特許第6987234号(P6987234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987234
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20211213BHJP
   F24F 11/41 20180101ALI20211213BHJP
【FI】
   F25B47/02 540D
   F24F11/41 114
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-520933(P2020-520933)
(86)(22)【出願日】2018年5月23日
(86)【国際出願番号】JP2018019845
(87)【国際公開番号】WO2019224945
(87)【国際公開日】20191128
【審査請求日】2020年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】早丸 靖英
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅一
(72)【発明者】
【氏名】中川 直紀
(72)【発明者】
【氏名】川島 惇
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/094148(WO,A1)
【文献】 特開2010−281492(JP,A)
【文献】 特開2008−157558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F24F 11/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室内熱交換器、第1室外熱交換器及び第2室外熱交換器を有し、冷媒を循環させる冷媒回路と、
前記冷媒回路を制御する制御装置と、
を備え、
前記冷媒回路は、前記圧縮機の吐出側と前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器とを連通させるバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられた流量調節弁と、をさらに有しており、
前記室内熱交換器は、前記冷媒と加熱対象との熱交換を行うものであり、
前記冷媒回路は、前記圧縮機から吐出された前記冷媒の一部を前記バイパス流路を介して前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器の一方に供給し、前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器の他方を蒸発器として機能させ、前記室内熱交換器を凝縮器として機能させる暖房除霜同時運転を実行可能に構成されており、
前記制御装置は、前記暖房除霜同時運転の実行中、
前記加熱対象の温度が前記加熱対象の温度の目標値である設定温度よりも高い場合に、前記流量調節弁の開度を増加させ、
前記加熱対象の温度が前記設定温度以下の場合に、前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器の前記一方の温度に基づいて、前記流量調節弁の開度を制御する冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記暖房除霜同時運転の実行中、前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器の前記一方の温度が0℃よりも高い場合に、前記流量調節弁の開度を減少させるように構成されている請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房除霜同時運転を実行可能な冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷凍サイクルを有する空気調和機が記載されている。冷凍サイクルの室外熱交換器は、下側熱交換器と、下側熱交換器より大きい上側熱交換器と、に分けられている。圧縮機の吐出側と下側熱交換器及び上側熱交換器のそれぞれとは、ホットガスバイパス回路により連結されている。ホットガスバイパス回路には、下側熱交換器及び上側熱交換器のそれぞれに対応してバイパス開閉弁が設けられている。空気調和機の制御装置は、暖房運転中に除霜を開始する場合に、上側熱交換器を除霜しつつ下側熱交換器で暖房する運転を行った後に、下側熱交換器を除霜しつつ上側熱交換器で暖房する運転を行い、この運転の終了後に暖房運転に復帰するように構成されている。同文献には、上記の空気調和機によれば、除霜を暖房と同時に行って室内の快適性を確保しつつ除霜時間を短縮できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−64381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の空気調和機では、暖房と除霜とが同時に行われる場合、2つのバイパス開閉弁の一方が単に開となるに過ぎない。したがって、特許文献1の空気調和機では、暖房能力と除霜能力との比率が一定となるため、暖房能力又は除霜能力の一方が負荷に対して過剰となってしまう場合があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、暖房除霜同時運転の実行中において暖房能力と除霜能力との比率を負荷に応じて調整できる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、室内熱交換器、第1室外熱交換器及び第2室外熱交換器を有し、冷媒を循環させる冷媒回路と、前記冷媒回路を制御する制御装置と、を備え、前記冷媒回路は、前記圧縮機の吐出側と前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器とを連通させるバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられた流量調節弁と、をさらに有しており、前記室内熱交換器は、前記冷媒と加熱対象との熱交換を行うものであり、前記冷媒回路は、前記圧縮機から吐出された前記冷媒の一部を前記バイパス流路を介して前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器の一方に供給し、前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器の他方を蒸発器として機能させ、前記室内熱交換器を凝縮器として機能させる暖房除霜同時運転を実行可能に構成されており、前記制御装置は、前記暖房除霜同時運転の実行中、前記加熱対象の温度が前記加熱対象の温度の目標値である設定温度よりも高い場合に、前記流量調節弁の開度を増加させ、前記加熱対象の温度が前記設定温度以下の場合に、前記第1室外熱交換器又は前記第2室外熱交換器の前記一方の温度に基づいて、前記流量調節弁の開度を制御するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、暖房除霜同時運転の実行中、流量調節弁の開度が加熱対象の温度に基づいて制御されるため、余剰の暖房能力を除霜能力に振り向けることができる。したがって、本発明によれば、暖房除霜同時運転の実行中において、暖房能力と除霜能力との比率を負荷に応じて調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成を示す冷媒回路図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の動作を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の除霜運転時の動作を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の暖房除霜同時運転時の動作を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の制御装置50で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成の変形例を示す冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の構成を示す冷媒回路図である。本実施の形態では、冷凍サイクル装置として空気調和機を例示している。図1に示すように、冷凍サイクル装置は、冷媒を循環させる冷媒回路10を有している。冷媒回路10は、圧縮機11、第1流路切替装置12、室内熱交換器13、膨張弁14、第1室外熱交換器15a、第2室外熱交換器15b及び第2流路切替装置16を有している。後述するように、冷媒回路10は、暖房運転、逆サイクル除霜運転(以下、単に「除霜運転」という。)、暖房除霜同時運転及び冷房運転を実行できるように構成されている。
【0010】
また、冷凍サイクル装置は、室外に設置される室外機と、室内に設置される室内機と、を有している。圧縮機11、第1流路切替装置12、膨張弁14、第1室外熱交換器15a、第2室外熱交換器15b及び第2流路切替装置16は室外機に収容されており、室内熱交換器13は室内機に収容されている。さらに、冷凍サイクル装置は、冷媒回路10を制御する制御装置50を有している。
【0011】
圧縮機11は、低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、高圧のガス冷媒として吐出する流体機械である。圧縮機11としては、運転周波数を調整可能なインバータ駆動の圧縮機を用いることができる。
【0012】
第1流路切替装置12は、冷媒回路10内の冷媒の流れ方向を切り替えるものである。第1流路切替装置12としては、4つのポートE、F、G、Hを備える四方弁が用いられている。第1流路切替装置12は、図1に実線で示すようにポートEとポートFとが連通するとともにポートGとポートHとが連通する第1状態と、図1に破線で示すようにポートEとポートHとが連通するとともにポートFとポートGとが連通する第2状態と、をとり得る。第1流路切替装置12は、制御装置50の制御により、暖房運転時及び暖房除霜同時運転時には第1状態に設定され、除霜運転時及び冷房運転時には第2状態に設定される。第1流路切替装置12としては、二方弁又は三方弁などの複数の弁の組合せを用いることもできる。
【0013】
室内熱交換器13は、内部を流通する冷媒と、室内機に収容された室内ファン(図示せず)により送風される室内空気と、の熱交換を行う熱交換器である。室内熱交換器13は、暖房運転時には凝縮器として機能し、冷房運転時には蒸発器として機能する。室内熱交換器13を通過した調和空気は、室内空間に供給される。室内空間の空気は、暖房運転時には空気調和機の加熱対象となり、冷房運転時には空気調和機の冷却対象となる。
【0014】
膨張弁14は、冷媒を減圧させる弁である。膨張弁14としては、制御装置50の制御により開度を調整可能な電子膨張弁が用いられている。
【0015】
第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bはいずれも、内部を流通する冷媒と、室外機に収容された室外ファン(図示せず)により送風される空気と、の熱交換を行う熱交換器である。第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bは、暖房運転時には蒸発器として機能し、冷房運転時には凝縮器として機能する。第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bは、冷媒回路10において互いに並列に接続されている。また、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bは、空気の流れに対して互いに並列又は直列に配置されている。第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bは、水平流れ式の1つの熱交換器が上下に2分割されることにより構成されていてもよい。この場合、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bは、空気の流れに対して互いに並列に配置される。
【0016】
第2流路切替装置16は、暖房運転時、除霜運転時及び冷房運転時と、暖房除霜同時運転時とで冷媒の流れを切り替えるものである。第2流路切替装置16としては、4つのポートA、B1、B2、Cを備える四方弁が用いられている。第2流路切替装置16は、第1状態、第2状態及び第3状態をとり得る。第1状態では、図1に実線で示すようにポートCとポートB1及びポートB2の双方とが連通し、ポートAはポートB1及びポートB2のいずれとも連通しない。第2状態では、ポートAとポートB1とが連通するとともにポートCとポートB2とが連通する。第3状態では、ポートAとポートB2とが連通するとともにポートCとポートB1とが連通する。第2流路切替装置16は、制御装置50の制御により、暖房運転時、除霜運転時及び冷房運転時には第1状態に設定され、暖房除霜同時運転時には第2状態又は第3状態に設定される。第2流路切替装置16としては、例えば、国際公開第2017/094148号に記載の流路切替弁が用いられる。
【0017】
圧縮機11、第1流路切替装置12、室内熱交換器13、膨張弁14、第1室外熱交換器15a、第2室外熱交換器15b及び第2流路切替装置16は、管30〜37等の冷媒配管を介して接続されている。管30は、圧縮機11の吐出口と第1流路切替装置12のポートGとを接続している。管31は、第1流路切替装置12のポートHと室内熱交換器13とを接続している。管32は、室内熱交換器13と膨張弁14とを接続している。管33は、途中で管33a、33bに分岐しており、膨張弁14と第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれとを接続している。管33a、33bには、キャピラリチューブ17a、17bがそれぞれ設けられている。管34は、第1室外熱交換器15aと第2流路切替装置16のポートB1とを接続している。管35は、第2室外熱交換器15bと第2流路切替装置16のポートB2とを接続している。管36は、第2流路切替装置16のポートCと第1流路切替装置12のポートFとを接続している。管37は、第1流路切替装置12のポートEと圧縮機11の吸入口とを接続している。
【0018】
また、冷媒回路10は、圧縮機11の吐出側の管30と第2流路切替装置16のポートAとを接続するバイパス流路38を有している。バイパス流路38は、圧縮機11から吐出されたガス冷媒の一部をホットガスとして第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bに供給するように構成されている。バイパス流路38には、冷媒の流量を調節する流量調節弁18が設けられている。流量調節弁18としては、制御装置50により連続的に又は多段階で開度が制御される、電子膨張弁又は電動弁などの弁が用いられる。流量調節弁18は、最小開度に設定されると閉状態となり、最小開度よりも大きい開度に設定されると開状態となる。流量調節弁18は、最小開度である第1開度と、第1開度よりも大きい第2開度と、第2開度よりも大きい第3開度と、を少なくともとり得るのが望ましい。流量調節弁18は、制御装置50の制御により、暖房運転時、除霜運転時及び冷房運転時には例えば閉状態に設定され、暖房除霜同時運転時には所定開度での開状態に設定される。暖房除霜運転時における流量調節弁18の開度制御については後述する。バイパス流路38には、必要に応じて、キャピラリチューブなどの減圧装置がさらに設けられる。
【0019】
管33aのうちキャピラリチューブ17aと第1室外熱交換器15aとの間には、温度センサ41aが設けられている。温度センサ41aでは、第1室外熱交換器15aを除霜対象とする暖房除霜同時運転において、第1室外熱交換器15aから流出する冷媒の温度が検知される。管33bのうちキャピラリチューブ17bと第2室外熱交換器15bとの間には、温度センサ41bが設けられている。温度センサ41bでは、第2室外熱交換器15bを除霜対象とする暖房除霜同時運転において、第2室外熱交換器15bから流出する冷媒の温度が検知される。ここで、温度センサ41a及び温度センサ41bのそれぞれは、暖房除霜同時運転において除霜対象の熱交換器の温度を取得するために設けられている。このため、温度センサ41a及び温度センサ41bは、それぞれ第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bに設けられていてもよい。温度センサ41a、41bは、後述する制御装置50に検出信号を出力するように構成されている。
【0020】
室内機に形成された風路のうち室内熱交換器13の上流側には、室温すなわち室内空間の空気の温度を検出する温度センサ42が設けられている。温度センサ42は、室内空間に設けられていてもよい。温度センサ42は、後述する制御装置50に検出信号を出力するように構成されている。
【0021】
制御装置50は、CPU、ROM、RAM、I/Oポート等を備えたマイクロコンピュータを有している。制御装置50には、温度センサ41a、41b、42を含む各種センサからの検出信号と、ユーザによる操作を受け付ける操作部からの操作信号とが入力される。制御装置50は、入力された信号に基づき、圧縮機11、第1流路切替装置12、膨張弁14、第2流路切替装置16、流量調節弁18、室内ファン及び室外ファンを含む冷凍サイクル装置全体の動作を制御する。
【0022】
次に、冷凍サイクル装置の暖房運転時の動作について説明する。図2は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時の動作を示す図である。図2に示すように、暖房運転時には、第1流路切替装置12は、ポートEとポートFとが連通するとともにポートGとポートHとが連通する第1状態に設定される。第2流路切替装置16は、ポートCとポートB1及びポートB2の双方とが連通する第1状態に設定される。流量調節弁18は、例えば閉状態に設定される。
【0023】
圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒は、第1流路切替装置12を経由し、室内熱交換器13に流入する。暖房運転時には、室内熱交換器13は凝縮器として機能する。すなわち、室内熱交換器13では、内部を流通する冷媒と、室内ファンにより送風される室内空気との熱交換が行われ、冷媒の凝縮熱が室内空気に放熱される。これにより、室内熱交換器13に流入したガス冷媒は、凝縮して高圧の液冷媒となる。また、室内ファンにより送風される室内空気は、冷媒からの放熱によって加熱される。
【0024】
室内熱交換器13から流出した液冷媒は、膨張弁14で減圧されて低圧の二相冷媒となる。膨張弁14から流出した二相冷媒は、管33aと管33bとに分流する。管33aに流入した二相冷媒は、キャピラリチューブ17aでさらに減圧され、第1室外熱交換器15aに流入する。管33bに流入した二相冷媒は、キャピラリチューブ17bでさらに減圧され、第2室外熱交換器15bに流入する。
【0025】
暖房運転時には、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bはいずれも蒸発器として機能する。すなわち、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれでは、内部を流通する冷媒と、室外ファンにより送風される室外空気との熱交換が行われ、冷媒の蒸発熱が室外空気から吸熱される。これにより、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれに流入した二相冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒となる。第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれから流出したガス冷媒は、第2流路切替装置16で合流し、第1流路切替装置12を経由して圧縮機11に吸入される。圧縮機11に吸入されたガス冷媒は、圧縮されて高圧のガス冷媒となる。暖房運転時には、以上のサイクルが連続的に繰り返される。
【0026】
暖房運転が長時間継続されると、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bに霜が付着し、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bの熱交換効率が低下する場合がある。したがって、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bに付着した霜を融解させるため、除霜運転又は暖房除霜同時運転が定期的に行われる。除霜運転は、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bの双方に高温高圧のガス冷媒を供給し、冷媒からの放熱によって第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bの双方の除霜を行う運転である。暖房除霜同時運転は、第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bの一方に高温高圧のガス冷媒を供給して当該一方の除霜を行いながら、第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bの他方を蒸発器として機能させて暖房を継続する運転である。
【0027】
冷凍サイクル装置の除霜運転時の動作について説明する。図3は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の除霜運転時の動作を示す図である。図3に示すように、除霜運転時には、第1流路切替装置12は、ポートEとポートHとが連通するとともにポートFとポートGとが連通する第2状態に設定される。第2流路切替装置16は、ポートCとポートB1及びポートB2の双方とが連通する第1状態に設定される。流量調節弁18は、例えば閉状態に設定される。除霜運転時の第1流路切替装置12、第2流路切替装置16及び流量調節弁18の設定は、冷房運転時のこれらの設定と同様である。
【0028】
圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒は、第1流路切替装置12を経由して第2流路切替装置16で分流し、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれに流入する。除霜運転時には、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bはいずれも凝縮器として機能する。すなわち、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれでは、内部を流通する冷媒からの放熱によって、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれに付着した霜が融解する。これにより、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bの除霜が行われる。また、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bのそれぞれに流入したガス冷媒は、凝縮して液冷媒となる。
【0029】
第1室外熱交換器15aから流出した液冷媒は、キャピラリチューブ17aで減圧される。第2室外熱交換器15bから流出した液冷媒は、キャピラリチューブ17bで減圧される。これらの液冷媒は、合流して膨張弁14でさらに減圧され、低圧の二相冷媒となる。膨張弁14から流出した二相冷媒は、室内熱交換器13に流入する。除霜運転時には、室内熱交換器13は蒸発器として機能する。すなわち、室内熱交換器13では、内部を流通する冷媒の蒸発熱が室内空気から吸熱される。これにより、室内熱交換器13に流入した二相冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒となる。室内熱交換器13から流出したガス冷媒は、第1流路切替装置12を経由して圧縮機11に吸入される。圧縮機11に吸入されたガス冷媒は、圧縮されて高圧のガス冷媒となる。除霜運転時には、以上のサイクルが連続的に繰り返される。
【0030】
次に、冷凍サイクル装置の暖房除霜同時運転時の動作について説明する。図4は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の暖房除霜同時運転時の動作を示す図である。ここで、暖房除霜同時運転には、第1運転と第2運転とが含まれている。第1運転は、第1室外熱交換器15aを除霜対象とし、第1室外熱交換器15aの除霜を行いながら暖房を行う運転である。第1運転では、第1室外熱交換器15a及び室内熱交換器13が凝縮器として機能し、第2室外熱交換器15bが蒸発器として機能する。第2運転は、第2室外熱交換器15bを除霜対象とし、第2室外熱交換器15bの除霜を行いながら暖房を行う運転である。第2運転では、第2室外熱交換器15b及び室内熱交換器13が凝縮器として機能し、第1室外熱交換器15aが蒸発器として機能する。1回の暖房除霜同時運転の実行期間において、第1運転及び第2運転は、少なくとも1回ずつ交互に実行されるのが望ましい。図4では、暖房除霜同時運転のうちの第1運転時の動作を示している。
【0031】
図4に示すように、暖房除霜同時運転のうちの第1運転時には、第1流路切替装置12は、ポートEとポートFとが連通するとともにポートGとポートHとが連通する第1状態に設定される。第2流路切替装置16は、ポートAとポートB1とが連通するとともにポートCとポートB2とが連通する第2状態に設定される。流量調節弁18は、第1運転が開始されるときには所定開度での開状態に設定される。その後、流量調節弁18の開度は、後述するように制御される。
【0032】
圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒の一部は、管30からバイパス流路38に分流する。バイパス流路38に分流する冷媒の流量は、流量調節弁18の開度に応じて変動する。バイパス流路38に分流したガス冷媒は、流量調節弁18によって中間圧に減圧され、第2流路切替装置16を経由して第1室外熱交換器15aに流入する。ここで、中間圧とは、圧縮機11の吸入圧力よりも高く圧縮機11の吐出圧力よりも低い圧力のことである。第1室外熱交換器15aでは、内部を流通する冷媒からの放熱によって、付着した霜が融解する。これにより、第1室外熱交換器15aの除霜が行われる。また、第1室外熱交換器15aに流入したガス冷媒は、凝縮して中間圧の液冷媒又は二相冷媒となって第1室外熱交換器15aから流出し、キャピラリチューブ17aで減圧される。
【0033】
一方、圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒のうち、バイパス流路38に分流した一部以外のガス冷媒は、第1流路切替装置12を経由して室内熱交換器13に流入する。室内熱交換器13では、内部を流通する冷媒と、室内ファンにより送風される室内空気との熱交換が行われ、冷媒の凝縮熱が室内空気に放熱される。これにより、室内熱交換器13に流入したガス冷媒は、凝縮して高圧の液冷媒となる。また、室内ファンにより送風される室内空気は、冷媒からの放熱によって加熱される。
【0034】
室内熱交換器13から流出した液冷媒は、膨張弁14で減圧されて低圧の二相冷媒となる。膨張弁14から流出した二相冷媒は、キャピラリチューブ17aで減圧された液冷媒又は二相冷媒と合流し、キャピラリチューブ17bを経由して第2室外熱交換器15bに流入する。第2室外熱交換器15bでは、内部を流通する冷媒と、室外ファンにより送風される室外空気との熱交換が行われ、冷媒の蒸発熱が室外空気から吸熱される。これにより、第2室外熱交換器15bに流入した二相冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒となる。第2室外熱交換器15bから流出したガス冷媒は、第2流路切替装置16及び第1流路切替装置12を経由して圧縮機11に吸入される。圧縮機11に吸入されたガス冷媒は、圧縮されて高圧のガス冷媒となる。暖房除霜同時運転のうちの第1運転時には、以上のサイクルが連続的に繰り返されることにより、第1室外熱交換器15aの除霜が行われるとともに暖房が継続される。
【0035】
図示を省略するが、暖房除霜同時運転のうちの第2運転時には、第1流路切替装置12は、第1運転時と同様に第1状態に設定される。第2流路切替装置16は、ポートAとポートB2とが連通するとともにポートCとポートB1とが連通する第3状態に設定される。これにより、第2運転時には、第2室外熱交換器15bの除霜が行われるとともに暖房が継続される。
【0036】
図5は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の制御装置50で実行される処理の流れを示すフローチャートである。図5に示す処理は、あらかじめ設定されている暖房除霜同時運転の実行条件が成立した場合に実行される。なお、説明を簡略化するために、図5に示す処理では、暖房除霜同時運転のうち第1運転又は第2運転の一方のみが実行されるものとする。まず、ステップS1では、制御装置50は、暖房除霜同時運転を開始する処理を行う。これにより、第1流路切替装置12は第1状態に設定され、第2流路切替装置16は第2状態又は第3状態に設定され、流量調節弁18は所定開度での開状態に設定される。制御装置50は、暖房除霜同時運転を実行する際、圧縮機11の運転周波数を最大運転周波数まで上昇させる制御を行ってもよい。
【0037】
次に、ステップS2では、制御装置50は、暖房除霜同時運転が開始されてからの実行時間と、あらかじめ設定されROMに記憶されている所定時間とを比較し、実行時間が所定時間未満であるか否かを判定する。実行時間が所定時間未満であると判定した場合にはステップS3に進み、実行時間が所定時間以上であると判定した場合にはステップS7に進む。
【0038】
ステップS3では、制御装置50は、温度センサ42からの検出信号に基づき取得された室温と、室温の目標値としてROMに記憶されている設定温度とを比較し、室温が設定温度よりも高いか否かを判定する。室温が設定温度よりも高いと判定した場合にはステップS4に進み、室温が設定温度以下であると判定した場合にはステップS5に進む。
【0039】
ステップS4では、制御装置50は、流量調節弁18の開度を増加させる処理を行う。この処理により、除霜対象の熱交換器に供給される冷媒量が増加するため、冷凍サイクル装置の除霜能力が上昇する。一方で、室内熱交換器13に供給される冷媒量が減少するため、冷凍サイクル装置の暖房能力は低下する。ステップS4の処理は、室温が設定温度よりも高く暖房能力が過剰である場合に実行される。このため、余剰の暖房能力の一部が除霜能力に振り向けられることにより、室温を維持しつつ、除霜対象の熱交換器での霜の融解を促進することができる。したがって、あらかじめ設定されている所定時間内で除霜を完了させることができ、熱交換器に霜の溶け残りが生じるのを防ぐことができる。ステップS4の処理が終了した後には、ステップS2に戻る。
【0040】
ステップS5では、制御装置50は、温度センサ41a又は温度センサ41bからの検出信号に基づき取得された除霜対象の熱交換器温度が、0℃よりも高いか否かを判定する。除霜対象の熱交換器温度が0℃よりも高いと判定した場合にはステップS6に進み、除霜対象の熱交換器温度が0℃以下であると判定した場合にはステップS2に戻る。
【0041】
ステップS6では、制御装置50は、流量調節弁18の開度を減少させる処理を行う。この処理により、除霜対象の熱交換器に供給される冷媒量が減少するため、冷凍サイクル装置の除霜能力が低下する。一方で、室内熱交換器13に供給される冷媒量が増加するため、冷凍サイクル装置の暖房能力は上昇する。ステップS6の処理は、室温が設定温度以下であり、かつ除霜対象の熱交換器温度が0℃よりも高い場合に実行される。すなわち、ステップS6の処理は、暖房能力が不足しており、かつ除霜能力が過剰であるときに実行される。このため、余剰の除霜能力の一部が暖房能力に振り向けられることにより、熱交換器に霜の溶け残りが生じるのを防ぎつつ、室温を高めることができる。ステップS6の処理が終了した後には、ステップS2に戻る。
【0042】
ステップS7では、制御装置50は、暖房除霜同時運転を終了して暖房運転に移行する処理を行う。
【0043】
図6は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の構成の変形例を示す冷媒回路図である。本変形例の冷媒回路10は、図1に示した冷媒回路10と比較すると、第2流路切替装置16に代えて、2つの四方弁21a、21bと逆止弁22とを有している。四方弁21a、21bは、制御装置50により制御される。本変形例の冷媒回路10は、図1に示した冷媒回路10よりも構成が複雑になるものの、図1に示した冷媒回路10と同様に、少なくとも暖房除霜同時運転を実行できるように構成されている。暖房除霜同時運転では、圧縮機11から吐出された冷媒の一部がバイパス流路38を介して第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bの一方に供給される。本実施の形態は、本変形例の冷媒回路10を備えた冷凍サイクル装置にも適用可能である。また、本実施の形態は、暖房除霜同時運転を実行可能に構成されていれば、本変形例の冷媒回路10以外の冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置にも適用可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機11、室内熱交換器13、第1室外熱交換器15a及び第2室外熱交換器15bを有し、冷媒を循環させる冷媒回路10と、冷媒回路10を制御する制御装置50と、を備えている。冷媒回路10は、圧縮機11の吐出側と第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bとを連通させるバイパス流路38と、バイパス流路38に設けられた流量調節弁18と、をさらに有している。室内熱交換器13は、冷媒と室内空間に供給される空気との熱交換を行うものである。冷媒回路10は、暖房除霜同時運転を実行可能に構成されている。暖房除霜同時運転は、圧縮機11から吐出された冷媒の一部をバイパス流路38を介して第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bの一方に供給し、第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bの他方を蒸発器として機能させ、室内熱交換器13を凝縮器として機能させる運転である。制御装置50は、暖房除霜同時運転の実行中、室温に基づいて流量調節弁18の開度を制御するように構成されている。ここで、室内空間に供給される空気は、加熱対象の一例である。室温は、加熱対象の温度の一例である。
【0045】
この構成によれば、暖房除霜同時運転の実行中、流量調節弁18の開度が室温に基づいて制御されるため、余剰の暖房能力を除霜能力に振り向けることができる。これにより、室温を維持しつつ除霜を促進することができる。したがって、本実施の形態によれば、暖房除霜同時運転の実行中において、暖房能力と除霜能力との比率を暖房負荷に応じて調整することができる。よって、暖房除霜同時運転を安定して実行することができる。
【0046】
例えば、暖房除霜同時運転の実行中において、暖房能力が負荷に対して過剰となる場合には、圧縮機11の回転数を低下させることによっても、暖房能力を低下させることができる。しかしながら、この場合、暖房能力だけでなく除霜能力も低下してしまうため、所定の除霜時間内で除霜を完了させることができず、除霜対象の熱交換器に霜の溶け残りが生じてしまう可能性がある。これに対し、本実施の形態では、余剰の暖房能力が除霜能力に振り向けられるため、霜の溶け残りが生じるのをより確実に防ぐことができる。
【0047】
また、除霜開始時点での熱交換器の着霜量は運転条件に応じて異なるため、流量調節弁18の開度が固定されていると、熱交換器の着霜量が多い場合には霜の溶け残りが生じてしまう可能性がある。これに対し、本実施の形態では、流量調節弁18の開度制御によって余剰の暖房能力が除霜能力に振り向けられるため、霜の溶け残りが生じるのをより確実に防ぐことができる。
【0048】
また、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、制御装置50は、暖房除霜同時運転の実行中、室温が室温の目標値である設定温度よりも高い場合に、流量調節弁18の開度を増加させるように構成されている。室温が設定温度よりも高い場合には、暖房能力が過剰であると判断することができる。したがって、この構成によれば、余剰の暖房能力の有無をより確実に判断することができるため、暖房能力の一部が除霜能力に振り向けられた後に暖房能力が不足してしまうのを防ぐことができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、制御装置50は、暖房除霜同時運転の実行中、第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bの他方の温度にも基づいて、流量調節弁18の開度を制御するように構成されている。この構成によれば、暖房除霜同時運転の実行中、除霜対象の熱交換器の温度に基づいて流量調節弁18の開度が制御されるため、余剰の除霜能力を暖房能力に振り向けることができる。これにより、除霜対象の熱交換器に霜の溶け残りが生じるのを防ぎつつ、暖房能力を高めることができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、制御装置50は、暖房除霜同時運転の実行中、第1室外熱交換器15a又は第2室外熱交換器15bの他方の温度が0℃よりも高い場合に、流量調節弁18の開度を減少させるように構成されている。除霜対象の熱交換器の温度が0℃よりも高い場合には、除霜能力が過剰であると判断することができる。したがって、この構成によれば、余剰の除霜能力の有無をより確実に判断することができるため、除霜能力の一部が暖房能力に振り向けられた後に除霜能力が不足してしまうのを防ぐことができる。
【0051】
上記実施の形態では、空気を加熱対象とする空気調和機を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、温水を加熱対象とする給湯装置又は温水式床暖房装置等の他の冷凍サイクル装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0052】
10 冷媒回路、11 圧縮機、12 第1流路切替装置、13 室内熱交換器、14 膨張弁、15a 第1室外熱交換器、15b 第2室外熱交換器、16 第2流路切替装置、17a、17b キャピラリチューブ、18 流量調節弁、21a、21b 四方弁、22 逆止弁、30、31、32、33、33a、33b、34、35、36、37 管、38 バイパス流路、41a、41b、42 温度センサ、50 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6