特許第6987149号(P6987149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987149脱水素シリル化によるアリールアルコキシシランの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987149
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】脱水素シリル化によるアリールアルコキシシランの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20211213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
   C07F7/18 D
   C07F7/18 E
   C07F7/18 G
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-555221(P2019-555221)
(86)(22)【出願日】2018年3月23日
(65)【公表番号】特表2020-516623(P2020-516623A)
(43)【公表日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】US2018023915
(87)【国際公開番号】WO2018190999
(87)【国際公開日】20181018
【審査請求日】2021年3月9日
(31)【優先権主張番号】62/484,030
(32)【優先日】2017年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チョンウク
(72)【発明者】
【氏名】カツォリス、ディミトリス
(72)【発明者】
【氏名】リー、カンサン
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−520519(JP,A)
【文献】 特開昭57−109795(JP,A)
【文献】 特表2007−508304(JP,A)
【文献】 Science,2014年,Vol. 343, No. 6173,pp. 853-857
【文献】 Tetrahedron,2007年,Vol. 63, No. 19,pp. 4087-4094
【文献】 The Journal of organic chemistry,2015年,Vol. 80, No. 9,pp. 4661-4671
【文献】 Tetrahedron,2017年,Vol. 73, No. 29,pp. 4052-4061
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C07B 61/00
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発原料A)中のSi−H結合と出発原料B)中の芳香族炭素−水素結合との間の脱水素シリル化によってアリールアルコキシシランを形成する方法であって、
1)前記アリールアルコキシシランを形成するのに適した条件下で、
A)式
【化1】
[式中、各Rは、独立して、炭素原子1〜18個のアルキル基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜4個のアルキル基であり、下付き文字aは少なくとも1の平均値を有し、下付き文字bは1〜2の平均値を有し、下付き文字cは少なくとも1の平均値を有し、量(a+b+c)=4である]のアルコキシシランと、
B)炭素−水素結合を有する芳香族化合物と、
C)ロジウムビスホスホラン触媒と、
を含む出発原料を組み合わせる工程、を含む、形成方法。
【請求項2】
A)前記アルコキシシランが、式:
【化2】
[式中、各Rはメチル又はエチルであり、各Rはメチル又はエチルである]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
B)前記芳香族化合物が、式
【化3】
[式中、各Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロカルビルオキシ基であり、ただし、少なくとも1つのRは水素であり、Rのうちのいずれか2つは、それらが結合している任意の原子と共に、所望により互いに接合されて縮合環構造を形成する]を有する、あるいはB)前記芳香族化合物が、ベンゾジオキソール、3−メチルアニソール、m−キシレン、ベンゼン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、及び1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
B)前記芳香族化合物が、式
【化4】
[式中、各Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロカルビルオキシ基であり、Rは、硫黄、酸素及び式NR[式中、各Rは、水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基である]の窒素含有基から選択され、ただし、少なくとも1つのRは水素であり、Rのうちのいずれか2つは、それらが結合している任意の原子と共に、所望により互いに接合されて縮合環構造を形成する]を有する、あるいは、B)前記芳香族化合物が、メチルフラン、ベンゾフラン、メトキシベンゾフラン、フラン、チオフラン、及びメチルピロールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、工程1)の前及び/又は最中に、ビスホスホラン官能性を有さないロジウム前駆体と式
【化5】
[式中、Rは、二価炭化水素基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜12個の一価炭化水素基である]のビスホスホラン化合物とを組み合わせることによって、C)前記ロジウムビスホスホラン触媒を形成することを更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
C)前記ロジウムビスホスホラン触媒が、式:
【化6】
[式中、各Rは、二価炭化水素基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜12個の一価炭化水素基であり、各R10は、独立して、負に帯電している配位子である]を有する、あるいは、C)前記ロジウムビスホスホラン触媒が、
【化7】
[式中、Phはフェニル基を表す]からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
C)前記ロジウムビスホスホラン触媒が、式:
【化8】
[式中、各Rは、二価炭化水素基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜12個の一価炭化水素基であり、各R12は、独立して、アルケン又はシクロアルケンであり、各R11は、独立して、アニオンであり、下付き文字nは1〜2の値を有する]を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記出発原料が、D)水素受容体を更に含む、あるいは、前記出発原料が、D)を更に含み、前記水素受容体が、tert−ブチルエチレン、ヘプテン、ヘキセン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、又はノルボルネンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アリールアルコキシシランが、式:
【化9】
[式中、各Rは、独立して、出発原料A)から誘導されるアリール基であり、下付き文字e≧1である]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アリールアルコキシシランが、(i)フェニルジメチルエトキシシラン、(ii)キシリルジメチルエトキシシラン、(iii)3−メトキシ−5−メチルフェニルジメチルエトキシシラン、(iv)フェニルメチルジエトキシシラン、(v)フルオロフェニルジメチルエトキシシラン、(vi)3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルジメチルエトキシシラン、(vii)1,3−ベンゾジオキソールジメチルエトキシシラン、(viii)クロロフェニルジメチルエトキシシラン、(ix)ブロモフェニルジメチルエトキシシラン、及び(ix)フェニルジメチルメトキシシランからなる群から選択される、請求項3又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記アリールアルコキシシランが、(i)2−(エトキシジメチルシリル)−1−メチル−1H−ピロール、(ii)2−(エトキシジメチルシリル)フラン、(iii)2−(エトキシジメチルシリル)チオフェン、(iv)1−メチル−2−(エトキシジメチルシリル)−1H−インドール、(v)2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、(vi)5−メトキシ−2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、(vii)2−(ジエトキシメチルシリル)ベンゾフラン、(viii)2−(メトキシジメチルシリル)フラン、(ix)2−(エトキシジメチルシリル)−5−メチルフラン、(x)2,5−ビス(エトキシジメチルシリル)フラン、及び(xi)2−(ジエトキシメチル)−5−メチルフランからなる群から選択される、請求項4又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2017年4月11日出願の米国特許仮出願第62/484030号の利益を主張する。米国特許仮出願第62/484030号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
アリールアルコキシシランを調製する方法は、ケイ素結合水素原子を有するアルコキシシランと炭素−水素結合を有する芳香族化合物との間の脱水素シリル化を伴う。ロジウムビスホスホラン(rhodium bisphospholane)触媒が、本方法で使用される。
【背景技術】
【0003】
アリール基を有するシランは、高温樹脂、コーティング、塗料添加剤、ポンプ作動液、透明封止材、及び/又は化粧料成分などの様々な用途のためのポリオルガノシロキサンポリマーの製造に有用である。現在、アリール官能性シランの工業的製造方法は、グリニャール法を伴う場合があり、これにより望ましくない無機塩副生成物(MgClなど)を生成し、効率が悪いことがある。あるいは、疑似Friedel−Craft法を使用してアリール官能性シランを調製できるが、この方法は、高温及び高圧を必要とし、低収率という更なる欠点をもつ場合がある。あるいは、銅触媒の存在下でのハロゲン化アリールとケイ素金属との直接合成反応を使用して、アリール官能性シランを調製することができるが、この方法は、望ましくない過塩素化ビフェニル化合物を生成するという欠点をもつ場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、収率を向上させ、かつ/又は副生成物の生成を最小限に抑えながら、アリールシランを生成するための、コスト及びエネルギーが比較的低い効率的な方法が業界で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アリールアルコキシシランの形成方法が本明細書に開示される。本方法は、
1)アリールアルコキシシランを形成するのに適した条件下で、
A)式
【化1】
[式中、各Rは、独立して、炭素原子1〜18個のアルキル基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜4個のアルキル基であり、下付き文字aは少なくとも1の平均値を有し、下付き文字bは1〜2の平均値を有し、下付き文字cは少なくとも1の平均値を有し、量(a+b+c)=4である]のアルコキシシランと、
B)炭素−水素結合を有する芳香族化合物と、
C)ロジウムビスホスホラン触媒と、
を含む出発原料を組み合わせる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
上記の方法では、工程1)の前及び/又は最中に、1つ以上の追加の出発原料を添加してもよい。所望により、D)水素受容体及び/又はE)溶媒を、工程1)の最中に添加してもよい。上記の方法は、2)アリールアルコキシシランを回収する工程、を更に含んでもよい。方法の工程1)及び2)は、任意の都合の良い手段によって実施されてもよい。例えば、工程1)は、出発原料を50℃〜150℃、あるいは80℃〜100℃の温度で加熱することによって実施されてもよい。工程2)は、ストリッピング及び/又は蒸留によって実施されてもよい。
【0007】
上記の方法で使用される出発原料A)は、1分子当たり少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するアルコキシシランである。アルコキシシランは、式
【化2】
[式中、各Rは、独立して、1〜18個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜4個のアルキル基であり、下付き文字aは少なくとも1の平均値を有し、下付き文字bは1〜2の平均値を有し、下付き文字cは少なくとも1の平均値を有し、量(a+b+c)=4である]を有する。アルキル基は、以下に定義されるとおりである。R及びRのアルキル基は、メチル及びエチルによって例示される。あるいは、各Rはメチルである。あるいは、各Rはエチルである。あるいは、下付き文字a=1、下付き文字b=1又は2、及び下付き文字c=1又は2である。あるいは、下付き文字a=1、下付き文字b=2、及び下付き文字c=1である。あるいは、下付き文字a=1、下付き文字b=1、及び下付き文字c=2である。あるいは、アルコキシシランは、
A1)
【化3】
又は式A2)
【化4】
[式中、各Rはメチル又はエチルであり、各Rはメチル又はエチルである]から選択される式を有してもよい。出発原料A)に好適なアルコキシシランの例としては、ジメチルエトキシシラン(HMeSiOEt)、メチルジエトキシシラン(HMeSi(OEt))、又はジメチルメトキシシラン(HMeSiOMe)、ジエチルメトキシシラン(HEtSiOMe)、又はエチルジメトキシシラン(HEtSi(OMe))が挙げられる。
【0008】
本明細書に記載の方法での使用に好適な芳香族化合物は、少なくとも1つの炭素−水素(C−H)結合を有し、この炭素原子は芳香族化合物の環内にある。好適な芳香族化合物は、アリール基又はヘテロアリール基を有してもよい。出発原料B)に好適な芳香族化合物としては、6員環(例えば、6員アリール環)を含む芳香族化合物、及び5員環(例えば、5員ヘテロアリール環)を含む芳香族化合物が挙げられる。6員環を含む好適な芳香族化合物は、式B1):
【化5】
[式中、各Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(以下に定義及び例示される)、ハロゲン化アルキル基(以下に定義及び例示される)、及びヒドロカルビルオキシ基であり、ただし、少なくとも1つのRは水素であり、Rのうちのいずれか2つは、それらが結合している任意の原子と共に、所望により互いに接合されて縮合環構造を形成する]を有し得る。Rに好適なハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、又は臭素(Br)が挙げられる。Rに好適なアルキル基は、1〜4個の炭素原子(例えば、メチル又はエチル)を有し得る。Rに好適なハロゲン化アルキル基は、1〜4個の炭素原子(例えば、CF)を有し得る。好適なヒドロカルビルオキシ基Rは、炭素原子1〜4個のアルコキシ基(例えば、OCH)又は炭素原子5〜12個のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ)であってもよい。あるいは、Rのうちの2つは、それらが結合している任意の原子と共に、互いに接合されて、縮合環構造を形成してもよい。式B1)の例示的な芳香族化合物としては、ベンゾジオキソール、3−メチルアニソール、m−キシレン、ベンゼン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、及び1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0009】
5員環を含む好適な芳香族化合物は、式B2):
【化6】
[式中、各Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(以下に定義及び例示される)、ハロゲン化アルキル基(以下に定義及び例示される)、及びヒドロカルビルオキシ基であり、Rは、硫黄、酸素及び式NR[式中、各Rは、水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基である]の窒素含有基から選択され、ただし、少なくとも1つのRは水素であり、Rのうちのいずれか2つは、それらが結合している任意の原子と共に、所望により互いに接合されて縮合環構造を形成する]を有し得る。Rに好適なハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、又は臭素(Br)が挙げられる。Rに好適なアルキル基は、1〜4個の炭素原子(例えば、メチル又はエチル)を有し得る。Rに好適なハロゲン化アルキル基は、1〜4個の炭素原子(例えば、CF)を有し得る。好適なヒドロカルビルオキシ基Rは、炭素原子1〜4個のアルコキシ基(例えば、OCH)又は炭素原子5〜12個のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ)であってもよい。Rに好適なアルキル基としては、メチルが挙げられる。あるいは、各Rは、式NR[式中、各Rは、水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基である]の窒素含有基であってもよい。あるいは、各Rは酸素原子であってもよく、ただし、少なくとも1つのR4は水素原子ではない。あるいは、Rは酸素原子であってもよく、Rのうちの2つは、それらが結合している任意の原子と共に、互いに接合されて縮合環構造を形成する。式B2)の例示的な芳香族化合物としては、メチルフラン、ベンゾフラン、メトキシベンゾフラン、フラン、チオフラン、及びメチルピロール、及びメチルインドールが挙げられる。
【0010】
出発原料A)及びB)を、工程1)において、出発原料B)の出発原料A)に対する相対量(B:A比)が0.1:1〜100:1モル当量で組み合わせる。あるいは、B:A比は、1.2:1〜10:1であってよい。
【0011】
本明細書に記載の方法で使用される出発原料C)は、ロジウムビスホスホラン化合物である。出発原料C)としての使用に好適なロジウムビスホスホラン化合物は、当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、以下の表1に示されるロジウムビスホスホラン化合物は、Aldrichから入手可能である。
【表1】
【0012】
あるいは、方法は、ビスホスホラン官能性を有さないロジウム金属前駆体とビスホスホラン化合物とを組み合わせることを含む方法によって、出発原料C)のためのロジウムビスホスホラン触媒を形成することを更に含んでもよい。この方法では、触媒の形成を促進するために、テトラヒドロフランなどの有機溶媒を添加してもよい。ロジウム金属前駆体、ビスホスホラン化合物、及び所望により溶媒を含む出発原料を組み合わせることは、室温で混合する、又は出発原料を混合することによって調製される混合物の沸点以下の温度まで加熱するなどの任意の都合の良い手段によって実施されてもよい。例示的なロジウム金属前駆体は、[Rh(R1210又は[Rh(R12]+R11−[式中、各R12は、独立して、アルケン又はジエンであり、各R10は、負に帯電している配位子であり、各R11は、アニオンであり、下付き文字nは1又は2である]から選択される式を有してもよい。R12のアルケンの例としては、エチレン、シクロオクテン(例えば、cis−シクロオクテン)又は1−オクテンが挙げられる。R12のジエンの例としては、1,5−シクロオクタジエン又は2,5−ノルボルナジエン又は1,5−ヘキサジエンが挙げられる。あるいは、R12は、1,5−シクロオクタジエン及び2,5−ノルボルナジエンから選択されてもよい。R10の負に帯電している配位子の例としては、Cl又はBrなどのハロゲン原子、ヒドロキシル基、メトキシなどの炭素原子1〜4個のアルコキシ基、又は水素原子が挙げられる。あるいは、R10は、Cl、OH、OCH、及びHから選択されてもよい。R11に好適なアニオンの例としては、パークロレート、トリフルオロメチルスルホネート、テトラフルオロボレート(BF)、テトラキスフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、[Al(C(CF]−、[HCB11MeBr]−などのカルボラン[式中、Meはメチルを表す]が挙げられる。あるいは、R11のアニオンは、BF又はPFであってもよい。例示的なロジウム金属前駆体は、Sigma−Aldrich Inc.又はStrem Chemicals Inc.から市販されており、例えば、ジ−μ−クロロテトラエチレンジロジウム(I)、ヒドロキシ(シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体、及びロジウムビス(ノルボルナジエン)テトラフルオロボレートが挙げられる。
【0013】
ビスホスホラン化合物は、式
【化7】
[式中、Rは、二価炭化水素基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜12個の一価炭化水素基である]を有してもよい。Rの二価炭化水素基は、以下に定義されるとおりであり、アルキレン又はアリーレンであってもよい。好適なアルキレンとしては、エチレンが挙げられる。好適なアリーレンとしては、オルト−フェニレンが挙げられる。Rに好適な一価炭化水素基としては、アルキル基及びアリール基が挙げられる。好適なアルキル基は、以下に定義されるとおりであり、メチル、エチル又はプロピル(例えば、イソプロピル)などである。好適なアリール基は、以下に定義されるとおりであり、フェニルなどである。ホスホラン化合物は、例えば、Sigma−Aldrich,Inc.又はStrem Chemicalsから市販されている。例示的なホスホラン化合物を表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0014】
ロジウム金属前駆体及びビスホスホラン化合物は、ビスホスホラン化合物:ロジウム金属のモル比が0.5:1〜3:1、あるいは0.8:1〜1.5:1となるのに十分な相対量で存在する。
【0015】
あるいは、ロジウムビスホスホラン触媒は、式:
【化8】
[式中、上記のように、各Rは、二価炭化水素基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜12個の一価炭化水素基である]を有してもよい。この式のロジウムビスホスホラン触媒は、
【化9】
[式中、Phはフェニル基を表す]で例示される。このような触媒は、ヒドロキシ(シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体などのロジウム金属前駆体と、(−)−1,2−ビス((2R,5R)−2,5−ジフェニルホスホラノ)エタンなどのビスホスホラン化合物とを反応させることによって調製できる。
【0016】
あるいは、ロジウムビスホスホラン触媒は、式:
【化10】
[式中、R、R、R11、R12及び下付き文字nは、上記のとおりである]を有してもよい。
【0017】
出発原料D)水素受容体を、本明細書に記載の方法の工程1)の最中に所望により添加してもよい。例示的な水素受容体としては、tert−ブチルエチレン、ヘプテン、又はヘキセンなどのアルケン;並びにシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、又はノルボルネンなどのシクロアルケンが挙げられる。水素受容体は、出発原料A)の量を基準とした水素受容体のモル当量(D:A比)が0〜10:1の量で添加されてもよい。あるいは、D:A比は、1.2:1〜2:1であってもよい。
【0018】
好適な溶媒としては、炭化水素溶媒及び/又はエーテルが挙げられる。好適な炭化水素溶媒の例としては、ヘキサン及び/又はペンタンが挙げられる。好適なエーテルの例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテルが挙げられ、及び/又は1,2−ジメトキシエタンを使用できる。溶媒の量は、出発原料A)の重量を基準にして0〜100部、あるいは0〜10部であってもよい。
【0019】
上記の方法は、アリールアルコキシシランを含む反応生成物を生成する。アリールアルコキシシランは、式:
【化11】
[式中、R及びR、並びに下付き文字b及びcは、上記のとおりである]を有する。各Rは、独立して、出発原料B)から誘導される芳香族基(例えば、アリール又はヘテロアリール基)であり、下付き文字e≧1である。あるいは、下付き文字eは1〜2である。あるいは、下付き文字e=1である。あるいは、下付き文字e=2である。上記の方法では、芳香族化合物が式B1)を有する場合、アリールアルコキシシランは、(i)フェニルジメチルエトキシシラン、(ii)キシリルジメチルエトキシシラン、(iii)3−メトキシ−5−メチルフェニルジメチルエトキシシラン、(iv)フェニルメチルジエトキシシラン、(v)フルオロフェニルジメチルエトキシシラン、(vi)3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルジメチルエトキシシラン、(vii)1,3−ベンゾジオキソールジメチルエトキシシラン、(viii)クロロフェニルジメチルエトキシシラン、(ix)ブロモフェニルジメチルエトキシシラン、及び(ix)フェニルジメチルメトキシシランによって例示される。
あるいは、芳香族化合物が式B2)を有する場合、上記のように、アリールアルコキシシランは、(i)2−(エトキシジメチルシリル)−1−メチル−1H−ピロール、(ii)2−(エトキシジメチルシリル)フラン、(iii)2−(エトキシジメチルシリル)チオフェン、(iv)1−メチル−2−(エトキシジメチルシリル)−1H−インドール、(v)2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、(vi)5−メトキシ−2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、(vii)2−(ジエトキシメチルシリル)ベンゾフラン、(viii)2−(メトキシジメチルシリル)フラン、(ix)2−(エトキシジメチルシリル)−5−メチルフラン、(x)2,5−ビス(エトキシジメチルシリル)フラン、及び(xi)2−(ジエトキシメチル)−5−メチルフランによって例示される。あるいは、アリールアルコキシシランは、2−(エトキシジメチルシリル)−1−メチル−1H−ピロール及び1−メチル−2−(エトキシジメチルシリル)−1H−インドールからなる群から選択されてもよい。あるいは、アリールアルコキシシランは、2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、5−メトキシ−2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、2−(ジエトキシメチルシリル)ベンゾフラン、2−(エトキシジメチルシリル)−5−メチルフラン、2,5−ビス(エトキシジメチルシリル)フラン、及び2−(ジエトキシメチル)−5−メチルフランからなる群から選択されてもよい。
【0020】
あるいは、式:
【化12】
のアリールアルコキシシランにおいて、各Rは、独立して、炭素原子1〜18個のアルキル基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜4個のアルキル基であり、下付き文字bは1〜2の平均値を有し、下付き文字cは少なくとも1の平均値を有し、ただし、量(b+c)=3、下付き文字e≧1であり、各Rは、ピロリル基又はインドリル基である。あるいは、各Rは、1〜12個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子を有し、あるいは各Rはメチル又はエチルである。あるいは、各Rは、1〜12個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子を有し、あるいは各Rはメチル又はエチルである。あるいは、各Rは、1−メチル−1H−ピロール基又は1−メチル−1H−インドール基である。この式のアリールアルコキシシランとしては、2−(エトキシジメチルシリル)−1−メチル−1H−ピロール及び1−メチル−2−(エトキシジメチルシリル)−1H−インドールが挙げられる。
【0021】
あるいは、式:
【化13】
のアリールアルコキシシランにおいて、各Rは、独立して、炭素原子1〜18個のアルキル基であり、各Rは、独立して、炭素原子1〜4個のアルキル基であり、下付き文字bは1〜2の平均値を有し、下付き文字cは少なくとも1の平均値を有し、ただし、量(b+c)=3、下付き文字e≧1であり、各Rは、置換フリル基、すなわち、1個の炭素原子が上記式に示されるケイ素原子に結合し、環内の少なくとも1つの他の炭素原子が水素以外の置換基に結合しているフリル基である。すなわち、上記式B2)の芳香族化合物において、少なくとも1つのRは水素原子ではなく、及び/又はRのうちの2つは、それらが結合している任意の原子と共に、互いに接合されて縮合環構造を形成する。あるいは、この式において、Rは、ベンゾフラン、5−メチルフラン、及び5−メトキシベンゾフランからなる群から選択される。この実施形態では、アリールアルコキシシランは、2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、5−メトキシ−2−(エトキシジメチルシリル)ベンゾフラン、2−(ジエトキシメチルシリル)ベンゾフラン、2−(エトキシジメチルシリル)−5−メチルフラン、2,5−ビス(エトキシジメチルシリル)フラン、及び2−(ジエトキシメチル)−5−メチルフランからなる群から選択される。
【実施例】
【0022】
これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明することを意図しており、本特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するかのように解釈してはならない。空気の影響を受けやすい材料はすべて、アルゴン又は窒素雰囲気下で取り扱った。THFを2つの連続する活性アルミナカラムで乾燥させ、モレキュラーシーブ下で保管した。他の市販の化学物質は、受領した状態のまま使用した。NMR分析又はGC−Ms分析に基づいて転化率を算出した。
【表3】
【0023】
この参考例1に従って[(Ph−BPE)Rh(μ−Cl)]を調製した。[Rh(エチレン)Cl](156mg、0.4mmol)のTHF溶液に、(−)−1,2−ビス((2R,5R)−2,5−ジフェニルホスホラノ)エタン((R,R)−Ph−BPE)のTHF(400mg、0.79mol)溶液をゆっくりと添加した。室温で3時間撹拌した後、反応混合物の濾過により、濃橙色の溶液が得られた。真空下で揮発物を除去し、続いてヘキサンでトリチュレートして、黄色がかった橙色の固体を得た。ヘキサンをベンゼン溶液に積層することで生成物を再結晶化して、[(Ph−BPE)Rh(μ−Cl)]を橙色結晶として得た。
【化14】
H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.98(d,8H,J=7.4Hz),7.43(t,8H,J=6.8Hz),7.35−7.31(m,4H),7.16−7.01(m,20H),4.41−3.35(m,4H),2.59−2.52(m,4H),2.46−2.36(m,4H),2.03−1.84(m,8H),1.63−1.53(m,4H),0.50−0.26(m,8H)。31P NMR(CDCl):δ 106.0,104.8。
【0024】
[(Ph−BPE)Rh(μ−H)(μ−Cl)Rh(Ph−BPE)]を、この参考例2に従って調製した。参考例1で調製した[(Ph−BPE)Rh(μ−Cl)](260mg、0.2mmol)のベンゼン溶液(10mL)に、HMeSi(OEt)(2.8mL)を添加した。100℃で10時間撹拌した後、揮発物を真空下で除去した。ヘキサンをベンゼン溶液に積層することで生成物を再結晶化して、[(Ph−BPE)Rh(μ−H)(μ−Cl)Rh(Ph−BPE)]を橙色結晶として得た。
【化15】
H NMR(400MHz,CDCl):δ 8.02(d,8.0Hz,4H,Ph),7.93(d,8.0Hz,4H,Ph),7.51(t,7.6Hz,4H,Ph),7.37(t,7.4Hz,2H,Ph),6.95−7.23(m,22H,Ph),6.93(t,7.4Hz,4H,Ph),4.57(m,2H),4.06(m,2H),2.81(m,2H),2.64(m,2H),2.49(m,2H),2.35(m,2H),1.85−2.14(m,8H),1.71(br q,4H),0.80−0.95(br m,4H),0.01(m,4H),−7.91(br m,1H,RhH).31P NMR(161.84MHz,CDCl):δ 103.8(m),102.6(m),99.9(m),98.8(m)。
【0025】
この実施例1では、フェニルジメチルエトキシシラン
【化16】
を以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[(Ph−BPE)Rh(μ−Cl)](6.5mg、0.5mol%)、ベンゼン(1mL)、及びシクロヘキセン(99mg、1.2当量)を入れた。100℃で1時間撹拌した後、反応混合物をRTまで冷却した。この混合物に、HSiMe(OEt)(104mg、1mmol)を添加した。反応混合物を100℃で20時間撹拌した(転化率>98%、H NMRによる収率94%)。得られた混合物を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物PhMeSi(OEt)を無色の液体として得た(88mg、収率49%)。生成物はシリカゲルで分解されることに注意する。低沸点(<110℃)を有するアレンの場合、以下のワークアップ手順の後に清浄な生成物を得ることができる:粗混合物の蒸発、ヘキサン中の残留物の溶解、セライトのプラグを通した濾過、及び濾液の濃縮。H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.61−7.58(m,2H),7.41−7.35(m,3H),3.68(q,2H,J=7.0Hz),1.19(t,3H,J=7.0Hz),0.39(s,6H)29Si NMR(79.4MHz,CDCl):δ 7.0
【0026】
この比較例1では、HSiMe(OEt)を用いたRh/ビス(ビアリールホスフィン)触媒C−Hシリル化を実施した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[Rh(cod)OH](2.3mg、0.005mol)、式
【化17】
の(R)−(+)−2,2’−ビス[ジ(3,4,5−トリメトキシフェニル)フェニル]ホスフィノ]−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(12.7mg、0.011mmol)及びベンゼン(1mL)を入れた。この混合物に、HSiMe(OEt)(104mg、1mmol)及びシクロヘキセン(99mg、1.2当量)を添加した。反応混合物を80℃で20時間撹拌し、粗生成物混合物を分析した。PhMeSi(OEt):収率<1%(GC−Msによる)。
【0027】
この実施例2では、フェニルジメチルエトキシシラン、PhMeSi(OEt)を以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[Rh(cod)(OH)](4.6mg、0.01mmol)及び(S,S)−i−Pr−BPE(7.4mg、0.02mmol)を入れた。ベンゼン(1mL)、HMeSi(OEt)(104mg、1mmol)及びシクロヘキセン(1.1mmol)をバイアル瓶に添加した。反応混合物を80℃で24時間撹拌した。GC−Ms分析は、HMeSi(OEt)が完全に消失したことを示す。H NMR及びGC−Ms分析により、PhMeSi(OEt)の形成が確認される(GC−Ms収率:85%)。この実施例は、ロジウム前駆体とビスホスホラン配位子との反応によって、触媒がその場で形成され得ることを示す。
【0028】
この実施例3では、次のようにして、式
【化18】
のキシリルジメチルエトキシシランを調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[Rh(cod)(OH)](4.6mg、0.01mmol)及び(S,S)−i−Pr−BPE(7.4mg、0.02mmol)を入れた。m−キシレン(1mL)、HMeSi(OEt)(104mg、1mmol)及びシクロヘキセン(1.1mmol)をバイアル瓶に添加した。反応混合物を80℃で24時間撹拌した(GC−Ms収率:38%)。得られた混合物を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を無色の液体として得た。29Si NMR(79.4MHz,CDCl):δ 7.2(s)H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.19(br,2H,キシリル),7.04(br,1H,キシリル),3.68(q,6.9Hz,2H,OCHCH),2.33(s,CH−Ph),1.19(t,7.0Hz,3H,OCHCH),0.36(s,6H,CHSi)。
【0029】
この実施例4では、式
【化19】
の3−メトキシ−5−メチルフェニルジメチルエトキシシランを以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶内で、[Rh(cod)(OH)](4.6mg、0.01mmol)と(S,S)−i−Pr−BPE(7.4mg、0.02mmol)の混合物を調製した。3−メチルアニソール(1mL)、HMeSi(OEt)(1mmol、0.14mL)及びシクロヘキセン(1.1mmol)をバイアル瓶に添加した。反応混合物を80℃で24時間撹拌した。GC−Ms分析により、(3−メトキシ−5−メチルフェニル)MeSi(OEt)の形成が確認される(GC−Ms収率:67%)。
【0030】
この実施例5では、式
【化20】
のフェニルメチルジエトキシシランを以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[Rh(cod)(OH)](4.6mg、0.01mmol)及び(S,S)−i−Pr−BPE(7.4mg、0.02mmol)を入れた。ベンゼン(1mL)、HMeSi(OEt)(134mg、1mmol)及びシクロヘキセン(1.1mmol)をバイアル瓶に添加した。反応混合物を80℃で24時間撹拌した。GC−Ms分析により、PhMeSi(OEt)の形成が確認される(GC−Ms収率:20%)。
【0031】
参考例3−[(Ph−BPE)Rh(μ−Cl)]を用いて調製したアリール官能性アルコキシシラン
実施例6〜20は、以下の手順を用いて実施した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[(Ph−BPE)Rh(μ−Cl)](6.5mg、0.5mol%)、芳香族化合物(0.5mL又は1mL)、及びシクロヘキセン(99mg、1.2当量)を入れた。100℃で1時間撹拌した後、反応混合物をRTまで冷却した。この混合物に、ある量のアルコキシシランを添加した。反応混合物を100℃で20時間撹拌した。得られた生成物をH NMRにより評価した。使用した芳香族化合物及びシクロヘキセンの添加の有無を、以下の表4に示す。H NMRの結果を表5に示す。
【表4】
【表5-1】
【表5-2】
【0032】
実施例19では、生成物を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した後でNMR分析を実施した。追加のNMR分析も実施した:13C NMR(100MHz,CDCl):δ 157.5,146.9,121.0,109.3,50.7,−2.7;29Si NMR:0.6(s)。
【0033】
この実施例21では、式
【化21】
の2−(エトキシジメチルシリル)−5−メチルフランを以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[(Ph−BPE)Rh(μ−H)(μ−Cl)Rh(Ph−BPE)](6.3mg、0.5mol%)を入れた。2−メチルフラン(1mL)、HMeSi(OEt)(0.14mL、1mmol)及びシクロヘキセン(1.1mmol)をバイアル瓶に添加した。反応混合物を80℃で20時間撹拌した。H NMR分析により、標的化合物の生成が確認される(NMR収率:95%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ 6.63(m,1H,フリル),5.98(m,1H,フリル),3.70(q,7.1Hz,2H,OCHCH),2.33(dd,3H,CH−フリル),1.18(t,7.0Hz,3H,OCHCH),0.36(s,6H,Si(CH29Si NMR(79.4MHz,CDCl):δ−2.4(s)
【0034】
この実施例22では、式
【化22】
の2,5−ビス(エトキシジメチルシリル)フランを以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[(Ph−BPE)Rh(μ−H)(μ−Cl)Rh(Ph−BPE)](6.3mg、0.5mol%)を入れた。フラン(1mL)、HMeSi(OEt)(1mmol)及びシクロヘキセン(1.1mmol)をバイアル瓶に添加した。反応混合物を80℃で20時間撹拌した。揮発物を真空下で除去した。生成物混合物に、HMeSi(OEt)(1mmol)、THF(0.1mL)及びシクロヘキセン(1.1mmol)を添加し、80℃で20時間撹拌した。揮発物を除去して黄色の液体を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 6.73(s,2H,フリル),3.70(q,6.9Hz,4H,OCHCH),1.16(t,7.0Hz,6H,OCHCH),0.38(s,12H,SiCH13C NMR(100MHz,CDCl):δ 162.9(s),120.5(s),59.1(s),−1.84(s)29Si NMR(79.4MHz,CDCl):δ−1.8(s)
【0035】
この実施例23では、式
【化23】
の2−(ジエトキシメチル)−5−メチルフランを以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[(Ph−BPE)Rh(μ−H)(μ−Cl)Rh(Ph−BPE)](6.3mg、0.5mol%)を入れた。2−メチルフラン(1mL)、HMeSi(OEt)(134mg、1mmol)及びシクロヘキセン(1.1mmol)をバイアル瓶に添加した。反応混合物を100℃で20時間撹拌した。H NMR分析により、標的化合物の生成が確認される(NMR収率:93%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ 6.71(dq,2.8Hz及び0.4Hz,1H,フリル),5.98(dq,3.2Hz及び1.1Hz,1H,フリル),3.84(q,7.1Hz,4H,OCHCH),2.33(m,3H,CH−フリル),1.24(t,7.0Hz,6H,OCHCH),0.34(s,3H,SiCH13C NMR(100MHz,CDCl):δ 157.3(s),123.4(s),59.1(s),105.8(s),59.0(s),18.4(s),13.9(s),−3.8(s)29Si NMR(79.4MHz,CDCl):δ−26.3(s)
【0036】
この実施例24では、式
【化24】
のフェニルジメチルエトキシシランを以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に[Rh(nbd)BF](7.5mg、2mol%)、(S,S)−Ph−BPE(11mg、2.2mol%)、ベンゼン(1mL)、及びシクロヘキセン(99mg、1.2当量)を入れた。100℃で1時間撹拌した後、反応混合物をRTまで冷却した。この混合物に、HSiMe(OEt)(104mg、1mmol)を添加した。反応混合物を100℃で20時間撹拌した(H NMRによる収率27%)。
【0037】
この実施例25では、式
【化25】
のフェニルジメチルエトキシシランを以下のように調製した。オーブン乾燥したバイアル瓶に、[Rh(i−Pr−DuPhos)cod]BF(14mg、2mol%)、ベンゼン(1mL)、及びシクロヘキセン(99mg、1.2当量)を入れた。80℃で1時間撹拌した後、反応混合物をRTまで冷却した。この混合物に、HSiMe(OEt)(104mg、1mmol)を添加した。反応混合物を80℃で20時間撹拌した(H NMRによる収率9%)。
【0038】
(産業上の利用可能性)
上記の実施例は、本明細書に記載の脱水素シリル化法を使用して、様々なアリールアルコキシシランを生成することができることを示す。ロジウムビスホスホラン触媒は、ケイ素結合水素原子を有するアルコキシシランを、アリールアルコキシシランを調製するための出発原料として使用できるという利点を提供し得る。出発原料及び生成物は、ケイ素に結合している少なくとも1つのアルコキシ基を含有するため、この方法によって生成されるアリールアルコキシシランは、例えば、ケイ素結合水素原子又はケイ素結合加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンと反応性である。本明細書に記載の方法によって生成されるアリールアルコキシシランは、このようなポリオルガノシロキサンの末端封鎖剤として有用となり得る。
【0039】
用語の定義及び使用
全ての量、比率、及び百分率は、特に断りのない限り、重量に基づく。冠詞「a」、「an」、及び「the」はそれぞれ、別途記載のない限り、1つ又はそれ以上を指す。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0〜4.0の範囲の開示は、2.0〜4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0〜4.0の範囲の開示は、例えば、2.1〜3.5、2.3〜3.4、2.6〜3.7、及び3.8〜4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び部分集合も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される下位群を含む。
【0040】
「アルキル」とは、一価の飽和炭化水素基を意味する。アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソ−プロピル及び/又はn−プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n−ブチル、tert−ブチル及び/又はsec−ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert−ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシル、並びに6個以上の炭素原子の一価の分枝状飽和炭化水素基が例示されるが、これらに限定されない。
【0041】
「アルケニル」とは、二重結合を含有する一価炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、エテニル、プロペニル(例えば、イソ−プロペニル及び/又はn−プロペニル)、ブテニル(例えば、イソブテニル、n−ブテニル、tert−ブテニル及び/又はsec−ブテニル)、ペンテニル(例えば、イソペンテニル、n−ペンテニル及び/又はtert−ペンテニル)、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル及びデセニル、並びにそのような6個以上の炭素原子の分枝鎖基が例示されるが、これらに限定されない。
【0042】
「アルキニル」とは、三重結合を含有する一価炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、エチニル、プロピニル(例えば、イソ−プロピニル及び/又はn−プロピニル)、ブチニル(例えば、イソブチニル、n−ブチニル、tert−ブチニル及び/又はsec−ブチニル)、ペンチニル(例えば、イソペンチニル、n−ペンチニル及び/又はtert−ペンチニル)、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル及びデシニル、並びにそのような6個以上の炭素原子の分枝鎖基が例示されるが、これらに限定されない。
【0043】
「アリール」とは、完全に不飽和の環状炭化水素基を意味する。アリールは、シクロペンタジエニル、フェニル、アントラセニル及びナフチルにより例示されるが、これらに限定されない。単環式アリール基は、5〜9個の炭素原子、あるいは6〜7個の炭素原子、あるいは5〜6個の炭素原子を有し得る。多環式アリール基は、10〜18個の炭素原子、あるいは10〜14個の炭素原子、あるいは12〜14個の炭素原子を有し得る。
【0044】
「アラルキル」とは、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を意味する。例示的なアラルキル基としては、トリル、キシリル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル及びフェニルブチルが挙げられる。
【0045】
「炭素環」及び「炭素環式」とは、それぞれ、炭化水素環を意味する。炭素環は、単環式環であってよく、あるいは縮合、架橋又はスピロ多環式環であってよい。単環式炭素環は、3〜9個の炭素原子、あるいは4〜7個の炭素原子、あるいは5〜6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7〜18個の炭素原子、あるいは7〜14個の炭素原子、あるいは9〜10個の炭素原子を有し得る。炭素環は、飽和又は部分的に不飽和であってよい。
【0046】
「シクロアルキル」とは、飽和炭素環を意味する。単環式シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルにより例示される。
【0047】
総称的に、用語「一価炭化水素基」は、上に定義される、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、及び炭素環式基を含む。
【0048】
「二価炭化水素基」としては、エチレン、プロピレン(イソプロピレン及びn−プロピレンを含む)及びブチレン(n−ブチレン、t−ブチレン及びイソブチレンを含む)などのアルキレン基;並びにペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、並びにこれらの分枝状及び直鎖状異性体;フェニレンなどのアリーレン基、例えば、オルト−フェニレン;並びに
【化26】
などのアルカラルキレン(alkaralkylene)基が挙げられる。
あるいは、各二価炭化水素基は、エチレン、プロピレン、ブチレン又はヘキシレンであり得る。あるいは、各二価炭化水素基は、エチレン又はプロピレンであり得る。
【0049】
「ハロゲン化炭化水素」とは、上に定義される炭化水素基であって、炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が形式的にハロゲン原子に置換されている、炭化水素基を意味する。例えば、一価ハロゲン化炭化水素基は、炭素原子に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されている、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル及び炭素環式基のいずれか1つであり得る。一価ハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロゲン化アルケニル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル(CF)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2−フルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3−へプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシル及び8,8,8,7,7−ペンタフルオロオクチルなどのフッ素化アルキル基、並びにクロロメチル及び3−クロロプロピルなどの塩素化アルキル基が挙げられる。ハロゲン化炭素環式基としては、2,2−ジフルオロシクロプロピル、2,3−ジフルオロシクロブチル、3,4−ジフルオロシクロヘキシル及び3,4−ジフルオロ−5−メチルシクロヘプチルなどのフッ素化シクロアルキル基;並びに、2,2−ジクロロシクロプロピル、2,3−ジクロロシクロペンチルなどの塩素化シクロアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルケニル基としては、クロロアリルが挙げられる。
【0050】
「複素環」及び「複素環式」は、炭素原子から構成され、1個以上のヘテロ原子を環の中に有する環式基を指す。へテロ原子は、N、O、P、S、又はこれらの組み合わせであってもよい。複素環は、単環式であってもよく、あるいは縮合環、架橋環、又はスピロ多環式環であってもよい。単環式複素環は、環内に3〜9個の構成原子、あるいは4〜7個の構成原子、あるいは5〜6個の構成原子を有し得る。多環式複素環は、7〜17個の構成原子、あるいは7〜14個の構成原子、あるいは9〜10個の構成原子を有し得る。複素環は、飽和であっても部分的に不飽和であってもよい。「ヘテロアリール基」は、環内に炭素原子及び1個以上のへテロ原子を含む完全に不飽和の環式基を意味する。
【0051】
「芳香族化合物」は、アリール基を有する化合物及び/又はヘテロアリール基を有する化合物を指す。