特許第6987236号(P6987236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987236複合粒子、複合粒子の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極、およびリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987236
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】複合粒子、複合粒子の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極、およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20211213BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20211213BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M10/052
   H01M10/0566
【請求項の数】19
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2020-521164(P2020-521164)
(86)(22)【出願日】2019年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2019018985
(87)【国際公開番号】WO2019225387
(87)【国際公開日】20191128
【審査請求日】2020年9月15日
(31)【優先権主張番号】特願2018-99451(P2018-99451)
(32)【優先日】2018年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】西面 和希
(72)【発明者】
【氏名】藤野 健
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悠佑
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/195332(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を備えるリチウムイオン二次電池の電極に配合される粒子であって、
高誘電性酸化物固体粒子の表面の少なくとも一部が電子伝導性材料で被覆され
前記電子伝導性材料は、25℃において10−1S/cm以上の電子伝導性を有し、100ml/100g以上のDBP吸油量を備える、複合粒子。
【請求項2】
前記複合粒子は、前記高誘電性酸化物固体粒子の表面に、前記電子伝導性材料が担持されて一体化している、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記電子伝導性材料は、細孔を有し、前記細孔内に電解液を格納する、請求項1または2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記電子伝導性材料は、導電性カーボンである、請求項1〜3いずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
前記高誘電性酸化物固体粒子は、25℃における粉体比誘電率が10以上である酸化物固体である、請求項1〜いずれかに記載の複合粒子。
【請求項6】
前記高誘電性酸化物固体粒子は、25℃で10−7S/cm以上のリチウムイオン伝導性を有する酸化物固体である、請求項1〜いずれかに記載の複合粒子。
【請求項7】
前記電極は正極であり、
前記高誘電性酸化物固体粒子は、前記電解液に溶解せず、水溶液含浸時にpHが12以上を示さない、請求項1〜いずれかに記載の複合粒子。
【請求項8】
前記電極は負極であり、
前記高誘電性酸化物固体粒子は、前記電解液に溶解せず、Li/Li電極に対して1V以上で還元分解しない、請求項1〜いずれかに記載の複合粒子。
【請求項9】
前記高誘電性酸化物固体粒子の表面における前記電子伝導性材料の被覆率は、15%以上である、請求項1〜いずれかに記載の複合粒子。
【請求項10】
前記電子伝導性材料と前記高誘電性酸化物固体粒子との質量比は、0.5:99.5〜80:20である、請求項1〜いずれかに記載の複合粒子。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載の複合粒子を製造する方法であって、
前記高誘電性酸化物固体粒子の表面に、前記電子伝導性材料を、機械的手法または化学的手法で付着または結合させる一体化工程を備える、複合粒子の製造方法。
【請求項12】
電解液を備えるリチウムイオン二次電池用の電極であって、
電極活物質と、高誘電性酸化物固体粒子の表面の少なくとも一部が電子伝導性材料で被覆された複合粒子と、を含む電極合剤からなる層を備える、リチウムイオン二次電池用電極。
【請求項13】
前記複合粒子の配合量は、前記電極合剤全体に対して0.1質量部以上5質量部以下である、請求項12に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項14】
前記複合粒子の平均粒子径は、前記電極活物質の平均粒子径の1/10以下であり、
前記高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、前記電子伝導性材料の1次粒子の平均粒子径の5倍以上である、請求項12または13に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項15】
前記複合粒子の平均粒子径は、前記電極活物質の平均粒子径の1/10以下であり、
前記高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、前記電子伝導性材料の厚みの5倍以上である、請求項12または13に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項16】
前記電極活物質と前記複合粒子との質量比は、99.5:0.5〜80:20である、請求項12〜15いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項17】
前記リチウムイオン二次電池用電極は、正極である、請求項12〜16いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項18】
前記リチウムイオン二次電池用電極は、負極である、請求項12〜16いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項19】
正極と、負極と、電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極および前記負極の少なくとも一方は、請求項12〜16いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子、複合粒子の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極、およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電解質としてリチウムイオン伝導性無機固体電解質を用いる全固体型リチウムイオン二次電池の実用化に向けた様々な研究が進められている。しかし、全固体型リチウムイオン二次電池は、従来の非水系電解液を用いるリチウムイオン二次電池と比較して熱安定性は向上するものの、比重が大きいため、重量が大きくなる。このため、重量エネルギー密度が低下し、リチウムイオン二次電池の基本的な商品性に優位性を示すことができていない。
【0003】
そこで、現実的な解決手法として、非水系電解液を用いるリチウムイオン二次電池においてリチウムイオン伝導性無機固体電解質を用いることが検討されている。例えば、従来の非水系電解液としてカーボネート系電解液を用いるリチウムイオン二次電池において、活物質の表面をナシコン型リン酸化合物等のリチウムイオン伝導性無機固体電解質で被覆する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1、2記載のリチウムイオン二次電池によれば、活物質の表面がリチウムイオン伝導性無機固体電解質で被覆されることにより、該活物質と非水系電解液との接触面積を減少させ、その結果、該活物質と該非水系電解液との化学反応による該非水系電解液の分解が抑制され、耐久性を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117542号公報
【特許文献2】特開2009−064732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、正極における非水系電解液の酸化分解または、負極における非水系電解液の還元分解は、いずれも電子の授受によるものであり、その反応場は電気抵抗が最も低い導電助剤の表面である。したがって、活物質の表面がリチウムイオン伝導性無機固体電解質で被覆されていても、非水系電解液の分解を十分には抑制することはできず、リチウムイオン二次電池の耐久性を十分に向上させることができていない状況であった。
【0007】
また、非水電解液中のリチウムイオンは溶媒と溶媒和しているため、活物質の表面がリチウムイオン伝導性無機固体電解質で被覆されていると、リチウムイオン伝導性無機固体電解質内部を伝導することができない。このため、活物質表面における反応面積が減少し、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が増大するという不都合がある。そして、リチウムイオン二次電池は、内部抵抗が増大すると、特に大電流での充放電(ハイレート)において、十分な性能を得ることができない。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、優れた耐久性を有し、しかも内部抵抗の低減により大きな容量を有するリチウムイオン二次電池を実現できる、複合粒子、複合粒子の製造方法、リチウムイオン二次電池用電極、およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、電解液を備えるリチウムイオン二次電池の電極に配合される粒子であって、高誘電性酸化物固体粒子の表面の少なくとも一部が電子伝導性材料で被覆された複合粒子を提供する。
【0010】
本発明の複合粒子は、高誘電性酸化物固体粒子の表面の少なくとも一部が電子伝導性材料で被覆されているため、電解液を備えるリチウムイオン二次電池の電極を構成する電極合剤層に配合した場合に、電子伝導性材料と電解液との接触面積が低減され、充放電に伴う電解液の分解を抑制することができる。その結果、得られるリチウムイオン二次電池は、充放電サイクルに対して優れた耐久性を発現することができる。
【0011】
本発明の複合粒子は、前記高誘電性酸化物固体粒子の表面に、前記電子伝導性材料が担持されて一体化していてもよい。
【0012】
本発明の複合粒子が、高誘電性酸化物固体粒子の表面に、電子伝導性材料が担持されて一体化していることにより、電子伝導性材料と高誘電性酸化物固体粒子との間の界面の少なくとも一部を連続した形態とすることができ、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗を、さらに低減することができる。
【0013】
本発明の複合粒子を構成する前記電子伝導性材料は、細孔を有し、前記細孔内に電解液を格納するものであってもよい。
【0014】
本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料が、細孔を有する場合には、細孔に電解液格納することができるため、複合粒子と電解液との接触面積を増加させることができる。その結果、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減することができ、大きな容量を得ることができる。
【0015】
本発明の複合粒子において、前記電子伝導性材料は、導電性カーボンであってもよい。
【0016】
導電性カーボンは、自身に空孔を有し、また、粒子同士が連結するストラクチャ構造を形成しやすい。このため、本発明の複合粒子の電解液の保持能力を、より向上することができる。また、電解液保持性が向上することで、本発明の複合粒子を電極合剤に配合した場合に、電極活物質の近傍に電解液を保持することができ、出力の向上および充電・放電に伴う電極体の膨張収縮による液漏れを抑制することが可能となる。
【0017】
さらに、導電性カーボンは、通常、リチウムイオン二次電池用電極を構成する電極合剤において、導電助剤として用いられる物質である。したがって、本発明の複合粒子において、高誘電性酸化物固体粒子を被覆する電子伝導性材料を導電性カーボンとすれば、従来の電極合剤を構成する材料と同様の材料にて、リチウムイオン二次電池用電極を形成することができる。
【0018】
本発明の複合粒子において、前記電子伝導性材料は、25℃において10−1S/cm以上の電子伝導性を有し、100ml/100g以上のDBP吸油量を備えていてもよい。
【0019】
本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料が、25℃において10−1S/cm以上の電子伝導性を備える場合には、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗をさらに低減することができ、過電圧の上昇を抑制することができる。また、電子伝導性材料が100ml/100g以上のDBP吸油量を備えることにより、電子伝導性材料の内部に電解液を多く含ませることができるため、高誘電性酸化物固体粒子と電解液との界面を大きくすることができ、その結果、リチウムイオンの内部抵抗を低減することができる。
【0020】
本発明の複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体は、25℃における粉体比誘電率が10以上の酸化物固体であってもよい。
【0021】
本発明の複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子が、25℃における粉体比誘電率が10以上の酸化物固体を用いる場合には、電解液の解離度を向上させ、電解液の抵抗を低減させることができる。
【0022】
本発明の複合粒子において、前記高誘電性酸化物固体粒子は、25℃で10−7S/cm以上のリチウムイオン伝導性を有する酸化物固体であってもよい。
【0023】
本発明の複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子が、25℃で10−7S/cm以上のイオン伝導性を備える場合には、分極しやすい特性を備えることから、電解液中の対アニオン、有機溶媒等のリチウムイオン伝導阻害物質を吸着して、リチウムイオンの解離度・輸率を高めることができる。その結果、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗がさらに低減され、大きな容量を得ることができる。
【0024】
本発明の複合粒子が正極に配合される場合には、前記高誘電性酸化物固体粒子は、前記電解液に溶解せず、水溶液含浸時にpHが12以上を示さないものであってもよい。
【0025】
本発明の複合粒子が正極合剤に配合される場合に、構成する高誘電性酸化物固体粒子が、電解液に溶解せず、水溶液含浸時にpHが12以上を示さないものであれば、電極作製時の集電体箔の腐食が進行しないため、得られるリチウムイオン電池の内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0026】
本発明の複合粒子が負極に配合される場合には、前記高誘電性酸化物固体粒子は、前記電解液に溶解せず、Li/Li電極に対して1V以上で還元分解しないものであってもよい。
【0027】
本発明の複合粒子が負極合剤に配合される場合に、構成する高誘電性酸化物固体粒子が、電解液に溶解せず、Li/Li電極に対して1V以上で還元分解しないものであれば、耐久測定中の充電時に高誘電性酸化物固体粒子自身が分解しないため、負極中に安定に存在させることができる。その結果、耐久後においても、リチウムイオン二次電池の内部抵抗抑制効果を維持することができる。
【0028】
本発明の複合粒子において、前記高誘電性酸化物固体粒子の表面における前記電子伝導性材料の被覆率は、15%以上であってもよい。
【0029】
本発明の複合粒子において、高誘電性酸化物固体粒子の表面における電子伝導性材料の被覆率が15%以上である場合には、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗を、さらに低減することができる。
【0030】
本発明の複合粒子において、前記電子伝導性材料と前記高誘電性酸化物固体粒子との質量比は、0.5:99.5〜80:20であってもよい。
【0031】
本発明の複合粒子において、電子伝導性材料と高誘電性酸化物固体粒子との質量比が、0.5:99.5〜80:20の範囲であれば、電子伝導性向上効果および電解液の分解抑制効果を両立することができる。具体的には、電子伝導性材料の質量比が0.5未満の場合には、電子伝導性向上の機能が発現せず、未処理の高誘電性酸化物固体粒子と変わらない状態となる。また、電子伝導性材料の質量比が80を超えても、一体化に寄与する導電助剤の質量はそれ以上増加しないため、それ以上の効果が得られない。
【0032】
また別の本発明は、上記の本発明の複合粒子を製造する方法であって、前記誘電性固体酸化物粒子の表面に、前記電子伝導性材料を、機械的手法または化学的手法で付着または結合させる一体化工程を備える、複合粒子の製造方法である。
【0033】
本発明の複合粒子の製造方法によれば、高誘電性酸化物固体粒子の表面に電子伝導性材料を、機械的手法または化学的手法で一体化させることができる。
【0034】
また別の本発明は、電解液を備えるリチウムイオン二次電池用の電極であって、電極活物質と、上記の本発明の複合粒子と、を含む電極合剤からなる層を備える、リチウムイオン二次電池用電極である。
【0035】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極では、正極活物質または負極活物質を含む電極合剤層に、上記した本発明の複合粒子が含まれている。
【0036】
本発明の複合粒子を含む電極合剤層を備えるリチウムイオン二次電池用電極においては、電極活物質の近傍に本発明の複合粒子が存在することとなる。その結果、電極活物質表面での電解液の分解反応を抑制する効果とリチウムイオンの挿入脱離を促進する効果とを、同時に機能させることができ、充放電サイクルに対して優れた耐久性を有するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0037】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、前記複合粒子の配合量は、前記電極合剤全体に対して0.1質量部以上5質量部以下であってもよい。
【0038】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、複合粒子の配合量が、電極合剤全体に対して0.1質量部以上5質量部以下であれば、電極活物質表面での電解液の分解反応を抑制する効果とリチウムイオンの挿入脱離を促進する効果とを、同時に機能させることができる。また、0.1質量部未満の場合には、強誘電効果および電極内部に浸透する電解液の解離度が不十分となり、一方で、5質量部を超える場合には、電極内部に浸透する電解液量が不十分となり、活物質と電解液との接触界面が十分に得られなくなることから、電極内部のリチウムイオンの移動経路が制限されてしまう。
【0039】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、前記複合粒子の平均粒子径は、前記電極活物質の平均粒子径の1/10以下であり、前記高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、前記電子伝導性材料の1次粒子の平均粒子径の5倍以上であってもよい。
【0040】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、前記複合粒子の平均粒子径は、前記電極活物質の平均粒子径の1/10以下であり、前記高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、前記電子伝導性材料の厚みの5倍以上であってもよい。
【0041】
本発明のリチウムイオン二次電用電極において、前記複合粒子の平均粒子径が、電極活物質の平均粒子径の1/10以下であれば、複合粒子を電極活物質の間隙に確実に配置することができる。また、高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径が、電子伝導性材料の1次粒子の平均粒子径または電子伝導性材料の厚みの5倍以上であれば、高誘電性酸化物固体粒子と電子伝導性材料との間に十分に大きな界面を形成することができる。
【0042】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、前記電極活物質と前記複合粒子との質量比は、99:1〜80:20であってもよい。
【0043】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、電極活物質と前記複合粒子との質量比が99:1〜80:20の範囲にあることにより、十分な電子伝導性を確保することができ、その結果、大きなエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0044】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、正極であってもよい。
【0045】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、負極であってもよい。
【0046】
また別の本発明は、正極と、負極と、電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、上記の本発明のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池である。
【0047】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極または負極の少なくとも一方を、上記の本発明のリチウムイオン二次電池用電極とすることで、優れた耐久性を有し、内部抵抗が低減されることで大きな容量を有するリチウムイオン二次電池となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明のリチウムイオン二次電池の充電容量を示すグラフである。
図2】本発明のリチウムイオン二次電池の放電容量を示すグラフである。
図3】本発明のリチウムイオン二次電池の充放電サイクルに対する容量維持率を示すグラフである。
図4】本発明のリチウムイオン二次電池の反応抵抗と拡散抵抗とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0050】
<複合粒子>
本発明の複合粒子は、電解液を備えるリチウムイオン二次電池の電極に配合される粒子であって、高誘電性酸化物固体粒子の表面の少なくとも一部が電子伝導性材料で被覆された複合粒子である。
【0051】
本発明の複合粒子は、高誘電性酸化物固体粒子の表面の少なくとも一部が電子伝導性材料で被覆されているため、電解液を備えるリチウムイオン二次電池の電極を構成する電極合剤層に配合した場合に、電子伝導性材料と電解液との接触面積が低減され、充放電に伴う電解液の分解を抑制することができる。その結果、得られるリチウムイオン二次電池は、充放電サイクルに対して優れた耐久性を発現することができる。
【0052】
本発明の複合粒子は、高誘電性酸化物固体粒子の表面に、前記電子伝導性材料が担持されて一体化していることが好ましい。
【0053】
本発明の複合粒子が、高誘電性酸化物固体粒子の表面に、電子伝導性材料が担持されて一体化していることにより、電子伝導性材料と高誘電性酸化物固体粒子との間の界面の少なくとも一部を連続した形態とすることができ、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗を、さらに低減することができる。
【0054】
[被覆率]
本発明の複合粒子において、高誘電性酸化物固体粒子の表面における電子伝導性材料の被覆率は、15%以上であることが好ましい。被覆率は、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。
【0055】
本発明の複合粒子において、高誘電性酸化物固体粒子の表面における電子伝導性材料の被覆率が15%以上である場合には、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗を、さらに低減することができる。
【0056】
[電子伝導性材料と高誘電性酸化物固体粒子との質量比]
本発明の複合粒子において、電子伝導性材料と高誘電性酸化物固体粒子との複合時における質量比は、0.5:99.5〜80:20であることが好ましい。質量比は、0.5:99.5〜67:33の範囲であることがさらに好ましく、0.5:99.5〜20:80の範囲であることが特に好ましい。
【0057】
本発明の複合粒子において、電子伝導性材料と誘電性酸化物固体粒子との質量比が0.5:99.5〜80:20の範囲であれば、電子伝導性向上効果および電解液の分解抑制効果を両立することができる。具体的には、電子伝導性材料の質量比が0.5未満の場合には、電子伝導性向上の機能が発現せず、未処理の高誘電性酸化物固体粒子と変わらない状態となる。また、電子伝導性材料の質量比が80を超えても、一体化に寄与する導電助剤の質量はそれ以上増加しないため、それ以上の効果が得られない。
【0058】
[高誘電性酸化物固体粒子]
本発明の複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子は、特に限定されるものではないが、例えば、LiNb3、LiTa(x/y=0.9〜1.1)のイルメナイト構造を備える複合酸化物、Li7−xLa3−xZr2−y12(AはY、Nd、Sm、Gdからなる群から選択される1種の金属であり、0<x<3であり、MはNb、Ta、Sb、Bi、Pbからなる群から選択される1種の金属であり、0<y<2である)で表されガーネット構造を備える複合酸化物、Li1.6Al0.6Ti1.4(PO(LATP)、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO(LAGP)、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−yO12(0≦x≦1、0≦y≦1)等のLISICON型リチウムイオン伝導性複合酸化物等のLiイオン伝導性に優れた化合物を挙げることができる。
【0059】
また、例えば、BaTiO、BaSr1−xTiO(x=0.4〜0.8)、BaZrTi1−x(x=0.2〜0.5)、またはKNbO3、SrBiTa等のペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物の誘電性化合物を挙げることができる。
【0060】
高誘電性酸化物固体粒子は、1種単独のみならず、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0061】
なかでも、本発明の複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子は、25℃における粉体比誘電率が10以上である酸化物固体であることが好ましい。粉体比誘電率が15以上の酸化物固体であることが好ましく、20以上の酸化物固体であることが特に好ましい。
【0062】
本発明の複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子が、25℃における粉体比誘電率が10以上の酸化物固体であれば、電解液の解離度を向上させ、電解液の抵抗を低減させることができる。
【0063】
ここで、本明細書における「粉体比誘電率」は、次のようにして求めた値をいう。
[粉体比誘電率の測定方法]
測定用の直径(R)38mmの錠剤成型器に粉体を導入し、厚み(d)が1〜2mmとなるように油圧プレス機を用いて圧縮し、圧粉体を形成する。圧粉体の成形条件は、粉体の相対密度(Dpowder)=圧粉体重量密度/誘電体の真比重×100が40%以上とし、この成形体についてLCRメータを用いて自動平衡ブリッジ法にて25℃における1kHzにおける静電容量Ctotalを測定し、圧粉体比誘電率εtotalを算出する。得られた圧粉体比誘電率から実体積部の誘電率εpowerを求めるため、真空の誘電率εを8.854×10−12、空気の比誘電率εairを1として、下記の式(1)〜(3)を用いて「粉体比誘電率εpower」を算出した。
圧粉体と電極との接触面積A=(R/2)*π (1)
total=εtotal×ε×(A/d) (2)
εtotal=εpowder×Dpowder+εair×(1−Dpowder) (3)
【0064】
粉体比誘電率が10以上の強誘電性酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、BaTiO、KNbO、SrBiTa等が挙げられる。
【0065】
また、本発明の複合粒子において、前記高誘電性酸化物固体粒子は、25℃で10−7S/cm以上のリチウムイオン伝導性を有する酸化物固体であることが好ましい。
【0066】
本発明の複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子が、25℃で10−7S/cm以上のリチウムイオン伝導性を備える場合には、分極しやすい特性を備えることから、電解液中の対アニオン、有機溶媒等のリチウムイオン伝導阻害物質を吸着して、リチウムイオンの輸率を高めることができる。その結果、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗がさらに低減され、大きな容量を得ることができる。
【0067】
また、本発明の複合粒子が正極に用いられる場合には、複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子を、電解液に溶解せず、水溶液含浸時にpHが12以上を示さないものとすることが好ましい。水溶液含浸時にpHは、7〜12の範囲であることが好ましく、7〜11の範囲であることが特に好ましい。
【0068】
本発明の複合粒子を正極合剤に配合する場合に、構成する高誘電性酸化物固体粒子を、電解液に溶解せず、水溶液含浸時にpHが12以上を示さないものとすれば、電極作製時の集電体箔の腐食が進行しないため、得られるリチウムイオン電池の内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0069】
電解液に溶解せず、水溶液含浸時にpHが12以上を示さない高誘電性酸化物固体粒子としては、特に限定される物ではないが、例えば、LiPO、LiNbO、化学式Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−y12(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1)で表されるNASICON型結晶構造を含有する複合金属酸化物、BaSr1−xTiO(x=0.4〜0.8)、BaZrTi1−x(x=0.2〜0.5)、またはKNbO3、SrBiTa等のペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物等を挙げることができる。
【0070】
また、本発明の複合粒子が負極に用いられる場合には、複合粒子を構成する高誘電性酸化物固体粒子は、電解液に溶解せず、Li/Li電極に対して1V以上で還元分解しないものであることが好ましい。Li/Li電極に対して0.5V以上で還元分解しないことがさらに好ましく、0V以上で還元分解しないことが特に好ましい。
【0071】
本発明の複合粒子を負極合剤に配合する場合に、構成する高誘電性酸化物固体粒子を、前記電解液に溶解せず、Li/Li電極に対して1V以上で還元分解しないものとすれば、耐久測定中の充電時に高誘電性酸化物固体粒子自身が分解しないため、負極中に安定に存在させることができる。その結果、耐久後においてもリチウムイオン二次電池の内部抵抗抑制効果を維持することができる。
【0072】
電解液に溶解せず、Li/Li電極に対して1V以上で還元分解しない高誘電性酸化物固体粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、LiPO、化学式Li7−yLa3−xZr2−y12(式中、Aは、Y、Nd、Sm、Gdからなる群から選ばれるいずれか1種の金属であり、xは、0≦x<3の範囲であり、Mは、NbまたはTaであり、yは、0≦y<2の範囲である)で表されるガーネット型構造を有する複合金属酸化物、BaSr1−xTiO(x=0.4〜0.8)、BaZrTi1−x(x=0.2〜0.5)、またはKNbO3、SrBiTa等のペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物を挙げることができる。
【0073】
[電子伝導性材料]
本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、繊維状カーボン、アルミニウム、銅などの金属、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0074】
なかでも、本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料は、細孔を有し、細孔内に電解液を格納できるものであることが好ましい。
【0075】
本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料が、細孔を有する場合には、細孔に電解液格納することができるため、複合粒子と電解液との接触面積を増加させることができる。その結果、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減することができ、大きな容量を得ることができる。
【0076】
さらには、本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料は、導電性カーボンであることが好ましい。
【0077】
導電性カーボンは、自身に空孔を有し、また、粒子同士が連結するストラクチャ構造を形成しやすい。このため、本発明の複合粒子の電解液の保持能力を、より向上することができる。また、電解液保持性が向上することで、本発明の複合粒子を電極合剤に配合した場合に、電極活物質の近傍に電解液を保持することができ、出力の向上および充電・放電に伴う電極体の膨張収縮による液漏れを抑制することが可能となる。
【0078】
さらに、導電性カーボンは、通常、リチウムイオン二次電池用電極を構成する電極合剤において、導電助剤として用いられる物質である。したがって、本発明の複合粒子において、高誘電性酸化物固体粒子を被覆する電子伝導性材料を導電性カーボンとすれば、従来の電極合剤を構成する材料と同様の材料にて、リチウムイオン二次電池用電極を形成することができる。
【0079】
また、本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料は、25℃において10−1S/cm以上の電子伝導性を有し、100ml/100g以上のDBP吸油量を備えていることが好ましい。25℃において10S/cm以上の電子伝導性を有し、120ml/100g以上のDBP吸油量を備えていることがより好ましく、10S/cm以上の電子伝導性を有し、150ml/100g以上のDBP吸油量を備えていることが特に好ましい。
【0080】
本発明の複合粒子を構成する電子伝導性材料が、25℃において10−1S/cm以上の電子伝導性を備える場合には、得られるリチウムイオン二次電池の内部抵抗をさらに低減することができ、過電圧の上昇を抑制することができる。
【0081】
また、電子伝導性材料が100ml/100g以上のDBP吸油量を備えることにより、電子伝導性材料の内部に電解液を多く含ませることができるため、高誘電性酸化物固体粒子と電解液との界面を大きくすることができ、その結果、リチウムイオンの内部抵抗を低減することができる。
【0082】
<複合粒子の製造方法>
本発明の複合粒子の製造方法は、上記した高誘電性酸化物固体粒子の表面に、上記した電子伝導性材料を、機械的手法または化学的手法で付着または結合させる一体化工程を備える。
【0083】
本発明の複合粒子の製造方法によれば、高誘電性酸化物固体粒子の表面に電子伝導性材料を、機械的手法または化学的手法で一体化させることができる。
【0084】
機械的手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、高誘電性酸化物固体粒子の表面に電子伝導性材料を、メカニカルミリングにより付着または結合させる方法が挙げられる。あるいは、メカノフュージョン、プラネタリミキシング、および混練からなる群で選択される方法で処理してもよい。
【0085】
また、化学的手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、化学気相成長法(CVD法)、物理気相成長法等が挙げられる。
【0086】
化学的気相成長法としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素源として脂肪族飽和炭化水素のガス(気体)を熱分解させて炭素化し、高誘電性酸化物固体粒子に炭素をコーティングする方法が挙げられる。
【0087】
炭素源としての脂肪族飽和炭化水素ガスは、特に限定されるものではないが、例えば、プロパン、ブタン、2−メチルプロパン等が挙げられる。脂肪族飽和炭化水素のガスの熱分解温度としては、600℃〜850℃とすることが望ましい。600℃〜800℃の範囲とすることがさらに好ましく、650℃〜800℃の範囲とすることが特に好ましい。600℃未満の場合には熱分解した炭素の結晶化が進まず、十分な電子伝導性が得られない。一方で、850℃を超ええる場合には、高誘電性酸化物固体粒子の還元分解や、粒子同士の焼結が進行し、目的の複合粒子が得られない。
【0088】
化学的気相成長法で用いられる装置としては、特に限定されるものではなく、例えば、還元雰囲気においてガス雰囲気が制御可能な状態で、焼成を行うことができる反応装置を挙げることができる。例えば、石英管キルン炉、ロータリーキルン炉等を使用することができる。
【0089】
<リチウムイオン二次電池用電極>
本発明の、リチウムイオン二次電池用電極は、電解液を備えるリチウムイオン二次電池用の電極であって、電極活物質と、上記の本発明の複合粒子と、を含む電極合剤からなる層を備える。
【0090】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用電極では、正極活物質または負極活物質を含む電極合剤層に、上記した本発明の複合粒子が含まれている。
【0091】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極においては、電極活物質の近傍に本発明の複合粒子が存在することとなる。その結果、その結果、電極活物質表面での電解液の分解反応を抑制する効果とリチウムイオンの挿入脱離を促進する効果とを、同時に機能させることができ、充放電サイクルに対して優れた耐久性を有するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0092】
なお、本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、正極、負極のいずれであってもよい。上記の本発明の複合粒子を含む電極合剤からなる層を備えることにより、いずれの極においても上記の効果を発現する。
【0093】
[複合粒子の配合量]
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、複合粒子の配合量は、電極合剤全体に対して0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。0.5質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下であることが特に好ましい。
【0094】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、複合粒子の配合量が、電極合剤全体に対して0.1質量部以上5質量部以下であれば、電極活物質表面での電解液の分解反応を抑制する効果とリチウムイオンの挿入脱離を促進する効果とを、同時に機能させることができる。また、0.1質量部未満の場合には、強誘電効果および電極内部に浸透する電解液の解離度が不十分となり、一方で、5質量部を超える場合には、電極内部に浸透する電解液量が不十分となり、活物質と電解液との接触界面が十分に得られなくなることから、電極内部のリチウムイオンの移動経路が制限されてしまう。
【0095】
[高誘電性酸化物固体粒子、電子伝導性材料、および電極活物質の平均粒子径の関係]
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、複合粒子の平均粒子径と高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、電極活物質の平均粒子径の1/10以下であり、高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、電子伝導性材料の1次粒子の平均粒子径の5倍以上であることが好ましい。
【0096】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、複合粒子の平均粒子径は、電極活物質の平均粒子径の1/10以下であり、高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、電子伝導性材料の厚みの5倍以上であることが好ましい。
【0097】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、複合粒子の平均粒子径は、電極活物質の平均粒子径の1/10以下であり、高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径は、電子伝導性材料の1次粒子の平均粒子径または電子伝導性材料の厚みの15倍以上であることがさらに好ましい。
【0098】
本発明のリチウムイオン二次電用電極において、複合粒子の平均粒子径が、電極活物質の平均粒子径の1/10以下であれば、複合粒子を電極活物質の間隙に確実に配置することができる。また、高誘電性酸化物固体粒子の平均粒子径が、電子伝導性材料の1次粒子の平均粒子径または電子伝導性材料の厚みの5倍以上であれば、高誘電性酸化物固体粒子と電子伝導性材料との間に十分に大きな界面を形成することができる。
【0099】
[電極活物質と複合粒子との質量比]
本発明のリチウムイオン二次電池用電極において、電極活物質と複合粒子との質量比は、99.5:0.5〜80:20であることが好ましい。電極活物質と複合粒子との質量比は、99.5:0.5〜90:10であることが好ましく、99.5:0.5〜95:5であることが特に好ましい。
【0100】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、電極活物質と前記複合粒子との質量比が99.5:0.5〜80:20の範囲にあれば、十分な電子伝導性を確保することができ、その結果、大きなエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0101】
[電極の構成]
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の構成は、特に限定されるものではないが、例えば、集電体上に、電極活物質と、上記の本発明の複合粒子と、を含む電極合剤からなる層が積層された構成を挙げることができる。本発明のリチウムイオン二次電池用電極の電極合剤は、電極活物質と、本発明の複合粒子が含まれていれば特に限定されるものではないが、例えば他の成分としては、導電助剤や結着剤が挙げられる。
【0102】
[正極集電体]
正極集電体としては、例えば、アルミニウム箔等からなるアルミニウム製集電体を用いることができる。
【0103】
[正極活物質]
正極活物質としては、例えば、オリビン型、層状型、スピネル型、ポリアニオン型等のリチウム遷移金属化合物等のリチウムを吸蔵放出可能な酸化物を用いることができる。前記オリビン型リチウム遷移金属化合物としては、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)等を挙げることができる。また、前記層状型リチウム遷移金属化合物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、二酸化マンガン(III)リチウム(LiMnO)、LiNiCoMn(0≦x≦1、0≦x≦1、0≦x≦1、x+y+z=1)のように表される三元系酸化物等を挙げることができる。また、前記スピネル型リチウム遷移金属化合物としては、マンガン酸リチウム(LiMn)等を挙げることができ、前記ポリアニオン型リチウム遷移金属化合物としては、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO)等を挙げることができる。
【0104】
[正極用の導電助剤]
正極に用いる導電助剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、繊維状カーボン等を挙げることができる。
【0105】
[正極用の結着剤]
正極に用いる結着剤(バインダー)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を挙げることができる。
【0106】
[負極集電体]
負極集電体としては、例えば、銅箔等からなる銅製集電体を用いることができる。
【0107】
[負極活物質]
負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム(LiTi12)等のリチウム遷移金属酸化物、TiSi、LaNiSn等の合金、ハードカーボン、ソフトカーボン、黒鉛等の炭素材料、リチウム、インジウム、アルミニウム、スズ、ケイ素等の金属単体またはこれらの金属の合金等を挙げることができる。
【0108】
[負極用の導電助剤・結着剤]
負極に用いる導電助剤は、前記正極に用いる導電助剤と同一であり、前記負極に用いる結着剤(バインダー)としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)との混合物を挙げることができる。
【0109】
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、正極および負極の少なくとも一方は、上記の本発明のリチウムイオン二次電池用電極である。なお、本発明においては、正極および負極のいずれもが、上記の本発明のリチウムイオン二次電池用電極であってもよい。
【0110】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極または負極の少なくとも一方を、上記の本発明のリチウムイオン二次電池用電極とすることで、優れた耐久性を有し、しかも内部抵抗が低減されることで大きな容量を有するリチウムイオン二次電池となる。
【0111】
[リチウムイオン二次電池の構成]
本発明のリチウムイオン二次電池の構成は、正極と、負極と、電解液と、を備えていれば特に限定されるものではなく、その他の要素を含んでいてもよい。例えば、正極と、負極と、電解液と、正極と負極とを電気的に絶縁するセパレータと、を備える構成が挙げられる。
【0112】
[セパレータ]
セパレータとしては、電解液のイオン移動に対する抵抗が小さく、電解液の保持性に優れたものを用いることが好ましい。このようなセパレータとしては、例えば、ガラス、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリアミド、アラミド、ポリプロピレン、フッ素ゴム塗布セルロースからなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる不織布または織布を挙げることができる。
【0113】
[電解液]
電解液としては、非水溶媒に電解質塩を溶解させたものを用いることができる。非水溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、ニトリル類、アミド類、またはこれらの組み合わせからなるものを挙げることができる。
【0114】
前記環状炭酸エステルとしては、例えば、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等を挙げることができる。また、前記環状炭酸エステルは、トリフルオロプロピレンカーボネート、フルオロエチルカーボネート等の前記化合物の水素基の一部または全てがフッ素化された化合物であってもよい。
【0115】
前記鎖状炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソピルカーボネート等を挙げることができ、これらの化合物の水素基の一部または全てがフッ素化された化合物であってもよい。
【0116】
前記エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
【0117】
前記環状エーテル類としては、例えば、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等を挙げることができる。
【0118】
前記鎖状エーテル類としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等を挙げることができる。
【0119】
前記ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル等を挙げることができ、前記アミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0120】
これらの中では、特に電圧安定性の点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステルのいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0121】
前記電解質塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiCFSO、LiN(ClF2l+1SO)(C2m+1SO)(l、mは正の整数)、LiC(C2p+1SO)(C2q+1SO)(CrF2r+1SO)(p、q、rは正の整数)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
<実施例1>
[複合粒子の作製]
本実施例では、まず、電子伝導性材料としてカーボンブラックと、高誘電性酸化物固体粒子としてLi1.3Al0.3Ti1.712(LATP)とを、カーボンブラック:LATP=2:1の質量比で混合した。カーボンブラックは、DBP吸油量が160ml/100gであり、一次粒子径が35nmである。また、LATPは、メディアン径(D50)が0.5μmであり、バルクのリチウムイオン伝導性が5×10−4S/cmである。なお、DBP吸油量は、ジブチルフタレート(DBP)を用い、JIS K6217−4(2008)に規定される方法に準拠して測定した。
【0124】
次に、カーボンブラックおよびLATPの混合物と、直径2mmのジルコニアボールとをミリングポットに投入し、1000rpmの回転数で1時間、フリッチュ社製遊星ボールミル装置を用いて混練し、複合粒子を得た。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATPの表面のカーボンブラックによる被覆率は、34%であった。
【0125】
[正極の作製]
正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2(以下、NCM622と略記する)と、上記で得られた複合粒子と、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、NCM622:カーボンブラック:LATP:PVDF=91:4:2:3(質量比)となるようにして、分散溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、正極ペーストを調製した。NCM622は、メディアン径12.4μmである。
【0126】
次に、アルミニウム製正極集電体に得られた正極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、120℃の真空中で乾燥させて、正極合剤層を備える正極板を形成した。得られた正極板を30mm×40mmの大きさに打ち抜いて、正極とした。
【0127】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛(NG)と、電子伝導性材料としてカーボンブラックと、結着剤(バインダー)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液およびスチレンブタジエンゴム(SBR)とを、NG:カーボンブラック:SBR:CMC=96.5:1:1.5:1(質量比)となるようにして、分散溶媒としての水と混合し、負極ペーストを調製した。天然黒鉛は、メディアン径12.0μmである。また、カーボンブラックは、複合粒子に用いたものと同一である。
【0128】
次に、銅製負極集電体に得られた負極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、100℃の真空中で乾燥させて、負極合剤層を備える負極板を形成した。得られた負極板を34mm×44mmの大きさに打ち抜いて、負極とした。
【0129】
[リチウムイオン二次電池の作製]
二次電池用アルミニウムラミネート(大日本印刷株式会社製)を熱シールして袋状に加工した容器内に、上記で作製した正極と負極との間にセパレータを挟んだ積層体を導入し、電解液を各電極界面に注液した後、容器を真空封止することにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0130】
セパレータとしては、アルミナ粒子約5μmが片面にコートされたポリエチレン製微多孔膜を用いた。また、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとを20:40:40の体積比で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPFを1.2モル/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0131】
<評価>
得られたリチウムイオン二次電池につき、以下の評価を行った。
【0132】
[初期充電容量および初期放電容量]
作製したリチウムイオン二次電池を用い、0.33Cで4.2Vまで定電流充電を行い、続けて4.2Vの定電圧充電を1時間行って、初期充電容量を測定した。初期充電容量測定後、30分間放置し、0.2Cで2.5Vまで放電し、0.33Cの電流に対する初期放電容量を測定した。
【0133】
次に、定電流充電を1C、3Cで行った以外は、0.33Cの場合と全く同一にして、1Cの電流に対する初期充電容量および初期放電容量と、3Cの電流に対する初期充電容量および初期放電容量とを測定した。初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2にそれぞれ示す。
【0134】
[耐久後放電容量]
充放電サイクル耐久試験として、45℃の恒温槽にて、1Cで4.2Vまで定電流充電を行い、続けて2Cで2.5Vまで定電流放電を行う操作を1サイクルとして、該操作を1000サイクル繰り返した。1000サイクル終了後、上記の初期放電容量の測定と同様にして、耐久後の放電容量を測定した。
【0135】
[放電容量維持率]
初期放電容量に対する1000サイクル耐久後の放電容量の割合を求め、放電容量維持率とした。結果を図3に示す。
【0136】
[反応抵抗・拡散抵抗]
前記二次電池用アルミニウムラミネートからなる容器の両端に2つの正極を対向配置する一方、該2つの正極の間に、該2つの正極を結ぶ線に直交するようにリチウム金属からなる第3の電極を配置して、3極セルを2個作製した。電解液は、上記で作製したリチウムイオン二次電池に用いたものと同一の電解液を用いた。
【0137】
次に、一方の正極と第3の電極との間と、他方の正極と第3の電極との間とで、それぞれ1サイクルの充電と放電とを行った。その後、グローブボックス内で3極セルを解体して第3の電極を取り除き、2つの正極が対向配置された正極−正極の対称セルを作製した。実施した1サイクルの充電と放電は、いずれも、0.01Cで4.2Vまで定電流充電し、続けて3.2Vまで一定電流放電した。一方のセルは、その後0.02Cで3.8Vまで定電流充電し、さらに3.8Vで1時間の定電圧充電を行った。
【0138】
次に、対称セルについて、10〜10−1の交流インピーダンス測定(ACR)を行い、円筒型細孔モデル・伝送線モデルに基づいて解析することにより、反応抵抗と拡散抵抗とを得た。結果を図4に示す。
【0139】
<実施例2>
電子伝導性材料としてカーボンブラックと、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPとを、カーボンブラック:LATP=1:1の質量比で混合した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATPの表面のカーボンブラックによる被覆率は、30%であった。
【0140】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池と、対称セルとを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0141】
初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2に、放電容量維持率を図3に、反応抵抗と拡散抵抗とを図4に、それぞれ示す。
【0142】
<実施例3>
電子伝導性材料としてカーボンブラックと、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPとを、カーボンブラック:LATP=4:1の質量比で混合した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATPの表面のカーボンブラックによる被覆率は、49%であった。
【0143】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池と、対称セルとを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0144】
初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2に、放電容量維持率を図3に、反応抵抗と拡散抵抗とを図4に、それぞれ示す。
【0145】
<実施例4>
電子伝導性材料としてDBP吸油量が220ml/100gであり、一次粒子径が23nmであるカーボンブラックを用い、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPを、カーボンブラック:LATP=2:1の質量比で混合した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATPの表面のカーボンブラックによる被覆率は、34%であった。
【0146】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池と、対称セルとを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0147】
初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2に、放電容量維持率を図3に、反応抵抗と拡散抵抗とを図4に、それぞれ示す。
【0148】
<実施例5>
[複合粒子の作製]
高誘電性酸化物固体粒子として、メディアン径0.7μm、バルクのリチウムイオン伝導性5×10−4S/cmのLiLaZr12(LLZO)を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATPの表面のカーボンブラックによる被覆率は、39%であった。
【0149】
[正極の作製]
正極活物質としてNCM622と、電子伝導性材料としてカーボンブラックと、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、NCM622:カーボンブラック:PVDF=91:4:3(質量比)となるようにして、分散溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、正極ペーストを調製した。NCM622は、メディアン径12.4μmであり、カーボンブラックは、複合粒子に用いたものと同一である。
【0150】
次に、アルミニウム製正極集電体に得られた正極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、120℃の真空中で乾燥させて、正極合剤層を備える正極板を形成した。得られた正極板を30mm×40mmの大きさに打ち抜いて、正極とした。
【0151】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛(NG)と、上記で得られた複合粒子と、結着剤(バインダー)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液およびスチレンブタジエンゴム(SBR)とを、NG:カーボンブラック:LLZO:SBR:CMC=96.5:1:0.5:1.5:1(質量比)となるようにして、分散溶媒としての水と混合し、負極ペーストを調製した。天然黒鉛は、メディアン径12.0μmである。
【0152】
次に、銅製負極集電体に得られた負極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、100℃の真空中で乾燥させて、負極合剤層を備える負極板を形成した。得られた負極板を34mm×44mmの大きさに打ち抜いて、負極とした。
【0153】
[リチウムイオン二次電池の作製]
本実施例で得られた正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例1と同様に、初期充電容量、初期放電容量、および放電容量維持率を測定した。
【0154】
初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2に、放電容量維持率を図3に、それぞれ示す。
【0155】
<実施例6>
実施例1と同様にして正極を形成し、次いで、実施例5と同様にして負極を形成した。すなわち本実施例では、正極は、高誘電性酸化物固体粒子がLATPである複合粒子を含んでおり、負極は、高誘電性酸化物固体粒子がLLZOである複合粒子を含んでいる。
【0156】
次に、本実施例で得られた正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池と、対称セルとを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0157】
初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2に、放電容量維持率を図3に、反応抵抗と拡散抵抗とを図4に、それぞれ示す。
【0158】
<比較例1>
実施例5と同様にして正極を形成し、次いで、実施例1と同様にして負極を形成した。すなわち、本比較例では、正極と負極はいずれも、複合粒子も高誘電性酸化物固体粒子も全く含んでいない。
【0159】
次に、本比較例で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池と、対称セルとを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0160】
初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2に、放電容量維持率を図3に、反応抵抗と拡散抵抗とを図4に、それぞれ示す。
【0161】
<比較例2>
[正極の作製]
正極活物質としてNCM622と、電子伝導性材料としてカーボンブラックと、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPと、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、NCM622:カーボンブラック:LATP:PVDF=91:4:2:3(質量比)となるようにして、分散溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、正極ペーストを調製した。NCM622、カーボンブラック、LATPは、いずれも実施例1で用いたものと同一である。
【0162】
本比較例で作製した正極ペーストでは、カーボンブラックと、LATPとは単に混合されているだけであり、複合粒子は形成していない。
【0163】
次に、本比較例で作製した正極ペーストを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池と、対称セルとを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0164】
初期充電容量を図1に、初期放電容量を図2に、放電容量維持率を図3に、反応抵抗と拡散抵抗とを図4に、それぞれ示す。
【0165】
[考察]
図1および図2から、実施例1〜6のリチウムイオン二次電池によれば、比較例1〜2のリチウムイオン二次電池よりも、大きな初期充電容量および初期放電容量を得ることができることが明らかである。これは、正極合剤からなる層または負極合剤からなる層に含まれる複合粒子により、リチウムイオンの輸送特性が向上し、正極または負極の内部に存在する電解液中のリチウムイオン濃度が急激に減少し、あるいは急激に増加することを緩和できたためと考えられる。
【0166】
また、図3から、実施例1〜6のリチウムイオン二次電池によれば、比較例1〜2のリチウムイオン二次電池よりも、大きな放電容量維持率得ることができることが明らかである。これは、正極合剤からなる層または負極合剤からなる層に含まれる複合粒子により、電解液と電子伝導性材料との接触面積が低減され、電解液の分解が抑制されたためと考えられる。
【0167】
また、図4から、実施例1〜4、6のリチウムイオン二次電池によれば、比較例1〜2のリチウムイオン二次電池よりも、反応抵抗と拡散抵抗との和である総合抵抗が小さく、内部抵抗を低減することができることが明らかである。
【0168】
<実施例7>
[複合粒子の作製]
電子伝導性材料として実施例1と同じカーボンブラック(CB)と、高誘電性酸化物固体粒子としてLi1.3Al0.3Ti1.712(LATP)とを、CB:LATP=1:2の質量比で混合した。CBは、DBP吸油量が160ml/100gであり、一次粒子径が35nmである。また、LATPは、メディアン径(D50)が0.5μmであり、バルクのリチウムイオン伝導性が5×10−4S/cmである。なお、DBP吸油量は、ジブチルフタレート(DBP)を用い、JIS K6217−4(2008)に規定される方法に準拠して測定した。用いたLATPの物性等を、表1に示す。
【0169】
次に、カーボンブラックおよびLATPの混合物を、φ3mmのジルコニアボールを用いビーズミル装置に投入した。ミル周速を5.0m/sとして約1時間のミリングを実施し、複合粒子を得た。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATP表面のカーボンブラックによる被覆率は、25%であった。
【0170】
[正極の作製]
得られた複合粒子と、電子伝導性材料としてCBと、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、分散溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に予備混合し、自転公転ミキサーで湿式混合し、予備混合スラリーを得た。続いて、正極活物質としてNCM622と、得られた予備混合スラリーとを混合し、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、正極ペーストを得た。正極ペーストにおける各成分の質量比率は、NCM622:CB:LATP:PVDF=93.1:4.1:1.0:1.8となるようにした。NCM622は、メディアン径12μmである。
【0171】
次に、アルミニウム製正極集電体に得られた正極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、120℃の真空中で乾燥させて、正極合剤層を備える正極板を形成した。得られた正極板を30mm×40mmの大きさに打ち抜いて、正極とした。
【0172】
[負極の作製]
結着剤(バインダー)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液と、電子伝導性材料としてカーボンブラック(CB)とを、プラネタリーミキサーを用いて予備混合した。続いて、負極活物質として天然黒鉛(NG)を混合し、プラネタリーミキサーを用いてさらに予備混合した。その後、分散溶媒としての水と、結着剤(バインダー)としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とを添加して、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、負極ペーストを得た。負極ペーストにおける各成分の質量比率は、NG:CB:SBR:CMC=96.5:1.0:1.5:1.0となるようにした。天然黒鉛は、メディアン径12μmである。また、カーボンブラック(CB)は、複合粒子に用いたものと同一である。
【0173】
次に、銅製負極集電体に得られた負極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、100℃の真空中で乾燥させて、負極合剤層を備える負極板を形成した。得られた負極板を34mm×44mmの大きさに打ち抜いて、負極とした。
【0174】
[リチウムイオン二次電池の作製]
二次電池用アルミニウムラミネート(大日本印刷株式会社製)を熱シールして袋状に加工した容器内に、上記で作製した正極と負極との間にセパレータを挟んだ積層体を導入し、電解液を各電極界面に注液した後、容器を−95kPaに減圧して封止することにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0175】
セパレータとしては、アルミナ粒子約5μmが片面にコートされたポリエチレン製微多孔膜を用いた。また、電解液としては、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートとを30:30:40の体積比で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPFを1.2モル/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0176】
<評価>
実施例7で得られたリチウムイオン二次電池につき、以下の評価を行った。
【0177】
[初期放電容量]
作製したリチウムイオン二次電池を、測定温度(25℃)で1時間放置し、8.4mAで4.2Vまで定電流充電を行い、続けて4.2Vの電圧で定電圧充電を1時間行い、30分間放置した後、8.4mAの電流値で2.5Vまで定電流放電を行った。上記を5回繰り返し、5回目の放電時の放電容量を初期放電容量とした。結果を表2に示す。なお、得られた放電容量に対し、1時間で放電が完了できる電流値を1Cとした。
【0178】
[初期セル抵抗]
初期放電容量測定後のリチウムイオン二次電池を、測定温度(25℃)で1時間放置した後に0.2Cで充電し、充電レベル(SOC(State of Charge))50%に調整して10分間放置した。次に、Cレートを0.5Cとして10秒間パルス放電し、10秒放電時の電圧を測定した。そして、横軸を電流値、縦軸を電圧として、0.5Cにおける電流に対する10秒放電時の電圧をプロットした。次に、10分間放置後、補充電を行ってSOCを50%に復帰させた後、さらに10分間放置した。
【0179】
上記の操作を、1.0C、1.5C、2.0C、2.5C、3.0Cの各Cレートについて行い、各Cレートにおける電流値に対する10秒放電時の電圧をプロットした。そして、各プロットから得られた最小二乗法による近似直線の傾きを、本実施例で得られたリチウムイオン二次電池の内部抵抗とした。結果を表2に示す。
【0180】
[耐久後放電容量]
充放電サイクル耐久試験として、45℃の恒温槽にて、1Cの充電レートで4.2Vまで定電流充電を行った後、2Cの放電レートで2.5Vまで定電流放電を行う操作を1サイクルとし、上記の操作を500サイクル繰り返した。500サイクル終了後、恒温槽を25℃に変更した状態で24時間放置し、その後、0.2Cで4.2Vまで定電流充電を行い、続けて4.2Vの電圧で定電圧充電を1時間行い、30分間放置した後、0.2Cの放電レートで2.5Vまで定電流放電を行い、耐久後の放電容量を測定した。結果を表2に示す。
【0181】
[耐久後セル抵抗]
耐久後放電容量測定後のリチウムイオン二次電池を、初期セル抵抗の測定と同様に、(SOC(State of Charge))50%になるように充電を行い、初期セル抵抗の測定と同様の方法で、耐久後セル抵抗を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0182】
[容量維持率]
初期放電容量に対する耐久後の放電容量を求め、容量維持率とした。結果を表2に示す。
【0183】
[セル抵抗上昇率]
初期セル抵抗に対する耐久後のセル抵抗を求め、セル抵抗上昇率とした。結果を表2に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
<実施例8>
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPとを、CB:LATP=1:6の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATP表面のCBによる被覆率は、17%であった。
【0187】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0188】
<実施例9>
高誘電性酸化物固体粒子として表1に示すLPOを用いて、電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLPOとを、CB:LPO=1:6の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LPO表面のCBによる被覆率は、15%であった。
【0189】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0190】
<実施例10>
高誘電性酸化物固体粒子として表1に示すLNOを用いて、電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLNOとを、CB:LNO=1:6の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LNO表面のCBによる被覆率は、28%であった。
【0191】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0192】
<実施例11>
[複合粒子の作製]
高誘電性酸化物固体粒子として20gの表1に示すLATP(メディアン径(D50):0.5μm)を、ガス雰囲気制御が可能な石英管キルン炉に挿入し、石英管キルン炉を2rpmで回転させながらプロパンガスを300ml/minでフローさせて、800℃で20分間の焼成を行うことにより、熱分解によりプロパンガスを炭化させ、生成した炭素をLATP表面にコーティングすることで、複合粒子を得た。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATP表面の炭素による被覆率は、100%であった。また、LATP表面を被覆した炭素の厚みは、1.4nmであった。
【0193】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0194】
<実施例12>
[複合粒子の作製]
800℃で120分間の焼成を行った以外は、実施例11と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATP表面の炭素による被覆率は、100%であった。また、LATP表面を被覆した炭素の厚みは、13nmであった。なお、化学的手法による実施例11および12においては、焼成時間を調製することによって、炭素による被覆量を制御することができる。
【0195】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0196】
【表3】
【0197】
<実施例13>
高誘電性酸化物固体粒子として表1に示すBTOを用いて、電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてBTOとを、CB:BTO=1:6の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、BTOの表面のCBによる被覆率は、36%であった。
【0198】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0199】
<実施例14>
高誘電性酸化物固体粒子として表1に示すKNOを用いて、電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてKNOとを、CB:KNO=1:6の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、KNOの表面のCBによる被覆率は、27%であった。
【0200】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0201】
<実施例15>
[複合粒子の作製]
高誘電性酸化物固体粒子として20gの表1に示すBTO(メディアン径(D50):0.6μm)を、ガス雰囲気制御が可能な石英管キルン炉に挿入し、石英管キルン炉を2rpmで回転させながらプロパンガスを300ml/minでフローさせて、800℃で120分間の焼成を行うことにより、熱分解によりプロパンガスを炭化させ、生成した炭素をBTO表面にコーティングすることで、複合粒子を得た。得られた複合粒子を目視および電子顕微鏡で観察したところ、BTO表面の炭素による被覆率は、100%であった。また、BTO表面を被覆した炭素の厚みは、19nmであった。
【0202】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0203】
<実施例16>
実施例8で作製した複合粒子を用いて、正極ペーストにおける各成分の質量比率が、NCM622:CB:LATP:PVDF=93.6:4.1:0.5:1.8となるようにした以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0204】
<実施例17>
実施例8で作製した複合粒子を用いて、正極ペーストにおける各成分の質量比率が、NCM622:CB:LATP:PVDF=89.1:4.1:5.0:1.8となるようにした以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0205】
<実施例18>
[複合粒子の作製]
高誘電性酸化物固体粒子として20gの表1に示すLLZO(メディアン径(D50):0.7μm)を、ガス雰囲気制御が可能な石英管キルン炉に挿入し、石英管キルン炉を2rpmで回転させながらプロパンガスを300ml/minでフローさせて、800℃で120分間の焼成を行うことにより、熱分解によりプロパンガスを炭化させ、生成した炭素をLLZO表面にコーティングすることで、複合粒子を得た。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LLZO表面の炭素による被覆率は、100%であった。また、LLZO表面を被覆した炭素の厚みは、19nmであった。
【0206】
[正極の作製]
電子伝導性材料としてカーボンブラック(CB)と、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、分散溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを、自転公転ミキサーで湿式混合し、予備混合スラリーを得た。続いて、正極活物質としてNCM622と、得られた予備混合スラリーとを混合し、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、正極ペーストを得た。正極ペーストにおける各成分の質量比率は、NCM622:CB:PVDF=94.0:4.1:1.9となるようにした。NCM622は、メディアン径12μmである。また、カーボンブラック(CB)は、複合粒子に用いたものと同一である。
【0207】
次に、アルミニウム製正極集電体に得られた正極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、120℃の真空中で乾燥させて、正極合剤層を備える正極板を形成した。得られた正極板を30mm×40mmの大きさに打ち抜いて、正極とした。
【0208】
[負極の作製]
上記で得られた複合粒子と、結着剤(バインダー)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とを、プラネタリーミキサーを用いて予備混合した。続いて、負極活物質として天然黒鉛(NG)を混合し、プラネタリーミキサーを用いてさらに予備混合した。その後、分散溶媒としての水と、結着剤(バインダー)としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とを添加して、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、負極ペーストを得た。負極ペーストにおける各成分の質量比率は、NG:CB:LLZO:SBR:CMC=96.0:1.0:0.5:1.5:1.0となるようにした。天然黒鉛は、メディアン径12μmである。
【0209】
次に、銅製負極集電体に得られた負極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、100℃の真空中で乾燥させて、負極合剤層を備える負極板を形成した。得られた負極板を34mm×44mmの大きさに打ち抜いて、負極とした。
【0210】
[リチウムイオン二次電池の作製]
本実施例で作製した正極および負極を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0211】
【表4】
【0212】
<実施例19>
実施例9で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例18と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0213】
<実施例20>
実施例10で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例18と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0214】
<実施例21>
実施例15で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例18と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0215】
<実施例22>
実施例14で作製した複合粒子を用いた以外は、実施例18と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0216】
<実施例23>
高誘電性酸化物固体粒子として表1に示すLLZOを用いて、電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLLZOとを、CB:LLZO=1:6の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LLZO表面のCBによる被覆率は、15%であった。
【0217】
次に、本実施例で作製した複合粒子を用いて、負極ペーストにおける各成分の質量比率が、NG:CB:LLZO:SBR:CMC=96.4:1.0:0.1:1.5:1.0となるようにした以外は、実施例18と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0218】
<実施例24>
[複合粒子の作製]
(複合粒子−1の作製)
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPとを、CB:LATP=1:4の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LATP表面のCBによる被覆率は、26%であった。
【0219】
(複合粒子−2の作製)
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLLZOとを、CB:LLZO=1:4の質量比で混合した以外は、実施例7と同様にして、複合粒子を作製した。得られた複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、LLZO表面のCBによる被覆率は、46%であった。
【0220】
[正極の作製]
上記で作製した複合粒子−1を用いた以外は、実施例7と同様にして、正極を作製した。
【0221】
[負極の作製]
上記で作製した複合粒子−2を用いた以外は、実施例19と同様にして、正極を作製した。
【0222】
本実施例で作製した正極および負極を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0223】
【表5】
【0224】
<実施例25>
実施例24で作製した正極と、実施例21で作製した負極を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0225】
<実施例26>
実施例15で作製した正極と、実施例18で作製した負極を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0226】
<実施例27>
[正極の作製]
実施例12で作製した複合粒子を用いて、正極ペーストにおける各成分の質量比率が、NCM622:CB:LATP:PVDF=93.6:4.1:0.5:1.8となるようにした以外は、実施例7と同様にして、正極を作製した。
【0227】
[負極の作製]
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてBTOと、結着剤(バインダー)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とを、プラネタリーミキサーを用いて予備混合した。続いて、負極活物質として天然黒鉛(NG)を混合し、プラネタリーミキサーを用いてさらに予備混合した。その後、分散溶媒として水と、結着剤(バインダー)としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とを添加して、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、負極ペーストを得た。負極ペーストにおける各成分の質量比率は、NG:CB:BTO:SBR:CMC=96.0:1.0:0.5:1.5:1.0となるようにした。
【0228】
次に、銅製負極集電体に得られた負極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、100℃の真空中で乾燥させて、負極合剤層を備える負極板を形成した。得られた負極板を34mm×44mmの大きさに打ち抜いて、負極とした。
【0229】
本実施例で作製した負極ペーストでは、カーボンブラックと、BTOとは単に混合されているだけであり、複合粒子は形成していない。
【0230】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0231】
<比較例3>
実施例18で作製した正極と、実施例7で作製した負極を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。すなわち、本比較例では、正極と負極はいずれも、複合粒子も高誘電性酸化物固体粒子も全く含んでいない。結果を表6に示す。
【0232】
【表6】
【0233】
<比較例4>
[正極の作製]
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPと、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、分散溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に予備混合し、自転公転ミキサーで湿式混合し、予備混合スラリーを得た。続いて、正極活物質としてNCM622と、得られた予備混合スラリーとを混合し、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、正極ペーストを得た。正極ペーストにおける各成分の質量比率は、NCM622:CB:LATP:PVDF=93.1:4.1:1.0:1.8となるようにした。
【0234】
次に、アルミニウム製正極集電体に得られた正極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、120℃の真空中で乾燥させて、正極合剤層を備える正極板を形成した。得られた正極板を30mm×40mmの大きさに打ち抜いて、正極とした。
【0235】
本比較例で作製した正極ペーストでは、カーボンブラックと、BTOとは単に混合されているだけであり、複合粒子は形成していない。
【0236】
上記で作製した正極と、実施例7で作製した負極とを用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0237】
<比較例5>
[負極の作製]
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLLZOと、結着剤(バインダー)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とを、プラネタリーミキサーを用いて予備混合した。続いて、負極活物質として天然黒鉛(NG)を混合し、プラネタリーミキサーを用いてさらに予備混合した。その後、分散溶媒として水と、結着剤(バインダー)としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とを添加して、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、負極ペーストを得た。負極ペーストにおける各成分の質量比率は、NG:CB:LLZO:SBR:CMC=96.0:1.0:0.5:1.5:1.0となるようにした。
【0238】
次に、銅製負極集電体に得られた負極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、100℃の真空中で乾燥させて、負極合剤層を備える負極板を形成した。得られた負極板を34mm×44mmの大きさに打ち抜いて、負極とした。
【0239】
本実施例で作製した負極ペーストでは、カーボンブラックと、LLZOとは単に混合されているだけであり、複合粒子は形成していない。
【0240】
[リチウムイオン二次電池の作製]
実施例18で作製した正極と、上記で作製した負極を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0241】
<比較例6>
[負極の作製]
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子としてLATPと、結着剤(バインダー)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液とを、プラネタリーミキサーを用いて予備混合した。続いて、負極活物質として天然黒鉛(NG)を混合し、プラネタリーミキサーを用いてさらに予備混合した。その後、分散溶媒として水と、結着剤(バインダー)としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とを添加して、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、負極ペーストを得た。負極ペーストにおける各成分の質量比率は、NG:CB:LATP:SBR:CMC=96.0:1.0:0.5:1.5:1.0となるようにした。
【0242】
次に、銅製負極集電体に得られた負極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、100℃の真空中で乾燥させて、負極合剤層を備える負極板を形成した。得られた負極板を34mm×44mmの大きさに打ち抜いて、負極とした。
【0243】
本実施例で作製した負極ペーストでは、カーボンブラックと、LATPとは単に混合されているだけであり、複合粒子は形成していない。
【0244】
[リチウムイオン二次電池の作製]
実施例18で作製した正極と、上記で作製した負極を用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0245】
<比較例7>
[正極の作製]
電子伝導性材料としてCBと、高誘電性酸化物固体粒子として表1に示すAlOと、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、分散溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に予備混合し、自転公転ミキサーで湿式混合し、予備混合スラリーを得た。続いて、正極活物質としてNCM622と、得られた予備混合スラリーとを混合し、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、正極ペーストを得た。正極ペーストにおける各成分の質量比率は、NCM622:CB:AlO:PVDF=93.1:4.1:1.0:1.8となるようにした。
【0246】
次に、アルミニウム製正極集電体に得られた正極ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、120℃の真空中で乾燥させて、正極合剤層を備える正極板を形成した。得られた正極板を30mm×40mmの大きさに打ち抜いて、正極とした。
【0247】
本比較例で作製した正極ペーストでは、カーボンブラックと、AlOとは単に混合されているだけであり、複合粒子は形成していない。
【0248】
上記で作製した正極と、実施例7で作製した負極とを用いた以外は、実施例7と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製し、実施例7と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
図1
図2
図3
図4