特許第6987178号(P6987178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987178ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987178
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20211213BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20211213BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/04CES
   B32B5/18
   B32B27/00 M
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-90054(P2020-90054)
(22)【出願日】2020年5月22日
(62)【分割の表示】特願2019-1847(P2019-1847)の分割
【原出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2020-147757(P2020-147757A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2020年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-202126(P2014-202126)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-54805(P2015-54805)
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】松木 繁季
(72)【発明者】
【氏名】谷内 康司
(72)【発明者】
【氏名】永井 麻美
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/099755(WO,A1)
【文献】 特開2013−147566(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/154137(WO,A1)
【文献】 特開2013−053179(JP,A)
【文献】 特開2012−214800(JP,A)
【文献】 特開2013−053177(JP,A)
【文献】 特開2013−053178(JP,A)
【文献】 特開2009−249458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
B29C 44/00−44/60;67/20
C08L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を発泡したものであり、複数の気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が20μm以上150μm以下であり、かつMD方向の最大気泡径が121μm以下であり、かつTD方向の最大気泡径が151μm以下であり、及び
MD方向の平均気泡径に対するTD方向の破断点強度の比[TD破断点強度/MD平均気泡径]と、TD方向の平均気泡径に対するMD方向の破断強度の比[MD破断点強度/TD平均気泡径]とが、いずれも80kPa/μm以上であるポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂を発泡したものであり、複数の気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が150μm以下であり、かつMD方向及びTD方向の最大気泡径が500μm以下であり、
MD方向の平均気泡径に対するTD方向の破断点強度の比[TD破断点強度/MD平均気泡径]と、TD方向の平均気泡径に対するMD方向の破断強度の比[MD破断点強度/TD平均気泡径]とが、いずれも90kPa/μm以上800kPa/μm以下であるポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
TD方向の平均気泡径に対するMD方向の平均気泡径の比[MD平均気泡径/TD平均気泡径]が0.6〜1.4である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
耐電圧値が8kV/0.7mm以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
発泡倍率が1.1〜2.8cm3/gである、請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
ゲル分率が5〜60質量%である、請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項7】
厚さが0.02〜1.9mmである、請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項9】
前記ポリエチレン系樹脂が、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたものである、請求項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載されたポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を設けた粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂を発泡してなるポリオレフィン系樹脂発泡シートに関し、特に衝撃吸収材として好適なポリオレフィン系樹脂発泡シート及びこれを用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂層の内部に多数の気泡が形成された発泡シートは、緩衝性に優れるため、各種電子機器の衝撃吸収材に広く使用されている。このような衝撃吸収材は、例えば、携帯型電話機、パーソナルコンピュータ、電子ペーパー等に用いられる表示装置において、装置表面を構成するガラス板と画像表示部材との間に配置されて使用される。このような用途で使用される発泡樹脂シートとしては、ポリオレフィン系樹脂が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−028925号公報
【特許文献2】国際公開第2013/099755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電気機器の小型化に伴い、電気機器用途で使用される発泡樹脂シートも薄層化、狭幅化されつつあり、薄層で狭幅の発泡樹脂シートであっても、高い衝撃吸収性と耐衝撃性とを有することが求められている。発泡樹脂材料の衝撃吸収性や耐衝撃性を向上させるためには、例えば、発泡倍率を上昇させて柔軟性を向上させることや、架橋度を高めて剛性を上げることが考えられる。しかし、薄厚の発泡樹脂シートは、単純に発泡倍率や架橋度を調整したのみでは、十分な衝撃吸収性や耐衝撃性を得ることができず、更なる改良が望まれている。
また、前述の電子機器においては、タッチパネル式の表示装置が多く使用されるため、静電気の影響により表示装置等が点灯しなくなる等の不具合が生じやすくなる。したがって、発泡シートは、耐電圧性を有することも求められている。
【0005】
本発明は、上記従来の事情を鑑みてなされたものであって、衝撃吸収性及び耐衝撃性に優れると共に、耐電圧性を備える薄厚のポリオレフィン系樹脂発泡シート、及びこれを用いた粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、発泡倍率を低く抑えつつ、ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD方向及びTD方向における平均気泡径と破断点強度とを所定の範囲に調整することで、衝撃吸収性を良好な状態に維持すると共に、耐電圧性に優れるポリオレフィン系樹脂発泡シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[2]を要旨とする。
[1]ポリオレフィン系樹脂を発泡したものであり、複数の気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が150μm以下であり、かつMD方向及びTD方向の最大気泡径が500μm以下であり、MD方向の平均気泡径に対するTD方向の破断点強度の比[TD破断点強度/MD平均気泡径]と、TD方向の平均気泡径に対するMD方向の破断強度の比[MD破断点強度/TD平均気泡径]とが、いずれも80kPa/μm以上であるポリオレフィン系樹脂発泡シート。
[2]前記[1]に記載されたポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を設けた粘着テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝撃吸収性及び耐衝撃性に優れると共に、耐電圧性を備える薄厚のポリオレフィン系樹脂発泡シート、及びこれを用いた粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ポリオレフィン系樹脂発泡シート]
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート(以下、「発泡シート」ともいう)は、ポリオレフィン系樹脂を発泡してなるシートであり、多数の気泡を有するものである。
以下、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートについて更に詳細に説明する。
【0009】
<平均気泡径、及び最大気泡径>
本発明の発泡シートにおけるMD方向及びTD方向の平均気泡径は150μm以下であり、かつMD方向及びTD方向の最大気泡径は500μm以下である。平均気泡径及び最大気泡径が前記範囲外であると、耐電圧性が十分に確保できず、また、耐衝撃性も低下する。
このような観点から、本発明の発泡シートにおけるMD方向及びTD方向の平均気泡径は、いずれも20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上が更に好ましく、そして、120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下が更に好ましく、具体的には、いずれも20〜120μmが好ましく、25〜100μmがより好ましく、30〜80μmが更に好ましい。
また、本発明の発泡シートにおけるZD方向の平均気泡径は、耐電圧性及び耐衝撃性を確保する観点から、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、8μm以上が更に好ましく、10μm以上がより更に好ましく、そして、80μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましく、30μm以下がより更に好ましく、具体的には、5〜80μmが好ましく、7〜50μmがより好ましく、8〜40μmが更に好ましく、10〜30μmがより更に好ましい。
【0010】
また、本発明の発泡シートにおけるMD方向及びTD方向の最大気泡径は、耐電圧性及び耐衝撃性を十分に確保する観点から、いずれも60μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、80μm以上が更に好ましく、そして、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましく、具体的には、いずれも60〜400μmが好ましく、70〜300μmがより好ましく、80〜200μmが更に好ましい。
更に、本発明の発泡シートにおけるZD方向の最大気泡径は、耐電圧性及び耐衝撃性を確保する観点から、5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、12μm以上がより更に好ましく、そして、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、95μm以下が更に好ましく、80μm以下がより更に好ましく、70μm以下がより更に好ましく、60μm以下がより更に好ましく、50μm以下がより更に好ましく、40μm以下がより更に好ましく、30μm以下がより更に好ましく、具体的には、5〜150μmが好ましく、8〜120μmがより好ましく、10〜95μmが更に好ましく、12〜80μmがより更に好ましい。
なお、本発明において「MD」は、Machine Directionを意味し、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの押出方向等と一致する方向を意味する。また、「TD」は、Transverse Directionを意味し、MDに直交しかつ発泡シートに平行な方向を意味する。更に「ZD」は、Thickness Directionを意味し、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
前記平均気泡径及び最大気泡径は、後述する実施例の方法にしたがって測定することができる。
【0011】
<平均気泡径及び最大気泡径の比>
本発明の発泡シートにおいては、TD方向の平均気泡径に対するMD方向の平均気泡径の比[MD平均気泡径/TD平均気泡径]は0.6〜1.4が好ましい。前記比[MD平均気泡径/TD平均気泡径]が前記範囲内であると、MD方向とTD方向との物性差が小さくなる。
このような観点から、比[MD平均気泡径/TD平均気泡径]は、0.7以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、そして、1.3以下がより好ましく、1.2以下が更に好ましく、具体的には、0.7〜1.3がより好ましく、0.8〜1.2更に好ましい。
また、本発明の発泡シートにおいては、TD方向の最大気泡径に対するMD方向の最大気泡径の比[MD最大気泡径/TD最大気泡径]は、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、そして、1.4以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、具体的には、0.6〜1.4が好ましく、0.7〜1.3がより好ましい。比[MD最大気泡径/TD最大気泡径]が前記範囲内であると、MD方向とTD方向との物性のバランスが良い発泡シートを得ることができる。
【0012】
<平均気泡径に対する破断点強度の比>
本発明の発泡シートのMD方向の平均気泡径に対するTD方向の破断点強度の比[TD破断点強度/MD平均気泡径]と、TD方向の平均気泡径に対するMD方向の破断点強度の比[MD破断点強度/TD平均気泡径]とは、いずれも80kPa/μm以上であり、90kPa/μm以上が好ましく、95kPa/μm以上がより好ましく、100kPa/μm以上が更に好ましく、150kPa/μm以上がより更に好ましく、200kPa/μm以上がより更に好ましく、250kPa/μm以上がより更に好ましく、300kPa/μm以上がより更に好ましく、350kPa/μm以上がより更に好ましく、そして、800kPa/μm以下が好ましく、700kPa/μm以下がより好ましく、600kPa/μm以下が更に好ましく、550kPa/μm以下がより更に好ましく、500kPa/μm以下がより更に好ましく、具体的には、90〜800kPa/μmが好ましく、95〜700kPa/μmがより好ましく、100〜600kPa/μmが更に好ましい。前記比が前記範囲内であると、衝撃吸収性及び耐衝撃性と、耐電圧性とのバランスに優れるポリオレフィン発泡シートが得られる。
【0013】
<発泡倍率>
本発明において、発泡シートの発泡倍率は1.1〜2.8cm3/gが好ましい。発泡倍率が前記範囲内であると、発泡シートの衝撃吸収性及びシール性が十分に確保しやすくなる。また、発泡倍率が2.8cm3/g以下であると、樹脂密度が上がり、耐電圧性が十分に確保できる。
耐電圧性、衝撃吸収性及びシール性をより良好にする観点から、発泡シートの発泡倍率は、1.5〜2.6cm3/gがより好ましく、1.6〜2.5cm3/gが更に好ましい。
【0014】
<ゲル分率(架橋度)>
本発明の発泡シートは、耐衝撃性及び衝撃吸収性を向上させる観点から、架橋したものであってもよく、その場合のゲル分率(架橋度)は、5〜60質量%が好ましい。ゲル分率(架橋度)が前記下限値以上であると、発泡シートにおいて十分な架橋が形成されるため、衝撃吸収性と耐衝撃性との両者を向上させることができる。また、前記上限値以下であると、発泡シートの柔軟性を確保しやすくなる。このような観点から、ゲル分率(架橋度)は、15〜55質量%がより好ましく、20〜55質量%が更に好ましく、25〜55質量%がより更に好ましい。
なお、ゲル分率(架橋度)は後述する測定方法により測定したゲル分率で表すことができる。
【0015】
<耐電圧値>
本発明の発泡シートの幅0.7mmにおける耐電圧値は、8kV/0.7mm以上であることが好ましい。耐電圧値が前記下限値以上であると、耐電圧性を確保しやすくなる。このような観点から、耐電圧値は、9kV/0.7mm以上がより好ましく、10kV/0.7mm以上が更に好ましい。
本発明の発泡シートの幅1.0mmにおける耐電圧値は、耐電圧性を確保する観点から、9kV/1.0mm以上が好ましく、10kV/1.0mm以上がより好ましく、11kV/1.0mm以上が更に好ましい。
なお、前記耐電圧値は後述する実施例の測定方法により測定することができる。
【0016】
<厚さ>
本発明の発泡シートの厚さは、薄厚でも衝撃吸収性及び耐電圧性を良好なものとする観点から、0.02〜1.9mmが好ましく、0.03〜1.0mmがより好ましく、0.04〜0.50mmが更に好ましく、0.05〜0.30mmがより更に好ましい。発泡シートの厚さが前記範囲内であると衝撃吸収性、シール性、及び耐電圧性が良好なものとなる。
【0017】
<25%圧縮強度>
発泡シートの25%圧縮強度は、特に限定されないが、100〜2,000kPaが好ましく、150〜1,800kPaがより好ましく、150〜1,600kPaが更に好ましく、150〜1,400kPaがより更に好ましく、150〜1,200kPaがより更に好ましく、150〜1,000kPaがより更に好ましく、150〜800kPaがより更に好ましい。25%圧縮強度が前記上限値以下であると、発泡シートの柔軟性が向上し、粘着テープにした際に被着体への追従性が良好となり電子機器内部に水や空気が侵入しにくくなるという利点がある。また、25%圧縮強度が前記下限値以上であると、衝撃吸収性と耐衝撃性との両方が向上する。
なお、25%圧縮強度は後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
【0018】
<層間強度>
本発明の発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層又は接着剤層を設けた場合において、発泡シートと粘着剤層又は接着剤層との間の層間強度は、特に限定されないが、1〜10MPaが好ましく、2〜9MPaがより好ましい。発泡シートと粘着剤層又は接着剤層との間の層間強度が前記下限値以上であると、発泡シートの耐衝撃性が向上し、粘着テープにした際に電子機器内部において発泡シートが剥離しにくくなるという利点がある。また、層間強度が前記上限値以下であると、衝撃吸収性が向上し、粘着テープにした際に電子機器内部において発泡シートと粘着剤層又は接着剤層とが界面で剥離しにくくなるという利点がある。
なお、層間強度は後述する実施例に記載の方法にしたがって測定することができる。
【0019】
<発泡シートの厚さに対する層間強度の比>
本発明の発泡シートの厚さに対する層間強度の比[層間強度/厚さ]は、特に限定されないが、20〜80MPa/mmが好ましく、30〜80MPa/mmがより好ましい。前記比が前記下限値以上であると、発泡シートの厚さが0.02mm程度であっても発泡シートの耐衝撃性が維持できる。また、前記比が前記上限値以下であると衝撃吸収性が向上する。
従来の発泡シートでは厚さが薄くなるにしたがって層間強度が低くなる傾向にあったため、前記比を向上させることが困難であった。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、気泡径等を前述の範囲内に調整することで前記比を向上させることが可能となった。
【0020】
<独立気泡率>
発泡シートは、気泡が独立気泡であることが好ましい。気泡が独立気泡であるとは、全気泡に対する独立気泡の割合(独立気泡率という)が70%以上であることを意味する。気泡が独立気泡であると、衝撃を受けた際に、気泡の変形量を抑えられることで、衝撃に対する発泡シートの変形量も抑えられるため、衝撃吸収性をより高めやすくなる。
前記独立気泡率は、衝撃吸収性をより向上させるために、75%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
なお、独立気泡率とは、ASTM D2856(1998)に準拠して測定したものをいう。
【0021】
[ポリオレフィン系樹脂]
発泡シートを形成するために使用されるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中ではポリエチレン系樹脂が好ましい。より具体的には、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中では、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体でもよいが、エチレンと必要に応じて少量(例えば、全モノマーの30質量%以下、好ましくは10質量%以下)のα−オレフィンとを共重合することにより得られるポリエチレン系樹脂が好ましく、その中でも、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
メタロセン化合物の重合触媒により得られた、ポリエチレン系樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、柔軟性が高く、高い衝撃吸収性を有する発泡シートを得やすくなる。
ポリエチレン系樹脂を構成するα−オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体も好ましく用いられる。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、通常、エチレン単位を50質量%以上含有する共重合体である。
メタロセン化合物の重合触媒により得られたポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、又はこれらの混合物は、発泡シートにおいてポリオレフィン系樹脂全体の40質量%以上含有されることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、最も好ましくは100質量%含有される。
【0022】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン単位を50質量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられ、これらの中では、炭素数6〜12のα−オレフィンが好ましい。
【0023】
<メタロセン化合物>
好適なメタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物が挙げられる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高くなるため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。均一に架橋されたシートは、均一に延伸しやすくなるため、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚さを均一にしやすくなる。
【0024】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等が挙げられる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素−置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0025】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜100万モル倍が好ましく、50〜5,000モル倍がより好ましい。
【0026】
<チーグラー・ナッタ化合物>
チーグラー・ナッタ化合物は、トリエチルアルミニウム−四塩化チタン固体複合物であって、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物と、芳香族カルボン酸エステルとを組み合わせる方法(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及びハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等で製造されたものが好ましい。
【0027】
上記ポリエチレン系樹脂としては、発泡シートの柔軟性を高めて、耐衝撃吸収性を高めるために、低密度であることが好ましい。上記ポリエチレン系樹脂の密度は、具体的には、0.920g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.880〜0.915g/cm3、特に好ましくは0.885〜0.910g/cm3である。
なお、密度はASTM D792に準拠して測定したものである。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂としては、上記したポリオレフィン系樹脂以外の樹脂も使用可能であり、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂に更に混合して使用してもよい。
更に、ポリオレフィン系樹脂には、後述する各種添加剤、その他の任意成分を混合してもよく、発泡シートは、その混合物が架橋、発泡されたものであってもよい。
発泡シートに含有される任意成分としては、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂、ゴムが挙げられ、これらは合計で、ポリオレフィン系樹脂よりも含有量が少なく、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下程度である。
なお、ポリオレフィン系樹脂の発泡は、後述するように、熱分解型発泡剤を用いて行うことが好ましいが、その他の方法で発泡してもよい。また、ポリオレフィン系樹脂の架橋は、後述する電離性放射線の照射により行うことが好ましいが、その他の方法で行ってもよい。
【0029】
[発泡シートの製造方法]
本発明の発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂を一般的な方法で発泡することにより製造することができるものであり、その製造方法に制限はなく、ポリオレフィン系樹脂組成物を必要に応じて架橋した後、発泡することにより製造することもできる。
具体的に、本発明の発泡シートは、例えば以下の工程(1)〜(3)を有する方法により製造することができる。
工程(1):ポリオレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤、及びその他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによってシート状にされたポリオレフィン系樹脂組成物を得る工程
工程(2):シート状にされたポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する工程
工程(3):架橋させたシート状のポリオレフィン系樹脂組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、好ましくはMD方向又はTD方向の何れか一方又は双方に延伸する工程
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法としては、この方法のほかに、国際公開第2005/007731号に記載された方法により製造することも可能である。
【0030】
熱分解型発泡剤としては、特に制限はなく、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これらの中では、アゾジカルボンアミドが好ましい。なお、熱分解型発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1〜12質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましい。熱分解型発泡剤の含有量が上記範囲内であると、ポリオレフィン系樹脂組成物の発泡性が向上し、所望の発泡倍率を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートを得やすくなると共に、引張強度及び圧縮回復性が向上する。
【0031】
前記工程(1)において用いるその他の添加剤としては、例えば、分解温度調整剤、架橋助剤、酸化防止剤等が挙げられる。
分解温度調整剤は、熱分解型発泡剤の分解温度を低くしたり、分解速度を速めたり調節するものとして配合されるものであり、具体的な化合物としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。分解温度調整剤は、発泡シートの表面状態等を調整するために、例えばポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部配合する。
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。架橋助剤をポリオレフィン系樹脂に添加することによって、後述する工程(2)において照射する電離性放射線量を低減して、電離性放射線の照射に伴う樹脂分子の切断、劣化を防止する。
架橋助剤としては具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物や、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
これらの架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用する。
架橋助剤の添加量は、樹脂成分100質量部に対して0.2〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が更に好ましい。該添加量が0.2質量部以上であると発泡シートが所望する架橋度を安定して得ることが可能となり、10質量部以下であると発泡シートの架橋度の制御が容易となる。
また、酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させる方法としては、特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物を熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴により加熱する方法、オイルバスにより加熱する方法等が挙げられ、これらは併用してもよい。
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物の発泡は、熱分解型発泡剤を用いる例に限定されず、ブタンガス等による物理発泡を用いてもよい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物に電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法、ポリオレフィン系樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、ポリオレフィン系樹脂組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等が挙げられ、これらの方法は併用されてもよい。これらの中では、電離性放射線を照射する方法が好ましい。
電離性放射線の照射量は、ゲル分率が5〜60質量%となるように、0.5〜20Mradが好ましく、3〜12Mradがより好ましい。
【0034】
架橋に使用する有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が上記範囲内であると、ポリオレフィン系樹脂組成物の架橋が進行しやすく、また、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート中に有機過酸化物の分解残渣の量を抑制する。
【0035】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、上記したように、延伸されていることが好ましい。延伸はポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させて発泡シートを得た後に行ってもよいし、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させつつ行ってもよい。なお、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸したほうがよいが、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。
【0036】
また、ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率は、1.1〜3.0倍が好ましく、1.3〜2.8倍がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率を上記下限値以上とすると、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が良好になりやすくなる。一方、上限値以下とすると、発泡シートが延伸中に破断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が低下したりすることが防止され、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性や引張強度が良好になり、品質も均一なものとしやすくなる。また、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、TD方向にも上記範囲の延伸倍率で延伸されてもよい。
【0037】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、本発明に係る発泡シートを基材として用い、発泡シートの一方の面又は両面に粘着剤層を設けたものである。粘着テープの厚さは、通常0.03〜2.0mm、好ましくは0.05〜1.0mmである。
粘着テープを構成する粘着剤層の厚さは、5〜200μmが好ましく、7〜150μmがより好ましく、10〜100μmが更に好ましい。粘着テープを構成する粘着剤層の厚さが5〜200μmであると、粘着テープの厚さを薄くすることができると共に、粘着テープが使用される電子機器自体の小型化、及び薄厚化に寄与することができる。
【0038】
発泡シートの一方の面又は両面に設けられる粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いる。
発泡シートに粘着剤を塗布して、粘着剤層を発泡シート上に積層する方法としては、例えば、発泡シートの少なくとも一方の面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、発泡シートの少なくとも一方の面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、発泡シートの一方の面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0039】
本発明の発泡シートを用いた粘着テープは、携帯型電話機やビデオカメラ等の電子機器本体内に内装される電子部品に衝撃が加わるのを防止する衝撃吸収材や、電子機器本体内に埃や水分等が浸入するのを防止するシール材として用いることができる。
【実施例】
【0040】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
[測定方法]
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
<密度及び発泡倍率>
ポリオレフィン系樹脂発泡シートの密度を、JIS K7222に準拠して測定し、その逆数を発泡倍率とした。
【0042】
<ゲル分率(架橋度)>
ポリオレフィン系樹脂発泡シートから約50mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を105℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式によりゲル分率(質量%)を算出する。
ゲル分率(質量%)=(B/A)×100
【0043】
<MD方向、TD方向及びZD方向の平均気泡径、及び最大気泡径>
実施例及び比較例で得られた発泡シートを50mm四方にカットしたものを測定用の発泡体サンプルとして用意した。これを液体窒素に1分間浸した後にカミソリ刃でMD方向、TD方向及びZD方向に沿ってそれぞれ厚さ方向に切断した。この断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD方向、TD方向及びZD方向のそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての独立気泡について気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡の平均値をMD方向、TD方向及びZD方向の平均気泡径とした。
また、測定した気泡径のうち、最も大きい気泡の長さを最大気泡径とした。
【0044】
<MD方向及びTD方向の破断点強度>
ポリオレフィン系樹脂発泡シートをJIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットした。これを試料として用い、測定温度23℃で、MD方向及びTD方向の破断点強度をJIS K6767に準拠して測定した。
【0045】
<層間強度>
発泡シートの25mm角の範囲にプライマー(セメダイン株式会社製「PPXプライマー」)を塗布した後、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤(セメダイン株式会社製「PPX」)を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に25mm角のアルミ製治具Aを置き、発泡シートと治具Aとを圧着した。その後、治具Aの大きさに沿って発泡シートをカットした。カットした発泡シートの治具Aを接着していない面にプライマーを塗布し、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に10mm角のアルミ製治具Bを置き、発泡シートと治具Bとを圧着した。治具Bの周辺にはみ出した接着剤をふき取った後、治具Bの大きさに沿って発泡シートに切り込みを入れた。これを室温で30分間放置することで接着剤を養生し、層間強度測定用サンプルとした。
続いて、1kNのロードセルを設置した試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)に、発泡シートのシート面が引張方向に対して垂直になるように層間強度測定用サンプルを取り付けた。治具の一方を速度100mm/分で垂直上向きに引っ張り、発泡シートの1cm角の範囲のみを層間剥離させた。このときの荷重を測定し、その最大値を層間強度とした。
【0046】
<25%圧縮強度>
25%圧縮強度は、ポリオレフィン系樹脂発泡シートをJIS K6767に準拠して測定したものをいう。
【0047】
<耐電圧値>
幅0.7mmにおける耐電圧値は以下の方法にしたがって測定した。
幅0.7mm、長さ100mmのテープ形状のポリオレフィン系樹脂発泡シートを、2枚のアクリル板の間に厚さ方向に挟みこみ、かつ、アクリル板間に配置された2枚のアルミ板で幅方向に挟んだ。これを23℃、50%RHの条件下で耐電圧試験機として菊水電子工業株式会社製「TOS501(最大電圧12kV)」を用いて、直流で幅方向に電圧を印加して、その電圧で30秒間通電がなければ0.5kV刻みで印加電圧を上昇させた。通電した時の電圧を耐電圧性の電圧値とした。なお、本測定では、0.1mA以下であるときを通電なしとし、また、MD方向,TD方向のそれぞれをテープの幅方向として測定し、下記評価基準にしたがって判定した。
(評価基準)
MD方向,TD方向の測定値のいずれもが10kV以上であれば、耐電圧性能が良好であるとして「1」と評価した。
MD方向,TD方向の測定値のいずれか一方が10kV未満で、両方が8kV以上であれば、耐電圧性能が実使用可能であるとして「2」と評価した。
MD方向,TD方向の測定値のいずれか一方が8kV未満であれば、耐電圧性能が良好ではないとして「3」と評価した。
幅1.0mmにおける耐電圧値は、幅1.0mm、長さ100mmのテープ形状のポリオレフィン系樹脂発泡シートを用いたこと以外は、幅0.7mmにおける耐電圧値と同様の方法で測定した。
【0048】
実施例1
ポリオレフィン系樹脂としての直鎖状低密度ポリエチレン(ポリオレフィン系樹脂A:エクソンケミカル社製「Exact3027」、密度:0.900g/cm3)100質量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド4.5質量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1質量部、及び酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.5質量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さ約0.3mmの長尺シート状の発泡体組成物を押出した。
次に、上記長尺シート状の発泡体組成物を、その両面に加速電圧500kVの電子線を4.5Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させると共に、発泡させながらMDの延伸倍率を1.4倍、TDの延伸倍率を1.8倍として延伸させることにより、厚さ0.06mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートの評価結果を表1に示す。
【0049】
実施例2〜6、比較例1〜4
ポリオレフィン系樹脂組成物の配合を表1及び2に示すように変更すると共に、架橋時の線量を表1及び2のゲル分率(架橋度)となるように調整した点、TDの延伸倍率を1.4倍〜2.0倍に調整した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0050】
実施例7、比較例5
ポリオレフィン系樹脂としてのエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(ポリオレフィン系樹脂B:三菱化学株式会社製「ノバテックEVA」)70質量部、ポリオレフィン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(ポリオレフィン系樹脂C:株式会社プライムポリマー社製「エバフレックス460-H」)30質量部を用い、その他の成分については表1及び2の配合にしたがい、架橋時の線量を表1及び2のゲル分率(架橋度)となるように調整したこと、TDの延伸倍率を1.4倍〜2.0倍に調整したこと以外は実施例1と同様に実施した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
上記の結果より明らかなように、本発明によれば、衝撃吸収性及び耐衝撃性に優れると共に、耐電圧性を備える薄厚のポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供することができる。