(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料ガス中の不純物を吸着する吸着剤が充填されており、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを送出する吸着工程と、前記吸着剤から前記不純物を除去する脱着工程が行われる複数の吸着塔と、
各前記吸着塔内の圧力をそれぞれ検出する複数の圧力検出手段と、
前記吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各前記吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、前記設定時間経過時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを切り換えると共に、前記設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達した場合には、閾値圧力到達時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを直ちに切り換える制御手段と、
を備えるガス精製装置。
原料ガス中の不純物を吸着する吸着剤が充填されており、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを送出する吸着工程と、前記吸着剤から前記不純物を除去する脱着工程が行われる複数の吸着塔と、
各前記吸着塔内の圧力をそれぞれ検出する複数の圧力検出手段と、
前記吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各前記吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、前記設定時間経過時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを、均圧工程を挟んで切り換えると共に、前記設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達した場合には、閾値圧力到達時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを、前記均圧工程を挟んで直ちに切り換える制御手段と、
を備えるガス精製装置。
前記制御手段は、前記起動運転期間中に各前記吸着塔と精製ガス貯留タンクとの連通を遮断した状態を維持させたまま、各前記吸着塔に吸着工程と脱着工程を少なくとも一回行わせる請求項3記載のガス精製装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、PSA装置において各吸着塔の吸着工程や脱着工程等を設定時間で制御している場合には、吸着塔内の圧力の上昇速度が高まった場合には、設定時間内に吸着塔内の圧力が所定の圧力まで上昇しているのに次の工程に移行せず、無駄時間を生ずるおそれがあった。
【0007】
一方、PSA装置において各吸着塔の吸着工程や脱着工程等を圧力で制御している場合には、吸着塔内の昇圧速度が低下すると吸着工程の時間がかかりすぎるという不都合があった。
【0008】
すなわち、従来のPSA装置では効率的な運転という点で、改善の余地があった。
【0009】
本発明は、効率的な運転を可能としたガス精製装置及びその制御方法、並びに水素製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載のガス精製装置は、原料ガス中の不純物を吸着する吸着剤が充填されており、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを送出する吸着工程と、前記吸着剤から前記不純物を除去する脱着工程が行われる複数の吸着塔と、各前記吸着塔内の圧力をそれぞれ検出する複数の圧力検出手段と、前記吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各前記吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、前記設定時間経過時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを切り換えると共に、前記設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達した場合には、閾値圧力到達時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを
直ちに切り換える制御手段と、を備える。
【0011】
このガス精製装置では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達すれば、閾値圧力到達時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を切り換えることによって、無駄時間が生ずることを防止できる。
【0012】
また、圧力上昇速度が高い場合に、吸着塔等の圧力が異常に高くなることや、圧力の上昇によって精製ガスが装置内部からベント(排気)されることを防止できる。
【0013】
一方、このガス精製装置では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、設定時間経過時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を切り換える。これにより、吸着工程中の吸着塔の圧力上昇速度が低い場合等に吸着工程や脱着工程が長時間かかることを抑制できる。
【0014】
この結果、ガス精製装置は、各吸着塔の吸着工程と脱着工程の切り換えを効率的に行うことができる。すなわち、ガス精製装置を効率的に運転することができる。
【0015】
請求項2記載のガス精製装置は、原料ガス中の不純物を吸着する吸着剤が充填されており、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを送出する吸着工程と、前記吸着剤から前記不純物を除去する脱着工程が行われる複数の吸着塔と、各前記吸着塔内の圧力をそれぞれ検出する複数の圧力検出手段と、前記吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各前記吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、前記設定時間経過時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを、均圧工程を挟んで切り換えると共に、前記設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達した場合には、閾値圧力到達時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを、前記均圧工程を挟んで
直ちに切り換える制御手段と、を備える。
【0016】
このガス精製装置では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達すれば、閾値圧力到達時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を均圧工程を挟んで切り換えることによって、無駄時間が生ずることを防止できる。
【0017】
また、圧力上昇速度が高い場合に、吸着塔等の圧力が異常に高くなることや、圧力の上昇によって精製ガスが装置内部からベント(排気)されることを防止できる。
【0018】
一方、このガス精製装置では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、設定時間経過時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を均圧工程を挟んで切り換える。これにより、吸着工程中の吸着塔の圧力上昇速度が低い場合等に吸着工程や脱着工程が長時間かかることを抑制できる。
【0019】
この結果、ガス精製装置は、各吸着塔の吸着工程と脱着工程の均圧工程を挟んだ切り換えを効率的に行うことができる。すなわち、ガス精製装置を効率的に運転することができる。
【0020】
なお、吸着工程と脱着工程の間に均圧工程を挟むことにより、均圧工程前に脱着工程だった吸着塔の昇圧を迅速にすると共に、均圧工程前に吸着工程だった吸着塔の精製ガスを脱着工程だった吸着塔に移動させ、脱着工程だった吸着塔が次の吸着工程で当該精製ガスを次の用途に用いることができる。
【0021】
請求項3記載のガス精製装置は、請求項1又は2記載のガス精製装置において、前記精製ガスを貯留する精製ガス貯留タンクをさらに備え、前記制御手段は、装置の起動運転期間中、各前記吸着塔と前記精製ガス貯留タンクとの連通を遮断すると共に、前記起動運転期間中に吸着工程中の吸着塔から脱着工程中の吸着塔に精製ガスを供給する。
【0022】
このガス精製装置では、装置の運転停止中に吸着塔内部の吸着剤に付着した不純物が拡散する。したがって、ガス精製装置の起動運転時に、吸着塔で精製される精製ガスの純度が所定の品質に到達するまで時間を要する。その間に精製された精製ガスは、所定の純度に到達していないため、精製ガスとして精製ガス貯留タンクに貯留することはできない。
【0023】
そこで、ガス精製装置の起動運転期間中には、吸着塔と精製ガス貯留タンクの連通を遮断することにより、所定純度未満の精製ガスが精製ガス貯留タンクに貯留されることを防止する。
【0024】
また、ガス精製装置の起動運転期間中に、吸着工程にある吸着塔と脱着工程にある吸着塔を連通させることで、脱着工程にある吸着塔に吸着工程にある吸着塔から精製ガスを供給し、脱着工程にある吸着塔で吸着剤からの不純物の離脱を促進することができる。この結果、吸着塔の吸着剤に付着した不純物の除去に要する時間が短縮される。
【0025】
特に、ガス精製装置の起動運転期間中は、各吸着塔と精製ガス貯留タンクを遮断しているため、吸着工程中の吸着塔の圧力上昇速度が高く、吸着工程の設定時間以内に吸着塔の圧力が閾値圧力に到達する。すなわち、吸着工程と脱着工程との切換周期が短縮され、吸着塔の吸着剤に付着した不純物の除去に要する時間が短縮れさる。
【0026】
すなわち、ガス精製装置の起動運転期間、すなわち、吸着塔から送出される精製ガスが所定純度に到達するまでの時間が短縮される。
【0027】
請求項4記載のガス精製装置は、請求項3記載のガス精製装置において、前記制御手段は、前記起動運転期間中に各前記吸着塔と精製ガス貯留タンクとの連通を遮断した状態を維持させたまま、各前記吸着塔に吸着工程と脱着工程を少なくとも一回行わせる。
【0028】
このガス精製装置では、起動運転期間中に、各吸着塔が吸着工程と脱着工程の少なくとも一回行う間、各吸着塔と精製ガス貯留タンクとの連通を遮断している。したがって、装置の起動運転期間中に各吸着塔に他の吸着塔で生成された精製ガスを供給して不純物の離脱を促進することができる。すなわち、各吸着塔の不純物の離脱を促進して、装置の起動運転期間、すなわち、所定純度の精製ガスが精製されるまでの時間を短縮することができる。
請求項5記載のガス精製装置は、請求項1〜4いずれか1項記載のガス精製装置において、前記吸着塔から下流側へ前記精製ガスが送出される精製ガス流路と、前記精製ガス流路から分岐して外部に連通するベント流路と、前記ベント流路上に配設され、所定圧力以上となった場合には開弁するリリーフ弁と、前記精製ガス流路において、前記ベント流路との分岐位置よりも下流側に配設され、前記吸着塔と前記下流側とを連通又は遮断させる開閉弁と、前記精製ガスの純度を検出する純度検出手段と、をさらに備え、前記制御手段は、前記純度検出手段で検出された前記精製ガスの純度が所定純度未満の場合には、前記開閉弁を閉弁させる。
【0032】
請求項
6記載の水素製造装置は、炭化水素を水蒸気改質した改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された改質ガスを前記原料ガスとし、前記改質ガスから不純物を分離して前記精製ガスとしての水素ガスを得る請求項1〜
5記載のいずれか1項記載のガス精製装置と、を備える。
【0033】
この水素製造装置では、原料ガスとして炭化水素を水蒸気改質した改質ガスが圧縮機で圧縮された後、ガス精製装置に供給される。ガス精製装置では、改質ガスが吸着塔に供給され、吸着工程の吸着塔から精製された製品水素ガスが精製ガス貯留タンクに貯留される。
【0034】
また、ガス精製装置では、上記のように、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達すれば、閾値圧力到達時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を切り換えることによって、無駄時間が生ずることを防止できる。
【0035】
また、圧力上昇速度が高い場合に、吸着塔等の圧力が異常に高くなることや、圧力の上昇によって水素ガスが装置内部からベント(排気)されることを防止できる。
【0036】
一方、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、設定時間経過時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を切り換える。これにより、吸着工程中の吸着塔の圧力上昇速度が低い場合等に吸着工程や脱着工程が長時間かかることを抑制できる。
【0037】
この結果、ガス精製装置は、各吸着塔の吸着工程と脱着工程の切り換えを効率的に行うことができる。すなわち、水素製造装置を効率的に運転することができる。
【0038】
請求項
7記載のガス精製装置の制御方法は、複数の吸着塔のうちの一部の吸着塔に原料ガスを供給し、吸着塔内部に充填された吸着剤に不純物を吸着させて、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを送出する吸着工程と、前記複数の吸着塔のうちの他の一部の吸着塔の前記吸着剤から前記不純物を除去する脱着工程とが行われるガス精製装置において、前記吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各前記吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、前記設定時間経過時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを切り換えると共に、前記設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達した場合には、閾値圧力到達時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを
直ちに切り換える。
【0039】
このガス精製装置の制御方法では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達すれば、閾値圧力到達時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を切り換えることによって、無駄時間が生ずることを防止できる。
【0040】
また、圧力上昇速度が高い場合に、吸着塔等の圧力が異常に高くなることや、圧力の上昇によって精製ガスが装置内部からベント(排気)されることを防止できる。
【0041】
一方、このガス精製装置の制御方法では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、設定時間経過時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を切り換える。これにより、吸着工程中の吸着塔の圧力上昇速度が低い場合等に吸着工程や脱着工程が長時間かかることを抑制できる。
【0042】
この結果、ガス精製装置は、各吸着塔の吸着工程と脱着工程の切り換えを効率的に行うことができる。すなわち、ガス精製装置を効率的に運転することができる。
【0043】
請求項
8記載のガス精製装置の制御方法は、複数の吸着塔のうちの一部の吸着塔に原料ガスを供給し、吸着塔内部に充填された吸着剤に不純物を吸着させて、前記原料ガスから不純物を除去した精製ガスを送出する吸着工程と、前記複数の吸着塔のうちの他の一部の吸着塔の前記吸着剤から前記不純物を除去する脱着工程とが行われるガス精製装置において、
前記吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各前記吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、前記設定時間経過時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを、均圧工程を挟んで切り換えると共に、前記設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔内の圧力が閾値圧力に到達した場合には、閾値圧力到達時に当該吸着塔の前記吸着工程と前記脱着工程とを、前記均圧工程を挟んで
直ちに切り換える。
【0044】
このガス精製装置の制御方法では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達すれば、閾値圧力到達時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を均圧工程を挟んで切り換えることによって、無駄時間が生ずることを防止できる。
【0045】
また、圧力上昇速度が高い場合に、吸着塔等の圧力が異常に高くなることや、圧力の上昇によって精製ガスが装置内部からベント(排気)されることを防止できる。
【0046】
一方、このガス精製装置の制御方法では、吸着工程の設定時間以内に吸着工程中の各吸着塔の圧力が閾値圧力に到達しない場合には、設定時間経過時にその吸着塔の吸着工程と脱着工程を均圧工程を挟んで切り換える。これにより、吸着工程中の吸着塔の圧力上昇速度が低い場合等に吸着工程や脱着工程が長時間かかることを抑制できる。
【0047】
この結果、ガス精製装置は、各吸着塔の吸着工程と脱着工程の均圧工程を挟んだ切り換えを効率的に行うことができる。すなわち、ガス精製装置を効率的に運転することができる。
【0048】
なお、吸着工程と脱着工程の間に均圧工程を挟むことにより、均圧工程前に脱着工程だった吸着塔の昇圧を迅速にすると共に、均圧工程前に吸着工程だった吸着塔の精製ガスを脱着工程だった吸着塔に移動させ、脱着工程だった吸着塔が次の吸着工程で精製ガスを次の用途に用いることができる。
【0049】
請求項
9記載のガス精製装置の制御方法は、請求項
7又は
8記載のガス精製装置の制御方法において、前記精製ガスを貯留する精製ガス貯留タンクをさらに備えたガス精製装置の起動運転期間中、各前記吸着塔と前記精製ガス貯留タンクとの連通を遮断すると共に、前記起動運転期間中に吸着工程中の吸着塔から脱着工程中の吸着塔に精製ガスを供給する。
【0050】
このガス精製装置の制御方法では、起動運転期間、吸着塔と精製ガス貯留タンクの連通を遮断することにより、所定純度未満の精製ガスが精製ガスとして精製ガス貯留タンクに貯留されることを防止する。
【0051】
一方、ガス精製装置の起動運転期間中に、吸着工程中の吸着塔と脱着工程中の吸着塔を連通させることで、吸着工程中の吸着塔から脱着工程中の吸着塔に精製ガスを供給し、脱着工程中の吸着塔の不純物の離脱を促進することができる。この結果、吸着塔の不純物の除去に要する時間が短縮される。
【0052】
特に、ガス精製装置の起動運転期間は、各吸着塔と精製ガス貯留タンクを遮断しているため、吸着工程中の吸着塔の圧力上昇速度が高く、吸着工程の設定時間以内に吸着塔の圧力が閾値圧力に到達する。すなわち、吸着工程と脱着工程との切換周期が短縮され、吸着塔の吸着剤に付着した不純物の除去に要する時間が短縮れさる。
【0053】
ガス精製装置の起動運転期間、すなわち、吸着塔から送出される精製ガスが所定純度に到達するまでの時間が短縮される。
【0054】
請求項
10記載のガス精製装置の制御方法は、請求項
9記載のガス精製装置の制御方法において、前記起動運転期間中に各前記吸着塔と精製ガス貯留タンクとの連通を遮断した状態を維持したまま、各前記吸着塔に吸着工程と脱着工程を少なくとも一回行う。
【0055】
このガス精製装置の制御方法では、起動運転期間、各吸着塔が吸着工程と脱着工程の少なくとも一回行う間、各吸着塔と精製ガス貯留タンクとの連通を遮断している。したがって、起動運転期間中に各吸着塔に他の吸着塔で生成された精製ガスを供給して不純物の離脱を促進することができる。各吸着塔の不純物の離脱を促進して、装置の起動期間、すなわち所定純度の精製ガスが精製されるまでの時間を短縮することができる。
請求項11記載のガス精製装置の制御方法は、請求項7〜10のいずれか1項記載のガス精製装置の制御方法において、前記吸着塔から下流側へ前記精製ガスが送出される精製ガス流路と、前記精製ガス流路から分岐して外部に連通するベント流路と、前記ベント流路上に配設され、所定圧力以上となった場合には開弁するリリーフ弁と、前記精製ガス流路において、前記ベント流路との分岐位置よりも下流側に配設され、前記吸着塔と前記下流側とを連通又は遮断させる開閉弁と、をさらに備えたガス精製装置において、前記精製ガスの純度が所定純度未満の場合には、前記開閉弁を閉弁する。
【発明の効果】
【0059】
請求項1〜
5記載の発明に係るガス精製装置、請求項
6記載の発明に係る水素製造装置、及び請求項
7〜
11記載の発明に係るガス精製装置の制御方法では、上記構成としたので、効率的な運転ができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
一実施形態に係るPSA装置、及びそのPSA装置が適用された水素製造装置を
図1〜
図19を参照して説明する。
【0062】
〈水素製造装置〉
水素製造装置10は、
図1に示すように、炭化水素(都市ガス)から水蒸気改質した改質ガスを生成する改質器20と、改質ガスを圧縮する圧縮機30と、圧縮された改質ガスから不純物を除去して水素ガスを精製するPSA装置40と、を備えている。
【0063】
また、水素製造装置10は、圧縮機30の上流側、下流側でそれぞれ改質ガスから水分を分離・除去する昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60と、改質器20の後述する燃焼排ガスから水分を分離・除去する燃焼排ガス水分離部70と、を備えている。
【0064】
なお、この水素製造装置10は、炭化水素原料から水素を製造するものであり、本実施形態では、炭化水素原料の一例としてメタンを主成分とする都市ガスが用いられる場合について説明する。
【0065】
(改質器)
改質器20は、原料として供給される都市ガスと改質用の水とを混合しつつ加熱し、混合ガスを発生させる予熱流路と、水蒸気改質反応によって、混合ガスから水素を主成分とする改質ガスG1を生成する改質触媒層とを備えている。改質ガスG1には、水素、一酸化炭素、水蒸気、メタンが含まれている。
【0066】
また、改質器20は、改質ガスG1に含まれる一酸化炭素と水蒸気とが反応して、水素と二酸化炭素とに変換された改質ガスG2を生成する(水性シフト反応が行われる)CO変成触媒層を備えている。改質ガスG2は、改質ガスG1に比べて一酸化炭素が低減される構成である。この改質ガスG2が、改質ガス排出管24に送出される構成である。
【0067】
さらに、改質器20には、バーナーが配置された燃焼室22が設けられており、バーナーに都市ガス又はオフガスが燃料として供給され、燃焼室22で空気と混合されて燃焼され、燃焼排ガスがガス排出管26へ案内される構成である。なお、この燃焼熱によって、水蒸気改質反応が促進される構成である。
【0068】
改質器20において生成された改質ガスは、
図1に示すように、昇圧前水分離部50、圧縮機30、昇圧後水分離部60、及びPSA装置40をこの順番で流れる。つまり、ガスの流れ方向において、上流側から下流側に、改質器20、昇圧前水分離部50、圧縮機30、昇圧後水分離部60、及びPSA装置40がこの順番で配置されている。
【0069】
(昇圧前水分離部)
昇圧前水分離部50には、改質器20から改質ガスG2を流入させる改質ガス排出管24の下流端が接続されている。昇圧前水分離部50の底部には水回収管52が接続され、昇圧前水分離部50の上部には連絡流路管54が接続されている。
【0070】
改質ガス排出管24上には、チラー56で冷却された水と改質ガスG2とを熱交換する熱交換器HE1が設けられている。
【0071】
すなわち、改質ガスG2は、昇圧前水分離部50の上流の改質ガス排出管24に配置された熱交換器HE1において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧前水分離部50の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管52へ送出される構成である。改質ガスG2から水が凝縮された後の改質ガスG3は、連絡流路管54へ送出される構成である。
【0072】
なお、連絡流路管54上において、昇圧前水分離部50と圧縮機30との間には、バッファタンク58が配設されている。
【0073】
(圧縮機)
圧縮機30には、昇圧前水分離部50からの改質ガスG3が流れる連絡流路管54と、昇圧後水分離部60へ供給される改質ガスG3が圧縮された改質ガスG4が流れる連絡流路管32とが接続されている。圧縮機30は、昇圧前水分離部50から供給された改質ガスG3を圧縮し、圧縮された改質ガスG4を昇圧後水分離部60へ供給可能とされている。
【0074】
(昇圧後水分離部)
昇圧後水分離部60には、圧縮機30から改質ガスG4を流入させる連絡流路管32の下流端が接続されている。昇圧後水分離部60の底部には水回収管62が接続され、昇圧後水分離部60の上部には連絡流路管64が接続されている。
【0075】
連絡流路管32上には、チラー66で冷却された水と改質ガスG4とを熱交換する熱交換器HE2が設けられている。
【0076】
すなわち、改質ガスG4は、昇圧後水分離部60の上流の連絡流路管32に配置された熱交換器HE2において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧後水分離部60の下部に水(液相)が貯留可能されている。当該水(液相)は、水回収管62へ送出される構成である。改質ガスG4から水が凝縮された後の改質ガスG5は、連絡流路管64へ送出される構成である。
【0077】
なお、連絡流路管64上において、昇圧後水分離部60とPSA装置40との間には、バッファタンク68が配設されている。
【0078】
(PSA装置(概略))
PSA装置40には、昇圧後水分離部60からの改質ガスG5が流れる連絡流路管64の下流端と、精製された水素(ガス)が送出される水素供給管42の上流端と、PSA装置40で分離されたオフガスが送出されるオフガス供給管44の上流端とが接続されている。さらに、PSA装置40には、内部の水素(ガス)圧力が過剰となった場合に、水素製造装置10の外部に水素を排出するベント管45の上流端が接続されている。
【0079】
PSA装置40は、水素精製器として用いられるものである。このPSA装置40は、一対の吸着塔を備え、一方の吸着塔で吸着剤に不純物を吸着させる吸着工程を行い、他方の吸着塔で吸着剤に吸着した不純物を脱着させる脱着工程を行い、次に一方の吸着塔で脱着工程、他方の吸着塔で吸着工程を行う。これを周期的に繰り返すことで、改質ガスG5を水素と一酸化炭素を含む不純物(オフガスOG)とに連続的に分離して、精製された水素が水素供給管42に送出される構成である。
【0080】
一方、オフガス供給管44は、改質器20の燃焼室22に連通している。また、オフガス供給管44上には、オフガスバッファタンク46が設けられている。したがって、オフガスOGは、オフガスバッファタンク46を介して改質器20の燃焼室22にバーナーの燃料として供給される構成である。
【0081】
なお、PSA装置40の詳細については、後述する。また、PSA装置40が「ガス精製装置」に相当する。
【0082】
(燃焼排ガス水分離部)
燃焼排ガス水分離部70には、改質器20の燃焼室22から燃焼排ガスを導くガス排出管26の下流端が接続されている。燃焼排ガス水分離部70の底部には水回収管72が接続され、燃焼排ガス水分離部70の上部にはガス排出管74が接続されている。
【0083】
ガス排出管26上には、チラー76で冷却された水と燃焼排ガスとを熱交換する熱交換器HE3が設けられている。
【0084】
すなわち、燃焼室22から排出される燃焼排ガスは、燃焼排ガス水分離部70の上流のガス排出管26に配置された熱交換器HE3において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、燃焼排ガス水分離部70の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管72へ送出される構成である。水が凝縮された後の燃焼排ガスは、ガス排出管74から外気中へ排出される構成である。
【0085】
水回収管52、62、72の各々の下流端は、改質用水供給管80に接続されている。改質用水供給管80には、溶存イオン成分を除去するための水処理器(イオン交換樹脂)82が設けられている。また、改質用水供給管80には、外部水供給部84が接続されている。外部水供給部84から改質用水供給管80に、例えば純水または市水が供給される構成である。
【0086】
さらに、改質用水供給管80には、ポンプP1が設けられている。昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70で分離された水、又は外部水供給部84から供給された水は、ポンプP1によって改質器20へ供給される構成である。
【0087】
(PSA装置(詳細))
PSA装置40の内部構造について
図2を参照して詳細に説明する。
【0088】
図2に示すように、PSA装置40は、それぞれ改質ガスG5の不純物を吸着させる吸着剤が内部に配設された第1吸着塔102と、第2吸着塔104と、改質ガスG5を精製して製造された製品水素ガスを貯留する水素ガス貯留タンク106と、を有する。なお、水素ガス貯留タンク106が「精製ガス貯留タンク」に相当する。
【0089】
PSA装置40において、第1吸着塔102と第2吸着塔104の原料ガス(改質ガスG5)供給側には、一端が連絡流路管64に接続される原料ガス供給流路108と、原料ガス供給流路108の他端から分岐された原料ガス供給分岐流路110A、110Bと、原料ガス供給分岐流路110A、110Bにそれぞれ接続される共通流路112A、112Bと、が配設されている。
【0090】
すなわち、第1吸着塔102には、原料ガス供給流路108、原料ガス供給分岐流路110A、共通流路112Aを介して連絡流路管64から改質ガスG5が供給可能に構成されている。
【0091】
同様に、第2吸着塔104には、原料ガス供給流路108、原料ガス供給分岐流路110B、共通流路112Bを介して連絡流路管64から改質ガスG5が供給可能に構成されている。
【0092】
また、原料ガス供給分岐流路110A、110Bには、それぞれ電磁開閉弁114A、114Bが配設されており、電磁開閉弁114A、114Bの開閉によって第1吸着塔102、第2吸着塔104と原料ガス供給流路108(連絡流路管64)とが連通又は遮断される構成である。
【0093】
PSA装置40において、第1吸着塔102と第2吸着塔104のオフガス排出側には、オフガス供給管44に一端が接続されたオフガス排出流路116と、オフガス排出流路116の他端で分岐されたオフガス排出分岐流路118A、118Bと、オフガス排出分岐流路118A、118Bがそれぞれ接続される共通流路112A、112Bと、が設けられている。
【0094】
すなわち、第1吸着塔102から排出されたオフガスは、共通流路112A、オフガス排出分岐流路118A、オフガス排出流路116を介してオフガス供給管44に送出可能に構成されている。
【0095】
同様に、第2吸着塔104から排出されたオフガスは、共通流路112B、オフガス排出分岐流路118B、オフガス排出流路116を介してオフガス供給管44に送出可能に構成されている。
【0096】
なお、オフガス排出分岐流路118A、118Bには、それぞれ電磁開閉弁120A、120Bが配設されており、電磁開閉弁120A、120Bの開閉によって第1吸着塔102、第2吸着塔104とオフガス排出流路116(オフガス供給管44)とが連通又は遮断される構成である。
【0097】
さらに、共通流路112Aと共通流路112Bは、連絡流路122で接続されている。
【0098】
したがって、第1吸着塔102と第2吸着塔104は、共通流路112A、連絡流路122、共通流路112Bを介して連通されている。
【0099】
なお、連絡流路122上には、一対の電磁開閉弁124A、124Bが配設されており、一対の電磁開閉弁124A、124Bの開閉によって第1吸着塔102と第2吸着塔104とが連通又は遮断される構成である。
【0100】
第1吸着塔102、第2吸着塔104の精製ガス(製品水素ガス)の送出側には、水素ガス貯留タンク106に一端が接続された製品水素ガス送出流路126と、製品水素ガス送出流路126の他端が接続される製品水素ガス送出分岐流路128A、128Bと、製品水素ガス送出分岐流路128Aと第1吸着塔102とを連通させる共通流路130Aと、製品水素ガス送出分岐流路128Bと第2吸着塔104とを連通させる共通流路130Bと、が設けられている。
【0101】
なお、製品水素ガス送出分岐流路128A、128B上には、それぞれ電磁開閉弁132A、132Bが配設されており、電磁開閉弁132A、132Bを開閉することにより、第1吸着塔102、第2吸着塔104と水素ガス貯留タンク106とが連通又は遮断される構成である。
【0102】
また、共通流路130A、130B間には、両者を接続する連絡流路134が設けられている。連絡流路134の略中央には、局部的に縮径されたオリフィス136が設けられている。また、連絡流路134においてオリフィス136の両側には、それぞれ電磁開閉弁138A、138Bが配設されている。
【0103】
したがって、電磁開閉弁138A、138Bを開閉することにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104とが共通流路130A、連絡流路134(オリフィス136)、共通流路130Bを介して連通又は遮断される構成である。
【0104】
また、連絡流路134において電磁開閉弁138Aよりも共通流路130A側と電磁開閉弁138Bよりも共通流路130B側とを連通させた連絡流路140が設けられており、連絡流路140上にも一対の電磁開閉弁142A、142Bが配設されている。
【0105】
したがって、電磁開閉弁142A、142Bを開閉することにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104とが連絡流路140を介して(オリフィス136を介さずに)連通又は遮断される構成である。
【0106】
水素ガス貯留タンク106の下流側には、製品水素ガス供給流路144の一端が接続されており、製品水素ガス供給流路144の他端が水素供給管42に接続されている。なお、第1吸着塔102、第2吸着塔104の下流側に位置する製品水素ガス送出流路126、製品水素ガス供給流路144が「精製ガス流路」に相当する。
【0107】
製品水素ガス供給流路144上には、上流側からプレッシャーレギュレータ148、マスフロコントローラ150、電磁開閉弁152が配設されている。なお、電磁開閉弁152が「開閉弁」に相当する。また、マスフロコントローラ150は省略しても良い。
【0108】
プレッシャーレギュレータ148は、製品水素ガスを所定の圧力に調整して水素ガス利用者側に供給するものである。
【0109】
マスフロコントローラ150は、製品水素ガスの流量を調整するものである。
【0110】
電磁開閉弁152は、水素ガス貯留タンク106と水素供給管42とを連通又は遮断させるものである。すなわち、製品水素ガスを水素ガス利用者側に供給可能又は供給不能(遮断)とするものである。
【0111】
なお、製品水素ガス供給流路144においてプレッシャーレギュレータ148の上流側から分岐して、PSA装置40の外部のベント管45に接続される
ベント流路154が設けられている。ベント流路154には、所定圧力以上の場合のみ開放される逆止(リリーフ)弁156が設けられている。
【0112】
したがって、製品水素ガス供給流路144においてプレッシャーレギュレータ148の上流側の圧力が過剰となった場合に逆止弁156が開放され、製品水素ガスがベント流路154からベント管45を介して水素製造装置10の外部に排出される構成である。
【0113】
また、製品水素ガス供給流路144においてマスフロコントローラ150の下流側で電磁開閉弁152の上流側から分岐して、PSA装置40の外部に連通する水素ガス分析流路158が設けられている。この水素ガス分析流路158の先端には、水素ガス分析装置159が接続されており、精製された水素ガスの純度等を検出している。水素ガス分析装置159は、検出された水素ガスの純度が所定純度未満の場合には、PSA制御部170に純度異常信号を出力する。なお、水素ガス分析装置159は、PSA装置40の外部で接続されているが、PSA装置40の「純度検出手段」に相当する。また、水素ガス分析装置159はPSA装置40の内部に設けられていても良い。
【0114】
原料ガス供給流路108、第1吸着塔102、第2吸着塔104、製品水素ガス供給流路144には、それぞれ圧力センサ160、162、164、166が配設されている。圧力センサ162、164が圧力検出手段に相当する。
【0115】
原料ガス供給流路108に配設された圧力センサ160によってPSA装置40に供給された原料ガス、すなわち改質ガスG5の圧力が検出される構成である。
【0116】
また、第1吸着塔102、第2吸着塔104にそれぞれ配設された圧力センサ162、164によって第1吸着塔102、第2吸着塔104の内部圧力がそれぞれ検出される構成である。
【0117】
さらに、製品水素ガス供給流路144においてプレッシャーレギュレータ148とマスフロコントローラ150との間に配設された圧力センサ166によってPSA装置40から供給される製品水素ガスの圧力が検出される構成である。
【0118】
(制御部)
PSA装置40は、PSA制御部170を有している。PSA制御部170は、
図3に示すように、電磁開閉弁114A、114B、120A、120B、124A、124B、132A、132B、138A、138B、142A、142B、152(以下、「電磁開閉弁114A〜152」という)、圧力センサ160、162、164、166、及び水素ガス分析装置159と図示しない信号線で接続されており、後述する制御プログラムに沿って圧力センサ162、164の検出値や水素ガス分析装置159で検出された水素ガスの純度等に基づいて各電磁開閉弁114A〜152を開閉制御するものである。
【0119】
なお、PSA制御部170及び電磁開閉弁114A〜152が「制御手段」に相当する。
【0120】
次に、PSA制御部170のハードウェア構成について説明する。
【0121】
図4に示すように、PSA制御部170は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)172、ROM(Read Only Memory)174、RAM(Random Access Memory)176、ストレージ178、及びインタフェース180を含んで構成されている。各構成は、バス182を介して相互に通信可能に接続されている。
【0122】
CPU172は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU172は、ROM174又はストレージ178からプログラムを読み出し、RAM176を作業領域としてプログラムを実行する。CPU172は、ROM174又はストレージ178に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0123】
ROM174は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM176は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ178は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0124】
インタフェース180は、PSA制御部170が他の機器と接続するためのインタフェースである。
【0125】
(作用)
次に、水素製造装置10及びPSA装置40の作用について説明する。先ず、水素製造装置10の作用について説明する。
【0126】
図1に示すように、水素製造装置10の改質器20へ供給された都市ガスは、予熱流路で改質用の水と混合されつつ加熱され、改質触媒層へ供給される。改質触媒層では、燃焼室22の燃焼排ガスからの熱を受け、水蒸気改質反応によって混合ガスから水素を主成分とする改質ガスG1が生成される。この改質ガスG1は、改質ガス流路を通ってCO変成触媒層へ供給される。CO変成触媒層では、改質ガスG1に含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素と二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が低減された改質ガスG2は、改質ガス排出管24へ送出される。
【0127】
この際、改質器20の燃焼室22では、供給された都市ガス又はオフガスと空気とが混合された気体がバーナーによって燃焼される。燃焼排ガスは、燃焼室22からガス排出管26を介して燃焼排ガス水分離部70へ供給される。
図1に示すように、燃焼排ガスに含まれる水は、熱交換器HE3での熱交換により冷却されて凝縮され、燃焼排ガス水分離部70に貯留され、水回収管72へ送出される。水が分離された燃焼排ガスは、ガス排出管74から外気中へ排出される。
【0128】
一方、
図1に示すように、改質ガスG2は、改質ガス排出管24を経て、昇圧前水分離部50へ供給される。昇圧前水分離部50では、熱交換器HE1での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管52へ送出される。改質ガスG2から水が分離された改質ガスG3は、連絡流路管54からバッファタンク58を介して圧縮機30へ供給され、圧縮機30によって圧縮される。
【0129】
改質ガスG3が圧縮された改質ガスG4は、連絡流路管32から昇圧後水分離部60へ供給される。昇圧後水分離部60では、熱交換器HE2での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管62へ送出される。改質ガスG4から水が分離された改質ガスG5は、連絡流路管64からバッファタンク68を介してPSA装置40へ供給される。
【0130】
なお、昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70からそれぞれ水回収管52、62、72に送出された水は、改質用水供給管80に戻される。ポンプP1の駆動により、改質用水供給管80から改質器20に改質水として供給される。
【0131】
PSA装置40では、圧力スイング方式が採用されており、一対の吸着塔の一方では吸着剤に水素以外の不純物が吸着され、他方の吸着塔では吸着剤に吸着された不純物が脱着されている。PSA装置40では、この吸着工程と脱着工程をそれぞれの吸着塔で一定の周期で繰り返すことにより、改質ガスG3から連続的に水素と不純物が分離されて水素が精製される。
【0132】
続いて、PSA装置40の具体的動作について
図5〜
図19を参照して説明する。
【0133】
図5は、第1吸着塔102、第2吸着塔104の工程と、電磁開閉弁114A〜152の開閉タイミングを記載したタイミングチャートと、その際の第1吸着塔102、104の圧力変化(実線が第1吸着塔102の圧力(圧力センサ162の検出値)、破線が第2吸着塔104の圧力(圧力センサ164の検出値))を示したものである。
図13も同様である。
【0134】
(定格運転)
先ず、PSA装置40の定格運転について
図5〜
図12を参照して説明する。この場合には、PSA制御部170は、定格運転制御プログラムをストレージ178から読み出し、実行することにより、電磁開閉弁114A〜152の開閉制御を行うものである。
【0135】
ここで、第1吸着塔102、第2吸着塔104における吸着工程(吸着工程内の昇圧過程、水素送出過程、パージ過程、排気停止過程の各過程)、均圧工程、脱着工程、均圧工程の切り換えは、それぞれの設定時間によって基本的に制御されている。定格運転の各工程、各過程の設定時間を
図6(A)に示す。
【0136】
但し、後述する吸着塔内部の圧力が吸着工程の設定時間内に閾値圧力Th1に到達した場合には、次工程に切り換えられる構成である。
【0137】
なお、水素製造装置10の改質器20及び圧縮機30は連続的に運転され、改質器20で製造され、圧縮機30で圧縮された改質ガスG5が連続的にPSA装置40に供給されている。
【0138】
第1吸着塔102が吸着工程、第2吸着塔104が脱着工程で開始される状態から説明する。なお、各電磁開閉弁の開閉は、PSA制御部170からの制御信号によって制御されている。
【0139】
図5及び
図7に示すように、先ず、時刻T0において、PSA制御部170からの制御信号により電磁開閉弁114Aが開弁され、連絡流路管64から原料ガス供給流路108を介して第1吸着塔102に改質ガスG5が供給される。この際、第1吸着塔102の下流側に位置する電磁開閉弁132A、138A、142Aは全て閉弁している。この結果、第1吸着塔102内の圧力が上昇する(昇圧過程)。
【0140】
なお、電磁開閉弁114A〜152の開閉がPSA制御部170からの制御信号に基いて行われることは明らかであるため、以下の各電磁開閉弁114A〜152の開閉については「PSA制御部170からの制御信号により」の記述を省略する。
【0141】
また、時刻T0において、電磁開閉弁120Bが開弁され、第2吸着塔104がオフガス排出流路116と連通される。これにより、第2吸着塔104からオフガス排出流路116を介してオフガス供給管44にオフガスOGが排出される。
【0142】
なお、
図7において、PSA装置40の各流路のうち太線で記載されている部分が、ガスが流れている部分である。また、
図7において、電磁開閉弁114A〜152を黒塗りで示した場合が閉弁状態を表し、電磁開閉弁114A〜152を白抜きで示した場合が開弁状態を表す。以下、他の図でも同様である。
【0143】
次に、
図5及び
図8に示すように、時刻T0から設定時間t1経過後の時刻T1で電磁開閉弁132Aを開弁する。換言すれば、第1吸着塔102内の圧力が十分に上昇し、吸着剤が不純物を十分に吸着して第1吸着塔102から所定の純度の水素ガスが送出可能となるように、設定時間t1が設定されている。これにより、第1吸着塔102と水素ガス貯留タンク106とを連通させ、第1吸着塔102で精製された精製水素ガスを水素ガス貯留タンク106に供給する(水素送出過程)。
【0144】
なお、PSA装置40の定格運転中は、電磁開閉弁152は常時開弁されており、水素ガス貯留タンク106から送出された製品水素ガスは、プレッシャーレギュレータ148で所定圧力とされ、マスフロコントローラ150で所定流量とされた後、水素供給管42を介して水素ガス利用者側に供給される。
【0145】
この際、製品水素ガス供給流路144から水素ガス分析流路158を介して水素ガス分析装置159に製品水素ガスが供給され、製品水素ガスの水素純度が所定純度以上か否かが検出されている。製品水素ガスの水素純度が所定純度未満となった場合には、水素ガス分析装置159からPSA制御部170に純度異常信号が出力される構成である。
【0146】
さらに、
図5及び
図9に示すように、時刻T1から設定時間t2経過後の時刻T2で、電磁開閉弁138A、138Bを開弁する。この結果、第1吸着塔102及び水素ガス貯留タンク106と第2吸着塔104とが、オリフィス136を介して連通する。これにより、第1吸着塔102又は水素ガス貯留タンク106から第2吸着塔104に精製された水素ガスが供給され、第2吸着塔104内の吸着剤に付着した不純物が水素ガスで除去され、オフガスとしてオフガス排出流路116からオフガス供給管44に排出される(パージ過程)。
【0147】
また、
図5及び
図10に示すように、時刻T2から設定時間t3経過後の時刻T3で、電磁開閉弁120Bが閉弁される。すなわち、第2吸着塔104とオフガス排出流路116との連通が遮断される。これにより、第2吸着塔104では、オリフィス136から水素ガスが供給される一方、オフガスの排出が停止されるため、内部の圧力が上昇する(排気停止過程)。
【0148】
さらに、
図5及び
図11に示すように、時刻T3から設定時間t4経過後の時刻T4で電磁開閉弁114A、132A、138A、138Bが閉弁される。これにより、第1吸着塔102が原料ガス供給流路108と遮断されると共に、水素ガス貯留タンク106及びオリフィス136と遮断される。
【0149】
これにより、第1吸着塔102に改質ガスが供給されなくなると共に、第1吸着塔102から水素ガス貯留タンク106に精製された水素ガスが送出されることも停止される。
【0150】
また、第1吸着塔102と第2吸着塔104とのオリフィス136を介しての連通も遮断される。
【0151】
このタイミングで電磁開閉弁124A、124Bと電磁開閉弁142A、142Bが開弁される。これにより、第1吸着塔102の上流側と第2吸着塔104の上流側、第1吸着塔102の下流側と第2吸着塔104の下流側が連通される。
【0152】
このように、第1吸着塔102と第2吸着塔104がオリフィス136を介さずに上流側と下流側で連通されることにより、圧力が均等化される(均圧工程)。
【0153】
さらに、
図5及び
図12に示すように、時刻T4から設定時間Ts2経過後の時刻T5で、電磁開閉弁124A、124Bと電磁開閉弁142A、142Bが閉弁され、第1吸着塔102と第2吸着塔104との連通が遮断される。
【0154】
同時に、電磁開閉弁114Bが開弁され、第2吸着塔104と原料ガス供給流路108とが連通され、連絡流路管64から原料ガス供給流路108を介して第2吸着塔104に改質ガスG5が供給される。
【0155】
また、電磁開閉弁120Aが開弁され、第1吸着塔102とオフガス排出流路116とが連通され、第1吸着塔102からオフガス排出流路116を介してオフガス供給管44にオフガスが排出される。
【0156】
以下、時刻T0から時刻T5までのタイミングと同様に、時刻T5から時刻T10までのタイミングで電磁開閉弁の開閉制御が行われることにより、第1吸着塔102で脱着工程と均圧工程が行われ、第2吸着塔104で吸着工程と均圧工程が行われる。これは、吸着塔を入れ替えただけで動作は同様であるので詳細な説明を省略する。
【0157】
この後は、第1吸着塔102と第2吸着塔104を切り換えながら、この制御を繰り返していく。
【0158】
なお、このPSA装置40では、
図5に示すように、定格運転中の第1吸着塔102、第2吸着塔104の最大圧力値よりも少し高い圧力に閾値圧力Th1が設定されている。
【0159】
これは、PSA装置40の定格運転期間中に、何らかの事情より第1吸着塔102、第2吸着塔104の圧力が閾値圧力Th1よりも高まった場合や、水素ガス貯留タンク106の圧力が高まった場合には、逆止弁156が開弁されることにより、水素ガス貯留タンク106からベント流路154、ベント管45を介して水素製造装置10の外部に水素が排出される(水素がベントされる)構成とされている。
【0160】
したがって、PSA制御部170における定格運転及び後述する起動運転では、吸着工程、脱着工程、均圧工程等の切り換えを基本的に設定時間に基づいて行うが、第1吸着塔102、第2吸着塔104の圧力(圧力センサ162、164の検出値)が設定時間以内に閾値圧力Th1に到達すると、吸着工程と脱着工程とを直ちに切り換える。これにより、第1吸着塔102、第2吸着塔104の圧力が閾値圧力Th1を超えてPSA装置40のベント流路154からベント管45を介して水素ガスがベントされることを防止する構成である。本実施形態のように、吸着工程と脱着工程の間に均圧工程を挟んでいる場合には、吸着工程又は脱着工程から均圧工程に直ちに移行する構成である。
【0161】
なお、「PSA装置の定格運転」とは、第1吸着塔102と第2吸着塔104の一方が吸着工程を行い、他方が脱着工程を行い、次に一方が脱着工程を行い、他方が吸着工程を行うことを繰り返し行い、改質ガスG5を所定純度以上の製品水素ガスに精製する運転のことをいう。本実施形態のように吸着工程と脱着工程を切り換える際に、均圧工程を挟むものも含む。
【0162】
(起動運転)
次に、PSA装置40を起動させる場合について、
図13〜
図17を参照して説明する。
【0163】
この際、水素製造装置10の図示しない制御部からPSA制御部170に起動信号が入力される。
【0164】
PSA制御部170では、起動信号が入力されると、起動運転制御プログラムをストレージ178から読み出し、実行することにより、電磁開閉弁114A〜152の開閉制御を行い、起動運転が行われる。なお、「PSA装置の起動運転」とは、PSA装置40の起動開始から少なくとも各吸着塔から所定純度の水素ガスが送出可能となるまでのPSA装置40の運転をいう。
【0165】
PSA制御部170では、起動運転制御プログラムに従って上記定格運転と同様に時間制御を基本として制御する。ただし、起動運転期間中、電磁開閉弁132A、132Bを閉弁した状態を維持することによって、所定純度未満の水素ガスが水素ガス貯留タンク106に貯蔵されることを防止するものである。このため、定格運転の吸着工程における水素送出過程を省略しているものである。すなわち、起動運転の吸着工程(脱着工程)の設定時間Ts3は、その分だけ定格運転の吸着工程の設定時間Ts1よりも短く設定されている(Ts3=Ts1−t2)。なお、各過程の設定時間は、定格運転と同様である(
図6(B)参照)。
【0166】
また、本実施形態のPSA装置40では、起動運転として、第1吸着塔102と第2吸着塔104が吸着工程と脱着工程をそれぞれ一回ずつ行った後、定格運転に移行するものである。
【0167】
なお、水素製造装置10の改質器20及び圧縮機30は連続的に運転され、改質器20で製造され、圧縮機30で圧縮された改質ガスG5が連続的にPSA装置40に供給されている。
【0168】
なお、PSA制御部170では、PSA装置40の運転終了直前に脱着工程であった吸着塔を記憶しており、その吸着塔が吸着工程で開始するように起動される。
【0169】
本実施形態では、第1吸着塔102が吸着工程、第2吸着塔104が脱着工程で開始される。なお、各電磁開閉弁の開閉は、PSA制御部170からの制御信号によって制御されている。
【0170】
図13及び
図14に示すように、先ず、時刻T11において、電磁開閉弁114Aが開弁され、連絡流路管64から原料ガス供給流路108を介して第1吸着塔102に改質ガスG5が供給される。この際、第1吸着塔102の下流側に位置する電磁開閉弁132A、138A、142Aは全て閉弁している。この結果、第1吸着塔102内の圧力が上昇する(昇圧過程)。
【0171】
また、時刻T11において、電磁開閉弁120Bが開弁され、第2吸着塔104がオフガス排出流路116に連通される。これにより、第2吸着塔104からオフガス排出流路116を介してオフガス供給管44にオフガスOGが排出される。
【0172】
次に、
図13及び
図15に示すように、時刻T11から設定時間t1経過後の時刻T12で、電磁開閉弁138A、138Bを開放する。これにより、第1吸着塔102又は水素ガス貯留タンク106と第2吸着塔104とが、オリフィス136を介して連通する。これにより、第1吸着塔102又は水素ガス貯留タンク106から第2吸着塔104に精製された水素ガスが供給され、第2吸着塔104内の吸着剤に付着した不純物が水素ガスで除去され、オフガスとしてオフガス排出流路116からオフガス供給管44に排出される(パージ過程)。
【0173】
なお、定格運転では、
図5及び
図8に示すように、第1吸着塔102内の圧力が十分に上昇した場合には(時刻T1で)、電磁開閉弁132Aを開弁し、第1吸着塔102で精製された精製水素ガスを水素ガス貯留タンク106に供給する水素送出過程が行われるが、起動運転期間中は、
図13に示すように、電磁開閉弁132Aの閉弁状態が維持され、水素送出過程が省略されている。
【0174】
これは、起動運転時には、PSA装置40の運転停止中に吸着塔内の吸着剤内部で不純物が拡散しており、昇圧過程終了時(設定時間t1経過後の時刻T12)でも精製された水素ガスの純度が所定純度まで到達していないからである。
【0175】
また、PSA装置40の起動運転中は、電磁開閉弁152は常時閉弁されており、水素ガス貯留タンク106から水素供給管42を介して水素ガス利用者側に供給されていない。
【0176】
ところで、上記パージ過程時には、定格運転と異なり、電磁開閉弁132Aが閉弁されているため、第1吸着塔102から送出された精製された水素ガスが水素ガス貯留タンク106に供給されることはない。したがって、第1吸着塔102の圧力上昇速度が高い。この結果、プログラムに設定された吸着工程の設定時間Ts3(パージ過程の設定時間t3)経過前の時刻T13で、第1吸着塔102の圧力が閾値圧力Th1に到達する(
図13参照)。
【0177】
PSA制御部170は、圧力センサ162の検出結果に基づいて第1吸着塔102の圧力が起動運転の吸着工程の設定時間Ts3以内で閾値圧力Th1に到達したことを検知すると、第1吸着塔102の吸着工程、第2吸着塔104の脱着工程を直ちに終了させ、均圧工程に移行させる。なお、本実施形態において、起動運転の吸着工程の設定時間Ts3とは、定格運転の吸着工程の設定時間Ts1(=t1+t2+t3+t4、
図5、
図6(A)参照)から水素送出過程の設定時間t2を引いた時間である(Ts3=Ts1-t2=t1+t3+t4、
図5、
図6(B)、
図13参照)。
【0178】
具体的には、
図13及び
図16に示すように、第1吸着塔102の圧力が閾値圧力Th1に到達した時刻T13において電磁開閉弁114A、138A、138Bが閉弁される。この結果、第1吸着塔102が原料ガス供給流路108と遮断されると共に、オリフィス136と遮断される。これにより、第1吸着塔102に改質ガスが供給されなくなる。
【0179】
また、第1吸着塔102と第2吸着塔104とのオリフィス136を介しての連通も遮断される。
【0180】
このタイミングで、
図16に示すように、電磁開閉弁124A、124Bと電磁開閉弁142A、142Bが開弁される。これにより、第1吸着塔102の上流側と第2吸着塔104の上流側、第1吸着塔102の下流側と第2吸着塔104の下流側とが連通される。
【0181】
このように、第1吸着塔102と第2吸着塔104がオリフィス136を介さずに上流側と下流側とで連通されることにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104の圧力が均等化される(均圧工程)。
【0182】
さらに、
図13及び
図17に示すように、時刻T13から均圧工程の設定時間Ts2経過後の時刻T14で、電磁開閉弁124A、124Bと電磁開閉弁142A、142Bが閉弁され、第1吸着塔102と第2吸着塔104との連通が遮断される(均圧工程が終了される)。
【0183】
同時に、電磁開閉弁114Bが開弁され、第2吸着塔104と原料ガス供給流路108とが連通され、連絡流路管64から原料ガス供給流路108を介して第2吸着塔104に改質ガスG5が供給される。すなわち、第2吸着塔104で吸着工程が開始される。
【0184】
また、電磁開閉弁120Aが開弁され、第1吸着塔102とオフガス排出流路116とが連通され、第1吸着塔102からオフガス排出流路116を介してオフガス供給管44にオフガスが排出される。すなわち、第1吸着塔102で脱着工程が開始される。
【0185】
以下、時刻T11から時刻T14までのタイミングと同様に、時刻T14から時刻T17までのタイミングで電磁開閉弁の開閉制御が行われることにより、第1吸着塔102で脱着工程と均圧工程が行われ、第2吸着塔104で吸着工程と均圧工程が行われる。これは、吸着塔を入れ替えただけで動作は同様であるので詳細な説明を省略する。
【0186】
このように、PSA装置40の全吸着塔、すなわち第1吸着塔102と第2吸着塔104が吸着工程と脱着工程をそれぞれ一回ずつ、すなわち一周期実施した段階で起動運転が終了され、以下、定格運転が実施される。
【0187】
これは、第1吸着塔102、第2吸着塔104において、吸着剤内で拡散していた不純物が十分に除去され、改質ガスを精製することによって製造された水素ガスが所定純度に到達したと判断して水素ガス貯留タンク106に送出するものである。
【0188】
すなわち、定格運転の吸着工程の水素送出過程やパージ過程において、電磁開閉弁132A又は電磁開閉弁132Bが開弁されていることによって、第1吸着塔102又は第2吸着塔104で精製された水素ガスを水素ガス貯留タンク106に送出するため、吸着塔の圧力上昇速度が抑制される。したがって、第1吸着塔102又は第2吸着塔104の圧力が閾値圧力Th1に到達する前に定格運転の吸着工程の設定時間Ts1(=t1+t2+t3+t4)が経過し、設定時間Ts1経過時に(例えば、時刻T21で)次工程(均圧工程)に切り換えられるものである。
【0189】
この後は、第1吸着塔102と第2吸着塔104の吸着工程と脱着工程を切り換えながら、この制御を繰り返していく。
【0190】
(水素純度低下時)
続いて、PSA装置40において、精製された製品水素ガスの水素純度が所定純度未満に低下した場合の運転について説明する。
【0191】
PSA装置40では、運転時に常時、水素ガス分析流路158から製品水素ガスを水素ガス分析装置159に供給し、水素ガス分析装置159で製品水素ガスの純度を検出している。水素ガス分析装置159で検出された製品純度が所定純度未満の場合には、純度異常信号が水素ガス分析装置159からPSA制御部170に出力される。
【0192】
PSA制御部170に純度異常信号が入力されたのが、例えば、定格運転のパージ過程の場合には、
図18及び
図19に示すように、電磁開閉弁152が閉弁される。すなわち、水素ガス貯留タンク106と水素供給管42とが遮断される。この結果、所定純度未満の製品水素ガスが水素ガス貯留タンク106から製品水素ガス供給流路144、水素供給管42を介してユーザー側へ供給されることが停止される。
【0193】
また、水素ガス貯留タンク106では、第1吸着塔102から精製された水素ガスが供給される一方、水素供給管42への供給が停止されるため、圧力が上昇する。この結果、逆止弁156が開弁され、ベント流路154からベント管45を介して水素製造装置10の外部に所定純度未満の水素ガスが排出される。
【0194】
水素ガス分析装置159で検出された製品水素ガスの純度が所定純度以上に復帰した場合には、すなわち、水素ガス分析装置159からPSA制御部170への純度異常信号の入力が停止した場合には、純度復帰時から、第1吸着塔102、第2吸着塔104のそれぞれで吸着工程と脱着工程を二回ずつ行った(所定時間経過)後、定格運転に復帰する。
【0195】
これは、電磁開閉弁152の開弁を純度復帰時から所定時間遅延させることで、水素ガス貯留タンク106や製品水素ガス供給流路144から所定純度未満の水素ガスを確実にベント流路154を介して外部に排出するためである。
【0196】
この後、電磁開閉弁152が開弁されると共に、第1吸着塔102、第2吸着塔104でそれぞれ吸着工程、脱着工程が行われることにより、水素ガス貯留タンク106に製品水素ガスが貯留され、水素ガス貯留タンク106から水素供給管42(水素ガス利用者側)に所定純度以上の製品水素ガスが供給される。
【0197】
なお、一定時間経過しても製品水素ガスの純度が所定純度に復帰しない場合には、第1吸着塔102、第2吸着塔104が均圧工程に到達した時点で、水素製造装置10の運転を停止して装置の検査を行う。
【0198】
(効果)
このように、PSA装置40では、定格運転の設定時間に基づいて各工程(吸着工程、脱着工程、均圧工程)や各過程(昇圧過程、水素送出過程、パージ過程、排気停止過程)等を切り換えることにより、簡単な制御で所定の純度の水素を製造することができる。
【0199】
また、このPSA装置40では吸着工程の設定時間内に吸着工程中の吸着塔が所定圧力に到達した場合には、設定時間内でも直ちに均圧工程に切り換える。これは、吸着塔の圧力が所定圧力以上になった場合には、PSA装置内の圧力が高くなり過ぎることを防止すると共に、処理の無駄時間を排除できる。
【0200】
このように、PSA装置40では、各工程の切り換えを時間だけでなく圧力でも制御することにより、簡単な制御で改質ガスG5を所定純度の水素ガスに精製するだけでなく、効率的に製造すると共に、装置の安全性も高めることができる。
【0201】
また、起動運転では、起動運転制御プログラムに従って定格運転(定格運転制御プログラム)と異なる運転を行うことにより、以下の効果がある。
【0202】
先ず、起動運転期間中、電磁開閉弁132A、132Bの閉弁状態を維持すること(「締切運転」という)により、吸着工程の吸着塔から水素ガス貯留タンク106に精製された水素ガスが供給されることが防止される。すなわち、起動運転期間中に所定純度未満の水素ガスが水素ガス貯留タンク106に送出され、水素ガス利用者側に供給されることを確実に防止できる。
【0203】
また、起動運転期間中にパージ過程を行うことによって、吸着工程中の吸着塔(例えば、第1吸着塔102)で精製された所定純度未満の水素ガスを脱着工程中の吸着塔(例えば、第2吸着塔104)に供給し、脱着工程中の吸着塔のパージに使用することができる。これにより、吸着塔内の吸着剤からの不純物の離脱を促進し、吸着塔で精製された水素ガスが所定の純度まで到達する時間を短縮することができる。また、所定純度未満の水素ガスをパージ過程に用いることにより、有効利用することができる。
【0204】
さらに、起動運転期間中に第1吸着塔102、第2吸着塔104のいずれもが少なくとも一回ずつ吸着工程と脱着工程を行う(少なくとも一周期実施する)ことにより、各吸着塔が少なくとも一回脱着工程を行うことになり、停止中に各吸着塔の吸着剤の内部で拡散していた不純物が除去され、精製水素ガスの純度を所定純度まで迅速に向上させることができる。
【0205】
また、起動運転期間中に締切運転することで、吸着工程中の吸着塔(例えば、第1吸着塔102)の圧力上昇速度が定格運転と比較して高くなり、吸着工程の設定時間Ts3以内に吸着中の吸着塔の圧力が閾値圧力Th1に到達して吸着工程が終了され、直ちに均圧工程に切り換えられる。すなわち、起動運転における吸着工程(脱着工程)時間が定格運転と比較して短縮される。この結果、起動運転の吸着工程と脱着工程の切り換え周期が短縮され、精製された水素が所定純度に到達するまでの時間が短縮される。
【0206】
さらに、起動運転は、定格運転の水素送出過程を省略しているため、締切運転により吸着塔の圧力上昇速度が高く、吸着工程時間が短縮されても、パージ過程を十分に行うことができ、脱着工程中の吸着塔の吸着剤内に拡散していた不純物を十分に除去することができる。
【0207】
また、PSA制御部170は、PSA装置40の停止直前に脱着工程であった吸着塔を記憶しており、起動運転開始時に当該吸着塔の吸着工程から開始させるものである。これにより、停止直前に吸着工程であった吸着塔に対して、停止直前に脱着工程であった吸着塔で精製された水素ガスが供給されてパージされる。すなわち、起動運転開始時により純度の高い水素ガスが脱着工程中の吸着塔に供給され、不純物の除去が促進される。
【0208】
さらに、PSA装置40は、各吸着塔を外部と遮断した後に電磁開閉弁124A、124B、142A、142Bを開弁することで、第1吸着塔102と第2吸着塔104とをそれぞれ上流側、下流側で連通させて均圧化している。これにより、相対的に圧力が低い脱着工程側の吸着塔の圧力を上昇させ、当該吸着塔の吸着剤に付着した不純物の拡散が抑制される。すなわち、PSA装置40の起動運転期間に吸着剤に付着した不純物を除去して所定の純度の製品水素ガスを精製するまでの時間を短縮することができる。
【0209】
また、水素ガス分析装置159で検出された製品水素ガスの純度が所定純度未満の場合には、PSA制御部170は、直ちに電磁開閉弁152を閉弁することで、水素ガス貯留タンク106と水素供給管42を遮断し、所定純度未満の製品水素ガスが水素ガス利用者側へ供給されることを阻止できる。
【0210】
さらに、PSA装置40では、電磁開閉弁152を閉弁することにより、水素ガス貯留タンク106の圧力が上昇することによって、逆止弁156が開弁され、水素ガス貯留タンク106から所定純度に達しない製品水素ガスが外部に排出される。すなわち、水素ガス貯留タンク106に所定純度に達しない製品水素ガスが貯留され、運転再開時に水素供給管42に供給されることを防止できる。
【0211】
(その他)
本実施形態では、PSA装置40を水素製造装置10に適用したものであり、PSA装置40は改質ガスG5から水素(ガス)を精製していたが、これに限定するものではない。PSA装置が原料ガスから不純物を除去して精製ガスに精製するものであれば、適用可能である。
【0212】
また、本実施形態のPSA装置40では、定格運転に排気停止過程を含んでいたが、排気停止過程を省略しても良い。すなわち、パージ過程後、直ちに均圧工程となるように制御しても良い。
【0213】
さらに、本実施形態のPSA装置40では、起動運転を各吸着塔の1周期分だけ実施するように制御しているが、2周期以上実施するようにしても良い。
【0214】
また、本実施形態のPSA装置40では、起動運転の吸着工程において昇圧過程の次がパージ過程となるように制御することによって定格運転の水素送出過程(時間)を省略したが、その時間分、昇圧過程を延長しても良い。この場合には、パージ過程に到達する前に吸着工程中の吸着塔の圧力が閾値圧力(Th1)に到達しないことが望ましい。脱着工程中の吸着塔がパージ過程を経ずに脱着工程が終了すると、吸着剤中の不純物の除去が進まず、各吸着塔で精製される水素ガスの純度が所定純度に到達するまでの時間が長期化するおそれがあるためである。
【0215】
なお、この場合には、起動運転の吸着工程の設定時間Ts3は、定格運転の設定時間Ts1と等しくなる(
図6参照、Ts3=Ts1=t1+t2+t3+t4)。
【0216】
さらに、本実施形態のPSA装置40では、吸着工程と脱着工程の間に均圧工程を入れているが、均圧工程がないものでも良い。この場合には、起動運転期間中に吸着塔の圧力が吸着工程の設定時間Ts3以内で閾値圧力Th1に到達した場合には、閾値圧力到達時に吸着工程から直接、脱着工程に切り換えられる。
【0217】
また、本実施形態のPSA装置40は、第1吸着塔102と第2吸着塔104の2つの吸着塔を有する構成であったが、3以上の吸着塔を有するものでも良い。
【0218】
さらに、本実施形態のPSA装置40は、起動運転プログラムと定格運転プログラムを別プログラムとしたが、単一の運転プログラムで、例えば、起動運転のサブルーチンを有するものでも良い。
【0219】
また、本実施形態のPSA装置40では、起動運転期間中に吸着工程の設定時間Ts3以内で第1吸着塔102、第2吸着塔104の圧力が閾値圧力Th1に到達する場合について説明したが、到達しない構成でも良い。この場合には、吸着工程の設定時間Ts3の経過時に第1吸着塔102、第2吸着塔104の吸着工程(脱着工程)が均圧工程に切り換えられ、均圧工程の設定時間経過後に脱着工程(吸着工程)とされる。
【0220】
さらに、本実施形態のPSA装置40では、製品水素ガス供給流路144を流れる製品水素ガスの水素純度を水素ガス分析装置159で検出したが、少なくとも水素ガス貯留タンク106よりも水素ガス利用者側であれば、いずれの位置で検出しても良い。
【0221】
また、ベント流路154は、水素ガス貯留タンク106よりも上流側の製品水素ガス送出流路126から分岐する構成でも良い。
【0222】
さらに、PSA装置40が均圧工程中にPSA制御部170で圧力センサ160の圧力をモニタリングすることにより、圧力センサ160で検出された圧力が閾値圧力以上となった場合に連絡流路管64から水素製造装置10の外部に改質ガスをベントする構成としても良い。