(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987121
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】測光キュベットマッピング
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20211213BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
G01N35/04 A
G01N21/03 Z
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-502806(P2019-502806)
(86)(22)【出願日】2017年7月19日
(65)【公表番号】特表2019-523409(P2019-523409A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】US2017042930
(87)【国際公開番号】WO2018017760
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2019年4月9日
(31)【優先権主張番号】62/365,287
(32)【優先日】2016年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ,ジョスン ケー.
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム,ベスティン
【審査官】
永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−198739(JP,A)
【文献】
米国特許第8700345(US,B2)
【文献】
米国特許第9217712(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測光キュベットマッピングを行なうためのコンピュータ実装方法であって、
反応リングが完全に回転する間に、反応リング内の複数の容器間の複数のギャップに関連付けられたエッジを検出することを含み、このとき、各ギャップは、エッジ検出プロセスに従って決定され、前記プロセスは、
閾値を下回る、光度計装置制御マネージャ(DCM)による、測定値を第1の所定数検出したときに容器内部を識別すること;
前記閾値を超える、光度計DCMによる、測定値を第2の所定数検出したときに立ち上がりエッジを識別すること;
前記閾値を下回る、光度計DCMによる、測定値を第3の所定数検出したときに立ち下がりエッジを識別すること;及び
前記立ち上がりエッジ及び前記立ち下がりエッジが前記複数のギャップのうちの1つを示すものとして記録することを含むものであって、
前記エッジ検出プロセスが、所定の数のギャップが決定されるまで、繰り返され、
更に、容器に隣接するギャップの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの少なくとも1つの形状又は出現位置若しくは時間が所定の許容値範囲から外れている場合に、前記容器は試験に使用不可であることを指定することを特徴とする
方法。
【請求項2】
更に、容器内部の識別の後、第4の所定数のDCM測定値を検出する間に、前記立ち上がりエッジが識別されない場合には、エッジ欠落の報告を生成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、前記立ち上がりエッジの識別の後、第4の所定数のDCM測定値を検出する間に、前記立ち下がりエッジが識別されない場合には、容器欠落の報告を生成することを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記エッジ検出プロセスに続いて、前記記録されたギャップに基づいて前記複数の容器に対して複数のトリガポイントを計算することを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
更に、前記トリガポイントでインデックスを作成して測光測定値を収集することを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
更に、前記エッジ検出プロセスに続いて、前記記録された立ち上がりエッジ及び前記記録された立ち下がりエッジに基づいて、試験に使用できないとして1つ以上の容器にフラグを立てることを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記光度計DCMが、前記光度計DCM測定の各々を実行するために、単一の波長を使用する請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
更に、前記光度計DCMによって収集された初期の測定値のセットから計算された閾値を用いて、前記立ち上がりエッジ及び前記立ち下がりエッジの前記記録を二値化することを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
測光キュベットマッピングを行なうためのコンピュータ実装方法であって、
反応リングを、光度計が関連付けられた光が二つの容器の間にある機械的ホームポジションに合わせること;
前記反応リングを一回転以上回転させること;
光度計装置制御マネージャ(DCM)を用いて前記反応リングからエッジデータを読み込むこと;
前記反応リングを機械的ホームポジションに再度位置合わせすること;
前記光度計DCMを使用して前記エッジデータからトリガポイントを計算すること;及び
前記トリガポイントでインデックスを作成して測光測定値を収集すること
を含むものであって、
前記エッジ検出プロセスが、所定の数のギャップが決定されるまで、繰り返され、
更に、容器に隣接するギャップの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの少なくとも1つの形状又は出現位置若しくは時間が所定の許容値範囲から外れている場合に、前記容器は試験に使用不可であることを指定することを特徴とする
方法。
【請求項10】
前記エッジデータが前記反応リング内の複数の容器間の複数のギャップに対応し、前記エッジデータが、エッジ検出プロセスに従って、各ギャップに対する前記反応リングから読み込まれ、ここで、
前記プロセスは、
第1の所定数の閾値以下の光度計DCMの測定値の検出に呼応して容器内部を識別すること;
第2の所定数の前記閾値を超える光度計DCM測定値の検出に呼応して立ち上がりエッジを識別すること;
第3の所定数の前記閾値以下の光度計DCM測定値の検出に呼応して立ち下がりエッジを識別すること;及び
前記立ち上がりエッジ及び前記立ち下がりエッジを前記複数のギャップのうちの1つを示すものとして記録すること
を含むものである
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
更に、容器内部の識別に続いて、前記立ち上がりエッジが4番目の所定数のDCM測定値内で識別されない場合には、エッジ欠落の報告を生成することを含む請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
更に、前記立ち上がりエッジの識別に続いて、前記立ち下がりエッジが第4の所定数のDCM測定値内で識別されていない場合には、容器欠落の報告を生成することを含む請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
更に、前記エッジ検出プロセスに続いて、前記記録された立ち上がりエッジ及び前記記録された立ち下がりエッジに基づいて、試験に使用できないとして1つ以上の容器にフラグを立てることを含む請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記光度計DCMが前記光度計DCM測定の各々を実行するために、単一の波長を使用する請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
更に、前記光度計DCMによって収集された初期の測定値のセットから計算された閾値を用いて、前記立ち上がりエッジ及び前記立ち下がりエッジの前記記録を二値化することを含む請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の測光キュベットマッピングを実行するためのシステムであって、
前記システムは、
光度計;
前記光度計に関連する光が2つの容器の間にある機械的なホーム位置に位置合わせされる反応リング;及び
ホストコンピュータ
を備え、
前記ホストコンピュータは、
請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法を実行する
ように構成されている
前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願との相互参照
本出願は、2016年7月21日に出願された米国仮出願第62/365,287号の利益を主張するものであり、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概ね、体外診断システムにおいて使用するための測光キュベットマッピングのための方法、システム及び装置に関する。本明細書に記載される技術は、例えば、自動試験環境において臨床実験室における体外診断の実施に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
体外診断(IVD)は、患者の流体試料に対して実施された試験に基づいて、研究室による疾患診断の支援を可能にする。IVDは、患者の体液又は膿瘍から採取された液体試料の分析によって行なうことができる、患者の診断及び治療に関連する様々なタイプの分析テスト及びアッセイを含む。これらのアッセイは、典型的には、患者試料を収容した管又はバイアルのような流体容器を搭載した自動臨床化学分析器(「分析器」)を用いて実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析システムの1つの構成要素は、1つ以上の反応リングを含む反応ターンテーブルである。各反応リングは複数の区画に配置され、各区画は複数の反応容器、即ち、「キュベット」、を収容している。光度計の表示値は、均一な間隔で読み取られ、各キュベットにおける吸光度測定値を計算する。キュベットの区画の設計制御又は製造上の問題があると、これらの容器の間隔が区画内及び区画間で不均一に又は不規則になってしまい、正確な光度計測定値を得ることが(不可能ではないにしても)困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、測光キュベットマッピングに関連した方法、システム及び装置を提供することによって、上記の短所及び欠点の1つ以上に対処し、克服する。本明細書に記載される技術を使用して、キュベットマッピングは、システム内の各キュベットの自動アライメントルーティンとして実施する。このマッピングルーティンは、正確な測光測定を行なうため、最適な起動ポイントを検出する。ルーティンは、何ら性能への影響なしに、キュベットリングの初期化ルーティンの一部として行なうことができる。新しく追加された区画は、リング機構のリセット中に自動的にマッピングされる。本明細書に記載される技術の付加的利益として、基準測定値は、動的線源ランプ参照のために、キュベット間で計算され、それによって、結果の精度を上げることができる。
【0006】
いくつかの実施形態によると、測光キュベットマッピングを実施するためのコンピュータ実装方法は、反応リングが完全に一回転する間に反応リング内の複数の容器間の複数のギャップに関連付けられたエッジを検出することを含む。各ギャップはエッジ検出プロセスによって決定される。このエッジ検出プロセスは、閾値を下回る、光度計装置制御マネージャ(DCM)の、測定値を第1の所定数検出したときに容器内部を識別すること;閾値を超える、光度計DCMの、測定値を第2の所定数検出したときに立ち上がりエッジを識別すること;及び、閾値を下回る、光度計DCMの、測定値を第3の所定数検出したときに立ち下がりエッジを識別することを含む。エッジ検出プロセスは、更に、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを、複数のギャップのうちの1つを示すものとして記録することを含む。エッジ検出プロセスは、所定の数のギャップが(例えば、システム設計に基づく予想値に応じて)決定されるまで繰り返される。エッジ検出プロセスに続いて、複数のトリガポイントが、記録されたギャップに基づいて複数の容器について、計算されてもよい。次いで、トリガポイントを用いてインデックスを作成して、測光測定値を収集することができる。
【0007】
上記方法のいくつかの実施形態では、容器内部の識別に続いて、第4の所定数のDCM測定値内で立ち上がりエッジが識別されない場合、エッジ欠落の報告を生成して、例えばユーザに対して、送信してもよい。同様に、立ち上がりエッジの識別に続いて、第4の所定数のDCM測定値内で立ち下がりエッジが識別されない場合に、容器欠落の報告を生成してもよい。
【0008】
上記方法のいくつかの実施形態では、エッジ検出プロセスの後に、1つ以上の容器に、記録された立ち上がりエッジ及び記録された立ち下がりエッジに基づいて、試験には使用不可としてフラグを立ててもよい。例えば、ある実施形態では、或る容器に隣接するギャップの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの少なくとも一方が所定の許容値
範囲から外れている場合には、その容器は、試験には使用不可能と指定される。
【0009】
本発明の異なる実施形態では、上述の実施形態に追加の特徴、補強、及びその他の修正を加えることができる。例えば、一実施形態では、光度計DCMは、単一波長を使用して各光度計DCM測定を実行する。別の実施形態では、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの記録は、光度計DCMによって収集された初期セット測定値から計算された閾値を用いて二値化される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、測光キュベットマッピングを実施するためのコンピュータ実装方法は、反応リングを、光度計に関連する光が2つの容器の間にある機械的ホームポジションに、位置合わせすることを含む。反応リングは一回転以上回転させ、エッジデータは、例えば上述のエッジ検出プロセスを使用して、光度計DCMを使って反応リングから読み込まれる。反応リングは、機械的ホーム位置に再度位置合わせをし、トリガポイントは、光度計DCMを用いてエッジデータから計算される。次に、トリガポイントを使用してインデックスを作成し、測光測定値を収集する。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、測光キュベットマッピングを実施するためのシステムは、光度計、反応リング及びコンピュータを含む。反応リングは、光度計に関連する光が2つの容器の間にある機械的なホーム位置に、位置合わせされる。コンピュータは光度計を用いて、光度計に関連付けられたDCMを使用して、反応リングからエッジデータを読み出す。コンピュータは、次に、反応リングを機械的ホーム位置に再度位置合わせし、DCMを使用してエッジデータからトリガポイントを計算する。次いで、コンピュータは、トリガポイントを用いて、光度計を用いて測光測定値を収集する。
【0012】
添付図面を参照しながら進める以下の例示的な実施形態の詳細な説明から、本発明の更なる特徴及び利点が明らかとなろう。
【0013】
本発明の上述の態様及び他の態様は、添付図面に関連付けて詳細な説明を読むことにより、最もよく理解できる。本発明を説明する目的で、図面には、現在好ましい実施態様が記載されているが、本発明は、開示された特定の手段に限定されるものではないことが理解できよう。図面には下記の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】いくつかの実施形態で使用する例示的な分析モジュール用電気機械システムの上面図である。
【
図1B】キュベットが組み込まれた例示的なキュベット区画アセンブリの側面図を示す。
【
図1C】キュベットが組み込まれた例示的なキュベット区画アセンブリの正面図を示す。
【
図2】いくつかの実施形態に従って、光度計デバイス制御マネージャ(DCM)によって実行され得るキュベットマッピングプロセスを示す図である。
【
図3A】本明細書に記載された技術に従うキュベットマッピングプロセスを実行しているときに、容器を介した光透過がギャップエッジとどのように相関するかを示す図である。
【
図3B】キュベットマッピングプロセスを用いて生成され得る試料エッジ検出結果を示す図である。
【
図4A】いくつかの実施形態に従う典型的なプロセスを実行しているときに収集されたデータのスナップショットである。
【
図4E】本明細書に記載される技術に従うキュベットマッピングプロセスにおいて実施できる、1つのギャップがマスクされるが、次のエッジは正しく検出される例を示す。
【
図4F】複数の連続したギャップがどのようにマスクされるかを示しており、ここでも次のギャップエッジは、本明細書に記載された技術を使用して、正しく検出される。
【
図4H】3つのギャップがマスクされた追加の図を示す。
【
図5】本明細書に記載される技術に従うキュベットマッピングプロセスを用いて生成された追加のマッピング試験結果を示す図である。
【
図6A】1つの容器が水で満たされたときに生成される試料の結果を示す。
【
図6B】複数の容器が水で満たされたときに生成される試料の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の開示では、測光キュベットマッピングに関連する方法、システム及び装置に向けられたいくつかの実施形態に従って本発明を説明する。光源を遮断する反応リング容器のエッジ(先頭及び末尾)の傾向を使って容器のエッジを検出する。本明細書に記載のキュベットマッピング技術を使用して、光度計は、表示値の流れを収集し分析し、一方、反応リングは、初期のホーム位置に戻った後に完全に一回転する。容器のエッジを検出するために、1つの波長(例えば、596nm)が用いられる。データは、表示値の初期セットから計算された閾値(例えば、90%)を用いて、二値化(即ち、二値表示に変換)してもよい。キュベットマッピングは、器具のスタートアップ時間に何ら影響を与えることなく実施することができる。キュベットマッピングは、測光測定のための、非常に再現性の高いトリガポイントを提供する。本明細書に記載される技術は、高精度の結果を得るために入力を過剰に採取する最適な測定領域も提供する。
【0016】
本発明の内容を説明するために、
図1Aは、いくつかの実施形態で使用する例示の分析モジュール160用電気機械システムの上面図である。試料アーム123は、希釈ミキサ121によって調製された試料部分を吸引し、反応リング125上を移動させ、その試料部分をキュベットに分注するためのものである。反応リングは、
図1Bに関して以下に記載されるキュベットの区画アセンブリを含んでいてもよい。試薬は、試料が試薬アーム153又は試薬アーム155を介して試料が到着する前に又は到達した後に添加することができる。試薬サーバ130及び135は、種々の異なる試薬を含み、種々の試験を分析モジュール160によって実施することを可能にする。試薬アーム153及び155は、それぞれ、試薬サーバ135又は試薬サーバ130から、試薬の一定分量を移動させる。次いで、これらの一定分量は、反応リング125内のキュベットに分配される。反応リング125は、キュベットを所定のシーケンスで移動させて、混合のために、各キュベットが試薬ミキサ140又は試料ミキサ145に到達するようにする。混合されると、試料と試薬との反応がキュベット中で進行する。反応リング125が回転して、光度計150が所定の時刻に反応の測光測定値を測定することを可能にする。
【0017】
分析用の反応リングは、複数の区画に亘って構成された複数のキュベットを含む。
図1B及び1Cは、キュベットを、それぞれ、側面及び正面に向けて、設置した例示的なキュベット区画アセンブリの図を示す。各キュベットは、分光実験のために試料を保持するように設計された小さな管である。キュベットは、一端がシールされ、円形断面を有するか、又は
図1Bに示されるように、断面は正方形又は長方形であってもよい。正方形又は長方形の断面は、一般的に、測光測定を行っている間、屈折の人工物(アーチファクト)を回避するために使用する。これらに限定されないが、光学ガラス、UV石英、IR石英又はサファイアを始めとする様々な材料を使用して、キュベットを構成することができる。
図1Cは、
図1Bに示した図とは、別の図を示している。
図1Bから、各キュベットの下部が、本明細書では「光学領域」と呼ばれる小さな窓を含むことがわかる。測光測定中に、光度計によって発せられる光は、キュベットの光学領域に向けられる。
【0018】
光度計の読み取りは、ブレッドボード設計上の均一な間隔で誘起される。一部のキュベット区画の設計制御又は製造上の問題から、これらの容器を区画内及び区画間で不均一に又は不規則に間隔を空けて位置させる。間隔にパターンはない。本明細書に記載される技術は、ハードウェアとソフトウェアとを任意の組み合わせで実装してトリガリングポイントを動的にマッピングし得るキュベットマッピングプロセスを提供する。光源を遮断するために反応リング容器のエッジ(先頭及び末尾)の傾向を利用して反応リング容器の端部を検出することができる。エッジ間のギャップは均一ではない。本明細書において「光度計装置制御マネージャ(DCM)」と呼ばれる光度計を制御するためのソフトウェアが、測定の流れを収集し分析する一方で、反応リングは、初期のホームポジションに戻った後にゆっくりと完全に一回転する。一つの波長を用いて容器の端を検出し、データは初期の測定値セットから計算された閾値で二値化される。即ち、閾値を超える値が1つの値(例えば「1」)に設定され、閾値以下の値は別の値(例えば「0」)に設定される。いくつかの実施態様において、上記波長は596nmであり、閾値は90%である。
【0019】
DCMの測定値は、0から正の値の間で上下する。ピークへ上昇する信号の遷移は「立ち上がりエッジ」と呼ばれ、ピークから落ちる信号の遷移は「立ち下がりエッジ」と呼ばれる。容器の後縁であるギャップの立ち上がりエッジは、その容器の「トリガポイント」を計算するために使用される。立ち上がりエッジは、障害物がない場合にのみ発生するが、一方、立ち下がりエッジは、破片や泡を始めとする障害物に起因し得る。立ち下がりエッジは、ノイズを避けるために、跳ね返りを抑えられる。立ち上がりエッジは
許容値範囲(例えば5%)に照らしてチェックされ、この許容値
範囲から外れるとフラグが立てられる。
【0020】
エッジ検出の最終的なチェックは、ホストコンピュータレベルで行われ、エッジが許容値
範囲から外れていることが検出された場合には、容器は使用不能としてフラグを立てられる。この文脈において「フラグを立てる」とは、容器が使用不能であるという記録を作成することをいう。試験中に容器を使用する前に、この記録は分析器によって読み取られ、使用できないと指定されていない容器のみが試料等で満たされる。フラグは、また、警告又は他のメッセージ(例えば、ログファイルエントリ)を生成して、容器が使用可能でないことをユーザに通知してもよい。
【0021】
装置(DCM)を調整する主コントローラ(ホストコンピュータ)は、容器への「オフセット」を制御して光度計測定を誘発する。基準測定値は、全てのギャップで測定され、1つのフィルタをかけた基準測定値がホストに送られて、吸光度計算が行なわれる。エッジ検出の全体的なルーティンは、反応リングのホームポジションへ戻る前後を含む比較的短時間(例えば、ある実施方法においては約20秒間)で完了することができる。「不良」容器は、使用不可とフラグが立てられ、このマッピングルーティンは、反応リングの予約処理の準備が整うたびに呼び出すようにしてもよい。
【0022】
ホストは、以下のように、キュベットの全体的な測光測定プロセスにキュベットマッピングを統合することができる。最初に、反応リングは、光度計光ビームが2つの反応容器の間に来る機械的ホーム位置に位置合わせされる。これがリングのホームポジション(0)である。次に、光度計エンコーダが0にリセットされ、ホストコマンドが光度計DCMにエッジデータの捕捉の指令を出す。その後、ホストは、反応リングを1回転以上(例えば、223スロット)ゆっくりと回転させ、光度計DCMからエッジデータを読み出す。次いで、ホストはリングをホームポジションに戻し、光度計DCMに対して、(
図2を参照して以下に更に詳細に説明されるように)検出されたエッジからトリガポイントを計算するよう求める。ホストは、インデックス作成を開始して、そのトリガポイントに基づいて測光測定値を収集する。光度計への水平位置合わせは行なわなくてよい。全てのプローブが、その機械的ホームポジションでリングに位置合わせでき、光度計は、反応リング(参照用の容器及びギャップ)に自動的に位置合わせされる。
【0023】
図2は、いくつかの実施形態に従って、光度計DCMによって実行され得るキュベットマッピングプロセス200を示す。本明細書で使用されるキュベットマッピングという用語は、キュベットが反応リング上に位置する場所及びキュベット間のギャップが位置する場所を識別するプロセスをいう。キュベットマッピングプロセス200中に収集され利用され得る測定値の例として、本明細書ではある数値が使われることも理解すべきであるが、本発明の他の実施形態におけるこれらの測定には他の値を使用することもできることは理解できよう。ステップ205から開始して、エッジスキャン初期化手順が実行され、その間に、オペレーションカウンタが初期化される。ステップ205において、光度計エンコーダは、最初の200点から閾値が計算されるまで、20のエンコーダカウントごとに変換を誘起するように構成してもよい。
【0024】
図2を参照して継続すると、ステップ210において、第1の立ち下がりエッジが検出される。測定はステップ210で行われ、閾値を超える値が最初の2,000のエンコーダカウント内に見出せることを確認し、次の2,000のエンコードカウントに閾値以下の値が見られる。この測定値に基づいて、DCMは立ち下がりエッジの遷移位置をラッチする。次に、ステップ215において、容器内部のデータを回避するために、システムは、閾値を下回る値が、検出された最後の立ち下がりエッジから離れた2,000のエンコーダカウントから26回連続して、見られることを確認する。本明細書で使用される「容器内部」という用語は、2つのエッジ間の容器の部分をいう。ステップ220において、次の立ち上がりエッジが検出される。ステップ220では、システムは、立ち上がりエッジにラッチされる。DCMは、最小の「50」カウントの幅のハイレベルな値を待機する。最後の立ち下がりエッジから4,000のエンコーダカウント内に立ち上がりエッジがない場合、エッジが欠落していることを示す報告が発行されることがある。この報告は、これらに限らないが、ホストコンピュータ又は表示及び/又は記録のためのリモートコンピュータ(例えば、ログファイル中)に送信されるメッセージ、を始めとする様々な形態をとることができる。このメッセージは、反応リングに対する時間、臨床試験情報及び/又は欠落したエッジの位置などの関連情報を指定することができる。
【0025】
エッジが「
許容値範囲」内で検出されると、次の立ち下がりエッジがステップ225において検出され、システムが立ち下がりエッジにラッチされる。DCMは、最小のカウントの幅のローレベルな値(例えば、500など)になるのを待機する。最後の立ち上がりエッジから4,000のエンコーダカウント内で立ち下がりエッジが検出されない場合は、キュベット欠落の報告が発行されることがある。この報告は、これらに限定されないが、表示及び/又は記録のためのホストコンピュータ又はリモートコンピュータに送信されるメッセージを始めとする様々な形態をとることができる。報告のこれらの内容は、反応リングに対する時刻、臨床試験情報、キュベットの位置及び/又はキュベット識別子などの関連情報を指定することができる。逆に、エッジが「
許容値範囲」内で検出されない場合、ステップ230において、エッジが「想定される」位置に挿入される。次に、ステップ235において、DCMはキュベット間の電流ギャップの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを保存する。次に、DCMはエッジスキャンが完了したかどうかを判断する。いくつかの実施形態では、ある一定数のギャップが検出された場合(例えば、反応リング上の容器リングアセンブリ内の容器位置の数に対応する場合)には、エッジスキャンが完了したとみなされる。例えば、一実施形態では、221のギャップが発見された場合には、スキャンは完了している。他の実施形態では、第1の測定されたギャップが、再び測定されると、スキャンは完了している。より多くのエッジが発見された場合、キュベットマッピングプロセス200は、ステップ215から繰り返される。逆に、検出される他のエッジが存在しない場合、エッジは検証され、ステップ240においてホストに報告される。
【0026】
図3Aは、本明細書に記載された技術に従うキュベットマッピングプロセスの実行中に、(エンコーダカウントによって決定されるような)容器を介した光透過がギャップエッジと相関する方法を示す。
図3Bは、そのようなプロセスを用いて生成できる試料エッジ検出結果を示す図である。この例では、キュベット間のギャップは、通常、約800カウントであり、区画間では約300である。容器の内部幅の変化は、スロット内の容器の角度配置の変動によるものである。
図3Cは、エッジ10〜30を詳細に示す。
【0027】
図4A〜4Gは、本発明のいくつかの実施形態に従って、キュベットマッピングプロセス中に収集されたデータを可視化する例を提供する。
図4Aは、典型的なプロセスの実行中に収集されたデータのスナップショットを示す。
図4Bは、いくつかのエッジを詳細に示す。
図4Cは、区画間の短いギャップを示す。
図4Dは、不均一なギャップの例である。
図4Eは、1つのギャップがマスクされるが、次のエッジは正しく検出される例を示す。(連続的とみなすべき)
図4F及び4Gは、複数(この例では3つ)のギャップがどのようにマスクされ得るかを示し、しかし、次のギャップエッジは、本明細書に記載される技術を用いれば、依然として正しく検出されることを示す。
図4Hは、3つの連続した容器がマスクされた、更に別の図である。
【0028】
図5は、本明細書に記載される技術に従うキュベットマッピングプロセスを用いて生成された追加のマッピング試験の結果を示す図である。より具体的には、検出されたエッジと、区画内のキュベットの計算されたトリガポイントとが
図5に示されている。この例のスキャン解像度は、エンコーダカウント10である。外れ値は、(シミュレートされた)エッジ欠落の試験によって発生する。
【0029】
図6A〜6Cは、透明な水で満たされたときに容器がより良好に伝達されることを示している。
図6Aは、(
図6Aで小さい枠に37と印された)1つの容器が水で満たされたときに生成された試料の結果を示す。
図6Bは、(
図6Bで小さい枠に106、102、98及び94と印された)複数の容器が水で満たされたときに生成される試料の結果を示す。
図6Cは、この試験の追加の結果を示す。
【0030】
本開示の実施形態は、ハードウェアとソフトウェアとの任意の組み合わせを用いて実施することができる。更に、本開示の実施形態は、例えば、コンピュータ可読で非一時的な媒体を有する製品(例えば、1つ以上のコンピュータプログラム製品)に含まれてもよい。媒体は、例えば、本開示の実施形態の機構を提供し、容易にするためのコンピュータ可読プログラムコードを具体化している。製品は、コンピュータシステムの一部として含まれてよく又は別個に販売することができる。
【0031】
本明細書で機能及びプロセスステップは、ユーザコマンドに呼応して、自動的に、又は全体的に若しくは部分的に、実行されてもよい。自動的に実行されるアクティビティ(ステップを含む)は、アクティビティをユーザが直接開始することなく、1つ以上の実行可能命令又はデバイス操作に呼応して実行される。
【0032】
図のシステム及びプロセスステップは、排他的なものではない。他のシステム、プロセス及びメニューは、同じ目的を達成するために本発明の原理に従って導出され得る。本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、本明細書で示し且つ説明している実施形態及び変形例は、例示のみを目的とするものであることが理解されるべきである。現在の設計に対する修正は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって実施可能である。本明細書に記載される様々なシステム、サブシステム、エージェント、マネージャ及びプロセスは、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素及び/又はそれらの組み合わせを使用して実装することができる。本明細書のクレーム要素は、その要素が「の手段」という語句を使用して明示的に記載されていない限り、35U.S.C.112条第6パラグラフの規定に基づいて解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
123 試料アーム
125 反応リング
140 試薬ミキサ
145 試料ミキサ
150 光度計
153 試薬アーム
155 試薬アーム
160 分析モジュール