装置停止中の当該吸着塔内における不純物の拡散が一層抑制される。
【0025】
したがって、ガス精製装置の再起動時に全吸着塔内から不純物を除去する時間が短縮され、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0026】
請求項6記載のガス精製装置は、請求項5記載のガス精製装置において、前記脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記脱着工程であった各吸着塔である。
【0027】
このガス精製装置では、装置を停止させる際、圧力維持手段が装置の停止直前に脱着工程であった各吸着塔に原料ガス供給流路から原料ガスが供給される。
【0028】
すなわち、装置の停止直前に脱着工程であった全吸着塔に原料ガスが供給されることによって昇圧されているため、全吸着塔の圧力が一層平均化される。この結果、複数の吸着塔間において不純物の分散度合いの差が抑制され、ガス精製装置の再起動時間が一層短縮される。
【0029】
請求項7記載の水素製造装置は、炭化水素を水蒸気改質した改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された改質ガスを前記原料ガスとし、前記改質ガスから不純物を分離して前記精製ガスとしての水素ガスを得る請求項1〜6記載のいずれか1項記載のガス精製装置と、を備える。
【0030】
この水素製造装置では、原料ガスとして炭化水素を水蒸気改質した改質ガスが圧縮機で圧縮された後、ガス精製装置に供給される。ガス精製装置では、改質ガスが吸着塔に供給され、吸着工程の吸着塔から精製された水素ガスが精製ガス貯留タンクに貯留される。
【0031】
ところで、ガス精製装置では、装置停止時に圧力維持手段が各吸着塔と原料ガス供給流路、オフガス流路、精製ガス貯留タンクのいずれとも遮断し、各吸着塔の内部圧力を第1所定値以上に維持する。これにより、ガス精製装置の停止時に吸着塔内において不純物の拡散が抑制され、再起動時に吸着塔内から不純物を除去する時間が短縮される。すなわち、ガス精製装置の再起動時間を短縮することができる。
【0032】
この結果、水素製造装置の生産性が向上する。
【0033】
請求項8記載の水素製造装置は、請求項7記載の水素製造装置において、前記ガス精製装置を停止させる際、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断するまで、前記改質器と前記圧縮機の運転を継続する。
【0034】
この水素製造装置では、ガス精製装置を停止させる際、吸着工程中の吸着塔の内部圧力が所定値以上となるまで装置の運転を継続してから停止させる場合がある。
【0035】
そこで、ガス精製装置を停止させる際、少なくとも各吸着塔と外部が(原料ガス供給流路、オフガス流路、精製ガス貯留タンクのいずれとも)遮断されるまで改質器と圧縮機の運転を継続する。これによって、ガス精製装置を停止させる際に改質ガスが必要とされる場合に、吸着塔に改質ガスが確実に供給され、水素ガスに精製することができる。
【0036】
請求項9記載のガス精製装置の制御方法は、複数の吸着塔のうちの一部の吸着塔に原料ガス供給流路から原料ガスを供給し、吸着塔内部に充填された吸着剤に不純物を吸着させて、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを精製ガス貯留タンクに送出すると共に、前記複数の吸着塔のうちの他の一部の吸着塔内部に充填された吸着剤から不純物を含有するオフガスをオフガス流路に排出するガス精製装置において、前記ガス精製装置の電源がオフされる停止中には、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔と遮断すると共に、各吸着塔の内部圧力を第1所定値以上に維持し、
前記ガス精製装置の再起動時には、停止直前に脱着工程であった吸着塔を吸着工程で運転を開始する。
【0037】
このガス精製装置の制御方法では、ガス精製装置の停止中は、原料ガス供給流路、オフガス流路、精製ガス貯留タンクと各吸着塔とが遮断されることによって各吸着塔内に残存するガスが外部に排出されることが阻止され、各吸着塔の内部圧力が第1所定値以上に維持される。
【0038】
この結果、ガス精製装置の停止中に吸着塔の吸着剤に付着した不純物が拡散することが防止又は抑制される。したがって、ガス精製装置の再起動時に吸着塔内から不純物を除去して精製ガスが所定の純度(製品ガスの純度)に到達するまでの時間が短縮される。すなわち、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0039】
請求項10記載のガス精製装置の制御方法は、請求項9記載のガス精製装置の制御方法において、前記ガス精製装置を停止させる際、一部の吸着塔の内部圧力が第2所定値に到達するまで装置の運転を継続した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する。
【0040】
このガス精製装置の制御方法では、装置を停止させる際、一部の吸着塔の内部圧力が第2所定値以上となるまで装置の運転を継続した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する。
【0041】
すなわち、ガス精製装置では停止させる際、一部の吸着塔の内部圧力を第2所定値以上にした状態で外部と遮断しているため、装置停止中に当該吸着塔の内部圧力が高く維持される。これにより、装置停止中に、当該吸着塔の内部に充填された吸着剤の内部で不純物の拡散が一層抑制される。したがって、ガス精製装置の再起動時に当該吸着塔の吸着工程で開始すれば、他の吸着塔の吸着行程で開始する場合と比較して相対的に純度の高い精製ガスが精製ガス貯留タンクに供給されることになる。この結果、ガス精製貯留タンクに貯留される精製ガスが所定の純度に到達するまでの時間、すなわち、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0042】
請求項11記載のガス精製装置の制御方法は、請求項9又は10記載のガス精製装置の制御方法において、前記ガス精製装置を停止させる際、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断した状態で、その遮断直前に吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔と、脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔とを連通させる。
【0043】
このガス精製装置の制御方法では、装置を停止させる際、圧力維持手段が原料ガス供給流路、オフガス流路、精製ガス貯留タンクと各吸着塔とを遮断させた状態で、その遮断直前に吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔と、脱着工程であった少なくとも一部の各吸着塔とを連通させる。
【0044】
これにより、当該吸着塔の内部圧力が平均化(均圧化)され、装置の停止中に一部の吸着塔の内部圧力が他の吸着塔の内部圧力と比較して相対的に低く、吸着剤に付着した不純物の拡散が他の吸着塔と比較して進行することが防止又は抑制される。
【0045】
したがって、ガス精製装置の再起動時に全吸着塔内から不純物を除去して精製ガスが所定の純度に到達するまでの時間が短縮される。すなわち、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0046】
請求項12記載のガス精製装置の制御方法は、請求項11項記載のガス精製装置の制御方法において、前記吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記吸着工程であった各吸着塔であり、前記脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記脱着工程であった各吸着塔である。
【0047】
このガス精製装置の制御方法では、装置を停止させる際、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各吸着塔とを遮断させた状態で、装置の停止直前に吸着工程であった各吸着塔と、脱着工程であった各吸着塔とを連通させる。
【0048】
すなわち、吸着工程であった全吸着塔と脱着工程であった全吸着塔の圧力が平均化されているため、全吸着塔の圧力が一層平均化される。この結果、複数の吸着塔間において不純物の分散度合いの差が抑制され、ガス精製装置の再起動時間が一層短縮される。
【0049】
請求項13記載のガス精製装置の制御方法は、請求項9又は10項記載のガス精製装置の制御方法において、前記ガス精製装置を停止させる際、吸着工程であった少なくとも一部の前記吸着塔を前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと遮断、又は前記原料ガス供給流路から当該吸着塔に原料ガスを供給すると共に、脱着工程であった少なくとも一部の前記吸着塔に、前記原料ガス供給流路から原料ガスを供給した後、前記原料ガス供給流路、前記オフガス流路、前記精製ガス貯留タンクと各前記吸着塔とを遮断する。
【0050】
このガス精製装置の制御方法では、装置を停止させる際、脱着工程であった吸着塔の内部圧力は、吸着工程であった吸着塔の内部圧力と比較して相対的に低い状態とされている。
【0051】
そこで、装置を停止させる際、脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔に原料ガス供給流路から原料ガスを供給する。これにより、当該吸着塔の内部圧力が、装置の停止直前に上昇し、装置停止中の当該吸着塔内における不純物の拡散が一層抑制される。
【0052】
一方、吸着工程であった少なくとも一部の吸着塔が外部(原料ガス供給流路、オフガス流路、精製ガス貯留タンク)と遮断される、又は原料ガス供給流路から原料ガスが供給される。これにより、装置の停止直前に吸着塔の内部圧力が低下することが防止又は抑制される。この結果、装置停止中の当該吸着塔内における不純物の拡散が一層抑制される。
【0053】
したがって、ガス精製装置の再起動時に全吸着塔内から不純物を除去する時間が短縮され、ガス精製装置の再起動時間が短縮される。
【0054】
請求項14記載のガス精製装置の制御方法は、請求項13記載のガス精製装置の制御方法において、前記脱着工程であった少なくとも一部の吸着塔は、前記脱着工程であった各吸着塔である。
【0055】
このガス精製装置の制御方法では、装置を停止させる際、装置の停止直前に脱着工程であった各吸着塔に原料ガス供給流路から原料ガスが供給される。
【0056】
すなわち、装置の停止直前に脱着工程であった全吸着塔に原料ガスが供給されることにより当該吸着塔が昇圧されているため、全吸着塔の圧力が一層平均化される。この結果、複数の吸着塔間において不純物の分散度合いの差が抑制され、ガス精製装置の再起動時間が一層短縮される。
【発明の効果】
【0057】
請求項1〜6記載の発明に係るガス精製装置、請求項7、8記載の発明に係る水素製造装置、請求項9〜14記載の発明に係るガス精製装置の制御方法は、上記構成としたので、ガス精製装置の再起動時に精製ガスが所定純度に到達するまでの時間を短縮できる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るPSA装置、及びそのPSA装置が適用された水素製造装置を
図1〜
図15を参照して説明する。
【0060】
〈水素製造装置〉
水素製造装置10は、
図1に示すように、炭化水素(都市ガス)から水蒸気改質した改質ガスを生成する改質器20と、改質ガスを圧縮する圧縮機30と、圧縮された改質ガスから不純物を除去して水素ガスを精製するPSA装置40と、を備えている。なお、PSA装置40が「ガス精製装置」に相当する。
【0061】
また、水素製造装置10は、圧縮機30の上流側、下流側でそれぞれ改質ガスから水分を分離・除去する昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60と、改質器20の後述する燃焼排ガスから水分を分離・除去する燃焼排ガス水分離部70と、を備えている。
【0062】
なお、この水素製造装置10は、炭化水素原料から水素を製造するものであり、本実施形態では、炭化水素原料の一例としてメタンを主成分とする都市ガスが用いられる場合について説明する。
【0063】
(改質器)
改質器20は、原料として供給される都市ガスと改質用の水とを混合しつつ加熱し、混合ガスを発生させる予熱流路と、水蒸気改質反応によって、混合ガスから水素を主成分とする改質ガスG1を生成する改質触媒層とを備えている。改質ガスG1には、水素、一酸化炭素、水蒸気、メタンが含まれている。
【0064】
また、改質器20は、改質ガスG1に含まれる一酸化炭素と水蒸気とが反応して、水素と二酸化炭素とに変換された改質ガスG2を生成する(水性シフト反応が行われる)CO変成触媒層を備えている。改質ガスG2は、改質ガスG1に比べて一酸化炭素が低減される構成である。この改質ガスG2は、改質ガス排出管24を通じて排出される構成である。
【0065】
さらに、改質器20には、バーナーが配置された燃焼室22が設けられており、バーナーに都市ガス又はオフガスが燃料として供給され、燃焼室22で空気と混合されて燃焼され、燃焼排ガスがガス排出管26へ案内される構成である。なお、この燃焼熱によって、水蒸気改質反応が促進される構成である。
【0066】
改質器20において生成された改質ガスは、
図1に示すように、昇圧前水分離部50、圧縮機30、昇圧後水分離部60、及びPSA装置40をこの順番で流れる。つまり、ガスの流れ方向において、上流側から下流側に、改質器20、昇圧前水分離部50、圧縮機30、昇圧後水分離部60、及びPSA装置40がこの順番で配置されている。
【0067】
(昇圧前水分離部)
昇圧前水分離部50には、改質器20から改質ガスG2を流入させる改質ガス排出管24の下流端が接続されている。昇圧前水分離部50の底部には水回収管52が接続され、昇圧前水分離部50の上部には連絡流路管54が接続されている。
【0068】
改質ガス排出管24上には、チラー56で冷却された水と改質ガスG2とを熱交換する熱交換器HE1が設けられている。
【0069】
すなわち、改質ガスG2は、昇圧前水分離部50の上流の改質ガス排出管24に配置された熱交換器HE1において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧前水分離部50の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管52へ送出される構成である。改質ガスG2から水が凝縮された後の改質ガスG3は、連絡流路管54へ送出される構成である。
【0070】
なお、連絡流路管54上において、昇圧前水分離部50と圧縮機30との間には、バッファタンク58が配設されている。
【0071】
(圧縮機)
圧縮機30には、昇圧前水分離部50からの改質ガスG3が流れる連絡流路管54と、昇圧後水分離部60へ供給される改質ガスG3が圧縮された改質ガスG4が流れる連絡流路管32とが接続されている。圧縮機30は、昇圧前水分離部50から供給された改質ガスG3を圧縮し、圧縮された改質ガスG4を昇圧後水分離部60へ供給可能とされている。
【0072】
(昇圧後水分離部)
昇圧後水分離部60には、圧縮機30から改質ガスG4を流入させる連絡流路管32の下流端が接続されている。昇圧後水分離部60の底部には水回収管62が接続され、昇圧後水分離部60の上部には連絡流路管64が接続されている。
【0073】
連絡流路管32上には、チラー66で冷却された水と改質ガスG4とを熱交換する熱交換器HE2が設けられている。
【0074】
すなわち、改質ガスG4は、昇圧後水分離部60の上流の連絡流路管32に配置された熱交換器HE2において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧後水分離部60の下部に水(液相)が貯留可能されている。当該水(液相)は、水回収管62へ送出される構成である。改質ガスG4から水が凝縮された後の改質ガスG5は、連絡流路管64へ送出される構成である。
【0075】
なお、連絡流路管64上において、昇圧後水分離部60とPSA装置40との間には、バッファタンク68が配設されている。
【0076】
(PSA装置(概略))
PSA装置40には、昇圧後水分離部60からの改質ガスG5が流れる連絡流路管64の下流端と、精製された水素が送出される水素供給管42の上流端と、PSA装置40で分離されたオフガスが送出されるオフガス供給管44の上流端とが接続されている。さらに、PSA装置40には、内部の水素(ガス)圧力が過剰となった場合に、水素製造装置10の外部に水素を排出するベント管45の上流端が接続されている。
【0077】
PSA装置40は、水素精製器として用いられるものである。このPSA装置40は、一対の吸着塔を備え、一方の吸着塔で吸着剤に不純物を吸着させる吸着工程を行い、他方の吸着塔で吸着剤に吸着した不純物を脱着させる脱着工程を行い、次に一方の吸着塔で脱着工程、他方の吸着塔で吸着工程を行う。これを周期的に繰り返すことで、改質ガスG5を水素と一酸化炭素を含む不純物(オフガスOG)とに連続的に分離して、精製された水素が水素供給管42に送出される構成である。
【0078】
一方、オフガス供給管44は、改質器20の燃焼室22に連通している。また、オフガス供給管44上には、オフガスバッファタンク46が設けられている。したがって、オフガスOGは、オフガスバッファタンク46を介して改質器20の燃焼室22にバーナーの燃料として供給される構成である。
【0079】
なお、PSA装置40の詳細については、後述する。また、PSA装置40が「ガス精製装置」に相当する。
【0080】
(燃焼排ガス水分離部)
燃焼排ガス水分離部70には、改質器20の燃焼室22から燃焼排ガスを導くガス排出管26の下流端が接続されている。燃焼排ガス水分離部70の底部には水回収管72が接続され、燃焼排ガス水分離部70の上部にはガス排出管74が接続されている。
【0081】
ガス排出管26上には、チラー76で冷却された水と燃焼排ガスとを熱交換する熱交換器HE3が設けられている。
【0082】
すなわち、燃焼室22から排出される燃焼排ガスは、燃焼排ガス水分離部70の上流のガス排出管26に配置された熱交換器HE3において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、燃焼排ガス水分離部70の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管72へ送出される構成である。水が凝縮された後の燃焼排ガスは、ガス排出管74から外気中へ排出される構成である。
【0083】
水回収管52、62、72の各々の下流端は、改質用水供給管80に接続されている。改質用水供給管80には、溶存イオン成分を除去するための水処理器(イオン交換樹脂)82が設けられている。また、改質用水供給管80には、外部水供給部84が接続されている。外部水供給部84から改質用水供給管80に、例えば純水または市水が供給される構成である。
【0084】
さらに、改質用水供給管80には、ポンプP1が設けられている。昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70で分離された水、又は外部水供給部84から供給された水は、ポンプP1によって改質器20へ供給される構成である。
【0085】
(PSA装置(詳細))
PSA装置40の内部構造について
図2を参照して詳細に説明する。
【0086】
図2に示すように、PSA装置40は、それぞれ改質ガスG5の不純物を吸着させる吸着剤が配置された第1吸着塔102と、第2吸着塔104と、改質ガスG5を精製して製造された製品水素ガスを貯留する水素ガス貯留タンク106と、を有する。なお、水素ガス貯留タンク106が「精製ガス貯留タンク」に相当する。
【0087】
また、第1吸着塔102、第2吸着塔104に充填される吸着剤には、例えば、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル等が考えられる。
【0088】
PSA装置40において、第1吸着塔102と第2吸着塔104の原料ガス(改質ガスG5)供給側には、一端に連絡流路管64に接続される原料ガス供給流路108と、原料ガス供給流路108の他端から分岐された原料ガス供給分岐流路110A、110Bと、原料ガス供給分岐流路110A、110Bにそれぞれ接続される共通流路112A、112Bと、が配設されている。
【0089】
すなわち、第1吸着塔102には、原料ガス供給流路108、原料ガス供給分岐流路110A、共通流路112Aを介して連絡流路管64から改質ガスG5が供給可能に構成されている。
【0090】
同様に、第2吸着塔104には、原料ガス供給流路108、原料ガス供給分岐流路110B、共通流路112Bを介して連絡流路管64から改質ガスG5が供給可能に構成されている。
【0091】
また、原料ガス供給分岐流路110A、110Bには、それぞれ電磁開閉弁114A、114Bが配設されており、電磁開閉弁114A、114Bの開閉によって第1吸着塔102、第2吸着塔104と原料ガス供給流路108(連絡流路管64)とが連通又は遮断される構成である。
【0092】
PSA装置40において、第1吸着塔102と第2吸着塔104のオフガス排出側には、オフガス供給管44に一端が接続されたオフガス排出流路116と、オフガス排出流路116の他端で分岐されたオフガス排出分岐流路118A、118Bと、オフガス排出分岐流路118A、118Bがそれぞれ接続される共通流路112A、112Bと、が設けられている。なお、オフガス排出流路116が「オフガス流路」に相当する。
【0093】
すなわち、第1吸着塔102から排出されたオフガスは、共通流路112A、オフガス排出分岐流路118A、オフガス排出流路116を介してオフガス供給管44に送出可能に構成されている。
【0094】
同様に、第2吸着塔104から排出されたオフガスは、共通流路112B、オフガス排出分岐流路118B、オフガス排出流路116を介してオフガス供給管44に送出可能に構成されている。
【0095】
なお、オフガス排出分岐流路118A、118Bには、それぞれ電磁開閉弁120A、120Bが配設されており、電磁開閉弁120A、120Bの開閉によって第1吸着塔102、第2吸着塔104とオフガス排出流路116(オフガス供給管44)とが連通又は遮断される構成である。
【0096】
さらに、共通流路112Aと共通流路112Bは、連絡流路122で接続されている。
【0097】
したがって、第1吸着塔102と第2吸着塔104は、共通流路112A、連絡流路122、共通流路112Bを介して連通されている。
【0098】
なお、連絡流路122上には、一対の電磁開閉弁124A、124Bが配設されており、一対の電磁開閉弁124A、124Bの開閉によって第1吸着塔102と第2吸着塔104とが連通又は遮断される構成である。
【0099】
第1吸着塔102、第2吸着塔104の精製ガス(製品水素ガス)の送出側には、水素ガス貯留タンク106に一端が接続された製品水素ガス送出流路126と、製品水素ガス送出流路126の他端が接続される製品水素ガス送出分岐流路128A、128Bと、製品水素ガス送出分岐流路128Aと第1吸着塔102とを連通させる共通流路130Aと、製品水素ガス送出分岐流路128Bと第2吸着塔104とを連通させる共通流路130Bと、が設けられている。
【0100】
なお、製品水素ガス送出分岐流路128A、128B上には、それぞれ電磁開閉弁132A、132Bが配設されており、電磁開閉弁132A、132Bを開閉することにより、第1吸着塔102、第2吸着塔104と水素ガス貯留タンク106とが連通又は遮断される構成である。
【0101】
また、共通流路130A、130B間には、両者を接続する連絡流路134が設けられている。連絡流路134の略中央には、局部的に縮径されたオリフィス136が設けられている。また、連絡流路134においてオリフィス136の両側には、それぞれ電磁開閉弁138A、138Bが配設されている。
【0102】
したがって、電磁開閉弁138A、138Bを開閉することにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104とが共通流路130A、連絡流路134(オリフィス136)、共通流路130Bを介して連通又は遮断される構成である。
【0103】
また、連絡流路134において電磁開閉弁138Aよりも共通流路130A側と電磁開閉弁138Bよりも共通流路130B側とを連通させた連絡流路140が設けられており、連絡流路140上にも一対の電磁開閉弁142A、142Bが配設されている。
【0104】
したがって、電磁開閉弁142A、142Bを開閉することにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104とが連絡流路140を介して(オリフィス136を介さずに)連通又は遮断される構成である。
【0105】
水素ガス貯留タンク106の下流側には、製品水素ガス供給流路144の一端が接続されており、製品水素ガス供給流路144の他端が水素供給管42に接続されている。
【0106】
製品水素ガス供給流路144上には、上流側からプレッシャーレギュレータ148、マスフロコントローラ150、電磁開閉弁152が配設されている。マスフロコントローラ150は省略しても良い。
【0107】
プレッシャーレギュレータ148は、製品水素ガスを所定の圧力に調整して水素ガス利用者側に供給するものである。
【0108】
マスフロコントローラ150は、製品水素ガスの流量を調整するものである。
【0109】
電磁開閉弁152は、水素ガス貯留タンク106と水素供給管42とを連通又は遮断させるものである。すなわち、製品水素ガスを水素ガス利用者側に供給可能又は供給不能(遮断)とするものである。
【0110】
なお、製品水素ガス供給流路144においてプレッシャーレギュレータ148の上流側から分岐して、PSA装置40の外部のベント管45に接続されるベント流路154が設けられている。ベント流路154には、所定圧力以上の場合のみ開放される逆止(リリーフ)弁156が設けられている。
【0111】
したがって、製品水素ガス供給流路144においてプレッシャーレギュレータ148の上流側の圧力が過剰となった場合に逆止弁156が開放され、製品水素ガスがベント流路154からベント管45を介して水素製造装置10の外部に排出される構成である。
【0112】
原料ガス供給流路108、第1吸着塔102、第2吸着塔104、製品水素ガス供給流路144には、それぞれ圧力センサ160、162、164、166が配設されている。
【0113】
原料ガス供給流路108に配設された圧力センサ160によってPSA装置40に供給された原料ガス、すなわち改質ガスG5の圧力が検出される構成である。
【0114】
また、第1吸着塔102、第2吸着塔104にそれぞれ配設された圧力センサ162、164によって第1吸着塔102、第2吸着塔104の内部圧力がそれぞれ検出される構成である。
【0115】
さらに、製品水素ガス供給流路144においてプレッシャーレギュレータ148とマスフロコントローラ150との間に配設された圧力センサ166によってPSA装置40から供給された製品水素ガスの圧力が検出される構成である。
【0116】
(制御部)
PSA装置40は、PSA制御部170を有している。PSA制御部170は、
図3に示すように、電磁開閉弁114A、114B、120A、120B、124A、124B、132A、132B、138A、138B、142A、142B、152(以下、「電磁開閉弁114A〜152」という)及び圧力センサ162、164と図示しない信号線で接続されており、後述する停止制御プログラムに沿って圧力センサ162、164の検出値等に基づいて各電磁開閉弁114A〜152を開閉制御するものである。
【0117】
なお、PSA制御部170及び電磁開閉弁114A〜152が「圧力維持手段」に相当する。
【0118】
PSA制御部170のハードウェア構成について説明する。
【0119】
図4に示すように、PSA制御部170は、CPU(CenTral Processing UniT:プロセッサ)172、ROM(Read Only Memory)174、RAM(Random Access Memory)176、ストレージ178、及びインタフェース180を含んで構成されている。各構成は、バス182を介して相互に通信可能に接続されている。
【0120】
CPU172は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU172は、ROM174又はストレージ178からプログラムを読み出し、RAM176を作業領域としてプログラムを実行する。CPU172は、ROM174又はストレージ178に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0121】
ROM174は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM176は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ178は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid STaTe Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0122】
インタフェース180は、PSA制御部170が他の機器と接続するためのインタフェースである。
【0123】
(作用)
次に、水素製造装置10及びPSA装置40の作用について説明する。先ず、水素製造装置10の作用について説明する。
【0124】
図1に示すように、水素製造装置10の改質器20へ供給された都市ガスは、予熱流路で改質用の水と混合されつつ加熱され、改質触媒層へ供給される。改質触媒層では、燃焼室22の燃焼排ガスからの熱を受け、水蒸気改質反応によって混合ガスから水素を主成分とする改質ガスG1が生成される。この改質ガスG1は、改質ガス流路を通ってCO変成触媒層へ供給される。CO変成触媒層では、改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素と二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が低減された改質ガスG2は、改質ガス排出管24へ送出される。
【0125】
この際、改質器20の燃焼室22では、供給された都市ガス又はオフガスと空気とが混合された気体がバーナーによって燃焼される。燃焼排ガスは、燃焼室22からガス排出管26を介して燃焼排ガス水分離部70へ供給される。
図1に示すように、燃焼排ガスに含まれる水は、熱交換器HE3での熱交換により冷却されて凝縮され、燃焼排ガス水分離部70に貯留され、水回収管72へ送出される。水が分離された燃焼排ガスは、ガス排出管74から外気中へ排出される。
【0126】
一方、
図1に示すように、改質ガスG2は、改質ガス排出管24を経て、昇圧前水分離部50へ供給される。昇圧前水分離部50では、熱交換器HE1での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管52へ送出される。改質ガスG2から水が分離された改質ガスG3は、連絡流路管54からバッファタンク58を介して圧縮機30へ供給され、圧縮機30によって圧縮される。
【0127】
改質ガスG3が圧縮された改質ガスG4は、連絡流路管32から昇圧後水分離部60へ供給される。昇圧後水分離部60では、熱交換器HE2での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管62へ送出される。改質ガスG4から水が分離された改質ガスG5は、連絡流路管64からバッファタンク68を介してPSA装置40へ供給される。
【0128】
なお、昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70からそれぞれ水回収管52、62、72に送出された水は、改質用水供給管80に戻される。ポンプP1の駆動により、改質用水供給管80から改質器20に改質水として供給される。
【0129】
PSA装置40では、圧力スイング方式が採用されており、一対の吸着塔の一方では吸着剤に水素以外の不純物が吸着され、他方の吸着塔では吸着剤に吸着された不純物が脱着されている。PSA装置40では、この吸着工程と脱着工程をそれぞれの吸着塔で一定の周期で繰り返すことにより、改質ガスG3から連続的に水素と不純物が分離されて水素が精製される。
【0130】
続いて、PSA装置40の具体的動作について
図5〜
図15を参照して説明する。
【0131】
図5は、第1吸着塔102、第2吸着塔104の工程と、電磁開閉弁114A〜152の開閉タイミングを記載したタイミングチャートと、その際の第1吸着塔102、104の圧力変化(実線が第1吸着塔102の圧力(圧力センサ162の検出値)、破線が第2吸着塔104の圧力(圧力センサ164の検出値)の変化)を模式的に示したものである。
【0132】
(定格運転)
先ず、PSA装置40の定格運転について
図5〜
図11を参照して説明する。この場合には、PSA制御部170は、定格運転制御プログラムをストレージ178から読み出し、実行することにより、電磁開閉弁114A〜152の開閉制御を行うものである。
【0133】
なお、水素製造装置10の改質器20及び圧縮機30は連続的に運転され、改質器20で製造され、圧縮機30で圧縮された改質ガスG5が連続的にPSA装置40に供給されている。
【0134】
第1吸着塔102で吸着工程が、第2吸着塔104で脱着工程が開始される状態から説明する。なお、各電磁開閉弁の開閉は、PSA制御部170からの制御信号によって制御されている。
【0135】
図5及び
図6に示すように、先ず、時刻T0において、電磁開閉弁114Aが開弁され、連絡流路管64から原料ガス供給流路108を介して第1吸着塔102に改質ガスG5が供給される。この際、第1吸着塔102の下流側に位置する電磁開閉弁132A、138A、142Aは全て閉弁している。この結果、第1吸着塔102内の圧力が上昇する(昇圧過程)。
【0136】
また、時刻T0において、電磁開閉弁120Bが開弁され、第2吸着塔104がオフガス排出流路116に連通される。これにより、第2吸着塔104からオフガス排出流路116を介してオフガス供給管44にオフガスOGが排出される。
【0137】
なお、
図6において、PSA装置40の各流路のうち太線で記載されている部分が、ガスが流れている部分である。また、
図6において、電磁開閉弁114A〜152を黒塗りで示した場合が閉弁状態を表し、電磁開閉弁114A〜152を白抜きで示した場合が開弁状態を表す。以下、他の図でも同様である。
【0138】
次に、
図5及び
図7に示すように、第1吸着塔102内の圧力が十分に上昇し、吸着剤が不純物を十分に吸着して所定の純度の水素ガスが送出可能となった時刻T1で電磁開閉弁132Aを開弁する。これにより、第1吸着塔102と水素ガス貯留タンク106とを連通させ、第1吸着塔102で精製された精製水素ガスを水素ガス貯留タンク106に供給する(水素送出過程)。
【0139】
なお、PSA装置40の定格運転中は、電磁開閉弁152は常時開弁されており、水素ガス貯留タンク106から送出された精製水素ガスは、プレッシャーレギュレータ148で所定圧力とされ、マスフロコントローラ150で所定流量とされた後、水素供給管42を介して水素ガス利用者側に供給される。
【0140】
さらに、
図5及び
図8に示すように、時刻T1から所定時間経過後の時刻T2で、電磁開閉弁138A、138Bを開放する。これにより、第1吸着塔102又は水素ガス貯留タンク106と第2吸着塔104とが、オリフィス136を介して連通する。これにより、第1吸着塔102又は水素ガス貯留タンク106から第2吸着塔104に精製された水素ガスが供給され、第2吸着塔104内の吸着剤に付着した不純物が水素ガスで除去され、オフガスとしてオフガス排出流路116からオフガス供給管44に排出される(パージ過程)。
【0141】
また、
図5及び
図9に示すように、時刻T2から所定時間経過後の時刻T3で、電磁開閉弁120Bが閉弁される。すなわち、第2吸着塔104とオフガス排出流路116との連通が遮断される。これにより、第2吸着塔104では、オリフィス136から水素ガスが供給される一方、オフガスの排出が停止されるため、内部の圧力が上昇する(排気停止過程)。
【0142】
さらに、
図5及び
図10に示すように、時刻T3から所定時間経過後の時刻T4で電磁開閉弁114A、132A、138A、138Bが閉弁される。これにより、第1吸着塔102が原料ガス供給流路108と遮断されると共に、水素ガス貯留タンク106及びオリフィス136と遮断される。
【0143】
これにより、第1吸着塔102に改質ガスが供給されなくなると共に、第1吸着塔102から水素ガス貯留タンク106に精製された水素ガスが送出されることも停止される。
【0144】
また、第1吸着塔102と第2吸着塔104とのオリフィス136介しての連通も遮断される。
【0145】
このタイミングで電磁開閉弁124A、124Bと電磁開閉弁142A、142Bが開弁される。これにより、第1吸着塔102の上流側と第2吸着塔104の上流側、第1吸着塔102の下流側と第2吸着塔104の下流側が連通される。
【0146】
このように、第1吸着塔102と第2吸着塔104がオリフィス136を介さずに上流側と下流側で連通されることにより、圧力が均等化される(均圧工程)。
【0147】
さらに、
図5及び
図11に示すように、時刻T4から所定時間経過後の時刻T5で、電磁開閉弁124A、124Bと電磁開閉弁142A、142Bが閉弁され、第1吸着塔102と第2吸着塔104との連通が遮断される。
【0148】
同時に、電磁開閉弁114Bが開弁され、第2吸着塔104と原料ガス供給流路108とが連通され、連絡流路管64から原料ガス供給流路108を介して第2吸着塔104に改質ガスG5が供給される。
【0149】
また、電磁開閉弁120Aが開弁され、第1吸着塔102とオフガス排出流路116とが連通され、第1吸着塔102からオフガス排出流路116を介してオフガス供給管44にオフガスが排出される。
【0150】
以下、時刻T0から時刻T5までのタイミングと同様に、時刻T5から時刻T10までのタイミングで電磁開閉弁の開閉制御が行われることにより、第1吸着塔102で脱着工程と均圧工程が行われ、第2吸着塔104で吸着工程と均圧工程が行われる。これは、吸着塔を入れ替えただけで動作は同様であるので詳細な説明を省略する。
【0151】
この後は、第1吸着塔102と第2吸着塔104を切換ながら、この制御を繰り返していく。
【0152】
なお、このPSA装置40には、
図5に示すように、定格運転中の第1吸着塔102、第2吸着塔104の最大圧力値よりも少し高い圧力に第1閾値圧力Th1が設定されている。
【0153】
これは、PSA装置40の定格運転期間中に、何らかの異常により第1吸着塔102、第2吸着塔104の圧力が第1閾値圧力Th1よりも高まった場合には、逆止弁156が開弁されることにより、水素ガス貯留タンク106からベント流路154、ベント管45を介して水素製造装置10の外部に水素が排出される構成とされている。
【0154】
また、PSA装置40には、後述する停止処理時に使用するために、定格運転中の第1吸着塔102、第2吸着塔104の最大圧力値よりも少し低い圧力(例えば、最大圧力値の90%程度)に第2閾値圧力Th2が設定されている。この第2閾値圧力Th2が「第2所定値」に相当する。
【0155】
なお、「PSA装置の定格運転」とは、第1吸着塔102と第2吸着塔104の一方が吸着工程を行い、他方が脱着工程を行い、次に一方が脱着工程を行い、他方が吸着工程を行うことを繰り返し行う運転のことをいう。本実施形態のように吸着塔(吸着工程と脱着工程)を切り換える際に、均圧工程を挟むものも含む。また、各工程の切換は、時間制御、圧力制御、時間圧力併用制御のいずれでも良い。
【0156】
(停止信号入力時)(停止制御時)
次に、定格運転中にPSA装置40を停止させる場合について、
図12〜
図15を参照して説明する。なお、本実施形態において「PSA装置40の停止」とは、PSA装置40の電源がOFFされて、電磁開閉弁114A〜152が切換不可とされた状態のことを意味する。また、本実施形態において、「PSA装置40を停止させる際」とは、PSA装置40のPSA制御部170に停止信号が入力されてから、PSA装置40が停止されるまでの期間をさす。
【0157】
検査時等、PSA装置40を停止させる必要が生じた場合には、水素製造装置10の図示しない制御部からPSA装置40のPSA制御部170に停止信号が入力される。
【0158】
PSA制御部170では、停止信号が入力されると、停止制御プログラムを起動させる。
【0159】
PSA制御部170では、停止制御プログラムに基づいて、
図13に示すように、停止信号入力タイミング(
図13、時刻T11参照)で電磁開閉弁152に閉弁信号を出力する(
図12、ステップS102(以下、「
図12、」を省略する))。これにより、電磁開閉弁152が閉弁され、PSA装置40(水素ガス貯留タンク106、製品水素ガス供給流路144)から、水素供給管42を介しての水素ガス利用者側への水素ガスの供給が停止される(
図14参照)。
【0160】
続いて、PSA制御部170では、第1吸着塔102、第2吸着塔104のいずれかが吸着工程中か判定する(ステップS104)。例えば、PSA制御部170では、電磁開閉弁114A、又は電磁開閉弁114Bのいずれか一方が開弁されているか否かに基いて判定する。
【0161】
すなわち、電磁開閉弁114Aが開弁されていれば第1吸着塔102が吸着工程中であり、電磁開閉弁114Bが開弁されていれば、第2吸着塔104が吸着工程中であると判定する。
【0162】
一方、電磁開閉弁114A、114Bのいずれも閉弁されている場合には、均圧工程中であると判定する(ステップS104でNO)。
【0163】
第1吸着塔102、第2吸着塔104のいずれか一方が吸着工程中の場合(ステップS104でYES)には、吸着工程中の吸着塔の内部圧力(圧力センサ162又は圧力センサ164の検出値)が第2閾値圧力Th2以上であるか否かを判定する(ステップS106)。本実施形態では、電磁開閉弁114Aが開弁されていたため、第1吸着塔102の内部圧力が第2閾値圧力Th2以上であるか否かを判定する。
【0164】
第1吸着塔102の内部圧力が第2閾値圧力Th2未満の場合(ステップS106でNO)には、第2閾値圧力Th2となるまで定格運転を継続する(電磁開閉弁152を除く)。
【0165】
この停止制御では、後述するように、第1吸着塔102、第2吸着塔104を外部と遮断して内部圧力を所定圧力P0以上となるように維持するものであるため、後述するように均圧化した場合に第1吸着塔102、第2吸着塔104の内部圧力が所定圧力P0となるように、吸着工程側の吸着塔の内部圧力が所定圧力P0以上の第2閾値圧力Th2以上となるまで吸着工程を継続する。
【0166】
なお、所定圧力P0が「第1所定値」に相当する。
【0167】
ここで、第2閾値圧力Th2とは、例えば、定格運転時の吸圧工程中における吸着塔の内部圧力の最大値の90%である。
【0168】
すなわち、第1吸着塔102の内部圧力が第2閾値圧力Th2未満の場合には、定格運転を継続する。
【0169】
一方、第1吸着塔102の内部圧力が第2閾値圧力Th2以上となった場合(ステップS106でYES)には、定格運転を停止する(
図13、時刻T12参照)。具体的には、電磁開閉弁114A、132Aに閉弁信号を出力することにより閉弁させ、第1吸着塔102と原料ガス供給流路108、水素ガス貯留タンク106とを遮断する。また、電磁開閉弁120Bに閉弁信号を出力して閉弁させることにより、第2吸着塔104とオフガス排出流路116とを遮断する(ステップS108)。
【0170】
すなわち、第1吸着塔102、第2吸着塔104を外部と遮断する。
【0171】
この際、オリフィス136を介して第1吸着塔102と第2吸着塔104を連通させる電磁開閉弁138A、138Bが開弁されている場合には、同様に電磁開閉弁138A、138Bに閉弁信号を出力して閉弁させる。
【0172】
続いて、PSA制御部170は、均圧工程用の電磁開閉弁に開弁信号を出力する(ステップS110)。本実施形態では、電磁開閉弁124A、124B、142A、142Bを開弁させることで、第1吸着塔102と第2吸着塔104とを連通させる。これにより、吸着工程であった第1吸着塔102と脱着工程であった第2吸着塔104との圧力を平均化(均圧)する(
図15参照)。
【0173】
本実施形態では、第1吸着塔102の圧力を均圧工程時に所定圧力P0以上となるように、所定圧力P0よりも高い第2閾値圧力Th2まで到達させた後、第1吸着塔102と第2吸着塔104を外部と遮断して均圧化している。したがって、均圧化された場合に、第1吸着塔102、第2吸着塔104が所定圧力P0以上とすることができる。
【0174】
均圧工程を所定時間行った後、PSA制御部170は、時刻T13で電磁開閉弁124A、124B、142A、142Bに閉弁信号を出力する(ステップS112)。
【0175】
このタイミングで、PSA制御部170は、水素製造装置10の制御部に停止完了信号を出力する(ステップS114)。水素製造装置10の制御部は、停止完了信号の受信により、改質器20、圧縮機30の運転を停止する。すなわち、PSA装置40に対する改質ガスG5の供給を停止する。
【0176】
なお、ステップS104において、第1吸着塔102及び第2吸着塔104とのいずれもが吸着工程中ではないと判定された場合(ステップS104でYES)には、均圧工程中であるとして均圧工程が完了するまで待機する(ステップS116でNO)。
【0177】
均圧工程の処理時間が経過する(ステップS116でYES)と、PSA制御部170は電磁開閉弁124A、124B、142A、142Bに閉弁信号を出力し、均圧工程を終了させる(ステップS112)。
【0178】
なお、この状態は、PSA制御部170にPSA装置40の駆動信号が入力されるまで維持される。換言すれば、PSA装置40が再起動されるまで、第1吸着塔102と第2吸着塔104との締切状態が維持される。
【0179】
さらに、このようにして停止されたPSA装置40が再起動される場合には、PSA制御部170は、電磁開閉弁114Bに開弁信号を出力し、停止直前に脱着工程であった吸着塔、本実施形態では第2吸着塔104が吸着工程(第1吸着塔102が脱着工程)で運転を再開するようにしている。
【0180】
これは、停止直前に脱着工程であった第2吸着塔104は、不純物が除去された状態で停止されていたため、停止直前に吸着工程であった第1吸着塔102よりも不純物が少ない状態であること、及び均圧工程によって第1吸着塔102で精製された水素が含有されているため、この水素を製品水素として利用するためである。
【0181】
なお、停止直前にいずれの吸着塔が脱着工程であったかは、PSA制御部170に記憶されている。
【0182】
(効果)
このように、PSA装置40では、定格運転中に停止信号が入力した際、電磁開閉弁152を直ちに閉弁させることにより、水素ガス利用者側への製品水素ガスの送出を直ちに停止することができる。
【0183】
また、PSA装置40では、運転停止時に第1吸着塔102、第2吸着塔104と外部(原料ガス供給流路108、水素ガス貯留タンク106、オフガス排出流路116)との連通が遮断されるため、停止中に第1吸着塔102、第2吸着塔104の内部圧力が維持される。すなわち、PSA装置40の停止中に第1吸着塔102、第2吸着塔104の内部圧力が低下することによって、第1吸着塔102、第2吸着塔104の吸着剤に付着した不純物が拡散し、PSA装置40の再起動時に所定純度の水素ガスを精製するまでの時間(再起動時間)が長期化することを防止又は抑制することができる。
【0184】
特に、PSA装置40では、定格運転中に停止信号が入力された場合、均圧工程中でなければ、吸着工程中の吸着塔が第2閾値圧力Th2以上となるまで定格運転(吸着工程・脱着工程)を継続させた後、各吸着塔を外部と遮断するものである。
【0185】
すなわち、PSA装置40では、吸着工程中の吸着塔の内部圧力を第2閾値圧力Th2まで上昇させた後、各吸着塔を外部と遮断するため、停止中に吸着塔の内部圧力を一層高めた状態が維持される。これにより、PSA装置40の停止中に吸着塔の吸着剤に付着した不純物が拡散することが抑制される。
【0186】
PSA装置40は、各吸着塔を外部と遮断した後に電磁開閉弁124A、124B、142A、142Bを開弁することで、第1吸着塔102と第2吸着塔104とをそれぞれ上流側、下流側で連通させて均圧化している。これにより、相対的に圧力が低い脱着工程側の吸着塔の内部圧力を上昇させ、当該吸着塔の吸着剤に付着した不純物の拡散が一層抑制される。すなわち、PSA装置40の再起動時に吸着剤に付着した不純物を除去して所定の純度の製品水素ガスを精製するまでの時間(再起動時間)を短縮することができる。
【0187】
特に、均圧工程前に、吸着工程中であった第1吸着塔102の圧力を所定圧力P0以上である第2閾値圧力Th2以上としているため、均圧工程によって第1吸着塔102と脱着工程中であった第2吸着塔104を所定の圧力P0以上に確実にすることができ、当該吸着塔の吸着剤に付着した不純物の拡散が一層抑制される。すなわち、PSA装置40の再起動時間を一層短縮することができる。
【0188】
また、第1吸着塔102で精製された水素ガスを第2吸着塔104に移動させることで、PSA装置40の再起動時に吸着工程で開始される第2吸着塔104から水素ガス貯留タンク106に移動させられた水素を供給できる。すなわち、PSA装置40の停止時に吸着工程であった第1吸着塔102で精製された水素を外部に排出することなく、製品として利用することができる。
【0189】
なお、PSA装置40に停止信号が入力されたのが均圧処理中の場合には、電磁開閉弁152を直ちに閉弁させることにより水素ガス利用者側への製品水素ガスの送出を直ちに停止するだけで、均圧工程終了まで運転する(あるいは、吸着工程を行っても良い)。すなわち、均圧工程中は、各吸着塔は外部と遮断されており内部圧力が維持されているためである。
【0190】
なお、このように停止制御を行う場合には、PSA装置40の吸着塔が吸着工程中の場合には第2閾値圧力Th2に到達するまで定格運転を継続してから各吸着塔を外部と遮断するため、停止制御終了時にPSA装置40から水素製造装置10の制御部に停止完了信号を出力する。これにより、水素製造装置10の改質器20と圧縮機30が運転を停止する。
【0191】
すなわち、PSA装置40に停止信号が入力されてから定格運転している場合には、確実にPSA装置40に改質ガスが供給されると共に、不要となった時点で確実に供給を停止することができる。
【0192】
水素製造装置10でも、PSA装置40を停止させる際、停止信号をPSA装置40のPSA制御部170に停止信号を出力した後、PSA制御部170から停止完了信号が入力するまで改質器20と圧縮機30の運転を継続し、PSA装置40に改質ガスG5を供給可能としている。
【0193】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るPSA装置及び水素製造装置200について、
図16〜
図18を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成要素については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、PSA装置及び水素製造装置200は、停止制御の一部のみを変更したのみなので、当該部分に関する構成及び作用のみを説明し、第1実施形態と同様の作用効果については詳細な説明を省略する。
【0194】
停止制御は、吸着工程中の吸着塔、例えば第1吸着塔102の圧力が第2閾値圧力Th2まで到達し、第1吸着塔102、第2吸着塔104と外部とを連通させる電磁開閉弁114A、132A、120Bを閉弁させるところ(
図16、ステップS108参照、以下、「
図16」を省略する)まで同第1実施形態と同様である。
【0195】
この後、PSA制御部170は、電磁開閉弁114Bに開弁信号を出力し、電磁開閉弁114Bを開弁させる(ステップS202)。これにより、連絡流路管64から原料ガス供給流路108を介して第2吸着塔104に改質ガスG5を供給する。第2吸着塔102は原料ガス供給流路108以外のいずれとも連通していないため、昇圧される。
【0196】
PSA制御部170は、圧力センサ162の検出値に基づいて第2吸着塔104の内部圧力と第2閾値圧力Th2とを比較する(ステップS204)。
【0197】
第2吸着塔104の圧力が第2閾値圧力Th2に到達する(ステップS204でYES)と、電磁開閉弁114Bに閉弁信号が出力され、電磁開閉弁114Bが閉弁される(ステップS206)。
【0198】
これにより、PSA装置40は停止され、水素製造装置10の制御部に停止完了信号が出力される(ステップS114)。
【0199】
なお、PSA装置40に停止信号が入力されたタイミングで、いずれかの吸着塔が吸着工程中でない場合(ステップS104でNO)、本実施形態であれば均圧工程中であれば、均圧工程が終了していずれかの吸着塔が吸着工程になるまで定格運転を継続する。
【0200】
(その他)
本実施形態では、PSA装置40を水素製造装置10に適用したものであり、PSA装置40は改質ガスG5から水素を精製していたが、これに限定するものではない。PSA装置が原料ガスから不純物を除去して精製ガスに精製するものであれば、適用可能である。
【0201】
また、本実施形態ではPSA装置40の定格運転時に、吸着工程中の吸着塔では内部圧力が単調増加していたが、ガス流量や管径によってはパージ過程等で圧力が低下する場合も考えられる。本実施形態の停止制御で吸着工程中の吸着塔の内部圧力が第2閾値圧力Th2以下で低下する場合には、他の吸着塔の内部圧力が第2閾値圧力Th2に到達するまで定格運転を継続する制御とすれば良い。
【0202】
さらに、第2実施形態の停止制御では、吸着工程中の吸着塔の内部圧力を第2閾値圧力Th2まで上昇させた後、脱着工程中の吸着塔の内部圧力を第2閾値圧力Th2まで上昇させる制御としたが、停止信号入力と同時に双方の吸着塔に改質ガスを供給して内部圧力を上昇させる制御でも良い。
【0203】
また、本実施形態のPSA装置40では、定格運転時に排気停止過程を含んでいたが、排気停止過程を省略しても良い。すなわち、パージ過程後、直ちに均圧工程となるように制御しても良い。
【0204】
ところで、第1実施形態の停止制御において、「定格運転の終了」は、第1吸着塔102の内部圧力が第2閾値圧力Th2に到達したタイミング(
図13、時刻T12参照)である。したがって、この後の均圧工程(
図13、時刻T12〜T13参照)は、定格運転に含まれない。
【0205】
また、第2実施形態の停止制御においても、「定格運転の終了」は、第1吸着塔102の内部圧力が第2閾値圧力Th2に到達したタイミング(
図17、時刻T12参照)である。したがって、この後の第2吸着塔104の昇圧過程(
図17、時刻T12〜T14参照)は、定格運転に含まれない。
【0206】
さらに、第1実施形態又は第2実施形態において、PSA装置40を停止させる際、均圧工程を省略しても良い。この場合には、少なくとも吸着行程中であった吸着塔の圧力が第2閾値圧力Th2以上となる。したがって、PSA装置40の停止期間中、この吸着塔の圧力は高い状態が維持され、その吸着塔における不純物の拡散が抑制される。したがって、PSA装置40の再起動時に、吸着行程中であった吸着塔の吸着工程から再開すれば、他の吸着塔の吸着行程で再開される場合と比較して当該吸着塔から相対的に純度の高い水素ガスが水素ガス貯留タンク106に供給されることになり、水素ガス貯留タンク106に貯留される水素ガスの純度がいち早く所定の純度に到達することになる。すなわち、PSA装置40の再起動時間が短縮されることになる。
【0207】
なお、本実施形態で規定された第2閾値圧力Th2や所定圧力P0等は一例であり、この値に限定するものではない。
【0208】
また、PSA装置40が均圧工程中にPSA制御部170で圧力センサ160の圧力をモニタリングすることにより、圧力センサ160で検出された圧力が閾値圧力以上となった場合に連絡流路管64から水素製造装置10の外部に改質ガスをベントする構成としても良い。