(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環状部の前記上面には、複数の第2の突起が形成されており、前記複数の第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に互いに離間して配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
前記環状部の前記上面には、環状の第2の突起が形成されており、前記第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に連続的に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
前記環状部の前記上面、および前記筒状部の前記下面の少なくとも一方には、複数の第2の突起が形成されており、前記複数の第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に互いに離間して配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の密封装置。
前記環状部の前記上面、および前記筒状部の前記下面の少なくとも一方には、環状の第2の突起が形成されており、前記第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に連続的に配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の密封装置。
各突起の先端の前記密封装置の径方向の長さは、各突起の基端の前記径方向の長さより小さく、各突起の先端の前記円周上の長さは、各突起の基端の前記円周上の長さより小さい
ことを特徴とする請求項1から7および10のいずれか1項に記載の密封装置。
複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合、前記突起がないと仮定した場合の上下の密封装置の接触面積に対する、前記突起を有する上下の密封装置の接触面積の比は、0%より大きく15%以下である
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の密封装置。
複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合、前記突起がないと仮定した場合の上下の密封装置の接触面積に対する、前記突起を有する上下の密封装置の接触面積の比は、4.0%以上で10%以下である
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の密封装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る複数の実施の形態を説明する。図面において縮尺は、必ずしも実施形態の製品を正確に表してはおらず、一部の寸法を誇張して表現している場合もある。
【0010】
第1実施形態
図1は、本発明の実施形態に係る密封装置が使用される転がり軸受の一例である自動車用のハブ軸受を示す。但し、本発明の用途はハブ軸受には限定されず、他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、以下の説明では、ハブ軸受は、玉軸受であるが、本発明の用途は玉軸受には限定されず、他の種類の転動体を有する、ころ軸受、針軸受などの他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、自動車以外の機械に使用される転がり軸受にも本発明は適用可能である。
【0011】
このハブ軸受1は、スピンドル(図示せず)が内部に挿入される孔2を有するハブ(内側部材)4と、ハブ4に取り付けられた内輪(内側部材)6と、これらの外側に配置された外輪(外側部材)8と、ハブ4と外輪8の間に1列に配置された複数の玉10と、内輪6と外輪8の間に1列に配置された複数の玉12と、これらの玉を定位置に保持する複数の保持器14,15とを有する。
【0012】
外輪8が固定されている一方で、ハブ4および内輪6は、スピンドルの回転に伴って回転する。
【0013】
スピンドルおよびハブ軸受1の共通の中心軸線Axは、
図1の上下方向に延びている。
図1においては、中心軸線Axに対する左側部分のみが示されている。詳細には図示しないが、
図1の上側は自動車の車輪が配置される外側(アウトボード側)であり、下側は差動歯車などが配置される内側(インボード側)である。
図1に示した外側、内側は、それぞれ径方向の外側、内側を意味する。
【0014】
ハブ軸受1の外輪8は、ハブナックル16に固定される。ハブ4は、外輪8よりも径方向外側に張り出したアウトボード側フランジ18を有する。アウトボード側フランジ18には、ハブボルト19によって、車輪を取り付けることができる。
【0015】
外輪8のアウトボード側の端部の付近には、外輪8とハブ4との間の間隙を封止する密封装置20が配置されており、外輪8のインボード側の端部の内側には、外輪8と内輪6との間の間隙を封止する密封装置21が配置されている。これらの密封装置20,21の作用により、ハブ軸受1の内部からのグリース、すなわち潤滑剤の流出が防止されるとともに、外部からハブ軸受1の内部への異物(水(泥水または塩水を含む)およびダストを含む)の流入が防止される。
図1において、矢印Fは、外部からの異物の流れの方向の例を示す。
【0016】
密封装置20は、ハブ軸受1の回転するハブ4と固定された外輪8との間に配置され、ハブ4と外輪8との間の間隙を封止する。
図2に示すように、密封装置20の大部分は、ハブ軸受1の外輪8のアウトボード側の円筒状の端部8Aと、ハブ軸受1のハブ4の玉10の近傍の外周面4Aと、ハブ4の外周面4Aよりも外側に広がるフランジ面4Bと、外周面4Aとフランジ面4Bとを連結する円弧面4Cとで囲まれた空間内に配置される。フランジ面4Bはアウトボード側フランジ18のインボード側の表面である。密封装置20は環状であるが、
図2においては、その左側部分のみが示されている。
【0017】
図2では、ハブ4と外輪8を仮想線で示す。密封装置20のハブ4に接触する部分および外輪8に接触する部分は、接触に伴って変形するが、
図2では、密封装置20の非使用時の輪郭を示す。
【0018】
図2および
図3に示すように、密封装置20は、弾性材料、例えばエラストマーで形成された弾性環22と、弾性環22を補強する剛性材料、例えば金属製の補強環24とを有する。補強環24は、その一部が弾性環22に埋設されており、弾性環22に密着している。
【0019】
密封装置20は、筒状部26、環状部27、ラジアルリップ32、2つのサイドリップ34,36、および補助リップ38を有する。環状部27は、外側環状部28と内側環状部30を有する。
【0020】
筒状部26は、中心軸線Ax(
図1および
図2参照)を中心とする円筒状の部分であり、外輪8の円筒状の端部8Aに嵌め入れられる。筒状部26は端部8Aに固定される。固定の方式は、限定されないが、例えば締まり嵌めであってよい。すなわち、筒状部26は端部8Aに圧入されてもよい。筒状部26は、補強環24の折り重なった筒状の部分と、これらの筒状の部分に充填された弾性環22から構成されている。補強環24の折り重なった筒状の部分のうち外側の筒状の部分が筒状部26の外周面を有しており、端部8Aの内周面に締まり嵌め状態で接触する。筒状部26の下面26A(環状部27とは反対側の表面)は、補強環24の屈曲部分により形成されている。
【0021】
外側環状部28は、筒状部26から径方向外側に向けて延びており、ハブ軸受1の中心軸線Axに対してほぼ直交する。外側環状部28も弾性環22と補強環24から構成されており、補強環24は弾性環22内に埋設されている。外側環状部28において、弾性環22は、外輪8の端部8Aの端面に対向させられ、その端面に接触する。
【0022】
内側環状部30は、筒状部26から径方向内側に延びており、外輪8の端部8Aよりも径方向内側に配置される。この実施形態では、内側環状部30は、外側環状部28から径方向内側かつインボード側に向けて斜めに延びている。内側環状部30も、弾性環22と補強環24から構成されている。
【0023】
外側環状部28と内側環状部30は、連続しており、筒状部26の上端に連結された環状部27を構成する。ここでは、外輪8の端部8Aの内周面より外側の部分を外側環状部28と呼び、端部8Aの内周面より内側の部分を内側環状部30と呼ぶ。
【0024】
ラジアルリップ32およびサイドリップ34,36は、弾性材料のみから形成されており、内側環状部30の弾性環22に相当する部分から延びる薄板状の円環であって、それぞれの先端はハブ4に接触する。密封装置20が固定された外輪8に取り付けられている一方、ハブ4は回転するので、リップ32,34,36はハブ4に対して摺動する。
【0025】
ラジアルリップ32は、内側環状部30の最も内側の縁部から延び、ハブ4の玉10の近傍の外周面4Aに接触する。ラジアルリップ32は、径方向内側かつインボード側に向けて延び、主にハブ軸受1の内部からの潤滑剤の流出を阻止する役割を担う。
【0026】
サイドリップ34,36は、内側環状部30の弾性環22に相当する部分から側方(アウトボード側)、かつ径方向外側に向けて延びる。サイドリップ34は、ハブ4のフランジ面4Bに接触し、サイドリップ36は円弧面4Cに接触する。サイドリップ34,36は、主に外部からハブ軸受1の内部への異物の流入を阻止する役割を担う。サイドリップ36は、サイドリップ34をすり抜けて流入した異物を阻止するバックアップ機能を有する。サイドリップ36は、ラジアルリップ32とサイドリップ34との間に存在するので、中間リップと呼ぶこともできる。
【0027】
図2においては、密封装置20をハブ軸受1に配置していない時のラジアルリップ32およびサイドリップ34,36が示されている。この時、ラジアルリップ32およびサイドリップ34,36は、外力を受けておらず、真っ直ぐな状態である。しかし、密封装置20をハブ軸受1に配置すると、これらのリップはハブ4に接触し反力を受けて変形する。
【0028】
補助リップ38は、弾性材料のみから形成されており、外側環状部28から延びる薄板状の円環である。補助リップ38は、筒状部26よりも半径方向外側に配置され、筒状部26とは反対方向(アウトボード側)に延びている。補助リップ38は、ハブ4のアウトボード側フランジ18のフランジ面4Dに向けて延びる。フランジ面4Dは、フランジ面4Bよりも凹んだ面であり、フランジ面4B,4Dの間は傾斜面4Eで接続されている。補助リップ38は、外部から到来する異物を跳ね返し、サイドリップ34に到達する異物を最小限にすることができる。
【0029】
この実施形態では、補助リップ38はアウトボード側フランジ18のフランジ面4Dには接触せず、補助リップ38の先端縁とフランジ面4Dとの間に環状かつラビリンス状の間隙39が設けられている。但し、補助リップ38はフランジ面4Dに接触し、フランジ面4Dに対して摺動してもよい。また補助リップ38は必ずしも不可欠ではない。
【0030】
内側環状部30の上面40(筒状部26とは反対側の表面)は、弾性環22により形成されている。内側環状部30の上面40には、弾性環22と同じ弾性材料によって複数の突起42が形成されている。これらの突起42は、ハブ軸受1および筒状部26の中心軸線Axを中心とする円周上に互いに離間して配置されており、中心軸線Axの方向に上方に突出する。「中心軸線Axの方向に突出する」とは、図示のように、突起42の突出方向(例えば、突起42自体の軸線の方向)が中心軸線Axに対して平行であることだけではなく、突起42の突出方向が中心軸線Axに対して傾斜していることも含む。突起42は、ハブ4にも外輪8にも接触せず、リップの封止機能または異物からの保護の機能を有しない。
【0031】
図3および
図4に示すように、内側環状部30の上面40は、傾斜面40Aと、平坦面40Bと、傾斜面40Cとを有する。傾斜面40Aは、外側環状部28の中心軸線Axにほぼ直交する上面に連なっており、径方向内側に向けて下がるように傾斜する。平坦面40Bは、傾斜面40Aに連なっており、中心軸線Axに直交する平面である。傾斜面40Cは、平坦面40Bに連なっており、径方向内側に向けて下がるように傾斜する。各突起42は、平坦面40Bと傾斜面40Cの間の境界である円周41上に配置されている。
【0032】
図4に示すように、各突起42は、先端に向けて細くなる輪郭を有する。すなわち、各突起42において、先端側の断面積(突起42の高さ方向に対して垂直な断面の面積)は基端側の断面積より小さい。具体的には、各突起42は、2つの部分42A,42Bを有する。部分42Aは、中心軸線Axに平行な軸線を有する円筒の一部の形状を有し、傾斜面40Cから上方に突出する。部分42Bは、部分42Aの円筒と同じ軸線を有するほぼ円錐台の形状を有し、部分42Aおよび平坦面40Bから上方に突出する。円錐台状の部分42Bは、基端すなわち下端ほど
大きい直径を有するテーパ形状を有する。例えば、部分42Bの先端面すなわち上端面の直径D1は、部分42Bの基端すなわち下端の直径D2(部分42Aの曲率半径の2倍)より小さい。
【0033】
また、各突起42の部分42Bの高さH2は、部分42Bの最小直径D1より小さい。さらには、各突起42の突出量すなわち高さH1は、部分42Bの最小直径D1以下である。複数の突起42は、同じ大きさおよび同じ形状を有しており、複数の突起42の先端面は面一である。
【0034】
図5に示すように、複数の突起42は、等角間隔をおいて配置されていてもよい。
図5は、8個の突起42を示し、これらの突起42は45°の角間隔をおいて配置されている。但し、突起42の数および角間隔は
図5の例に限定されない。上方の密封装置20を安定的に支持するため、突起42の数は少なくとも3つであることが好ましい。
【0035】
図6に示すように、複数の突起42は、等しくない角間隔をおいて配置されていてもよい。
図6は、24個の突起42を示す。これらの突起42は、各グループが近隣の3個の突起42から構成される8つのグループに分類することができる。これらのグループは45°の角間隔をおいて配置されている。但し、グループの数、さらには突起42の数は、
図6の例に限定されない。
【0036】
図7は、複数の同タイプの密封装置20を台Stの上に積み重ねた状態を示す。製造工程、搬送工程または設置工程において、多数の密封装置20を積み重ねた場合、密封装置20を他の密封装置20から容易に離間させることが可能であることが望ましい。この実施形態においては、複数の同タイプの密封装置20を積み重ねた場合に、上方の密封装置20の筒状部26の下面26Aが直下の密封装置20の環状部27の上面40上に配置される。環状部27の上面40は、他の物体へ貼り付きやすい弾性材料で形成されているが、環状部27の上面40には、中心軸線Axの方向に突出し互いに離間して配置された複数の突起42が形成されている。複数の突起42の密封装置20の径方向外側の端部が配置された円周の直径は、筒状部26の下面26Aの直径より大きく、複数の突起42の密封装置20の径方向内側の端部が配置された円周の直径は、筒状部26の下面26Aの直径より小さい。したがって、上方の密封装置20の筒状部26の下面26Aと、直下の密封装置20の環状部27の上面40との間には、互いに離間した複数の突起42が介在するので、上方の密封装置20の筒状部26と直下の密封装置20の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置20が直下の密封装置20に貼り付きにくく、密封装置20を他の密封装置20から容易に離間させることが可能である。
【0037】
密封装置20を積み重ねた場合、リップ32,34,36,38が他の密封装置20に接触しないように、リップ32,34,36,38の各々の長さ、向きおよび位置は設計されている。要するに、複数の密封装置20を積み重ねたときには、密封装置20の筒状部26の下面26Aと、他の密封装置20の内側環状部30の上面40に形成された突起42とが接触し、他の部分が接触しないように、考慮されている。
【0038】
密封装置20を積み重ねた場合、下方の密封装置20の突起42は、上方の密封装置20の荷重を受けて圧縮変形する。突起42が圧縮変形したとしても、突起42以外の部分、例えば内側環状部30の上面40が上方の密封装置20に接触しないように、突起42の初期の高さH1は設計されている。
【0039】
この実施形態では、筒状部26の下面26Aは、剛性材料製の補強環24で形成されている。したがって、複数の密封装置20を積み重ねた場合に、弾性材料、例えばエラストマーで形成された突起42が筒状部26の下面26Aに貼り付きにくいので、密封装置20を他の密封装置20からさらに容易に離間させることが可能である。
【0040】
上記のように、各突起42は、円筒の一部の形状を有する部分42Aと、円錐台状の部分42Bとを有する。したがって、各突起42の先端の密封装置20の径方向の長さ(直径D1)は、各突起42の先端の各突起42が配置された円周41上の長さ(直径D1)と等しい。このように、各突起42の先端の密封装置20の径方向の長さが大きいので、複数の密封装置20を積み重ねた場合に、これらの密封装置20が偏心していたり、突起42の配置に誤差があったりしても、上方の密封装置20は直下の密封装置20の各突起42の先端に確実に接触し、上方の密封装置20が安定して支持される。また、各突起42の先端の密封装置20の径方向の長さが円周41上の長さに対して大きいので、各突起42は、密封装置20の径方向の力に対する高い強度を有する。
【0041】
各突起42の先端の直径D1(先端の密封装置20の径方向の長さ、かつ先端の円周41上の長さ)は、各突起42の部分42Bの高さH2より大きく、各突起42の軸線方向の突出量すなわち高さH1以上である。このように、各突起42の先端の前記径方向の長さおよび円周41上の長さが大きいので、上方の密封装置20の荷重を受けても、突起42の圧縮変形量を抑制することができ、上方の密封装置20の筒状部26の下面26Aが直下の密封装置20の環状部27の上面40に面接触することを低減または防止することができる。また、各突起42の先端の前記径方向の長さが軸線方向の突出量に対して大きいので、突起42が倒れたり座屈したりしにくい。
【0042】
各突起42の先端の直径D1(先端の密封装置20の径方向の長さ、かつ先端の円周41上の長さ)は、各突起42の基端の直径D2(基端の密封装置20の径方向の長さ、かつ基端の円周41上の長さ)より小さい。したがって、突起42が倒れたり座屈したりしにくい。
【0043】
図8は、突起42を示す拡大平面図である。
図8に示すように、好ましくは、突起42の先端面には、梨地処理によって多数の微細な凹凸が不規則に形成されている。このような微細な凹凸により、突起42と筒状部26の下面26Aとの接触面積が低減され、突起42が筒状部26の下面26Aに貼り付きにくいので、密封装置20を他の密封装置20からさらに容易に離間させることが可能である。梨地処理を行う場合には、突起42の先端面だけに対して処理を行ってもよいし、突起42全体に対して処理を行ってもよいし、内側環状部30の上面40全体に対して処理を行ってもよい。
【0044】
図9から
図13は、それぞれ突起42の他の例を拡大して示す。
図9に示すように、突起42の先端面に凹部46を形成し、突起42と筒状部26の下面26Aとの接触面積を低減してもよい。さらに
図10に示すように、突起42に凹部46と外部を通じさせる溝48を形成し、突起42の先端面が筒状部26の下面26Aにさらに貼り付き
にくくしてもよい。
図9および
図10の例でも、突起42の先端面には、梨地処理を行ってよい。
【0045】
上記の突起42は、ほぼ円錐台の形状を有するが、
図11から
図13に示すように、突起42は、ほぼ四角錐台の形状を有してもよい。
図11に示すように、好ましくは、突起42の先端面には、梨地処理によって多数の微細な凹凸が不規則に形成されている。
図12に示すように、突起42の先端面に凹部46を形成し、突起42と筒状部26の下面26Aとの接触面積を低減してもよい。さらに
図13に示すように、突起42に凹部46と外部を通じさせる溝48を形成し、突起42の先端面が筒状部26の下面26Aにさらに貼り付き
にくくしてもよい。
図12および
図13の例でも、突起42の先端面には、梨地処理を行ってよい。突起42は、他の形状を有していてもよい。
【0046】
第2実施形態
図14から
図19は、本発明の第2実施形態を示す。
図14以降の図面において、第1実施形態と共通する構成要素を示すため、同一の符号が使用され、それらの構成要素については詳細には説明しない。
【0047】
この実施形態においては、内側環状部30の上面40に、複数の突起42に加えて、複数の第2の突起50が設けられている。各第2の突起50は、弾性環22と同じ弾性材料によって形成されている。複数の第2の突起50は、中心軸線Axを中心とする円周上に互いに離間して配置されており、中心軸線Axの方向に上方に突出する。「中心軸線Axの方向に突出する」とは、図示のように、第2の突起50の突出方向が中心軸線Axに対して傾斜していることを含む。
【0048】
複数の第2の突起50が配置された円周は、複数の突起42が配置された円周41よりも径方向外側にある。具体的には、突起42が上面40の平坦面40Bと傾斜面40Cの間の境界である円周41上に配置されているのに対して、第2の突起50は、平坦面40Bの外側の傾斜面40Aに配置されている。第2の突起50は、ハブ4にも外輪8にも接触せず、リップの封止機能または異物からの保護の機能を有しない
【0049】
図16に示すように、各突起42は、第1実施形態の各突起42と類似の形状を有する。各突起42は、円筒の一部の形状を有する部分42Aと、ほぼ円錐台状の部分42Bを有する。円錐台状の部分42Bは、基端すなわち下端ほど
大きい直径を有するテーパ形状を有する。例えば、部分42Bの先端面すなわち上端面の直径D1は、部分42Bの基端すなわち下端の直径D2(部分42Aの曲率半径の2倍)より小さい。
【0050】
また、各突起42の部分42Bの高さH2は、部分42Bの最小直径D1より小さい。さらには、各突起42の突出量すなわち高さH1は、部分42Bの最小直径D1より小さい。複数の突起42は、同じ大きさおよび同じ形状を有しており、複数の突起42の先端面は面一である。
【0051】
第2の突起50は、先端に向けて細くなる輪郭を有する。すなわち、第2の突起50は、突起42の部分42Bと同じ大きさと同じ形状を有する。第2の突起50は、基端すなわち下端ほど
大きい直径を有するテーパ形状を有する。例えば、第2の突起50の先端面すなわち上端面の直径D1は、第2の突起50の基端すなわち下端の直径D2より小さい。また、第2の突起50の高さH2は、第2の突起50の最小直径D1より小さい。第2の突起50の軸線方向は、傾斜面40Aに直交する。
【0052】
図17に示すように、複数の第2の突起50は、等角間隔をおいて配置されていてもよい。
図17は、8個の第2の突起50を示し、これらの第2の突起50は45°の角間隔をおいて配置されている。但し、第2の突起50の数および角間隔は
図17の例に限定されない。第2の突起50が上方の密封装置20の荷重を受ける場合には、上方の密封装置20を安定的に支持するため、第2の突起50の数は少なくとも3つであることが好ましい。
【0053】
図18に示すように、複数の第2の突起50は、等しくない角間隔をおいて配置されていてもよい。
図18は、24個の第2の突起50を示す。これらの第2の突起50は、各グループが近隣の3個の第2の突起50から構成される8つのグループに分類することができる。これらのグループは45°の角間隔をおいて配置されている。但し、グループの数、さらには第2の突起50の数は、
図18の例に限定されない。
図17および
図18において、第2の突起50の角度配置は、突起42の角度配置と同じであるが、第2の突起50の角度配置は、突起42の角度配置と異なっていてもよい。
【0054】
図19に示すように、複数の同タイプの密封装置20を積み重ねた場合に、上方の密封装置20の筒状部26が、直下の密封装置20の突起42の径方向外側に配置された複数の第2の突起50により、包囲される。複数の第2の突起50が配置された円周の直径は、筒状部26の下面26Aの直径より大きい。したがって、これらの密封装置20の偏心が抑制され、上方の密封装置20は直下の密封装置20の各突起42の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0055】
上方の密封装置20の筒状部26の下面26Aと、直下の密封装置20の環状部27の上面40との間には、互いに離間した複数の突起42が介在する。また、上方の密封装置20の筒状部26の外面と、直下の密封装置20の環状部27の上面40との間には、互いに離間した複数の第2の突起50が介在する。したがって、上方の密封装置20の筒状部26と直下の密封装置20の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置20が直下の密封装置20に貼り付きにくく、密封装置20を他の密封装置20から容易に離間させることが可能である。
【0056】
この実施形態では、筒状部26の下面26Aおよび外面は、剛性材料製の補強環24で形成されている。したがって、複数の密封装置20を積み重ねた場合に、弾性材料、例えばエラストマーで形成された突起42および第2の突起50が筒状部26の下面26Aおよび外面に貼り付きにくいので、密封装置20を他の密封装置20からさらに容易に離間させることが可能である。
【0057】
複数の密封装置20を積み重ねた場合、下方の密封装置20の突起42は、上方の密封装置20の荷重を受けて圧縮変形する。突起42が圧縮変形したとしても、突起42以外の部分、例えば内側環状部30の上面40が上方の密封装置20に接触しないように、突起42の初期の高さH1は設計されている。
【0058】
また、この実施形態では、下方の密封装置20の第2の突起50は、上方の密封装置20の荷重を受けて圧縮変形する。第2の突起50が圧縮変形したとしても、突起42と第2の突起50以外の部分が上方の密封装置20に接触しないように、第2の突起50の初期の高さH2は設計されている。
【0059】
上記のように、各第2の突起50は、円錐台状の形状を有する。各第2の突起50の先端の直径D1は、各第2の突起50の高さH2より大きい。したがって、上方の密封装置20の荷重を受けても、第2の突起50の圧縮変形量を抑制することができ、上方の密封装置20の筒状部26の外面が直下の密封装置20の環状部27の上面40に面接触することを低減または防止することができる。また、第2の突起50が倒れたり座屈したりしにくい。
【0060】
各第2の突起50の先端の直径D1は、各第2の突起50の基端の直径D2より小さい。したがって、第2の突起50が倒れたり座屈したりしにくい。
【0061】
好ましくは、突起42の先端面には、
図8に示すように、梨地処理によって多数の微細な凹凸が不規則に形成されている。第2の突起50の先端面にも同様に梨地処理を行って、多数の微細な凹凸を不規則に形成してもよい。
図9から
図13に示す突起42の変形は、第2の突起50に対して適用してもよい。
【0062】
図20は、第2実施形態の変形例に係る密封装置の一部を破断した斜視図である。この密封装置20には、第2の突起50と異なる形状および寸法を有する複数の第2の突起51が設けられている。第2の突起51は、第2の突起50よりも径方向外側に配置されており、複数の密封装置20を積み重ねても、すべての第2の突起51が上方の密封装置20の筒状部26の外面に接触するとは限らない。また、第2の突起51は、上方の密封装置20の荷重を鉛直方向には受けない。
【0063】
第2の突起51は、ほぼ直方体の形状を有しており、第2の突起51の突出方向は、中心軸線Axに対してほぼ平行である。また、中心軸線Axを中心とする複数の第2の突起51の角度配置は、複数の突起42の角度配置と異なっている。
【0064】
図示しないが、複数の同タイプの密封装置20を積み重ねた場合に、上方の密封装置20の筒状部26が、直下の密封装置20の複数の第2の突起51により、包囲される。したがって、これらの密封装置20の偏心が抑制され、上方の密封装置20は直下の密封装置20の各突起42の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0065】
図20においては、第2の突起51は、内側環状部30の上面40の傾斜面40Aに形成されている。しかし、第2の突起51は、外側環状部28の上面に形成してもよい。
【0066】
図21は、第2実施形態の他の変形例に係る密封装置の一部を破断した斜視図である。この密封装置20には、複数の第2の突起の代わりに、単一の環状の第2の突起52が設けられている。第2の突起52は、第2の突起50よりも径方向外側に配置されており、複数の密封装置20を積み重ねても、第2の突起52の内周面のすべてが上方の密封装置20の筒状部26の外面に接触するとは限らない。また、第2の突起52は、上方の密封装置20の荷重を鉛直方向には受けない。
【0067】
第2の突起52は、薄板の形状を有しており、第2の突起52の突出方向は、中心軸線Axに対してほぼ平行である。第2の突起52は、突起42が配置された円周41より径方向外側にある、中心軸線Axを中心とする円周上に連続的に配置されている。
【0068】
図示しないが、複数の同タイプの密封装置20を積み重ねた場合に、上方の密封装置20の筒状部26が、直下の密封装置20の環状の第2の突起52により、包囲される。したがって、これらの密封装置20の偏心が抑制され、上方の密封装置20は直下の密封装置20の各突起42の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0069】
図21においては、第2の突起52は、内側環状部30の上面40の傾斜面40Aに形成されている。しかし、第2の突起52は、外側環状部28の上面に形成してもよい。
【0070】
第3実施形態
図22から
図26は、本発明の第3実施形態を示す。
【0071】
この実施形態においては、内側環状部30の上面40に、複数の突起42の代わりに、複数の突起54が設けられている。各突起54は、弾性環22と同じ弾性材料によって形成されている。複数の突起54は、中心軸線Axを中心とする円周上に互いに離間して配置されており、中心軸線Axの方向に上方に突出する。
【0072】
図示しないが複数の同タイプの密封装置20を積み重ねた場合に、上方の密封装置20の筒状部26の下面26Aは、直下の密封装置20の環状部27の上面40に形成された複数の突起54に接触するので、上方の密封装置20の筒状部26と直下の密封装置20の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置20が直下の密封装置20に密着しにくく、密封装置20を他の密封装置20から容易に離間させることが可能である。筒状部26の下面26Aは、剛性部分で形成されており、複数の密封装置20を積み重ねた場合に、弾性材料、例えばエラストマーで形成された突起42が筒状部26の下面26Aに貼り付きにくいので、密封装置20を他の密封装置20からさらに容易に離間させることが可能である。
【0073】
各突起54は、密封装置20の径方向に延びており、環状部27の外側環状部28の上面および内側環状部30の上面40の上に配置されている。
図24および
図25に示すように、各突起54は、中央部54A、外端部54B、および内端部54Cを有する。中央部54Aは、突起54の密封装置20の径方向中央に位置し、外側環状部28の上面および内側環状部30の上面40(傾斜面40A、平坦面40Bおよび傾斜面40C)の上に配置されている。外端部54Bは、中央部54Aよりも径方向外側に位置し、外側環状部28の上面の上に配置されている。内端部54Cは、中央部54Aよりも径方向内側に位置し、上面40の傾斜面40Cの上に配置されている。複数の突起54の外端部54Bが配置された円周の直径は、筒状部26の下面26Aの直径より大きく、複数の突起54の内端部54Cが配置された円周の直径は、筒状部26の下面26Aの直径より小さい。
【0074】
図26に示すように、中央部54Aは、先端に向けて細くなる断面を有するテーパ部分である。具体的には、中央部54Aは、ほぼ二等辺三角形の断面を有しており、2つの傾斜平面54Dと先端部(頂部)54Eを有する。
図24に示すように、先端部54Eは、直線状であって、突起54が配置された円周に対して直交して延びる。
【0075】
外端部54Bは、湾曲面であって、中央部54Aの2つの傾斜平面54Dに円滑に連なる。内端部54Cも、湾曲面であって、中央部54Aの2つの傾斜平面54Dに円滑に連なる。先端部54Eは、外端部54Bおよび内端部54Cの一部まで延びている。
【0076】
各突起54の先端部54Eの密封装置20の径方向の長さLは、先端部54Eの幅W(各突起54が配置された円周上の長さ)よりもはるかに大きい。したがって、複数の密封装置20を積み重ねた場合に、これらの密封装置20が偏心していたり、突起54の配置に誤差があったりしても、上方の密封装置20は直下の密封装置20の各突起54の先端部54Eに確実に接触し、上方の密封装置20が安定して支持される。また、長さLが幅Wよりはるかに大きいため、各突起54は、密封装置20の径方向の力に対する高い強度を有する。
【0077】
各突起54の先端部54Eの密封装置20の径方向の長さLは、突起54の中心軸線Axの方向の突出量すなわち高さH以上である。したがって、上方の密封装置20の荷重を受けても、突起54の圧縮変形量を抑制することができ、上方の密封装置20の筒状部26の下面26Aが直下の密封装置20の環状部27の上面40に面接触することを低減または防止することができる。また、長さLが高さH以上であるので、突起54が倒れたり座屈したりしにくい。
【0078】
各突起54の先端部54Eの密封装置20の径方向の長さLは、各突起54の基端の前記径方向の長さより小さい。したがって、突起54が倒れたり座屈したりしにくい。
【0079】
突起54の中央部54Aの断面形状は、二等辺三角形に限定されない。
図27に示すように、中央部54Aは、ほぼ五角形の断面を有していてもよいし、ドーム形(逆U字形)の断面を有していてもよい。
【0080】
各突起54は、密封装置20の径方向に延びており、先端部54Eは、突起54が配置された円周に対して直交する。しかし、各突起54は、密封装置20の径方向に傾斜して延び、先端部54Eは、突起54が配置された円周に傾斜して交差してもよい。
【0081】
好ましくは、突起54、特に先端部54Eには、梨地処理によって多数の微細な凹凸が不規則に形成されている。第2実施形態または変形例における、複数の第2の突起50もしくは突起51、または環状の第2の突起52を第3実施形態に設けてもよい。
【0082】
第4実施形態
図28および
図29は、本発明の第4実施形態を示す。この実施形態に係る密封装置60は、筒状部66、環状部67、ラジアルリップ32、および2つのサイドリップ34,36を有する。密封装置60は、弾性材料、例えばエラストマーで形成された弾性環22と、弾性環22を補強する剛性材料、例えば金属製の補強環24とを有する。補強環24は、その一部が弾性環22に埋設されており、弾性環22に密着している。
【0083】
筒状部66は、中心軸線Axを中心とする円筒状の部分である。第1〜第3実施形態の筒状部26と異なり、筒状部66には、外輪8の円筒状の端部8Aが嵌め入れられる。筒状部66は端部8Aに固定される。固定の方式は、限定されないが、例えば締まり嵌めであってよい。すなわち、筒状部66に端部8Aが圧入されてもよい。筒状部66は、補強環24の筒状の部分と、この筒状の部分の周囲に配置された弾性環22から構成されている。補強環24の筒状の部分が筒状部66の内周面を有しており、端部8Aの外周面に締まり嵌め状態で接触する。筒状部66の下面66A(環状部67とは反対側の表面)は、弾性環22により形成されている。
【0084】
環状部67は筒状部66の上端に連結されている。環状部67も、弾性環22と補強環24から構成されている。ここでは、環状部67を便宜上、3つの部分(外側環状部68、中間環状部69、内側環状部70)に区分する。外側環状部68は、筒状部66の真上の部分、すなわち外輪8の端部8Aの外周面より外側の部分である。中間環状部69は、外輪8の端部8Aの真上の部分、すなわち外輪8の端部8Aの外周面より内側で内周面より外側の部分である。内側環状部70は、端部8Aの内周面より内側の部分である。
【0085】
中間環状部69において、補強環24が端部8Aの端面に接触させられる。ラジアルリップ32およびサイドリップ34,36は、内側環状部70の弾性環22に相当する部分から延びる。この実施形態において、補助リップ38が設けられていないが、補助リップ38を設けてもよい。
【0086】
外側環状部68の上面68A(筒状部66とは反対側の表面)は、弾性環22により形成されている。上面68Aは平坦面であり、中間環状部69の上面と面一である。
【0087】
上面68Aには、弾性環22と同じ弾性材料によって複数の突起72が形成されている。これらの突起72は、ハブ軸受1および筒状部66の中心軸線Axを中心とする円周上に互いに離間して配置されており、中心軸線Axの方向に上方に突出する。突起72は、ハブ4にも外輪8にも接触せず、リップの封止機能または異物からの保護の機能を有しない。
【0088】
各突起72は、第1実施形態の突起42の部分42Bと同じ円錐台状の形状を有する。したがって、各突起72は、先端に向けて細くなる輪郭を有し、各突起72において、先端側の断面積(突起72の高さ方向に対して垂直な断面の面積)は基端側の断面積より小さい。突起72の先端面すなわち上端面の直径は、突起72の基端すなわち下端の直径より小さい。
【0089】
また、各突起72の高さは、突起72の最小直径(先端面の直径)より小さい。複数の突起72は、同じ大きさおよび同じ形状を有しており、複数の突起72の先端面は面一である。
【0090】
また、上面68Aには、弾性環22と同じ弾性材料によって複数の第2の突起74が形成されている。複数の第2の突起74も、中心軸線Axを中心とする円周上に互いに離間して配置されており、中心軸線Axの方向に上方に突出する。複数の第2の突起74が配置された円周は、複数の突起72が配置された円周よりも径方向外側にある。第2の突起74は、ハブ4にも外輪8にも接触せず、リップの封止機能または異物からの保護の機能を有しない。
【0091】
図17に例示された突起42と同様に、複数の突起72は、等角間隔をおいて配置されていてもよいし、
図18に例示された突起42と同様に、複数の突起72は、等しくない角間隔をおいて配置されていてもよい。突起72の数および角間隔は、
図17および
図18の例に限定されない。但し、上方の密封装置60を安定的に支持するため、突起72の数は少なくとも3つであることが好ましい。
【0092】
図17に例示された第2の突起50と同様に、複数の第2の突起74は、等角間隔をおいて配置されていてもよいし、
図18に例示された第2の突起50と同様に、複数の第2の突起74は、等しくない角間隔をおいて配置されていてもよい。第2の突起74の数および角間隔は、
図17および
図18の例に限定されない。第2の突起74が上方の密封装置60の荷重を受ける場合には、上方の密封装置60を安定的に支持するため、第2の突起74の数は少なくとも3つであることが好ましい。
【0093】
図29は、複数の同タイプの密封装置60を台Stの上に積み重ねた状態を示す。複数の同タイプの密封装置60を積み重ねた場合に、上方の密封装置60の筒状部66の下面66Aが直下の密封装置60の環状部67の上面68A上に配置される。環状部67の上面68Aおよび筒状部66の下面66Aは、他の物体へ貼り付きやすい弾性材料で形成されているが、環状部67の上面68Aには、中心軸線Axの方向に突出し互いに離間して配置された複数の突起72が形成されている。突起72は、複数の密封装置60が積み重ねられると、上方の密封装置60の筒状部66の下面66Aに接触する位置に形成されている。したがって、上方の密封装置60の筒状部66の下面66Aと、直下の密封装置60の環状部67の上面68Aとの間には、互いに離間した複数の突起72が介在するので、上方の密封装置60の筒状部66と直下の密封装置60の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置60が直下の密封装置60に貼り付きにくく、密封装置60を他の密封装置60から容易に離間させることが可能である。
【0094】
また、複数の同タイプの密封装置60を積み重ねた場合に、上方の密封装置60の筒状部66が、直下の密封装置60の複数の第2の突起74により、包囲される。第2の突起74は、複数の密封装置60が積み重ねられると、上方の密封装置60の筒状部66の外側になる位置に形成されている。したがって、これらの密封装置60の偏心が抑制され、上方の密封装置60は直下の密封装置60の各突起72の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0095】
密封装置60を積み重ねた場合、リップ32,34,36,38が他の密封装置60に接触しないように、リップ32,34,36,38の各々の長さ、向きおよび位置は設計されている。要するに、複数の密封装置60を積み重ねたときには、密封装置60の筒状部66の下面66Aと、他の密封装置60の内側環状部30の上面68Aに形成された突起72とが接触し、他の部分が接触しないように、考慮されている。
【0096】
密封装置60を積み重ねた場合、下方の密封装置60の突起72は、上方の密封装置60の荷重を受けて圧縮変形する。突起72が圧縮変形したとしても、突起72以外の部分、例えば内側環状部30の上面68Aが上方の密封装置60に接触しないように、突起72の初期の高さは設計されている。
【0097】
上記のように、各突起72は、円錐台状の形状を有する。したがって、各突起72の先端の密封装置60の径方向の長さは、各突起72の先端の各突起72が配置された円周上の長さ(直径D1)と等しい。このように、各突起72の先端の密封装置60の径方向の長さが大きいので、複数の密封装置60を積み重ねた場合に、これらの密封装置60が偏心していたり、突起72の配置に誤差があったりしても、上方の密封装置60は直下の密封装置60の各突起72の先端に確実に接触し、上方の密封装置60が安定して支持される。また、各突起72の先端の密封装置60の径方向の長さが円周上の長さに対して大きいので、各突起72は、密封装置60の径方向の力に対する高い強度を有する。
【0098】
各突起72の先端の直径(先端の密封装置60の径方向の長さ、かつ先端の前記円周上の長さ)は、各突起72の高さより大きい。このように、各突起72の先端の径方向の長さおよび前記円周上の長さが大きいので、上方の密封装置60の荷重を受けても、突起72の圧縮変形量を抑制することができ、上方の密封装置60の筒状部66の下面66Aが直下の密封装置60の環状部67の上面68Aに面接触することを低減または防止することができる。また、各突起72の先端の前記径方向の長さが軸線方向の突出量に対して大きいので、突起72が倒れたり座屈したりしにくい。
【0099】
各突起72の先端の直径(先端の密封装置60の前記径方向の長さ、かつ先端の前記円周上の長さ)は、各突起72の基端の直径(基端の密封装置60の前記径方向の長さ、かつ基端の前記円周上の長さ)より小さい。したがって、突起72が倒れたり座屈したりしにくい。
【0100】
好ましくは、突起72の先端面には、
図8に示す突起42の先端面と同様に、梨地処理によって多数の微細な凹凸が不規則に形成されている。第2の突起74の先端面にも同様に梨地処理を行って、多数の微細な凹凸を不規則に形成してもよい。
図9から
図13に示す突起42の変形は、突起72および第2の突起74に対して適用してもよい。
【0101】
この実施形態において、複数の第2の突起74の代わりに、
図21に示す単一の環状の第2の突起52と同様の単一の環状の第2の突起を設けてもよい。この場合に、上方の密封装置60の筒状部66が、直下の密封装置60の環状の第2の突起により、包囲される。したがって、これらの密封装置60の偏心が抑制され、上方の密封装置60は直下の密封装置60の各突起72の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0102】
この実施形態において、突起72の形状を
図22から
図27に示す突起54と類似の形状にしてもよい。この場合、突起72は、先端に向けて細くなる断面(例えば二等辺三角形の断面)を有するテーパ部分を有しており、テーパ部分において先端は、各突起が配置された円周に対して交差して延びる。したがって、複数の密封装置60を積み重ねた場合に、これらの密封装置60が偏心していたり、突起72の配置に誤差があったりしても、上方の密封装置60は直下の密封装置60の各突起72の先端部に確実に接触し、上方の密封装置60が安定して支持される。また、上方の密封装置60の荷重を受けても、突起72の圧縮変形量を抑制することができ、上方の密封装置60の筒状部66の下面66Aが直下の密封装置60の環状部67の上面68Aに面接触することを低減または防止することができる。また、突起72が倒れたり座屈したりしにくい。
【0103】
第5実施形態
図30および
図31は、本発明の第5実施形態を示す。第5実施形態は、第4実施形態の変形である。
【0104】
密封装置60の筒状部66の下端には、弾性環22で形成された幅広部76が設けられ、幅広部76の下面66Aに複数の突起72および第2の突起74が配置されている。すなわち、第4実施形態で環状部67の外側環状部68の上面68Aに形成された複数の突起72および第2の突起74が、この実施形態では、筒状部66の下面66Aに下方に突出するよう形成されている。
【0105】
他の特徴は、第4実施形態と同じであり、第4実施形態に関する変形はこの実施形態にも適用可能である。
【0106】
図31は、複数の同タイプの密封装置60を台Stの上に積み重ねた状態を示す。複数の同タイプの密封装置60を積み重ねた場合に、上方の密封装置60の筒状部66の下面66Aが直下の密封装置60の環状部67の上面68A上に配置される。環状部67の上面68Aおよび筒状部66の下面66Aは、他の物体へ貼り付きやすい弾性材料で形成されているが、筒状部66の下面66Aには、中心軸線Axの方向に突出し互いに離間して配置された複数の突起72が形成されている。突起72は、複数の密封装置60が積み重ねられると、下方の密封装置60の環状部67の上面68Aに接触する位置に形成されている。したがって、上方の密封装置60の筒状部66の下面66Aと、直下の密封装置60の環状部67の上面68Aとの間には、互いに離間した複数の突起72が介在するので、上方の密封装置60の筒状部66と直下の密封装置60の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置60が直下の密封装置60に貼り付きにくく、密封装置60を他の密封装置60から容易に離間させることが可能である。
【0107】
また、複数の同タイプの密封装置60を積み重ねた場合に、下方の密封装置60の環状部67が、直上の密封装置60の複数の第2の突起74により、包囲される。第2の突起74は、複数の密封装置60が積み重ねられると、下方の密封装置60の環状部67の外側になる位置に形成されている。したがって、これらの密封装置60の偏心が抑制され、下方の密封装置60は直上の密封装置60の各突起72の先端に確実に接触し、上方の密封装置60は安定して支持される。
【0108】
この実施形態において、複数の第2の突起74の代わりに、単一の環状の第2の突起を設けてもよい。この場合に、下方の密封装置60の環状部67が、直上の密封装置60の環状の第2の突起により、包囲される。したがって、これらの密封装置60の偏心が抑制され、上方の密封装置60は直下の密封装置60の各突起72の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0109】
第4実施形態では、環状部67の外側環状部68の上面68Aに突起72および第2の突起74が形成され、第5実施形態では、筒状部66の下面66Aに突起72および第2の突起74が形成されている。しかし、環状部67の外側環状部68の上面68Aに突起72を形成し、筒状部66の下面66Aに第2の突起74を形成してもよい。環状部67の外側環状部68の上面68Aに第2の突起74を形成し、筒状部66の下面66Aに突起72を形成してもよい。
【0110】
好適な突起の面積
密封装置相互の貼り付き防止の観点から、密封装置の突起の好適な面積範囲を調べるための実験を行った。実験に使用した密封装置は、第1実施形態に係る密封装置20であり、各突起42は
図4に示す形状を有し、突起42の先端面は梨地処理を行わない平坦面であった。
【0111】
実験では、40℃の環境で、同タイプの多数の密封装置を
図7に示すように積み重ねて、さらに積み重ねられた密封装置の上に荷重を載せて、72時間放置した。そして、72時間経過後の密封装置相互の貼り付き状態を調べた。
【0112】
実験では、
図32に示すように、4タイプの密封装置を使用した。第1のタイプは、突起42を有さない。したがって、上下の密封装置の接触面積比の基準を第1のタイプに設定した。上下の密封装置の接触面積、すなわち、上方の密封装置の筒状部26の下面26Aに下方の密封装置の上面40の傾斜面40Aが接触する面積を測定した。第1のタイプについて接触面積比は、第1のタイプでの接触部分の面積に対する第1のタイプでの接触部分の面積の比と設定し、100%と設定した。
【0113】
第2のタイプは、90°の等角間隔をおいて配置された4個の突起42を有する。換言すれば、各グループが1個の突起42から構成される4つのグループが90°の等角間隔をおいて配置されている。接触面積比は5.0%であった。第2のタイプについて接触面積比は、第1のタイプでの接触部分の面積に対する第2のタイプでの接触部分(上方の密封装置の筒状部26の下面26Aに複数の突起42の先端面が接触する部分)の面積の比である。
【0114】
第3のタイプは、45°の等角間隔をおいて配置された8個の突起42を有する(つまり、
図5に示す配置パターンを有する)。換言すれば、各グループが1個の突起42から構成される8つのグループが45°の等角間隔をおいて配置されている。接触面積比は8.9%であった。第3のタイプについて接触面積比は、第1のタイプでの接触部分の面積に対する第3のタイプでの接触部分(上方の密封装置の筒状部26の下面26Aに複数の突起42の先端面が接触する部分)の面積の比である。
【0115】
第4のタイプは、各グループが3個の突起42から構成される8つのグループが45°の等角間隔をおいて配置された24個の突起42を有する(つまり、
図6に示す配置パターンを有する)。接触面積比は19.3%であった。第4のタイプについて接触面積比は、第1のタイプでの接触部分の面積に対する第4のタイプでの接触部分(上方の密封装置の筒状部26の下面26Aに複数の突起42の先端面が接触する部分)の面積の比である。
【0116】
密封装置の弾性環22、ひいては突起42の材料はニトリルゴムであった。補強環24、ひいては筒状部26の材料は鉄であった。密封装置の筒状部26の表面には、製造工程で塗布された鉄とニトリルゴムを接着する接着剤が乾燥した状態で残存していた。
【0117】
実験で使用した荷重は、同タイプの多数の密封装置である。具体的には、1つの実験では、25個の同タイプの密封装置20を積層した。つまり、
図7に示す最も下方の3つの密封装置20A,20B,20Cの上に22個の図示しない密封装置20を積層した。各密封装置20の重量は0.0273kgfであり、3つの密封装置20A,20B,20Cに与えられた荷重は0.60kgfであった。
【0118】
もう1つの実験では、75個の同タイプの密封装置20を積層した。つまり、
図7に示す最も下方の3つの密封装置20A,20B,20Cの上に72個の図示しない密封装置20を積層した。3つの密封装置20A,20B,20Cに与えられた荷重は1.97kgfであった。
【0119】
次に実験結果を述べる。
図32の表において、サンプル1とは、
図7に示す下から3番目の密封装置20Aであり、サンプル2とは下から2番目の密封装置20Bであり、サンプル3とは最も下の密封装置20Cである。
【0120】
第1のタイプについては、荷重が0.60kgfの場合も1.97kgfの場合も、サンプル1(密封装置20A)を持ち上げると、サンプル2(密封装置20B)がサンプル1(密封装置20A)に貼りついて持ち上がり、サンプル3(密封装置20C)もサンプル2(密封装置20B)に貼りついて持ち上がった。したがって、サンプル1には、2つのサンプル2,3の重量(0.0546kgf=0.535N)以上の力の貼り付き力が働いたと推定される。
【0121】
第2のタイプおよび第3のタイプについては、荷重が0.60kgfの場合も1.97kgfの場合も、サンプル1(密封装置20A)を持ち上げても、サンプル2(密封装置20B)が持ち上がらなかった。この後、サンプル2(密封装置20B)を持ち上げても、サンプル3(密封装置20C)が持ち上がらなかった。したがって、各サンプルに働く貼り付き力は、1つのサンプルの重量(0.0273kgf=0.268N)未満であったと推定される。
【0122】
第4のタイプについては、荷重が0.60kgfの場合、サンプル1を持ち上げると、サンプル2がサンプル1に貼りついて持ち上がり、サンプル3もサンプル2に貼りついて持ち上がった。荷重が1.97kgfの場合、サンプル1を持ち上げると、サンプル2が持ち上がらないことが多かったが、サンプル1をサンプル2から分離した後、サンプル2を持ち上げると、サンプル3はサンプル2に貼りついて持ち上がった。したがって、各サンプルに働く貼り付き力は、2つのサンプルの重量未満で、1つのサンプルの重量より大きかったと推定される。
【0123】
以上の結果だけからいえば、接触面積比は、5.0%(第2のタイプ)以上で、19.3%(第4のタイプ)以下であることが好ましく、5.0%以上で8.9%(第3のタイプ)以下であることがさらに好ましい。但し、実験に使用したタイプの数が少ない。接触面積比が5.0%未満であっても、突起42により上下の密封装置が貼り付かないことが多いと考えられる。もっとも、接触面積比が4.0%未満では、荷重によって突起42が圧縮されて潰れてしまい、接触面積比が100%になってしまう上、積み重ねられた密封装置20の安定性が損なわれる(積み重ねられた密封装置20が倒れやすくなる)。
【0124】
また、第3のタイプと第4のタイプの結果から、接触面積比が第3のタイプと第4のタイプの間の10%または15%であっても、第3のタイプと同様の結果が得られると考えられる。
【0125】
したがって、接触面積比(突起42がないと仮定した場合の上下の密封装置の接触面積に対する上下の密封装置の接触面積の比)は、0%より大きく15%以下であることが好ましく、4.0%以上で10%以下であることがさらに好ましいと考えられる。実験に使用した密封装置は、第1実施形態に係る密封装置20であったが、好ましい接触面積比は、他の実施形態についてもあてはまると考えられる。
【0126】
上記の通り、上方の密封装置20を安定的に支持するため、突起42の数は少なくとも3つであることが好ましい。さらに、突起42の数は少なくとも5つであることが好ましい。90°の等角間隔をおいて配置された4個の突起42を有する密封装置20を、複数の密封装置20の突起が上下におおむね揃うように、積み重ねた場合、密封装置20の相互の位置のずれのために、積み重ねられた密封装置20のバランスが崩れやすいからである。
【0127】
他の変形例
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲において、構成要素の削除、追加、置換を含む様々な変形例が考えられる。
【0128】
例えば、上記の実施形態および変形例では、内側部材であるハブ4および内輪6が回転部材であり、外側部材である外輪8が静止部材である。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、互いに相対回転する複数の部材の密封に適用されうる。例えば、内側部材が静止し、外側部材が回転してもよいし、これらの部材のすべてが回転してもよい。
【0129】
上記の実施形態および変形例では、各密封装置に単一の補強環24が設けられている。しかし、密封装置が、半径方向において互いに分離した外側剛性環と内側剛性環とを有していてもよい。この場合、外側剛性環と内側剛性環は、相対的に半径方向に変位することができる。したがって、弾性環の少なくとも一部分の半径方向に弾性変形可能な量が大きくすることができる。このため、転がり軸受のある部品が偏心または低い真円度を有していても、密封装置は高い封止性能を有することができる。
【0130】
本発明の用途は、ハブ軸受1の密封に限定されない。例えば、自動車の差動歯車機構またはその他の動力伝達機構、自動車の駆動シャフトの軸受またはその他の支持機構、ポンプの回転軸の軸受またはその他の支持機構などにも本発明に係る密封装置または密封構造を使用することができる。
【0131】
本発明の条項
出願人が発明として認識する条項を下記に列挙する。
条項1.
相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
中心軸線を有しており、前記外側部材の円筒状の端部に取り付けられる筒状部と、
前記筒状部の一端に連結されており、前記外側部材の前記端部よりも径方向内側に配置された部分を有する環状部と、
前記環状部から前記内側部材に向けて延びる少なくとも1つのリップとを備え、
前記環状部と前記筒状部の各々は、弾性材料から形成された弾性部分と、剛性材料から形成された剛性部分を有しており、
前記環状部の前記筒状部とは反対側の表面である上面、および前記筒状部の前記環状部とは反対側の表面である下面の少なくとも一方は、前記弾性部分で形成され、
前記環状部の前記上面、および前記筒状部の前記下面の少なくとも一方には、軸線方向に突出する複数の突起が形成されており、前記複数の突起は、前記中心軸線を中心とする円周上に互いに離間して配置されていることを特徴とする密封装置。
【0132】
この条項においては、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、上方の密封装置の筒状部の下面が直下の密封装置の環状部の上面上に配置される。環状部の上面および筒状部の下面の少なくとも一方は、他の物体へ貼り付きやすい弾性材料で形成されているが、環状部の上面および筒状部の下面には、軸線方向に突出し互いに離間して配置された複数の突起が形成されている。したがって、上方の密封装置の筒状部の下面と、直下の密封装置の環状部の上面との間には、互いに離間した複数の突起が介在するので、上方の密封装置の筒状部と直下の密封装置の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置が直下の密封装置に密着しにくく、密封装置を他の密封装置から容易に離間させることが可能である。
【0133】
条項2.
前記筒状部は、前記外側部材の円筒状の端部に嵌め入れられ、前記端部の内周面に接触し、
前記環状部の前記上面は、前記弾性部分で形成され、前記上面に、前記複数の突起が形成されていることを特徴とする条項1に記載の密封装置。
【0134】
この場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、上方の密封装置の筒状部の下面は、直下の密封装置の環状部の上面に形成された複数の突起に接触するので、上方の密封装置の筒状部と直下の密封装置の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置が直下の密封装置に密着しにくく、密封装置を他の密封装置から容易に離間させることが可能である。
【0135】
条項3.
前記筒状部の前記下面は、前記剛性部分で形成されている
ことを特徴とする条項2に記載の密封装置。
【0136】
この場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、弾性材料で形成された突起が筒状部の下面に貼り付きにくいので、密封装置を他の密封装置からさらに容易に離間させることが可能である。
【0137】
条項4.
前記環状部の前記上面には、複数の第2の突起が形成されており、前記複数の第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に互いに離間して配置されている
ことを特徴とする条項2または3に記載の密封装置。
【0138】
この場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、上方の密封装置の筒状部が、直下の密封装置の突起の径方向外側に配置された複数の第2の突起により、包囲される。したがって、これらの密封装置の偏心が抑制され、上方の密封装置は直下の密封装置の各突起の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0139】
条項5.
前記環状部の前記上面には、環状の第2の突起が形成されており、前記第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に連続的に配置されている
ことを特徴とする条項2または3に記載の密封装置。
【0140】
この場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、上方の密封装置の筒状部が、直下の密封装置の突起の径方向外側に配置された環状の第2の突起により、包囲される。したがって、これらの密封装置の偏心が抑制され、上方の密封装置は直下の密封装置の各突起の先端に確実に接触し、安定して支持される。
【0141】
条項6.
前記筒状部には、前記外側部材の円筒状の端部が嵌め入れられ、前記筒状部は前記端部の外周面に接触し、
前記環状部の前記上面および前記筒状部の下面は、前記弾性部分で形成され、前記上面および前記下面の少なくとも一方に、前記複数の突起が形成されていることを特徴とする条項1に記載の密封装置。
【0142】
この場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、上方の密封装置の筒状部の下面と、直下の密封装置の環状部の上面との間には、互いに離間した複数の突起が介在するので、上方の密封装置の筒状部と直下の密封装置の接触面積が小さい。このため、上方の密封装置が直下の密封装置に貼り付きにくく、密封装置を他の密封装置から容易に離間させることが可能である。
【0143】
条項7.
前記環状部の前記上面、および前記筒状部の前記下面の少なくとも一方には、複数の第2の突起が形成されており、前記複数の第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に互いに離間して配置されている
ことを特徴とする条項6に記載の密封装置。
【0144】
環状部の上面に複数の第2の突起が形成されている場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、上方の密封装置の筒状部が、直下の密封装置の環状部の上面に形成された複数の第2の突起により、包囲される。筒状部の下面に複数の第2の突起が形成されている場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、下方の密封装置の環状部が、直上の密封装置の筒状部の下面に形成された複数の第2の突起により、包囲される。したがって、いずれの場合でも、これらの密封装置の偏心が抑制され、上方の密封装置の筒状部の下面と、直下の密封装置の環状部の上面との間には、各突起が確実に介在するので、上方の密封装置は、安定して支持される。
【0145】
条項8.
前記環状部の前記上面、および前記筒状部の前記下面の少なくとも一方には、環状の第2の突起が形成されており、前記第2の突起は、前記突起が配置された円周より径方向外側にある、前記中心軸線を中心とする円周上に連続的に配置されている
ことを特徴とする条項6に記載の密封装置。
【0146】
環状部の上面に環状の第2の突起が形成されている場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、上方の密封装置の筒状部が、直下の密封装置の環状部の上面に形成された環状の第2の突起により、包囲される。筒状部の下面に環状の第2の突起が形成されている場合には、複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合に、下方の密封装置の環状部が、直上の密封装置の筒状部の下面に形成された環状の第2の突起により、包囲される。したがって、いずれの場合でも、これらの密封装置の偏心が抑制され、上方の密封装置の筒状部の下面と、直下の密封装置の環状部の上面との間には、各突起が確実に介在するので、上方の密封装置は、安定して支持される。
【0147】
条項9.
各突起の先端の前記密封装置の径方向の長さは、各突起の先端の前記円周上の長さ以上である
ことを特徴とする条項1から8のいずれか1項に記載の密封装置。
【0148】
この場合には、各突起の先端の密封装置の径方向の長さが大きいので、複数の密封装置を積み重ねた場合に、これらの密封装置が偏心していたり、突起の配置に誤差があったりしても、密封装置は直近の密封装置の各突起の先端に確実に接触し、上方の密封装置が安定して支持される。また、各突起の先端の密封装置の径方向の長さが円周上の長さに対して大きいので、各突起は、密封装置の径方向の力に対する高い強度を有する。
【0149】
条項10.
各突起の先端の前記密封装置の径方向の長さは、各突起の前記軸線方向の突出量以上である
ことを特徴とする条項1から9のいずれか1項に記載の密封装置。
【0150】
この場合には、各突起の先端の密封装置の径方向の長さが大きいので、上方の密封装置の荷重を受けても、突起の圧縮変形量を抑制することができ、上方の密封装置の筒状部の下面が直下の密封装置の環状部の上面に面接触することを低減または防止することができる。また、各突起の先端の密封装置の径方向の長さが軸線方向の突出量に対して大きいので、突起が倒れたり座屈したりしにくい。
【0151】
条項11.
各突起の先端の前記密封装置の径方向の長さは、各突起の基端の前記径方向の長さより小さい
ことを特徴とする条項1から10のいずれか1項に記載の密封装置。
【0152】
この場合には、突起が倒れたり座屈したりしにくい。
【0153】
条項12.
各突起の先端の前記密封装置の径方向の長さ、および各突起の先端の前記円周上の長さは、各突起の前記軸線方向の突出量以上である
ことを特徴とする条項1から9のいずれか1項に記載の密封装置。
【0154】
この場合には、各突起の先端の密封装置の径方向および円周上の長さが大きいので、上方の密封装置の荷重を受けても、突起の圧縮変形量を抑制することができ、上方の密封装置の筒状部の下面が直下の密封装置の環状部の上面に面接触することを低減または防止することができる。また、各突起の先端の密封装置の径方向および円周上の長さが軸線方向の突出量に対して大きいので、突起が倒れたり座屈したりしにくい。
【0155】
条項13.
各突起の先端の前記密封装置の径方向の長さは、各突起の基端の前記径方向の長さより小さく、各突起の先端の前記円周上の長さは、各突起の基端の前記円周上の長さより小さい
ことを特徴とする条項1から9および12のいずれか1項に記載の密封装置。
【0156】
この場合には、突起が倒れたり座屈したりしにくい。
【0157】
条項14.
各突起は、先端に向けて細くなる断面を有するテーパ部分を有しており、前記テーパ部分において前記先端は前記円周に対して交差して延びる
ことを特徴とする条項1から11のいずれか1項に記載の密封装置。
【0158】
この場合には、各突起の先端は、円周方向に交差して延びるため径方向の長さが大きいので、複数の密封装置を積み重ねた場合に、これらの密封装置が偏心していたり、突起の配置に誤差があったりしても、密封装置は直近の密封装置の各突起の先端に確実に接触し、上方の密封装置が安定して支持される。また、各突起の先端の密封装置の径方向の長さが大きいので、各突起は、密封装置の径方向の力に対する高い強度を有する。さらに、テーパ部分において各突起の先端の幅は各突起の基端の幅より小さいので、突起が倒れたり座屈したりしにくい。
【0159】
条項15.
複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合、前記突起がないと仮定した場合の上下の密封装置の接触面積に対する、前記突起を有する上下の密封装置の接触面積の比は、0%より大きく15%以下である
ことを特徴とする条項1から14のいずれか1項に記載の密封装置。
【0160】
条項16.
複数の同タイプの密封装置を積み重ねた場合、前記突起がないと仮定した場合の上下の密封装置の接触面積に対する、前記突起を有する上下の密封装置の接触面積の比は、4.0%以上で10%以下である
ことを特徴とする条項1から14のいずれか1項に記載の密封装置。
【0161】
条項15または16によれば、上下の密封装置が貼り付きにくい。