【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様として、ディーゼルエンジン用の燃料油を浄化する方法を提供する。該方法は、
浄化するべき燃料油を提供するステップと、
浄化するべき燃料油を遠心分離機に供給するステップと、
遠心分離機内の燃料油を浄化して浄化した油相を得るステップと、を含み、
この方法は、以下の
遠心分離機で浄化する前に浄化すべき燃料油の粘度または浄化した油相の粘度を測定するステップと、
測定した粘度に基づいて浄化するべき燃料油の温度を調整するステップと、をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
「ディーゼルエンジン用の燃料油」という用語は、本明細書では、船舶に搭載されたエンジンまたは発電所などの発電用エンジンに使用することを目的とした油を指す。「燃料油」という用語は、ISO 8217「石油製品 − 燃料(クラスF) − 海洋用燃料の規格(2005年および2012年版)、または船上のエンジンまたは発電所で使用する前のそのような油の前処理から生じる油成分/相に定義される。燃料油は、石油蒸留からの留分として、留出物または残渣として得ることができる。本明細書ではディーゼルを燃料油と見なす。したがって、燃料油は、海洋(残留)燃料油(MFO)またはバンカーC油であり得る。
【0010】
「浄化すべき燃料油」は、一般にタンクに貯蔵されている、異なる粘度を有する異なる種類の燃料油からなることができる。これは、浄化のために分離機に送られる燃料油の種類が時間的に異なり得ることを意味する。
【0011】
実施形態では、ディーゼルエンジン用の燃料油は重質燃料油(HFO)を含む。HFOは、蒸留からの、または鉱油処理におけるクラッキングからの残留油である。
【0012】
この方法は、燃料油を船上で処理する方法、すなわち船上で使用される方法であり得る。
【0013】
遠心分離機は、密度が異なる、液体混合物などの流体混合物の少なくとも2つの成分を分離するためのものであり得る。遠心分離機は、静止フレームと、静止フレームに対して回転部分を回転させるように構成された駆動部材とを備えることができる。回転部分は、スピンドルと、分離空間を取り囲む遠心分離機ローターとを含む。遠心分離機ローターは、スピンドルと共に回転軸(X)の周りを回転するようにスピンドルに取り付けられる。 回転部は、少なくとも1つの軸受装置によって静止フレームによって支持されている。 分離空間は、回転軸の周りに中央に配置された分離ディスクのスタックを含み得る。 そのような分離ディスクは分離空間内に表面拡大インサートを形成する。分離ディスクは円錐台形の形状を有していてもよく、すなわちスタックは円錐台形の分離ディスクのスタックであってもよい。ディスクは、回転軸の周りに配置された軸方向ディスクでもあり得る。
【0014】
したがって、遠心分離機に浄化すべき燃料油を供給するステップは、例えば、燃料油を貯蔵するためのタンクから、分離空間に通じる入口管を介することなどで、浄化すべき燃料油燃料油を遠心分離器の分離空間に供給することを含むことができる。
【0015】
遠心分離機での浄化前に浄化すべき燃料油の粘度を測定するステップと、または浄化した油相の粘度を測定するステップと、および測定した粘度に基づいて浄化すべき燃料油の温度を調整するステップとは、浄化すべき燃料油を遠心分離機に供給するステップの間に、例えば、タンクから遠心分離機へのなどの輸送中に、および/または遠心分離機内の燃料油の連続分離中に、行われ得る。
【0016】
遠心分離機内の燃料油を浄化して浄化した油相を提供するステップは、浄化すべき燃料油を浄化した油相、スラッジ相および水性相に分離することを含み得る。スラッジ相は、触媒微粉(cat fines)などの固体不純物を含み得る。 触媒微粉は、接触分解として知られる原油の精製プロセスからの残留物であり、ここでは長い炭化水素分子がより短い分子に分解される。これらの粒子は研磨剤であり、エンジンおよび補助装置の摩耗を引き起こす可能性があるので、燃料油中では望ましくない。 燃料油中の触媒微粉の濃度は通常0〜60ppmの間で変動する。 触媒微粉は、0.1ミクロン(マイクロメートル)〜100ミクロンのサイズ範囲であり得る。したがって、遠心分離機内の燃料油を浄化するステップは、燃料油から触媒微粉を分離すること、すなわち油中の触媒微粉の濃度を下げることを含むことができる。
【0017】
この方法は、浄化すべき燃料油の流に、すなわち分離器の上流に分離助剤を添加するステップをさらに含むことができる。このような分離助剤はポリマーなどの液体分離助剤であり得る。その結果、浄化ステップは、遠心分離機の分離空間内で遠心力によって触媒微粉と分離助剤とを燃料油から分離することを含むことができる。浄化した油相を分離空間からその中央の軽相出口を通して排出する。触媒微粉などの分離された、より小さい粒子を、分離された分離助剤と共に、中央の軽相の出口の半径方向外側に位置する分離室の重相の出口を通して排出する。
【0018】
遠心分離機で浄化する前に浄化すべき燃料油の粘度または浄化した油相の粘度を測定するステップは、連続的にまたは一定の時間間隔で実施することができる。
【0019】
調整するステップは、浄化した燃料油の温度を断続的または恒久的に上昇および/または下降させることを含むことができ、その結果、実際の遠心分離機における油の分離中に浄化した燃料油の温度も上昇または低下する。
【0020】
本発明の第1の態様は、測定した粘度が分離前の燃料油の加熱を制御するための信号として使用され得るという洞察に基づいている。これは、分離温度が、分離すべき油の実際の粘度に調整され得るか、または分離した油の粘度の情報に基づいて調整され得ることを意味する。したがって、本発明の第1の態様の方法では、測定した燃料の粘度によって、98℃を超える温度などの高い分離温度がいつ必要とされるかを決定することが可能になる。これは、この方法による温度が必要なときにのみ、すなわち粘度が高いときにのみ使用されることを可能にするので、分離機部品の摩耗および劣化が減少され得ることを意味する。
【0021】
本発明の第1の態様の実施形態では、浄化した燃料油の粘度は、遠心分離機内で浄化する前に測定される。
【0022】
したがって、粘度は、燃料油タンクと分離機との間などの分離機の上流側の燃料油について測定することができる。粘度は、例えば、油を加熱するためのヒーターの下流、すなわち油の加熱後に、測定することができる。これは、実際に分離しようとしている油に基づいて温度を調整できることを意味します。
【0023】
しかしながら、浄化した油の粘度も測定することができる。したがって、本発明の第1の態様の実施形態では、粘度は遠心分離機の下流で測定される。この粘度は、例えば、分離された燃料油がエンジン内で使用される前に、分離器の液相の出口に若しくはその後に、または分離器のタンクの下流で測定することができる。
【0024】
本発明の第1の態様の実施形態では、浄化すべき燃料油の温度を調整するステップは、浄化すべき油の粘度が特定の最大粘度v
max未満に保たれるように温度を変えることを含む。
【0025】
したがって、予め設定された最大粘度v
maxを設定し、温度を調整して、全ての燃料油がこの予め設定された最大粘度よりも低い粘度で分離されるようにすることができる。
【0026】
一例として、この特定の最大粘度v
maxは、約55cStなどの、50から60cStの間であり得る。
【0027】
センチストークス(cSt)は、1/100(0.01)ストロークである動粘度のセンチメートル−グラム−秒(CGS)単位、すなわち1cSt=1mm
2/sである。センチストークスは、海洋用燃料油の粘度を定義するために使用される一般的な単位である。
【0028】
さらに、油の粘度は、特定の最大粘度v
maxを下回る設定粘度値v
setに、または特定の最大粘度v
maxを下回る特定の粘度間隔内に保たれてもよい。
【0029】
したがって、燃料油が同じ基準粘度、すなわちオペレータによって分離される前に設定されていてもよい設定値粘度v
setで浄化されるように温度が調整されてもよい。この設定粘度値v
setは、約35cStなどの、25〜45cStの間の値であり得る。
【0030】
さらに、粘度が特定の粘度範囲内に保たれるように温度を調整することができ、ここで全期間は特定の最大粘度v
max未満であり、これは全ての燃料油がこの範囲内の粘度を有するときに浄化されることを意味する。一例として、特定の粘度間隔は25〜45cStの間であり得る。
【0031】
本発明の第1の態様の実施形態では、燃料油の温度を調整するステップは、測定した粘度を設定粘度値v
setと比較し、測定した粘度がv
setより低い場合は温度を下げ、測定した粘度がv
setより高い測定場合は温度を上げることを含む。
【0032】
さらに、浄化すべき燃料油は、異なる粘度を有する少なくとも2つの異なる燃料油の間で変動することができ、v
setは、温度t
setにおいて最高粘度の燃料油の測定した粘度として設定することができ、ここでt
setは105℃を超える。
【0033】
浄化すべき燃料油の中で最も高い粘度の燃料油は、例えば、50℃で約700cStの粘度を有する油であり得る。
【0034】
温度t
setは、遠心分離機における分離ステップの上限温度t
maxであり、使用される分離器の種類に依存し得る。すなわち、分離器に含まれる部品等の種類に依存し得る。t
maxはオペレータによって決定されてもよく、105℃を超え、例えば110℃を超え、例えば115℃以上であってもよい。
【0035】
本発明の第1の態様の実施形態において、温度を調整するステップは、温度を98℃を超える温度に調整することを含む。
【0036】
したがって、温度を調整することは、浄化すべき燃料油の温度を「高温分離」と見なされる温度に調整することを含み得る。
【0037】
一例として、浄化すべき燃料油の温度は、105℃を超える、例えば110℃を超える、例えば115℃を超える温度を含む温度に調整することができる。
【0038】
本発明の第1の態様の実施の形態では、浄化すべき燃料油の温度を調整するステップは最低温度t
lowと最高限界温度t
maxとの間の値に温度を変更することを含む。t
lowは95℃から98℃の間である。t
maxは105℃を超え、例えば110℃超え、例えば115℃以上である。
【0039】
使用される最低温度は燃料油の粘度に依存する。これは燃料油の粘度が非常に低い場合、浄化される燃料油が調整される最低温度は室温、室温より低い、または室温と例えば95若しくは98℃との間のどこかであり得ることを意味する。
【0040】
本発明の第1の態様の実施形態においては、この方法は、浄化すべき燃料油の流速を調整するステップをさらに含む。したがって、温度に加えて、浄化すべき燃料油の流速も調整され得る。流速は分離効率に影響を与える可能性があります。例えば、低い粘度の燃料油と比較してより高い粘度の燃料油をより低い流速を用いて分離することができる。
【0041】
浄化すべき燃料油の流速を調整するステップは、測定した粘度に基づいてもよい。温度を調整する前に流速を調整することが有利であり得る。
【0042】
本発明の第1の態様の実施形態においては、浄化される燃料油の流速を調整するステップは、浄化した油相が使用されているエンジンの作業負荷に依存する。
【0043】
したがって、浄化すべき燃料油の流速を調整するステップは、エンジンの燃料消費量のなどのエンジンの作業負荷に関する情報に依存し得る。エンジンの作業負荷、例えば、エンジンの燃料消費量が減少すると、浄化すべき燃料油の流速が減少する可能性がある。エンジンの作業負荷、例えば、エンジンの燃料消費量が増加すると、浄化すべき燃料油の流速が増加する可能性がある。
【0044】
しかしながら、浄化すべき燃料油の流速を調整するステップは、浄化した油相中の触媒微粉の測定濃度および/または浄化すべき燃料油中の触媒微粉の測定濃度に依存し得る。
【0045】
本発明の第1の態様の実施形態では、浄化すべき燃料油の流速を調整するステップは、浄化した油相が使用されるエンジンの作業負荷と少なくとも1つの測定された触媒微粉濃度の両方に依存する。触媒微粉濃度は、浄化した油相中の触媒微粉の濃度および/または浄化すべき燃料油中の触媒微粉の測定された濃度などである。
【0046】
浄化した油相および/または浄化すべき燃料油中の触媒微粉の濃度が増加すると、浄化すべき燃料油の流速が減少する可能性がある。浄化すべき燃料油が少なくなると、浄化すべき燃料油の流速が多くなる可能性がある。
【0047】
本発明の第2の態様として、ディーゼルエンジン用の燃料油を浄化するためのシステムを提供する。このシステムは、
ディーゼルエンジン用の燃料油から不純物を分離し、浄化した油相を生成するための遠心分離機と、
浄化すべき燃料油の粘度または浄化した油相の粘度を測定するための少なくとも1つの機器と、
浄化すべき燃料油の温度を調整するための手段と、
粘度を測定するための少なくとも1つの機器から粘度の情報を受信するように構成され、さらに、受信された前記粘度の情報に基づいて浄化すべき燃料油の温度を調整する手段への出力信号を生成するように構成される制御ユニット。
【0048】
第2の態様に関して使用される用語および定義は、上記第1の態様に関して説明したものと同じである。
【0049】
したがって、遠心分離機は、上記の第1の態様に関して説明した通りであり得る。
【0050】
浄化すべき燃料油の粘度または浄化した油相の粘度を測定するための少なくとも1つの機器は、1つまたは複数の粘度計であり得る。したがって、粘度を測定するための機器は、遠心分離機の上流に、すなわち遠心分離機の入口管に供給される燃料油の粘度を測定するために配置することができる。機器は補足としてまたは代替として、浄化した油相の粘度を測定するために遠心分離機の下流にさらに配置することができる。
【0051】
浄化すべき燃料油の温度を調整するための手段は、加熱器および/または熱交換器を含み得る。
【0052】
制御ユニットは、測定した粘度の情報に基づいて浄化すべき燃料油の温度を調整するように構成される。制御ユニットは、温度を調整するための手段と通信し、浄化すべき燃料油の粘度または浄化した油相の粘度を測定するための情報を少なくとも1つの機器から受信するためのプロセッサおよび入出力インターフェースを含み得る。
【0053】
本発明の第2の態様の実施形態においては、システムは浄化すべき燃料油の流速を調整するための手段をさらに含む。制御ユニットは浄化すべき燃料油の流速を調整するための手段への出力信号をさらに生成するようにさらに構成されてもよい。
【0054】
浄化すべき燃料油の流速を調整するための手段はポンプであってもよく、またはポンプを含んでもよい。
【0055】
ポンプなどの浄化すべき燃料油の流速を調整するための手段は、浄化すべき燃料油の粘度を測定するための少なくとも1つの機器と浄化すべき燃料油の温度を調整するための手段との両方の上流に配置することができる。
【0056】
本発明の第2の態様の実施形態においては、システムは、遠心分離機の下流に配置されて浄化した油相の流速を測定するための流速計をさらに含む。制御ユニットは流速計からの情報に基づいて浄化すべき燃料油の流速を調整するように構成される。したがって、流速計は、システムによって浄化した燃料油を使用するエンジンに入る浄化した油の流速を測定するように構成されてもよい。
【0057】
エンジンに入る燃料の流速を測定するように構成された流速計は、エンジンの燃料油消費量に関する情報を与え、したがってエンジン作業負荷の測定である。流速計は遠心分離機の下流に配置されている。したがって、モーターに入る燃料は、分離器からの浄化した油相に由来し得るが、例えば、エンジンで使用される前のタンクに貯蔵されていてもよい。したがって、システムは、遠心分離機の下流側にエンジンに供給される前に浄化すべき燃料油を貯蔵するためのバンカータンクなどをさらに備えてもよく、流速計はこのようなタンクの下流側に配置されてもよい。
【0058】
本システムは、浄化した油相中の触媒微粉の濃度を測定するためのセンサ、および/または浄化すべき燃料油中の触媒微粉の濃度を測定するためのセンサをさらに含むことができる。したがって、制御ユニットは、このようなセンサからの、またはいくつかのこのようなセンサからの情報に基づいて、浄化すべき燃料油の流速を調整するように構成することができる。制御ユニットは、浄化した油相中の触媒微粉の濃度および/または浄化すべき燃料油の濃度が上昇するという情報を受信した場合、浄化すべき燃料油の流速を減少させるように構成することができる。浄化した油相中の触媒微粉末の濃度および/または浄化すべき燃料油が減少するという情報を受信した場合には、浄化すべき燃料油の流速を増加させる。
【0059】
本発明の第2の態様の実施形態においては、システムは浄化すべき燃料油の粘度を測定するための少なくとも1つの機器を含み、この機器は浄化すべき燃料油の温度を調整する手段の下流に配置される。したがって、浄化すべき燃料油の温度を調整するための手段は、分離器の上流に、および浄化すべき燃料油の粘度を測定するための手段の上流に配置することができる。
【0060】
本システムは、遠心分離機に供給される前に洗化すべき燃料油を貯蔵するためのバンカータンクなどをさらに含むことができる。
【0061】
このシステムは、ディーゼルエンジンなどのエンジンも含むことができ、このエンジンでは、分離器からの浄化した油相が使用される。