特許第6987151号(P6987151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987151プランジャ構成および収束傾斜面を有する注射器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987151
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】プランジャ構成および収束傾斜面を有する注射器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20211213BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20211213BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61M5/315 500
   A61M5/20
   A61M5/24 500
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-555880(P2019-555880)
(86)(22)【出願日】2018年4月25日
(65)【公表番号】特表2020-516399(P2020-516399A)
(43)【公表日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】US2018029331
(87)【国際公開番号】WO2018204144
(87)【国際公開日】20181108
【審査請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】62/500,055
(32)【優先日】2017年5月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ジャレッド・オールデン・ジャドソン
【審査官】 上石 大
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/149014(WO,A1)
【文献】 特表2017−500965(JP,A)
【文献】 特開平08−164206(JP,A)
【文献】 特表2010−520003(JP,A)
【文献】 特表2010−525869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の傾斜面を画定し、薬剤カートリッジを保持し、前記カートリッジが、針アセンブリを支持可能な第1端、および前記針アセンブリの反対側に配置されたピストンを有し、使用中に、前記カートリッジ内の前記ピストンの前進により、前記針アセンブリから医薬品が排出されるハウジングアセンブリと、
前記ピストンと動作可能に連結され、前記カートリッジ内で前記ピストンを前進させるドライバと、
一対のアームを有し、付与される力によって、引き込み位置と前進位置の間を移動可能であり、前記各アームが、前記傾斜面のそれぞれと係合可能であり、前記引き込み位置から前記前進位置に移動したとき、前記アームが前記傾斜面に導かれ、前記ドライバを移動させ、前記ピストンを前進させるプランジャと、
前記アームの一方に配置されている制動部材、および前記一方のアームが係合する前記傾斜面の近傍に配置されている制動トラックを備え、前記プランジャに付与された力が、閾値を超え、前記アームを屈曲させることにより、前記制動部材を前記制動トラックに係合させる制動機構と、
を備える、注射器具。
【請求項2】
前記制動部材と前記制動トラックの係合により、前記プランジャに付与される力に対する抵抗値が大きくなる、請求項1に記載の注射器具。
【請求項3】
前記制動部材と前記制動トラックの係合により、前記プランジャが前進する際に可聴ノイズを生成する、請求項1に記載の注射器具。
【請求項4】
前記アームが前記傾斜面に係合すると、前記制動部材が辿る経路から前記制動トラックがオフセットされる、請求項1に記載の注射器具。
【請求項5】
各プランジャアームは制動部材を含み、前記器具は一対の制動トラックを含み、前記各制動トラックが前記各傾斜面の近傍に配置されることにより、プランジャに付与される力が閾値を超え、前記アームを屈曲させ、前記制動部材を前記制動トラックに係合させる、請求項1に記載の注射器具。
【請求項6】
前記制動部材と前記制動トラックの係合により、前記プランジャに付与される力に対する抵抗値が大きくなる、請求項5に記載の注射器具。
【請求項7】
前記制動部材と前記制動トラックの係合により、前記プランジャが前進する際に可聴ノイズを生成する、請求項6に記載の注射器具。
【請求項8】
前記各制動トラックは、前記アームが前記傾斜面と係合したとき、前記各制動部材が辿る経路からオフセットされる、請求項7に記載の注射器具。
【請求項9】
前記プランジャアームは、材料ブリッジと共に接続され、前記材料ブリッジは、前記アームが相対的に移動したときに屈曲し、前記プランジャアームを離間するように付勢する、請求項8に記載の注射器具。
【請求項10】
前記材料ブリッジによる付勢力により、前記プランジャが前記前進位置に向かって付勢される、請求項9に記載の注射器具。
【請求項11】
前記各アームは、戻り止めを形成され、前記戻り止めは、前記プランジャが前記引き込み位置にあるときに係合可能であり、前記係合により、前記材料ブリッジが前記プランジャを前記前進位置に向かって付勢するのを防止する、請求項10に記載の注射器具。
【請求項12】
さらに、前記カートリッジに収容される医薬品を備える請求項1に記載の注射器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注射器具などの医療用投与器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の注射器具は、多くの場合、患者に医薬品を注射するために使用される。そのような器具は一般に、プランジャまたは同様の細長いロッドを用いて、ピストンを前進させて医薬品を投与する。そのような器具は、ピストンの引き込みが注射プロセスの前に医薬品を引き込むために使用されるように、詰め替え可能であってもよく、予め医薬品を充填された使い捨て容器とともに使用されるように構成されてもよい。
【0003】
例えば、インスリンを収容している使い捨てカートリッジを保持する注射ペンは、糖尿病患者によく使用される。そのようなペンは一般に、カートリッジ内のピストンに作用する細長いロッドを含む。ロッドがピストンを前進させると、カートリッジ内の医薬品が針を介して患者に投与される。
【0004】
他の様々な構成も知られている。例えば、2016年9月22日に公開された、Judson、WO2016/149014(A1)、および2015年3月18日に出願された、米国仮特許出願第62/134,865号は、その両方の開示が参照により本明細書に組み込まれる。それらは、収束傾斜面を有する駆動機構を備えた投与器具を開示する。開示された器具は、薬品を放出するためにユーザによって押されるボタン端部で一緒に回転可能に接続されている、2つの別個のプランジャムを有するプランジャを含む。開示される器具は効果的であるものの、改善が望まれている。
【0005】
例えば、一部のユーザは、プランジャを過度に強く押す傾向がある。このようなユーザの動作により、器具の構成要素に大きな圧力と応力が作用し、器具から薬品を放出するための最適な方法とは言えない。また、器具の個々の部品の過度の摩耗または破損を引き起こす可能性がある。この問題への改善が望まれている。さらに、器具の機能を保持または強化しながら、製造コストを抑えて複雑さを軽減することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/149014号
【特許文献2】米国仮特許出願第62/134,865号
【発明の概要】
【0007】
本開示は、収束傾斜面に係合するプランジャを有する、強化された注射器具を提供する。
【0008】
例示の実施形態では、注射器具は、注射手技中にユーザがプランジャに過度の力をかけたときに係合する制動機構を含む。
【0009】
例示の実施形態では、注射器具は、製造効率を改善する一体型プランジャを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】注射器具の分解図である。
図2】プランジャが前進位置にある注射器具の側面図である。
図2A図2の2A−2A線断面図である。
図2B図2の器具の端部図である。
図2C】プランジャが前進位置にあり、ハウジング部材が取り外された注射器具の上面図である。
図3】プランジャが引き込み位置にある、注射器具の側面図である。
図3A図3の3A−3A線断面図である。
図3B図3の3B−3B線断面図である。
図3C】プランジャが引き込み位置にあり、ハウジング部材が取り外された注射器具の上面図である。
図4】プランジャが部分的に前進した位置にある注射器具の側面図である。
図4A図4の4A−4A線断面図である。
図4B図4の4B−4B線断面図である。
図4C】プランジャが部分的に前進した位置にあり、ハウジング部材が取り外された注射器具の上面図である。
図5】ハウジング部材の上面図である。
図5A図5のハウジング部材の斜視図である。
図5B図5のハウジング部材の端部図である。
図5C図5のハウジング部材の端部図である。
図5D図5のハウジング部材の側面図である。
図5E図5のハウジング部材の斜視図である。
図6】別のハウジング部材の上面図である。
図6A図6のハウジング部材の斜視図である。
図6B図6のハウジング部材の端部図である。
図6C図6のハウジング部材の端部図である。
図6D図6のハウジング部材の側面図である。
図6E図6のハウジング部材の斜視図である。
図7】カートリッジホルダの斜視図である。
図7A】カートリッジホルダの側面図である。
図7B】カートリッジホルダの別の側面図である。
図7C図7Bの7C−7C線断面図である。
図7D図7Bの7D−7D線断面図である。
図7E】カートリッジホルダの端部図である。
図7F】カートリッジホルダの別の端部図である。
図8】プランジャの斜視図である。
図8A】プランジャの斜視図である。
図8B】プランジャの端部図である。
図8C】プランジャの側面図である。
図8D】プランジャの側面図である。
図8E】プランジャの上面図である。
図9】プランジャムの前進を示す概略図である。
図9A】代替のプランジャムの前進を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
複数の図面全体を通して、対応する参照符号は、対応する部品を示す。本明細書に記載される例は、本発明の実施形態であり、そのような例は、いかなる様式においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0012】
例示的な医薬品投与器具20が図1に示されている。器具20は、薬剤カートリッジ24が固定されるハウジングアセンブリ22と、駆動アセンブリ26とを含む。ハウジングアセンブリ22は、第1および第2のハウジング部材28、30と、本明細書ではカートリッジ保持器とも呼ばれるカートリッジホルダ32とを含む。駆動アセンブリ26は、駆動ステム34、ドライバ36、およびプランジャ38を含む。
【0013】
図3Aで最もよく分かるように、カートリッジ24は、内部リザーバを備えたバレル40を含む従来の薬剤カートリッジである。内部リザーバは、一端が摺動可能なピストン42によって密閉され、他端が圧着リング46に保持された隔壁44によって密閉されている。カートリッジ保持器32の雄ねじ付き端部52に針アセンブリ48が装着されて隔壁44を貫通することにより、内部リザーバを満たす医薬品50を投与する際の出口が提供される。器具20を使用しないとき、取り外し可能なキャップ(図示せず)を使用して針アセンブリを覆ってもよい。カートリッジ24は、器具20の設計に応じて、薬の複数回投与量または単回投与量を保持してもよい。図示された器具20は、複数回使用の固定用量器具である。つまり、単一のカートリッジ24から複数回にわたって同じ用量を投与するために使用することを意味する。図示されたカートリッジは単に、1つの例示的な容器の形態であり、駆動アセンブリ26によって強制的に空にでき、例えば、駆動アセンブリによって圧縮される容器を代わりに用いることができる。
【0014】
駆動アセンブリ26の駆動ステム34は、バレル40内に突出し、ピストン42と係合する足部54を有する。駆動ステム34が駆動軸56に沿って前進すると、足部54がバレル40内のピストン42を前進させ、針アセンブリ48から医薬品50を放出する。以下でさらに説明するように、プランジャ38の前進により、ドライバ36が軸56に沿って前方に付勢され、器具が医薬品を放出するために使用されると、駆動ステム34がピストン42と係合するように前進する。
【0015】
ドライバ36は、駆動ステム34に直接係合し、ハウジングアセンブリ22の内面に拘束されて軸方向に移動可能で、回転可能に固定される。ハウジングアセンブリ22の内面に位置する収束傾斜面58とプランジャアーム60の相互作用は、ユーザがプランジャを押し下げ、器具が機械的利点を提供しなかった場合に必要とされるよりも少ない力で医薬品を放出できる機械的利点を提供する。
【0016】
ハウジング部材28、30は、図5図5A図5Eおよび図6図6A図6Eに、より詳細に示されている。ハウジング部材28、30は互いに固定されており、これらの構成要素の相対運動を可能にしながら、それらの間にドライバ36およびプランジャ38を保持する。ハウジング部材28、30は、接着剤、ねじ付き留め具、スナップ嵌め接続、または他の適切な手段で固定できる。
【0017】
ハウジング部材28、30は、ねじ部材66を含む一端に円筒状開口部64を有する。また、図示された各ハウジング部材は、円筒状開口部64の内部または隣接して配置されたラチェット部材68を含む。カートリッジ保持器32は、ハウジング部材28、30と係合する端部に、スパイラル溝70およびラチェット歯72を含む。溝70は、ねじ部材66が螺合する二条溝を構成する。ラチェット歯72は、溝70の間の渦巻状のランドに配置されている。ラチェット部材68とラチェット歯72との間の相互作用により、カートリッジ保持器32を円筒状開口部64内で内向きに回転させる一方、保持器32が外側に回転するのを防止する。カートリッジ保持器32と、その内部に配置されたカートリッジ24とをハウジング部材28、30から取り外すには、ハウジング部材28、30を分離しなければならない。器具20は、最初のカートリッジ24を空にした後に処分することを意図した使い捨てディスペンサーであってもよい。そのような使い捨てディスペンサーの場合、ハウジング部材28、30は永久的に固定されてもよい。代わりに、ねじ付き留め具または他の適切な取り付け手段を用いて、ハウジング部材28、30をユーザが取り外して再固定できるようすることにより、空のカートリッジ24を充填されたカートリッジと交換できるようにしてもよい。
【0018】
一実施形態では、カートリッジ保持器32およびハウジング部材28、30は、カートリッジ24の初期プライミングを容易にするように構成されている。例えば、器具20は、保持器32内に充填されたカートリッジ24が配置され、保持器32がその最終位置まで完全に回転していない状態で出荷される。1回目の注射の前に、ユーザは、ねじ部材66が保持器32のさらなる回転を防止するスパイラル溝70の端部に当たるまで、カートリッジ保持器32を回転させる。保持器32がその設置位置にねじられると、カートリッジ24は、駆動ステム34の足部54に向かって移動される。駆動ステム34は、カートリッジ保持器32をその設置位置にねじることにより、ピストン42を僅かに前方へと付勢し、カートリッジ24を医薬品50の1回目の投与のためにプライミングするように配置される。一実施形態では、針アセンブリ48は装着されることにより、隔壁44を貫通し、カートリッジ保持器32の固定がカートリッジ24をプライミングするために使用されるならば、カートリッジ保持器32が最終位置にねじられる前に、針アセンブリ内にある空気を追い払って、少量の薬を投与するために準備される。
【0019】
カートリッジ保持器32の窓73により、ユーザはカートリッジ24を見ることができ、バレル40が透明または少なくとも部分的に透明であれば、カートリッジ24に残っている薬の量を視認することができる。窓73はまた、カートリッジ32がその設置位置に配置されると、ハウジングアセンブリ22に対して所定の位置となり、カートリッジ保持器32が適切な設置位置にあることをユーザが確認できるようになる。
【0020】
ハウジング部材28、30に対するカートリッジ保持器32の回転によるカートリッジ24のプライミングは、本出願と同じ出願人により出願された、2017年5月2日に出願された、INJECTION DEVICE WITH PRIMING ARRANGEMENTという名称の米国仮出願第62/500,004号でも議論されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。代わりに、必ずしもプライミング機能を含む必要のない様々な他のカートリッジ保持器構造体を、本出願の器具とともに採用してもよい。例えば、WO2016/149014(A1)は、そのような代替のカートリッジ保持器の一例を開示している。
【0021】
プランジャ38は、カートリッジ保持器32の反対側でハウジングアセンブリ22から突出する。これにより、ユーザがハウジングアセンブリ22から外側に引っ張ることによりプランジャ38を引っ込めると、器具20は注射可能な状態となり、プランジャ38をハウジングアセンブリ22内に押し込むと、注射される。各ハウジング部材28、30は、プランジャ38が突出する開口部62の一部分を構成する。ハウジング部材28は傾斜面58をも構成する。プランジャ38が針アセンブリ48に向かって前進するとき、傾斜面58はプランジャアーム60の外向きの動きを制限する。
【0022】
プランジャ38は、図8図8A図8Eに詳細に示されている。各プランジャアーム60は摺動部材74を含む。プランジャ38がハウジングアセンブリ22内で前進すると、各摺動部材74は傾斜面58の1つに沿って摺動する。プランジャアーム60の内側部分は凹部領域76を含む。プランジャ38がハウジングアセンブリ22から引き出されると、プランジャアーム60が互いに向かって付勢され、はさみを閉じると一対の刃が重なるのと同様な方法で、凹部領域76が互いに重なり合う。戻り止め78は、各プランジャアームの凹部領域76に配置されている。プランジャ38が注射の準備のためにハウジングアセンブリ22から引き込まれると、戻り止め78が互いに係合することにより、プランジャ38が引き込み位置に保持される。ユーザがプランジャ38をハウジングアセンブリ22に押し込んで、注射を開始すると、ユーザによって付与された力により、最初に戻り止めの係合が解除され、次にプランジャ38の前進が開始される。戻り止め78を取り付けるのに必要な力は、以下でさらに議論されるように比較的小さい。
【0023】
プランジャ38が前進すると、プランジャアーム60の前方先端に隣接する係合面84が、ドライバ36の傾斜面86と係合する。図示の実施形態では、傾斜面58と傾斜面86の間の隙間は、プランジャアーム60がそれらの間を通過するのには不十分である。したがって、摺動部材74が傾斜面58に沿って前進すると、プランジャアーム60の係合面84は、傾斜面86に力を加え、ドライバ36を針アセンブリ48に向かって前方に押す。傾斜面86と傾斜面58は平行ではないため、係合面84はドライバ36を前方に押し始めるまで傾斜面86に沿って摺動し、プランジャアーム60が前進すると、係合面84は両方に沿って摺動し、傾斜面86を押す。
【0024】
駆動ステム34は、中央ステムを取り囲む複数のラチェット歯88を含む。針アセンブリ48に対向するラチェット歯88の表面90は傾斜しているが、歯88の反対側は、軸56に対して垂直に延在する停止面92を構成する。ドライバ36は、駆動ステム34に係合し、図3Aに示される2つの爪部材94を含む。ドライバ36がプランジャアーム60によって前進されると、爪部材94が駆動ステム34の停止面92の1つと係合し、駆動ステム34を前方に押すことにより、足部54がピストン42を前方に押し、針アセンブリ48を介して医薬品50が放出される。
【0025】
プランジャ38が引き込まれると、摺動部材74は引き込みヘッド96と係合し、最終段階でドライバ36を後方へと引き込む(図3C参照)。ドライバ36が引き込まれると、爪94は駆動ステム34に沿って摺動する。爪94がラチェット歯88に至ると、ラチェット歯の傾斜面90により、爪94がラチェット歯88上を摺動可能となる。
【0026】
ハウジング部材28は駆動ステム34と係合し、プランジャ38が引き込まれているときに、駆動ステム34の引き込みを防止する2つのラチェット部材95(図5)を含む。ラチェット部材95は、図5Aおよび図5Eに示されるように、駆動ステム34を針アセンブリ48に向かって前進させる傾斜面を有する。
【0027】
各プランジャアーム60は制動部材80を含み、ハウジング部材28は一対の制動トラック82を含む。摺動部材74が傾斜面58に沿って移動するとき、プランジャ38の前進中、ボタン端部110にユーザによって付与される力が過度でない限り、制動部材80は、前方および後方の両方向で制動トラック82から離間した状態を維持する。図示の実施形態では、摺動部材74が傾斜面58に沿って移動し、制動トラック82と傾斜面58の両方が同じハウジング部材28に配置されると、制動トラック82は、制動部材80が辿る経路からオフセットされる。プランジャ38をハウジングアセンブリ22内に前進させているときに、ユーザがプランジャ38のボタン端部110に過度な力を付与すると、制動部材80が制動トラック82に付勢され、抗力が増大する。例示の制動部材80および制動トラック82は、制動部材80が制動トラック82に沿って前進するときに係合および係合解除する波形部すなわち歯を含む。それには、制動部材80および制動トラック82の各歯が係合した後、解放される際、可聴チャタリングを引き起こし、ユーザに抵抗の反復的な増加またはスパイクを含む抵抗力を感じさせる。
【0028】
図9は、制動部材80および制動トラック82の動作を示す拡大図を提供する。図9は、プランジャアーム60と同様なプランジャアーム61を示すが、両アームが単一の一体成形品の一部ではなく、回転可能に接続された2つの別個のプランジャアーム61を有するプランジャアセンブリの一部となっている。
【0029】
図9では、プランジャアーム61は、実線と破線の両方で示されている。プランジャが、ユーザによって、適切な力で内向きに押されると、摺動部材74が傾斜面58に係合し、アーム61の係合面84がドライバ36の表面86と係合する一方、制動部材80は制動トラック82と一定間隔に位置する。ユーザが過剰な力でプランジャを押すと、プランジャアーム61は、図9の破線で示されるように、湾曲または屈曲し始める。この湾曲状態で、制動部材80が制動トラック82と接触する。
【0030】
プランジャアームを屈曲させるのに必要な閾値を計算することができ、アームが、カートリッジ24内のピストンを前進させるためにプランジャに加えられる推奨される力の上限に対応する閾値で、制動部材を制動トラックに接触させるのに必要な量で屈曲するように、プランジャアームの材料および断面外形を選択することができる。
【0031】
制動部材80は、制動トラック82に面する複数の歯98を含む。制動トラック82は複数の歯100を含む。制動部材80がトラック82に係合すると、歯98は歯100と係合し、歯98が歯100に衝突する際に一連の衝撃でトラック82に沿って摺動し、次に解放して、トラック82の次の一連の歯100と係合する。
【0032】
プランジャアーム61は、制動部材80が制動トラック82と係合した状態で前方に押されると、この係合により、ユーザが感じる抵抗が増大し、制動部材80の歯が制動トラック82の歯100を通過するときに「チャタリング」が生じる。このチャタリングは、ユーザが感じることができ、聞くことができる可聴音を生成する。
【0033】
図示の実施形態では、歯100は、歯98の後方への摺動を容易にする傾斜摺動面102と、歯98の進行方向に対してほぼ垂直に配置されて、歯98すなわちプランジャ38の前方への動きに抵抗する衝突面104とを有する。プランジャ38の前方への動きに対する抵抗が増加し、歯98と歯100の一連の衝撃的な係合によってチャタリングが生じることにより、ユーザがプランジャ38を過剰な力で押していることと、ユーザがプランジャ38に付与する力を小さくする必要があることとがユーザに警告される。増加した抵抗により、ユーザが付与する力を小さくしなくてもプランジャ38の前進が若干遅くなる。しかしながら、これは一般に、過度な力が加えられていることをユーザに警告するという制動部材80および制動トラック82の主目的を伴う二次的な考慮事項である。代替の実施形態では、ユーザに警告する代わりに、動きを遅くするという主目的のために同様な制動機構を利用している。
【0034】
図9Aは、プランジャアームの代替の実施形態を開示している。図9Aに示されるプランジャアーム61Aは、図9に示されるプランジャアーム61と同様であるが、制動部材80Aは、摩擦係合面81上に歯を含んでいない。別の違いは、制動トラック82Aが歯の代わりに摩擦係合面83を含むことである。図9Aでは、実線は、ユーザが適切な力をプランジャに加えたときのプランジャアーム61Aを示し、破線は、過剰な力によって引き起こされた湾曲状態のプランジャアームを示す。過剰な力を付与することにより、制動部材80Aが制動トラック82Aに接触する。
【0035】
摩擦係合面81および83のうちの一方または両方は、表面81と表面83の間の摺動に対する摩擦抵抗を高める材料からなる表面層を含むことができる。また、これら表面は、摺動係合しているときに摩擦抵抗を大きくし、可聴ノイズを生成するという特質を提供してもよい。図9の実施形態と同様に、図9Aの実施形態では、ユーザがプランジャに過度な力をかけると、抵抗が大きくなるため、前方への動きに対する抵抗が大きくなり、ユーザに警告される。
【0036】
各アーム61、61Aは、ピンを保持して、アームを別のアームと回転可能に連結するための開口部106を有する。一実施形態では、ピンが対向するアーム上に配置されるか、あるいは、対向するアームが、両方のアームの開口部に回転可能に係合し、プランジャを形成するためのピン(複数可)を規制する第3の部分を備えた開口部を含む。
【0037】
アーム61、61Aとは対照的に、プランジャ38のアーム60は、同じ一体部品の一部であり、材料ブリッジ108を介して接続されている。材料ブリッジ108は、プランジャ38のボタン端部110の中央部分を形成し、ボタン端部110の2つの対向する半部112を接続する。
【0038】
材料ブリッジ108は、ボタン端部110の2つの対向する半部112よりも薄く、プランジャ38が軸56に沿って移動するときに屈曲するように十分薄い。プランジャ38は、単一の成形部品であり、プランジャ38の元の成形構成は、図8Cおよび図8Dに示す構成である。この構成では、対向するアーム60は離れて広がっている。アーム60は、完全に前進した位置でハウジングアセンブリ22内に組み付けられると、若干付勢される。図2図2A図2Cは、完全に前進した位置にあるプランジャ38を示している。プランジャ38がハウジングアセンブリ22から外側に引っ張られると、アーム60は、対向方向へとさらに付勢される。材料ブリッジ108は、アーム60が接離するときに曲がる。しかしながら、図示の実施形態では、器具20の通常の動作から生じる移動範囲で材料ブリッジ108に付与される応力は、材料ブリッジ108を形成する材料の降伏応力には到達しない。その結果、材料ブリッジ108は、図2図2A図2Cに示す構成にアーム60を位置させるように付勢する。
【0039】
プランジャ38がハウジングアセンブリ22から少なくとも部分的に引っ張られると、材料ブリッジ108による付勢力によって、プランジャ38がハウジングアセンブリ22内に引き戻される。図4図4A図4Cは、部分的に引っ張られた位置にあるプランジャ38を示し、図3図3A図3Cは、完全に引っ張られた位置にあるプランジャ38を示す。注射の準備中にプランジャ38がユーザによって完全に引っ張られた場合、ユーザが注射部位に針を挿入した後に、注射を開始する準備が整うまで、プランジャ38が完全に引っ張られた位置(図3図3A図3C)に留まるのが望ましい。アーム60上の戻り止め78が係合して、アーム60を完全に引っ張られた位置に維持する。
【0040】
例示的な実施形態では、戻り止め78を係合解除するのに必要な力は、材料ブリッジ108によって生成される付勢力よりもわずかに大きいだけであるので、ユーザは戻り止め78を分離するのに大きな力をかける必要がないという利点がある。ユーザがプランジャ38を押下して注射を行う際、材料ブリッジ108で生成された付勢力によりユーザが支援される。
【0041】
材料ブリッジを使用することにより、2以上の部品ではなく、単一の成形部品からプランジャ38を形成することができる。例えば、別のプランジャアームに回転可能に接続されている、図9および9Aのプランジャアームは、プランジャを形成するために少なくとも2つの部品を必要とする。単一の成形部品の使用により、部品の在庫が減り、器具20を製造するのに必要な組み立て作業が減ることにより、製造効率が向上する。
【0042】
成形された一部品プランジャの代替の実施形態は、材料ブリッジに材料を破壊することなく降伏点を超えて応力を受けるボタン端部を採用することにより、材料ブリッジがアーム60に付勢力を及ぼすことがない。そのような実施形態では、材料ブリッジは一体成形ヒンジとして機能させてもよい。
【0043】
器具20はさらに、医薬品すなわち薬を含む。一実施形態では、システムは、器具20を含む1つ以上の器具および薬を含む。「薬」または「医薬品」という用語は、限定されないが、インスリン、インスリンリスプロまたはインスリングラルギン等のインスリンアナログ、インスリン誘導体、デュラグルチドまたはリラグルチド等のグルカゴン様ペプチド(GLP−1)受容体アゴニスト、グルカゴン、グルカゴン類似体、グルカゴン誘導体、胃抑制ポリペプチド(GIP)、GIP類似体、GIP誘導体、オキシントモジュリン類似体、オキシントモジュリン誘導体、治療用抗体、および器具20による投与が可能な任意の治療薬を含む、1つ以上の治療薬を指す。器具20内で使用される薬は、1つ以上の賦形剤とともに処方されてもよい。器具20は、ヒトに薬を投与するために、患者、介護者または医療専門家によって、一般に上述のような方法で操作される。
【0044】
本発明は例示的な設計として記載されているが、本開示の趣旨および範囲内でさらに改良されてもよい。したがって、本出願は、本発明の一般的原理を用いた任意の変形、使用、または適応を包含することを意図している。さらに、本出願は、本発明が関係し、添付の特許請求の範囲の限定の範囲内に入る、当該技術分野で公知のまたは慣習的な実施の範囲内に入るものとして、本開示からのそのような逸脱を網羅することを意図する。
図1
図2
図2A
図2B
図2C
図3
図3A
図3B
図3C
図4
図4A
図4B
図4C
図5
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図9A