特許第6987196号(P6987196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6987196
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   H02M3/28 Y
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-143182(P2020-143182)
(22)【出願日】2020年8月27日
【審査請求日】2020年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 紘佑
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/053141(WO,A1)
【文献】 特許第5683672(JP,B1)
【文献】 特許第5506966(JP,B1)
【文献】 国際公開第2017/221476(WO,A1)
【文献】 特許第6516910(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/00,7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路と、前記インバータ回路の出力側に接続されたトランスと、前記トランスの出力側に接続された整流回路を構成する整流素子と、前記トランスの出力側に設けられており前記整流素子を含む前記トランスの出力回路に接続された平滑リアクトルを構成する平滑コイルを備え、前記トランスには、二次巻線を構成する第一の二次巻線と第二の二次巻線の接続部分にセンタータップが設けられた電力変換装置において、
前記トランスと前記整流素子とは単一のモジュールで構成されており、
前記センタータップは、前記第一の二次巻線の端部と前記第二の二次巻線の端部を重ねて引出部が構成されており、
前記センタータップの引出部と前記平滑コイルとは、接続体で接続されており、
前記整流回路は、前記第一の二次巻線の他方の端部、前記第二の二次巻線の他方の端部の各々に接続された複数の整流素子を有しており、前記整流素子は、前記センタータップの両隣に分けて配置されており、且つ、前記センタータップの引出方向に直交する平面において直線状に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記センタータップと前記平滑コイルの端子が接続される位置は、前記第一の二次巻線の他方の端部、前記第二の二次巻線の他方の端部の各々と前記整流素子との接続箇所よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記整流素子は、基板に表面実装されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記整流素子のアノード端子は、単一の板金部材に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記接続体は、一端が前記センタータップに接続されており、他端が前記平滑コイルの端子に接続された中間接続部材であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記接続体は、前記平滑コイルの端子を前記センタータップに向かって延出した部材で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記センタータップと前記接続体の接続部分には、貫通穴が設けられており、前記センタータップと前記接続体は、前記貫通穴に挿入されたねじによって共締めされることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、インバータ回路とトランスと整流回路と平滑リアクトルを用いた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車あるいはハイブリッド自動車では、高電圧バッテリの電圧を12V系の電圧に変換し、12V系のバッテリに電力を供給する目的でDC/DC降圧コンバータなどの電力変換装置が用いられる。
DC/DC降圧コンバータは、一次側巻線と二次側巻線とを有するトランスと、トランスの二次側巻線コイルに誘起される電圧を整流する整流素子と、トランスの二次側コイルに接続される平滑リアクトルとを備えている。これらの部品を筐体へ組付ける際に、構成部品数が多いことで組立が複雑になるとともに、DC/DC降圧コンバータのサイズアップ、コストアップの要因となっている。
特許文献1では、DC/DC降圧コンバータの構成部品である、トランスと、整流素子と、平滑リアクトルとを射出成形により樹脂モールドされて一体化することで、筐体への組立工数の削減が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6516910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、各部品の配置あるいは、接続端子の引出位置が固定されてしまうため、自動車メーカあるいは車種によって、様々な要求サイズあるいは、インターフェース位置に対応する上で、部品の共通化を図ることが難しく、コストアップの要因になっている。特にトランスは、複数の巻線部材から構成されるため内部構造が複雑であり、端子引出位置を変更するだけでも、多くの構成部材の形状変更が必要となる。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するためになされたもので、主要部品の共通化により、装置を小型化することと装置のコストを低減することが可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される電力変換装置は、インバータ回路と、インバータ回路の出力側に接続されたトランスと、トランスの出力側に接続された整流回路を構成する整流素子と、トランスの出力側に設けられており整流素子を含むトランスの出力回路に接続された平滑リアクトルを構成する平滑コイルを備え、トランスには、二次巻線を構成する第一の二次巻線と第二の二次巻線の接続部分にセンタータップが設けられた電力変換装置において、トランスと整流素子とは単一のモジュールで構成されており、センタータップは、第一の二次巻線の端部と第二の二次巻線の端部を重ねて引出部が構成されており、センタータップの引出部と平滑コイルとは、接続体で接続されており、整流回路は、第一の二次巻線の他方の端部、第二の二次巻線の他方の端部の各々に接続された複数の整流素子を有しており、整流素子は、センタータップの両隣に分けて配置されており、且つ、センタータップの引出方向に直交する平面において直線状に配置されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本願の電力変換装置によれば、トランスと整流素子とが単一のモジュールで構成されており、センタータップは、第一の二次巻線の端部と第二の二次巻線の端部を重ね合わせて構成され、センタータップの引出部と平滑コイルとは、接続体で接続されているので、主要部品の共通化により、装置を小型化することと装置のコストを低減することができる。また、トランスと整流素子を一体に形成し、モジュール化する際に、無駄面積となりやすいトランスのセンタータップの両隣に整流素子を配置することで、スペース効率が向上し、さらに、センタータップの端子引出方向に直交する平面において直線状に整流素子を配置することで、各整流素子間のグランド部から整流素子を介してトランスまでの経路差が少なくなり、インピーダンスの偏りを抑制することが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換装置を示す斜視図である。
図3】実施の形態1に係る電力変換装置のトランスと整流素子のモジュール構成を示す平面図である。
図4】実施の形態1に係る電力変換装置における二次巻線の構成を分解状態で示す斜視図である。
図5図3に示した電力変換装置のA−A線に沿う断面図である。
図6】実施の形態2に係る電力変換装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る電力変換装置を図面に基づいて説明する。各図において、同一または相当部分については、同一符号を付している。実施の形態に係る電力変換装置は、DC/DCコンバータに適用されるものであって、車載の高電圧バッテリから供給される高電圧を入力し、出力端子から車載補器系部品の電源電圧である12V系の電圧を出力するものである。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電力変換装置の回路構成図である。
電力変換装置は入力端子1より入力された高電圧の直流電力をスイッチングして交流電力に変換するインバータ回路10と、インバータ回路10から供給された電力を、一次巻線21と二次巻線24の巻き数比に応じた電圧に変化させるトランス20と、トランス20の二次電圧を入力して全波整流して直流出力にする整流回路30と、整流回路30の出力電圧を平滑化する平滑リアクトル41と平滑コンデンサ42でなる平滑回路と、トランス20からの出力が整流回路30、平滑回路を介して出力される出力端子2とを備えている。
【0011】
インバータ回路10は、複数のスイッチング素子11で構成されている。トランス20は、電源回路側に接続される一次巻線21、負荷回路側に接続される第一の二次巻線(上側二次巻線ともいう)22と第二の二次巻線(下側二次巻線ともいう)23を有した二次巻線24、トランスコア27を備えている。第一の二次巻線22と第二の二次巻線23との接続部分である中点がトランス20のセンタータップ26として設けられている。
【0012】
整流回路30は、複数の整流素子31,32で構成されている。整流回路30は、トランス20の二次電圧を入力して、複数の整流素子31.32により、第一の二次巻線22、第二の二次巻線23に伝達された交流電力を整流する。
整流素子31,32と、トランス20の第一の二次巻線22、第二の二次巻線23との接続は、各整流素子31,32のカソード側が第一の二次巻線22と第二の二次巻線23のセンタータップ側ではない端部側に接続され、各整流素子31,32のアノード側が後述する板金部材に接続される。
この板金部材は、電力変換装置の筐体(図示せず)と接続され、電気的にグランド部3となる。
【0013】
センタータップ26は、整流した交流電力を平滑化する平滑リアクトル41の一端側に接続され、平滑リアクトルの他端側が電力変換装置の出力端子2に接続されている。
【0014】
図2図3は、トランス20、整流素子31,32、接続体である中間接続部材50、平滑リアクトル41の実装構造を示す斜視図と平面図である。巻線部25は、一次巻線21、二次巻線24で構成されている。図4は、二次巻線の構成を分解状態で示す斜視図である。トランス20と整流素子31,32は単一のモジュール80で一体に形成され、中間接続部材50を介して、トランス20のセンタータップ26と平滑リアクトル41とが電気的に接続される。図2図3において、整流素子31,32はそれぞれ2個有した場合を示している。平滑リアクトル41は、モジュール80とは別に設けられ、平滑コイル41a、平滑コア41bで構成されている。
【0015】
センタータップ26は、第一の二次巻線22の端部に形成された片方の引出部22aと第二の二次巻線23の端部に形成された片方の引出部23aを重ねて引出部が構成されている。一次巻線21の両端部(一方の端部21a、他方の端部21b)と、センタータップ26と、第一の二次巻線22と第二の二次巻線23の他方の引出部22b,23bと、板金部材28は、モジュール80を構成する絶縁性樹脂70から部分的に露出している。 一次巻線21の両端部は、制御基板等(図示せず)を介してインバータ回路10に接続される。整流素子31,32のカソード端子31b,32bは、第一の二次巻線22の他方の引出部22b、第二の二次巻線23の他方の引出部23bと接続され、整流素子31,32のアノード端子31a,32bは、基板となる板金部材28と接続され、どちらも半田により当該基板に表面実装により接続される。
【0016】
中間接続部材50は、両端部に貫通穴50a,50bが設けられており、片方の端部は、第一の二次巻線22の引出部22aに形成された貫通穴22d、第二の二次巻線23の引出部23aに形成された貫通穴23d、及び貫通穴50aに挿入されるねじ60aでセンタータップと共締めされ、他方の端部は、平滑リアクトル41の端子となる平滑コイル41aの端子41cと貫通穴50bに挿入されるねじ60bで接続される。センタータップ26と、平滑コイル41aの端子41cは、同一平面高さである。平滑コイル41aの端子41dは出力端子2に接続される。
【0017】
トランス20と整流素子31,32のモジュールは、一次巻線21と、第一の二次巻線22と、第二の二次巻線23と、板金部材28が、絶縁性樹脂70でインサート成形されている。図4に示すように、第一の二次巻線22と、第二の二次巻線23は、板金に曲げ加工を施して形成された環状の第一の二次巻線22のコイル部22cと第二の二次巻線23のコイル部23cと、貫通穴22d,23dを有する第一の二次巻線22の片方の引出部22aと第二の二次巻線23の片方の引出部23aと、他方の引出部22b,23bを備える。
【0018】
図5に示すように、第一の二次巻線22の端部である片方の引出部22aと、第二の二次巻線23の端部である片方の引出部23aは、重ね合わせてトランスのセンタータップ26を形成している。第一の二次巻線22と、第二の二次巻線23の他方の引出部22b,23bは、図3に示すように、センタータップ26の両隣に配置し、かつ、センタータップ26と中間接続部材50が接続される位置は、電力変換装置の筐体の取り付け面である接地面に対して、他方の引出部22b,23bと整流素子31,32との接続箇所よりも高い位置に配置する。
絶縁性樹脂70には、センタータップ26を収納する窪み状の保持部29が形成されており、保持部29の上部空間には第一の二次巻線22の引出部22aと第二の二次巻線23の引出部23aが重ねて配置されており、筐体側となる保持部29の下部空間にはナット61がインサート成形されている。保持部29は、中間接続部材50をセンタータップ26にねじ60aで締結する際に端子台として機能するものであって、筐体に対して絶縁状態を維持している。また、これによって、センタータップ26は、グランド部3に対して電気的に絶縁状態を保っている。
【0019】
実施の形態1による電力変換装置によれば、センタータップ26は、第一の二次巻線22の片方の引出部と第二の二次巻線23の片方の引出部を重ね合わせて構成され、トランス20と平滑リアクトル41を接続する中間接続部材50が、センタータップ26と、平滑リアクトル41を構成する平滑コイル41aの端子41cとに接続され、トランス20と整流回路30の整流素子31,32は、単一のモジュールで形成されているので、主要部品の共通化による小型、低コスト化が可能となる。
トランス20と整流素子31,32を一体に形成し、モジュール化する際に、無駄面積となりやすいトランス20のセンタータップ26の両隣に整流素子31,32を配置することで、スペース効率が向上し、さらに、センタータップ26の端子引出方向に直交する平面において直線状に整流素子31,32を配置することで、各整流素子間のグランド部から整流素子31,32を介してトランス20までの経路差が少なくなり、インピーダンスの偏りを抑制できる。
また、トランス20のセンタータップ26の位置が、筐体の取り付け面である接地面に対して、整流素子31,32より高い位置に配置することで、接続体である中間接続部材50の引出方向に制限がなくなり、トランス20と平滑リアクトル41の位置関係の配置自由度を向上させながらも、二部品間を最短で接続することができる。
【0020】
以上のような構成にすることで、トランス20、整流素子31,32、平滑リアクトル41の形状を変更することなく、接続体である中間接続部材50の形状変更のみで、様々な要求サイズあるいはインターフェース位置に対応することができ、部品の共通化が図れ、コストを低減することができる。
さらに、組立時は、事前に整流素子を半田で基板に表面実装し、トランス20と一体で形成したものと、平滑リアクトル41を筐体上に配置し、それらの上から接続体である中間接続部材50を配置して、ねじで接続するだけでよいので、組立工程を大幅に短縮できる。
【0021】
また、整流素子31,32のアノード端子を一枚の部材で形成された単一の板金部材28に接続することで、整流素子間の電位の偏りを最小限に抑制することができる。
【0022】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2による電力変換装置における、トランス20と、整流素子31,32と、平滑リアクトル41を示す斜視図である。実施の形態2による電力変換装置は、トランス20と平滑リアクトル41の接続形態が、実施の形態1とは異なる。他の構成は実施の形態1と同様である。
実施の形態2においては、実施の形態1で使用していた接続体である中間接続部材に相当するものを、平滑リアクトル41の端子である平滑コイルの端子41cをセンタータップ26に向かって延出することで、端子41cと一体に構成している。
これにより、実施の形態2による電力変換装置によれば、接続体として実施の形態1のように中間接続部材を別に設ける必要がないので、部品点数を削減し、コストを低減することができる。
【0023】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0024】
10 インバータ回路、20 トランス、22,23,24 二次巻線、22a,23a,22b,23b 引出部、26 センタータップ、30 整流回路、41 平滑リアクトル、50 中間接続部材、80 モジュール
【要約】
【課題】主要部品の共通化による小型、低コスト化が可能な電力変換装置を得る。
【解決手段】トランス20と整流回路30の整流素子31,32は、単一のモジュール80で構成されており、センタータップ26は、第一の二次巻線22の片方の引出部22aと第二の二次巻線23の片方の引出部23aを重ね合わせて構成され、中間接続部材50が、センタータップ26と、平滑リアクトル41を構成する平滑コイル41aの端子41cに接続されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6