(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、電気駆動作業車両の一例として電気駆動ダンプトラックを示して説明するが、例えば、電気駆動ホイールローダのような他の電気駆動作業車両であっても本発明の適用が可能である。
【0011】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1〜
図13参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る電気駆動ダンプトラックの外観を模式的に示す側面図である。また、
図2は、電気駆動ダンプトラックの回生制動システムを含む電気駆動システムを概略的に示す図である。なお、
図1においては、従動輪、駆動輪、及び、走行モータ等は、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方については図中に括弧書きで符号のみを示して図示を省略する。
【0013】
図1及び
図2において、電気駆動ダンプトラック100は、前後方向に延在して支持構造体を形成する車体フレーム1と、車体フレーム1の上部に前後方向に延在するように配置され、その後端下部をピン結合部5aを介して車体フレーム1に傾動可能に設けられた荷台(ベッセル)5と、車体フレーム1の下方前側左右に設けられた一対の従動輪(前輪)2L,2Rと、車体の下方後側左右に設けられた一対の駆動輪(後輪)3L,3Rと、車体フレーム1の上方前側に設けられた運転室(キャブ)4と、車体フレーム1の下方に設けられた燃料タンク9と、車体フレーム1上に配置され、燃料タンク9から供給される燃料により駆動するエンジン11(
図2参照)と、エンジン11に接続されて駆動される主機発電機12(第一の発電機)及び主機発電機12から出力される電力を用いて車輪(駆動輪3L,3R)を駆動する走行モータ10L,10R等を有する電気駆動システム(
図2参照)とから概略構成されている。走行モータ10L,10Rは、図示しない減速機とともに駆動輪3L,3Rの回転軸部に収められている。車体フレーム1と荷台5とはホイストシリンダ6により接続されており、ホイストシリンダ6の伸縮によって荷台5がピン結合部5aを中心に回動される。
【0014】
車体フレーム1には、オペレータが歩行可能なデッキが取り付けられており、オペレータはデッキを介して運転室4への移動が可能である。運転室4の内部には、図示しないアクセルペダル、ブレーキペダル、ホイストペダル、ハンドルなどが設置されている。オペレータは運転室4内のアクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み量により電気駆動ダンプトラック100の加速力や制動力を制御し、ハンドルを左右に回転させることによって油圧駆動による操舵操作を行い、ホイストペダルを踏み込むことにより油圧駆動による荷台5のダンプ操作を行う。
【0015】
運転室4の後方には、各種電力機器が収納されたコントロールキャビネット8と、余剰エネルギーを電力消費装置15(
図2参照)などによって熱として放散するための複数のグリッドボックス7とが搭載されている。なお、
図1には図示しないが、左右の前輪2L,2Rの間に位置する車体フレーム1上には、
図2に示すエンジン11や主機発電機12の他に、補機類用の電力源である補機発電機41や油圧機器用の油圧源であるメインポンプ(図示せず)などが搭載されている。
【0016】
図2において、電気駆動ダンプトラック100の回生制動システムは、エンジン11に接続される主機発電機12(第一の発電機)および補機発電機41(第二の発電機)と、主機発電機12に接続され、主機発電機12の出力を整流して直流電力として主機直流ライン16(第一の直流ライン)に出力する主機整流回路14(第一の整流回路)と、主機直流ライン16と走行モータ10L,10Rとの間に接続される走行モータ用のインバータ13L,13Rと、主機直流ライン16の電力を消費可能な電力消費装置15と、補機発電機41に接続され、補機発電機41の出力を整流して直流電力として補機直流ライン43(第二の直流ライン)に出力する補機整流回路42(第二の整流回路)と、補機直流ライン43に接続される補機装置44と、主機直流ライン16の電力を変換して補機直流ライン43に供給する電力変換装置21(第一の電力変換装置)と、蓄電装置31と、補機直流ライン43の電力を変換して蓄電装置31に供給する充電動作と、蓄電装置31の電力を変換して補機直流ライン43に供給する放電動作とを切り換えて行う電力変換装置32(第二の電力変換装置)と、エンジン11や主機発電機12、補機発電機41、電力消費装置15、電力変換装置21、電力変換装置32などの動作を制御する制御装置50とを備えている。
【0017】
主機整流回路14は、主機発電機12の出力を整流して直流電力として主機直流ライン16に出力するものである。また、補機整流回路42は、補機発電機41の出力を整流して直流電力として補機直流ライン43に出力するものである。主機整流回路14及び補機整流42は、それぞれ、例えば、ダイオードを用いて構成される。なお、主機整流回路14及び補機整流回路42の代わりにスイッチング素子を用いたAC/DCコンバータを用いてもよい。ここで、補機整流回路42による整流後の補機発電機41の出力電流を(IG)と定義する。以降の説明においては、出力電流IGを補機発電機41の出力電流として扱う。
【0018】
主機発電機12及び補機発電機41は、それぞれ、例えば、巻線励磁型の同期発電機であり、アクチュエータである励磁装置がそれぞれに付属されている。ただし、主機発電機12及び補機発電機41として他種の発電機を適用することも可能であり、例えば、主機整流回路14又は補機整流回路42としてとしてAC/DCコンバータを用い、永久磁石同期発電機を用いることができる。
【0019】
インバータ13L,13Rは、スイッチング素子として、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いて構成される。インバータ13L,13Rの直流入力は主機直流ライン16に接続され、交流出力は走行モータ10L,10Rに接続される。
【0020】
電力消費装置15は、制御装置50からの指令信号に基づいて、主機直流ライン16の電力を消費する(すなわち、熱エネルギーに変換して放熱する)ものであり、主機直流ライン16の正負の2極間に直列に接続されてチョッパを構成するスイッチング素子152及びダイオード153と、スイッチング素子152に並列に接続される抵抗151とを有している。抵抗151は、グリッドボックス7に搭載されている。スイッチング素子152としては、例えば、IGBTが用いられる。
【0021】
補機装置44は、例えば、エアコン用のインバータ及びコンプレッサモータシステムや、機器冷却用のインバータ及びブロアモータシステムなどである。したがって、補機装置44の消費電力(補機消費電力)は、電気駆動ダンプトラック100の走行状態に応じて変化する。なお、
図2においては、これらを1個の等価インピーダンスとみなして補機装置44として図示している。
【0022】
電力変換装置21は、後述する回生期間において、主機系(主機直流ライン16)の主機直流電圧Viを補機直流電圧Voに変換して、補機系(補機直流ライン43)に供給するものであり、所謂、DC/DCコンバータである。ここで、電力変換装置21の補機直流ライン43への出力電流をIDと定義する。
【0023】
主機直流ライン16の正負の2極間には、主機直流ライン16の電圧(主機直流電圧Vi)を検出する電圧検出器17が接続されている。電圧検出器17で検出された電圧値(検出値)は制御装置50に出力される。
【0024】
補機直流ライン43の正負の2極間には、補機直流ライン43に発生する補機直流電圧(第二の直流電圧:Vo)を検出する電圧検出器45が接続されている。また、補機直流ライン43の正負の2極の一方には、補機直流ライン43に発生する直流電流(ID)を検出する電流検出器29が挿入されている。電圧検出器45で検出された電圧値(検出値)および電流検出器29で検出された電流値(検出値)は制御装置50に出力される。
【0025】
電力変換装置32は、蓄電装置31に蓄えられている電力(電圧VB)を(Vo)に変換して補機直流ライン43に供給する放電動作と、補機直流ライン43の電力(電圧Vo)を(VB)に変換して蓄電装置31に供給する充電動作とを切り換えて行うものであり、所謂、双方向DC/DCコンバータである。ここで、蓄電装置31の正負の2極間の直流電圧をVB、蓄電装置31からの電力変換装置32への出力電流をIB、電力変換装置32により変換されて補機直流ライン43に出力される電流をIB’と定義する。なお、電流IBおよび電流IB’は、蓄電装置31から補機直流ライン43に出力される方向の流れ、すなわち、蓄電装置31が放電する方向の流れを正とし、補機直流ラインから蓄電装置31に入力される方向の流れ、すなわち、蓄電装置31が充電する方向の流れを負とする。以降の説明においては、電流IB’を電力変換装置32の出力電流として扱う。後述するように、電力変換装置32の蓄電装置31側および補機直流ライン43側の両端子には、それぞれコンデンサが接続される。これらのコンデンサの静電容量が十分に大きく、かつ、電力変換装置32の損失を無視できると仮定すれば、定常状態においてIB’=IB×VB/Voが成り立つ。
【0026】
蓄電装置31の正負の2極の一方には、蓄電装置31と電力変換装置32との間に発生する直流電流(IB)を検出する電流検出器33が挿入されている。電流検出器33で検出された電流値(検出値)は制御装置50に出力される。なお、蓄電装置31と電力変換装置32の間には、電流検出器33の他に、ヒューズ、リレー、遮断器などを挿入してもよい。
【0027】
以上のように、
図1の回生制動システムでは、主機発電機12から電力変換装置21を介して供給される電力と、蓄電装置31から電力変換装置32を介して供給される電力と、補機発電機41から供給される電力とが補機装置44に供給される電力の電源となる。ここで、電流ID,IB’,IGの合成電流を補機装置44の電源電流として補機電源電流IA(=ID+IB’+IG)と定義する。
【0028】
制御装置50には、電圧検出器17からの検出値Viと、電圧検出器45からの検出値Voと、電流検出器33からの検出値IBとがそれぞれ入力される。また、制御装置50には、車両情報信号SVが入力される。車両情報信号SVは、電気駆動作業車両である電気駆動ダンプトラック100の車体速度情報や、オペレータの操作入力情報(アクセルペダルやブレーキペダルの操作量など)といった複数の情報を含んでいる。なお、
図1では図示を省略したが、制御装置50は、インバータ13の交流出力電流、走行モータ10の回転速度、エンジン11の回転速度など、他の情報が入力されるようにしてもよい。
【0029】
制御装置50は、検出信号に基づいて上述の各機器に制御信号を出力し、電気駆動システム内のエネルギーフローを制御する。
図1では、制御装置50からエンジン11、主機発電機12、インバータ13L,13R、電力消費装置15、電力変換装置21、電力変換装置32、補機発電機41への制御信号を示した。主機発電機12と補機発電機41の動作を制御する制御信号は、励磁電圧または電流の指令値である。すなわち、主機発電機12と補機発電機41の励磁装置は、制御装置50からの指令値に従って励磁電圧または電流を制御する。
【0030】
図3は、主機系と補機系の間の電力変換装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【0031】
電力変換装置21の主機直流ライン16側の入力端子には、インバータ22の直流入力端子とコンデンサ23とが接続されている。インバータ22の交流出力端子は、トランス24の一次巻線に接続されている。トランス24の二次巻線は、整流回路25の交流入力端子に接続されている。整流回路25の直流出力端子は、チョークコイル26とコンデンサ27とから成るフィルタ回路を介して電力変換装置21の補機直流ライン43側の出力端子に接続される。
【0032】
駆動制御装置28は、制御装置50から入力される制御信号に基づき、インバータ22を構成する素子Q1〜Q4の駆動電圧を出力する。インバータ22は、電力変換装置21に入力される主機直流電圧Viを交流電圧Vtrに変換し、トランス24の一次巻線に印加する。トランス24は、電力変換装置21の入出力間を絶縁しつつ、一次巻線に印加された電圧を変圧して二次巻線に交流電圧を発生させる。この交流電圧は、整流回路25によって直流電圧に変換され、フィルタ回路を介して電力変換装置21から出力される。
【0033】
なお、電力変換装置21としては、DC/DCコンバータであれば他の回路構成を利用してもよい。また、インバータ22の回路方式として4個の素子Q1〜Q4を備えるフルブリッジインバータ回路を例示したが、他の回路方式であってもよい。例えば、
図2では、素子Q1〜Q4をIGBTとした場合を例示したが、MOSFETなどの他種の素子を利用してもよい。また、整流回路25の回路方式として4個のダイオードD1〜D4で構成されるフルブリッジ整流回路を例示したが、他の回路方式であってもよい。また、電力変換装置21は上記の要素の他にも、ブレーカやリレーなどの制御部品、ヒューズやサージプロテクタなどの保護部品、ノイズフィルタを備えていてもよい。
【0034】
図4は、主機系と補機系の間の電力変換装置の動作波形の一例を示す図である。
【0035】
図4においては、素子Q1〜Q4のスイッチング動作2周期分の動作波形を示した。
図4の縦軸項目として、素子Q1〜Q4の駆動信号(オン・オフ信号)、トランス24の一次巻線電圧Vtr、出力電流ID、チョークコイル26の電流ILdを示した。出力電流IDと電流ILdについては重ねて示し、出力電流IDを破線とした。なお、
図4では、電力変換装置21の動作の概要を示すものであり、回路の寄生容量や寄生インダクタンスが引き起こす電圧・電流振動、及び、素子の電圧降下を無視するものとする。また、
図4に示した期間においては、主機直流電圧Viと補機直流電圧Voはそれぞれ一定とした。また、コンデンサ27の静電容量が十分大きいと仮定し、出力電流IDは一定とした。
【0036】
素子Q1,Q4がオンの期間では、電圧Vtrの絶対値は電圧Viと等しくなり、電圧Vtrの極性は正となる。素子Q2,Q3がオンの期間では、電圧Vtrの絶対値は電圧Viと等しくなるが、電圧Vtrの極性は負となる。これらの期間では電流ILdが時間とともに増大する。全素子(素子Q1〜Q4)がオフの期間では、電圧Vtrはゼロになり、電流ILdが時間とともに減少する。以上のように電流ILdは増減を繰り返し、その平均値が出力電流IDとなる。ここで、
図4に示すように、スイッチング周期をTswと定義し、素子Q1,Q4(または素子Q2,Q3)のオン時間をTonと定義する。このとき、パルス幅変調(PWM: Pulse Width Modulation)におけるデューティdDは(2Ton)/Tswとなる。すなわち、デューティdDを制御することで、電力変換装置21の出力電圧Voを制御することができる。電圧Viが一定であれば、デューティdDを大きくするほど電力変換装置21の出力電圧Voは高くなる。
【0037】
図5は、蓄電装置と補機直流ラインの間の電力変換装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【0038】
電力変換装置32は、2個の素子Q5,Q6による上下アーム(ハーフブリッジ回路)34と、チョークコイル35と、コンデンサ36,37とにより構成されている。駆動制御装置38は、制御装置50から入力される制御信号に基づいて、素子Q5,Q6の駆動電圧を出力する。
【0039】
図6及び
図7は、蓄電装置と補機直流ラインの間の電力変換装置の動作波形の一例を示す図であり、
図6は蓄電装置の放電時の様子を、
図7は蓄電装置の充電時の様子をそれぞれ示している。
【0040】
図6及び
図7においては、素子Q5,Q6のスイッチング動作2周期分の動作波形を示した。
図6及び
図7の縦軸項目として、素子Q5,Q6の駆動信号(オン・オフ信号)、上下アーム34の出力電圧Vch、充放電電流IB、チョークコイル35の電流ILbを示した。電流IBと電流ILbについては重ねて示し、電流IBを破線とした。なお、
図6及び
図7では、回路の寄生容量や寄生インダクタンスが引き起こす電圧・電流振動、及び、素子の電圧降下を無視するものとする。また、
図6及び
図7に示した期間においては、蓄電装置31の電圧VBと補機直流電圧Voはそれぞれ一定とした。また、コンデンサ36の静電容量が十分大きいと仮定し、電流IBは一定とした。また、図示については省略するが、コンデンサ37の静電容量も十分大きく、電流IB’も一定であるものとする。
【0041】
図6では、電力変換装置32が蓄電装置31を放電しており、電流IBが正となっている。このとき、電力変換装置32のコンデンサ36が接続される側(
図5の左側)の端子が入力、コンデンサ37が接続される側(
図5の右側)の端子が出力になる。素子Q5は常時オフ状態である。素子Q6がオンの期間では、電圧Vchは0(ゼロ)となり、チョークコイル35に電圧VBが印加される。電流ILbが時間とともに増大し、チョークコイル35にエネルギーが蓄えられる。素子Q6がオフの期間では、チョークコイル35に蓄えられたエネルギーが素子Q5の逆並列ダイオードを通して出力側へと放出され、電流ILbは時間とともに減少する。このとき、電圧Vchが出力電圧(補機直流電圧Vo)となる。以上のように電流ILbは増減を繰り返し、その平均値が電流IBとなる。ここで、
図6に示すように、スイッチング周期をTswと定義し、素子Q6のオン時間をTon6と定義する。このとき、PWMにおけるデューティdB6はTon6/Tswとなる。デューティdB6は、放電時における電力変換装置32の操作量となる。電圧VBを一定とすると、デューティdB6を大きくするほど電力変換装置32の出力電圧Voは高くなる。
【0042】
図7では、電力変換装置32が蓄電装置31を充電しており、電流IBが負となっている。このとき、電力変換装置32のコンデンサ37が接続される側(
図5の右側)の端子が入力、コンデンサ36が接続される側(
図5の左側)の端子が出力になる。素子Q6は常時オフ状態である。素子Q5がオンとなり、電圧Vchが電圧Voとなる期間では、素子Q5とチョークコイル35を介して、入力側から出力側へと電流が流れる。電流ILbの絶対値は時間とともに増大する。素子Q5がオフになると、素子Q6の逆並列ダイオードが導通して電圧Vchが0(ゼロ)となり、電流ILbの絶対値は時間とともに減少する。ここで、
図7に示すように、スイッチング周期をTswと定義し、素子Q5のオン時間をTon5と定義する。このとき、PWMにおけるデューティdB5はTon5/Tswとなる。デューティdB5は、充電時における電力変換装置32の操作量となる。電圧Voを一定とすると、デューティdB5を大きくするほど出力VBは高くなる。
【0043】
ここで、デューティdB5,dB6を1つにまとめ、正負極性を持つデューティdBを定義する。駆動制御装置38には、制御装置50からの制御信号としてdBが入力される。駆動制御装置38は、制御信号dBが正の場合には、デューティdB6=dBとして
図6に示したように素子Q6のオン・オフを制御する。一方、制御信号dBが負の場合には、デューティdB5=|dB|として
図7に示したように素子Q5のオン・オフを制御する。すなわち、制御信号dBが正の場合に放電を、負の場合に充電を表す。なお、定常状態では電流ILbの平均値が電流IBとなる。すなわち、
図2においては、制御装置50が電流検出器33の検出値(電流IB)を用いる構成を例示したが、電流IBの代わりに電流ILbを検出してその平均値を用いる構成としてもよい。
【0045】
図2に示したように、制御装置50は、駆動制御部51と、主機電圧制御部52と、補機電圧制御部53とを備えている。
【0046】
駆動制御部51は、車両情報信号SVに含まれるアクセルペダルやブレーキペダルの操作量にしたがってエンジン11とインバータ13に制御信号を出力する。後述するように、電圧Viは加速時において主機発電機12によって制御され、制動時において電力消費装置15によって制御される。
【0047】
主機電圧制御部52は、入力される車両情報信号SVから加速または減速(制動)を判定し、電圧Viが所定の指令値と一致するように主機発電機12または電力消費装置15に制御信号を出力する。
【0048】
補機電圧制御部53は、補機直流電圧Voが所定の指令値と一致するように、補機電源である補機発電機41、電力変換装置21、及び、電力変換装置32に対して制御信号を出力する。すなわち、電圧Voは、補機発電機41、電力変換装置21、電力変換装置32の三点の補機電源によって制御される。補機電圧制御部53にも、駆動制御部51や主機電圧制御部52と同様に車両情報信号SVが入力される。
【0049】
なお、制御装置50では、後述するように電流IBを検出してこれを制御するが、電流IBの代わりに電流IB’を検出して制御する構成としてもよい。その場合には、電流検出器33の接続位置を電流IB’を検出可能な位置に変更し、前述の関係式(IB’=IB×VB/Vo)を用いて電流指令値を変換すればよい。
【0050】
制御装置50の実現方法については任意であるが、一例として基板上に電子回路として実装する方法がある。この場合、基板にはCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコンピュータ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのデバイスが搭載される。後述する補機電圧制御部53の演算内容は、これらのデバイスで実行されるプログラム等により実現される。なお、制御装置50は複数の演算ブロックを備えるため、各演算ブロックを別々の基板またはデバイスに実装し、これらをまとめて制御装置50を構成してもよい。また、一つの演算ブロックを複数の基板またはデバイスに分割して実装してもよい。例えば、補機電圧制御部53は、補機発電機41、電力変換装置21、電力変換装置32の制御信号を生成するが、各制御信号の生成を別の基板またはデバイスに割り当ててもよい。
【0051】
ここで、電気駆動システムの基本的なエネルギーフローについて説明する。
【0052】
まず、加速時における電気駆動システムのエネルギーフローについて説明する。エンジン11により主機発電機12が駆動されると、主機発電機12が出力する交流電圧は主機整流回路14によって主機直流電圧Viに変換され、インバータ13に入力される。オペレータがアクセルペダルを踏み込むと、インバータ13から走行モータ10に交流電力が供給され、走行モータ10は車輪を駆動して車体を加速させる。この場合、主機直流電圧Viは主機発電機12によって制御される。エンジン11により補機発電機41が駆動されると、補機発電機41が出力する交流電圧は補機整流回路42によって直流に変換され、補機装置44に入力される。また、電力変換装置32によって蓄電装置31を放電し、放電電力を補機装置44に供給することができる。
【0053】
次に、制動時、すなわち、走行モータ10の回生期間におけるエネルギーフローについて説明する。オペレータがブレーキペダルを踏み込むと、走行モータ10は車体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、インバータ13を介して主機直流ライン16へ回生電力を出力する。すなわち、走行モータ10は発電機として動作する。電力消費装置15は、回生電力を熱に変換し、主機直流電圧Viが過大になることを防ぐ。したがって、この場合の主機直流電圧Viは電力消費装置15によって制御される。電力変換装置21は、主機直流電圧Viを補機直流電圧Voに変換し、回生電力の一部を補機直流ライン43に出力する。補機直流ライン43に出力された電力は、補機装置44によって消費されるか、または、電力変換装置32を介して蓄電装置31に蓄えられる。このように回生電力が消費されることで電気ブレーキがかかり、車体は減速する。なお、車体の制動には、電気ブレーキと図示しない機械ブレーキを併用してもよい。
【0054】
制動時では、電力変換装置21が補機装置44に給電するため、その分だけ補機発電機41、ひいてはエンジン11の負荷が低減される。このような動作によって、制動時に発生する回生電力を補機で有効利用でき、その分だけダンプトラックの省エネルギー化・燃料消費量低減を実現できる。これが本発明における回生制動システムである。
【0055】
次に、制御装置50の補機電圧制御部53の処理内容について説明する。
【0056】
図8は、補機電圧制御部の処理内容を示す機能ブロック図である。
【0057】
図8において、補機電圧制御部53は、補機直流電圧Voを制御するための電圧制御系60(第一の電圧制御系)、電圧制御系70(第二の電圧制御系)、電圧制御系80(第三の電圧制御系)を備えている。
【0058】
電圧制御系60は、電圧Voが第一の電圧指令値と一致するように補機発電機41を制御するための演算を行う。また、電圧制御系70は、電圧Voが第二の電圧指令値と一致するように電力変換装置32を制御するための演算を行う。また、電圧制御系80は、電圧Voが第三の電圧指令値と一致するように電力変換装置21を制御するための演算を行う。
【0059】
本実施の形態においては、第一の電圧指令値と第三の電圧指令値がV1に、第二の電圧指令値がV2にそれぞれ設定される。このとき、電圧V2>V1となるように設定される。なお、電圧Voには補機装置44が正常に動作するための許容範囲(動作電圧仕様)が耐電圧特性や動作特性などに基づいて予め定められており、電圧V1,V2はその許容範囲内の値とする。
【0060】
補機電圧制御部53は、回生期間の判定を行い、判定結果に基づいて電力変換装置21と補機発電機41のオン・オフ制御を行う。回生期間判定部54は、車両情報信号SVに基づいて回生期間の判定を行い、回生期間判定信号SRを生成する。回生期間判定信号SRの例としては、回生期間においてH(ハイ)レベル、回生期間ではない期間(以下、非回生期間と称する)においてL(ロー)レベルとなるようなディジタル信号が考えられる。回生期間判定信号SRは、後述のオン・オフ切換部81(第二のオン・オフ切換部)と61(第一のオン・オフ切換部)、上限値設定部71(第一の上限値設定部)に出力される。
【0061】
車両情報信号SVには、車体速度情報やオペレータの操作入力情報が含まれる。例えば、オペレータのブレーキペダル操作、または、車体の減速といった情報から、回生期間であるか否かを判定できる。なお、図示については省略するが、インバータ13の交流出力電流を検出して走行モータ10のトルクを計算し、これと走行モータ10の回転速度から回生電力を計算することによって、回生期間の判定を行ってもよい。このとき、回生電力が所定の閾値より大きい場合に、回生期間であると判定する。検出されたインバータ13の交流出力電流を利用する代わりに、駆動制御部51で演算される電流指令値を用いてもよい。以上から、回生期間判定部54には、車両情報信号SVだけでなく、回生期間の判定に必要な他の情報を入力してもよい。
【0062】
オン・オフ切換部81は、電力変換装置21のオン・オフ制御に関連し、回生期間において電力変換装置21を動作させる(オン状態とする)ようにオン・オフ信号SDを生成する。生成されたオン・オフ信号SDは、後述のオン・オフ制御部82(第二のオン・オフ制御部)に出力される。オン・オフ信号SDの例としては、オン状態においてH(ハイ)レベル、オフ状態においてL(ロー)レベルとなるようなディジタル信号が考えられる。この場合、オン・オフ信号SDは回生期間判定信号SRと同じになる。
【0063】
オン・オフ切換部61は、補機発電機41のオン・オフ制御に関連し、非回生期間において補機発電機41を動作させる(オン状態とする)するようにオン・オフ信号SGを生成する。生成されたオン・オフ信号SGは、後述のオン・オフ制御部62(第一のオン・オフ制御部)に出力される。オン・オフ信号GSの例としては、オン状態においてH(ハイ)レベル、オフ状態においてL(ロー)レベルとなるようなディジタル信号が考えられる。この場合、オン・オフ信号SGは回生期間判定信号SRを反転させた信号SPと同じになる。
【0064】
図9は、回生期間判定部による電力変換装置と補機発電機のオン・オフ切換の処理内容を示すフローチャートである。補機電圧制御部53の演算がCPUにおいてプログラム等により実現される場合には、
図9に示すフローチャート基づいたオン・オフ切換の処理が周期的に実行される。
【0065】
図9において、回生期間判定部54は、まず、車両情報信号SVに基づいて回生期間であるか否かを判定し、判定結果に応じた回生期間判定信号SRを生成する(ステップS100)。続いて、回生期間であるか否か、すなわち、回生期間判定信号SRがオンであるか否かを判定し(ステップS110)、判定結果がYESの場合には、オン・オフ信号SDとしてH(ハイ)を出力することで電力変換装置21をオン状態に制御し、オン・オフ信号SGとしてL(ロー)を出力することで補機発電機41をオフ状態に制御し(ステップS111)、処理を終了する。また、ステップS110での判定結果がNOの場合、すなわち、回生期間ではないと判定した場合には、オン・オフ信号SDとしてL(ロー)を出力することで電力変換装置21をオフ状態に制御し、オン・オフ信号SGとしてH(ハイ)を出力することで補機発電機41をオン状態に制御し(ステップS112)、処理を終了する。
【0066】
ここで、電力変換装置21の制御演算について説明する。電圧制御系80は、電圧V1と電圧Voの偏差(V1−Vo)を計算した後、電圧制御演算部83にて電力変換装置21の操作量を計算してオン・オフ制御部82に出力する。具体的には、比例積分(PI: Proportional Integral)制御などの制御則に基づき、偏差が小さくなるように操作量を変化させる。電力変換装置21の構成では、PWMのデューティdDが操作量となる。オン・オフ制御部82はオン・オフ信号SDに基づいて、オン状態であれば、電圧制御演算部83が生成した操作量をそのまま出力する。オフ状態であれば、操作量をゼロに変更して出力する。オン・オフ制御部82の出力は、制御信号として電力変換装置21へと出力される。
【0067】
次に、補機発電機41の制御演算について説明する。電圧制御系60は、電圧V1と電圧Voの偏差(V1−Vo)を計算した後、電圧制御演算部63にて補機発電機41の操作量を計算してオン・オフ制御部62に出力する。前述の通り、補機発電機41として巻線励磁型の同期発電機を想定し、励磁電圧または電流の指令値を操作量とする。オン・オフ制御部62はオン・オフ信号SGに基づいて、オン状態であれば、電圧制御演算部63が生成した操作量をそのまま出力する。オフ状態であれば、操作量をゼロに変更して出力する。オン・オフ制御部62の出力は、制御信号として補機発電機41へと出力される。
【0068】
次に、電力変換装置32の制御演算について説明する。電圧制御系70はマイナーループとして、蓄電装置31の充放電電流IBを制御するための電流制御系72を備える。前述のように、電流IBの代わりに電流IB’や電流ILbを制御してもよい。電圧制御系70では、電圧V2と電圧Voの偏差(V2−Vo)を計算した後、電圧制御演算部73にて電流指令値を生成する。この電流指令値をリミッタ前電流指令値IBref1(第一の電流指令値)と定義する。具体的には、PI制御などの制御則に基づき、偏差を小さくするようにリミッタ前電流指令値IBref1を変化させる。リミッタ前電流指令値IBref1は、後段の可変リミッタ74に入力される。可変リミッタ74には、後述される電流上限値IBmaxも入力される。可変リミッタ74は、上限値をIBmaxとしてリミッタ前電流指令値IBref1にリミッタ処理を施し、リミッタ後電流指令値IBref2(第二の電流指令値)を生成する。リミッタ後電流指令値IBref2は電流制御系72に入力される。
【0069】
電流制御系72では、リミッタ後電流指令値IBref2と電流IBの偏差(IBref2−IB)を計算した後、電流制御演算部75にて電力変換装置32の操作量を演算して出力する。具体的には、PI制御などの制御則に基づき、偏差を小さくするように操作量を変化させる。電力変換装置32の構成では、PWMのデューティdBが操作量となる。電流制御演算部75が生成した操作量は、制御信号として電力変換装置32へと出力される。上限値設定部71は、回生期間判定信号SRからリミッタ前電流指令値IBref1の上限値IBmaxを生成して可変リミッタ74に出力する。IBmaxの具体的な生成方法については、動作タイミングチャートやブロック図とともに後述する。なお、図示については省略するが、電力変換装置21の電圧制御系80についても、電圧制御系70と同様にマイナーループとしての電流制御系を設け、電力変換装置21の出力電流IDや電流ILdを制御する構成としてもよい。
【0070】
図10及び
図11は、電気駆動システムの動作波形の一例を示すタイミングチャートであり、
図10は回生期間開始時の様子を、
図11は回生期間終了時の様子をそれぞれ示している。
【0071】
図10及び
図11の縦軸項目は、電力変換装置21と補機発電機41のオン・オフ信号SD,SG、補機直流電圧Vo、電力変換装置21の出力電流ID、蓄電装置31の充放電電流IB、補機発電機41の出力電流IGである。電流IBについては、電流上限値IBmaxを点線にて重ねて示した。また、図示した期間において補機装置44に入力される電流は一定とし、その値を電流I1として図中に記載した。なお、
図10及び
図11は、電圧や電流の変化の概形を示すものであり、これらが直線的に変化するように図示しているが、実際の電圧や電流は直線的に変化するとは限らない。
【0072】
まず、回生期間開始時の動作について説明する。
図10に示すように、時刻t1,t2を定義し、時刻t1にて回生期間が開始するものとする。すなわち、回生期間判定部54は、時刻t1にて回生期間が開始したと判定している。以下では、
図11を用いて、時刻t1以前の期間、時刻t1〜t2の期間、時刻t2以降の期間のそれぞれの動作について順に説明する。なお、
図10では、電流IBと電流IBmaxがほぼ重なった状態となる。このことは、後述のように、電流IBが可変リミッタ74に制限されていることを意味する。
【0073】
時刻t1以前の期間は非回生期間であり、電力変換装置21がオフ状態、補機発電機41がオン状態である。電力変換装置21がオフ状態であるため、電流IDは0(ゼロ)である。また、後述する理由によって、電圧Voは補機発電機41によって電圧V1に制御されている。
【0074】
上限値設定部71は、電流IBmaxをI3に設定する。I3は正の値または0(ゼロ)である。すなわち、電力変換装置32は蓄電装置31を放電できるが、放電電流IBは電流I3に制限される状態である。ここで、電流IBが電流I3に制御された場合、電力変換装置32の出力電流IB’は電流I3’になると定義する。電流IBと電流IB’の相互変換については、既に説明しているため省略する。電流I3は、I3’<I1を満たすように設定される。したがって、電力変換装置32だけでは全ての補機電力を供給できない状態である。電力の不足分はI1−I3’である。
【0075】
電力変換装置32用の電圧制御系70は、電圧Voを電圧V2へと増大させるように動作する。しかし、電圧制御系70において、電圧制御演算部73がリミッタ前電流指令値IBref1をいくら増大させても、可変リミッタ74によってリミッタ後電流指令値IBref2はIBmax=I3に制限される。上述のように、蓄電装置31を電流I3で放電させるだけでは全ての補機電力を供給できない。このように可変リミッタ74に掛かった状態では、電力変換装置32は定電流(CC: Constant Current)モードで動作することになり、電圧Voを電圧V2に制御することができない。定電流モードにおける電流指令値はIBmax=I3となる。電流制御系72によって電流IBは電流I3に制御され、電流IB’は電流I3’となる。
【0076】
補機発電機41用の電圧制御系60は、電圧Voを電圧V1に制御するように動作する。その結果、電圧Voは補機発電機41によって電圧V1に制御される状態となり、電流IGは上述の不足電流I1−I3’となる。
【0077】
なお、
図10では、電流IBmaxを電流I3で一定としたが、蓄電装置31の充電残量によって電流IBmaxを変化させてもよい。例えば、本実施の形態における電気駆動システムに対して、蓄電装置31の電圧VBを検出するための電圧検出器を追加すれば、電圧VBの検出値から充電残量を計算できる。また、電流IBの積算によって充電残量を計算してもよい。充電残量が下限値に達している場合、電流IBmaxをゼロにしてもよい。電流IBmaxがゼロであれば、電流IGはI1となり、補機発電機41だけで全ての補機電力を供給する状態となる。
【0078】
時刻t1〜t2の期間においては、時刻t1にて回生期間が開始し、電力変換装置21がオン状態に、補機発電機41がオフ状態になる。補機発電機41の励磁巻線電圧を0(ゼロ)にしても、励磁巻線のインダクタンスによって励磁電流は徐々に減少する。そのため、電流IGも徐々に0(ゼロ)まで減少する。
【0079】
時刻t1からt2にかけて、上限値設定部71は電流IBmaxを負の値(−I2)へと徐々に減少させる。ここで、電流I2>0(ゼロ)である点に注意されたい。
図10では、電流IBmaxを直線的に減少させた場合を例示したが、その限りではない。リミッタ後電流指令値IBref2は電流IBmaxにしたがって減少し、電流制御系72の動作によって電流IBも電流IBmaxにしたがって減少する。すなわち、上述の定電流モードが継続し、電流指令値が徐々に減少するような動作となる。電流IBmaxと共に電流IBが正から負に反転すると、蓄電装置31は放電から充電へと転じる。電流IB’も電流IBに合わせて減少する。ここで、電流IBが(−I2)に制御されるとき、電流IB’は電流(−I2’)になると定義する。
【0080】
電力変換装置21用の電圧制御系80は、電圧Voを電圧V1に制御するように動作を開始する。その結果、電力変換装置21は、上述のIGとIB’の減少に対して、補機電源電流IA ( = ID+IB’+IG )がI1と一致するようにIDを徐々に増大させる。IGがゼロに、IB’が-I2’になるとき、IDはI1+ I2’となる。上述のようにIBを徐々に減少させることによって、電力変換装置21の負荷変動が抑えられ、Voの過渡的な変動が小さくなる。なお、実際には、徐々に減少するIGとIB’が外乱となり、VoはV1より僅かに低くなる。
図8(a)ではこれを無視し、VoがV1に一致するものとした。
【0081】
時刻t2以降の期間においては、電圧Voは電力変換装置21によって電圧V1に制御される。電流IDはI1+I2’になり、電流IBは(−I2)になり、電流IGは0(ゼロ)になる。このとき、蓄電装置31は充電状態であり、充電電流の大きさは電流I2である。このように、回生期間において、電力変換装置21は、補機消費電力を全て供給しつつ、電力変換装置32が蓄電装置31を充電するための電力を供給する。回生期間の開始後、補機電源は補機発電機41から電力変換装置21に切り換えられる。
【0082】
なお、
図10では、電流IBmaxを電流(−I2)で一定としたが、蓄電装置31の充電残量によって電流IBmaxを変化させてもよい。例えば、充電残量が上限値に達している場合には、電流IBmaxをゼロにしてもよい。回生期間において蓄電装置31を充電することで、後述の放電に必要なエネルギーが蓄えられる。
【0083】
次に、回生期間終了時の動作について説明する。
図11に示すように、時刻t3,t4,t5を定義する。時刻t3にて、回生期間が終了するものとする。以下では、
図11を用いて、時刻t3〜t4の期間、及び、時刻t4〜t5期間のそれぞれ動作について順に説明する。なお、時刻t3以前の期間の動作は時刻t2以降の期間の動作(
図10参照)と同様であり、また、時刻t5以降の期間の動作は時刻t1以前の期間の動作(
図10参照)と同様であるため、ともに説明を省略する。
【0084】
時刻t3〜t4期間の期間においては、時刻t3にて回生期間が終了するものとする。このとき、電力変換装置21はオフ状態となり、電流IDは0(ゼロ)まで減少する。一方、補機発電機41はオン状態になる。
【0085】
上限値設定部71は、電流IBmaxを正の値I4に変化させる。電流IBmaxが正になることで、電力変換装置32は蓄電装置31を放電することが可能となる。ここで、電流IBが電流I4に制御された場合、電流IB’はI4’になると定義する。電流I4は、I4’>I1となるように設定される。すなわち、電力変換装置32が単独で全ての補機電力を供給することを許容する。なお、電流IBがI1’に制御されるときの電流IB’を電流I1と定義する。I4’>I1であるため、I1’<I4である。
【0086】
電力変換装置32用の電圧制御系70は電圧VoをV2へと増大させるために、リミッタ後電流指令値IBref2を正の値へと増大させる。電流制御系72の動作によって電流IBは増大し、負から正へと反転する。すなわち、蓄電装置31は充電から放電へと転じる。電流IBと共に電流IB’も負から正へと反転する。
【0087】
時刻t3の直後においては、電流I1に比べて電流IA(=ID+IB’+IG)が小さいため、電圧VoはV1から減少する。補機発電機41用の電圧制御系60は、電圧VoをV1へと増大させるように動作し、これによって電流IGが流れ始める。このように、電圧Voの減少を防ぐために、電力変換装置32と補機発電機41の両方が電流を出力する。しかし、電力変換装置32に比べて補機発電機41の応答は遅いため、電流IGはほとんど増大することなく、ほぼ電流IB’のみによって電圧Voが増大へと転じる。
【0088】
電圧VoがV1に達した後も、電圧VoがV2より小さければ、電力変換装置32は電流IB’を増大させようとする。これによって電圧VoがV1を上回ると、補機発電機41は電流IGを減少させようとする。結果として、電力変換装置32が単独で全ての補機電力を供給する状態となり、電流IB’はI1になり、電流IBはI1’になる。また、電流IGはゼロまで減少する。この状態になると、電圧Voは電力変換装置32によって電圧V2に制御される。このとき、電力変換装置32は定電圧(CV: Constant Voltage)モードで動作する。
【0089】
このように、補機発電機41と電力変換装置32の両方が電圧Voを制御しようとするが、V2>V1であるため、電力変換装置32が優先して電力を出力する状態となる。
【0090】
時刻t4〜t5の期間においては、回生期間の終了から所定の時間が経過した時刻t4以降、上限値設定部71は電流IBmaxをI4から徐々に上述のI3まで減少させる。なお、
図11では、電流IBmaxを直線的に減少させたが、その限りではない。電流IBmaxがI1’より大きい期間では、電力変換装置32が電流IBをI1’に制御することによって電圧VoをV2に制御している。電流IBmaxがI1’より小さくなると、電力変換装置32は単独で補機電力を供給できなくなる。電力変換装置32は、既に説明した定電流モードに移行する。電力変換装置32は電圧VoをV2に維持できなくなり、電圧VoはV2から減少していく。電圧VoがV1より小さくなると、補機発電機41用の電圧制御系60は、電圧VoをV1へと増大させるように動作し、電流IGが再び流れ始める。電流IBの減少を緩やかに制御しているため、応答の遅い補機発電機41でも追従可能であり、補機発電機41は電流IGを徐々に増大させて電圧VoをV1に制御する。
【0091】
ここで、上限値設定部71の処理内容について詳細に説明する。
【0092】
図12は、上限値設定部の処理内容を示す機能ブロック図である。また、
図13は、上限値設定部の動作波形の一例を示す図である。
【0093】
図12に示すように、上限値設定部71は、回生期間判定部54から入力される回生期間判定信号SRに基づいて電流上限値IBmaxを生成するものである。以下の説明においては、回生期間判定信号SRとその反転信号SPの値について、H(ハイ)レベルの場合を1、L(ロー)レベルの場合を0(ゼロ)とする。
【0094】
上限値設定部71が出力する電流上限値IBmaxは、後述する回生期間用の電流上限値IBRと非回生期間用の電流上限値IBPを加算した値を立下り変化率リミッタ711を通すことで生成される。
【0095】
回生期間用の電流上限値IBRは、回生期間判定信号SRに乗算器714において値(−I2)を乗算することによって生成される。すなわち、回生期間においては回生期間判定信号SR=1であるため、電流上限値IBR=−I2となる。また、非回生期間においては回生期間判定信号SR=0(ゼロ)であるため、電流上限値IBR=0(ゼロ)となる。
【0096】
非回生期間用の電流上限値IBPは、回生期間判定信号SRの論理反転器(論理否定器)715による反転信号SPに基づいて生成される。減衰電流指令生成部712は、以下の要領で信号SPから減衰電流指令値IBdecを生成する。減衰電流指令生成部712は、回生期間の終了時点、すなわち、信号SPの立ち上がりをトリガとして、減衰電流指令生成部712は減衰電流指令値IBdecを正の値IBMまで増大させる。その後、減衰電流指令生成部712は減衰電流指令値IBdecをゼロまで減衰させる。値IBMは電流I4より大きな値に設定される。
【0097】
減衰電流指令値IBdecはリミッタ713に入力される。リミッタ713は、上限値がI4、及び、下限値がI3となるように減衰電流指令値IBdecに対してリミッタ処理を施す。リミッタ713の出力に乗算器716によって信号SPを乗算することで電流上限値IBPが生成される。回生期間では信号SP=0(ゼロ)であるため、電流上限値IBP=0(ゼロ)となる。非回生期間では信号SP=1であり、この場合、電流上限値IBPの上限値はI4に、下限値はI3になる。なお、
図13では、電流上限値IBPと減衰電流指令値IBdecを重ねて示しており、減衰電流指令値IBdecを点線としている。
【0098】
立ち下り変化率リミッタ711は、入力される電流値(IBR+IBP)の立ち下りに対してのみ作用する変化率リミッタである。
図13では、電流IBmaxと電流値(IBR+IBP)を重ねて示しており、電流値(IBR+IBP)を点線としている。
【0099】
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を説明する。
【0100】
本実施の形態においては、回生期間の開始後、補機電源は補機発電機41から電力変換装置21に切り換えられる。すなわち、補機発電機41の出力をゼロとし、補機電力を全て電力変換装置21から供給するようになる。これにより、回生制動システムの省エネルギー効果を高めることができる。
【0101】
また、回生期間の終了時では、補機発電機41に加えて電力変換装置32が蓄電装置31を放電させることで、補機直流電圧Voの急激な減少を抑制することができる。このとき、電力変換装置32の電圧指令値V2を補機発電機41の電圧指令値V1より高く設定することで、補機発電機41よりも応答の速い電力変換装置32から優先して電力を出力させるので、より確実に補機直流電圧Voの急激な減少を抑制することができる。電力変換装置32が定電圧モードで動作することから、回生期間の終了後に補機電力が増減したとしても、電圧制御系70はこれに応じて電流指令値(IBref1、IBref2)を自動的に増減させ、電圧VoをV2に制御することができる。このように、補機消費電力の変動があった場合でも、電圧Voの急激な変動を防止できる。
【0102】
また、回生期間の終了から所定の時間が経過した後、上限値設定部71は電流IBmaxを減少させる。これにより、蓄電装置31の容量が十分でない場合において、蓄電装置31の充電残量が過少になることを防止できる。また、電流IBmaxを徐々に減少させることで、補機発電機41がこれに追従して出力を増大させることが可能となり、電圧Voの急激な変動を防止できる。
【0103】
また、電圧Voの変動を抑制することができるので、補機直流ライン43に接続される平滑コンデンサの容量を低減することができ、システムの小型化・コストダウンを図ることができ、さらに、起動時の初充電や停止時の放電にかかる時間を短縮することができる。
【0104】
また、蓄電装置31の放電を利用して電圧Voの変動を抑制する構成であるところ、放電に必要なエネルギーを蓄電装置31に充電する際には、補機発電機41の出力(つまりは、エンジン11の出力)を利用せず、走行モータ10の回生エネルギーを利用するので省エネルギー効率を高めることができる。さらに、蓄電装置31の容量が十分であれば、回生期間において蓄電装置31を充電しておき、非回生期間では蓄電装置31から補機に給電できるので、省エネルギー効果をさらに高めることができる。
【0105】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図14〜
図17を参照しつつ説明する。
【0106】
本実施の形態は、回生期間であるか否かによらず、補機発電機41をオン状態とするものである。
【0107】
図14は、本実施の形態に係る補機電圧制御部の処理内容を示す機能ブロック図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0108】
図14において、補機電圧制御部53は、補機直流電圧Voを制御するための電圧制御系60(第一の電圧制御系)、電圧制御系70(第二の電圧制御系)、電圧制御系80(第三の電圧制御系)と、回生期間判定部54と、上限値設定部71(第一の上限値設定部)と、オン・オフ切換部81と、オン・オフ制御部82とを備える。本実施の形態においては、第一の電圧指令値がV1に、第二の電圧指令値がV2に、第三の電圧指令値がV3にそれぞれ設定される。このとき、V3>V2>V1に設定される。なお、指令値V1〜V3は、補機装置44が正常に動作するための許容範囲内の値とする。
【0109】
ここで、補機発電機41の制御演算について説明する。補機電圧制御部53は回生期間の判定結果に基づく補機発電機41のオン・オフ制御を行わない。すなわち、回生期間の判定結果に依らず、電圧制御演算部63が生成した操作量を制御信号として補機発電機41へと出力する。
【0110】
図15は、回生期間判定部による電力変換装置と補機発電機のオン・オフ切換の処理内容を示すフローチャートである。
【0111】
図15において、回生期間判定部54は、まず、車両情報信号SVに基づいて回生期間であるか否かを判定し、判定結果に応じた回生期間判定信号SRを生成する(ステップS200)。続いて、回生期間であるか否か、すなわち、回生期間判定信号SRがオンであるか否かを判定し(ステップS210)、判定結果がYESの場合には、オン・オフ信号SDとしてH(ハイ)を出力することで電力変換装置21をオン状態に制御し(ステップS211)、処理を終了する。このとき、補機発電機41は、常時オン状態であり、電圧制御演算部63が生成した操作量により制御される。また、ステップS210での判定結果がNOの場合、すなわち、回生期間ではないと判定した場合には、オン・オフ信号SDとしてL(ロー)を出力することで電力変換装置21をオフ状態に制御し(ステップS212)、処理を終了する。この場合においても、補機発電機41は、常時オン状態であり、電圧制御演算部63が生成した操作量により制御される。
【0112】
次に、電力変換装置32の制御演算について説明する。電圧制御系70は、電圧制御演算部73、及び、マイナーループの電流制御系72を備える。これらの動作については、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。電圧制御系70は、可変リミッタ76を備える。可変リミッタ76には、リミッタ前電流指令値IBref1と、電流上限値IBmaxとに加えて、さらに、電流下限値IBminが入力される。可変リミッタ76は、上限値をIBmaxとし、下限値をIBminとして、リミッタ前電流指令値IBref1にリミッタ処理を施すことで、リミッタ後電流指令値IBref2を生成する。電圧制御系70は電力変換装置32の操作量を生成し、制御信号として電力変換装置32へと出力する。
【0113】
図16及び
図17は、電気駆動システムの動作波形の一例を示すタイミングチャートであり、
図16は回生期間開始時の様子を、
図17は回生期間終了時の様子をそれぞれ示している。
【0114】
図16及び
図17の縦軸項目は、電力変換装置21と補機発電機41のオン・オフ信号SD,SG、補機直流電圧Vo、電力変換装置21の出力電流ID、蓄電装置31の充放電電流IB、補機発電機41の出力電流IGである。蓄電装置31の充放電電流IBについては、電流上限値IBmaxと下限値IBminを点線にて重ねて示した。
【0115】
本実施の形態においては、補機発電機41のオン・オフ制御を行わない。そのため、第1の実施の形態との比較として補機発電機41のオン・オフ信号SGを常にオン状態として示した。補機装置44に入力される電流は一定とし、その値をI1として図中に記載した。なお、
図16及び
図17は、電圧や電流の変化の概形を示すものであり、これらが直線的に変化するように図示しているが、実際の電圧や電流は直線的に変化するとは限らない。
【0116】
まず、回生期間開始時の動作について説明する。
図16に示すように、時刻t1,t2を定義し、時刻t1にて回生期間が開始するものとする。以下では、
図16を用いて、時刻t1〜t2の期間、及び、時刻t2以降の期間のそれぞれの動作について順に説明する。なお、時刻t1以前の期間の動作については、第1の実施の形態(
図10参照)と同様であるため説明を省略する。補機電圧制御部53は、全期間において電流値IBminを(−I2)に設定する。
【0117】
時刻t1〜t2の期間においては、時刻t1にて回生期間が開始し、電力変換装置21はオン状態になる。電力変換装置21用の電圧制御系80は、電圧VoをV1からV3へと増大させるように動作し、出力電流IDを増大させる。一方、電圧VoがV1より高くなると、補機発電機41用の電圧制御系60は、電圧VoをV1へと減少させるように動作し、出力電流IGを減少させる。このように、電力変換装置21と補機発電機41の両方が電圧Voを制御しようとするが、V3>V1であるため、電力変換装置21が優先して出力する状態となる。結果として、電圧Voは電力変換装置21によってV3に制御され、電流IGは0(ゼロ)まで減少する。すなわち、補機発電機41を常時オン状態とした場合においても、補機発電機41の出力を抑制することができる。
【0118】
時刻t1以降の期間において、上限値設定部71は電流値IBmaxを徐々に減少させる。一方、電力変換装置32用の電圧制御系70は、電圧VoをV2へと減少させるように動作し、電流IBを徐々に減少させる。
図16では、電流値IBmaxの減少と比較して、電圧制御系70による電流IBの減少が速い場合を示した。電流IBが正から負に反転すると、蓄電装置31は放電から充電へと転じる。第1の実施の形態のように電流値IBmaxによって強制的に充電に転じるのではなく、V3>V2であることによって充電に転じる。なお、電流IBがIBmaxより速く減少する場合、IBmaxを(−I2)まで減少させることなく、途中で(例えばゼロで)減少を停止させても電流IBの挙動は変わらない。電流IBの減少により、電流IB’も合わせて減少する。
【0119】
電力変換装置21は、電流IGと電流IB’の減少に対して、補機電源電流IA(=ID+IB’+IG)が電流I1と一致するように電流IDを徐々に増大させる。実際には、徐々に減少する電流IGと電流IB’が外乱となって、電圧VoはV3より僅かに低くなる。ただし、
図16においてはこれを無視し、電圧VoがV3に一致するものとした。
【0120】
時刻t2以降の期間においては、時刻t2にて、電流IBは(−I2)まで減少する。時刻t2以降の期間においても、電力変換装置32用の電圧制御系70は、電圧VoをV2へと減少させるように動作する。しかし、可変リミッタ76によって電流指令値IBref2はIBmin=−I2より小さくならないため、電流IBの減少もIBmin=−I2までとなる。第1の実施の形態で定義したように、電流IB’は(−I2’)になる。また、電流IDはI1+I2’となる。以上から、電圧VoがV3に制御されることを除いて、各電流(ID,IB’,IG)の状態は、第1の実施の形態(
図10参照))における時刻t2以降の期間と同様になる。
【0121】
次に、回生期間終了時の動作について説明する。
図17に示すように、時刻t3,t4,t5を定義する。時刻t3にて、回生期間が終了するものとする。以下では、
図17を用いて、時刻t3〜t4の期間、及び、時刻t4〜t5期間のそれぞれ動作について順に説明する。なお、時刻t3以前の期間の動作については、第1の実施の形態(
図10参照)の時刻t2以降と同様であるため、説明を省略する。また、時刻t4〜t5の期間の動作についても、第1の実施の形態(
図11参照)と同様であるため、説明を省略する。補機電圧制御部53は、全期間において電流値IBminを(−I2)に設定する。
【0122】
時刻t3〜t4の期間においては、時刻t3にて回生期間が終了すると、電力変換装置21はオフ状態となり、電流IDは0(ゼロ)まで減少する。
【0123】
上限値設定部71は、電流値IBmaxを正の値I4に変化させる。時刻t3の直後では、補機装置44の入力電流I1に比べて電流IA(=ID+IB’+IG)が小さいため、電圧VoはV3から減少する。電圧VoがV2より小さくなると、電力変換装置32は電流IBを正へと増大させ、蓄電装置31は充電から放電へと転じる。この放電によって電圧Voは減少から増大へと転じる。電流IB’がI1まで増大し、電力変換装置32が単独で補機電力を供給するようになると、電圧VoはV2に制御される。
図17においては、電圧VoがV1より小さくなることがないため、電流IGは0(ゼロ)のままである。以上により、時刻t4までに、電圧VoはV2に、電流IBはI1’に、電流IDと電流IGは0(ゼロ)になる。
【0124】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0125】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0126】
また、電力変換装置21の電圧指令値V3を補機発電機41の電圧指令値V1より高く設定することにより、回生期間の開始後、補機発電機41を停止せずとも、電力変換装置21を動作させることで補機発電機41の出力を抑制することができる。なお、第1の実施の形態同様に、補機電源は補機発電機41から電力変換装置21に切り替えられる。
【0127】
また、補機発電機41を停止させないように構成したので、電圧Voの変動を抑制することができる。すなわち、回生期間の開始時に補機発電機41を停止させる場合、この停止と電力変換装置21の動作開始に時間差が生じ得る。電力変換装置21の動作開始が遅れた場合、補機直流電圧VoがV1から低下する。そこで、本実施の形態においては、電力変換装置21の動作によって補機発電機41の出力が抑制されるように構成したので、電圧Voの低下は発生しない。このように、補機発電機41を停止させずに補機電源を切り替えることで、電圧Voの変動を防止することができる。
【0128】
また、回生期間において電圧VoをV3まで高めておくことにより、回生期間終了後の電圧Voの低下をより確実に抑制することができる。
【0129】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0130】
(1)上記の実施の形態では、エンジン11に接続される第一の発電機(例えば、主機発電機12)および第二の発電機(例えば、補機発電機41)と、前記第一の発電機に接続され、前記第一の発電機の出力を整流して直流電力として第一の直流ライン(例えば、主機直流ライン16)に出力する第一の整流回路(例えば、主機整流回路14)と、前記第一の直流ラインと電動機との間に接続されるインバータ13L,13Rと、前記第一の直流ラインに接続され、前記第一の直流ラインの電力を消費可能な電力消費装置15と、前記第二の発電機に接続され、前記第二の発電機の出力を整流して直流電力として第二の直流ライン(例えば、補機直流ライン43)に出力する第二の整流回路(例えば、補機整流回路42)と、前記第二の直流ラインに接続される補機装置44と、前記第一の直流ラインの電力を変換して前記第二の直流ラインに供給する第一の電力変換装置21と、蓄電装置31と、前記蓄電装置の電力を変換して前記第二の直流ラインに共有する放電動作と、前記第二の直流ラインの電力を変換して前記蓄電装置に供給する充電動作とを切り換えて行う第二の電力変換装置32と、制御装置50とを備えた回生制動システムにおいて、前記制御装置は、前記電動機の駆動対象に係る情報に基づいて、前記電動機が回生動作を行っているか否かを判定し、前記回生動作中であると判定した場合には、前記第一の直流ラインの電力を前記第二の直流ラインに供給して、前記第二の直流ラインの電圧が、前記補機装置の動作電圧仕様に基づいて予め定めた第一の電圧値となるように前記第一の電力変換装置を制御し、前記第二の発電機を停止して前記第二の直流ラインへの電力の供給を停止するように前記第二の発電機を制御し、前記第二の直流ラインの電力を前記蓄電装置に供給するように前記第二の電力変換装置を制御し、前記回生動作が終了したと判定した場合には、前記第一の直流ラインから前記第二の直流ラインへの電力の供給を停止するように前記第一の電力変換装置を制御し、前記第二の発電機を始動して前記第二の直流ラインへの電力の供給を開始し、前記第二の直流ラインの電圧が前記第一の電圧値となるように前記第二の発電機を制御し、前記蓄電装置の電力を前記第二の直流ラインに供給して、前記第二の直流ラインの電圧が、前記補機装置の動作電圧仕様に基づいて予め定めた電圧値であって前記第一の電圧値よりも高い第二の電圧値となるように前記第二の電力変換装置を制御するものとした。
【0131】
これにより、走行モータによる回生動作の切り換わり時における補機への供給電圧の変動を抑制することができる。
【0132】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の回生制動システムにおいて、前記制御装置50は、前記回生動作が終了したと判定した場合には、前記回生動作が終了した時点から予め定めた時間が経過した後、前記蓄電装置から前記第二の直流ラインに供給される電流を時間の経過とともに減少させるように前記第二の電力変換装置32を制御するものとした。
【0133】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の回生制動システムと、前記回生制動システムの前記第一の発電機(例えば、主機発電機12)から前記第一の整流回路(例えば、主機整流回路14)を介して前記第一の直流ライン(例えば、主機直流ライン16)に出力される電力で動作するとともに、前記第一の直流ラインに回生電力を出力する前記電動機を走行モータ10L,10Rとして駆動される駆動輪3L,3Rとを備えたものとした。
【0134】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【課題】走行モータによる回生動作の切り換わり時における補機への供給電圧の変動を抑制することができる回生制動システム、及び、それを用いた電気駆動作業車両を提供すること。
【解決手段】回生動作中である場合には、主機側の電力を補機側に供給して、補機側の電圧が、補機装置の動作電圧仕様に基づいて予め定めた第一の電圧値となるようにし、補機側の発電機を停止して補機側への電力の供給を停止し、補機側の電力を蓄電装置に供給し、回生動作が終了した場合には、主機側から補機側への電力の供給を停止し、補機側の発電機を始動し、補機側の電圧が第一の電圧値となるように補機側の発電機を制御し、蓄電装置の電力を補機側に供給して、補機側の電圧が、第一の電圧値よりも高い第二の電圧値となるように制御する。